説明

飛動可能生物収集兼オゾン発生装置及び植物栽培装置

【課題】 単一の装置で植物の地上露出部と地上非露出部との双方を保護でき、安全かつ容易に取り扱うことができる飛動可能生物収集兼オゾン発生装置及び植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 第1の導体によって誘電体に生じた誘電分極により電界を生じさせると共に、第1の導体と第2の導体とによって放電を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電界によって飛動可能な生物を捕捉すると共に、オゾンを発生させて植物に供給する溶液を殺菌して、植物を保護して育成する植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を育成するために、葉や茎等の地上に露出している地上露出部と、根等の地上に露出していない地上非露出部との双方を保護する必要がある。
【0003】
地上露出部は、空気に触れている部分であり、空気中を浮遊したり飛動したりする植物病原菌の胞子等や小害虫等から保護する必要がある。一方、地上非露出部は、土や水等に接触する部分であり、土や水等に含まれた菌などから保護する必要がある。
【0004】
このように植物を的確に保護して栽培するためには、地上露出部と地上非露出部との双方を清浄な環境にする必要がある。
【0005】
従来から地上露出部を清浄にするために、天然物や化学合成品由来の農園芸用の抗菌剤や抗カビ剤等の薬剤が検討されてきた。また、空気中の細菌、胞子および花粉等を除去するために、空気清浄機を用いる場合もあった。さらに、2枚の金属電極とこれと平行なプラスティック製立体網目スクリーンとを用いた静電誘導吸塵装置もあった(例えば、特許文献1参照)。さらにまた、コロナ放電により胞子および花粉等の除去するものを帯電させて、捕集電極により吸着させることによって、細菌、胞子および花粉等を除去する電気集塵装置もあった(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4等参照)。
【0006】
また、地上非露出部を清浄にするために、地上非露出部に供給する養液を、超音波や紫外線や近赤外線やオゾンによって殺菌するものがあった(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9等参照)。
【特許文献1】特開昭52−120473号公報
【特許文献2】特開平10−137628号公報
【特許文献3】特開2000−189835号公報
【特許文献4】特開2003−211024号公報
【特許文献5】特開平5−336856号公報
【特許文献6】特開平11−275988号公報
【特許文献7】特開2000−119114号公報
【特許文献8】特開2001−286228号公報
【特許文献9】特開2002−191244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した抗菌剤や抗カビ剤等の薬剤を用いた場合には、薬剤の種類によって植物病原菌に対する感受性が異なったり、植物病原菌が薬剤に対し抵抗性を獲得したりするため、植物病原菌に対して充分な対応が困難となる。
【0008】
また、空気清浄機を用いた場合には、空気清浄機のフィルターが、除去するものより細かい穴を有していないと効力がなく、また、フィルターが目詰まりするため、長期間の稼動が困難となっている。
【0009】
さらに、静電誘導吸塵装置や電気集塵装置では、電極が露出しており、高電圧が印加された場合には、危険になる可能性があった。
さらにまた、超音波や紫外線や近赤外線やオゾンによって、養液も殺菌するようにした場合には、上述した装置の他に、さらなる装置を加える必要があると共に、電源も別途準備する必要があり、重複した構成とせざるを得なかった。さらに、オゾンによって殺菌する場合には、発生させたオゾンが、空気に流れ出して植物の地上露出部に至るのを防止するために、装置を離隔した位置に配置せざるを得ず、取り扱いが煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単一の装置で植物の地上露出部と地上非露出部との双方を清浄な環境にすることができ、安全かつ容易に取り扱うことができる飛動可能生物収集兼オゾン発生装置及び植物栽培装置を提供することにある。
【0011】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、第1の導体によって誘電体に生じた誘電分極により電界を生じさせると共に、第1の導体と第2の導体とによって放電を生じさせる。
【0012】
具体的には、本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、
少なくとも1つの第1の導体と、
前記第1の導体に電気的に接続され、かつ、前記第1の導体によって電界が生ずるように前記第1の導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記第1の導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、
前記所定の電位とは異なる電位にされ、かつ、前記第1の導体との間で放電が生ずるように、前記第1の導体から離隔して位置づけられた少なくとも1つの第2の導体と、を含むことを特徴とする。
【0013】
飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、第1の導体と、電源と、誘電体と、第2の導体と、を含む。
【0014】
第1の導体は、電気的に導電性を有する部材からなり、少なくとも1つある。この第1の導体は、電源に電気的に接続されている。電源から電源電圧が供給されることによって、第1の導体の電位は、所定の電位となり、第1の導体によって電界が生ずる
【0015】
誘電体は、誘電性、すなわち、電気的に非導電性を有する部材からなり、少なくとも1つある。この誘電体は、第1の導体によって生じた電界により誘電分極が生ずる位置に配置されている。この誘電体に生じた誘電分極に起因する電界が、誘電体の周囲に生ずる。
【0016】
上述したように、第1の導体は少なくとも1つあり、誘電体も少なくとも1つある。この第1の導体と誘電体とが、共に複数ある場合には、必ずしも1対1に対応するように配置する必要はないが、第1の導体と誘電体とを、1対1に対応するように配置することもできる。いずれの場合であっても、第1の導体に印加された電圧によって、誘電体に誘電分極を生じさせることができればよい。
【0017】
第2の導体は、電気的に導電性を有する部材からなり、少なくとも1つある。この第2の導体は、第1の導体の電位とは異なる電位にされている。さらに、第2の導体は、第1の導体との間で放電が生ずるように、第1の導体から離隔して位置づけられている。
【0018】
上述したように、第1の導体は少なくとも1つあり、第2の導体も少なくとも1つある。この第1の導体と第2の導体とが、共に複数ある場合には、必ずしも1対1に対応するように配置する必要はないが、第1の導体と第2の導体とを、1対1に対応するように配置することもできる。いずれの場合であっても、第2の導体と第1の導体との間で放電が生ずるように配置されていればよい。
【0019】
このようにすることで、前記誘電体を介して生じた電界によって、前記植物体配置区域で飛動できる生物を捕捉し、かつ、
前記放電によってオゾンを発生させて、前記植物体に供給される液体を、発生されたオゾンによって殺菌する飛動可能生物収集兼オゾン発生装置を提供することができる。
【0020】
上述したように、第1の導体に印加された電圧によって、誘電体に誘電分極が生ずる。誘電体は、誘電体の誘電分極によって生ずる電界の強さが位置により異なるような形状にしたり、配置にしたりするのが好ましい。電界の強度が位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)を生じさせることにより、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このように、誘電体の誘電分極によって生ずる電界により、飛動可能な生物を的確に捕捉することができ、植物体の地上露出部を清浄にすることができる。
【0021】
また、第1の導体と第2の導体との間で放電を生じさせてオゾンを発生させることができる。発生させたオゾンを、植物体に供給する溶液に送り込むことで、溶液を殺菌することができ、植物体の地上非露出部を、植物体の栽培に好ましい環境にすることができる。
【0022】
本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置によって、植物体の地上露出部と地上非露出部との双方を、植物体の栽培に好ましい環境にすることができる。また、第1の導体を、電界を生じさせるために用いると共に、放電を生じさせるためにも用いることができるので、第1の導体を共用できる。さらに、第1の導体を共用できるので、電源も共用できる。このため、装置の構成を簡素にできると共に、組み立てや分解等の取り扱いを容易にすることができ、安価にもできる。また、構成を簡素にできるので、装置の信頼性を高めることもできる。
【0023】
上述した第2の導体は、接地されているのが好ましい。このようにすることで、第1の電位と異なる電位に容易にすることができ、装置全体の構成を簡素にすることができる。
【0024】
また、第1の導体と第2の導体とを、誘電体によって支持するのが好ましい。このようにすることで、誘電体を、電界を生じさせるために用いるだけでなく、支持体としても用いることができ、第1の導体と第2の導体との間の距離を的確かつ容易に維持することができると共に、装置全体の構成を簡素にできる。
【0025】
特に、第1の導体を収納できる収納空間を誘電体に設けるのが好ましい。このようにすることで、第1の導体は、誘電体の内側に収納されるので、第1の導体の電位を高くしても安全を確保することができる。
【0026】
さらに、1つの第1の導体と、1つの第2の導体と、1つの誘電体とを一組にして一体化したものを、複数組用意して、これらを並置した構成としたものがより好ましい。このように、一体化することによって、組み立てや分解等の取り扱いを容易にすることができ、修理等のメンテナンスを容易もすることができる。また、一体化したものを並置することによって、誘電体の誘電分極によって生ずる電界が及ぶ範囲に広げることができ、飛動可能な生物を捕捉できる範囲を広げることができる。なお、第1の導体と、第2の導体と、誘電体とを一組にして一体化して、複数組にできるものであれば、第1の導体と、第2の導体と、誘電体とを、1つずつにする必要はない。
【0027】
上述した第1の導体と第2の導体との間の所定の距離は、第1の導体と第2の導体との間でストリーマ放電が生ずる距離が好ましい。ストリーマ放電を生じさせることによって、効率よくオゾンを発生させることができる。
【0028】
また、本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、前記第1の導体と前記第2の導体との間で生じた放電によって発生したオゾンを導いて集めるオゾン収集手段を含むものが好ましい。
【0029】
第1の導体の電位と第2の導体の電位は異なり、第1の導体と第2の導体との間で、放電が生ずる。この放電によってオゾンが発生する。この発生したオゾンを導いて集めるオゾン収集手段を含むので、発生させたオゾンが、植物の地上露出部に至るのを防止することができ、植物の地上露出部を好ましい環境にすることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、液体を貯留し、かつ、前記オゾン収集手段によって集められたオゾンを前記液体に接触させる液体貯留手段を含むものが好ましい。
【0031】
本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、液体貯留手段を含む。この液体貯留手段は、液体を貯留するためのものである。液体は、養液を含み、植物の地上非露出部に供給されるものが好ましい。オゾン収集手段によって集められたオゾンは、液体貯留手段で、液体に接触される。このようにすることで、液体が菌などで汚染された場合であっても、液体を殺菌することができる。
【0032】
さらに、液体貯留手段で、液体に接触させたオゾンを、上述したオゾン収集手段に導くオゾン収集案内手段を含むものが好ましい。
【0033】
このようにすることで、オゾンを再循環させることができ、オゾンを外部に排出することがないので、オゾンによって、植物の地上露出部に影響を与えることを防止することができる。さらに、オゾンを再循環させることによって、オゾンの濃度を高めることができるので、新たに発生させるオゾンの量を減らすことができ、ランニングコストを安価にすることもできる。
【0034】
さらにまた、本発明に係る飛動可能生物収集兼オゾン発生装置は、オゾンが接触した前記液体を植物体に供給する液体供給手段を含むものが好ましい。
【0035】
液体が菌などで汚染された場合でも、オゾンによって殺菌された液体が植物体に供給されるので、植物の地上非露出部を好ましい環境にすることができる。また、上述したように、液体貯留手段で、液体にオゾンを接触させた後に、植物体に供給されるので、植物の地上非露出部にオゾンが至りにくくすることができる。
【0036】
なお、若干量のオゾンを、液体と共に、植物の地上非露出部に至るようにしてもよい。植物の地上非露出部が直接汚染されたときには、植物の地上非露出部に供給されたオゾンによって、植物の地上非露出部を直接殺菌することができる。植物の地上非露出部に供給するオゾンの量は、植物の種類や数や育成状態等に応じて適宜定めればよい。
【0037】
また、本発明に係る植物栽培装置は、
植物体が配置される植物体配置区域と、
前記植物体配置区域を囲む囲繞部と、を含み、
前記囲繞部は、
少なくとも1つの第1の導体と、
前記第1の導体に電気的に接続され、かつ、前記第1の導体によって電界が生ずるように前記第1の導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記第1の導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、
前記所定の電位とは異なる電位にされ、かつ、前記第1の導体との間で放電が生ずるように、前記第1の導体から離隔して位置づけられた少なくとも1つの第2の導体と、を含むことを特徴とする。
【0038】
植物栽培装置は、植物体配置区域と囲繞部とを含む。植物体配置区域には、植物体が配置される区域である。植物体配置区域は、囲繞部によって囲まれる。
【0039】
上述した囲繞部は、第1の導体と、電源と、誘電体と、第2の導体とを含む。囲繞部は、これらが少なくとも一部に含まれていればよく、囲繞部の全体に亘って、第1の導体と電源と誘電体と第2の導体とが設けられている必要はない。植物体配置区域に配置される植物体の種類や数等に応じて、第1の導体と電源と誘電体と第2の導体とを適宜設ければよい。これらの第1の導体と電源と誘電体と第2の導体とは、上述したものと同様の構成及び機能を有する。
【0040】
このようにすることで、前記誘電体を介して生じた電界によって、前記植物体配置区域で飛動できる生物を捕捉し、かつ、
前記放電によってオゾンを発生させて、前記植物体に供給される液体を、発生されたオゾンによって殺菌する植物栽培装置を提供することができる。
【0041】
上述した第1の導体に印加された電圧によって、誘電体に誘電分極が生ずる。誘電体は、誘電体の誘電分極によって生ずる電界の強さが位置により異なるような形状にしたり、配置にしたりするのが好ましい。電界の強度が位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)を生じさせることにより、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このように、誘電体の誘電分極によって生ずる電界により、飛動可能な生物を的確に捕捉することができ、植物体配置区域における植物体の地上露出部を清浄にすることができる。
【0042】
また、第1の導体と第2の導体との間で放電を生じさせてオゾンを発生させることができる。発生させたオゾンを、植物体に供給する溶液に送り込むことで、溶液を殺菌することができ、植物体配置区域における植物体の地上非露出部を、植物体の栽培に好ましい環境にすることができる。
【発明の効果】
【0043】
単一の装置で植物の地上露出部と地上非露出部との双方を保護でき、安全かつ容易に取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0045】
<<<植物栽培装置10>>>
図1は、植物栽培装置10の概略を示す斜視図である。
【0046】
<<植物栽培装置10の構成>>
植物栽培装置10は、その内側に、植物を育成するための空間を提供する。この植物栽培装置10は、それ自体の全体を温室やビニールハウスなどとして使用しても、温室やビニールハウスなどの内部に置いて使用してもよい。植物栽培装置10は、枠体20と、培養槽30と、オゾン収集配管40と、円筒体50とを含む。
【0047】
<枠体20>
枠体20は、植物栽培装置10のおおよその外形を画定する。枠体20は、4本の柱フレーム22a、22b、22c及び22dと、4本の梁フレーム24a、24b、24c及び24dとからなる。図1に示すように、枠体20は、これらの4本の柱フレーム22a〜22dと4本の梁フレーム24a〜24dとによって、略直方体の形状を有する。
【0048】
4本の柱フレーム22a〜22dは、同じ長さを有する直線状のフレームである。これらの4本の柱フレーム22a〜22dは、いずれも、地面に対して垂直方向に配置されて、枠体20の全体を支える柱をなす。
【0049】
4本の梁フレーム24a〜24dは、直線状のフレームであり、互いに向かい合う梁フレーム24aと24cとは、同じ長さを有し、互いに向かい合う梁フレーム24bと24dとは、同じ長さを有する。4本の梁フレーム24a〜24dは、略長方形状に組み立てられ、4本の柱フレーム22a〜22dの上端部に連結される。上述した例では、4本の柱フレーム22a〜22dと4本の梁フレーム24a〜24dとによって、枠体20を構成したが、安定性や強度を高めるために、さらなる柱フレームや梁フレームを追加してもよい。
【0050】
枠体20によって形成される略直方体の内側の領域が、植物保護領域や植物育成領域として画定される。以下では、この領域を植物育成領域Rと称する。植物育成領域Rの大きさは、植物育成領域Rで育成すべき植物の種類や数に応じて適宜定めればよい。これらの4本の柱フレーム22a〜22dと4本の梁フレーム24a〜24dとは、後述する培養槽30を、植物育成領域R内で的確に支持できる材料で構成されている。
【0051】
図1に示した植物栽培装置10では、4本の梁フレーム24a〜24dによって、天部12が形成される。この天部12には、光を十分に透過させることができる透明な部材からなる天板(図示せず)が設けられている。
【0052】
また、1本の梁フレーム24bと2本の柱フレーム22b及び22dとから、第1の側部14aが形成される。この第1の側部には、光を十分に透過させることができる透明な部材からなる第1の側板(図示せず)が設けられている。同様に、1本の梁フレーム24dと2本の柱フレーム22a及び22cとから、第2の側部14bが形成される。この第2の側部には、光を十分に透過させることができる透明な部材からなる第2の側板(図示せず)が設けられている。
【0053】
天板や第1の側板や第2の側板は、アクリル樹脂のような透明なプラスチックのほか、透明なガラスからなるのが好ましい。これらの天板や第1の側板や第2の側板を設けることによって、これらの箇所からは、植物育成領域Rに外気が入り込まないようにできる。
【0054】
さらに、1本の梁フレーム24aと2本の柱フレーム22a及び22bとから、第3の側部14cが形成される。また、1本の梁フレーム24cと2本の柱フレーム22c及び22dとから、第4の側部14dが形成される。これらの第3の側部14cと第4の側部14dとは、第1の側部14aと第2の側部14bとは異なり、開放されている。このため、この第3の側部14cと第4の側部14dとを介して、植物育成領域Rに配置された植物に空気を供給することができる。後述するように、第3の側部14cと第4の側部14dとには、円筒体50が13本ずつ配置されており、これらの円筒体50によって静電スクリーンが形成され、細菌や胞子や花粉や虫等の飛動可能な生物が、植物育成領域Rに入り込むことを的確に防止することができる。
【0055】
上述した天部12と、第1の側部14aと、第2の側部14bと、第3の側部14cと、第4の側部14dとによって、「囲繞部」が構成される。
【0056】
<培養槽30>
培養槽30には、植物育成領域Rで育成されるべき植物(図示せず)が載置される。培養槽30は、植物育成領域Rの所望する位置に培養槽30が設けられる。図1に示した例では、培養槽30が、植物育成領域Rの略中央の高さに位置づけられる場合を示したが、培養槽30の大きさや形状や位置は、培養槽30で育成される植物の全体が、植物育成領域Rに含まれるように位置できれば、育成される植物の種類や数や育成状態に応じて適宜定めればよい。
【0057】
<オゾン収集配管40>
オゾン収集配管40は、後述する円筒体50で発生したオゾンを集める。2本の円筒体接続配管42a及び42bと、連結配管44とからなる。なお、円筒体50におけるオゾンの発生については後述する。
【0058】
2本の円筒体接続配管42a及び42bは、略直線状の形状を有し、垂直方向に配置されて、円筒体50の端部52b(図2参照)で接続される。図1に示すように、円筒体接続配管42a及び42bの各々には、13本の円筒体50が接続されている。なお、円筒体50の各々は、後述するように、円筒状の形状を有するが、図1では、簡略化して示すために、黒い太線で示した。
【0059】
連結配管44は、略直線状の形状を有し、水平方向に配置されて、2本の円筒体接続配管42a及び42bの上端部に連結されて、2本の円筒体接続配管42aと42bとを互いに連結する。
【0060】
なお、本実施の形態では、2本の円筒体接続配管42a及び42bを、円筒体50の端部52b(図2参照)で接続する場合を示したが、円筒体50の2つの端部52aと52b(図2参照)との間の中程の位置に開口や貫通孔を形成し、この開口や貫通孔に円筒体接続配管42a又は42bを接続するようにしてもよい。このようにしたときには、開口や貫通孔を挟んだ両側からオゾンを発生させることによって、発生させるオゾンの量を増やすことができる。
【0061】
また、上述した例では、2本の円筒体接続配管42a及び42bを、円筒体50の1つの端部52bのみで接続する場合を示したが、複数の円筒体50を直列に配置し、隣り合う円筒体50の一方の端部52aと他方の端部52bとの間に円筒体接続配管42a又は42bを接続し、円筒体接続配管42a又は42bを一方の円筒体50と他方の円筒体50とで挟むように配置してもよい。このようにして、隣り合う円筒体50の双方でオゾンを発生させることによって、オゾンの量を増やすことができる。
【0062】
さらに、26本の円筒体50の全てでオゾンを発生させるようにしたが、円筒体50のうち、オゾンを発生させないものをいくつか配置してもよい。後述するように、オゾンを発生させるためには、円筒体50に第2の導体56を設けることが必要であるが、オゾンを発生させない円筒体については、第2の導体56が不要になるので、円筒体50の構成を簡素にできるとともに、製造コストを安価にできる。
【0063】
<空気の流れ>
円筒体接続配管42aの下端部には、逆止弁62(図3参照)が接続されている。また、円筒体接続配管42bの下端部には、ポンプ64(図3参照)が接続されている。円筒体接続配管42aの下端部から、外部の空気が吸入され、吸入された空気は、円筒体接続配管42aの下端から上端に向かって流れる。円筒体接続配管42aの上端に至った空気は、連結配管44に案内されて、円筒体接続配管42bの上端に至る。円筒体接続配管42bの上端に至った空気は、円筒体接続配管42bの上端から下端に向かって流れ、円筒体接続配管42bの下端から排出される。
【0064】
<オゾンの流れ>
円筒体50から発生したオゾンは、上述した吸入された空気の流れによって、案内される。すなわち、円筒体接続配管42aに接続されている13本の円筒体50の各々から発生したオゾンは、円筒体接続配管42aの下端から上端に向かって案内され、連結配管44に案内されて、円筒体接続配管42aの上端に至り、円筒体接続配管42bの上端から下端に向かって案内される。このとき、円筒体接続配管42bに接続されている13本の円筒体50の各々から発生したオゾンも円筒体接続配管42bの上端から下端に向かって案内される。このように、円筒体接続配管42a及び42bに接続されている26本の円筒体50の各々から発生したオゾンは、吸入された空気と共に、円筒体接続配管42bの下端から排出される。このように、円筒体接続配管42a及び42bに26本の円筒体50を直列に接続したことにより、円筒体接続配管42a及び42bを流れるオゾンの濃度は、円筒体接続配管42bの下端に至るまでに次第に高くなって排出される。
【0065】
<円筒体50(誘電体52、第1の導体54、第2の導体56>
円筒体50は、その外側に電界を生じさせると共に、内側でオゾンを発生させる。
【0066】
図1に示したように、円筒体接続配管42a及び42bには、26本の円筒体50が接続されている。上述した第3の側部14cには、13本の円筒体50の各々が、水平方向に支持されて、略等間隔になるように互いに離隔して並置される。同様に、第4の側部14dにも、13本の円筒体50の各々が、水平方向に支持されて、略等間隔になるように互いに離隔して並置される。このように、円筒体50の長手方向が水平方向となるように配置される。円筒体50の各々を離隔して配置することによって、空気や光を遮ることがないので、植物育成領域Rに空気を十分に供給したり、植物育成領域Rに載置された植物に光を十分に照射したりすることができる。
【0067】
図2は、円筒体50の構造の概略を示す斜視図である。図2に示すように、26本の円筒体50の各々は、長尺な略円筒状の形状を有する。円筒体50は、1本の誘電体52と、1つの第1の導体54と、1つの第2の導体56と、支持部材58とを有する。図2に示すように、円筒体50は、1本の誘電体52と、1つの第1の導体54と、1つの第2の導体56とを一組にして一体化したものである。
【0068】
<誘電体52>
誘電体52は、第1の導体54と第2の導体56とを支持する共に、円筒体50の外側に電界を生じさせる。
【0069】
図2に示すように、誘電体52は、2つの端部52a及び52bを備えた長尺な略円筒状の形状を有する。2つの端部52a及び52bは、共に、開放されるように形成されている。
【0070】
誘電体52は、誘電性を有する材料からなる。すなわち、誘電体52は、電気を通さないもの、いわゆる絶縁体とされているものであればよい。誘電体52の材質は、例えば、アクリル、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、ポリエステル、レーヨン、セルロース、ゴム等が挙げられる。
【0071】
さらに、誘電体52は、光を透過させることができる透明な材質から構成するのが好ましい。誘電体52を透明な材質から構成することで、誘電体52によって、光が遮られることがないので、植物育成領域Rに載置された植物に光を十分に照射することができる。また、誘電体52が、透明な材質から構成されていない場合でも、光を50%以上透過できるものでもよい。光を透過させる観点からは、誘電体52の材質は、植物育成領域Rに載置された植物の種類や数に応じて適宜選択すればよい。
【0072】
<第1の導体54、支持部材58>
第1の導体54は、円筒体50の外側に電界を生じさせるための電極と、円筒体50の内側でオゾンを発生させるための電極との2つの機能を兼ね備える。
【0073】
第1の導体54は、図2に示すように、誘電体52の内部に配置されたときには、長尺かつ略直線状の形状を有する。第1の導体54は、電気的に導体となる導電線、例えば、銅からなる電線によって構成される。第1の導体54は、誘電体52の内側に配置されたときに、長尺な形状になるように配置されればよく、剛性の高い線材である必要はなく、可撓性を有する電線等の線材を用いてよい。第1の導体54は、支持部材58によって、支持されて、誘電体52の中心軸に沿って誘電体52の内部に配置される。
【0074】
支持部材58は、略円形の2つの端面を有する略円柱形の形状を有する。支持部材58は、直径が、誘電体52の内径よりも若干大きくなるように形成されている。支持部材58には、支持部材58の2つの端面の略中央を通り、かつ支持部材58の中心軸に沿うように貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔は、直径が、第1の導体54の直径よりも若干小さくなるように形成されている。この支持部材58は、若干変形できるように、ゴムやスポンジ等の弾性部材で構成されている。
【0075】
図2に示すように、3つの支持部材58a、58b及び58cが、誘電体52の内部に、誘電体52の長手方向に沿って、互いに離隔するように配置される。上述したように、支持部材58a〜58cは、若干変形できるので、誘電体52の開放された端部から、支持部材58a〜58cを押し込むことで、支持部材58a〜58cを誘電体52の内部に挿入することができる。
【0076】
このようにして誘電体52の内部に配置された3つの支持部材58a〜58cに形成された貫通孔の全てを、第1の導体54が通過するように配置される。このようにすることで、誘電体52によって、3つの支持部材58a〜58cを支持することができ、3つの支持部材58a〜58cによって、第1の導体54を支持することができる。誘電体52の内部では、第1の導体54が、誘電体52の長手方向に沿って、誘電体52の中心軸に沿うように配置される。さらに、上述したように、支持部材58の直径は、誘電体52の内径よりも若干大きいので、誘電体52の内側に支持部材58が配置されたときには、支持部材58は、誘電体52の内壁を押圧する。この支持部材58による押圧によって、支持部材58が、誘電体52の内側の所望する位置から長手方向に移動することを防止できる。第1の導体54を誘電体52の中心軸に沿って支持して配置することができる。
【0077】
また、第1の導体54として、可撓性を有する電線等の線材を用いたときであっても、第1の導体54が、誘電体52の内側で張設されるように、3つの支持部材58a〜58cを配置することによって、第1の導体54が略直線状になるように配置することができる。
【0078】
さらに、図2に示すように、3つの支持部材58a〜58cのうちの1つの支持部材58cを、誘電体52の端部52aを封止する位置に配置するのが好ましい。このようにすることで、端部52aから誘電体52の内側に、外気と共に水分が入り込むことを防止でき、第1の導体54が、水分によって錆びるなどの腐食することを防止することができる。
【0079】
さらにまた、図2に示すように、第1の導体54は、支持部材58aから端部52bに向かって所定の長さだけ突出する(図2の左方向に向かって)ように配置されている。後述するように、この支持部材58aから突出した第1の導体54の先端部54aが、オゾンを発生させるための電極となる。
【0080】
第1の導体54は、所定の電源電圧を供給する電源16(図3参照)に電気的に接続されている。このようにすることで、第1の導体54を、所定の電位にすることができる。
【0081】
なお、後述するように、第1の導体54の先端部54aは、後述する第2の導体56との間で、放電させるための電極である。放電を継続的に生じさせることによって、第1の導体54の先端部54aが、次第に損傷していき、放電効果が低下する場合がある。このような観点から、第1の導体54の先端部54aのみを交換できるようにするのが好ましい。例えば、第1の導体54と電気的に接続されている雌ネジ部品(図示せず)を、支持部材58aに埋め込んで、支持部材58aに固定しておく。一方、先端部54aに対応する部品として、導電性を有する長尺な雄ネジ部品(図示せず)を用いる。雄ネジ部品の一端は、先端部54aと同様の形状を有し、放電のための電極をなす。雄ネジ部品の他端には、雄ネジ部が形成されている。この雄ネジ部品の雄ネジ部を雌ネジ部品に螺合することによって、雄ネジ部品を雌ネジ部品と電気的に接続できると共に、支持部材58aから第2の導体56に向かって、雄ネジ部品が突出するように配置することができる。このように構成した場合に、雄ネジ部品が、放電によって損傷したときには、雄ネジ部品のみを交換するだけで、放電効果を元に戻すことができる。
上述した例では、雄ネジ部品と雌ネジ部品とを用いる場合を示したが、交換可能に着脱できるものであれば、ネジ部品によるものでなくてもよい。
【0082】
<第2の導体56>
第2の導体56は、上述した第1の導体54の先端部54aとの間で、放電を生じさせて、円筒体50の内側に、オゾンを発生させるための電極としてなす。
【0083】
第2の導体56は、図2に示すように、円環状の形状を有する。第2の導体56は、誘電体52の端部52bに沿うように配置されている。第2の導体56は、誘電体52の端部52bに設けられればよく、接着剤やネジ等の固定部材で誘電体52の端部52bに設けられればよい。第2の導体56は、電気的に導体となる導電線、例えば、銅からなる電線によって構成される。第2の導体56は、誘電体52の内側に配置されたときに、円環状の形状になるように配置されればよく、剛性の高い線材である必要はなく、可撓性を有する電線等の線材を用いてよい。
【0084】
円環状の形状の第2の導体56を、誘電体52の端部52bに配置することによって、誘電体52の開放された端部52bをオゾンの排出口として利用することができ、発生させたオゾンを排出するための排出口を別個に形成することなく、誘電体52の内部からオゾンを排出できるので、構成を簡素にすることができる。
【0085】
第2の導体56は、円環状の部分から導かれた導線を有し、第2の導体56は、導線によって接地されている(図3参照)。第2の導体56を接地することで、第1の導体54と異なる電位にすることができる。なお、第2の導体56を接地しなくても、第1の導体54と異なる電位にすればよい。第1の導体54と第2の導体56との電位差は、第1の導体54と第2の導体56との間の距離との関係で、ストリーマ放電が生ずるように適宜定めればよい。
【0086】
<電界の発生>
第1の導体54に電圧を印加することによって、第1の導体54の周囲に電界を生じさせることができる。図2に示したように、第1の導体54は、誘電体52の内側に配置されている。したがって、第1の導体54の周囲に生じた電界は、誘電体52の内部に及ぶ。この誘電体52の内部に及んだ電界によって、誘電体52に誘電分極を生じさせることができる。誘電体52に生じた誘電分極によって、さらに、誘電体52の周囲に電界を生じさせることができる。この誘電体52の周囲に生じる電界は、誘電体52は略円筒形状であるため、強さが位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)となる。このような電界を生じさせることによって、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。
【0087】
上述した説明は、1本の円筒体50について、誘電体52の周囲に生ずる電界に関するものであったが、植物栽培装置10の全体について生ずる電界を以下に説明する。
【0088】
図1に示すように、第3の側部14cには、13本の円筒体50が並置されている。このため、13本の円筒体50を構成する第1の導体54の全てを所定の電位にしたときには、13本の円筒体50を構成する誘電体52の全ての周囲に電界が生ずる。このように生じた電界は、13本の円筒体50の全体を覆うように生成され、いわゆる静電スクリーン(以下、第1の静電スクリーンと称する。)が生成される。同様に、第4の側部14dにも、13本の円筒体50が並置されている。このため、13本の円筒体50を構成する第1の導体54の全てを所定の電位にしたときには、13本の円筒体50を構成する誘電体52の全ての周囲に電界が生ずる。このように生じた電界は、13本の円筒体50の全体を覆うように生成されて、静電スクリーン(以下、第2の静電スクリーンと称する。)が生成される。
【0089】
このように生成された第1の静電スクリーンによって第3の側部14cの全体に亘って、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼすことができる。同様に、第2の静電スクリーンによって第4の側部14dの全体に亘って、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼすことができる。このように、第1の静電スクリーンと第2の静電スクリーンとによって、細菌や胞子や花粉や虫等の飛動可能な生物を捕捉することができ、第3の側部14cや第4の側部14dを介して、植物栽培装置10の外部から植物育成領域Rに、飛動可能な生物が侵入することを的確に防止することができる。
【0090】
なお、第1の静電スクリーンと第2の静電スクリーンとによるクーロン力やグレーディエント力は、隣り合う円筒体50の間隔と第1の導体54に印加する電圧とに応じて変更することができる。隣り合う円筒体50の間隔が狭ければ、第1の導体54に印加する電圧を小さくすることができ、隣り合う円筒体50の間隔を広げたときには、第1の導体54に印加する電圧を大きくする必要がある。これらの隣り合う円筒体50の間隔と第1の導体54に印加する電圧とは、保護すべき植物の種類や数や育成状態のほか、飛動可能な生物の種類や数に応じて適宜定めればよい。
【0091】
<オゾンの発生>
上述したように、第1の導体54は、電源に電気的に接続されることによって所定の電位にされる。一方、第2の導体56は、接地されている。この第1の導体54と第2の導体56との間の電位差によって、第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間で、放電を生じさせる。この放電によって、第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間に電子が放出され、放出された電子は、空気中の酸素分子と衝突する。この衝突により、酸素原子に解離し、解離した酸素原子と酸素分子とが結合することによってオゾンを発生させることができる。
【0092】
第1の導体54と第2の導体56との電位差と、第1の導体54と第2の導体56との間の距離とに応じて、放電の種類が異なり、生成されるオゾンの量が異なる。例えば、ストリーマ放電が生ずるように、電位差と距離と適宜定めればよい。
【0093】
具体的には、第1の導体54を直径2ミリメートルの線状の導体とし、第2の導体56を直径8ミリメートルの円環状の導体としたときに、第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間の距離を33ミリメートルとし、第1の導体54と第2の導体56との電位差を30キロボルトとするのが好ましい。このようにすることで、第1の導体54と第2の導体56との間でストリーマ放電を生じさせて、オゾンをより多く生成することができる。
【0094】
上述したように、第1の導体54と第2の導体56との電位差や、第1の導体54と第2の導体56との間の距離によって、発生させるオゾンの量を変えることができるので、これらの電位差や距離を変更することによって、発生させるオゾンの量を調節することができる。
【0095】
図2に示すように、誘電体52に形成された端部52bは、上述したように、開放するように形成されている。2本の円筒体接続配管42a及び42bには、オゾン吸入部46が形成されている。オゾン吸入部46は、円筒体接続配管42a及び42bの長手方向に対して略垂直な方向に、円筒体接続配管42a及び42b上に、所定間隔ごとに形成されている。この所定間隔は、第3の側部14cや第4の側部14dに、13本の円筒体50を並置する間隔と同じ間隔である。
【0096】
オゾン吸入部46は、略円形の開口であり直径が、誘電体52の外径よりも若干大きくなるように形成されている。このようにすることで、オゾン吸入部46に、誘電体52の端部52bを挿入することができる。第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間で、生じた放電によって発生したオゾンは、誘電体52の端部52bからオゾン吸入部46を通過して、円筒体接続配管42a又は42bに流れ出ることができる。なお、第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間で、放電が生ずるので、これらの間には障害物が存在しない構成とするのが好ましい。
【0097】
誘電体52に形成された端部52bをオゾン吸入部46に挿入することで、図1に示すように、13本の円筒体50を円筒体接続配管42a又は42bに接続することができる。上述したように、円筒体接続配管42aの下端部から外部の空気が吸入される。吸入された空気は、円筒体接続配管42aの下端部から上端部に向かって流れ、連結配管44に案内された後、円筒体接続配管42bの上端部から下端部に向かって流れる。空気が、円筒体接続配管42aの下端部から上端部に向かって流れるときには、13本の円筒体50で発生したオゾンは、空気の流れに案内されて、円筒体50から円筒体接続配管42aに流れ出る。同様に、空気が、円筒体接続配管42bの上端部から下端部に向かって流れるときには、13本の円筒体50で発生したオゾンは、空気の流れに案内されて、円筒体50から円筒体接続配管42bに流れ出る。このようにすることで、円筒体接続配管42a及び42bに接続された26本の円筒体50で発生したオゾンを、空気の流れと共に収集して、円筒体接続配管42b下端部から排出することができる。
【0098】
このように、円筒体接続配管42aの下端部から空気を吸入して、オゾンを円筒体接続配管42bの下端部まで案内するので、26本の円筒体50で発生したオゾンを、的確にオゾンを円筒体接続配管42bの下端部から排出でき、オゾンが漏れて植物育成領域Rに流れることを防止することができる。
【0099】
なお、オゾン吸入部46と円筒体50との間を封止剤など、例えば、シリコン系の接着剤によって封止することで、オゾンが漏れる可能性をより低めることができる。
【0100】
<<オゾンによる溶液の殺菌の処理手順>>
図3は、植物栽培装置10におけるオゾンの流れを示す概略的なブロック図である。図1に示した例では、円筒体50は、全部で26本あり、その各々で、オゾンを発生させるが、図3では、簡略化して示すために、代表的に1本の円筒体50のみを示した。また、円筒体接続配管42a及び42bについても、簡略化して示した。
【0101】
<発生させたオゾンの収集>
上述したように円筒体接続配管42bには、ポンプ64が接続されている。ポンプ64を駆動することによって、円筒体接続配管42aから、外部からの空気を吸入することができる。
【0102】
円筒体接続配管42a及び42bに接続された26本の円筒体50の各々で、オゾンを発生させる。円筒体50の各々で発生したオゾンは、円筒体接続配管42aから吸入された空気によって導かれて、円筒体接続配管42a及び42bを流れ、円筒体接続配管42bから排出される。
【0103】
なお、円筒体接続配管42aに逆止弁62を設けたことにより、円筒体50で発生したオゾンが、逆流しても、円筒体接続配管42aの下端部から外部へ排出されないようにできる。
【0104】
<オゾンの濃度の調整>
図3に示すように、円筒体接続配管42bは、ポンプ64を介して供給配管66に接続されている。供給配管66は、空気混合タンク68に接続されている。上述したように、ポンプ64を駆動することによって、空気が、円筒体接続配管42aに吸入される。円筒体接続配管42a及び42bに接続された26本の円筒体50の各々で発生したオゾンは、吸入された空気によって案内されて、円筒体接続配管42bから排出される。なお、円筒体接続配管42bから排出されたオゾンは、上述したように、吸入された空気によって案内されたものであるので、空気と混合したものであるが、以下では、単にオゾンと称する。円筒体接続配管42bから排出されたオゾンは、供給配管66を介して、空気混合タンク68に案内される。
【0105】
空気混合タンク68には、逆止弁72が設けられた空気供給配管74が接続されている。また、空気混合タンク68には、ポンプ76が設けられた排出配管78が接続されている。ポンプ76を駆動することによって、空気供給配管74を介して、外部から空気を吸入して空気混合タンク68に供給することができる。
【0106】
空気混合タンク68では、供給配管66を介して供給されたオゾンと、空気供給配管74を介して供給された空気とが、混合される。ポンプ64の駆動によって、空気混合タンク68に供給されるオゾンの量が決まり、ポンプ76の駆動によって、空気混合タンク68に供給される空気の量が決まる。したがって、上述したポンプ64とポンプ76との駆動の比率を変更することで、例えば、ポンプ64とポンプ76とを駆動するタイミングを変更することで、空気混合タンク68におけるオゾンの量と空気の量との比率を変えることができ、オゾンの濃度を調整することができる。
【0107】
なお、空気供給配管74に逆止弁72を設けたことにより、空気混合タンク68に供給されたオゾンが、空気供給配管74に逆流しても、空気供給配管74から外部へ排出されないようにできる。
【0108】
<オゾンによる溶液の殺菌>
上述した排出配管78は、貯蔵タンク80に接続されている。貯蔵タンク80は、水や養液等の溶液が貯蔵されている。この溶液は、貯蔵タンク80に接続されている所定の溶液供給手段(図示せず)によって、所定のタイミングで貯蔵タンク80に供給される。溶液供給手段によって、溶液が所定のタイミングで供給されるので、貯蔵タンク80における溶液の量や溶液の液面の高さは略一定になるように保つことができる。貯蔵タンク80に貯蔵される溶液は、後述するように、植物の地上非露出部に供給される。したがって、溶液の種類や成分は、植物の種類や数や育成状態に応じて適宜定めればよい。
【0109】
排出配管78の排出端82は、貯蔵タンク80に貯蔵されている溶液の液面よりも下になるように位置づけられている。空気混合タンク68で所望する濃度の調整されたオゾンは、排出配管78を介して貯蔵タンク80まで案内されて排出端82から排出される。オゾンが排出端82から排出されることによって、オゾンは、貯蔵タンク80で貯蔵されている溶液中に気泡状態で排出される。気泡状態のオゾンが、溶液と接触することによって、接触した溶液を殺菌することができる。このように、貯蔵タンク80にオゾンを供給することで、貯蔵タンク80で溶液を殺菌することができる。
【0110】
<殺菌された溶液の供給>
貯蔵タンク80には、ポンプ84が設けられた溶液供給配管86が接続されている。溶液供給配管86は、ポンプ84を介して、培養槽30の溶液貯蔵部32に接続されている。培養槽30の溶液貯蔵部32には、植物の地上非露出部が配置されている。ポンプ84を駆動することによって、貯蔵タンク80に貯蔵されている溶液は、培養槽30の溶液貯蔵部32に供給される。上述したように、貯蔵タンク80では、供給されたオゾンによって、溶液は殺菌されているので、殺菌された溶液を培養槽30の溶液貯蔵部32に供給することができ、植物の地上非露出部に接触させることができる。
【0111】
また、培養槽30の溶液貯蔵部32には、ポンプ88が設けられた溶液回収配管90が接続されている。溶液回収配管90は、ポンプ88を介して、貯蔵タンク80に接続されている。このようにすることで、ポンプ88を駆動することによって、培養槽30の溶液貯蔵部32に供給された溶液を貯蔵タンク80に回収することができる。上述したポンプ84とポンプ88との駆動の比率を変更することによって、培養槽30の溶液貯蔵部32で、溶液が滞留する時間を調整することができる。例えば、溶液が滞留する時間を短くしたときには、ポンプ84とポンプ88と高速で駆動すればよい。また、溶液が滞留する時間を長くしたときには、ポンプ84とポンプ88と低速で駆動すればよい。
【0112】
<オゾンの吸着>
上述した貯蔵タンク80には、オゾン吸着器92、例えば活性炭が接続されたオゾン排出配管94が接続されている。上述したように、貯蔵タンク80には、排出配管78からオゾンが供給される。このオゾンは、貯蔵タンク80において溶液を殺菌するためのものであり、溶液を殺菌した後は不要になる。また、貯蔵タンク80において、オゾンは、溶液に気泡状態で供給されるため、溶液中を上昇して溶液の液面に達した後、貯蔵タンク80内の空気中に排出される。このように貯蔵タンク80の空気中に排出されたオゾンを、オゾン排出配管94によって排出し、オゾン吸着器92によって吸着させる。このようにすることで、オゾン吸着器92によってオゾンを吸着させて、外部にオゾンが排出されることを防止することができる。
【0113】
上述したように、貯蔵タンク80では、供給されたオゾンによって、溶液を殺菌し、殺菌した溶液を培養槽30の溶液貯蔵部32に供給するので、植物の地上非露出部を清浄な環境にすることができる。
【0114】
また、貯蔵タンク80には、溶液供給配管86が接続されており、貯蔵タンク80の溶液は、ポンプ84によって排出される。ポンプ84の駆動速度を調整し、貯蔵タンク80の溶液と共に、オゾンが溶液供給配管86から排出されて培養槽30の溶液貯蔵部32に供給されるのが好ましい。このようにすることにより、培養槽30の間隙から侵入する菌などを継続的に殺菌することができる。
【0115】
ただし、植物の地上非露出部が健常な状態である場合には、上述した方法でオゾンの濃度を調整し、貯蔵タンク80に供給されるオゾン濃度を低くするのが好ましい。
【0116】
このようにすることで、オゾンが、培養槽30の溶液貯蔵部32に至った場合であっても、オゾンが植物の地上非露出部に与える影響を小さくでき、さらにオゾンが外部に排出されることを抑制することができる。
【0117】
一方、植物の地上非露出部自身が、菌などによって汚染される場合もある。このような場合には、オゾンを積極的に植物の地上非露出部に接触させるのが好ましい。したがって、上述した方法でオゾンの濃度を調整し、貯蔵タンク80に供給されるオゾン濃度を高くするのが好ましい。
なお、培養槽30で育成される植物のオゾン耐性が低い場合には、貯蔵タンク80に供給されたオゾンの全てが、貯蔵タンク80で溶液を殺菌した後、オゾン排出配管94から排出されるのが好ましい。
【0118】
また、上述した例では、オゾンを貯蔵タンク80からオゾン吸着器92に案内して、オゾンを吸着させる場合を示したが、オゾン吸着器92を設けずに、オゾン排出配管94を、上述した円筒体接続配管42aに接続するように、すなわち、オゾンを再循環させるようにしてもよい。このようにすることで、オゾンを再び空気混合タンク68に案内することができ、オゾンを外部に排出することがないので、オゾンによって、植物の地上露出部に影響を与えることを防止することができる。さらに、オゾンを再循環させることによって、オゾンの濃度を高めることができるので、円筒体50で新たに発生させるオゾンの量を減らすことができ、植物栽培装置10のランニングコストを安価にすることもできる。
【0119】
<<植物栽培装置10の機能>>
上述したように、第1の導体54に電圧を印加することによって、誘電体52に誘電分極を生じさせることができ、誘電体52に生じた誘電分極によって、誘電体52の周囲に電界を生じさせることができる。この誘電体52の周囲に電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、円筒体50によって、細菌や胞子や花粉や虫等の飛動可能な生物を捕捉することができ、植物栽培装置10の外部から植物育成領域Rに、飛動可能な生物が侵入することを的確に防止することができる。このようにすることで、植物の地上露出部を清浄な環境にすることができる。
【0120】
一方、第1の導体54と第2の導体56との間で放電を生じさせることによってオゾンを発生させ、発生させたオゾンによって、植物の地上非露出部に供給する溶液を殺菌する。このようにすることで、植物の地上非露出部も清浄な環境にすることができる。
【0121】
このように、植物栽培装置10は、植物の地上部と根との双方を、単一の装置で保護することができ、電界を生じさせる装置やオゾンを発生させる装置を別個に設ける必要をなくす。このようにしたことで、植物栽培装置10の構成を簡素にできるとともに、植物栽培装置10の取り扱いを容易にすることができる。特に、第1の導体54を、電界を生じさせるためと、オゾンを発生させるためとの双方で共用できるので、円筒体50の構造を簡素にできる。さらに、電源も共用できるので、植物栽培装置10の全体の構成も簡素にでき、調節を別個にする必要がないので、信頼性を高めることもできる。
【0122】
<<円筒体の他の態様>>
図4(a)〜(c)は、円筒体の他の態様を示す断面図である。図4(a)〜(c)では、上述した円筒体50と共通する部材には、同一の符号を付して示した。
【0123】
上述した円筒体50は、円筒体50の端部52bに開放した開口を形成したものであり、この開口を介してオゾンを円筒体接続配管42a及び42bに排出するものであった。
【0124】
図4(a)〜(c)に示した円筒体150、250及び350は、いずれも、第1の導体54と第2の導体56との間に2つの開口152及び154を形成したものである。2つの開口152及び154のうちの一方の開口152は、誘電体52の上側に形成され、他方の開口154は、誘電体52の下側に形成されている。このように2つの開口152及び154を形成することで、上下に貫く貫通孔を誘電体52に設けることができる。この貫通孔に円筒体接続配管42a’及び42b’を接続することによって、第1の導体54と第2の導体56との間で発生したオゾンを的確に、円筒体接続配管42a’及び42b’に排出することができ、発生したオゾンを効率よく溶液を殺菌するために用いることができる。なお、この場合には、円筒体接続配管42a’及び42b’にも貫通孔48を形成して、円筒体接続配管42a’及び42b’に形成された貫通孔48が、誘電体52の内側に位置するように、円筒体接続配管42a’及び42b’を配置すればよい。
【0125】
図4(a)に示した円筒体150には、円筒体50の第1の導体54と第2の導体56と同様のものが配置されており、上述したように、第1の導体54と第2の導体56との間に、2つの開口152及び154が形成されている。このようにすることで、第1の導体54と第2の導体56との間で発生したオゾンを的確に、円筒体接続配管42a’及び42b’に排出することができる。
【0126】
図4(b)に示した円筒体250には、円筒体50の第1の導体54の同様の導体が配置されている。第2の導体256は、第1の導体54と同様の略直線状の形状を有する。この第1の導体54の先端部と第2の導体256の先端部との間で、放電が生じ、オゾンが発生する。円筒体150と同様に、第1の導体54と第2の導体256との間に、2つの開口152及び154が形成されている。このようにすることで、第1の導体54と第2の導体56との間で発生したオゾンを的確に、円筒体接続配管42a’及び42b’に排出することができる。
【0127】
図4(c)に示した円筒体350には、円筒体50の第1の導体54と第2の導体56と同様のものが配置されている。これまでの円筒体50、150及び250では、第1の導体54と、第2の導体56又は256は、共に誘電体52に固定されていたが、この図4(c)に示した円筒体350の第2の導体356は、誘電体52の長手方向に移動可能に設けられている。このようにすることで、第1の導体54と第2の導体356との間の距離を変更することができるので、第1の導体54と第2の導体356との間で発生させるオゾンの量を調整することができる。このようにすることで、所望する量のオゾンを発生させることができる。
【0128】
円筒体350も、第1の導体54と第2の導体356との間に、2つの開口152及び154が形成されている。このようにすることで、第1の導体54と第2の導体356との間で発生したオゾンを的確に、円筒体接続配管42a’及び42b’に排出することができる。
【0129】
<<培養槽の他の態様>>
上述した例では、培養槽30として水耕栽培のものを示したが、培養槽30としてロックウールのものを用いてもよい。この場合には、殺菌した溶液を、貯蔵タンク80からロックウールの上部に案内する導管を用いて、殺菌した溶液をロックウールの上部から供給すればよい。供給された溶液は、ロックウールを浸透して植物の地上非露出部に接触した後、ロックウールの下部から流れ出る。流れ出た溶液を受け止める受け皿をロックウールの下部に設けて、受け皿に溜まった溶液を、貯蔵タンク80に戻すようにすればよい。
【0130】
<<実施例>>
<植物および育苗用養液組成>
実施例として、市販のペアートマト(Lycopersicon esculentum var. pyriforme、品種名イエローペア)を試料として用いた。ペアートマトをマルチパックトレイ(30×60センチメートル、128穴/トレイ)の各穴に係止したスポンジ支持体(3×3×3センチメートル)に播種し、温度管理(26±2℃)した育苗温室内の水耕栽培装置中の養液で子葉が展開するまで水耕栽培し、各試験に供した。
【0131】
養液は、KNO:404グラム、Ca(NO・4HO:354グラム、MgSO・7HO:246グラム、NHPO:76グラムを、1000リットルの水に溶かしたものを使用した。
【0132】
実験期間中では、養液(100リットル)は20リットル/分の流量で循環させ、pH(6.0〜6.5)と電気伝導度(1.2mS/cm(ミリジーメンス/センチメートル)は適宜測定し、該値となるように前記養液を補充した。
【0133】
<病原菌>
イエローペアが高い感受性を示す、青枯れ病原菌Ralstonia solanacearum のK-101 株(Toyoda H,Kakutani K, Ikeda S, Goto S, Tanaka H, Ouchi S, 1991. Characterization of deoxyribonucleic acid ofvirulent bacteriophage and its infectivity to host bacteria, Pseudomonas solanacearum. Journal ofPhytopathology 131, 11-21.)、根腐れ萎凋病原菌Fusarium oxysporum f. sp. Radicis-lycopersici のKin2003 分離株(Xu L, Nonomura T, Suzuki S, Kitagawa Y, Tajima H, Okada K, Kusakari S, Matsuda Y,Toyoda H, 2006. Symptomatic evidence for differential root invasion by Fusarium crown and root rotpathogens between common tomato Lycopersicon esculentum and its varieties. Journal ofPhytopathology 154, 577-86. )、トマトうどんこ病原菌Oidium neolycopersici のKTP01 分離株(Kashimoto K, Matsuda Y, Matsutani K, Sameshima T, Kakutani K, Nonomura T, Okada K, Kusakari S,Nakata K, Takamatsu S, Toyoda H, 2003. Morphological and molecular characterization for a Japaneseisolate of tomato powdery mildew Oidium neolycopersici and its host range. Journal of General Plant Pathology 69, 176-85.)をモデル病原菌として使用した。
【0134】
青枯れ病原菌K-101株は、PCG寒天培地上で26℃、48時間培養した後、室温の蒸留水中で保管した。培地上に形成された液体状のコロニーを病原性細菌として選抜し、蒸留水に溶解させた。この作業は3回繰り返し、最終的に一つの液状のコロニーを接種源として、水に溶解させた。
【0135】
根腐れ萎凋病原菌Kin2003の分生子は、Czpek寒天培地に接種し、20℃、4日間培養した。分生子を低速遠心分離機をもちいて蒸留水洗浄し、水に懸濁させて、接種源とした。
トマトうどんこ病原菌KTP-01の分生子は、発芽後1ヶ月のイエローペアの苗の葉上で維持した。新たに産生された葉上の8日齢のうどんこ病コロニーの分生子を接種源とした。
【0136】
<誘電体52>
円筒体50の誘電体52として、透明なアクリル製円筒(外径10ミリメートル、内径8ミリメートル、長さ2メートル)を用いた。
【0137】
<支持部材58a、58b、58c>
誘電体52の端部52bから10センチメートル内側の第1の位置に、支持部材58aとして、シリコン製絶縁体を取り付けた。誘電体52の端部52bである第2の位置に、支持部材58cとして、シリコン製絶縁体を取り付けた。第1の位置と第2の位置の間の第3の位置に、支持部材58bとして、シリコン製絶縁体を取り付けた。
【0138】
<第1の導体54>
第1の導体54として、銅製の導体(直径2ミリメートル)を、誘電体52内を貫通するように、シリコン製絶縁体(支持部材58a、58b、58c)に取り付けた。第1の導体54は、静電圧発生装置に接続して正に帯電させた。
【0139】
<第2の導体56>
第2の導体56として、銅製の輪を、誘電体52の端部52bに取り付けた。第2の導体56は、アース接続した。
【0140】
<植物栽培装置10>
枠体20としての直方体の枠(1.75メートル×0.8メートル×1.9メートル)を、育苗温室の培養槽30に被せ、枠体20には、50本の円筒体50を取り付けた。そのうち、25本の円筒体50は、枠体20の片面(第3の側部14c)に、残りの25本の円筒体50は、枠体20の反対の面(第4の側部14d)に取り付けた。なお、図1に示した植物栽培装置10では、片面に13本ずつの円筒体50を、全部で26本の円筒体50を設けた例を示したが、この実施例では、上述したように、片面に25本ずつの円筒体50を、全部で50本の円筒体50を設けた枠体20を用いて実験を行った。
【0141】
底面と、天井面(天部12)と、円筒体50が取り付けられていない側面(第1の側部14a、第2の側部14b)とは、透明なアクリル板によって覆った。隣り合う円筒体50の間の間隔は、60ミリメートルとした。
【0142】
50本の円筒体50を構成する第1の導体54を、静電気発生装置(関西電子(株)製、LS40)のコネクターに並列に接続し、正に帯電させた。円筒体50の各々で発生させたオゾンを収集するための2本の円筒体接続配管42a及び42bとして、ポリプロピレン製の管を用い、2本の円筒体接続配管42a及び42bを、誘電体52の端部52bに接続した。ポンプ64として、小型エアーポンプ((株)テクノ高槻製、SPP−6GA)を用いた。円筒体接続配管42bを、ポンプ64を介して空気混合タンク68(5リットル)に接続した。この空気混合タンク68は、オゾンを希釈するための逆流防止装置(逆止弁72)付きの外部空気取入口を有している。
【0143】
ポンプ76として、小型エアーポンプ((株)テクノ高槻製、SPP−6GA)を用いた。空気混合タンク68は、貯蔵タンク80として、3つの95リットルの円筒形タンクを用いた。3つの円筒形タンクの各々の内部には、微細気泡発生装置(野村電子工業(株)製、MB−150)を設けた。空気混合タンク68を、3つの円筒形タンクの微細気泡発生装置の各々に並列に接続した。
【0144】
貯蔵タンク80に接続したオゾン排出配管94には、圧力弁(内圧が0.5キログラム/センチメートルおよそ0.08メガパスカルまで上昇すると開く)を接続し、さらにオゾンを吸着させるため、木炭吸着剤を封入したオゾン吸着器92(活性炭)を接続した。
【0145】
<オゾンの生成条件の確定1>
1本の円筒体50を、温度管理下のチャンバー(25℃)内に置き、第1の導体54を異なる電位(10〜30キロボルト)にした。さらに、第1の導体54の先端部54a(陰極)から第2の導体56(陽極)までの距離を、1〜50ミリメートルの間で変化させた。
【0146】
円筒体50の端部52bにポリプロピレン製の管を接続し、ポリプロピレン製の管に空気を1リットル/分で流して、オゾン/空気混合気体を20リットルのテドラーバッグ(アズワン(株)製)に15リットル集めた。集められたオゾン/空気混合気体は、オゾン測定器(荏原実業(株)製、EG−700E3)のフローセルに移し、254ナノメートルの紫外光吸光度を測定してオゾン濃度を決定した。第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を、様々に変化させた際に、第1の導体54の先端部54aと第2の導体56との間に生じる4種類の放電を図5(a)に示す。図5(a)において、Aはアーク放電、Bはストリーマー放電、Cはコロナ−ストリーマー放電、Dはコロナ放電である。
【0147】
異なる電圧で、第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を様々に変化させた際に生成するオゾン発生量を図5(b)に示す。放電の起こる範囲は、第1の導体54に印加した電圧に比例して広くなった。オゾンは、試験した全ての電圧においてストリーマー放電の際に最も多く生成され、第1の導体54の印加した電圧を30キロボルトにし、第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を33ミリメートルにしたときに、オゾンの発生量が最も多かった(94.6±3.1マイクログラム/分)。
【0148】
<オゾンの生成条件の確定2>
上述したオゾンの生成条件の確定1と同様の試験を、異なる温度(5〜45℃)に設定したチャンバー内で行った。なお、オゾンの発生量が最も多かった条件、すなわち、第1の導体54の印加した電圧を30キロボルトにし、第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を33ミリメートルにして行った。
その結果、図6に示すように、試験した範囲内(5〜45℃)では、オゾン発生量は、ほぼ変化は無かった。
【0149】
<円筒体50で発生されたオゾンによる根圏病害の制御>
植物栽培装置10において、50本の円筒体50の各々において、第1の導体54の印加した電圧を30キロボルトにし、第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を33ミリメートルにし、ポンプ64の流量を0リットル/分又は1リットル/分とし、ポンプ76の流量を1リットル/分、1.5リットル/分又は2リットル/分として試験を実施した。
【0150】
発芽したイエローペアを植えたマルチパックトレイ(128個体/枚×6枚、計768個体)を、植物栽培装置の養液中に1週間置いた。その後、前培養した青枯れ病原菌K-101もしくはKin2003の培養液を、新たに加えた菌数が10CFU/ミリリットルとなるように流し込んだ。この接種処理は、1週間毎日繰り返した。最後の接種より1、2、5、7日後に100マイクロリットルの養液を採取し、青枯れ病原菌K-101は2,3,5-triphenyltetrazolium chloride(TTC)を含むPCG 寒天培地(Toyoda H, Hashimoto H, Utsumi R,
Kobayashi H, Ouchi S, 1988. Detoxification of fusaric acid by a fusaric acid-resistant mutant of Pseudomonas solanacearum and its application of biological control of Fusarium wilt of tomato. Phytopathology 78, 1307-11.)、根腐れ萎凋病原菌Kin2003 はKomada 寒天培地(Komada H, 1975. Development of a selective medium for quantitative isolation of Fusarium oxysporum from natural soil. Review of Plant Protection Research 8, 114-25.)に塗沫し、寒天培地を3日間培養して(25℃)、形成されたコロニーの数を計測した。
【0151】
最後の接種から7、14日後に枯れた植物数を計測した。また、枯れた植物体は、計測後に病原菌による感染の有無を確認した。青枯れ病原菌K-101を接種した区では、枯れた植物体の茎を切り出し、切り口を蒸留水に浸して菌液が流れ出るか確認し、また根腐れ萎凋病原菌Kin2003 を接種した区では、表面を殺菌した茎の一部を前述のKomada寒天培地に置き、根腐れ萎凋病原菌Kin2003が出現するか確認した。病害の発生率は全植物体に対する感染した植物体の割合で表した。
【0152】
オゾンを溶解させた養液を使い、養液に接種された根圏病原菌からトマトの苗を保護できるかどうか検討した結果を図7に示した。ポンプ76によるオゾン供給が空気流量1〜1.5リットル/分の間である場合、全ての個体は感染せず、試験期間中通常の生育をした。しかしながら、ポンプ76の空気流量を上げた場合(2リットル/分)、抑制効果は不十分なものとなり、K-101接種区では55%、Kin2003接種区では30%の苗が枯れた。一方、オゾンを含まない養液では病原菌を制御することができなかった。オゾンを含まない養液では、K-101が10〜10CFU/ミリリットル、Kin2003は10〜10CFU/ミリリットルのレベルで養液から菌が検出された。最終的にK-101では45〜80%、Kin2003では35〜55%の苗が感染した後、枯れていた。
【0153】
<オゾンを生成するシリンダーでの空気中を漂う分生子の捕捉>
植物栽培装置10において、50本の円筒体50の各々において、第1の導体54の印加した電圧を30キロボルトにし、第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距離を33ミリメートルにし、その他の条件を以下のように3区分に変化させて試験を実施した。
【0154】
試験区A:本発明の円筒体50を50本(片面に25本ずつ)を使用して、第1の導体54を正に帯電させると共に、第2の導体56を接地することによって、誘電体52の周囲に電界を生じさせると共に、オゾンを発生させた区分。
【0155】
試験区B:本発明の円筒体50と同等のものを50本(片面に25本ずつ)を使用し、正に帯電させて、誘電体52の周囲に電界を生じさせ、オゾンを発生させない区分。
【0156】
試験区C:本発明の円筒体50を50本(片面に25本ずつ)を帯電させないで使用した区分。
【0157】
発芽したイエローペアを植えたマルチパックトレイ(128個体/枚×6枚、計768個体)を、植物栽培装置の培養液中に1週間置いた。
【0158】
その後、KTP-01を接種した2ヶ月齢のトマト苗(5株)を植物栽培装置の2メートル風上に置き、送風機で送風(1メートル/秒)し続けた。試験区苗の葉の病徴発現は7日毎に記録を行った。病気の発生率は植物体の感染した葉の割合で計算した。
【0159】
実験終了後、全てのシリンダーに付着した分生子の数を高精度デジタル顕微鏡で計測した。図8に示すように、データは5回の平均値と標準偏差で示した。
【0160】
試験区分A及びBは、正に帯電したシリンダーが装着されたものであり、試験期間中植物体は全く感染しなかった。一方、シリンダーを帯電させていない試験区分Cでは、実験終了時に80%のトマトの葉にうどんこ病菌のコロニーが確認された。
【0161】
<養液中のオゾン溶解量>
養液中のオゾン溶解量を把握するため、溶液供給配管86と、溶液回収配管90との各々で、養液をサンプリングして、オゾンが溶解している100ミリリットルの溶液を三角フラスコに採取した。採取した養液にエアーポンプで空気を送り、養液を通過した気体を吸湿剤を通過させたうえで10リットルのテドラーパック(アズワン(株)製)に回収した。10リットル回収した時点で、その気体中のオゾン濃度を、オゾン測定器(荏原実業(株)製EG−700E3)のフローセルに移し、254ナノメートルの紫外光吸光度で測定した。
【0162】
上述した手順をテドラーパックに回収した気体からオゾンが検出されなくなるまで行い、その総量から、養液100ミリリットルあたりのオゾンの量を算出した。算出したオゾンの量を図9に示す。図9に示すように、溶液供給配管86に流れている養液に溶解しているオゾンの量と、溶液回収配管90に流れている養液に溶解しているオゾンの量とは、ほぼ同じであり、オゾンは、培養槽30から外部に排出されていないことがわかった。このように植物栽培装置10の構成では、培養槽30からはオゾンが排出されないので、植物栽培装置10によってオゾンを発生させても、培養槽30で植物の地上露出部に影響を与えることがなく、植物の育成に好ましい環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】植物栽培装置10の概略を示す斜視図である。
【図2】円筒体50の構造の概略を示す斜視図である。
【図3】植物栽培装置10におけるオゾンの流れを示す概略的なブロック図である。
【図4】円筒体の他の態様を示す断面図である。
【図5】第1の導体54の先端部54aから第2の導体56までの距における放電状態を示す図(a)と、各条件で放電させた場合のオゾン発生量を示すグラフ(b)とである。
【図6】各温度におけるオゾン発生量を示すグラフである。
【図7】オゾンによる根圏病害の制御試験の結果を示す表である。
【図8】誘電分極による空中に存在する病害菌の制御試験の結果を示す表である。
【図9】溶液供給配管86に流れている養液に溶解しているオゾンの量と、溶液回収配管90に流れている養液に溶解しているオゾンの量とを比較するグラフである。
【符号の説明】
【0164】
10 植物栽培装置
12 天部(囲繞部)
14a 第1の側部(囲繞部)
14b 第2の側部(囲繞部)
14c 第3の側部(囲繞部)
14d 第4の側部(囲繞部)
16 電源
40 オゾン収集配管(オゾン収集手段)
42a、42a’ 円筒体接続配管(オゾン収集手段)
42b、42b’ 円筒体接続配管(オゾン収集手段)
44 連結配管(オゾン収集手段)
50、150、250、350 円筒体(飛動可能生物収集兼オゾン発生装置)
54 第1の導体
52 誘電体
56、256、356 第2の導体
64 ポンプ(オゾン収集手段)
80 貯蔵タンク(液体貯留手段)
84 ポンプ(液体供給手段)
86 溶液供給配管(液体供給手段)
R 植物育成領域(植物体配置区域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の導体と、
前記第1の導体に電気的に接続され、かつ、前記第1の導体によって電界が生ずるように前記第1の導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記第1の導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、
前記所定の電位とは異なる電位にされ、かつ、前記第1の導体との間で放電が生ずるように、前記第1の導体から離隔して位置づけられた少なくとも1つの第2の導体と、を含むことを特徴とする飛動可能生物収集兼オゾン発生装置。
【請求項2】
前記第1の導体と前記第2の導体との間で生じた放電によって発生したオゾンを導いて集めるオゾン収集手段を含む請求項1に記載の飛動可能生物収集兼オゾン発生装置。
【請求項3】
液体を貯留し、かつ、前記オゾン収集手段によって集められたオゾンを前記液体に接触させる液体貯留手段を含む請求項2に記載の飛動可能生物収集兼オゾン発生装置。
【請求項4】
オゾンが接触した前記液体を植物体に供給する液体供給手段を含む請求項3に記載の飛動可能生物収集兼オゾン発生装置。
【請求項5】
植物体が配置される植物体配置区域と、
前記植物体配置区域を囲む囲繞部と、を含み、
前記囲繞部は、
少なくとも1つの第1の導体と、
前記第1の導体に電気的に接続され、かつ、前記第1の導体によって電界が生ずるように前記第1の導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記第1の導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、
前記所定の電位とは異なる電位にされ、かつ、前記第1の導体との間で放電が生ずるように、前記第1の導体から離隔して位置づけられた少なくとも1つの第2の導体と、を含むことを特徴とする植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−214119(P2008−214119A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51756(P2007−51756)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】