非対称薄膜cMUT素子及び製作方法
【課題】 非対称薄膜容量性微小機械加工超音波変換器(cMUT)及びcMUT撮像アレイの製作に関する技術を提供する。
【解決手段】 非対称薄膜容量性微細機械加工超音波変換器(cMUT)素子及び製作方法。好ましい実施形態では、本発明によるcMUT素子は、一般的に非対称特性を有する薄膜を含む。薄膜は、その端部が異なる幅を有するようにその長さにわたって変動する幅を有することができる。非対称薄膜は、その様々な幅寸法のために様々な撓み特性を有することができる。別の好ましい実施形態では、本発明によるcMUT素子は、一般的に非対称特性を有する電極要素を含む。電極要素は、その端部が異なる幅を有するようにその長さにわたって変動する幅を有することができる。非対称電極要素は、その様々な幅寸法のために異なる受信及び送信特性を有することができる。別の好ましい実施形態では、薄膜に沿って位置決めされた質量負荷が、薄膜の質量分布を変更することができる。また、他の実施形態も特許請求して説明する。
【解決手段】 非対称薄膜容量性微細機械加工超音波変換器(cMUT)素子及び製作方法。好ましい実施形態では、本発明によるcMUT素子は、一般的に非対称特性を有する薄膜を含む。薄膜は、その端部が異なる幅を有するようにその長さにわたって変動する幅を有することができる。非対称薄膜は、その様々な幅寸法のために様々な撓み特性を有することができる。別の好ましい実施形態では、本発明によるcMUT素子は、一般的に非対称特性を有する電極要素を含む。電極要素は、その端部が異なる幅を有するようにその長さにわたって変動する幅を有することができる。非対称電極要素は、その様々な幅寸法のために異なる受信及び送信特性を有することができる。別の好ましい実施形態では、薄膜に沿って位置決めされた質量負荷が、薄膜の質量分布を変更することができる。また、他の実施形態も特許請求して説明する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にチップの製作に関し、より詳細には、非対称薄膜容量性微小機械加工超音波変換器(cMUT)及びcMUT撮像アレイの製作に関する。
関連出願への相互参照及び優先権請求
本出願は、2004年3月11日出願の米国特許仮出願出願番号第60/552,082号の恩典を請求するものである。本出願はまた、共に2005年2月28日出願で「高調波CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月27日出願の米国特許仮出願出願番号第60/548,192号の恩典を主張する、米国特許出願出願番号第11/・・・、・・・号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/・・・・・・に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願であり、本出願はまた、共に2005年2月28日出願で「多要素電極CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月27日出願の米国特許仮出願第60/548,193号及び2004年9月16日出願の米国特許仮出願第60/611,049号の恩典を主張する、米国特許出願出願番号第11/・・・、・・・号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/・・・・・・に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願であり、本出願はまた、共に2005年2月7日出願で「CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月6日出願の米国特許仮出願第60/542,378号の恩典を主張する、米国特許出願第11/053,672号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/003898に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
容量性微小機械加工超音波変換器は、一般的に機械的及び電子的構成要素を非常に小さなパッケージに組み合わせるものである。機械的及び電子的構成要素は、互いに作動して機械的エネルギを電気的エネルギに又はその反対に変換する。cMUTは、典型的に非常に小さく、機械的及び電気的部分の両方を有するので、それらは、一般的に微小電気機械システム(MEMS)素子と呼ばれる。cMUTは、サイズが極めて小さいために、医療用装置技術を含む多くの異なる技術分野の多数の用途に使用することができる。
【0003】
医療用装置の領域内でのcMUTに対する1つの用途は、軟部組織イメージングである。組織高調波イメージングは、それが撮像組織に関する独特の情報を提供するので医療用超音波イメージングで重要になっている。高調波イメージングでは、送信中に撮像アレイから組織に中心周波数(f0)で超音波エネルギが送信される。この超音波エネルギは、特に高い振幅レベルでは非線形的に組織と相互作用し、例えば、2f0、3f0、4f0のような入力周波数のより高い高調波で超音波エネルギが発生する。これらの高調波信号は、次に撮像アレイによって受信されて画像が形成される。帰還信号を受信するために、撮像アレイ内の超音波変換器は、好ましくは、超広帯域信号を受信する感受性を有するであろう。
【0004】
従来の超音波変換器は、このような方法で実行することはできない。例えば、圧電変換器は、これらの変換器が基本周波数(f0)とその奇数高調波(3f0、5f0など)でのみ効率的である傾向を有するために、高調波イメージング用途に対して適していない。圧電変換器の奇数の高調波の効率を補償するために、変換器は、典型的には減衰され、いくつかのマッチング層が使用されて広帯域(〜90%部分帯域幅)変換器を作り出す。しかし、この手法は、バッキング及びマッチング層のためにかなりのエネルギが失われるので感度と帯域幅の間に交換条件を必要とする。更に、従来の圧電変換器と製作方法は、素子製作業者が従来の圧電変換器の振動高調波を制御又は調節することを可能にしない。
【0005】
従来のcMUTはまた、一般的に、組織の高調波イメージングに対して構成されていない。例えば、従来のcMUTは、cMUT薄膜の複数の振動モードに適応されておらず、かつそれらを利用しない。むしろ、従来の圧電変換器のような従来のcMUTは、cMUT薄膜の第1の振動モードを利用しただけの実質的に均一な円形形状又は矩形形状の薄膜を有する。更に、従来のcMUT及び製作方法は、調節可能な振動モード又は制御可能な振動高調波を有することができるcMUTを提供しない。従来のcMUT形式の設計により、合理的なSN比を有するためには90%部分帯域幅が通常望ましい。しかし、この部分帯域幅は、医療用イメージング用途に対するcMUT薄膜の複数の振動次数の使用を排除する。より詳細には、従来のcMUT設計は、広い帯域幅にわたってより高い感度を達成するように最適化されず、又はcMUT薄膜の複数の振動モードを利用するようになっていない。
【0006】
従って、組織高調波イメージング用途に対してcMUT素子の性能を増大及び強化する強化薄膜を有するcMUTの製作を可能にするcMUT製作方法に対する必要性が当業技術に存在する。
更に、cMUT素子性能を増大及び強化するために薄膜の複数の振動モードと複数の振動高調波とを利用するcMUTを製作する方法に対する必要性が当業技術に存在する。
更に、cMUT薄膜に対する異なる振動モードに関連する周波数を使用して超音波エネルギを受信及び送信することができるCMUT素子に対する必要性が当業技術に存在する。
本発明の実施形態は、そのようなcMUTの製作とcMUT撮像アレイの製作を提供することに主として関連している。
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/552,082号
【特許文献2】米国特許仮出願出願番号第60/548,192号
【特許文献3】米国特許仮出願第60/548,193号
【特許文献4】米国特許仮出願第60/611,049号
【特許文献5】米国特許仮出願第60/542,378号
【特許文献6】米国特許出願第11/053,672号
【特許文献7】PCT特許出願出願番号PCT/US2005/003898
【発明の開示】
【0008】
本発明は、可変幅薄膜cMUTアレイ変換器の製作方法及びシステムを含む。本発明はまた、可変幅電極要素を備えたcMUTを含む。本発明は、医療用撮像用途に特に有用とすることができる超音波エネルギ又は波の送信及び受信を最適化するための強化された薄膜及び多要素電極を有する撮像用途に対するcMUTを提供する。本発明のcMUTは、所定の周波数を受信するようになった不均一な質量分布の薄膜を有することができる。本発明はまた、調和的に関連付けられた振動モードを有するように適応させることができる薄膜を有するcMUTを提供する。更に、本発明は、cMUT薄膜の振動高調波を調節して作動周波数と関連の高調波とに対応させることができるように製作することが可能な薄膜を有するcMUTを提供する。更に、本発明は、cMUT薄膜が撮像媒体中に浸漬された時に、電極をcMUT薄膜の複数の振動モードのピーク近くに配置して製作することが可能なcMUTを提供する。
cMUTは、素子の寄生キャパシタンスを低下させて、従って電気的性能を改善して光学検出法の使用を可能にするために、以下に限定されるものではないが、シリコン、水晶、又はサファイアのような誘電性又は透明な基板上に製作することができる。更に、本発明の好ましい実施形態により構成されたcMUTは、血管内カテーテル及び超音波撮像のような液浸用途で使用することができる。
【0009】
本発明は、好ましくは、薄膜と薄膜の振動モードを調節するための薄膜周波数調節器とを有するcMUTを含む。薄膜周波数調節器は、薄膜の少なくとも2つの振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜の調節を可能にする。薄膜周波数調節器は、その長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有する薄膜を含むことができる。質量の不均一性は、いくつかの方法、例えば、薄膜の厚みを変えることにより、薄膜の密度を変えることにより、又は例えば薄膜にその薄膜に近接して質量負荷を設けることによって提供することができる。質量負荷は、その長さに沿って質量の不均一性を提供する単一の質量源とすることができ、又は薄膜に沿って様々な場所に配置された複数の別々の質量負荷要素とすることができる。
【0010】
cMUTは、cMUTの電極要素である質量負荷を含むことができる。好ましい質量負荷は金である。
複数の質量負荷要素は、薄膜の周波数応答を修正する。薄膜は、複数の振動モードを有することができ、薄膜の周波数調節器は、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜を適応させることができる。薄膜は、基本周波数で振動するように適応させることができ、薄膜周波数調節器は、実質的に基本周波数の2倍に等しい周波数で振動するように薄膜を調節することができる。
【0011】
本発明は、薄膜を設ける段階、薄膜の目標振動周波数を判断する段階、及び薄膜の目標振動周波数を誘導するために薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って薄膜の質量分布を変更する段階を含む、cMUTの振動モードを制御する方法を更に含むことができる。好ましい実施形態では、薄膜の目標振動周波数は、薄膜の基本周波数の実質的に2倍である。薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って薄膜の質量分布を変更する段階は、薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って様々な厚みを有する薄膜を設ける段階、又は薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って様々な密度を有する薄膜を設ける段階を含むことができる。好ましくは、薄膜は、第1の振動モードと第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有し、薄膜は、第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第2の振動モードで超音波エネルギを受信するようになっている。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によるcMUTの製作方法は、薄膜を設ける段階、及び所定の周波数でエネルギを受信するために不均一な質量分布を有するように薄膜を構成する段階を含む。不均一な質量分布を有するように薄膜を構成する段階は、薄膜に近接して複数の質量負荷を設ける段階を含むことができる。第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように薄膜を適応させる更に別の段階を提供することができる。更に、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜を適応させることができ、薄膜の振動モードに近接して電極要素を位置決めする更に別の段階を付加することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、薄膜と薄膜に近接した質量負荷とを含む。質量負荷は、所定の周波数でエネルギを受信するように薄膜を適応させることができる。更に、薄膜がその長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有するように薄膜上に複数の質量負荷を配置することができる。質量負荷は、薄膜の一部か、薄膜に近接するか、又は薄膜に沿って位置決めすることができる。質量負荷は、薄膜とは異なる材料にすることができる。薄膜は、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜の質量を分布させるために、質量負荷を使用して厚みが異なる領域を有するように形成することができる。代替的に、薄膜の不均一な質量分布の一部分は、様々な厚みの領域を有するように薄膜をパターン化することによって形成することができる。調和cMUTはまた、薄膜によって形成された空洞、薄膜に近接した第1の電極、及び基板に近接した第2の電極を含むことができる。空洞は、第1の電極と第2の電極の間に配置することができる。第1の電極と第2の電極は、複数の要素を有するように構成することができる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、cMUTを製作する方法は、基板に近接して薄膜を設ける段階、及び薄膜をその長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有するように構成する段階を含むことができる。cMUTを製作する方法はまた、第1の導電層に近接して犠牲層を設ける段階、犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階、第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階、及び犠牲層を除去する段階を含むことができる。第1及び第2の薄膜層は、薄膜を形成することができる。cMUTの製作方法はまた、薄膜の振動モードの周波数及び形状をシフトする段階、及び受信状態で超音波エネルギを受信して送信状態で超音波エネルギを送信するように作動するように薄膜を適応させる段階を含むことができる。
【0015】
更に別の好ましい実施形態では、調和cMUTを制御する方法は、薄膜の振動モードを判断する段階、及び所定の周波数に対応する薄膜振動モードを誘導するために1つ又はそれよりも多くの質量負荷を薄膜上に位置決めする段階を含むことができる。調和cMUTは、薄膜に近接した上部電極、基板に近接した下部電極、及び薄膜と下部電極の間の空洞を有することができる。調和cMUTを制御する方法はまた、薄膜の振動モードに対応するように第1の電極要素を位置決めする段階を含むことができる。第1の電極要素は、上部電極及び/又は下部電極の一部とすることができる。所定の周波数は、薄膜の基本周波数の実質的に2倍とすることができる。薄膜は、第1の振動モードと、第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有することができる。薄膜は、第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように適応させることができる。
【0016】
更に別の好ましい実施形態では、cMUTは、第1の端部と第2の端部とを有する薄膜を含むことができ、薄膜は、二等分側線に関して実質的に非対称とすることができる。二等分側線は、薄膜の端部間の中間の位置の境界を定めることができる。薄膜の端部は、異なる幅を有することができ、一端での薄膜の幅は、好ましくは他端での薄膜の幅よりも大きい。詳細説明と図を精査すれば、本明細書で使用される「幅」寸法が「厚み」と異なることは明確に理解されるであろう。薄膜は、第1の崩壊力と、第1の端部に近接した第1の点で薄膜を崩壊状態まで駆動するのに必要な力として定義された薄膜の特性と、第2の端部に近接した第2の点で薄膜を崩壊状態まで駆動するのに必要な力としての薄膜の特性として同様に定義された第2の崩壊とを具現することができる。第1の崩壊力は、好ましくは第2の崩壊力とは異なり、かつそれよりも低い。
【0017】
本発明によるcMUTはまた、第1の端部と第2の端部とを有する電極要素を含むことができる。電極要素は、二等分側線に関して実質的に非対称とすることができる。二等分側線は、電極要素の第1及び第2の端部の間の位置の境界を定めることができる。電極要素の第1の端部は、第2の端部での電極要素の幅よりも小さい幅を有することができる。電極要素は、非対称の電極要素を基板の方向に実質的に等しい距離の第1の点と第2の点で薄膜を撓ませるように適応させることができるように、第1の点と第2の点で薄膜上に恐らくは異なる量の力をもたらすように適応させることができる。
【0018】
薄膜はまた、好ましくは、その長さに沿って様々な撓み特性を有するようになっている。更に、第1の端部から第2の端部まで測定された薄膜の長さは、好ましくは、第1の端部での薄膜の幅の2倍よりも長いか又は実質的にそれに等しい。薄膜はまた、伸長させ、所定の形状を有し、超広帯域信号を送信及び受信するように適応させることができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜は、実質的に台形である。
【0019】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、cMUTを製作する方法は、一般的に、薄膜を設ける段階、及び薄膜を二等分側線に関して実質的に非対称に構成する段階を含む。cMUTを製作する方法はまた、薄膜の第1の端部で第1の幅と薄膜の第2の端部で第2の幅とを有するように薄膜を構成する段階を含むことができる。第1の端部での第1の幅は、第2の端部での第2の幅よりも大きくすることができる。薄膜はまた、第1の点で第1の撓み特性を有し、第2の点で第2の撓み特性を有するように構成することができる。薄膜はまた、薄膜の第1の端部と第2の端部の間の距離が、第1の側面と第2の側面の間の第2の端部で測定された薄膜の幅の2倍よりも長いか又は実質的に等しくなるように構成することができる。薄膜は、更に、超広帯域信号の送信及び受信の両方を行い、かつ台形形状に構成することができる。
【0020】
cMUTを製作する方法はまた、電極要素を設ける段階を含むことができる。電極要素は、二等分側線に関して実質的に非対称にすることができる。更に、電極要素は、電極要素の第1の端部に第1の幅と電極要素の第2の端部に第2の幅とを有するように構成することができる。第1の端部の第1の幅は、第2の端部の第2の幅よりも小さくすることができる。cMUTを製作する方法はまた、第1の点と第2の点で薄膜に対して力をもたらし、基板の方向に実質的に等しい距離の第1の点と第2の点で薄膜を撓ませるように電極要素を構成する段階を含むことができる。
本発明の様々な好ましい実施形態を特徴付けるこれら及び他の特徴並びに利点は、以下の詳細説明を読んで関連する図面を精査することから明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
cMUTは、特に微小規模及びアレイ用途に対して、圧電超音波変換器の代替として開発されたものである。cMUTは、一般的に表面を微小機械加工され、1次元又は2次元アレイに製作されて特定用途のためにカスタマイズすることができる。cMUTは、帯域幅とダイナミックレンジの点で圧電変換器に同等の性能を有することができるが、一般的にサイズが相当に小さいものである。
cMUTは、一般的に、導電性基板の上方に吊り下げられた薄膜内に配置された上部電極、又は基板の近くか又はそれに連結された下部電極を組み込んでいる。任意的に、基板と下部電極の間に接着層又は他の層を配置することができる。薄膜は、弾性特性を有し、刺激に応答してそれを変動させることができる。例えば、刺激は、以下に限定されるものではないが、薄膜に圧力を作用する外力と、cMUT電極を通して印加される静電気力とを含むことができる。
【0022】
cMUTは、多くの場合に音響波を送信及び受信するのに使用される。音響波を送信するために、cMUT薄膜内に配置されたcMUT電極にAC信号と大きなDCバイアス電圧が印加される。代替的に、電圧は、下部電極に印加することができる。DC電圧は、変換が効率的な場所に薄膜を引き下ろすことができ、cMUT素子応答を線形化することができる。AC電圧は、ガス又は流体のような周囲媒体内に音響波を発生させるために、望ましい周波数で薄膜を動かすことができる。音響波を受信するために、衝突する音響波がcMUT薄膜を動かす時のcMUT電極間のキャパシタンスの変化を測定することができる。
【0023】
本発明は、cMUTの振動高調波を制御するために強化された薄膜を含むcMUTを提供する。本発明によるcMUT薄膜は、薄膜の長さに沿って不均一な質量分布を有することができる。薄膜は、例えば、実質的に均一な厚みを有することができるが、密度の変動を有して質量分布プロフィールをもたらしている。代替的に、薄膜の厚みを変動させることによって質量分布を提供することができる。厚みと密度が実質的に均一な単一材料から薄膜が作られる場合には、質量負荷を利用することもできる。
【0024】
薄膜に沿って質量分布を制御することにより、cMUT薄膜の振動高調波を制御することが可能になる。一例として、複数の質量負荷を薄膜の近くにするか、その一部にするか、又はそれに沿って位置決めし、薄膜振動モードのシフト又は調節を助けることができる。不均一な質量分布を有するcMUT薄膜は、超音波のような超音波エネルギの送信及び受信を強化することができる。不均一な質量分布とcMUT薄膜の振動モードに対応する複数の電極とを有するcMUT薄膜は、送信及び受信中に望ましいが別々の周波数範囲で超音波のような超音波エネルギの送信及び受信を強化することができる。更に、本発明により強化された薄膜を有するcMUTは、cMUT薄膜の基本作動周波数と基本作動周波数の高調波周波数とを利用して超音波信号を送信及び受信することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態に従ってcMUTを製作するための例示的な機器は、以下に限定されるものではないが、PECVDシステムと、ドライエッチングシステムと、金属スパッタリングシステムと、ウェットベンチと、フォトリソグラフィ機器とを含むことができる。本発明に従って製作されたcMUTは、一般的に、積層工程で基板上に堆積させてパターン化した材料を含む。本発明は、金属犠牲層が使用された時の好ましくは最大処理温度である約250℃で様々な窒化珪素層を堆積するために低温PECVD工程を利用することができる。代替的に、他の好ましい実施形態による本発明は、約300℃で犠牲層として堆積したアモルファスシリコン犠牲層を利用することができる。
【0026】
ここで、同じ数字が同じ要素を表す図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUT100の断面図である。cMUT100は、基板105、下部電極110、空洞150、薄膜115、及び上部電極130(好ましくは、第1の上部電極要素130A、第2の上部電極要素130B、第3の上部電極要素130Cとして形成された)を含めて一般的に基板105に近接した様々な構成要素を含む。cMUT100はまた、図に誇張された形状で示されて縮尺に従っていないことが理解される質量負荷155及び160を含むことができる。質量負荷155及び160は、薄膜115に近接するか、その上に配置するか、又はそれに沿って位置決めすることができ、薄膜115から分離するか、又はそれと一体化することができる。以下に図5と6に関連してより詳細に説明するように、cMUT撮像アレイに複数のcMUT100を使用することができる。
【0027】
基板105は、シリコンで形成することができ、信号発生及び受信回路を収容することができる。基板105はまた、光学検出法の利用を可能にする好ましくは透明な材料を含むことができる。基板105は、cMUT100が超音波エネルギ又は音響波を送信して受信するのを可能にするために、少なくとも部分的には基板105に組み込まれた集積回路165を含むことができる。代替的な実施形態では、集積回路165は、基板105に近接する別の基板(図示しない)に配置することができる。
【0028】
集積回路165は、電気及び光信号を発生して受信するように適応させることができる。集積回路165はまた、画像処理プロセッサ170に信号を供給するように適応させることができる。例えば、集積回路165は、画像処理プロセッサ170に連結することができる。集積回路165は、信号発生及び受信回路の両方を収容することができ、又は別々の集積発生及び受信回路を利用することができる。画像処理プロセッサ170は、集積回路165によって受信された又は感知された信号を処理し、電気及び光信号から画像を生成するように適応させることができる。
【0029】
下部電極110は、基板105上に堆積させてパターン化することができる。代替的な実施形態では、基板105と下部電極110の間に接着層(図示しない)を配置することができる。接着層は、下部電極110を基板105に十分に接着させるために使用することができる。接着層は、クロム、又は下部電極110を基板105に接着することができる多くの他の材料で形成することができる。下部電極110は、好ましくは、金又はアルミニウムのような導電材料で製作することができる。下部電極110はまた、例えば、上部電極要素130A、130B、130Cと類似した複数の別々の電極要素(図示しない)にパターン化することができる。下部電極110の複数の要素は、下部電極110の複数の要素上に堆積した隔離層で互いから隔離することができるが、後の製作工程で、電極要素の一部を電気的に連結することもできる。隔離層はまた、cMUT100を形成するために使用される他の材料から下部電極110を保護するために利用することができる。
【0030】
薄膜115は、好ましくは弾性特性を有し、基板105に対してそれを変動可能にする。好ましい実施形態では、薄膜115は、窒化珪素を含み、複数の薄膜層で形成される。例えば、薄膜115は、第1の薄膜層と第2の薄膜層で形成することができる。更に、薄膜115は、側面区域116及び117と中心区域118とを有することができる。図示のように、中心区域118は、一般的に側面区域116及び117の間に均等に配置することができる。
【0031】
薄膜115はまた、空洞150を形成することができる。空洞150は、一般的に下部電極110と薄膜115の間に配置された犠牲層を除去又はエッチングすることによって形成することができる。隔離層を使用する実施形態では、空洞は、一般的に隔離層と薄膜115の間に配置されると考えられる。空洞150は、外部圧力又は静電気力のような刺激に応答して薄膜115が変動することを可能にするチャンバを提供する。
【0032】
好ましい実施形態では、複数の電極要素130A、130B、130Cが薄膜115内に配置される。代替的に、単一の電極又は電極要素を薄膜115内に部分的に配置することができる。複数の電極要素130A、130B、130Cのうちの2つ又はそれよりも多くは、電気的に連結されて電極要素の対を形成する。好ましくは、側面電極要素130A及び130Cは、薄膜115の側面116及び117のより近くに形成され、中心電極要素130Bは、薄膜115の中心区域118のより近くに形成される。電極要素130A、130B、130Cは、金又はアルミニウムのような導電材料を使用して製作することができる。側面電極要素130A及び130Cは、電気的に連結して中心電極要素130Bから隔離し、電極要素の対を形成することができる。電極要素130A、130B、130Cは、同じ導電材料で形成することができ、薄膜115内で所定の位置と様々な幾何学的構成を有するようにパターン化することができる。側面電極要素130A及び130Cの対は、中心電極130Bよりも小さな幅を有することができ、対130A及び130Cの少なくとも一部は、基板105から中心電極要素130Bとほぼ同じ距離に配置することができる。代替的な実施形態では、薄膜115内の基板105から様々な距離に付加的な電極要素を形成することができる。
【0033】
電極要素130A、130B、130Cは、超音波のような超音波エネルギを送信及び受信するように適応させることができる。側面電極要素130A及び130Cには、第1の電圧供給装置175(V1)から第1の信号を提供することができ、中心電極130Bには、第2の電圧供給装置180(V2)から第2の信号を提供することができる。側面電極要素130A及び130Cは、電気的に連結させることができ、そのために電極要素130A及び130Cの一方に供給された電圧又は信号は、電極要素130A及び130Cの他方に供給されることになる。これらの信号は、DCバイアス電圧のような電圧及びAC信号とすることができる。
【0034】
側面電極要素130A及び130Cは、超音波の送信に対して比較的大きな間隙を形成するように薄膜115を成形するように適応させることができる。送信中により大きな送信圧力を可能にする間隙サイズを使用することが好ましい。更に、側面電極要素130A及び130Cは、超音波の受信に対して比較的小さな間隙を形成するように薄膜115を成形するように適応させることができる。cMUT100のより高い感度を可能にする受信に対する小さな間隙サイズを使用することが望ましい。中心電極要素130Bと側面電極要素130A及び130Cは、両方とも超音波のような超音波エネルギを受信して送信することができる。
【0035】
cMUT100は、薄膜115の形状を変えることによって超音波エネルギを送信及び受信するように最適化することができる。電極要素130A、130B、130Cには、薄膜115の形状を変えるために電圧供給装置175、180(V1、V2)から様々な電圧と信号を供給することができる。更に、様々な電圧と信号を供給することにより、cMUT100は、2つの状態、すなわち、送信状態と受信状態で作動することができる。例えば、受信状態中に側面電極要素130A及び130Cは、第1の電圧供給装置175(V1)からDCバイアス電圧を供給され、音響超音波の受信に対して薄膜115の形状を最適化することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、薄膜115は、その長さに沿って不均一な質量分布を有する。薄膜115は、その長さにわたって様々な質量分布を有し、その変動は、厚み、密度、材料の組成、及び薄膜の長さに沿った他の薄膜特性の変動のうちの1つ又はそれよりも多くの結果とすることができる。
好ましい実施形態では、質量負荷155及び160は、薄膜115上に堆積されてパターン化され、不均一な質量分布の薄膜115を提供する。代替的に、薄膜115は、薄膜115の長さに沿ったある一定の点が厚み及び/又は密度の変動を通じて様々な質量を有するようにして、均一な質量分布を有するようにパターン化することができる。
【0037】
質量負荷155及び160は、好ましくは、以下に限定されるものではないが、金のような高密度で可鍛性の材料で形成される。質量負荷155及び160を形成するために多くの他の高密度で可鍛性の材料を使用することができる。金は、高密度で柔らかい材料のために好ましく、薄膜の剛性のために薄膜の振動と大きく干渉することがない。本発明の好ましい実施形態では、質量負荷155及び160の厚みは、約1マイクロメートルであり、幅は、約2マイクロメートルである。質量負荷155及び160のサイズと形状は、望ましい結果を達成するために修正することができる。質量負荷155及び160は、それぞれ側面116及び117と近接することができる。他の実施形態では、2つよりも多い質量負荷155及び160を利用することができる。質量負荷155及び160は、薄膜115の振動と変動を制御又は調節するために使用することができる。例えば、質量負荷155及び160は、薄膜115の特定の振動モードのピーク振動領域に対応して配置するか又は位置決めすることができる。
【0038】
薄膜115は、その弾性特性のために様々な周波数で振動することができ、複数の振動モードを有することができる。例えば、薄膜115は、1次の振動モード並びに他のより高次の振動モード(例えば、2次、3次など)を有することができる。薄膜115の振動モードの調節は、cMUT100の性能の改良をもたらすものである。例えば、薄膜115の振動モードをcMUT100によって利用された作動周波数及び作動周波数の高調波で発生させるようにシフトすると、使用時に薄膜115をこれらの周波数で共振させることが可能になり、結果的に超音波エネルギの効率的な送信及び受信をもたらすことになる。電圧供給装置175及び180に対して供給された及びそれから受信した信号を組み合わせることにより、超音波エネルギの送信を所定の周波数で最小にすることができ、かつ受信信号をその特定の周波数で最大にすることができる。薄膜115の質量分布を修正することにより、薄膜115の振動モードをcMUT100に対する周波数スペクトル内の望ましい位置にシフトする助けになる。例えば、薄膜115は、それが所定の周波数を受信するように負荷された質量とすることができる。所定の周波数は、cMUT100によって送信された信号の第1の高調波周波数のような高調波周波数とすることができる。
【0039】
図2は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUT100のサンプルパルスエコー周波数スペクトルを示している。図示のように、調和cMUT100に対する周波数応答205は、第1のピーク210と第2のピーク220を有する。第1のピーク210は、実質的に作動周波数(f0)付近に中心を有する送信周波数領域215に一致させることができる。第2のピーク220は、実質的に作動周波数の第2の高調波周波数(2*f0)付近に中心を有する受信周波数領域225に一致させることができる。cMUT100の薄膜115は、第1の振動次数の周波数が作動周波数(f0)付近に中心があり、第2の振動次数が作動周波数の第2の高調波周波数(2*f0)付近に中心があるように調節することができる。そのような構成は、振動モードのピークが作動周波数と作動周波数の高調波とに対応するように薄膜115の振動モードを調和的に関連付けることを可能にする。
【0040】
cMUT100の薄膜115は、図2に示すような周波数応答を有するように強化することができる。薄膜は、望ましい作動周波数と作動周波数の第2の高調波とで超音波エネルギを送信及び受信するように適応させることができる。本発明はまた、cMUT100の薄膜に対応する複数の振動モードで作動するようにcMUT薄膜を強化するために使用することができる。例えば、薄膜115は、薄膜115の第3の振動モードの移動を助けるために質量負荷を薄膜115上のある一定の位置に置くことによって作り出すことができる。薄膜115の第3の振動モードは、第3の高調波周波数(3*f0)に応答して移動又は調節され、第3の高調波周波数領域で送信及び受信された信号を改善することができる。ある一定の高調波周波数に対応するように振動モードをシフトすることに加えて、振動モードをシフトすることによって高調波周波数付近に広帯域幅を作り出すことができ、従って、薄膜115の送信及び受信領域を増すことができる。
【0041】
図3は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示している。典型的には、製作工程は、材料の様々な層を基板上に堆積させる段階と、様々な層を所定の構成にパターン化して基板105上にcMUT100を製作する段階とを含む積層工程である。
本発明の好ましい実施形態では、「Shipley S−1813」のようなフォトレジストを使用してcMUTの様々な層をリソグラフ的に形成する。そのようなフォトレジスト材料は、バイアと材料層とをパターン化するための従来の高温の使用を必要としない。代替的に、多くの他のフォトレジスト又はリソグラフ材料を使用することができる。
【0042】
本発明の製作工程の第1の段階は、基板105上に下部電極110を設けるものである。基板105は、シリコン、水晶、ガラス、又はサファイアのような誘電体を含むことができる。一部の実施形態では、基板105は、集積電子機器を収容し、集積電子機器は、信号の送信及び受信に対して分離することができる。代替的に、適切な信号送信及び受信電子機器を収容する基板105に隣接して配置された第2の基板(図示しない)を使用することができる。導電性金属のような導電材料は、下部電極110を形成することができる。下部電極110はまた、シリコン基板105をドープすることにより、又は金属のような導電材料層を基板105上に堆積してパターン化することによって形成することができる。それでも、ドープされたシリコン下部電極110により、上部電極の全ての不動部分が寄生キャパシタンスを増大する可能性があり、従って、素子性能を劣化させて大部分の光学スペクトルに対して光学検出技術を妨害する。
【0043】
これらの短所を克服するために、パターン化された下部電極110を使用することができる。図3(a)に示すように、下部電極110は、基板105とは異なる長さにパターン化することができる。下部電極110をパターン化することにより、素子の寄生キャパシタンスを著しく低減することができる。
下部電極110は、多要素電極にパターン化することができ、多要素電極は、基板105から様々な距離に配置することができる。アルミニウム、クロム、及び金は、下部電極110を形成するのに使用することができる例示的な材料である。本発明の好ましい実施形態では、下部電極110の厚さは、約1500オングストロームであり、堆積の後に回折グレーディングとして及び/又は様々な長さを有するようにパターン化することができる。
【0044】
次の段階では、隔離層315を堆積させる。隔離層315は、下部電極110上に置かれた他の層から下部電極110の各部分又はその全体を隔離することができる。隔離層315は、窒化珪素とすることができ、好ましくは、約1500オングストロームの厚さにすることができる。「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して、好ましい実施形態に従って約250℃で隔離層315を堆積させることができる。隔離層315は、cMUTの製作中に使用されるエッチング液から下部電極110又は基板105を保護するのを助けることができる。下部電極層110上に堆積された状態で、隔離層315は、所定の厚さにパターン化することができる。代替的な好ましい実施形態では、隔離層315は利用されない。
【0045】
隔離層315を堆積させた後で、犠牲層320が隔離層315上に堆積される。犠牲層320は、好ましくは、単に一時的な層であり、製作中にエッチングで除去されて、cMUT100に空洞150を形成する。隔離層315が使用されない時には、犠牲層320は、直接下部電極110上に堆積される。犠牲層320は、cMUTの製作中に付加的な層を堆積する間の空間を保持するために使用される。犠牲層320は、約300℃で「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して堆積させて反応性イオンエッチング(RIE)を使用してパターン化することができるアモルファスシリコンで形成することができる。犠牲層320を形成するために、スパッタリングされた金属もまた使用することができる。犠牲層320は、得られる空洞又はバイアに対して様々な幾何学的構成を提供するために、異なる区分、様々な長さ、及び異なる厚さにパターン化することができる。
【0046】
図3(b)に示すように、第1の薄膜層325を次に犠牲層320上に堆積させる。第1の薄膜層325は、例えば「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して堆積させることができる。第1の薄膜層325は、窒化珪素又はアモルファスシリコンの層にすることができ、約6000オングストロームの厚さを有するようにパターン化することができる。第1の薄膜層325の厚さは、特定の実施に応じて変えることができる。犠牲層320の上への第1の薄膜層325の堆積は、振動する薄膜115の形成を助けるものである。
【0047】
第1の薄膜層325をパターン化した後で、図3(c)に示すように第1の薄膜層325上に第2の導電層330を堆積させることができる。第2の導電層330は、cMUTの上部電極を形成することができる。第2の導電層130は、互いから隔離することができる電極要素130A、130B、及び130Cにパターン化することができる。電極要素130A、130B、及び130Cは、基板105から異なる距離に配置することができる。1つ又はそれよりも多くの電極要素130A、130B、及び130Cを電気的に結合して電極要素の対を形成することができる。例えば、側面電極要素130A及び130Cは、互いに連結することができ、電極要素の対を形成する。好ましくは、形成された電極の対130A及び130Cは、第2の電極要素130Bから隔離されている。
【0048】
電極要素対130A及び130Cは、アルミニウム、クロム、金、又はその組合せのような導電材料で形成することができる。例示的な実施形態では、電極要素対130A及び130Cは、厚さが約1200オングストロームのアルミニウムと厚さが約300オングストロームのクロムとを含む。アルミニウムは、良好な導電性を提供することができ、クロムは、堆積中にアルミニウムに形成されたあらゆる酸化の平滑化を助けることができる。更に、電極要素対130A及び130Cは、第1の導電層110と同じ導電材料又は異なる導電材料を含むことができる。
【0049】
次の段階では、図3(d)に示すように、電極要素130A、130B、及び130Cの上に第2の薄膜層335を堆積させる。第2の薄膜層335は、製作のこの時点でcMUT薄膜層(第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された)の厚さを増加させ、cMUTの製作中に使用されたエッチング液から第2の導電層330を保護するのに役立つことができる。第2の薄膜層335はまた、第1の電極要素130Aの第2の電極要素130Bからの隔離を助けることができる。第2の薄膜層の厚さは、約6000オングストロームにすることができる。一部の実施形態では、第2の薄膜層335は、第2の薄膜層335が最適な幾何学的構成を有するように堆積及びパターン化技術を使用して調節される。好ましくは、第2の薄膜層335が所定の幾何学的構成に従って調節された状態で、犠牲層320はエッチングで除去され、図3(f)に示すように空洞150が残る。
【0050】
第1及び第2の薄膜層325及び335は、薄膜115を形成する。薄膜115は、外部圧力及び静電気力の刺激に応答して変動又は共振することができる。更に、薄膜115は、その弾性特性のために複数の振動モードを有することができる。これらの振動モードの位置は、本発明によるcMUTの設計及び製作の助けになる可能性がある。例えば、第1及び第2の導電層310及び330は、合成薄膜の振動モードに近接する電極又は電極要素にパターン化することができる。そのような電極又は電極要素の配置は、超音波エネルギの効率的な受信及び送信を可能にすることができる。更に、薄膜115に対する振動モードの位置は、薄膜115の質量分布を変えることによって調節及び制御することができる。
【0051】
エッチング液が犠牲層320まで到達することができるように、RIE工程を使用して、第1及び第2の薄膜層325及び335を通して開口340及び345をエッチングすることができる。図3(e)に示すように、犠牲層320までのアクセス経路は、第1及び第2の薄膜層325及び335をエッチングで除去することによって開口340及び345で形成することができる。アモルファスシリコン犠牲層320が使用される時には、シリコンに対するエッチング工程の選択性を知る必要がある。エッチング工程の選択性が低い場合、犠牲層320及び隔離層315を通して基板105まで簡単にエッチングすることができる。これが行われる場合、エッチング液が基板105を攻撃する可能性があり、cMUT素子を破壊する可能性がある。犠牲層と共に使用されるエッチング液に対して耐性がある金属で下部電極110が形成される時には、金属層がエッチング遅延剤として作用して基板105を保護することができる。当業者は、様々なエッチング液を熟知しており、エッチングされる材料にエッチング液を適合させることができるであろう。犠牲層320がエッチングされた後で、空洞350は、図3(f)に示すようにシール342及び347によって密封することができる。
【0052】
隔離層315と薄膜層325及び335との間に空洞350を形成することができる。空洞350はまた、下部電極110と第1の薄膜層325との間に配置することもできる。空洞350は、本発明の一部の好ましい実施形態による所定の高さを有するように形成することができる。空洞350により、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成されたcMUT薄膜115は、刺激に応答して変動及び共振することができる。犠牲層320をエッチングすることによって空洞350が形成された後に、第2の薄膜層335上にシーリング層(図示しない)を堆積させることによって空洞350を真空密封することができる。当業者は、空洞350にある一定の圧力を設定し、次にそれを密封して真空密封を形成する様々な方法を熟知しているであろう。
【0053】
シーリング層は、一般的に、空洞350の高さよりも厚さが厚い窒化珪素の層である。例示的な実施形態では、シーリング層の厚さは、約4500オングストロームであり、空洞350の高さは、約1500オングストロームである。代替的な実施形態では、第2の薄膜層335は、局所シーリング技術を使用して密封されるか又は所定の加圧条件下で密封される。第2の薄膜層335のシールは、液浸用途に対してcMUTを適応させることができる。シーリング層を堆積した後に、cMUT薄膜115が厚すぎて望ましい周波数で共振できない場合があるので、cMUT薄膜115の厚さは、シーリング層を再びエッチングすることによって調節することができる。シーリング層をエッチングするために、RIEのようなドライエッチング工程を使用することができる。
【0054】
次の段階では、第2の薄膜層335上に複数の質量負荷155及び160を堆積させることによってcMUTの薄膜の不均一な質量分布を達成することができる。複数の質量負荷155及び160は、第2の薄膜層335上の様々な場所に置くことができる。第2の薄膜層335上の複数の質量負荷155及び160は、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された薄膜115の振動モードに対応させることができる。複数の質量負荷155及び160はまた、第1及び第2の薄膜層325及び335によっていくつかの所定の区域に形成された薄膜の振動モードをシフト又は調節するために使用することができる。本発明の特徴は、関連の特定の振動モードを選択的に制御することを可能にする。これらの所定の区域は、電極要素130A、130B、130Cを超音波音響エネルギを送信及び受信するために使用することができるように、電極要素130A、130B、130Cの近くに配置することができる。代替的な実施形態では、第2の薄膜層335は、不均一な質量分布を有する薄膜を形成するために異なる厚みの領域を有するようにパターン化することができる。
【0055】
本発明のcMUT製作工程の最終段階は、電気接続性に対してcMUTを設けるものである。より詳細には、RIEエッチングを使用して、下部電極110上の隔離層315と電極要素130A、130B、130C上の第2の薄膜層335とを貫通してエッチングし、それらを接続のためにアクセス可能にすることができる。
付加的な結合パッドを形成して電極に接続することができる。結合剤パッドにより、ワイヤ結合を使用して上部及び下部電極110及び130に対して外部電気接続を行うことが可能になる。一部の実施形態では、結合剤パッド上に金を堆積してパターン化することができ、ワイヤ結合の信頼性を改善することができる。
【0056】
本発明の代替的な実施形態では、犠牲層320は、第1の薄膜層325を堆積させた後にエッチングすることができる。この代替的な実施形態は、犠牲層320のエッチング段階を実行して薄膜層325及び335によって形成された薄膜115を除去する前にcMUT100に時間を費やさない。上部電極130がまだ堆積されていないので、第2の薄膜層335にピンホールが発生して上部電極130がエッチング液によって破壊される危険性はない。
【0057】
図4は、本発明の好ましい実施形態により調和cMUT100を製作するための好ましい方法を説明する論理流れ図を示している。第1の段階は、基板を設ける段階に関わるものである105(405)。基板105は、不透明、半透明、又は透明を含む様々な構成のものとすることができる。例えば、基板150は、以下に限定されるものではないが、シリコン、ガラス、又はサファイアとすることができる。次に、基板105上に隔離層を堆積させて所定の厚さを有するようにパターン化する(410)。隔離層は任意的であり、一部の実施形態では利用しない場合がある。一部の実施形態では、接着層もまた使用することができ、隔離層が確実に基板105に結合され、又は下部電極110を基板105に適切に結合することができる。
【0058】
隔離層がパターン化された後に、隔離層上に第1の導電層110を堆積させて所定の形状にパターン化する(415)。代替的に、基板105のドープ表面、例えば、ドープされたシリコン基板表面は、第1の導電層110を形成することができる。第1の導電層110は、好ましくは、基板105上にcMUT100の下部電極110を形成する。第1の導電層110は、パターン化されて複数の電極要素を形成することができる。複数電極要素の少なくとも2つが互いに連結されて、電極要素の対を形成することができる。
【0059】
第1の導電層110が所定の形状にパターン化された状態で、第1の導電層110上に犠牲層320を堆積させることができる(420)。犠牲層320は、選択的な堆積とパターン化によってそれが所定の厚さを有するようにパターン化することができる。次に、犠牲層320上に第1の薄膜層325を堆積させることができる(425)。
堆積された第1の薄膜層325は、次に、所定の厚さを有するようにパターン化され、第2の導電層130を次に第1の薄膜層325上に堆積させる(430)。第2の導電層130は、好ましくは、cMUT100の上部電極130を形成する。第2の導電層130は、パターン化されて複数の電極要素130A、130B、130Cを形成することができる。複数の電極要素130A、130B、130Cの少なくとも2つは、互い連結されて電極要素対を形成する。第2の導電層130が所定の形状にパターン化された後に、パターン化された第2の導電層130上に第2の薄膜層335を堆積させる(435)。第2の薄膜層335もまた、最適な幾何学的構成を有するようにパターン化することができる。
【0060】
第1及び第2の薄膜層325及び335は、第2の導電層130をカプセル封入することができ、第1及び第2の薄膜層325及び335の弾性特性によってそれを第1の導電層110に対して移動させることを可能にする。第2の薄膜層335がパターン化された後に、犠牲層320がエッチングによって除去され、第1及び第2の導電層110及び130の間に空洞150を形成する(435)。第1及び第2の薄膜層325及び335の下部に形成された空洞150は、第1及び第2の薄膜層325及び335を共振させて基板105に対して移動させるための空間を提供する。次の段階で、第2の薄膜層335上にシーリング層を堆積することによって第2の薄膜層335が密封される(435)。
【0061】
最終の段階(440)では、第2の薄膜層335上に質量負荷を形成することができる。複数の質量負荷はまた、第2の薄膜層335上に形成することができ、それらは、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された薄膜115の振動モードに対応する第2の薄膜層335上の点に置くことができる。質量負荷は、好ましくは金のような高密度で可鍛性の材料で形成される。質量負荷は、薄膜層115が変動する厚みの領域を有するように薄膜層115の質量分布を変えるのを助けることができる。代替的な実施形態では、薄膜層115は、変動する厚み又は密度を有するようにパターン化することができる。
本発明の実施形態はまた、cMUT撮像システムのcMUTアレイを形成するために利用することができる。当業者は、図5及び6に示すcMUT撮像アレイが単に例示的であり、他の撮像アレイも本発明の実施形態に従って達成可能であることを認識するであろう。
【0062】
図5は、基板上にリング−環状アレイに形成されたcMUT撮像アレイ素子を示している。図示のように、素子500は、基板505とcMUTアレイ510及び515とを含む。基板505は、好ましくは円盤形状であり、素子500は、前向きcMUT撮像アレイとして利用することができる。素子500は、2つのcMUTアレイ510及び515と共に示されているが、他の実施形態は、1つ又はそれよりも多くのcMUTアレイを有することができる。1つのcMUTアレイが利用される場合、それは、基板505の外周の近くに配置することができる。複数のcMUTアレイが利用される場合、それらは、環状cMUTアレイが共通の中心点を有するように同心状に形成することができる。一部の実施形態はまた、本発明の一部の実施形態による異なる幾何学的構成のcMUTアレイを利用することができる。
【0063】
図6は、基板上の側方に向いたアレイに形成されたcMUT撮像アレイシステムを示している。図示のように、素子600は、基板605とcMUTアレイ610及び615とを含む。基板605は、円筒形状とすることができ、cMUTアレイは、基板605の外面に連結することができる。cMUTアレイ610及び615は、インターデジタル的に配置されて側方に向いたcMUT撮像アレイのために使用されるcMUT素子を含むことができる。素子600の一部の実施形態は、円筒形状基板600の外面上に離間した関係で1つ又は複数のcMUT撮像アレイ610及び615を含むことができる。
【0064】
本発明はまた、cMUT薄膜の振動モードの位置を判断し、かつ質量負荷を判断してcMUT薄膜の振動モードを調節するためにcMUT100又はcMUTアレイの解析を意図している。便宜上、以下に説明するcMUTの構成要素は、図7に関連している。しかし、構成要素の特定の機能又は構成要素の特定の配置及びサイズの説明は、図7の範囲を制限するように意図しておらず、制限としてではなく例示としてのみ提供する。
【0065】
cMUTを解析するための手法は、水のような流体中でのcMUT薄膜の運動を模擬することである。例えば、cMUT薄膜の運動を模擬するために「ANSIS(登録商標)」ツールのような有限要素解析ツールを使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜は、約40μmの幅と約0.6μmの厚みを有することができる。代替的に、他の寸法を使用することもできる。薄膜は、長くて矩形にすることができるので、1−D解析を使用することができる。他のシミュレーションは、2−D又は3−Dのような他の次元解析パラメータを使用することができる。
【0066】
cMUTの静電作用を模擬するために、薄膜に1kPa(キロパスカル)の均一な圧力を加えることができる。薄膜の得られる振動プロフィールを次に計算することができる。図7は、周波数を関数とする薄膜にわたる平均速度700を示している。図に示すように、スペクトル705は、約8MHzと約24MHzでヌルになる710及び715以外は、2−30MHzの領域で比較的平坦である。薄膜の振動プロフィールを更に理解するために、図8に示すように薄膜にわたる最大速度を計算してプロットすることができる。図8では、薄膜の速度は、5つのピーク805A、805B、805C、805D、805Eを有することができる。薄膜の局所ピーク速度は、平均速度よりも一桁大きな値を超える可能性がある。
【0067】
薄膜変位プロフィールがピークの発生する周波数付近でプロットされると、薄膜がその第3及び第5共振近くに移動する周波数で平均速度がヌルになる。図9A−Cは、0.8MHzと8MHzにおける薄膜にわたる振動プロフィールを示している。これらの周波数は、薄膜の第1と第3の振動モードに対応している。cMUTは、8MHz付近で顕著な圧力の出力を全く発生しないが、薄膜は、加えられた圧力に応答して大きな振幅で局所的に振動する。従って、特定のモードがピーク速度を有する薄膜の部分にわたって局所的な電極を置くことにより、ある一定の周波数範囲付近で大きな出力信号を発生させることができる。更に、特定の振動モードの位置を選択的に配置することにより、強化された応答がどこで発生するかを判断することができる。
【0068】
本発明はまた、関連の特定の薄膜振動モードの周波数を選択的に制御することにより、cMUTの設計に対してより高次の振動モードを利用することができる。例えば、薄膜上の所定の位置に質量負荷を配置することによってこれを達成することができる。薄膜の質量分布は、均一な薄膜上に質量負荷を堆積させてパターン化し、不均一な質量分布の薄膜をもたらすことによって変えることができる。例えば、第3の振動モードが目標にされて、ピーク歪みエネルギ(すなわち、ピーク)を有する薄膜の領域に質量負荷が集中される。
【0069】
質量負荷は、その高い密度と低い剛性のために金が好ましい。金は、約1マイクロメートルの厚みと約2マイクロメートルの幅を有するように構成することができる。図10A−Bに示すように、質量負荷は、ピーク変位の位置1015及び1020に置くことができる。図10A−Bに示すように、質量負荷をピーク変位の位置1015及び1020に置くことにより、第3の振動モード周波数を約8MHz(1105を参照されたい)から約6.5MHz(1110を参照されたい)にシフトすることができる(図11)。薄膜に対する第3の振動モード周波数のシフトは、第2及び第4の振動モードのような薄膜の周囲の振動モードに著しい影響を与えないで行うことができる。
【0070】
上述の質量負荷手法の一例として、図11に示すように、cMUTスペクトルの約8MHzで発生するヌルを低減するように薄膜を設計することができる。薄膜には、第3の振動モードに対応するように置かれた異なる質量負荷を負荷することができる。質量負荷の幅と厚みを約1マイクロメートルにすることができ、又は厚みを約1マイクロメートルで幅を約2マイクロメートルにすることができる。図11に示すように、質量負荷を薄膜に沿って置くことにより薄膜の平均速度が調節される。
【0071】
図11は、約8MHzで発生するヌル1110が減少することを示している。従って、薄膜の形状と厚みを強化することにより、薄膜の周波数応答を最小にすることができる。図11によって更に示すように、質量負荷は、大部分のスペクトルに対する薄膜の平均速度に大きく影響を及ぼさず、それは、薄膜の質量負荷がcMUTの全体効率を低下させないことを証明するものである。cMUTの得られる周波数スペクトルは、薄膜に沿って付加的な質量負荷を連続して置くことにより更に成形することができる。
【0072】
本発明によって意図された高次振動モード制御を備えたcMUTを利用する好ましい用途は、高調波イメージングである。cMUT周波数スペクトルのピークの位置を変えるために質量負荷が使用されるので、望ましい周波数範囲で受信される信号を改良することができる。更に、上述のように、cMUT電極を複数要素にパターン化することにより、複数要素に対して局所的な振動を選択的に検出することができる。例えば、幅が約10マイクロメートルの側面電極要素と幅が約15マイクロメートルの中心電極要素とを有する二重電極要素構造のcMUTは、異なる振動モードの位置で発生する振動を選択的に検出するのに使用することができる。
【0073】
図12は、調和cMUTの推定送信及び受信スペクトルを示している。中心及び側面要素の両方を超音波エネルギの送信に使用することができ、側面要素だけを超音波エネルギの受信に使用することができる。図12が示すように、調和cMUTは、約4MHzの基本周波数の送信に適する広帯域送信スペクトル1205を有することができる。更に、受信信号1210のスペクトルは、高調波信号が約8MHzであることを示し、送信されたスペクトルに対してほぼ15dBだけ増幅される。高調波信号がより多くの減衰を受けるので、本発明は、受信及び送信周波数スペクトルが強化された改良されたcMUT設計を提供する。
【0074】
図13Aと13Bは、本発明の好ましい実施形態による非対称の薄膜1315と電極要素1330とを備えたcMUT1300を示している。図13に示すように、cMUT1300は、一般的に、基板1305、薄膜1315、及び電極要素1330を含む。図13Bに示すように、薄膜1315は伸長され、電極要素1330は、それが基板1305の上方に吊り下げられるように薄膜1315内に配置することができる。
【0075】
薄膜1315は、単一の薄膜1315内で複数の薄膜特性を達成するために複数の幅を有するように構成することができる。cMUT1300の様々な要素の幅が図13Aに示されており、一方で要素の厚みが図13Bに示されていることが分るであろう。例えば、薄膜1315は、一般的に台形形状に構成され、第1の端部1320での薄膜1315の幅は、第2の端部1325での薄膜1315の幅よりも小さい。図13Bでは薄膜1315の厚みが均一で対称に見えるが、そのように均一で対称である必要はないことが分るであろう。好ましい実施形態では、薄膜1315の形状は、二等分線1350に関して非対称である。一部の実施形態では、二等分線は、二等分側線1350とすることができる。二等分側線1350は、図13Aに示すように、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340の間の中間点の位置の境界を定めることができる。二等分側線1350はまた、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340の間で他の位置の境界を定めることもできる。
【0076】
薄膜1315は、薄膜1315の長さに沿って幅が変動するためにその長さに沿って不均一な撓み特性を呈する。均一な物質性を仮定すると、幅がより大きな薄膜1315の部分は、幅がより小さな薄膜1315の部分よりも簡単に撓むことになる。薄膜1315の撓み特性は、薄膜1315の長さ、幅、及び厚みばかりでなく、薄膜を製作するために使用される材料によって影響される。均一な物質性を仮定すると、薄膜1315の各異なる部分は、異なる基本周波数で振動する。従って、薄膜1315の長さに沿って幅を変動させることにより、薄膜1315は、超広帯域信号を送信及び受信することができる。
【0077】
薄膜1315の不均一な撓み特性のために、薄膜1330に対して不均一な容量性の力を与えるようになった電極要素1330を使用することが望ましい場合がある。標準の対称な電極が使用される場合、薄膜1315の各部分に対して均一な力が加えられる。従って、薄膜1315の第1の部分は、崩壊するように駆動することができ、一方で薄膜1315の別の部分は、崩壊させることができない。本発明の好ましい実施形態では、不均一な電極要素1330が使用されて電極要素1330の長さに沿って薄膜1315に不均一な力が加えられ、それによって薄膜1315にわたって実質的に等しい量を撓ませる。そのような実施形態では、薄膜1315の複数の部分、又は薄膜1315の大部分でさえも同時に崩壊するように駆動することができる。
【0078】
図13は、非対称電極要素1330を有するcMUT1300を示している。図13Bでは、電極要素1330の厚みが均一で対称に見えるが、そのように均一で対称である必要はないことが分るであろう。cMUTの電極要素1330は、電極要素1330の電気的感度が薄膜1315の長さに沿って均一になるように適切に成形することができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜の全ての部分は、単一のDCバイアスレベルにおける対応する崩壊電圧の約90−95%までバイアスされることが望ましい。また、電極要素1330は、送信時に薄膜1315が対称に励振されるように、かつ対称振動モードが好ましく検出されるように置くことができる。
【0079】
電極要素1330は、薄膜1315に複数の力を加えるために複数の幅を含むように構成することができる。例えば、電極要素1330は、第1の端部1335における電極要素1330の幅が第2の端部1340における電極要素1330の幅とは異なるように、ほぼ台形形状に構成することができる。好ましい実施形態では、薄膜1315の形状は、二等分線1350に関して非対称である。二等分線1350は、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340との中間点の位置の境界を定めることができる二等分側線1350とすることができる。代替的に、この二等分側線は、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340との間で他の位置の境界を定めることができる。薄膜1315の二等分側線は、図13Aには電極要素1330の二等分側線と同等に示されているが、そのように同等である必要はない。
【0080】
図13Aに示すように、薄膜1315と電極要素1330は、それらの幅が反比例して変化するように配向することができる。例えば、電極要素1330の第1の端部1335は、薄膜1315の第1の端部1320に対応することができる。同様に、薄膜1315の第2の端部1325は、電極要素1330の第2の端部1340に対応することができる。代替的な実施形態では、薄膜1315と電極要素1330は、他の配置に配向することができ、他の因子が、薄膜1315と電極要素1330の向きに影響を及ぼす場合がある。例えば、電極要素1330の形状と向きは、薄膜1315の厚みに依存する可能性がある。
【0081】
好ましい実施形態では、薄膜1315の第2の端部1325は、約20マイクロメートル幅とすることができ、この薄膜は、約0.8マイクロメートル厚みとすることができ、窒化珪素で作ることができる。電極要素1330は、約0.16マイクロメートル厚みのアルミニウムで作ることができる。電極要素1330は、一般的に、窒化珪素薄膜1315の中心に配置することができる。約0.16マイクロメートルの間隙1314が、基板1305に近接する下部電極から薄膜1315を分離する場合、電極要素1330の第2の端部1340が約10マイクロメートル幅の場合には、薄膜1315は、約138V付近のDCバイアスで崩壊することになる。更に、薄膜1315の第1の端部1320が、約12マイクロメートル幅の場合には、電極要素の第1の端部1335は、約7.8マイクロメートル幅になり、約138ボルトの崩壊電圧を有することができる。これらの寸法を用いて、電極要素1330に単一のDCバイアスを適用することにより、大部分の薄膜1315を駆動して実質的に同時に崩壊させることができる。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、薄膜1315のアスペクト比(平均長さ/平均幅)は、約2よりも大きい。そのような実施形態では、薄膜1315の動力学、すなわち共振は、幅寸法によって支配されることになる。長さ寸法にわたって薄膜1315の幅を変えることにより、異なる区域の反共振、すなわち、断面上の平均薄膜速度がほぼゼロになる周波数は、比較的狭い周波数範囲にわたって分布されることになり、そのために周波数応答の全体的均一性の中心を望ましいレベルに置くことができる。この手法は、cMUTの第1のモード付近に幅広いピークを有することによって周波数範囲を広げることを目的とするものではない。むしろ、より平滑な移行により、第1、第2、及び第3のモードによるピークを埋めることによって超広帯域幅が達成される。
【0083】
図14は、本発明の好ましい実施形態によるcMUTアレイ要素のパルスエコースペクトルの概略グラフを示している。第1の帯域1405は、実質的に薄膜1315の第1の振動モードに対応し、均一なピストン運動に非常に似ている。第2の帯域1410は、実質的に薄膜1315の第2の対称モードに対応し、薄膜にわたって正味の平均粒子速度を有する。薄膜1315の理想的な反共振モードは、送信中に励振されず、図16に示すように、薄膜1315と電極要素1330は、実質的に均一であり、cMUTの様々な断面の中心軸付近で対称であると仮定されている。また、受信モードでは、薄膜の変位が反対称の時には、均一な入射圧力波は、典型的に正味の平均変位を発生することにはならない。本発明の多くの用途では、薄膜1315が水のような媒体中に浸漬されるので、モード形状は、真空中の同じ薄膜と正確に同じにならないであろうが、異なる解析と実験技術を通して得ることができる。
【0084】
図14に示すように、帯域1405及び1410は、2つ又はそれよりも多くの異なる周波数範囲で超音波撮像をするために別々に使用することができる。例えば、第1のモードは、約12MHzでの撮像を実行するために使用することができ、第2のモードは、約40MHzでの撮像を実行するために使用することができる。この作動の手法は、一般的に、同じcMUTアレイが2つの異なる周波数範囲での撮像に使用される用途において使用される。更に、これらのモード付近の位置と帯域幅は、cMUT薄膜1315の製作中に微小機械加工技術を使用して調節することができる。
【0085】
多くの用途に対して、非常に広い周波数にわたって感度の良い変換器が望ましい。更に、変換器の感度を6dB帯域で均一にする必要はない。一部の用途では、図15に示すように、関連の周波数範囲にわたって変動がある一定の限界、すなわち12dBよりも低いことが好ましい。制限された感度を補償し、超広帯域イメージング、符号化された励振を使用する高調波イメージング、又は造影剤を使用する高調波イメージングに対する信号を処理するために、電子及びデジタル濾過技術を使用することができる。図14に示されているcMUT周波数応答は、液浸薄膜の反共振による深いヌルのためにこれらの用途に対して好ましくはない。cMUTアレイ要素を構成する全ての薄膜の幾何学形状が均一なので、これらのヌルは非常に良好に定義される。この問題は、cMUT薄膜を製作するための微小機械加工技術を利用することによって対処することができる。
【0086】
図15は、3つの周波数応答1510、1515、1520の組合せによって達成することができる結合周波数応答1505を示している。一般的に、望ましい結果を達成するためには、薄膜の長さにわたって極めて僅かな(1−10%)幅の変動が適している。他の用途に対しては、より厳密な幅の変動が好ましい。これらの周波数応答は、図16に示されているcMUT薄膜に沿ったある一定の領域に対応するものである。
図16は、図15に示す周波数応答に対応する周波数応答を生成するためのcMUT薄膜と対応する領域の上面図である。図示のように、領域1610は、周波数応答1510を生成し、領域1615は、周波数応答1515を生成し、領域1620は、周波数応答520を生成する。
【0087】
図17は、各々台形薄膜である複数のcMUTを示している。複数のcMUTは、本発明の好ましい実施形態に従って配置されている。図17に示すように、複数のcMUT1710、1715、1720、1725、1730、1735、1740、及び1745は、単一基板1705上に配置することができる。cMUT1710、1715、1720、1725、1730、1735、1740、及び1745は、各々薄膜(Aで示される)と電極要素(Bで示される)とを有する。例えば、cMUT1720は、薄膜1720Aと電極要素720Bとを有する。変換器アレイ要素にわたる活性(振動する)表面積を最大にするために、この及び類似の構成を使用することができる。更に、電極要素を連結することにより、この複数のcMUTの多重cMUTを電気的に結合し、cMUT又はcMUT要素アレイを形成することができる。
図17に示すように、cMUTは、薄膜の広い端部が別の薄膜の狭い端部と近接するように、薄膜が方向を交替するように基板1705上に配向することができる。例えば、薄膜1740Bの幅の広い方の端部は、薄膜1745Bの短い方の幅の端部に近接して配置される。そのような配向は、非対称特性を有する複数のcMUTを単一基板1705上に配置することを可能にする。
【0088】
本発明の代替的な実施形態では、厚み寸法における薄膜の幾何学形状を変えることにより、周波数帯域の類似の周波数均衡化と中心周波数調節とを達成することができる。図18Aは、本発明の好ましい実施形態により成形された質量負荷を有するcMUT1800の上面図である。cMUT1800は、一般的に、基板1805、薄膜1810、及び電極1825を含む。更に、cMUT1800は、図18B及び18Cに示すように、薄膜1810によって形成された空洞1809を含むことができる。電極1825は、薄膜1810内に配置することができ、図18Aで破線のボックスとして示されている。薄膜1810は、第1の端部1810Aと第2の端部1810Bとを有することができる。第1の端部1810Aは、第2の端部1810Bよりも広い幅を有することができる。
【0089】
cMUT1800はまた、質量負荷1815及び1820を含むことができる。質量負荷1815及び1820は、それらの長さにわたって変動する幅を有することができる。例えば、質量負荷1815は、第1の端部1810Aと第2の端部1810Bとを有することができ、第1の端部1810Aは、第2の端部1810Bよりも広い幅を有することができる。同様に、質量負荷1820は、第1の端部1820Aと第2の端部1820Bとを有することができ、第1の端部1820Aは、第2の端部1820Bよりも広い幅を有することができる。質量負荷1815及び1820は、薄膜1810の一部分にすることができ、又は薄膜1810に近接して配置することができる。
【0090】
図18Bと18Cは、cMUT1800の断面図であり、線A−AとB−Bに沿った質量負荷の様々な幅を示している。図18Bと18Cの質量負荷1815及び1820の幅を比較して明らかなように、質量負荷1815及び1820の幅は、図18Cよりも図18Bの幅の方が広い。
薄膜1810の端部1810A及び1810Bを成形することにより、薄膜1810のモードの中心の周波数を望ましい位置まで移動させることができる。薄膜1810の振動モードを高調波のような望ましい中心周波数に配置するために質量負荷1820及び1825を使用することもできる。更に、質量負荷1820及び1825の幅をその長さ寸法にわたって変えることにより、周波数応答を台形薄膜のそれと類似にすることができる。薄膜1810の第1及びそれよりも高いモードの振動形状は、薄膜1810上の質量分布によって制御することができる。更に、電極要素1825の位置は、特定モードに対する信号の受信を最大にするように最適化することができる。
【0091】
図19Aと19Bは、均一なcMUT薄膜(図19A)とマルチモード最適化cMUT薄膜(図19B)の断面図である。更に、これらの図は、cMUTに対応するサンプル振動モード図を示している。図19Aに示すように、第1モード変位プロフィール1950と第2モード変位プロフィール1955は、図19Aに示す均一なcMUT薄膜に対応している。また、図19Bに示すように、第1モード変位プロフィール1950と第2モード変位プロフィール1955は、図19Bに示すマルチモード最適化cMUT薄膜に対応している。
【0092】
変位プロフィール1955及び1855は、質量負荷1815及び1820を有する最適化cMUT薄膜1810(図19B)が、薄膜1910(図19A)の第2モード変位プロフィール1955と比較して改良された第2モード変位プロフィールを有することを示している。第2モードに対するモード変位が電極要素1825に対応して信号の受信及び送信の強化を可能にするので、変位プロフィールは強化される。
例示的な実施形態を特に参照して本発明の様々な実施形態を詳細に説明したが、当業者は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内で変形及び修正を行うことができることを理解するであろう。従って、本発明の様々な実施形態の範囲は、上述の実施形態に制限されるべきではなく、特許請求の範囲及び全ての適用可能な均等物によってのみ規定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTの断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTのサンプルパルスエコー周波数スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示す図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示す論理流れ図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態によるリング環状アレイに形成された複数の調和cMUTを含むcMUT撮像アレイシステムを示す図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による側方に向いたアレイに形成された複数の調和cMUTを含むcMUT撮像アレイシステムを示す図である。
【図7】図7に示すcMUTの表面にわたって周波数の関数として計算された平均速度を示すグラフを示す線図である。
【図8】図1に示すcMUT薄膜の表面にわたって周波数の関数として計算されたピーク速度振幅を示すグラフである。
【図9A】約0.8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールを示す線図である。
【図9B】約8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールのマグニチュードを示す線図である。
【図9C】約8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールの位相を示す線図である。
【図10A】第3のモードで振動しているcMUT薄膜の断面を示す線図である。
【図10B】cMUT薄膜に沿って位置決めされた質量負荷の断面を示す線図である。
【図11】質量負荷が負荷された場合と負荷されない場合の図1に示すcMUT薄膜に対する平均速度の比較を示す線図である。
【図12】調和cMUTに対する送信及び受信電極要素に対応するサンプル計算平均速度の線図である。
【図13A】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの上面図である。
【図13B】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの断面図である。
【図14】異なる周波数帯域にわたる超音波撮像に対して変換器のいくつかの振動モードが別々に使用される非対称特性を有するcMUTに対する概略パルスエコー周波数スペクトル図である。
【図15】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTのサンプルパルスエコー周波数スペクトル応答図である。
【図16】図15の応答図に対応する周波数応答を有するcMUT薄膜の断面を示す本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの上面図である。
【図17】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有する複数のcMUTで構成されたcMUTアレイ要素を示す図である。
【図18A】本発明の好ましい実施形態による非対称な不均一質量分布の薄膜を有するcMUTを示す図である。
【図18B】線A−Aに沿った図18AのcMUTの断面図である。
【図18C】線B−Bに沿った図18AのcMUTの断面図である。
【図19A】均一なcMUTの断面図と均一なcMUTに対するサンプルマルチモード変位図である。
【図19B】本発明による非対称特性を有するcMUTの断面図と非対称特性を有するcMUTに対するサンプルマルチモード変位図である。
【符号の説明】
【0094】
1300 cMUT
1305 基板
1315 薄膜
1330 電極要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にチップの製作に関し、より詳細には、非対称薄膜容量性微小機械加工超音波変換器(cMUT)及びcMUT撮像アレイの製作に関する。
関連出願への相互参照及び優先権請求
本出願は、2004年3月11日出願の米国特許仮出願出願番号第60/552,082号の恩典を請求するものである。本出願はまた、共に2005年2月28日出願で「高調波CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月27日出願の米国特許仮出願出願番号第60/548,192号の恩典を主張する、米国特許出願出願番号第11/・・・、・・・号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/・・・・・・に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願であり、本出願はまた、共に2005年2月28日出願で「多要素電極CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月27日出願の米国特許仮出願第60/548,193号及び2004年9月16日出願の米国特許仮出願第60/611,049号の恩典を主張する、米国特許出願出願番号第11/・・・、・・・号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/・・・・・・に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願であり、本出願はまた、共に2005年2月7日出願で「CMUT素子及び製作方法」という名称であり、かつ共に2004年2月6日出願の米国特許仮出願第60/542,378号の恩典を主張する、米国特許出願第11/053,672号及びPCT特許出願出願番号PCT/US2005/003898に対する優先権を主張し、かつそれらの一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
容量性微小機械加工超音波変換器は、一般的に機械的及び電子的構成要素を非常に小さなパッケージに組み合わせるものである。機械的及び電子的構成要素は、互いに作動して機械的エネルギを電気的エネルギに又はその反対に変換する。cMUTは、典型的に非常に小さく、機械的及び電気的部分の両方を有するので、それらは、一般的に微小電気機械システム(MEMS)素子と呼ばれる。cMUTは、サイズが極めて小さいために、医療用装置技術を含む多くの異なる技術分野の多数の用途に使用することができる。
【0003】
医療用装置の領域内でのcMUTに対する1つの用途は、軟部組織イメージングである。組織高調波イメージングは、それが撮像組織に関する独特の情報を提供するので医療用超音波イメージングで重要になっている。高調波イメージングでは、送信中に撮像アレイから組織に中心周波数(f0)で超音波エネルギが送信される。この超音波エネルギは、特に高い振幅レベルでは非線形的に組織と相互作用し、例えば、2f0、3f0、4f0のような入力周波数のより高い高調波で超音波エネルギが発生する。これらの高調波信号は、次に撮像アレイによって受信されて画像が形成される。帰還信号を受信するために、撮像アレイ内の超音波変換器は、好ましくは、超広帯域信号を受信する感受性を有するであろう。
【0004】
従来の超音波変換器は、このような方法で実行することはできない。例えば、圧電変換器は、これらの変換器が基本周波数(f0)とその奇数高調波(3f0、5f0など)でのみ効率的である傾向を有するために、高調波イメージング用途に対して適していない。圧電変換器の奇数の高調波の効率を補償するために、変換器は、典型的には減衰され、いくつかのマッチング層が使用されて広帯域(〜90%部分帯域幅)変換器を作り出す。しかし、この手法は、バッキング及びマッチング層のためにかなりのエネルギが失われるので感度と帯域幅の間に交換条件を必要とする。更に、従来の圧電変換器と製作方法は、素子製作業者が従来の圧電変換器の振動高調波を制御又は調節することを可能にしない。
【0005】
従来のcMUTはまた、一般的に、組織の高調波イメージングに対して構成されていない。例えば、従来のcMUTは、cMUT薄膜の複数の振動モードに適応されておらず、かつそれらを利用しない。むしろ、従来の圧電変換器のような従来のcMUTは、cMUT薄膜の第1の振動モードを利用しただけの実質的に均一な円形形状又は矩形形状の薄膜を有する。更に、従来のcMUT及び製作方法は、調節可能な振動モード又は制御可能な振動高調波を有することができるcMUTを提供しない。従来のcMUT形式の設計により、合理的なSN比を有するためには90%部分帯域幅が通常望ましい。しかし、この部分帯域幅は、医療用イメージング用途に対するcMUT薄膜の複数の振動次数の使用を排除する。より詳細には、従来のcMUT設計は、広い帯域幅にわたってより高い感度を達成するように最適化されず、又はcMUT薄膜の複数の振動モードを利用するようになっていない。
【0006】
従って、組織高調波イメージング用途に対してcMUT素子の性能を増大及び強化する強化薄膜を有するcMUTの製作を可能にするcMUT製作方法に対する必要性が当業技術に存在する。
更に、cMUT素子性能を増大及び強化するために薄膜の複数の振動モードと複数の振動高調波とを利用するcMUTを製作する方法に対する必要性が当業技術に存在する。
更に、cMUT薄膜に対する異なる振動モードに関連する周波数を使用して超音波エネルギを受信及び送信することができるCMUT素子に対する必要性が当業技術に存在する。
本発明の実施形態は、そのようなcMUTの製作とcMUT撮像アレイの製作を提供することに主として関連している。
【0007】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/552,082号
【特許文献2】米国特許仮出願出願番号第60/548,192号
【特許文献3】米国特許仮出願第60/548,193号
【特許文献4】米国特許仮出願第60/611,049号
【特許文献5】米国特許仮出願第60/542,378号
【特許文献6】米国特許出願第11/053,672号
【特許文献7】PCT特許出願出願番号PCT/US2005/003898
【発明の開示】
【0008】
本発明は、可変幅薄膜cMUTアレイ変換器の製作方法及びシステムを含む。本発明はまた、可変幅電極要素を備えたcMUTを含む。本発明は、医療用撮像用途に特に有用とすることができる超音波エネルギ又は波の送信及び受信を最適化するための強化された薄膜及び多要素電極を有する撮像用途に対するcMUTを提供する。本発明のcMUTは、所定の周波数を受信するようになった不均一な質量分布の薄膜を有することができる。本発明はまた、調和的に関連付けられた振動モードを有するように適応させることができる薄膜を有するcMUTを提供する。更に、本発明は、cMUT薄膜の振動高調波を調節して作動周波数と関連の高調波とに対応させることができるように製作することが可能な薄膜を有するcMUTを提供する。更に、本発明は、cMUT薄膜が撮像媒体中に浸漬された時に、電極をcMUT薄膜の複数の振動モードのピーク近くに配置して製作することが可能なcMUTを提供する。
cMUTは、素子の寄生キャパシタンスを低下させて、従って電気的性能を改善して光学検出法の使用を可能にするために、以下に限定されるものではないが、シリコン、水晶、又はサファイアのような誘電性又は透明な基板上に製作することができる。更に、本発明の好ましい実施形態により構成されたcMUTは、血管内カテーテル及び超音波撮像のような液浸用途で使用することができる。
【0009】
本発明は、好ましくは、薄膜と薄膜の振動モードを調節するための薄膜周波数調節器とを有するcMUTを含む。薄膜周波数調節器は、薄膜の少なくとも2つの振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜の調節を可能にする。薄膜周波数調節器は、その長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有する薄膜を含むことができる。質量の不均一性は、いくつかの方法、例えば、薄膜の厚みを変えることにより、薄膜の密度を変えることにより、又は例えば薄膜にその薄膜に近接して質量負荷を設けることによって提供することができる。質量負荷は、その長さに沿って質量の不均一性を提供する単一の質量源とすることができ、又は薄膜に沿って様々な場所に配置された複数の別々の質量負荷要素とすることができる。
【0010】
cMUTは、cMUTの電極要素である質量負荷を含むことができる。好ましい質量負荷は金である。
複数の質量負荷要素は、薄膜の周波数応答を修正する。薄膜は、複数の振動モードを有することができ、薄膜の周波数調節器は、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜を適応させることができる。薄膜は、基本周波数で振動するように適応させることができ、薄膜周波数調節器は、実質的に基本周波数の2倍に等しい周波数で振動するように薄膜を調節することができる。
【0011】
本発明は、薄膜を設ける段階、薄膜の目標振動周波数を判断する段階、及び薄膜の目標振動周波数を誘導するために薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って薄膜の質量分布を変更する段階を含む、cMUTの振動モードを制御する方法を更に含むことができる。好ましい実施形態では、薄膜の目標振動周波数は、薄膜の基本周波数の実質的に2倍である。薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って薄膜の質量分布を変更する段階は、薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って様々な厚みを有する薄膜を設ける段階、又は薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って様々な密度を有する薄膜を設ける段階を含むことができる。好ましくは、薄膜は、第1の振動モードと第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有し、薄膜は、第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第2の振動モードで超音波エネルギを受信するようになっている。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によるcMUTの製作方法は、薄膜を設ける段階、及び所定の周波数でエネルギを受信するために不均一な質量分布を有するように薄膜を構成する段階を含む。不均一な質量分布を有するように薄膜を構成する段階は、薄膜に近接して複数の質量負荷を設ける段階を含むことができる。第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように薄膜を適応させる更に別の段階を提供することができる。更に、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜を適応させることができ、薄膜の振動モードに近接して電極要素を位置決めする更に別の段階を付加することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、薄膜と薄膜に近接した質量負荷とを含む。質量負荷は、所定の周波数でエネルギを受信するように薄膜を適応させることができる。更に、薄膜がその長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有するように薄膜上に複数の質量負荷を配置することができる。質量負荷は、薄膜の一部か、薄膜に近接するか、又は薄膜に沿って位置決めすることができる。質量負荷は、薄膜とは異なる材料にすることができる。薄膜は、薄膜の振動モードが調和的に関連付けられるように薄膜の質量を分布させるために、質量負荷を使用して厚みが異なる領域を有するように形成することができる。代替的に、薄膜の不均一な質量分布の一部分は、様々な厚みの領域を有するように薄膜をパターン化することによって形成することができる。調和cMUTはまた、薄膜によって形成された空洞、薄膜に近接した第1の電極、及び基板に近接した第2の電極を含むことができる。空洞は、第1の電極と第2の電極の間に配置することができる。第1の電極と第2の電極は、複数の要素を有するように構成することができる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、cMUTを製作する方法は、基板に近接して薄膜を設ける段階、及び薄膜をその長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有するように構成する段階を含むことができる。cMUTを製作する方法はまた、第1の導電層に近接して犠牲層を設ける段階、犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階、第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階、及び犠牲層を除去する段階を含むことができる。第1及び第2の薄膜層は、薄膜を形成することができる。cMUTの製作方法はまた、薄膜の振動モードの周波数及び形状をシフトする段階、及び受信状態で超音波エネルギを受信して送信状態で超音波エネルギを送信するように作動するように薄膜を適応させる段階を含むことができる。
【0015】
更に別の好ましい実施形態では、調和cMUTを制御する方法は、薄膜の振動モードを判断する段階、及び所定の周波数に対応する薄膜振動モードを誘導するために1つ又はそれよりも多くの質量負荷を薄膜上に位置決めする段階を含むことができる。調和cMUTは、薄膜に近接した上部電極、基板に近接した下部電極、及び薄膜と下部電極の間の空洞を有することができる。調和cMUTを制御する方法はまた、薄膜の振動モードに対応するように第1の電極要素を位置決めする段階を含むことができる。第1の電極要素は、上部電極及び/又は下部電極の一部とすることができる。所定の周波数は、薄膜の基本周波数の実質的に2倍とすることができる。薄膜は、第1の振動モードと、第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有することができる。薄膜は、第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように適応させることができる。
【0016】
更に別の好ましい実施形態では、cMUTは、第1の端部と第2の端部とを有する薄膜を含むことができ、薄膜は、二等分側線に関して実質的に非対称とすることができる。二等分側線は、薄膜の端部間の中間の位置の境界を定めることができる。薄膜の端部は、異なる幅を有することができ、一端での薄膜の幅は、好ましくは他端での薄膜の幅よりも大きい。詳細説明と図を精査すれば、本明細書で使用される「幅」寸法が「厚み」と異なることは明確に理解されるであろう。薄膜は、第1の崩壊力と、第1の端部に近接した第1の点で薄膜を崩壊状態まで駆動するのに必要な力として定義された薄膜の特性と、第2の端部に近接した第2の点で薄膜を崩壊状態まで駆動するのに必要な力としての薄膜の特性として同様に定義された第2の崩壊とを具現することができる。第1の崩壊力は、好ましくは第2の崩壊力とは異なり、かつそれよりも低い。
【0017】
本発明によるcMUTはまた、第1の端部と第2の端部とを有する電極要素を含むことができる。電極要素は、二等分側線に関して実質的に非対称とすることができる。二等分側線は、電極要素の第1及び第2の端部の間の位置の境界を定めることができる。電極要素の第1の端部は、第2の端部での電極要素の幅よりも小さい幅を有することができる。電極要素は、非対称の電極要素を基板の方向に実質的に等しい距離の第1の点と第2の点で薄膜を撓ませるように適応させることができるように、第1の点と第2の点で薄膜上に恐らくは異なる量の力をもたらすように適応させることができる。
【0018】
薄膜はまた、好ましくは、その長さに沿って様々な撓み特性を有するようになっている。更に、第1の端部から第2の端部まで測定された薄膜の長さは、好ましくは、第1の端部での薄膜の幅の2倍よりも長いか又は実質的にそれに等しい。薄膜はまた、伸長させ、所定の形状を有し、超広帯域信号を送信及び受信するように適応させることができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜は、実質的に台形である。
【0019】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、cMUTを製作する方法は、一般的に、薄膜を設ける段階、及び薄膜を二等分側線に関して実質的に非対称に構成する段階を含む。cMUTを製作する方法はまた、薄膜の第1の端部で第1の幅と薄膜の第2の端部で第2の幅とを有するように薄膜を構成する段階を含むことができる。第1の端部での第1の幅は、第2の端部での第2の幅よりも大きくすることができる。薄膜はまた、第1の点で第1の撓み特性を有し、第2の点で第2の撓み特性を有するように構成することができる。薄膜はまた、薄膜の第1の端部と第2の端部の間の距離が、第1の側面と第2の側面の間の第2の端部で測定された薄膜の幅の2倍よりも長いか又は実質的に等しくなるように構成することができる。薄膜は、更に、超広帯域信号の送信及び受信の両方を行い、かつ台形形状に構成することができる。
【0020】
cMUTを製作する方法はまた、電極要素を設ける段階を含むことができる。電極要素は、二等分側線に関して実質的に非対称にすることができる。更に、電極要素は、電極要素の第1の端部に第1の幅と電極要素の第2の端部に第2の幅とを有するように構成することができる。第1の端部の第1の幅は、第2の端部の第2の幅よりも小さくすることができる。cMUTを製作する方法はまた、第1の点と第2の点で薄膜に対して力をもたらし、基板の方向に実質的に等しい距離の第1の点と第2の点で薄膜を撓ませるように電極要素を構成する段階を含むことができる。
本発明の様々な好ましい実施形態を特徴付けるこれら及び他の特徴並びに利点は、以下の詳細説明を読んで関連する図面を精査することから明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
cMUTは、特に微小規模及びアレイ用途に対して、圧電超音波変換器の代替として開発されたものである。cMUTは、一般的に表面を微小機械加工され、1次元又は2次元アレイに製作されて特定用途のためにカスタマイズすることができる。cMUTは、帯域幅とダイナミックレンジの点で圧電変換器に同等の性能を有することができるが、一般的にサイズが相当に小さいものである。
cMUTは、一般的に、導電性基板の上方に吊り下げられた薄膜内に配置された上部電極、又は基板の近くか又はそれに連結された下部電極を組み込んでいる。任意的に、基板と下部電極の間に接着層又は他の層を配置することができる。薄膜は、弾性特性を有し、刺激に応答してそれを変動させることができる。例えば、刺激は、以下に限定されるものではないが、薄膜に圧力を作用する外力と、cMUT電極を通して印加される静電気力とを含むことができる。
【0022】
cMUTは、多くの場合に音響波を送信及び受信するのに使用される。音響波を送信するために、cMUT薄膜内に配置されたcMUT電極にAC信号と大きなDCバイアス電圧が印加される。代替的に、電圧は、下部電極に印加することができる。DC電圧は、変換が効率的な場所に薄膜を引き下ろすことができ、cMUT素子応答を線形化することができる。AC電圧は、ガス又は流体のような周囲媒体内に音響波を発生させるために、望ましい周波数で薄膜を動かすことができる。音響波を受信するために、衝突する音響波がcMUT薄膜を動かす時のcMUT電極間のキャパシタンスの変化を測定することができる。
【0023】
本発明は、cMUTの振動高調波を制御するために強化された薄膜を含むcMUTを提供する。本発明によるcMUT薄膜は、薄膜の長さに沿って不均一な質量分布を有することができる。薄膜は、例えば、実質的に均一な厚みを有することができるが、密度の変動を有して質量分布プロフィールをもたらしている。代替的に、薄膜の厚みを変動させることによって質量分布を提供することができる。厚みと密度が実質的に均一な単一材料から薄膜が作られる場合には、質量負荷を利用することもできる。
【0024】
薄膜に沿って質量分布を制御することにより、cMUT薄膜の振動高調波を制御することが可能になる。一例として、複数の質量負荷を薄膜の近くにするか、その一部にするか、又はそれに沿って位置決めし、薄膜振動モードのシフト又は調節を助けることができる。不均一な質量分布を有するcMUT薄膜は、超音波のような超音波エネルギの送信及び受信を強化することができる。不均一な質量分布とcMUT薄膜の振動モードに対応する複数の電極とを有するcMUT薄膜は、送信及び受信中に望ましいが別々の周波数範囲で超音波のような超音波エネルギの送信及び受信を強化することができる。更に、本発明により強化された薄膜を有するcMUTは、cMUT薄膜の基本作動周波数と基本作動周波数の高調波周波数とを利用して超音波信号を送信及び受信することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態に従ってcMUTを製作するための例示的な機器は、以下に限定されるものではないが、PECVDシステムと、ドライエッチングシステムと、金属スパッタリングシステムと、ウェットベンチと、フォトリソグラフィ機器とを含むことができる。本発明に従って製作されたcMUTは、一般的に、積層工程で基板上に堆積させてパターン化した材料を含む。本発明は、金属犠牲層が使用された時の好ましくは最大処理温度である約250℃で様々な窒化珪素層を堆積するために低温PECVD工程を利用することができる。代替的に、他の好ましい実施形態による本発明は、約300℃で犠牲層として堆積したアモルファスシリコン犠牲層を利用することができる。
【0026】
ここで、同じ数字が同じ要素を表す図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUT100の断面図である。cMUT100は、基板105、下部電極110、空洞150、薄膜115、及び上部電極130(好ましくは、第1の上部電極要素130A、第2の上部電極要素130B、第3の上部電極要素130Cとして形成された)を含めて一般的に基板105に近接した様々な構成要素を含む。cMUT100はまた、図に誇張された形状で示されて縮尺に従っていないことが理解される質量負荷155及び160を含むことができる。質量負荷155及び160は、薄膜115に近接するか、その上に配置するか、又はそれに沿って位置決めすることができ、薄膜115から分離するか、又はそれと一体化することができる。以下に図5と6に関連してより詳細に説明するように、cMUT撮像アレイに複数のcMUT100を使用することができる。
【0027】
基板105は、シリコンで形成することができ、信号発生及び受信回路を収容することができる。基板105はまた、光学検出法の利用を可能にする好ましくは透明な材料を含むことができる。基板105は、cMUT100が超音波エネルギ又は音響波を送信して受信するのを可能にするために、少なくとも部分的には基板105に組み込まれた集積回路165を含むことができる。代替的な実施形態では、集積回路165は、基板105に近接する別の基板(図示しない)に配置することができる。
【0028】
集積回路165は、電気及び光信号を発生して受信するように適応させることができる。集積回路165はまた、画像処理プロセッサ170に信号を供給するように適応させることができる。例えば、集積回路165は、画像処理プロセッサ170に連結することができる。集積回路165は、信号発生及び受信回路の両方を収容することができ、又は別々の集積発生及び受信回路を利用することができる。画像処理プロセッサ170は、集積回路165によって受信された又は感知された信号を処理し、電気及び光信号から画像を生成するように適応させることができる。
【0029】
下部電極110は、基板105上に堆積させてパターン化することができる。代替的な実施形態では、基板105と下部電極110の間に接着層(図示しない)を配置することができる。接着層は、下部電極110を基板105に十分に接着させるために使用することができる。接着層は、クロム、又は下部電極110を基板105に接着することができる多くの他の材料で形成することができる。下部電極110は、好ましくは、金又はアルミニウムのような導電材料で製作することができる。下部電極110はまた、例えば、上部電極要素130A、130B、130Cと類似した複数の別々の電極要素(図示しない)にパターン化することができる。下部電極110の複数の要素は、下部電極110の複数の要素上に堆積した隔離層で互いから隔離することができるが、後の製作工程で、電極要素の一部を電気的に連結することもできる。隔離層はまた、cMUT100を形成するために使用される他の材料から下部電極110を保護するために利用することができる。
【0030】
薄膜115は、好ましくは弾性特性を有し、基板105に対してそれを変動可能にする。好ましい実施形態では、薄膜115は、窒化珪素を含み、複数の薄膜層で形成される。例えば、薄膜115は、第1の薄膜層と第2の薄膜層で形成することができる。更に、薄膜115は、側面区域116及び117と中心区域118とを有することができる。図示のように、中心区域118は、一般的に側面区域116及び117の間に均等に配置することができる。
【0031】
薄膜115はまた、空洞150を形成することができる。空洞150は、一般的に下部電極110と薄膜115の間に配置された犠牲層を除去又はエッチングすることによって形成することができる。隔離層を使用する実施形態では、空洞は、一般的に隔離層と薄膜115の間に配置されると考えられる。空洞150は、外部圧力又は静電気力のような刺激に応答して薄膜115が変動することを可能にするチャンバを提供する。
【0032】
好ましい実施形態では、複数の電極要素130A、130B、130Cが薄膜115内に配置される。代替的に、単一の電極又は電極要素を薄膜115内に部分的に配置することができる。複数の電極要素130A、130B、130Cのうちの2つ又はそれよりも多くは、電気的に連結されて電極要素の対を形成する。好ましくは、側面電極要素130A及び130Cは、薄膜115の側面116及び117のより近くに形成され、中心電極要素130Bは、薄膜115の中心区域118のより近くに形成される。電極要素130A、130B、130Cは、金又はアルミニウムのような導電材料を使用して製作することができる。側面電極要素130A及び130Cは、電気的に連結して中心電極要素130Bから隔離し、電極要素の対を形成することができる。電極要素130A、130B、130Cは、同じ導電材料で形成することができ、薄膜115内で所定の位置と様々な幾何学的構成を有するようにパターン化することができる。側面電極要素130A及び130Cの対は、中心電極130Bよりも小さな幅を有することができ、対130A及び130Cの少なくとも一部は、基板105から中心電極要素130Bとほぼ同じ距離に配置することができる。代替的な実施形態では、薄膜115内の基板105から様々な距離に付加的な電極要素を形成することができる。
【0033】
電極要素130A、130B、130Cは、超音波のような超音波エネルギを送信及び受信するように適応させることができる。側面電極要素130A及び130Cには、第1の電圧供給装置175(V1)から第1の信号を提供することができ、中心電極130Bには、第2の電圧供給装置180(V2)から第2の信号を提供することができる。側面電極要素130A及び130Cは、電気的に連結させることができ、そのために電極要素130A及び130Cの一方に供給された電圧又は信号は、電極要素130A及び130Cの他方に供給されることになる。これらの信号は、DCバイアス電圧のような電圧及びAC信号とすることができる。
【0034】
側面電極要素130A及び130Cは、超音波の送信に対して比較的大きな間隙を形成するように薄膜115を成形するように適応させることができる。送信中により大きな送信圧力を可能にする間隙サイズを使用することが好ましい。更に、側面電極要素130A及び130Cは、超音波の受信に対して比較的小さな間隙を形成するように薄膜115を成形するように適応させることができる。cMUT100のより高い感度を可能にする受信に対する小さな間隙サイズを使用することが望ましい。中心電極要素130Bと側面電極要素130A及び130Cは、両方とも超音波のような超音波エネルギを受信して送信することができる。
【0035】
cMUT100は、薄膜115の形状を変えることによって超音波エネルギを送信及び受信するように最適化することができる。電極要素130A、130B、130Cには、薄膜115の形状を変えるために電圧供給装置175、180(V1、V2)から様々な電圧と信号を供給することができる。更に、様々な電圧と信号を供給することにより、cMUT100は、2つの状態、すなわち、送信状態と受信状態で作動することができる。例えば、受信状態中に側面電極要素130A及び130Cは、第1の電圧供給装置175(V1)からDCバイアス電圧を供給され、音響超音波の受信に対して薄膜115の形状を最適化することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、薄膜115は、その長さに沿って不均一な質量分布を有する。薄膜115は、その長さにわたって様々な質量分布を有し、その変動は、厚み、密度、材料の組成、及び薄膜の長さに沿った他の薄膜特性の変動のうちの1つ又はそれよりも多くの結果とすることができる。
好ましい実施形態では、質量負荷155及び160は、薄膜115上に堆積されてパターン化され、不均一な質量分布の薄膜115を提供する。代替的に、薄膜115は、薄膜115の長さに沿ったある一定の点が厚み及び/又は密度の変動を通じて様々な質量を有するようにして、均一な質量分布を有するようにパターン化することができる。
【0037】
質量負荷155及び160は、好ましくは、以下に限定されるものではないが、金のような高密度で可鍛性の材料で形成される。質量負荷155及び160を形成するために多くの他の高密度で可鍛性の材料を使用することができる。金は、高密度で柔らかい材料のために好ましく、薄膜の剛性のために薄膜の振動と大きく干渉することがない。本発明の好ましい実施形態では、質量負荷155及び160の厚みは、約1マイクロメートルであり、幅は、約2マイクロメートルである。質量負荷155及び160のサイズと形状は、望ましい結果を達成するために修正することができる。質量負荷155及び160は、それぞれ側面116及び117と近接することができる。他の実施形態では、2つよりも多い質量負荷155及び160を利用することができる。質量負荷155及び160は、薄膜115の振動と変動を制御又は調節するために使用することができる。例えば、質量負荷155及び160は、薄膜115の特定の振動モードのピーク振動領域に対応して配置するか又は位置決めすることができる。
【0038】
薄膜115は、その弾性特性のために様々な周波数で振動することができ、複数の振動モードを有することができる。例えば、薄膜115は、1次の振動モード並びに他のより高次の振動モード(例えば、2次、3次など)を有することができる。薄膜115の振動モードの調節は、cMUT100の性能の改良をもたらすものである。例えば、薄膜115の振動モードをcMUT100によって利用された作動周波数及び作動周波数の高調波で発生させるようにシフトすると、使用時に薄膜115をこれらの周波数で共振させることが可能になり、結果的に超音波エネルギの効率的な送信及び受信をもたらすことになる。電圧供給装置175及び180に対して供給された及びそれから受信した信号を組み合わせることにより、超音波エネルギの送信を所定の周波数で最小にすることができ、かつ受信信号をその特定の周波数で最大にすることができる。薄膜115の質量分布を修正することにより、薄膜115の振動モードをcMUT100に対する周波数スペクトル内の望ましい位置にシフトする助けになる。例えば、薄膜115は、それが所定の周波数を受信するように負荷された質量とすることができる。所定の周波数は、cMUT100によって送信された信号の第1の高調波周波数のような高調波周波数とすることができる。
【0039】
図2は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUT100のサンプルパルスエコー周波数スペクトルを示している。図示のように、調和cMUT100に対する周波数応答205は、第1のピーク210と第2のピーク220を有する。第1のピーク210は、実質的に作動周波数(f0)付近に中心を有する送信周波数領域215に一致させることができる。第2のピーク220は、実質的に作動周波数の第2の高調波周波数(2*f0)付近に中心を有する受信周波数領域225に一致させることができる。cMUT100の薄膜115は、第1の振動次数の周波数が作動周波数(f0)付近に中心があり、第2の振動次数が作動周波数の第2の高調波周波数(2*f0)付近に中心があるように調節することができる。そのような構成は、振動モードのピークが作動周波数と作動周波数の高調波とに対応するように薄膜115の振動モードを調和的に関連付けることを可能にする。
【0040】
cMUT100の薄膜115は、図2に示すような周波数応答を有するように強化することができる。薄膜は、望ましい作動周波数と作動周波数の第2の高調波とで超音波エネルギを送信及び受信するように適応させることができる。本発明はまた、cMUT100の薄膜に対応する複数の振動モードで作動するようにcMUT薄膜を強化するために使用することができる。例えば、薄膜115は、薄膜115の第3の振動モードの移動を助けるために質量負荷を薄膜115上のある一定の位置に置くことによって作り出すことができる。薄膜115の第3の振動モードは、第3の高調波周波数(3*f0)に応答して移動又は調節され、第3の高調波周波数領域で送信及び受信された信号を改善することができる。ある一定の高調波周波数に対応するように振動モードをシフトすることに加えて、振動モードをシフトすることによって高調波周波数付近に広帯域幅を作り出すことができ、従って、薄膜115の送信及び受信領域を増すことができる。
【0041】
図3は、本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示している。典型的には、製作工程は、材料の様々な層を基板上に堆積させる段階と、様々な層を所定の構成にパターン化して基板105上にcMUT100を製作する段階とを含む積層工程である。
本発明の好ましい実施形態では、「Shipley S−1813」のようなフォトレジストを使用してcMUTの様々な層をリソグラフ的に形成する。そのようなフォトレジスト材料は、バイアと材料層とをパターン化するための従来の高温の使用を必要としない。代替的に、多くの他のフォトレジスト又はリソグラフ材料を使用することができる。
【0042】
本発明の製作工程の第1の段階は、基板105上に下部電極110を設けるものである。基板105は、シリコン、水晶、ガラス、又はサファイアのような誘電体を含むことができる。一部の実施形態では、基板105は、集積電子機器を収容し、集積電子機器は、信号の送信及び受信に対して分離することができる。代替的に、適切な信号送信及び受信電子機器を収容する基板105に隣接して配置された第2の基板(図示しない)を使用することができる。導電性金属のような導電材料は、下部電極110を形成することができる。下部電極110はまた、シリコン基板105をドープすることにより、又は金属のような導電材料層を基板105上に堆積してパターン化することによって形成することができる。それでも、ドープされたシリコン下部電極110により、上部電極の全ての不動部分が寄生キャパシタンスを増大する可能性があり、従って、素子性能を劣化させて大部分の光学スペクトルに対して光学検出技術を妨害する。
【0043】
これらの短所を克服するために、パターン化された下部電極110を使用することができる。図3(a)に示すように、下部電極110は、基板105とは異なる長さにパターン化することができる。下部電極110をパターン化することにより、素子の寄生キャパシタンスを著しく低減することができる。
下部電極110は、多要素電極にパターン化することができ、多要素電極は、基板105から様々な距離に配置することができる。アルミニウム、クロム、及び金は、下部電極110を形成するのに使用することができる例示的な材料である。本発明の好ましい実施形態では、下部電極110の厚さは、約1500オングストロームであり、堆積の後に回折グレーディングとして及び/又は様々な長さを有するようにパターン化することができる。
【0044】
次の段階では、隔離層315を堆積させる。隔離層315は、下部電極110上に置かれた他の層から下部電極110の各部分又はその全体を隔離することができる。隔離層315は、窒化珪素とすることができ、好ましくは、約1500オングストロームの厚さにすることができる。「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して、好ましい実施形態に従って約250℃で隔離層315を堆積させることができる。隔離層315は、cMUTの製作中に使用されるエッチング液から下部電極110又は基板105を保護するのを助けることができる。下部電極層110上に堆積された状態で、隔離層315は、所定の厚さにパターン化することができる。代替的な好ましい実施形態では、隔離層315は利用されない。
【0045】
隔離層315を堆積させた後で、犠牲層320が隔離層315上に堆積される。犠牲層320は、好ましくは、単に一時的な層であり、製作中にエッチングで除去されて、cMUT100に空洞150を形成する。隔離層315が使用されない時には、犠牲層320は、直接下部電極110上に堆積される。犠牲層320は、cMUTの製作中に付加的な層を堆積する間の空間を保持するために使用される。犠牲層320は、約300℃で「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して堆積させて反応性イオンエッチング(RIE)を使用してパターン化することができるアモルファスシリコンで形成することができる。犠牲層320を形成するために、スパッタリングされた金属もまた使用することができる。犠牲層320は、得られる空洞又はバイアに対して様々な幾何学的構成を提供するために、異なる区分、様々な長さ、及び異なる厚さにパターン化することができる。
【0046】
図3(b)に示すように、第1の薄膜層325を次に犠牲層320上に堆積させる。第1の薄膜層325は、例えば「Unaxis 790 PECVD」システムを使用して堆積させることができる。第1の薄膜層325は、窒化珪素又はアモルファスシリコンの層にすることができ、約6000オングストロームの厚さを有するようにパターン化することができる。第1の薄膜層325の厚さは、特定の実施に応じて変えることができる。犠牲層320の上への第1の薄膜層325の堆積は、振動する薄膜115の形成を助けるものである。
【0047】
第1の薄膜層325をパターン化した後で、図3(c)に示すように第1の薄膜層325上に第2の導電層330を堆積させることができる。第2の導電層330は、cMUTの上部電極を形成することができる。第2の導電層130は、互いから隔離することができる電極要素130A、130B、及び130Cにパターン化することができる。電極要素130A、130B、及び130Cは、基板105から異なる距離に配置することができる。1つ又はそれよりも多くの電極要素130A、130B、及び130Cを電気的に結合して電極要素の対を形成することができる。例えば、側面電極要素130A及び130Cは、互いに連結することができ、電極要素の対を形成する。好ましくは、形成された電極の対130A及び130Cは、第2の電極要素130Bから隔離されている。
【0048】
電極要素対130A及び130Cは、アルミニウム、クロム、金、又はその組合せのような導電材料で形成することができる。例示的な実施形態では、電極要素対130A及び130Cは、厚さが約1200オングストロームのアルミニウムと厚さが約300オングストロームのクロムとを含む。アルミニウムは、良好な導電性を提供することができ、クロムは、堆積中にアルミニウムに形成されたあらゆる酸化の平滑化を助けることができる。更に、電極要素対130A及び130Cは、第1の導電層110と同じ導電材料又は異なる導電材料を含むことができる。
【0049】
次の段階では、図3(d)に示すように、電極要素130A、130B、及び130Cの上に第2の薄膜層335を堆積させる。第2の薄膜層335は、製作のこの時点でcMUT薄膜層(第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された)の厚さを増加させ、cMUTの製作中に使用されたエッチング液から第2の導電層330を保護するのに役立つことができる。第2の薄膜層335はまた、第1の電極要素130Aの第2の電極要素130Bからの隔離を助けることができる。第2の薄膜層の厚さは、約6000オングストロームにすることができる。一部の実施形態では、第2の薄膜層335は、第2の薄膜層335が最適な幾何学的構成を有するように堆積及びパターン化技術を使用して調節される。好ましくは、第2の薄膜層335が所定の幾何学的構成に従って調節された状態で、犠牲層320はエッチングで除去され、図3(f)に示すように空洞150が残る。
【0050】
第1及び第2の薄膜層325及び335は、薄膜115を形成する。薄膜115は、外部圧力及び静電気力の刺激に応答して変動又は共振することができる。更に、薄膜115は、その弾性特性のために複数の振動モードを有することができる。これらの振動モードの位置は、本発明によるcMUTの設計及び製作の助けになる可能性がある。例えば、第1及び第2の導電層310及び330は、合成薄膜の振動モードに近接する電極又は電極要素にパターン化することができる。そのような電極又は電極要素の配置は、超音波エネルギの効率的な受信及び送信を可能にすることができる。更に、薄膜115に対する振動モードの位置は、薄膜115の質量分布を変えることによって調節及び制御することができる。
【0051】
エッチング液が犠牲層320まで到達することができるように、RIE工程を使用して、第1及び第2の薄膜層325及び335を通して開口340及び345をエッチングすることができる。図3(e)に示すように、犠牲層320までのアクセス経路は、第1及び第2の薄膜層325及び335をエッチングで除去することによって開口340及び345で形成することができる。アモルファスシリコン犠牲層320が使用される時には、シリコンに対するエッチング工程の選択性を知る必要がある。エッチング工程の選択性が低い場合、犠牲層320及び隔離層315を通して基板105まで簡単にエッチングすることができる。これが行われる場合、エッチング液が基板105を攻撃する可能性があり、cMUT素子を破壊する可能性がある。犠牲層と共に使用されるエッチング液に対して耐性がある金属で下部電極110が形成される時には、金属層がエッチング遅延剤として作用して基板105を保護することができる。当業者は、様々なエッチング液を熟知しており、エッチングされる材料にエッチング液を適合させることができるであろう。犠牲層320がエッチングされた後で、空洞350は、図3(f)に示すようにシール342及び347によって密封することができる。
【0052】
隔離層315と薄膜層325及び335との間に空洞350を形成することができる。空洞350はまた、下部電極110と第1の薄膜層325との間に配置することもできる。空洞350は、本発明の一部の好ましい実施形態による所定の高さを有するように形成することができる。空洞350により、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成されたcMUT薄膜115は、刺激に応答して変動及び共振することができる。犠牲層320をエッチングすることによって空洞350が形成された後に、第2の薄膜層335上にシーリング層(図示しない)を堆積させることによって空洞350を真空密封することができる。当業者は、空洞350にある一定の圧力を設定し、次にそれを密封して真空密封を形成する様々な方法を熟知しているであろう。
【0053】
シーリング層は、一般的に、空洞350の高さよりも厚さが厚い窒化珪素の層である。例示的な実施形態では、シーリング層の厚さは、約4500オングストロームであり、空洞350の高さは、約1500オングストロームである。代替的な実施形態では、第2の薄膜層335は、局所シーリング技術を使用して密封されるか又は所定の加圧条件下で密封される。第2の薄膜層335のシールは、液浸用途に対してcMUTを適応させることができる。シーリング層を堆積した後に、cMUT薄膜115が厚すぎて望ましい周波数で共振できない場合があるので、cMUT薄膜115の厚さは、シーリング層を再びエッチングすることによって調節することができる。シーリング層をエッチングするために、RIEのようなドライエッチング工程を使用することができる。
【0054】
次の段階では、第2の薄膜層335上に複数の質量負荷155及び160を堆積させることによってcMUTの薄膜の不均一な質量分布を達成することができる。複数の質量負荷155及び160は、第2の薄膜層335上の様々な場所に置くことができる。第2の薄膜層335上の複数の質量負荷155及び160は、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された薄膜115の振動モードに対応させることができる。複数の質量負荷155及び160はまた、第1及び第2の薄膜層325及び335によっていくつかの所定の区域に形成された薄膜の振動モードをシフト又は調節するために使用することができる。本発明の特徴は、関連の特定の振動モードを選択的に制御することを可能にする。これらの所定の区域は、電極要素130A、130B、130Cを超音波音響エネルギを送信及び受信するために使用することができるように、電極要素130A、130B、130Cの近くに配置することができる。代替的な実施形態では、第2の薄膜層335は、不均一な質量分布を有する薄膜を形成するために異なる厚みの領域を有するようにパターン化することができる。
【0055】
本発明のcMUT製作工程の最終段階は、電気接続性に対してcMUTを設けるものである。より詳細には、RIEエッチングを使用して、下部電極110上の隔離層315と電極要素130A、130B、130C上の第2の薄膜層335とを貫通してエッチングし、それらを接続のためにアクセス可能にすることができる。
付加的な結合パッドを形成して電極に接続することができる。結合剤パッドにより、ワイヤ結合を使用して上部及び下部電極110及び130に対して外部電気接続を行うことが可能になる。一部の実施形態では、結合剤パッド上に金を堆積してパターン化することができ、ワイヤ結合の信頼性を改善することができる。
【0056】
本発明の代替的な実施形態では、犠牲層320は、第1の薄膜層325を堆積させた後にエッチングすることができる。この代替的な実施形態は、犠牲層320のエッチング段階を実行して薄膜層325及び335によって形成された薄膜115を除去する前にcMUT100に時間を費やさない。上部電極130がまだ堆積されていないので、第2の薄膜層335にピンホールが発生して上部電極130がエッチング液によって破壊される危険性はない。
【0057】
図4は、本発明の好ましい実施形態により調和cMUT100を製作するための好ましい方法を説明する論理流れ図を示している。第1の段階は、基板を設ける段階に関わるものである105(405)。基板105は、不透明、半透明、又は透明を含む様々な構成のものとすることができる。例えば、基板150は、以下に限定されるものではないが、シリコン、ガラス、又はサファイアとすることができる。次に、基板105上に隔離層を堆積させて所定の厚さを有するようにパターン化する(410)。隔離層は任意的であり、一部の実施形態では利用しない場合がある。一部の実施形態では、接着層もまた使用することができ、隔離層が確実に基板105に結合され、又は下部電極110を基板105に適切に結合することができる。
【0058】
隔離層がパターン化された後に、隔離層上に第1の導電層110を堆積させて所定の形状にパターン化する(415)。代替的に、基板105のドープ表面、例えば、ドープされたシリコン基板表面は、第1の導電層110を形成することができる。第1の導電層110は、好ましくは、基板105上にcMUT100の下部電極110を形成する。第1の導電層110は、パターン化されて複数の電極要素を形成することができる。複数電極要素の少なくとも2つが互いに連結されて、電極要素の対を形成することができる。
【0059】
第1の導電層110が所定の形状にパターン化された状態で、第1の導電層110上に犠牲層320を堆積させることができる(420)。犠牲層320は、選択的な堆積とパターン化によってそれが所定の厚さを有するようにパターン化することができる。次に、犠牲層320上に第1の薄膜層325を堆積させることができる(425)。
堆積された第1の薄膜層325は、次に、所定の厚さを有するようにパターン化され、第2の導電層130を次に第1の薄膜層325上に堆積させる(430)。第2の導電層130は、好ましくは、cMUT100の上部電極130を形成する。第2の導電層130は、パターン化されて複数の電極要素130A、130B、130Cを形成することができる。複数の電極要素130A、130B、130Cの少なくとも2つは、互い連結されて電極要素対を形成する。第2の導電層130が所定の形状にパターン化された後に、パターン化された第2の導電層130上に第2の薄膜層335を堆積させる(435)。第2の薄膜層335もまた、最適な幾何学的構成を有するようにパターン化することができる。
【0060】
第1及び第2の薄膜層325及び335は、第2の導電層130をカプセル封入することができ、第1及び第2の薄膜層325及び335の弾性特性によってそれを第1の導電層110に対して移動させることを可能にする。第2の薄膜層335がパターン化された後に、犠牲層320がエッチングによって除去され、第1及び第2の導電層110及び130の間に空洞150を形成する(435)。第1及び第2の薄膜層325及び335の下部に形成された空洞150は、第1及び第2の薄膜層325及び335を共振させて基板105に対して移動させるための空間を提供する。次の段階で、第2の薄膜層335上にシーリング層を堆積することによって第2の薄膜層335が密封される(435)。
【0061】
最終の段階(440)では、第2の薄膜層335上に質量負荷を形成することができる。複数の質量負荷はまた、第2の薄膜層335上に形成することができ、それらは、第1及び第2の薄膜層325及び335によって形成された薄膜115の振動モードに対応する第2の薄膜層335上の点に置くことができる。質量負荷は、好ましくは金のような高密度で可鍛性の材料で形成される。質量負荷は、薄膜層115が変動する厚みの領域を有するように薄膜層115の質量分布を変えるのを助けることができる。代替的な実施形態では、薄膜層115は、変動する厚み又は密度を有するようにパターン化することができる。
本発明の実施形態はまた、cMUT撮像システムのcMUTアレイを形成するために利用することができる。当業者は、図5及び6に示すcMUT撮像アレイが単に例示的であり、他の撮像アレイも本発明の実施形態に従って達成可能であることを認識するであろう。
【0062】
図5は、基板上にリング−環状アレイに形成されたcMUT撮像アレイ素子を示している。図示のように、素子500は、基板505とcMUTアレイ510及び515とを含む。基板505は、好ましくは円盤形状であり、素子500は、前向きcMUT撮像アレイとして利用することができる。素子500は、2つのcMUTアレイ510及び515と共に示されているが、他の実施形態は、1つ又はそれよりも多くのcMUTアレイを有することができる。1つのcMUTアレイが利用される場合、それは、基板505の外周の近くに配置することができる。複数のcMUTアレイが利用される場合、それらは、環状cMUTアレイが共通の中心点を有するように同心状に形成することができる。一部の実施形態はまた、本発明の一部の実施形態による異なる幾何学的構成のcMUTアレイを利用することができる。
【0063】
図6は、基板上の側方に向いたアレイに形成されたcMUT撮像アレイシステムを示している。図示のように、素子600は、基板605とcMUTアレイ610及び615とを含む。基板605は、円筒形状とすることができ、cMUTアレイは、基板605の外面に連結することができる。cMUTアレイ610及び615は、インターデジタル的に配置されて側方に向いたcMUT撮像アレイのために使用されるcMUT素子を含むことができる。素子600の一部の実施形態は、円筒形状基板600の外面上に離間した関係で1つ又は複数のcMUT撮像アレイ610及び615を含むことができる。
【0064】
本発明はまた、cMUT薄膜の振動モードの位置を判断し、かつ質量負荷を判断してcMUT薄膜の振動モードを調節するためにcMUT100又はcMUTアレイの解析を意図している。便宜上、以下に説明するcMUTの構成要素は、図7に関連している。しかし、構成要素の特定の機能又は構成要素の特定の配置及びサイズの説明は、図7の範囲を制限するように意図しておらず、制限としてではなく例示としてのみ提供する。
【0065】
cMUTを解析するための手法は、水のような流体中でのcMUT薄膜の運動を模擬することである。例えば、cMUT薄膜の運動を模擬するために「ANSIS(登録商標)」ツールのような有限要素解析ツールを使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜は、約40μmの幅と約0.6μmの厚みを有することができる。代替的に、他の寸法を使用することもできる。薄膜は、長くて矩形にすることができるので、1−D解析を使用することができる。他のシミュレーションは、2−D又は3−Dのような他の次元解析パラメータを使用することができる。
【0066】
cMUTの静電作用を模擬するために、薄膜に1kPa(キロパスカル)の均一な圧力を加えることができる。薄膜の得られる振動プロフィールを次に計算することができる。図7は、周波数を関数とする薄膜にわたる平均速度700を示している。図に示すように、スペクトル705は、約8MHzと約24MHzでヌルになる710及び715以外は、2−30MHzの領域で比較的平坦である。薄膜の振動プロフィールを更に理解するために、図8に示すように薄膜にわたる最大速度を計算してプロットすることができる。図8では、薄膜の速度は、5つのピーク805A、805B、805C、805D、805Eを有することができる。薄膜の局所ピーク速度は、平均速度よりも一桁大きな値を超える可能性がある。
【0067】
薄膜変位プロフィールがピークの発生する周波数付近でプロットされると、薄膜がその第3及び第5共振近くに移動する周波数で平均速度がヌルになる。図9A−Cは、0.8MHzと8MHzにおける薄膜にわたる振動プロフィールを示している。これらの周波数は、薄膜の第1と第3の振動モードに対応している。cMUTは、8MHz付近で顕著な圧力の出力を全く発生しないが、薄膜は、加えられた圧力に応答して大きな振幅で局所的に振動する。従って、特定のモードがピーク速度を有する薄膜の部分にわたって局所的な電極を置くことにより、ある一定の周波数範囲付近で大きな出力信号を発生させることができる。更に、特定の振動モードの位置を選択的に配置することにより、強化された応答がどこで発生するかを判断することができる。
【0068】
本発明はまた、関連の特定の薄膜振動モードの周波数を選択的に制御することにより、cMUTの設計に対してより高次の振動モードを利用することができる。例えば、薄膜上の所定の位置に質量負荷を配置することによってこれを達成することができる。薄膜の質量分布は、均一な薄膜上に質量負荷を堆積させてパターン化し、不均一な質量分布の薄膜をもたらすことによって変えることができる。例えば、第3の振動モードが目標にされて、ピーク歪みエネルギ(すなわち、ピーク)を有する薄膜の領域に質量負荷が集中される。
【0069】
質量負荷は、その高い密度と低い剛性のために金が好ましい。金は、約1マイクロメートルの厚みと約2マイクロメートルの幅を有するように構成することができる。図10A−Bに示すように、質量負荷は、ピーク変位の位置1015及び1020に置くことができる。図10A−Bに示すように、質量負荷をピーク変位の位置1015及び1020に置くことにより、第3の振動モード周波数を約8MHz(1105を参照されたい)から約6.5MHz(1110を参照されたい)にシフトすることができる(図11)。薄膜に対する第3の振動モード周波数のシフトは、第2及び第4の振動モードのような薄膜の周囲の振動モードに著しい影響を与えないで行うことができる。
【0070】
上述の質量負荷手法の一例として、図11に示すように、cMUTスペクトルの約8MHzで発生するヌルを低減するように薄膜を設計することができる。薄膜には、第3の振動モードに対応するように置かれた異なる質量負荷を負荷することができる。質量負荷の幅と厚みを約1マイクロメートルにすることができ、又は厚みを約1マイクロメートルで幅を約2マイクロメートルにすることができる。図11に示すように、質量負荷を薄膜に沿って置くことにより薄膜の平均速度が調節される。
【0071】
図11は、約8MHzで発生するヌル1110が減少することを示している。従って、薄膜の形状と厚みを強化することにより、薄膜の周波数応答を最小にすることができる。図11によって更に示すように、質量負荷は、大部分のスペクトルに対する薄膜の平均速度に大きく影響を及ぼさず、それは、薄膜の質量負荷がcMUTの全体効率を低下させないことを証明するものである。cMUTの得られる周波数スペクトルは、薄膜に沿って付加的な質量負荷を連続して置くことにより更に成形することができる。
【0072】
本発明によって意図された高次振動モード制御を備えたcMUTを利用する好ましい用途は、高調波イメージングである。cMUT周波数スペクトルのピークの位置を変えるために質量負荷が使用されるので、望ましい周波数範囲で受信される信号を改良することができる。更に、上述のように、cMUT電極を複数要素にパターン化することにより、複数要素に対して局所的な振動を選択的に検出することができる。例えば、幅が約10マイクロメートルの側面電極要素と幅が約15マイクロメートルの中心電極要素とを有する二重電極要素構造のcMUTは、異なる振動モードの位置で発生する振動を選択的に検出するのに使用することができる。
【0073】
図12は、調和cMUTの推定送信及び受信スペクトルを示している。中心及び側面要素の両方を超音波エネルギの送信に使用することができ、側面要素だけを超音波エネルギの受信に使用することができる。図12が示すように、調和cMUTは、約4MHzの基本周波数の送信に適する広帯域送信スペクトル1205を有することができる。更に、受信信号1210のスペクトルは、高調波信号が約8MHzであることを示し、送信されたスペクトルに対してほぼ15dBだけ増幅される。高調波信号がより多くの減衰を受けるので、本発明は、受信及び送信周波数スペクトルが強化された改良されたcMUT設計を提供する。
【0074】
図13Aと13Bは、本発明の好ましい実施形態による非対称の薄膜1315と電極要素1330とを備えたcMUT1300を示している。図13に示すように、cMUT1300は、一般的に、基板1305、薄膜1315、及び電極要素1330を含む。図13Bに示すように、薄膜1315は伸長され、電極要素1330は、それが基板1305の上方に吊り下げられるように薄膜1315内に配置することができる。
【0075】
薄膜1315は、単一の薄膜1315内で複数の薄膜特性を達成するために複数の幅を有するように構成することができる。cMUT1300の様々な要素の幅が図13Aに示されており、一方で要素の厚みが図13Bに示されていることが分るであろう。例えば、薄膜1315は、一般的に台形形状に構成され、第1の端部1320での薄膜1315の幅は、第2の端部1325での薄膜1315の幅よりも小さい。図13Bでは薄膜1315の厚みが均一で対称に見えるが、そのように均一で対称である必要はないことが分るであろう。好ましい実施形態では、薄膜1315の形状は、二等分線1350に関して非対称である。一部の実施形態では、二等分線は、二等分側線1350とすることができる。二等分側線1350は、図13Aに示すように、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340の間の中間点の位置の境界を定めることができる。二等分側線1350はまた、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340の間で他の位置の境界を定めることもできる。
【0076】
薄膜1315は、薄膜1315の長さに沿って幅が変動するためにその長さに沿って不均一な撓み特性を呈する。均一な物質性を仮定すると、幅がより大きな薄膜1315の部分は、幅がより小さな薄膜1315の部分よりも簡単に撓むことになる。薄膜1315の撓み特性は、薄膜1315の長さ、幅、及び厚みばかりでなく、薄膜を製作するために使用される材料によって影響される。均一な物質性を仮定すると、薄膜1315の各異なる部分は、異なる基本周波数で振動する。従って、薄膜1315の長さに沿って幅を変動させることにより、薄膜1315は、超広帯域信号を送信及び受信することができる。
【0077】
薄膜1315の不均一な撓み特性のために、薄膜1330に対して不均一な容量性の力を与えるようになった電極要素1330を使用することが望ましい場合がある。標準の対称な電極が使用される場合、薄膜1315の各部分に対して均一な力が加えられる。従って、薄膜1315の第1の部分は、崩壊するように駆動することができ、一方で薄膜1315の別の部分は、崩壊させることができない。本発明の好ましい実施形態では、不均一な電極要素1330が使用されて電極要素1330の長さに沿って薄膜1315に不均一な力が加えられ、それによって薄膜1315にわたって実質的に等しい量を撓ませる。そのような実施形態では、薄膜1315の複数の部分、又は薄膜1315の大部分でさえも同時に崩壊するように駆動することができる。
【0078】
図13は、非対称電極要素1330を有するcMUT1300を示している。図13Bでは、電極要素1330の厚みが均一で対称に見えるが、そのように均一で対称である必要はないことが分るであろう。cMUTの電極要素1330は、電極要素1330の電気的感度が薄膜1315の長さに沿って均一になるように適切に成形することができる。本発明の好ましい実施形態では、薄膜の全ての部分は、単一のDCバイアスレベルにおける対応する崩壊電圧の約90−95%までバイアスされることが望ましい。また、電極要素1330は、送信時に薄膜1315が対称に励振されるように、かつ対称振動モードが好ましく検出されるように置くことができる。
【0079】
電極要素1330は、薄膜1315に複数の力を加えるために複数の幅を含むように構成することができる。例えば、電極要素1330は、第1の端部1335における電極要素1330の幅が第2の端部1340における電極要素1330の幅とは異なるように、ほぼ台形形状に構成することができる。好ましい実施形態では、薄膜1315の形状は、二等分線1350に関して非対称である。二等分線1350は、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340との中間点の位置の境界を定めることができる二等分側線1350とすることができる。代替的に、この二等分側線は、薄膜1315の第1の端部1335と第2の端部1340との間で他の位置の境界を定めることができる。薄膜1315の二等分側線は、図13Aには電極要素1330の二等分側線と同等に示されているが、そのように同等である必要はない。
【0080】
図13Aに示すように、薄膜1315と電極要素1330は、それらの幅が反比例して変化するように配向することができる。例えば、電極要素1330の第1の端部1335は、薄膜1315の第1の端部1320に対応することができる。同様に、薄膜1315の第2の端部1325は、電極要素1330の第2の端部1340に対応することができる。代替的な実施形態では、薄膜1315と電極要素1330は、他の配置に配向することができ、他の因子が、薄膜1315と電極要素1330の向きに影響を及ぼす場合がある。例えば、電極要素1330の形状と向きは、薄膜1315の厚みに依存する可能性がある。
【0081】
好ましい実施形態では、薄膜1315の第2の端部1325は、約20マイクロメートル幅とすることができ、この薄膜は、約0.8マイクロメートル厚みとすることができ、窒化珪素で作ることができる。電極要素1330は、約0.16マイクロメートル厚みのアルミニウムで作ることができる。電極要素1330は、一般的に、窒化珪素薄膜1315の中心に配置することができる。約0.16マイクロメートルの間隙1314が、基板1305に近接する下部電極から薄膜1315を分離する場合、電極要素1330の第2の端部1340が約10マイクロメートル幅の場合には、薄膜1315は、約138V付近のDCバイアスで崩壊することになる。更に、薄膜1315の第1の端部1320が、約12マイクロメートル幅の場合には、電極要素の第1の端部1335は、約7.8マイクロメートル幅になり、約138ボルトの崩壊電圧を有することができる。これらの寸法を用いて、電極要素1330に単一のDCバイアスを適用することにより、大部分の薄膜1315を駆動して実質的に同時に崩壊させることができる。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、薄膜1315のアスペクト比(平均長さ/平均幅)は、約2よりも大きい。そのような実施形態では、薄膜1315の動力学、すなわち共振は、幅寸法によって支配されることになる。長さ寸法にわたって薄膜1315の幅を変えることにより、異なる区域の反共振、すなわち、断面上の平均薄膜速度がほぼゼロになる周波数は、比較的狭い周波数範囲にわたって分布されることになり、そのために周波数応答の全体的均一性の中心を望ましいレベルに置くことができる。この手法は、cMUTの第1のモード付近に幅広いピークを有することによって周波数範囲を広げることを目的とするものではない。むしろ、より平滑な移行により、第1、第2、及び第3のモードによるピークを埋めることによって超広帯域幅が達成される。
【0083】
図14は、本発明の好ましい実施形態によるcMUTアレイ要素のパルスエコースペクトルの概略グラフを示している。第1の帯域1405は、実質的に薄膜1315の第1の振動モードに対応し、均一なピストン運動に非常に似ている。第2の帯域1410は、実質的に薄膜1315の第2の対称モードに対応し、薄膜にわたって正味の平均粒子速度を有する。薄膜1315の理想的な反共振モードは、送信中に励振されず、図16に示すように、薄膜1315と電極要素1330は、実質的に均一であり、cMUTの様々な断面の中心軸付近で対称であると仮定されている。また、受信モードでは、薄膜の変位が反対称の時には、均一な入射圧力波は、典型的に正味の平均変位を発生することにはならない。本発明の多くの用途では、薄膜1315が水のような媒体中に浸漬されるので、モード形状は、真空中の同じ薄膜と正確に同じにならないであろうが、異なる解析と実験技術を通して得ることができる。
【0084】
図14に示すように、帯域1405及び1410は、2つ又はそれよりも多くの異なる周波数範囲で超音波撮像をするために別々に使用することができる。例えば、第1のモードは、約12MHzでの撮像を実行するために使用することができ、第2のモードは、約40MHzでの撮像を実行するために使用することができる。この作動の手法は、一般的に、同じcMUTアレイが2つの異なる周波数範囲での撮像に使用される用途において使用される。更に、これらのモード付近の位置と帯域幅は、cMUT薄膜1315の製作中に微小機械加工技術を使用して調節することができる。
【0085】
多くの用途に対して、非常に広い周波数にわたって感度の良い変換器が望ましい。更に、変換器の感度を6dB帯域で均一にする必要はない。一部の用途では、図15に示すように、関連の周波数範囲にわたって変動がある一定の限界、すなわち12dBよりも低いことが好ましい。制限された感度を補償し、超広帯域イメージング、符号化された励振を使用する高調波イメージング、又は造影剤を使用する高調波イメージングに対する信号を処理するために、電子及びデジタル濾過技術を使用することができる。図14に示されているcMUT周波数応答は、液浸薄膜の反共振による深いヌルのためにこれらの用途に対して好ましくはない。cMUTアレイ要素を構成する全ての薄膜の幾何学形状が均一なので、これらのヌルは非常に良好に定義される。この問題は、cMUT薄膜を製作するための微小機械加工技術を利用することによって対処することができる。
【0086】
図15は、3つの周波数応答1510、1515、1520の組合せによって達成することができる結合周波数応答1505を示している。一般的に、望ましい結果を達成するためには、薄膜の長さにわたって極めて僅かな(1−10%)幅の変動が適している。他の用途に対しては、より厳密な幅の変動が好ましい。これらの周波数応答は、図16に示されているcMUT薄膜に沿ったある一定の領域に対応するものである。
図16は、図15に示す周波数応答に対応する周波数応答を生成するためのcMUT薄膜と対応する領域の上面図である。図示のように、領域1610は、周波数応答1510を生成し、領域1615は、周波数応答1515を生成し、領域1620は、周波数応答520を生成する。
【0087】
図17は、各々台形薄膜である複数のcMUTを示している。複数のcMUTは、本発明の好ましい実施形態に従って配置されている。図17に示すように、複数のcMUT1710、1715、1720、1725、1730、1735、1740、及び1745は、単一基板1705上に配置することができる。cMUT1710、1715、1720、1725、1730、1735、1740、及び1745は、各々薄膜(Aで示される)と電極要素(Bで示される)とを有する。例えば、cMUT1720は、薄膜1720Aと電極要素720Bとを有する。変換器アレイ要素にわたる活性(振動する)表面積を最大にするために、この及び類似の構成を使用することができる。更に、電極要素を連結することにより、この複数のcMUTの多重cMUTを電気的に結合し、cMUT又はcMUT要素アレイを形成することができる。
図17に示すように、cMUTは、薄膜の広い端部が別の薄膜の狭い端部と近接するように、薄膜が方向を交替するように基板1705上に配向することができる。例えば、薄膜1740Bの幅の広い方の端部は、薄膜1745Bの短い方の幅の端部に近接して配置される。そのような配向は、非対称特性を有する複数のcMUTを単一基板1705上に配置することを可能にする。
【0088】
本発明の代替的な実施形態では、厚み寸法における薄膜の幾何学形状を変えることにより、周波数帯域の類似の周波数均衡化と中心周波数調節とを達成することができる。図18Aは、本発明の好ましい実施形態により成形された質量負荷を有するcMUT1800の上面図である。cMUT1800は、一般的に、基板1805、薄膜1810、及び電極1825を含む。更に、cMUT1800は、図18B及び18Cに示すように、薄膜1810によって形成された空洞1809を含むことができる。電極1825は、薄膜1810内に配置することができ、図18Aで破線のボックスとして示されている。薄膜1810は、第1の端部1810Aと第2の端部1810Bとを有することができる。第1の端部1810Aは、第2の端部1810Bよりも広い幅を有することができる。
【0089】
cMUT1800はまた、質量負荷1815及び1820を含むことができる。質量負荷1815及び1820は、それらの長さにわたって変動する幅を有することができる。例えば、質量負荷1815は、第1の端部1810Aと第2の端部1810Bとを有することができ、第1の端部1810Aは、第2の端部1810Bよりも広い幅を有することができる。同様に、質量負荷1820は、第1の端部1820Aと第2の端部1820Bとを有することができ、第1の端部1820Aは、第2の端部1820Bよりも広い幅を有することができる。質量負荷1815及び1820は、薄膜1810の一部分にすることができ、又は薄膜1810に近接して配置することができる。
【0090】
図18Bと18Cは、cMUT1800の断面図であり、線A−AとB−Bに沿った質量負荷の様々な幅を示している。図18Bと18Cの質量負荷1815及び1820の幅を比較して明らかなように、質量負荷1815及び1820の幅は、図18Cよりも図18Bの幅の方が広い。
薄膜1810の端部1810A及び1810Bを成形することにより、薄膜1810のモードの中心の周波数を望ましい位置まで移動させることができる。薄膜1810の振動モードを高調波のような望ましい中心周波数に配置するために質量負荷1820及び1825を使用することもできる。更に、質量負荷1820及び1825の幅をその長さ寸法にわたって変えることにより、周波数応答を台形薄膜のそれと類似にすることができる。薄膜1810の第1及びそれよりも高いモードの振動形状は、薄膜1810上の質量分布によって制御することができる。更に、電極要素1825の位置は、特定モードに対する信号の受信を最大にするように最適化することができる。
【0091】
図19Aと19Bは、均一なcMUT薄膜(図19A)とマルチモード最適化cMUT薄膜(図19B)の断面図である。更に、これらの図は、cMUTに対応するサンプル振動モード図を示している。図19Aに示すように、第1モード変位プロフィール1950と第2モード変位プロフィール1955は、図19Aに示す均一なcMUT薄膜に対応している。また、図19Bに示すように、第1モード変位プロフィール1950と第2モード変位プロフィール1955は、図19Bに示すマルチモード最適化cMUT薄膜に対応している。
【0092】
変位プロフィール1955及び1855は、質量負荷1815及び1820を有する最適化cMUT薄膜1810(図19B)が、薄膜1910(図19A)の第2モード変位プロフィール1955と比較して改良された第2モード変位プロフィールを有することを示している。第2モードに対するモード変位が電極要素1825に対応して信号の受信及び送信の強化を可能にするので、変位プロフィールは強化される。
例示的な実施形態を特に参照して本発明の様々な実施形態を詳細に説明したが、当業者は、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内で変形及び修正を行うことができることを理解するであろう。従って、本発明の様々な実施形態の範囲は、上述の実施形態に制限されるべきではなく、特許請求の範囲及び全ての適用可能な均等物によってのみ規定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTの断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTのサンプルパルスエコー周波数スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示す図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による調和cMUTを製作するために利用される製作工程を示す論理流れ図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態によるリング環状アレイに形成された複数の調和cMUTを含むcMUT撮像アレイシステムを示す図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による側方に向いたアレイに形成された複数の調和cMUTを含むcMUT撮像アレイシステムを示す図である。
【図7】図7に示すcMUTの表面にわたって周波数の関数として計算された平均速度を示すグラフを示す線図である。
【図8】図1に示すcMUT薄膜の表面にわたって周波数の関数として計算されたピーク速度振幅を示すグラフである。
【図9A】約0.8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールを示す線図である。
【図9B】約8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールのマグニチュードを示す線図である。
【図9C】約8MHzでの図1に示すcMUT薄膜に対する振動プロフィールの位相を示す線図である。
【図10A】第3のモードで振動しているcMUT薄膜の断面を示す線図である。
【図10B】cMUT薄膜に沿って位置決めされた質量負荷の断面を示す線図である。
【図11】質量負荷が負荷された場合と負荷されない場合の図1に示すcMUT薄膜に対する平均速度の比較を示す線図である。
【図12】調和cMUTに対する送信及び受信電極要素に対応するサンプル計算平均速度の線図である。
【図13A】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの上面図である。
【図13B】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの断面図である。
【図14】異なる周波数帯域にわたる超音波撮像に対して変換器のいくつかの振動モードが別々に使用される非対称特性を有するcMUTに対する概略パルスエコー周波数スペクトル図である。
【図15】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTのサンプルパルスエコー周波数スペクトル応答図である。
【図16】図15の応答図に対応する周波数応答を有するcMUT薄膜の断面を示す本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有するcMUTの上面図である。
【図17】本発明の好ましい実施形態による非対称特性を有する複数のcMUTで構成されたcMUTアレイ要素を示す図である。
【図18A】本発明の好ましい実施形態による非対称な不均一質量分布の薄膜を有するcMUTを示す図である。
【図18B】線A−Aに沿った図18AのcMUTの断面図である。
【図18C】線B−Bに沿った図18AのcMUTの断面図である。
【図19A】均一なcMUTの断面図と均一なcMUTに対するサンプルマルチモード変位図である。
【図19B】本発明による非対称特性を有するcMUTの断面図と非対称特性を有するcMUTに対するサンプルマルチモード変位図である。
【符号の説明】
【0094】
1300 cMUT
1305 基板
1315 薄膜
1330 電極要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さと幅を有する薄膜、
を含み、
前記薄膜は、該薄膜の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とするcMUT。
【請求項2】
前記薄膜は、第1の端部と第2の端部を更に有し、
前記第1の端部での前記薄膜の幅は、前記第2の端部での該薄膜の幅よりも広く、
前記第1の端部から前記第2の端部までの距離は、前記薄膜の前記長さを定義する、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項3】
前記薄膜は、前記第1の端部に近接する第1の点で該薄膜を崩壊状態まで駆動するために第1の崩壊力と、前記第2の端部に近接する第2の点で該薄膜を崩壊状態まで駆動するために第2の崩壊力とを必要とし、
前記第1の崩壊力は、前記第2の崩壊力よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項4】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素、
を更に含み、
前記電極要素は、該電極要素の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項5】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さと、幅とを有する電極要素、
を更に含み、
前記第1の端部での前記電極要素の幅は、前記第2の端部での該電極要素の幅よりも狭い、
ことを特徴とする請求項3に記載のcMUT。
【請求項6】
前記電極要素は、前記第1の崩壊力と前記第2の崩壊力をもたらすようになっており、前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませる、
ことを特徴とする請求項5に記載のcMUT。
【請求項7】
前記薄膜の幅は、該薄膜が複数の断面を有するように該薄膜の前記長さにわたって変動し、
前記複数の断面の各断面は、異なる幅を有し、
前記複数の断面の各断面は、異なる基本周波数を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項8】
前記薄膜の前記長さは、前記第1の端部での該薄膜の幅の2倍よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のcMUT。
【請求項9】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さと、幅とを有する電極要素、
を更に含み、
前記第1の端部での前記電極要素の幅は、前記第2の端部での該電極要素の幅よりも狭く、
前記電極要素は、第1の崩壊力と第2の崩壊力をもたらすようになっており、前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませるものであり、
前記薄膜は、振動モードを有し、
前記薄膜の前記幅は、該薄膜の前記振動モードと該薄膜の前記撓み特性とを変更するようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項10】
前記薄膜は、超広帯域信号を送信及び受信するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項11】
前記薄膜は、実質的に台形であることを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項12】
cMUTを製作する方法であって、
長さと幅を有する薄膜を設ける段階と、
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分線に関して非対称になるように構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分側線に関して実質的に非対称になるように構成する前記段階は、
前記薄膜を該薄膜の第1の端部で第1の幅と該薄膜の第2の端部で第2の幅とを有するように構成する段階、
を含み、
前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く、
前記第1の端部から前記第2の端部までの距離は、前記薄膜の前記長さを定義する、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素を設ける段階、
を更に含み、
前記電極要素は、該電極要素の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素を設ける段階と、
前記電極要素を該電極要素の前記第1の端部で第1の幅と該電極要素の前記第2の端部で第2の幅とを有するように構成する段階と、
を更に含み、
前記第1の幅は、前記第2の幅よりも狭い、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第1の端部に近接する第1の点で崩壊状態まで前記薄膜を駆動するための第1の崩壊力と、第2の端部に近接する第2の点で崩壊状態まで該薄膜を駆動するための第2の崩壊力とを有するように該薄膜を構成する段階、
を更に含み、
前記第1の崩壊力は、前記第2の崩壊力よりも小さい、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
電極要素を設ける段階と、
前記第1の崩壊力と前記第2の崩壊力をもたらして前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませるように前記電極要素を構成する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薄膜の前記長さが、前記第1の端部と前記第2の端部の一方で測定された該薄膜の幅の2倍よりも大きくなるように該薄膜を構成する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
超広帯域信号を送信及び受信するように前記薄膜を構成する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分側線に関して実質的に非対称になるように構成する前記段階は、
前記薄膜を実質的に台形形状に構成する段階、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
薄膜と、
前記薄膜の振動モードを所定の周波数に調節するための薄膜周波数調節器と、
を含むことを特徴とするcMUT。
【請求項22】
前記薄膜周波数調節器は、長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有する前記薄膜を含むことを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項23】
前記薄膜周波数調節器は、前記薄膜に近接した質量負荷を含むことを特徴とする請求項22に記載のcMUT。
【請求項24】
前記質量負荷は、複数の別々の質量負荷要素を含むことを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項25】
前記質量負荷は、cMUTの電極要素であることを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項26】
前記質量負荷は、金であることを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項27】
前記複数の質量負荷要素は、前記薄膜の周波数応答を修正することを特徴とする請求項24に記載のcMUT。
【請求項28】
前記薄膜は、複数の振動モードを有し、前記薄膜周波数調節器は、該複数の振動モードの少なくとも2つを調和的に関連付けるようになっていることを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項29】
前記薄膜は、基本周波数で振動するようになっており、前記薄膜周波数調節器は、該薄膜を該基本周波数の2倍に実質的に等しい周波数で振動するように調節することを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項30】
前記薄膜の振動モードに関連する位置に該薄膜に近接した電極要素を更に含むことを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項31】
cMUTの振動モードを制御する方法であって、
薄膜を設ける段階と、
前記薄膜の目標振動周波数を判断する段階と、
前記薄膜の前記目標振動周波数を誘導するために、該薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
前記薄膜の前記目標振動周波数は、該薄膜の基本周波数の実質的に2倍であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する前記段階は、該薄膜の該長さの少なくとも一部分に沿って厚みが変動する薄膜を設ける段階を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する前記段階は、該薄膜の該長さの少なくとも一部分に沿って密度が変動する薄膜を設ける段階を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記薄膜は、第1の振動モードと該第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有し、該薄膜は、該第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、該第2の振動モードで超音波エネルギを受信するようになっていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項36】
cMUTを製作する方法であって、
薄膜を設ける段階と、
所定の周波数でエネルギを受信するために不均一な質量分布を有するように前記薄膜を構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
不均一な質量分布を有するように前記薄膜を構成する前記段階は、該薄膜に近接して複数の質量負荷を設ける段階を含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、かつ第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように前記薄膜を適応させる段階を更に含み、
前記第2の振動モードは、前記第1の振動モードの周波数の約2倍である、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記薄膜の前記振動モードが調和的に関連付けられるように該薄膜を適応させる段階を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記薄膜の振動モードに近接して電極要素を位置決めする段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第1の電極要素と第2の電極要素とを有する多要素第1電極、
を含み、
前記第1及び第2の電極要素は、超音波を送信するようになっている、
ことを特徴とするcMUT。
【請求項42】
前記多要素第1電極は、cMUTのホット電極であることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項43】
前記第1及び第2の電極要素は、薄膜内に配置されていることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項44】
前記第1及び第2の電極要素は、基板に近接していることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項45】
前記第1の電極要素と前記第2の電極要素は、電気的に結合されていることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項46】
薄膜と、前記第1の電極要素と前記第2の電極要素の少なくとも一方を含む薄膜成形手段とを更に含むことを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項47】
前記多要素第1電極は、第3の電極要素を更に含み、前記第1の電極要素は、cMUTの第1の側面に近接し、前記第2の電極要素は、cMUTの他方の側面に近接し、該第3の電極要素は、cMUTの中央に近接していることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項48】
前記第1の電極要素と前記第2の電極要素は、側面電極要素対であり、超音波信号の送信中に薄膜を協働して成形するように互いに電気的に結合していることを特徴とする請求項47に記載のcMUT。
【請求項49】
下部電極を更に含み、
前記薄膜と前記下部電極は、電気的中立状態において間隙距離によって分離されており、
前記側面電極要素対は、超音波の送信中に前記間隙距離の1/3を越えて前記薄膜を撓ませるようになっている、
ことを特徴とする請求項48に記載のcMUT。
【請求項50】
前記側面電極要素対は、送信要素であり、前記第3の要素は、受信要素であり、該側面電極要素対の前記第1及び第2の電極要素の各々は、てこの作用の曲げを利用するようにcMUTのそれぞれの側面に位置していることを特徴とする請求項48に記載のcMUT。
【請求項51】
超音波を送受信する方法であって、
第1の電極要素と第2の電極要素とを組み込んだ多要素第1電極を有するcMUTを設ける段階と、
超音波を送信するために前記第1の電極要素及び前記第2の電極要素に第1の電圧を印加する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
超音波信号を受信するために前記第1の電極要素及び前記第2の電極要素にバイアス電圧を印加する段階を更に含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記受信超音波信号を光学的に感知する段階を更に含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記受信超音波信号を電気的に感知する段階を更に含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
cMUTを製作する方法であって、
上部導電体を設ける段階と、
前記上部導電体から間隙距離だけ分離した下部導電体を設ける段階と、
前記上部及び下部導電体の少なくとも一方を複数の電極要素に構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記上部及び下部導電体を電圧供給装置に電気的に結合するように適応させる段階を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記複数の前記電極要素の第1の電極要素に第1の電圧を供給する段階と、
前記複数の前記電極要素の第2の電極要素に第2の電圧を供給する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の導電体に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第2の導電体に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
前記犠牲層を除去する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の導電体は、前記第1の薄膜層と前記第2の薄膜層の間に配置されていることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の電極要素の該電極要素のうちの少なくとも2つを電気的に結合する段階を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項61】
処理温度の表面を有する基板上にcMUTを製作する方法であって、
基板の表面に近接してエッチング液に対して抵抗性の第1の導電層を設ける段階と、
前記第1の導電層の一部分に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層の一部分をエッチングする前記エッチング液でcMUTをエッチングする段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第1の薄膜層の一部分に近接して第2の導電層を設ける段階と、
前記第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記処理温度は、約300℃よりも低いことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記基板は、内蔵回路を含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の導電層は、金を含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記犠牲層は、クロムを含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記基板として透明基板を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の導電層、前記第2の導電層、前記第1の薄膜層、及び前記第2の薄膜層のうちの少なくとも1つとして反射層を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項69】
光信号を受信及び供給するようになった回路を前記基板に近接して設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項70】
エッチング液に対して抵抗性である、基板に近接したcMUT素子の第1の導電層と、
前記エッチング液で犠牲層をエッチングすることによって形成された空洞を定める、前記第1の導電層に近接したcMUTの第1の薄膜層と、
を含むことを特徴とするcMUT素子。
【請求項71】
前記第1の薄膜層に近接した第2の導電層と、
前記第2の導電層に近接した第2の薄膜層と、
を更に含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項72】
光信号及び電気信号の少なくとも一方を前記第1の導電層へ及びそこから誘導及び受信する前記基板に近接した回路を更に含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項73】
前記基板は、電気信号又は光信号の少なくとも一方が該基板を通過することを可能にすることを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項74】
前記第1の導電層は、金を含み、前記犠牲層は、クロムを含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項75】
前記第1の導電層の少なくとも1つは、約300℃よりも低い温度の前記基板に近接して置かれていることを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項76】
前記基板は、内蔵回路を含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項77】
表面を有する基板上にcMUTを製作する方法であって、
基板の表面に近接してエッチング液に対して抵抗性の第1の導電層を設ける段階と、
前記第1の導電層の少なくとも一部分に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第1の薄膜層の少なくとも一部分に近接して第2の導電層を設ける段階と、
前記第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
前記エッチング液で前記犠牲層の少なくとも一部分を除去する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項78】
前記基板の前記表面と第1の導電層との間に接着層を配置する段階から更に構成されることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
300℃よりも低い温度の前記第1の導電層、前記第2の導電層、及び前記犠牲層のうちの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記基板は、光信号又は電気信号の少なくとも一方が該基板を通過することを可能にするようになっていることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項1】
長さと幅を有する薄膜、
を含み、
前記薄膜は、該薄膜の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とするcMUT。
【請求項2】
前記薄膜は、第1の端部と第2の端部を更に有し、
前記第1の端部での前記薄膜の幅は、前記第2の端部での該薄膜の幅よりも広く、
前記第1の端部から前記第2の端部までの距離は、前記薄膜の前記長さを定義する、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項3】
前記薄膜は、前記第1の端部に近接する第1の点で該薄膜を崩壊状態まで駆動するために第1の崩壊力と、前記第2の端部に近接する第2の点で該薄膜を崩壊状態まで駆動するために第2の崩壊力とを必要とし、
前記第1の崩壊力は、前記第2の崩壊力よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項4】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素、
を更に含み、
前記電極要素は、該電極要素の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項5】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さと、幅とを有する電極要素、
を更に含み、
前記第1の端部での前記電極要素の幅は、前記第2の端部での該電極要素の幅よりも狭い、
ことを特徴とする請求項3に記載のcMUT。
【請求項6】
前記電極要素は、前記第1の崩壊力と前記第2の崩壊力をもたらすようになっており、前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませる、
ことを特徴とする請求項5に記載のcMUT。
【請求項7】
前記薄膜の幅は、該薄膜が複数の断面を有するように該薄膜の前記長さにわたって変動し、
前記複数の断面の各断面は、異なる幅を有し、
前記複数の断面の各断面は、異なる基本周波数を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項8】
前記薄膜の前記長さは、前記第1の端部での該薄膜の幅の2倍よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のcMUT。
【請求項9】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さと、幅とを有する電極要素、
を更に含み、
前記第1の端部での前記電極要素の幅は、前記第2の端部での該電極要素の幅よりも狭く、
前記電極要素は、第1の崩壊力と第2の崩壊力をもたらすようになっており、前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませるものであり、
前記薄膜は、振動モードを有し、
前記薄膜の前記幅は、該薄膜の前記振動モードと該薄膜の前記撓み特性とを変更するようになっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項10】
前記薄膜は、超広帯域信号を送信及び受信するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項11】
前記薄膜は、実質的に台形であることを特徴とする請求項1に記載のcMUT。
【請求項12】
cMUTを製作する方法であって、
長さと幅を有する薄膜を設ける段階と、
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分線に関して非対称になるように構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分側線に関して実質的に非対称になるように構成する前記段階は、
前記薄膜を該薄膜の第1の端部で第1の幅と該薄膜の第2の端部で第2の幅とを有するように構成する段階、
を含み、
前記第1の幅は、前記第2の幅よりも広く、
前記第1の端部から前記第2の端部までの距離は、前記薄膜の前記長さを定義する、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素を設ける段階、
を更に含み、
前記電極要素は、該電極要素の前記長さにわたって二等分線に関して非対称である、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
第1の端部と第2の端部の間の距離として定義された長さを有する電極要素を設ける段階と、
前記電極要素を該電極要素の前記第1の端部で第1の幅と該電極要素の前記第2の端部で第2の幅とを有するように構成する段階と、
を更に含み、
前記第1の幅は、前記第2の幅よりも狭い、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第1の端部に近接する第1の点で崩壊状態まで前記薄膜を駆動するための第1の崩壊力と、第2の端部に近接する第2の点で崩壊状態まで該薄膜を駆動するための第2の崩壊力とを有するように該薄膜を構成する段階、
を更に含み、
前記第1の崩壊力は、前記第2の崩壊力よりも小さい、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
電極要素を設ける段階と、
前記第1の崩壊力と前記第2の崩壊力をもたらして前記第1の点と前記第2の点で実質的に等しい量で前記薄膜を撓ませるように前記電極要素を構成する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薄膜の前記長さが、前記第1の端部と前記第2の端部の一方で測定された該薄膜の幅の2倍よりも大きくなるように該薄膜を構成する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
超広帯域信号を送信及び受信するように前記薄膜を構成する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記薄膜を該薄膜の前記長さにわたって二等分側線に関して実質的に非対称になるように構成する前記段階は、
前記薄膜を実質的に台形形状に構成する段階、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項21】
薄膜と、
前記薄膜の振動モードを所定の周波数に調節するための薄膜周波数調節器と、
を含むことを特徴とするcMUT。
【請求項22】
前記薄膜周波数調節器は、長さの少なくとも一部分に沿って不均一な質量分布を有する前記薄膜を含むことを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項23】
前記薄膜周波数調節器は、前記薄膜に近接した質量負荷を含むことを特徴とする請求項22に記載のcMUT。
【請求項24】
前記質量負荷は、複数の別々の質量負荷要素を含むことを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項25】
前記質量負荷は、cMUTの電極要素であることを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項26】
前記質量負荷は、金であることを特徴とする請求項23に記載のcMUT。
【請求項27】
前記複数の質量負荷要素は、前記薄膜の周波数応答を修正することを特徴とする請求項24に記載のcMUT。
【請求項28】
前記薄膜は、複数の振動モードを有し、前記薄膜周波数調節器は、該複数の振動モードの少なくとも2つを調和的に関連付けるようになっていることを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項29】
前記薄膜は、基本周波数で振動するようになっており、前記薄膜周波数調節器は、該薄膜を該基本周波数の2倍に実質的に等しい周波数で振動するように調節することを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項30】
前記薄膜の振動モードに関連する位置に該薄膜に近接した電極要素を更に含むことを特徴とする請求項21に記載のcMUT。
【請求項31】
cMUTの振動モードを制御する方法であって、
薄膜を設ける段階と、
前記薄膜の目標振動周波数を判断する段階と、
前記薄膜の前記目標振動周波数を誘導するために、該薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
前記薄膜の前記目標振動周波数は、該薄膜の基本周波数の実質的に2倍であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する前記段階は、該薄膜の該長さの少なくとも一部分に沿って厚みが変動する薄膜を設ける段階を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記薄膜の長さの少なくとも一部分に沿って該薄膜の質量分布を変更する前記段階は、該薄膜の該長さの少なくとも一部分に沿って密度が変動する薄膜を設ける段階を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記薄膜は、第1の振動モードと該第1の振動モードの周波数の約2倍である第2の振動モードとを有し、該薄膜は、該第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、該第2の振動モードで超音波エネルギを受信するようになっていることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項36】
cMUTを製作する方法であって、
薄膜を設ける段階と、
所定の周波数でエネルギを受信するために不均一な質量分布を有するように前記薄膜を構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
不均一な質量分布を有するように前記薄膜を構成する前記段階は、該薄膜に近接して複数の質量負荷を設ける段階を含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第1の振動モードで超音波エネルギを送信し、かつ第2の振動モードで超音波エネルギを受信するように前記薄膜を適応させる段階を更に含み、
前記第2の振動モードは、前記第1の振動モードの周波数の約2倍である、
ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記薄膜の前記振動モードが調和的に関連付けられるように該薄膜を適応させる段階を更に含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記薄膜の振動モードに近接して電極要素を位置決めする段階を更に含むことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第1の電極要素と第2の電極要素とを有する多要素第1電極、
を含み、
前記第1及び第2の電極要素は、超音波を送信するようになっている、
ことを特徴とするcMUT。
【請求項42】
前記多要素第1電極は、cMUTのホット電極であることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項43】
前記第1及び第2の電極要素は、薄膜内に配置されていることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項44】
前記第1及び第2の電極要素は、基板に近接していることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項45】
前記第1の電極要素と前記第2の電極要素は、電気的に結合されていることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項46】
薄膜と、前記第1の電極要素と前記第2の電極要素の少なくとも一方を含む薄膜成形手段とを更に含むことを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項47】
前記多要素第1電極は、第3の電極要素を更に含み、前記第1の電極要素は、cMUTの第1の側面に近接し、前記第2の電極要素は、cMUTの他方の側面に近接し、該第3の電極要素は、cMUTの中央に近接していることを特徴とする請求項41に記載のcMUT。
【請求項48】
前記第1の電極要素と前記第2の電極要素は、側面電極要素対であり、超音波信号の送信中に薄膜を協働して成形するように互いに電気的に結合していることを特徴とする請求項47に記載のcMUT。
【請求項49】
下部電極を更に含み、
前記薄膜と前記下部電極は、電気的中立状態において間隙距離によって分離されており、
前記側面電極要素対は、超音波の送信中に前記間隙距離の1/3を越えて前記薄膜を撓ませるようになっている、
ことを特徴とする請求項48に記載のcMUT。
【請求項50】
前記側面電極要素対は、送信要素であり、前記第3の要素は、受信要素であり、該側面電極要素対の前記第1及び第2の電極要素の各々は、てこの作用の曲げを利用するようにcMUTのそれぞれの側面に位置していることを特徴とする請求項48に記載のcMUT。
【請求項51】
超音波を送受信する方法であって、
第1の電極要素と第2の電極要素とを組み込んだ多要素第1電極を有するcMUTを設ける段階と、
超音波を送信するために前記第1の電極要素及び前記第2の電極要素に第1の電圧を印加する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
超音波信号を受信するために前記第1の電極要素及び前記第2の電極要素にバイアス電圧を印加する段階を更に含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記受信超音波信号を光学的に感知する段階を更に含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記受信超音波信号を電気的に感知する段階を更に含むことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
cMUTを製作する方法であって、
上部導電体を設ける段階と、
前記上部導電体から間隙距離だけ分離した下部導電体を設ける段階と、
前記上部及び下部導電体の少なくとも一方を複数の電極要素に構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記上部及び下部導電体を電圧供給装置に電気的に結合するように適応させる段階を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記複数の前記電極要素の第1の電極要素に第1の電圧を供給する段階と、
前記複数の前記電極要素の第2の電極要素に第2の電圧を供給する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の導電体に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第2の導電体に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
前記犠牲層を除去する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の導電体は、前記第1の薄膜層と前記第2の薄膜層の間に配置されていることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の電極要素の該電極要素のうちの少なくとも2つを電気的に結合する段階を更に含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項61】
処理温度の表面を有する基板上にcMUTを製作する方法であって、
基板の表面に近接してエッチング液に対して抵抗性の第1の導電層を設ける段階と、
前記第1の導電層の一部分に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層の一部分をエッチングする前記エッチング液でcMUTをエッチングする段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第1の薄膜層の一部分に近接して第2の導電層を設ける段階と、
前記第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記処理温度は、約300℃よりも低いことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記基板は、内蔵回路を含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の導電層は、金を含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記犠牲層は、クロムを含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記基板として透明基板を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の導電層、前記第2の導電層、前記第1の薄膜層、及び前記第2の薄膜層のうちの少なくとも1つとして反射層を設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項69】
光信号を受信及び供給するようになった回路を前記基板に近接して設ける段階を更に含むことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項70】
エッチング液に対して抵抗性である、基板に近接したcMUT素子の第1の導電層と、
前記エッチング液で犠牲層をエッチングすることによって形成された空洞を定める、前記第1の導電層に近接したcMUTの第1の薄膜層と、
を含むことを特徴とするcMUT素子。
【請求項71】
前記第1の薄膜層に近接した第2の導電層と、
前記第2の導電層に近接した第2の薄膜層と、
を更に含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項72】
光信号及び電気信号の少なくとも一方を前記第1の導電層へ及びそこから誘導及び受信する前記基板に近接した回路を更に含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項73】
前記基板は、電気信号又は光信号の少なくとも一方が該基板を通過することを可能にすることを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項74】
前記第1の導電層は、金を含み、前記犠牲層は、クロムを含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項75】
前記第1の導電層の少なくとも1つは、約300℃よりも低い温度の前記基板に近接して置かれていることを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項76】
前記基板は、内蔵回路を含むことを特徴とする請求項70に記載の素子。
【請求項77】
表面を有する基板上にcMUTを製作する方法であって、
基板の表面に近接してエッチング液に対して抵抗性の第1の導電層を設ける段階と、
前記第1の導電層の少なくとも一部分に近接して犠牲層を設ける段階と、
前記犠牲層に近接して第1の薄膜層を設ける段階と、
前記第1の薄膜層の少なくとも一部分に近接して第2の導電層を設ける段階と、
前記第2の導電層に近接して第2の薄膜層を設ける段階と、
前記エッチング液で前記犠牲層の少なくとも一部分を除去する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項78】
前記基板の前記表面と第1の導電層との間に接着層を配置する段階から更に構成されることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
300℃よりも低い温度の前記第1の導電層、前記第2の導電層、及び前記犠牲層のうちの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記基板は、光信号又は電気信号の少なくとも一方が該基板を通過することを可能にするようになっていることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2008−510324(P2008−510324A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503069(P2007−503069)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008259
【国際公開番号】WO2005/087391
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504466834)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/008259
【国際公開番号】WO2005/087391
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504466834)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】
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