説明

駆動システム

【課題】簡略化しつつ減速走行時の減速度を制御可能な駆動システムを提供する。
【解決手段】エンジン10と、吸気弁14の開閉タイミング及びリフト量を可変する第1可変バルブ機構21と、排気弁15の開閉タイミング及びリフト量を可変する第2可変バルブ機構22と、加速走行時又は定速走行時、エンジン10の動力を、駆動輪114L、114Rに伝達する加速側伝達経路と、減速走行時、駆動輪114L、114Rの動力を、加速側伝達経路を迂回させてエンジン10に伝達する減速側伝達経路と、ECU200と、を備え、加速側伝達経路は変速機32と第1ワンウェイクラッチ60と、を備え、減速走行時、減速側伝達経路を介して駆動輪の動力をエンジン10に伝達させ、エンジン10のエンジンブレーキよる制動中、ECU200は、吸気弁14及び/又は排気弁15の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変し、エンジンブレーキを可変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される駆動システムであって、内燃機関と駆動輪との間において動力を伝達させる経路として、第1伝達経路と第2伝達経路とを備えるシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、第1伝達経路は、内燃機関側から駆動輪側に向かって順に、4節リンク機構で構成されたてこクランク型の第1変速機と、ワンウェイクラッチとを備えている。一方、第2伝達経路は、駆動輪から内燃機関に向かって順に、遊星歯車機構(プラネタリギヤ等)を有する第2変速機と、モータジェネレータと、を備えている。そして、車両の減速走行時(回生時)、駆動輪からの動力を第2変速機で変速し、モータジェネレータをジェネレータ(発電機)として機能させて、駆動輪の動力(回生エネルギ)を電力に変換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、システム構成の簡略化のため、モータジェネレータ及び第2変速機を削除した構成の場合、車両の減速走行時、内燃機関でエンジンブレーキ(機関ブレーキ)を実行することになるが、第2変速機も削除しているので、駆動輪から内燃機関に向かう動力を変速できず、つまり、変速比(レシオ)を変更できないので、内燃機関のクランク軸の回転速度(rpm)を可変できない。そうすると、内燃機関によるエンジンブレーキの大きさ、つまり、減速の程度(減速度)を制御できない。
【0006】
そこで、本発明は、システム構成を簡略化しつつ、減速走行時の減速度を制御可能な駆動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、駆動輪を有する車両に搭載される駆動システムであって、内燃機関と、前記内燃機関の吸気弁及び/又は排気弁の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する可変バルブ機構と、前記車両の加速走行時又は定速走行時、前記内燃機関の動力を、前記駆動輪に伝達する加速側伝達経路と、前記車両の減速走行時、前記駆動輪の動力を、前記加速側伝達経路を迂回させて前記内燃機関に伝達する減速側伝達経路と、前記可変バルブ機構を制御する制御手段と、を備え、前記加速側伝達経路は、前記内燃機関の出力軸の動力を変速する変速機と、前記変速機による変速後の動力を前記駆動輪に伝達するワンウェイクラッチと、を備え、前記車両の減速走行時、前記減速側伝達経路を介して前記駆動輪の動力を前記内燃機関に伝達させ、前記内燃機関のエンジンブレーキよる制動中、前記制御手段は、前記可変バルブ機構を制御して、前記吸気弁及び/又は前記排気弁の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変し、エンジンブレーキを可変することを特徴とする駆動システムである。
【0008】
このような構成によれば、車両の加速走行時又は定速走行時、内燃機関の動力は、加速側伝達経路を介して、駆動輪に伝達される。詳細には、内燃機関の動力は変速機で変速され、この変速後の動力はワンウェイクラッチを介して、駆動輪に伝達される。
【0009】
一方、車両の減速走行時、駆動輪の動力は、加速側伝達経路を迂回すると共に減速側伝達経路を介して、内燃機関に伝達される。
これに並行して、車両の減速走行時、制御手段が、可変バルブ機構を制御して、吸気弁及び/又は排気弁の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する。これにより、吸気弁及び/又は排気弁における抵抗が可変し、内燃機関によるエンジンブレーキを可変できる。すなわち、減速側伝達経路に変速機を備えずシステム構成を簡略化しつつ、エンジンブレーキの大きさ(減速度)を制御できる。
【0010】
また、前記駆動システムにおいて、運転者からの要求減速度を検出する要求減速度検出手段を備え、前記車両の減速走行時、前記制御手段は、前記要求減速度検出手段の検出する要求減速度に基づいて、前記可変バルブ機構を制御することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、車両の減速走行時、制御手段は、要求減速度検出手段の検出する運転者からの要求減速度に基づいて、可変バルブ機構を制御する。これにより、エンジンブレーキの大きさ(減速度)が運転者からの要求減速度に基づいて制御され、車両が運転者の意思に更に沿って走行することになり、車両の商品性が向上する。
【0012】
また、前記駆動システムにおいて、前記変速機は、前記内燃機関の動力によって所定の回転軸から偏心しながら回転する回転部と、前記回転部と前記ワンウェイクラッチの入力部とを接続し、前記回転部の回転運動によって揺動運動する揺動部と、前記回転部の偏心量を可変する偏心量可変機構と、を備え、前記加速側伝達経路は、前記ワンウェイクラッチと前記駆動輪との間における動力の伝達を断接するクラッチを備え、前記車両の減速走行時、前記要求減速度検出手段の検出する要求減速度が所定値以上である場合、前記制御手段は、前記クラッチを切断状態とし、前記回転部の偏心量が大きくなるように前記偏心量可変機構を制御することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、車両の加速走行時又は定速走行時、偏心量可変機構が回転部の偏心量を可変することにより、揺動部の角速度及び揺動角度(揺動幅)が可変し、内燃機関の動力が変速されワンウェイクラッチの入力部に入力される。
【0014】
一方、車両の減速走行時、要求減速度検出手段の検出する要求減速度が所定値以上である場合、制御手段が、クラッチを切断状態とし、偏心量可変機構を制御して回転部の偏心量を大きくする。ここで、車両の減速走行時、駆動輪からの動力によって回転部が所定の回転軸から偏心しながら回転することになるので、回転部の偏心量を大きくすることにより、回転部の慣性モーメントが大きくなり、要求減速度に対応して実際の減速度を大きくできる。この場合において、回転部の偏心量を大きくすると、揺動部(ワンウェイクラッチの入力部)の角速度が大きくなり、ワンウェイクラッチがエンゲージ状態(ロック状態、動力伝達状態)となり易くなるが、クラッチを切断状態とするので、変速機で変速された動力が駆動輪に伝達することはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、システム構成を簡略化しつつ、減速走行時の減速度を制御可能な駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る駆動システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る変速機及びワンウェイクラッチの断面図である。
【図3】本実施形態に係る変速機及びワンウェイクラッチの側面図である。
【図4】本実施形態に係る変速機及びワンウェイクラッチの側面図であり、(a)は回転半径r1(偏心量)が最大、(b)は回転半径r1が中間、(c)は回転半径r1が0、の状態を示している。
【図5】(a)〜(d)は変速機及びワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「最大」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図6】(a)〜(d)は変速機及びワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「中間」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図7】(a)〜(d)は変速機及びワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「0」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図8】入力軸(第2軸)の回転角度θ1と外リング(揺動部)の角速度ω2との関係を示すグラフである。
【図9】入力軸(第2軸)の回転角度θ1と外リング(揺動部)の摺動速度との関係を示すグラフである。
【図10】本実施形態に係る駆動システムの動作を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態に係る駆動システムの吸気弁及び排気弁の一動作例を示すタイムチャートである。
【図12】本実施形態に係る駆動システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
【0018】
≪駆動システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る駆動システム1は、図示しない車両に搭載されており、車両の駆動力を発生するシステムである。なお、車両は、四輪車の他、二輪車、三輪車でもよい。
【0019】
駆動システム1は、エンジン10(内燃機関)と、第1可変バルブ機構21と、第2可変バルブ機構22と、変速機30と、複数(ここでは6つ)の第1ワンウェイクラッチ60と、第2ワンウェイクラッチ71と、第1軸81、第2軸82(足軸)、第3軸83、第4軸84及び第5軸85と、第1クラッチ91(第1断接手段)及び第2クラッチ92(第2断接手段)と、デフ装置110と、システムを電子制御するECU200(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
なお、以下の説明において、「正方向」は車両の前進方向に対応する方向であり、「逆方向」は後退方向に対応する方向である。
【0020】
<エンジン>
エンジン10は、シリンダブロック(図示しない)に2つのシリンダ11、11を有する直列2気筒型で構成されたレシプロエンジンである。ただし、シリンダの数・配列はこれに限定されず、適宜に変更自由である。
【0021】
各シリンダ11には、吸気ポート12と排気ポート13とがそれぞれ接続されると共に、常閉型の吸気弁14及び排気弁15がそれぞれ設けられている。吸気弁14は、第1可変バルブ機構21によって開閉されると共に、その開閉タイミング及びそのリフト量が可変されるようになっている。排気弁15は、第2可変バルブ機構22によって開閉されると共に、その開閉タイミング及びそのリフト量が可変されるようになっている。
【0022】
そして、エンジン10は、ECU200からの指令に従って、燃料(ガソリン)を燃焼させ、4サイクル(吸気行程、圧縮行程、燃焼・膨張行程、排気行程)で運転するようになっている。すなわち、エンジン10には、燃料を噴射する燃料インジェクタ、吸気空気の流量を制御するスロットル弁、燃料に点火する点火プラグ(いずれも図示しない)等が取り付けられており、ECU200がこれらを電子制御することで、エンジン10のサイクルを制御するようになっている。
【0023】
<第1可変バルブ機構>
第1可変バルブ機構21は、エンジン10のサイクル(吸気行程等)に連動して吸気弁14を開閉する機構であると共に、ECU200からの指令に従って、吸気弁14の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する機構である。
【0024】
このような第1可変バルブ機構21は、例えば、軸方向において複数のカム組が形成されたカム軸(カムシャフト)と、エンジン10のクランク軸の回転に連動してカム軸を回転させるタイミングチェーンと、前記各カム組に設けられ、カムの位相に対応して揺動し吸気弁14を開閉するロッカーアーム組と、カムの位相を進角/遅角させる電磁式のアクチュエータと、を備えている。各カム組は、カム曲線が異なり吸気弁14のリフト量が異なる複数のカムを備えている。各ロッカーアーム組は、各カム組(複数のカム)に対応して配置された複数のロッカーアームと、軸方向に進退することで複数のロッカーアームが一体で揺動するか否かを切り替えるロックピンと、を備えている。
【0025】
そして、ECU200が、前記アクチュエータを制御しカムの位相を進角/遅角させることにより、吸気弁14の開閉タイミングが進角/遅角し、可変するようになっている。
また、ECU200が、前記ロックピンを進退させ、複数のロッカーアームを一体とするか否かを切り替えることで、ロッカーアームの揺動角が可変され、吸気弁14のリフト量が可変されるようになっている。
ただし、第1可変バルブ機構21の具体的構成はこれに限定されず、適宜に変更自由である。第2可変バルブ機構22についても同様に変更自由である。
【0026】
そして、車両の減速走行中、エンジン10によってエンジンブレーキを実行する場合において、吸気弁14の開閉タイミングを通常時に対して進角/遅角させると、吸気弁14における抵抗(圧損)が大きくなるので、エンジンブレーキが通常よりも大きくなる。
また、吸気弁14のリフト量を通常時に対して小さくすると、吸気弁14における抵抗(圧損)が大きくなるので、エンジンブレーキが通常よりも大きくなる。
【0027】
<第2可変バルブ機構>
第2可変バルブ機構22は、エンジン10のサイクル(吸気行程等)に連動して排気弁15を開閉する機構であると共に、ECU200からの指令に従って、排気弁15の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する機構である。
第2可変バルブ機構22は、第1可変バルブ機構21と同様の構成であるので、具体的な説明は省略する。
【0028】
そして、車両の減速走行中、エンジン10によってエンジンブレーキを実行する場合において、排気弁15の開閉タイミングを通常時に対して進角/遅角させると、排気弁15における抵抗(圧損)が大きくなるので、エンジンブレーキが通常よりも大きくなる(図11、図12参照)。
また、排気弁15のリフト量を通常時に対して小さくすると、排気弁15における抵抗(圧損)が大きくなるので、エンジンブレーキが通常よりも大きくなる。
【0029】
<第1軸>
第1軸81は、エンジン10の図示しないクランク軸(出力軸)と連結されている。そして、第1軸81は、前記クランク軸と一体に回転するようになっている。また、第1軸81には、ギヤ81aが固定されており、ギヤ81aは後記するギヤ85aと噛合している。
【0030】
また、第1軸81には、回転速度センサ81dが取り付けられている。回転速度センサ81dは、第1軸81の回転速度R81(rpm)を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0031】
<変速機>
変速機30は、図1〜図3に示すように、ECU200の指令に従って、第1軸81(エンジン10のクランク軸)の回転力(動力)を、変速する4節クランク機構式の変速機である。すなわち、変速機30は、第1軸81の回転運動を揺動運動に変換し、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60に伝達すると共に、変速比i(レシオ)を無限無段階で変速することで、後記する揺動部42の角速度ω2(揺動速度)・揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する機構である(図3参照)。
なお、「変速比i=第1軸81の回転速度/第2軸82の回転速度」であり、この場合の「第2軸82の回転速度」は、「外リング62の正方向の揺動(動力)のみで回転した場合における第2軸82の回転速度」である。
【0032】
変速機30は、図2、図3に示すように、第1軸81の回転運動を揺動運動に変換する複数(ここでは6本)の揺動変換ロッド40(揺動変換手段、コネクティングロッド)と、各揺動変換ロッド40の回転リング41(回転部)の回転半径r1(偏心量)を無段階で可変することで、各揺動変換ロッド40の揺動部42の角速度ω2(揺動速度)及び揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する回転半径可変機構50(偏心量可変機構)と、を備えている。
【0033】
ここで、回転半径r1(偏心量)は、入力軸51(第1軸81)の中心軸線O1とディスク52の中心である第1支点O3との距離である。また、揺動部42の揺動中心は、第2軸82の中心軸線O2で固定であり、揺動半径r2(第2支点O4と中心軸線O2の距離)も固定である。
なお、揺動変換ロッド40、偏心部51b、ディスク52等の数は変更自由である。
【0034】
<変速機−回転半径可変機構>
回転半径可変機構50は、第1軸81と連結され第1軸81の動力が入力される入力軸51と、6枚のディスク52と、入力軸51とディスク52とを相対回転させることで、回転半径r1(偏心量)を可変するピニオン53と、ピニオン53を回動させるDCモータ54と、減速機構55と、を備えている。
【0035】
入力軸51は、変速機ケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59a、軸受59bを介して、回転自在に支持されている。なお、入力軸51の中心軸線O1と、第1軸81の回転軸線とは一致している(図2参照)。
【0036】
図2において、入力軸51の左端側(一端側)は、第1軸81と連結されている。そして、入力軸51は第1軸81と一体に角速度ω1で回転するようになっている。
【0037】
また、入力軸51は、その中心軸線O1上に、ピニオン53が回転自在に挿入される中空部51aを有している。なお、中空部51aは部分的に径方向外に開口しており、ピニオン53が内歯車52bと噛合するようになっている(図3参照)。
【0038】
さらに、入力軸51は、中心軸線O1に対して一定の偏心距離で偏倚した軸方向視で略円形(略三日月形)の偏心部51bを6つ有している(図2参照)。6つの偏心部51bは、本実施形態では、入力軸51の軸方向において等間隔で配置されると共に(図2参照)、周方向において等間隔(60°間隔)で配置されている。
これにより、後記する6つの第1ワンウェイクラッチ60の6つの外リング62の揺動運動の位相が等間隔(60°間隔)でずれることになり(図9参照)、その結果、位相がずれて揺動運動する6つの外リング62から内リング61に、6つの外リング62の揺動運動の正方向における動力が連続的に伝達されることになる。
【0039】
6枚のディスク52は、6つの偏心部51bにそれぞれ設けられている(図2参照)。
さらに説明すると、図3に示すように、各ディスク52は円形を呈している。そして、ディスク52の中心である第1支点O3から外れた位置には、円形の偏心孔52aが形成されており、偏心孔52aには偏心部51bが回転可能に内嵌している。また、偏心孔52aの内周面には内歯車52bが形成されており、内歯車52bはピニオン53と噛合している。
【0040】
ピニオン53は、(1)偏心部51bとディスク52とをロック(相対位置を保持)し、回転半径r1を保持する機能と、(2)偏心部51bとディスク52とを相対回転させ、回転半径r1を可変する機能と、を備えている。
【0041】
すなわち、ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第1軸81)と同期して回転すると、つまり、ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第1軸81)と同一の回転速度で回転すると、偏心部51bとディスク52との相対位置が保持され、つまり、偏心部51bとディスク52とが一体化して回転し、回転半径r1が保持されるようになっている。
【0042】
一方、ピニオン53が、偏心部51bと異なる回転速度(上回る回転速度/下回る回転速度)で回転すると、ピニオン53に内歯車52bで噛合するディスク52が偏心部51bの周りに相対回転し、その結果、回転半径r1が可変するようになっている。
【0043】
DCモータ54は、ECU200の指令に従って回転し、ピニオン53を適宜な回転速度にて回動させるものである。DCモータ54の出力軸は、減速機構55(遊星歯車機構)を介して、ピニオン53に接続されており、DCモータ54の出力は、120:1程度に減速されて、ピニオン53に入力されるようになっている。なお、DCモータ54は、車両に搭載されたバッテリ(図示しない)を電源としている。また、このバッテリはオルタネータ(図示しない)によって適宜に充電されるようになっている。
【0044】
<変速機−揺動変換ロッド>
揺動変換ロッド40は、図3に示すように、入力軸51の回転運動が入力される回転リング41と、回転リング41と一体であり、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60に出力する揺動部42と、軸受43と、を備えている。
【0045】
回転リング41は、軸受43を介して、ディスク52に外嵌するように設けられている。揺動部42は、ピン44を介して、第1ワンウェイクラッチ60の外リング62に回動自在に連結されている。
【0046】
これにより、回転リング41とディスク52とは、相対的に回動自在となっている。したがって、回転リング41は、中心軸線O1を中心として回転半径r1で回転するディスク52に同期して回転するものの、回転リング41はディスク52に対して相対的に回動するので、揺動変換ロッド40全体は回転せず、揺動変換ロッド40はその姿勢を略維持したままとなる。
そして、回転リング41が一回転すると、回転半径r1の大小に関わらず、揺動部42が円弧状で一往復揺動運動し、外リング62も円弧状で一往復揺動運動するようになっている。
【0047】
<第1ワンウェイクラッチ、第2軸>
各第1ワンウェイクラッチ60は、各揺動変換ロッド40の揺動部42の正方向のみの動力を、第2軸82に伝達させるものである。
なお、第2軸82には、回転速度センサ82dが取り付けられている。回転速度センサ82dは、第2軸82の回転速度R81(rpm)を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0048】
図2に示すように、第2軸82は、変速機ケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59c、軸受59dを介して、中心軸線O2を中心として、回転自在に支持されている。
【0049】
そして、図3に示すように、各第1ワンウェイクラッチ60は、第2軸82の外周面に一体に固定され第2軸82と一体で回転する内リング61(クラッチインナ)と、内リング61に外嵌するように設けられた外リング62(クラッチアウタ、入力部)と、内リング61と外リング62との間で周方向に複数設けられたローラ63と、各ローラ63を付勢するコイルばね64(付勢部材)と、を備えている。
【0050】
外リング62は、ピン44を介して、揺動変換ロッド40の揺動部42と回動自在に連結されており、外リング62は揺動部42の揺動運動に連動して、正方向(矢印A1参照)/逆方向(矢印A2参照)に揺動運動する。
【0051】
ローラ63は、内リング61と外リング62とを互いにエンゲージ状態(ロック状態、動力伝達状態)/非エンゲージ状態(非ロック状態)とするものであり、各コイルばね64は、ローラ63を前記エンゲージ状態となる方向に付勢している。
【0052】
そして、図9に示すように、外リング62の正方向の揺動速度が、内リング61(第2軸82)の正方向の回転速度を超えた場合、ローラ63によって外リング62と内リング61とがエンゲージ状態となる。そうすると、揺動変換ロッド40の揺動運動する揺動部42の正方向の動力が、第1ワンウェイクラッチ60を介して、第2軸82に伝達し、第2軸82が正方向で回転するようになっている。
【0053】
なお、図9では、外リング62から内リング61に動力が伝達する状態を太線で示している。
【0054】
<回転半径r1の可変状況>
ここで、図4を参照して回転半径r1が可変する状況を説明し、次いで、図5〜図7を参照して、異なる回転半径r1におけるディスク52(回転リング41)の回転運動と、揺動部42の揺動運動を説明する。
【0055】
図4(a)に示すように、第1支点O3(ディスク52の中心)と中心軸線O1とが最も遠ざかると、回転半径r1が「最大」となり、変速比iがオーバードライブ(Over Drive、OD)側の「小」となるように構成されている。
そして、ピニオン53が偏心部51bと異なる回転速度で回転し、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図4(b)に示すように、第1支点O3と中心軸線O1とが近づき、回転半径r1が「中」となるように構成されている。
【0056】
さらに、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図4(c)に示すように、第1支点O3と中心軸線O1とが重なり、回転半径r1が「0」なり、変速比iがアンダードライブ(Under Drive、UD)側の「∞(無限大)」となるように構成されている。
このように、回転半径r1は「最大」と「0」との間で、変速比iは「最小」と「∞」との間で、無段階で制御可能となっている。
【0057】
すなわち、図4(a)に示す回転半径r1が「最大」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図5に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「最大」で保持したまま回転するようになっている。
【0058】
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2の振幅が「最大」となる(図8参照)。
また、「変速比i=入力軸51(第1軸81)の回転速度/第2軸82の回転速度」であり、「外リング62の揺動速度=外リング62の半径(固定値)×角速度ω2」であるから、変速比iは「小」となる。
【0059】
次に、図4(b)に示す回転半径r1が「中」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図6に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「中」で保持したまま回転するようになっている。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2の振幅が「中」となる(図8参照)。そして、変速比iは「中」となる。
【0060】
次に、図4(c)に示す回転半径r1が「0」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図7に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「0」で保持したまま回転するようになっている。つまり、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53が、回転リング41内で空転し、揺動変換ロッド40が動作しないことになる。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が「0」となる(図8参照)。そして、変速比iは「∞(無限大)」となる。
【0061】
このようにして、回転半径r1が保持された状態(偏心部51bとピニオン53とが同期回転する状態)では、回転半径r1の大小に関わらず、入力軸51の回転周期と、揺動部42及び外リング62の揺動周期とは、同期(回転半径r1=0の場合を除く)することになる。
【0062】
すなわち、本実施形態では、揺動変換ロッド40、回転半径可変機構50及び第1ワンウェイクラッチ60によって、中心軸線O1、第1支点O3、第2支点O4、中心軸線O2の4つの節を回動点とする4節リンク機構が構成されている。
そして、中心軸線O1を中心とする第1支点O3の回転運動によって、第2支点O4が中心軸線O2を揺動中心として揺動運動するようになっている。
また、回転半径可変機構50により、回転半径r1を可変することで、第2支点O4の角速度ω2及び揺動角度θ2が可変されるようになっている。
【0063】
<第1クラッチ>
図1に戻って説明を続ける。
第2軸82は、第1クラッチ91を介して、デフ装置110(デファレンシャル装置)のデフケース112に接続されている。
第1クラッチ91は、ECU200からの指令に従って、第2軸82(第1ワンウェイクラッチ60)とデフケース112(駆動輪114L、114R)との間における動力の伝達を断接、つまり、接続(ON)/切断(OFF)するものである。第1クラッチ91としては、例えば、電磁クラッチを使用できる。
【0064】
<デフ装置>
デフ装置110は、サイドギヤ及びピニオンギヤを有するデフギヤ111と、デフギヤ111を収容するデフケース112と、を備えている。そして、デフギヤ111は、左右の駆動軸113L、駆動軸113Rを介して、左右の駆動輪114L、駆動輪114Rにそれぞれ連結されている。これにより、第1クラッチ91がON(接続状態)とされている場合、駆動輪114L及び駆動輪114Rと、第2軸82(足軸)とは、略一体で回転するようになっている。
【0065】
また、デフケース112には、リングギヤ115が固定されている。リングギヤ115は、ギヤ83bと噛合している。
【0066】
<第3〜第5軸、第2クラッチ、第2ワンウェイクラッチ>
第3軸83にはギヤ83aが固定されており、ギヤ83aはギヤ83bと噛合している。これにより、第3軸83と、駆動輪114L及び駆動輪114Rとは、略一体で回転するようになっている。
【0067】
第2クラッチ92は、ECU200からの指令に従って、第3軸83と第4軸84との間における動力の伝達を断接、つまり、接続(ON)/切断(OFF)するものである。
【0068】
第2ワンウェイクラッチ71は、第4軸84の正方向(車両の前進に対応する方向)の回転速度が第5軸85の正方向の回転速度以上である場合、エンゲージ状態(ロック状態)となり、第4軸84の正方向の回転力(動力)を第5軸85に伝達させる装置である。第2ワンウェイクラッチ71は、第1ワンウェイクラッチ60と同様の構成であるので、具体的な説明は省略する。
【0069】
第5軸85には、ギヤ85aが固定されている。ギヤ85aは、前記したギヤ81aに噛合している。
【0070】
<加速側伝達経路>
ここで、「車両の加速走行時又は定速走行時、エンジン10の動力を、駆動輪114L、114Rに伝達する加速側伝達経路」は、第1軸81と、変速機30と、第1ワンウェイクラッチ60と、第2軸82と、第1クラッチ91と、デフ装置110と、を備えて構成されている。
【0071】
<減速側伝達経路>
また、「車両の減速走行時、駆動輪114L、114Rの動力を、加速側伝達経路を迂回させてエンジン10に伝達する減速側伝達経路」は、デフ装置110と、リングギヤ115と、ギヤ83bと、ギヤ83aと、第3軸83と、第2クラッチ92と、第4軸84と、第2ワンウェイクラッチ71と、第5軸85と、ギヤ85aと、ギヤ81aと、第1軸81と、を備えて構成されている。
【0072】
<その他センサ>
アクセル開度センサ131は、アクセルペダル(図示しない)のアクセル開度を検出し、ECU200に出力するようになっている。
車速センサ132は、車速を検出し、ECU200に出力するようになっている。
【0073】
減速度センサ133(要求減速度検出手段)は、運転者から要求された減速度を検出するセンサであり、検出した減速度をECU200に出力するようになっている。具体的には、減速度センサ133は、パドルシフト等のシフトレバーのポジションを検出するセンサや、車両が「ノーマルモード、エコモード、スポーツモード」を備え、運転者の操作するモード切替スイッチのポジションを検出するセンサによって構成される。
【0074】
<ECU>
ECU200は、駆動システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
【0075】
<ECU−変速比制御機能>
ECU200は、変速機30の変速比iを適宜に制御する機能を備えている。
【0076】
<ECU−クラッチ制御機能>
ECU200は、第1クラッチ91及び第2クラッチ92のON(接続状態)/OFF(切断状態)を適宜に制御する機能を備えている。
【0077】
≪駆動システムの動作・効果≫
次に、図10を参照して、駆動システム1の動作・効果について説明する。
なお、初期状態において、車両は前進方向で走行しており、駆動輪114L、114R(駆動軸113L、113R)は正方向で回転している。また、第1クラッチ91はON(接続状態)であり、第2クラッチ92はOFF(切断状態)である。
【0078】
ステップS101において、ECU200は、アクセル開度センサ131からの信号に基づいて、アクセルペダル(図示しない)がOFFであるか否か判定する。なお、アクセルペダルがOFFとは、アクセルペダルが踏み込まれてなく、アクセル開度が0であり、車両の減速走行時に対応している。一方、アクセルペダルがOFFでない、つまり、ONであるとは、アクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度が0よりも大きく、車両の加速走行時(又は定速走行時)に対応している。
【0079】
アクセルペダルはOFFであると判定した場合(S101・Yes)、ECU200の処理は、ステップS102に進む。なお、このようにステップS102に進む場合、エンジン10においてインジェクタ(図示しない)による燃料噴射は停止される。
一方、アクセルペダルはOFFでないと判定した場合(S101・No)、ECU200の処理はステップS120に進む。
【0080】
ステップS102において、ECU200は、第1ワンウェイクラッチ60が非エンゲージ状態(非ロック状態)となるように、変速機30の変速比iを、後記するステップS120で算出される通常値よりもアンダードライブ(UD)側に変更する(図4参照)。すなわち、ECU200は、DCモータ54を制御してピニオン53と偏心部51bとを相対回転させて、回転リング41(ディスク52)の回転半径r1を小さくし、変速比iを大きくする。
【0081】
このように変速比iをアンダードライブ側に変更した場合において、ECU200は、この後にアクセルペダルが踏み込まれる車両の再加速時、、ステップS110・Yes、ステップS101・No、ステップS120と進み、ステップS120において、変速比iを通常値に戻すことになる。
【0082】
このように進む場合において、ステップS120において変速比iが通常値に戻るまで、第1ワンウェイクラッチ60がエンゲージしないので、再加速時における加速遅れ(エンゲージ遅れ)を小さくするため、ステップS102において変速比iをアンダードライブ側に変更する程度、つまり、大きくする程度は、なるべく小さくすることが好ましい。
【0083】
すなわち、回転速度センサ81dの検出する第1軸81の回転速度R81と、回転速度センサ82dの検出する第2軸82の回転速度R82とに基づいて、第1ワンウェイクラッチ60がエンゲージしない範囲において変速比iをなるべくと小さく(回転半径r1をなるべく大きく)すると共に、回転速度R81及び回転速度R82に基づいて連続的に変化させることにより、再加速時におけるスムーズな加速を実現可能となる。
なお、第1軸81の回転速度R81、第2軸82の回転速度R82は、車速センサ132の検出する車速、駆動輪114L等の外周長さ、ギヤ83b、83aのギヤ比、ギヤ85a、81bのギヤ比に基づいても算出できる。
【0084】
ステップS103において、ECU200は、第2クラッチ92がON(接続)状態であるか否か判定する。なお、ECU200が第2クラッチ92にON指令を出力している場合、第2クラッチ92はON状態であると判定する。
【0085】
第2クラッチ92はON状態であると判定した場合(S103・Yes)、ECU200の処理はステップS104に進む。一方、第2クラッチ92はON状態でないと判定した場合(S103・No)、ECU200の処理はステップS105に進む。
【0086】
ステップS105において、ECU200は、第2クラッチ92にON指令を出力し、第2クラッチ92をON(接続)状態とする。
【0087】
次に、ステップS104の処理内容を説明する前に、ステップS104に進んだ場合における動力の伝達状況を説明する。なお、第1クラッチ91及び第2クラッチ92はON状態である。ただし、後記するステップS108を経由した場合、第1クラッチ91はOFF状態となる。
【0088】
減速走行中の駆動輪114L、114Rの動力は、駆動軸113L、113R、デフ装置110、リングギヤ115、ギヤ83b、ギヤ83a、第3軸83、第2クラッチ92、第4軸84を介して、第2ワンウェイクラッチ71の入力部に伝達している。この場合において、エンジン10では燃料噴射が停止しているので動力は生成しておらず、クランク軸及びこれと一体である第1軸81はエンジン10の動力で回転していない。したがって、第1軸81に連動する第5軸85もエンジン10の動力で回転しておらず、よって、第2ワンウェイクラッチ71はエンゲージ状態となる。
【0089】
これにより、第4軸84の動力(駆動輪114L、114Rからの動力)は、第2ワンウェイクラッチ71、第5軸85、ギヤ85a、ギヤ81a、第1軸81を介してクランク軸に伝達し、エンジン10によるエンジンブレーキが実行される。
この場合において、第1軸81と一体である入力軸51も回転することになるが、前記したように、変速機30の変速比iはステップS102において第1ワンウェイクラッチ60が非エンゲージ状態となるようにアンダードライブ(UD)側に変更されているので、入力軸51の動力が第2軸82に伝達することはない。
【0090】
ステップS104において、ECU200は、減速度センサ133を介して、運転者から要求されている減速度を検出する。
具体的には、パドルシフト等のシフトレバーにおいて「Low」又は「Lowに近いポジション」が選択されるにつれて、大きい減速度が要求されていると検出される。
また、車両が「ノーマルモード、エコモード、スポーツモード」を備え、運転者の操作するモード切替スイッチによって「スポーツモード」が選択されている場合、「ノーマルモード、エコモード」の選択時よりも大きい減速度が要求されていると検出される。
【0091】
ステップS106において、ECU200は、ステップS104で検出した減速度となるように、第1可変バルブ機構21及び/又は第2可変バルブ機構22を制御して、吸気弁14及び/又は排気弁15の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する。
【0092】
具体的には、減速度が大きくなるにつれて、エンジンブレーキが大きくなるように、吸気弁14を制御する場合、エンジン10の吸気行程において吸気弁14で受ける吸気抵抗(圧力損失)が大きくなるように、(1)吸気弁14の開閉タイミングを通常タイミングに対して進角/遅角させたり、(2)吸気弁14のリフト量を小さくしたりする。
【0093】
また、排気弁15を制御する場合、エンジン10の排気行程において排気弁15から受ける排気抵抗(圧力損失)が大きくなるように、(1)排気弁15の開閉タイミングを通常タイミングに対して進角/遅角させたり、(2)排気弁のリフト量を小さくしたりする。なお、図11では、排気弁15の開閉タイミングを通常タイミングに対して進角(又は遅角)した場合を例示している。
【0094】
このようにして、第1可変バルブ機構21及び/又は第2可変バルブ機構22を制御して、吸気弁14及び/又は排気弁15の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変するので、図12に示すように、第1可変バルブ機構21等を制御しない通常のエンジンブレーキに対して、調整可能な減速度の範囲が形成され、車速を速やかに小さくできる。すなわち、システム構成を簡略化するため、減速側伝達経路に変速機やジェネレータを備えない構成としても、第1可変バルブ機構21及び/又は第2可変バルブ機構22を制御することで、減速度を制御できる。
【0095】
ステップS107において、ECU200は、さらなる減速が必要であるか否か判定する。具体的には、ステップS107で検出した減速度が所定値以上である場合、さらなる減速が必要であると判定される。ここで、所定値は、ステップS106において、吸気弁14の吸気抵抗及び/又は排気弁15の排気抵抗を最大とした場合における減速度に設定される。
【0096】
さらなる減速が必要であると判定した場合(S107・Yes)、ECU200の処理はステップS108に進む。一方、さらなる減速が必要でないと判定した場合(S107・No)、ECU200の処理はステップS110に進む。
【0097】
ステップS108において、ECU200は、第1クラッチ91をOFF(切断状態)する。
【0098】
ステップS109において、ECU200は、変速機30の変速比iをオーバードライブ(OD)側に変更し、つまり、変速比iを小さく、回転半径r1を大きくする(図4参照)。
このように、回転半径r1が大きくなると、ディスク52及び回転リング41の慣性モーメントが大きくなるので、ディスク52及び回転リング41が回転し難くなる。したがって、ディスク52及び回転リング41を回転させるのに要する入力軸51のトルクが大きくなり、よって、エンジンブレーキが大きくなり、運転者の要求する減速度に近づく。このようにして、車両のドライブフィーリングが向上し、車両の商品性が高まる。
【0099】
この場合において、変速比iが小さく、回転半径r1が大きくなると、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が大きくなり(図8参照)、第1ワンウェイクラッチ60がエンゲージ(ロック)し易くなり、第2軸82が回転し易くなる。しかしながら、ステップS108で第1クラッチ91をOFF(切断状態)しているので、第1ワンウェイクラッチ60がエンゲージし第2軸82が回転したとしても、第2軸82の回転力がデフケース112に伝達することはない。
【0100】
ステップS110において、ECU200は、アクセル開度センサ131からの信号に基づいて、アクセルペダル(図示しない)がONであるか否か、つまり、アクセルペダルが踏み込まれているか否か判定する。
【0101】
アクセルペダルがONであると判定した場合(S110・Yes)、ECU200の処理はリターンを通ってスタートに戻る。そして、その後に進むステップS101における判定で「No」となり、ステップS120において、第1可変バルブ機構21、第2可変バルブ機構22及び変速機30の変速比iを通常に制御する通常制御モードに切り換わる。一方、アクセルペダルがONでないと判定した場合(S110・No)、ECU200の処理はステップS104に進む。
【0102】
ステップS120において、ECU200は、第1可変バルブ機構21、第2可変バルブ機構22及び変速機30の変速比iを通常に制御する通常制御モードを実行する。
具体的には、ECU200は、アクセル開度センサ131から入力されるアクセル開度に基づいて、エンジン10に要求される出力を算出する。そして、ECU200は、この算出した出力と、第2軸82の回転速度R82とに基づいて、変速機30の変速比iを算出する。この場合において、ECU200は、エンジン10のBSFC(Brake Specific Fuel Consumption:正味燃料消費率)マップに基づいて、正味燃料消費率が小さくなるクランク軸の回転速度となるように、変速比iを算出する。そして、ECU200は、変速比iとなるように、DCモータ54を制御する。
【0103】
そうすると、エンジン10の動力は、第1軸81、変速機30、第1ワンウェイクラッチ60、第2軸82を介して、つまり、加速側伝達経路を介して、デフ装置110に伝達される。なお、第2クラッチ92がONされている場合、ECU200は、第2クラッチ92をOFFする。
その後、ECU200の処理は、リターンを通って、スタートに戻る。
【0104】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。
【0105】
前記した実施形態では、回転半径可変機構50(偏心量可変機構)は、偏心部51bと、ディスク52と、ピニオン53とを備えて構成したが、これに限定されない。
例えば、入力軸51と同軸で同期回転する円板を設け、この円板の径方向に延びるスライド溝等によって、第1支点O3(図3参照)を径方向にスライド可能に構成し、アクチュエータによって第1支点O3を径方向にスライドさせ、回転半径r1を可変する構成としてもよい。
【0106】
前記した実施形態では、第1支点O3の回転半径r1を可変する構成としたが(図3参照)、これに代えて又は加えて、アクチュエータによって第2支点O4を径方向にスライドすることで、揺動半径r2を可変し、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
また、揺動変換ロッド40を伸縮可能に構成し、アクチュエータによって、第1支点O3と第2支点O4との距離を可変することで、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
【0107】
前記した実施形態では、エンジン10(内燃機関)がレシプロエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、ロータリエンジン、ガスタービンエンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【0108】
前記した実施形態では、エンジン10がガソリンを燃焼させるガソリンエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、軽油を燃焼させるディーゼルエンジン、水素を燃焼させる水素エンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 駆動システム
10 エンジン(内燃機関)
14 吸気弁
15 排気弁
21 第1可変バルブ機構
22 第2可変バルブ機構
30 変速機
40 揺動変換ロッド
41 回転リング(回転部)
42 揺動部
50 回転半径可変機構(偏心量可変機構)
51 入力軸
51b 偏心部
52 ディスク
60 第1ワンウェイクラッチ
62 外リング(入力部)
91 第1クラッチ
114L、114R 駆動輪
133 減速度センサ(要求減速度検出手段)
200 ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を有する車両に搭載される駆動システムであって、
内燃機関と、
前記内燃機関の吸気弁及び/又は排気弁の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変する可変バルブ機構と、
前記車両の加速走行時又は定速走行時、前記内燃機関の動力を、前記駆動輪に伝達する加速側伝達経路と、
前記車両の減速走行時、前記駆動輪の動力を、前記加速側伝達経路を迂回させて前記内燃機関に伝達する減速側伝達経路と、
前記可変バルブ機構を制御する制御手段と、
を備え、
前記加速側伝達経路は、前記内燃機関の出力軸の動力を変速する変速機と、前記変速機による変速後の動力を前記駆動輪に伝達するワンウェイクラッチと、を備え、
前記車両の減速走行時、前記減速側伝達経路を介して前記駆動輪の動力を前記内燃機関に伝達させ、前記内燃機関のエンジンブレーキよる制動中、
前記制御手段は、前記可変バルブ機構を制御して、前記吸気弁及び/又は前記排気弁の開閉タイミング及び/又はリフト量を可変し、エンジンブレーキを可変する
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
運転者からの要求減速度を検出する要求減速度検出手段を備え、
前記車両の減速走行時、前記制御手段は、前記要求減速度検出手段の検出する要求減速度に基づいて、前記可変バルブ機構を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記変速機は、前記内燃機関の動力によって所定の回転軸から偏心しながら回転する回転部と、前記回転部と前記ワンウェイクラッチの入力部とを接続し、前記回転部の回転運動によって揺動運動する揺動部と、前記回転部の偏心量を可変する偏心量可変機構と、を備え、
前記加速側伝達経路は、前記ワンウェイクラッチと前記駆動輪との間における動力の伝達を断接するクラッチを備え、
前記車両の減速走行時、前記要求減速度検出手段の検出する要求減速度が所定値以上である場合、前記制御手段は、前記クラッチを切断状態とし、前記回転部の偏心量が大きくなるように前記偏心量可変機構を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71574(P2013−71574A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211494(P2011−211494)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】