説明

駆動装置

【課題】電動機の回転方向を切り替えることにより変速を行うことができ、かつ低回転時に振動や騒音等が発生することを抑制可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ・ジェネレータ11が正転方向に回転している場合に第1一方向クラッチ15が係合状態に切り替わってモータ・ジェネレータ11の動力がディファレンシャル機構3に伝達される第1ギア列G1と、第1ギア列G1とは減速比が異なり、モータ・ジェネレータ11が逆転方向に回転している場合に第2一方向クラッチ20が係合状態に切り替わってモータ・ジェネレータ11の動力がディファレンシャル機構3に伝達される第2ギア列G2とを備えた駆動装置において、制御装置30は、車速及び車両1Aに要求される駆動力に応じてモータ・ジェネレータ11の回転方向を切り替え、かつ車速が所定の判定速度Va以下の場合にはモータ・ジェネレータ11の回転方向を切り替える制御を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の回転方向を切り替えることにより変速を行う駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータで出力軸を回転駆動する装置において、電動モータの回転方向を切り替えることにより変速を行うことが可能な装置が知られている。例えば、電動モータと出力軸との間に、減速比が互いに異なるとともに一方は出力軸が電動モータと同じ方向に回転し、他方は出力軸が電動モータと異なる方向に回転するように動力を伝達する2つのギア列を設ける。そして、電動モータの回転方向に応じて各ギア列に設けた一方向クラッチでこれらギア列を選択的に切り替えることにより変速を行う装置が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−050414号公報
【特許文献2】特開2008−081099号公報
【特許文献3】特開2005−204360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、出力軸の回転時に電動モータの回転方向を切り替えると、まずそれまで係合していた一方の一方向クラッチが解放され、その後他方の一方向クラッチが係合される。この際、一方の一方向クラッチが解放されてから他方の一方向クラッチが係合されるまでの間、両方の一方向クラッチが解放状態になるフリー期間が生じる。そして、このフリー期間は回転方向を切り替えたときの出力軸の回転数が低いほど短くなる。すなわち、電動モータの回転方向を切り替えるときの出力軸の回転数が低いほど一方のギア列から他方のギア列に切り替わる時間が短くなる。そのため、電動モータの回転方向及び回転数を出力軸に要求される駆動力及び回転数で制御し、かつ出力軸の回転数が低いときに外乱等により出力軸に要求される駆動力が変動した場合には、ギア列の切り替えが短時間の間に複数回発生する、いわゆる多重変速が発生し、振動や騒音等が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、電動機の回転方向を切り替えることにより変速を行うことができ、かつ低回転時に振動や騒音等が発生することを抑制可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、電動機と出力部材とが同じ方向に回転するように前記電動機の動力を前記出力部材に伝達可能な第1動力伝達機構と、前記電動機の動力を前記第1動力伝達機構とは異なる減速比で前記電動機と前記出力部材とが互いに異なる方向に回転するように前記出力部材に伝達可能な第2動力伝達機構と、を備え、前記第1動力伝達機構には、前記電動機から前記出力部材への所定の正転方向のトルクの伝達は許容し、前記電動機から前記出力部材への前記正転方向とは逆の逆転方向のトルクの伝達及び前記出力部材から前記電動機へのトルクの伝達は阻止する第1一方向クラッチが設けられ、前記第2動力伝達機構には、前記電動機から前記出力部材への前記逆転方向のトルクの伝達は許容し、前記電動機から前記出力部材への前記正転方向のトルクの伝達及び前記出力部材から前記電動機へのトルクの伝達は阻止する第2一方向クラッチが設けられた駆動装置において、前記出力部材に要求される回転数及び駆動力の少なくともいずれか一方に応じて前記電動機の回転方向を切り替える制御手段と、前記出力部材の回転速度が所定の判定速度以下の場合には前記制御手段による前記電動機の回転方向を切り替える制御を禁止する禁止手段と、を備えている(請求項1)。
【0007】
本発明の駆動装置によれば、電動機の回転方向を切り替えることにより電動機と出力部材との間の動力伝達経路を第1動力伝達機構又は第2動力伝達機構に切り替えることができる。そして、第1動力伝達機構と第2動力伝達経路とは減速比が互いに異なっているので、電動機の回転方向を切り替えることにより変速を行うことができる。また、本発明の駆動装置では、出力部材の回転速度が所定の判定速度以下の場合には電動機の回転方向の切り替えが禁止されるので、外乱によって出力部材に要求される駆動力が変動しても動力伝達機構が切り替えられない。これにより多重変速の発生を抑制できるので、低回転時に振動や騒音等が発生することを抑制できる。
【0008】
本発明の駆動装置は、電動機を駆動源とする種々の装置や機械に適用できる。例えば、前記駆動装置は、車両に搭載され、前記出力部材は、前記車両の駆動輪に連結されたディファレンシャル機構であってもよい(請求項2)。また、前記車両は、前記電動機の他に動力源として内燃機関が搭載されたハイブリッド車両であり、前記内燃機関は、前記第1動力伝達機構又は前記第2動力伝達機構のいずれか一方に動力を出力可能なように設けられてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
以上に説明したように、本発明の駆動装置によれば、電動機の回転方向を切り替えることにより変速を行うことができる。また、出力部材の回転速度が判定速度以下の場合には電動機の回転方向の切り替えを禁止するので、多重変速の発生を抑制することができる。そのため、低回転時に振動や騒音等が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一形態に係る駆動装置が組み込まれた車両の要部を模式的に示す図。
【図2】駆動装置の各駆動モードにおけるモータ・ジェネレータの回転方向、第1一方向クラッチの状態、及び第2一方向クラッチの状態を示す図。
【図3】モータ・ジェネレータの回転数と車速との対応関係を示す図。
【図4】駆動装置の駆動力線図。
【図5】制御装置が実行する切替禁止制御ルーチンを示すフローチャート。
【図6】本発明の駆動装置が搭載されたパラレル式ハイブリッド車両の要部を模式的に示す図。
【図7】本発明の駆動装置が搭載されたシリーズ式ハイブリッド車両の要部を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一形態に係る駆動装置が組み込まれた車両の要部を模式的に示している。駆動装置10は、電動機としてのモータ・ジェネレータ11を動力源として備え、このモータ・ジェネレータ11で車両1Aの駆動輪2を駆動する。駆動装置10が車両1Aに搭載されることにより、その車両1Aは電気自動車として構成される。モータ・ジェネレータ11は、電動機及び発電機として機能する周知のものであり、ロータ軸11aと一体回転するロータ11bと、ロータ11bの外周に同軸に配置されて不図示のケースに固定されたステータ11cとを備えている。
【0012】
駆動装置10は、第1動力伝達機構としての第1ギア列G1と、第2動力伝達機構としての第2ギア列G2とを備えている。第1ギア列G1は、第1ドライブギア12と、第1中間ギア13と、第1出力ギア14とを備えている。第1ドライブギア12は、ロータ軸11aに相対回転可能に支持されるとともに、第1一方向クラッチ15を介してロータ軸11aと接続されている。第1一方向クラッチ15は、ロータ軸11aが所定の正転方向に回転し、かつロータ軸11aの回転速度(回転数)が第1ドライブギア12の回転速度以上の場合に係合状態に切り替わり、ロータ軸11aが正転方向とは逆の逆転方向に回転している場合又はロータ軸11aの回転速度が第1ドライブギア12の回転速度未満の場合には解放状態に切り替わるように構成されている。そのため、第1一方向クラッチ15は、ロータ軸11aから第1ドライブギア12への正転方向のトルクの伝達は許容するが、ロータ軸11aから第1ドライブギア12への逆転方向のトルクの伝達及び第1ドライブギア12からロータ軸11aへのトルクの伝達は阻止する。第1中間ギア13は、自転可能かつ第1ドライブギア12と噛み合うように不図示のケースに支持されている。第1出力ギア14は、第1中間ギア13と噛み合うように駆動輪2に連結された出力部材としてのディファレンシャル機構3のケース3aに固定されている。
【0013】
第2ギア列G2は、第2ドライブギア16と、第2中間ギア17と、第3中間ギア18と、第2出力ギア19とを備えている。第2ドライブギア16は、ロータ軸11aに相対回転可能に支持されるとともに第2一方向クラッチ20を介してロータ軸11aと接続されている。第2一方向クラッチ20は、ロータ軸11aが逆転方向に回転し、かつロータ軸11aの回転速度が第2ドライブギア16の回転速度以上の場合に係合状態に切り替わり、ロータ軸11aが正転方向に回転している場合又はロータ軸11aの回転速度が第2ドライブギア16の回転速度未満の場合には解放状態に切り替わるように構成されている。そのため、第2一方向クラッチ20は、ロータ軸11aから第2ドライブギア16への逆転方向のトルクの伝達は許容するが、ロータ軸11aから第2ドライブギア16への正転方向のトルクの伝達及び第2ドライブギア16からロータ軸11aへのトルクの伝達は阻止する。第2中間ギア17は、自転可能かつ第2ドライブギア16と噛み合うように不図示のケースに支持されている。第3中間ギア18は、自転可能かつ第2中間ギア17と噛み合うように不図示のケースに支持されている。第2出力ギア19は、第3中間ギア18と噛み合うようにケース3aに固定されている。第2ギア列G2は、ロータ軸11aとディファレンシャル機構3との間の減速比が第1ギア列G1の減速比よりも小さくなるように各ギア間のギア比が設定されている。
【0014】
この駆動装置10では、モータ・ジェネレータ11が正転方向に動作している場合には第1一方向クラッチ15が係合状態に切り替わり、かつ第2一方向クラッチ20が解放状態に切り替わる。そのため、モータ・ジェネレータ11の動力が第1ギア列G1を介して駆動輪2に伝達される。第1ギア列G1は3個のギアで構成されているため、駆動輪2は正転方向に回転する。以下、このように駆動装置10を動作させるモードを正転駆動モードと称する。一方、モータ・ジェネレータ11が逆転方向に動作している場合には第2一方向クラッチ20が係合状態に切り替わり、かつ第1一方向クラッチ15が解放状態に切り替わる。そのため、モータ・ジェネレータ11の動力が第2ギア列G2を介して駆動輪2に伝達される。第2ギア列G2は4個のギアで構成されているため、この場合にも駆動輪2は正転方向に回転する。以下、このように駆動装置10を動作させるモードを逆転駆動モードと称する。このように駆動装置10では、モータ・ジェネレータ11を正転方向に動作させても逆転方向に動作させても駆動輪2が正転方向に回転する。上述したように第2ギア列G2の減速比は第1ギア列G1の減速比よりも小さいので、モータ・ジェネレータ11の回転方向を切り替えて駆動装置10のモードを切り替えることにより変速を行うことができる。図2は、上述した各駆動モードにおけるモータ・ジェネレータ11の回転方向、第1一方向クラッチ15の状態、及び第2一方向クラッチ20の状態をまとめて示している。
【0015】
図3は、モータ・ジェネレータ11の回転数と車速との対応関係を示している。周知のように車速はディファレンシャル機構3の回転速度(回転数)と相関しているので、この図の横軸はディファレンシャル機構3の回転速度でもある。この図において線L1は第1ドライブギア12の回転数の変化を示し、線L2は第2ドライブギア16の回転数の変化を示している。上述したように第1一方向クラッチ15は、ロータ軸11aが所定の正転方向に回転し、かつロータ軸11aの回転速度が第1ドライブギア12の回転速度以上の場合に係合状態に切り替わり、ロータ軸11aが正転方向とは逆の逆転方向に回転している場合又はロータ軸11aの回転速度が第1ドライブギア12の回転速度未満の場合には解放状態に切り替わる。一方、第2一方向クラッチ20は、ロータ軸11aが逆転方向に回転し、かつロータ軸11aの回転速度が第2ドライブギア16の回転速度以上の場合に係合状態に切り替わり、ロータ軸11aが正転方向に回転している場合又はロータ軸11aの回転速度が第2ドライブギア16の回転速度未満の場合には解放状態に切り替わる。そのため、この図において線L1と縦軸とで囲まれた第1範囲A1では、第1一方向クラッチ15のみが係合状態に切り替わる。一方、線L2と縦軸とで囲まれた第2範囲A2では、第2一方向クラッチ20のみが係合状態に切り替わる。そして、線L1と線L2とで囲まれた第3範囲A3では両方の一方向クラッチ15、20が解放状態に切り替わる。そのため、正転駆動モードにおいて車両1が車速Vで走行しているときに駆動モードを逆転駆動モードに切り替えた場合、モータ・ジェネレータ11の回転数が+R1から−R2になるまでの期間Tは両方の一方向クラッチ15、20が解放状態になる。この図に示すようにこの両方の一方向クラッチ15、20が解放状態になるフリー期間Tは、車速が低くなるほど短くなる。
【0016】
図1に示すようにモータ・ジェネレータ11は、インバータ21を介してバッテリ22と電気的に接続されている。インバータ21は、モータ・ジェネレータ11に供給される電力を制御可能な周知のものである。
【0017】
インバータ21の動作は、駆動装置10の制御を行うコンピュータとして構成された制御手段としての制御装置30にて制御される。制御装置30は、インバータ21の動作を制御し、これにより駆動装置10の駆動モード及びモータ・ジェネレータ11の回転数等を制御する。制御装置30には、このような制御に使用するパラメータを取得するため、各種センサが接続されている。制御装置30には、例えば車両1Aの速度に応じた信号を出力する車速センサ31及びアクセルの開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ32等が接続されている。この他にも制御装置30には、種々のセンサが接続されているがそれらの図示は省略した。
【0018】
次に制御装置30による駆動装置10の制御方法について説明する。制御装置30は、車両1Aの走行状態等に応じて駆動装置10の駆動モードを制御する。図4は、駆動装置10の駆動力線図を示している。制御装置30は、車速及び駆動力で特定される駆動装置10の動作状態がこの図の範囲An内の場合には駆動モードを正転駆動モードに切り替え、範囲Ar内の場合には駆動モードを逆転駆動モードに切り替える。なお、駆動装置10の動作状態が正転駆動モードの範囲Anと逆転駆動モードの範囲Arとが重なる範囲Anr内にある場合には、車速、要求駆動力、多重変速、及び効率等を考慮して適宜に駆動モードが切り替えられる。具体的に説明すると制御装置30は、例えば、登り坂等で駆動輪2に高トルクが要求される場合には駆動モードを減速比の大きい正転駆動モードに切り替える。また、制御装置30は、車両1Aの高速走行時等駆動輪2を高回転で駆動する必要がある場合には、駆動モードを逆転駆動モードに切り替える。この他、制御装置30は、モータ・ジェネレータ11の効率、各ギア列G1、G2の減速比、及び駆動装置10に要求される駆動力等に基づいてエネルギの無駄な消費が抑えられるように駆動モードを切り替える。
【0019】
図5は、このように制御装置30が駆動装置10の動作を制御するために実行する制御ルーチンの1つを示している。この制御ルーチンは、駆動装置10の動作中に所定の周期で繰り返し実行される。
【0020】
この制御ルーチンにおいて制御装置30は、まずステップS1で車両1Aの走行状態を取得する。車両1Aの走行状態としては、例えば車速、アクセル開度等が取得される。次のステップS2において制御装置30は、車速が予め設定した所定の判定速度Vaより大きいか否か判定する。図3に示したように車速が低くなるほど第1ドライブギア12の回転数と第2ドライブギア16の回転数とが近くなってフリー期間Tが短くなるので、車両1Aが低速で走行しているときには駆動モードの切り替えが短時間で行われる。そのため、車両1Aが低速で走行しているときに外乱等により駆動輪2に要求される駆動力や回転数が変動すると、駆動装置10においてギア列の切り替えが短時間の間に複数回発生する、いわゆる多重変速が発生する。多重変速が発生すると各一方向クラッチ15、20の状態が短時間の間に複数回切り替わるので、振動や騒音等が発生するおそれがある。そこで、判定速度Vaには、この多重変速の発生を十分に抑制することが可能な車速が設定される。
【0021】
車速が判定速度Va以下と判定した場合にはステップS3に進み、制御装置30は駆動モードの切り替えを禁止することを示すモード切替禁止フラグをオンの状態に切り替える。その後、今回の制御ルーチンを終了する。モード切替禁止フラグは制御装置30が実行する他の制御ルーチンにて参照され、このフラグがオンの場合には駆動モードの切り替えが禁止される。一方、車速が判定速度Vaより大きいと判定した場合にはステップS4に進み、制御装置30はモード切替禁止フラグをオフの状態に切り替える。その後、今回の制御ルーチンを終了する。制御装置30は、この切替禁止制御ルーチンを実行することにより、本発明の禁止手段として機能する。
【0022】
以上に説明したように、本発明の駆動装置10によれば、車速が判定速度Va以下の場合には駆動モードの切り替えが禁止される。これにより多重変速の発生を抑制できるので、振動や騒音等の発生を抑制できる。そのため、ドライバビリティを改善できる。
【0023】
なお、駆動装置10の制御方法は、上述した制御方法に限定されない。例えば、制御装置30は、アクセル開度センサ32の出力信号に基づいてアクセルの踏み込みの加速度を計測し、モード切替禁止フラグがオンの状態であっても車両1Aに対して急加速が要求された場合には駆動モードを減速比の大きい正転駆動モードに切り替えてもよい。この際には、駆動モードの切り替えが迅速に行われるように制御装置30は、モータ・ジェネレータ11の回転数をその時点における第1ドライブギア12の回転数よりも高い回転数に迅速に変更する。すなわち、急加速が要求された場合には各一方向クラッチ15、20の状態を急に切り替えることが許容される。
【0024】
本発明の駆動装置は、電気自動車に限定されずパラレル式ハイブリッド車両やシリーズ式ハイブリッド車両に搭載してもよい。図6は本発明の駆動装置が搭載されたパラレル式ハイブリッド車両の要部を模式的に示し、図7は本発明の駆動装置が搭載されたシリーズ式ハイブリッド車両の要部を模式的に示している。なお、図6及び図7において図1と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
図6に示したようにパラレル式ハイブリッド車両1Bでは、内燃機関50と、内燃機関50の出力を変速する変速機51とがさらに設けられている。なお、これらはハイブリッド車両に搭載される周知の内燃機関及び変速機であるため、詳細な説明を省略する。この図に示すように変速機51の出力ギア51aは、第1ドライブギア12と噛み合わされている。そのため、この車両1Bでは、モータ・ジェネレータ11の動力及び内燃機関50の動力で駆動輪2を駆動可能である。
【0026】
図7に示したようにシリーズ式ハイブリッド車両1Cでは、内燃機関60と、内燃機関60にて駆動される発電機61とがさらに設けられている。発電機61は、インバータ62を介してバッテリ22と電気的に接続されている。なお、これらはハイブリッド車両に搭載される周知の内燃機関、発電機、及びインバータであるため、詳細な説明を省略する。この車両1Cでは、内燃機関60で発電機61を駆動して発電を行い、その電気をバッテリ22に充電することができる。そして、そのバッテリ22に充電した電気で車両1Cを駆動することができる。
【0027】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明の駆動装置の適用対象は車両に限定されない。本発明の駆動装置は、電動機を動力源として使用可能な種々の装置や機械に適用してよい。
【0028】
本発明の駆動装置の各ギア列のギアの個数は3個と4個に限定されない。一方のギア列を介して動力が伝達される場合にはモータ・ジェネレータと駆動輪とが同方向に回転し、他方のギア列を介して動力が伝達される場合にはモータ・ジェネレータと駆動輪とが異なる方向に回転するように一方のギア列が奇数個のギアで構成され、他方のギア列が偶数個のギアで構成されていればよい。また、各ギア列の減速比は、一方のギア列と他方のギア列とで減速比が互いに異なるように設定されていればよい。
【0029】
各ギア列において一方向クラッチが設けられる位置は、モータ・ジェネレータのロータ軸と各ギア列の最もモータ・ジェネレータ側のギアとの間に限定されない。一方向クラッチは、ギア列の途中に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1A、1B、1C 車両
3 ディファレンシャル機構(出力部材)
10 駆動装置
11 モータ・ジェネレータ(電動機)
15 第1一方向クラッチ
20 第2一方向クラッチ
30 制御装置(制御手段、禁止手段)
50 内燃機関
G1 第1ギア列(第1動力伝達機構)
G2 第2ギア列(第2動力伝達機構)
Va 判定速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と出力部材とが同じ方向に回転するように前記電動機の動力を前記出力部材に伝達可能な第1動力伝達機構と、前記電動機の動力を前記第1動力伝達機構とは異なる減速比で前記電動機と前記出力部材とが互いに異なる方向に回転するように前記出力部材に伝達可能な第2動力伝達機構と、を備え、
前記第1動力伝達機構には、前記電動機から前記出力部材への所定の正転方向のトルクの伝達は許容し、前記電動機から前記出力部材への前記正転方向とは逆の逆転方向のトルクの伝達及び前記出力部材から前記電動機へのトルクの伝達は阻止する第1一方向クラッチが設けられ、
前記第2動力伝達機構には、前記電動機から前記出力部材への前記逆転方向のトルクの伝達は許容し、前記電動機から前記出力部材への前記正転方向のトルクの伝達及び前記出力部材から前記電動機へのトルクの伝達は阻止する第2一方向クラッチが設けられた駆動装置において、
前記出力部材に要求される回転数及び駆動力の少なくともいずれか一方に応じて前記電動機の回転方向を切り替える制御手段と、前記出力部材の回転速度が所定の判定速度以下の場合には前記制御手段による前記電動機の回転方向を切り替える制御を禁止する禁止手段と、を備えている駆動装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、車両に搭載され、
前記出力部材は、前記車両の駆動輪に連結されたディファレンシャル機構である請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記車両は、前記電動機の他に動力源として内燃機関が搭載されたハイブリッド車両であり、
前記内燃機関は、前記第1動力伝達機構又は前記第2動力伝達機構のいずれか一方に動力を出力可能なように設けられている請求項2に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−147598(P2012−147598A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4848(P2011−4848)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】