説明

面状発熱体

【課題】簡易な構成で、熱効率、信頼性及び保守性に優れた面状発熱体を提供する。
【解決手段】発熱体1と、コーティング層3を介して該発熱体1を挟み込む加熱板2とを有する面状発熱体10において、前記コーティング層3は、前記加熱板の厚み方向のうち前記発熱体に対向する該加熱板のそれぞれの面に、窒化珪素又はアルミナを含むセラミックス材料で形成され、かつ、該コーティング層3に、線状又は箔状の該発熱体1を収容するための溝部4が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層を有する加熱板で発熱体を挟み込んだ面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用製品の加工等に用いられる面状発熱体は、所謂マイカヒーターに代表されるように、線や箔状に成形された金属の発熱体をマイカ(雲母)板で挟み込み、加圧や接着等の加工工程を経て絶縁処理を施し、さらに、加熱板である金属板等を挟みこんで作製されている。マイカ板の代わりにシリコンゴムやフッ素樹脂シートを使用したものもある。この平面ヒーターは、主として加熱板である金属板等に挟まれ、面状発熱体として広く使用されている。
【0003】
図3は、従来の面状発熱体の側断面図である。図4は、従来の面状発熱体の構成を示す側断面図である。従来の面状発熱体20は、金属等の発熱体21をマイカ板22で挟み込んだ平面ヒーター23と、この平面ヒーター23の両面を挟み込む加熱板24とから構成される。
【0004】
特許文献1では、金属発熱体素子に窒化アルミ等のセラミックスに無機接着剤を添加した結合剤を塗布して熱拡散層を形成し、これをマイカ等の無機絶縁体の間に重層し、加熱加圧して一体化した平面発熱体が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−283257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、面状発熱体を連続使用する条件下において、発熱体を挟み込む絶縁体のうち、耐熱は樹脂やゴムでは150℃程度、マイカ板でも300℃程度が限度であるため、より高温での連続使用という要求に対応できなかった。また、上記従来技術のような構成では、発熱体が断線したときに交換等の修理のために、図2に示すような平面ヒーターを予備として常に用意する必要があった。また、特許文献1の技術では、無機接着剤にシリコンを使用しているため、シロキ酸が発生して接点不良等を起こすことがあった。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、簡易な構成で、熱効率、信頼性及び保守性に優れた面状発熱体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のことを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、発熱体と、絶縁層を介して該発熱体を介して挟み込む加熱板とを有する面状発熱体において、前記絶縁層が前記加熱板の厚み方向のうち前記発熱体に対向する該加熱板のそれぞれの面に形成され、かつ、該絶縁層に前記発熱体を収容するための溝部が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記面状発熱体において、前記絶縁層が窒化珪素又はアルミナを含有するセラミックス材料を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記面状発熱体において、前記絶縁層が耐熱樹脂を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱板にセラミックス等の絶縁性を有するコーティング層を形成し、このコーティング層と発熱体とを分離した構成にすることにより、簡易な構成で、熱効率及び信頼性に優れた面状発熱体を提供する。
【0012】
さらに、発熱体が断線等で故障した場合は、従来のように絶縁層及び発熱体を交換することなく、発熱体のみを交換することができるので、保守が容易で保守コストを低くすることができる。
【0013】
さらに、絶縁層に溝部を設けることにより、製造工程における発熱体の位置決めが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明はこの発明の最良の形態の例であって、いわゆる当業者は特許請求の範囲内で、変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、以下の説明が特許請求の範囲を限定するものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態になる面状発熱体を示す側断面図である。図2は、面状発熱体の構成を示す側断面図である。面状発熱体10は、発熱体1と、発熱体1を両面から挟み込む加熱板2と、加熱板の厚み方向のうち発熱体1に対向する加熱板のそれぞれの面に成膜されたコーティング層3とを有する。
【0016】
発熱体1は、ニッケルクロム、鉄クロム等の抵抗率の高い耐熱性の金属発熱体を用い、所望の抵抗値を有する線状又は箔状の形状に形成される。
【0017】
加熱板2は、発熱体1で発せられた熱を被加熱物へと伝達できるものであれば特に制限されるものではないが、耐熱性があり、表面が平面形状であることが好ましい。
【0018】
具体的には、加熱板2は、アルミ板、ステンレス板、銅板等の金属板を用いる。低膨張ガラス板、結晶化ガラス板、アルミナ板、窒化珪素板等のセラミック板を用いてもよいが、セラミック板は、一般に、絶縁物であるので、絶縁材料を配置する必要はないという長所はあるが、伝熱性が金属板より劣り熱効率が劣る。
【0019】
金属板は、伝熱性が良好ではあるが導電性があるので、使用にあたっては、発熱体1と加熱板2との間に、図2に示すコーティング層3なる絶縁層を形成する必要がある。従来は、図4に示す発熱体11とマイカ板22等の絶縁体を一体にした平面ヒーター23を用いていた。しかしながら、上述したように、マイカ板22等の絶縁体は熱効率や保守性が劣っていた。そこで、本発明では、加熱板2にコーティング層3を形成して、加熱板2と発熱体1との間の絶縁性を確保した。
【0020】
コーティング層3は、加熱板2である金属板の厚み方向のうち発熱体1に対向する面に、セラミック材料を溶射して形成される。本実施の形態では、2枚の加熱板2が発熱体1を挟み込んでいる。従って、2枚の加熱板2の発熱体1に対向するそれぞれの面にコーティング層3が形成される。コーティング層3の溶射には、プラズマ溶射又はガス溶射が好適に用いられる。セラミック材料は、絶縁性を有し、高温で過酷な条件で使用される高温構造材料として、窒化珪素、アルミナ等が好適に用いられる。セラミックス材料の代わりに、耐熱樹脂を用いてもよい。耐熱樹脂でコーティング層3を形成する場合は、樹脂を加熱板2に吹き付けて焼成する。例えば、耐熱樹脂としてはテフロン(登録商標)がある。但し、耐熱樹脂は、コスト的にはセラミックス材料よりは優位にあるが、耐熱性においてセラミックス材料よりも劣るので、面状発熱体10の使用形態に応じて用いるようにする。即ち、面状発熱体10が高温仕様ならばセラミックス材料を用い、低温仕様なら耐熱樹脂を用いるようにすればよい。
【0021】
溶射以外には、他にPVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)及びゾル−ゲル法等を用いてもよい。
【0022】
コーティング層3の厚さは、例えばセラミックス材料を用いた場合は、交流200ボルトという条件下おいて200μm程度あればよく、発熱体1と加熱板2との間の電気的な絶縁性が確保できればよい。耐熱樹脂を用いた場合は、セラミックス材料を用いた場合に比べ、コーティング層3を緻密にできるためより薄くできる。
【0023】
次に、コーティング層3を有する加熱板2で発熱体1を挟み込むときに、発熱体1に応力や拘束力がかからないように発熱体1の形状に合わせて、コーティング層3に溝等の加工を施す必要がある。線状又は箔状のいずれにしても発熱体1は厚みを有するため、この厚みをコーティング層3内で収容するためである。
【0024】
具体的には、以下のように処理を行って溝部4を形成する。
まず、加熱板2を機械加工時にエンドミル等の工具で発熱体形状に合わせた溝を形成する。加熱板2に形成する溝の寸法は、後にコーティング層3を形成することを考慮して、幅及び深さ共に大きめの寸法とする。この後、溝の形状を有する加熱板2に、上述の溶射等でセラミックス材料又は耐熱樹脂でコーティング層3を形成すると溝部4を有するコーティング層3が形成される。溝部4を有するコーティング層3は、2枚の加熱板2のうちいずれか一方の加熱板2に形成しても良いし、双方の加熱板2に形成しても良い。図2では一方の加熱板2のコーティング層3に溝部4を形成している。
【0025】
発熱体1の形状に応じた溝部4を形成したコーティング層3を有する加熱板2で発熱体1を両面より挟み込み、ねじ等で止めることにより、本願発明の一実施形態になる面状発熱体10が作製される。
【0026】
以上により、従来のマイカを用いた断熱材の積層を省略することができるため、発熱体1の熱を効率よく加熱板2に伝えることができる。このため、発熱体1の温度を従来のものより低く設定できるので発熱体1の寿命を長くすることができる。
【0027】
さらに、発熱体1が断線等により破損した場合は、発熱体1のみを交換すればよいため保守が容易になる。
【0028】
さらに、絶縁層に溝部4を設けることにより、製造工程における発熱体の位置決めが容易になる。
【0029】
さらに、セラミックス材料は1500℃程度の耐熱性を有するので、コーティング層3にセラミックス材料を用いた場合は、発熱体1が金属からなるときは絶縁破壊に対する耐性が従来のマイカに比べて増加する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態になる面状発熱体の構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態になる面状発熱体の側断面図である。
【図3】従来の面状発熱体の構成を示す側断面図である。
【図4】従来の面状発熱体の側断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 発熱体
2 加熱板
3 コーティング層
4 溝部
10 面状発熱体
21 発熱体
22 マイカ
23 平面ヒーター
24 加熱板
20 面状発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、絶縁層を介して該発熱体を挟み込む加熱板とを有する面状発熱体において、
前記絶縁層は、前記加熱板の厚み方向のうち前記発熱体に対向する該加熱板のそれぞれの面に形成され、かつ、
該絶縁層に該発熱体を収容するための溝部が形成される
ことを特徴とする面状発熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の面状発熱体において、
前記絶縁層は、窒化珪素又はアルミナを含有するセラミックス材料を含む
ことを特徴とする面状発熱体。
【請求項3】
請求項1に記載の面状発熱体において、
前記絶縁層は、耐熱樹脂を含む
ことを特徴とする面状発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−62080(P2010−62080A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228507(P2008−228507)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(508269075)株式会社ジェイ・エス・エス (2)
【Fターム(参考)】