説明

非接触型データ受送信体

【課題】 非接触型データ受送信体の厚さの増大を抑えるとともに、金属を少なくとも含む物品に接しても、ICチップの作動起電力を十分上回る起電力が誘起されて使用できる非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】 ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットと、このインレットを構成するアンテナおよびICチップを覆うように配された磁性体層とを備えてなる非接触型データ受送信体において、磁性体層を、その膜厚において、通信距離に依存しない領域αおよび領域βと、通信距離に依存する領域γとを備え、領域γが、領域αと領域βの間に位置するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICタグなどのRFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また、外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体が提案されている。
【0003】
非接触型データ受送信体の一例であるICラベルは、リーダ/ライタからの電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICラベル内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、この信号がICラベルのアンテナから発信される。
ICラベルから発信された信号は、リーダ/ライタのアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別等のデータ処理が行われる。
【0004】
これらのICラベルが作動するためには、リーダ/ライタから発信された電磁波がICラベルのアンテナに十分取り込まれて、ICチップの作動起電力以上の起電力が誘導されなければならないが、ICラベルを金属製物品の表面に貼付した場合には、金属製物品の表面では磁束が金属物品の表面に平行になる。このため、ICラベルのアンテナを横切る磁束が減少して誘導起電力が低下するため、ICチップの作動起電力を下回り、ICチップが作動しなくなるという問題があった(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
図2は、ICラベルを金属物品の表面に載置した場合の、磁束の流れを示した模式図である。リーダ/ライタ101から発生した磁束102が金属物品103の表面では平行になるため、金属物品103の表面に載置されたICラベル104のアンテナ105を通過する磁束が減少し、アンテナ105に誘起される起電力が低下するため、ICチップ106が作動しなくなる。
【0006】
そこで、金属物品の上に載置しても、ICチップが作動するようにするために、フェライトコアにアンテナを巻いて、このアンテナの軸心が金属製物品の表面の磁束の方向と平行になるように配置し、アンテナ面を通過する磁束を増大させて、誘導起電力を増大させようとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図3は特許文献1の実施の形態によるICタグの斜視図で、角形のフェライトコア115の周囲にアンテナ111を巻き、アンテナ111が巻かれていない部分にはベース基材114を介してフェライトコア115の上にICチップ112とコンデンサ113などが搭載されている。
このICタグの角型のフェライトコア115の平面部(図3の下面)が金属物品の表面に貼付されると、金属物品の表面に平行な磁束がフェライトコア115を通るので、アンテナ111内を直角に通過するため、所要の誘起電圧が発生し、ICチップ112が作動する。
【0008】
一方、アンテナを平面状に形成して、そのアンテナの下面に設けた磁芯部材に磁束を通過させることによって、平面状に形成したアンテナ内に磁束を通過させて、アンテナに誘導起電力を発生させるとともに、磁芯部材の下面に導電部材を設けて、載置する物品からICラベルへの影響を防止しようとする提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
図4は特許文献2の実施の形態を示す断面図である。ICラベル用アンテナ121は、平面内で渦巻き状に巻回された導体121aからなり、ICラベル用アンテナ121の片面に接着された板状またはシート状の磁芯部材123と、この磁芯部材123の下面に導電材部124を備えている。
磁芯部材123は、ICラベル用アンテナ121が設けられたベース基材の他の面に、ICラベル用アンテナ121の一部を横断して、一方の端部がICラベル用アンテナ121の外側に出て、他の端部がICラベル用アンテナ121の中心部(内部)122に来るように積層される。
【0010】
このように磁芯部材123を積層すると、磁束は、磁芯部材123の一方の端部から入り、他の端部から抜けていくため、他の端部から出た磁束がICラベル用アンテナ121の内部を通過するようになり、導体121aにより形成されたICラベル用アンテナ121に誘導起電力が発生する。このため、このICラベルを物品125の表面に取付けて、ICラベル周囲の磁束方向がICラベル用アンテナ121の表面と平行になっても、磁束はICラベル用アンテナ121内を通過するようになる。これにより、ICチップを作動させるのに十分な電圧が誘導されるため、ICチップが確実に作動する。
【0011】
さらに、この実施の形態では、ICラベル用アンテナ121が設けられたベース基材の他方の面に磁芯部材123を覆うように導電部材124が積層接着されているので、導電部材124が物品への電波の通過を遮蔽することになる。従って、ICラベル用アンテナ121は物品125が金属であるか否かに係わらず、その影響を受けることが少なくなり、物品125の表面が金属により形成されていても、その金属面に生じる渦電流などによる損失は発生せず、RFID用タグは、金属製物品125に取付けても確実に動作することになる。
【0012】
しかしながら、特許文献1では、誘導起電力を増大させるために、アンテナ111を通過する磁束を増大させようとしてアンテナ111の径を大きくすると、ICラベルの厚さが増大するという問題がある。
一方、特許文献2は、ベース基材の一方の面に磁芯部材と導電部材を設けるために、この場合もICラベルの厚さが増大するという問題がある。
【非特許文献1】寺浦信之監修、「RFタグの開発と応用−無線ICチップの未来−」、初版、シーエムシー出版、2003年2月28日、p121、図2
【特許文献1】特開2003−317052号公報
【特許文献2】特開2003−108966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、非接触型データ受送信体の厚さの増大を抑えるとともに、金属を少なくとも含む物品に接しても、ICチップの作動起電力を十分上回る起電力が誘起されて使用できる非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットと、前記インレットを構成するアンテナおよびICチップを覆うように配された磁性体層とを備えてなる非接触型データ受送信体であって、前記磁性体層は、その膜厚において、通信距離に依存しない領域αおよび領域βと、通信距離に依存する領域γとを備え、前記領域γは、前記領域αと前記領域βの間に位置する非接触型データ受送信体を提供する。
【0015】
かかる構成によれば、非接触型データ受送信体は、インレットを構成するアンテナまたはICチップのいずれか一方、あるいは、これらの両方を覆うように磁性体層が配されることにより、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉されるため、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層は、アンテナまたはICチップのいずれか一方、あるいは、これらの両方を覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。
【0016】
上記構成の非接触型データ受送信体において、前記領域γは、アンテナを構成するコイル部の厚みを下限とし、ICチップの厚みを上限とする範囲であることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、領域γでは、磁性体層の膜厚を増減することにより、非接触型データ受送信体の通信距離を所望の範囲に設定することができる。
【0018】
上記構成の非接触型データ受送信体において、前記領域γにおける通信距離は、前記磁性体層の膜厚に対して単調増加することが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、領域γでは、磁性体層の膜厚を増減することにより、非接触型データ受送信体の通信距離を所望の範囲に設定することができる。
【0020】
上記構成の非接触型データ受送信体において、前記磁性体層は、少なくともセンダストの磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂とから構成されていることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、他の磁性微粒子を用いた場合よりも、磁性体層を磁束が通り易くなり、磁束がアンテナに補足され易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の非接触型データ受送信体は、インレットを構成するアンテナまたはICチップのいずれか一方、あるいは、これらの両方を覆うように磁性体層を配することによって、少なくとも金属を含む物品に接した場合であっても、アンテナにICチップを作動させるのに十分な誘導起電力が発生する。また、本発明の非接触型データ受送信体は、磁性体層の膜厚を増減することにより、非接触型データ受送信体の通信距離を所望の範囲に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施した非接触型データ受送信体について詳細に説明する。
【0024】
(非接触型データ受送信体の第一の実施形態)
図1は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、ベース基材11と、その一方の面に設けられ、互いに接続されたアンテナ12およびICチップ13とからなるインレット14と、これらアンテナ12およびICチップ13を覆うように配された磁性体層15とから概略構成されている。また、アンテナ12は、回路をなすコイル部12a、および、コイル部12aとICチップ13を接続するための接点(図示略)から構成されている。
【0025】
非接触型データ受送信体10において、ベース基材11の一方の面にインレット14を設けるとは、インレット14を構成するアンテナ12とICチップ13がベース基材11の両方の面に設けられるのではなく、どちらか片方の面に設けられることである。また、アンテナ12は、ベース基材11の一方の面に所定の間隔をおいてコイル状に設けられている。さらに、ICチップ13の厚みは、アンテナ12の厚みよりも厚くなっている。
【0026】
また、非接触型データ受送信体10において、インレット14を構成するアンテナ12とICチップ13が互いに接続されるとは、アンテナ12の端部がICチップ13の両極端子にそれぞれ接続されることである。
【0027】
さらに、磁性体層15をなし、磁性微粒子からなるフィラーと樹脂とからなる複合体が、インレット14を構成するアンテナ12およびICチップ13を覆うようにとは、アンテナ12とICチップ13が隠れる程度に覆うことである。そして、磁性体層15の表面(開放面)が平坦になるように、磁性体層15がアンテナ12とICチップ13を覆うことがより好ましい。
【0028】
また、磁性体層15において、非接触型データ受送信体10をベース基材11の一方の面側から見て、磁性体層15を構成する多数の磁性微粒子が、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成している。
また、コイル状に設けられたアンテナ12の間には、磁性体層15をなす複合体が充填されるように配されており、この複合体をなす磁性微粒子の全部または一部がアンテナ12の間に配されている。
【0029】
非接触型データ受送信体10では、図2に示すように、磁性体層15は、その膜厚において、通信距離に依存しない領域αおよび領域βと、通信距離に依存する領域γとを備えており、この領域γは、領域αと領域βの間に位置している。
図2に示すように、磁性体層15の厚み方向において、通信距離に依存しない領域αおよび領域βは、磁性体層15の厚みが増しても、非接触型データ受送信体10の通信距離が変化しない(増加しない)領域である。一方、磁性体層15の厚み方向において、通信距離に依存する領域γは、磁性体層15の厚みが増すと、非接触型データ受送信体10の通信距離が変化する(増加する)領域である。また、これらの領域α、領域γおよび領域βは、この順に連続して設けられている。
【0030】
また、非接触型データ受送信体10では、領域γが、アンテナ12を構成するコイル部12aの厚みを下限とし、ICチップ13の厚みを上限とする範囲である。すなわち、図2に示す領域γは、図1に示す磁性体層15において、コイル部12aのベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面から、ICチップ13のベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面に渡る領域のことである。また、図2に示す領域αは、図1に示す磁性体層15において、ベース基材11の一方の面と接している面から、コイル部12aのベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面に渡る領域のことである。さらに、図2に示す領域βは、図1に示す磁性体層15において、ICチップ13のベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面を超える領域のことである。
【0031】
このように、磁性体層15が、ベース基材11の一方の面と接している面から、コイル部12aのベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面に渡る領域内に存在する場合、すなわち、図2に示す領域αに存在する場合には、磁性体層15の厚み方向において、非接触型データ受送信体10の通信距離が変化しない(増加しない)。また、磁性体層15が、ICチップ13のベース基材11の一方の面と接している面とは反対の面を超える領域にまで存在する場合、すなわち、図2に示す領域βにまで存在する場合には、この領域βにおいては、磁性体層15の厚み方向において、非接触型データ受送信体10の通信距離が変化しない(増加しない)。
【0032】
さらに、非接触型データ受送信体10では、図2に示すように、領域γにおける通信距離は、磁性体層15の膜厚に対して単調増加する。したがって、領域γでは、磁性体層15の膜厚を増減することにより、非接触型データ受送信体10の通信距離を所望の範囲に設定することができる。
【0033】
ベース基材11としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドからなる電気絶縁性のフィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0034】
アンテナ12は、ベース基材11の一方の面にポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるものである。
【0035】
本発明におけるポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0036】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度でアンテナ12をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ12をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
【0037】
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0038】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0039】
また、アンテナ12において耐折り曲げ性がさらに要求される場合には、このポリマー型導電インクに可撓性付与剤を配合することができる。
可撓性付与剤としては、例えば、ポリエステル系可撓性付与剤、アクリル系可撓性付与剤、ウレタン系可撓性付与剤、ポリ酢酸ビニル系可撓性付与剤、熱可塑性エラストマー系可撓性付与剤、天然ゴム系可撓性付与剤、合成ゴム系可撓性付与剤およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0040】
一方、アンテナ12をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0041】
ICチップ13としては、特に限定されず、アンテナ12を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0042】
磁性体層15をなす複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂とから概略構成されている。
この複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂と、添加剤と、溶媒とを含む磁性塗料を塗布、乾燥することによって、磁性微粒子がほぼ均一に分散した形態に成形される。
【0043】
本発明では、磁性微粒子の平均粒径が200μm以下である。
なお、磁性微粒子の平均粒径が上記の範囲内であれば、磁性体層15をなす磁性微粒子の粒径がばらついていても、本発明の非接触型データ受送信体は十分に効果を発揮する。
磁性微粒子の平均粒径が上記の範囲内であれば、非接触型データ受送信体10をベース基材11の一方の面側から見て、磁性体層15を構成する多数の磁性微粒子は、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体をなす。これにより、非接触型データ受送信体10を、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層15を通ってアンテナ12に捕捉されるため、アンテナ12にICチップ13を作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。また、磁性微粒子の平均粒径が上記の範囲内であれば、この実施形態のように、アンテナ12がコイル状に設けられている場合にも、磁性微粒子をアンテナ12の間に充填することができる。このように、アンテナ12の間にも、磁性微粒子を配すれば、より磁束がアンテナ12に補足され易くなる。
【0044】
また、磁性微粒子としては、粉末状の磁性体粉末、または、この磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られた扁平状のフレークなどからなる磁性体フレークが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、扁平状のものが好ましい。磁性微粒子が扁平状であれば、非接触型データ受送信体10をベース基材11の一方の面側から見て、磁性体層15を構成する多数の磁性微粒子が、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成しやすい。したがって、より磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0045】
さらに、磁性体粉末としては、例えば、センダスト(Fe−Si−Al合金)粉末、カーボニル鉄粉末、パーマロイなどのアトマイズ粉末、還元鉄粉末などが挙げられる。磁性体フレークとしては、例えば、前記磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られたフレークや、鉄系またはコバルト系アモルファス合金の溶湯を水冷銅板に衝突させて得られたフレークなどが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークが好ましく、センダストからなる磁性体フレークがより好ましい。磁性微粒子が、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークであれば、これらを構成要素として含む磁性体層15の飽和磁束密度および透磁率が高くなるので、より磁束が磁性体層を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0046】
なお、磁性体層15をなす磁性微粒子の形状は、その全てが粉末状あるいは扁平状のいずれか一方である必要はない。磁性体層15には、粉末状の磁性微粒子と扁平状の磁性微粒子が混在していてもよく、このように形状の異なる磁性微粒子が混在していても、本発明の非接触型データ受送信体は十分に効果を発揮する。
【0047】
磁性体層15をなす複合体を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂などが挙げられる。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、あるいは、スチレン系ゴム、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体ゴムなどのポリマー系の合成ゴム材料などが挙げられる。
【0049】
熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0050】
また、磁性体層15をなす複合体には、磁性体層15に粘着性を付与するために、各種粘着剤が含まれていてもよい。
【0051】
また、磁性体層15をなす複合体を形成するために用いられる磁性塗料に含まれる添加剤としては、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤などが挙げられる。
【0052】
さらに、この磁性塗料に含まれる溶媒としては、シクロヘキサノン、アセトン、ベンゼン系、エチル系などの有機溶媒が挙げられる。
【0053】
このように、この実施形態の非接触型データ受送信体10によれば、アンテナ12およびICチップ13を覆うように磁性体層15が配されることにより、金属を少なくとも含む物品に接した場合でも、磁束が磁性体層15を通ってアンテナ12に捕捉されるため、アンテナ12にICチップ13を作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。しかも、磁性体層15は、アンテナ12およびICチップ13を覆うように形成することにより、これらの保護層としての機能も発揮する。
【0054】
なお、この実施形態では、アンテナ12として、ベース基材11の一方の面にコイル状に設けられたものを例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、電磁誘導方式を採用していて起電力が得られれば、アンテナの形状は問わない。
【0055】
また、この実施形態では、コイル状のアンテナ12と、ICチップ13とがベース基材11の一方の面に別体に設けられ、これらが互いに接続された非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナの上にICチップが搭載されていても、ICチップ上にアンテナが形成されていてもよい。
【0056】
また、この実施形態の非接触型データ受送信体は、親展性を有するハガキシステムなどにも適用することができる。親展性を有するハガキシステムとしては、一般に二ツ折りハガキ、三ツ折りハガキ、四ツ折りハガキ、一部折り畳みタイプのハガキなどが挙げられる。
【0057】
(非接触型データ受送信体の製造方法)
次に、図1を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法について説明する。
まず、ベース基材11の一方の面に、所定の厚み、所定のパターンをなすアンテナ12を設ける(アンテナ形成工程)。
【0058】
この工程では、アンテナ12をポリマー型導電インクで形成する場合、スクリーン印刷法により、ベース基材11の一方の面に、所定の厚み、所定のパターンとなるようにポリマー型導電インクを印刷した後、このポリマー型導電インクを乾燥・硬化させることにより、所定の厚み、所定のパターンをなすアンテナ12を形成する。
【0059】
また、アンテナ12を導電性箔で形成する場合、以下のような手順に従う。
ベース基材11の一方の全面に導電性箔を貼り合わせた後、シルクスクリーン印刷法により、この導電性箔に耐エッチング塗料を所定のパターンに印刷する。この耐エッチング塗料を乾燥・固化させた後、エッチング液に浸して、耐エッチング塗料が塗布されていない銅箔を溶解除去し、耐エッチング塗料が塗布された銅箔部分をベース基材11の一方の面に残存させることにより、所定のパターンをなすアンテナ12を形成する。
【0060】
次いで、アンテナ12に設けられた接点(図示略)と、ICチップ13に設けられた接点(図示略)とを、導電性ペースト、または、はんだからなる導電材を介して電気的に接続して、ICチップ13をベース基材11の一方の面に実装する(ICチップ実装工程)。
【0061】
次いで、スクリーン印刷法などにより、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂と、添加剤と、溶媒とを含む磁性塗料を、ベース基材11の一方の面において、アンテナ12とICチップ14が僅かに隠れる程度に塗布するか、あるいは、十分に隠れる程度に塗布する。磁性塗料を塗布した後、室温で放置するか、または所定の温度で、所定の時間、加熱して乾燥・固化することにより、磁性体層15を形成し、非接触型データ受送信体10を得る(磁性体層形成工程)。
【0062】
なお、この実施形態では、アンテナ12の形成方法として、スクリーン印刷法、エッチングによる方法を例示したが、本発明はこれらに限定されない。本発明にあっては、蒸着法やインクジェット式印刷方法によりアンテナを形成することもできる。
【0063】
(非接触型データ受送信体の第二の実施形態)
図3は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
図3において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体20は、非接触型データ受送信体10と、接着剤層21と、剥離基材22と、上紙23とから概略構成されている。
【0064】
非接触型データ受送信体20では、接着剤層21が、非接触型データ受送信体10の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面を除く部分を覆うように設けられている。
【0065】
また、剥離基材22が、磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面、および、接着剤層21の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着される面)に貼着されている。
【0066】
さらに、上紙23が、接着剤層21のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着されない面)に貼着されている。
【0067】
接着剤層21をなす接着剤としては、フェノール系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などの接着剤が挙げられる。なお、その他の接着剤でも、公知のものを適宜用いることができる。
【0068】
剥離基材22としては、シリコーン系、非シリコーン系などの剥離剤が塗布された、紙、合成紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどの基材が挙げられる。なお、その他、剥離剤、基材ともに、公知のものを適宜用いることができる。
【0069】
上紙23としては、紙、合成紙、コート紙、ポリプロピレンフィルム、PETフィルムなどの基材が挙げられる。なお、その他、剥離剤、基材ともに、公知のものを適宜用いることができる。
【0070】
この実施形態の非接触型データ受送信体20は、磁性体層15が設けられた非接触型データ受送信体10が接着剤層21で覆われ、接着剤層21で覆われた非接触型データ受送信体10が剥離基材22および上紙23で囲まれているので、磁性体層15への埃や塵埃などが付着しない。そして、剥離基材22を取り除いて新たに露出した接着剤層21により、金属を含む物品に磁性体層15が接するようにして、非接触型データ受送信体20をこの物品に貼付することができる。また、非接触型データ受送信体20は、接着剤層21のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着されない面)に上紙23が設けられているから、この上紙23に模様を設けたり、各種情報を印刷することができる。
【0071】
なお、この実施形態では、接着剤層21が、非接触型データ受送信体10の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面を除く部分を覆うように設けられている非接触型データ受送信体20を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、接着剤層が、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面に設けられていてもよい。また、ベース基材のアンテナおよびICチップが設けられている面とは反対の面には、接着剤層が設けられていなくてもよい。
【0072】
また、この実施形態では、剥離基材22が、磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面、および、接着剤層21の磁性体層15のベース基材11と接する面とは反対の面側の面(物品に貼着される面)に貼着されている非接触型データ受送信体20を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、剥離基材が、磁性体層のベース基材と接する面とは反対の面のみに貼着されていてもよい。
【0073】
次に、図4および図5を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法および製造装置について説明する。
【0074】
(非接触型データ受送信体の製造装置)
図4は、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造装置の構成を示す模式図である。図5は、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造装置を構成する第三手段を示す概略斜視図である。
なお、以下においてインレットとは、磁性体層付きのインレット(図3に示す非接触型データ受送信体20)を意味している。
【0075】
図4に示す製造装置30は、第一手段31と、第二手段32と、第三手段33と、第四手段34と、第五手段35と、第六手段36と、巻取手段37、38とから概略構成されており、これらの手段がこの順に配置されている。さらに、製造装置30を構成する各種手段は、ベルトコンベアなどの搬送手段によって連結されている。
【0076】
また、図5に示す第三手段33は、スタッカー(保持手段)41、インレット引出機(取出手段)42、レール部材43と、押出用ブロック44と、吸込ブロック45とから概略構成されている。
【0077】
スタッカー41は、多数のインレット50を鉛直方向に積み重ねた状態で保持するものである。このスタッカー41の下方には、インレット50を1枚ずつ取り出すためのインレット引出機42と、スタッカー41から引き出されたインレット50を吸込みブロック45の下方に移動するためのレール部材43とが設けられている。
【0078】
インレット引出機42は、レール部材43に鉛直方向に設けられた貫通孔43a内を、鉛直方向に沿って往復移動可能に構成され、鉛直方向に沿って往復移動可能に構成され、その先端ヘッド42aがスタッカー41に積み重ねられた多数のインレット50のうち最も下側に位置するものを吸引作用により順次引き出す(取り出す)ようになっている。
【0079】
ここで、インレット50の下面は、第一連続用紙39の剥離基材39b上に貼付される面であって平坦に形成されている。したがって、インレット引出機42の先端ヘッド42aがインレット50の下側面の中央部分を充分な吸引力で吸引して、スタッカー41からインレット50を1枚ずつ引き出すことができる。このとき、インレット50が瞬間的に撓むが、ICチップおよびアンテナはインレット50の中央部分から離れた位置に配されているので、先端ヘッド42aの吸引によって損傷を受けることはない。また、インレット引出機42は多数のインレット50のうち最も下側から順次引き出す構成であるから、作業の途中においてもインレット50をスタッカー41に随時供給することができる。
【0080】
レール部材43には、インレット引出し機42によってスタッカー41から引き出されたインレット50が載置される案内溝43bが設けられている。なお、案内溝43bの幅寸法は、インレット50の対応する寸法よりもわずかに大きく設定されている。
【0081】
また、レール部材43の案内溝43bには、この中に位置決めされて案内溝43bに沿って往復移動可能な押出用ブロック44が設けられている。
押出用ブロック44は、案内溝43bに沿って図5中右側へ移動することにより、スタッカー41から引き出されて案内溝43bの中に載置されたインレット50を、その先端が案内溝43bの突当て部43cにほぼ当接するまで移動するようになっている。
【0082】
さらに、案内溝43bの突当て部43cの上方には、この突当て部43cに先端がほぼ当接するように位置決めされたインレット50を吸引作用により吸着するための吸込ブロック45が設けられている。
吸込ブロック45はインレット50の外形形状に対応した形状をなしており、その下面にはスポンジなどの緩衝材45aが取り付けられている。また、吸込ブロック45の下側面の中央には、インレット50を吸着するための吸引口(図示略)が設けられている。
【0083】
また、吸込ブロック45は、鉛直方向、および、案内溝43bに沿った水平方向に移動可能に構成されており、エアシリンダーなどで駆動されるようになっている。このような構成により、吸込ブロック45は、案内溝43bの突当て部43cに先端がほぼ当接するように位置決めされたインレット50に向かって下降し、吸込ブロック45の下面にインレット50が吸着される。このとき、インレット50の中央部分には吸込ブロック45からの吸引力が作用するが、緩衝材45aの緩衝作用によりインレット50が吸引力によって損傷することはない。
【0084】
インレット50を吸着した吸込ブロック45は上昇した後、図中水平方向に沿って第一連続用紙39の剥離基材39bの上方まで移動するようになっている。このとき、吸込ブロック45は、水平ガイド(図示略)に沿って移動し、例えばストッパ(図示略)の作用により剥離基材39bの上方の所定位置で停止するようになっている。その後、吸込ブロック45が下降し、吸着したインレット50を剥離基材39bの表面に押圧するになっている。したがって、吸込みブロック45がインレット50を剥離基材39bの表面に押圧するとともに吸引動作を停止することにより、インレット50が剥離基材39bの表面に貼付されるようになっている。このように、吸込みブロック45は、所定の位置に配されたインレット50を移動させて第一連続用紙39の剥離基材39bの表面に順次押圧する移動押圧手段を構成している。
【0085】
なお、第三手段33では、カセット式でインレット50を供給しているが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、磁性体層付きのインレットを連続式で供給し、カッターなどによって切り離す方式を採用してもよい。また、磁性体層をインラインで塗布、乾燥して形成してもよい。
【0086】
また、この実施形態では、第一連続用紙39の搬送方向に沿って、インレット50を1つずつ剥離基材39b上に貼付する第三手段33を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、第三手段が、第一連続用紙の搬送方向に沿って、複数のインレットを同時に剥離基材上に貼付する機構を備えていてもよい。
【0087】
(非接触型データ受送信体の製造方法)
非接触型データ受送信体を製造するには、まず、第一手段31から、長尺状の剥離基材に捨紙が貼付された第一連続用紙39を供給する。
第一手段31から供給された第一連続用紙39は、表層の捨紙39aが剥がされて、剥離基材39bが露出した状態で、インレットを貼付する第三手段33へ送られる。捨紙39aは、第一連続用紙39から剥がされた後、第二手段32に巻き取られる。
【0088】
第一連続用紙39は、その剥離基材39bの表面の一方の側に、長手方向に沿って所定の間隔をおいて設けられたタイミングマーク39dをセンサ(図示略)が読み取ることにより、長手方向に沿って間欠的に搬送される。これにより、剥離基材39bの表面に貼付されるインレット50の間隔を調整することができるようになっている。
【0089】
次いで、第一連続用紙39の間欠的な搬送動作を繰り返すとともに、上述のような構成の第三手段33により、インレット50が剥離基材39bの表面に所定の間隔をおいて順次貼付される。
【0090】
次いで、第三手段33より、インレット50が間隔をおいて順次貼付された第一連続用紙39は、一対の貼着ローラー35aと35bを備えた第五手段35へ搬送される。
【0091】
また、第一連続用紙39の第五手段35への搬送にともなって、第四手段34から、上紙40bに接着剤層(図示略)を介して捨紙40aが貼付された第二連続用紙40が供給する。
第四手段34から供給された第二連続用紙40は、表層の捨紙40aが剥がされて、接着剤層が露出した状態で、第五手段35へ送られる。捨紙40aは、第二連続用紙40から剥がされた後、巻取手段37に巻き取られる。
【0092】
次いで、第一連続用紙39と第二連続用紙40を、第五手段35に備えられた、一対の貼着ローラー35aと35bとの間を通過させることにより、第一連続用紙39の剥離基材39bのインレット50が貼付された面と、第二連続用紙40の接着剤層とが貼付された面とが重ね合わされて貼着される。
【0093】
次いで、第五手段35により重ね合わされて貼着された、第一連続用紙39と第二連続用紙40からなる複合用紙は、第六手段36へ搬送される。
この複合用紙は、第六手段36により、1個の非接触型データ受送信体の外形形状に沿って型抜きされ、型抜きされた非接触型データ受送信体は回収される。また、型抜きされた複合用紙の不要部分(非接触型データ受送信体の領域以外の第一連続用紙39と第二連続用紙40)は巻取り手段38に巻き取られる。
【0094】
このように、本実施形態では、第三手段33において、積み重ねられたインレット50を1枚ずつ引き出して、所定の位置へ順次供給し、所定の位置に供給されたインレット50を移動させて第一連続用紙39の剥離基材39bの表面に押圧することにより、インレット50の磁性体層を覆うように設けられた接着剤層、あるいは、粘着性を有する磁性体層を介して、インレット50を剥離基材39bの表面に貼付することができる。したがって、インレット50を用紙に組み込む作業を手作業に頼ることなく自動的に行って、大量の非接触型データ受送信体1を効率的にかつ高品質に製造することができる。
【0095】
なお、第五手段35に備えられた、一対の貼着ローラー35aと35bには、この間を通過するインレット50への負荷を軽減するため、すなわち、インレット50に作用するニップ圧を軽減するために、貼着ローラー35aまたは35bのうち少なくとも一方に、スポンジなどの緩衝材を巻いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の非接触型データ受送信体は、2枚の基材の間に組み込まれた形態のICタグなどに限定されることなく、剥離基材から剥がして使用される形態の非接触型データ受送信体にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る非接触型データ受送信体の磁性体層の厚みと通信距離の関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態の製造装置の構成を示す模式図である。
【図5】本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態の製造装置を構成する第三手段を示す概略斜視図である。
【図6】通常の非接触型データ受送信体を金属物品の表面に載置した場合の磁束の流れを示す模式図である。
【図7】従来の非接触型データ受送信体の一例を示す概略斜視図である。
【図8】従来の非接触型データ受送信体の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0098】
10・・・非接触型データ受送信体、11・・・ベース基材、12・・・アンテナ、13・・・ICチップ、14・・・インレット、15・・・磁性体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材とその一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるインレットと、前記インレットを構成するアンテナおよびICチップを覆うように配された磁性体層とを備えてなる非接触型データ受送信体であって、
前記磁性体層は、その膜厚において、通信距離に依存しない領域αおよび領域βと、通信距離に依存する領域γとを備え、
前記領域γは、前記領域αと前記領域βの間に位置することを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記領域γは、アンテナを構成するコイル部の厚みを下限とし、ICチップの厚みを上限とする範囲であることを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項3】
前記領域γにおける通信距離は、前記磁性体層の膜厚に対して単調増加することを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。
【請求項4】
前記磁性体層は、少なくともセンダストの磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−113750(P2006−113750A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299307(P2004−299307)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】