説明

高さ位置検出装置および高さ位置検出方法

【課題】サファイアや石英等の可視光に対して透過性を有する材料で形成されたワークであっても、ワークの上面高さ位置を確実に精度高く検出できるようにする。
【解決手段】ワークWに照射された環状のスポット形状を有するレーザビームは、ワークWの上面および下面で反射するが、ワークWの下面で反射した環状のスポット形状の反射光はピンホールマスク45によって遮断し、ピンホールマスク45を通過したワークWの上面で反射した環状スポット形状の反射光に基づいて受光強度を検出するので、ワークWが可視光に対して透過性を有する場合であってもその上面高さ位置を検出できる。この際、ワークWの上面で反射した環状スポット形状の反射光に関してレーザビーム拡散手段46で拡散された強度を所定面積の検出面47aを有する検出手段47で検出することで、環状スポット形状にバラツキがあっても、ワークWの上面高さ位置を確実に精度高く検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に装備される保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を、レーザビームを用いて検出するための高さ位置検出装置および高さ位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状の半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC,LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイア基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザダイオード等の光デバイスに分割され、電子機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイス等のストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有するパルスレーザビームを用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザビームを照射するレーザ加工方法も試みられている。このレーザ加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長、例えば波長が1064nmのパルスレーザビームを照射することで、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、半導体ウエーハ等の板状のワークにはウネリがあり、その厚さにバラツキがあると、レーザビームを照射する際に屈折率の関係で所定の深さ位置に均一に変質層を形成することができない。したがって、半導体ウエーハ等のワークの内部の所定の深さ位置に均一に変質層を形成するためには、予めレーザビームを照射する領域(ストリート部分)の凹凸を検出し、その凹凸にレーザビーム照射手段を追従させて加工する必要がある。
【0005】
このような問題点を解消するための提案例として、例えば特許文献2がある。この特許文献2では、チャックテーブルに保持されたワークの表面に可視光のレーザビームを照射し、ワークの表面で反射した面積に対応した光量に基づいてワークの表面(上面)の高さ位置を検出する高さ位置検出手段を備えている。
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2007−152355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示される高さ位置検出手段においては、ワークとしてのウエーハがシリコンによって形成されている場合には検出用の波長(特許文献2では、635nm)のレーザビームがワークを透過しないため、ワークの上面で反射した面積に対応した光量を正確に測定することができる。しかしながら、ワークが635nmの波長に対して透過性を有するサファイアや石英等によって形成されている場合には、検出用のレーザビームがワークを透過してワークの下面でも反射するため、ワークの上面で反射した光だけを測定することができない。よって、特許文献2に示される高さ位置検出手段による検出方式では、サファイアや石英等の可視光に対して透過性を有する材料で形成されたワークの上面高さ位置を検出することができない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、サファイアや石英等の可視光に対して透過性を有する材料で形成されたワークであっても、ワークの上面高さ位置を確実に精度高く検出することができる高さ位置検出装置および高さ位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる高さ位置検出装置は、保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を検出するための高さ位置検出装置であって、レーザビームを発振するレーザビーム発振手段と、該レーザビーム発振手段によって発振されたレーザビームのスポット形状を環状に形成する環状スポット形成手段と、該環状スポット形成手段によってスポット形状が環状に形成されたレーザビームを第1の経路に導くビームスプリッタと、前記第1の経路に導かれたレーザビームを集光して前記保持手段に保持されたワークに照射する集光器と、前記保持手段に保持されたワークで反射したレーザビームが前記ビームスプリッタによって分光される第2の経路に配設されたピンホールマスクと、前記第2の経路上で前記ピンホールマスクよりも後段位置に配設されてレーザビームを拡散させるレーザビーム拡散手段と、前記レーザビームの環状スポットの略中心位置に配置され前記レーザビーム拡散手段によって拡散されたレーザビームの強度を検出する所定面積の検出面を有する検出手段と、該検出手段によって検出された反射光の強度に基づいて前記保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を算出する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる高さ位置検出装置は、上記発明において、前記環状スポット形成手段は、レーザビームの光軸に沿って所定の間隔をあけて直列に配設された一対の円錐レンズからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる高さ位置検出方法は、保持手段に保持されたワークの上面高さ位置をレーザビームを用いて検出する高さ位置検出方法であって、レーザビームを発振させるステップと、発振されたレーザビームのスポット形状を環状に形成するステップと、スポット形状が環状に形成されたレーザビームを第1の経路に導くステップと、前記第1の経路に導かれたレーザビームを集光して前記保持手段に保持されたワークに照射させるステップと、前記保持手段に保持されたワークで反射したレーザビームを分光させて前記第1の経路とは異なる第2の経路に導くステップと、前記第2の経路上で、ワークの下面で反射した環状スポット形状のレーザビームは遮断させるとともにワークの上面で反射した環状スポット形状のレーザビームは通過させるステップと、前記第2の経路上で、ワークの上面で反射した環状スポット形状のレーザビームを拡散させるステップと、拡散されたレーザビームの強度を、所定面積の検出面を有する検出手段によって検出するステップと、検出されたレーザビームの強度に基づいて前記保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる高さ位置検出装置および高さ位置検出方法によれば、ワークに照射された環状のスポット形状を有するレーザビームは、ワークの上面で環状のスポット形状で反射するとともに、ワークがこのレーザビームに対して透過性を有する場合には、ワークの下面でも環状のスポット形状で反射するが、ワークの下面で反射した環状のスポット形状の反射光はピンホールマスクによって遮断し、ピンホールマスクを通過したワークの上面で反射した環状スポット形状の反射光に基づいて受光強度を検出するので、ワークが可視光に対して透過性を有する場合であってもその上面高さ位置を検出することができ、この際、ワークの上面で反射した環状スポット形状の反射光に関してレーザビーム拡散手段で拡散された強度を所定面積の検出面を有する検出手段で検出しているので、環状スポット形状の中心位置にある程度のバラツキがあっても、ワークの上面高さ位置を確実に精度高く検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態である高さ位置検出装置および高さ位置検出方法について図面を参照して説明する。本実施の形態は、ワークの所望の加工予定位置であるストリート(切断予定ライン)に沿ってパルスレーザビームを、ワーク内部に焦点を合わせて照射することにより改質層を形成して切断させるレーザ加工装置における高さ位置検出装置および高さ位置検出方法への適用例で説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の高さ位置検出装置および高さ位置検出方法が適用されるレーザ加工装置の主要部を示す外観斜視図である。本実施の形態で用いるレーザ加工装置20は、ワークWを保持する保持手段21と、保持手段21上に保持されたワークWに透過性を有する波長のパルスレーザビームを照射するレーザビーム照射手段22と、保持手段21上に保持されたワークWを撮像する撮像手段23とを備えている。また、保持手段21は、ワークWを吸引保持するとともに、モータ24に連結されて回転可能に設けられている。また、保持手段21は、ボールネジ25、ナット(図示せず)、パルスモータ26等により構成された加工送り手段27によって水平方向となるX軸方向に移動可能に設けられ、搭載されたワークWをレーザビーム照射手段22が照射するパルスレーザビームに対して相対的に加工送りさせる。
【0015】
また、レーザビーム照射手段22は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング28を含んでおり、このケーシング28を介してボールネジ(図示せず)、ナット(図示せず)、パルスモータ29等により構成されたZ軸移動手段30によってZ軸方向に移動可能に設けられている。さらに、レーザビーム照射手段22は、ケーシング28、Z軸移動手段30を搭載した基台31、ボールネジ32、ナット(図示せず)、パルスモータ33等により構成された割り出し送り手段34によって水平方向となるY軸方向に移動可能に設けられ、レーザビーム照射手段22を保持手段21上のワークWに対して相対的に割り出し送りさせる。
【0016】
ここで、ケーシング28内には、図示しないパルスレーザビーム発振手段等が配設されている。パルスレーザビーム発振手段には、例えば波長が1064nmである加工用パルスレーザビームを発振するYVO4パルスレーザ発振器あるいはYAGレーザ発振器等が用いられている。また、ケーシング28の先端部には、組レンズ等の周知構成からなる集光レンズ(図示せず)を収容した集光器35が装着されている。
【0017】
また、ケーシング28の先端部に装着された撮像手段23は、保持手段21上に保持されたワークWの上面を撮像し、レーザビーム照射手段22の集光器35から照射されるパルスレーザビームによって加工すべき領域を検出するためのものである。この撮像手段23は、可視光線によって撮像する撮像素子(CCD)等で構成され、撮像した画像信号を後述の制御手段に送る。
【0018】
また、本実施のレーザ加工装置20は、レーザビーム照射手段22の一部を利用して、保持手段21に保持されたワークWの上面高さ位置を検出するための高さ位置検出装置40を備えている。図2は、高さ位置検出装置40の構成例を示す概略図である。高さ位置検出装置40は、レーザビーム発振手段41と環状スポット形成手段42とビームスプリッタ43と集光器44とピンホールマスク45とレーザビーム拡散手段46と検出手段47と制御手段48とを備える。
【0019】
レーザビーム発振手段41は、レーザビーム照射手段22中の図示しないパルスレーザビーム発振手段から発振される加工用パルスレーザビームの周波数とは異なる周波数のレーザビームLBaを発振するためのものである。本実施の形態では、例えば、波長が635nm、ビーム径1mm、出力5mWのレーザビームLBaを発振するCWレーザ光源が用いられている。
【0020】
また、環状スポット形成手段42は、レーザビーム発振手段41によって発振されたスポット形状(断面形状)がガウス形状(円形)のレーザビームLBaを、スポット形状(断面形状)が環状(ドーナツ状)のレーザビームLBbに変換するためのものである。本実施の形態では、環状スポット形成手段42は、レーザビームLBaの光軸に沿って所定の間隔をあけて直列に配設された一対の円錐レンズ42a,42bからなる。なお、図示例の一対の円錐レンズ42a,42bは、頂点を互いに向かい合わせて配設した例を示しているが、互いに背中合わせでも同じ方向に向けて配設してもよい。
【0021】
ビームスプリッタ43は、例えば偏光ビームスプリッタと1/4波長板とからなり、環状スポット形成手段42によってスポット形状が環状に形成されたレーザビームLBbを透過させることで第1の経路49aに導くとともに、後述するワークW側からの反射ビームを反射させることで第1の経路49aとは異なる第2の経路49bに導くためのものである。
【0022】
また、集光器44は、ビームスプリッタ43によって第1の経路49aに導かれたスポット形状が環状に形成されたレーザビームLBbを集光して保持手段21に保持されたワークWに照射するための集光レンズからなる。ここで、本実施の形態では、集光器35中に設けられたレーザビーム照射手段22用の組レンズ等の周知構成からなる集光レンズが兼用使用される。このため、レーザビーム照射手段22用のパルスレーザビーム発振手段からのレーザビームの経路とレーザビーム発振手段41からのレーザビームの経路とを集光器44(集光器35)で兼用・分離させるための図示しないダイクロイックハーフミラーをビームスプリッタ43と集光器44(集光器35)との間の経路上に備えている。
【0023】
ピンホールマスク45は、所定の径よりも大きい径の反射ビームの通過を規制するピンホール45aを有して第2の経路49bに配設され、反射ビーム中、ワークWの下面からの反射ビームを遮断させることで、ワークWの上面からの反射ビームとワークWの下面からの反射ビームとを空間的に分離するためのものである。ピンホール45aは、その直径が例えば1mmに設定されている。
【0024】
レーザビーム拡散手段46は、ピンホールマスク45のピンホール45aを透過したスポット形状が環状のレーザビームを拡散させるためのものであり、第2の経路49b上に配設されている。このようなレーザビーム拡散手段46は、摺りガラス、オパール光拡散ガラス、ホログラフィックディフューザ等からなる。
【0025】
検出手段47は、第2の経路49b上においてレーザビームの環状スポットの略中心位置に配置された所定面積の検出面47aを有するフォトディテクタからなり、レーザビーム拡散手段46によって拡散されたレーザビームを受光しその光量を測定することで強度を検出するためのものである。
【0026】
図3は、制御手段48周りの構成例を示す概略ブロック図である。制御手段48は、ROM482に格納された制御プログラムに従い演算処理を実行するCPU481を備えるコンピュータからなり、レーザ加工装置20全体の制御を司るとともに、検出手段47によって検出された反射光の強度に基づいて保持手段21に保持されたワークWの上面高さ位置を算出する処理を実行する。この制御手段48は、さらに、演算結果等を格納するRAM483と、入力インタフェース484と、出力インタフェース485とを備える。入力インタフェース484には、撮像手段23、Z軸移動手段30、検出手段47等からの検出信号が入力される。また、出力インタフェース485からは、パルスモータ26,29,33、レーザビーム発振手段41等に対して制御信号が出力される。なお、RAM483は、ワークWの上面高さ位置を算出するために後述の図11に示すようなビーム径と検出光量との関係を示すデータを格納した記憶領域483aや、ワークWの座標値等に関する情報を格納する記憶領域483b、その他の記憶領域を備えている。
【0027】
このような構成からなる高さ位置検出装置40の作用について説明する。図4は、環状スポット形成手段42により環状スポットを形成する状態を示す説明図である。まず、図4に示すように、レーザビーム発振手段41から発振された円形のスポット形状S1を有するレーザビームLBaは、環状スポット形成手段42によって環状のスポット形状S2を有するレーザビームLBbに変換される。すなわち、環状スポット形成手段42は、直径が2mmのレーザビームLBaを例えば外径が10mm、内径が8mmの環状レーザビームLBbに拡張するとともに、平行なビームを形成する。環状スポット形成手段42によって環状のスポット形状S2に形成されたレーザビームLBbは、図2に示すように、ビームスプリッタ43によって第1の経路49aに導かれ、集光器44によってワークWに集光される。
【0028】
このようにして、環状のスポット形状S2に形成されたレーザビームLBbを保持手段21に保持されたワークWの上面で照射する場合には、Z軸移動手段30を作動させて図5に示すように集光点PbをワークWの上面よりレーザビーム照射方向の上流側(上側)に位置するように調整する。図5は、ワークに環状のスポット形状を有するレーザビームを照射する状態を示す説明図である。この結果、環状のスポット形状S2に形成されたレーザビームLBbは、保持手段21に保持されたワークWの上面に環状のスポット形状S3で照射され、環状のスポット形状S3の形状で反射する(第1の反射ビーム)。このとき、ワークWがレーザビームLBbに対して透過性を有するサファイアや石英等によって形成されている場合には、レーザビームLBbはワークWを透過して下面に達し、環状のスポット形状S4の大きさで反射する(第2の反射ビーム)。
【0029】
このようにワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームと、ワークWの下面で反射した環状のスポット形状S4の第2の反射ビームは、集光器44を介してビームスプリッタ43に達する。図6は、ピンホールマスクによるレーザビームの遮断・通過の状態を示す説明図である。図6に示すように、ビームスプリッタ43に達した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcと環状のスポット形状S4の第2の反射ビームLBdは、ビームスプリッタ43によって反射されることで第2の経路49bに導かれ、ピンホールマスク45に達する。ピンホールマスク45に形成されたピンホール45aは、本実施の形態では、例えば直径1mmに設定されており、環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcは通過するが、環状のスポット形状S4の第2の反射ビームLBdは遮断される。なお、ピンホール45aの直径は、ワークWの厚みや集光点Pbの位置等を考慮して、環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcは通過させるが、環状のスポット形状S4の第2の反射ビームLBdは遮断される値に設定される。
【0030】
このように、ワークWの下面で反射した環状のスポット形状S4の第2の反射ビームLBdは、ピンホールマスク45によって遮断され、ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcだけがピンホールマスク45のピンホール45aを通過することになる。
【0031】
ここで、ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcの径の大きさは、レーザビームLBbが照射されるワークWの上面高さ位置によって変化する。図7は、厚みが異なるワークにレーザビームを照射する状態を示す説明図である。例えば、図7(a)に示すように、ワークWの高さ位置が高く(ワークWの厚みが厚く)、集光器44からワークWの上面までの距離Hが小さい場合には、レーザビームLBbはワークWの上面に照射される環状のスポット形状S3aの大きさで反射する。この環状のスポット形状S3aの大きさは小さめである。一方、図7(b)に示すように、ワークWの高さ位置が低く(ワークWの厚みが薄く)、集光器44からワークWの上面までの距離Hが大きい場合には、レーザビームLBbはワークWの上面に照射される環状のスポット形状S3bの大きさで反射する。この環状のスポット形状S3bは上記の環状のスポット形状S3aより径が大きなものとなる。
【0032】
このように、ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcの径は、集光器44からワークWの上面までの距離Hが小さいほど小さくなり、集光器44からワークWの上面までの距離Hが大きいほど大きくなる。よって、ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcの径の大小を検出することで、ワークWの上面高さ位置を求めることができる。
【0033】
そこで、本実施の形態の高さ位置検出装置40では、レーザビーム拡散手段46と検出手段47とを用いて、ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcの径の大きさを検出し、この結果に基づき、制御手段48によってワークWの上面高さ位置を求めるようにしたものである。
【0034】
図8は、レーザビーム拡散手段46および検出手段47を拡大して示す原理図である。ワークWの上面で反射した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcを、レーザビーム拡散手段46を通過させることによって散乱させた後、環状スポットの中心軸上に配置させた検出手段47の検出面47aに入射する光量を測定することによって、環状のスポット形状S3のビーム径に比例した信号を得るものである。
【0035】
すなわち、レーザビーム拡散手段46を通過した環状のスポット形状S3の第1の反射ビームLBcは、特定の発散角によりその環状スポット径を増加させながら検出手段47側へ進行する。そして、検出手段47の所定面積の検出面47aによって受光検出される光量は、発散した環状スポット全体の照射部に占める検出面47aの割合となる。よって、検出面47aによって検出される光量は、
a.検出面47aがレーザビーム拡散手段46に近いほど、大きくなる。
b.環状のスポット形状S3のビーム径が小さいほど、大きくなる。
という結果が得られる。
【0036】
図9(a)(b)は、環状のスポット形状S3のビーム径の小,大に伴う検出面47aでの検出光量の大,小を示す原理図である。すなわち、環状のスポット形状S3のビーム径が小さいほど、レーザビーム拡散手段46による散乱後に検出面47a上で重なり合う光量が増えて検出面47aでの検出光量が大きくなるのに対して、環状のスポット形状S3のビーム径が大きいほど、レーザビーム拡散手段46による散乱後に検出面47a上で重なり合う光量が減少して検出面47aでの検出光量が小さくなることがわかる。したがって、検出面47aの位置を固定することによって、環状のスポット形状S3のビーム径に比例した信号を得ることができる。
【0037】
ここで、本実施の形態の高さ位置検出装置40における検出手段47の検出光量の一例を図11に示す。なお、図10は、検出面の寸法等を示す説明図である。図10に示すように、検出手段47は直径a=1mmの検出面47aを有するものを用い、これを環状のスポット形状S3の散乱光の幅(検出面47aへ到達時の環状スポットの環径r)が1mmとなる位置に配置した場合の測定例を示す。図11に示す測定例によれば、環状のスポット形状S3のビーム径dが増加するに従って検出面47aの検出光量は線形的に減少しているのが分かる。よって、検出手段47で検出された検出光量(強度)に基づき、制御手段48によって環状のスポット形状S3のビーム径dを算出し、このビーム径dに基づきワークWの上面の高さ位置を検出することが可能となる。
【0038】
このように、本実施の形態の高さ位置検出装置40によれば、ワークWに照射された環状のスポット形状を有するレーザビームは、ワークWの上面で環状のスポット形状で反射するとともに、ワークWがこのレーザビームに対して透過性を有する場合には、ワークWの下面でも環状のスポット形状で反射するが、ワークWの下面で反射した環状のスポット形状の反射光はピンホールマスク45によって遮断し、ピンホールマスク45のピンホール45aを通過したワークWの上面で反射した環状スポット形状の反射光に基づいて受光強度を検出するので、ワークWが可視光に対して透過性を有する場合であってもその上面高さ位置を検出することができる。この際、ワークWの上面で反射した環状スポット形状の反射光に関してレーザビーム拡散手段46で拡散された強度を所定面積の検出面47aを有する検出手段47で検出しているので、環状スポット形状の中心位置にある程度のバラツキがあっても(環状スポット形状に崩れがあっても)、ワークWの上面高さ位置を確実に精度高く検出することができる。
【0039】
続いて、上述したような高さ位置検出装置40を備えるレーザ加工装置10の作用について説明する。図12は、レーザ加工装置10で用いるワークWの構成例を示す斜視図である。ワークWは、特に限定されないが、本実施の形態では、例えばサファイアや石英等の可視光に対して透過性を有する材料製のものが用いられている。例えば、サファイア製のワークWは、その表面Waに格子状に配列された複数のストリート51によって複数の矩形領域が区画され、この区画された矩形領域に発光ダイオード、レーザダイオード等の光デバイス52が形成されている。
【0040】
そこで、レーザ加工装置10を用い、ワークWのストリート51に沿ってパルスレーザビームを照射し、ワークWの内部にストリート51に沿って変質層を形成するレーザ加工を行なう場合について説明する。なお、ワークWの内部に変質層を形成する際に、ワークWの厚さにバラツキがあると、上述したような屈折率の関係で、所定深さ位置に均一に変質層を形成することができない。そこで、本実施の形態では、上述した高さ位置検出装置40によって保持手段21に保持されたワークWの上面高さ位置を検出し、検出結果に応じてZ軸移動手段30でZ軸位置を調整しながら、同時に、レーザビーム照射手段22によってレーザ加工を施すものである。すなわち、レーザビーム照射手段22による加工用のパルスレーザビームと高さ位置検出装置40による検出用のレーザビームとをワークWに対して同時に照射しながらワークWを走査させるものである。
【0041】
まず、保持手段21上にワークWの裏面Wbを上にして載置し、保持手段21上にワークWを吸引保持させる。ワークWを吸引保持した保持手段21は、加工送り手段27によって撮像手段23の直下に位置付けられる。
【0042】
保持手段21が撮像手段23の直下に位置付けられると、撮像手段23および制御手段48によってワークWのレーザ加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。すなわち、撮像手段23および制御手段48は、ワークWの所定方向に形成されているストリート51と、このストリート51に沿って集光器35(したがって、ワークWの高さ位置を検出する高さ位置検出装置40の集光器44)との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する。
【0043】
このようにしてアライメントが行なわれると、保持手段21上のワークWは、図13(a)に示すような座標位置に位置付けられた状態となる。図13は、ワークWが保持手段21の所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図である。なお、図13(b)は、保持手段21、すなわちワークWを図13(a)に示す状態から90度回転させた状態を示している。
【0044】
なお、図13(a)(b)に示す座標位置に位置付けられた状態におけるワークWに形成された各ストリート51の送り開始位置座標値(A1,A2,A3,・・・,An)と送り終了位置座標値(B1,B2,B3,・・・,Bn)および送り開始位置座標値(C1,C2,C3,・・・,Cn)と送り終了位置座標値(D1,D2,D3,・・・,Dn)は、RAM483の記憶領域483bに格納されている。
【0045】
そして、保持手段21に保持されているワークWに形成されているストリート51を検出し、レーザ加工位置のアライメントが行なわれると、保持手段21を移動させて、図13(a)中の最上位のストリート51を集光器44の直下に位置付ける。図14は、高さ位置検出工程および変質層を形成するレーザ加工工程を示す説明図である。そこで、さらに図14に示すようにストリート51の一端(図14において左端)である送り開始位置座標値A1を集光器44(集光器35でもある)の直下に位置付ける。そこで、高さ位置検出装置40を作動させるとともに、保持手段21を図14において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度に合わせて移動させ、送り終了位置座標値B2まで移動させる。この結果、ワークWの図13(a)中の最上位のストリート51における高さ位置(集光器44からワークWの上面(裏面Wb)までの距離H)が順次検出される。
【0046】
制御手段48は、このようにしてワークWに形成された加工対象となるストリート51に沿って高さ位置検出処理を実行するとともに、順次検出される高さ位置の検出結果により、Z軸移動手段30のパルスモータ29をフィードバック制御して、集光器35から照射されるパルスレーザビームの集光点Paの高さ位置を調整しながら、ワークWの内部にストリート51に沿って変質層を形成するレーザ加工を実施する。すなわち、制御手段48は、高さ位置検出装置40の検出結果に基づいてZ軸移動手段30のパルスモータ29をフィードバック制御し、図14に示すように、集光器35をワークWのストリート51における検出された高さ位置に応じて上下方向に移動させる。この結果、集光器35から照射されるパルスレーザビームの集光点PaはワークWの裏面Wb(上面)から所定深さ位置に合わせられ、ワークWの内部には、図14中に示すように、裏面Wb(上面)から所定の深さ位置に裏面Wb(上面)と平行に変質層53が形成される。
【0047】
そして、図14中に示すように集光器35の照射位置がストリート51の他端(図14において右端)に達したら、パルスレーザビームの照射を停止させるとともに、保持手段21の移動を停止させる。
【0048】
以上のようにして、ワークWの所定方向に延在する全てのストリート51に沿って上述したような高さ位置検出処理およびレーザ加工処理を実行したら、保持手段21を90度回転させて、上記の所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート51に沿って同様に高さ位置検出処理およびレーザ加工処理を実行する。このようにして、ワークWに形成された全てのストリート51に沿って高さ位置検出処理およびレーザ加工処理を実行したら、ワークWを保持している保持手段21は最初にワークWを吸引保持した位置に戻され、ここでワークWの吸引保持を解除する。そして、ワークWは、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0049】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、レーザ加工装置20における高さ位置検出装置40および高さ位置検出方法への適用例として説明したが、本発明は、保持手段に保持されたワークを加工する種々の加工装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の高さ位置検出装置および高さ位置検出方法が適用されるレーザ加工装置の主要部を示す外観斜視図である。
【図2】高さ位置検出装置の構成例を示す概略図である。
【図3】制御手段周りの構成例を示す概略ブロック図である。
【図4】環状スポット形成手段により環状スポットを形成する状態を示す説明図である。
【図5】ワークに環状のスポット形状を有するレーザビームを照射する状態を示す説明図である。
【図6】ピンホールマスクによるレーザビームの遮断・通過の状態を示す説明図である。
【図7】厚みが異なるワークにレーザビームを照射する状態を示す説明図である。
【図8】レーザビーム拡散手段および検出手段を拡大して示す原理図である。
【図9】環状のスポット形状のビーム径の違いに伴う検出面での検出光量の大小を示す原理図である。
【図10】検出面の寸法等を示す説明図である。
【図11】検出手段の検出光量の一例を示す特性図である。
【図12】レーザ加工装置で用いるワークの構成例を示す斜視図である。
【図13】ワークが保持手段の所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図である。
【図14】高さ位置検出工程および変質層を形成するレーザ加工工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
21 保持手段
40 高さ位置検出装置
41 レーザビーム発振手段
42 環状スポット形成手段
42a,42b 円錐レンズ
43 ビームスプリッタ
44 集光器
45 ピンホールマスク
46 レーザビーム拡散手段
47 検出手段
47a 検出面
48 制御手段
49a 第1の経路
49b 第2の経路
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を検出するための高さ位置検出装置であって、
レーザビームを発振するレーザビーム発振手段と、
該レーザビーム発振手段によって発振されたレーザビームのスポット形状を環状に形成する環状スポット形成手段と、
該環状スポット形成手段によってスポット形状が環状に形成されたレーザビームを第1の経路に導くビームスプリッタと、
前記第1の経路に導かれたレーザビームを集光して前記保持手段に保持されたワークに照射する集光器と、
前記保持手段に保持されたワークで反射したレーザビームが前記ビームスプリッタによって分光される第2の経路に配設されたピンホールマスクと、
前記第2の経路上で前記ピンホールマスクよりも後段位置に配設されてレーザビームを拡散させるレーザビーム拡散手段と、
前記レーザビームの環状スポットの略中心位置に配置され前記レーザビーム拡散手段によって拡散されたレーザビームの強度を検出する所定面積の検出面を有する検出手段と、
該検出手段によって検出された反射光の強度に基づいて前記保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を算出する制御手段と、
を備えることを特徴とする高さ位置検出装置。
【請求項2】
前記環状スポット形成手段は、レーザビームの光軸に沿って所定の間隔をあけて直列に配設された一対の円錐レンズからなることを特徴とする請求項1に記載の高さ位置検出装置。
【請求項3】
保持手段に保持されたワークの上面高さ位置をレーザビームを用いて検出する高さ位置検出方法であって、
レーザビームを発振させるステップと、
発振されたレーザビームのスポット形状を環状に形成するステップと、
スポット形状が環状に形成されたレーザビームを第1の経路に導くステップと、
前記第1の経路に導かれたレーザビームを集光して前記保持手段に保持されたワークに照射させるステップと、
前記保持手段に保持されたワークで反射したレーザビームを分光させて前記第1の経路とは異なる第2の経路に導くステップと、
前記第2の経路上で、ワークの下面で反射した環状スポット形状のレーザビームは遮断させるとともにワークの上面で反射した環状スポット形状のレーザビームは通過させるステップと、
前記第2の経路上で、ワークの上面で反射した環状スポット形状のレーザビームを拡散させるステップと、
拡散されたレーザビームの強度を、所定面積の検出面を有する検出手段によって検出するステップと、
検出されたレーザビームの強度に基づいて前記保持手段に保持されたワークの上面高さ位置を算出するステップと、
を含むことを特徴とする高さ位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−48715(P2010−48715A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214426(P2008−214426)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】