説明

養毛剤組成物

【課題】優れた養毛(発毛・育毛)効果を示す、従来にない新規な毛乳頭細胞増殖促進剤や毛母細胞増殖促進剤、それらを含有する養毛剤組成物を提供する。
【解決手段】養毛剤組成物は、インドヤコウボク、アルストニアショラリス、ティノスポラコルディフォリア、カロトロピスギガンテア、セイロンマツリ、トウゴマ及びバンダテセラタよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛母細胞増殖促進剤、及び/又は
ニクズク、チレッタソウ、セイロンマツリ、ゴマ及びインドサルサパリラよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛乳頭細胞増殖促進剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の発毛と育毛とを促進する養毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は伸びては抜け落ち、再び新しい毛が生えるという一定のサイクル(以下、毛髪サイクルと称する)を繰り返しているが、加齢やホルモンバランスの変化により毛髪サイクルが正常に行われなくなり、脱毛症や細毛化が生ずる。
【0003】
ところで、毛髪は、皮膚より上に出ている毛幹と皮膚に埋もれている毛根に分けられ、毛根部は毛包と呼ばれる組織層に取り囲まれている。この毛根の最下部に位置する毛包基部の球状に膨らんだ部分が「毛球」と呼ばれており、毛髪の発毛・育毛に重要な部位であることが知られている。毛球部の底は凹んでおり、その部分には、毛乳頭と呼ばれる組織が入り込んでいる。この中には「毛乳頭細胞」が密に詰まり、毛細血管が張りめぐらされており、その毛細血管からは、毛髪を成長させる栄養分や酸素が運ばれてくる。その栄養分を受けて分裂している細胞が、毛乳頭を囲むように存在している「毛母細胞」である(毛乳頭細胞と毛母細胞とを合わせて毛球部細胞と称する場合がある)。毛母細胞からは、毛や内毛根鞘が発生し、それらは毛母細胞の増殖とともに上方に成長していく。また、毛乳頭細胞は、毛母細胞に対し毛髪の成長や休止に関わる指令を出し、毛母細胞の増殖に深く関わっている。
【0004】
このため、毛髪サイクルを正常化するために、毛乳頭細胞や毛母細胞の増殖促進を図ることが試みられている。例えば、毛乳頭細胞増殖促進剤として、コンブ科の海藻の抽出物等の特定の海藻抽出物を有効成分として含有するもの(特許文献1)や、毛母細胞増殖促進剤として、オウゴンの水抽出物を有効成分として含有するもの(特許文献2)が提案されており、これらは養毛(発毛・育毛)剤組成物(以下、単に養毛剤組成物と称する場合がある)に配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131571号公報
【特許文献2】特開平9−216827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2に記載された養毛剤組成物に配合される有効成分の中には、養毛(発毛・育毛)効果が必ずしも十分ではないものもあり、また、天然物を原料とするため、入手に支障を来す場合があるという問題があった。このため、新規な毛乳頭細胞増殖促進剤や毛母細胞増殖促進剤が常に求められているのが現状である。
【0007】
従って、本発明は、優れた養毛(発毛・育毛)効果を示す、従来にない新規な毛乳頭細胞増殖促進剤や毛母細胞増殖促進剤、それらを含有する養毛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的に鑑み、広く植物由来成分の探索を行った結果、毛球部細胞に対する優れた増殖活性について全く知られていなかった特定の植物の抽出物が、優れた毛球部細胞増殖促進効果、即ち、毛母細胞増殖促進効果もしくは毛乳頭細胞増殖促進効果を示し、しかも皮膚に対する安全性が高いものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、インドヤコウボク(Nyctanthes arbortristis)、アルストニアショラリス(Alstonia scholaris)、ティノスポラコルディフォリア(Tinospora cordifolia)、カロトロピスギガンテア(Calotropis gigantea)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、トウゴマ(Ricinus communis)及びバンダテセラタ(Vanda roxburghii)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛母細胞増殖促進剤、及び/又は
ニクズク(Myristica fragrans)、チレッタソウ(Swertia chirata)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、ゴマ(Sesamum indicum)及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛乳頭細胞増殖促進剤
を含有することを特徴とする養毛剤組成物を提供する。また、この養毛剤組成物を頭皮に適用することを特徴とする美容方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、上述したインドヤコウボク、アルストニアショラリス、ティノスポラコルディフォリア、カロトロピスギガンテア、セイロンマツリ、トウゴマ及びバンダテセラタよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛母細胞増殖促進剤を提供する。
【0011】
更に、本発明は、上述したニクズク、チレッタソウ、セイロンマツリ、ゴマ及びインドサルサパリラよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の養毛剤組成物が含有する毛母細胞増殖促進剤又は毛乳頭細胞増殖促進剤は、特定の植物群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を含有する。この抽出物は、皮膚に対する安全性が高く、しかも毛母細胞又は毛乳頭細胞に対する増殖促進効果を有する。従って、本発明の養毛剤組成物を頭皮に適用することにより、発毛促進効果、脱毛予防効果、育毛促進効果を奏し、毛髪サイクルを正常化することができる。また、本発明の養毛剤組成物は、頭皮代謝機能を正常化し、フケ防止効果を奏することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の養毛剤組成物は、毛母細胞増殖促進剤と毛乳頭細胞増殖促進剤の少なくともいずれか、好ましくは双方を含有する。ここで、毛母細胞増殖促進剤は、インドヤコウボク、アルストニアショラリス、ティノスポラコルディフォリア、カロトロピスギガンテア、セイロンマツリ、トウゴマ及びバンダテセラタよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有し、他方、毛乳頭細胞増殖促進剤は、ニクズク、チレッタソウ、セイロンマツリ、ゴマ及びインドサルサパリラよりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する。従って、本発明の養毛剤組成物は、これらの植物を、単独で又は複数種を組み合わせて含有することができる。
【0014】
なお、セイロンマツリは、毛母細胞及び毛乳頭細胞の双方の増殖促進効果を有する。従って、本発明の養毛剤組成物がセイロンマツリの抽出物を含有する場合には、毛母細胞増殖促進剤と毛乳頭細胞増殖促進剤とを含有していることになる。以下、本発明を特徴づける上述した植物について説明するが、これら植物の産地は特に限定されない。
【0015】
インドヤコウボクはモクセイ科の植物である;
アルストニアショラリスは、キョウチクトウ科の高木である;
ティノスポラコルディフォリアは、ツヅラフジ科ティノスポラ属の植物である;
カロトロピスギガンテアは、ガガイモ科の常緑低木で、インド原産である;
セイロンマツリは、イソマツ科の常緑の低木、しばしば蔓性の植物で2mに成長する。南インドとマレーシアが原産である;
トウゴマは、トウダイグサ科の常緑低木(野生)で、南アフリカが原産である;
バンダテセラタは、ラン科バンダ属の植物である;
ニクズクは、ニクズク科の常緑樹でインドネシアが原産であり、現在広く栽培されている;
チレッタソウは、リンドウ科の多年草で伝統的なアーユルヴェーダの生薬である。原産地は北インドとネパールで、標高の高い至る所に自生する。インドでは、マラリアを含む熱や肝臓疾患、胆石、消化不良などに処方される;
ゴマは、ゴマ科の1年草で、アフリカが原産である; 及び
インドサルサパリラは、ガガイモ科Hemidesmus属の植物であり、約350種が全世界に分布している。
【0016】
本発明を特徴づける植物の抽出物としては、いずれも植物体の葉、茎、幹、樹皮、幼芽、花、果実、種子、根等の植物体の一部位又は複数部位の混合あるいは全草から抽出したものを使用できるが、好ましくは、インドヤコウボクの場合には葉皮が用いられ、アルストニアショラリスの場合には樹皮が用いられ、ティノスポラコルディフォリアの場合には幹が用いられ、カロトロピスギガンテアの場合には茎と樹皮が用いられ、セイロンマツリの場合には根が用いられ、トウゴマの場合には樹皮が用いられ、バンダテセラタの場合には根が用いられ、ニクズクの場合には種子が用いられ、チレッタソウの場合には葉が用いられ、ゴマの場合には種子が用いられ、インドサルサパリラの場合には全草が用いられる。
【0017】
これらの植物から抽出物を得る場合、各部位を生のまま用いてもよいが、乾燥、細切、粉砕、圧搾または発酵等の前処理を適宜に施した後、低温ないし加温下で溶媒を用いて抽出することが好ましい。その抽出方法は特に限定されないが、例えば、上記植物体の一部位、または2種以上の部位を、低温もしくは室温〜加温下の溶媒中に浸漬する方法があげられる。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度に応じて設定されるが、1時間から2週間程度が好ましい。
【0018】
抽出溶媒としては、例えば水、低級1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種又は二種以上を用いることができる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、脱臭、脱色等の精製処理を行ってもよい。更に、必要により防腐防黴剤(フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル類等)を添加後、低温下に1〜2昼夜保存した後ろ過をして用いてもよい。
【0019】
本発明を特徴づける植物の好ましい抽出方法の例としては、濃度0〜100vol%の含水エチルアルコール又は1,3−ブチレングリコールを用い、室温、又は加温して1〜10日間抽出を行った後にろ過し、得られたろ液を低温ないし室温下にて、更に1週間程放置して熟成させ、再びろ過を行う方法が挙げられる。
【0020】
本発明の養毛剤組成物に含有されうる毛母細胞増殖促進剤中のインドヤコウボク、アルストニアショラリス、ティノスポラコルディフォリア、カロトロピスギガンテア、セイロンマツリ、トウゴマ及びバンダテセラタの合計の含有量は、頭皮への安全性と毛母細胞増殖促進効果とをバランスよく奏させるために、乾燥固形分として好ましくは0.000001〜10質量%であり、より好ましくは0.00001〜2質量%である。
【0021】
他方、本発明の養毛組成物に含有されうる毛乳頭細胞増殖促進剤中のニクズク、チレッタソウ、ゴマ、セイロンマツリ及びインドサルサパリラの合計の含有量もまた、頭皮への安全性と毛母細胞増殖促進効果とをバランスよく奏させるために乾燥固形分として好ましくは0.000001〜10質量%であり、より好ましくは0.00001〜2質量%である。
【0022】
本発明の養毛剤組成物中の毛母細胞増殖促進剤と毛乳頭細胞増殖促進剤の合計の配合量は、少なすぎると本発明の所期の効果が十分に発揮されず、多すぎると製剤化が困難になる傾向を示すとともに、配合量の増加に見合った効果の向上は認められなくなるので、乾燥固形分として好ましくは0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは0.00001質量%〜2質量%である。
【0023】
また、本発明の養毛剤組成物、もしくは毛母細胞増殖促進剤または毛乳頭細胞増殖促進剤は、通常用いられる各種の薬効成分、例えば、他の育毛・養毛剤、保湿剤、抗炎症剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、紫外線防御剤、血行促進剤等から選ばれる薬効剤の一種又は二種以上と併用することができる。それにより、本発明の効果をより高めることができる。
【0024】
育毛・養毛剤として、例えば、ビタミンE及びその誘導体、センブリエキス、ニンニクエキス、セファランチン、γ−オリザノール、塩化カルプロニウム、アセチルコリン、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ノニル酸バニルアミド、サリチル酸、レゾルシン、乳酸、プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリド、パントテン酸、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、ヒノキチオール、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、メントール、カンフル、感光素301号、アデノシン、冬虫夏草エキス、ニコチン酸ベンジル、トランス−3,4,−ジメチル−3−ヒドロキシフラバノン、西洋オトギリソウエキス、オランダカラシエキス、クララエキス、コムギ胚芽エキス、サンショウエキス、その他女性ホルモン等を挙げることができる。
【0025】
保湿剤として、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アラニン、アルギニン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、キシリトール、グリシン、グルコース、シスチン、システイン、セリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、キシリトール、ソルビトール、POEメチルグルコシド、マルチトール、マルトース、マンニトール、リシン、ハチミツ、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ムコイチン硫酸、カロニン酸、トラネキサム酸、ベタイン、トレハロース、キトサン、尿素、セラミド、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、アシタバ抽出物、アスパラガス抽出物、イザヨイバラ抽出物、クインスシード抽出物、グアバ葉抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることができる。
【0026】
抗炎症剤として、例えば、アミノカプロン酸、アラントイン、インドメタシン、ビサボロール、サポニン、塩化リゾチウム、アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、サリチル酸及びその誘導体、ヒノキチオール、感光素、トラネキサム酸及びその誘導体、酸化亜鉛、ウコン抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタン抽出物、レイシ抽出物、ワレモコウ抽出物等を挙げることができる。
【0027】
抗酸化剤として、例えば、アスタキサンチン、β−カロテン、γ−オリザノール、カイネチン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、フラボノイド、SOD、カタラーゼ、フラーレン、フィチン酸、フェルラ酸、クロロゲン酸、没食子酸プロピル、緑茶抽出物、ローズマリー抽出物、ローズヒップ抽出物、ショウブ抽出物、スギナ抽出物、ハマメリス抽出物、パセリ抽出物、ビワ葉抽出物、グレープフルーツ抽出物、シモツケソウ抽出物、ライチ抽出物、ヨモギ抽出物、モモ葉抽出物、マンゴウ抽出物、ボタンピ抽出物、マツ樹皮抽出物、白金、ユビキノン、α−リポ酸等を挙げることができる。
【0028】
細胞賦活剤として、例えば、アミノ酪酸、イチョウ抽出物、ウイキョウ抽出物、オランダカラシ抽出物、ニンジン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、サフラン抽出物、ダイズ抽出物、タイソウ抽出物、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、レチノール、ロイシン、感光素、リボフラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0029】
血行促進剤として、例えば、サンショウ抽出物、ショウキョウ抽出物、センキュウ抽出物、チンピ抽出物、トウガラシ抽出物、トウキ抽出物、ボタン抽出物、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、アセチルコリン、セファランチン、γ−オリザノール等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明の養毛剤組成物、毛母細胞増殖促進剤もしくは毛乳頭細胞増殖促進剤は、前記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、外用剤に通常用いられる成分である水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、ビタミン類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等の成分を適宜配合することができる。
【0031】
本発明の養毛剤組成物、毛母細胞増殖促進剤もしくは毛乳頭細胞増殖促進剤の剤形は、特に限定されず、例えば、低粘度液体、ペースト、クリーム、フォーム、乳液、パック、軟膏、粉剤、エアゾール、貼付剤等が挙げられる。なお、本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも適用することができる。具体的には、例えば、育毛・養毛剤、ヘアートニック、ヘアーリキッド、頭部用ローション、頭部用乳液、頭部用クリーム、頭部用ムース、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント等に適用することができる。
【0032】
本発明の養毛剤組成物は、それを頭皮に適用し、必要に応じて、マッサージする美容方法に好ましく使用することができる。また、本発明の毛母細胞増殖促進剤もしくは毛乳頭細胞増殖促進剤の用法も本発明の養毛剤組成物と同様とすることができる。ここで、本発明の養毛剤組成物、又は毛母細胞増殖促進剤もしくは毛乳頭細胞増殖促進剤の頭皮に対する適用量は、少なすぎると発明の効果が得られず、多すぎても添加量に見合った効果が得られないので、植物抽出物(乾燥固形分)換算で、頭皮単位面積(1cm)当たり、好ましくは0.0002〜1340μg/cm・day、より好ましくは0.0002〜270μg/cm・dayとすることが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に本発明の養毛剤組成物、毛母細胞増殖促進剤、毛乳頭細胞増殖促進剤について、調製例、試験例、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0034】
<植物抽出物の調製例>
ティノスポラコルディフォリアの幹部位、カロトロピスギガンテアの茎と樹皮部位、セイロンマツリの根部位、トウゴマ樹皮部位、バンダテセラタの根部位、ニクズクの種子部位、チレッタソウの葉部位、ゴマの種子部位、およびインドサルサパリラの全草について、それぞれ100gを粉砕し、50%含水エタノール溶液1kgを別々に加え混合した。室温にて7日間静置し、ろ過して不溶解物を取り除き、インドヤコウボク抽出物、アルストニアショラリス抽出物、ティノスポラコルディフォリア抽出物、カロトロピスギガンテア抽出物、セイロンマツリ抽出物、トウゴマ抽出物、バンダテセラタ抽出物、ニクズク抽出物、チレッタソウ抽出物、ゴマ抽出物、インドサルサパリラ抽出物をそれぞれ得た。これらの抽出物を以降の試験例及び実施例で植物抽出物試料として用いた。
【0035】
<試験例:毛母細胞増殖促進効果>
上述したように調製して得た各植物抽出物試料について、毛母細胞に対する増殖促進効果を以下に説明するように試験・評価した。
【0036】
60mmシャーレ(コラーゲンコート)に1×10個の毛母細胞を播種し、Mesenchymal Stem Cell Medium(ScienCell Research Laboratories)にFBS(5%)、MSC growth supplement(1%)、Penicillin/streptomycin(1%)を加えた培地を用い、COインキュベーターで5vol%CO存在下、37℃で培養した。播種の翌日に1000倍希釈した植物抽出物を培地に1質量%となる量で添加した。また、コントロールとして50%エタノールを培地に1%質量となる量で添加した。4日毎に培地を交換し、そのつど同量の植物抽出物あるいは50%エタノールを加えた。14日目に細胞数を計測することにより増殖効果を判定した。対照である植物抽出物無添加時の細胞数を100とし、各特定植物抽出物添加時の細胞増殖率を求めた。細胞増殖率の結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から、本発明を特徴づける植物抽出物を添加することにより、毛母細胞に対する増殖促進作用が認められ、表1の各植物抽出物は有効な毛母細胞増殖促進剤であることがわかる。
【0039】
<試験例:毛乳頭細胞増殖促進効果>
製造例で得られた試料(各植物抽出物)について、毛乳頭細胞に対する増殖促進効果を以下に説明するように試験・評価した。
【0040】
60mmシャーレ(ポリ-L-リジンでコート)に1×10個の毛乳頭細胞を播種し、Papilla Cell Growth Medium(東洋紡)にFCS(1%),ITT(0.5%)、BPE(1%)、Cyp(0.5%)を加えた培地を用い、COインキュベーターで5vol%CO存在下、37℃で培養した。播種の翌日に1000倍希釈した植物抽出物を培地に1質量%となる量で添加した。また、コントロールとして50%エタノールを培地に1質量%となる量で添加した。4日毎に培地を交換し、そのつど同量の植物抽出物あるいは50%エタノールを加えた。14日目に細胞数を計測することにより増殖効果を判定した。対照である植物抽出物無添加時の細胞数を100とし、各特定植物抽出物添加時の細胞増殖率を求めた。細胞増殖率の結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から、本発明を特徴づける植物抽出物を添加することにより、毛乳頭細胞に対する増殖促進効果が認められ、表2の各植物抽出物は有効な毛乳頭細胞増殖促進剤であることがわかる。
【0043】
実施例1及び2(試験例:実使用試験)
表3に示す処方に従って常法により本発明の養毛剤組成物に相当する実施例1及び2のヘアートニックを調製した。これらを用いて実使用試験を実施し発毛、脱毛の症状に対する効果を検討した。





















【0044】
【表3】

【0045】
得られた実施例1及び2のヘアートニックを用いて実使用試験を実施し、発毛、脱毛に対する効果を検討した。具体的には、20名の男性(27歳〜60歳)を2群に分け、それぞれ実施例1又は2のヘアートニックいずれか1種類を、1日に1〜2回、適量を4ヶ月に亘って使用してもらい、以下の評価基準に従って発毛促進効果、脱毛防止効果を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0046】
<評価基準>
(1)発毛促進効果試験
評価ランク: <内容>
著効 脱毛部に毛が生えそろった。
有効 脱毛部の半分以上に毛の新生が認められた。
無効 何ら改善がみられない。
【0047】
(2)脱毛防止効果試験
評価ランク: <内容>
著効 脱毛が止まった。
有効 脱毛の進行が減少した。
無効 何ら改善がみられない。








【0048】
【表4】

【0049】
表4から明らかなように、本発明を特徴づける植物抽出物を含有する実施例1及び2のヘアートニックは、発毛促進及び脱毛防止に対して優れた効果を有することがわかる。また、実施例1及び2のヘアートニックを使用した群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0050】
実施例3〜13(ヘアートニックの調製)
表5の配合成分のうち、成分(1)〜(3)をエタノールに加え、撹拌溶解した。次に成分(4)及び(6)を加えて均一に溶解し、実施例3のヘアートニックを得た。また、成分(4)として、インドヤコウボク抽出物に代えて、アルストニアショラリス抽出物(実施例4)、ティノスポラコルディフォリア抽出物(実施例5)、カロトロピスギガンテア抽出物(実施例6)、セイロンマツリ抽出物(実施例7)、トウゴマ抽出物(実施例8)、バンダテセラタ抽出物(実施例9)、ニクズク抽出物(実施例10)、チレッタソウ抽出物(実施例11)、ゴマ抽出物(実施例12)、インドサルサパリラ抽出物(実施例13)をそれぞれ使用して実施例3〜実施例13のヘアートニックを同様に調製した。










【0051】
【表5】

【0052】
各実施例のヘアートニックについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、いずれのヘアートニックについても優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれのヘアートニックを使用した群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0053】
実施例14〜20(ヘアートニックの調製)
表6の配合成分のうち、成分(1)〜(3)をエタノールに加え、撹拌溶解した。次に成分(5)〜(7)を加えて均一に溶解し、実施例14のヘアートニックを得た。また、成分(5)として、インドヤコウボク抽出物に代えて、アルストニアショラリス抽出物(実施例15)、ティノスポラコルディフォリア抽出物(実施例16)、カロトロピスギガンテア抽出物(実施例17)、セイロンマツリ抽出物(実施例18)、トウゴマ抽出物(実施例19)、バンダテセラタ抽出物(実施例20)、成分(6)として、ニクズク抽出物に代えて、チレッタソウ抽出物(実施例17)、セイロンマツリ抽出物(実施例18)、ゴマ抽出物(実施例19)、インドサルサパリラ抽出物(実施例20)をそれぞれ使用して実施例14〜実施例20のヘアートニックを同様に調製した。
【0054】
【表6】

【0055】
各実施例のヘアートニックについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、いずれのヘアートニックについても優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれのヘアートニックを使用した群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0056】
実施例21〜31(頭部用クリームの調製)
表7の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を加熱混合して75℃の混合物Aを調製し、それとは別に、成分(12)に成分(7)〜(10)を加えて加熱混合して75℃の混合物Bを調製した。得られた混合物Aと混合物Bとを、ホモミキサーを用いて混合乳化し、室温まで放冷することで混合物Cを調製した。得られた混合物Cに、成分(11)を均一に混合し、実施例21の頭部用クリームを得た。成分(11)として、インドヤコウボク抽出物に代えて、アルストニアショラリス抽出物(実施例22)、ティノスポラコルディフォリア抽出物(実施例23)、カロトロピスギガンテア抽出物(実施例24)、セイロンマツリ抽出物(実施例25)、トウゴマ抽出物(実施例26)、バンダテセラタ抽出物(実施例27)、ニクズク抽出物(実施例28)、チレッタソウ抽出物(実施例29)、ゴマ抽出物(実施例30)、インドサルサパリラ抽出物(実施例31)をそれぞれ使用して実施例21〜実施例31の頭部用クリームを同様に調製した。
【0057】
【表7】

【0058】
各実施例の頭部用クリームについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、いずれの頭部用クリームについても優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれの頭部用クリームを使用した群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0059】
実施例32(頭部用ローションの調製)
表8の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を室温下で混合溶解して混合物Aを調製し、それとは別に、成分(7)〜(19)を室温下で混合溶解して混合物Bを調製した。得られた混合物Aと混合物Bとを、撹拌機を用いて均一に混合することで頭部用ローションを得た。














【0060】
【表8】

【0061】
本実施例の頭部用ローションについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれの群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0062】
実施例33(頭部用乳液の調製)
表9の配合成分のうち、成分(1)〜(8)を加熱混合して75℃の混合物Aを調製し、それとは別に、成分(19)に成分(9)〜(13)を加えて加熱混合して75℃の混合物Bを調製した。得られた混合物Aと混合物Bとを、ホモミキサーを用いて混合乳化し、室温まで放冷することで混合物Cを調製した。得られた混合物Cに、成分(14)〜(18)を均一に混合して頭部用乳液を得た。
















【0063】
【表9】

【0064】
本実施例の頭部用乳液について、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれの群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0065】
実施例34(シャンプーの調製)
表10の配合成分のうち、成分(1)〜(8)及び(15)を混合しながら70℃に加熱し溶解した後、冷却して40℃にて成分(9)〜(14)を加え均一に溶解後、室温まで冷却してシャンプーを得た。














【0066】
【表10】

【0067】
本実施例のシャンプーについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれの群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【0068】
実施例35 (リンスの調製)
表11の配合成分のうち、成分(1)、(4)、(5)、(11)を加熱混合して75℃の混合物Aを調製し、それとは別に、成分(2)、(3)を加熱混合して75℃の混合物Bを調製した。得られた混合物Aと混合物Bとを、ホモミキサーを用いて混合乳化し、40℃まで冷却することで混合物Cを調製した。得られた混合物Cに、成分(6)〜(10)を均一に混合した後室温まで冷却してリンスを得た。
【0069】
【表11】

【0070】
本実施例のリンスについて、実施例1及び2と同様の試験を行ったところ、優れた発毛促進効果、脱毛防止効果を示した。また、いずれの群においても、皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚障害を訴えた被験者はいなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の養毛剤組成物、毛母細胞増殖促進剤、毛乳頭細胞増殖促進剤は、皮膚に対する安全性が高く、しかも毛母細胞もしくは毛乳頭細胞に対する良好な増殖促進効果を有するので、養毛効果(発毛・育毛)、脱毛予防効果を発現する。また、本発明の美容方法においては、前述の本発明の養毛剤組成物が頭皮に適用され、発毛促進効果、脱毛予防効果を発現する。従って、本発明は、医療分野または美容分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インドヤコウボク(Nyctanthes arbortristis)、アルストニアショラリス(Alstonia scholaris)、ティノスポラコルディフォリア(Tinospora cordifolia)、カロトロピスギガンテア(Calotropis gigantea)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、トウゴマ(Ricinus communis)及びバンダテセラタ(Vanda roxburghii)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛母細胞増殖促進剤、及び/又は
ニクズク(Myristica fragrans)、チレッタソウ(Swertia chirata)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、ゴマ(Sesamum indicum)及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有する毛乳頭細胞増殖促進剤
を含有することを特徴とする養毛剤組成物。
【請求項2】
毛母細胞増殖促進剤及び毛乳頭細胞増殖促進剤の合計含有量が、乾燥固形分として0.000001質量%〜10質量%である請求項1記載の養毛剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の養毛組成物を頭皮に適用することを特徴とする美容方法。
【請求項4】
インドヤコウボク(Nyctanthes arbortristis)、アルストニアショラリス(Alstonia scholaris)、ティノスポラコルディフォリア(Tinospora cordifolia)、カロトロピスギガンテア(Calotropis gigantea)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、トウゴマ(Ricinus communis)及びバンダテセラタ(Vanda roxburghii)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛母細胞増殖促進剤。
【請求項5】
毛母細胞増殖促進剤中のインドヤコウボク、アルストニアショラリス、ティノスポラコルディフォリア、カロトロピスギガンテア、セイロンマツリ、トウゴマ及びバンダテセラタの合計の含有量が、乾燥固形分として0.000001〜10質量%である請求項4記載の毛母細胞増殖促進剤。
【請求項6】
ニクズク(Myristica fragrans)、チレッタソウ(Swertia chirata)、セイロンマツリ(Plumbago zeylanica)、ゴマ(Sesamum indicum)、インドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤。
【請求項7】
毛乳頭細胞増殖促進剤中のニクズク、チレッタソウ、ゴマ、セイロンマツリ及びインドサルサパリラの合計の含有量が、乾燥固形分として0.000001〜10質量%である請求項6記載の毛乳頭細胞増殖促進剤。

【公開番号】特開2010−222273(P2010−222273A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69308(P2009−69308)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(397073658)株式会社B&Cラボラトリーズ (14)
【Fターム(参考)】