説明

顕微鏡

【課題】照明光学系の光軸が対物光学系の光軸に対して極力接近した光学構成を有し且つ、照明光学系の鏡筒内から照明光が漏れて対物光学系内に入り込まない顕微鏡を提供する。
【解決手段】撮影光学系200は、クローズアップ光学系210と、その光軸Ax1からオフセットした位置に置かれたズーム光学系220で、構成される。クローズアップ光学系は、ズーム光学系の光軸Ax2の通過位置から離れた側のコバが切り欠かれている。切欠面の側方には、照明光学系300を保持するズーム鏡筒5がある。ズーム鏡筒は、レンズ群311,312をその内部に保持した第1、第2レンズ移動枠53,54,これらの外周面から突出した駆動ピン58,59を案内する案内溝51d,51eが形成された固定環51,駆動ピン58,59を駆動するカム溝52a,52bが形成されたカム環52,及びこのカム溝を外側から塞ぐ遮光シート60から、構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、観察対象物を拡大して結像させる顕微鏡に関し、特に、コバが一部切り欠かれたクローズアップ光学系と、このクローズアップ光学系を保持する鏡筒内の隙間に照射範囲可変の照明光学系を配置している顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の顕微鏡は、例えば、脳神経外科手術のように微細な組織を処置する際に使用される。即ち、脳のように微細な組織からなる器官は、その構造組織を肉眼で識別することが困難であるために、このような器官の処置は、顕微鏡下で行わざるを得ない。
【0003】このような顕微鏡は対物光学系が高倍率であるが故に像が暗くなってしまうので、観察対象物を照明する照明光学系が不可欠となる。このような照明光学系によって観察対象物を照明する場合には、観察対象物までの距離(作動距離)が変動しても観察対象物に対する照明光照射範囲の中心の相対位置関係があまり変わらぬように、照明光学系の光軸と対物光学系の光軸とをできるだけ接近することが望ましい。そのための一つの構成として、対物光学系をクローズアップ光学系と結像光学系とから構成するとともに結像光学系の光軸をクローズアップ光学系の光軸からオフセットし、クローズアップ光学系における結像光学系の光軸から離れた側のコバに切欠面を形成するとともに、クローズアップ光学系の鏡筒内と切欠面との隙間に照明光学系を配置することが、考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、手術用顕微鏡のように観察対象物の大きさが千差万別である場合には、対物光学系の結像光学系としてズームレンズを用い、対物光学系全体の倍率を可変にすることが望ましい。このように対物光学系の全体の倍率を可変にする場合には、照明光学系についても、その照射範囲の広さが可変な構成としなければならない。
【0005】しかしながら、クローズアップ光学系の鏡筒内に照射範囲の広さが可変の照明光学系を配置する場合には、照明光学系からの照明光が側方に漏れ、クローズアップレンズ群内に迷光として入り込んでしまう問題が生じると、考えられる。即ち、この場合に採用される照明光学系の鏡筒は、少なくとも、レンズを直接保持しているレンズ枠と、このレンズ枠の外周面に植設された駆動ピンを案内する案内溝が開けられた固定筒と、この固定筒の案内溝を貫通した駆動ピンを駆動するカム溝が開けられたカム筒とから、構成される。従って、固定溝とカム溝との交点において鏡筒内部と外部とが連通するので、鏡筒内部を通っている照明光がこの交点を通じて外部に漏れて、それが迷光としてクローズアップ光学系内に入り込んでしまうのである。
【0006】このような迷光は、結像される映像の品質を著しく劣化させてしまうので、これを遮光する構成が必要となる。このような遮光構成として、照明光学系の鏡筒とクローズアップ光学系との間に遮光板を取り付けることも考えられるが、厚い遮光板を置いてしまうと、その厚さ分だけ照明光学系の光軸が対物光学系の光軸から更に離れてしまうので、照明光による陰影をなくすという本来の目的が損なわれてしまう。
【0007】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、照明光学系の光軸が対物光学系の光軸に対して極力接近した光学構成を有すにも拘わらず、照明光学系中のレンズを移動可能に保持する鏡筒内から照明光が漏れて対物光学系内に入り込むことがない顕微鏡を、提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を達成するため、本発明は、ズームレンズからなる結像光学系と、この結像光学系の前方においてこの結像光学系の光軸に対してその光軸が略平行にオフセットするように配置されているとともにその光軸に関して前記結像光学系の光軸とは反対側に切欠面が形成されているクローズアップ光学系と、このクローズアップ光学系の切欠面に近接して配置された鏡筒内においてその光軸が前記クローズアップ光学系の光軸と略平行になるように保持されているととも光源からの光を前記クローズアップ光学系の前方に向けて配光する照明光学系とを有する顕微鏡において、前記照明光学系を保持する鏡筒は、その前端側から後端側に向けてスリット状の第1溝が形成された第1環と、この第1環の外側においてこの第1環に対して相対回転可能に填められているとともに前記第1溝に対して斜行したスリット状の第2溝がその前端側から後端側に向けて形成された第2環と、前記第1環及び第2環の内部において前記照明光学系を構成するレンズを保持するとともに前記第1溝と第2溝との交点に挿し込まれた駆動ピンを一体に有するレンズ枠と、前記第2溝を塞ぐために前記第2環の外面に設けられた遮光部材とを、備えることを特徴とする。
【0009】このように構成されると、結像光学系の光軸はクローズアップ光学系によって偏向され、クローズアップ光学系の前方において、このクローズアップ光学系の光軸と交わる。従って、このクローズアップ光学系の前方に存在する観察対象物が、このクローズアップ光学系及び結像光学系からなる対物光学系によって、像形成される。このようにして像形成される観察対象物は、照明光学系によって照明されるが、この照明光学系は、クローズアップ光学系におけるその光軸に関して結像光学系の光軸とは反対側に形成された切欠面に近接して配置されているので、その光軸は、クローズアップ光学系によって偏向された結像光学系の光軸に対して極力接近している。従って、観察対象物までの距離(作動距離)が変動しても、観察対象物に対する照明光照射範囲の中心の相対位置関係は、あまり変わらない。また、この照明光学系を構成するレンズは、結像光学系がズームレンズであることに合わせて、その光軸方向に移動することによってその照明範囲の広さを変化させることができる。この照明光学系を構成するレンズを移動可能に保持する鏡筒は、第1環と第2環とが相対回転することによって第1環に形成された第1溝と第2環に形成された第2溝との交点を移動させ、この交点に挿し込まれているレンズ枠の駆動ピンを光軸方向に移動させる。この第2環の外面には第2溝を塞ぐ遮光部材が設けられているので、第1溝と第2溝との交点を通じて、鏡筒内から照明光が漏れてクローズアップ光学系内に入り込むことはない。
【0010】この顕微鏡は、結像光学系によって形成された観察対象物の像をアイピースを介して拡大観察させる光学式顕微鏡であっても良いし、この結像光学系によって形成された観察対象物の像を直接又はリレー光学系によってリレーした後に撮像するビデオ型顕微鏡であっても良い。また、この顕微鏡は、クローズアップ光学系に対して結像光学系が一つのみ備えられた単眼顕微鏡であっても良いし、共通に用いられるクローズアップ光学系に対して一対の結像光学系が備えられた双眼(立体)顕微鏡であっても良い。
【0011】クローズアップ光学系に形成された切欠面は、研削によって形成されても良いし、モールドによるレンズ成形に際して同時に形成されても良い。また、この切欠面は、その部分におけるクローズアップ光学系の半径が他の部分の半径よりも小さいものであればその形状は問わない。従って、平面であっても良いし、凹面又は凸面であっても良い。平面や円柱面等の場合においては、クローズアップ光学系の光軸と平行に形成されていても良いし、傾斜して形成されていても良い。さらに、切欠面が光軸と平行な凹面として形成された場合、この切欠面をなす凹面が閉じていても良い。換言すると、クローズアップ光学系をなすレンズの一次部に、照明光学系を貫通させる貫通孔が形成され、この貫通孔の内面が切欠面となっていても良い。
【0012】照明光学系は、光源から射出された照明光の照射範囲を可変できさえすれば良いので、単一のレンズ群から構成されていても良いし、複数のレンズ群から構成されていても良い。但し、複数のレンズ群から構成された場合には、ズームレンズとして、照明光の照射角を可変することが可能となる。鏡筒を構成する第1環及び第2環は、相対回転できさえすれば良いので、第1環が固定されて第2環が回転する構成であっても良いし、その逆であっても良いし、双方が回転する構成であっても良い。何れの場合であっても、第1溝と第2溝とは相対的に遮光してさえいれば良いので、どちらか一方が光軸と平行な直進溝であって他方が光軸に対して傾斜していても良いし、双方が光軸に対して傾斜していても良い。これら第1溝及び第2溝並びにレンズ枠は、照明光学系が単一のレンズ群から構成されている場合には一組備えられれば良いが、照明光学系が複数のレンズ群から構成されている場合には、移動レンズ群毎に対応して複数組備えられる。
【0013】遮光部材は、例えば、金属又は合成樹脂等の板から構成されていても良いし、第2環の外面に填められた金属パイプ又は合成樹脂パイプであっても良いし、合成樹脂やポリマー製のシートであっても良い。このような遮光部材は、少なくとも鏡筒内の照明光を外に漏らさない程度の遮光性を備えていれば良いが、その外面に反射防止コーティングが施されていれば、クローズアップ光学系から漏れた光が反射して迷光としてクローズアップ光学系内に戻ってしまうことも防止できる。この遮光部材は、少なくとも第2環の第2溝をその全域に亘って塞いでいれば足りるが、第2環の外面全体に設けられていても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】以下に説明する実施形態では、本発明の顕微鏡は、共通に用いられるクローズアップレンズ群に対して左右一対のズームレンズを組み合わせた対物光学系により観察対象物を立体映像としてビデオ撮影するビデオ型立体顕微鏡として、実施されている。このようなビデオ型立体顕微鏡(以下、単に「立体顕微鏡」という)は、例えば脳神経外科手術の際に用いられる手術支援システムに組み込まれて使用される。この手術支援システムは、立体顕微鏡によって患者の組織をビデオ撮影して得られた立体映像(ステレオ映像)を、予め得られていた患部のデータに基づいて作成したCG(コンピュータグラフィック)映像と合成して、手術者専用の立体視ビューアーや他のスタッフ用のモニタ等に表示し、また、録画装置に録画するシステムである。
(手術支援システムの全体構成)図1は、この手術支援システムの概略を示すシステム構成図である。この図1に示されるように、手術支援システムは、立体顕微鏡101と、この立体顕微鏡101の背面の上端近傍に取り付けられたハイビジョンCCDカメラ102と、同じく下端近傍に取り付けられた顕微鏡位置測定装置103と、立体顕微鏡101の上面に取り付けられたカウンターウェイト104と、このカウンターウェイト104に開けられた貫通孔を貫通して立体顕微鏡101の内部に導通されたライトガイドファイバ105と、このライトガイドファイバ105を通じて立体顕微鏡101に照明光を導入する光源装置106と、ディスク装置107を有する手術計画用コンピュータ108と、顕微鏡位置測定装置103及び手術計画用コンピュータ108に接続されたリアルタイムCG作成装置109と、このリアルタイムCG作成装置109及びハイビジョンCCDカメラ102に接続された画像合成装置110と、この画像合成装置110に接続された分配器111と、この分配器111に接続された録画装置115,モニタ114及び立体視ビューア113等から、構成されている。
【0016】上述したディスク装置107には、患者Pの患部を予め様々な撮影装置で撮影することによって得られた画像(CTスキャン画像,MRI画像,SPECT画像,血管造影画像,等)が格納されているとともに、これらの各種画像に基づいて予め作成された患部及び周辺組織の3次元データが格納されている。なお、この3次元データは、患者の外皮又は内部組織の特定部位に設定された基準点(マーキング等)を原点として定義された3次元ローカル座標上で、患部及び周辺組織の形状,大きさ及び位置を、ベクトル形式又はマップ形式で特定するデータとなっている。
【0017】また、上述した立体顕微鏡101は、その背面に取付られたマウントを介して、第1スタンド100のフリーアーム100aの先端に、着脱自在に固定されている。従って、この立体顕微鏡101は、第1スタンド100のフリーアーム100aの先端が届く半径内で、移動自在であるとともに、任意の向きに向くことができる。但し、ここでは、便宜上、立体顕微鏡101に対するその被写体の向きを「下」と定義し、逆向きを「上」と定義するものとする。
【0018】この立体顕微鏡101内の光学構成については後で詳しく説明するが、その概略構成を述べると、図2に示すように、観察対象物は、単一の光軸を持つ大径のクローズアップ光学系210,及びこのクローズアップ光学系210における互いに異なる箇所を透過した光を夫々収束させる左右一対のズーム光学系220,230からなる対物光学系によって、左右の視野絞り270,271の位置に、夫々、一次像として結像される。これら左右の一次像は、左右一対のリレー光学系240,250によってリレーされてハイビジョンCCDカメラ102内に導入され、ハイビジョンサイズ(縦横のアスペクト比=9:16)の撮像面を有するCCD116における左右の各撮像領域(縦横のアスペクト比=9:8)に、夫々二次像として再結像される。
【0019】このような撮影光学系によってCCD116の撮像面上における左右の各撮像領域に形成された像は、所定の基線長を隔てた二箇所から夫々撮影した画像を左右に並べたステレオ画像と等価である。そして、このCCD116の出力信号は、画像プロセッサ117によってハイビジョン信号として生成されて、ハイビジョンCCDカメラ102から画像合成装置112へ向けて出力される。
【0020】なお、この立体顕微鏡101内には、クローズアップ光学系210の焦点位置近傍に存在する観察対象物を照明する照明光学系300(図6参照)が内蔵されている。そして、この照明光学系300には、光源装置106からライトガイドファイババンドル105を介して照明光が導入される。
【0021】図1に戻り、立体顕微鏡101に取り付けられた顕微鏡位置測定装置103は、クローズアップ光学系210の光軸上に存在する観察対象物までの距離,クローズアップ光学系210の光軸の立体的な向き,上記基準点の位置を測定し、測定したこれら情報に基づいて上記ローカル座標における観察対象物の位置を算出する。そして、これら光軸の向き及び観察対象物の位置の情報を、リアルタイムCG作成装置109に通知する。
【0022】このリアルタイムCG作成装置109は、顕微鏡位置測定装置103から通知された光軸の向き及び観察対象物の位置の情報,及び手術計画用コンピュータ108からダウンロードした3次元データに基づいて、この光軸の向きから患部(例えば腫瘍)を立体視したのと等価なCG画像(例えば、ワイヤフレーム画像)をリアルタイムに生成する。このCG画像は、立体顕微鏡101内の光学系と同じ基線長,及び同じ被写体距離での立体画像(ステレオ画像)として生成される。そして、リアルタイムCG作成装置109は、このようにして生成したCG画像を示すCG画像信号を、随時、画像合成装置110に入力する。
【0023】この画像合成装置110は、ハイビジョンCCDカメラ102から入力された実際の観察対象物のハイビジョン信号に、リアルタイムCG作成装置109から得られたCG画像信号を、縮尺を調整してスーパーインポーズする。このようなCG画像信号のスーパーインポーズがなされたハイビジョン信号が示す画像においては、実際に撮影して得られた画像中で、患部の形状,大きさ及び位置が、ワイヤフレーム等のCG画像として示されている。このスーパーインポーズのなされたハイビジョン信号は、分配器111によって、主術者D用の立体視ビューワ113,その他の手術スタッフ用又は遠隔地に居るアドバイザ用のモニタ114,及び、録画装置115へ、夫々供給される。
【0024】立体視ビューワ113は、第2スタンド112のフリーアーム112aの先端から垂下して取り付けられている。従って、主術者Dが処置を施し易い姿勢に合わせて、立体視ビューワ113を配置することが可能になっている。この立体視ビューワ113の概略構成を図3に示す。この図3に示されるように、立体視ビューワ113は、ハイビジョンサイズのLCDパネル120を、モニタとして内蔵している。このLCDパネル120に分配器からのハイビジョン信号による映像が表示された場合には、図4の平面図に示すように、LCDパネル120の左半分120bには、CCD116における左側撮像領域にて撮影された映像が表示され、右半分120aには、CCD116における右側撮影領域にて撮影された映像が表示される。これら左右の映像の境界線120cは、後述する視野絞り270,271の位置調整如何により、ずれたり傾むいたりする。立体視ビューワ113内の光路は、視野絞り270,271が正確に調整された際における境界線120cに対して垂直に設置された隔壁121により、左右に区分けされている。この隔壁121の両側には、夫々、LCDパネル120側から順番に、楔プリズム119及び接眼レンズ118が配置されている。この接眼レンズ118は、LCDパネル120に表示された映像の虚像を、観察眼Iの前方約1m(−1ディオプトリ)の位置に拡大して形成するレンズである。また、楔プリズム119は、観察眼Iの輻輳角が1m先に存在する物体を観察するのと等しい角度になるように光の進行方向を補正し、自然な立体観察を可能としている。
【0025】このような立体視ビューワ113によって立体視される映像,又は、モニタ114に表示される映像においては、上述したように、予め各種撮影装置によって撮影された画像に基づいて検出されていた腫瘍等の患部の形状,大きさ及び位置を示すワイヤフレーム等のCGがスーパーインポーズされている。従って、これらを観察している主術者D又はその他の手術スタッフは、実際の映像中では識別が困難である患部を、容易に識別することができる。これにより、正確且つ迅速な処置が可能となるのである。
(立体顕微鏡の構成)次に、上述した立体顕微鏡101(ハイビジョンCCDカメラ102を含む)の具体的な構成を、詳細に説明する。この立体顕微鏡101は、図5の斜視図に示すように、ハイビジョンCCDカメラ102が取り付けられた背面が扁平であり、且つ、表面(背面の反対側面)の両側縁が面取りされた略角柱形状を有する。そして、その上面の中央に、開口が円形の凹部101aが形成されている。この凹部101aの中心には、ライトガイドファイババンドル105の先端が挿通固定された円筒部材であるガイドパイプ122が挿入される挿入口(図示略)が形成されている。なお、この挿入口の開口に取り付けられた円環状の部材(ファイバガイド挿入部)123は、挿入口に挿入されたガイドパイプ122を固定するチャックである。
<光学構成>次に、立体顕微鏡101内の光学構成を、図6乃至図9を参照して説明する。図6は顕微鏡光学系の全体構成を示す斜視図、図7は側面図、図8は正面図、図9は平面図である。
【0026】顕微鏡光学系は、図6に示すように、被写体の像を電子的に撮影する撮影光学系200と、ライトガイドファイババンドル105により光源装置106から導かれた照明光により被写体を照明する照明用光学系300とから構成されている。
【0027】撮影光学系200は、全体として、前記のように、左右で共用される一つのクローズアップ光学系210、及び左右一対のズーム光学系220,230から構成される対物光学系と、この対物光学系により形成された被写体の一次像をリレーして被写体の二次像を形成する左右一対のリレー光学系240,250と、これらのリレー光学系240,250からの被写体光を互いに近接させる輻輳寄せプリズム260とを、備えている。
【0028】また、ズーム光学系220,230による一次像の形成位置には、視野絞り270,271がそれぞれ配置されており、リレー光学系240,250には光路を直角に偏向するペンタプリズム272,273が、それぞれ配置されている。
【0029】このような構成により、CCDカメラ102内に配置されたCCD116上の隣接した2つの領域に、所定の視差を持つ左右の被写体像を形成することができる。なお、光学系の説明においては、「左右」はCCD116上に投影された際にその撮像面の長手方向に一致する方向、「上下」はCCD116上で左右方向に直交する方向とする。以下、各光学系の構成を順に説明する。
【0030】クローズアップ光学系210は、図6、図7、図8に示すように、物体側から順に負の第1レンズ211と正の第2レンズ212とが配列して構成される。第2レンズ212は、光軸方向に移動可能であり、その移動調整により異なる距離の被写体に対して焦点を合わせることができる。すなわち、クローズアップ光学系210は、主要被写体(観察対象物)がその焦点位置に位置するように第2レンズ212が調整されるので、被写体からの発散光をほぼ平行光に変換するコリメート機能を果たす。このクローズアップ光学系210は、入れ子状に重ねられた複数の円筒(固定環,カム環,レンズ枠)から構成された公知のレンズ鏡筒1内に保持されており、このレンズ鏡筒1を構成するカム環がモータ等の駆動源又は手動で回転させることにより、第2レンズ212の光軸方向位置が上記したように調整される。
【0031】但し、クローズアップ光学系210を構成する第1,第2レンズ211,212自体は、その光軸と平行にこの光軸から若干外側にずれた位置を通る平面に沿って、その平面よりも外側のコバが切り欠かれている。従って、その光軸方向から見ると、その平面形状がいずれもDカットされた形状となっているので、その切欠面211a,212aとレンズ鏡筒1の内面との間には、略半円柱状の隙間が空いている。この隙間に、照明光学系300が、その光軸Ax4をクローズアップ光学系210の光軸Ax1と平行にして配置されている。なお、クローズアップ光学系210は、第1,第2レンズ211,212の切欠面211a,212aには反射防止の墨塗りがなされているものの、その切欠面211a,212a同士の間及びその前後には何らの遮光部材をも有していない。従って、照明光学系300を可能な限りクローズアップ光学系210の光軸Ax1に接近して配置することができる。
【0032】各ズーム光学系220,230は、クローズアップ光学系210からの無限遠結像の被写体光を視野絞り270,271の位置にそれぞれ結像させる結像光学系である。
【0033】一方のズーム光学系220は、図6〜図8に示すように、クローズアップ光学系210側から順に、正、負、負、正のパワーをそれぞれ有する第1〜第4レンズ群221,222,223,224により構成され、第1,第4レンズ群221,224を固定し、第2,第3レンズ群222,223を光軸方向に移動させてズーミングを行う。主に第2レンズ群222の移動により倍率を変化させ、第3レンズ群223の移動により焦点位置を一定に保つ。他方のズーム光学系230も、上記のズーム光学系220と同一構成であり、第1〜第4レンズ群231,232,233,234から構成される。
【0034】これらのズーム光学系220,230は、図10にその概略が示されるように、夫々、公知の構成を有するズーム鏡筒4内に保持されている。各ズーム鏡筒4,4の上端近傍及び下端近傍には、夫々、図示せぬカム環と一体に回転する環状ギア4a,4bが取り付けられている。このうちの上端側の環状ギア4aが、各ズーム鏡筒4,4に共通の駆動モータ2の駆動軸に取り付けられているピニオンギア3に噛合しているので、この駆動モータ2がその駆動軸を回転させることにより、各ズーム鏡筒4の図示せぬカム環が回転し、両ズーム光学系220,230が同期してズーミングする。その結果、左右の画像の撮影倍率が同時に変化させることが可能となる。
【0035】ズーム光学系220,230の光軸Ax2,Ax3は、クローズアップ光学系210の光軸Ax1に対して平行にオフセットして配置されている。但し、ズーム光学系220,230の光軸Ax2,Ax3は、クローズアップ光学系210の光軸Ax1に対して、互いに等距離となり且つDカット部の切欠面211a,212aからの距離が互いに等しくなる位置に、オフセットされている。そして、クローズアップ光学系210の光軸Ax1方向から見ると、クローズアップ光学系210の光軸Ax1と両ズーム光学系220,230の光軸Ax2,Ax3とが、光軸Ax1の位置を鈍角な頂点とした二等辺三角形をなすように配置されている。
【0036】なお、クローズアップ光学系210の直径,即ち、レンズ鏡筒1の内径は、ズーム光学系220,230の最大有効径と照明光学系300の最大有効径を内包する円の直径より大きく設定されている。従って、両ズーム光学系220,230の光軸は、このクローズアップ光学系210によって偏向され、クローズアップ光学系210の物体側焦点位置において互いに交わる。その結果、両ズーム光学系220,230の像側焦点位置には、所定の基線長を隔てた二位置から夫々同一物体を撮像して得たのと等価な像が、夫々形成される。
【0037】一方、照明光学系300は、被写体に照明光を投影する機能を有し、図6及び図7に示すように、ライトガイドファイバーバンドル105から射出する発散光の発散度合いを調整する照明レンズ群310と、照明範囲と撮影範囲とを一致させるための楔プリズム320とから構成されている。照明レンズ群310の光軸Ax4は、図7に示すようにクローズアップ光学系210の光軸Ax1と平行であり、かつ、所定量偏心しているため、このままでは照明範囲の中心と撮影範囲の中心とが一致せず、照明光量が無駄になる。そのため、楔プリズム320には、クローズアップ光学系210の像側焦点の平均位置においてその光軸Ax1と交わる様に照明レンズ群310の光軸Ax4の光軸を偏向させる楔角が与えられている。その結果、照明光量を無駄にすることなく、クローズアップ光学系210のピントが合わされて両ズーム光学系220,230による像形成がなされる観察対象物を、照明することができる。しかも、上述したように照明光学系300の光軸Ax4は、クローズアップ光学系210の光軸Ax1に対して極力接近して配置されているので、観察対象物から各ズーム光学系220に入射する光の主光線の方向と、照明光の方向とのズレは、比較的小さい。
【0038】なお、照明レンズ群310は、図11に示されるように、正のパワーを有する第1レンズ群311と負のパワーを有する第2レンズ群312とから構成されたズーム光学系である。これら両レンズ群311,312は、後述する構成を有するズーム鏡筒5に保持され、上述したようにして両ズーム光学系220,230のズーミングがなされると、これに連動して夫々光軸方向に移動して、その配光角を変化させる。その結果、両ズーム光学系220,230によって像形成がなされる画角の変化に従って、その画角内に含まれる観察対象物を良好に照明することができる。
【0039】視野絞り270,271は、ズーム光学系220,230により形成される一次像の位置(像側焦点位置)に配置されている。視野絞り270,271は、図6に示すように、外形が円形状で左右方向のそれぞれ内側に半円形の開口を有している。各視野絞り270,271は、この開口の直線状のエッジがCCD116上での左右画像の境界線に相当する方向に一致し、それより内側の光束のみを透過させるように配置されている。
【0040】前述のように、実施形態の顕微鏡は、左右の二次像を単一のCCD116上の隣接領域に形成させるため、CCD116上での左右の画像の境界を明確にして画像の重なりを防ぐ必要がある。このため、一次像の位置に視野絞り270,271が配置されている。半円開口の直線エッジをいわゆるナイフエッジとして機能させ、それより内側の光束のみを透過させることにより、CCD116上での左右の画像の境界を明確にすることができる。
【0041】なお、視野絞り270,271上に形成される一次像は、リレー光学系240,250により再結像されて二次像となり、一次像と二次像とでは上下、左右が反転する。したがって、一次像の位置で左右方向の外側を規定するナイフエッジは、二次像の位置では左右方向の内側、すなわち左右の画像の境界を規定することとなる。
【0042】リレー光学系240,250は、上述のようにズーム光学系220,230により形成された一次像を再結像させる作用を持ち、いずれも3枚の正レンズ群により構成される。
【0043】一方のリレー光学系240は、図6及び図7に示すように、単一の正メニスカスレンズから構成される第1レンズ群241と、全体として正のパワーを持つ第2レンズ群242と、単一の両凸レンズから構成される第3レンズ群243とから構成されている。このうち第1レンズ群241及び第2レンズ群242は、その全体としての物体側焦点をズーム光学系220による一次像の結像面(視野絞り271と同じ平面)に一定させている。また、第3レンズ群243は、第2レンズ群242から射出された平行光をCCD116の撮像面上に収束させる。そして、第1レンズ群241と第2レンズ群242との間には、光路を直角に偏向するペンタプリズム272が配置され、第2レンズ群242と第3レンズ群243との間には光量調節用の明るさ絞り244が設けられている。
【0044】他方のリレー光学系250も、上記のリレー光学系240と同一構成であり、第1、第2、第3レンズ群251,252,253から構成され、第1レンズ群251と第2レンズ群252との間には、ペンタプリズム273が配置され、第2レンズ群252と第3レンズ群253との間には明るさ絞り254が設けられている。
【0045】視野絞り270,271を通過した発散光は、リレー光学系の第1レンズ群241,251及び第2レンズ群242,252により再びほぼ平行光に変換され、明るさ絞り244,254を通過した後、第3レンズ群243,253により再度結像して二次像を形成する。
【0046】リレー光学系240,250とCCDカメラ102との間に配置された輻輳寄せプリズム260は、それぞれのリレー光学系240,250からの被写体光の左右の間隔を狭める機能を有する。立体視による立体感を得るためには左右のズーム光学系220,230、リレー光学系240,250の間には所定の基線長が必要である。他方、CCD116上の隣接した領域に二次像を形成するためには光軸間の距離を基線長より小さくする必要がある。そこで、輻輳寄せプリズム260により、リレー光学系の光軸をそれぞれ内側にシフトさせることにより、所定の基線長を確保しつつ同一CCD上への結像を可能としている。
【0047】輻輳寄せプリズム260は、図6及び図9に示すように、五角柱の左右対称な光軸シフトプリズム261,262を、0.1mm程度の隙間を開けて対向配置することによって、構成されている。
【0048】光軸シフトプリズム261,262は、図9に示すように、互いに平行な入射端面と射出端面とを備え、かつ、内側と外側とに互いに平行な第1,第2反射面を備えている。また、これらの光軸シフトプリズム261,262は、入射、射出端面や反射面に対して垂直な方向で平面的に見ると、平行四辺形の鋭角の頂角の一方を射出端面に直交する線で切り取って形成された五角形状である。
【0049】リレー光学系240,250からの被写体光は、各光軸シフトプリズム261,262の入射端面から入射し、外側の反射面で反射されて左右方向で内側に向けられ、内側の反射面で再び入射時と同じ光軸方向に反射され、射出端面から射出してCCDカメラ102に入射する。この結果、左右の被写体光はその進行方向を変えずに左右の間隔のみが狭められ、同一のCCD116上に二次像を形成する。
<光学系保持機構>次に、上述した照明光学系300を保持するズーム鏡筒5の構成を、詳細に説明する。図11は、図10におけるズーム鏡筒5(実践で図示)及びクローズアップ光学系210の周辺部分を拡大して示す縦断面図であり、照明光学系300の光軸Ax4とクローズアップ光学系210の光軸Ax1とを含む面に沿った縦断面を示す。また、図12は、図11の断面にて切断されたズーム鏡筒5の斜視図である。また、図13は、ズーム鏡筒5の側面図であり、図14は、一部に縦断面を含むズーム鏡筒5の透視図である。
【0050】これら各図に示されるように、ズーム鏡筒5は、双眼顕微鏡101の筐体に対して固定された円筒状の固定環(第1環)51と、この固定環51の外周面に回転自在に嵌められた円筒状のカム環(第2環)52と、第1レンズ群311をその内部に保持するとともに固定環51の内部において光軸方向に進退可能に嵌挿された第1レンズ移動枠(レンズ枠)53と、第2レンズ群312をその内部に保持するとともに固定環51の内部において光軸方向に進退可能に嵌挿された第2レンズ移動枠(レンズ枠)54と、その内部に楔プリズム320を保持するとともに固定環51の下端にねじ込まれて固定されたプリズム保持枠55と、カム環52の上端近傍の外周面に回転不能に填め込まれたカムギア56とを、主要な構成部品としている。
【0051】上記固定環51の上端には、図5に示されたファイバガイド挿入部123に固定されたライトガイドファイババンドル105のガイドパイプ122の先端が、同軸に挿入される。このようにして挿入されたガイドパイプ122の先端を保持するために、固定環51の上端近傍の内面は、そのガイドパイプ122の外径とほぼ同じ内径の受け部51aとして、形成されている。また、この受け部51aが形成された固定環51の上端面は、ファイバガイド挿入部123を通して挿入されたガイドパイプ122の先端を受け部51aの開口にガイドするために、すり鉢状に形成されている。
【0052】また、固定環51の外周面における下端近傍には、カム環52の下端に当接してその位置決めを行うフランジ51cが突出形成されており、このフランジ51cよりも端部側に、プリズム保持枠55をねじ込むための雄ネジ51bが形成されている。
【0053】また、固定環51の外周面におけるカム環52が填められた部分よりも上端側は、カム環52が填められた部分の外径よりも若干小径に形成されている。この小径部分における大径部分との段差近傍には、カム環52の脱落を防止するための係止環57が、ねじ込み固定されている。これにより、カム環52は、固定環51に対して回転可能且つ軸方向に進退不能となっている。
【0054】なお、固定環51におけるカム環52が填められた領域には、第1レンズ移動枠53の移動範囲を規定するために固定環51の中心軸と平行に延びたスリット状の第1案内溝51dが、周方向において一箇所形成されている。固定環51におけるカム環52が填められた領域には、また、第2レンズ移動枠54の移動範囲を規定するために固定環51の中心軸と平行に延びたスリット状の第2案内溝51eが、周方向において等角度間隔(120度づつ)で3箇所、形成されている。
【0055】カム環52における第1案内溝51dと接する範囲には、この第1案内溝51dに対して斜めに交差するスリット状の第1カム溝52aが、約360度に亘って螺旋状に形成されている。また、カム環52における各第2案内溝51eと接する範囲には、各第2案内溝51eに対して斜めに交差するスリット状の第2カム溝52bが、約360度に亘って螺旋状に形成されている。なお、この第2カム溝52bは、第2案内溝51eが等角度間隔で3箇所に形成されているのに合わせて、カム環52の中心軸に対して等角度間隔で3本形成され、三重螺旋状に配置されている。従って、カム環52を固定環51に対して回転させると、第1案内溝51dと第1カム溝52aとの交点,及び、各第2案内溝52eと各第2カム溝52bとの交点が、夫々、軸方向において互いに同じ向きに移動する。但し、その移動速度は、各カム溝52a,52bの各案内溝51d,51eに対する傾斜角(リード角)に依存するので、第1案内溝51dと第1カム溝52aとの交点の移動速度は遅く、各第2案内溝52eと各第2カム溝52bとの交点の移動速度は早い。
【0056】第1レンズ移動枠53の外周面には、第1案内溝51dと第1カム溝52aとの交点を貫通する一個の駆動ピン58が、植設されている。また、第2レンズ移動枠54の外周面における同一円周上には、各第2案内溝52eと各第2カム溝52bとの交点を夫々貫通する3個の駆動ピン59が、その中心軸に対して等角度間隔で植設されている。従って、上述したようにカム環52を固定環51に対して回転させて、第1案内溝51dと第1カム溝52aとの交点,及び、各第2案内溝52eと各第2カム溝52bとの交点を移動させると、各交点を夫々貫通している各駆動ピン58,59がこの交点の移動に従って軸方向に駆動され、各駆動ピン58,59と一体の第1レンズ移動枠53及び第2レンズ移動枠54が、各駆動ピン58,59に引かれて、固定環51内をその軸方向に移動する。
【0057】なお、各駆動ピン58,59の外周には、各溝51d,52a,51e,52bとの摺動摩擦を低くするために、ローラが回転自在に填められている。また、各駆動ピン58,59の外端面は、カム環52の外周面よりも内側に位置している。
【0058】以上のように構成されているため、固定環51の内面とカム環52の外面との間は、各案内溝51d,51eと各カム溝52a、52bとの交点によって多数箇所において連通している。そのため、固定環51内部を通る照明光が、これら交点を通じて外に漏れるおそれがある。この光の漏れを防止するため、カム環の外面には、そのほぼ全域(但し、カムギア56を除く)に亘って遮光シート60が貼り付けられている。この遮光シート60は、50μ程度の厚さの黒色PET(polyethylen terephthalate)のシートの表面に反射防止を目的とした微細均一な樹脂(サテン塗料)をコーティングしてなる反射防止材である。この遮光シート60としては、例えば、ソマール株式会社製の「ソマブラックNR(商品名)」を用いることができる。そして、この遮光シート60は、その裏面に塗布されたアクリル系の粘着層により、カム環52の外面に貼り付けられている。
【0059】カム環52の上端に固定されたカムギア56は、図10に示す一方のズーム光学系220のズーム鏡筒4の環状ギア4bに対して、図示せぬギア列を介して噛合している。従って、上述したようにして、各ズーム光学系220,230のズーム鏡筒4がモータ2によって回転されて、各ズーム光学系220,230がズーミングすると、一方のズーム鏡筒4のカム環に連動してズーム鏡筒5のカム環52が回転し、その結果、上述したように各レンズ移動枠53,54が駆動され、照明レンズ群300のズーミングがなされる。従って、ライトガイドファイババンドル105を通じて導入された照明光は、このようにズーミングがなされた照明レンズ群300を透過し、そのズーミングによって調整された配光角にて拡散されつつ、楔プリズム320を透過する。そして、この楔プリズム320によって屈折されることによって、クローズアップ光学系210の光軸上に存在する観察対象物を、照明するのである。
【0060】このようにしてズーム鏡筒5内を通る照明光は、遮光シート60によって遮光されて、その側面から外に漏れることがない。従って、この照明光が迷光として撮影光学系200(クローズアップ光学系210)内に入り込むことはない。しかも、この遮光シート60の表面には反射防止コーティング(サテン塗料コーティング)がなされているので、クローズアップ光学系210から漏れた光が反射して、迷光としてクローズアップ光学系210に戻ってしまうこともない。
【0061】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の顕微鏡によると、照明光学系の光軸が対物光学系の光軸に対して極力接近した光学構成を有すにも拘わらず、照明光学系のレンズを移動可能に保持する鏡筒内から照明光が漏れて対物光学系内に迷光として入り込むことがないので、迷光によって映像品質が劣化することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態によるビデオ型立体顕微鏡を組み込んだ手術支援システムの全体構成を示す概略図
【図2】 ビデオ型立体顕微鏡内の光学構成の概略を示す光学構成図
【図3】 ビデオ型立体視ビューワの光学構成の概略を示す光学構成図
【図4】 LCDパネルの平面図
【図5】 立体顕微鏡の外観斜視図
【図6】 顕微鏡光学系の全体構成を示す斜視図
【図7】 顕微鏡光学系の全体構成を示す側面図
【図8】 顕微鏡光学系の全体構成を示す正面図
【図9】 顕微鏡光学系の全体構成を示す平面図
【図10】 ビデオ型立体顕微鏡の筐体内における各鏡筒の配置を示す透視図
【図11】 図10における照明光学系のズーム鏡筒周辺の拡大断面図
【図12】 図11の断面にて切断されたズーム鏡筒の斜視図
【図13】 ズーム鏡筒の側面図
【図14】 ズーム鏡筒の透視図
【符号の説明】
1 鏡筒
5 ズーム鏡筒
51 固定環
51a 第1案内溝
51b 第2案内溝
52 カム環
52a 第1カム溝
52b 第2カム溝
53 第1レンズ移動枠
54 第2レンズ移動枠
58,59 駆動ピン
60 遮光シート
116 CCD
200 撮影光学系
210 クローズアップ光学系
220,230 ズーム光学系
300 照明光学系
310 照明レンズ群
311 第1レンズ群
312 第2レンズ群
320 楔プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】ズームレンズからなる結像光学系と、この結像光学系の前方においてこの結像光学系の光軸に対してその光軸が略平行にオフセットするように配置されているとともにその光軸に関して前記結像光学系の光軸とは反対側に切欠面が形成されているクローズアップ光学系と、このクローズアップ光学系の切欠面に近接して配置された鏡筒内においてその光軸が前記クローズアップ光学系の光軸と略平行になるように保持されているととも光源からの光を前記クローズアップ光学系の前方に向けて配光する照明光学系とを有する顕微鏡において、前記照明光学系を保持する鏡筒は、その前端側から後端側に向けてスリット状の第1溝が形成された第1環と、この第1環の外側においてこの第1環に対して相対回転可能に填められているとともに、前記第1溝に対して斜行したスリット状の第2溝がその前端側から後端側に向けて形成された第2環と、前記第1環及び第2環の内部において前記照明光学系を構成するレンズを保持するとともに、前記第1溝と第2溝との交点に挿し込まれた駆動ピンを一体に有するレンズ枠と、前記第2溝を塞ぐために前記第2環の外面に設けられた遮光部材とを備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】前記第1環が固定されており、前記第2環が回転駆動されることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。
【請求項3】前記第1溝は前記照明光学系の光軸と平行に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の顕微鏡。
【請求項4】前記レンズ枠は、前記第1枠内に填ることによって前記第1枠内に保持されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項5】前記照明光学系は、複数のレンズ群からなるズームレンズであり、前記レンズ枠,前記第1溝及び前記第2溝は、前記ズームレンズ中の移動レンズ群毎に対応して備えられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項6】前記遮光部材はシート状であって、前記第2環の外面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。
【請求項7】前記遮光シートの外面には反射防止コーティングが施されていることを特徴とする請求項6記載の顕微鏡。
【請求項8】前記クローズアップ光学系の切欠面は、その光軸と平行な平面として形成されていることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。
【請求項9】前記結像光学系が一対備えられていることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2000−338415(P2000−338415A)
【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−150836
【出願日】平成11年5月31日(1999.5.31)
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】