説明

高温加圧気密ガスによる搬送機構を備えた基板処理装置

【課題】大型の重たい基板を大気から遮断して加熱処理またはその上に膜を形成したい製造工程がある。そのためには、大型の真空装置を必要とし、基板の搬送移動は大掛かりになり、デバイス製造のコストを押し上げていた。
【解決手段】加熱した高温の加圧ガスを加熱したプレートから基板に向けて吹き付けて基板を支持しながら加熱する。基板とプレートの隙間を流れる当該ガスは大気進入を阻止する。この構造は1mを超える重たい基板であっても、それを1)浮上させて支持し、2)気体断熱し、3)ガスで加熱し、4)大気から遮断して熱処理または成膜処理を真空ではなく常圧で行うことを可能にし、製造コストを押し下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、基板に膜を形成して作製するデバイスの中には、その基板が1m級の大型のものがある。例えば、ガラスや樹脂、金属シートの基板を用いるデバイスがある。ガラス基板上に成長させた薄膜を具備したデバイスとしては、液晶表示デバイス(LCD)や有機EL(エレクトロミネセンス)表示デバイス、太陽電池等のいわゆる大面積電子デバイスである。
【0002】
薄膜はいずれのデバイスにおいてもアモルファス膜や結晶膜、絶縁膜、導電膜、保護膜として用いられる。これらの膜を形成するには真空チャンバーの中で低温に基板を保持して成膜可能なプラズマ化学気相成長(CVD)の膜が用いられる。この膜はプラズマ分解で生成されるガス種を吸着しながら成長するので水素や酸素などの希望しない不純物を含み、吸湿もしやすく緻密性で劣る。
【0003】
これを改良するために、プラズマのビーム(先行特許文献1参照)やレーザー光でアニールして不純物を除去するする技術がある。また,絶縁膜であるなら減圧を用いる化学気相成長(CVD)が確立された方法であるが減圧を用いるので装置が高価になる。このために、別の方法で基板上に形成した膜を加熱する方法が取られる。例えば、目的の膜材料を溶かした溶液状のものを回転塗布(スピンオンと言う)やスリット塗布、スプレー塗布などの方式で基板に成膜して、それを200〜500℃で加熱して成膜できる材料がある。
【0004】
絶縁膜としては、例えば有機ポリマーや無機のポリマー、またはこれらの混合したポリマー塗布膜がある。導電膜としては、例えばAlの入ったZnO膜の塗布膜がある。銅(Cu)や銀(Ag)の微粒子を分散材で囲い、それを溶剤に溶かして塗布する金属塗布膜がある。結晶膜としては、例えば化合物半導体であるカルコパイライト結晶CIGS(Cu,In、Ga,Seの化合物)やkesterite結晶 (Cu―Zn―Sn―S―Seの化合物)の塗布膜がある。これらの塗布膜は10cmから2mくらいの基板の上に塗布して用いたい。
【0005】
安価に製造するために基板がガラスであったり耐熱樹脂であったりする。これらの膜は基板の温度を上げることによりその上に塗布された膜をアニールして用いる。しかし基板が1mないし2m、またはそれ以上に大きい場合、一様に均一に基板温度を上げることは困難である。例えば炉の中でアニールするとき、数時間の時間が許されるならば基板のいたるところで温度の違いが起きない。この対応では、単位時間当たりの生産枚数が低下するという課題が生じる。
【0006】
基板が耐熱性に劣る樹脂である場合には特にアニールは困難である。プラズマジェットやレーザーを用いて基板を低温に維持したままアニールすることが提案され行われているが、大面積の基板では生産性に劣るという課題がある(特許文献1,2参照)。
【0007】
本発明は真空やプラズマを用いないで空気を遮断しながら大面積基板の上に電子デバイスを安価に作製する技術に関する。例えばガラス基板の上に塗布した材料のアニールに関する。例えばガラス基板の上に結晶材料を化学気相成長させる技術に関する。特に大型のガラス基板に塗布したシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、導電膜、または多元の化合物膜等を含む塗布膜をアニールして膜を改質する装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−06130号公報
【特許文献2】特開2006−278625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子デバイスに用いる良質の材料を形成するには大気を遮断する必要がある。安価に製造するために、重たい大型の基板を用いそれを移動搬送しなくてはならない。安価にするために真空をつかわず、大気圧下で行いたい。
【0010】
真空を用いると装置が大型になり、搬送を含めた構造が複雑となり設備コストが高い。均一な膜形成のためには大型の基板を均一に加熱する必要あるのだが、それを短時間に行わねばならない。
【0011】
一般的には基板を加熱するには炉を用いる。炉では雰囲気のガスから熱を伝えるので、一枚いれても多数枚いれても基板の周辺と中心部では温度の上がり方が違う。また、周辺と中心の温度が限界を超えて異なるとガラスならば、割れる。これを回避するために時間をかけてゆっくり温度を上げなくてはならない。これには生産性の低下のほかに、他の工程のタイミングと合わないという課題がある。
【0012】
安価に膜形成するには基板に塗布した膜をアニールする方法がある。また、純度の高い膜を得るにはガスを加熱分解する化学気相成長がある。どの方法も空気を遮断して行う必要があるが、空気遮断のために真空を用いたくない。以上のように、重たい大型基板の上に膜を形成するには、基板を容易に支え、安価に移動や搬送すること、大気を遮断すること、均一に加熱すること、これらを同時に解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1に課題を解決する本発明の基本構造を示す。基板11がサポートローラー12の上に置かれてある。基板11の上下には、上部気密ガス吹き出しプレート13と下部気密ガス吹き出しプレート14が置かれている。気密ガス導入口15から高温に加熱された加圧のガス、即ち高温加圧気密ガス上16が導入される。
【0014】
同じく、下からは高温加圧気密ガス下17が導入される。上部気密ガス吹き出しプレート13のガス吹き出し面には吹き出し溝18が形成されてある。吹き出し溝18には吹き出し孔19を通じて高温加圧気密ガスが吹き出される。孔は例えば0.5mm以下の小さい孔であり溝当たり1個であっても十分である。孔19からは圧力は伝わるが流量は孔19のサイズで制限される。
【0015】
孔サイズで流量が制限されるので、設計した流量しかガスは流れない。下部も同様である。この上下の吹き出しプレート13,14の間に基板11がある。基板11が上に押されると、上部のプレート13と基板の隙間が小さくなり、圧力が上がる。圧力が上がると押しもどされる。
【0016】
下部に対しても同じである。基板11は、上部と下部の気密ガス吹き出しプレート13,14間の空間に保持される。プレート13,14と基板は触れないので、これは接触摩擦の無いベアリング機構として作用する。重たい大型の基板であっても2つのガス圧力で支えられる。接触摩擦がないので基板を動かすことが容易に可能である。
【0017】
加圧であるのでガスはプレートと基板の間の隙間を通して大気圧の雰囲気にむかい漏れていく流れができる。この流れが大気の進入を遮蔽する。導入ガスは加圧であると同時に高温に加熱されているので、気密ガス吹き出しプレート13,14と共に基板を加熱する。到達温度は吹き出しプレートと基板の放熱と高温加圧気密ガスによる熱の伝達のバランスできまる。
【0018】
断熱材などの保温断熱機構を付加することにより、またヒーター加熱を追加することにより、所望の温度に基板を加熱することが可能である。以上のように上下に配置された高温加圧の気密ガス吹き出しプレート13,14は1)基板を無接触で支えること、2)容易に基板を移動搬送すること、3)基板表面を空気から遮断すること、4)基板を加熱すること、の4つの機能を持つ。
【0019】
図2は基板11を動かさない場合の例である。この場合基板11を載せる基板支持台21が固定されてある。基板支持台21にはヒーター22が備えられ、基板11を加熱できる。基板11の上には気密ガス導入口25から高温に加熱された加圧のガス、即ち高温加圧気密ガス上26が導入される。
【0020】
気密ガス吹き出しプレート23のガス吹き出し面には吹き出し溝18が形成されてある。吹き出し溝18には吹き出し孔19を通じて高温加圧気密ガス上26が吹き出される。基板11と吹き出しプレート23の間の隙間を通り大気圧の方向に向かって加圧ガスは漏れて流れていく。内部と外部の圧力差があるのでこの流れは有効に空気を遮断する。この流れは高温であるので空気を遮断しながら基板11を表面から加熱する。
【0021】
基板11はヒーター22で加熱されているので、基板の表面と裏面は高温に加熱される。相対的に吹き出しプレート23が移動することで基板11を空気遮断しながら基板表面を移動できる。以上のように上に配置された移動できる高温加圧の気密ガス吹き出しプレート23は、1)固定された基板表面を空気から遮断しながら移動すること、2)同時に基板を加熱しながら移動できること、の機能を持つ。
【0022】
図3には基板11と気密ガス吹き出しプレート31の平面の模式図を示す。吹き出しプレート31は基板11を覆うように配置され、吹き出し溝18(図では見えない)は基板の移動方向と直角な方向に基板より大きい。基板はサポートローラー32の上にありプレートよりはみ出した部分で基板11を支える。基板11は高温加圧の気密ガス16,17で支えられているので、回転式の基板駆動装置33で移動できる。駆動装置33の回転接触部分は高温の基板に接触するので、耐熱性のある材料、例えば金属で構成する。
【0023】
図4に気密ガス吹き出しプレート41の溝構造の例を示す。図4(A)は気密ガス吹き出しプレート41の平面図である。気密ガス導入口42から高温の加圧ガスを導入する。高温のガスは高温に加熱された材料に垂直に衝突を繰り返す流路をガスが通り抜けることで生成させる。図4(B)は気密ガス導入口42を含むX1X1断面図である。吹き出し溝45には導入溝43と吹き出し孔44を通じて高温加圧ガスG40が漏れ出る。導入溝43はここでは一個であるが、枝に分岐していても、平面状に広がっていても良い。
【0024】
吹き出し孔44は例えば0.5mmの直径である。小さな孔であるので、孔の大きさで高温加圧ガスG40の単位時間当たりのガス流出量は制限される。即ち、圧力に依存した定流量でガスは漏れる。溝が基板により閉塞される方向に隙間が狭くなると圧力上昇する。従って孔を通して圧力が伝わる。基板と溝の隙間が十分に狭いとき、隙間に依存して漏れ出るガスの流量が決まる。このときの圧力は隙間制限領域にあるということができる。基板が離れて隙間が大きいと孔のサイズが制限する流量の漏れ流量となる。即ち、流量が制限されて加圧ガスが突出しないので、安全である。図4(C)に当該プレート41の裏面を示す。
【0025】
ここには溝形状の例が示されている。リング状の吹き出し溝46の中にライン状の吹き出し溝47が孤立して形成されてある。吹き出し孔44は複数用意されているが、連結された一つの空間を溝が形成するこの場合、1個でも良い。溝はプレートの変形圧力を考慮して、形や大きさ、リング状とライン状の組み合わせなど自由に設計できる。
【0026】
図4(D)はX2X2断面図である。当該プレート41では基板を大気から気密に遮断する使用温度領域により、材質を選択する。400℃までの温度ならアルミニューム等の金属が好適である。600℃までならステンレス鋼が使える。600℃以上では耐熱性の材料、例えばセラミクス、石英、カーボングラファイトなどが好適である。セラミクスとしてはSiCやAlNが好適である。高温ガスは当該プレートを加熱するが放熱により温度が低下するので、必要に応じて断熱材で断熱保温する。
【0027】
また必要に応じて加熱ヒーターを備えてプレート自身を加熱し所望の温度のガスが吹き出るように設計する。ここでは、吹き出し溝を設計して配置したが、溝を配置せず複数の孔を離散させて吹き出し面に配置して、孔からガスを吹き出させても良い。
【0028】
図5は複数の気密ガス吹き出しプレートを備えた高温加圧気密基板搬送ユニット50の断面模式図である。基板の上と下を区別して述べるときは番号のあとにそれぞれT,Bをつけて区別する。基板11の上下に気密ガス吹き出しプレート上51Tと気密ガス吹き出しプレート下51Bが配置されて高温加圧気密のプレートのペアPP1を形成する。
【0029】
左側から当該ペアをプレートペアPP1、PP2、PP3とする。基板は上下からプレートペアPP1,PP2,PP3で加熱されながら気密ガスG51T,G51BとG52T,G52BとG53T,G53Bに挟まれてある。プレートペアの温度はそれぞれに備えられた熱電対53で測定されて、その温度は制御されている。
【0030】
プレートペアの上に配置されたプレート温度はT51T,T52T,T53Tとし、下に配置されたプレート温度はT51B,T52B,T53Bと記した。それぞれの温度は独立に制御できる。上のプレートの温度と下のプレート温度は一致させて制御することも、異なる温度で制御することもできる。
【0031】
プレート51T,53Tに挟まれたプレート52Tとプレート51B,53Bに挟まれたプレート52T、52Bは加熱ヒーター55T,55Bを備えている。加熱ヒーター55により、基板に近い場所で吹き付けるガスの温度を任意に制御する。加熱ヒーター55により、左右のプレート51,53の温度T51、T53より挟まれてあるプレート52の温度T52を高くすることができる。例えば、上下のプレートが同じ温度に制御された当該基板搬送ユニットに基板が左から挿入されて移動するとき、基板は低い温度のT51を通過し、次に高い温度のT52を通過し、再び低い温度のT53を通過する。即ち、基板を低い温度から加熱し、中間で高い温度で加熱し、再び低い温度で取り出せる。
【0032】
プレートに入れるガスの圧力は、流量とともにプレートのガス吹き出し面と基板の隙間の間隔を決める。基板の材質や重さなどを考慮して最適に制御する。また圧力差はガスの流れの方向を決める。この場合、中心のプレート52から左右のプレート51,53に向かってガスの流れを作るときは中心にあるプレート52のガス圧力を左右のプレート51,53のガス圧力より高く設定する。上下のガス圧力差は基板を上下に変形または反らせる圧力になる。この変形を防止するには上下のプレートに入れるガスの圧力は同じにすることが望ましい。
【0033】
プレートに入れる高温加圧気密ガスは不活性ガスである。不活性ガスとしては窒素やアルゴンである。温度によっては空気でも良い。空気のとき、乾燥させた空気でも水分を加えた空気でも良い。当該基板搬送ユニットで搬送したとき、基板11は加熱される。膜を形成した基板11を搬送したとき、膜は加熱されて膜からガスが放出することがある。この放出ガスはプレートに入れた高温加圧気密ガスとともにプレートから流れ出る。この放出ガスが有害であることもある。また、高温加圧気密ガスに所望のガスを混入させて基板を加熱処理することも自由にできる。このとき、この混入ガスに燃焼性がある、または人体に有害な場合もある。
【0034】
プレートから吹き出たガスは当該装置から漏れないようにケースで覆い、ケースの中にあるガスを減圧状態で排気する必要がある。
【0035】
高温加圧気密ガスに混入させるガスとしては、1)酸化させる目的で酸素や亜酸化窒素,水などがある。また混入させるガスとしては2)基板表面をクリーニングする目的で塩素やフッ素を含むガス、例えばHCLやNF,HFなどがある。また混入させるガスとしては3)還元する目的で水素がある。また混入させるガスとしては4)不純物を拡散させ半導体をドーピングする目的で5族または3族の元素を含むガスとして例えばPOClやフォスフィンPH,ジボランB、トリメチルアルミニュームTMAlなどがある。また混入させるガスとしては5)反応させて化合物を作る目的で、6族の元素を含むガスとしてセレン化水素HSeや硫化水素HSなどがある。ここでは、プレートペアが3つある例を示したが、目的や基板の大きさに合わせてその数は自由に選べる。
【0036】
図6(A)に基板を高温ガスで熱処理する、またはガスから膜を形成させるガス処理部を内部に備えるガス処理ユニット60の断面模式図を示す。基板11の上に気密ガス吹き出しプレート61、63と高温加圧気密ガス吹き出しリング62で囲まれたガス処理部64が断熱材65を介してケース66に収納されてある。当該プレート61,63の温度はT61,T63である。当該吹き出しリングの温度はT62Rである。数字あとのRはリングの意味である。断熱材65は空間でも良い。
【0037】
高温加圧気密ガスG67は高温加圧気密ガス吹き出しリング62に導入される。各プレートにヒーターを組み込み再度導入したガスを加熱して温度を制御しても良い(図6では当該ヒーターは示してない)。処理ガス68は排気口69と通じて排気される。当該ガス処理ユニット60をガス吹き出し面側から見た平面図を図6(B)に示す。
【0038】
リング状の高温加圧ガス吹き出しリング62から吹き出たガスは外部に漏れてリングの内部を大気から遮蔽する。高温であるので、基板表面は当該ガスで加熱される。ガス処理部64には処理ガス68が導入されて基板表面に当たったあと排気口69から排気される。処理ガス68は例えば加熱されて熱分解し、膜を形成するガスである。
【0039】
熱分解するガスとしては、シランやゲルマンガスがある。2種類の互いに化合するガス系を導入して化合物を形成させても良い。それらのガス系としては例えばシランと酸化ガス(酸素やNOなど)の系、シランと窒化ガス(NHなど)の系、Ga-Al-In-N化合物半導体を成長させるガスの系、例えばトリメチルガリュームTMGaとトリメチルアルミニュームTMAlとトリメチルインジュームアミンTMIn:amineとアンモニアNH3などの系がある。また基板を加熱する目的であれば処理ガス68は不活性ガス、例えば窒素やアルゴンであっても良い。
【0040】
処理ガスはこのほか、1)酸化させる目的で酸素や亜酸化窒素,水であってよい。また処理ガスに混入させるガスとしては2)基板表面をクリーニングする目的で塩素やフッ素を含むガス、例えばHCLやNF,HFなどがある。また3)還元する目的で水素がある。また4)不純物を拡散させる目的で5族または3族の元素を含むガスとして例えばPOClやフォスフィンPH,ジボランBトリエチルアルミニュームなどがある。また5)反応させて化合物を作る目的で、6族の元素を含むガスとしてセレン化水素HSeや硫化水素HSなどがある。
【0041】
処理ガス68の温度は目的に合わせて吹き出しリング62の温度T62Rより高い温度にして導入する。また吹き出しプレート61、63の温度T61,T63の温度は吹き出しリング62の温度T62Rより低い。当該ガス処理ユニットは基板11の上を移動するので、基板は吹き出しプレートからのガスで加熱されガス処理されて、また冷える。図示してない基板の下の設置された下部ヒーターで基板11は加熱される。
【0042】
下部ヒーターは別の吹き出しプレートで構成し、そのガスで支持して加熱しても良い。また、下部ヒーターは移動方向に分割されたヒーターでも良い。ガス処理部が通過するとき、基板が反らないように下部ヒーターの温度はその通過とともに制御して変化させる。
【0043】
そして、請求項1に係る発明は、1気圧以上の加圧ガスが加熱されて高温加圧ガスとして片面から吹き出るプレートがあり、当該プレートと一定間隔で対向して基板があり、当該基板と当該プレートが相対移動する機構を備えてあり、当該プレートから吹き出たガスが基板の表面を通り基板とプレートの対向した領域の外に流れ出ることにより、基板の表面を大気から遮断し、同時に基板を加熱することを特徴とする基板の加熱と基板の移動と基板の大気遮断を同時に行う装置である。
【0044】
請求項2に係わる発明は,前記プレートが前記基板の片側の面に対向して複数個配置されてあることを特徴とする請求項1記載の装置である。
【0045】
請求項3に係わる発明は、前記プレートが前記基板の上下に配置されたペアプレートであることを特徴とする請求項1、2記載の装置である。
【0046】
請求項4に係わる発明は、前記プレートの温度が独立に制御できて、上下に配置されたペアプレートの温度を制御することを特徴とする請求項3記載の装置である。
【0047】
請求項5に係る発明は、前記プレートが少なくとも3個以上並べてあり、端に配置された2つのプレートの内部にあるプレートの温度が端に配置されたプレートの温度より高いことを特徴とする請求項2、3、4記載の装置である。
【0048】
請求項6に係る発明は、前記プレートが金属、石英、SiC、AlNを含むセラミクス、カーボングラファイト、またはこれらの組み合わせの材料で構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5記載の装置である。
【0049】
請求項7に係る発明は前記基板を移動させるために基板に接触する駆動装置が備えられていることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置である。
【0050】
請求項8に係る発明は前記高温加圧ガスが窒素、酸素、水素、アルゴン、水、空気のいずれか、またはこれらを2種以上含むガスであることを特徴とする請求項1ないし7記載の装置である。
【0051】
請求項9に係る発明は前記高温加圧ガスが塩素やフッ素を含むハロゲンガスを混合してあるガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置である。
【0052】
請求項10に係る発明は前記高温加圧ガスが5族の元素、または3族の元素を含むガスを混合した半導体ドーピングガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置である。
【0053】
請求項11に係る発明は前記高温加圧ガスが6族の元素を含むガスを混合したガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置である。
【0054】
請求項12に係る発明は前記高温加圧ガスが吹き出るとき、当該ガスが吹き出る複数の孔または複数の溝が当該プレートの吹き出る側に形成されてあることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置である。
【0055】
請求項13に係る発明は前記溝がリング状であることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置である。
【0056】
請求項14に係る発明は前記プレートが断熱材または断熱空間を介してケースに収納されて、当該ケースのガスを排気する機構を備えた請求項1ないし13記載の装置である。
【0057】
請求項15に係る発明は高温加圧気密ガスが吹き出すリング状の前記プレートを備え、当該吹き出しリングプレートの内部に基板表面に衝突させる加熱処理ガスを吹き出すガス処理部を備えたことを特徴とするガス処理ユニット装置である。
【0058】
請求項16に係る発明は前記ガス処理ユニットを挟むように前記高温加圧気密ガス吹き出しプレートを備え、当該ガス処理ユニットと基板が相対移動することを特徴とするガス処理装置である。
【0059】
請求項17に係る発明は前記加熱処理ガスが窒素、酸素、水素、アルゴン、水、空気のいずれか、またはこれらを2種以上含むガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置である。
【0060】
請求項18に係る発明は前記加熱処理ガスが塩素やフッ素を含むハロゲンガスを混合したガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置である。
【0061】
請求項19に係る発明は前記加熱処理ガスが5族の元素、または3族の元素を含むガスを混合した半導体ドーピングガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置である。
【0062】
請求項20に係る発明は前記加熱処理ガスが6族の元素を含むガスを混合したガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置である。
【発明の効果】
【0063】
本発明は特に大型のガラス基板の表面を廉価に熱処理する装置の発明である。
【0064】
請求項1〜5に係わる発明によれば、室温にあるガラス基板の表面を加熱処理して、また室温に取り出すときの障害を除くことが可能である。大型ガラス基板に偏った歪を発生させない。基板を横断してライン状に加熱するために基板の伸びはあるが割るような歪はでない。
【0065】
基板に接近して加圧ガスが表面を覆う効果は、大気の進入遮断である。真空装置を使い空気を遮断することは従来から可能であるが、大掛かりな装置となりコストが高い。本発明では常圧に向かい圧力開放するガスの流れで基板表面を大気から遮断できるので装置が簡単で廉価になる。また下のプレートから温度を制御した加圧ガスを吹き出し、また上のプレートからも同ガスを吹き出すことにより、大型ガラス基板を無接触で浮上させる。即ち高温でエアベアリングする。無接触であるので、移動は容易である。
【0066】
加熱された高温ガスは基板を急速に表裏同じ温度で加熱するので、基板を反らせない。即ち、重たい大型ガラス基板を反らせずに、加熱してまた取り出せる1)高温加熱,2)搬送移動、3)大気遮断の3つを同時に行う装置を本発明は提供する。
【0067】
請求項6〜8に係わる発明によれば、室温から1000℃、またはそれ以上の温度まで基板を加熱、搬送移動、大気からの遮断が可能となる。グラファイトを使えば、温度の上限は2000℃以上までも可能となる。グラファイトであれば加熱は誘導加熱でも良い。
【0068】
請求項9〜11に係わる発明によれば、高温加圧気密ガスの中に活性なガスを混入させることで、加熱以外の化学処理を行うことが可能である。ガラス基板の上のアモルファスシリコンであれば、まず800℃で加熱すると結晶化する。これにリンを拡散させるときはPHのガスを窒素に混入させて再び加熱する。基板の表面の汚れなども水を含む窒素で600℃の加熱処理で清浄にできる。
【0069】
請求項12〜14に係わる発明によれば、基板の大きさや温度に依存する強度に合わせて、基板にかかるガスの圧力と大気遮断の効果を設計できる。プレート自身の温度依存の強度も考慮して溝は設計する。毒性の高いガスを用いるときは安全な排気を設計する必要がある。
【0070】
請求項15〜20に係わる発明によれば、ガラス基板の表面にある膜の熱処理をより安全にできる。即ち、熱処理する空間部分を高温加圧気密ガス吹き出しリングで囲い、このガスとは別のガスを当該リングで囲まれた空間に加熱した処理ガスとして導き、基板に衝突させる。排気は別途に設け、排気口から行う。こうすることで、大気遮断はより完全になる。排気口は減圧にすることで、導入した処理ガスはさらに完全にここから排気される。本発明では化学気相成長(CVD)も可能となり、酸素に敏感なシランガスの分解によるポリシリコンのガラス上成長が可能となる。毒性の強いガスの使用も可能である。例えば、CIGS半導体のセレン化水素処理も可能となる。
【0071】
以上、本発明は重量のある大型の基板の加熱、搬送移動、大気遮断、膜形成を容易にさせる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は基板の高温加圧気密搬送ユニットの断面の基本模式図である。基板は上下に配置された気密ガス吹き出しプレートから吹き出す高温加圧気密ガスで支持され、閉じ込められて、また加熱される。
【図2】図2は基板の高温加圧気密ユニットの断面の基本模式図である。基板が固定されていて、基板の上に配置された気密ガス吹き出しプレートが相対的に移動する。基板は加熱されるとともに、表面は大気から遮蔽される。
【図3】図3は基板と気密ガス吹き出しプレートの平面の模式図である。気密ガス吹き出しプレートは基板より大きく横断する。基板は高温のガスで支持されて回転駆動装置で移動する。
【図4】図4(A)は気密ガス吹き出しプレートの平面図である。図4(B)は吹き出しプレート41のX1X1断面図である。高温加圧気密ガスが導入されて高温ガスが流れ出る。図4(C)は図4(A)の気密ガス吹き出しプレートの裏面図である。吹き出し溝の例が示されている。図4(D)は図4(A)の気密ガス吹き出しプレートのX2X2の断面図である。
【図5】図5は複数の気密ガス吹き出しプレートを備えた高温加圧気密基板搬送ユニットの断面模式図である。基板は上下に配置した気密ガス吹き出しプレートからの高温加圧気密ガスで支持されると同時に加熱されて、大気から遮断されて移動する。
【図6】図6(A)はガス処理ユニットの断面模式図である。高温加圧気密ガス吹き出しリングがあり、それに囲まれてガス処理部がある。ガス処理部では所望の処理ガスが基板に衝突して排気口から排気される。所望のガスを選ぶことで大型基板の表面をガス処理する。図6(B)はガス処理ユニットのガス吹き出し面側からみた平面模式図である。基板との隙間からガスが漏れでる。基板は吹き出すガスで支えられる。
【図7】図7は高温加圧気密ガスによる大気遮蔽機構を備えたCVD装置の断面模式図である。基板は大気から遮蔽されて搬送され同時に化学気相成長(CVD)の処理がされる。
【図8】図8(A)はCVDユニットの断面図である。リングプレートから加熱されたガスが基板を大気から遮蔽し、同時に加熱する。加熱されたCVDガスが遮蔽された基板表面に衝突する。図8(B)はCVDユニットのX2X2断面図である。加熱されるCVDガスが、ここでは3箇所から導入されて基板に衝突し膜を形成する。当該ユニット部で膜形成された基板は移動し搬送される。当該ガスは基板表面側から排気ポートを通じて排気される。
【図9】図9は高温加圧気密の基板遮蔽機構を備えたアニール装置の断面模式図である。基板は大気から遮蔽されて搬送され同時にアニールの処理がされる。アニールユニットが2つの高温加圧気密ガス吹き出しプレートに挟まれて備えられている。
【図10】図10(A)はアニールユニットの断面模式図である。リングプレートからの加熱されたガスが基板を大気から遮蔽し、同時に加熱する。ヒートビーム発射器からの加熱されたガスが遮蔽された基板表面に衝突し基板を加熱する。図10(B)はアニールユニットのX3X3断面図である。加熱されるアニールガスが、ここでは3箇所から導入されてガス加熱器で加熱される。加熱された当該ガスはヒートビーム発射器より基板に衝突し基板をアニールする。当該ユニットでアニールされた基板は移動し搬送される。当該ガスは基板表面側から排気ポートを通じて排気される。
【図11】図11は搬送のためのサセプタ基板である。デバイス基板がサセプタ基板に載せられ、CVD処理またはアニール処理される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、これら添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付した。
【0074】
実施例1を図7で説明する。基板11が支持台70に置かれてある。支持台70には断熱材77で断熱されてゾーンヒーター75が備えられている。各のゾーンヒーター75には熱電対TCが備えられ、n番ゾーンヒーター75nの温度T75nが測定されて、温度が制御される。基板11は汚染防止のための変形しない板76の上に置かれる。基板11の上に化学気相成長(CVDという)ユニット72と高温加圧気密ガス吹き出しプレート71と73がある。当該ガス吹き出しプレート71,73には高温の加圧ガスG71,G73が導入されて、当該プレートを加熱する。各プレートにはヒーター74が備えられて、プレート71,73の温度T71T,T73Tを任意に制御できる。当該プレートの吹き出し溝45に吹き出し孔43を通じて当該高温加圧ガスが漏れ出る。
【0075】
漏れた当該ガスはプレートと基板の空隙を通り外にでる。当該ガスは熱を基板に伝えるので、基板は裏のゾーンヒーター75と当該ガスで加熱される。空隙を流れ出るガスは大気の侵入を遮断して基板表面を大気から遮断する。即ち当該ガスが基板11の表面を密閉する。
【0076】
ガス吹き出しプレート71,73は放熱するので、放熱を防止する断熱材77が備えられ、ユニットケース78に収納されている。断熱材77は熱設計によっては空間でも良い。ユニットケース78には排気ポート79が備えられユニットケース78の中を排気できる。吹き出しプレート71,73と基板の距離は高さセンサーS70で測定されて制御される。
【0077】
CVDユニット72にはCVDのためのCVDガスG70が導入される。例えばシリコン膜を成長させるとき当該ガスはシラン、ドーピングガスを含むキャリアーガスである。ユニットケース78は基板の上を移動する。移動するときゾーンヒーター75の温度はCVDユニットの位置にあわせて変化する。CVDユニットがn番目のゾーンヒーター75nの上を通過するとき、ゾーンヒーター75nの温度T75nが高い温度になり、遠ざかると低い温度に制御される。
【0078】
動作を説明するために、CVDユニット72の構造を図8に示す。従来のCVDの装置においては、ガスは加熱せず基板を加熱する。本発明では基板を加熱する以外にCVDガスも加熱する。
【0079】
図8(A)にCVDユニットの断面を示す。CVDガス導入口81よりCVDガスが導入される。CVDガスシャワープレート82はシャワーヒーター83で加熱されて、熱電対84で測定されるその温度T80は制御されてある。断熱材85で放熱を抑制してシャワープレート82の温度を制御する。
【0080】
シリコンを成長させるときシランガスをCVDガス導入口81から導入する。シランとしてモノシランを使用するときはその温度はキャリアーガスの流量に依存するが、例えば500〜580℃が適切である。ターシャルブチルシランを用いるときは540℃以下に制御できる。基板80に衝突しシランは基板80からも加熱されて、熱分解しシリコン膜を基板の上に成長させる。
【0081】
基板80はガラスである。ガラス基板80はゾーンヒーター75で加熱されていて、表と裏の温度を近付けて反らせないように制御する。基板80とシャワープレー82との間を通りぬけて、反応したあとのガスは2つの排気ポ−ト86,87から排気される。シャワープレート82の周囲にはリング状の吹き出し溝88を備えた高温加圧気密ガス吹き出しリングプレート89が備えられてある。
【0082】
リングプレートに導入する高温加圧気密ガスG80Rは不活性ガス、ここでは、窒素である。吹き出し孔44を通じてリング状吹き出し溝88から高温に加熱された窒素ガスが漏れ出る。当該気密ガスは基板の表面と当該リングプレートの空隙を通り、シャワープレート82の側にもリングプレート89の外にも流れ出る。リングプレート89の外に向かう流れは、外部大気の流入を阻止するように作用する。シャワープレート側に向かう内向きの流れはCVDガスの流出を阻止するとともに、薄めて排気ポートに向かう流れを作る。流線は互いに横切らないので、薄める流れはシャワープレート直下のCVDの反応空間を囲うので、器壁にシリコン膜が付くのを阻止するように作用する。
【0083】
リングプレート89の温度T80Rはリングプレートヒーター83Rで制御する。図8(A)のX2X2断面を図8(B)に示す。リングプレート89の温度T80Rはシャワープレートの温度T801、T802,T803より高く設定する。高く設定することで、流路を形成する器壁には膜状に膜が形成されて、粉を生成しない。
【0084】
シャワープレート82には、この場合3つのCVDガス導入口81が備えられ、対応する3つの熱電対84で測定されるシャワープレートの温度T801,T802,T803は3つの異なるシャワープレートヒーター83で制御される。導入するCVDガスG801,G802,G803は同じ組成であっても異なる組成に制御しても良い。
【0085】
排気ポート86.87はリングプレート89に接続されて加熱されている。排気ポート86,87は加熱されているので、排気ポートには粉の生成が起きにくい。流路に沿って温度が高くなるよいに、温度を制御することは、粉の生成を抑制するように作用する。ここでは、CVDガスとしてシランの例を示したが、化合物を生成するガスを選ぶことができる。GaとInとAlとNとMgの元素で構成する化合物を成長させるときは、キャリアーガスとしての窒素または水素のほかに、TMGa,TEGa,TMAl,TMIn,TMIn:amine,
Cp2Mg,NH3のガスの中から選ぶ。
【0086】
実施例の2を図9に示す。図9は高温加圧気密の基板遮蔽機構を備えたアニール装置の断面模式図である。基板はガラス基板91である。ガラス基板91の表には高温加圧気密ガス吹き出しプレート92T1,92T3があり、その裏面には高温加圧気密ガス吹き出しプレート92B1,92B2,92B3がある。
【0087】
吹き出しプレート92T1と92T3に挟まれてアニールユニット93がある。高温加圧気密ガス吹き出しプレートの温度はプレート別に備えられた熱電対94で測定されて、その温度はT91T、T93T,T91B、T92B,T93Bである。それぞれのプレートには高温加圧気密ガスG91T,G93T、G91B、G92B、G93Bが導入されて、各プレートの溝から漏れ出て基板に当たる。
【0088】
当該気密ガスは窒素である。当該気密ガスはその他の不活性ガス、アルゴンなどでも良い。また当該気密ガスは還元性のある水素や酸化作用のある酸素発生ガスを含んでいても良い。また当該気密ガスは水分やニ酸化炭素を含んでいても良い。また当該ガスは空気でも良い。
【0089】
アニールユニット93とプレート92は断熱材96を介してステンレス製のケース97に収納されている。当該ケースには排気ポート98が設けられ、排気ができる。当該高温加圧気密ガスと接する材料は使用するガスや化学作用、到達させる温度などによって、選択する。当該材料はアルミニュームやステンレスの金属、石英、セラミクス、あるいはこれらの複合材料から選べる。ここでは、プレート92T1、92T3,92B1、92B3はアルミニュームで構成される。プレート92B2はステンレス製である。
【0090】
プレート92B2にはヒーター線によるヒーター99が備えられ、加熱できる。各プレートから吹き出た高温加圧気密の窒素ガスはガラス基板91の温度を上げるとともに、基板をプレートから離して浮上させて支える。
【0091】
当該窒素ガスはプレートと基板の隙間を通じて流れ出て、大気の進入を防止する。即ち、当該プレートはガラス基板を1)ガスで加熱し、2)ガスで基板を支持し、3)基板表面を大気から遮蔽する。
【0092】
各プレートの温度T91T,T91B,T93T、T93Bを、例えば200℃、T92Bを350℃とする。ガラス基板を、それに接触して回転する回転基板送り機95で移動させる。特定の場所に注目すると、基板は次第に温度が上がり、中心部で350℃に到達して、再び低下する。
【0093】
アニールユニット93の断面模式図を図10(A)に示す。アニールガス導入口101からガスが導入されてガス加熱器100で加熱される。ガス加熱器100で加熱されたガスはパイプで導かれてヒートビーム発射器102に入る。放熱による温度低下を防止するために断熱材103が備えられてある。
【0094】
ヒートビーム発射器102にはヒートビーム発射スリット104があり,当該スリット104から加熱されたガスがビーム状に発射される。これをヒートビーム呼ぶ。発射されたヒートビーム109は基板105に衝突して、熱を基板105に与える。淀み層がないので、この熱伝達の効率は高い。ヒートビーム発射器102にはヒーター線106が備えられて、当該発射器の温度を制御できる。
【0095】
ヒートビーム発射器102は熱変形の少ないSiCをコートしたカーボングラファイトである。当該発射器102の材質はセラミクスや石英、金属であっても良い。当該ヒートビーム発射器が金属やカーボングラファイトのとき当該ヒーター線のかわりに誘導加熱のコイルが備えられていて、誘導加熱で加熱しても良い。当該発射器102の温度は熱電対で測定されてT100Tである。高温加圧気密ガス導入口107Rから高温加圧の窒素ガスが導入される。
【0096】
当該高温加圧気密ガスは目的や温度範囲に応じて選ぶ。当該ガスはその他の不活性ガスのArやHeであっても良い。また当該ガスは空気、水、二酸化炭素、水素を含むガスであっても良い。
【0097】
ヒートビーム発射器102の周囲にはリング状の吹き出し溝を備えた高温加圧気密ガス吹き出しリングプレート89が備えられてある。当該ガスは不活性ガス、例えば窒素である。吹き出し孔44を通じてリング状吹き出し溝88から高温に加熱された窒素ガスが漏れ出る。当該ガスは基板105の表面と当該リングプレートの空隙を通り、ヒートビーム発射器側にもリングプレートの外にも流れ出る。
【0098】
リングプレート89の外に向かう流れは、外部大気の流入を阻止するように作用する。ヒートビーム発射器102の側に向かう内向きの流れはヒートビームのガスの流出を阻止するとともに、薄めて排気ポートに向かう流れを作る。ここのリングプレート89にヒーターを備えても良い。
【0099】
アニールユニットのX3X3断面図を図10(B)に示す。ヒートビーム発射器102には、この場合3つのガス加熱器がH101,H102、H103が備えられ、対応する3つの熱電対108で測定されるヒートビーム発射器の温度はT101T,T102T,T103Tである。導入するアニールガスA101,A102,A103は同じ組成であっても異なる組成のガスであっても良い。排気ポート86,87はリングプレート89に接続されている。
【0100】
図11には搬送のためのサセプタ基板111を示す。ガラス基板でなく小型のウエハ基板をデバイス基板112とするとき、石英のサセプタ基板を用いる。デバイス基板112をサセプタ基板111の上におき、当該サセプタ基板を上記記述の基板として用いることにより、小型のウエハ基板の加熱処理、または膜形成処理が可能である。この場合小型のデバイス基板は円形シリコンである。小型のデバイス基板は矩形であっても良い。また小型のデバイス基板はガラスであってもサファイアー、SiCであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は1mを超える大型基板であっても、その表面を大気から遮蔽し、均一に加熱し、搬送し、膜形成する製造装置の構造を提供する。大型の基板を用いる太陽電池やフラットパネル表示装置の製造を容易にさせる。
【符号の説明】
【0102】
11 基板
12 サポートローラー
13 上部気密ガス吹き出しプレート
14 下部気密ガス吹き出しプレート
15 気密ガス導入口
16 高温加圧気密ガス上
17 高温加圧気密ガス下
18 吹き出し溝
19 吹き出し孔
21 基板支持台
22 ヒーター
23 気密ガス吹き出しプレート
25 気密ガス導入口
26 高温加圧気密ガス
31 気密ガス吹き出しプレート
32 サポートローラー
33 回転式基板駆動装置
41 吹き出しプレート
42 気密ガス導入口
43 導入溝
44 吹き出し孔
45 吹き出し溝
46 リング状の吹き出し溝
47 ライン状吹き出し溝
G40 高温加圧気密ガス
50 高温加圧気密基板搬送ユニット
51T,52T、53T 気密ガス吹き出しプレート上
51B,52B、53, 気密ガス吹き出しプレート下
54 熱電対
55T,55B 加熱ヒーター
G51T、G52T、G53T 高温加圧気密ガス
G51B、G52B、G53B 高温加圧気密ガス
T51T、T52T、T53T 上に配置されたプレート温度
T51B、T52B、T53B 下に配置されたプレート温度
PP1,PP2、PP3 プレートペア1、2,3
60 ガス処理ユニット
61 気密ガス吹き出しプレート
62 高温加圧気密ガス吹き出しリング
63 気密ガス吹き出しプレート
64 ガス処理部
65 断熱材
66 ケース
67 吹き出しリング
68 処理ガス
69 排気口
T61,T63 プレートの温度
T62R リングプレートの温度
G67 高温加圧気密ガス
70 支持台
71、73 気密ガス吹き出しプレート
72 CVDユニット
74 ヒーター
75 ゾーンヒーター
75n n番目のゾーンヒーター
76 変形しない基板
77 断熱材
78 ユニットケース
79 排気ポート
G70 CVDガス
G71,G72,G73 高温加圧気密ガス
S70 高さセンサー
T71T、T73T 上に配置されたプレート温度
T70R リングプレートの温度
T70T シャワープレートの温度
T75n n番目のゾーンヒーターの温度
TC 熱電対
80 基板
81 CVDガス導入口
82 CVDガスシャワープレート
83 シャワーヒーター
83R リングプレートヒーター
84 熱電対
85 断熱材
86、87 排気ポート
88 リング状吹き出し溝
89 高温加圧気密ガス吹き出しリングプレート
T80 シャワープレート温度
T801,T802,T803 シャワープレート温度
T80R リングプレート温度
G801、G802,G803 CVDガス
G80R 高温加圧気密ガスの窒素
91 ガラス基板
92T1、92T3 気密ガス吹き出しプレート
92B1、92B2、92B3 気密ガス吹き出しプレート
93 アニールユニット
94 熱電対
95 回転式基板送り機
96 断熱材
97 ケース
98 排気ポート
99 ヒーター
A90 アニールガス
H90 ガス加熱器
G91T,G93T 高温加圧気密ガス
G91B、G92B,G93B 高温加圧気密ガス
T91T,T93T プレートの温度
T91b、T92B、T93B プレートの温度
100
101 アニールガス導入口
102 ヒートビーム発射器
103 断熱材
104 ヒートビーム発射スリット
105 ガラス基板
106 ヒーター線
107R 高温加圧ガス導入口
108 熱電対
109 ヒートビーム
A101,A102、A103 アニ−ルガス
H101,H102,H103 ガス加熱器
T101T、T102T、T103T ヒートビーム発射器の各部温度
112 デバイス基板
111 搬送のためのサセプタ基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1気圧以上の加圧ガスが加熱されて高温加圧ガスとして片面から吹き出るプレートがあり、当該プレートと一定間隔で対向して基板があり、当該基板と当該プレートが相対移動する機構を備えてあり、当該プレートから吹き出たガスが基板の表面を通り基板とプレートの対向した領域の外に流れ出ることにより、基板の表面を大気から遮断し、同時に基板を加熱することを特徴とする基板の加熱と基板の移動と基板の大気遮断を同時に行う装置。
【請求項2】
前記プレートが前記基板の片側の面に対向して複数個配置されてあることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プレートが前記基板の上下に配置されたペアプレートであることを特徴とする請求項1、2記載の装置。
【請求項4】
前記プレートの温度が独立に制御できて、上下に配置されたペアプレートの温度を制御することを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記プレートが少なくとも3個以上並べてあり、端に配置された2つのプレートの内部にあるプレートの温度が端に配置されたプレートの温度より高いことを特徴とする請求項2、3、4記載の装置。
【請求項6】
前記プレートが金属、石英、SiC、AlNを含むセラミクス、カーボングラファイト、またはこれらの組み合わせの材料で構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5記載の装置。
【請求項7】
前記基板を移動させるために基板に接触する駆動装置が備えられていることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置。
【請求項8】
前記高温加圧ガスが窒素、酸素、水素、アルゴン、水、空気のいずれか、またはこれらを2種以上含むガスであることを特徴とする請求項1ないし7記載の装置。
【請求項9】
前記高温加圧ガスが塩素やフッ素を含むハロゲンガスを混合してあるガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置。
【請求項10】
前記高温加圧ガスが5族の元素、または3族の元素を含むガスを混合した半導体ドーピングガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置。
【請求項11】
前記高温加圧ガスが6族の元素を含むガスを混合したガスであることを特徴とする請求項1ないし8記載の装置。
【請求項12】
前記高温加圧ガスが吹き出るとき、当該ガスが吹き出る複数の孔または複数の溝が当該プレートの吹き出る側に形成されてあることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置。
【請求項13】
前記溝がリング状であることを特徴とする請求項1ないし6記載の装置。
【請求項14】
前記プレートが断熱材または断熱空間を介してケースに収納されて、当該ケースのガスを排気する機構を備えた請求項1ないし13記載の装置。
【請求項15】
高温加圧気密ガスが吹き出すリング状の前記プレートを備え、当該吹き出しリングプレートの内部に基板表面に衝突させる加熱処理ガスを吹き出すガス処理部を備えたことを特徴とするガス処理ユニット装置。
【請求項16】
前記ガス処理ユニットを挟むように前記高温加圧気密ガス吹き出しプレートを備え、当該ガス処理ユニットと基板が相対移動することを特徴とするガス処理装置。
【請求項17】
前記加熱処理ガスが窒素、酸素、水素、アルゴン、水、空気のいずれか、またはこれらを2種以上含むガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置。
【請求項18】
前記加熱処理ガスが塩素やフッ素を含むハロゲンガスを混合したガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置。
【請求項19】
前記加熱処理ガスが5族の元素、または3族の元素を含むガスを混合した半導体ドーピングガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置。
【請求項20】
前記加熱処理ガスが6族の元素を含むガスを混合したガスであることを特徴とする請求項15、16記載のガス処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−187545(P2011−187545A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49235(P2010−49235)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】