説明

食品類の搬送方法及びその搬送装置

【課題】食品の製造工程において最終醗酵工程と焼成工程とを食品生地類を載置した展板に振動を与えずに、旋回し移載する食品類の搬送方法及びその搬送装置を提供する。
【解決手段】コンベヤ装置1は、パン製造工程の最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路を、複数台の直線状の搬送コンベヤK1とカーブ状の搬送コンベヤとで構成し、接続部に、展板2の底面を接触または非接触で吸着保持し、展板2に上下の振動を与ずに先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載する移載搬送手段8を設ける。搬送コンベヤに並列なコンベヤベルト4a,4bの間には、展板2の底面を接触または非接触で搬送コンベヤの上面と水平に保持する複数個の吸着保持手段15を表面に設けた昇降かつ旋回可能な円形状のターンテーブル16を設置し、このターンテーブル16の裏面側中心部に設けた支持軸をスライド搬送手段18上に立設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パン,菓子等の食品生地類を載置した展板を搬送する搬送コンベヤ等の食品類の搬送方法及びその搬送装置に係わり、更に詳しくは、食品の製造工程において最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置した複数台の搬送コンベヤにより食品生地類を載置した展板を搬送する際、展板に振動を与えることなく、かつ展板を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載させ、展板上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、かつ常に一定の品質を保持させた状態で搬送させることが出来る食品類の搬送方法及びその搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パン,菓子等の食品の製造工程では、食品生地類を搬送する手段として所定の長さのチェーンコンベヤ,ベルトコンベヤ,ローラコンベヤ等の搬送コンベヤを複数台接続させて使用され、所定の形状に成型したパン,菓子等の食品生地類を展板上に載置して搬送コンベヤ上に乗せて搬送する方法が行われている。
【0003】
特に、パンの製造工程において、食品生地の最終醗酵工程と焼成工程(例えば、トンネルオーブン等)とを結ぶ搬送経路には、食品生地を載置した展板を載せて所定の速度で搬送する複数台の搬送コンベヤを直線的、または湾曲した状態で接続して成るコンベヤ装置が設置されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、上記の最終醗酵工程と焼成工程(オーブン)とを結ぶ搬送経路に設置される搬送コンベヤは、所定の長さ(機長)に形成されたチェーンコンベヤ等の搬送コンベヤを複数台接続させて設置するため、搬送コンベヤの接続部における繋ぎ部の凹凸等で食品生地を載置した展板が上下または左右に振動し、展板上に載置した所定の形状に成形された食品生地の形態や品質に悪影響を与えると言う問題があった。
【0005】
即ち、最終醗酵された食品生地は軟らかくて形状が不安定な上に生地内には醗酵に伴う気泡等が存在し、搬送コンベヤの接続部において展板が上下振動した際に生地の外形が変形したり、生地内の気泡等が潰れて変形し、この状態で焼成工程(オーブン)で食品生地を焼成すると製品の外観が崩れたり、凹んだ状態の製品が出来、製品の外観不良や品質不良となる問題があった。また、展板が上下振動する他の原因としては、現在、展板の搬送を搬送コンベヤ上で制御していないため、展板の停止時に展板同士が衝突して振動が発生したり、また展板の搬送時に、搬送コンベヤの接続部における渡りが広い(接続部の間隔が広い)ため、搬送コンベヤの渡り部でタテ振動が発生し、更に、展板には製造時や使用中に反りが出来るため、振動増幅の原因となっていた。
【0006】
また一方、加工食品(パン等)の種類によっては、最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置される搬送コンベヤ上において食品生地を載置した展板を水平方向に所定の角度旋回させて食品生地に加工(例えば、タマゴの黄身やマヨネーズ等の他の材料の塗布やクリーム、ソウセイジ等の材料のトッピング、他の材料の注入等)を施したり、焼成位置に変更等を加える場合ことがあり、この場合には、従来では、シリンダー等の装置を使用して展板上の製品の角度を変更したり、搬送コンベヤを停止させて作業員が展板の角度を変更したり位置調整をする必要があり、多くの手間と時間がかかり、生産性の向上を図ることが出来ないばかりか、製品の均一性に影響を与えると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−305025号公報
【特許文献2】特開平11−11655号公報
【特許文献3】特開2007−124928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明はかかる従来の課題に着目し、食品の製造工程において最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置した複数台の搬送コンベヤにより食品生地類を載置した展板を搬送する際に展板に振動を与えることなく、展板を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載させることが出来、展板上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、生産性の向上を図ることがで生きる食品類の搬送方法及びその搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の食品類の搬送方法は、食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置した複数台の搬送コンベヤにより食品生地を載置した展板を搬送する食品類の搬送方法であって、前記食品生地を載置した展板を複数台の搬送コンベヤにより搬送する際、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に設置した移載搬送手段により搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、該展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤ上から後の搬送コンベヤ上に移載させ、その後、搬送されて来た展板の底面を昇降かつ旋回可能なターンテーブル上に設けた吸着保持手段により接触または非接触で水平に保持すると共に搬送コンベヤの上面から持ち上げ、前記展板を保持したターンテーブルをリニヤスライド搬送手段により搬送コンベヤの搬送方向に沿ってスライドさせながらターンテーブルと共に展板を水平方向に所定の角度旋回させ、前記食品生地を載置した展板を次の搬送コンベヤ上まで移動させてた後、展板をターンテーブルの吸着保持手段から解放して前記搬送コンベヤ上に展板を移載することを要旨とするものである。
【0010】
ここで、前記ターンテーブルの昇降かつ旋回作動を昇降用サーボシリンダーと旋回用サーボモータとにより行い、前記吸着保持手段を備えたターンテーブルの昇降作動、展板の吸着保持作動、ターンテーブルのスライド搬送,旋回作動、及び展板の吸着解放作動を制御装置に設定した搬送制御プログラムに基づき連続的に行うものである。
【0011】
また、この発明の食品類の搬送装置は、食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に、食品生地を載置した展板の底面を支持して搬送する並列な搬送コンベヤを複数台接続させて設置し、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載させるための移載搬送手段を設け、前記並列な搬送コンベヤの間に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で搬送コンベヤの上面上に水平に保持する吸着保持手段を備えた昇降かつ旋回可能なターンテーブルを設置し、このターンテーブルの支持軸をスライド搬送手段上に立設し、このスライド搬送手段は、前記並列な搬送コンベヤの間に搬送コンベヤの搬送方向に沿って敷設したガイド手段にスライド可能に設置すると共に、パルスモータを備えたリニヤスライド機構によりスライド移動するようにしたことを要旨とするものである。
【0012】
ここで、前記ターンテーブルの支持軸に、支持軸を旋回させる旋回サーボモータと、支持軸を昇降させる昇降サーボシリンダーとを設け、前記移載搬送手段が、前記展板が磁石により吸着する金属材料の場合、磁石を埋設したタイミングベルトを使用し、前記展板が磁石により吸着しない金属材料または非金属材料の場合には、吸引装置に接続されたバキュームパッドまたは接着手段を塗布または貼着させたタイミングベルトを使用するものである。
【0013】
また、前記磁石を埋設したタイミングベルトは、ベルト裏面側に駆動用スプロケットと係合する係合爪を備えたエンドレス状のベルトであって、ベルト表面側の幅方向中央には、マグネットを埋設した展板のガイド用突起をベルト周方向に所定の間隔で設け、前記昇降かつ旋回可能なターンテーブルの吸着保持手段は、前記展板が磁石により吸着する金属材料の場合、ターンテーブルの表面に少なくとも一個以上の磁石を埋設し、前記展板が磁石により吸着しない金属材料または非金属材料の場合には、ターンテーブルの表面に吸引装置に接続された少なくとも一個以上のバキュームパッドまたは接着手段を塗布または貼着させるものである。 また、前記並列な搬送コンベヤが、所定の間隔で配設したエンドレス状の二本のベルトコンベヤ、またはエンドレス状の二本のチェーンコンベヤである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は上記のように、この発明の食品類の搬送方法は、食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置した複数台の搬送コンベヤにより食品生地を載置した展板を搬送する食品類の搬送方法であって、前記食品生地を載置した展板を複数台の搬送コンベヤにより搬送する際、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に設置した移載搬送手段により搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、該展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤ上から後の搬送コンベヤ上に移載させ、その後、搬送されて来た展板の底面を昇降かつ旋回可能なターンテーブル上に設けた吸着保持手段により接触または非接触で水平に保持すると共に搬送コンベヤの上面から持ち上げ、前記展板を保持したターンテーブルをリニヤスライド搬送手段により搬送コンベヤの搬送方向に沿ってスライドさせながらターンテーブルと共に展板を水平方向に所定の角度旋回させ、前記食品生地を載置した展板を次の搬送コンベヤ上まで移動させてた後、展板をターンテーブルの吸着保持手段から解放して前記搬送コンベヤ上に展板を移載するので、展板上の食品生地に上下、左右に振動を与えることなく、かつ展板を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに精度良く、かつ確実に移載させることが出来、展板上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、搬送途中の加工も容易に行うことが出来、生産性の向上を図ることが出来る効果がある。
【0015】
また、食品類の搬送装置は、食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に、食品生地を載置した展板の底面を支持して搬送する並列な搬送コンベヤを複数台接続させて設置し、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載させるための移載搬送手段を設け、前記並列な搬送コンベヤの間に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で搬送コンベヤの上面上に水平に保持する吸着保持手段を備えた昇降かつ旋回可能なターンテーブルを設置し、このターンテーブルの支持軸をスライド搬送手段上に立設し、このスライド搬送手段は、前記並列な搬送コンベヤの間に搬送コンベヤの搬送方向に沿って敷設したガイド手段にスライド可能に設置すると共に、パルスモータを備えたリニヤスライド機構によりスライド移動するようにしたので、既存設備に吸着保持手段を備えた昇降かつ旋回可能なターンテーブルとスライド搬送手段を設置するだけで良く、簡易な設備にすることが出来ると共に、展板上の食品生地に品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、生産性の向上を図ることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の食品類の搬送方法を実施するためのパンの製造工程における食品生地の最終醗酵工程Fと焼成工程(オーブン)Xとを結ぶ搬送経路の概略平面図である。
【図2】図1の搬送経路に設置されたコンベヤ装置の一部斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、食品生地を載置した展板の種類を示す平面図である。
【図4】食品生地を載置した展板が搬送コンベヤの接続部上を移動する際の拡大断面図である。
【図5】磁石を埋設した複数のガイド用突起を備えたエントレス状のタイミングベルトの斜視図である。
【図6】搬送コンベヤの直線搬送面とカーブ搬送面の接続部に設けたタイミングベルトの側面図である。
【図7】図2の平面図である。
【図8】図7のA−A矢視側面図である。
【図9】図7のB−B矢視側面図である。
【図10】搬送コンベヤの接続部に一部拡大斜視図である。
【図11】図10の平面図である。
【図12】食品生地を載置した展板を搬送コンベヤにより直線的に搬送する工程の説明図である。
【図13】食品生地を載置した展板を直交する搬送コンベヤにより旋回させながら移載させて搬送する工程の説明図である。
【図14】食品生地を載置した展板を搬送コンベヤに設けたターンテーブルとスライド搬送手段とで搬送する際のタイムチャートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、この発明を実施した食品類の搬送方法を実施するための搬送装置を設置した食品生地の最終醗酵工程Fと焼成工程(オーブン)Xとを結ぶ搬送経路の概略平面図、図2は図1の搬送経路に設置された搬送コンベヤ装置の一部斜視図を示し、前記搬送コンベヤ装置1は、パン製造工程の最終醗酵工程Fと焼成工程(オーブン)Xとを結ぶ搬送経路Sに、直線状の搬送コンベヤK1とカーブ状の搬送コンベヤK2とを複数台接続させて構成してある。
【0019】
前記直線状の搬送コンベヤK1及びカーブ状の搬送コンベヤK2は、複数列(この実施形態では二列)の並列なエンドレス状のコンベヤベルト4a,4b上に、成型されたパン等の食品生地Wを載置した金属製の展板2を載せて所定の速度で搬送させる。
【0020】
前記搬送コンベヤ装置1は、上述したようにパン製造工程の最終醗酵工程Fと焼成工程(オーブン)Xとを結ぶ搬送経路Sに設置した直線状の搬送コンベヤK1及びカーブ状の搬送コンベヤK2上を成型されたパン等の食品生地Wを載置させた金属製の展板2を載せて所定の速度で搬送させるものである。
【0021】
前記金属製の展板2は、この実施形態では例えば、図3(a),(b),(c)に示すように、鉄板等の磁石により吸着する金属材料をプレス成形した略方形状(四角形または長方形)で断面皿状の金属板であり、展板2上に少なくとも一つ以上の食品生地W(この実施形態ではパン生地)を載置する場合には、展板2の載置面2aに形成した凹部2bに離型油を塗布して焼き着きを防止している。
【0022】
前記複数台の搬送コンベヤK1及びK2は、図1及び図2に示すように、搬送コンベヤK1及びK2の幅方向Hの両側縁部のコンベヤフレーム3a,3bに沿ってエンドレス状のベルトコンベヤ4a,4bが配設され、このコンベヤベルト4a,4bが掛け回された駆動ローラ5の駆動シャフト6は、それぞれの搬送コンベヤK1及びK2に設けられた駆動モータ7により回転駆動されるようになっている。
【0023】
前記複数台の搬送コンベヤK1及びK2の接続部には、図2及び図4〜図6に示すように、搬送されて来る展板2の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、展板2に上下の振動を与えることなく先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに移載させる移載搬送手段8が設けてある。
【0024】
この発明の実施形態では、前記移載搬送手段8を食品生地Wの最終醗酵工程Fと焼成工程Xとを結ぶ搬送経路Sに設置した搬送コンベヤK1及びK2の接続部に設けたが、この実施形態に限定されず、パンの製造工程の他の搬送コンベヤの接続部に設けることも可能である。
【0025】
前記搬送コンベヤK1及びK2の機長(搬送コンベヤK1及びK2の全長)は、展板2の二枚分の長さに合わせて設定し、展板2を一枚づつ搬送させるように制御することで、展板2の追突を防止し、展板2の上下振動等を低減させている。
【0026】
前記移載搬送手段8は、搬送される展板2の大きさにより、搬送コンベヤK1及びK2の幅方向Hに複数列設置することも可能であり、前記移載搬送手段8は、この発明の実施形態のように展板2が磁石により吸着する鉄板等の金属材料の場合には、図4及び図5に示すように、マグネットMを埋設したエンドレス状の樹脂材料から成るタイミングベルト9を使用し、前記展板2がマグネットMにより吸着しない金属材料(例えば、アルミニュウム板、アルミ合金板等)または非金属材料(樹脂材料やセラミック等)の場合には、バキュームまたは接着剤を塗布したタイミングベルト9を使用することも可能である。
【0027】
前記マグネットMを埋設した樹脂材料から成るタイミングベルト9は、図4及び図5に示すように、ベルト裏面側に前記駆動シャフト6と同軸上に設けられた駆動用スプロケット10と従動スプロケット10aに係合する係合爪11を備えたエンドレス状のベルトであって、ベルト表面側9aの幅方向中央には、棒状のマグネットMを埋設した展板2のガイド用突起12をベルト周方向に所定の間隔で設けてある。
【0028】
前記ガイド用突起12は、ベルト表面側9aに立設された脚部12aと、棒状のマグネットMを埋設した頭部12bとから構成され、ベルト表面側9aからの脚部12aの長さや、脚部12aと直交する向きに一体的に形成されたマグネットMを埋設した頭部12bの長さは、タイミングベルト9の幅や長さ等により任意に設定するものである。前記マグネットMを埋設した樹脂材料から成るエンドレス状のタイミングベルト9は、ガイド用突起12の棒状のマグネットMを埋設した頭部12bが、搬送コンベヤK1及びK2の展板2の搬送面と面一となるように取付られている。
【0029】
なお、タイミングベルト9の構成としては、上記のような棒状のマグネットMを埋設したガイド用突起12を設けたものに限定されず、樹脂材料に磁性粉末等を混合させてガイド用突起12の全体に磁力を持たせるように構成することも可能である。また、展板2がマグネットMにより吸着しない金属材料や非金属材料の場合には、展板2を磁力るより吸着して次の搬送コンベヤ上に移載させることが難しいため、その場合には、タイミングベルト9のガイド用突起12に図示しないバキューム装置に接続されたバキュームパットや、ガイド用突起12の表面に展板2の底面に接着する接着力の弱い粘着材料を塗布して展板2の底面を吸着保持するように構成することも可能であり、展板2には上下振動与えることなく次工程の搬送コンベヤ上まで移載させることも可能である。
【0030】
前記搬送コンベヤK1及びK2の並列なコンベヤベルト4a,4bの間には、図2、図7〜図9に示すように、搬送されて来る展板2の底面を接触または非接触で搬送コンベヤの上面と水平に保持する複数個の吸着保持手段15を表面に設けた昇降かつ旋回可能な円形状のターンテーブル16が設置してあり、このターンテーブル16の裏面側中心部に設けた支持軸17をスライド搬送手段18上に立設してある。
【0031】
前記スライド搬送手段18は、前記並列なコンベヤベルト4a,4bの間に搬送コンベヤK1及びK2の搬送方向に沿って配設したガイドレール等のガイド手段19上に載置され、このスライド搬送手段18は、パルスモータ20を備えたリニヤスライド機構21の駆動機構により例えば、この実施形態では1000mm前後スライドするようになっている。
【0032】
前記ターンテーブル16の支持軸17には、図8及び図9に示すように、支持軸17を旋回させる旋回サーボモータ22と、支持軸17を例えば、50mm前後昇降させる昇降サーボシリンダー23とが設けてあり、前記昇降かつ旋回可能なターンテーブル16の表面に設置した複数の吸着保持手段15は、前記展板がマグネットにより吸着する金属材料の場合、ターンテーブル9の表面に少なくとも一個以上のマグネット(例えば、電磁石等)を埋設し、また前記展板2がマグネットにより吸着しない金属材料または非金属材料の場合には、ターンテーブル2の表面に吸引装置に接続されたバキュームパッドまたは接着手段を塗布または貼着させて構成するものである。
【0033】
前記搬送コンベヤK1及びK2の並列なコンベヤベルト4a,4bの代わりにエンドレス状の二本のチェーンコンベヤを使用することも可能であり、チェーンコンベヤは、チェーンのピッチを小さくして形成することによりチェーンコンベヤの端末部の旋回曲率半径を小さくすることが出来、この結果、多角形運動のギャップを縮小して接続部間の間隔を狭くでき、搬送する展板2には上下振動を軽減することが出来るものである。
【0034】
なお、上記の移載搬送手段8は、複数台の搬送コンベヤK1及びK2の接続部に設けることで、展板2に上下の振動を与えることなく先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに移載させることが出来、また吸着保持手段15を表面に設けた昇降かつ旋回可能な円形状のターンテーブル16及びパルスモータ20を備えたリニヤスライド機構21は、直線状の搬送コンベヤK1及びカーブ状の搬送コンベヤK2において、食品生地Wを少なくとも一つ以上載置した金属製の展板2を振動を与えることなく直線的にスライドさせたり、また直線移動の間に展板2を所定の角度で水平方向に旋回させて移動させることが出来ると共に、次の直線状の搬送コンベヤK1及びカーブ状の搬送コンベヤK2上に移載させることが出来るものである。
【0035】
また、前記搬送コンベヤK1及びK2の並列なコンベヤベルト4a,4bの外側には、図7に示すように、展板2が搬送されて来たことを検出する複数個の検出センサーPH1、PH2、PH3、PH4が設置してあり、この検出センサーPH1、PH2、PH3、PH4で検出した信号を搬送コンベヤ装置1の一部に設置した制御装置25に出力し、前記複数台の搬送コンベヤK1及びK2や、移載搬送手段8、ターンテーブル16及びパルスモータ20を備えたリニヤスライド機構21等の作動を制御するようになっている。
【0036】
次に、上記のようなような最終醗酵工程Fと焼成工程(オーブン)Xとを結ぶ搬送経路において食品類の搬送方法について説明する。
【0037】
この発明では、食品の製造工程において最終醗酵工程Fと焼成工程Xとを結ぶ搬送経路に設置した複数台の直線状の搬送コンベヤK1及びカーブ状の搬送コンベヤK2により食品生地Wを載置した展板2を搬送する際に展板2に振動を与えることなく、展板2を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに移載させることが出来、展板2上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、生産性の向上を図ることができる搬送方法である。
【0038】
即ち、この発明では食品生地Wを載置した展板2を複数台の搬送コンベヤK1及びK2により搬送する際、前記複数台の搬送コンベヤK1及びK2の接続部に設置した移載搬送手段8により搬送されて来る展板2の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、該展板2に振動を与えることなく先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに移載させる。
【0039】
その後、搬送されて来た展板2を検出センサーPH1、PH2が検出すると、ターンテーブル16が昇降サーボシリンダー23の伸長作動により上昇し、展板2の底面を吸着保持手段15(電磁石)により接触または非接触で水平に保持すると共に、搬送コンベヤK1及びK2の並列なコンベヤベルト4a,4bの上面から数十ミリ持ち上げる。
【0040】
そして、前記展板2を保持したターンテーブル16をパルスモータ20を備えたリニヤスライド機構21によりガイドレール等のガイド手段19に沿ってスライドさせながらターンテーブル16と共に展板2を水平方向に所定の角度旋回させ、前記食品生地Wを載置した展板2を次の搬送コンベヤKy上まで移動させた後、展板2をターンテーブル16の吸着保持手段15から解放して前記搬送コンベヤKy上に移載するのである。
【0041】
ここで、前記ターンテーブル16の昇降かつ旋回作動は、昇降用サーボシリンダー23と旋回サーボモータ22とにより行い、ターンテーブル16のスライド搬送及び旋回作動、及び展板の吸着解放作動を制御装置に設定した搬送制御プログラム(この実施形態では図14に示すタイムチャート)に基づき連続的に行うものである。
【0042】
例えば、搬送コンベヤK1及びK2の並列なコンベヤベルト4a,4bにより搬送する食品生地Wを載置した展板2を上記のターンテーブル16により吸着保持した状態で1000mm前後スライドさせると仮定した場合、1回のストローク制御時間としては3.9秒で行う。
【0043】
例えば、搬送されて来た展板2を検出センサーPH1、PH2が検出し、0.2秒後に昇降用サーボシリンダー23が伸長作動を開始してターンテーブル16を上昇させ、展板2の底面をターンテーブル16の上面に配設した吸着保持手段15で吸着保持する。次いで、パルスモータ20を備えたリニヤスライド機構21及び旋回サーボモータ22が作動を開始して、展板2を保持したターンテーブル16をガイドレール等のガイド手段19に沿って所定の距離、所定時間スライドさせると共に、ターンテーブル16と共に展板2を水平方向に所定の角度旋回させて展板2上の食品生地Wを所定の角度に変更する。
【0044】
このように、展板2の搬送途中において食品生地Wを水平方向に所定の角度変更するのは、搬送中にパン等の食品生地Wの表面に玉子の黄身等を均一に塗ったり、他の材料をトッピングする場合があるためであり、このような時に一々、展板2及び食品生地Wを手作業や他の駆動シリンダー等を使用していたのでは作業能率が悪く、また均一な製品も出来難く、更に生産性の向上も図ることが出来ないからである。
【0045】
このようにして、リニヤスライド機構21及び旋回サーボモータ22が作動を開始して所定時間経過後、食品生地Wを載置した展板2を検出センサーPH3、PH4が検出して次の搬送コンベヤKy上まで移動させた後、展板2をターンテーブル16の吸着保持手段15(磁石)から解放して前記搬送コンベヤKy上に移載するのである。
【0046】
このようにして、一つの展板2の搬送移載作業が終了した時点で、昇降用サーボシリンダー23が収縮作動を開始してターンテーブル16を下降させ、リニヤスライド機構21及び旋回サーボモータ22が元の位置に戻り、次に、搬送されて来る展板2の吸着搬送の準備を行う。
【0047】
以上の工程は、一つの食品生地Wを載置した展板2の搬送方法であり、このような操作を搬送されて来る展板2に対して繰り返し行うものである。この結果、食品生地Wを載置した展板2を搬送する際に展板2に振動を与えることなく、展板2を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに移載させることが出来、展板2上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、生産性の向上を図ることがでるのである。
【0048】
以上のような搬送方法により、食品の製造工程における最終醗酵工程Fと焼成工程Xとを結ぶ搬送経路Sに設置した複数台の搬送コンベヤK1,K2により食品生地Wを載置した展板2を搬送する K D、展板2上の食品生地Wに上下、左右に振動を与えることなく、かつ展板を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに精度良く、かつ確実に移載させることが出来、展板上に載置された食品類の品質に影響を与えることなく、常に一定の品質を保持させることが出来、搬送途中の加工も容易に行うことが出来、生産性の向上を図ることが出来るのである。
【0049】
また、搬送コンベヤK1及びK2の接続部に移載搬送手段8を設けて、展板2を非接触状態で吸着保持すると共に、展板2の上下振動を低減させ、先の搬送コンベヤK1またはK2から後の搬送コンベヤK1またはK2に移載させる結果、展板上の食品生地や形態に悪影響を与えることなく搬送させることが出来、常に均一な製品を保持させて品質の向上を図ることが出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明では、特にパンの製造工程において、搬送経路Sに設置したコンベヤ装置1の搬送コンベヤK1及びK2により搬送する際、展板2上に載置されたパン生地Wが搬送コンベヤの接続部における上下振動等の影響を少なくし、パン生地Wの形態や品質に悪影響を与えることなく、また展板を所定の角度水平方向に旋回させて先の搬送コンベヤKxから後の搬送コンベヤKyに精度良く、かつ確実に移載させることが出来、常に均一な製品を保持させて品質の向上を図ることが出来る食品類の搬送装置である。
【符号の説明】
【0051】
1 搬送コンベヤ装置
2 展板
3a,3b コンベヤフレーム
4a,4b ベルトコンベヤ
5 駆動ローラ
6 駆動シャフト
7 駆動モータ
8 移載搬送手段
9 タイミングベルト
9a ベルト表面側
10 駆動用スプロケット
10a 従動スプロケット
11 係合爪
12 ガイド用突起
12a 脚部
12b 脚部
15 吸着保持手段
16 ターンテーブル
17 支持軸
18 スライド搬送手段
19 ガイド手段
20 パルスモータ
21 リニヤスライド機構
22 旋回サーボモータ
23 昇降サーボシリンダー
PH1、PH2、PH3、PH4 検出センサー
M マグネット
K1,K2 搬送コンベヤ
Kx 先の搬送コンベヤ
Ky 後の搬送コンベヤ
F 最終醗酵工程
X 焼成工程
S 搬送経路
H 搬送コンベヤの幅方向
W 食品生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に設置した複数台の搬送コンベヤにより食品生地を載置した展板を搬送する食品類の搬送方法であって、
前記食品生地を載置した展板を複数台の搬送コンベヤにより搬送する際、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に設置した移載搬送手段により搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、該展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤ上から後の搬送コンベヤ上に移載させ、その後、搬送されて来た展板の底面を昇降かつ旋回可能なターンテーブル上に設けた吸着保持手段により接触または非接触で水平に保持すると共に搬送コンベヤの上面から持ち上げ、前記展板を保持したターンテーブルをリニヤスライド搬送手段により搬送コンベヤの搬送方向に沿ってスライドさせながらターンテーブルと共に展板を水平方向に所定の角度旋回させ、前記食品生地を載置した展板を次の搬送コンベヤ上まで移動させた後、展板をターンテーブルの吸着保持手段から解放して前記搬送コンベヤ上に展板を移載することを特徴とする食品類の搬送方法。
【請求項2】
前記ターンテーブルの昇降かつ旋回作動を昇降用サーボシリンダーと旋回用サーボモータとにより行う請求項1に記載の食品類の搬送方法。
【請求項3】
前記吸着保持手段を備えたターンテーブルの昇降作動、展板の吸着保持作動、ターンテーブルのスライド搬送,旋回作動、及び展板の吸着解放作動を制御装置に設定した搬送制御プログラムに基づき連続的に行う請求項1または2に記載の食品類の搬送方法。
【請求項4】
食品の製造工程における最終醗酵工程と焼成工程とを結ぶ搬送経路に、食品生地を載置した展板の底面を支持して搬送する並列な搬送コンベヤを複数台接続させて設置し、前記複数台の搬送コンベヤの接続部に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で吸着保持すると共に、展板に振動を与えることなく先の搬送コンベヤから後の搬送コンベヤに移載させるための移載搬送手段を設け、前記並列な搬送コンベヤの間に、搬送されて来る展板の底面を接触または非接触で搬送コンベヤの上面上に水平に保持する吸着保持手段を備えた昇降かつ旋回可能なターンテーブルを設置し、このターンテーブルの支持軸をスライド搬送手段上に立設し、このスライド搬送手段は、前記並列な搬送コンベヤの間に搬送コンベヤの搬送方向に沿って敷設したガイド手段にスライド可能に設置すると共にパルスモータを備えたリニヤスライド機構によりスライド移動するようにしたことを特徴とする食品類の搬送装置。
【請求項5】
前記ターンテーブルの支持軸に、支持軸を旋回させる旋回サーボモータと、支持軸を昇降させる昇降サーボシリンダーとを設けた請求項4に記載の食品類の搬送装置。
【請求項6】
前記移載搬送手段が、前記展板が磁石により吸着する金属材料の場合、磁石を埋設したタイミングベルトを使用し、前記展板が磁石により吸着しない金属材料または非金属材料の場合には、吸引装置に接続されたバキュームパッドまたは接着手段を塗布または貼着させたタイミングベルトを使用する請求項4または5に記載の食品類の搬送装置。
【請求項7】
前記磁石を埋設したタイミングベルトは、ベルト裏面側に駆動用スプロケットと係合する係合爪を備えたエンドレス状のベルトであって、ベルト表面側の幅方向中央には、マグネットを埋設した展板のガイド用突起をベルト周方向に所定の間隔で設けた請求項6に記載の食品類の搬送装置。
【請求項8】
前記昇降かつ旋回可能なターンテーブルの吸着保持手段は、前記展板が磁石により吸着する金属材料の場合、ターンテーブルの表面に少なくとも一個以上の磁石を埋設し、前記展板が磁石により吸着しない金属材料または非金属材料の場合には、ターンテーブルの表面に吸引装置に接続された少なくとも一個以上のバキュームパッドまたは接着手段を塗布または貼着させた請求項4または5に記載の食品類の搬送装置。
【請求項9】
前記並列な搬送コンベヤが、所定の間隔で配設したエンドレス状の二本のベルトコンベヤ、またはエンドレス状の二本のチェーンコンベヤである請求項4、5、6、7または8に記載の食品類の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−144318(P2012−144318A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3177(P2011−3177)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(504063585)株式会社日本動熱機製作所 (3)
【Fターム(参考)】