説明

高出力光パルスの発生装置および発生方法

【課題】 フェムト秒台の高出力光パルスを発生させる手段を提供すること。
【解決手段】 本発明の高出力光パルスの発生装置は、信号光を生成するファイバー発振器10と、非線形位相遅れをもち信号光を受光して増幅するとともに圧縮するソリトン・ラマン圧縮器(SRC)を兼ねた増幅ファイバー11と、増幅された光パルスを周波数変換して高出力光パルスとする周波数変換器であるPPLN(周期性ポーリングLiNbO3)20とを有する。分散補償ファイバー18により分散が補償される。また、ファラデー回転鏡(FRM)19により光パルスが反射されてダブルパス形態を取っている。ポンプ16から注入されるポンプ光からのエネルギーを得て、信号光は増幅されるとともに圧縮され、PPLN周波数変換器20により周波数変換された波長で、フェムト秒台の高出力光パルスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェムト秒台の高出力光パルスを発生する装置および方法に関し、特に、発振器、増幅器、圧縮器および周波数変換器を採用してフェムト秒台のパルスを発生するシステムに関する。すなわち本発明は、高出力光パルスの発生技術の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー内で短光パルスや超短光パルスを発生させる技術は、すでに長年にわたり知られており、最近では多くの分野に応用されている。たとえば、クラークに付与された米国特許(特許文献1参照)に開示されているように、またA.ハリハランの文献(非特許文献1参照)に報告されているように、超短光パルスは注入源として使用されてきた。高出力増幅器の注入シーディングは、クラークおよびハリハランにより指摘されているように、パルスの波長が1.2μm未満の範囲において大きな利点を有する。同様の制約は、その他の多くの現在追求されている超短パルスの増幅においても存在し、たとえば、THz(テラヘルツ)のパルス発生の分野で存在する。THzパルス発生の分野では、デンクの文献(非特許文献2参照)に報告されているように、このような制約が存在する。このような波長は、超高速エルビウムファイバー発振器からのパルス(たとえば、100フェムト秒台の発振器が発生するパルス、あるいはハリハランにより示唆されているようにファイバー発振増幅システムからのパルス)を周波数ダブリングすることにより、発生させることができる。このことは、クラークおよびネルソン(非特許文献3参照) により示唆されている。しかしながら、これらの文献のいずれにも、ダブリング結晶の受光スペクトルの波長帯を制限することにより、周波数ダブリングの効率が最適化されるということは、教示されていない。
【0003】
そればかりではなく、これらの文献のいずれにも、非線形増幅器を使用した発振器/増幅器の設計を実施したり、あるいは非線形圧縮器を使用した発振器/増幅器の設計を実施したりすることにより、卓越した性能もまた得られるという記載はない。
【0004】
クラークおよびハリハランの上記文献でも前述されているように、パルス増幅器またはパルス圧縮器の前で使用されているパルスは、ファイバー発振器から得られたものである必要はない。代わりに、バルク光学器またはダイオードレーザーからのパルスが使用可能である。ここで、バルク光学器については、イスラムの文献(非特許文献4参照)に記載されている。また、ダイオードアレイ・レーザについては、ガルバナスカスの文献(非特許文献5参照)およびオングの文献(非特許文献6参照)に記載されている。クラークおよびハリハランによって開示されたシステムは、線形増幅器を使用しており、非線形増幅器からパルスが供給されうることを示唆してはいないことに注意すべきである。さらに、イスラム、ガルバナスカスおよびオングによって開示された各システムは、周波数ダブリングを使用してはいない。
【0005】
そればかりではなく、例えばクラークおよびネルソンにより開示された、発振器のみによる形式のシステムからの可能な限り短いパルスの発生は、比較的高い光学損失を伴う複雑なキャビティー設計を通常は含む。かようなキャビティー設計は、光学損失が比較的高いので、与えられたポンプパワーに対して最大出力を生成するにあたり、非常に効率がよいというものではない。
【0006】
超短光パルス発生システムにおける圧縮機能の構成に関しては、次の二つの選択肢がある。第1の選択肢は、カフカ(Kafka )に付与された米国特許(特許文献2参照)やタムラ等の文献(非特許文献7参照)に開示されているように、正の分散を持つファイバー(非ソリトン支持)を使用することである。第2の選択肢は、イスラムらにより開示されているように、負の分散を持つファイバー(ソリトン支持)を使用することである。カフカらの文献(非特許文献8参照)をも参照されたい。正分散ファイバーは、原理的には、10フェムト秒よりも短いパルスを発生させるのに使用することができる。このようなファイバーは、ローコスト設計にはとても使えない線形パルス圧縮器の付加を必要とする。それと同時に、正分散ファイバーを使用する圧縮機能の構成には、ラマン変換の効果が有害であると考えられているので、通常はラマン効果を使用することができない(カフカを参照のこと)。
【0007】
それゆえ、発生するパルス幅が通常10フェムト秒よりも長いという事実にもかかわらず、負分散ファイバー圧縮器は外部の線形パルス圧縮器に頼らないで設計することができるので、負分散ファイバーに基づくパルス圧縮器が好まれる。そのうえ、このような圧縮器は、圧縮されたパルスのスペクトルをさらに拡げる傾向があり、光ファイバー内でのラマン自己周波数シフトを利用するように設計することができる(イスラムらを参照のこと)。
【0008】
しかしながらこれは、ソートアフター圧縮パルスの低レベルのペデスタルの発生を招いてしまうので、超高速光学機器の多くの応用において有害である。その一方で、ある程度のチューニングを可能とするので、ラマンパルスのスペクトル・エボルーションは利用価値がある(イスラムらを参照のこと)。このようなパルス圧縮器は、ここではソリトン・ラマン圧縮器(SRC)と表現することにする。
【0009】
エルビウム増幅ファイバー内でのSRCを採用した初期のシステムが、クロカワの文献(非特許文献9参照)に記載されている。しかしながら、同文献に開示されているシステムでは、SRCのための「種」パルスとしてダイオードレーザーが使用されている。
【0010】
非現実的なバルクレーザー信号およびポンプ源に頼るエルビウム増幅ファイバー内でのSRCを採用したシステムがさらに、クルシチェフらの文献(非特許文献10参照)に報告されている。
【0011】
種(光源)としてファイバーレーザーを使用したエルビウム増幅器における最初のSRCの実施は、リチャードソンらの文献(非特許文献11、12参照)に記載されている。しかしながら、イスラムら、ガルバナスら、オングら、カフカら、タムラら、クロカワら、クルシチェフら、およびリチャードソンらによって開示されたシステムは、FDW(倍調波の波長)を形成するために、非線形増幅システムを使用して何らかの周波数変換を実施するものではなかった。
【0012】
さらに、イスラムら、ガルバナスら、オングら、カフカら、タムラら、クロカワら、クルシチェフら、およびリチャードソンらの文献で開示されたシステムでは、SRCにおける偏光を制御する手段は何ら提供されていない。今のところ、SRCは、光ファイバー内でのラマン効果を利用するものであるから、メニャクら(非特許文献13参照)によって開示されているように、光ファイバー内での光の偏光状態とファイバーの複屈折性とに依存することになる。そればかりではなく、ファーマンら(非特許文献14参照)によって報告されているように、高度に非線形なSRCでは、非線形偏光の成長(エボルーション)が起こる可能性がある。それゆえ、偏光を制御することなしには、再現性があり安定なSRCは構成され得なかった。
【0013】
同様に、前述の各文献には、一般的にSRCの効率を最大化する手段や、SRCによって発生する圧縮されたパルスのパルスエネルギーを最大化する手段は、教示されていない。周期性ポーリングLiNbO(PPLN)のような、非臨界的に位相同期(フェーズマッチング)されたダブリング結晶は、主にパルスエネルギーに依存しており、(共焦点フォーカシングを使用すると)パルス幅には臨界的に依存していないので、パルスエネルギーの最大化は明らかに重要な課題である。
【0014】
前述のリチャードソンらの文献では、発振ファイバーおよび増幅ファイバーのモードサイズの制御が損なわれなければ、可能な限り短いパルスの発生に至ることができることが示唆されている。しかしながら、このようなシステムからのパルスエネルギーを最大化することによれば、事実上FDWにおいてより大きなパワーを生成する可能性がある。
【0015】
SRCの代替としては、断熱ソリトン増幅が、パルス圧縮に関して議論されている。これに関しては、ディアノフらの文献(非特許文献15参照)を参照されたい。通常、断熱状態にするには、ソリトン周期あたりの利得係数αが1よりもずっと小さいことが必要である。ここで、ソリトンのソリトン周期は、L≒0.5|β|/τとして定義される。ただし、τは、ソリトンのFWHM(最大値の半分の全幅)パルス幅であり、βは、ファイバーの群速度分散である。あるいは、断熱ソリトン増幅においては、基本N=1ソリトンが崩壊(ブレークアップ)してN=2ソリトンに変わることは、防止されていなければならない。同じパルス幅であれば、N=2ソリトンのエネルギーは、N=1ソリトンの4倍と高いから、ソリトン周期あたりの利得gは、約2よりも小さくすべきである。その結果、通常は増幅器(増幅ファイバー)の長さは、数十メートルからキロメートルの長さにまで及ぶので、実際的ではない。あるいは、ファイバー内の高次の非線形効果に起因して、このように長大なファイバー長を経た後のパルスエネルギーは、短い増幅器によって達成可能なパルスエネルギーに比べて低いものになってしまうであろう。
【0016】
SRCを代替するその他のものとしては、ミネリーらの文献(非特許文献16参照)および米国特許(特許文献3参照)に開示されているように、光ファイバー内でのチャープパルス増幅(CPA)によってフェムト秒台のパルスが増幅されうる。しかしながら、通常は、利得媒体とパルス圧縮およびパルス伸張に使用するために採用されている格子(グレーティング)との有限な帯域幅に起因して、パルス短縮(ショートニング)は起こらず、むしろパルス拡張(ブロードニング)が起こる。それゆえ、パルスエネルギーがおおよそ2〜3nJに達しない限り、このようなシステムはほとんど利用価値がない。
【0017】
ミネリーらによって記載されているシステムでは、ダブルクラッドファイバー、たとえば二段階の屈折率があるファイバーが、ファイバー増幅器として実施されている。したがって、クラッディング・ポンピング(カフカに付与された米国特許(特許文献4参照)に開示されている)が、ポンプ光をファイバー増幅器に供給するために使用されている。ミネリーらの文献が教示しているように、高い屈折率の増大をもたらすドープ溶剤(ミネリーらではAl)の集中が維持されながら、基本単モードのモードサイズは、このようなファイバー内で増大させることができる。次に、ドープ溶剤の高度な集中は、ドープ(ミネリーらではEr3+)の溶解性を増大させることになりうるので、このような増幅器では高い量子効率を与えるに至る。
【0018】
しかしながら、クラッディング・ポンピングによるよりもむしろ、ポンプ光を直接コアに向けることによって、このようなファイバーの性能が最適化されることについては、ミネリーらは教示していない。
【0019】
CPAの代わりとしては、短光パルスの線形増幅が考えられる。増幅器が、線形であると考えられるにしてもそうでないにしても、増幅器によって起こる非線形位相遅れΦnlに依存している。飽和増幅器の中でファイバー長に比例して増大するパルスエネルギーと、断熱状態よりもずっと速い増幅率とを仮定すれば、長さLの増幅器の中での非線形位相遅れΦnlは、近似的に次の数1で与えられる。
【0020】
【数1】

【0021】
ただし、nは非線形屈折率であり、シリカガラスではn=3.2×10−20−1である。また、Aはコアの断面積であり、λは信号の波長であり、τはパルス幅である。ここで、分散がない単経路(シングルパス)の増幅を仮定したとすると、復経路(ダブルパス)の増幅でのL/2はLによって置換される。在来型のレーザー増幅器は、普通、信号の波長で良いパルスの質を与えるように設計されており、非線形位相遅れΦnlが5未満で設計される。
【0022】
ここで、非偏光維持ファイバーでの偏光制御の問題は、ファラデー回転鏡(FRM)を採用することにより最小化され得ることに注目されたい。しかしながら実際上のFRMの使用は、デューリング(Duling et al.)らの米国特許(特許文献5参照)に開示されているように、線形ファイバー増幅器に限定されているか、または前述のファーマンらの文献に指摘されているように、超高速フェムト秒ファイバーレーザーだけに限定されている。
【0023】
前述の文献および特許は、参考文献として以下で参照される。
【特許文献1】米国特許第5,530,582号
【特許文献2】米国特許第4,913,520号
【特許文献3】米国特許第5,499,134号
【特許文献4】米国特許第4,829,529号
【特許文献5】米国特許第5,303,314号
【非特許文献1】A. Hariharan et al. “Alexandrite-pumped alexandrite generative amplifier for femtosecond pulse amplification”, Optic Letters, Vol. 21, pp. 128 (1996)
【非特許文献2】W. Denk “Two-Photon exitation in function biological imaging”, Journal of Biomedical Optics, Vol.1, pp.269(1996)
【非特許文献3】L.E. Nelson et al. “Efficient frequency-doubling of a femtosecond fiber laser”, Optics Letters, Vol.21, pp.1759(1996)
【非特許文献4】Islam et al. “Broad-bandewidth from frequency-shifting sokiton in fibers”, Optic Letters, Vol.14, pp.379(1989)
【非特許文献5】Galvanauskas et al. “Generation of femtosecond optical pulse with nanojule energy from a diode laser and fiber based system”, Appl. Phys. Lett., Vol.63, pp.1742(1993))
【非特許文献6】Ong et al. “Subpicosecond soliton compression of gain-switched diode laser pulses using an erbium-doped fiber amplifier”, IEEE Journal of Quantumn Electronics, Vol.29, pp.1701(1993)
【非特許文献7】Tamura et al. “Pulse compression using nonlinear pulse evolution with reduced optical wave breaking in erbium-doped fiber amplifiers with normal group-velocitiy dispersion”, Optics Letters,(1996)
【非特許文献8】Kafka et al. “Peak Power Fluctuations in Optical Pulse Compression”, IEEE Journal of Quantum Elec., Vol.24, pp.341(1988))
【非特許文献9】K. Krokawa et al. “Wavelength-dependent amplification characteristics of femtosecond erbium-doped fiber amplifiers”, Appl. Phys. Lett., Vol.58, p.2871(1991)
【非特許文献10】I. Y. Khrushchev et al. “Amplification of Femtosecond Pulses in Er3+-doped single-mode optical fibers”, Electron. Lett., Vol.26, pp.456(1990)
【非特許文献11】Richardson et al. “Passive all-fiber source of 30 fs pulses”, Electron., Lett., Vol.28, pp.778(1992)
【非特許文献12】Richardson et al. “Amplification of femtosecond pulses in a passive all-fiber soliton source”, Optics Letters, Vol.17, pp.1596(1992)
【非特許文献13】Menyak et al. "Raman effect in birefringent optical fobers", Optics Letters, Vol.16, pp.566(1991)
【非特許文献14】Fermann et al. Optic Letters, Vol.19, pp.45(1994)
【非特許文献15】E. M. Dianov et al., Optics Letters, Vol.14, pp.1008(1989)
【非特許文献16】Minelly et al. Optic Letters, Vol.20, pp.1797(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、信号の波長(SW)での短光パルスを、倍調波の波長(FDW)での短光パルスに効率よく変換することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的を達成するために、本発明のシステムは、信号光パルスを発生させる光源と、該光源により発生させられた該信号光パルスの偏光状態を調節する偏光制御器と、非線形位相遅れをもち、該偏光制御器で偏光状態が調節された該信号光パルスを受光する非線形ファイバー増幅器と、該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたファイバパルス圧縮器と、該非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光し、出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、を有することを特徴とする。
【0026】
この目的を達成するために、本発明の別のシステムは、信号光パルスを発生させる光源と、非線形位相遅れをもち、該光源により発生させられた該信号光パルスを受光する非線形ファイバー増幅器と、該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたファイバパルス圧縮器と、該非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光し、出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、を有し、該非線形ファイバー増幅器が偏光面保存ファイバーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
周波数変換の過程の実施により、倍調波の波長(FDW)でのパルスの質について妥協することなく、高度に非線形な増幅器または圧縮器の信号の波長(SW)での使用が可能になる。
【0028】
発明の発振器・増幅器・圧縮器の設計によれば、基本的な発振器だけの設計による場合よりも、ずっとパワー効率を良くすることができる。なぜならば、発振器から可能な限り短いパルスを発生させることは、通常、光学的損失が比較的高い複雑なキャビティー設計を含んでしまうからである。それゆえ、基本的な発振器だけの設計は、出力パワーの可能な限りの最大値を生成するにあたり、与えられたポンプパワーに対してあまり効率的ではない。そればかりではなく、非線形増幅器/パルス圧縮器の実施によれば、最終的に課題である超短パルス幅を得るにあたり、発振器だけの構成に比べて、非常に長いパルス幅をもつ発振器の種パルスを使用することが可能になる。その結果、発振器の設計の簡素化が可能になり、ひいてはシステムの本質的なコスト低減になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の発生装置のダブルパス形態での構成示す模式図
【図2】実施例1での増幅器の屈折率プロフィールを示すグラフ
【図3】実施例1での倍調波光パルスの干渉自己相関を示すグラフ
【図4】実施例2での異なるPPLN温度でのソリトン・ラマン圧縮器(SRC)から出たパルスのスペクトルを示すグラフ
【図5】ポンプパワーが減少したときの増幅器での自己位相変調に起因する発振器内および増幅器内でのスペクトル幅の減少を示すグラフ
【図6】本発明の発生装置のシングルパス形態の構成を示す模式図
【図7】反転ポンピングを採用した一実施例の構成を示す模式図
【図8】二つのドーピングレベルと非ドープ部とをもつ増幅器を採用した一実施例の構成を示す模式図
【図9】ダブルクラッド増幅ファイバーを採用した一実施例の構成を示す模式図
【図10】マルチモード増幅ファイバーを採用した一実施例の構成を示す模式図
【図11】本発明を概念的に示すブロック図
【図12】線形増幅器および非線形圧縮器を採用した本発明を概念的に示すブロック図
【図13】本発明の他の形態を概念的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施される本システムは、具体的には短パルスファイバー発振器、ファイバー増幅器、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)および非線形結晶(NC)を有し、非線形周波数変換は、主に非線形結晶(NC)で行われる。ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)を思慮深く設計し、非線形結晶(NC)を注意深く選択することにより、変換過程での効率は最大化され、信号の波長(SW)でのパルスが低質なものであっても、倍調波の波長(FDW)での近帯域に限定されたパルスが発生する。
【0031】
ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)の最適化は、その偏光状態および分散特性の制御により、モードサイズが大きいファイバーを採用することにより、また、同増幅器内でのラマンシフトの量を制御することによって行われる。
【0032】
本発明の一実施例では、ファイバー増幅器はソリトン・ラマン圧縮器(SRC)と組み合わされており、二段階の屈折率プロフィールをもつファイバーを採用することによって、増幅器の効率を最適化することが可能になる。増幅器およびソリトン・ラマン圧縮器(SRC)にファラデー回転鏡(FRM)を結合させて用いることにより、ファンクションジェネレータの偏光状態の長期でのドリフトを回避することができる。あるいは、増幅器およびソリトン・ラマン圧縮器(SRC)として、偏光維持エルビウムドープ・ファイバーを使用しても良い。
【0033】
本発明は、非線形周波数変換過程では圧縮されなかったパルスの部分は抑制されるにもかかわらず、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)から出てくるパルスの圧縮された部分の周波数変換だけが支配的であることを示すものである。さらに、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)から出てくるパルスの帯域幅よりも小さな受光帯域幅をもつ非線形過程を選択することにより、非線形周波数変換の効率が最適化される。
【0034】
本発明を別の観点から見れば、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)内でのラマンシフトと、非線形周波数変換過程の採用とにより、倍調波の波長(FDW)の限定されたチューニングが可能になる。
【0035】
本発明をさらに別の観点から見れば、ダブルクラッドファイバーのファイバーコアにポンプ光を直接ポンピングすることにより、クラッディングの吸収に比較して、ファイバーのコアでのポンプ吸収のほうが、内側のクラッディングの断面積をコアの断面積で割った比率に比例して高いという事実を、利用することができる。この構成によれば、クラッディング・ポンピングで可能なものよりも短い増幅ファイバーの使用が可能になり、その結果、フェムト秒台のパルスを増幅するにあたって、増幅器の非線形性を最小化することができる。
【0036】
最後に、共焦点顕微鏡に適用する場合には、本発明のパルス源/ファイバー増幅器/周波数変換器の構成は、比較的長いパルスを生成する近帯域幅限定パルス源を適正に選択することにより、最適化されうる。その結果、ファイバー増幅器においてほとんど線形な増幅を行うことが可能になる。
【0037】
例示することだけを目的とし、本発明の三つの好ましい実施例について以下に説明する。実施例1のシステムの目標は、パルス幅の点で妥協することなしに、倍調波の波長(FDW)で平均パワーを最大化することである。実施例2のシステムの目標は、共焦点顕微鏡において倍調波の波長(FDW)を使用するために、倍調波の波長(FDW)での平均パワーを最大化して効率を最適化することである。実施例3のシステムの目標は、同システムのファイバー増幅器への入力として必要とされるポンプパワーを最小化することである。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明の実施例1としての高出力光パルスの発生装置、すなわち、フェムト秒台の高出力光パルスを生成するシステムの構成を示す模式図である。図1に示すように、ファイバー発振器10が、種パルス(シードパルス)を供給する。ファイバー発振器10としては、たとえば、1.5μmの波長で作動する環境変動に対して安定なエルビウムファイバーレーザーを採用することができる。このようなファイバー発振器は、前述のファーマンらの文献に開示されている。ファイバー発振器10は、1〜5mWの間で調節することができる平均出力パワーをもって、50MHzの反復率で300フェムト秒の帯域幅限定パルスを供給するだけの能力がある。同パルスは、直線偏光されていることが望ましい。
【0039】
上記種パルスは、必ずしもファイバー発振器からもたらされるものである必要はなく、代わりにバルク光学器やダイオードレーザーからのパルスを使用することもできることに留意すべきである。コストの観点からは、ダイオードレーザーまたはファイバーレーザー発振器からのパルスであることが好ましい。通常は、効率的な非線形パルス圧縮を起こすのに有利なように、ファイバー発振器にはよりクリヤでより短いパルスを生成することが期待される。その一方で、製造容易な光学設計からできる限り沢山のパルスが得られるようにすることが、超高速パルスの応用では要求されるので、パルス増幅およびパルス圧縮の動作が組み合わされている増幅器を使用すれることは、非常に効果的であり得る。
【0040】
実施例1のシステムでは、波長1.5μmの信号光に対して、2mWの平均パワーをもつパルスが、アイソレーター12を介してソリトン・ラマン圧縮器(SRC)エルビウム増幅ファイバー11にカップリングされる。続いて、偏光ビームスプリッター13が配設され、さらに二つの波長板14,15とが偏光ビームスプリッター13の後に配設されており、増幅ファイバー11の中に発射された信号光の偏光状態を調節することができるようになっている。波長板21(図1中の偏光ビームスプリッター13の左側にある)は、偏光ビームスプリッター13に入射する光パルスのスループットを最適化する。また、波長板22は、後述するPPLN(周期性ポーリングLiNbO)20に入射する光パルスの偏光状態を最適化し、レンズ系23は、信号光を増幅ファイバー11にカップリングさせる。ファイバー発振器10から増幅ファイバー11までの全体の発射効率(ローンチング・エフィシエンシー)は、モードマッチング・レンズを適正に使用することにより制御可能であって、70%またはそれ以上(100%近くまで)の効率が達成されうる。
【0041】
実施例1の例では、増幅ファイバー11は、非偏光維持型であって、0.1モル%のEr3+のドーピングレベルと二段階の屈折率プロフィールとをもつ。増幅ファイバー11の屈折率プロフィールは、図2に示されている。増幅ファイバー11の内側のコアは、開口数(NA)が約0.12で、直径が約8μmである。増幅ファイバー11の外側のコアは、開口数(NA)が0.18で、直径は約25μmである。ポンプ光は、増幅ファイバー11の内側のコアに直接向けられていることに留意されたい。再び図1に示すように、増幅ファイバー11は、波長1.48μmのポンプ16により、波長分割多重化カップラー(WDM)17を通じてポンピングされる。ここで、ポンプ光は、広域帯域幅アイソレーターを通過して、波長1.5μmでの高出力信号光の漏れによる損傷を回避している。波長分割多重化カップラー(WDM)17の後には、100mWのポンプパワーが増幅ファイバー11の中へと供給される。この実施例1では、増幅ファイバー11の長さはおおよそ2.5mであり、信号光の伝搬のために採用されているWDMファイバーリードは0.50mに限定されている。図1には分散補償ファイバー18が図示されているが、これについては以下でもっと詳しく説明するが、実施例1のシステムは必ずしも分散補償ファイバーの採用を必要とするものではない。
【0042】
実施例1では、増幅ファイバー11はEr3+ドープ・ファイバーである。しかしながら、増幅ファイバー11は、ErYb 、Pr、Tm、Hoでドーピングされたファイバーであってもよく、適正な発振器を組み合わされた何らかの希土類でドーピングされたファイバーでも良い。さらに、実施例1の増幅ファイバー11は、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)としての作用をも有するが、増幅器とSRCとは別体になっていても良い。
【0043】
図1に示すように、信号光の増幅のために、二重経路(ダブルパス)形態を使用することができる。二重経路形態では、増幅ファイバー11の一端にファラデー回転鏡(FRM)19を装備すると有利である。増幅ファイバー11の出力光の偏光状態は、入力時の偏光状態とは直交しており、そしてそれゆえに、前述の偏光ビームスプリッター13により100%近い効率で、同システムからの増幅光は出力カップリングされうる。図1にはFRMが示されているが、その代わりに何らかのファイバー偏光制御器やλ/4波長板を使用しても良い。
【0044】
増幅ファイバー11の中で要求された非線形周波数シフトが存在する場合でもも、増幅ファイバー11の入力部での二つの波長板14,15を調整することによって、増幅された光の非常に有効な出力結合を可能にする。そのうえ、波長板14,15の調整により、同ファイバー内で偏光状態を制御し、増幅ファイバー11の中での非線形偏光のいかなる増大(エボルーション)をも制御して、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)を最適化することが可能になる。
【0045】
実施例1のシステムを使用して行われた実験では、増幅ファイバー11を二回通過した後、30mWの平均出力(600pJのパルスエネルギー)が計測された。種信号を同じ平均出力レベルのcw(連続波)信号で置き換えた場合には、増幅ファイバー11から最大37mWまでの平均出力を取り出すことができた。信号の波長(SW)では、増幅されたパルスのラマンシフトから、パルス増幅の過程で20%のエネルギー損失が起きた。実施例1の例では、ラマンシフトは20nmであり、それゆえに信号パルスはエルビウムの利得帯域幅から押し出されている。そればかりではなく、増幅されたパルスが横切る光学素子(WDM、その他)の限られた帯域幅に起因して、光学的な損失が生じている可能性がある。
【0046】
図1に示すように、増幅され圧縮されたパルスは、共焦点集光(コンフォーカル・フォーカシング)が使用されている周期性ポーリングLiNbO(PPLN)20の0.8mmの長さの中で、倍調波に変換されている。この例では、PPLN(周期性ポーリングLiNbO)20は、ARコーティングされていない。PPLN20のポーリング周期は、19.25μmに設定されており、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)からの圧縮されたパルスのスペクトルのピークにほぼ一致するように選ばれている。最適な倍調波の波長にぴったり同調させるため、また、PPLN(周期性ポーリングLiNbO)20の内部でのフォトリフラクティブ損傷を避けるために、PPLN20を50℃〜150℃の温度に昇温することをしても良い。PPLN20の長さは、倍調波の帯域幅での大きさがソリトン・ラマン圧縮器(SRC)からの圧縮されたパルスの帯域幅と同等またはそれ以下になるように、選定されている。しかしながら、信号の波長(SW)でのPPLN20のスペクトル受光帯域幅は、全体のダブリング効率の観点でのペナルティーがないものとしても、信号の波長(SW)でのスペクトルの拡がりよりもずっと小さいものである可能性があることに留意されたい。信号の波長(SW)の正常な受光帯域幅の外のスペクトルであっても、PPLN20は効率的に周波数変換を行う。これは、以下に述べるように、PPLN20の中で起こる和周波数発生(サム・フリーケンシー・ジェネレーション)と同様の非線形過程に起因するものである。これは、前述のネルソンらの文献で特色となっている周波数変換器とは対照的である。同文献では、周波数変換結晶の限定された受光帯域幅についての事項は論議されていない。
【0047】
倍調波パルスは、正規分布形(ガウシアン)のパルス波形を仮定すれば、波長760nm、平均出力6.3mW、パルス幅120フェムト秒、および時間帯域幅積(タイム・バンドワイズ・プロダクト)0.66である。それゆえ、結果的に得られるパルスは、帯域幅の制限因子が50%以内になる。干渉計による自己相関を図3に示す。同図は、パルスの質が良いことを示している。再び図に1示すように、SRC増幅ファイバー11の前で偏光状態を変えることにより、倍調波パワーを計測すると0.1mWと6.3mWとの間で変動していることが観測され、この高度に非線形な増幅器において偏光制御することが必要であることを示していることに留意すべきである。
【0048】
ポンプ光から倍調波の波長(FDW)でのフェムト秒台のパルスに変換する変換効率は、結局6.3%である。一方、信号光から倍調波光への変換効率は、21%である。それゆえ、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)の圧縮効率は約60%であり、これは、前述の米国特許第4,913,520号に開示されているような正分散ファイバー圧縮器によって達成される結果と比較して、非常に好ましいものである。
【0049】
これらの実験結果は、SRCから得られる圧縮されたパルスのエネルギーを最大化するために、大きなコア直径をもつ増幅器を使用して得られた。固定されたパルス幅τのパルスに対し、ソリトンエネルギーWは、ファイバーコアの断面積Aおよびファイバーの分散βに比例して増減する。SRCはソリトン状のパルスを生成するので、コアの断面積を最大化することにより、同SRCから生成されるソリトンのパルスエネルギーは最大化される。そのうえ、コアの直径が大きいと、ファイバーの導波分散をも最小化することができ、その結果、トータルでのファイバー分散βが最大化される。後者は二次的な効果であるとはいえ、パルスエネルギーをさらに増大させる作用がある。
【0050】
増幅ファイバー11内を二回通った(ダブルパスした)後の信号は、一回通った(シングルパス)の後の信号よりも実際に小さい。増幅ファイバー11内で起こる大きなラマンシフトに起因して起こるエネルギー損失を別にしても、増幅ファイバー11は長すぎる。すなわち、ポンプ光の大半は、増幅ファイバー11の発射端部(ローンチ・エンド)に到着する時までに吸収されてしまう。それゆえ、この端部においてこの増幅器は完全に反転するわけではなく、信号の波長(SW)での信号損失が起こってしまう。
【実施例2】
【0051】
次に、本発明の実施例2について説明しよう。実施例2のシステムの設計基準は、二光子共焦点結像システムの要求に合致することを第一にして選定されている。倍調波の波長(FDW)(これらの例では800nm付近)が、二光子励起のためのソース(エネルギー源)として使用されている。多数の光子Mが、所定のビーム直径に対して二光子励起により次の数2に比例して生成される。
【0052】
【数2】

【0053】
ここで、「const」は定数を表し、P,f,τはそれぞれ、励起源の平均出力、反復率およびFWHMパルス幅である。上記数2によれば、効果的な二光子共焦点結像には、パルス幅を減少させることよりもむしろ、平均出力を増大させることの方がずっと大事であることが明らかである。しかしながら、実際の生物学用システムにおいて、パルス出力、パルスエネルギーおよびパルス幅に関係して生物学的標本に起こる損傷閾値(ダメージ・スレッショルド)や光子漂白(フォトブリーチング)に関する考察は、上記数2では行われていないことに注意すべきである。それでも、実施例2の説明において、倍調波の波長(FDW)での平均出力の最大化は、損傷や光子漂白に関する事項を考察することなしに表記することができる。
【0054】
図1に示す構成が実施例2でも取られている。実施例2が実施例1と異なる点は、4mWの発振器出力が採用されている点である。増幅ファイバー11は、実施例1のものとほぼ同じであるが、内側のコアの開口数(NA)はNA=0.10に低減されており、内側のコアのサイズはおおよそ10μmに増大している。そればかりではなく、エルビウムのドーピング・レベルが約25%低減されて、おおよそ750ppmになっている。増幅ファイバー11の長さは2.6mであり、(4mWの連続波信号を種信号として)同増幅器の線形動作に対して最高の平均出力を与えるように選定されている。PPLN(周期性ポーリングLiNbO)20の長さは1.2mmに延長されて、倍調波の波長(FDW)でのパルスの長さを増大させるようにされている。PPLN20の周期は18.75μmに低減されて、波長1.56μmでの効率的な倍調波化(フリーケンシー・ダブリング)を可能にしている。実施例2のシステムで行われた実験では、種パルスは増幅ファイバー11を二回通過(ダブルパス)して、信号の波長(SW)において54mWを生成している。ここで、連続波信号の二回通過により、信号の波長(SW)において57mWが生成されているから、信号の損失はたったの5%であり、このような低損失が増幅ファイバー11の非線形動作により実現されている。ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)から得られるパルスのスペクトルは、図4に示すように、1.56μmに中心を持つことが分かった。また、倍調波の波長(FDW)でのパルスは、波長約780nm、平均出力12mW、帯域幅の制限内での50%以内のスペクトル幅のパルス幅190フェムト秒であることが分かった。SRC増幅ファイバー11以前での偏光の変化は、7〜12mWの倍調波の波長(FDW)での出力の変化をもたらした。その結果、倍調波の波長(FDW)への変換効率は、反射損失(リフレクティング・ロス)を考慮しても、22%である。実施例1のシステムと比較すると、光子の数Mは2.2倍に増えている。
【0055】
実施例2における倍調波の波長(FDW)での高出力は、線形増幅器の効率の最適化と、発振器のパルスの波長に近い波長へのパルスのラマンシフトの限定(たとえば約10nm以内)の結果である。これは、30nmのラマンシフトが使用されていた前述のリチャードソンらの文献(“Amplification of femtosecond pulses in passive all-fiber soliton source”)と対照的である。実施例2におけるラマンソリトンのパルス幅は、実施例1のそれよりも明らかに長い。実際に、増幅器の非線形性が低減されていることに起因して、ラマンソリトンは完全には成長していないかのようであり、高次のソリトン圧縮からかなりの程度までパルス圧縮が起こっているようである。しかしながら、パルス幅に関してM(光子数)が比較的影響されないので、実施例2のシステムは、実施例1よりも高いMを生成する。
【0056】
実施例1および実施例2の両方において得られた高い周波数変換効率は、単に倍調波化(フリーケンシー・ダブリング)によるよりも、むしろもっと一般的な周波数変換過程の開発によって得られたものである。このような非線形周波数変換過程が存在することを確認するために、PPLN(周期性ポーリングLiNbO)20の温度を変えて、信号の波長(SW)および倍調波の波長(FDW)でのスペクトルを観測した。その結果を図4に示す。高次のソリトン圧縮が存在することに起因して、信号の波長(SW)でのスペクトルは中間部に凹部があって二つの部分に分かれている。このスペクトルの凹部は、注入された発振器のパルスのスペクトルの位置と対応している。PPLN20の温度T=162℃においては、周波数変換はラマンシフトされた波長にて主に得られている。一方、T=100℃においては、周波数変換は上記凹部において得られている。これに対し、T=25℃においては、周波数変換は主に信号の波長(SW)スペクトルの短波長端(ブルーエンド)で得られている。倍調波の波長(FDW)への変換効率は上記凹部にて観測されているが、このことは明らかに単純な二次高調波の発生からだけでは説明がつかない。むしろ、和周波発生のような過程により倍調波の波長(FDW)が生成されているとすべきである。しかしながら現時点では、この現象の正確な理学的な発生源は不明である。解釈としてあり得るものは、
・PPLNにおける倍調波化過程の共振性
・パルスチャープに起因する影響
・結晶内での継続した二次非線形性の影響
・PPLN20の二次または三次の非線形性の虚数部に起因する影響
・PPLN20内での高次の非線形性間での相互作用に起因する影響
などである。これ以降では、この非線形過程は、単に「和周波発生様の周波数変換(SLF)」と呼ぶものとする。
【0057】
和周波発生様の周波数変換(SLF)によって、倍調波の波長(FDW)への変換効率を低下させることなく、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)の帯域幅よりもずっと小さな倍調波化帯域幅での非線形結晶(NC)の使用が可能なることが、実施例2の例から実験的に観測される。このことは利用価値が高い。なぜならば、倍調波の波長(FDW)での出力を低下させることなく、倍調波の波長(FDW)のパルスのパルス幅の制御が可能になるからである。言い換えるならば、信号の波長(SW)でのパルスのスペクトルの大部分からエネルギーを引き出すことにより、非線形結晶(NC)は効率的に信号の波長(SW)を倍調波の波長(FDW)に変換することができるのである。ここで、信号の波長(SW)でのパルスのスペクトルの大部分からエネルギーを引き出すというのは、すなわち、非線形結晶(NC)のスペクトル受光帯域幅よりも大きなスペクトルからエネルギーを引き出すことを意味している。それゆえ、比較的低質の信号の波長(SW)でのパルスを採用していても、効率的な周波数変換が可能になるであろう。これは、増幅器/周波数変換器の構成にとって価値のある特性である。なぜならばこの特性により、図4に示すように、単一の信号の波長(SW)においてばかりではなく、信号の波長(SW)の及ぶ限りの全スペクトル内で調整可能な(チューナブルな)波長の範囲において、効率的な周波数変換が可能となるからである。
【0058】
上記増幅器の非線形を数1によって計算すると、得るところが大きい。パルス幅τが300フェムト秒でパルスエネルギーがE=1.2nJの入力に対しては、非線形位相遅れΦnl=16.6が得られる。それゆえ、たとえ高度に非線形な増幅器(圧縮器)であっても、倍調波の波長(FDW)が採用されるならば、非常に高品質のパルスを生成することができる。このような原理は、前述のクラークおよびネルソンらによっては示唆されていない。
【0059】
そればかりではなく、線形増幅器と性能を比較してみると得るところがある。線形増幅器と比較するために、増幅されたパルスのエネルギーが400pJになるようにポンプパワーを低減すると、その結果得られる非線形位相遅れΦnlは、約5である。増幅器の自己位相変調に起因して、図5に示すように、スペクトルの幅は、発振器内での8.2nm(上)程度から、増幅器内の5.7nm(下)へと減少する。図5に示すように、予期した通り、「線形」の増幅器によっても増幅されたパルスでも高い質のスペクトルが得られる。
【実施例3】
【0060】
次に、実施例3のシステムについて説明する。実施例3においてもまた、図1に示した構成が取られている。実施例3では、50MHzの反復率で50pJのパルスを供給する発振器が採用されている。同パルスは、帯域幅20nmで正にチャープされている。すなわち、このチャープは約8mの長さのソリトン支持ファイバー(たとえばコーニング社の商標SMF28)によって補正される。チャープ補正を実施した後では、信号の波長(SW)の計測されたパルス幅は、(ガウシアン型を仮定して)190フェムト秒と観測された。すなわち、この値は、チャープ補償が行われた後におおむね帯域幅が制限されたパルスが得られることを示している。
【0061】
実施例3の増幅システムは、以下の点を除いて、前述の実施例1や実施例2のシステムと同様である。増幅ファイバー11は、開口数(NA)が約0.16であり、コアの直径が約6μmである。この増幅器の長さは、1.1mである。この増幅器は、波長980nmで出力90mWのポンプ光でポンピングされる。分散補償ファイバー18は、標準的な電話光ファイバー(たとえばコーニング社の商標SMF28)の数m程度の部分でもよく、分散補償のために波長分割多重化カップラー(WDM)17とファラデー回転鏡(FRM)19との間に挿置される。信号光が伝搬する増幅システムの入力端から出力端までのファイバーの全長は、発振器から出るパルスの分散補償が最適に行われるように調整される。この最適化は、増幅器から出てくるパルスのパルス幅を計測することにより確認することができる。そして、挿置されている電話光ファイバーの長さを調整して、本システムから出てくるパルスのパルス幅が最小になるようにすれば、最適化がなされたとすることができる。分散調整をしている段階では、信号のラマンシフトが観測されないように、増幅器のいかなる非線形過程も最小化されるだけのレベルにまで、増幅器に入力されるポンプパワーは低減されている。
【0062】
実施例3においては、倍調波化システムの設計は前述の実施例1,2と同一であるが、ただし、たった600μmの長さをもつPPLN(周期性ポーリングLiNbO)20が採用されている。実施例3のシステムは、増幅システムの分散をゼロに調節することができ容易に制御できるという利点をもち、この利点はソリトン・ラマン圧縮器(SRC)から得られるパルスをできる限り短くする上で有用である。さらに、増幅器の全長を通ってパルスが強くチャープされるので、いかなる非線形性も増幅器の最後の部分でしか起こらない。このことは、SRCから出力パルスエネルギーの最高値を得るうえで有利である。
【0063】
実施例3のシステムでは、信号パルスは4mWのパワー(パルスエネルギーでは800pJ/パルス)にまで増幅されている。倍調波化の後では、平均パワー1mWでパルス幅100フェムト秒のパルスが、波長790nmで実験的に得られた。時間帯域幅積は、ガウシアンパルスを仮定して約0.50と見られている。それゆえ、パルスは帯域幅の限定の10〜20%以内に収まっている。これにより、このシステムで採用されている分散調整の利用効果が実証された。この際の倍調波化効率は25%と見られ、この値は帯域幅が限定された800pJの信号パルスに対して予想されていたものよりも低い。
【0064】
[その他の実施例]
前述の実施例の全てにおいて、もっとドーピングレベルが低いファイバーを使用した場合に比べて、これらの形式の増幅器の量子効率が減少するにもかかわらず、700〜1500ppmの間という比較的高いエルビウムのドーピングレベルが採用されている。このような高いドーピングレベルにより、採用されている増幅器の長さを最小化することが可能になる。パルス幅100フェムト秒でエネルギー1nJのパルスは、10kWのピークパワーを持つので、コア径の大きな増幅器を使用したとしても、たった20〜30cmの長さのファイバーで本質的な非線形性が実現される。さらに、パルス幅100フェムト秒のパルスは、増幅ファイバー11内で三次分散の影響を受ける。したがって、パルスの質を最良にし、得られるパルス幅を最小化することは、増幅システムの長さを最小化する上で有用である。しかしながら、一般的に言って、増幅システムの長さはあまり短すぎてもいけない。なぜならば、本質的なパルスの短縮化が可能であるためには、少なくともワンセットの高次のソリトン圧縮が起こることが保証される必要があるからである。実際に、増幅器の非線形性があまりに小さいと、図5に示すように、負分散ファイバー内での自己位相変調がパルスの拡散につながってしまうのである。
【0065】
前述の各実施例に加えて、本発明の実施例として他にいくつかが可能である。特に、実施例1,2または他のどんな増幅システムにおいても、分散最適化システムまたはゼロ分散システムを採用することが可能である。分散最適化には、正分散ファイバーまたは負分散ファイバーの組み合わせを使用することができる。実施例1および実施例2においては、再び図1に示すように、適正な長さの正の分散補償ファイバー18を波長分割多重化カップラー(WDM)17とファラデー回転鏡(FRM)19との間に挿置することができる。
【0066】
さらに、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)の中でシングルパス形態が実施可能である。このようなシステムの実施例を図6に示す。全体的な偏光安定性を可能にするために、偏光面保存増幅器(PMA)を使用することができる。そうすれば、ファイバー発振器10からの光の偏光性は、PMAの偏光軸の一つに合わせられる。出力での偏光状態は、倍調波化の変換効率が最高になるように調整される。しかしながら、偏光面保存ファイバーは、必ずしもシングルパス形態において必須のものではない。なぜならば、倍調波化過程の効率を最大化するために、図6に示すように、波長板の組合せがSRCの入力部(14,15)と出力部(60)で使用できるからである。しかしながら、偏光面保存ファイバーによれば、長期にわたる安定性と環境に影響されない安定性とがより良くなることが期待できる。さらに、異なる種類の波長分割多重化カップラー(WDM)61(および62)を採用することもできる。図6に示すWDM61,62においては、ダイクロイックミラー(二色鏡)を組み込んだ超小型光学配置を介して、ポンプ光がファイバー増幅器11の中へとカップリングされている。このようなWDMは実際には自由空間への出力をもち、増幅システムにおいてカップラーリードと光学損失とを最小化させるのに有用である。明らかに、全体的に偏光安定なシステムは、増幅システム全体を通して偏光面保存ファイバーを必要としている。偏光面保存ファイバーの異なる部分の間を繋ぐスプライスは、同ファイバーの偏光軸が合わせられていることを確実にすべきである。
【0067】
SRCのためには、できる限り高いポンプパワーを有することが有利であるから、複数のポンプダイオードを採用することも可能である。二つのポンプダイオード63,64をもつ配置も、図6に示されている。同様の配置が、信号光のためのダブルパスについても使用可能である(図略)。そればかりではなく、ポンプ光のための偏光ビームスプリッターをWDMカップラーに組み込んで、四つまでのポンプダイオードを使用することを可能にすることもできる(図略)。
【0068】
高次のソリトン圧縮やラマンソリトンの生成に加えて、断熱的パルス増幅器を使用しても、発振器からのパルスのパルス幅を短くすることができる。増幅を断熱状態に近くすることを確実にするためには、図7に示すような、反転(コントラディレクショナリー)ポンピングされる増幅システムが望ましい。反転ポンピングによれば、増幅器の飽和なしにパルス幅を短縮するのに伴って、増幅器の単位長さあたりの利得が増大するようにすることができ、断熱的であるのと同等になる。明らかに、偏光面保存ファイバーの使用は、このようなシステムでは有利である。
【0069】
二光子共焦点顕微鏡への応用のためには、ダメージおよび光漂白の制限がない場合には、高い値のM(光子の発生数)を得るために、線形に近い増幅システムに頼ることも有用である。繰り返すが、この場合においては、反転ポンピングされる増幅器が最も有用である。なぜならば、同増幅器によれば、ダブルパス・システムでも可能であるが、増幅器の非線形性を最小化することができるからである。このようなシステムに期待できる性能を予測することは、実施例2のシステムの性能と比較することによって可能である。最適に設計されたシングルパスの増幅器が、ダブルパスの増幅器よりも30%ほど長いものと仮定すると、約750ppmのエルビウム・ドーピングレベルをもつシングルパス増幅器のための最適な増幅器の長さは、おおよそL=3.4mである。約3mmの長さのPPLN結晶を使用すると、倍調波の波長(FDW)において約500フェムト秒のパルス幅のパルスが得られる。帯域幅が限定されたsech形状のパルスに対しては、小さい信号に対するPPLNの倍調波化効率は約95%/nJであるから、このようなパルスに対しては、約40%の全体としての倍調波化効率が達成可能である。それゆえ、実施例2の変形態様としての線形形態においては、倍調波の波長(FDW)で23mWのパワーレベルのパルス生成が可能であり、実施例2でのMよりも30%高い値のMが達成可能である。しかしながら、この数字は、このようなシステムに残留する小さな非線形性に起因する周波数変換効率の減少と、「ほとんど線形な」増幅器に起こるパルス幅の拡大作用とを、計算に入れていない。それにもかかわらず、実際の二光子共焦点計測システムにパルス幅の長いパルスの使用が、ダメージおよび光漂白の制限と矛盾しないものとすると、共焦点顕微鏡の内部での分散に関する問題が軽減されることに起因して、計測システムを単純化することができるので、長いパルス幅のパルスの使用が好ましい。このようなシステムでの重要な要素は、非常に効率がよいコア径が大きな増幅器および発振器であって、同要素は超短パルスを生成するわけではなく、むしろ200〜300フェムト秒のパルス幅のパルスを生成する。もちろん、スペクトルフィルタリングを導入することにより、広い帯域幅の発振器からの長いパルス幅を任意に選択することが可能である。しかしながら、こうするとパワーの損失につながる。よりよい代替案としては、パルス幅が500フェムト秒を超える種パルス源を使用することができる。明らかに、このようなシステムでは、偏光面保存ファイバーを使用することが有用である。
【0070】
実施例1について論じたように、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)内で全長に渡る増幅器を採用して、最大の倍調波化効率を得ることができる。全長に渡る増幅器の終端部では、ほとんど利得がないから、図8に示すように、ドーピングされていないファイバー80をSRCの終端部に使用することができる。そして、増幅器の長さを調整して最適な信号利得を得ることができ、その後、コア径の大きなドーピングされていないファイバーを増幅ファイバーにスプライスして、SRCの作用を得るようにすることができる。シングルパス増幅器のためのこのような構成は、図8に示されている。ダブルパス形態(図略)もまた、実施可能である。
【0071】
システム全体の全体としての効率を最大化するために、図8に示すように、互いに異なるドーピングレベルのファイバー増幅器81,82を採用することができる。通常のファイバー増幅器の効率は、ドーピングレベルが低下するに従って増大するので、増幅の早期段階では、増幅器に低いドーピングレベルを適用することができる。また、増幅器の最初の段階では信号レベルが低いので、低いドーピングレベルの長さが長めの増幅器の使用が許容され得る。
【0072】
SRCへの使用可能なポンプパワーを最大化し、ポンプ源のコストを最小化するためには、図8に示すように、ダブルクラッド・ファイバー90を採用しても良い。ダブルクラッド・ファイバーによれば、広縞(ブロード・ストライプ)ダイオードアレイ・レーザーでシステムをポンピングすることが可能になる。話を単純にするために、シングルパスだけが図9には示されている。クラッディング・ポンピングを可能にするために、ErドーピングまたはEr/Ybドーピングが施されたファイバーを採用することができる。以上の説明から、ダブルパスへの展開は明白である。図9では、ポンプパワーは、エンド・カップリングを介し、ダイクロイックミラー92を通じてダイオードアレイ91へ供給される。しかしながら、この機能を発揮させるためには、マルチモード・ファイバー・カップラーを採用しても良い。あるいは、ダブルクラッド・ファイバー内へのポンプパワーのサイド・カップリングを実施しても良い。
【0073】
ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)は高度に非線形なシステムであるから、増幅器の使用や、幾分マルチモードなドーピングされていないコア径の大きなファイバーでも使用可能である。マルチモード・ファイバーを使用すれば、一般的には高次のモードも励起されてしまうにもかかわらず、増幅ファイバーへのローンチコンディションは、基本モードを好ましく発射するのに適正に選定される。他の全てのモードのパワーよりも基本モードのパワーの方が大きいか同等である限り、SRCは先ず基本モードで作動する。倍調波器と接続すれば、基本モードのラマンシフトを実施することにより、分散による限定一杯近くまでの倍調波化された波長の回折限界に近い出力を得ることが可能になる。ここでも、ダブルクラッド・ファイバーをこのようなシステムに採用することが可能である。マルチモード・ファイバー100を採用したシステムの一例を、図10に示す。図10はシングルパス形態を示しているが、ダブルパス形態もまた可能である。バルク状のダイクロイックミラー92を、レーザーダイオード91からのポンプ光のカップリングのために使用することが可能である。しかしながら、マルチモード全ファイバー・カップラーを使用して、この機能を発揮させることも可能である。同様に、ポンプ光のサイドカップリングを採用することもできる。
【0074】
さらに、以上に論じたように、周波数変換過程の応用は、ファイバー増幅器や非線形ファイバー圧縮器に限られるものではない。原理的には、どんなタイプの非線形増幅器でも、信号の波長(SW)で非線形で(すでに計算したように)非線形位相遅れΦnl>5であれば採用することができ、周波数変換によって、周波数変換された波長での高品質パルスを生成することが可能になる。このようなシステムの実施例を、一般的に図11に示す。また、増幅器、非線形圧縮器およびPPLN倍調波器を有するシステムを、図12に示す。もちろん、ファイバー増幅器および圧縮器は、単一の光学コンポーネントと組み合わせることができる。同様に、非線形増幅器と線形または非線形の圧縮器とを採用することも可能である。
【0075】
以上で論じたように、PPLN(周期性ポーリングLiNbO)の使用は、このようなシステムにおいて特段の効果を挙げることができる。なぜならば、PPLNは、位相合わせ(フェーズマッチング)に関してクリティカルではなく、非常に効率的な周波数変換を可能とするからである。そこで、信号の波長(SW)でのソース(源)の帯域幅よりもSWでの受光帯域幅が小さいPPLN結晶または周波数変換器を選定することが、可能な限り高い変換効率で可能な限り高品質なパルスを生成する上で有用である。
【0076】
そればかりではなく、SWでの帯域幅よりもSWでの許容帯域幅が小さい周波数変換器を使用するという考え方は、短パルスのいかなるソースの周波数変換に対しても応用することができる。このようなシステム構成を図13に示す。以上で論じたように、このようなシステムにとってPPLNの使用はたいへん有利である。なぜならば、位相合わせ(フェーズマッチング)に関してクリティカルではなく、単に結晶の長さを制御するだけで許容帯域幅の制御が可能になるからである。異なるポーリング周期のPPLNを選定することによってか、あるいは、PPLNの温度を変えることによって、所定の可調整範囲(チューニング・レンジ)を達成することができる。あるいは、周波数変換の機能を果たすために、その他のタイプの周期性ポーリング非線形結晶を使用しても良い。
【0077】
以上ではいくつかの実施例が例示されて説明されたが、多様な変形態様やバリエーションが本発明の思想および範囲を逸脱することなく実施可能であることは、当業者には理解できよう。それゆえ、本発明の権利範囲は、前述の特許請求の範囲の項によって定まることを意図している。
【符号の説明】
【0078】
10:ファイバー発振器 11:増幅ファイバー 12:アイソレーター
13:偏光ビームスプリッター 14,15:波長板 16:ポンプ
17:波長分割多重化カップラー(WDM)
18:分散補償ファイバー 19:ファラデー回転鏡(FRM)
20:PPLN(周期性ポーリングLiNbO)結晶
21,22:波長板 23,L1,L2:レンズ系
60:ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)
61,62:波長分割多重化カップラー(WDM) 63,64:ポンプ
80:非ドープファイバー
81,82:増幅ファイバー(ドーピングレベルが互いに異なる)
90:ダブルクラッド・ファイバー 91:ダイオードアレイ
92:ダイクロイックミラー(二色鏡)
100:マルチモード・ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光パルスを発生させる光源と、
該光源により発生させられた該信号光パルスの偏光状態を調節する偏光制御器と、
非線形位相遅れをもち、該偏光制御器で偏光状態が調節された該信号光パルスを受光する非線形ファイバー増幅器と、
該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたファイバパルス圧縮器と、
前記非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光し、出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、
を有することを特徴とする高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項2】
信号光パルスを発生させる光源と、
非線形位相遅れをもち、該光源により発生させられた該信号光パルスを受光する非線形ファイバー増幅器と、
該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたファイバパルス圧縮器と、
前記非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光し、出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、
を有し、該非線形ファイバー増幅器が偏光面保存ファイバーであることを特徴とする高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項3】
前記ファイバーパルス圧縮器は、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)であることを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項4】
前記非線形ファイバー増幅器の増幅ファイバーはダブルクラッドファイバーで、ポンプ光と信号光が該増幅ファイバーのコアの中に入射されることを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項5】
前記非線形ファイバー増幅器はマルチモードファイバーからなり、その中の信号光パルスは、主に該マルチモード増幅ファイバーの基本モードにされていることを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項6】
パルス圧縮が前記非線形ファイバー増幅器で行われることを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項7】
前記光源は、ファイバー発振器を有することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項8】
前記非線形増幅器は、増幅ファイバーを有することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項9】
前記増幅ファイバーは、0.15未満の開口数(NA)をもつことを特徴とする請求項8記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項10】
前記増幅ファイバーは、50μmより大きいコアの断面積をもつことを特徴とする請求項8記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項11】
前記増幅ファイバーは、パルス圧縮を行うことを特徴とする請求項8記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項12】
前記非線形増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたパルス圧縮器をさらに有することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項13】
前記非線形増幅器は、増幅ファイバー及び出力端の非ドープファイバーを有することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項14】
さらに、分散補償ファイバーを有することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項15】
前記周波数変換器のスペクトル許容帯域幅は、前記非線形ファイバー増幅器からの前記光パルス出力のスペクトルの拡がりより小さく、
該周波数変換器は、該スペクトル許容帯域幅よりも大きい該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力のスペクトルの一部から、エネルギーを該スペクトル許容帯域幅へと変換することを特徴とする請求項1或いは2記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項16】
信号光を発生させる光源と、
非線形位相遅れをもち、該光源により発生させられた該信号光を受光する非線形ファイバー増幅器と、
該非線形ファイバー増幅器からの光パルス出力を圧縮するために配列されたファイバパルス圧縮器と、
出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、
を有し、該ファイバパルス圧縮器の屈折率分布がファイバーの長さ方向でほぼ一様であることを特徴とする高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項17】
前記ファイバーパルス圧縮器は、ソリトン・ラマン圧縮器(SRC)であることを特徴とする請求項16記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項18】
前記ソリトン・ラマン圧縮器は、前記光源から発生された信号光パルスの波長からシフトした中心波長をもつラマンパルスを発生することを特徴とする請求項17記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項19】
前記波長シフトしたラマンパルスは、ある程度の波長可変性を可能にすることを特徴とする請求項18記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項20】
前記ラマンパルスの波長シフト量は、前記ファイバー圧縮器に入力される光パルスのパワーレベルで調整されることを特徴とする請求項17ないし19のいずれか記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項21】
前記周波数変換器の許容帯域幅は、前記ラマンパルスのスペクトル広がりと同等或いはそれ以下に調節され、該周波数変換器の周波数逓倍された出力の波長可変性を可能にすることを特徴とする請求項17ないし19のいずれか記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項22】
前記ファイバー圧縮器は、偏光面保存ファイバーであることを特徴とする請求項18記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項23】
前記非線形ファイバー増幅器及び前記ファイバー圧縮器は、偏光面保存ファイバーを有することを特徴とする請求項18記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項24】
信号光を発生させる光源と、
非線形位相遅れをもち、該光源により発生させられた該信号光を受光する非線形ファイバー増幅器と、
該非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光し、出力端で高パワー光パルスを供給する周波数変換器と、
を有し、該非線形ファイバー増幅器はマルチモード増幅ファイバーを有し、前記信号光は、主に該マルチモード増幅ファイバーの基本モードにされていることを特徴とする高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項25】
前記非線形ファイバー増幅器は、シングルモードの第1ファイバーとマルチモードの圧縮器ファイバーを有することを特徴とする請求項24記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項26】
前記マルチモード圧縮器ファイバーは、ソリトン・ラマン圧縮器であり、ラマンシフトが該マルチモード圧縮器ファイバーで行われることを特徴とする請求項25記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項27】
前記マルチモード圧縮器ファイバーは、偏光面保存ファイバーであることを特徴とする請求項25記載の高パワー光パルスを発生する装置。
【請求項28】
信号光を発生させる光源と、
非線形位相遅れをもち、該光源により発生させられた該信号光を受光する非線形ファイバー増幅器と、
該非線形ファイバー増幅器から光パルス出力を受光する周波数変換器と、
を有し、パルス圧縮が該非線形ファイバー増幅器で行われ、該周波数変換器が高パワー増幅器の注入シーディングに使用する高パワー光パルスを供給することを特徴とする高パワー超短光パルスを発生する装置。
【請求項29】
請求項1、2、16、24或いは28記載の高パワー光パルスを発生する装置を含む2光子共焦点顕微鏡。
【請求項30】
信号光パルスを発生させるステップと、
増幅された信号光パルスを生成するために該信号光パルスを非線形増幅するステップと、
該信号光パルスと異なる波長の高パワー光パルスを生成するために該増幅された信号光パルスを周波数変換するステップと、
を有することを特徴とする高パワー光パルスを発生する方法。
【請求項31】
前記信号光パルスの偏光状態を制御するための偏光制御ステップを有することを特徴とする請求項30記載の高パワー光パルスを発生する方法。
【請求項32】
前記信号光パルスを圧縮する圧縮ステップを有することを特徴とする請求項30記載の高パワー光パルスを発生する方法。
【請求項33】
前記非線形増幅するステップにおいて、前記信号光パルスを圧縮することを特徴とする請求項30記載の高パワー光パルスを発生する方法。
【請求項34】
信号光パルスを発生させるステップと、
該信号光パルスの偏光状態を制御するための偏光制御ステップと、
増幅された信号光パルスを生成するために偏光状態が制御された該信号光パルスを非線形増幅するステップと、
圧縮された信号光パルスを生成するための該増幅された信号光パルスを圧縮する圧縮ステップと、
該信号光パルスと異なる波長の高パワー光パルスを生成するために該圧縮された信号光パルスを周波数変換するステップと、
を有し、該非線形増幅するステップでは光ポンピング手段でポンプされたダブルクラッドファイバーが非線形増幅を行い、
さらに、ポンプ光と信号光パルスを該ダブルクラッドファイバーの内側コアに直接注入するステップを有することを特徴とする高パワー光パルスを発生する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−265683(P2009−265683A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163251(P2009−163251)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【分割の表示】特願2004−128960(P2004−128960)の分割
【原出願日】平成10年1月23日(1998.1.23)
【出願人】(593185670)イムラ アメリカ インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】