説明

飲酒運転防止装置

【課題】電力消費をより抑制することが可能な飲酒運転防止装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載される飲酒運転防止装置であって、走行駆動手段の状態を検出する走行駆動手段状態検出手段と、ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキペダル操作状態検出手段と、運転者が飲酒状態であるか否かを検査するための飲酒状態検査手段と、前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出され、且つ前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出されたときに、前記飲酒状態検査手段を作動させる制御手段と、を備える飲酒運転防止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転を防止するための飲酒運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転の観点から、運転者が飲酒状態であるか否かを判定し、飲酒状態でないと判定された場合にのみ車両の走行を許可するような飲酒運転防止装置についての研究が進められている。
【0003】
運転者が飲酒状態であるか否かを判定する手法としては、例えば、呼気吹き込み口を備えた検査装置を運転席付近に配設して、車両の発進時などに運転者に呼気を吹き込ませ、呼気中に含まれるアルコールやアセトアルデヒド等の指標成分の濃度を判定閾値と比較して判定を行なうことが考えられる。
【0004】
こうした装置の一種であって、ドライバの乗車を検出する乗車検出手段と、ドライバ呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、前記乗車検出手段によりドライバの乗車が検出された場合に、前記アルコール濃度検出手段に電力を供給する電力供給手段と、前記アルコール濃度検出手段からの検出値に基づいてドライバの飲酒状態を判定する判定手段とを有する飲酒状態検出装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、この文献には、ドライバの乗車を検出する乗車検出手段の一例としてドアの開閉を検出するセンサやシートベルトスイッチ、シート内の圧力センサが挙げられている。
【特許文献1】特開平6−50918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、運転者が乗車したからといって、直ちに車両を発進させる意図があるとは限らない。従って、上記特許文献1に記載の装置では、アルコール濃度検出手段に無駄な電力供給がなされる場合がある。例えば、単に人が車室内の荷物を取るために乗車した場合や、乗車してから車両の発進までに時間がある場合が考えられる。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、電力消費をより抑制することが可能な飲酒運転防止装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
車両に搭載される飲酒運転防止装置であって、
走行駆動手段の状態を検出する走行駆動手段状態検出手段と、
ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキペダル操作状態検出手段と、
運転者が飲酒状態であるか否かを検査するための飲酒状態検査手段と、
前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出され、且つ前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出されたときに、前記飲酒状態検査手段を作動させる制御手段と、
を備える飲酒運転防止装置である。
【0008】
この本発明の第1の態様によれば、一般的にエンジン始動のための必須動作とされている、運転者によるブレーキペダル操作をトリガーとして飲酒状態検査手段を作動させるため、運転者がエンジンを始動させようとする直前に、飲酒状態検査手段が作動開始することとなる。従って、飲酒状態検査手段による電力消費の無駄を小さくすることができる。これにより、電力消費をより抑制することができる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、
車両に搭載される飲酒運転防止装置であって、
走行駆動手段の状態を検出する走行駆動手段状態検出手段と、
ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキペダル操作状態検出手段と、
運転者が飲酒状態であるか否かを検査するための飲酒状態検査手段と、
少なくとも前記飲酒状態検査手段に電力供給可能な電力供給手段と、
前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出され、且つ前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出されたときに、前記飲酒状態検査手段に電力供給を開始するように前記電力供給手段を制御する制御手段と、
を備える飲酒運転防止装置である。
【0010】
この本発明の第2の態様によれば、一般的にエンジン始動のための必須動作とされている、運転者によるブレーキペダル操作をトリガーとして飲酒状態検査手段に電力供給を開始するため、運転者がエンジンを始動させようとする直前に、飲酒状態検査手段が作動可能状態となる。従って、飲酒状態検査手段による電力消費の無駄を小さくすることができる。これにより、電力消費をより抑制することができる。
【0011】
本発明の第1又は第2の態様において、
前記制御手段は、前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出されたときに、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られた場合に、前記車両の駆動装置の始動を許可する手段であるものとしてもよい。
【0012】
これにより、ブレーキペダルを踏み込みながら運転者が交代するのは困難であるため、いわゆる他人によるなりすましを防止することができる。
【0013】
本発明の第1又は第2の態様において、
前記走行駆動手段の始動を指示するための始動スイッチを備え、
前記制御手段は、前記走行駆動手段の始動のために前記飲酒状態検査装置により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られたことを要する場面において、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られたときに、前記走行駆動手段を前記始動スイッチの操作を経ずに始動させる手段であるものとしてもよい。
【0014】
これにより、運転者の操作負担や煩わしさを軽減することができる。
【0015】
本発明の第1又は第2の態様において、
前記制御手段は、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られた場合に、前記走行駆動手段を始動させる手段であるものとしてもよい。
【0016】
これにより、運転者の操作負担や煩わしさを軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力消費をより抑制することが可能な飲酒運転防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0019】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る飲酒運転防止装置1について説明する。図1は、飲酒運転防止装置1の全体構成の一例を示す図である。飲酒運転防止装置1は、主要な構成として、エンジンECU(Electronic Control Unit)10と、ブレーキペダルの踏み込みを検出するためのブレーキスイッチ(ストップランプスイッチとも称される)20と、アルコール検査装置30と、イモビライザーECU40と、バッテリー50と、飲酒運転防止用ECU60と、を備える。図中、破線矢印は、主要な情報通信の流れを示す。
【0020】
各ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。各ECUは、例えば多重通信線によって接続され、入出力される情報を相互に参照可能に構成されている。なお、飲酒運転防止用ECU60は、他のECU等に統合されてよい。
【0021】
エンジンECU10には、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサー12の検出値であるクランク角信号が入力されており、エンジンECU10は、クランク角信号に基づいてエンジンの回転数を算出している。
【0022】
また、エンジンECU10には、エンジンの始動を行なうためのスターター14やスロットルモータ、イグナイター等の機器が接続されており、エンジンECU10は、エンジン始動制御、アイドリング運転制御、吸入空気量調節制御、点火時期制御、フューエルカット制御等を一元的に行なっている。
【0023】
ブレーキスイッチ20は、ブレーキペダルに取り付けられており、ブレーキペダルがある程度以上踏み込まれたときにオン信号を出力する。また、これに代えて、車両が油圧式ブレーキ装置を搭載している場合は、マスターシリンダー内部の液圧を検出するマスター圧センサーが用いられても良い。この場合、マスター圧センサーの出力値が所定値以上である場合に、飲酒運転防止用ECU60等がブレーキペダルがある程度踏み込まれたと判断する。
【0024】
アルコール検査装置30は、例えば、呼気吹き込み口と、検査用センサーと、を備える。呼気吹き込み口は、運転席付近に配設される。より具体的には、運転席が車両の右側に在る国産車においては、例えばインストルメントパネルにおけるステアリングコラムの右方部分など、運転席に着座しなければ検査を受けることが困難となる箇所に配設されることが望ましい。これにより、運転者が検査を受けたことの確からしさを高いものにすることができる。呼気吹き込み口に吹き込まれた運転者の呼気は、専用の流路により検査用センサーに供給される。検査用センサーは、例えば、実際に人間の呼気が吹き込まれたことを確認するための圧力センサーや湿度センサー、及び呼気中のアルコール濃度を測定するアルコールガスセンサーを含む。検査用センサーの出力値、すなわちアルコール検査装置30の検査値は、アナログ/デジタル変換器等を介して飲酒運転防止装置用ECU60に出力される。
【0025】
イモビライザーECU40には、携帯機検出装置42及びスタートスイッチ46が接続されている。携帯機検出装置42は、車両側に登録された各運転者が所有する携帯機44を無線通信によって検出する。携帯機44は、携帯機検出装置42から送られてくるリクエスト信号に応答して微弱電波(応答信号)を発する。携帯機44がユーザーに付帯されて車両に接近すると、スマートキーの応答信号を携帯機検出装置42が受信し、イモビライザーECU40に当該応答信号(スマートキーに固有の個人ID等を含む)が復号等されて入力される。
【0026】
イモビライザーECU40は、携帯機検出装置42から送信される個人IDが予め車両側に登録されているものと一致するか否かを判定し、これが一致し、且つ飲酒運転防止用ECU60からエンジン始動許可信号が入力されると、エンジン始動許可状態となる。この状態でスタートスイッチ46が運転者によりプッシュ操作されると、後述のリレー装置52に指示して走行駆動系の電力ラインを通電状態にすると共に、エンジンECU10に対してエンジン始動指示信号を出力する。
【0027】
バッテリー50は、例えば二次電池であり、図示しないDC/DCコンバータやリレー装置52等を介して、アルコール検査装置30その他の車載機器に電力供給する。アルコール検査装置30は、飲酒運転防止用ECU60を介してバッテリー50に接続されている。バッテリー50から飲酒運転防止用ECU60その他に至る電力ラインは、駐車時においても通電状態となっている。また、飲酒運転防止用ECU60は、エンジン運転中において通電状態となる走行駆動系の電力ラインの電圧を監視しており、その電圧値に基づいてエンジンが運転中であるか、停止中であるかを把握している。
【0028】
エンジンの状態を把握する手法は、これに限らず、例えばエンジンECU10が多重通信線に出力するエンジンの状態信号(IG信号)を参照してもよい。
【0029】
なお、バッテリー50から飲酒運転防止用ECU60を介してアルコール検査装置30に至る電力ライン以外の電力ラインについては、図示及び説明を省略する。
【0030】
飲酒運転防止用ECU60は、走行駆動系の電力ラインの電圧値に基づいてエンジンが停止中であることが確認され、且つブレーキスイッチ20からの入力信号によりブレーキペダルが踏み込まれていることが確認されたときに、内部リレー62をオン状態としてアルコール検査装置30に電力供給を開始し、アルコール検査装置30を作動させる。
【0031】
そして、アルコール検査装置30により運転者が飲酒状態でない(アルコール濃度が閾値未満である)という検査結果を得た場合に、イモビライザーECU40にエンジン始動許可信号を出力する。
【0032】
すなわち、一般的にエンジン始動のための必須動作とされている、運転者によるブレーキペダル操作をトリガーとしてアルコール検査装置30を作動させるのである。これにより、運転者がエンジンを始動させようとする直前に、アルコール検査装置30が作動開始することとなる。従って、アルコール検査装置30による電力消費の無駄を小さくすることができる。
【0033】
また、周知のスマートエントリーシステム等において、ブレーキペダルを踏みながらエンジンスタートスイッチを押すことは一般的であり、運転者にとっても、エンジンを始動させるための一連の動作としてアルコール検査を受けることになるため、煩わしさが軽減される。更に、ブレーキペダルを踏み込みながら運転者が交代するのは困難であるため、いわゆる他人によるなりすまし、すなわち、運転者以外の者が検査を受けて運転者自身は検査を逃れることを防止することができる。
【0034】
図2は、飲酒運転防止用ECU60により実行される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば所定周期をもって繰り返し実行される。
【0035】
まず、上記例示した手法によりエンジンが停止しているか否かを判定する(S100)。エンジンが停止していないと判定した場合は、何も処理を行なわずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0036】
エンジンが停止していると判定した場合は、ブレーキペダルが踏み込まれるまで待機する(S102)。図中、ブレーキペダルを「BP」と表記した。
【0037】
ブレーキペダルが踏み込まれると、アルコール検査装置30を作動させる(S104)。そして、アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれるまで待機する(S106)。
【0038】
S102と並行して、スピーカー等により、ブレーキペダルを踏み込むように運転者に通知してもよい。また、S104と並行して、アルコール検査を受ける必要があることを運転者に通知してもよい。
【0039】
アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれると、運転者が飲酒状態であるか否かを判定する(S108)。運転者が飲酒状態であると判定した場合は、スピーカーによる警報の出力、外部への通報等、所定の飲酒運転抑制制御を実行する(S110)。この場合において、エンジン始動許可信号は出力しない。これにより、飲酒運転を適切に防止することができる。
【0040】
一方、運転者が飲酒状態でないと判定した場合は、エンジン始動許可信号をイモビライザーECU40に出力する(S112)。イモビライザーECU40では、前述した個人IDの照合がとれていることを条件に、運転者がスタートスイッチ46を操作したときにエンジンECU10に対してエンジン始動指示信号を出力する。エンジンECU10は、これに応じてスターター14を駆動してエンジンのクランキング制御を行ない、エンジンを始動させる。
【0041】
以上説明した本実施例の飲酒運転防止装置1によれば、運転者がエンジンを始動させようとする直前に、アルコール検査装置30が作動開始することとなるため、アルコール検査装置30による電力消費の無駄を従来の構成に比して小さくすることができる。
【0042】
また、運転者にとっても煩わしさが軽減され、ブレーキペダルを踏み込みながら運転者が交代するのは困難であるため、いわゆる他人によるなりすましを防止することもできる。
【0043】
<第2実施例>
以下、本発明の第2実施例に係る飲酒運転防止装置2について説明する。飲酒運転防止装置2は、ハードウエア構成において第1実施例に係る飲酒運転防止装置1と共通するため、各構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施例に係るイモビライザーECU40は、携帯機検出装置42から送信される個人IDが予め車両側に登録されているものと一致するか否かを判定し、これが一致し、且つ飲酒運転防止用ECU60からエンジン始動要求信号が入力されると、エンジンECU10に対してエンジン始動指示信号を出力する。
【0045】
本実施例に係る飲酒運転防止用ECU60は、走行駆動系の電力ラインの電圧値に基づいてエンジンが停止中であることが確認され、且つブレーキスイッチ20からの入力信号によりブレーキペダルが踏み込まれていることが確認されたときに、内部リレー62をオン状態としてアルコール検査装置30に電力供給を開始し、アルコール検査装置30を作動させる。
【0046】
そして、アルコール検査装置30により運転者が飲酒状態でない(アルコール濃度が閾値未満である)という検査結果を得た場合に、イモビライザーECU40にエンジン始動要求信号を出力する。
【0047】
すなわち、本実施例においては、エンジンが停止している状態のうち、アルコール検査が必要な場面では、アルコール検査装置30により運転者が飲酒状態でないという検査結果を得た場合に、スタートスイッチ46の操作を待つことなくエンジンが自動的に始動する。
【0048】
これにより、第1実施例と同様に、アルコール検査装置30による電力消費の無駄を小さくすることができるのに加え、運転者の操作負担や煩わしさを、より軽減することができる。
【0049】
なお、「アルコール検査が必要な場面」とは、例えば、夜間であって且つ現在運転席に着座している運転者が未だアルコール検査を受けていないことが確認されているような場面をいう。係る場面であるか否かの判断は、ECUの内部時計のよる時間帯の確認、車室内カメラや着座センサー(圧力センサー)、シートベルトの着脱状態等による運転者の交代検知その他の手法によって行なうことができる。
【0050】
図3は、本実施例に係る飲酒運転防止用ECU60により実行される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、例えば所定周期をもって繰り返し実行される。
【0051】
まず、上記例示した手法によりエンジンが停止しているか否かを判定する(S200)。エンジンが停止していないと判定した場合は、何も処理を行なわずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0052】
エンジンが停止していると判定した場合は、アルコール検査が必要な場面であるか否かを判定する(S202)。アルコール検査が必要な場面でないと判定した場合は、エンジン始動許可信号をイモビライザーECU40に出力する(S204)。
【0053】
アルコール検査が必要な場面であると判定した場合は、ブレーキペダルが踏み込まれるまで待機する(S206)。
【0054】
ブレーキペダルが踏み込まれると、アルコール検査装置30を作動させる(S208)。そして、アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれるまで待機する(S210)。
【0055】
S206と並行して、スピーカー等により、ブレーキペダルを踏み込むように運転者に通知してもよい。また、S208と並行して、アルコール検査を受ける必要があることを運転者に通知してもよい。
【0056】
アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれると、運転者が飲酒状態であるか否かを判定する(S212)。運転者が飲酒状態であると判定した場合は、スピーカーによる警報の出力、外部への通報等、所定の飲酒運転抑制制御を実行する(S214)。この場合において、エンジン始動許可信号又はエンジン始動要求信号は出力しない。これにより、飲酒運転を適切に防止することができる。
【0057】
一方、運転者が飲酒状態でないと判定した場合は、エンジン始動要求信号をイモビライザーECU40に出力する(S216)。イモビライザーECU40では、前述した個人IDの照合がとれていることを条件に(スタートスイッチ46の操作を要することなく)、エンジンECU10に対してエンジン始動指示信号を出力する。エンジンECU10は、これに応じてスターター14を駆動してエンジンのクランキング制御を行ない、エンジンを始動させる。
【0058】
以上説明した本実施例の飲酒運転防止装置2によれば、運転者がエンジンを始動させようとする直前に、アルコール検査装置30が作動開始することとなるため、アルコール検査装置30による電力消費の無駄を従来の構成に比して小さくすることができる。
【0059】
また、運転者にとっても煩わしさが更に軽減され、ブレーキペダルを踏み込みながら運転者が交代するのは困難であるため、いわゆる他人によるなりすましを防止することもできる。
【0060】
<他の実施例>
なお、第2実施例において、スタートスイッチ46を省略し、エンジン始動の度に必ずアルコール検査を受けさせるものとしてもよい。そして、第2実施例の如く、アルコール検査において運転者が飲酒状態でないという検査結果を得たときに、エンジンを自動的に始動させる。
【0061】
この場合のフローチャートを図4に示す。まず、エンジンが停止しているか否かを判定する(S300)。エンジンが停止していないと判定した場合は、何も処理を行なわずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0062】
エンジンが停止していると判定した場合は、ブレーキペダルが踏み込まれるまで待機する(S302)。
【0063】
ブレーキペダルが踏み込まれると、アルコール検査装置30を作動させる(S304)。そして、アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれるまで待機する(S306)。
【0064】
S302と並行して、スピーカー等により、ブレーキペダルを踏み込むように運転者に通知してもよい。また、S304と並行して、アルコール検査を受ける必要があることを運転者に通知してもよい。
【0065】
アルコール検査装置30に運転者の息が吹き込まれると、運転者が飲酒状態であるか否かを判定する(S308)。運転者が飲酒状態であると判定した場合は、スピーカーによる警報の出力、外部への通報等、所定の飲酒運転抑制制御を実行する(S310)。この場合において、エンジン始動要求信号は出力しない。これにより、飲酒運転を適切に防止することができる。
【0066】
一方、運転者が飲酒状態でないと判定した場合は、エンジン始動要求信号をイモビライザーECU40に出力する(S312)。
【0067】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0068】
例えば、実施例において、「ブレーキペダルが踏み込まれると、アルコール検査装置30を作動させ、〜検査結果に応じてエンジン始動を許可する」ものとして説明したが、エンジン始動が許可されるまで継続的にブレーキペダルが踏み込まれていることを必要としてもよいし、ブレーキペダルが踏み込まれてから所定時間の間に検査結果を得れば(或いは検査が行なわれれば)エンジン始動を許可するものとしてもよい。
【0069】
同様に、ブレーキペダルが踏み込まれている間にのみアルコール検査装置30を作動させるものとしてもよいし、ブレーキペダルが踏み込まれてから所定時間の間、アルコール検査装置30を作動させるものとしてもよい。
【0070】
また、特許請求の範囲における「走行駆動手段」の例としてエンジンを例示したが、これに限らず、電力によって走行駆動力を出力するモータが「走行駆動手段」として用いられてもよい。また、ハイブリッド車両の場合はエンジン及びモータの双方が「走行駆動手段」に該当する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施例に係る飲酒運転防止装置1の全体構成の一例を示す図である。
【図2】第1実施例に係る飲酒運転防止用ECU60により実行される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第2実施例に係る飲酒運転防止用ECU60により実行される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例に係る飲酒運転防止用ECU60により実行される特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1、2 飲酒運転防止装置
10 エンジンECU
12 クランク角センサー
14 スターター
20 ブレーキスイッチ
30 アルコール検査装置
40 イモビライザーECU
50 バッテリー
52 リレー装置
60 飲酒運転防止用ECU
62 内部リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される飲酒運転防止装置であって、
走行駆動手段の状態を検出する走行駆動手段状態検出手段と、
ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキペダル操作状態検出手段と、
運転者が飲酒状態であるか否かを検査するための飲酒状態検査手段と、
前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出され、且つ前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出されたときに、前記飲酒状態検査手段を作動させる制御手段と、
を備える飲酒運転防止装置。
【請求項2】
車両に搭載される飲酒運転防止装置であって、
走行駆動手段の状態を検出する走行駆動手段状態検出手段と、
ブレーキペダルの操作状態を検出するブレーキペダル操作状態検出手段と、
運転者が飲酒状態であるか否かを検査するための飲酒状態検査手段と、
少なくとも前記飲酒状態検査手段に電力供給可能な電力供給手段と、
前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出され、且つ前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出されたときに、前記飲酒状態検査手段に電力供給を開始するように前記電力供給手段を制御する制御手段と、
を備える飲酒運転防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飲酒運転防止装置であって、
前記制御手段は、前記走行駆動手段状態検出手段により走行駆動手段が停止していることが検出されたときに、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られた場合に、前記車両の駆動装置の始動を許可する手段である、
飲酒運転防止装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の飲酒運転防止装置であって、
前記走行駆動手段の始動を指示するための始動スイッチを備え、
前記制御手段は、前記走行駆動手段の始動のために前記飲酒状態検査装置により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られたことを要する場面において、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られたときに、前記始動スイッチの操作を経ずに前記走行駆動手段を始動させる手段である、
飲酒運転防止装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の飲酒運転防止装置であって、
前記制御手段は、前記ブレーキペダル操作状態検出手段によりブレーキペダルが踏み込まれていることが検出された状態で前記飲酒状態検査手段により運転者が飲酒状態でない検査結果が得られた場合に、前記走行駆動手段を始動させる手段である、
飲酒運転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−6142(P2010−6142A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165108(P2008−165108)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】