説明

駐車隙間内に後退駐車すべき車両を操舵するための方法

駐車隙間内に後退駐車すべき車両を操舵するための方法であって、駐車隙間外のスタート位置から出発して駐車隙間内の駐車位置の到達に至るまで相前後して各々屈曲なく互いに移行する5つのカーブ部分が後退走行され、走行方向で見て最後の4つのカーブ部分が次のカーブ種類に係るものである:第2カーブ部分はクロソイド部分に係るもので、第3カーブ部分は円弧部分に係るもので、第4カーブ部分は他のクロソイド部分に係るもので、第5カーブ部分は他の円弧部分に係るものである、前記方法において、車両のスタート位置から出発し、駐車位置の到達に至るまで後退走行すべき全軌跡が検出され、操舵装置が車両の後退走行時に制御電子装置によりその軌跡に対応して制御され、更に、車両がスタート位置において駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置し、スタート位置と第2カーブ部分の開始との間にあり後退走行される第1カーブ部分が、第2カーブ部分とは別の幾何学形状関数により描かれていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前提部(所謂おいて部)に記載した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、駐車隙間(駐車スペース)内に車両を後退駐車するための方法が知られている。スタート位置であって車両が駐車隙間の斜め前方に且つ駐車隙間の縦方向と平行に位置するというスタート位置から出発し、電子装置が、複数のクロソイド部分及び円弧部分から成る目標軌道(目標トラジェクトリ)を算出する。この電子装置は、スタート位置から出発し相前後して次のカーブ部分が走行されるように操舵装置(操舵機能)を制御する:
− 第1クロソイド部分
− 第1円弧部分
− 第2クロソイド部分
− 第2円弧部分
【0003】
駐車過程中には実際軌道が目標軌道と比較される。そのずれは操舵角度の対応的な調整により相殺される。特許文献1では、駐車過程であって駐車すべき車両がその出発位置において駐車隙間と平行に位置するという駐車過程だけが明確に説明されている。このことは、実際には殆どの場合において事実とは異なるものである。調査により、正に駐車過程の開始時の車両ポジションが極めて正確に知られてなくてはならなく且つ車両の僅かな「傾斜位置」が所望の「目標駐車位置」から既に比較的大きなずれを導き得ることが示されている。
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第19940007A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、後退駐車すべき車両を操舵するための改善方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、特許請求項1に記載した特徴により解決される。本発明の有利な構成及び他の構成は下位請求項から読み取れる。
【0007】
本発明は、操舵方法であって、車両が駐車隙間の斜め前方に位置するというスタート位置から出発して駐車隙間内の駐車位置の到達に至るまで相前後して各々屈曲なく互いに移行する5つのカーブ部分が後退走行されるという操舵方法から出発し、この際、走行方向で見て最後の4つのカーブ部分が次のカーブ種類に係るものである:
− 第2カーブ部分はクロソイド部分に係るもので、
− 第3カーブ部分は円弧部分に係るもので、
− 第4カーブ部分は他のクロソイド部分に係るもので、
− 第5カーブ部分は他の円弧部分に係るものである。
【0008】
本発明の核は、車両が、スタート位置、即ち駐車過程の開始時に、任意の角度で駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置し得ること、及び、スタート位置と第2カーブ部分の開始との間にある後退走行すべき第1カーブ部分が、第2カーブ部分とは別の幾何学形状関数(ジオメトリ関数)により描かれているということにある。測定電子装置を用い、車両のポジションと指向方向が出発位置において駐車隙間に対して相対的に検知される。それに加え、規定の数学的な車両モデルを用い、目標軌道(目標トラジェクトリ)が計算される。その後、駐車過程中には車両の操舵装置が目標軌道に対応して制御される。本質的なこととして、ここでは操舵装置の本当の制御に係るものであり操舵装置の調整に係るものではないということがあり、操舵装置の調整は制御と比較するとより多くの手間と費用と結び付いているものである。
【0009】
第1カーブ部分は直線又は同様にクロソイドであり得る。本質的なこととして、第1カーブ部分が平滑に即ち屈曲なく第2カーブ部分に移行するということがある。基本的に、スタート位置と駐車位置との間の全駐車過程中には操舵装置が、操舵角度変更が飛躍なく或いは連続的に行われるように制御されるということが当てはまる。このことは、車両が駐車過程中に個々のカーブ部分間の移行部において停止される必要がなく、停止することなくスタート位置から駐車位置へと走行され得るという長所を有する。
【0010】
「駐車制御」が、運転者により、車両が停止している場合にだけ活動化され得ることが更に意図され得て、その際には、現在の車両ポジションと駐車隙間に対する相対的な車両位置とが電子駐車制御装置によりスタート位置として定義される。好ましくは、車両が駐車のために運転者により動き出される必要があり且つ全駐車過程中の車両速度が運転者により規定される必要があるということが意図され得る。安全上の理由から、運転者により規定された速度が場合により規定の最大速度に対して制限されることが意図され得る。
【0011】
本発明に従い、制御電子装置により駐車過程のために調節すべき操舵角度が、車両により後退走行すべき経路に関して検出される。「経路に関する操舵角度」は、操舵装置が車両速度に依存せず駐車過程中に制御され得るという長所を有する。
【0012】
更に、車両が駐車過程中及び駐車過程の終わりで運転者により制動されることが意図され得る。安全上の理由から、駐車時の全後退走行過程中には後方の車両領域が間隔センサを用いて監視され、後方の車両領域内に障害物が現われた場合には車両が自動的に制動されることが意図され得る。
【0013】
念のために次のことが指摘される。即ち、第5カーブ部分内で操舵角度ゼロが調節される、即ち直線が走行されるならば、本方法は、横向き或いは斜めの駐車にも使用され得るということである。
【0014】
本方法は、左の道路側における駐車過程のためにも右の道路側における駐車過程のためにも適している。その際、カーブ部分は各々反転されているだけである。
【0015】
カーブ部分の各々の長さは、車両形状及び車両動性、並びに、駐車隙間形状及び駐車過程の開始時の車両のスタート位置に依存し、駐車過程の開始時に決定される。
【0016】
「一気」に車道と平行に停止することになるには駐車隙間が短すぎる場合、第5カーブ部分は対応的に短縮されて後退走行され得て、斜めに停止している車両が操車により車道縁と平行に停止され得る。好ましくは操舵輪が駐車過程中に駐車制御により自動で回転される。
【0017】
例えば超音波センサやレーダセンサやレーザセンサのような通常の間隔センサを用い、少なくとも第5カーブ部分の走行中に後方の駐車隙間端部に対する接近度が監視され、場合により第5カーブ部分の長さが後退走行中に修正され得る。それにより、車両が駐車隙間の測定時の測定エラーにより後方の車両にぶつかってしまうことが防止される。更に、間隔センサ機構を用いて全駐車過程中には後方の車両領域が監視され得て、例えば歩行者のような障害物が後方の車両領域内に現われた場合には車両が自動的に制動され得る。
【0018】
実際の駐車過程を実施する以前には、先ず、車両が駐車隙間の側方を通り過ぎ、駐車隙間が固有のセンサ機構により測定される。同時に、現在の車両ポジションと駐車隙間に対する相対的な車両位置とが検知される。車両センサ機構による駐車隙間の「スキャニング」は、明確に運転者により活動化され得るか、又は全走行中にアクティブであり得る。また後者の場合には「スキャンモード」が、規定の速度限界に依存し、例えば規定の最大速度より下の速度の場合にのみ活動化され得る。十分に大きな駐車隙間の認識後、このことは運転者に対して例えばコックピット内で視覚的に或いは音響的に通達される。運転者は、引き続き、車両が停止状態にある場合、駐車過程をアクティブにスタートする必要がある。そのために、例えばキーボタン又はスイッチがスイッチレバー又は中央コンソールの領域に設けられ得る。それに対する選択肢として駐車過程は運転者がリバースギヤを手動で入れることによりスタートされ得る。駐車過程のスタート後、駐車電子装置は操舵装置の制御を担うことになる。このことは、従来の操舵装置を備えた車両において、例えば操舵柱(ステアリングコラム)に係合する調整モータを介して行われる。単輪操舵装置では操舵すべき車輪が個別に操舵電子装置によりコントロールされる。
【0019】
好ましくは、駐車過程をスタートするために運転者が車両をアクティブに作動される必要があることが意図されている。自動変速機を備えた車両において、このことは、リバースギヤに入れることにより及びブレーキをゆるめることにより行われる。その際、車両は自動的に駐車隙間内に「入り込む」。しかしながら運転者は車両をいつでもブレーキの操作により停止させることができる。その後、新たな発進により駐車過程が続行される。対応する過程が手動切換変速機又は自動マニュアル切換変速機を備えた車両においても可能である。ここでも、運転者自身が発進し且つ所望の速度を規定する必要があることが意図されている。
【0020】
安全上の理由から、駐車過程中の車両の速度が規定の最大速度に対して制限されていることが意図され得る。更に、駐車過程中の最大速度が現在期待すべき操舵角度変更速度に依存して規定されていることが意図され得る。このことは、操舵速度に対する要求が減少され得て、少ない構成空間を要求する安価な操舵角度アクチュエータが使用され得るという長所を有する。
【0021】
駐車隙間の到達時に他の操車が必要であるならば、運転者に対し、必要な走行方向が例えば視覚的に又は音響的に提示され得る。その際、運転者は、対応するギヤ或いは対応する選択レバー位置を入れるだけでよく、期待すべき車両運動に関して情報提供される。発進は再び運転者によりアクティブに行われる。駐車過程の終わりの停止に至るまでの車両の制動減速、又は、操車転換点の到達時の車両の制動減速は、システムにより自動的に行われるか、又は、視覚的な及び/又は音響的な及び/又は触覚的な情報と関連して運転者に通達され得る。
【0022】
それに対する選択肢として、車両の縦方向制御も完全に駐車アシスタントシステムにより行われ得る。その際、駐車過程は、キーボタンの操作によりスタートされる。このキーボタンは全駐車過程中に押圧保持される必要がある。その際、車両は自発的に発進する。キーボタンを放すことで駐車過程が遮断されて車両が停止される。しかし運転者は、期待すべき運動方向に関して情報提供されていることにより、走行方向を選択するために変速機選択レバーの操作を自身で担うべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に図面との関連で本発明を更に説明する。
【0024】
図1に描かれている駐車過程において車両はスタート位置で駐車隙間の縦方向と平行に位置している。カーブ部分1内で車両は真直ぐに後方へと走行する。ここで操舵装置は操舵角度ゼロを有する。計算により確定された仮定の駐車カーブが交差される車両位置の到達時に、実際の操舵過程が開始する。第2カーブ部分はクロソイド部分である。カーブ部分3は円弧である。カーブ部分4は再びクロソイド部分であり、カーブ部分5は円弧である。
【0025】
通常、実際には、車両が駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置する或いは完全に平行には位置していないというスタート位置が発生する。このことが図2及び図3に描かれている。
【実施例1】
【0026】
図2の駐車過程時には、スタート位置から出発し、車両はカーブ部分1中に真直ぐにバックする。それにクロソイド部分2が接続する。カーブ部分3は円弧である。カーブ部分4は再びクロソイド部分である。カーブ部分5は円弧である。
【実施例2】
【0027】
それに対する選択肢として、斜めの出発位置から出発し、車両は先ず、第1クロソイドにより形成されている第1カーブ部分に沿ってバックされる。それに、同様にクロソイドであるが別のクロソイド関数により描かれる第2カーブ部分が接続する。カーブ部分3の方は円弧部分であり、カーブ部分4は他のクロソイド部分であり、カーブ部分5は円弧部分である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車両がスタート位置で駐車隙間の縦方向と平行に位置しているという実際にはめったに起こらない特殊ケースを示す図である。
【図2】車両が駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置しているというスタート位置を示す図である。
【図3】車両が駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置しているというスタート位置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 第1カーブ部分
2 第2カーブ部分(クロソイド部分)
3 第3カーブ部分(円弧部分)
4 第4カーブ部分(クロソイド部分)
5 第5カーブ部分(円弧部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車隙間内に後退駐車すべき車両を操舵するための方法であって、
駐車隙間外のスタート位置から出発して駐車隙間内の駐車位置の到達に至るまで相前後して各々屈曲なく互いに移行する5つのカーブ部分が後退走行され、
走行方向で見て最後の4つのカーブ部分が次のカーブ種類に係るものである:
− 第2カーブ部分はクロソイド部分に係るもので、
− 第3カーブ部分は円弧部分に係るもので、
− 第4カーブ部分は他のクロソイド部分に係るもので、
− 第5カーブ部分は他の円弧部分に係るものである、
前記方法において、
車両のスタート位置から出発し、駐車位置の到達に至るまで後退走行すべき全軌跡が検出され、操舵装置が車両の後退走行時に制御電子装置によりその軌跡に対応して制御され、
車両がスタート位置において駐車隙間の縦方向に対して斜めに位置し、スタート位置と第2カーブ部分の開始との間にあり後退走行される第1カーブ部分が、第2カーブ部分とは別の幾何学形状関数により描かれていることを特徴とする方法。
【請求項2】
スタート位置と駐車位置との間の軌跡上で調節される操舵角度変更が飛躍なく連続的な操舵角度変更だけに係るもので、それにより車両がスタート位置と駐車位置との間の全軌跡を停止せずに走行し得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
駐車制御が、運転者により、車両が停止している場合にだけ活動化可能であり、現在の車両ポジションと、駐車隙間に対する相対的な現在の車両位置とがスタート位置として定義されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
車両が駐車のために運転者により動き出される必要があり且つ全駐車過程中の車両速度が運転者により規定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
運転者により規定された速度が規定の最大速度に対して制限されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
制御電子装置により検出される操舵角度が、後退走行される経路に関し、それにより速度に依存せずに検出されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
車両が駐車過程中及び駐車過程の終わりで運転者により制動されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1カーブ部分が直線であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1カーブ部分がクロソイドであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
後退走行のためのスタート位置に到達するに際し、車両が先ず前方へ駐車隙間の側方を通り過ぎ、この通過時に駐車隙間形状が間隔センサを用いてスキャンされ、制御電子装置内に記憶されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
駐車時の後退走行過程中、後方の車両領域が間隔センサを用いて監視され、障害物が後方の車両領域内に現われた場合には車両が自動的に制動されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
車両の後車軸の中心点が第5カーブ部分を描くことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−508850(P2006−508850A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556184(P2004−556184)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013234
【国際公開番号】WO2004/050458
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】