説明

非常操作手段を備える調節駆動装置

【課題】特にフラットに形成され、このフラットな構造に組み込まれた非常操作手段を包含する、可動の構成部材を調節するための調節駆動装置を提供する。
【解決手段】遊星歯車伝動装置2のリングギヤ22が、外歯列24を備え、外歯列24でもってハウジング7の筒状の収容部12により収容かつ案内され、リングギヤ22の外歯列24が、非常操作手段3のウォーム30と噛み合うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車のための調節ユニットであって、ハウジング内に格納され、駆動モータを介して駆動されるウォームホイール伝動装置と、ウォームホイール伝動装置を介して駆動される遊星歯車伝動装置と、遊星歯車伝動装置に作用する非常操作手段とを備える、車両のための調節ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖可能な開口部(フラップ、カバー、ウインドウ、可動ルーフ、カブリオレのルーフ等)の操作のために、伝動装置ユニットを備える電動モータを使用することが公知である。この場合、操作したい構成部材に応じて、増速あるいは減速が伝動装置により行われる。例えば自動車の車両ドア内のサイドウインドウを操作する場合、ウインドウの可及的急速な開放及び閉鎖が所望されている。このために、電動モータは増速伝動装置を備えて形成されている。別の例は、例えばカブリオレのトップの閉鎖フックである。カブリオレのトップは、トップを閉鎖する際に、トップの終端位置の近傍においてトップの残された残留閉鎖距離を閉鎖フックにより引き寄せられる。このとき、トップは、その最終的な位置にもたらされるだけでなく、トップの材料は、適当に張設される。この種の閉鎖駆動装置は、適当に設計され寸法設定された電動モータのためのかなりの組み付けスペースを必要とする。このような組み付けスペースは、一般に、可動のトップ、特にソフトトップには存在しない。対策として、より小さな、しかしより非力な電動モータが用いられる。このような電動モータは、減速伝動装置により閉鎖フックを操作し、これにより、電動モータのより高い回転数及びその減速比を介して必要な引き締め力を伝達している。
【0003】
もちろん、この種の調節駆動装置/閉鎖駆動装置は、コンビ車両あるいはステーションワゴンのトランクルーム又は後部扉にも使用可能である。この場合においても、電動モータ及び電動モータの下流に接続される減速伝動装置あるいは増速伝動装置は、要求される仕事量及び動作進行に応じて設計される。
【0004】
電動モータ及び増速伝動装置あるいは減速伝動装置のこの種の組み合わせは、今日、標準となっており、従来慣用の液圧式の調節駆動装置に代わって目立って使用されるようになってきている。
【0005】
増速伝動装置あるいは減速伝動装置として、歯車伝動装置、平歯車伝動装置又は遊星歯車伝動装置が使用可能である。また、しばしば、ウォーム伝動装置も使用される。これは、ウォーム伝動装置が一般に特に低騒音であり、大きな力を伝達することができるからである。
【0006】
EP1033272B1号は、トップ駆動装置のための3段の伝動装置を示している。第1の段はウォーム伝動装置からなる。ウォームは、ウォームホイールに噛み合っており、ウォームの軸方向で可撓性の駆動軸により駆動される。ウォームホイールの軸には、歯車が取り付けられている。この歯車は、相対回動不能にウォームホイールに結合されている。歯車は、次の変速段の別の歯車に噛み合う。変速比は減速比である。
【0007】
上記の別の歯車は、機能上、同時に遊星歯車伝動装置のためのプラネタリキャリヤをなしている。少なくとも2つのプラネタリギヤは、回転可能にプラネタリキャリヤ(歯車)に支承されている。プラネタリキャリヤの回転時、プラネタリギヤは、プラネタリキャリヤの中心軸線周りに旋回される。プラネタリギヤは、プラネタリキャリヤの軸線の近傍でより小さなサンギヤに噛み合っている。これにより、遊星歯車伝動装置は、この伝動装置の第3の変速段をなしている。伝動装置全体は、実質的に平たんな組み付けプレートに取り付けられている。形状及び寸法に関して伝動装置の歯車に適合された閉鎖カバーは、全体的な共通の伝動装置を覆うように取り付けられ、平たんなプレートにねじ止めされる。カバーは、特にフラットに設計されており、組立固定手段及び装置の他に、共通の伝動装置のすべての主要な軸受箇所も有している。平たんなプレートの領域で、プラネタリキャリヤ、ひいてはサンギヤの軸が、ハウジングを貫通している。軸の端部は、連続した中央の溝を備えるフランジとして形成されている。この溝を備えたフランジは、操作したい別の機構/構成部材との結合平面をなしている。
【0008】
DE102004046098A1号において、車両のためのトップ閉鎖装置が公知である。この公知のトップ閉鎖装置において、電動モータは伝動装置ユニットを駆動している。伝動装置ユニットは、他方、トップ閉鎖装置の閉鎖フックに接続されている。電動モータは、伝動装置ユニットの傘歯車伝動装置に作用する。傘歯車伝動装置は、軸を介してウォームに接続されている。ウォームはウォームホイールに噛み合っている。電動モータの導入される駆動トルクの2度にわたる変向は、別の伝動装置を駆動するために行われている。この別の伝動装置は、遊星歯車伝動装置である。遊星歯車伝動装置において、サンギヤは固定に、前述のウォーム伝動装置のウォームホイールに接続されている。サンギヤは、ウォームホイールから突出している。サンギヤの突出した領域には、3つのプラネタリギヤが噛み合っている。さらにプラネタリギヤは、サンギヤに対して同心的に配置されたリングギヤに噛み合っており、リングギヤの内歯列に噛み合っている。計3つのプラネタリギヤは、支承部を介してプラネタリキャリヤに配置されている。これにより、プラネタリギヤの相互の位置は常に保証されている。
【0009】
さらに、遊星歯車伝動装置のリングギヤは、外歯列を有しており、この外歯列には、90°の角度で作用するウォームが噛み合っている。このウォームは、閉鎖装置ハウジング内に閉鎖装置ハウジングの鉛直の延在長さにわたって配置されている軸の構成部分であり、パッセンジャルーム側に多角穴部を有している。多角穴部を備えるウォームは、閉鎖装置の非常操作のために役立つ。適当な工具、例えば六角棒スパナがハウジングの開口を通して非常操作ウォームの多角穴部に差し込まれ、これにより、ウォームを回転させることができる。通常運転中、リングギヤの位置は、リングギヤの外歯列を介して、かつ非常操作ウォームにより固定される。その結果、電動モータの駆動トルクが作用すると、すべての伝動装置部品、特にプラネタリギヤを備えるプラネタリキャリヤは回転し、この回転は適当な接続手段を介して閉鎖フックに伝達される。非常操作ウォームは、直接、リングギヤの外歯列に噛み合っている。非常操作ウォーム及び遊星歯車伝動装置は、直立した鉛直位置にある。
【0010】
DE102005015166A1号も、手動式の非常操作手段を備えるカブリオレ車両のための調節ユニットを示している。この公知の調節ユニットでは、電動モータの軸方向の延長線上で、駆動軸が少なくとも1つのウォーム伝動装置のためのウォームとして形成されている。ウォームは、それぞれ異なるリードの領域を備えて形成されている。ウォームの少なくとも1つの領域において、ウォームは、比較的小さなリード角を有するリードを有している。その結果、この領域では、ウォームに噛み合うウォームホイールが、ウォームの回転時に回転可能であるが、比較的小さなリード角により、自動締まりが非操作時に生じる。
【0011】
この例では、このウォームの別の領域が、やはり、比較的小さなリード角を有するリードを備えて形成されている。このウォームのリード方向は、第1のウォームのリード方向とは逆向きに形成されている。ここでも、ウォームの回転時、ウォームと噛み合うウォームホイールが回転される。両ウォームが、比較的小さなリード角により、リード方向で互いに逆向きに作用するように自動締まりになるので、伝動装置、又は伝動装置に接続される運動させたい部材の自動操作は生じ得ない。非常操作手段として、ウォームの別の延在領域に、ウォームの部分領域が、著しく大きなリードを備えて形成されている。この大きなリードには、対応するウォームホイールが噛み合っている。この大きなリードにより、ウォームホイールの回転時、ウォームの回転が実施可能である。その結果、この領域は、伝動装置全体のための非常操作手段として機能する。小さなリード角を有する前述の両ウォーム伝動装置の自動締まりを無効とするために、非常操作手段のウォームホイールは、別の歯車に固定に接続されている。この別の歯車はその直径部で、比較的小さなリード角を有する伝動装置の前述のウォームホイールの歯列に噛み合っている。このとき、回転は自動締まりを無効にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP1033272B1号
【特許文献2】DE102004046098A1号
【特許文献3】DE102005015166A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、特にフラットに形成され、このフラットな構造に組み込まれた非常操作手段を包含する、可動の構成部材を調節するための調節駆動装置を提供することである。閉鎖駆動装置は、少数の部材で簡単かつ安価に製造可能であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために本発明の構成では、遊星歯車伝動装置のリングギヤは、外歯列を備え、外歯列を介してハウジングの筒状の収容部により収容かつ案内され、リングギヤの外歯列は、非常操作手段のウォームと噛み合うようにした。
【0015】
有利な態様は、従属請求項に係る発明である。
【0016】
好ましい形態において、前記ハウジングの前記筒状の収容部は、部分的にハウジング下側部分とハウジング上側部分とにより形成される。
【0017】
好ましい形態において、前記ウォームは前記ハウジングの筒状の収容部内に収容されており、該筒状の収容部は半分ずつ前記ハウジング下側部分と前記ハウジング上側部分とにより形成される。
【0018】
好ましい形態において、前記ウォームは、該ウォームの、前記リングギヤと噛み合う部分とは反対側の端部が、第1の傘歯車として形成されている。
【0019】
好ましい形態において、前記ウォームの前記第1の傘歯車は、前記ウォームの中心軸線に対して直交して配置された第2の傘歯車と噛み合い、該第2の傘歯車の軸は、少なくとも片側で前記ハウジングから突出している。
【0020】
好ましい形態において、前記第2の傘歯車の前記軸は、少なくとも一方の端部に多角穴部又は多角柱部を備える。
【0021】
好ましい形態において、前記第2の傘歯車は外径部において、前記ハウジング、特に前記ハウジング下側部分の筒状の収容部内に収容され案内される。
【0022】
好ましい形態において、前記ウォームは前記ウォーム歯列の外径部において、前記筒状の収容部内で案内される。
【0023】
好ましい形態において、前記リングギヤの前記外歯列の外面が、柱体の、歯列により中断された外面に相当する。
【0024】
好ましい形態において、前記ウォームは、ほぼ前記遊星歯車伝動装置の平面内に配置されており、前記第2の傘歯車は、ほぼ前記ウォームホイール伝動装置の平面内に配設されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、車両の運動させたい構成部材が、電動モータと、電動モータの下流に接続された伝動装置ユニットとにより、終端位置間あるいは任意の中間位置間で調節可能であるという一般的な思想に基づく。この場合、調節したい構成部材の運動を極めて迅速に実施するか、又は特に高い力を伝達することができる。極めて迅速な調節運動の場合、しばしば、単純な伝動装置を備える電動モータが、調節したい構成部材に連結される。選択された変速比及び電動モータの駆動回転数に応じて、調節速度を決定することができる。
【0026】
より大きな力の伝達の場合、しばしば、相前後して接続される複数の伝動装置が使用される。これらの伝動装置は、互いに並列にも直列にも配置可能である。より大きな力の伝達の場合、少なくとも1つのウォーム伝動装置が使用されると有利であることが判っている。この場合、ウォームは、しばしば、電動モータの駆動軸の延長線上に配置されている。ウォームは、ウォームホイールの外歯列に噛み合う。このウォーム伝動装置の使用の配置構成は、この伝動装置の自動締まりが非操作時に生じるように、ウォームホイールに対するウォームのねじ運動が選択可能であることにより、特別な利点を示す。これにより、簡単に、伝動装置の理由のない調節が勝手に行われることがないことが保証されている。
【0027】
さらに、ウォーム伝動装置の使用時、衝撃的な荷重及び力のピークが発生しないという利点を示す。ウォームのリードに応じて選択される高い減速比により、大きな力及び大きなトルクが伝達可能である。この種の伝動装置は、特に低騒音に作動する。
【0028】
必要とされる組み付けスペースを減少させるために、ウォーム伝動装置の省スペースの配置が特に有利であり、本発明により、ウォームホイールに対して平行に、遊星歯車伝動装置が配置されている。2つの伝動装置がその構成部材により比較的フラットに形成可能であるので、両伝動装置のこの平行の構造ですら、小さな組み付けスペースを必要とするにすぎない。これにより、両伝動装置は、有利には1つの共通のハウジング内に格納可能である。2つの伝動装置ハウジング半部相互の対応する寸法の選択は、ハウジングの簡単な形成及び組立を可能にする。これにより、2つのハウジング半部の分離平面により、すべての主要な構成部材、特に電動モータの収容部及び固定部が、ハウジング内に組み込まれる。別個に形成される支承点又は固定手段のための開口により、ハウジングは、迅速かつ簡単に組立可能であり、車両内で位置決め可能である。
【0029】
電動モータ及び伝動装置を収容するためのハウジングの構成スペース及び重量を最適に形成するために、ハウジングは、高い剛性を有する材料から製造されるか、あるいは金属及び/又は複合材料からなることができる。もちろん、駆動装置又は伝動装置の部材を少なくとも部分的にプラスチックから製造することも可能である。
【0030】
本発明に応じて、ウォーム伝動装置は直接駆動モータに連結されている。ウォーム伝動装置のウォームホイールに対して平行に、遊星歯車伝動装置が配置されている。遊星歯車伝動装置は、ウォームホイールから切り離されて、ウォームホイールに対して平行に配置されている。その結果、リングギヤ及びプラネタリギヤは、ウォーム伝動装置のウォームホイールから自由に運動可能である。両伝動装置間の唯一の固定の接続として、サンギヤが設けられている。サンギヤは、ウォーム伝動装置のウォームホイールに固定に接続されている。遊星歯車伝動装置の、ウォームホイールとは反対側に配置されたプラネタリキャリヤを介して、プラネタリギヤは、固定にプラネタリキャリヤに結合された軸により位置決めされている。プラネタリギヤの固定された軸は、回転軸として形成されていてもよい。プラネタリキャリヤは、本発明の一態様では、例えば閉鎖ディスク状に、遊星歯車伝動装置全体を覆うように形成されている。
【0031】
遊星歯車伝動装置の、電動モータに対向して位置する側には、ハウジング内に、非常操作手段のためのウォームが設けられている。このウォームは、遊星歯車伝動装置のリングギヤの外歯列に噛み合い、ウォームの自由端で、傘歯車を備える傘歯車伝動装置を介してハウジングの外部から操作可能である。電動モータを介した通常の駆動時、非常操作手段は無負荷である。遊星歯車伝動装置のリングギヤの位置は、非常操作手段のウォームとの接続を介して固定されている。非常運転時には、非常操作手段のウォームを介して、回転がリングギヤに導入される。回転は、リングギヤの内歯列により、リングギヤに噛み合うプラネタリギヤと、プラネタリギヤのプラネタリキャリヤとによって、調節したい構成部材に伝達される。このとき、ウォーム伝動装置の駆動ウォーム及びウォームホイールは回転しないので、プラネタリギヤだけが、固定のサンギヤ周りに公転させられる。この場合、いわば駆動の作用方向の反転が生じる。
【0032】
厚さ寸法が最大で駆動モータの外径寸法に等しい、特にフラットに形成された伝動装置ハウジングの形態により、この種の調節駆動装置/閉鎖駆動装置を、最小の寸法を有する組み付けスペースにも組み付けることが可能である。最小の寸法を有する組み付けスペースは、特に、車両の可動のルーフ又は後部扉の前側の収容領域であってよい。この場合、調節駆動装置/閉鎖駆動装置は、調節したい部材を終端位置においてロック又はポジショニングするために使用される。調節したい構成部材は、例えば車両ルーフ又は後部扉の他に、別のフラップ、例えばトランクルーム、可動ルーフ又は座席調節、窓操作等であってよい。本例では、調節駆動装置が閉鎖フックの形の閉鎖手段に作用結合し、閉鎖手段が伝動装置ユニットに対して直交して配置あるいは配向されていてよい。
【0033】
非常操作は、非常操作ウォームの端部に配置された傘歯車を介してなされる。この場合、非常操作手段のウォームの中心軸線に対して直交して、傘歯車の軸がハウジングから突出している。この軸は、多歯の外側輪郭又は内側輪郭を有していてよい。この多歯の輪郭は、市販の工具、例えば六角穴用又は六角用のレンチを受容するためのアダプタとして役立つ。そのため、この操作により、傘歯車は非常操作ウォームの傘歯車に作用し、これにより、遊星歯車伝動装置のリングギヤを回転させることができる。通常運転中、非常操作工具を受容する開口は、例えば適当なカバーにより閉鎖されている。
【0034】
本発明のその他の重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面及び/又は図面の説明から看取される。
【0035】
前述した特徴及び後述する特徴は、それぞれ提示した組み合わせのみならず、それとは異なる組み合わせ又は単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能であることは自明である。
【0036】
以下に、本発明の有利な実施の形態を図面に示し、詳細に説明する。同一の符号は、同一、類似又は機能同一の構成部材を指している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】片側で開放されたハウジングを備える閉鎖駆動装置の概略平面図である。
【図2】ウォーム伝動装置、遊星歯車伝動装置及び非常操作手段を備える片側で開放されたハウジングの概略斜視図である。
【図3】非常操作手段を備える伝動装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、ハウジング7を備える調節駆動装置/閉鎖駆動装置1の平面図であり、図1において、ハウジング7は片側で開放されている。ハウジング7の看取可能な部分は、ハウジング7の下側部分10に相当する。ハウジング7の角隅領域には、駆動モータ5、有利には電動モータが収容されており、駆動モータ5の位置は、形状結合(Formschluss:形状による束縛)を介してハウジング7に固定されている。駆動モータ5には、電気的な接続部6を介して電気的なエネルギが供給される。駆動モータ5の、ハウジング7に面した側では、駆動モータ5の駆動軸が延長されてハウジング7内に突入している。この領域は、実質的に駆動ウォーム16として形成されている。この駆動ウォーム16は、自由な状態でハウジング内に突入しており、運転時にウォームホイール18による曲げを受けるので、電動駆動装置5とは反対側の端部で支持部17に支承あるいは支持されている。
【0039】
駆動ウォーム16は、駆動ウォーム16のねじ状の歯列でウォームホイール18に噛み合っている。ウォームホイール18は、伝動装置全体のために駆動歯車18として機能している。ウォームホイール18は、駆動ウォーム16に対応する歯幾何学形状を有しており、ハウジング7内に軸25を介して回転可能に支承されている。ウォームホイール18に対して平行に、小さな間隔を置いて、遊星歯車伝動装置2が配置されている。ウォームホイール18は、実質的にハウジング7(ハウジング下側部分10及びハウジング上側部分11からなるハウジング7)の筒状の収容部12により収容され案内される。この筒状の収容部12は、部分円状にハウジング下側部分10及びハウジング上側部分11に設けられているので、ハウジング7が閉鎖されているとき、ウォームホイール18及びリングギヤ22の完全な案内が保証されている。
【0040】
遊星歯車伝動装置2のリングギヤ22は、内歯列23及び外歯列24を有している。内歯列23は、3つのプラネタリギヤ21と噛み合うために役立つ。プラネタリギヤ21は、小歯車として回転可能に軸26を介してプラネタリキャリヤ35に配置されている。その結果、プラネタリギヤ21の相互間の位置は、不変に保持されている。リングギヤ22の中心方向で、プラネタリギヤ21はサンギヤ20の外歯列に噛み合っている。サンギヤ20は、形状結合により固定にウォームホイール伝動装置4のウォームホイール18に結合されている。
【0041】
リングギヤ22の外歯列24の歯幾何学形状は、外歯列24の歯先がハウジング7の筒状の収容部12内で案内可能であるように形成されている。遊星歯車伝動装置2に関してウォームホイール伝動装置4の反対側には、非常操作手段3がハウジング7内に設けられている。非常操作手段3は、ウォーム30の形態でリングギヤ22の外歯列24に噛み合っている。ウォーム30とリングギヤ22の外歯列24との噛み合いにより、ウォーム30は自動締まりが生じるように機能するので、リングギヤ22は、通常運転中、固定される。リングギヤ22とウォーム30との間の自動締まりは、ウォーム30の適当に小さなねじ状のリードにより達成される。
【0042】
電動モータ5の運転時、駆動ウォーム16は回転される。これにより、この回転はウォームホイール18に伝達される。サンギヤ20とウォームホイール18との間の固定の結合により、サンギヤ20はウォームホイール18に対して同期的に回転する。その結果、プラネタリギヤ21及びサンギヤ20の歯の噛み合いにより、プラネタリギヤ21はプラネタリギヤ21の軸26に基づいて回転される。この回転は、軸26を介してプラネタリギヤ21に連結されているプラネタリキャリヤ35の回転を生じる。
【0043】
ウォームホイール伝動装置4、遊星歯車伝動装置2及び非常操作手段3のアッセンブリは、閉鎖駆動装置1全体の特にフラットな形態を実現する。ハウジング下側部分10とハウジング上側部分11とにハウジング7を分割したことは、迅速な組立にとって極めて有利である。このことは、両ハウジング部分10,11の接触領域に存在するハウジング固定手段13により助成される。その結果、両ハウジング部分10,11は、簡単かつ容易に組立可能である。孔14を介して、適当な固定手段の使用時、両ハウジング部分10,11は、互いにねじ止め可能である。別のこのような孔14は、調節駆動装置/閉鎖駆動装置1全体の組立及び固定のために用いられることもできる。
【0044】
図2は、調節駆動装置/閉鎖駆動装置1の、片側で開放されたハウジング7の斜視図である。図2には、ウォームホイール伝動装置4、ウォームホイール18に対して平行に配置された遊星歯車伝動装置2、及び遊星歯車伝動装置2のリングギヤ22と噛み合う非常操作手段3が特に良好に看取可能である。非常操作手段3のウォーム30は、本実施の形態では、ハウジング下側部分10及びハウジング上側部分11の半筒状の収容部27内に収容され案内される。ウォーム30は、ウォーム30の自由端が、第1の傘歯車31として形成されている。第1の傘歯車31は第2の傘歯車32に噛み合っている。第2の傘歯車32は、固定に軸33に結合されている。軸33は、少なくともハウジング7の側面から突出している。第2の傘歯車32は、第2の傘歯車32の外径部において円柱状に形成されているので、ハウジング下側部分10の筒状の収容部28内に収容され案内される。ハウジング7から突出した軸33は、非常操作工具を受容するために、雄の多角形部若しくは雌の多角形部又は多角穴部若しくは多角柱部を有している。その結果、非常操作工具の係合時、軸33を介した第2の傘歯車32の回転が行われる。この回転は、第1の傘歯車31と第2の傘歯車32との間の傘歯車歯列を介してウォーム30に伝達される。ウォーム30自体は、この回転を、ウォーム30とリングギヤ22との間の歯の噛み合いによりリングギヤ22に伝達する。これにより、筒状の収容部12内に収容され案内されたリングギヤ22は、回転される。リングギヤ22の内歯列23を介して、プラネタリギヤ21は自転される。このプラネタリギヤ21の自転は、軸26によりプラネタリキャリヤ35に伝達される。プラネタリキャリヤ35は、図3に示されているように、伝動装置のための閉鎖ディスク35として設けられている。これにより、連行子のための開口36により、プラネタリキャリヤ/閉鎖ディスク35の回転は、閉鎖部材、例えば閉鎖フック又はその他の機構に伝達される。
【0045】
このプラネタリキャリヤ35が非常操作手段3を介して回転されるとき、ウォームホイール18に固定に結合されたサンギヤ20は、ウォームホイール18と駆動ウォーム16との間の自動締まりにより位置固定されたままである。これにより、駆動モータ5の軸の回転は生じない。
【0046】
図3に示した非常操作手段3を備える伝動装置の断面図は、ウォームホイール伝動装置4、遊星歯車伝動装置2及びプラネタリキャリヤ35の間の協働を示している。プラネタリキャリヤ35は、調節したい部材のための連行子のための開口36による回転運動の伝達のために役立つ。図3は、ハウジング7を、ハウジング下側部分10及びハウジング上側部分11が閉鎖された状態で示している。ウォームホイール18は、既に図2で説明したように、形状結合によりサンギヤ20に結合されている。サンギヤ20は、滑動ディスク38を介してハウジング下側部分10の内面に支持されている。ウォームホイール18は、ウォームホイール18の歯列とサンギヤ20の収容領域との間において後退あるいは凹欠されて形成されている。その結果、プラネタリギヤ21の軸26は、僅かにこの後退あるいは凹欠された凹部に突入可能である。軸26の、ウォームホイール18への突出は、プラネタリギヤ21が滑動リング39によりウォームホイール18の内径部に少なくとも部分的に載置され、これにより軸方向で案内されるので、必要である。リングギヤ22は、ハウジング下側部分10のステップ状の段部により、軸方向で案内される。ステップ状の段部は、滑動リング37として形成されている。この滑動リング37は、一体的にリングギヤ22から突出するように形成されていてもよい。滑動リング37は、リングギヤ22の軸方向の位置を規定するために役立つ。滑動リング37の狭幅の形態は、ハウジング上側部分11及びプラネタリキャリヤ35に対するリングギヤ22の軸方向の摩擦を大幅に低減する。プラネタリキャリヤ35は、プラネタリギヤ21の軸26を収容するために役立ち、プラネタリキャリヤ35の外径部は、有利には円柱状に形成され、ハウジング上側部分11内で案内される。プラネタリキャリヤ35は、連行子のための開口36を有している。連行子は、ピン又はプラネタリキャリヤ35に係合するねじの形態で形成されていてよい。もちろん、連行子のあらゆる別の実施の形態も可能であり、開口36の代わりに、突出した連結部材が設けられていてもよい。
【0047】
プラネタリキャリヤ35及びサンギヤ20並びにウォームホイール18は、実質的に軸25により支承される。本実施の形態では、プラネタリキャリヤ35の貫通領域において、軸25はプラネタリキャリヤ35に圧入されていてよい。軸25を一体的にプラネタリキャリヤ35から突出させてもよい。軸25の、プラネタリキャリヤ35とは反対側で、軸25は、ハウジング下側部分10を貫通しており、ハウジング下側部分10の外面にピンリテーナ又はボルトリテーナ40により軸方向で保持され固定されている。
【符号の説明】
【0048】
1 調節ユニット、閉鎖駆動装置、調節駆動装置
2 遊星歯車伝動装置
3 非常操作手段
4 ウォームホイール伝動装置
5 駆動モータ
6 電気的な接続部
7 ハウジング
10 ハウジング下側部分
11 ハウジング上側部分
12 筒状の収容部
13 ハウジング固定手段
14 孔
16 駆動ウォーム
17 駆動ウォームの支持部
18 ウォームホイール、駆動歯車
20 サンギヤ
21 プラネタリギヤ
22 リングギヤ
23 内歯列
24 外歯列
25 軸、サンギヤの軸
26 軸、プラネタリギヤの軸
27 筒状の収容部
28 筒状の収容部
30 ウォーム
31 第1の傘歯車
32 第2の傘歯車
35 プラネタリキャリヤ、閉鎖ディスク
36 連行子のための開口
37 滑動リング、緊締リング
38 滑動ディスク
39 滑動ディスク
40 ピンリテーナ、ボルトリテーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車のための調節ユニット(1)であって、
‐ハウジング(7)内に格納され、駆動モータ(5)を介して駆動されるウォームホイール伝動装置(4)と、
‐前記ウォームホイール伝動装置(4)を介して駆動される遊星歯車伝動装置(2)と、
‐該遊星歯車伝動装置(2)に作用する非常操作手段(3)と、
を備える、車両のための調節ユニット(1)において、
‐前記遊星歯車伝動装置(2)のリングギヤ(22)は、外歯列(24)を備え、該外歯列(24)を介して前記ハウジング(7)の筒状の収容部(12)により収容かつ案内され、
‐前記リングギヤ(22)の前記外歯列(24)は、前記非常操作手段(3)のウォーム(30)と噛み合う、
ことを特徴とする、車両のための調節ユニット。
【請求項2】
前記ハウジング(7)の前記筒状の収容部(12)は、部分的にハウジング下側部分(10)とハウジング上側部分(11)とにより形成される、請求項1記載の車両のための調節ユニット。
【請求項3】
前記ウォーム(30)は前記ハウジング(7)の筒状の収容部(27)内に収容されており、該筒状の収容部(27)は半分ずつ前記ハウジング下側部分(10)と前記ハウジング上側部分(11)とにより形成される、請求項1又は2記載の車両のための調節ユニット。
【請求項4】
前記ウォーム(30)は、該ウォーム(30)の、前記リングギヤ(22)と噛み合う部分とは反対側の端部が、第1の傘歯車(31)として形成されている、請求項1記載の車両のための調節ユニット。
【請求項5】
前記ウォーム(30)の前記第1の傘歯車(31)は、前記ウォーム(30)の中心軸線に対して直交して配置された第2の傘歯車(32)と噛み合い、該第2の傘歯車(32)の軸(33)は、少なくとも片側で前記ハウジング(7)から突出している、請求項1及び4記載の車両のための調節ユニット。
【請求項6】
前記第2の傘歯車(32)の前記軸(33)は、少なくとも一方の端部に多角穴部又は多角柱部を備える、請求項1から4までのいずれか1項及び5記載の車両のための調節ユニット。
【請求項7】
前記第2の傘歯車(32)は外径部において、前記ハウジング(7)、特に前記ハウジング下側部分(10)の筒状の収容部(28)内に収容され案内される、請求項1から6までのいずれか1項又は複数項記載の車両のための調節ユニット。
【請求項8】
前記ウォーム(3)は前記ウォーム歯列の外径部において、前記筒状の収容部(27)内で案内される、請求項1から7までのいずれか1項又は複数項記載の車両のための調節ユニット。
【請求項9】
前記リングギヤ(22)の前記外歯列(24)の外面が、柱体の、歯列により中断された外面に相当する、請求項1から8までのいずれか1項又は複数項記載の車両のための調節ユニット。
【請求項10】
前記ウォーム(30)は、ほぼ前記遊星歯車伝動装置(2)の平面内に配置されており、前記第2の傘歯車(32)は、ほぼ前記ウォームホイール伝動装置(4)の平面内に配設されている、請求項1から9までのいずれか1項又は複数項記載の車両のための調節ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−47339(P2012−47339A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183548(P2011−183548)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】