非晶質Ge/Te蒸着方法
【課題】GST、GeTe、及び他の膜を非晶質の形態で、ただし比較的高い蒸着速度で形成する新規な方法を提供すること。
【解決手段】ゲルマニウム、テルル、及び/又はアンチモン前駆体は、ゲルマニウム、テルル、及び/又はアンチモン含有膜、例えば、GeTe、GST、及び熱電ゲルマニウム含有膜を形成するために、有用に使用される。これらの前駆体を用いて非晶質膜を形成する方法もまた記載されている。さらに、相変化型メモリー用途用のGeTe平滑非晶質膜を形成するための、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]又はGeブチルアミジネートの使用が記載されている。
【解決手段】ゲルマニウム、テルル、及び/又はアンチモン前駆体は、ゲルマニウム、テルル、及び/又はアンチモン含有膜、例えば、GeTe、GST、及び熱電ゲルマニウム含有膜を形成するために、有用に使用される。これらの前駆体を用いて非晶質膜を形成する方法もまた記載されている。さらに、相変化型メモリー用途用のGeTe平滑非晶質膜を形成するための、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]又はGeブチルアミジネートの使用が記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
2008年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/051,274号、2008年5月9日に出願された米国仮特許出願第61/052,018号、2008年6月27日に出願された米国仮特許出願第61/076,428号、2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/984,370号、及び、2008年5月2日に出願された米国仮特許出願第61/050,179号についての35 USC 119で規定される優先権の主張の利益を主張する。前記米国仮特許出願第61/051,274号、米国仮特許出願第61/052,018号、米国仮特許出願第61/076,428号、米国仮特許出願第60/984,370号及び米国仮特許出願第61/050,179号の開示は全て本願明細書中に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、例えば、テルル化ゲルマニウム(GeTe)及びテルル化ゲルマニウムアンチモン(GST)膜等の、基材上のゲルマニウム、テルル及び/又はアンチモンを含む非晶質膜を形成するための化学蒸着プロセス並びにそのような膜を組み込んだ相変化型ランダムアクセスメモリー素子及び他の素子に関する。特に、本発明は、CVDプロセスから形成される非晶質GeTe及びGST膜並びにこれらの膜から形成される素子に関する。
【背景技術】
【0003】
相変化型ランダムアクセスメモリー(PCRAM)は、近年、高度に集積された不揮発性メモリー素子用に、多大な関心が寄せられている。PCRAMセルにおいて、GST材料を結晶状態から非晶質状態に切り替えるのに要する高レベルのリセット電流が、PCRAMのさらなるスケール化の主な障害となっている。
【0004】
ゲルマニウム、アンチモン、及びテルル(GST)材料の合金を接触プラグに閉じ込めることは、周囲の材料への熱の消散を大きく減少させ、リセット電流を大いに減少させる。したがって、良好な共形性(conformality)をもたらすプロセス、例えば原子層蒸着(ALD)プロセス又は化学蒸着(CVD)プロセスを用いてGST膜を蒸着することが必要である。ALDプロセスは、膜を「一層ずつ」構築するので、非常に時間のかかるものである。逆に、CVDプロセスは、高い蒸着速度をもたらす。残念ながら、CVDプロセスは、結晶GeTeが形成されやすい。結晶GeTeは、GST膜の共形性を有意に減少させ、しばしば、接触プラグ中に空孔を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GST、GeTe、及び他の膜を非晶質の形態で、ただし比較的高い蒸着速度で形成する新規な方法を提供することは有利であろう。本発明は、そのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
PCRAM、高度に集積された不揮発性メモリー素子のような用途用の、基材上に非晶質GeTe及びGST膜を形成するための改善された化学蒸着方法を、開示する。本明細書に記載のゲルマニウム及びテルル前駆体は、アンモニアによる還元性環境中で、又は、他の実施態様では、窒素雰囲気中で、調節された温度と圧力の下で反応し、非晶質GeTeを生成する。
【0007】
一つの実施態様では、蒸着の温度は320℃以下であり、圧力は8トール以下である。他の実施態様では、蒸着の温度は350℃以下であり、圧力は0.8トール以下である。ゲルマニウム前駆体(例えば、GeM又はGeアミジネート(amidinate))からのGeの蒸着は、低温において速い。しかしながら、Teの組み込みには、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶GeTeの生成を招く傾向にある。温度と圧力の両方を調整することにより、非晶質GeTe膜を得ることができる。この非晶質GeTe膜は、結晶化した後も、比較的平滑なままである。この方法は、また、ジイソプロピルTe等の他のジアルキルTe前駆体に拡張することができる。
【0008】
別の態様では、本発明は、前駆体が揮発されて前駆体蒸気を形成し、次いでこの蒸気と基材を接触させる、前駆体からの化学蒸着による、非晶質GeTe材料を基材上に蒸着させる方法に関する。非晶質GeTe膜を蒸着させるための代表的な前駆体として、Geブチルアミジネート(GeBAMDN)及び本明細書中でGeMとも称される[{nBuC(iPrN)2}2Ge]が挙げられる。
【0009】
本発明の一つの特定の態様では、Geブチルアミジネート又はGeM({nBuC(iPrN)2}2Ge)は、320℃、8トールの圧力で、及び、350℃、0.8トールの圧力において、アンモニアを共反応体として、t−ブチルTeと共に展開されて、非晶質GeTeを生成する。
【0010】
本発明の他の態様では、非晶質GeTe膜を結晶化させて、比較的平滑なGeTe膜を生成する方法が記述されている。Geアミジネート又はGeMからのGeの蒸着は低温において速いが、Teの組み込みは、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶GeTeの生成を招く傾向にある。結晶GeTeは、平滑ではない薄膜を与える。温度及び圧力の双方を調節することにより、非晶質GeTe膜を得ることができる。非晶質GeTe膜は、結晶化した後も、比較的平滑なままである。
【0011】
本発明の他の態様では、この方法は、また、他のジアルキルTe前駆体、例えばジイソプロピルTeに拡張することができる。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、GeTe,GST、アンチモン、又は他のそのような膜を基材上に形成する方法であって、本明細書に記載のゲルマニウム、アンチモン、又はテルル前駆体を揮発させて前駆体蒸気を形成し、次いでそのような前駆体蒸気を基材と接触させて、その上にゲルマニウム,アンチモン、及び/又はテルル含有膜を形成することを含む方法に関する。
【0013】
他の態様では、本発明は、本明細書中でGeMとも称される[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含む、ゲルマニウム含有膜を形成するための前駆体組成物に関する。
【0014】
本発明の他の態様は、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]及びジアルキルテルル前駆体を揮発させて前駆体蒸気を形成し、次いで前駆体上記を基材と接触させて平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を基材上に形成することを含む、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜の形成方法に関する。
【0016】
他の態様では、本発明は、非晶質のテルル化ゲルマニウム膜を形成することを含み、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]又はGeブチルアミジネートを含むゲルマニウム前駆体からのゲルマニウムの化学蒸着を含む、相変化型ランダムアクセスメモリー素子の形成方法に関する。
【0017】
他の態様での本発明は、PCRAM素子の製造方法であって、その素子を製造するために、基材上にGeTe又はGST膜を形成することを含み、その形成は、本明細書に記載の非晶質ゲルマニウム、テルル、及び又はアンチモン層を蒸着させる方法を用いて、本明細書に記載の前駆体の蒸気から基材上に膜層を蒸着させることを含む。
【0018】
前駆体は、本明細書に記載の1以上のアンチモン含有前駆体を、1以上のゲルマニウム及びテルル含有前駆体と共に、前駆体を含む蒸気から基材上に蒸着させることにより、基材上にGST膜を形成するために使用することができる。
【0019】
前駆体は、また、上記のように、PCRAM素子製造用基材の上にGST膜を形成することにより、PCRAM素子を形成するために使用することができる。
【0020】
さらに他の態様では、本発明は、基材上に膜を形成する蒸着方法において、本明細書に記載の前駆体の前反応に対抗する方法であって、前駆体が、膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性である方法であり、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をその方法に導入することを含む方法に関する。
【0021】
本発明の他の態様は、複数の供給ストリーム(multiple feed streams)が、膜を形成する基材上の蒸着部位に流される蒸着方法において、本明細書に記載の前駆体の前反応に対抗する方法であって、その複数の供給ストリームの少なくとも一つが、膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性である前駆体を含む方法であり、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤を、その複数の供給ストリーム又はそれに供給された材料の少なくとも一つに、又は、その蒸着位置に、導入することを含む方法に関する。
【0022】
本発明の他のさらなる態様は、前駆体及びその前駆体のための前反応対抗剤を含む組成物であって、その前反応対抗剤が、ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択されるものである組成物に関する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、膜成分をその上に蒸着するための基材と接触している本明細書に記載の気相前駆体の前反応に対抗する方法であって、気相前駆体が基材と接触する前に、その基材を(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤と接触させることを含む方法に関する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、成長している膜の表面を保護するか、又は蒸着速度を遅くするために前反応対抗剤を導入し、続いて、代替前駆体又は共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を用いて再活性化を行う方法に関する。そのような保護/遅延とそれに続くそのような再活性化は、ALD又はALD様プロセスにおいて、所望の順番で、所望の回数繰り返して行うことができる。前反応対抗剤は、ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、気相において望ましくないように前反応性である、基材と少なくとも一つの本明細書に記載の膜前駆体とのサイクル的な接触を含む、基材上に膜を形成するための気相蒸着方法であって、膜の表面を保護するか又は膜前駆体の蒸着速度を遅くするのに有効な前反応対抗剤を膜の成長中にその膜に導入し、該前反応対抗剤の導入後に、その膜を異なる膜前駆体で再活性化させることを含む方法に関する。
【0026】
本発明は、さらなる態様においては、場合によりアンモニア、水素、ヘリウム、アルゴン、及び窒素よりなる群から選択される成分と組み合わせて、ゲルマニウム前駆体を揮発させてゲルマニウム前駆体蒸気を形成し、、次いで、該前駆体蒸気をゲルマニウム含有膜蒸着用の基材と接触させることを含む、蒸着法により基材上へのゲルマニウム含有膜を形成する方法であって、ゲルマニウム前駆体が、以下のゲルマニウム組成物よりなる群から選択される方法に関する:
【0027】
【化1】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0028】
【化2】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0029】
【化3】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0030】
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(これを含む)の整数である];
【0031】
【化4】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0032】
【化5】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【0033】
【化6】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0034】
【化7】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0035】
【化8】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
【0036】
【化9】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0037】
【化10】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0038】
【化11】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0039】
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0040】
【化12】
【化13】
【0041】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、及び[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【0042】
本発明の他の態様は、上記のゲルマニウム前駆体種よりなる群から選択される、ゲルマニウム前駆体に関する。
【0043】
本発明の他のさらなる態様は、Geブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体を使用する、上記の方法により形成される、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜に関する。
【0044】
本発明の他の態様、特徴及び実施態様は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、ゲルマニウム含有膜の形成方法において、CVD及びALDのような低温(<300℃)蒸着方法により共形性の高いゲルマニウム含有膜を形成する際に有用性を有する、種々のゲルマニウム、テルル、及びアンチモン前駆体の使用に関する。他の態様では、本発明は、その方法を用いて形成された膜及びそのような膜を組み込んだマイクロ電子素子製品に関する。
【0046】
本明細書に記載の前駆体は、化学蒸着及び原子層蒸着方法に有用に使用され、ゲルマニウム含有膜、例えばGeTe、GST等の膜を形成する。GeTe膜は、Scharnhorst and Riedl, "Photoconductivity in the amorphous Ge-rich GexTe1-x system," Journal of Applied Physics, Vol. 45, p. 2971-2979 (1974)中で定義されているような、GexTe1-x系、又は例えば、Tsu, Journal of Vacuum Science & Technology A: Vacuum, Surfaces, and Films, Volume 17, Issue 4, July 1999, pp. 1854-1860 (1999)中に記載されているような、GexSbyTex系であることができ、その双方の内容は、ここに参照して組み入れられる。膜は、本明細書に記載の方法を用いて有利に形成することができ、実質的に非晶質の膜層をもたらす。
【0047】
本発明は、以下の定義を参照して、よりよく理解されよう:
【0048】
定義
本明細書中で使用される、用語「膜」は、1000マイクロメータ未満の厚さ、例えば、その値から原子単層の厚さの値までを有する蒸着材料の層をいう。種々の実施態様において、本発明の実施における蒸着材料層の膜厚は、関連する特定の用途に応じて、例えば、100、10、若しくは1マイクロメータであってもよく、又は200、100、若しくは50ナノメータの種々の薄膜レジームであってもよい。本明細書中で使用される、用語「薄膜」は、1マイクロメータ未満の厚さを有する材料の膜を意味する。
【0049】
本明細書中で使用される、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈が明確に反対のことを指示しない限り、複数の対象物を包含する。
【0050】
本明細書中で使用されるC1〜C12アルキル等における炭素数範囲の識別表示は、そのような範囲内の炭素数部分成分の各々を包含することを意図し、したがって、さらに、間に入る各炭素数、及び、前述した範囲内の他のいかなる言及された又は間に入る炭素数値を包含するものであり、特定の炭素数範囲内の下位の炭素数範囲は、独立して、本発明の範囲内のより小さい炭素数範囲中に包含され、また特定の炭素数を特別に除外した炭素数の範囲は本発明に包含され、特定の範囲の炭素数の上限下限のいずれか又は両方を除外した下位の範囲も同様に本発明に包含される。したがって、C1〜C12アルキルは、直鎖及び分岐のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルを包含する。したがって、C1〜C12等の炭素数範囲の識別表示は、置換基部分に広く適用しうるように、本発明の特定の実施態様において、その置換部分のより広い特定の範囲内に含まれる炭素数範囲を有する置換部分の下位グループとして、炭素数範囲をさらに限定することができる。例えば、本発明の特定の実施態様において、C1〜C12アルキル等の炭素数範囲を、C1〜C4アルキル、C2〜C8アルキル、C2〜C4アルキル、C3〜C5アルキル又はこの広い炭素数範囲内に含まれる任意の他の下位範囲等の下位範囲を含むように、より限定的に特定してもよい。。
【0051】
本発明の前駆体は、特定の実施態様において、特定の置換基、基、部分又は構造を除外する但し書き又は制限により、本明細書に記載のそれらの種々の仕様及び例示に関して、さらに特定しうる。そこで、本発明では、限定的に定義された組成物、例えば、RiがC1〜C12アルキルであるが、ただしRjがシリルであるとき、RiがC4アルキルではない組成物を意図する。
【0052】
本明細書中で使用される「アルキル」として、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル及びイソペンチル等が挙げられる。本明細書中で使用される「アリール」として、6〜10個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環基であるベンゼン又はベンゼン誘導体に由来する炭化水素が挙げられる。アリールは、単環又は多環を有しうる。本明細書中で使用される用語「アリール」として、また、置換アリールが挙げられる。例として、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、キシレン、フェニルエタン、置換フェニル、置換ナフチル、置換キシレン、置換フェニルエタン等が挙げられる。本明細書中で使用される「シクロアルキル」として、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本明細書中の全ての化学式において、炭素数の範囲は、連続した代替的炭素含有基の順序を特定するものとして考えられ、特定範囲の炭素数の末端点の値の中間の炭素原子の数を含有する全ての部分及び特定範囲の末端点の値に等しい炭素原子の数を含有する部分、例えば、C1〜C6は、C1、C2、C3、C4、C5及びC6を含み、そのようなより広い範囲の各々は、その下位範囲として、そのような範囲内の炭素数を参照してさらに制限的に特定しうる。そこで、例えば、範囲C1〜C6は、より広い範囲の領域内で、下位範囲、例えばC1〜C3、C1〜C4、C2〜C6、C4〜C6等の仕様を含み、またそれらによりさらに限定できる。
【0053】
本発明は、その特徴、態様及び実施態様に関して本明細書に様々に記載されているように、特定の実施において、そのような特徴、態様及び実施態様のいくつか又は全てを含み、それらよりなり、又は実質的にそれらよりなるものとして構成しうるし、また、その要素及び成分は、本発明の種々のさらなる実施を構成するように集められる。本発明は、種々の実施態様において、また、本発明の種々の特徴及び態様を参照して、本明細書中で記述される。本発明は、本発明の範囲内のものとして、種々の置換及び組み合わせでの、そのような特徴、態様及び実施態様を意図する。本発明は、したがって、これらの特徴、態様及び実施態様又はそれらの選択された一つ又は複数のそのような組み合わせ及び置換のいずれかを含み、よりなり、より実質的になるものとして特定しうる。
【0054】
I.ゲルマニウム前駆体
本発明の前駆体として、種々の種類のゲルマニウム組成物が挙げられる。一つの実施態様では、ゲルマニウム前駆体は、本明細書中ではGeMとも称する、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]である。
【0055】
他の態様での本発明は、基材上にゲルマニウム膜をCVD及びALD蒸着するのに有用な、以下の式I〜XVIのゲルマニウム前駆体に関する:
【0056】
【化14】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0057】
【化15】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0058】
【化16】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0059】
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0060】
【化17】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0061】
【化18】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【0062】
【化19】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0063】
【化20】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0064】
【化21】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択される];
【0065】
【化22】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0066】
【化23】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0067】
【化24】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0068】
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される]
【0069】
上記のゲルマニウム前駆体の合成は、以下に種々に示したタイプの合成法を利用して、容易にいろいろに行うことができる。各々の例において、RMgCl、RMgBr、RMgI、RLi、及びRNaを、代替試薬として用いることができる。さらに、GeBr4を、GeCl4の代わりに用いることができ;LiNR2は、NaNR2又はKNR2で置き換えることができ;そして、Na(C5R5)は、K(C5R5)の代替物として使用できる。また、Ge(II)錯体への酸化的付加により混合アルキル種を発生させて、Ge(IV)前駆体を生成させるために、以下に示すような多工程合成法を使用しうる。
【0070】
【化25】
[式中、
R、R'、及びR"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され、Mは、Li、Na、MgCl、MgBr、又はMgIである]
【0071】
GST膜用のゲルマニウム(IV)前駆体
【化26】
【化27】
【0072】
そして、対応して、テトラアリルゲルマニウム錯体
【化28】
が、対応するアリルグリニャール試薬R*MgCl(式中、R*はアリルである)を用いて、そのようなテトラクロロゲルマニウム出発原料から形成され得る。
【化29】
【0073】
GST膜用のGe前駆体
【化30】
【0074】
ゲルマニウム含有膜のCVD又はALDに有用に使用しうる例示的なGe(II)化合物として、以下のものが挙げられる:
【化31】
【0075】
本発明の種々の実施態様において、ジアルキルアミノイソプロピルゲルマン前駆体が、GST薄膜のCVD/ALC形成に使用される。そのような前駆体は、以下に示すような反応スキームにより合成することができ:
【化32】
【0076】
例えば、以下のようなゲルマニウム錯体が形成される:
【化33】
【0077】
上記のゲルマニウム前駆体は、基材上にゲルマニウム含有膜を蒸着するための、CVD及びALD用途に有用である。そのような用途に有用であり、加熱バブラーで輸送しやすいテトラキスアミドゲルマン及びトリイソプロピルアミンとしては、例えば、Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、及びiPr3GeNEt2が挙げられる。本発明のゲルマニウム前駆体の揮発性は、STA熱重量分析法(例えば、アルゴン中で、大気圧下に材料輸送を測定することにより)及びGC分析により、容易に測定できる。
【0078】
アルキル置換基を含有する本発明のゲルマニウム前駆体の特定の実施態様では、イソプロピル置換基のβ−水素脱離する能力の故に、イソプロピル置換基が多くの場合にメチル基よりも好ましく、これにより、顕著な炭素残渣を生じることなく、ゲルマニウム前駆体の低温分解処理が容易となる。
【0079】
本発明の窒素含有ゲルマニウム前駆体は、最終膜中への窒素の組み込みを仲介する多くの用途で固有の利点を有している。この点で、Si−及びN−ドープGST材料は、より低いリセット電流を有し、これにより、低温相変化が生じることが可能となる。
【0080】
付加的な利点として、本発明の種々のゲルマン前駆体は、ハイドロゲルモリシス(hydrogermolysis)カップリング反応を生起して、反応:
R3GeNR'2+R3GeH→R3Ge−GeR3
を経て、Ge−Ge結合を形成してジゲルマンCVD前駆体をもたらし、モノゲルマン前駆体に対して、高効率のGe含有膜蒸着を可能とする。
【0081】
本発明のゲルマニウム前駆体は、それらの一部として、多様な配位子種を含有することができる。そのような配位子として、例えば、限定するものではないが、アリル、ベンジル、t−ブチル、シクロペンタジエニル、ヒドリド、フェニル、及びアルキルが挙げられる。二座型のアミン(例えば、N,N−ジアルキルエチレンジアミン)もまた用いることができる。
【0082】
ゲルマニウム前駆体は、適切な溶媒を用いた液体搬送法によって、溶液又は懸濁液で搬送してもよいし、あるいは、Ge含有膜の気相蒸着のために、例えば、本発明のアンチモン前駆体に関して上で記述したような固体搬送法により、搬送してもよいる。
【0083】
CVD/ALD前駆体としての使用において、Ge前駆体は、個別に、あるいは他の前駆体、例えば、iPr3Sb、Sb(NR2)3、iPr2Te及びTe(NR2)2等のSb及びTe錯体と組み合わせて蒸着して、GST膜を形成しうる。
【0084】
本発明の一つの例示的なゲルマニウム前駆体は、以下、GePNEMとも称される、Ge(トリイソプロピル)(メチルエチルアミド)である。この前駆体は、好適な蒸着プロセス条件、例えば、300℃〜450℃の範囲の蒸着温度で、大気圧以下から大気圧以上の範囲の圧力(例えば、約0.5トール〜15気圧以上の範囲)で、基材上にゲルマニウムを蒸着させるのに使用することができる。下記の表1に示されているものは、1分あたり200標準立方センチメートルの水素ガスの担体ガス流で基材に搬送されたGePNEM前駆体から基材上にゲルマニウムを蒸着させる際の、様々な温度及び圧力条件における、膜蒸着速度(オングストローム/分)のリストである。
【表1】
【0085】
GePNEM前駆体からの蒸着により達成されたゲルマニウムの膜厚の他の測定において、16分間行った蒸着は、以下の結果を与えた:(i)温度=400℃、圧力=800ミリトール、反応体ガスH2、膜厚=57Å;(ii)温度=400℃、圧力=800ミリトール、反応体ガスNH3、膜厚=94Å;及び(iii)温度=400℃、圧力=8000ミリトール、反応体ガスH2、膜厚=36Å。これらの結果は、蒸着法により基材上にゲルマニウム又はゲルマニウム含有薄膜を形成する上でのGePNEMの好適性を実証している。
【0086】
本発明は、種々の特定の実施態様において、ゲルマニウム前駆体及びアンチモン前駆体の少なくとも一つが、上記の式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)(I)〜(XVI)の金属錯体から選択される前駆体である、ゲルマニウム前駆体、アンチモン前駆体及びテルル前駆体を含む前駆体混合物を意図している。
【0087】
II.アンチモン前駆体
アンチモン含有膜を形成するために、アンチモン含有前駆体、例えば、以下の式(A)、(B)及び(C)のアンチモン前駆体を使用することができる:
【0088】
Sb(NR1R2)(R3N(CR5R6)mNR4) (A)
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリールから独立に選択され、
R5及びR6の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0089】
Sb(R1)(R2N(CR4R5)mNR3) (B)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され、
R4及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0090】
Sb(R1)3-n(NR2R3)n (C)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、シリル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール及び−NR4R5(ここで、R4及びR5の各々は、H及びC1〜C4から選択される)から独立に選択され;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である];
【0091】
本発明は、他の態様において、式(D)のゲルマニル及びシリルアンチモン前駆体に関する:
(R4)nSb(E(R1R2R3))3-n
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール、及び式−NR5R6のアルキルアミノ(ここで、R5及びR6の各々は、H及びC1〜C4アルキルから選択される)から独立に選択され;
Eは、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)であり;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である]
【0092】
前記の前駆体は、Sb、Sb/Ge、Sb/Te及びGST膜のCVD及びALDに有用に使用しうる。
【0093】
そのような前駆体は、また、低温蒸着用途において、還元性共反応体、例えば、水素、水素プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に使用しうる。
【0094】
特定の前駆体が液体状態である場合、それらは、ニートの液体形態で液体搬送に使用しうる。
【0095】
あるいは、そのような前駆体が液体又は固体状態である場合、適当な溶媒中に入れて前駆体の溶液又は懸濁液として使用しうる。特定の用途において、そのような目的に好適な溶媒として、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、ヒドラジン及びエーテルが挙げられる。
【0096】
特別のアンチモン前駆体用の又は他のゲルマニウム及びテルル前駆体と組み合わせた特定のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の選択は、本明細書の開示に基づいて従来技術の範囲内で、容易に決定することができ、関与する特定の前駆体成分の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分の溶媒を選択することができる。
【0097】
アンチモン前駆体が固体状態である種々の実施態様では、固体搬送システム、例えば、ATMI社(Danbury, Connecticut, USA)から市販されているProE−Vap(登録商標)固体搬送及び蒸発システムを、アンチモン前駆体の搬送に使用しうる。
【0098】
本発明のアンチモン前駆体は、上記の広範な式セットの内の、適切に置換基を選択することにより「微調整」して、熱安定性、揮発性及び多成分前駆体系における他の共試薬又は成分との適合性の所望の特性をもたらすことができる。
【0099】
本発明のアンチモン前駆体は、以下に記載のものを含む合成経路により、容易に合成される。
【0100】
一般式(A):
【化34】
のアンチモン前駆体は、例えば、以下の反応スキーム(A)に従って合成することができ:
【化35】
【0101】
一般式(B):
【化36】
のアンチモン前駆体は、例えば、以下の反応スキーム(B):
【化37】
又は、以下の反応スキーム(C)に従って合成することができる:
【化38】
【化39】
【0102】
一般式(C)のアンチモン前駆体は、対応する方法で合成することにより生成することができる。
【0103】
以下の構造を有する、一般式(D)のアンチモン前駆体は:
【化40】
例えば、nが0である場合、以下の反応スキーム(D)又は、nが2である場合、以下の反応スキーム(E)に従って合成することができる:
【化41】
[式中、Xはハロ(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)である]
【0104】
上記の合成例では、RMgX及びRLiを、代替合成試薬として使用できる。
【0105】
本発明の前駆体を例示する特定の具体例として、前駆体Sb(NMeEt)3、Sb(CH=CMe2)3、Sb(CH2CH=CH2)3及びSb(NMe2)3が合成され、その特性が判断された。前駆体Sb(NMe2)3及びSb(NMeEt)3は光感受性を示し、従って、それらの光誘起分解を避けるために、露光から保護される容器中又は他の耐光性包装中での保存が必要であると判断された。同様の考慮が、Sb(CH=CMe2)3及びSb(CH2CH=CH2)3に適用できる。
【0106】
図1は、Sb(NMeEt)3の核磁気共鳴スペクトルを示し、図2は、Sb(NMe2)3の核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0107】
図3は、これら2個の前駆体、Sb(NMeEt)3及びSb(NMe2)3の同時的熱分析(STA)グラフであり、パーセント熱重量分析(TG)が、温度(摂氏)の関数としてプロットされている。
【0108】
別の種類のアンチモン前駆体をも使用することができる。そのようなアンチモン前駆体は、適切なゲルマニウム及びテルル前駆体の使用と併せて、GST膜を形成する上で使用するのに好適である。
【0109】
そのような別の種類のアンチモン前駆体として、以下に示すような、式(F)、(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)及び(M)のそれらが挙げられる:
【0110】
(F)以下の式のアミニデート、グアニデート及びイソウレエート:
R7nSb[R1NC(X)NR2]3-n
[式中、
各々のR1及びR2は、水素、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR4R5、及び−C(R6)3{ここで、R4、R5及びR6の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR7は、C1〜C6アルコキシ、−NR8R9、及び−C(R10)3{ここで、R8、R9及びR10の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0111】
(G)以下の式のテトラアルキルグアニデート:
R5nSb[(R1R2)NC(NR3R4)N]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
R3及びR4の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R9)3、及び−Ge(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0112】
(H)以下の式のカルバメート及びチオカルバメート:
R4nSb[(EC(X)E]3-n
[式中、
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3、−Ge(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
Eは、O又はSのいずれかであり;
nは0〜3の整数である];
【0113】
(I)以下の式のβ−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネート:
[OC(R3)C(X)C(R2)O]3-nSb(R5)n
[OC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[R4NC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[(R3)OC(=O)C(X)C(R2)S]3-nSb(R5)n
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR4は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、C1〜C6アルコキシ、−NR9R10、及び−C(R11)3{ここで、R9、R10及びR11の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0114】
(J)以下の式のアリル:
(i):R4nSb[R1NC(X)C(R2R3)]3-n
(ii):R4nSb[(R1O)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iii):R4nSb[(R1R5)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iv):R4Sb[(ONC(X)C(R2R3))]
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR5は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR7R8、及び−C(R9)3{ここで、R7、R8及びR9の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0115】
(L)Cp部分が以下の式で表され、非Cp配位子がグアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、β−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネートよりなる群から選択される配位子を場合により含むことができる、シクロペンタジエニル(Cp)アンチモン化合物:
【化42】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C6〜C10アリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C6アルキルシリル、C2〜C12アルケニル、R1R2NNR3{ここで、R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、並びに、アンチモン中心原子へのさらなる配位をもたらす官能基を含み、以下の式を有する、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、イミドアルキル、及びアセチルアルキルから選択されるペンダント配位子から独立に選択される}から独立に選択される:
【化43】
アミノアルキル
(式中、メチレン(−CH2−)部分は、代わりに他の二価のヒドロカルビル部分であることができ、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択され;n及びmは、各々、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできず、またxは1〜5から選択される);
【化44】
アルコキシアルキル及びアリールオキシアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化45】
及び
【化46】
イミドアルキル
(式中、R1、R2、R3、R4、R5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R1'、R2'の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化47】
アセチルアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール及びC1〜C5アルコキシから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない)];並びに
【0116】
(M)以下の式で表される、ペンダント配位子を有するアルキル、アルコキシド及びシリル:
(i):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mC(R1R2)]3-n
(ii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mSi(R1R2)]3-n
(iii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mO]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数であり;
mは0〜4の整数である]。
【0117】
前記の種類(F)〜(M)に該当する一般的なアンチモン前駆体として、以下の構造を有する前駆体が挙げらる。ここで、これらの構造中の種々の「R」基は、上記の式中の置換基番号と必ずしも完全に対応して番号付けされてはいないが、それでもなお、一般的な形で、置換されている位置を反映しており、関連する分子の種々の位置における置換基の上記の定義を参照して理解されよう。
【0118】
【化48】
【化49】
以下の例示的な錯体を含む:
【化50】
【0119】
以下の式で表されるアンチモンアミド:
【化51】
【0120】
以下の式で表されるアンチモン(III)アルキル/アミノ前駆体:
【化52】
【0121】
並びに、以下の式で表されるゲルマニウムアニオンを有するスチルベン:
【化53】
【0122】
種類(F)〜(M)のアンチモン前駆体は、還元性共反応体、例えば、水素、H2/プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に、低温でのアンチモンの蒸着に有用に使用される。
【0123】
アンチモン前駆体は、液体搬送技術によってそのような蒸着のために搬送することができ、その際、液体である前駆体は、ニートの液体形態で使用することができ、固体又は液体である前駆体は、好適な溶媒、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン又はトルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、及びヒドラジンと組み合わせて、溶液又は懸濁液として搬送することができる。特別のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の有用性は、容易に実験により決定することができ、使用される特定のアンチモン前駆体の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。
【0124】
本発明の他の態様では、固体搬送法を使用することができ、その中で、固体前駆体を揮発して、基材上にアンチモン又はアンチモン含有膜を形成する蒸着チャンバーに搬送される前駆体蒸気を形成することができる。固体前駆体は、そのために、好適な特性を有する保存及び分配パッケージ、例えば、ATMI社(Danbury, CT, USA)から市販されているProE−Vap固体搬送及び蒸発ユニット、に入れることができる。
【0125】
前記の前駆体は、Sb、Sb/Ge、Sb/Te及びGST膜のCVD及びALDに有用に使用しうる。
【0126】
特定の前駆体が液体状態である場合、それらは、ニートの液体形態で液体搬送に使用しうる。
【0127】
あるいは、そのような前駆体が液体又は固体状態である場合、前駆体の溶液又は懸濁液として、好適な溶媒中で使用しうる。特定の用途において、そのような目的に好適な溶媒として、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、ヒドラジン及びエーテルが挙げられる。
【0128】
特別のアンチモン前駆体用の又は他のゲルマニウム及びテルル前駆体と組み合わせた特定のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の選択は、本明細書の開示に基づいて従来技術の範囲内で、容易に決定することができ、関与する特定の前駆体成分の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。
【0129】
本発明のアンチモン前駆体は、上記の広範な式の範囲内で、適切な置換基を選択することにより「微調整」して、熱安定性、揮発性及び多成分前駆体系における他の共試薬又は成分との適合性等の所望の特性をもたらすことができる。
【0130】
本発明のアンチモン前駆体は、以下に記載のものを包含する合成経路により、容易に合成される。
【0131】
一般式(A)のアンチモン前駆体は:
【化54】
例えば、以下の反応スキーム(A)に従って合成することができ:
【化55】
一般式(B)のアンチモン前駆体は:
【化56】
例えば、以下の反応スキーム(B):
SbX3+R1MgX+Li(R2N(CR4R5)mNR3)→
【化57】
又は、以下の反応スキーム(C):
SbX3+mR2N(CR4R5)R3NSiMe3)→
【化58】
に従って合成することができる。
【0132】
一般式(C)のアンチモン前駆体は、対応する方法で合成することにより生成することができる。
【0133】
以下の構造を有する、一般式(D)のアンチモン前駆体は:
【化59】
例えば、nが0である場合、以下の反応スキーム(D)又は、nが2である場合、反応スキーム(E)に従って合成することができる:
【化60】
[式中、Xはハロ(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)である]
【0134】
上記の合成例では、RMgX及びRLiを、代替合成試薬として使用できる。
【0135】
本発明の前駆体を例示する特定の具体例として、前駆体Sb(NMeEt)3、Sb(CH=CMe2)3、Sb(CH2CH=CH2)3及びSb(NMe2)3が合成され、特性が判断された。前駆体Sb(NMe2)3及びSb(NMeEt)3は光感受性を示し、従って、それらの光誘起分解を避けるために、露光から保護される容器中又は他の耐光性包装中での保存を必要とすると判断された。同様の考慮が、Sb(CH=CMe2)3及びSb(CH2CH=CH2)3に適用できる。
【0136】
図1は、Sb(NMeEt)3の核磁気共鳴スペクトルを示し、図2は、Sb(NMe2)3の核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0137】
図3は、これら2個の前駆体、Sb(NMeEt)3及びSb(NMe2)3の同時的熱分析(STA)グラフであり、パーセント熱重量分析(TG)が、温度(摂氏)の関数としてプロットされている。
【0138】
III.テルル前駆体
以下は、本明細書に記載の方法において使用することができる代表的なテルル前駆体である:
R1TeR2 XIII
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0139】
R1Te(NR2R3) XIV
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0140】
R1Te−TeR2 XV
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される]。
【0141】
他のテルル錯体として、蒸着用途に使用される多くのテルル前駆体が非常に酸素感受性及び光感受性で不快な臭気を有するという問題を克服する、β−ジケチイミネート配位子を有するものが挙げられる。β−ジケチイミネート配位子による塩基安定化により、テルル前駆体は、改善された操作性及び貯蔵寿命特性、減少した臭気、並びに蒸着用途に十分な揮発性を有する高度に安定な特性のものが得られる。
【0142】
本明細書に記載のテルルジケチミネート錯体は、CVD/ALDに使用して、Te又はTe含有膜を形成することができる。これらの化合物は、Ge−及び/又はSb−化合物と組み合わせて使用して、多様な組成で、Te−Ge−、Te−Sb−又はGe−Sb−Te膜を製造できる。ジケチイミネート配位子を合成する一般的な手法は文献に記載されているが、このような手法は、配位する窒素原子上の非常に嵩高いアリール置換基を必要とするので、不利である。
【0143】
これに対し、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチルのようなより小さいアルキル配位子又はアミン置換アルキル基、例えば、エチレン−ジメチルアミンを、有利に使用して、CVD/ALD用途用の優れたテルルジケチミネート前駆体を製造することができる。窒素ドナー原子上のより小さい置換基は、低温で良好な膜を形成するのに十分な揮発性をもたらす。
【0144】
配位子Lは、リチウム塩として又は遊離のイミン形態で使用して、所望のTe錯体を合成することができる。配位子のリチウム塩は、TeX4(ここで、X=Cl、Br、I)と反応させて、塩脱離によりLTeX3を生成することができ、次いで、それを、リチウム又はグリニャール試薬と反応させて、LTeR3(ここで、R=アルキル、アリール、アミド、シリル)を製造することができる。
【0145】
また、配位子Lのイミン形態は、TeMe4のようなテルル有機化合物と反応させて、メタン脱離により所望のTe種LTeMe3を製造することができる。ジケチイミネート配位子は、非常に有効な反応性金属中心テルルの塩基安定性をもたらす。したがって、本発明は、低温でのCVD/ALDにより優れたTe膜を形成するのに十分な揮発性を保持しながら、より大きな安定性及び貯蔵寿命をもたらす新規な種類のTe錯体を提供する。
【0146】
使用することができるさらなるテルル錯体は、式(I)及び(II)を有する:
【化61】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される];及び
【化62】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される]。
【0147】
β−ジケチイミネート配位子は、例えば、以下の手順により合成しうる:
【化63】
【0148】
テルル錯体は、次いで、以下の反応:
【化64】
又は、別法として、以下の合成反応:
【化65】
又は以下の合成反応により合成することができる:
【化66】
【0149】
本明細書に記載のテルル錯体は、テルル含有薄膜蒸着用のCVD/ALD前駆体として、例えば、ニートの前駆体材料の液体注入により、又は有機溶媒に入れて、又は直接気化により、使用することができる。
【0150】
IV.膜形成
本明細書に記載の前駆体は、プロセス条件、蒸着チャンバーの構造、基材組成等に応じて、非晶質のゲルマニウム含有膜及び結晶ゲルマニウム含有膜を形成するのに使用することができる。これらのプロセス変数の決定は、過度の実験をすることなく、本明細書の開示や、プロセス条件を変えて得られた膜の特性を評価して、特定の膜形成用途に適切なプロセス条件エンベロープを確立するのに適した実験に基づいて、当業者が容易に行うことができる。
【0151】
本明細書に記載のゲルマニウム化合物は、連続的蒸着モード(CVD)又はパルス/原子層蒸着モード(ALD)で適切な共反応体と共に使用して、優れた性質の膜を蒸着することができる。酸化物用の場合、CVD用の好ましい共反応体としてはO2及びN2Oが、また、パルス蒸着用の好ましい共反応体としては、より強力な酸化剤、例えばH2O、オゾン、及びO2プラズマ、が挙げられる。金属様膜用の場合には、還元雰囲気を使用することが有利である。
【0152】
膜形成のCVDモード用には、還元剤、例えば、H2及びNH3、が好ましく、これらの共反応体のプラズマは、デジタル又はALDモードで使用することができ、ここで、共反応体は、パルストレイン中で前駆体と分離され、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内の一般的なCVD及びALD法を用いて行われる。デジタル又はALDモードでは、気相反応を抑制して、共反応体を分離することができるので、より強力な還元剤も、使用することができる。ALD及び高いアスペクト比構造の共形性被覆のためには、前駆体は、あるタイプの雰囲気(例えば、不活性又は弱還元性/酸化性の気体環境)中では自己制限的挙動を示し、また、他のタイプの雰囲気(例えば、プラズマ、強還元性/酸化性の気体環境)中では、迅速な分解を示して所望の膜を形成することが好ましい。
【0153】
類似の金属カチオン前駆体を、CVD用に有利に使用することができるが;異なる種(すなわち、異なる配位子種)を、パルス蒸着で使用することができる。
【0154】
本明細書に記載の前駆体は、還元性共反応体、例えば、水素、H2/プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に、低温蒸着前駆体として使用することができる。液体搬送配合物を使用することができ、前駆体が液体である場合にはニートの液体形態で使用することができ、前駆体が固体又は液体である場合には、好適な溶媒、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン又はトルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、及びヒドラジン中で使用しうる。特別のGe前駆体用の特定の溶媒組成物の有用性は、容易に実験的に決定することができ、使用される特定のアンチモン前駆体の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。本発明の前駆体が固体である場合には、例えば、ProE−Vap固体搬送及び蒸発ユニット(ATMI社(Danbury, CT, USA)から市販されている)を用いて、固体搬送システムを利用することができる。
【0155】
一般に、本発明の実施における金属含有層の厚さは、任意の適切な値であることができる。本発明の特定の実施態様では、金属含有層の厚さは、5nm〜500nm又はそれ以上の範囲であることができる。
【0156】
図1は、本発明の一つの実施態様に従う、ゲルマニウム前駆体を含有する材料貯蔵・分配パッケージ100の概略表示である。
【0157】
材料貯蔵・分配パッケージ100は、その中に内容積104を画定する、例えば、図示されているように一般に筒状の形状であってもよい、容器102を含む。この特定の実施態様では、前駆体は、周囲温度条件で固体であり、そのような前駆体は、容器の内容積104中に配置されたトレイ106の表面上に支持されることができ、このトレイは、容器使用時の分配のために、蒸気が容器中をバルブヘッド集合体へ向けて上方へ流れるように、それに連結した流れ通過路108を有する。
【0158】
固体前駆体は、容器の内容積中の内部表面上に、例えば、トレイ106及び通過路108の表面上に、コーティングすることができる。そのようなコーティングは、前駆体を気体形態で容器内に導入することにより影響を受け、この気体形態から、固体前駆体がその容器内の表面に膜として凝縮される。あるいは、前駆体固体は、溶媒中に溶解又は懸濁され、溶媒気化により、容器の内容積中の表面上に蒸着しうる。さらに他の方法では、前駆体は、溶解され、容器の内容積中の表面上に注がれる。そのような目的で、容器は、前駆体膜を支持するために、容器中にさらなる表面領域をもたらす基材部品又は要素を含んでもよい。
【0159】
他のさらなる代替物として、固体前駆体は、顆粒状又は細かく分割された形状で提供することができ、これは、対応するトレイ106の最上部支持表面上に保持される容器中に注ぎ込まれる。
【0160】
容器102は、バルブヘッド集合体110が結合するネック部分109を有する。バルブヘッド集合体は、示された実施態様では、ハンドホイール112を備えている。バルブヘッド集合体110は、分配ポート114を有し、これは、流れ回路を容器に結合するために、結合又は接続要素とカップリングするべく構成しうる。そのような流れ回路は、図1中で矢印Aで図解的に示されており、流れ回路は、下流ALD又は化学蒸着チャンバー(図1に示されていない)とカップリングしうる。
【0161】
使用に際して、容器102を加熱され、そのような熱の投入は、参照矢印Qで図解的に示され、そこで、容器中の固体前駆体は、少なくとも一部は蒸発されて、前駆体蒸気をもたらす。前駆体蒸気は、ハンドホイール112がバルブの開放位置に動かされたときに、バルブヘッド集合体110中のバルブの通路を通って容器から排出され、これにより、前駆体に由来する蒸気は、矢印Aで図解的に示されている流れ回路に分配される。
【0162】
前駆体の固体搬送の代わりに、前駆体は、溶媒中で、溶液又は懸濁液を形成して提供することができる。そのような前駆体含有溶媒組成物は、次いで、液体搬送により搬送され、フラッシュ蒸発されて、前駆体蒸気を生成する。前駆体蒸気は、蒸着条件下で基材と接触して、金属が膜として基材上に蒸着する。
【0163】
一つの実施態様では、前駆体は、イオン性液体媒体中に溶解され、そこから、前駆体蒸気は、分配条件下でイオン性液体溶液から引き出される。
【0164】
他のさらなる代替方法として、前駆体は、容器の内容積中、好適な固相の物理的な吸着体貯蔵媒体上に、吸着状態で貯蔵しうる。使用に際して、前駆体蒸気は、固相の物理的な吸着体貯蔵媒体から、吸着された前駆体の脱着を含む分配条件下で容器から分配される。
【0165】
前駆体搬送用の供給容器は、広範な種々のタイプであってもよく、本発明の特別な前駆体用の所与の貯蔵及び分配用途に適切でありうるような、SDS、SAGE、VAC、VACSorb、及びProE−Vapの商標でATMI社(Danbury, Connecticut)から市販されているもののような容器を使用しうる。
【0166】
したがって、本発明の前駆体は、基材と接触してゲルマニウム含有薄膜をその上に形成するための、前駆体蒸気を形成するために使用することができる。
【0167】
好ましい態様において、本発明は、前駆体を使用して原子層蒸着を行って、高いアスペクト比の構造においても高ステップ被覆性及び共形性で、基材上に均一にコーティングされた優れた共形性ALD膜を与える。
【0168】
したがって、本明細書に記載の前駆体及び方法は、広範なマイクロ電子素子、例えば、半導体製品、フラットパネルディスプレー等、を、優れた品質のゲルマニウム含有膜で加工することを可能とする。
【0169】
本明細書に記載の前駆体化合物及び方法は、任意の好適なゲルマニウム及びアンチモン前駆体と組み合わせて、例えば、CVD及びALD法により、PCRAM素子製造等の用途用に、GST膜を形成するのに使用できる。Sb含有膜の蒸着を行うために有用なプロセス条件は、搬送及び蒸着プロセス条件を選択的に変えて得られた膜を特性評価し、所与の蒸着用途に最も適切なプロセス条件エンベロープを決定する、簡単な方法により、従来技術の範囲内で容易に決定することができる。
【0170】
いくつかの実施態様において、アンチモン含有膜は基材上に形成され、例えば、GST膜、非晶質SbTe膜、又は結晶性SbTe膜であることができ、また、例えば、原子層蒸着(ALD)又は化学蒸着(CVD)法を用いて、適用することができる。そのようなSbTe(例えば、Sb2Te3)膜は、また、熱電子素子に使用しうる。
【0171】
本発明のさらなる態様では、ゲルマニウムブチルアミジネートを、テルル前駆体、例えば、ジ−t−ブチルテルルのようなジアルキルテルル前駆体、と共に使用して、化学蒸着又は他の好適な方法により、非晶質GeTeを得ることができる。非晶質膜は、任意の好適なプロセス条件で形成しうる。特定のプロセス条件は特定の用途に応じて可変であること、及び、種々のタイプの蒸着チャンバーを、本発明のゲルマニウムブチルアミジネート前駆体を用いる非晶質GeTe膜の形成に使用することができることが認識されよう。例えば、ゲルマニウムアルキルアミジネートからのゲルマニウムの蒸着は、約200℃〜約400℃の範囲の温度及び約0.1〜約20トールの範囲の圧力で行うことができる。一つの例示的な実施態様では、非晶質GeTeは、ゲルマニウムブチルアミジネート及びt−ブチルテルルを用いて320℃の温度及び8トールの圧力で形成されて、GeTe膜が形成される。他の例示的な実施態様において、Geブチルアミジネート及びt−ブチルテルル前駆体が、350℃の温度及び0.8トールの圧力においてアンモニア共反応体と共に使用され、GeTe膜を形成する。
【0172】
GeブチルアミジネートからのGeの蒸着は、低温において、50オングストローム/分を超える蒸着速度という速さである。GeTe蒸着速度は、Te前駆体がバブラー法で搬送される場合、Teバブラーキャリアー流に強く依存し、キャリアー流が高いほど、Te含有量が高く、より厚いGeTe膜をもたらす。それでもなお、Teの組み込みは、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶性GeTeの形成をもたらす傾向にある。温度及び圧力を適切に調節することにより、化学量論的な非晶質GeTe膜を得ることができ、これは、結晶化後も比較的平滑なままである。
【0173】
本発明の種々の実施態様では、平滑な非晶質GeTe膜を、他のジアルキルTe前駆体、例えばジイソプロピルTe、を用いて形成することができる。
【0174】
一般に、蒸着温度の上昇は、Te蒸着を改善し、蒸着圧力の減少は、ゲルマニウムブチルアミジネート(GeBAMDN)からのGeの蒸着において、結晶の発達を回避する。一つの好ましい実施態様では、GeTe膜は、共反応体として使用するアンモニアと、Te前駆体として用いられるTe(tBu)2と共に、そのようなGe前駆体からのCVDにより形成される。GeBAMDNは、テルルの共蒸着に適切なTe前駆体、例えばTe(tBu)2のようなジアルキルTe前駆体、と共に使用される場合、結晶性GeTeの生成の問題を克服するために、使用される蒸着温度の上昇と蒸着圧力の低減を可能にする。
【0175】
アンモニアを共反応体として使用するGeTe蒸着に対する圧力及びテルル搬送の影響を、下の表1中にデータにより示す。これらのデータは、100℃の温度に保たれた油浴と、室温(〜21℃)に保たれたTe(tBu)2バブラーを含む実験的反応器システム中で得られた。ゲルマニウム前駆体、GeBAMDNの搬送速度は20マイクロモル/分であり、アンモニア共反応体流は、200標準立方センチメートル/分に保持された。システム中の圧力は、80ミリトール(mtorr)であった。蒸着時間は、8分に固定し、基材は、50ナノメータ厚の窒化チタンでコーティングされたケイ素基材であった。
【表2】
【0176】
表1中のデータは、高温により、得られた膜(非晶質)中へのテルルの組み込みが改善されることを示している。
【0177】
下の表2は、蒸着したままの膜と比較して、400℃で窒素雰囲気下で1時間アニーリングした後に8トール圧で蒸着したアニーリングしたGeTe膜についてのデータを示す。
【表3】
【0178】
表2中のデータは、アニーリングしたGeTe膜と蒸着したままの膜の膜厚及び組成的特性が互いに一致していることを示す。
【0179】
図2は、窒素雰囲気下で、400℃で1時間アニーリングした後の、アニーリングGeTe膜の走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、図3は、SiO2基材、TiN及びGeTe層を示す、仰角での膜の断面の顕微鏡写真である。図3は、熱処理後に膜が平滑さを保っていることを示す。
【0180】
図4は、400℃でアニーリングした後の表2のアニーリングGeTe膜についての、結晶特性のX線分散プロットである。
【0181】
以上は、ゲルマニウムブチルアミジネート、GeBAMDNが、例えば、アンモニア共反応体と共に、8トールの圧力、320℃未満の温度で、平滑な非晶質GeTeを与えることを示す。
【0182】
これらの実験は、また、GeTeの蒸着速度が、Teバブラーキャリアー流に強く依存し、より高いキャリアー流は、窒素共反応体では、より厚いGeTe膜を与えるが、アンモニア共反応体では、より薄いGeTe膜とより少ないテルル組み込みを与えることを示した。
窒素中での400℃でのアニーリングにより、この非晶質GeTeは結晶化した。
【0183】
次に、窒素を共反応体として用いたGeTe蒸着に対する、温度、圧力及びテルルデリバリ速度の影響を検討するために、蒸着を行った。
【0184】
実験システムは、100℃の温度に保たれた油浴を含んでいた。室温(〜21.5℃)に保たれたテルル(tBu)2バブラーを使用し、GeBAMDN前駆体の搬送速度は20マイクロモル/分であった。窒素共反応体流は、100標準立方センチメートル/分とし、圧力は、8,000ミリトールに固定した。蒸着時間は、8分及び16分であった。50ナノメータ厚のTiNでコーティングされたケイ素基材を、蒸着に使用した。データを、下の表3に示す。
【表4】
【0185】
表3のデータは、高いテルル搬送速度によりGeTe蒸着速度が改善されることを示した。240℃では、蒸着は生じなかった。320℃での蒸着は、図5のX線分散プロットに示されているように、(003)に主な回折ピークを持つGeTeを与えた。
【0186】
下の表4には、共反応体のGeTe結晶性に対する影響が示されており、ここで、蒸着は、20マイクロモル/分のGeBAMDN搬送速度及び25標準立方センチメートル/分のTeバブラーキャリアー流速度で、320℃の温度及び8トールの圧力において行われた。
【0187】
表4に示されているように、共反応体としてアンモニアを用いた場合のみが、平滑な膜を与え、窒素及び水素を共反応体種として用いた蒸着は、結晶性膜を製造した。
【表5】
【0188】
図6及び図7は、これらの蒸着で製造された膜のX線分散プロットである。図6は窒素を共反応体として用いた膜のプロットであり、図7は、アンモニア共反応体を用いた蒸着についてのプロットである。
図8は、水素を共反応体として用いて形成された結晶性GeTeの走査電子顕微鏡写真である。
図9は、窒素を共反応体として用いて製造された膜の走査電子顕微鏡写真である。
図10は、窒化チタンの50ナノメータ厚の層の最上層上に、25ナノメータの膜厚で製造された非晶質GeTeの走査電子顕微鏡写真である。
図11は、図10の平滑な非晶質GeTe膜の仰角断面である。
図12は、標準である50ナノメータ厚のGST膜に対する、図10及び図11に示されたGeTe膜のエネルギー分散分光分析法(EDS)スペクトルである。
【0189】
下の表5に示されているのは、GSTサンプル、Ge2Sb2Te5、を標準として用いた定量的EDS分析である。
【表6】
【0190】
Ge2Sb2Te5標準ファイルの形成については、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)のみが存在する元素であり、それらの対応する重量パーセントは、13.99、23.45及び62.57であった。実際には、ケイ素、炭素及び酸素も存在するが、それらのピークは、対象の元素と重なり合わないので、GSTサンプル中のゲルマニウム、アンチモン及びテルルの決定の邪魔をしないと考えた。
【0191】
図13は、約300オングストロームの推定厚さで分析的に決定された68.4%のゲルマニウムと31.4%のテルルの組成の、マイクロ電子素子構造上のGeTeの走査電子顕微鏡写真である。
【0192】
表6は、アンモニア共反応体を用いたでのGeTe蒸着におけるテルル組み込みに対する温度の影響についてのデータを示す。データには、生成物膜の温度、蒸着速度、ゲルマニウム百分率、テルル百分率及び結晶性が含まれた。
【表7】
【0193】
表6中のこれらのデータは、テルル組み込みの効率が低温で減少し、280℃で製造された膜中では16.6%テルルに、また260℃で製造された膜中ではたった12.6%テルルにまで低下した。非晶質GeTeは、340℃未満の温度で製造された。
【0194】
図14は、340℃で蒸着されたGeTe膜の走査電子顕微鏡写真であり、その結晶性の性質を示しており、このことは、また、その膜についての図15のXRDプロット中に反映されている。
【0195】
表7は、320℃及び8トールの圧力で16分の蒸着中に形成された、非晶質テルル化ゲルマニウム膜のアニーリングについてのデータを示す。アニーリングは、管状炉中で、350℃に続いて400℃に昇温した温度で、10分間、窒素雰囲気下で行った。アニーリングは、膜中のテルルの原子パーセント及び膜厚を減少させた。
【表8】
【0196】
表7中のデータは、蒸着したままの膜が非晶質であり、400℃で10分間のアニーリングが膜の結晶化を誘起することを示す。
【0197】
図16は、表7にデータが示されている3つの膜のX線分散プロットである。非晶質膜の曲線は、サンプルGT−1134Aのそれと同一である。350℃で10分間アニーリングしたサンプルは、サンプルGT−1145Aであった。10分間のアニーリングで、350℃に続いて400℃でアニーリングに付したサンプルは、サンプルG−1145Bと同定された。データは、2θ=30°の(202)ピークがアニーリング後に大きくなったことを示す。
【0198】
図17は、サンプルGT−1134、非晶質GeTe膜の走査電子顕微鏡写真であり、図18は、350℃に続いて400℃でアニーリングした膜、サンプルGT−1145B、の走査電子顕微鏡写真であり、平滑な膜の最上部に約100ナノメータのサイズの小さな結晶粒子を示す。
【0199】
300℃でのGeTe蒸着に対するテルル搬送の影響は、25標準立方センチメートル/分のTeキャリアー流で26.4オングストローム/分の蒸着速度で行われた実験(実験#1143)と、40標準立方センチメートル/分のTeキャリアー流で23.0オングストローム/分の蒸着速度で行われた実験(実験#1144)について、下の表8に示されている。データは、テルルバブラーキャリアー流が増大すると、テルル化ゲルマニウムの蒸着速度及びテルルの組み込みが減少することを示している。
【表9】
【0200】
表9は、280℃、8トールの圧力において、共反応体としてのアンモニアを用いた3つの対応する実験における、280℃におけるテルル化ゲルマニウム蒸着に対するテルル搬送速度の影響を反映したデータを示している。テルルキャリアー流は最初の実験では25sccm、二番目の実験では40sccm、そして三番目の実験では50sccmであり、それぞれ、24.5、28.5及び24.2オングストローム/分の蒸着速度をもたらした。データは、テルルバブラーキャリアー流が40から50sccmに増大すると、テルルの組み込み及びGeTeの蒸着速度が減少することを示している。
【表10】
【0201】
このように、本発明は、適切な温度及び圧力プロセス条件で、平滑な非晶質GeTeを形成することによって、高度に共形性のGST膜を製造することを可能とする。温度及び圧力を調節することにより、非晶質テルル化ゲルマニウム膜が製造され、これは、結晶化後も比較的平滑さを保っている。ゲルマニウムブチルアミジネート、GeBAMDN及びt−ブチルテルル、Te(tBu)2について例証したが、ゲルマニウム前駆体は、また、他のジアルキルテルル前駆体、例えば、TeR2(ここで、RはC3〜C8である)、と共に使用することができる。ジイソプロピルテルルが、テルル源試薬としてジ−tert−ブチルテルルに対して好適な代替ジアルキルテルル前駆体である。ゲルマニウム前駆体は、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]であることが有利である。
【0202】
したがって、本発明は、非晶質平滑なテルル化ゲルマニウムの蒸着用前駆体として[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を使用することを意図し、その際、高温低圧における蒸着プロセスにおける共反応体としてアンモニアが有用である、。
【0203】
図19は、ゲルマニウムブチルアミジネート前駆体とジアルキルテルル前駆体を用いる化学蒸着によりGeTeが蒸着される「アグレッシブ」基材の例としての、マイクロ電子素子構造の走査電子顕微鏡写真である。GeTe材料の性質は、本発明のGeBAMDN前駆体の使用により製造されるテルル化ゲルマニウム膜を用いて相変化型ランダムアクセスメモリー(PCRAM)メモリー素子を形成することを可能にする。
【0204】
例示的な例として、GeTe膜は、320℃の温度、7トールの圧力、5マイクロモル/分のGeBAMDN、Te(tBu)2バブラーを通しての20sccmのキャリアー流、及び50sccmのアンモニアで、形成することができる。一般に、有利なプロセス条件は、約280〜約350℃の範囲の温度、Geが1〜10マイクロモル/分の流れ、1〜100sccmのキャリアー流、1〜1000sccmのアンモニア及び1〜20トールの範囲の圧力を含みうる。
【0205】
本発明の[{nBuC(iPrN)2}2Ge]前駆体を使用するテルル化ゲルマニウムの平滑な非晶質膜を形成する際のプロセス条件は、実際には、広く変更することができ、そのような非晶質GeTe膜を形成するための特定のプロセス条件は、本明細書中の開示に基づいて、過度の実験をすることなく、当業者が容易に決定することができる。
【0206】
前反応のコントロール
他の態様における本発明は、本明細書に記載の前駆体の気相前反応に対抗するコントロール剤の使用を含む。そのようにしないと、基材上の不均一な核生成、蒸着反応のインキュベーション時間が長くなり、生成物膜の品質が低くなる。このような前反応は、例えば、カルコゲン化物膜を含む用途、関連するソース材料(O、S、Se、Te、Ge、Sb、Bi等)、及び/又は相変化型メモリーと熱電子素子の製造において、特に問題となる。
【0207】
前反応は、本明細書に記載の前駆体試薬が、化学蒸着において蒸着チャンバーに導入されるときに生じることがあり、そして、原子層蒸着(ALD)サイクル工程の順序と使用する試薬によっては、原子層蒸着(ALD)方法でも生じうる。
【0208】
したがって、本発明は、本明細書に記載の前駆体と共にコントロール剤を使用することが意図されており、これにより、有害な気相前反応が抑制され、軽減され、又は排除され、その結果、蒸着反応が基材表面上で誘起/促進され、優れた特性の膜が効率よく形成される。
【0209】
このような目的で、本明細書に記載の前駆体と共に使用できるコントロール剤として、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される試剤が挙げられる。
【0210】
これらの試剤は、本明細書に記載の前駆体の有害な気相前反応を減少させるために、以下に示す種々のアプローチにより使用することができる:
(1)1以上のヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、例えば、1,4−ジオキサン、チオキサン、エーテル、ポリエーテル、トリエチルアミン(TEA)、トリアジン、ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、アミン、イミン、及びピリジン、を含む前反応抑制剤の前駆体組成物への添加;
(2)フリーラジカル阻害剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、エチルバニリン等、の前駆体組成物への添加;
(3)気相蒸着用の重水素化類縁体をもたらすための、水素置換基を重水素(D)置換基で置き換えた修飾カルコゲン化物前駆体の使用;
(4)前駆体をその場(in situ)で重水素化するための、重水素源の前駆体組成物への添加。
【0211】
上記の前反応対抗剤(抑制剤、フリーラジカル阻害剤、重水素源及び/又は重水素化前駆体)を、膜が形成されるべき気相蒸着方法への供給ストリームのいずれかに導入することができる。例えば、このような前反応対抗剤は、1以上の前駆体供給ストリーム、蒸着チャンバーにカルコゲン化物前駆体又は他の試薬を流すために、これらが後に添加される不活性キャリヤーガスストリーム、蒸着チャンバーに流入する共反応体供給ストリーム、及び/又は、蒸着チャンバーに流入し、前反応対抗剤が存在していなかった場合に生じるであろう前駆体の未成熟反応を減少又は排除するために有用である任意の他のストリーム、に導入することができる。
【0212】
特定の実施態様における上記の抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源試薬は、前駆体、例えば、金属源試薬、と共に、一緒に注入されて、前駆体及び試薬が関与する前反応の少なくとも一部を減少させることができる。
【0213】
前反応対抗剤は、あるいは、蒸着部位、例えば、膜を蒸着する基材、と接触させるために前駆体蒸気が導入される蒸着チャンバーに向けて添加して、前駆体及び/又は他の試薬が関与する有害な気相前反応を抑制することができる。
【0214】
他のアプローチとして、本発明の広範な実施において、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を、前駆体及び/又は他の金属源試薬を含有する溶液に添加することができ、得られる溶液は、液体搬送工程に使用することができ、その場合、この溶液は蒸発器に流入して、蒸着種を蒸着する基材と接触するためのソース蒸気が形成される。
【0215】
あるいは、前駆体及び/又は他の金属源試薬が既存の溶液中に存在しない場合、関与する材料の対応する相及びそれらの相容性/溶解性に応じて、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を添加して、前駆体及び/又は他の金属源試薬との混合物若しくは溶液を形成することができる。
【0216】
他のさらなるアプローチとして、基材を前駆体及び/又は他の金属源試薬と接触させる前に、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を基材の表面処理のために使用することができる。
【0217】
したがって、本発明は、基材上に膜を形成するための種々の蒸着組成物及び方法を意図するものであり、そこでは、前駆体の前反応が、本明細書中で抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源試薬とも称されるヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物から選択される1以上の前反応対抗剤により、少なくともその一部が低減される。重水素源によるその場(in situ)での重水素化の代わりに、事前に合成された重水素化前駆体又は有機金属化合物の使用も意図される。これらのアプローチでの前駆体前反応の抑制により、優れた性質の生成物膜を効率的に形成できる。
【0218】
マルチ供給ストリームが蒸着部位に流入して基材上に膜が形成される方法において、コントロール剤を、カルコゲン化物前駆体の前反応に対抗するために使用することができ、その場合、少なくとも1つのマルチ供給ストリームには膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性の前駆体が含まれ、その方法にはコントロール剤を、少なくとも1つのそのようなマルチ供給ストリーム若しくはそれに供給された材料、又は蒸着部位に、導入する工程が含まれる。
【0219】
あるいは、成長するカルコゲン化物膜の表面を保護し、蒸着速度を遅くするために、前反応対抗試薬を導入することができ、引き続いて代替の前駆体又は共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を用いる再活性化を行い、これにより、例えば交互反復シーケンスとして、保護/遅延と、これに引き続く再活性化工程が行われる。このような保護/遅延と引き続く再活性化のシーケンスは、ALD又はALD様プロセスにおいて、所望の反復サイクル数行うことができるる。その工程は、全体の蒸着操作にわたって、又は、ある初期の、中間の、又は最後のその部分の間に行うことができる。
【0220】
したがって、本発明は、前駆体及び前反応対抗試薬を含む前駆体組成物を意図する。前記の前反応対抗試薬、すなわち、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬のカテゴリー内で、特定の用途に対する好適な前反応対抗試薬は、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内で、容易に決定しうる。
【0221】
ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物は、プロセス系において少なくとも部分的に前駆体及び/又は他の金属源試薬の前反応を少なくするのに有効である限り、オキソ(−O−)部分、窒素環原子若しくはペンダントアミノ若しくはアミド置換基、イオウ環原子若しくはペンダントスルフィド、スルホネート又はチオ基等を含む種々のタイプのものであってよい。本発明の特定の用途において有用性を有するヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物の例示的な例として、限定するものではないが、1,4−ジオキサン、チオキサン、エーテル、ポリエーテル、トリエチルアミン、トリアジン、ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、アミン、イミン、及びピリジン等が挙げられる。
【0222】
本発明の種々の実施態様におけるヘテロ原子有機ルイス塩基化合物として、グアニジネート化合物、例えば、(Me2N)2C=NHが挙げられる。
【0223】
このような目的に対するヘテロ原子有機ルイス塩基化合物の1つの好ましい種類として、R3N、R2NH、RNH2、R2N(CH2)xNR2、R2NH(CH2)xNR2、R2N(CR2)xNR2、及び環状アミン−N(CH2)x−、イミダゾール、チオフェン、ピロール、チアゾール、尿素、オキサジン、ピラン、フラン、インドール、トリアゾール、トリアジン、チアゾリン、オキサゾール、ジチアン、トリチアン、クラウンエーテル、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,5,9−トリアザシクロドデカン、シクレン、コハク酸アミド、並びに上記のものの置換誘導体が挙げられ、ここで、Rは水素又は任意の好適な有機部分、例えば、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C1〜C8アルケン、C1〜C8アルキン、及びC1〜C8カルボキシル、であることができ、ここで、xは1〜6の値を有する整数である。
【0224】
ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物は、前駆体組成物中で、任意の好適な濃度で使用することができ、その濃度は、適切な濃度を決定するために、ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物濃度を変えて、得られた膜の特徴を評価する連続的な蒸着実験により実験的に決定しうる。種々の実施態様において、ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物は、前駆体の量の1〜300%の濃度で使用しうる。ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物の0.01〜3当量の範囲内の濃度値の特定の下位範囲は、本明細書の記載に基づいて、過度の実験をすることなしに、前駆体の特定の種類に対して確立しうる。
【0225】
前反応対抗試薬は、追加的に又は代替的に、前駆体と他の有機金属試薬の間の前反応の程度を減少させるのに有効であるフリーラジカル阻害剤を含みうる。このようなフリーラジカル阻害剤は、任意の好適なタイプのものであってよく、例えば、ヒンダードフェノールが挙げられる。例示的なフリーラジカル阻害剤としては、限定するものではないが、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、2,6−ジメチルフェノール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、2−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4−tert−ブチルカテコール、N−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、p−メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソウレア、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、オキサリス(ベンジリデンヒドラジド)及びこれらの混合物から選択されるフリーラジカル捕捉剤が挙げられる。好ましいフリーラジカル阻害剤として、BHT、BHA、ジフェニルアミン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0226】
フリーラジカル阻害剤の有用な濃度は、種々の特定の実施態様において、前駆体の重量の0.001〜約0.10重量%の範囲でありうる。より一般的には、膜形成プロセスに含まれる搬送及び蒸着操作における前駆体の前反応に対抗するのに有効である任意の量のフリーラジカル阻害剤を使用しうる。
【0227】
重水素源化合物は、カルコゲン化物前駆体の前反応を抑制する他のアプローチを与える。このような重水素源化合物は、任意の好適なタイプのものでよく、例えば、重水素化ピリジン、重水素化ピリミジン、重水素化インドール、重水素化イミダゾール、重水素化アミン及びアミド化合物、重水素化アルキル試薬等、並びに、そうでなければ水素又はプロトン置換基を有するものとして使用されるであろう前駆体の重水素化類縁体が挙げられる。
【0228】
前反応対抗試薬として本発明の一般的な実施に有用でありうる重水素化物として、限定するものではないが、式RxGeD4-x及びRxSbD3-xのゲルマニウム及びアンチモン化合物が挙げられ、ここで、Rは水素又は任意の好適な有機部分、例えば、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C1〜C8アルケン、C1〜C8アルキン、及びC1〜C8カルボキシル、であることができ、ここで、xは1〜6の値を有する整数である。
【0229】
重水素源試薬は、前駆体の前反応に対抗するのに有効である任意の好適な濃度で使用しうる。本発明の特定の実施態様における例示的な重水素源試薬の濃度は、前駆体の重量に対して、0.01〜約5重量%であることができる。
【0230】
したがって、重水素源化合物は、蒸着方法への1以上の供給ストリームに添加してもよいし、及び/又は前駆体若しくは他の供給ストリーム成分の一つは、最初に、重水素化されていてもよい。
【0231】
前駆体の前反応を少なくとも部分的に排除するために、本発明の実施において利用される前反応対抗剤の濃度は、温度、圧力、流速及び関与する特定の組成物に応じて、本発明の一般的な実施において、広範に変更することができる。したがって、本発明の前反応対抗試薬の濃度の上記の範囲は、単なる例示的な性質のものと考えるべきであり、適用可能な濃度は、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内で容易に決定される。
【0232】
蒸着方法への1以上の供給ストリームに前反応対抗剤の導入又は添加する特定モードは、しかるべく変更することができ、例えば、マスフローコントローラー、フロー調節バルブ、計量インジェクター、又は前反応対抗剤の源を正常な膜形成操作中に蒸着プロセスに流入するストリームに結合するフロー回路における他のフローコントロール若しくはモジュレート部品を用いることができる。プロセス系は、さらに、本発明の所与の実施に必要か又は適切でありうるように、アナライザー、モニター、コントローラー、機器等を含んでもよい。
【0233】
蒸着プロセスへの1以上のフローストリームに前反応対抗剤を導入又は添加する代わりに、前反応対抗剤を、プロセス用の出発試薬材料として、最初に前駆体と混合することができる。例えば、前反応対抗剤を前駆体と溶液中で混合し、得られた溶液を膜を蒸着する基材と接触するための前駆体蒸気を発生させるのに使用する蒸発器に液体搬送してもよい。
【0234】
上記のように、前反応対抗剤は、蒸着部位に添加されて、もしこれがなければそのような有害な相互作用の影響を受けるであろう前駆体蒸気の前反応の活性気相抑制をもたらしうる。
【0235】
他のさらなる代替方法として、前反応対抗剤を予備的な表面処理として使用することができ、それに続いて、前駆体及び共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を、基材表面に搬送して、その表面上に蒸着する。そのような目的で、前反応対抗剤が、任意の前駆体の流入の開始に先立ち、蒸着プロセスへの1以上のフローライン及び蒸着プロセスチャンバー中の基材への流れに導入される。基材とそのような前反応対抗剤との接触に必要な期間が完了したのちに、前反応対抗剤の流れを停止することができ、蒸着チャンバーへのフローストリームの正常な供給を開始することができる。
【0236】
前反応対抗剤を広範な種々の方法のいずれかで導入して、蒸着システム中で前駆体の前反応の低減をなしうることは、上記の記載から明白であろう。
【0237】
本発明の一つの実施態様では、気相蒸着システムは、
膜をその上に蒸着するための少なくとも一つの基材を保持するために適合されている蒸着チャンバー;
膜を形成するための試薬を含有する化学試薬供給容器;
その試薬をその化学試薬供給容器から蒸着チャンバーへ搬送するために配置されている第一の流れ回路;
前反応対抗剤を含有する前反応対抗剤供給容器;
前反応対抗剤を前反応対抗剤供給容器から第一の流れ回路、前記化学試薬供給容器及び/又は蒸着チャンバーに搬送するために配置されている第二の流れ回路;
を含むことが意図されている。
【0238】
図面を再び参照すると、図20は、その一つの実施態様における蒸着システム100の概略表示である。
【0239】
この例示的システムにおいて、前反応対抗剤は、供給容器110に入れられている。前反応対抗剤は、前反応抑制剤、フリーラジカル阻害剤、重水素源、あるいはこのような試剤及び/又はこのような試剤のタイプの2以上の組み合わせを含むことができる。
【0240】
前反応対抗剤供給容器は、対応するフローライン112,114及び116により、それぞれ「G」、「S」及び「T」と標識されているゲルマニウム、アンチモン及びテルル試薬供給容器に結合される。容器「G」中のゲルマニウム前駆体は、テトラアルキル又はテトラアミドゲルマニウム化合物、例えば、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、テトラアリルゲルマニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ゲルマン又は他の有機ゲルマニウム化合物でありうる。さらに、前駆体「G」は、Ge(II)上のローンペアが前反応抑制剤の不存在下で、カルコゲン前駆体と気相で反応し得るゲルミレン化合物でありうる。容器「S」中のアンチモン前駆体は、トリアルキル又はトリアミドアンチモン化合物、例えば、トリブチルアンチモン、トリイソプロピルアンチモン、トリス(ジメチルアミノ)アンチモン又は他の有機アンチモン化合物であることができる。容器「T」中のテルル前駆体は、ジアルキル又はジアミドテルル化合物、例えば、ジイソプロピルテルル、ジブチルテルル、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]テルル又は他の有機テルル化合物であることができる。
【0241】
したがって、前反応対抗剤は、そのような目的のためにフロー調節バルブ又は他のフローモジュレーティング部品を有してもよい対応するフローラインを介して、対応する「G」、「S」及び「T」中のゲルマニウム、アンチモン及び/又はテルル前駆体のいずれにも添加することができる。
【0242】
示された特定の方法の実施態様において、ゲルマニウム、アンチモン及びテルル前駆体は、液体状態でそれぞれ供給ライン118,120及び122中を流れ、混合チャンバー124に流入され、その後、得られる前駆体混合物は、ライン126中の混合チャンバー124から蒸発器128に流入される。蒸発器において、液体前駆体混合物と前反応対抗剤が蒸発して、前駆体蒸気が形成される。その後、前駆体蒸気は、蒸着チャンバー中でサセプター138に装着されているウェーハ基材136上に前駆体混合物を排出するために、ライン130中を流れて、蒸着チャンバー132中のシャワーヘッドディスペンサー134へと流入する。
【0243】
ウェーハ基材136と接触する前駆体蒸気は、基材上でゲルマニウム、アンチモン及びテルル金属を蒸着するのに供されて、例えば、相変化型ランダムアクセスメモリー素子製造用の、ゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)材料の薄膜が形成される。
【0244】
金属含有量が減少した接触した前駆体蒸気は、ライン140中の蒸着チャンバー132から排出されて、留出軽減ユニット142に流入する。留出軽減ユニット142中で、排出された留出蒸気は、例えばスクラビング、触媒的酸化、電気化学的処理により、又は他の方法で処理して、ライン146中の軽減ユニットから排出される最終留出物が得られる。
【0245】
図20に示されている蒸着システムの概略表示は、例示的な性格のものであり、多くの他のアレンジしたものが、前に例示的に本明細書中で議論されたものを含む前反応対抗剤の配備及び使用のために、使用できることが理解されよう。例えば、前反応対抗剤は、対応するGST前駆体とその中で混合するために、直接的に、混合チャンバー124に導入することができた。あるいは、前反応対抗剤は、蒸着部位に輸送される前駆体と組み合わせるために、マニホールド118又は他の混合チャンバー、ブレンダー等に導入することができた。
【0246】
図20に示されているシステムは、各前駆体の液体搬送を採用する。固相前駆体を採用する場合、固相前駆体が固相出発原料の昇華等により気化される、固相搬送法を採用することができる。
【0247】
図20中の前反応対抗剤として重水素化剤を使用する代わりに、1以上のゲルマニウム、アンチモン及びテルル前駆体を、最初に、有機部分の水素置換基が重水素で置き換えられている有機ゲルマニウム、アンチモン又はテルル前駆体の重水素化類縁体として供給できた。
【0248】
前反応対抗試薬は、本発明の広範な実施において使用されて、半導体製品の製造用の改善された膜を製造しうる。一般に、本明細書に記載の前反応対抗試薬は、特定の用途において種々の組み合わせで使用されて、前駆体の前反応を抑制又は排除し、且つ優れた核生成及び最終膜特性をもたらしうる。
【0249】
本発明を、本発明の特定の態様、特徴及び例示的な実施態様を参照して本明細書中で記述してきたが、本発明の有用性はそのように限定されるものではなく、むりろ、本明細書中の開示に基づいて、本発明の分野の当業者に示唆されるような、数多くの他の変形、修正及び代替的実施態様に拡張され、またそれらを包含することが理解されよう。それに相応して、特許請求されている本発明は、その精神及び範囲内で、全てのそのような変形、修正及び代替的実施態様を含むように、広く理解され、解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】本発明の一つの実施態様における、本発明の前駆体を含有する材料貯蔵分配パッケージの概略図である。
【図2】窒素雰囲気中、400℃で1時間アニーリングしたのちの、テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】二酸化ケイ素基材上に形成された窒化チタン層上に蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜の平滑性を示す、図2のテルル化ゲルマニウム膜の断面の仰角SEM図である。
【図4】400°Fでアニーリングしたのちの結晶特性を示す、テルル化ゲルマニウム膜のX線分散(XRD)プロットである。
【図5】窒素共反応体を用いてCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図6】窒素共反応体を用いたCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図7】アンモニア共反応体を用いたCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図8】共反応体として水素を用いたCVDプロセスで形成蒸着された結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図9】共反応体として窒素を用いたCVDプロセスで形成された結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】50ナノメータ厚の窒化チタン上に形成された非晶質テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図11】図10のテルル化ゲルマニウム膜の断面の仰角図である。
【図12】テルル化ゲルマニウム及び標準GST膜のEDSスペクトルプロットである。
【図13】マイクロ電子素子構造上に蒸着されたテルル化ゲルマニウムの膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図14】340℃で蒸着された、結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図15】図14のテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図16】非晶質膜、350℃で10分間アニーリングした膜、及び350℃でアニーリングし、続いて10分間400℃に曝したテルル化ゲルマニウム膜を包含する、非晶質テルル化ゲルマニウム膜についてのXRDプロットである。
【図17】非晶質テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図18】400℃でのアニーリング後の、テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図19】ゲルマニウムブチルアミジネート前駆体及びジアルキルテルル前駆体を用いてGeTeが化学蒸着により蒸着されている「アグレッシブ」基材の例としての、マイクロ電子素子構造の走査電子顕微鏡写真である。
【図20】前反応対抗剤を蒸着システム中の1以上の供給ストリームに添加することにより前駆体の前反応の抑制が達成される、本発明の一つの実施態様に従う蒸着システムの概略図である。
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
2008年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/051,274号、2008年5月9日に出願された米国仮特許出願第61/052,018号、2008年6月27日に出願された米国仮特許出願第61/076,428号、2007年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/984,370号、及び、2008年5月2日に出願された米国仮特許出願第61/050,179号についての35 USC 119で規定される優先権の主張の利益を主張する。前記米国仮特許出願第61/051,274号、米国仮特許出願第61/052,018号、米国仮特許出願第61/076,428号、米国仮特許出願第60/984,370号及び米国仮特許出願第61/050,179号の開示は全て本願明細書中に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、例えば、テルル化ゲルマニウム(GeTe)及びテルル化ゲルマニウムアンチモン(GST)膜等の、基材上のゲルマニウム、テルル及び/又はアンチモンを含む非晶質膜を形成するための化学蒸着プロセス並びにそのような膜を組み込んだ相変化型ランダムアクセスメモリー素子及び他の素子に関する。特に、本発明は、CVDプロセスから形成される非晶質GeTe及びGST膜並びにこれらの膜から形成される素子に関する。
【背景技術】
【0003】
相変化型ランダムアクセスメモリー(PCRAM)は、近年、高度に集積された不揮発性メモリー素子用に、多大な関心が寄せられている。PCRAMセルにおいて、GST材料を結晶状態から非晶質状態に切り替えるのに要する高レベルのリセット電流が、PCRAMのさらなるスケール化の主な障害となっている。
【0004】
ゲルマニウム、アンチモン、及びテルル(GST)材料の合金を接触プラグに閉じ込めることは、周囲の材料への熱の消散を大きく減少させ、リセット電流を大いに減少させる。したがって、良好な共形性(conformality)をもたらすプロセス、例えば原子層蒸着(ALD)プロセス又は化学蒸着(CVD)プロセスを用いてGST膜を蒸着することが必要である。ALDプロセスは、膜を「一層ずつ」構築するので、非常に時間のかかるものである。逆に、CVDプロセスは、高い蒸着速度をもたらす。残念ながら、CVDプロセスは、結晶GeTeが形成されやすい。結晶GeTeは、GST膜の共形性を有意に減少させ、しばしば、接触プラグ中に空孔を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GST、GeTe、及び他の膜を非晶質の形態で、ただし比較的高い蒸着速度で形成する新規な方法を提供することは有利であろう。本発明は、そのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
PCRAM、高度に集積された不揮発性メモリー素子のような用途用の、基材上に非晶質GeTe及びGST膜を形成するための改善された化学蒸着方法を、開示する。本明細書に記載のゲルマニウム及びテルル前駆体は、アンモニアによる還元性環境中で、又は、他の実施態様では、窒素雰囲気中で、調節された温度と圧力の下で反応し、非晶質GeTeを生成する。
【0007】
一つの実施態様では、蒸着の温度は320℃以下であり、圧力は8トール以下である。他の実施態様では、蒸着の温度は350℃以下であり、圧力は0.8トール以下である。ゲルマニウム前駆体(例えば、GeM又はGeアミジネート(amidinate))からのGeの蒸着は、低温において速い。しかしながら、Teの組み込みには、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶GeTeの生成を招く傾向にある。温度と圧力の両方を調整することにより、非晶質GeTe膜を得ることができる。この非晶質GeTe膜は、結晶化した後も、比較的平滑なままである。この方法は、また、ジイソプロピルTe等の他のジアルキルTe前駆体に拡張することができる。
【0008】
別の態様では、本発明は、前駆体が揮発されて前駆体蒸気を形成し、次いでこの蒸気と基材を接触させる、前駆体からの化学蒸着による、非晶質GeTe材料を基材上に蒸着させる方法に関する。非晶質GeTe膜を蒸着させるための代表的な前駆体として、Geブチルアミジネート(GeBAMDN)及び本明細書中でGeMとも称される[{nBuC(iPrN)2}2Ge]が挙げられる。
【0009】
本発明の一つの特定の態様では、Geブチルアミジネート又はGeM({nBuC(iPrN)2}2Ge)は、320℃、8トールの圧力で、及び、350℃、0.8トールの圧力において、アンモニアを共反応体として、t−ブチルTeと共に展開されて、非晶質GeTeを生成する。
【0010】
本発明の他の態様では、非晶質GeTe膜を結晶化させて、比較的平滑なGeTe膜を生成する方法が記述されている。Geアミジネート又はGeMからのGeの蒸着は低温において速いが、Teの組み込みは、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶GeTeの生成を招く傾向にある。結晶GeTeは、平滑ではない薄膜を与える。温度及び圧力の双方を調節することにより、非晶質GeTe膜を得ることができる。非晶質GeTe膜は、結晶化した後も、比較的平滑なままである。
【0011】
本発明の他の態様では、この方法は、また、他のジアルキルTe前駆体、例えばジイソプロピルTeに拡張することができる。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、GeTe,GST、アンチモン、又は他のそのような膜を基材上に形成する方法であって、本明細書に記載のゲルマニウム、アンチモン、又はテルル前駆体を揮発させて前駆体蒸気を形成し、次いでそのような前駆体蒸気を基材と接触させて、その上にゲルマニウム,アンチモン、及び/又はテルル含有膜を形成することを含む方法に関する。
【0013】
他の態様では、本発明は、本明細書中でGeMとも称される[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含む、ゲルマニウム含有膜を形成するための前駆体組成物に関する。
【0014】
本発明の他の態様は、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]及びジアルキルテルル前駆体を揮発させて前駆体蒸気を形成し、次いで前駆体上記を基材と接触させて平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を基材上に形成することを含む、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜の形成方法に関する。
【0016】
他の態様では、本発明は、非晶質のテルル化ゲルマニウム膜を形成することを含み、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]又はGeブチルアミジネートを含むゲルマニウム前駆体からのゲルマニウムの化学蒸着を含む、相変化型ランダムアクセスメモリー素子の形成方法に関する。
【0017】
他の態様での本発明は、PCRAM素子の製造方法であって、その素子を製造するために、基材上にGeTe又はGST膜を形成することを含み、その形成は、本明細書に記載の非晶質ゲルマニウム、テルル、及び又はアンチモン層を蒸着させる方法を用いて、本明細書に記載の前駆体の蒸気から基材上に膜層を蒸着させることを含む。
【0018】
前駆体は、本明細書に記載の1以上のアンチモン含有前駆体を、1以上のゲルマニウム及びテルル含有前駆体と共に、前駆体を含む蒸気から基材上に蒸着させることにより、基材上にGST膜を形成するために使用することができる。
【0019】
前駆体は、また、上記のように、PCRAM素子製造用基材の上にGST膜を形成することにより、PCRAM素子を形成するために使用することができる。
【0020】
さらに他の態様では、本発明は、基材上に膜を形成する蒸着方法において、本明細書に記載の前駆体の前反応に対抗する方法であって、前駆体が、膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性である方法であり、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をその方法に導入することを含む方法に関する。
【0021】
本発明の他の態様は、複数の供給ストリーム(multiple feed streams)が、膜を形成する基材上の蒸着部位に流される蒸着方法において、本明細書に記載の前駆体の前反応に対抗する方法であって、その複数の供給ストリームの少なくとも一つが、膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性である前駆体を含む方法であり、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤を、その複数の供給ストリーム又はそれに供給された材料の少なくとも一つに、又は、その蒸着位置に、導入することを含む方法に関する。
【0022】
本発明の他のさらなる態様は、前駆体及びその前駆体のための前反応対抗剤を含む組成物であって、その前反応対抗剤が、ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択されるものである組成物に関する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、膜成分をその上に蒸着するための基材と接触している本明細書に記載の気相前駆体の前反応に対抗する方法であって、気相前駆体が基材と接触する前に、その基材を(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤と接触させることを含む方法に関する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、成長している膜の表面を保護するか、又は蒸着速度を遅くするために前反応対抗剤を導入し、続いて、代替前駆体又は共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を用いて再活性化を行う方法に関する。そのような保護/遅延とそれに続くそのような再活性化は、ALD又はALD様プロセスにおいて、所望の順番で、所望の回数繰り返して行うことができる。前反応対抗剤は、ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、気相において望ましくないように前反応性である、基材と少なくとも一つの本明細書に記載の膜前駆体とのサイクル的な接触を含む、基材上に膜を形成するための気相蒸着方法であって、膜の表面を保護するか又は膜前駆体の蒸着速度を遅くするのに有効な前反応対抗剤を膜の成長中にその膜に導入し、該前反応対抗剤の導入後に、その膜を異なる膜前駆体で再活性化させることを含む方法に関する。
【0026】
本発明は、さらなる態様においては、場合によりアンモニア、水素、ヘリウム、アルゴン、及び窒素よりなる群から選択される成分と組み合わせて、ゲルマニウム前駆体を揮発させてゲルマニウム前駆体蒸気を形成し、、次いで、該前駆体蒸気をゲルマニウム含有膜蒸着用の基材と接触させることを含む、蒸着法により基材上へのゲルマニウム含有膜を形成する方法であって、ゲルマニウム前駆体が、以下のゲルマニウム組成物よりなる群から選択される方法に関する:
【0027】
【化1】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0028】
【化2】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0029】
【化3】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0030】
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(これを含む)の整数である];
【0031】
【化4】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0032】
【化5】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【0033】
【化6】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0034】
【化7】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0035】
【化8】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
【0036】
【化9】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0037】
【化10】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0038】
【化11】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0039】
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0040】
【化12】
【化13】
【0041】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、及び[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【0042】
本発明の他の態様は、上記のゲルマニウム前駆体種よりなる群から選択される、ゲルマニウム前駆体に関する。
【0043】
本発明の他のさらなる態様は、Geブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体を使用する、上記の方法により形成される、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜に関する。
【0044】
本発明の他の態様、特徴及び実施態様は、以下の開示及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、ゲルマニウム含有膜の形成方法において、CVD及びALDのような低温(<300℃)蒸着方法により共形性の高いゲルマニウム含有膜を形成する際に有用性を有する、種々のゲルマニウム、テルル、及びアンチモン前駆体の使用に関する。他の態様では、本発明は、その方法を用いて形成された膜及びそのような膜を組み込んだマイクロ電子素子製品に関する。
【0046】
本明細書に記載の前駆体は、化学蒸着及び原子層蒸着方法に有用に使用され、ゲルマニウム含有膜、例えばGeTe、GST等の膜を形成する。GeTe膜は、Scharnhorst and Riedl, "Photoconductivity in the amorphous Ge-rich GexTe1-x system," Journal of Applied Physics, Vol. 45, p. 2971-2979 (1974)中で定義されているような、GexTe1-x系、又は例えば、Tsu, Journal of Vacuum Science & Technology A: Vacuum, Surfaces, and Films, Volume 17, Issue 4, July 1999, pp. 1854-1860 (1999)中に記載されているような、GexSbyTex系であることができ、その双方の内容は、ここに参照して組み入れられる。膜は、本明細書に記載の方法を用いて有利に形成することができ、実質的に非晶質の膜層をもたらす。
【0047】
本発明は、以下の定義を参照して、よりよく理解されよう:
【0048】
定義
本明細書中で使用される、用語「膜」は、1000マイクロメータ未満の厚さ、例えば、その値から原子単層の厚さの値までを有する蒸着材料の層をいう。種々の実施態様において、本発明の実施における蒸着材料層の膜厚は、関連する特定の用途に応じて、例えば、100、10、若しくは1マイクロメータであってもよく、又は200、100、若しくは50ナノメータの種々の薄膜レジームであってもよい。本明細書中で使用される、用語「薄膜」は、1マイクロメータ未満の厚さを有する材料の膜を意味する。
【0049】
本明細書中で使用される、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈が明確に反対のことを指示しない限り、複数の対象物を包含する。
【0050】
本明細書中で使用されるC1〜C12アルキル等における炭素数範囲の識別表示は、そのような範囲内の炭素数部分成分の各々を包含することを意図し、したがって、さらに、間に入る各炭素数、及び、前述した範囲内の他のいかなる言及された又は間に入る炭素数値を包含するものであり、特定の炭素数範囲内の下位の炭素数範囲は、独立して、本発明の範囲内のより小さい炭素数範囲中に包含され、また特定の炭素数を特別に除外した炭素数の範囲は本発明に包含され、特定の範囲の炭素数の上限下限のいずれか又は両方を除外した下位の範囲も同様に本発明に包含される。したがって、C1〜C12アルキルは、直鎖及び分岐のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルを包含する。したがって、C1〜C12等の炭素数範囲の識別表示は、置換基部分に広く適用しうるように、本発明の特定の実施態様において、その置換部分のより広い特定の範囲内に含まれる炭素数範囲を有する置換部分の下位グループとして、炭素数範囲をさらに限定することができる。例えば、本発明の特定の実施態様において、C1〜C12アルキル等の炭素数範囲を、C1〜C4アルキル、C2〜C8アルキル、C2〜C4アルキル、C3〜C5アルキル又はこの広い炭素数範囲内に含まれる任意の他の下位範囲等の下位範囲を含むように、より限定的に特定してもよい。。
【0051】
本発明の前駆体は、特定の実施態様において、特定の置換基、基、部分又は構造を除外する但し書き又は制限により、本明細書に記載のそれらの種々の仕様及び例示に関して、さらに特定しうる。そこで、本発明では、限定的に定義された組成物、例えば、RiがC1〜C12アルキルであるが、ただしRjがシリルであるとき、RiがC4アルキルではない組成物を意図する。
【0052】
本明細書中で使用される「アルキル」として、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル及びイソペンチル等が挙げられる。本明細書中で使用される「アリール」として、6〜10個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環基であるベンゼン又はベンゼン誘導体に由来する炭化水素が挙げられる。アリールは、単環又は多環を有しうる。本明細書中で使用される用語「アリール」として、また、置換アリールが挙げられる。例として、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、キシレン、フェニルエタン、置換フェニル、置換ナフチル、置換キシレン、置換フェニルエタン等が挙げられる。本明細書中で使用される「シクロアルキル」として、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本明細書中の全ての化学式において、炭素数の範囲は、連続した代替的炭素含有基の順序を特定するものとして考えられ、特定範囲の炭素数の末端点の値の中間の炭素原子の数を含有する全ての部分及び特定範囲の末端点の値に等しい炭素原子の数を含有する部分、例えば、C1〜C6は、C1、C2、C3、C4、C5及びC6を含み、そのようなより広い範囲の各々は、その下位範囲として、そのような範囲内の炭素数を参照してさらに制限的に特定しうる。そこで、例えば、範囲C1〜C6は、より広い範囲の領域内で、下位範囲、例えばC1〜C3、C1〜C4、C2〜C6、C4〜C6等の仕様を含み、またそれらによりさらに限定できる。
【0053】
本発明は、その特徴、態様及び実施態様に関して本明細書に様々に記載されているように、特定の実施において、そのような特徴、態様及び実施態様のいくつか又は全てを含み、それらよりなり、又は実質的にそれらよりなるものとして構成しうるし、また、その要素及び成分は、本発明の種々のさらなる実施を構成するように集められる。本発明は、種々の実施態様において、また、本発明の種々の特徴及び態様を参照して、本明細書中で記述される。本発明は、本発明の範囲内のものとして、種々の置換及び組み合わせでの、そのような特徴、態様及び実施態様を意図する。本発明は、したがって、これらの特徴、態様及び実施態様又はそれらの選択された一つ又は複数のそのような組み合わせ及び置換のいずれかを含み、よりなり、より実質的になるものとして特定しうる。
【0054】
I.ゲルマニウム前駆体
本発明の前駆体として、種々の種類のゲルマニウム組成物が挙げられる。一つの実施態様では、ゲルマニウム前駆体は、本明細書中ではGeMとも称する、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]である。
【0055】
他の態様での本発明は、基材上にゲルマニウム膜をCVD及びALD蒸着するのに有用な、以下の式I〜XVIのゲルマニウム前駆体に関する:
【0056】
【化14】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0057】
【化15】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0058】
【化16】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0059】
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0060】
【化17】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0061】
【化18】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【0062】
【化19】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0063】
【化20】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0064】
【化21】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択される];
【0065】
【化22】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0066】
【化23】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0067】
【化24】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0068】
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される]
【0069】
上記のゲルマニウム前駆体の合成は、以下に種々に示したタイプの合成法を利用して、容易にいろいろに行うことができる。各々の例において、RMgCl、RMgBr、RMgI、RLi、及びRNaを、代替試薬として用いることができる。さらに、GeBr4を、GeCl4の代わりに用いることができ;LiNR2は、NaNR2又はKNR2で置き換えることができ;そして、Na(C5R5)は、K(C5R5)の代替物として使用できる。また、Ge(II)錯体への酸化的付加により混合アルキル種を発生させて、Ge(IV)前駆体を生成させるために、以下に示すような多工程合成法を使用しうる。
【0070】
【化25】
[式中、
R、R'、及びR"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され、Mは、Li、Na、MgCl、MgBr、又はMgIである]
【0071】
GST膜用のゲルマニウム(IV)前駆体
【化26】
【化27】
【0072】
そして、対応して、テトラアリルゲルマニウム錯体
【化28】
が、対応するアリルグリニャール試薬R*MgCl(式中、R*はアリルである)を用いて、そのようなテトラクロロゲルマニウム出発原料から形成され得る。
【化29】
【0073】
GST膜用のGe前駆体
【化30】
【0074】
ゲルマニウム含有膜のCVD又はALDに有用に使用しうる例示的なGe(II)化合物として、以下のものが挙げられる:
【化31】
【0075】
本発明の種々の実施態様において、ジアルキルアミノイソプロピルゲルマン前駆体が、GST薄膜のCVD/ALC形成に使用される。そのような前駆体は、以下に示すような反応スキームにより合成することができ:
【化32】
【0076】
例えば、以下のようなゲルマニウム錯体が形成される:
【化33】
【0077】
上記のゲルマニウム前駆体は、基材上にゲルマニウム含有膜を蒸着するための、CVD及びALD用途に有用である。そのような用途に有用であり、加熱バブラーで輸送しやすいテトラキスアミドゲルマン及びトリイソプロピルアミンとしては、例えば、Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、及びiPr3GeNEt2が挙げられる。本発明のゲルマニウム前駆体の揮発性は、STA熱重量分析法(例えば、アルゴン中で、大気圧下に材料輸送を測定することにより)及びGC分析により、容易に測定できる。
【0078】
アルキル置換基を含有する本発明のゲルマニウム前駆体の特定の実施態様では、イソプロピル置換基のβ−水素脱離する能力の故に、イソプロピル置換基が多くの場合にメチル基よりも好ましく、これにより、顕著な炭素残渣を生じることなく、ゲルマニウム前駆体の低温分解処理が容易となる。
【0079】
本発明の窒素含有ゲルマニウム前駆体は、最終膜中への窒素の組み込みを仲介する多くの用途で固有の利点を有している。この点で、Si−及びN−ドープGST材料は、より低いリセット電流を有し、これにより、低温相変化が生じることが可能となる。
【0080】
付加的な利点として、本発明の種々のゲルマン前駆体は、ハイドロゲルモリシス(hydrogermolysis)カップリング反応を生起して、反応:
R3GeNR'2+R3GeH→R3Ge−GeR3
を経て、Ge−Ge結合を形成してジゲルマンCVD前駆体をもたらし、モノゲルマン前駆体に対して、高効率のGe含有膜蒸着を可能とする。
【0081】
本発明のゲルマニウム前駆体は、それらの一部として、多様な配位子種を含有することができる。そのような配位子として、例えば、限定するものではないが、アリル、ベンジル、t−ブチル、シクロペンタジエニル、ヒドリド、フェニル、及びアルキルが挙げられる。二座型のアミン(例えば、N,N−ジアルキルエチレンジアミン)もまた用いることができる。
【0082】
ゲルマニウム前駆体は、適切な溶媒を用いた液体搬送法によって、溶液又は懸濁液で搬送してもよいし、あるいは、Ge含有膜の気相蒸着のために、例えば、本発明のアンチモン前駆体に関して上で記述したような固体搬送法により、搬送してもよいる。
【0083】
CVD/ALD前駆体としての使用において、Ge前駆体は、個別に、あるいは他の前駆体、例えば、iPr3Sb、Sb(NR2)3、iPr2Te及びTe(NR2)2等のSb及びTe錯体と組み合わせて蒸着して、GST膜を形成しうる。
【0084】
本発明の一つの例示的なゲルマニウム前駆体は、以下、GePNEMとも称される、Ge(トリイソプロピル)(メチルエチルアミド)である。この前駆体は、好適な蒸着プロセス条件、例えば、300℃〜450℃の範囲の蒸着温度で、大気圧以下から大気圧以上の範囲の圧力(例えば、約0.5トール〜15気圧以上の範囲)で、基材上にゲルマニウムを蒸着させるのに使用することができる。下記の表1に示されているものは、1分あたり200標準立方センチメートルの水素ガスの担体ガス流で基材に搬送されたGePNEM前駆体から基材上にゲルマニウムを蒸着させる際の、様々な温度及び圧力条件における、膜蒸着速度(オングストローム/分)のリストである。
【表1】
【0085】
GePNEM前駆体からの蒸着により達成されたゲルマニウムの膜厚の他の測定において、16分間行った蒸着は、以下の結果を与えた:(i)温度=400℃、圧力=800ミリトール、反応体ガスH2、膜厚=57Å;(ii)温度=400℃、圧力=800ミリトール、反応体ガスNH3、膜厚=94Å;及び(iii)温度=400℃、圧力=8000ミリトール、反応体ガスH2、膜厚=36Å。これらの結果は、蒸着法により基材上にゲルマニウム又はゲルマニウム含有薄膜を形成する上でのGePNEMの好適性を実証している。
【0086】
本発明は、種々の特定の実施態様において、ゲルマニウム前駆体及びアンチモン前駆体の少なくとも一つが、上記の式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)(I)〜(XVI)の金属錯体から選択される前駆体である、ゲルマニウム前駆体、アンチモン前駆体及びテルル前駆体を含む前駆体混合物を意図している。
【0087】
II.アンチモン前駆体
アンチモン含有膜を形成するために、アンチモン含有前駆体、例えば、以下の式(A)、(B)及び(C)のアンチモン前駆体を使用することができる:
【0088】
Sb(NR1R2)(R3N(CR5R6)mNR4) (A)
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリールから独立に選択され、
R5及びR6の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0089】
Sb(R1)(R2N(CR4R5)mNR3) (B)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され、
R4及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
【0090】
Sb(R1)3-n(NR2R3)n (C)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、シリル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール及び−NR4R5(ここで、R4及びR5の各々は、H及びC1〜C4から選択される)から独立に選択され;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である];
【0091】
本発明は、他の態様において、式(D)のゲルマニル及びシリルアンチモン前駆体に関する:
(R4)nSb(E(R1R2R3))3-n
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール、及び式−NR5R6のアルキルアミノ(ここで、R5及びR6の各々は、H及びC1〜C4アルキルから選択される)から独立に選択され;
Eは、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)であり;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である]
【0092】
前記の前駆体は、Sb、Sb/Ge、Sb/Te及びGST膜のCVD及びALDに有用に使用しうる。
【0093】
そのような前駆体は、また、低温蒸着用途において、還元性共反応体、例えば、水素、水素プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に使用しうる。
【0094】
特定の前駆体が液体状態である場合、それらは、ニートの液体形態で液体搬送に使用しうる。
【0095】
あるいは、そのような前駆体が液体又は固体状態である場合、適当な溶媒中に入れて前駆体の溶液又は懸濁液として使用しうる。特定の用途において、そのような目的に好適な溶媒として、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、ヒドラジン及びエーテルが挙げられる。
【0096】
特別のアンチモン前駆体用の又は他のゲルマニウム及びテルル前駆体と組み合わせた特定のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の選択は、本明細書の開示に基づいて従来技術の範囲内で、容易に決定することができ、関与する特定の前駆体成分の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分の溶媒を選択することができる。
【0097】
アンチモン前駆体が固体状態である種々の実施態様では、固体搬送システム、例えば、ATMI社(Danbury, Connecticut, USA)から市販されているProE−Vap(登録商標)固体搬送及び蒸発システムを、アンチモン前駆体の搬送に使用しうる。
【0098】
本発明のアンチモン前駆体は、上記の広範な式セットの内の、適切に置換基を選択することにより「微調整」して、熱安定性、揮発性及び多成分前駆体系における他の共試薬又は成分との適合性の所望の特性をもたらすことができる。
【0099】
本発明のアンチモン前駆体は、以下に記載のものを含む合成経路により、容易に合成される。
【0100】
一般式(A):
【化34】
のアンチモン前駆体は、例えば、以下の反応スキーム(A)に従って合成することができ:
【化35】
【0101】
一般式(B):
【化36】
のアンチモン前駆体は、例えば、以下の反応スキーム(B):
【化37】
又は、以下の反応スキーム(C)に従って合成することができる:
【化38】
【化39】
【0102】
一般式(C)のアンチモン前駆体は、対応する方法で合成することにより生成することができる。
【0103】
以下の構造を有する、一般式(D)のアンチモン前駆体は:
【化40】
例えば、nが0である場合、以下の反応スキーム(D)又は、nが2である場合、以下の反応スキーム(E)に従って合成することができる:
【化41】
[式中、Xはハロ(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)である]
【0104】
上記の合成例では、RMgX及びRLiを、代替合成試薬として使用できる。
【0105】
本発明の前駆体を例示する特定の具体例として、前駆体Sb(NMeEt)3、Sb(CH=CMe2)3、Sb(CH2CH=CH2)3及びSb(NMe2)3が合成され、その特性が判断された。前駆体Sb(NMe2)3及びSb(NMeEt)3は光感受性を示し、従って、それらの光誘起分解を避けるために、露光から保護される容器中又は他の耐光性包装中での保存が必要であると判断された。同様の考慮が、Sb(CH=CMe2)3及びSb(CH2CH=CH2)3に適用できる。
【0106】
図1は、Sb(NMeEt)3の核磁気共鳴スペクトルを示し、図2は、Sb(NMe2)3の核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0107】
図3は、これら2個の前駆体、Sb(NMeEt)3及びSb(NMe2)3の同時的熱分析(STA)グラフであり、パーセント熱重量分析(TG)が、温度(摂氏)の関数としてプロットされている。
【0108】
別の種類のアンチモン前駆体をも使用することができる。そのようなアンチモン前駆体は、適切なゲルマニウム及びテルル前駆体の使用と併せて、GST膜を形成する上で使用するのに好適である。
【0109】
そのような別の種類のアンチモン前駆体として、以下に示すような、式(F)、(G)、(H)、(I)、(J)、(K)、(L)及び(M)のそれらが挙げられる:
【0110】
(F)以下の式のアミニデート、グアニデート及びイソウレエート:
R7nSb[R1NC(X)NR2]3-n
[式中、
各々のR1及びR2は、水素、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR4R5、及び−C(R6)3{ここで、R4、R5及びR6の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR7は、C1〜C6アルコキシ、−NR8R9、及び−C(R10)3{ここで、R8、R9及びR10の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0111】
(G)以下の式のテトラアルキルグアニデート:
R5nSb[(R1R2)NC(NR3R4)N]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
R3及びR4の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R9)3、及び−Ge(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0112】
(H)以下の式のカルバメート及びチオカルバメート:
R4nSb[(EC(X)E]3-n
[式中、
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3、−Ge(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
Eは、O又はSのいずれかであり;
nは0〜3の整数である];
【0113】
(I)以下の式のβ−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネート:
[OC(R3)C(X)C(R2)O]3-nSb(R5)n
[OC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[R4NC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[(R3)OC(=O)C(X)C(R2)S]3-nSb(R5)n
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR4は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、C1〜C6アルコキシ、−NR9R10、及び−C(R11)3{ここで、R9、R10及びR11の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0114】
(J)以下の式のアリル:
(i):R4nSb[R1NC(X)C(R2R3)]3-n
(ii):R4nSb[(R1O)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iii):R4nSb[(R1R5)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iv):R4Sb[(ONC(X)C(R2R3))]
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR5は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR7R8、及び−C(R9)3{ここで、R7、R8及びR9の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
【0115】
(L)Cp部分が以下の式で表され、非Cp配位子がグアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、β−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネートよりなる群から選択される配位子を場合により含むことができる、シクロペンタジエニル(Cp)アンチモン化合物:
【化42】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C6〜C10アリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C6アルキルシリル、C2〜C12アルケニル、R1R2NNR3{ここで、R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、並びに、アンチモン中心原子へのさらなる配位をもたらす官能基を含み、以下の式を有する、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、イミドアルキル、及びアセチルアルキルから選択されるペンダント配位子から独立に選択される}から独立に選択される:
【化43】
アミノアルキル
(式中、メチレン(−CH2−)部分は、代わりに他の二価のヒドロカルビル部分であることができ、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択され;n及びmは、各々、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできず、またxは1〜5から選択される);
【化44】
アルコキシアルキル及びアリールオキシアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化45】
及び
【化46】
イミドアルキル
(式中、R1、R2、R3、R4、R5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R1'、R2'の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化47】
アセチルアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール及びC1〜C5アルコキシから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない)];並びに
【0116】
(M)以下の式で表される、ペンダント配位子を有するアルキル、アルコキシド及びシリル:
(i):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mC(R1R2)]3-n
(ii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mSi(R1R2)]3-n
(iii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mO]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数であり;
mは0〜4の整数である]。
【0117】
前記の種類(F)〜(M)に該当する一般的なアンチモン前駆体として、以下の構造を有する前駆体が挙げらる。ここで、これらの構造中の種々の「R」基は、上記の式中の置換基番号と必ずしも完全に対応して番号付けされてはいないが、それでもなお、一般的な形で、置換されている位置を反映しており、関連する分子の種々の位置における置換基の上記の定義を参照して理解されよう。
【0118】
【化48】
【化49】
以下の例示的な錯体を含む:
【化50】
【0119】
以下の式で表されるアンチモンアミド:
【化51】
【0120】
以下の式で表されるアンチモン(III)アルキル/アミノ前駆体:
【化52】
【0121】
並びに、以下の式で表されるゲルマニウムアニオンを有するスチルベン:
【化53】
【0122】
種類(F)〜(M)のアンチモン前駆体は、還元性共反応体、例えば、水素、H2/プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に、低温でのアンチモンの蒸着に有用に使用される。
【0123】
アンチモン前駆体は、液体搬送技術によってそのような蒸着のために搬送することができ、その際、液体である前駆体は、ニートの液体形態で使用することができ、固体又は液体である前駆体は、好適な溶媒、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン又はトルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、及びヒドラジンと組み合わせて、溶液又は懸濁液として搬送することができる。特別のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の有用性は、容易に実験により決定することができ、使用される特定のアンチモン前駆体の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。
【0124】
本発明の他の態様では、固体搬送法を使用することができ、その中で、固体前駆体を揮発して、基材上にアンチモン又はアンチモン含有膜を形成する蒸着チャンバーに搬送される前駆体蒸気を形成することができる。固体前駆体は、そのために、好適な特性を有する保存及び分配パッケージ、例えば、ATMI社(Danbury, CT, USA)から市販されているProE−Vap固体搬送及び蒸発ユニット、に入れることができる。
【0125】
前記の前駆体は、Sb、Sb/Ge、Sb/Te及びGST膜のCVD及びALDに有用に使用しうる。
【0126】
特定の前駆体が液体状態である場合、それらは、ニートの液体形態で液体搬送に使用しうる。
【0127】
あるいは、そのような前駆体が液体又は固体状態である場合、前駆体の溶液又は懸濁液として、好適な溶媒中で使用しうる。特定の用途において、そのような目的に好適な溶媒として、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、ヒドラジン及びエーテルが挙げられる。
【0128】
特別のアンチモン前駆体用の又は他のゲルマニウム及びテルル前駆体と組み合わせた特定のアンチモン前駆体用の特定の溶媒組成物の選択は、本明細書の開示に基づいて従来技術の範囲内で、容易に決定することができ、関与する特定の前駆体成分の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。
【0129】
本発明のアンチモン前駆体は、上記の広範な式の範囲内で、適切な置換基を選択することにより「微調整」して、熱安定性、揮発性及び多成分前駆体系における他の共試薬又は成分との適合性等の所望の特性をもたらすことができる。
【0130】
本発明のアンチモン前駆体は、以下に記載のものを包含する合成経路により、容易に合成される。
【0131】
一般式(A)のアンチモン前駆体は:
【化54】
例えば、以下の反応スキーム(A)に従って合成することができ:
【化55】
一般式(B)のアンチモン前駆体は:
【化56】
例えば、以下の反応スキーム(B):
SbX3+R1MgX+Li(R2N(CR4R5)mNR3)→
【化57】
又は、以下の反応スキーム(C):
SbX3+mR2N(CR4R5)R3NSiMe3)→
【化58】
に従って合成することができる。
【0132】
一般式(C)のアンチモン前駆体は、対応する方法で合成することにより生成することができる。
【0133】
以下の構造を有する、一般式(D)のアンチモン前駆体は:
【化59】
例えば、nが0である場合、以下の反応スキーム(D)又は、nが2である場合、反応スキーム(E)に従って合成することができる:
【化60】
[式中、Xはハロ(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)である]
【0134】
上記の合成例では、RMgX及びRLiを、代替合成試薬として使用できる。
【0135】
本発明の前駆体を例示する特定の具体例として、前駆体Sb(NMeEt)3、Sb(CH=CMe2)3、Sb(CH2CH=CH2)3及びSb(NMe2)3が合成され、特性が判断された。前駆体Sb(NMe2)3及びSb(NMeEt)3は光感受性を示し、従って、それらの光誘起分解を避けるために、露光から保護される容器中又は他の耐光性包装中での保存を必要とすると判断された。同様の考慮が、Sb(CH=CMe2)3及びSb(CH2CH=CH2)3に適用できる。
【0136】
図1は、Sb(NMeEt)3の核磁気共鳴スペクトルを示し、図2は、Sb(NMe2)3の核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0137】
図3は、これら2個の前駆体、Sb(NMeEt)3及びSb(NMe2)3の同時的熱分析(STA)グラフであり、パーセント熱重量分析(TG)が、温度(摂氏)の関数としてプロットされている。
【0138】
III.テルル前駆体
以下は、本明細書に記載の方法において使用することができる代表的なテルル前駆体である:
R1TeR2 XIII
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0139】
R1Te(NR2R3) XIV
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【0140】
R1Te−TeR2 XV
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される]。
【0141】
他のテルル錯体として、蒸着用途に使用される多くのテルル前駆体が非常に酸素感受性及び光感受性で不快な臭気を有するという問題を克服する、β−ジケチイミネート配位子を有するものが挙げられる。β−ジケチイミネート配位子による塩基安定化により、テルル前駆体は、改善された操作性及び貯蔵寿命特性、減少した臭気、並びに蒸着用途に十分な揮発性を有する高度に安定な特性のものが得られる。
【0142】
本明細書に記載のテルルジケチミネート錯体は、CVD/ALDに使用して、Te又はTe含有膜を形成することができる。これらの化合物は、Ge−及び/又はSb−化合物と組み合わせて使用して、多様な組成で、Te−Ge−、Te−Sb−又はGe−Sb−Te膜を製造できる。ジケチイミネート配位子を合成する一般的な手法は文献に記載されているが、このような手法は、配位する窒素原子上の非常に嵩高いアリール置換基を必要とするので、不利である。
【0143】
これに対し、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチルのようなより小さいアルキル配位子又はアミン置換アルキル基、例えば、エチレン−ジメチルアミンを、有利に使用して、CVD/ALD用途用の優れたテルルジケチミネート前駆体を製造することができる。窒素ドナー原子上のより小さい置換基は、低温で良好な膜を形成するのに十分な揮発性をもたらす。
【0144】
配位子Lは、リチウム塩として又は遊離のイミン形態で使用して、所望のTe錯体を合成することができる。配位子のリチウム塩は、TeX4(ここで、X=Cl、Br、I)と反応させて、塩脱離によりLTeX3を生成することができ、次いで、それを、リチウム又はグリニャール試薬と反応させて、LTeR3(ここで、R=アルキル、アリール、アミド、シリル)を製造することができる。
【0145】
また、配位子Lのイミン形態は、TeMe4のようなテルル有機化合物と反応させて、メタン脱離により所望のTe種LTeMe3を製造することができる。ジケチイミネート配位子は、非常に有効な反応性金属中心テルルの塩基安定性をもたらす。したがって、本発明は、低温でのCVD/ALDにより優れたTe膜を形成するのに十分な揮発性を保持しながら、より大きな安定性及び貯蔵寿命をもたらす新規な種類のTe錯体を提供する。
【0146】
使用することができるさらなるテルル錯体は、式(I)及び(II)を有する:
【化61】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される];及び
【化62】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される]。
【0147】
β−ジケチイミネート配位子は、例えば、以下の手順により合成しうる:
【化63】
【0148】
テルル錯体は、次いで、以下の反応:
【化64】
又は、別法として、以下の合成反応:
【化65】
又は以下の合成反応により合成することができる:
【化66】
【0149】
本明細書に記載のテルル錯体は、テルル含有薄膜蒸着用のCVD/ALD前駆体として、例えば、ニートの前駆体材料の液体注入により、又は有機溶媒に入れて、又は直接気化により、使用することができる。
【0150】
IV.膜形成
本明細書に記載の前駆体は、プロセス条件、蒸着チャンバーの構造、基材組成等に応じて、非晶質のゲルマニウム含有膜及び結晶ゲルマニウム含有膜を形成するのに使用することができる。これらのプロセス変数の決定は、過度の実験をすることなく、本明細書の開示や、プロセス条件を変えて得られた膜の特性を評価して、特定の膜形成用途に適切なプロセス条件エンベロープを確立するのに適した実験に基づいて、当業者が容易に行うことができる。
【0151】
本明細書に記載のゲルマニウム化合物は、連続的蒸着モード(CVD)又はパルス/原子層蒸着モード(ALD)で適切な共反応体と共に使用して、優れた性質の膜を蒸着することができる。酸化物用の場合、CVD用の好ましい共反応体としてはO2及びN2Oが、また、パルス蒸着用の好ましい共反応体としては、より強力な酸化剤、例えばH2O、オゾン、及びO2プラズマ、が挙げられる。金属様膜用の場合には、還元雰囲気を使用することが有利である。
【0152】
膜形成のCVDモード用には、還元剤、例えば、H2及びNH3、が好ましく、これらの共反応体のプラズマは、デジタル又はALDモードで使用することができ、ここで、共反応体は、パルストレイン中で前駆体と分離され、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内の一般的なCVD及びALD法を用いて行われる。デジタル又はALDモードでは、気相反応を抑制して、共反応体を分離することができるので、より強力な還元剤も、使用することができる。ALD及び高いアスペクト比構造の共形性被覆のためには、前駆体は、あるタイプの雰囲気(例えば、不活性又は弱還元性/酸化性の気体環境)中では自己制限的挙動を示し、また、他のタイプの雰囲気(例えば、プラズマ、強還元性/酸化性の気体環境)中では、迅速な分解を示して所望の膜を形成することが好ましい。
【0153】
類似の金属カチオン前駆体を、CVD用に有利に使用することができるが;異なる種(すなわち、異なる配位子種)を、パルス蒸着で使用することができる。
【0154】
本明細書に記載の前駆体は、還元性共反応体、例えば、水素、H2/プラズマ、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン、カルコゲン化シリル(例えば、(Me3Si)2Te)、ゲルマン(例えば、GeH4)、アンモニア、アルカン、アルケン及びアルキン、と共に、低温蒸着前駆体として使用することができる。液体搬送配合物を使用することができ、前駆体が液体である場合にはニートの液体形態で使用することができ、前駆体が固体又は液体である場合には、好適な溶媒、例えば、アルカン溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びペンタン)、アリール溶媒(例えば、ベンゼン又はトルエン)、アミン(例えば、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン)、イミン、及びヒドラジン中で使用しうる。特別のGe前駆体用の特定の溶媒組成物の有用性は、容易に実験的に決定することができ、使用される特定のアンチモン前駆体の液体搬送蒸発及び輸送のために適切な単一成分又は多成分溶媒を選択することができる。本発明の前駆体が固体である場合には、例えば、ProE−Vap固体搬送及び蒸発ユニット(ATMI社(Danbury, CT, USA)から市販されている)を用いて、固体搬送システムを利用することができる。
【0155】
一般に、本発明の実施における金属含有層の厚さは、任意の適切な値であることができる。本発明の特定の実施態様では、金属含有層の厚さは、5nm〜500nm又はそれ以上の範囲であることができる。
【0156】
図1は、本発明の一つの実施態様に従う、ゲルマニウム前駆体を含有する材料貯蔵・分配パッケージ100の概略表示である。
【0157】
材料貯蔵・分配パッケージ100は、その中に内容積104を画定する、例えば、図示されているように一般に筒状の形状であってもよい、容器102を含む。この特定の実施態様では、前駆体は、周囲温度条件で固体であり、そのような前駆体は、容器の内容積104中に配置されたトレイ106の表面上に支持されることができ、このトレイは、容器使用時の分配のために、蒸気が容器中をバルブヘッド集合体へ向けて上方へ流れるように、それに連結した流れ通過路108を有する。
【0158】
固体前駆体は、容器の内容積中の内部表面上に、例えば、トレイ106及び通過路108の表面上に、コーティングすることができる。そのようなコーティングは、前駆体を気体形態で容器内に導入することにより影響を受け、この気体形態から、固体前駆体がその容器内の表面に膜として凝縮される。あるいは、前駆体固体は、溶媒中に溶解又は懸濁され、溶媒気化により、容器の内容積中の表面上に蒸着しうる。さらに他の方法では、前駆体は、溶解され、容器の内容積中の表面上に注がれる。そのような目的で、容器は、前駆体膜を支持するために、容器中にさらなる表面領域をもたらす基材部品又は要素を含んでもよい。
【0159】
他のさらなる代替物として、固体前駆体は、顆粒状又は細かく分割された形状で提供することができ、これは、対応するトレイ106の最上部支持表面上に保持される容器中に注ぎ込まれる。
【0160】
容器102は、バルブヘッド集合体110が結合するネック部分109を有する。バルブヘッド集合体は、示された実施態様では、ハンドホイール112を備えている。バルブヘッド集合体110は、分配ポート114を有し、これは、流れ回路を容器に結合するために、結合又は接続要素とカップリングするべく構成しうる。そのような流れ回路は、図1中で矢印Aで図解的に示されており、流れ回路は、下流ALD又は化学蒸着チャンバー(図1に示されていない)とカップリングしうる。
【0161】
使用に際して、容器102を加熱され、そのような熱の投入は、参照矢印Qで図解的に示され、そこで、容器中の固体前駆体は、少なくとも一部は蒸発されて、前駆体蒸気をもたらす。前駆体蒸気は、ハンドホイール112がバルブの開放位置に動かされたときに、バルブヘッド集合体110中のバルブの通路を通って容器から排出され、これにより、前駆体に由来する蒸気は、矢印Aで図解的に示されている流れ回路に分配される。
【0162】
前駆体の固体搬送の代わりに、前駆体は、溶媒中で、溶液又は懸濁液を形成して提供することができる。そのような前駆体含有溶媒組成物は、次いで、液体搬送により搬送され、フラッシュ蒸発されて、前駆体蒸気を生成する。前駆体蒸気は、蒸着条件下で基材と接触して、金属が膜として基材上に蒸着する。
【0163】
一つの実施態様では、前駆体は、イオン性液体媒体中に溶解され、そこから、前駆体蒸気は、分配条件下でイオン性液体溶液から引き出される。
【0164】
他のさらなる代替方法として、前駆体は、容器の内容積中、好適な固相の物理的な吸着体貯蔵媒体上に、吸着状態で貯蔵しうる。使用に際して、前駆体蒸気は、固相の物理的な吸着体貯蔵媒体から、吸着された前駆体の脱着を含む分配条件下で容器から分配される。
【0165】
前駆体搬送用の供給容器は、広範な種々のタイプであってもよく、本発明の特別な前駆体用の所与の貯蔵及び分配用途に適切でありうるような、SDS、SAGE、VAC、VACSorb、及びProE−Vapの商標でATMI社(Danbury, Connecticut)から市販されているもののような容器を使用しうる。
【0166】
したがって、本発明の前駆体は、基材と接触してゲルマニウム含有薄膜をその上に形成するための、前駆体蒸気を形成するために使用することができる。
【0167】
好ましい態様において、本発明は、前駆体を使用して原子層蒸着を行って、高いアスペクト比の構造においても高ステップ被覆性及び共形性で、基材上に均一にコーティングされた優れた共形性ALD膜を与える。
【0168】
したがって、本明細書に記載の前駆体及び方法は、広範なマイクロ電子素子、例えば、半導体製品、フラットパネルディスプレー等、を、優れた品質のゲルマニウム含有膜で加工することを可能とする。
【0169】
本明細書に記載の前駆体化合物及び方法は、任意の好適なゲルマニウム及びアンチモン前駆体と組み合わせて、例えば、CVD及びALD法により、PCRAM素子製造等の用途用に、GST膜を形成するのに使用できる。Sb含有膜の蒸着を行うために有用なプロセス条件は、搬送及び蒸着プロセス条件を選択的に変えて得られた膜を特性評価し、所与の蒸着用途に最も適切なプロセス条件エンベロープを決定する、簡単な方法により、従来技術の範囲内で容易に決定することができる。
【0170】
いくつかの実施態様において、アンチモン含有膜は基材上に形成され、例えば、GST膜、非晶質SbTe膜、又は結晶性SbTe膜であることができ、また、例えば、原子層蒸着(ALD)又は化学蒸着(CVD)法を用いて、適用することができる。そのようなSbTe(例えば、Sb2Te3)膜は、また、熱電子素子に使用しうる。
【0171】
本発明のさらなる態様では、ゲルマニウムブチルアミジネートを、テルル前駆体、例えば、ジ−t−ブチルテルルのようなジアルキルテルル前駆体、と共に使用して、化学蒸着又は他の好適な方法により、非晶質GeTeを得ることができる。非晶質膜は、任意の好適なプロセス条件で形成しうる。特定のプロセス条件は特定の用途に応じて可変であること、及び、種々のタイプの蒸着チャンバーを、本発明のゲルマニウムブチルアミジネート前駆体を用いる非晶質GeTe膜の形成に使用することができることが認識されよう。例えば、ゲルマニウムアルキルアミジネートからのゲルマニウムの蒸着は、約200℃〜約400℃の範囲の温度及び約0.1〜約20トールの範囲の圧力で行うことができる。一つの例示的な実施態様では、非晶質GeTeは、ゲルマニウムブチルアミジネート及びt−ブチルテルルを用いて320℃の温度及び8トールの圧力で形成されて、GeTe膜が形成される。他の例示的な実施態様において、Geブチルアミジネート及びt−ブチルテルル前駆体が、350℃の温度及び0.8トールの圧力においてアンモニア共反応体と共に使用され、GeTe膜を形成する。
【0172】
GeブチルアミジネートからのGeの蒸着は、低温において、50オングストローム/分を超える蒸着速度という速さである。GeTe蒸着速度は、Te前駆体がバブラー法で搬送される場合、Teバブラーキャリアー流に強く依存し、キャリアー流が高いほど、Te含有量が高く、より厚いGeTe膜をもたらす。それでもなお、Teの組み込みは、比較的高い蒸着温度及び圧力を必要とし、このことは、結晶性GeTeの形成をもたらす傾向にある。温度及び圧力を適切に調節することにより、化学量論的な非晶質GeTe膜を得ることができ、これは、結晶化後も比較的平滑なままである。
【0173】
本発明の種々の実施態様では、平滑な非晶質GeTe膜を、他のジアルキルTe前駆体、例えばジイソプロピルTe、を用いて形成することができる。
【0174】
一般に、蒸着温度の上昇は、Te蒸着を改善し、蒸着圧力の減少は、ゲルマニウムブチルアミジネート(GeBAMDN)からのGeの蒸着において、結晶の発達を回避する。一つの好ましい実施態様では、GeTe膜は、共反応体として使用するアンモニアと、Te前駆体として用いられるTe(tBu)2と共に、そのようなGe前駆体からのCVDにより形成される。GeBAMDNは、テルルの共蒸着に適切なTe前駆体、例えばTe(tBu)2のようなジアルキルTe前駆体、と共に使用される場合、結晶性GeTeの生成の問題を克服するために、使用される蒸着温度の上昇と蒸着圧力の低減を可能にする。
【0175】
アンモニアを共反応体として使用するGeTe蒸着に対する圧力及びテルル搬送の影響を、下の表1中にデータにより示す。これらのデータは、100℃の温度に保たれた油浴と、室温(〜21℃)に保たれたTe(tBu)2バブラーを含む実験的反応器システム中で得られた。ゲルマニウム前駆体、GeBAMDNの搬送速度は20マイクロモル/分であり、アンモニア共反応体流は、200標準立方センチメートル/分に保持された。システム中の圧力は、80ミリトール(mtorr)であった。蒸着時間は、8分に固定し、基材は、50ナノメータ厚の窒化チタンでコーティングされたケイ素基材であった。
【表2】
【0176】
表1中のデータは、高温により、得られた膜(非晶質)中へのテルルの組み込みが改善されることを示している。
【0177】
下の表2は、蒸着したままの膜と比較して、400℃で窒素雰囲気下で1時間アニーリングした後に8トール圧で蒸着したアニーリングしたGeTe膜についてのデータを示す。
【表3】
【0178】
表2中のデータは、アニーリングしたGeTe膜と蒸着したままの膜の膜厚及び組成的特性が互いに一致していることを示す。
【0179】
図2は、窒素雰囲気下で、400℃で1時間アニーリングした後の、アニーリングGeTe膜の走査電子顕微鏡写真(SEM)であり、図3は、SiO2基材、TiN及びGeTe層を示す、仰角での膜の断面の顕微鏡写真である。図3は、熱処理後に膜が平滑さを保っていることを示す。
【0180】
図4は、400℃でアニーリングした後の表2のアニーリングGeTe膜についての、結晶特性のX線分散プロットである。
【0181】
以上は、ゲルマニウムブチルアミジネート、GeBAMDNが、例えば、アンモニア共反応体と共に、8トールの圧力、320℃未満の温度で、平滑な非晶質GeTeを与えることを示す。
【0182】
これらの実験は、また、GeTeの蒸着速度が、Teバブラーキャリアー流に強く依存し、より高いキャリアー流は、窒素共反応体では、より厚いGeTe膜を与えるが、アンモニア共反応体では、より薄いGeTe膜とより少ないテルル組み込みを与えることを示した。
窒素中での400℃でのアニーリングにより、この非晶質GeTeは結晶化した。
【0183】
次に、窒素を共反応体として用いたGeTe蒸着に対する、温度、圧力及びテルルデリバリ速度の影響を検討するために、蒸着を行った。
【0184】
実験システムは、100℃の温度に保たれた油浴を含んでいた。室温(〜21.5℃)に保たれたテルル(tBu)2バブラーを使用し、GeBAMDN前駆体の搬送速度は20マイクロモル/分であった。窒素共反応体流は、100標準立方センチメートル/分とし、圧力は、8,000ミリトールに固定した。蒸着時間は、8分及び16分であった。50ナノメータ厚のTiNでコーティングされたケイ素基材を、蒸着に使用した。データを、下の表3に示す。
【表4】
【0185】
表3のデータは、高いテルル搬送速度によりGeTe蒸着速度が改善されることを示した。240℃では、蒸着は生じなかった。320℃での蒸着は、図5のX線分散プロットに示されているように、(003)に主な回折ピークを持つGeTeを与えた。
【0186】
下の表4には、共反応体のGeTe結晶性に対する影響が示されており、ここで、蒸着は、20マイクロモル/分のGeBAMDN搬送速度及び25標準立方センチメートル/分のTeバブラーキャリアー流速度で、320℃の温度及び8トールの圧力において行われた。
【0187】
表4に示されているように、共反応体としてアンモニアを用いた場合のみが、平滑な膜を与え、窒素及び水素を共反応体種として用いた蒸着は、結晶性膜を製造した。
【表5】
【0188】
図6及び図7は、これらの蒸着で製造された膜のX線分散プロットである。図6は窒素を共反応体として用いた膜のプロットであり、図7は、アンモニア共反応体を用いた蒸着についてのプロットである。
図8は、水素を共反応体として用いて形成された結晶性GeTeの走査電子顕微鏡写真である。
図9は、窒素を共反応体として用いて製造された膜の走査電子顕微鏡写真である。
図10は、窒化チタンの50ナノメータ厚の層の最上層上に、25ナノメータの膜厚で製造された非晶質GeTeの走査電子顕微鏡写真である。
図11は、図10の平滑な非晶質GeTe膜の仰角断面である。
図12は、標準である50ナノメータ厚のGST膜に対する、図10及び図11に示されたGeTe膜のエネルギー分散分光分析法(EDS)スペクトルである。
【0189】
下の表5に示されているのは、GSTサンプル、Ge2Sb2Te5、を標準として用いた定量的EDS分析である。
【表6】
【0190】
Ge2Sb2Te5標準ファイルの形成については、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)のみが存在する元素であり、それらの対応する重量パーセントは、13.99、23.45及び62.57であった。実際には、ケイ素、炭素及び酸素も存在するが、それらのピークは、対象の元素と重なり合わないので、GSTサンプル中のゲルマニウム、アンチモン及びテルルの決定の邪魔をしないと考えた。
【0191】
図13は、約300オングストロームの推定厚さで分析的に決定された68.4%のゲルマニウムと31.4%のテルルの組成の、マイクロ電子素子構造上のGeTeの走査電子顕微鏡写真である。
【0192】
表6は、アンモニア共反応体を用いたでのGeTe蒸着におけるテルル組み込みに対する温度の影響についてのデータを示す。データには、生成物膜の温度、蒸着速度、ゲルマニウム百分率、テルル百分率及び結晶性が含まれた。
【表7】
【0193】
表6中のこれらのデータは、テルル組み込みの効率が低温で減少し、280℃で製造された膜中では16.6%テルルに、また260℃で製造された膜中ではたった12.6%テルルにまで低下した。非晶質GeTeは、340℃未満の温度で製造された。
【0194】
図14は、340℃で蒸着されたGeTe膜の走査電子顕微鏡写真であり、その結晶性の性質を示しており、このことは、また、その膜についての図15のXRDプロット中に反映されている。
【0195】
表7は、320℃及び8トールの圧力で16分の蒸着中に形成された、非晶質テルル化ゲルマニウム膜のアニーリングについてのデータを示す。アニーリングは、管状炉中で、350℃に続いて400℃に昇温した温度で、10分間、窒素雰囲気下で行った。アニーリングは、膜中のテルルの原子パーセント及び膜厚を減少させた。
【表8】
【0196】
表7中のデータは、蒸着したままの膜が非晶質であり、400℃で10分間のアニーリングが膜の結晶化を誘起することを示す。
【0197】
図16は、表7にデータが示されている3つの膜のX線分散プロットである。非晶質膜の曲線は、サンプルGT−1134Aのそれと同一である。350℃で10分間アニーリングしたサンプルは、サンプルGT−1145Aであった。10分間のアニーリングで、350℃に続いて400℃でアニーリングに付したサンプルは、サンプルG−1145Bと同定された。データは、2θ=30°の(202)ピークがアニーリング後に大きくなったことを示す。
【0198】
図17は、サンプルGT−1134、非晶質GeTe膜の走査電子顕微鏡写真であり、図18は、350℃に続いて400℃でアニーリングした膜、サンプルGT−1145B、の走査電子顕微鏡写真であり、平滑な膜の最上部に約100ナノメータのサイズの小さな結晶粒子を示す。
【0199】
300℃でのGeTe蒸着に対するテルル搬送の影響は、25標準立方センチメートル/分のTeキャリアー流で26.4オングストローム/分の蒸着速度で行われた実験(実験#1143)と、40標準立方センチメートル/分のTeキャリアー流で23.0オングストローム/分の蒸着速度で行われた実験(実験#1144)について、下の表8に示されている。データは、テルルバブラーキャリアー流が増大すると、テルル化ゲルマニウムの蒸着速度及びテルルの組み込みが減少することを示している。
【表9】
【0200】
表9は、280℃、8トールの圧力において、共反応体としてのアンモニアを用いた3つの対応する実験における、280℃におけるテルル化ゲルマニウム蒸着に対するテルル搬送速度の影響を反映したデータを示している。テルルキャリアー流は最初の実験では25sccm、二番目の実験では40sccm、そして三番目の実験では50sccmであり、それぞれ、24.5、28.5及び24.2オングストローム/分の蒸着速度をもたらした。データは、テルルバブラーキャリアー流が40から50sccmに増大すると、テルルの組み込み及びGeTeの蒸着速度が減少することを示している。
【表10】
【0201】
このように、本発明は、適切な温度及び圧力プロセス条件で、平滑な非晶質GeTeを形成することによって、高度に共形性のGST膜を製造することを可能とする。温度及び圧力を調節することにより、非晶質テルル化ゲルマニウム膜が製造され、これは、結晶化後も比較的平滑さを保っている。ゲルマニウムブチルアミジネート、GeBAMDN及びt−ブチルテルル、Te(tBu)2について例証したが、ゲルマニウム前駆体は、また、他のジアルキルテルル前駆体、例えば、TeR2(ここで、RはC3〜C8である)、と共に使用することができる。ジイソプロピルテルルが、テルル源試薬としてジ−tert−ブチルテルルに対して好適な代替ジアルキルテルル前駆体である。ゲルマニウム前駆体は、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]であることが有利である。
【0202】
したがって、本発明は、非晶質平滑なテルル化ゲルマニウムの蒸着用前駆体として[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を使用することを意図し、その際、高温低圧における蒸着プロセスにおける共反応体としてアンモニアが有用である、。
【0203】
図19は、ゲルマニウムブチルアミジネート前駆体とジアルキルテルル前駆体を用いる化学蒸着によりGeTeが蒸着される「アグレッシブ」基材の例としての、マイクロ電子素子構造の走査電子顕微鏡写真である。GeTe材料の性質は、本発明のGeBAMDN前駆体の使用により製造されるテルル化ゲルマニウム膜を用いて相変化型ランダムアクセスメモリー(PCRAM)メモリー素子を形成することを可能にする。
【0204】
例示的な例として、GeTe膜は、320℃の温度、7トールの圧力、5マイクロモル/分のGeBAMDN、Te(tBu)2バブラーを通しての20sccmのキャリアー流、及び50sccmのアンモニアで、形成することができる。一般に、有利なプロセス条件は、約280〜約350℃の範囲の温度、Geが1〜10マイクロモル/分の流れ、1〜100sccmのキャリアー流、1〜1000sccmのアンモニア及び1〜20トールの範囲の圧力を含みうる。
【0205】
本発明の[{nBuC(iPrN)2}2Ge]前駆体を使用するテルル化ゲルマニウムの平滑な非晶質膜を形成する際のプロセス条件は、実際には、広く変更することができ、そのような非晶質GeTe膜を形成するための特定のプロセス条件は、本明細書中の開示に基づいて、過度の実験をすることなく、当業者が容易に決定することができる。
【0206】
前反応のコントロール
他の態様における本発明は、本明細書に記載の前駆体の気相前反応に対抗するコントロール剤の使用を含む。そのようにしないと、基材上の不均一な核生成、蒸着反応のインキュベーション時間が長くなり、生成物膜の品質が低くなる。このような前反応は、例えば、カルコゲン化物膜を含む用途、関連するソース材料(O、S、Se、Te、Ge、Sb、Bi等)、及び/又は相変化型メモリーと熱電子素子の製造において、特に問題となる。
【0207】
前反応は、本明細書に記載の前駆体試薬が、化学蒸着において蒸着チャンバーに導入されるときに生じることがあり、そして、原子層蒸着(ALD)サイクル工程の順序と使用する試薬によっては、原子層蒸着(ALD)方法でも生じうる。
【0208】
したがって、本発明は、本明細書に記載の前駆体と共にコントロール剤を使用することが意図されており、これにより、有害な気相前反応が抑制され、軽減され、又は排除され、その結果、蒸着反応が基材表面上で誘起/促進され、優れた特性の膜が効率よく形成される。
【0209】
このような目的で、本明細書に記載の前駆体と共に使用できるコントロール剤として、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される試剤が挙げられる。
【0210】
これらの試剤は、本明細書に記載の前駆体の有害な気相前反応を減少させるために、以下に示す種々のアプローチにより使用することができる:
(1)1以上のヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、例えば、1,4−ジオキサン、チオキサン、エーテル、ポリエーテル、トリエチルアミン(TEA)、トリアジン、ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、アミン、イミン、及びピリジン、を含む前反応抑制剤の前駆体組成物への添加;
(2)フリーラジカル阻害剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、エチルバニリン等、の前駆体組成物への添加;
(3)気相蒸着用の重水素化類縁体をもたらすための、水素置換基を重水素(D)置換基で置き換えた修飾カルコゲン化物前駆体の使用;
(4)前駆体をその場(in situ)で重水素化するための、重水素源の前駆体組成物への添加。
【0211】
上記の前反応対抗剤(抑制剤、フリーラジカル阻害剤、重水素源及び/又は重水素化前駆体)を、膜が形成されるべき気相蒸着方法への供給ストリームのいずれかに導入することができる。例えば、このような前反応対抗剤は、1以上の前駆体供給ストリーム、蒸着チャンバーにカルコゲン化物前駆体又は他の試薬を流すために、これらが後に添加される不活性キャリヤーガスストリーム、蒸着チャンバーに流入する共反応体供給ストリーム、及び/又は、蒸着チャンバーに流入し、前反応対抗剤が存在していなかった場合に生じるであろう前駆体の未成熟反応を減少又は排除するために有用である任意の他のストリーム、に導入することができる。
【0212】
特定の実施態様における上記の抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源試薬は、前駆体、例えば、金属源試薬、と共に、一緒に注入されて、前駆体及び試薬が関与する前反応の少なくとも一部を減少させることができる。
【0213】
前反応対抗剤は、あるいは、蒸着部位、例えば、膜を蒸着する基材、と接触させるために前駆体蒸気が導入される蒸着チャンバーに向けて添加して、前駆体及び/又は他の試薬が関与する有害な気相前反応を抑制することができる。
【0214】
他のアプローチとして、本発明の広範な実施において、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を、前駆体及び/又は他の金属源試薬を含有する溶液に添加することができ、得られる溶液は、液体搬送工程に使用することができ、その場合、この溶液は蒸発器に流入して、蒸着種を蒸着する基材と接触するためのソース蒸気が形成される。
【0215】
あるいは、前駆体及び/又は他の金属源試薬が既存の溶液中に存在しない場合、関与する材料の対応する相及びそれらの相容性/溶解性に応じて、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を添加して、前駆体及び/又は他の金属源試薬との混合物若しくは溶液を形成することができる。
【0216】
他のさらなるアプローチとして、基材を前駆体及び/又は他の金属源試薬と接触させる前に、抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源を基材の表面処理のために使用することができる。
【0217】
したがって、本発明は、基材上に膜を形成するための種々の蒸着組成物及び方法を意図するものであり、そこでは、前駆体の前反応が、本明細書中で抑制剤、フリーラジカル阻害剤及び/又は重水素源試薬とも称されるヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物から選択される1以上の前反応対抗剤により、少なくともその一部が低減される。重水素源によるその場(in situ)での重水素化の代わりに、事前に合成された重水素化前駆体又は有機金属化合物の使用も意図される。これらのアプローチでの前駆体前反応の抑制により、優れた性質の生成物膜を効率的に形成できる。
【0218】
マルチ供給ストリームが蒸着部位に流入して基材上に膜が形成される方法において、コントロール剤を、カルコゲン化物前駆体の前反応に対抗するために使用することができ、その場合、少なくとも1つのマルチ供給ストリームには膜に悪影響を及ぼす前反応に感受性の前駆体が含まれ、その方法にはコントロール剤を、少なくとも1つのそのようなマルチ供給ストリーム若しくはそれに供給された材料、又は蒸着部位に、導入する工程が含まれる。
【0219】
あるいは、成長するカルコゲン化物膜の表面を保護し、蒸着速度を遅くするために、前反応対抗試薬を導入することができ、引き続いて代替の前駆体又は共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を用いる再活性化を行い、これにより、例えば交互反復シーケンスとして、保護/遅延と、これに引き続く再活性化工程が行われる。このような保護/遅延と引き続く再活性化のシーケンスは、ALD又はALD様プロセスにおいて、所望の反復サイクル数行うことができるる。その工程は、全体の蒸着操作にわたって、又は、ある初期の、中間の、又は最後のその部分の間に行うことができる。
【0220】
したがって、本発明は、前駆体及び前反応対抗試薬を含む前駆体組成物を意図する。前記の前反応対抗試薬、すなわち、(i)ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬のカテゴリー内で、特定の用途に対する好適な前反応対抗試薬は、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内で、容易に決定しうる。
【0221】
ヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物は、プロセス系において少なくとも部分的に前駆体及び/又は他の金属源試薬の前反応を少なくするのに有効である限り、オキソ(−O−)部分、窒素環原子若しくはペンダントアミノ若しくはアミド置換基、イオウ環原子若しくはペンダントスルフィド、スルホネート又はチオ基等を含む種々のタイプのものであってよい。本発明の特定の用途において有用性を有するヘテロ原子(O,N,S)有機ルイス塩基化合物の例示的な例として、限定するものではないが、1,4−ジオキサン、チオキサン、エーテル、ポリエーテル、トリエチルアミン、トリアジン、ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、アミン、イミン、及びピリジン等が挙げられる。
【0222】
本発明の種々の実施態様におけるヘテロ原子有機ルイス塩基化合物として、グアニジネート化合物、例えば、(Me2N)2C=NHが挙げられる。
【0223】
このような目的に対するヘテロ原子有機ルイス塩基化合物の1つの好ましい種類として、R3N、R2NH、RNH2、R2N(CH2)xNR2、R2NH(CH2)xNR2、R2N(CR2)xNR2、及び環状アミン−N(CH2)x−、イミダゾール、チオフェン、ピロール、チアゾール、尿素、オキサジン、ピラン、フラン、インドール、トリアゾール、トリアジン、チアゾリン、オキサゾール、ジチアン、トリチアン、クラウンエーテル、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,5,9−トリアザシクロドデカン、シクレン、コハク酸アミド、並びに上記のものの置換誘導体が挙げられ、ここで、Rは水素又は任意の好適な有機部分、例えば、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C1〜C8アルケン、C1〜C8アルキン、及びC1〜C8カルボキシル、であることができ、ここで、xは1〜6の値を有する整数である。
【0224】
ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物は、前駆体組成物中で、任意の好適な濃度で使用することができ、その濃度は、適切な濃度を決定するために、ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物濃度を変えて、得られた膜の特徴を評価する連続的な蒸着実験により実験的に決定しうる。種々の実施態様において、ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物は、前駆体の量の1〜300%の濃度で使用しうる。ヘテロ原子有機ルイス塩基化合物の0.01〜3当量の範囲内の濃度値の特定の下位範囲は、本明細書の記載に基づいて、過度の実験をすることなしに、前駆体の特定の種類に対して確立しうる。
【0225】
前反応対抗試薬は、追加的に又は代替的に、前駆体と他の有機金属試薬の間の前反応の程度を減少させるのに有効であるフリーラジカル阻害剤を含みうる。このようなフリーラジカル阻害剤は、任意の好適なタイプのものであってよく、例えば、ヒンダードフェノールが挙げられる。例示的なフリーラジカル阻害剤としては、限定するものではないが、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、2,6−ジメチルフェノール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、2−(1,1−ジメチルエチル)−1,4−ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4−tert−ブチルカテコール、N−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、p−メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソウレア、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、オキサリス(ベンジリデンヒドラジド)及びこれらの混合物から選択されるフリーラジカル捕捉剤が挙げられる。好ましいフリーラジカル阻害剤として、BHT、BHA、ジフェニルアミン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0226】
フリーラジカル阻害剤の有用な濃度は、種々の特定の実施態様において、前駆体の重量の0.001〜約0.10重量%の範囲でありうる。より一般的には、膜形成プロセスに含まれる搬送及び蒸着操作における前駆体の前反応に対抗するのに有効である任意の量のフリーラジカル阻害剤を使用しうる。
【0227】
重水素源化合物は、カルコゲン化物前駆体の前反応を抑制する他のアプローチを与える。このような重水素源化合物は、任意の好適なタイプのものでよく、例えば、重水素化ピリジン、重水素化ピリミジン、重水素化インドール、重水素化イミダゾール、重水素化アミン及びアミド化合物、重水素化アルキル試薬等、並びに、そうでなければ水素又はプロトン置換基を有するものとして使用されるであろう前駆体の重水素化類縁体が挙げられる。
【0228】
前反応対抗試薬として本発明の一般的な実施に有用でありうる重水素化物として、限定するものではないが、式RxGeD4-x及びRxSbD3-xのゲルマニウム及びアンチモン化合物が挙げられ、ここで、Rは水素又は任意の好適な有機部分、例えば、水素、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C1〜C8アルケン、C1〜C8アルキン、及びC1〜C8カルボキシル、であることができ、ここで、xは1〜6の値を有する整数である。
【0229】
重水素源試薬は、前駆体の前反応に対抗するのに有効である任意の好適な濃度で使用しうる。本発明の特定の実施態様における例示的な重水素源試薬の濃度は、前駆体の重量に対して、0.01〜約5重量%であることができる。
【0230】
したがって、重水素源化合物は、蒸着方法への1以上の供給ストリームに添加してもよいし、及び/又は前駆体若しくは他の供給ストリーム成分の一つは、最初に、重水素化されていてもよい。
【0231】
前駆体の前反応を少なくとも部分的に排除するために、本発明の実施において利用される前反応対抗剤の濃度は、温度、圧力、流速及び関与する特定の組成物に応じて、本発明の一般的な実施において、広範に変更することができる。したがって、本発明の前反応対抗試薬の濃度の上記の範囲は、単なる例示的な性質のものと考えるべきであり、適用可能な濃度は、本明細書中の開示に基づいて、従来技術の範囲内で容易に決定される。
【0232】
蒸着方法への1以上の供給ストリームに前反応対抗剤の導入又は添加する特定モードは、しかるべく変更することができ、例えば、マスフローコントローラー、フロー調節バルブ、計量インジェクター、又は前反応対抗剤の源を正常な膜形成操作中に蒸着プロセスに流入するストリームに結合するフロー回路における他のフローコントロール若しくはモジュレート部品を用いることができる。プロセス系は、さらに、本発明の所与の実施に必要か又は適切でありうるように、アナライザー、モニター、コントローラー、機器等を含んでもよい。
【0233】
蒸着プロセスへの1以上のフローストリームに前反応対抗剤を導入又は添加する代わりに、前反応対抗剤を、プロセス用の出発試薬材料として、最初に前駆体と混合することができる。例えば、前反応対抗剤を前駆体と溶液中で混合し、得られた溶液を膜を蒸着する基材と接触するための前駆体蒸気を発生させるのに使用する蒸発器に液体搬送してもよい。
【0234】
上記のように、前反応対抗剤は、蒸着部位に添加されて、もしこれがなければそのような有害な相互作用の影響を受けるであろう前駆体蒸気の前反応の活性気相抑制をもたらしうる。
【0235】
他のさらなる代替方法として、前反応対抗剤を予備的な表面処理として使用することができ、それに続いて、前駆体及び共反応体(例えば、H2、NH3、プラズマ、H2O、硫化水素、セレン化水素、二有機テルル化物、二有機硫化物、二有機セレン化物等)を、基材表面に搬送して、その表面上に蒸着する。そのような目的で、前反応対抗剤が、任意の前駆体の流入の開始に先立ち、蒸着プロセスへの1以上のフローライン及び蒸着プロセスチャンバー中の基材への流れに導入される。基材とそのような前反応対抗剤との接触に必要な期間が完了したのちに、前反応対抗剤の流れを停止することができ、蒸着チャンバーへのフローストリームの正常な供給を開始することができる。
【0236】
前反応対抗剤を広範な種々の方法のいずれかで導入して、蒸着システム中で前駆体の前反応の低減をなしうることは、上記の記載から明白であろう。
【0237】
本発明の一つの実施態様では、気相蒸着システムは、
膜をその上に蒸着するための少なくとも一つの基材を保持するために適合されている蒸着チャンバー;
膜を形成するための試薬を含有する化学試薬供給容器;
その試薬をその化学試薬供給容器から蒸着チャンバーへ搬送するために配置されている第一の流れ回路;
前反応対抗剤を含有する前反応対抗剤供給容器;
前反応対抗剤を前反応対抗剤供給容器から第一の流れ回路、前記化学試薬供給容器及び/又は蒸着チャンバーに搬送するために配置されている第二の流れ回路;
を含むことが意図されている。
【0238】
図面を再び参照すると、図20は、その一つの実施態様における蒸着システム100の概略表示である。
【0239】
この例示的システムにおいて、前反応対抗剤は、供給容器110に入れられている。前反応対抗剤は、前反応抑制剤、フリーラジカル阻害剤、重水素源、あるいはこのような試剤及び/又はこのような試剤のタイプの2以上の組み合わせを含むことができる。
【0240】
前反応対抗剤供給容器は、対応するフローライン112,114及び116により、それぞれ「G」、「S」及び「T」と標識されているゲルマニウム、アンチモン及びテルル試薬供給容器に結合される。容器「G」中のゲルマニウム前駆体は、テトラアルキル又はテトラアミドゲルマニウム化合物、例えば、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、テトラアリルゲルマニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ゲルマン又は他の有機ゲルマニウム化合物でありうる。さらに、前駆体「G」は、Ge(II)上のローンペアが前反応抑制剤の不存在下で、カルコゲン前駆体と気相で反応し得るゲルミレン化合物でありうる。容器「S」中のアンチモン前駆体は、トリアルキル又はトリアミドアンチモン化合物、例えば、トリブチルアンチモン、トリイソプロピルアンチモン、トリス(ジメチルアミノ)アンチモン又は他の有機アンチモン化合物であることができる。容器「T」中のテルル前駆体は、ジアルキル又はジアミドテルル化合物、例えば、ジイソプロピルテルル、ジブチルテルル、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]テルル又は他の有機テルル化合物であることができる。
【0241】
したがって、前反応対抗剤は、そのような目的のためにフロー調節バルブ又は他のフローモジュレーティング部品を有してもよい対応するフローラインを介して、対応する「G」、「S」及び「T」中のゲルマニウム、アンチモン及び/又はテルル前駆体のいずれにも添加することができる。
【0242】
示された特定の方法の実施態様において、ゲルマニウム、アンチモン及びテルル前駆体は、液体状態でそれぞれ供給ライン118,120及び122中を流れ、混合チャンバー124に流入され、その後、得られる前駆体混合物は、ライン126中の混合チャンバー124から蒸発器128に流入される。蒸発器において、液体前駆体混合物と前反応対抗剤が蒸発して、前駆体蒸気が形成される。その後、前駆体蒸気は、蒸着チャンバー中でサセプター138に装着されているウェーハ基材136上に前駆体混合物を排出するために、ライン130中を流れて、蒸着チャンバー132中のシャワーヘッドディスペンサー134へと流入する。
【0243】
ウェーハ基材136と接触する前駆体蒸気は、基材上でゲルマニウム、アンチモン及びテルル金属を蒸着するのに供されて、例えば、相変化型ランダムアクセスメモリー素子製造用の、ゲルマニウム−アンチモン−テルル(GST)材料の薄膜が形成される。
【0244】
金属含有量が減少した接触した前駆体蒸気は、ライン140中の蒸着チャンバー132から排出されて、留出軽減ユニット142に流入する。留出軽減ユニット142中で、排出された留出蒸気は、例えばスクラビング、触媒的酸化、電気化学的処理により、又は他の方法で処理して、ライン146中の軽減ユニットから排出される最終留出物が得られる。
【0245】
図20に示されている蒸着システムの概略表示は、例示的な性格のものであり、多くの他のアレンジしたものが、前に例示的に本明細書中で議論されたものを含む前反応対抗剤の配備及び使用のために、使用できることが理解されよう。例えば、前反応対抗剤は、対応するGST前駆体とその中で混合するために、直接的に、混合チャンバー124に導入することができた。あるいは、前反応対抗剤は、蒸着部位に輸送される前駆体と組み合わせるために、マニホールド118又は他の混合チャンバー、ブレンダー等に導入することができた。
【0246】
図20に示されているシステムは、各前駆体の液体搬送を採用する。固相前駆体を採用する場合、固相前駆体が固相出発原料の昇華等により気化される、固相搬送法を採用することができる。
【0247】
図20中の前反応対抗剤として重水素化剤を使用する代わりに、1以上のゲルマニウム、アンチモン及びテルル前駆体を、最初に、有機部分の水素置換基が重水素で置き換えられている有機ゲルマニウム、アンチモン又はテルル前駆体の重水素化類縁体として供給できた。
【0248】
前反応対抗試薬は、本発明の広範な実施において使用されて、半導体製品の製造用の改善された膜を製造しうる。一般に、本明細書に記載の前反応対抗試薬は、特定の用途において種々の組み合わせで使用されて、前駆体の前反応を抑制又は排除し、且つ優れた核生成及び最終膜特性をもたらしうる。
【0249】
本発明を、本発明の特定の態様、特徴及び例示的な実施態様を参照して本明細書中で記述してきたが、本発明の有用性はそのように限定されるものではなく、むりろ、本明細書中の開示に基づいて、本発明の分野の当業者に示唆されるような、数多くの他の変形、修正及び代替的実施態様に拡張され、またそれらを包含することが理解されよう。それに相応して、特許請求されている本発明は、その精神及び範囲内で、全てのそのような変形、修正及び代替的実施態様を含むように、広く理解され、解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】本発明の一つの実施態様における、本発明の前駆体を含有する材料貯蔵分配パッケージの概略図である。
【図2】窒素雰囲気中、400℃で1時間アニーリングしたのちの、テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】二酸化ケイ素基材上に形成された窒化チタン層上に蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜の平滑性を示す、図2のテルル化ゲルマニウム膜の断面の仰角SEM図である。
【図4】400°Fでアニーリングしたのちの結晶特性を示す、テルル化ゲルマニウム膜のX線分散(XRD)プロットである。
【図5】窒素共反応体を用いてCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図6】窒素共反応体を用いたCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図7】アンモニア共反応体を用いたCVDプロセスで蒸着されたテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図8】共反応体として水素を用いたCVDプロセスで形成蒸着された結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図9】共反応体として窒素を用いたCVDプロセスで形成された結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】50ナノメータ厚の窒化チタン上に形成された非晶質テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図11】図10のテルル化ゲルマニウム膜の断面の仰角図である。
【図12】テルル化ゲルマニウム及び標準GST膜のEDSスペクトルプロットである。
【図13】マイクロ電子素子構造上に蒸着されたテルル化ゲルマニウムの膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図14】340℃で蒸着された、結晶性テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図15】図14のテルル化ゲルマニウム膜のXRDプロットである。
【図16】非晶質膜、350℃で10分間アニーリングした膜、及び350℃でアニーリングし、続いて10分間400℃に曝したテルル化ゲルマニウム膜を包含する、非晶質テルル化ゲルマニウム膜についてのXRDプロットである。
【図17】非晶質テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図18】400℃でのアニーリング後の、テルル化ゲルマニウム膜の走査電子顕微鏡写真である。
【図19】ゲルマニウムブチルアミジネート前駆体及びジアルキルテルル前駆体を用いてGeTeが化学蒸着により蒸着されている「アグレッシブ」基材の例としての、マイクロ電子素子構造の走査電子顕微鏡写真である。
【図20】前反応対抗剤を蒸着システム中の1以上の供給ストリームに添加することにより前駆体の前反応の抑制が達成される、本発明の一つの実施態様に従う蒸着システムの概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着プロセスにより基材上にゲルマニウム含有膜を形成する方法であって、
ゲルマニウム前駆体蒸気を形成するためにゲルマニウム前駆体を揮発させる工程と、場合により前駆体蒸気を、アンモニア、水素、ヘリウム、アルゴン、及び窒素よりなる群から選択される成分と混合する工程と、前駆体蒸気をゲルマニウム含有膜蒸着用基材と接触させる工程を含み、前記ゲルマニウム前駆体が、以下のゲルマニウム組成物よりなる群から選択されるものである方法:
【化1】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化2】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化3】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【化4】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化5】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【化6】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化7】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化8】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択される];
【化9】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化10】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化11】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化12】
【化13】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、及び[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記ゲルマニウム含有膜がさらにテルルを含み、テルル前駆体蒸気を形成するためにテルル前駆体を揮発させる工程と、テルル前駆体蒸気を、膜蒸着用の基材と接触させる工程を含む方法。
【請求項3】
前記テルル前駆体が、以下の式で表されるテルル組成物よりなる群から選択されるものである、請求項2の方法:
R1TeR2 XIII
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1Te(NR2R3) XIV
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1Te−TeR2 XV
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
β−ジケチイミネート配位子を有するテルル錯体
【化14】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される];及び
【化15】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される]。
【請求項4】
請求項2の方法であって、前記ゲルマニウム含有膜及びテルル含有膜がさらにアンチモンを含み、アンチモン前駆体蒸気を形成するためにアンチモン前駆体を揮発させる工程と、アンチモン前駆体蒸気を、膜蒸着用の基材と接触させる工程を含む方法。
【請求項5】
前記アンチモン前駆体が、以下の式で表されるアンチモン組成物よりなる群から選択されるものである、請求項4の方法:
Sb(NR1R2)(R3N(CR5R6)mNR4)
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリールから独立に選択され、
R5及びR6の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
Sb(R1)(R2N(CR4R5)mNR3)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
R4及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
Sb(R1)3-n(NR2R3)n
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、シリル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール及び−NR4R5(ここで、R4及びR5の各々は、H及びC1〜C4から選択される)から独立に選択され;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である];
(R4)nSb(E(R1R2R3))3-n
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール、及び式−NR5R6のアルキルアミノ(ここで、R5及びR6の各々は、H及びC1〜C4アルキルから選択される)から独立に選択され;
Eは、ケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)であり;
nは、0〜3(これを含む)の整数である];
以下の式で表されるアミニデート、グアニデート及びイソウレエート:
R7nSb[R1NC(X)NR2]3-n
[式中、
各々のR1及びR2は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR4R5、及び−C(R6)3{ここで、R4、R5及びR6の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR7は、C1〜C6アルコキシ、−NR8R9、及び−C(R10)3{ここで、R8、R9及びR10の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるテトラアルキルグアニデート:
R5nSb[(R1R2)NC(NR3R4)N]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
R3及びR4の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R9)3、及び−Ge(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるカルバメート及びチオカルバメート:
R4nSb[(EC(X)E]3-n
[式中、
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3、−Ge(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
Eは、O又はSのいずれかであり;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるβ−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネート:
[OC(R3)C(X)C(R2)O]3-nSb(R5)n
[OC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[R4NC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[(R3)OC(=O)C(X)C(R2)S]3-nSb(R5)n
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR4は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、C1〜C6アルコキシ、−NR9R10、及び−C(R11)3{ここで、R9、R10及びR11の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるアリル:
(i):R4nSb[R1NC(X)C(R2R3)]3-n
(ii):R4nSb[(R1O)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iii):R4nSb[(R1R5)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iv):R4Sb[(ONC(X)C(R2R3))]
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR5は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR7R8、及び−C(R9)3{ここで、R7、R8及びR9の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
Cp部分が以下の式で表され、非Cp配位子が、場合により、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、β−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネートよりなる群から選択される配位子を含むことができる、アンチモンシクロペンタジエニル(Cp)アンチモン化合物:
【化16】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C6〜C10アリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C6アルキルシリル、C2〜C12アルケニル、R1R2NNR3{ここで、R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、及び、アンチモン中心原子へのさらなる配位をもたらす官能基を含み、以下の式で表されるアミノアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、イミドアルキル、及びアセチルアルキルから選択されるペンダント配位子から独立に選択される}から独立に選択される:
【化17】
アミノアルキル
(式中、メチレン(−CH2−)部分は、代わりに他の二価のヒドロカルビル部分であることができ;R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択され;n及びmは、各々、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできず、またxは1〜5から選択される);
【化18】
アルコキシアルキル及びアリールオキシアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化19】
及び
【化20】
イミドアルキル
(式中、R1、R2、R3、R4、R5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R1'、R2'の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化21】
アセチルアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール及びC1〜C5アルコキシから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない)];
及び、(M)以下の式で表されるペンダント配位子を有するアルキル、アルコキシド、シリル:
(i):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mC(R1R2)]3-n
(ii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mSi(R1R2)]3-n
(iii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mO]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数であり;
mは0〜4の整数である];
【化22】
【化23】
以下の式で表されるアンチモンアミド:
【化24】
以下の式で表されるアンチモン(III)アルキル/アミノ前駆体:
【化25】
並びに、以下の式で表されるゲルマニウムアニオンを有するスチルベン:
【化26】
【化27】
及び
【化28】
【請求項6】
前記ゲルマニウム前駆体が、Geブチルアミジネートを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記ゲルマニウム前駆体が、{nBuC(iPrN)2}2Geを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記膜が、非晶質GeTe又はGeSbTe膜である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記テルル前駆体が、ジ−tert−ブチルテルル及びジイソプロピルテルルから選択されるジアルキルテルルを含む、請求項2の方法。
【請求項10】
前記膜が、基材上のフィルトレンチ中で又はビア(via)内に蒸着される、請求項1の方法。
【請求項11】
非晶質のゲルマニウム及びテルル含有膜を含む相変化型ランダムアクセスメモリー素子を形成する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
(i)(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をその工程に導入することにより前駆体の前反応に対抗することを含む、請求項1の方法。
【請求項13】
基材上に平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成する前記前駆体蒸気を形成するためにゲルマニウムブチルアミジネート及びジアルキルテルル前駆体を揮発させる工程と、基材上に平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成するために前駆体蒸気を基材と接触させる工程を含む、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成するための、請求項1の方法。
【請求項14】
ゲルマニウムブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体からのゲルマニウムの蒸着を含む、非晶質のテルル化ゲルマニウム膜を形成する工程を含む、相変化型ランダムアクセスメモリー素子を形成するための、請求項1の方法であって、前記蒸着が、ジアルキルテルル前駆体の使用を含み、アンモニアを含む共反応体と共に行われる方法。
【請求項15】
前記ジアルキルテルル前駆体が、ジ−tert−ブチルテルル及びジイソプロピルテルルよりなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
以下のものよりなる群から選択される、ゲルマニウム前駆体:
【化29】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化30】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化31】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【化32】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化33】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【化34】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化35】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化36】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
【化37】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化38】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化39】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化40】
【化41】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【請求項17】
Geブチルアミジネートを含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項18】
[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項19】
(i)(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をさらに含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項20】
Geブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体を使用して、請求項2の方法により形成される、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜。
【請求項1】
蒸着プロセスにより基材上にゲルマニウム含有膜を形成する方法であって、
ゲルマニウム前駆体蒸気を形成するためにゲルマニウム前駆体を揮発させる工程と、場合により前駆体蒸気を、アンモニア、水素、ヘリウム、アルゴン、及び窒素よりなる群から選択される成分と混合する工程と、前駆体蒸気をゲルマニウム含有膜蒸着用基材と接触させる工程を含み、前記ゲルマニウム前駆体が、以下のゲルマニウム組成物よりなる群から選択されるものである方法:
【化1】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化2】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化3】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【化4】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化5】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【化6】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化7】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化8】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択される];
【化9】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化10】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化11】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化12】
【化13】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、及び[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記ゲルマニウム含有膜がさらにテルルを含み、テルル前駆体蒸気を形成するためにテルル前駆体を揮発させる工程と、テルル前駆体蒸気を、膜蒸着用の基材と接触させる工程を含む方法。
【請求項3】
前記テルル前駆体が、以下の式で表されるテルル組成物よりなる群から選択されるものである、請求項2の方法:
R1TeR2 XIII
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1Te(NR2R3) XIV
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1Te−TeR2 XV
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
β−ジケチイミネート配位子を有するテルル錯体
【化14】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される];及び
【化15】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、シリル及びC1〜C12アルキルアミン(モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの双方を含む)から独立に選択される]。
【請求項4】
請求項2の方法であって、前記ゲルマニウム含有膜及びテルル含有膜がさらにアンチモンを含み、アンチモン前駆体蒸気を形成するためにアンチモン前駆体を揮発させる工程と、アンチモン前駆体蒸気を、膜蒸着用の基材と接触させる工程を含む方法。
【請求項5】
前記アンチモン前駆体が、以下の式で表されるアンチモン組成物よりなる群から選択されるものである、請求項4の方法:
Sb(NR1R2)(R3N(CR5R6)mNR4)
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリールから独立に選択され、
R5及びR6の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
Sb(R1)(R2N(CR4R5)mNR3)
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
R4及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、C3〜C6アルキルシリル、及びC6〜C10アリールから独立に選択され;
mは、1〜4(上限下限を含む)の整数である];
Sb(R1)3-n(NR2R3)n
[式中、
R1、R2、及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル(例えば、ビニル、アリル等)、シリル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール及び−NR4R5(ここで、R4及びR5の各々は、H及びC1〜C4から選択される)から独立に選択され;
nは、0〜3(上限下限を含む)の整数である];
(R4)nSb(E(R1R2R3))3-n
[式中、
R1、R2、R3、及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルキルシリル、C6〜C10アリール、及び式−NR5R6のアルキルアミノ(ここで、R5及びR6の各々は、H及びC1〜C4アルキルから選択される)から独立に選択され;
Eは、ケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)であり;
nは、0〜3(これを含む)の整数である];
以下の式で表されるアミニデート、グアニデート及びイソウレエート:
R7nSb[R1NC(X)NR2]3-n
[式中、
各々のR1及びR2は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR4R5、及び−C(R6)3{ここで、R4、R5及びR6の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR7は、C1〜C6アルコキシ、−NR8R9、及び−C(R10)3{ここで、R8、R9及びR10の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるテトラアルキルグアニデート:
R5nSb[(R1R2)NC(NR3R4)N]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
R3及びR4の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R9)3、及び−Ge(R9)3(ここで、各々のR9は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるカルバメート及びチオカルバメート:
R4nSb[(EC(X)E]3-n
[式中、
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R5)3、−Ge(R5)3(ここで、各々のR5は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
Eは、O又はSのいずれかであり;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるβ−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネート:
[OC(R3)C(X)C(R2)O]3-nSb(R5)n
[OC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[R4NC(R3)C(X)C(R2)N(R1)]3-nSb(R5)n
[(R3)OC(=O)C(X)C(R2)S]3-nSb(R5)n
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR4は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、C1〜C6アルコキシ、−NR9R10、及び−C(R11)3{ここで、R9、R10及びR11の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
以下の式で表されるアリル:
(i):R4nSb[R1NC(X)C(R2R3)]3-n
(ii):R4nSb[(R1O)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iii):R4nSb[(R1R5)NC(X)C(R2R3))]3-n
(iv):R4Sb[(ONC(X)C(R2R3))]
[式中、
各々のR1、R2、R3及びR5は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
各々のR4は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR7R8、及び−C(R9)3{ここで、R7、R8及びR9の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R6)3、及び−Ge(R6)3(ここで、各々のR6は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数である];
Cp部分が以下の式で表され、非Cp配位子が、場合により、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、アリル、β−ジケトネート、ジケトイミネート、及びジケチイミネートよりなる群から選択される配位子を含むことができる、アンチモンシクロペンタジエニル(Cp)アンチモン化合物:
【化16】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C6〜C10アリール、C1〜C12アルコキシ、C3〜C6アルキルシリル、C2〜C12アルケニル、R1R2NNR3{ここで、R1、R2及びR3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル、及び、アンチモン中心原子へのさらなる配位をもたらす官能基を含み、以下の式で表されるアミノアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、イミドアルキル、及びアセチルアルキルから選択されるペンダント配位子から独立に選択される}から独立に選択される:
【化17】
アミノアルキル
(式中、メチレン(−CH2−)部分は、代わりに他の二価のヒドロカルビル部分であることができ;R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択され;n及びmは、各々、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできず、またxは1〜5から選択される);
【化18】
アルコキシアルキル及びアリールオキシアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4の値を有するものとして独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化19】
及び
【化20】
イミドアルキル
(式中、R1、R2、R3、R4、R5の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R1'、R2'の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない);
【化21】
アセチルアルキル
(式中、R1〜R4の各々は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、水素、C1〜C6アルキル及びC6〜C10アリールから独立に選択され;R5は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール及びC1〜C5アルコキシから独立に選択され;n及びmは、0〜4から独立に選択され、ただし、m及びnは、同時には0であることはできない)];
及び、(M)以下の式で表されるペンダント配位子を有するアルキル、アルコキシド、シリル:
(i):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mC(R1R2)]3-n
(ii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mSi(R1R2)]3-n
(iii):R5nSb[(R1R2)N(CH2)mO]3-n
[式中、
R1及びR2の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のR5は、グアニジネート、アミニデート、イソウレエート、β−ジケトネート、ジケトイミネート、ジケチイミネート、C1〜C6アルコキシ、−NR6R7、及び−C(R8)3{ここで、R6、R7及びR8の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−Si(R3)3、及び−Ge(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
nは0〜3の整数であり;
mは0〜4の整数である];
【化22】
【化23】
以下の式で表されるアンチモンアミド:
【化24】
以下の式で表されるアンチモン(III)アルキル/アミノ前駆体:
【化25】
並びに、以下の式で表されるゲルマニウムアニオンを有するスチルベン:
【化26】
【化27】
及び
【化28】
【請求項6】
前記ゲルマニウム前駆体が、Geブチルアミジネートを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記ゲルマニウム前駆体が、{nBuC(iPrN)2}2Geを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記膜が、非晶質GeTe又はGeSbTe膜である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記テルル前駆体が、ジ−tert−ブチルテルル及びジイソプロピルテルルから選択されるジアルキルテルルを含む、請求項2の方法。
【請求項10】
前記膜が、基材上のフィルトレンチ中で又はビア(via)内に蒸着される、請求項1の方法。
【請求項11】
非晶質のゲルマニウム及びテルル含有膜を含む相変化型ランダムアクセスメモリー素子を形成する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
(i)(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をその工程に導入することにより前駆体の前反応に対抗することを含む、請求項1の方法。
【請求項13】
基材上に平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成する前記前駆体蒸気を形成するためにゲルマニウムブチルアミジネート及びジアルキルテルル前駆体を揮発させる工程と、基材上に平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成するために前駆体蒸気を基材と接触させる工程を含む、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム膜を形成するための、請求項1の方法。
【請求項14】
ゲルマニウムブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体からのゲルマニウムの蒸着を含む、非晶質のテルル化ゲルマニウム膜を形成する工程を含む、相変化型ランダムアクセスメモリー素子を形成するための、請求項1の方法であって、前記蒸着が、ジアルキルテルル前駆体の使用を含み、アンモニアを含む共反応体と共に行われる方法。
【請求項15】
前記ジアルキルテルル前駆体が、ジ−tert−ブチルテルル及びジイソプロピルテルルよりなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
以下のものよりなる群から選択される、ゲルマニウム前駆体:
【化29】
[式中、
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化30】
[式中、
R及びR'は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々のR及びR'は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化31】
[式中、
R、R'、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
(R)4-nGe(NR1R2)n IV
[式中、
R、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
nは、0〜4(上限下限を含む)の整数である];
【化32】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C2〜C5アルケニル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化33】
[式中、
Rは、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C10アリールから選択され、
xは、0、1又は2である];
【化34】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化35】
[式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、H、C1〜C6アルキル、シリル、−Si(R')3、C6〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、−(CH2)xNR'R"、及び−(CH2)xOR'"(ここで、x=1、2又は3、且つR'、R"、及びR'"は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各々は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化36】
[式中、
R'及びR''は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択され;
各々のXは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、−NR1R2、及び−C(R3)3{ここで、R1、R2及びR3の各々は、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R4)3(ここで、各々のR4は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される}から独立に選択され;
【化37】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化38】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化39】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
R1R2R3R4Ge XVI
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル、C5〜C10シクロアルキル、C6〜C10アリール、及び−Si(R3)3(ここで、各々のR3は、C1〜C6アルキルから独立に選択される)から独立に選択される];
【化40】
【化41】
Ge(NMe2)4、Ge(NEtMe)4、Ge(NEt2)4、iPr3GeCl、iPr3GeNMe2、iPr3GeNEtMe、iPr3GeNEt2、Geブチルアミジネート、[{nBuC(iPrN)2}2Ge]。
【請求項17】
Geブチルアミジネートを含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項18】
[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項19】
(i)(O,N,S)有機ルイス塩基化合物、(ii)フリーラジカル阻害剤、及び(iii)重水素含有試薬よりなる群から選択される前反応対抗剤をさらに含む、請求項16のゲルマニウム前駆体。
【請求項20】
Geブチルアミジネート又は[{nBuC(iPrN)2}2Ge]を含むゲルマニウム前駆体を使用して、請求項2の方法により形成される、平滑な非晶質テルル化ゲルマニウム又はテルル化ゲルマニウムアンチモン膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−133003(P2009−133003A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−279957(P2008−279957)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279957(P2008−279957)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]