説明

風力発電装置と送電システムとの間の電力制御インターフェース

風力発電装置のような不安的な電源と送電線との間の電力制御インターフェースが、電気エネルギー貯蔵部、制御システム、及び電子補償モジュールを用い、これらは協働して発電増加時に過剰な電気出力を貯蔵し、風力の変動による発電減少時に貯蔵されたエネルギーを放出するための「電子緩衝装置」のように働く。制御システムには、電気出力(風速状態)を予測し、短時間変動がある場合にも「狭帯域」範囲にわたってエネルギー貯蔵又はエネルギー放出を維持するための「ルックアヘッド」能力が提供される。制御システムは、風力発電装置の電気出力及び送電線の監視から得られたデータを使用し、システム・モデリング・アルゴリズムを用いて、狭帯域の風速状態を予測する。電力制御インターフェースはまた、エネルギー貯蔵能力を用いて、送電システムに注入する時の電圧サポート、及び該送電線で生じる一時的な故障状態を「ライドスルー」するための故障除去能力を提供することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電源と送電システムとの間の電力制御インターフェースに関し、より具体的には、風力発電装置のような不安定な電源の電気出力と送電グリッドとの間のインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
風力駆動の風車(タービン)を用いる発電は、良好な風力資源を有し、風力により生成された電力を局所的な送電システム(「グリッド」と呼ばれることが多い)に付加することにより利益を受ける領域に使用することができる。しかしながら、風力タービンは、風力状態によって変動する比較的不安定な電源であり、適切に接続して、グリッドに不安定性を引き継ぐことを回避しなければならない。サポートが弱い送電線又は比較的小規模の送電システム(孤立した領域又は島の場合のような)は、風力資源の突風及び乱れ性質のために、基幹送電システムの電圧及び周波数の両方を不安定なものにする。相互接続された頑丈な送電システムにおいてさえ、こうした不安定性が、システムを通して伝播する乱れを引き起こすことがある。
【0003】
風は、風力発電装置の領域によって速度が変わり、時間の変化につれて個々の風力発電装置と相互に作用するので、及び/又は気候の集団を通ることによって風の乱流が発生するので、風力発電装置のエネルギー出力が非常に迅速に(1秒又はそれより短い時間にわたって)変わることがある。風力発電装置のエネルギー出力のこの変化は、該風力発電装置が接続されている送電グリッドの周波数及び電圧の両方の変化に反映される。極端な場合には、これらの変動が、風力発電装置を送電システムから切り離すのに必要な程十分大きいものになることがあり、これは単に風力エネルギーの無駄遣いである。こうした状態は、発電時にのみコストが回収される風力発電装置に強い経済的影響を及ぼす。あまり極端でない状態のもとで、方向の変わる風は、1−2分間にわたって、送電システムの低レベルの電圧及び周波数の乱れに反映されるエネルギー・サージを発生させる。
これらの環境の下で送電システムの安定性を維持するために、従来より、燃焼式発電機又は「熱」発電機のような、より大容量のより安定した発電ユニットを有する不安定な電源を負荷追従することに、補償が与えられる。しかしながら、長期にわたって変動をシステム内に吸収するので、こうした負荷追従が、これらの他のユニットを内部の機械的及び熱的疲労に過度に曝すことがある。この疲労は、高い作業コスト及び維持コストの両方を付加し、ユニット全体の耐用年数を短くする。
【0004】
相互接続時に、電源に送電グリッドに対する電圧サポートを提供させることも望ましい。こうした電圧サポートは、電力注入時に、電源が、送電線上の電圧又は周波数変動の減衰に寄与することを可能にする。近年、電圧及び/又は位相角の点で異なる電力オフセットを送電システムに注入することによって送電における変動を補償するように、電力潮流コントローラが開発された。電力潮流コントローラの1つのタイプの例が、Gyugyi他に付与された米国特許第5,808,452号に記載されており、この特許は、送電線と並列に接続された第1の静的インバータによって生成されたDC電圧を用いるDC・DC変換器を用いて並列無効補償を提供し、第2の静的インバータによって送電線に注入された一連の補償電圧の大きさを確立する。しかしながら、通常、連続的な補償制御のための種々の技術は、通常、以下の実際的な欠点、すなわち回路の複雑さ及びコストの増加、損失の増加、及び高調波成分の増加と関連している。
【0005】
送電グリッドにおける変動は、電源と該グリッドの相互接続にも影響を与えることがある。送電線上の一時的な停電又はフラッシュオーバーのような一時的な状態により、グリッドに接続された電源が安全回路によって自動的に切断されることがあり、よってこの一時的な状態が経過すると、該電源を該グリッドに再接続するために、再閉路装置又は他のタイプの継電装置を必要とする。風力発電装置のような小規模電源の場合には、再閉路装置又は中継装置を付加することにより、システムに望ましくない付加的なコストが加えられる。風力発電装置が主要な発電源(全電力の5%より上)である島のグリッド又はサポートが弱い相互接続されたグリッドのような小規模の電力システムの場合には、故障の除去(故障をライドスルー(ride through)すると言われる)後、該風力発電装置を該グリッドに即座に再接続できない場合には、周波数低下のためにグリッド全体を停止させるのに十分な発電/負荷の不均衡があり得る。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明の主要な目的は、風力発電装置のような不安定な電源の出力と送電線との間に、風力発電装置の電力変動を分離させ、風力状態が変化する時に電圧又は周波数の不安定性がグリッドに注入されるのを防止する電力制御インターフェースを提供することである。このことは、比較的簡単に低コストで達成され、送電システムにおける風力発電装置の短期及び長期両方の電力変動の影響を制御するのに高度に有効であることが特に望ましい。本発明の別の目的は、電源から電気出力を注入する時に、電力制御インターフェースに送電線への有効な電圧サポートを提供させることである。本発明の更に別の目的は、電力制御インターフェースが、送電線上の一時的な故障状態を「ライドスルー」するための故障除去能力を提供すること、すなわちシステムに再閉路装置又は継電器回路を付加する必要なしに、一時的な故障状態の際に、電気出力をグリッドに接続したままにするのを可能にすることである。
【0007】
本発明によると、風力発電装置のような不安的な電源の電気出力と送電線との間の電力制御インターフェースが、
(a)不安定な電源と前記送電線との間に接続され、該不安的な電源の通常の出力レベルより上であるときに過剰な電気出力を貯蔵し、該不安的な電源の該通常の出力レベルより下であるときに貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を追加する電気エネルギー貯蔵部と、
(b)不安定な電源の電気出力の監視から得られた電源データ信号と送電線の監視から得られた送電線データ信号とを受信し、いつ電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を該送電線に追加し、該不安定な電源が遭遇した発電減少状態を補償すべきか、又は該不安定な電源が発電の増加に遭遇した時に、いつ過剰な電気エネルギーを該電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵すべきかを決定する制御システムと、
(c)その決定に対応する制御システムからの制御信号を受信し、電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵された電気エネルギーを放出して、電気出力を送電線に追加し、電源出力の減少を補償し、該決定に従って該電気エネルギー貯蔵部内の電源出力の増加による過剰の電気エネルギーを貯蔵するように作動する電子補償モジュールと、
を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施形態においては、AC・DCインバータによって風力発電装置のAC電気出力を直流(DC)に変換して、DCコンデンサ・アレイ、ウルトラキャパシタ、又はバッテリ内に貯蔵することができる。電気エネルギー貯蔵部は、電子補償モジュールによって「電子緩衝装置」のように作動するように制御され、風力発電装置の電気出力が一時的にその通常範囲より下に下がったときのエネルギー源としても、該風力発電装置からの電気出力が一時的にその通常範囲より上に増加したときのエネルギー・シンクとしても働く。この「緩衝」機能は、風力発電装置の電気出力変動全体を滑らかにし、周波数及び電圧の不安定性を送電システムに注入するのを防止する効果を有する。電子補償モジュールは、風力発電装置の電気出力が一時的に範囲の下に下がったときに電気出力を貯蔵し、該電気出力が一時的に範囲の上に増加したときに電力を送電システムに放出するために、エネルギー貯蔵部の入出力端部上の一対の補完的「ゲート」にフィードバック信号を送出することによって、制御システムからの制御信号に応答する。
【0009】
制御システムには、風速状態を予測し、風力変動が短時間又は僅かな速度変化の狭帯域におけるものである場合と一致するモードでエネルギー貯蔵部を保持するための「ルックアヘッド」能力も提供され、リアルタイム状態に対するシステムの応答におけるタイムラグに起因する同期していない応答を回避する。制御システムは、風力発電装置の電圧、電流、電力、及び周波数出力についての情報を表す風力発電装置の電気出力から得られたデータ信号と、送電線の監視から得られた同様の情報を受信する。制御システムは、風力発電装置出力の履歴データ、その場所から取られた度量衡データ、及び一時間後及び一日後の風力状態の度量衡予測に基づいたシステム・モデリング・アルゴリズムを用い、該アルゴリズムの計算による風力発電装置からの現在の出力情報を比較し、狭帯域の風速状態を予測する。この情報に基づいて、制御システムは、制御信号を電子補償モジュールに送信し、エネルギー貯蔵部からエネルギーを放出して送電線に注入される出力を増加させるモードか、又は狭帯域の風速変化時に電気出力を送電線に追加することなくエネルギーをエネルギー貯蔵部内に貯蔵するモードにとどまる。
【0010】
電力制御インターフェースはまた、送電システムの安定性の必要性によって有効電力又は無効電力のいずれかを提供するために、DC電力をAC電力に変換し、該AC電力を適切な電圧及び位相角で送電線に注入するパワー・エレクトロニクスを用いることによって該送電システムのための電圧サポートを提供できる。電力制御インターフェースはまた、エネルギー貯蔵部を適切な大きさにし、送電線上で生じる一時的な故障状態を「ライドスルー」するのを可能にするように該エネルギー貯蔵部を制御することもできる。このことは、風力発電装置の出力を実質的電源とすることができ、或いは他の電源を弱く相互接続し、一時的な停電時に失わせる(切断する)ことができる総容量の小さい島のグリッド・システムに特に有用である。
本発明の他の目的、特徴、及び利点が、添付の図面に関連して本発明の以下の詳細な説明に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
風力発電装置のような不安定な電源の電気出力と該不安定な電源が接続される送電線との間の電力制御インターフェースの好ましい実施形態が、以下に説明される。例示的な実施形態は、「電子緩衝装置」として働く電力制御インターフェースの機能を示し、この電力制御インターフェースは、電気エネルギー貯蔵とパワー・エレクトロニクスの組み合わせを用いて送電システムを風力発電装置のエネルギー変動から分離させ、送電システムへの注入時に該風力発電装置がラインの電力の乱れを補償することも可能にする。したがって、電子緩衝システムは、グリッドへの風力発電装置の寄与の全容量係数を増加させ、注入時に電圧サポートを提供し、送電システム全体の安定性を改善することができる。本発明は、再生可能な発電源として風力エネルギーの幅広い使用を妨げてきた3つの主要な問題への固有の解決法を提供するものである。
【0012】
図1を参照すると、(図面の点線内の、「電子緩衝装置」と呼ばれる)本発明の電力制御インターフェースが、風力発電装置の風車発電装置からの通常の60ヘルツ(サイクル)のAC電気出力(入ってくる電気出力)と該風力発電装置から送電グリッドに電気出力(出ていく)を伝えるAC送電線との間に接続されている。電子緩衝装置の主要な3つの部品が、「エネルギー貯蔵部」、「制御システム」、及び「電子補償モジュール」と表記される。エネルギー貯蔵部は、風力発電装置の電気出力と送電線との間に接続される。制御システムは、風力発電装置の電圧、電流、電力、及び周波数出力についての情報を提供する、該風力発電装置の電気出力の監視から得られる風力発電装置・データ信号と、送電線についての同様の情報を提供する、送電線の状態の監視から得られる送電線データ信号とを受信する。風力発電装置・データ信号及び送電線データ信号に基づいて、制御システムは、制御信号を電子補償モジュールに提供して、基準を超える風力発電装置の発電の増加からの過剰なエネルギーを貯蔵するか、又は送電線にエネルギーを放出して基準を下回る風力発電装置の発電を補償する。電子補償モジュールは、図面内で「充電コントローラ」及び「放電コントローラ」と呼ばれているエネルギー貯蔵部の入力端部及び出力端部上にある一対の補完的な「ゲート」にフィードバック信号を送出することによって、制御システムからの制御信号に応答する。これらは、エネルギー貯蔵部から貯蔵されたエネルギーを放出して風力発電装置の発電の減少を補償する機能、又は発電の増加時に電気エネルギーをエネルギー貯蔵部に付加する機能のいずれかを有する。制御システムは、「ルックアヘッド」機能(以下にさらに説明される)におけるシステム・モデリング・アルゴリズムを用いて、風力発電装置の予測される電気出力変動を予測し、電力変動が「狭帯域」の短時間の変化である場合に、エネルギー貯蔵部への電力の貯蔵、又は該エネルギー貯蔵部からのエネルギーの放出を制御する。
【0013】
エネルギー貯蔵部の容量は、一般的に所定の風力発電装置において遭遇する電力変動に適合させるのに十分な容量、及び一時的な故障状態を「ライドスルー」し、かつ保存するための付加的な容量を有するように、コスト考慮事項と均衡するような大きさにされる。貯蔵容量は比較的高価なので、容量は、風力発電装置を接続する電力システムの安定性のための限界条件に対し、一般に予測される最大パワーエクスカーションの約1.5倍となるような大きさに作られる。グリッドの安定性、許容可能なランプ速度(上下する)、故障のライドスルーのための必要性、1分以下の電力変動許容範囲、及びシステムの貯蔵部品を正確な寸法に作るための詳細な風力レジーム特性に与えられる考慮事項を用いて、電子緩衝装置の特定の用途の各々について、詳細な計算を行わなければならない。
【0014】
電子補償モジュールによって制御されるエネルギー貯蔵部は、風力発電装置出力における電圧及び周波数の変化をオフセットし、以下のように送電システムへの電気出力変動を減少させる。例えば、風力発電装置の電気出力が急激に低下する際には、電子補償モジュールによってエネルギー貯蔵部を作動させ、エネルギーを放電し、該風力発電装置のエネルギー出力の何らかの不足を補う。反対に、風力発電装置の電気出力が急激に増加する際には、制御システムは、エネルギー貯蔵部に充電を行わせ、これにより、エネルギー貯蔵部から送電システムまで風力発電装置の電気出力を追加することが阻止される。この補償は、送電システム上の周波数及び電圧変動全体を滑らかにする効果を有する。電力制御インターフェースの目的は、送電システムへの風力発電装置の電気出力を滑らかにすることであり、多くの風力発電装置・システムには普通のことであるような、オフピーク時に用いるためのエネルギー貯蔵を提供することではないことに留意すべきである。このエネルギー貯蔵システムの特有の性質、目的及び制御のために、その容量を、数十秒の風力発電装置の電気出力に相当するエネルギー貯蔵に制限することができる。この比較的小さい貯蔵容量は、電子緩衝装置の寸法及び資本コスト全体を著しく減少させる。
【0015】
変動が、通常の設計定格風力速度範囲から大きく増減し(例えば、10%より多く)、設計定格時間窓(例えば、6秒から10秒まで)を超えて延長するときに、電気出力変動を滑らかにするために電子緩衝装置が自動的に作動されるが、風力変動が急激であるか(例えば、5秒間より短い)又は僅かな変化(通常の電気出力範囲の10%より少ない)である場合には、電子緩衝装置を自動的に作動させることがあまり有効ではなくなる。これは、制御システムの応答が、リアルタイム状態に対して特定のタイムラグ(例えば、0.1秒から0.2秒まで)を有し、自動的エネルギー放出/貯蔵を伴う作動がそのラグを変えるためであり、実際の風速条件により、電子補償モジュールは、エネルギー貯蔵部に、実際の風速が下がるときにエネルギーを貯蔵させ、実際の風速が上がるときにエネルギーを放出させる。このタイプの非同期条件は、システムの効率全体を減少させ、及び/又は電力変動を送電システムに導入する。これらの狭帯域の変動を滑らかにするため、電力制御インターフェースに、「ルックアヘッド」能力が与えられ、狭帯域範囲内の起こり得る風速条件を予測し、電力の短時間又は僅かな変化がある場合にも、予測される風速条件と一致するモードにエネルギー貯蔵部を維持する。
【0016】
図2により大きく詳細に示されるように、制御システムの好ましい実施形態が、故障の監視、電圧の大きさ、電流の大きさ、及びVARのばらつき(ボルトアンペア無効電力)を含むAC送電線の状態を監視することから得られた信号を処理し、送電データ信号を主制御計算機に提供する制御信号計算機を有する。風力発電装置のデータ信号は、1分以下の負荷制限計算機及び風力発電装置の出力を監視するランプ速度制限計算機、並びに風速監視データ及び履歴風力プロフィール・データに基づいた風力予測制御信号の複合物である。ここで用いられる「計算機」という用語は、対応する出力信号を決定し、創出するために、プログラムされた規則、段階、及び/又はアルゴリズムに従って入力信号を処理するための何らかの手段(例えば、マイクロプロセッサ)を言う。これらの入力に基づいて、制御計算機は、制御システム出力に適した制御信号を決定する。風力予測制御信号は、短時間の風力発電装置電気出力変動に対するシステムの応答を減衰させるために、現在の発電状態が、該風力発電装置の通常の電気出力より上に上がるか、該通常の電気出力より下に下がるかを判断するための予測アルゴリズム(以下に説明される例)に従って決定される。制御システム出力が電子補償モジュールに与えられ、エネルギー貯蔵部を狭帯域の変動の範囲内の予測される電気出力と一致するモードに維持する。
【0017】
狭帯域の変動中の電気出力分析モジュールの「ルックアヘッド」機能についての関連する入力の例が、以下の表Iに与えられる(実際のデータは、特定の場所のために作られたものである)。
表I

【0018】
制御システムは、現在の風力発電装置状態及びAC送電線の状態についての上記のタイプの情報を受信し、狭帯域範囲の変動内の電気出力を予測するためのルックアヘッド機能を提供する。一例として、制御システムは、状態推定器として働くように特定のシステム・モデリング・アルゴリズムを用い、過剰の発生エネルギーを貯蔵するか、又は狭帯域の風速変化時に貯蔵されたエネルギーを送電システムに放出するかどうかを決定する。この状態推定を用いて、適切な制御信号を電子補償モジュールに提供する。「ルックアヘッド」機能の予測決定のために用いることができるシステム・モデリング・アルゴリズムの例が、以下の表IIに与えられる。
表II
1.現在の一日平均風速>110%通常の(設計定格)風速範囲であるか、
又は、
現在の一日平均風速<90%通常の風速範囲である場合には、
エネルギー貯蔵が放出/貯蔵を自動的に動作させることを可能にする。
2.90%<現在の一日平均風速<110%通常の風速範囲であり、
及び
現在の日中タイプ=履歴日中タイプ及び履歴風速>通常の範囲である場合には、
エネルギー貯蔵部ゲートを貯蔵モードに入れる。
3.90%<現在の一日平均風速<110%通常の風速範囲であり、
及び
現在の日中タイプ=履歴日中タイプ及び履歴風速<通常の範囲である場合には、
エネルギー貯蔵部ゲートを放出モードに入れる。
.故障状態が送電線データ内に検出された場合には、
エネルギー貯蔵部ゲートを放出モードに入れる。
故障除去の場合)
【0019】
図3において、電力制御インターフェースにおける「緩衝装置」として用いられるエネルギー貯蔵回路の簡単化された例が図示される。エネルギー貯蔵回路は、制御システムから受信した制御信号に応答して電子補償モジュールからの信号によって制御されるダブルアクションゲートのように働く充電コントローラ及び放電コントローラによって制御される。図示されるエネルギー貯蔵回路は、入ってくるAC電力を貯蔵し、出ていくAC電力を放出することができるウルトラキャパシタのアレイを含む。電気出力を段階的にウルトラキャパシタ内に貯蔵するために、インバータとして働く多数の段階(ここでは3段階)の補完的サイリスタが用いられる。このサイリスタは、ゲートドライバGDによって制御される。エネルギー貯蔵回路が充電コントローラから「充電」信号を受信すると、入力電力は、入力LC回路を通され、エネルギーを増加させて貯蔵する。ウルトラキャパシタから電力を放出するために、一段階の補完的サイリスタが用いられる。放電コントローラから「放電」信号を受信すると、出力変圧器回路を通して出力サイリスタによりエネルギーが放出される。エネルギー貯蔵部からの電力放出は、制御システムからの制御信号が放出モードを指定する限り継続される。
【0020】
回路内に含まれるウルトラキャパシタの数及び容量は、所望される緩衝能力対貯蔵コストの兼ね合いに基づいて決定される。エネルギー貯蔵の充電レベルが総容量に達したときには、充電コントローラが過剰な電力をもとの主電気出力ノード(エネルギー貯蔵部が充填される)に移行させる。システムに異常をきたすことなく、電力貯蔵及び放出の滑らかな移行がなされるように、エネルギー貯蔵回路が選択される。代替的なエネルギー貯蔵回路として、AC・DC変換器によってAC風力発電装置出力を直流(DC)に変換することができ、DCコンデンサ又はバッテリ貯蔵ユニットのアレイによってエネルギーが貯蔵される。
【0021】
本発明の電気出力インターフェースの緩衝機能は、風力発電装置の電気出力を、過剰な発電期間中に貯蔵し、発電減少時にAC送電線に注入される電力を補足するように放出するというものである。風力発電装置出力(風速及び強風状態)が、短時間にわたって大きく変わることがあるので、電力制御インターフェースは、電気出力の予測機能を用いて、短時間変動がある場合にもエネルギー貯蔵モード又はエネルギー放出モードを維持する。典型的な風力発電装置の電気出力の高い変動性の例が、図4に示される(秒単位の時間尺度の場合、3600秒が1時間に相当する)。
【0022】
電子緩衝装置は、風力発電装置が送電システムの強化を助けること、すなわち送電システムのどこか他の場所で生じる電力問題に対して電圧サポートを提供することも可能にする。熱的に制限されている、すなわち限られた安定燃焼式電源を有する比較的弱い送電システムでは、送電システムにおいて適切な電圧及び位相角を維持することが困難であることが多い。電力が正しい方向に流れることを確実にすることは、臨界点において無効電力(ボルトアンペア無効電力−VARで測定される)をタイムリーに注入し、注入時の電圧をサポートすることによって決まる。電子緩衝装置は、エネルギー貯蔵部に貯蔵されたエネルギーを使用し、風力発電装置の相互接続電気出力を調整し、領域における送電システムの電圧をサポートするのに必要とされるより多くのVARを供給する。同様に、相互接続された送電システムのどこか他の場所で電力の乱れが生じたときには、電子緩衝装置が迅速に反応し、乱れの減衰を助けることができる有効電力(ワットで測定される)を一気に供給することができる。
【0023】
電圧サポートを提供するために、電力制御インターフェースは、貯蔵された電力を電流又は位相角オフセットに変換し、相互接続時に送電線に注入する任意のパワー・エレクトロニクス・モジュールを含むことができる。このことは、電力制御インターフェースが、送電システムの安定性のニーズにより有効電流又は無効電流のいずれかを提供することを可能にする。適切な位相角の電流を送電線に注入する絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)技術に基づいた多極式インバータである「静的分散補償器」(D−STATCOM)として電力産業において周知のものに類似したパワー・エレクトロニクス回路によって、この能力を提供することができる。D−STATCOM技術は、Electric Power Research Institute(EPRI)によって発行されたEPRI Journal 21巻、第3、6−15ページ(1996年5月/6月)における、John Douglas著「Custom Power:Optimizing Distribution Services」にさらに詳細に説明されており、これを引用によりここに組み入れる。電圧サポート能力は、制御システムが送出したデータ信号を、送電線データ信号から得られた送電線上の電流電圧レベル及び位相角を示すD−STATCOMパワー・エレクトロニクス回路に入力させることによって容易に実施することができ、これにより、D−STATCOMパワー・エレクトロニクス回路が、送電線に注入するために必要なオフセットを生成し、電力の乱れを補償することが可能になる。
【0024】
電子緩衝装置内に貯蔵されたエネルギーは、風力発電装置が送電システム上の故障を除去できるライドスルー能力も提供することができる。典型的には、送電システム上に漏電が生じたときには、保護継電器を用いて送電線からの電源の接続を開始し、所定の間隔(一般的には6−36サイクル)の間だけその機械システムのサージを防止し、次いで再閉路する。電力線に接触している木の大枝といった大部分の漏電は、その間隔内のフラッシュオーバーによって除去される。しかしながら、その期間中に、継電器及び再閉路装置が装備された風力発電装置を、それ自体の保護装置によって送電システムから切り離すことができ、これにより小型(島型)送電システムにおける電力損失問題が潜在的に悪化し、顧客に電力損失がもたらされる。電子緩衝装置は、フラッシュオーバー間隔を「ライドスルー」するエネルギー貯蔵能力を用いるように構成することができる。このことにより、継電器及び再閉路装置が装備された風力発電装置の相互接続点への必要性がなくなり、代わりに、送電システム上の電力の瞬間的損失を補償することが可能になる。送電線データ信号(表IIの項目4を参照されたい)から一時的な故障状態が検出されたときに、制御システムに放出モードのための制御信号を送出させることによって、故障除去能力を実施することができる。
本発明の原理の上記の説明が与えられた場合に、多くの修正及び変形を考え得ることを理解すべきである。全てのこうした修正及び変更は、上記の特許請求の範囲に定められたような本発明の精神及び範囲に含まれるものとして考えられるように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による、風力発電装置のような不安定な電源の電気出力と送電線との間の電力制御インターフェースの好ましい実施形態を示すシステム図である。
【図2】電力制御インターフェースのための制御システムの一例を示すブロック図である。
【図3】電力制御インターフェースのためのエネルギー貯蔵回路の簡単化された図である。
【図4】大きな電力変動によって特徴付けられる典型的な風力発電装置の出力を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置のような不安的な電源の電気出力と送電線との間の電力制御インターフェースであって、
(a)該不安定な電源と前記送電線との間に接続され、該不安的な電源の通常出力レベルより上であるときに過剰な電気出力を貯蔵し、該不安的な電源の前記通常出力レベルより下であるときに貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を追加する電気エネルギー貯蔵部と、
(b)前記不安定な電源の電気出力の監視から得られた電源データ信号と前記送電線の監視から得られた送電線データ信号とを受信し、いつ前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を該送電線に追加し、該不安定な電源が遭遇した発電減少状態を補償すべきか、又は該不安定な電源が遭遇した発電増加状態時に、いつ過剰電気エネルギーを該電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵すべきかを決定する制御システムと、
(c)前記決定に対応する前記制御システムからの制御信号を受信し、前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵された電気エネルギーを放出して、電気出力を前記送電線に追加し、電源出力の減少を補償し、前記決定に従って該電気エネルギー貯蔵部内の電源出力の増加による過剰の電気エネルギーを貯蔵するように作動する電子補償モジュールと、
を備えることを特徴とする電力制御インターフェース。
【請求項2】
前記電源がAC電気出力を提供する風力発電装置であり、前記電気出力が、ウルトラキャパシタ、コンデンサ、及びバッテリからなる電気エネルギー貯蔵装置の群の選択されたものに貯蔵されることを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項3】
前記電源がAC電気出力を提供する風力発電装置であり、前記AC電気出力が、AC・DCインバータによって直流(DC)に変換され、DCコンデンサ・アレイ又はバッテリ内に貯蔵されることを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項4】
前記制御システムが、電源監視手段と、送電線監視手段と、前記不安定な電源の電気出力がどれほど狭帯域範囲にわたる可能性があるかを計算し、電力の短時間変動がある場合にも前記狭帯域範囲にわたって前記電気エネルギー貯蔵部内のエネルギーの放出又はエネルギーの貯蔵を維持するための制御計算手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項5】
前記電源が風力発電装置であり、前記制御システムが、前記風力発電装置の電気出力の監視から得られたデータ信号と、前記送電線上の状態の監視から得られたデータ信号とを受信し、該制御システムが、システム・モデリング・アルゴリズムを用いて狭帯域の風速状態を予測することを特徴とする請求項4に記載の電力制御インターフェース。
【請求項6】
前記制御システムのアルゴリズムが、風力発電装置出力に基づいた予測と、風力発電装置出力の履歴データとを含むことを特徴とする請求項5に記載の電力制御インターフェース。
【請求項7】
前記電気エネルギー貯蔵部が、エネルギー貯蔵回路と、前記エネルギー貯蔵回路の入力側の充電コントローラと、エネルギー放出のための該エネルギー貯蔵回路の出力側の放電コントローラとを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項8】
前記充電コントローラ及び前記放電コントローラが、前記電子補償モジュールからの信号によって制御されるダブルアクションゲートのように働くことを特徴とする請求項7に記載の電力制御インターフェース。
【請求項9】
前記電源がAC電気出力を提供する風力発電装置であり、前記電気出力が、ウルトラキャパシタ、コンデンサ、及びバッテリからなる電気エネルギー貯蔵装置の群の選択されたものに貯蔵されることを特徴とする請求項7に記載の電力制御インターフェース。
【請求項10】
前記電気エネルギー貯蔵部が、それぞれの段階において電気エネルギーを貯蔵するように構成されたウルトラキャパシタのアレイであることを特徴とする請求項9に記載の電力制御インターフェース。
【請求項11】
前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵されたエネルギーを用いて前記風力発電装置を前記送電線と接続する時に電圧サポートを提供するためのパワー・エレクトロニクス回路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項12】
前記電圧サポートを提供するためのパワー・エレクトロニクス回路が、静的分散補償器(D−STATCOM)回路であることを特徴とする請求項11に記載の電力制御インターフェース。
【請求項13】
前記制御システムが、前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵されたエネルギーを用いて前記送電線上の故障状態を「ライドスルー」するための故障除去能力の制御モードを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力制御インターフェース。
【請求項14】
前記制御システムが、前記送電線の監視から得られたデータ信号を受信し、前記電気エネルギー貯蔵部が貯蔵されたエネルギーを放出し、該送電線上に故障状態が検出されたときに電気出力を維持することを可能になったことを特徴とする請求項13に記載の電力制御インターフェース。
【請求項15】
風力発電装置のような不安定な電源の電気出力を送電線と接続する方法であって、
(a)電気エネルギー貯蔵部を前記不安的な電源と前記送電線との間に連結し、該不安的な電源の通常の出力レベルより上のときに過剰な電気出力を貯蔵し、該不安的な電源の前記通常の出力レベルより下のときに貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を追加し、
(b)いつ前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵された電気エネルギーを放出して電気出力を前記送電線に追加し、前記不安的な電源が遭遇する発電減少状態を補償すべきか、及び該不安定な電源が発電の増加に遭遇した時に、いつ過剰な電気エネルギーを該電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵すべきかを決定することによって、該不安的な電源の電気出力及び該送電線上の状態の監視に基づいて「緩衝装置」機能を持った状態で働くように該電気エネルギー貯蔵部を制御する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記不安定な電源の電気出力がどれだけ狭帯域範囲を超える見込みかを計算し、電力の短時間変動がある場合にも、前記狭帯域範囲にわたって前記電気エネルギー貯蔵部内のエネルギーの放出又はエネルギーの貯蔵を維持するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の不安的な電源の電気出力を接続する方法。
【請求項17】
前記電源が風力発電装置であり、前記風力発電装置の起り得る電気出力を計算するステップが、該風力発電装置の現在の電気出力を監視し、風力発電装置の履歴データを使用し、システム・モデリング・アルゴリズムを用いて、これに基づく狭帯域の風力発電装置出力を予測するステップに基づいていることを特徴とする、請求項16に記載の不安的な電源の電気出力を接続する方法。
【請求項18】
前記電気エネルギー貯蔵部が、エネルギー貯蔵回路と、前記エネルギー貯蔵回路の入力側の充電コントローラと、エネルギー放出のための該エネルギー貯蔵回路の出力側の放電コントローラとを含み、前記充電コントローラ及び前記放電コントローラがダブルアクションゲートのように働くことを特徴とする、請求項15に記載の不安的な電源の電気出力を接続する方法。
【請求項19】
前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵されたエネルギーを用いて、前記送電線との電力注入時に電圧サポートを提供するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項15に記載の不安的な電源の電気出力を接続する方法。
【請求項20】
前記電気エネルギー貯蔵部内に貯蔵されたエネルギーを用いて前記送電線の故障状態を「ライドスルー」するための故障除去能力を提供するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の不安的な電源の電気出力を接続する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−511190(P2006−511190A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562587(P2004−562587)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/041385
【国際公開番号】WO2004/059814
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505233446)ハワイアン エレクトリック カンパニー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】