説明

高光沢化粧シート及びそれを用いた化粧板

【課題】高光沢感を有する化粧シートにおいて、高光沢感を有し、耐汚染性、マジック消去性に優れ、また表面平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りがおさえられる化粧シート及び該シートと基板とを接合した化粧板を提供すること。
【解決手段】 表面保護層として電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化した層を有する化粧シートにおいて、多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカを電離放射線硬化性樹脂中に含有することを特徴とする化粧シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高光沢感を有する化粧シート及び該シートと基板とを接合した化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
家具や台所製品のキャビネットなどの表面化粧板としては、一般に木質系材料、無機系材料、合成樹脂系材料、鋼板などの金属系材料などに、例えば木目調柄などを印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせた構造のものが用いられている。
このような表面化粧板に使用される化粧シートには、ラミネート加工、ラッピング加工、Vカット加工などの二次加工のための適度な柔軟性、切削性、耐破断性などの加工適性、使用状態における耐候性、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性など、種々の特性が一般的には要求される。
こうした要求を満たすために、上記加工適性を十分に満足する基材を用い、該基材の表面に表面保護層を施すことが行われており、電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましく用いられている。電離放射線硬化性樹脂組成物は紫外線や電子線等の電離放射線によって硬化する組成物であり、該組成物を用いると、表面保護層としては有機溶剤を使用せず無溶剤で塗布形成できるので環境に良く、しかも高架橋密度にできるので、耐磨耗性等の表面強度も容易に出せる等の、各種利点が得られる。
【0003】
ところで、近年の消費者の高級品指向により、床タイルや壁パネル、あるいは家具や台所製品のキャビネットなどに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板や化粧シートにおいても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。化粧シートの性質としては、従来から一般に必要とされてきた耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性、マジック消去性、耐セロファンテープ性などの上記にあげる特性に加えて、高級感の要素として高光沢感や鏡面性(表面平滑性)も重要となる。さらに化粧シートの製造プロセス等に着目すると、工程の簡略化、迅速性の観点、さらには経済性の観点において有利であることは勿論のこと、化粧シートの製造後、化粧板の運搬等を考慮した板のすべり性について有利である、すなわちすべり性を悪くすることで保管時や運搬時等に落下する危険性を回避できることも重要なファクターとなる。
従来、高光沢感を有する化粧シートとしては、ウレタン系塗料を塗布してトップコート層を形成したものが主流である。
このようなウレタンコート紙は塗膜の表面特性に比較的すぐれたものが得られるが、製造工程において塗膜の養生に数日を要する場合もあり、生産性の点で不利であり、また鏡面性(平滑性)やマジック消去性の点でも必ずしも十分満足のいくものではないという問題がある(例えば特許文献1)。
一方、電離放射線硬化性樹脂を用いて塗膜形成を行う方法も知られており、たとえば基材紙上に絵柄を印刷したのち、アクリレート系樹脂などの電子線硬化性樹脂組成物を塗布ないし含浸させたものに電子線を照射してこれを硬化することによって化粧紙の迅速な製造が可能である(例えば特許文献2)。しかしながら、上記のような従来知られている電離放射線硬化性塗料は、形成されている被膜の特性において、必ずしも十分満足のいくものではないという問題がある。
【0004】
前記にあげたように、従来の化粧シート用塗料組成物においては、表面が荒れる等により、鏡面性(平滑性)を出すことは難しいので、耐汚染性、耐セロファンテープ性の離型性等を付与するためシリコーンの添加が提案されている(例えば特許文献3)。しかしながら、この方法では耐汚染性、耐セロファンテープ性の離型性等は向上する一方で、化粧シートを巻き取りした際に、化粧シートの表面に浮いたシリコーンが裏面に移る、いわゆるシリコーンの裏移りの問題がある。さらに、これらの特性を付与するには、電離放射線硬化性樹脂に相溶性の悪いシリコーンを添加するため、表面の平滑性が悪く、また表面の不透明度が上がり、高級感、意匠感が損なわれる等、の点でさらに改良の余地がある。
【0005】
【特許文献1】特開平5−92484号公報
【特許文献2】特公平1−55991号公報
【特許文献3】特許第2856862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況の下で、高光沢感を有する化粧シートにおいて、表面の平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りをおさえた電離放射線硬化性樹脂を表面保護層に有する化粧シート及び該シートと基材とを接合した化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂中に、電離放射線硬化性樹脂と相溶性の高いシリコーンと微粒子シリカを同時に添加することにより、高光沢感を有し、耐汚染性、マジック消去性に優れ、また表面平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りがおさえられる化粧シートを得ることができた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)表面保護層として電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化した層を有する化粧シートにおいて、多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカを電離放射線硬化性樹脂中に含有することを特徴とする化粧シート、
(2)前記微粒子シリカの平均粒径が1μm以下である前記(1)に記載の化粧シート、
(3)前記微粒子シリカが電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜2.0質量部の割合で含有している前記(1)又は(2)に記載の化粧シート、
(4)前記多官能シリコーンアクリレートが2官能以上の官能基を有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧シート、及び
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シートと接着剤層を介して基板が接合されてなる化粧板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高光沢感を有する化粧シートにおいて、高光沢感を有し、耐汚染性、マジック消去性に優れ、また表面平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りをおさえた電離放射線硬化性樹脂を表面保護層に有する化粧シート及び該シートと基材とを接着剤層を介して基板が接合されてなる化粧板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の高光沢化粧シートは、表面保護層として電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化した層を有する化粧シートにおいて、多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカを電離放射線硬化性樹脂中に含有することを特徴とする。
本発明の高光沢化粧シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1及び化粧シートを基板に接合した化粧板の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に全面を被覆する一様均一な着色層6、絵柄層7、一様均一な浸透防止層8、多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化してなる樹脂からなる表面保護層5がこの順に積層されたものである。図中で示される多官能シリコーンアクリレート4は、表面保護層5において均一に分散する特徴を有し、微粒子シリカは多官能シリコーンアクリレートの一部を吸着し、表面保護層5の表層部に浮かせる特徴を有する。
本発明の化粧シートは、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。具体的には、図2に示すように、基板10に接着剤層9を介して化粧シート1を貼着するものである。
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態の一つを示した図1に基づいて、詳細に説明する。
本発明で用いられる基材2としては、通常化粧シートとして用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材は基材と各層との層間密着性の強化等のためのプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0012】
基材として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度の強化、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、さらに、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
【0013】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0014】
金属箔、金属シート、又は金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。各種の木質系の板としては、木材の単板、合板、集成材、パーチクルボード、又はMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板が挙げられる。窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0015】
基材2の厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0016】
図1に示される全面にわたって被覆される一様均一な着色層6は、本発明の化粧シートの意匠性を高める目的で所望により設けられる、隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものである。着色層6は基材2上の表面の色を整えることで、基材2自身が着色していたり、色ムラがあるときに形成して、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2が白色であることを活かす場合や、基材2自身が適切に着色されている場合には着色層6の形成を行う必要はない。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この着色層6は厚さ1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
【0017】
図1に示される絵柄層7は基材2に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層7に用いる絵柄インキとしては、着色層6に用いるインキと同様のものを用いることができる。
【0018】
図1に示される浸透防止層8は、所望により設けられる層であって、表面保護層5を構成する電離放射線硬化性樹脂が、基材2中に浸透することを抑制する機能を持つものであり、基材2が紙や不織布などの浸透性基材である場合に特に効果を発揮する。従って、浸透防止層8は基材2と表面保護層5の間に位置すればよく、例えば、基材2と着色層6の間、着色層6と絵柄層7の間又は図1に示されるように絵柄層7と表面保護層5の間に設けられる。通常は、表面保護層5を構成する電離放射線硬化性樹脂と密着性がある、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層を、図1に示すように絵柄層7と表面保護層5の間に設ける。このことにより、基材2上に着色層6、絵柄層7等がある場合には、これらの表面をならし、これらと表面保護層5との接着性を高める機能をも併せて果たすものである。
【0019】
次に、表面保護層5は上述のように電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したものであり、該電離放射線硬化性樹脂が多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカを含有したもので構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。
この表面保護層の本来の目的、つまり従来の表面保護層を設ける目的は、化学的表面物性(耐汚染性、耐薬品性、耐セロファンテープ性等)、機械的物性(耐スクラッチ性、耐摩耗性等)を用途に応じて付与することである。従来は、耐汚染性、耐セロファンテープ性の向上のためにシリコーンメタクリレートが用いられていたが、これによりシリコーンの裏移りの問題が生じていた。そこで、本発明では、この表面保護層の電離放射線硬化性樹脂に多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカとを含有する樹脂を用いることで、従来の表面保護層を設ける前記目的に加えて、さらに耐汚染性、マジック消去性に優れ、また表面平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りをおさえた化粧シートを得るものである。表面保護層の電離放射線硬化性樹脂に含有される多官能シリコーンアクリレートは主に表面平滑性、透明感の向上及びシリコーンの裏移りをおさえる特性を化粧シートに付与するものである。
【0020】
シリコーンアクリレート4に用いる多官能シリコーンアクリレートとしては、従来公知のものが使用でき、有機基がアクリル基であって該有機基を複数(2官能以上)、好ましくは4つ以上を、さら好ましくは6つ有する変性シリコーンオイルであれば、特に限定されない。また、変性シリコーンオイルの構造は、置換される有機基の結合位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型に大別されるが、有機基の結合位置には、特に制限はない。
このようなシリコーンアクリレートとしては、電離放射線硬化性樹脂との相溶性を高める観点より、分子量3000〜100000、より好ましくは10000〜30000、官能基当量(分子量/官能基数)750〜25000、より好ましくは3000〜6000の条件を有するものが用いられる。
上記多官能シリコーンアクリレートの含有量は、透明性を維持する観点より、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して1〜5質量部、より好ましくは1〜2質量部である。
【0021】
微粒子シリカは、上述のように多官能シリコーンアクリレートの一部を吸着し、表面保護層5の表層部に浮かせる特徴を有する。多官能シリコーンアクリレートは、表面保護層5において均一に分散する特徴を有するが、微粒子シリカに吸着され、表面保護層の表層部に浮くことで、本発明の化粧シートの耐汚染性、マジック消去性等が向上する。
本発明に用いられる微粒子シリカの粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。また、微粒子シリカの平均粒径は、1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。また、平均粒径の下限値は特に制限されないが、製造上の理由により、0.03μmである。微粒子シリカの含有量は、多官能シリコーンアクリレートを十分吸着し、かつ透明性を維持する観点より、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.5〜1.0質量部である。
【0022】
表面保護層5に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すれば良い。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0025】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0026】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0027】
また本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0028】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0029】
本発明においては、前記の電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0030】
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0031】
本発明の化粧シートは、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。具体的には、図2に示すように、基板10に接着剤層9を介して化粧シート1を貼着するものである。
被着体となる基板は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧シートとの密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0032】
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0033】
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0034】
また該基板はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。被着体となる基板としては各種素材の平板、曲面板等の板材、或いは上記素材が単体か或いは複合された立体形状物品(成形品)が対象となる。
【0035】
化粧シートに、和紙、洋紙、合成紙、不織布、織布、寒冷紗、含浸紙、合成樹脂シート等の裏打ち材を貼着して用いてもよい。裏打ち材を貼着することにより、化粧シート自体の補強、化粧シートの割れや破け防止、接着剤の化粧シート表面への染み出し防止等の作用がなされ、不良品の発生が防止されると共に、取り扱いが容易となることとなり、生産性を向上することができる。
【0036】
このようにして接着剤を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧シートが載置された基板を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧シートを基板表面に接着し、化粧板とする。
【0037】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
化粧シートの基板上への貼着は、通常、本発明の化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか基板の上に接着剤を塗布し、化粧シートを貼着する等の方法による。
【0038】
以上のようにして製造される化粧板は、また、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた化粧シートについて、以下の方法で評価した。
(1)艶の評価
グロスメーター(Gardner社製「micro−TRI−gloss」)を用い、入射角75度の条件で、高光沢領域と低光沢領域におけるグロス値を測定した。数字が高いほど高光沢(高艶)であることを示し、数字が低いほど低光沢(低艶)であることを示す。
(2)裏移り
実施例及び比較例にて得られた化粧シートの表と裏を重ねて、60℃、1kg/cm2の条件で72時間養生し、その後の化粧シートの裏面の濡れをJIS K6768の濡れ性により評価した。
(3)油性マジックふき取り性
油性マジックインキにて塗工表面に記入後、3分後にガーゼでふき取りを行い、消去製の評価を目視にて行う。
○ インキの跡が全くない
△ インキの跡はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× インキの跡の残りが著しい
(4)耐セロファンテープ性(はくり強度試験)
実施例及び比較例にて得られた化粧材の表面に、室温下でセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(登録商標)」25mm幅)を強く貼着させ、化粧材表面と90度の方向に、該セロファンテープを強制的に剥離し、この際のはくり強度をはくり強度測定機(Instrumentors inc.製「peel tester」)を用いて測定した。
【0040】
実施例1
基材2として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量3g/m2の(全面ベタ)層をグラビア印刷にて施して着色層6とした。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の絵柄層7をグラビア印刷にて形成した。
次いで、数平均分子量20,000、ガラス転移温度(Tg)−59.8℃のポリエステルウレタン系樹脂とトリレンジイソシアネートからなるポリイソシアネートをバインダーとする塗料組成物を用いて、塗工量2g/m2で全面にグラビア印刷して浸透防止層8(プライマー層)を形成した。
これらインキ層の上にウレタンアクリレート97.5質量部、2官能シリコーンアクリレートを2質量部(信越化学(株)製、官能基当量約4000)及び平均粒径0.5μmの微粒子シリカ0.5質量部からなる電子線硬化性樹脂組成物を塗工量13g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層5とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シートを得た。
この化粧シートについて、艶の評価、ヘイズ、裏移り、油性マジックふき取り性及び耐セロファンテープ性について評価した。その結果を第1表に示す。
また、上記化粧シートの裏面と基板として厚さ2.5mmのラワン合板10とを、中央理化(株)製の水性エマルジョンであるエチレン・酢酸ビニル系接着剤「BA−820」で木材合板に塗布量60g/m2(wet)の条件で塗工して形成した接着剤層を介して接着し、木質化粧板を作製した。
【0041】
実施例2
実施例1に記載の表面保護層5において、微粒子シリカを0.3質量部とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。その評価結果を表1に示す。
また、実施例1に記載の木質化粧板において、実施例1で作成した化粧シートを用いるかわりに、実施例2で作成した化粧シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、木質化粧板を得た。
【0042】
比較例1
実施例1に記載の表面保護層5において、2官能シリコーンアクリレートを使用するかわりに、単官能シリコーンメタクリレートを2質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。その評価結果を表1に示す。
また、実施例1に記載の木質化粧板において、実施例1で作成した化粧シートを用いるかわりに、比較例1で作成した化粧シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、木質化粧板を得た。
【0043】
比較例2
実施例1に記載の表面保護層5において、2官能シリコーンアクリレートを使用するかわりに、単官能シリコーンメタクリレートを2質量部使用し、微粒子シリカ0.5質量部使用するかわりに、3質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。その評価結果を表1に示す。
また、実施例1に記載の木質化粧板において、実施例1で作成した化粧シートを用いるかわりに、比較例3で作成した化粧シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、木質化粧板を得た。
【0044】
実施例1及び2で得られた化粧シートは、艶の評価、裏移り、油性マジックふき取り性及び耐セロファンテープ性の全ての点で高い性能を示した。一方、シリコーンアクリレートを使用しない比較例1及び2では、全ての性能を満足する化粧シートは得られなかった。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、高光沢感を有する化粧シートにおいて、耐汚染性、マジック消去性に優れ、また表面平滑性及び透明感に優れ、かつシリコーンの裏移りがおさえられる化粧シート及び該シートと基材とを接着剤層を介して基板が接合されてなる化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧板の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1.化粧シート
2.基材
3.シリコーンアクリレート
4.微粒子シリカ
5.表面保護層
6.着色層
7.絵柄層
8.浸透防止層
9.接着剤層
10.基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護層として電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化した層を有する化粧シートにおいて、多官能シリコーンアクリレートと微粒子シリカを電離放射線硬化性樹脂中に含有することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記微粒子シリカの平均粒径が1μm以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記微粒子シリカが電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜2.0質量部の割合で含有している請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記多官能シリコーンアクリレートが2官能以上の官能基を有する請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シートと接着剤層を介して基板が接合されてなる化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−270508(P2007−270508A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97113(P2006−97113)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】