説明

食品加熱方法及び装置

【課題】 個々の食品の殺菌、蒸煮、焼成などの調理等各種用途に最適な運転条件を見出すとともに、最適な条件設定を容易に行なうことができる加熱装置を実現し、外気の流入及び蒸気の流出を抑制し、また装置内部の洗浄、点検等のメンテナンスを容易にする。
【解決手段】 他の加熱源で発生した一次水蒸気を誘電加熱又は誘導加熱によって150〜350℃に加熱し二次高温水蒸気を製造する二次加熱装置10と、閉空間sに分散配置され同閉空間に二次高温水蒸気を供給する複数のノズル17〜24と、同閉空間から排蒸気を排気する排気口29と二次加熱装置10とを接続する排蒸気循環路13と、同排蒸気循環路に介設された高耐熱性ブロア27と、二次加熱装置10に一次水蒸気を供給する流路12及び排蒸気循環路13に設けられ、一次水蒸気の供給割合を調節可能にした弁機構40,41とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、150〜300℃の水蒸気により、食品の蒸煮、焼成、食品表面の殺菌、野菜類のブランチングなどの殺菌、調理を行なう加熱装置及び同装置を用いた加熱方法に関し、詳しくは、一般蒸気ボイラなどの加熱装置で製造される一次水蒸気をベースにして、これを誘電加熱又は誘導加熱を用いた二次加熱装置によって二次加熱して高温水蒸気を発生させ、この高温水蒸気を満たした閉空間を食品を載置したコンベアを搬送させることによって行うものであるが、この際食品の殺菌、調理などの目的に応じて運転条件を任意に調節することを可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
従来過熱水蒸気を用いて、食品の焼成、加熱調理、殺菌及び蒸煮等を行う方法及び装置が公知である。
例えば、特許文献1(特開2003−325340号公報)には、常圧の過熱蒸気を用い、この過熱蒸気を循環使用することにより、排気量を少なくして熱効率の向上を図ることができ、焼成コストの低減と省スペース化を可能にする焼成装置が開示されている。
【0003】
また特許文献2(特開2004−121431号公報)には、過熱水蒸気噴射ノズルの噴射口の位置を、被加熱物に対して可変とすることにより、過熱水蒸気による加熱温度を調節することができる過熱水蒸気による、食品等の被加熱物の加熱方法及び装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−325340号公報
【特許文献2】特開2004−121431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれら過熱水蒸気を用いた従来の加熱装置には次のような問題点がある。
即ちまず従来の装置は、二次加熱装置にガスや灯油などの燃焼方式を使用しているため、排気ガスの発生が避けられず、また安全性に問題があった。また個々の食品に対して、加熱装置に供給する過熱水蒸気の温度、湿度その他の最適運転条件がまだ見出されていない。例えば食品の表面殺菌にとっては、乾熱より湿熱を利用するほうが効率が良く、食品の品質劣化も最小限にとどめることができるが、このためには閉空間を最適湿度条件に容易に設定できるようにする必要がある。しかし従来の加熱装置では、最適な湿度条件を容易に設定できる手段は未だ提案されていない。
【0006】
また食品の蒸煮と焼成の運転方法については、前者は湿度が高く、後者では湿度が低い条件が適するが、食品の種類によっては湿度が高い条件においても焼成が可能であり、これは二次加熱された過熱蒸気の供給量が大きな要因となる。しかしながら未だ湿度と二次過熱蒸気の供給量との関連は明らかにされていない。
【0007】
また従来加熱装置の庫内温度分布を一定にしようとして、過剰のエネルギーを使用して制御しようとしていた。また食品と過熱蒸気を接触させる閉空間は、食品を載置したコンベアが出入りするため、完全な密閉空間とすることはできず、コンベアの出入り口から蒸気が外部へ流出したり、外部から閉空間へ外気が流入したりして、閉空間の温度コントロールが非常に難しく、通常、入口にノレンを取り付けたりして、外気の進入、蒸気流出を防止していたが、食品にノレンが触れるなどの非衛生的な問題があり、未だこれが解決されていない。
【0008】
また加熱装置庫内にこびり付いた汚れ、特に油脂類、焦げ付きによるスケールなどについては、装置が洗浄構造となっていないため、水を使用しないで拭き取る、あるいは掏り取るなどのドライ洗浄を主体とした洗浄方法によったため、洗浄洗い残しや臭いなどのこびり付きなどの問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、安全性に問題がなく、個々の食品の殺菌、蒸煮、焼成などの調理等各種用途に最適な運転条件を見出すとともに、最適な条件設定を容易に行なうことのできる加熱装置を実現し、また閉空間への外気の流入及び閉空間からの蒸気の流出を抑制し、また装置内部の洗浄、点検等のメンテナンスを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の食品加熱装置は、前記目的を達成するため、高耐熱性パネルで囲われた閉空間に、同閉空間を貫く高耐熱性のコンベアで食品を搬送させながら、連続的に加熱する装置において、他の加熱源で発生した水蒸気を誘電加熱又は誘導加熱によって150〜350℃に加熱する二次加熱装置と、前記閉空間に分散配置され同閉空間に前記高温水蒸気を供給する複数のノズルと、同閉空間から排蒸気を排気する排気口と前記加熱装置とを接続する排蒸気循環路と、同排蒸気循環路に介設された高耐熱性ブロアと、前記二次加熱装置に一次水蒸気を供給する流路及び前記排蒸気循環路に設けられ、一次水蒸気の供給割合を調節可能にした弁機構とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明装置において、一次水蒸気を、例えば装置周辺にある工場用ボイラ等を使って製造する。この一次水蒸気を誘電加熱又は誘導加熱法を用いた二次加熱装置によって150〜350℃に加熱し、この二次高温水蒸気を閉空間内で食品と接触させ、加熱して殺菌、調理する。本発明装置は、通常常圧下で食品に蒸気を接触させる。二次加熱装置内でも同様であるが、一次水蒸気が二次加熱装置に高圧で供給される場合もあり、これらの理由により若干の圧力変動はあり得る。
150℃から水蒸気凝縮により食品の初期昇温速度が加速される。水蒸気のもつ熱量は乾熱加熱の8倍であるため、より短時間で調理、殺菌が可能となる。
また本発明装置においては、水蒸気凝縮のみならず、高耐熱パネルによる放射伝熱、及び水蒸気による対流伝熱も加わって、高効率伝熱を可能とする。
【0012】
食品加熱後の排蒸気は前記排気口から前記高耐熱性ブロアによって吸引され、前記排蒸気循環路を経て二次加熱装置に戻され、二次加熱装置で再加熱される。この際一次水蒸気が補充水蒸気として適宜補給されるが、この際前記弁機構により一次水蒸気量及び排蒸気量を調整することができるとともに、両者の混合割合を調節することができる。
【0013】
また本発明装置において、好ましくは、前記コンベアの上下に複数のノズル管を分散配置し、前記閉空間の入口及び出口付近の上方に配置されたノズル管を食品の搬送方向と直角方向に配置したストレート型とするとともに、これらノズル管のノズル開口を真下に向け、前記ストレート型ノズル管以外はループ型とし、コンベアの上方中央部に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を前記閉空間の中央側に傾斜させ、下方に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を真下に向けるようにする。
【0014】
コンベア上面側の入口開口及び出口開口は、コンベア上に載置された食品を出入りさせる必要があるため、開口を大きく取る必要があり、このため外気の流入及び水蒸気の流出が起こりやすい。しかしコンベア上方の入口及び出口付近に配置された前記ストレート型ノズル管から排出される水蒸気のエアカーテン効果により、外部への蒸気の流出及び外部からの外気の流入を防止することができる。
またコンベアの上方中央側に設けられたループ型ノズル管は、閉空間の上方中央部の蒸気雰囲気を一定の温度に保つ役割を果たす。またコンベアの下方に配置されたループ型ノズル管蒸気を真下に吹きつけると、蒸気の性格上吹き付けとほぼ同時に真上に立ち上がり、食品の裏側から包み込むような雰囲気を形成することができる。
【0015】
また本発明装置において、好ましくは、前記閉空間を形成する筐体の前記コンベアの長手方向に沿う側壁面に開閉可能な点検扉を設け、同筐体の底面を形成する底板を着脱可能とし、同底板に排水口を設け、同筐体内部を洗浄可能に構成する。これによって、コンベアレール、奥の壁、ノズル管などに手が届くようになり、水、湯を使用した手洗浄を可能とし、さらに底面を形成する底板を着脱可能として、洗浄排水を速やかに庫外に排出できるようになる。なお装置を構成する機器、部材の材質を耐アルカリ性とすれば、アルカリ洗浄あるいは弱酸性洗剤にも対応可能となる。
また本発明装置において、好ましくは、加熱装置本体を収容した筐体の下部にキャスターを設け、同筐体を移動可能にする。
【0016】
また本発明方法は、前記構成を有する食品加熱装置において、前記閉空間の温度を検出する温度センサによって閉空間の温度状況をモニタし、このデータ情報に基づいて前記ブロアの回転数を比例制御によって調節することにより、前記閉空間の温度を150〜350℃に制御するとともに、前記二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を検出する温度センサにより出口側水蒸気温度をモニタし、このデータ情報に基づいて前記二次加熱装置の出力を比例制御によって調節することにより、同加熱装置の出口側水蒸気の温度を制御する。
【0017】
また本発明方法において、好ましくは、前記閉空間内で温度センサを前記コンベアで搬送される食品の近傍に設け、食品近傍の温度状況をモニタする。これによって食品近傍の温度状況に基づいて前記ブロアの回転数制御を行なうことができる。
また本発明方法は、好ましくは、食品を蒸煮又は焼成するに際し、一次水蒸気の前記二次加熱装置への供給量及び前記閉空間の温度を調整することにより、前記閉空間の水蒸気の相対湿度を3〜6%RHに制御する。焼成の際は、相対湿度を3%側に設定することが適し、遠赤外線効果も生じて焦げ目を付けることができる。一方、蒸煮の際は、相対湿度を6%側に設定することが適する。
【発明の効果】
【0018】
本発明装置によれば、他の加熱源で発生した水蒸気を誘電加熱又は誘導加熱によって150〜350℃に加熱する二次加熱装置と、前記閉空間に分散配置され同閉空間に前記高温水蒸気を供給する複数のノズルと、同閉空間から排蒸気を排気する排気口と前記加熱装置とを接続する排蒸気循環路と、同排蒸気循環路に介設された高耐熱性ブロアと、前記二次加熱装置に一次水蒸気を供給する流路及び前記排蒸気循環路に設けられ、一次水蒸気の供給割合を調節可能にした弁機構とを備えたことにより、水蒸気凝縮のみならず、高耐熱パネルによる放射伝熱、及び水蒸気による対流伝熱も加わって、高効率伝熱を可能とするとともに、排蒸気を循環して使用するため、排蒸気量を少なくして熱効率の向上を図ることができ、加熱コストの低減と省スペース化を可能とする。
【0019】
また二次加熱装置は、ガスや灯油など燃焼方式を使わないため、安全性が高いとともに、誘電加熱又は誘導加熱を用いた二次加熱装置を用いるため、短時間で加熱が可能となり、150〜350℃の高温水蒸気を使った低酸素状態のため、油脂の酸化を始め、その他食品成分からの酸化物の生成を抑え、ビタミンの破壊が抑制され、加熱処理された食品の保存性が向上し、また食品の退色防止効果を有する。
本発明は、食品の調理、殺菌、ブランチング、野菜、果実の皮むき等に広く適用することができる。
【0020】
また本発明装置において、好ましくは、前記コンベアの上下に複数のノズル管を分散配置し、前記閉空間の入口及び出口の上方に配置されたノズル管を食品の搬送方向と直角方向に配置したストレート型とするとともに、これらノズル管のノズル開口を真下に向け、前記ストレート型ノズル管以外はループ型とし、コンベアの上方に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を前記閉空間の中央側に傾斜させ、下方に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を真下に向けるように構成したことにより、連続処理に必要な蒸気流出・外気進入防止の最適化を図ることができ、連続処理・ライン化が容易になるとともに、食品の前面、後面、上面、下面、右面、左面の空間雰囲気を最適条件に設定された均一な高温水蒸気で包むことができる。
【0021】
また好ましくは、前記閉空間を形成する筐体の前記コンベアの長手方向に沿う側壁面に点検扉を設け、同筐体の底面を形成する底板を着脱可能とし、同底板に排水口を設け、同筐体内部を洗浄可能にしたことによって、コンベアレール、奥の壁、ノズル管などに手が届くようになり、水、湯を使用した手洗浄を可能とし、さらに底面を着脱可能にしたことにより、洗浄排水を速やかに庫外に排出できるようになる。なお装置を構成する機器、部材の材質を耐アルカリ性とすれば、アルカリ洗浄あるいは弱酸性洗剤にも対応可能となる。
また好ましくは、加熱装置本体を収容した筐体の下部にキャスターを設け、同筐体を移動可能にすることにより、ラインのレイアウト変更などの際は、一次蒸気配管などを繋ぎ変えるだけで、任意の場所に移動可能になる。現在多品種少量生産が大きな割合を占め、日ごとあるいは時間ごとのレイアウト変更が盛んに行なわれている。筐体の下部にキャスターを設けたことにより、このようなニーズに対応可能となる。
【0022】
また本発明方法によれば、前記構成を有する食品加熱装置において、前記閉空間の温度を検出する温度センサによって閉空間の温度状況をモニタし、このデータ情報に基づいて前記ブロアの回転数を比例制御によって調節することにより、前記閉空間の温度を150〜350℃に制御するとともに、前記二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を検出する温度センサにより出口側水蒸気温度をモニタし、このデータ情報に基づいて前記二次加熱装置の出力を調節することにより、同二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を制御することによって、閉空間の水蒸気温度を常に設定された最適な温度に維持することができ、このため個々の食品の各種用途に迅速に対応することができる。
また前記二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を制御することによって、二次加熱装置の異常過熱を防ぐことができる。
【0023】
また本発明方法において、好ましくは、前記閉空間内で温度センサを前記コンベアで搬送される食品の近傍に設け、食品近傍の温度状況をモニタすることによって、食品近傍の温度状況に基づいて前記ブロアの回転数制御を行ない、食品近傍の温度状況を基準に閉空間の雰囲気条件を設定することにより、蒸気の過剰供給を防止し、エネルギーロスを抑えることができる。
【0024】
また本発明方法において、好ましくは、食品を蒸煮又は焼成するに際し、一次水蒸気の前記二次加熱装置への供給量及び前記閉空間の温度を調整することにより、前記閉空間の水蒸気の相対湿度を3〜6%RHに制御することにより、焼成あるいは蒸煮に好適な相対湿度で加熱処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は、本発明装置の第1実施例の断面立面図、図2は、前記第1実施例の断面平面図、図3は、前記第1実施例の制御系の系統図である。
【実施例1】
【0026】
図1〜3において、1は、内部で閉空間を形成している筐体で、基台25によって支持され、コンベアベルト4及びコンベアベルト4上の載置された被加熱食品wが出入りする入口開口2及び出口開口3を有する。なお筐体1の閉空間sを取り巻く内壁は、図示しない高耐熱性パネルで被覆されている。コンベアベルト4は、高耐熱性の材質からなり、入口側従動スプロケット5及び出口側駆動スプロケット6に巻回されて、駆動モータ9により駆動され、コンベアベルト4上に載置された食品wを搬送する。
【0027】
7は、入口側スプロケット5を覆うケーシング、8は、出口側スプロケット6を覆うケーシング、9は出口側駆動スプロケット6を駆動する電動モータである。26は、閉空間sを形成するため、筐体1内を上下に仕切る底板であり、底板26は、筐体1内部の洗浄を容易にするため着脱可能に設けられ、かつ斜めに傾斜しており、傾斜下方側に開閉弁付排水口47を設けている。30は、スプロケット6と駆動モータ9に巻回されたチェーンベルトである。
10は、図3に図示される高周波発生装置11から送られる高周波電流により供給される一次水蒸気に循環電流を誘起させて発熱させることにより一次水蒸気を加熱する二次加熱機である。二次加熱機10には、工場等に設置されたボイラで製造された一次水蒸気が、一次蒸気管路12から循環管路13を経て供給され、二次加熱機10で二次加熱される。高周波発生装置からは、周波数が5〜40kHzの高周波が供給される。
【0028】
二次加熱機10で二次加熱された一次水蒸気は、150〜350℃の高温水蒸気となって、二次加熱機10の出口側循環管路14を経て、筐体1内の上下で分岐する上部ヘッダ15及び下部ヘッダ16に供給され、さらに上部ヘッダ15に接続された上部ノズル管17,18,19及び20に供給されるとともに、下部ヘッダ16に接続された下部ノズル管21,22,23及び24に供給される。
29は、閉空間s内の上方に設けられた吸引口で、循環管路13に接続され、循環管路13は、途中に一次蒸気管路12が接続され、さらに循環ブロア27が介設され、二次加熱機10に接続されている。28は、循環ブロア27の駆動モータである。また図2において、45は、コンベアベルト4の搬送方向に沿って設けられた点検扉である。
【0029】
次に第1実施例の制御系を図3及び図4に基づいて説明する。図において、31は、閉空間sに設けられた温度センサで、図4に示すように、温度センサ31の検出値は比較器34に送られて、温度設定器32により設定された設定値と比較され、設定値と検出値との差は比例制御器33によって比例処理され、その比例処理値に基づいて循環ブロア27の回転数を制御する。
また35は、二次加熱機10の出口側循環管路14に設けられた出口部水蒸気温度を検出する温度センサで、図4に示すように、温度センサ35の検出値は比較器37に送られて、温度設定器32により設定された設定値と比較され、設定値と検出値との差は比例制御器36によって比例処理され、その比例処理値に基づいて高周波発生装置11の出力制御(0から100%)を行い、二次加熱機10出口部の水蒸気温度を制御する。
【0030】
また図3において、40は、循環管路13に介設された流量調整弁、41は、一次蒸気管路12に設けられた流量調整弁である。これらの弁を適宜調整することにより、閉空間sから循環される排蒸気及び一次水蒸気の流量のみならず、両者の混合割合を調整することができる。また42は、二次加熱機10内に冷却水を循環管路43及び44を介して循環することにより、二次加熱機10内の加熱盤を冷却するラジエータである。
また46は、筐体1の下部に設けられたキャスターで、基台25を伸縮可能にすることにより、筐体1を所望の場所に移動することができる。
【0031】
かかる第1実施例の装置において、一次水蒸気が閉空間sから排出される排蒸気と混合されて二次加熱機10に供給され、そこで二次加熱されて150〜350℃の設定温度となった高温水蒸気は上部ヘッダ15及び下部ヘッダ16を介してノズル管17〜24に供給される。本装置は、通常常圧下で食品に蒸気を接触させる。二次加熱機10内でも同様であるが、一次水蒸気が二次加熱機10に高圧で供給される場合もあり、これらの理由により若干の圧力変動はあり得る。
コンベアベルト4の上方で筐体1の入口部及び出口部に配置されたノズル管17及び20は、図1および図2に示すように、直線状をなし、ノズル口は真下に向けて配置されているので、水蒸気は矢印a及びdのように真下に噴出し、これによって入口開口2及び出口開口3からのがきの流入及び筐体1内の水蒸気の流出を防止することができる。
【0032】
一方その他のノズル管18,19,21,22,23及び24は、図1および図2に示すように、ループ型をなし、このうちノズル管19は庫内側へ約15度の角度を付けられ、ノズル管18は庫内側へ約345度の角度を付けられており、これによって矢印c及びbのように閉空間sの中央部に向かって蒸気が供給されるので、閉空間s中央部の蒸気雰囲気を一定の温度に保つことができる。
またコンベアベルト4の下部に配置されたノズル管21〜24は、すべてループ型をなし、ノズル開口はすべて真下に向いているので、矢印eからhのように蒸気は真下に向かって噴出するが、食品wの裏面から包み込むような雰囲気を形成する。
このためこれらのノズル管により、食品wの前後、左右、上下の空間を均一な水蒸気で包み込むことができ、加熱処理に最適な雰囲気を維持することができる。
【0033】
また本装置には、図2に示すようにコンベアベルト4の搬送方向に沿って開閉可能な点検扉45を設け、筐体1の底面を形成する底板26を着脱可能とし、かつ底板26は斜めに傾斜しており、傾斜下方側に開閉弁付排水口47を設けたことにより、庫内の洗浄、点検等を容易に行うことができる。即ち通常運転時は、コンベアのレールとネットの接触する部分については、ネットの自重によってガイドされ、食品を搬送するが、洗浄時はネットを持ち上げ、接触部分を手洗浄することができる。また庫内の洗浄方法として、一次蒸気を噴霧し、焼成カスや食品から滲み出た油脂類を剥離及び溶解させる。さらに庫内の部材は耐アルカリ性を選定しており、汚れの成分を剥離、溶解後、アルカリ洗剤を噴霧する。次いでスポンジを用いて手洗浄などにより摩擦力で汚れ成分を取る。さらに焼成などにより固化したスケール成分については、酸洗浄し、温水を噴霧して濯ぎ洗いをして完了する。
【0034】
また閉空間sに温度センサ31を設け、また二次加熱機10の出口側循環路14に温度センサ35を設け、図4に示す制御を行なって、閉空間s内の温度及び二次加熱機10の出口側水蒸気温度を設定温度に保持できるので、食品wの種類及び殺菌、調理等加熱処理の用途に応じて最適の条件設定を行なうことができるとともに、二次加熱機10の異常過熱を未然に防止することができる。なお二次加熱機10においては、ラジエータ42で冷却される冷却水で熱板(図示略)の過熱を効果的に防止することができる。
循環管路13及び一次蒸気管路12に設けた流量調整弁40及び41により、閉空間sから排気される排蒸気及び一次水蒸気の二次加熱機10への供給量及び両者の混合割合を自由に変えることができるので、例えばノズル管への蒸気供給量を多くすることにより、加熱能力を増大することもでき、あるいは両者の混合割合を調整して、相対湿度を3〜6%に調整し、これによって食品の蒸煮あるいは焼成に最適な条件を設定することができる。
【0035】
本実施例の装置においては、ノズル管に供給する蒸気温度を150〜350℃、蒸気循環量を1〜35m/min,コンベア速度を30m/sec,一次水蒸気量を1〜70kg/Hとすることにより、殺菌、調理環境に最適であることを見出した。
このように第1実施例によれば、水蒸気凝縮のみならず、高耐熱パネルによる放射伝熱、及び水蒸気による対流伝熱も加わって、高効率伝熱を可能とするとともに、排蒸気を循環して使用するため、排蒸気量を少なくして熱効率の向上を図ることができ、加熱コストの低減と省スペース化を可能とする。
【0036】
また二次加熱機10は、ガスや灯油など燃焼方式を使わないため、安全性が高いとともに、150〜350℃の高温水蒸気を使った低酸素状態のため、油脂の酸化を始め、その他食品成分からの酸化物の生成を抑え、ビタミンの破壊が抑制され、加熱処理された食品の保存性が向上し、また食品の退色防止効果を有する。
なお温度センサ31をコンベアベルト4で搬送される食品Wの近傍に配置すれば、食品近傍の温度状況をモニタすることによって、食品近傍の温度状況に基づいてブロア27の回転数制御を行ない、食品近傍の温度状況を基準に閉空間の雰囲気条件を設定することにより、蒸気の過剰供給を防止し、エネルギーロスを抑えることができる。
また現在多品種少量生産が大きな割合を占め、日ごとあるいは時間ごとのレイアウト変更が盛んに行なわれている。本実施例によれば、筐体1の下部にキャスター46を装着し、筐体1を移動可能にすることにより、ラインのレイアウト変更などの際は、一次蒸気配管などを繋ぎ変えるだけで、任意の場所に移動することができ、頻繁なレイアウト変更に対応することができる。
【実施例2】
【0037】
第1実施例の装置を用いて、凍結原料(ハンバーグ用牛肉)の表面殺菌を行なった第2実施例について説明する。
その前段階として、図5は、第1実施例の装置を用いて、閉空間sの雰囲気温度分布を調べた結果を示す。即ち閉空間sの温度を240℃に設定し、その中で温度センサを前後6箇所に取り付けたテストピースを60秒間コンベアベルト上を移動させたときのテストピース表面から10mm付近の雰囲気温度測定結果を示す。図に示すように、テストピース表面から10mm付近の雰囲気は20秒間で200℃に昇温しており、入口付近及び出口付近に設けられたノズル管20及び17によるエアカーテン効果が発揮されていることがわかる。
【0038】
第2実施例では、閉空間sの温度を200℃に設定し、凍結肉表面温度を装置投入後30秒で80℃に昇温可能とすることを目的として運転した結果を図6の温度グラフに示す。図6は、筐体1の入口から出口までの凍結肉表面温度を測定したもので、図6からほぼ目的が達成されていることがわかる。
このときの菌数(大腸菌群)は、処理前:1.0×10/100cmに対して、処理後:検出されず/100cmであった。
【実施例3】
【0039】
次に前記第1実施例の装置を惣菜(卵焼き)の表面殺菌に適用した第3実施例を説明する。卵焼き表面温度80℃30秒を目的とした場合、庫内温度設定については180℃1分の処理により、菌数(大腸菌群)は、処理前:1.0×10/100cmに対して、処理後:検出されず/100cmであった。また外観は、黄色部分及び焼き目部分ともにほとんど変化がなかった。
図7の(a)は、黄色部分の外観変化を測定したグラフ、(b)は、焼き目部分の外観を測定したグラフである。このグラフは、JIS(JISZ8729)で規定されたL表色系色度図であり、明度をL、色度をa(赤方向)、b(黄色方向)で表す。数値が大きくなるにしたがって色鮮やかになり、視位置が小さくなるにしたがってくすんだ色になる。図7からわかるように、2分経過してもほとんど明度及び色度が変わらないことがわかる。
【実施例4】
【0040】
次に前記第1実施例の装置を冷凍ハンバーグの加熱・焼成に適用した第4実施例について説明する。庫内温度320℃に設定し、130gのハンバーグで中芯温度90℃1秒仕上げで8分、70gのハンバーグで中芯温度90℃1秒仕上げで5分で完了した。このとき殺菌効果+表面の焼成による焼き目の形成+可食に値する調理が可能であった。
【実施例5】
【0041】
次に前記第1実施例の装置をホウレンソウのブランチングに適用した第5実施例について説明する。庫内温度を200℃に設定し、メッシュベルト1m当たり5kgのホウレンソウを2束程度積層させ、1分処理で青々として、シャキシャキ感のある食感を特徴とするブランチングホウレンソウが調理できた。また歩留まりが98.7%であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、加熱スピードが速くて処理効率が高く、安全性に問題がなく、個々の食品の解凍、加熱、殺菌、蒸煮、焼成、乾燥、ブランチングなどの調理等各種用途に最適な条件設定を容易に行なうことのできる加熱方法及び加熱装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明装置の第1実施例の断面立面図である。
【図2】前記第1実施例の断面平面図である。
【図3】前記第1実施例の制御系の系統図である。
【図4】前記第1実施例の制御装置のブロック線図である。
【図5】本発明の第2実施例におけるテストピース移動雰囲気温度の測定結果を示す線図である。
【図6】本発明の第2実施例におけるテストピース表面温度の測定結果を示すグラフである。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の第3実施例における外観測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 筐体
2 入口開口
3 出口開口
4 コンベアベルト
5 従動スプロケット
6 駆動スプロケット
7,8 ケーシング
9,28 駆動モータ
10 二次加熱機
11 高周波発生装置
12 一次蒸気管路
13,14 循環管路
15 上部ヘッダ
16 下部ヘッダ
17,18,19,20,21,22,23,24 ノズル管
25 基台
26 底板
27 循環ブロア
29 吸込口
30 チェーンベルト
31,35 温度センサ
40,41 流量調整弁
42 ラジエータ
43,44 冷却水循環管路
45 点検扉
46 キャスター
47 開閉弁付排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高耐熱性パネルで囲われた閉空間に、同閉空間を貫く高耐熱性のコンベアで食品を搬送させながら、連続的に加熱する装置において、他の加熱源で発生した一次水蒸気を誘電加熱又は誘導加熱によって150〜350℃に加熱し二次高温水蒸気を製造する二次加熱装置と、前記閉空間に分散配置され同閉空間に前記二次高温水蒸気を供給する複数のノズルと、同閉空間から排蒸気を排気する排気口と前記加熱装置とを接続する排蒸気循環路と、同排蒸気循環路に介設された高耐熱性ブロアと、前記二次加熱装置に一次水蒸気を供給する流路及び前記排蒸気循環路に設けられ、一次水蒸気の供給割合を調節可能にした弁機構とを備えたことを特徴とする食品加熱装置。
【請求項2】
前記コンベアの上下に複数のノズル管を分散配置し、前記閉空間の入口及び出口の上方に配置されたノズル管を食品の搬送方向と直角方向に配置したストレート型とするとともに、これらノズル管のノズル開口を真下に向け、前記ストレート型ノズル管以外はループ型とし、コンベアの上方に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を前記閉空間の中央側に傾斜させ、下方に配置されたループ型ノズル管のノズル開口を真下に向けたことを特徴とする請求項1記載の食品加熱装置。
【請求項3】
前記閉空間を形成する筐体の前記コンベアの長手方向に沿う側壁面に点検扉を設け、同筐体の底面を形成する底板を着脱可能とし、同底板に排水口を設け、同筐体内部を洗浄可能にしたことを特徴とする請求項1記載の食品加熱装置。
【請求項4】
前記加熱装置本体を収容した筐体の下部にキャスターを設け、同筐体を移動可能にしたことを特徴とする請求項1記載の食品加熱装置。
【請求項5】
請求項1記載の食品加熱装置において、前記閉空間の温度を検出する温度センサによって閉空間の温度状況をモニタし、このデータ情報に基づいて前記ブロアの回転数を比例制御によって調節することにより、前記閉空間の温度を150〜350℃に制御するとともに、前記二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を検出する温度センサにより出口側水蒸気温度をモニタし、このデータ情報に基づいて前記二次加熱装置の出力を比例制御によって調節することにより、同二次加熱装置の出口側水蒸気の温度を制御することを特徴とする食品加熱方法。
【請求項6】
前記閉空間内で温度センサを前記コンベアで搬送される食品の近傍に設け、食品近傍の温度状況をモニタすることを特徴とする請求項4記載の食品加熱方法。
【請求項7】
食品を蒸煮又は焼成するに際し、一次水蒸気の前記二次加熱装置への供給量及び前記閉空間の温度を調整することにより、前記閉空間の水蒸気の相対湿度を3〜6%RHに制御することを特徴とする請求項4記載の食品加熱方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−204808(P2006−204808A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24476(P2005−24476)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年8月3日、4日 日本食品工学会主催の「日本食品工学会 第5回(2004年度)年次大会」において文書をもって発表
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】