説明

駆動装置

【課題】高速なモータを制御することが可能となる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置が、直列に接続された第1および第2の直流電源部と、第1の直流電源部に並列に接続されている第1のインバータ部と、第2の直流電源部に並列に接続され、第1のインバータ部に直列に接続されている第2のインバータ部と、第1のインバータ部と第2のインバータ部とを制御する制御部と、を有している。第1のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点と、第2のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点とが、相毎に接続されるとともに負荷に接続されている。制御部が、第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御する、または、第1のインバータ部が有する下アームと第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ターボチャージャ、電動コンプレッサなどに用いられる高速なモータを制御する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ターボチャージャ、電動コンプレッサなどに用いられる交流モータを駆動する駆動装置が知られている。このような駆動装置において用いられるモータドライブの方法として、PWM(Pulse Width Modulation)制御方式(パルス幅変調方式)、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御方式(パルス振幅変調方式)、マルチレベル制御方式が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような駆動装置において、回転数が高速なモータを制御する場合においては、PAM制御方式が用いられている。なお、PAM制御方式においては、昇降圧チョッパ回路で直流電圧を制御する方法が知られている。
【特許文献1】特開2005−137045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような駆動装置においては、昇降圧チョッパ回路が用いられているために、直流電圧を制御する場合の応答性が悪いという問題がある。そのため、たとえば、10万rpm(revolutions per minute)を超えるような高速なモータを制御する場合に、昇降圧チョッパ回路を用いたPAM制御方式による駆動装置を用いると、この駆動装置では、直流電圧を制御する場合の応答性が悪いために、高速なモータを制御することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、高速なモータを制御することが可能となる駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、直列に接続された第1および第2の直流電源部と、前記第1の直流電源部に並列に接続されている第1のインバータ部と、前記第2の直流電源部に並列に接続され、前記第1のインバータ部に直列に接続されている第2のインバータ部と、前記第1のインバータ部と前記第2のインバータ部とを制御する制御部と、を有し、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点と、前記第2のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点とが、相毎に接続されるとともに負荷に接続されており、前記制御部が、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御する、または、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、ことを特徴とする駆動装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記駆動装置が、前記負荷の回転速度を検出する検出部、を有し、前記制御部が、前記検出部が検出した回転速度が予め定められた回転速度以下である場合には、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御し、前記検出部が検出した回転速度が前記予め定められた回転速度より高い場合には、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記検出部が検出した回転速度が前記予め定められた回転速度より高い場合には、前記制御部が、前記負荷の回転に合わせて、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御するとともに、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記負荷が回転する1周期内において、前記制御部が、予め定められている低出力を出力する位相領域においては、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御し、予め定められている高出力を出力する位相領域においては、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、ことを特徴とする請求項3に記載の駆動装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、昇降圧チョッパ回路が不要となるため直流電圧を制御する場合の応答性が良くなることにより、また、PAM制御方式とPWM制御方式とを併用できるために、高速なモータを制御することが可能となる駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<駆動装置1の構成>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による駆動装置1の構成を示す概略ブロック図である。ここでは、負荷として3相モータを駆動する場合の駆動装置1について説明する。
【0012】
駆動装置1は、直列に接続された第1の直流電源部2および第2の直流電源部3と、第1の直流電源部2に並列に接続されている第1のインバータ部11と、第2の直流電源部3に並列に接続され、第1のインバータ部11に直列に接続されている第2のインバータ部12と、負荷6の回転速度を検出する検出部7と、第1のインバータ部11と第2のインバータ部12とを制御する制御部8と、を有する。
【0013】
この負荷6は、たとえば、3相モータである。また、第1のインバータ部11および第2のインバータ部12は、たとえば、それぞれが、フルインバータ回路である。なお、制御部8は、第1のインバータ部11と第2のインバータ部12とを制御することにより、駆動装置1を制御している。
【0014】
また、駆動装置1は、第1の直流電源部2および第1のインバータ部11に並列に接続されている平滑コンデンサ4と、第2の直流電源部3および第2のインバータ部12に並列に接続されている平滑コンデンサ5と、を有する。
【0015】
なお、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112との接続点と、第2のインバータ部が有する上アーム121と下アーム122との接続点とは、相毎に接続されるとともに負荷6に接続されている。ここでは、この負荷6は3相モータであるため、第1のインバータ部11および第2のインバータ部の上アームおよび下アームは、それぞれ、3相に対応するようにされている。
【0016】
たとえば、第1のインバータ部11が有する上アーム111においては、1つの相に対応する半導体スイッチ1111とダイオード1115とが、組みとして接続されている。この半導体スイッチ1111は、たとえば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor: IGBT)である。
【0017】
この半導体スイッチ1111は、ゲート端子の電位が制御部8により制御されることにより、オンまたはオフに制御される。ここで、オンとは、半導体スイッチ1111などの半導体スイッチを導通状態とすることであり、オフとは、半導体スイッチを非導通状態とすることである。
【0018】
また、この第1のインバータ部11が有する上アーム111においては、半導体スイッチ1111とダイオード1115と同様に、半導体スイッチ1112とダイオード1116、および、半導体スイッチ1113とダイオード1117が、それぞれ組みとして相毎に接続されている。
【0019】
また、第1のインバータ部11が有する下アーム112においては、上アーム111と同様に、半導体スイッチ1121とダイオード1125、半導体スイッチ1122とダイオード1126、および、半導体スイッチ1123とダイオード1127が、それぞれ組みとして相毎に接続されている。
【0020】
第2のインバータ部12の構成は、第1のインバータ部11と同様の構成であり、第2のインバータ部12が有する上アーム121においては、半導体スイッチ1211とダイオード1215、半導体スイッチ1212とダイオード1216、および、半導体スイッチ1213とダイオード1217が、それぞれ組みとして相毎に接続されている。
【0021】
また、第2のインバータ部12が有する下アーム122においては、半導体スイッチ1221とダイオード1225、半導体スイッチ1222とダイオード1226、および、半導体スイッチ1223とダイオード1227が、それぞれ組みとして相毎に接続されている。
【0022】
なお、第1のインバータ部11においては、上アーム111の半導体スイッチ1111とダイオード1115との組と、下アーム112の半導体スイッチ1121とダイオード1125の組とが接続されている。そして、この接続点が、相が対応する負荷6の第1の端子61に接続されている。
【0023】
また、第2のインバータ部12においては、上アーム121の半導体スイッチ1211とダイオード1215との組と、下アーム122の半導体スイッチ1221とダイオード1225の組とが接続されている。そして、この接続点が、相が対応する負荷6の第1の端子61に接続されている。
【0024】
同様に、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112との接続点と、第2のインバータ部が有する上アーム121と下アーム122との接続点とが、相が対応する負荷6の端子に、それぞれ、接続されている。
【0025】
制御部8は、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御、または、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する。
【0026】
具体的には、この制御部8は、検出部7が検出した負荷6の回転速度が予め定められた回転速度以下である場合、すなわち、低速回転の場合には、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御する。また、制御部8は、検出部7が検出した回転速度が予め定められた回転速度より高い場合、すなわち高速回転の場合には、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部12が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する。なお、この予め定められた回転速度とは、たとえば、負荷6の駆動能力に基いて、予め定められている回転速度である。
【0027】
また、制御部8は、検出部7が検出した回転速度が予め定められた回転速度より高い場合、負荷の回転に合わせて、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御するとともに、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部12が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する。
【0028】
すなわち、制御部8は、負荷6が回転する1周期内において、予め定められている低出力を出力する位相領域においては、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御し、予め定められている高出力を出力する位相領域においては、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する。
【0029】
<駆動装置1の動作>
次に、図2から図4を用いて、図1を用いて説明した駆動装置1の動作について説明する。ここでは、負荷6の1相についてのみ説明する。なお、以降においては、駆動装置1において、オンとなっている半導体スイッチのみについて説明し、その他の半導体スイッチはオフとなっているものとして説明する。また、以降においては、第1の直流電源部2の電圧をV1とし、また、第2の直流電源部3の電圧をV2として説明する。このV1の値とV2の値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0030】
<低速回転の場合>
まず、図2と図3とを用いて、低速回転の場合に、制御部8が、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御する場合について説明する。
【0031】
図2においては、制御部8は、半導体スイッチ1111と半導体スイッチ1122とをオンとしている。この場合、駆動装置1においては、第1の直流電源部2の正極、半導体スイッチ1111、負荷6の第1の端子61、負荷6の第2の端子62、半導体スイッチ1122、第1の直流電源部2の負極の順に、接続される。
【0032】
図3においては、制御部8は、半導体スイッチ1112と半導体スイッチ1121とをオンとしている。この場合、駆動装置1においては、第1の直流電源部2の正極、半導体スイッチ1112、負荷6の第2の端子62、負荷6の第1の端子61、半導体スイッチ1121、第1の直流電源部2の負極の順に、接続される。
【0033】
図2と図3とを用いて説明したように、制御部8は、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とを制御することにより、負荷6の1つの相に対応する第1の端子61と第2の端子62とに、第1の直流電源部2の正極と負極とを、互いに逆に接続させる。そのため、負荷6の1つの相に対応する端子には、第1の直流電源部2の電圧V1が、一方の方向とその逆方向とに印加されることになる。
【0034】
制御部8は、この図2と図3とを用いて説明したように、負荷6の1つの相に対して電圧V1を互いに逆に印加する2つの状態と、全ての半導体スイッチをオフして負荷6に電圧を印加しない状態とを切り換えて、パルス幅変調方式により負荷6を制御する。
【0035】
<高速回転の場合>
次に、図4と図5とを用いて、高速回転の場合に、制御部8が、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部12が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する場合について説明する。
【0036】
図4においては、制御部8は、半導体スイッチ1211と半導体スイッチ1122とをオンとしている。この場合、駆動装置1においては、第2の直流電源部3の正極、半導体スイッチ1211、負荷6の第1の端子61、負荷6の第2の端子62、半導体スイッチ1122、第1の直流電源部2の負極の順に、接続される。
【0037】
図5においては、制御部8は、半導体スイッチ1212と半導体スイッチ1121とをオンとしている。この場合、駆動装置1においては、第2の直流電源部3の正極、半導体スイッチ1212、負荷6の第2の端子62、負荷6の第1の端子61、半導体スイッチ1121、第1の直流電源部2の負極の順に、接続される。
【0038】
図4と図5とを用いて説明したように、制御部8は、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部12が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御することにより、負荷6の1つの相に対応する第1の端子61と第2の端子62とに、第2の直流電源部3の正極と第1の直流電源部2の負極とを逆に接続させる。そのため、負荷6の1つの相に対応する端子には、第1の直流電源部2の電圧V1と第2の直流電源部3の電圧V2とを直列に加算した電圧が、一方の方向とその逆方向とに印加されることになる。
【0039】
制御部8は、この図4と図5とを用いて説明したように、負荷6の1つの相に対して電圧V1と電圧V2とを直列に加算した電圧を互いに逆に印加する2つの状態と、全ての半導体スイッチをオフして負荷6に電圧を印加しない状態とを切り換えて、パルス幅変調方式により負荷6を制御する。
【0040】
なお、制御部8による制御は、この図4と図5とを用いて説明したように、負荷6の1つの相に対して電圧V1と電圧V2とを直列に加算した電圧を互いに逆に印加する2つの状態と、全ての半導体スイッチをオフして負荷6に電圧を印加しない状態とを切り換えて、パルス幅変調方式により負荷6を制御することのみに限られるものではない。
【0041】
この制御部8は、図2と図3とを用いて説明したような、負荷6の1つの相に対して電圧V1を互いに逆に印加する2つの状態と、図4と図5とを用いて説明したような、負荷6の1つの相に対して電圧V1と電圧V2とを直列に加算した電圧を互いに逆に印加する2つの状態と、全ての半導体スイッチをオフして負荷6に電圧を印加しない状態とを切り換えて、パルス幅変調方式により負荷6を制御する。
【0042】
制御部8は、たとえば、負荷6が回転する1周期内において、予め定められている低出力を出力する位相領域においては、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とをパルス幅変調方式により制御し、予め定められている高出力を出力する位相領域においては、第1のインバータ部11が有する下アーム112と第2のインバータ部が有する上アーム121とをパルス幅変調方式により制御する。
【0043】
図6を用いて、負荷6が回転する1周期内において、制御部8の制御により、駆動装置1が負荷6に印加する電圧の一例としての出力波形について説明する。この図6において、横軸は時刻tを示し、縦軸は負荷6の1つの相に対して印加される電圧を示している。
【0044】
図6に示すように、制御部8は、時刻t0から時刻t1の期間において電圧V1を負荷6に印加し、時刻t1から時刻t2の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。次に、制御部8は、時刻t2から時刻t3の期間において電圧V1を負荷6に印加し、時刻t3から時刻t4の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。なお、駆動装置1が電圧V1を負荷6に印加する場合は、制御部8は、たとえば、図2を用いて説明したように駆動装置1を制御する。
【0045】
次に、制御部8は、時刻t4から時刻t5の期間において電圧V1+V2を負荷6に印加し、時刻t5から時刻t6の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。次に、制御部8は、時刻t6から時刻t7の期間において電圧V1+V2を負荷6に印加し、時刻t7から時刻t8の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。なお、駆動装置1が電圧V1+V2を負荷6に印加する場合は、制御部8は、たとえば、図4を用いて説明したように駆動装置1を制御する。
【0046】
次に、制御部8は、時刻t0から時刻t4の期間と同様に、時刻t8から時刻t12の期間において、電圧V1と電圧0とを期間毎に負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。
【0047】
次に、制御部8は、時刻t12から時刻t13の期間において電圧−V1を負荷6に印加し、時刻t13から時刻t14の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。次に、制御部8は、時刻t14から時刻t15の期間において電圧−V1を負荷6に印加し、時刻t15から時刻t16の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。なお、駆動装置1が電圧V1を負荷6に印加する場合は、制御部8は、たとえば、図3を用いて説明したように駆動装置1を制御する。
【0048】
次に、制御部8は、時刻t16から時刻t17の期間において電圧−(V1+V2)を負荷6に印加し、時刻t18から時刻t19の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。次に、制御部8は、時刻t18から時刻t19の期間において電圧−(V1+V2)を負荷6に印加し、時刻t19から時刻t20の期間において電圧0を負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。なお、駆動装置1が電圧−(V1+V2)を負荷6に印加する場合は、制御部8は、たとえば、図5を用いて説明したように駆動装置1を制御する。
【0049】
次に、制御部8は、時刻t12から時刻t16の期間と同様に、時刻t20から時刻t24の期間において、電圧V1と電圧0とを期間毎に負荷6に印加するように駆動装置1を制御する。その後、制御部8は、時刻t0から時刻t24の期間の動作を繰り返す。
【0050】
ここで、この時刻t0から時刻t24の期間は負荷6の1回転に対応しており、各時刻は負荷6の回転における位相に対応付けることが可能である。なお、上記に説明した時刻t0から時刻t3の期間、時刻t8から時刻t11の期間、時刻t12から時刻t15の期間、および、時刻t20から時刻t23の期間が、負荷6が回転する1周期内において予め定められている低出力を出力する位相領域に対応している。また、上記に説明した時刻t4から時刻t7の期間、時刻t16から時刻t19の期間が、負荷6が回転する1周期内において予め定められている高出力を出力する位相領域に対応している。
【0051】
図6を用いて説明したように、制御部8は、負荷6の1回転の周期に対応して、駆動装置1が負荷6に印加する電圧の波形が交流波形となるように、駆動装置1を制御する。これにより、制御部8により駆動装置1は、PAM制御方式により負荷6を制御することができる。
【0052】
更に、制御部8は、負荷6の1回転の周期において、それぞれの電圧を印加する期間を、PWM制御方式により制御している。たとえば、図6においては、電圧V1を印加する時刻t2から時刻t3の期間より、電圧V1+V2を印加する時刻t4から時刻t5の期間の方が長くなるように制御している。
【0053】
以上のように、制御部8により駆動装置1は、負荷6の1回転の周期において、PAM制御方式により負荷6を制御しつつ、PWM制御方式により負荷6を制御することが可能となる。これにより、駆動装置1は、負荷6の回転位相に合わせて、より細かい制御が可能となり、より効率的に負荷6を制御することが可能となる。
【0054】
なお、制御部8は、負荷6の回転速度毎に、上記に示したような負荷6に印加する電圧および電圧を印加する期間に関する情報、または、各半導体スイッチをオンまたはオフに制御するための情報を制御情報として、制御情報記憶部に予め記憶しておいてもよい。この制御情報記憶部とは、たとえば、制御部8の内部、駆動装置1の内部、または、駆動装置1の外部に予め備えられている記憶部である。そして、制御部8は、検出部7が検出した回転速度に応じて、この制御情報記憶部から読み出した制御情報に基づいて、上記に図6を用いて説明したように、駆動装置1を制御するようにしてもよい。
【0055】
または、制御部8は、負荷6の回転速度に応じて、上記に示したような負荷6に印加する電圧および電圧を印加する期間に関する情報、または、各半導体スイッチをオンまたはオフに制御するための情報を、予め定められた関数に基いて、制御情報として生成するようにしてもよい。そして、制御部8は、この生成した制御情報に基づいて、上記に図6を用いて説明したように、駆動装置1を制御するようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態による駆動装置1は、半導体スイッチを用いることにより、昇降圧チョッパ回路が不要となるため、直流電圧を制御する場合の応答性が良くなり、そのため、高速なモータを制御することが可能である。
また、本実施形態による駆動装置は、PAM制御方式とPWM制御方式とを併用できるために、高速なモータを、より効率的に制御することが可能となる駆動装置を提供することができる。
【0057】
また、本実施形態による駆動装置は、モータなどの負荷が回転する1周期の期間内において、PAM制御方式とPWM制御方式とを併用して、モータに印加する交流信号を生成することができるために、高速なモータを、より効率的に制御することが可能となる駆動装置を提供することができる。
【0058】
また、制御部8は、負荷6の回転速度に応じて、低速回転の場合には、PWM制御方式により負荷6を制御し、また、高速回転の場合には、PAM制御方式とPWM制御方式とを併用して負荷6を制御することが可能であるため、低速回転から高速回転における全ての回転速度において、負荷6を効率的に制御することができる。
【0059】
なお、上記の説明においては、低速回転の場合には、制御部8は、第1のインバータ部11が有する上アーム111と下アーム112とを制御することにより、負荷6に、第1の直流電源部2の正極と負極とを、1方の方向とその逆の方向とに接続させるものとして説明したが、これに限られるものではない。
【0060】
たとえば、制御部8は、第2のインバータ部12が有する上アーム121と第1のインバータ部11が有する下アーム112とを制御することにより、負荷6に、第1の直流電源部2と第2の直流電源部3とを直列に接続した電源の正極と負極とを、1方の方向とその逆の方向とに接続させてもよい。すなわち、駆動装置1は、第1の直流電源部2(電圧V1)と第2の直流電源部3(電圧V2)とを直列接続した電圧(電圧V1+V2)により、負荷6を、PWM制御するようにしてもよい。
【0061】
なお、上記においては、負荷として3相モータを駆動する場合の駆動装置1について説明したが、これに限られるものではなく、本実施形態による駆動装置1は、単相モータなど、任意の相を有している負荷を駆動することも可能である。その場合には、駆動装置1は、駆動対象とする負荷が有している相の数に応じて、上アームおよび下アームにおける半導体スイッチの数が予め設定されている。
【0062】
なお、上記に説明した制御情報記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CR−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0063】
なお、この制御部8は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この制御部8はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御部8の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0064】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施形態による駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す駆動装置の第1の動作状態を示す動作状態図である。
【図3】図1に示す駆動装置の第2の動作状態を示す動作状態図である。
【図4】図1に示す駆動装置の第3の動作状態を示す動作状態図である。
【図5】図1に示す駆動装置の第4の動作状態を示す動作状態図である。
【図6】図1に示す駆動装置が出力する一例としての出力波形を示す波形図である。
【符号の説明】
【0066】
1…駆動装置、2…第1の直流電源部、3…第2の直流電源部、4、5…平滑コンデンサ、6…負荷、7…検出部、8…制御部、11…第1のインバータ部、12…第2のインバータ部、111、121…上アーム、112、122…下アーム、1111、1112、1113、1121、1122、1123、1211,1212,1213,1221,1222,1223…半導体スイッチ、1115、1116、1117、1125、1126、1127、1215、1216、1217、1225、1226、1227…ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1および第2の直流電源部と、
前記第1の直流電源部に並列に接続されている第1のインバータ部と、
前記第2の直流電源部に並列に接続され、前記第1のインバータ部に直列に接続されている第2のインバータ部と、
前記第1のインバータ部と前記第2のインバータ部とを制御する制御部と、
を有し、
前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点と、前記第2のインバータ部が有する上アームと下アームとの接続点とが、相毎に接続されるとともに負荷に接続されており、
前記制御部が、
前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御する、または、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記駆動装置が、
前記負荷の回転速度を検出する検出部、
を有し、
前記制御部が、
前記検出部が検出した回転速度が予め定められた回転速度以下である場合には、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御し、
前記検出部が検出した回転速度が前記予め定められた回転速度より高い場合には、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記検出部が検出した回転速度が前記予め定められた回転速度より高い場合には、
前記制御部が、
前記負荷の回転に合わせて、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御するとともに、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記負荷が回転する1周期内において、
前記制御部が、
予め定められている低出力を出力する位相領域においては、前記第1のインバータ部が有する上アームと下アームとをパルス幅変調方式により制御し、
予め定められている高出力を出力する位相領域においては、前記第1のインバータ部が有する下アームと前記第2のインバータ部が有する上アームとをパルス幅変調方式により制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−278827(P2009−278827A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129612(P2008−129612)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】