説明

高精度電磁波回折測定装置

【課題】
X線など電磁波の回折法によるひずみ測定において、測定中に被測定物の移動や変形により電磁波照射位置が変化した場合に、照射位置のずれを補正し、回折によるひずみ測定を精度良くする装置を提供する。
【解決手段】
試験片の表面の高さを非接触式の距離センサで計測し、試験片位置の変化に応じて同じ位置になるようにステージを移動することで、測定中に試験片に応力を印加するなどしても電磁波の照射位置が同じになるようにする。電磁波照射中に試験片の表面高さを測定する機構と、試験片高さ位置を最初と同じ位置に移動する機構、回折電磁波の回折角を測定する機構を備え、電磁波照射位置を試験片表面の同一位置となるように補正できることから、表面位置変化による測定誤差を回避し、正確な回折角測定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等のエネルギー波である電磁波を被測定物(例えば、多結晶体材料)に照射し、被測定物から回折される電磁波の回折角を測定することで、被測定物を構成する元素成分や、被測定物に発生しているひずみを測定する測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の構成元素を調べる方法にX線回折法がある。規則的に整列した原子配列(例えば、結晶構造)や規則的な周期構造の原子または分子配列(例えば、高分子鎖の周期構造)を持つ被測定物にX線を照射すると、各原子から散乱したX線同士が干渉し、原子配列が密に配列する面(以下、格子面という)の間隔に応じた特定の方向に回折X線を生じる。このX線回折現象はブラッグ則で表され、格子面間隔d、X線波長λ、ブラッグ角θ、整数(例えば、1、2、3・・・)となる回折の次数n(nλが波長の整数倍を示す)の間で、2dsinθ=nλの関係が成り立つ。格子面間隔は物質の種類と物質の状態により固有の大きさを持ち、複数の格子面が存在する。被測定物に照射するX線の方向から、回折X線が発生する方向までの角度2θ(ブラッグ角の2倍)を回折角として測定すると、格子面間隔の大きさに応じ、複数の回折角の位置にX線強度分布のピークが現れる。
【0003】
上述した、回折角の測定において、被測定物が負荷を受け、伸展または縮小し、被測定物内部の格子面間隔dが変化すると回折角2θが変化する。この回折角の変化量から被測定物に発生している変形量(ひずみ)を測定することができる。
【0004】
被測定物の構成元素を正確に調べる際や被測定物に発生しているひずみを精度よく測定するためには、被測定物にX線を照射したときの、回折X線の回折角を精度良く検出する必要がある。
【0005】
回折角を測定する際には、X線検出器(例えば、シンチレーションカウンタ)を被測定物のX線照射位置を中心とする回転方向に走査し、X線強度の分布がピークを示す方向を探し、その方向の角度を回折角とする。
【0006】
図1に示すように、被測定物1の移動や変形により表面のX線照射位置が変化し、表面位置の誤差1aがある場合、及び表面に凹凸や曲率がある被測定物の測定箇所の変更に際しては、X線照射位置のずれ(例えば、回折面垂直方向に位置ずれ)が生じる。検出器の走査により得られる回折X線強度と角度のプロファイル1b上のピーク位置から決定される回折角の測定に誤差が生じ、格子面間隔があやまって測定される。この誤差により、ひずみの大きさに誤差が生じる。
【0007】
図2は被測定物に横向きに圧縮負荷を加えた際の、無負荷時の被測定物1cと負荷時の被測定物1dの表面の変形状態と回折X線の発生方向を示している。圧縮により、負荷方向と直交する方向には膨張が生じる。被測定物の膨張により、内部の格子面間隔が大きくなるため、ブラッグ則により回折角は小さくなる。この格子面間隔の変化に伴う回折角変化をΔθεとする。一方、被測定物表面の移動(図2中の上方向の移動)に伴い、被測定物に照射するX線が元の照射面より手前に照射され、回折X線の経路が平行移動する。この平行移動をΔLとすると、半径R離れた位置の検出器で検出する平行移動により生じる見かけ上の回折角変化ΔθLは、近似的にΔθL≒ΔL/Rとして測定される。この見かけ上の回折角変化の測定値Δθε+ΔθLから、ひずみ測定に関するΔθεを幾何学条件から近似的に推定ことは可能であるが、照射位置の移動に伴う測定中心のずれを補正することはできないことから、正確な回折角変化Δθεは得られない。
【0008】
このX線照射位置のずれの影響を低減するため、照射位置がずれた部分からの回折X線をX線検出器で検出しないように除去し、照射範囲内の特定の位置のみからの回折X線を透過させるためのスリット(例えば、ソーラスリット)がある。このようなスリットを介した回折角測定は平行ビーム法と呼ばれている(例えば、特許文献1)。
【0009】
しかしながら、ひずみが微小な場合など、回折角変化が小さいときには、スリットの幅よりも小さな回折角変化となるため、充分な精度で測定ができない。また、検出される回折X線がスリットを通過できる経路に限定されるため、ピーク位置を決定するために充分な回折X線強度が得られないことがある。
【0010】
被測定物のX線照射部を検出器の走査中心位置に合わせるため、長さの決まった接触子を回折X線装置から突出させ、先端を被測定物に接触させることで照射位置を確認する方法(以下、接触法という)がある。しかしながら、接触法では接触による被測定物の変形や破損の危険性が伴う。また、接触子がX線回折経路中に存在するため、回折X線測定時には撤去するか、窓の設置などにより回折X線経路を確保する必要がある。
【0011】
また、被測定物表面の位置合わせに顕微鏡画像の視野焦点(例えば、ピントの調整)を利用することもできる。顕微鏡の焦点による方法は非接触法であるため、被測定物の変形や破損の危険性は少ないが、照射面が顕微鏡観察可能な鏡面になっていること、表面に特徴となる微小な凹凸パターン(例えば、結晶粒境界やクラック)が存在する必要がある。さらに、照射中に画像を確認しながら、手動で位置を修正するか、高度な画像処理手法によるアルゴリズムを組み込んだ位置制御法の開発が必要になる。
【0012】
本発明が成される以前のひずみ測定法の従来例として、歯のひずみ測定が挙げられる。従来、歯のかみ合わせの診断には、図3のように、被験者101が紙や樹脂、シリコンなど変形可能な材料(例えば、咬合紙102)を噛んだ際の歯型103から、医師の経験により上下のかみ合わせを評価し、治療の診断をしていた。現在では、図4のように、被験者101が歯をかみ合わせた時の顎の咀嚼筋の筋力を、皮膚に貼り付けた筋電位測定電極104で検出し、筋電図測定装置105にて記録、分析する筋電図計測が導入されている。上記、測定によって得られた筋電図から筋力を推定し、左右の筋力の不均一性から、歯の片あたり等の状態を判断する手法である。しかしながら、どちらも間接的な測定であり、かみ合わせ時に歯にどの程度の負荷がかかっているかを判断することができず、適切な治療データの提供が困難である。
【0013】
X線回折法を患者の歯に適用することで、歯表面のひずみ分布が明らかになり、歯に作用する負荷状態を診断することが可能となる。ただし、従来のX線回折装置では、X線照射位置の変動をなくすため、測定中に患者が動かないように身体を完全に拘束する必要がある。
【特許文献1】特開2006−177731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、被測定物の移動や変形による表面の変動に合わせ、電磁波の照射位置を補正し、正しい回折角を測定できる技術を提供することを目的とする。加えて、補正のための位置検出の際に、測定対象に変形や破壊を生じさせず、正確なひずみ測定が可能な技術を提供することを目的とする。被測定物が物理的に変化する場合に起きる表面のひずみの変化を調べることにより、強度機能の低下などの物理的変形特性を知ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、被測定物の一表面に電磁波を照射し、被測定物から発生する回折電磁波を測定する装置であって、前記被測定物の一表面に所定の強度の電磁波を照射する照射手段と、前記被測定物の表面が移動した時に、電磁波照射位置の位置変化を計測する計測手段と、前記位置変化を補正し、電磁波照射位置が同一になるように被測定物と電磁波発生・検出装置の両方またはいずれかの位置を移動する移動手段と、前記移動手段によって補正された電磁波照射位置から発生する回折電磁波を検出する手段を備えたことを特徴とする電磁波回折測定装置である。
【0016】
請求項2の発明は、被測定物の一表面に電磁波を照射し、被測定物から発生する回折電磁波を測定する装置であって、前記被測定物の一表面に所定の光束の電磁波を照射する照射装置と、前記被測定物の表面が移動した時に、電磁波照射位置の位置変化を計測する計測装置と、前記位置変化を補正し、電磁波照射位置が同一になるように被測定物と電磁波発生・検出装置の両方またはいずれかの位置を移動する移動装置と、前記移動手段によって補正された電磁波照射位置から発生する回折電磁波を検出する装置を備えたことを特徴とする電磁波回折測定装置である。
【0017】
請求項3の発明は、前記電磁波照射位置の位置変化を計測するために、非接触式の距離センサを使用することを特徴とした、請求項1〜2のいずれか1項の電磁波回折測定装置である。
【0018】
請求項4の発明は、前記位置変化を補正するための移動手段に、電動モータを利用したアクチュエータを使用することを特徴とした、請求項1〜2のいずれか1項の電磁波回折測定装置である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜2のいずれか1項の電磁波回折測定装置により回折電磁波の回折角を測定し、金属、プラスチック、木材、セラミックス、複合材料などの工業材料のひずみ分布を測定する電磁波回折測定装置である。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜2のいずれか1項の電磁波回折測定装置により回折電磁波の回折角を測定し、歯表面のエナメル質のひずみ分布を測定する電磁波回折測定装置である。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜2のいずれか1項の電磁波回折測定装置により回折電磁波の回折角を測定し、骨及び歯の象牙質のひずみ分布を測定する電磁波回折測定装置である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか1項のひずみ分布測定において、外部から被測定物に負荷を与えることで被測定物内部にひずみ分布を与え、そのひずみ特性を知ることを特徴とした電磁波回折測定装置である。
【0023】
請求項9の発明は、請求項5〜7のいずれか1項のひずみ分布測定において、照射電磁波としてX線を利用することを特徴とした電磁波回折測定装置である。
【0024】
請求項10の発明は、請求項5〜7のいずれか1項のひずみ分布測定において、照射電磁波としてガンマ線を利用することを特徴とした電磁波回折測定装置である。
【0025】
請求項11の発明は、請求項5〜7のいずれか1項のひずみ分布測定において、照射電磁波としてレーザ光を利用することを特徴とした電磁波回折測定装置である。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明の構成によれば、被測定物の移動、変形、表面の凹凸により、照射位置がずれることで回折電磁波がシフトし、回折角の誤測定により、見かけ上のひずみが測定され、測定誤差を生じるが、回折電磁波の測定中に被測定物表面の照射位置の変化を補正することで、正確な測定が可能となる。
【0027】
また、請求項2の発明の構成によれば、被測定物または電磁波発生装置及び回折波検出装置を、電磁波照射位置を修正するように移動し、回折波発生位置のずれを補正し、正確な回折電磁波の測定が可能となる。
【0028】
また、請求項3の発明の装置によれば、被測定物の表面変化を非破壊的に検出し、電磁波の照射を妨げない回折電磁波の検出が可能となる。
【0029】
また、請求項4の発明の装置によれば、被測定物の照射位置補正のための、被測定物または電磁波発生装置及び回折波検出装置の移動を外部制御で行うことが可能となる。
【0030】
また、請求項5の発明の方法によれば、被測定物である工業材料のひずみを正確に測定することが可能となる。
【0031】
また、請求項6の発明の方法によれば、被測定物である歯表面のエナメル質のひずみを正確に測定することが可能となる。
【0032】
また、請求項7の発明の方法によれば、被測定物である骨及び歯の象牙質のひずみを正確に測定することが可能となる。
【0033】
また、請求項8の発明の装置によれば、被測定物にひずみを与え、被測定物のひずみ特性を測定することが可能となる。
【0034】
また、請求項9の発明の方法によれば、電磁波としてX線を利用することで、結晶格子の面間隔を利用したひずみ測定が可能となる。
【0035】
また、請求項10の発明の方法によれば、電磁波としてガンマ線を利用することで、結晶格子の面間隔を利用したひずみ測定が可能となる。
【0036】
また、請求項11の発明の方法によれば、電磁波としてレーザ光を利用することで、結晶格子よりも大きな2面間の間隔を利用したひずみ測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明における好適な実施の形態について、添付図を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0038】
本発明のひずみ測定装置の構成例を図5、図6に示す。本発明のひずみ測定装置は、前述の問題点を解決するため、被測定物1の表面を非接触式距離センサ3によって測定し、測定位置の位置ずれを図5のように、被測定物1を被測定物用駆動台5により移動することで補正する機構である。また、図6は測定位置の位置ずれを、X線発生装置2及び回折X線検出装置4をX線装置用駆動台6により移動することで補正する機構であり、回折X線角度の測定誤差を位置ずれの補正により解決したものである。
【0039】
図5に本発明における装置の構成を示す。本発明のひずみ測定装置は、被測定物1の一表面に所定の強度の電磁波を照射するX線発生装置2と、被測定物1の電磁波照射位置の位置変化を計測する位置測定手段3と、被測定物1と電磁波の相対位置を同一になるように被測定物1または電磁波発生装置2及び、X線検出装置4の位置を移動する手段5と、前記検出手段で発生する回折電磁波を検出するX線検出装置を備えたことを特徴とする回折法によるひずみの測定装置である。被測定物が負荷を受けると、被測定物の測定表面が変形されることになる。そこで、本発明の装置では、位置測定手段3により被測定物1の電磁波照射位置の位置変化を計測し、被測定物1の位置を移動させる手段5により、被測定物1と電磁波の相対位置を同一になるようにする。より具体的には、被測定物の変形が膨張による表面移動の場合(図1)、測定物1の位置を移動させる手段5により、測定物1を下方に移動することで、照射位置の高さを同一にする。また、図6のように、電磁波発生2、X線検出装置4の位置を移動する手段6により、被測定物1と電磁波の相対位置を同一になるようにしてもよい。
【0040】
図5及び図6のような構成において、位置測定手段である非接触式距離センサ3としては、レーザ光式変位計が挙げられる。非接触式であるから、被測定物に損傷を与える危険性が少ない。また、X線照射経路を遮蔽する影響もない。位置移動手段5及び6の駆動台としては、サーボモータまたはステッピングモータによる位置決めアクチュエータが挙げられる。なお、被測定物1としては、工業用材料や歯表面のエナメル質や骨や歯の象牙質といった生体材料が挙げられる。
【0041】
図7及び図8に歯を測定する際の機器構成を示す。被験者11は姿勢調整機構17を有する椅子の上に座り、頭を駆動型のヘッドシートアクチュエータ16に固定する。X線発生装置13と回折X線検出装置15は角度走査用の走査ガイド12上を、X線照射位置を中心とする円弧状に移動する。回折電磁波検出時の照射位置の変動は非接触式距離センサ14により測定され、位置情報として制御装置19に送られる。制御装置ではこの情報をもとに、位置補正量を計算し、ヘッドシートアクチュエータ16及び走査ガイド用アクチュエータ18に制御量を出力する。変動量が大きい場合や、変化が著しく測定が困難な場合には、制御装置からX線発生装置及び回折X線検出装置に制御信号(例えば、一時停止)を送信する。このような構成により、被測定物が動くような場合(例えば、ヒト)でも、ひずみを高精度に測定できる。
【実施例】
【0042】
(実施例1)次に、上述したひずみ測定法を活用した実施例として、摘出した歯のエナメル質のひずみ測定を説明する。歯の表層のエナメル質は95.%以上がハイドロキシアパタイト(以下、HApという)であり、歯の組織の強度特性はHAp結晶構造や結晶配向に依存する。また、エナメル質−象牙質といった構造特性が組織の荷重伝達に大きく関わる。このような歯の構造は局所的な応力集中発生の原因となり、歯の組織の損傷や破壊の原因となる。歯の組織に作用する応力分布がわかれば、治療評価や欠損予測といった診断技術に有益な情報となる。
【0043】
図9により示したものが、実施例のX線測定システムの概要である。被測定物であるヒトから摘出した歯試験片1eを圧縮した際の変形によるX線照射位置のずれを、変位計3eで計測し、被測定物用昇降駆動台5eで補正する。なお、図9における圧縮負荷方向は歯軸方向になる。また、負荷時の変形を確認するため歯表面にひずみゲージを貼り付けて、歯試験片1eを圧縮負荷治具に搭載する。
【0044】
図10に上述した歯のエナメル質の回折X線強度測定結果の一例が示されている。負荷条件として、ひずみゲージ読みにて圧縮0.200%を与えた際のハイドロキシアパタイト結晶格子ひずみを測定した。X線照射位置はひずみゲージ貼付け位置と異なる場所である。図10に圧縮負荷を増加させた際の(004)回折パターン変化の一例を示している。本例においては圧縮負荷により格子ひずみは引張方向(前述の格子面間隔が大きくなる方向)に増大し、0.067%を示した。本発明の機器構成により、歯牙試験片を負荷した際のエナメル質内HApの(004)格子ひずみを測定し、歯軸方向の圧縮負荷によって表面垂直方向に引張ひずみの発生が確認できた。
【0045】
以上の測定方法により、歯のエナメル質のひずみが測定できる。本システムを図7及び図8にて示したシステムで実行することで、ヒトの歯のひずみ分布の診断ができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば本実施例では、負荷による被測定物の表面移動を補正していたが、被測定物が自ら運動する場合の格子面間隔測定や、変位測定部を微小領域に絞ることで、表面に微小な凹凸を持つ被測定物の照射位置決定に用いてもよい。また、電磁波発生装置及び回折電磁波検出装置を固定する台が変動するような場合の測定においても、被測定物照射表面の相対的位置を補正することで、正確なひずみを測定することが可能となる。加えて、電磁波としてX線だけでなく、中性子線のように回折現象を持つ他の放射線に関しても同様の回折波測定装置を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】被測定物表面位置変化による回折X線発生方向変化の説明図である。
【図2】被測定物表面位置変化による表面移動が回折X線経路に与える影響の説明図である。
【図3】従来法である、咬合紙によるかみ合い状態の診断方法の説明図である。
【図4】従来法である、筋電位測定によるかみ合い状態の診断方法の説明図である。
【図5】照射位置を被測定物の移動により補正する機構の説明図である。
【図6】照射位置をX線発生装置及び検出装置の移動により補正する機構の説明図である。
【図7】本発明の装置構成にて、ヒトの歯の測定を行う装置を正面からみた説明図である。
【図8】本発明の装置構成にて、ヒトの歯の測定を行う装置を側面からみた説明図である。
【図9】本発明の実施例1を示す、被測定物をヒトから摘出した歯のエナメル質とした際の測定装置の構成である。
【図10】本発明の装置構成にて、負荷された歯のエナメル質の回折プロファイルの変化を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1 被測定物
1a 被測定物の表面位置の誤差(表面位置の誤差)
1b 被測定物からの回折X線強度と角度のプロファイル(回折X線強度と角度のプロファイル)
1c 無負荷時の被測定物
1d 負荷時の被測定物
1e 歯の試料
2,13 X線発生装置
3,14 非接触式距離センサ
3e 変位計
4,15 回折X線検出装置
5 被測定物用駆動台
5e 被測定物用昇降駆動台
6 X線装置用駆動台
11 被験者
12 X線回折装置用走査ガイド(走査ガイド)
16 ヘッドシートアクチュエータ
17 姿勢調整機構
18 走査ガイド用アクチュエータ
19 制御装置
101 かみ合い診断の被験者(被験者)
102 咬合紙
103 咬合紙をかむことで生じる歯型(歯型)
104 筋電位測定電極
105 筋電図測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の一表面に電磁波を照射し、被測定物から発生する回折電磁波を測定する装置であって、
前記被測定物の一表面に所定の光束の電磁波を照射する照射手段と、
前記被測定物の表面が移動した時に、電磁波照射位置の位置変化を計測する計測手段と、
前記位置変化を補正し、電磁波照射位置が同一になるように被測定物と電磁波発生・検出装置の両方またはいずれかの位置を移動する移動手段と、
前記移動手段によって補正された電磁波照射位置から発生する回折電磁波を検出する手段を備えたことを特徴とする電磁波回折測定装置。
【請求項2】
被測定物の一表面に電磁波を照射し、被測定物から発生する回折電磁波を測定する装置であって、
前記被測定物の一表面に所定の強度の電磁波を照射する照射装置と、
前記被測定物の表面が移動した時に、電磁波照射位置の位置変化を計測する計測装置と、
前記位置変化を補正し、電磁波照射位置が同一になるように被測定物と電磁波発生・検出装置の両方またはいずれかの位置を移動する移動装置と、
前記移動手段によって補正された電磁波照射位置から発生する回折電磁波を検出する装置を備えたことを特徴とする電磁波回折測定装置。
【請求項3】
前記電磁波照射位置の位置変化を計測するために、非接触式の距離センサを使用することを特徴とした、請求項1または2の電磁波回折測定装置。
【請求項4】
前記位置変化を補正するための移動手段に、電動モータを利用したアクチュエータを使用することを特徴とした、請求項1または2の電磁波回折測定装置。
【請求項5】
被測定物として工業材料を対象とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波回折測定装置。
【請求項6】
被測定物として歯表面のエナメル質を対象とし、表面の応力分布を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波回折測定装置。
【請求項7】
回折電磁波の回折角を測定し、骨及び歯の象牙質のひずみ分布を測定することを特徴とする請求項1または2に記載に電磁波回折測定装置。
【請求項8】
外部から被測定物に負荷を与えることで被測定物内部にひずみ分布を与え、そのひずみ特性を測定することを特徴とした、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の電磁波回折測定装置。
【請求項9】
照射電磁波としてX線を利用することを特徴とした請求項5ないし7のいずれか1項に記載の電磁波回折測定装置。
【請求項10】
照射電磁波としてガンマ線を利用することを特徴とした請求項5ないし7のいずれか1項に記載の電磁波回折測定装置。
【請求項11】
照射電磁波としてレーザ光を利用することを特徴とした請求項5ないし7のいずれか1項に記載の電磁波回折測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−137781(P2011−137781A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167(P2010−167)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】