説明

高負荷伝動ベルトおよびその製造方法

【課題】より短い時間で効率よく製造することができ、しかもブロックとセンターベルトとの間が強固に固定されており、ブロックとセンターベルトとの摩擦の発生やセンターベルトの切断などの問題を防止した寿命の長い高負荷伝動ベルトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】センターベルト3と、該センターベルト3の長手方向に沿って複数のブロック2を設けた高負荷伝動ベルト1において、センターベルト3はエラストマー4中に心線5をスパイラル状に埋設すると共に上下面の少なくとも片面に補強布6を有し、一方ブロック2は樹脂からなっており、ブロック2を構成する樹脂が前記補強布6の布目に食い込むことによってブロック2とセンターベルト3をアンカー固定してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを固定した高負荷伝動ベルトおよびその製造方法に係り、より短い時間で効率よく製造することができ、しかもブロックとセンターベルトとの間が強固に固定されており、ブロックとセンターベルトとの摩擦の発生やセンターベルトの切断などの問題を防止した高負荷伝動ベルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節する様な変速プーリに巻き掛けて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
【0003】
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた引張伝動式の高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心線をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトにボルトやリベットなどの止着材を用いてセンターベルトに使用しているエラストマーよりも比較的硬質のエラストマーからなるブロックを止着固定したものがある。
【0004】
このような引張伝動式の高負荷伝動ベルトに用いられるブロックの要求品質としては、上記のように摩擦伝動において高負荷の伝動を目的としているために、曲げ疲労性、耐摩耗性、耐熱性、剛性、耐衝撃性等の性質をバランス良く保有する必要がある。さらにプーリを摩耗させないようにすることも大切な要素である。
【0005】
これらの要求を満たす高負荷伝動ベルトとして、例えば、特許文献1に開示されているようなものがある。このベルトは、ブロックとプーリの接触する部分が、フェノール系樹脂成分にゴム成分が添加された樹脂成形材料によって、金属等によって形成されているインサート材を被覆した2重構造のブロックを用いたものである。
【0006】
また、特許文献1には、フェノール系樹脂にアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムをマトリックスとして炭素繊維及びアラミド繊維の2繊維を含む繊維質充填率25〜60重量部を配合させて、炭素繊維はオニオン構造を有し、結晶層厚が25〜200μmであるフェノール系樹脂を用いたブロックが用いられた高負荷伝動ベルトが開示されている。
【0007】
また、フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるために成形サイクルが長くなってしまうことやリサイクル性に劣るといった問題もある。
【0008】
そこで、特許文献2には金型内にセンターベルトを設置した状態で、熱可塑性樹脂を射出成形することによってブロックを成形するといったベルトの製造方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特公平7−110900号公報
【特許文献2】特開2003−202054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1のようなブロックを装着したベルトの製造はセンターベルトにブロックを一つ一つ嵌め込んでやるという作業をおこなわなければならず、製造には非常に手間がかかってしまう。それだけ製造コストの面では不利であり、価格の高いベルトとなってしまうといった問題があった。
【0011】
また、特許文献2ではセンターベルトを装着した金型に樹脂を射出してブロックを成形することにより、センターベルトに別途成形したブロックを装着するという行程を省くことができるので、製造コストを大幅に下げることができ、熱可塑性樹脂なのでリサイクル性にも優れている。
【0012】
しかし、キャビティ内に射出成形をしてこのようなロ字形状のブロックを成形した場合、
射出成形された樹脂はセンターベルトとの間で接着することはなく、ベルトを走行させその部分に力が加わることにより簡単に剥がれが生じる。そうするとブロックが微小振動を起こしてブロックとセンターベルトとの間で摩擦を生じて熱を発生したり、センターベルトの切断に至ったりするなどの問題がある。
【0013】
そこで本発明はこのようなブロックをセンターベルトに装着したタイプのベルトを製造するにあたり、ブロックとセンターベルトとの固定力を強固なものにしてブロックとセンターベルトとの摩擦の発生やセンターベルトの切断などの問題を防止した高負荷伝動ベルトおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題を解決するために本発明の請求項1は、センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルトはエラストマー中に心線をスパイラル状に埋設すると共に上下面の少なくとも片面に補強布を有し、一方ブロックは樹脂からなっており、ブロックを構成する樹脂が前記補強布の布目に食い込むことによってブロックとセンターベルトをアンカー固定してなることを特徴とする。
【0015】
請求項2では、補強布表面の凹凸深さが、補強布厚みの1/5〜4/5の範囲である請求項1記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0016】
請求項3では、センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトの製造方法であって、金型はセンターベルト保持部と、該センターベルト保持部に保持されたセンターベルトの所定位置に成形されたブロックが嵌合されるように配置したブロックを成形するためのキャビティを有しており、センターベルトを前記センターベルト保持部にセットした状態で金型内のキャビティに樹脂を射出することによって、上下ビーム部と左右の摺動部を有するブロックを成形すると同時にセンターベルトにブロックを取り付ける高負荷伝動ベルトの製造方法において、センターベルトの上下面の少なくとも片面には補強布を被覆しており、ブロックの成形する樹脂を金型内に射出する際に補強布の布目に流れ込ませてブロックとセンターベルトをアンカー固定してなることを特徴とする。
【0017】
請求項4では、補強布表面の凹凸深さが、補強布厚みの1/5〜4/5の範囲である請求項3記載の高負荷伝動ベルトの製造方法としている。
【発明の効果】
【0018】
ブロックを構成する樹脂をセンターベルトの表面に設けた補強布の目に流れ込ませてブロックとセンターベルトをアンカー固定することによって、ベルト走行中のブロックの振動やセンターベルトに対するズレの発生は防止され、摩擦による熱の発生やセンターベルトの切断といった問題を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の高負荷伝動ベルトの斜視図であり、図2は側面図である。また図3は本発明の高負荷伝動ベルトの製造方法に用いる金型の例を示す斜視図であり、図4は金型を開いたところから見た正面図である。図5は金型を閉じた状態で見た側断面図、図6は図5における別の例を示す側断面図である。
【0020】
本発明の高負荷伝動ベルトとは、例えば図1、図2に示すようなものであり、高負荷伝動ベルト1はエラストマー4内に心線5をスパイラル状に埋設すると共に上下面の少なくとも片面に補強布6を積層一体化してなるセンターベルト3と、このセンターベルト3の上面に所定ピッチで形成された凹部6に嵌合し、係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面2a、2bは、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3を引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0021】
ブロック2は、図1に示すように、上ビーム部11および下ビーム部12と、両側部13、14が一体的にセンターベルト3の周囲に形成されている。ブロック2の中央にはセンターベルト3を嵌めこむ開口部15を有し、開口部15内の上面および下面にはセンターベルト3の上面に設けた凹条部7と下面に設けた凹条部8に係合する凸条部16、17が形成されている。
【0022】
このようにブロックにセンターベルトを嵌め込んで形成するような高負荷伝動ベルトの製造するにあたり、図3および図4に示すように一対の金型30、31を用い、その金型30、31にはセンターベルト保持部32を有するとともに、一対の金型30、31が合さった状態でブロック2を成形するためのキャビティ33を形成するようになっており、センターベルト3を前記センターベルト保持部32にセットした状態で金型30、31内のキャビティ33に樹脂を射出する。センターベルト3には上下面のブロック2と嵌合する凹条部7、8の間に金型のセンターベルト保持部32と嵌合する凹部9、10を有しており、ブロック2を射出成形で成形する際にセンターベルト3の位置決めを行うようになっている。
【0023】
キャビティ33はセンターベルト保持部32にセンターベルト3を嵌め込んだ状態でセンターベルト3を取り囲むように配置されており、キャビティ33でブロック2を成形するとセンターベルト3にブロック2が凹条部7、8で嵌合された状態で成形されるようになっている。
【0024】
以上のような工程を経て、ブロック2を成形すると同時にセンターベルト3にブロック2を取り付けることができる。
【0025】
そして、本発明においてはブロックを射出成形する際に溶融した樹脂がセンターベルト3表面の補強布6の布目に流れ込んでそのまま冷却硬化することによって、ブロック2とセンターベルト3は流れ込んだ樹脂によって物理的にアンカー固定されるので、極めて強固に固定することができる。
【0026】
ブロック2とセンターベルト3のこていを強固にすることによって、今までベルトが走行する際に起こっていたブロックの微小振動をなくすことができ、それにより発生していた摩擦熱やセンターベルトの切断といった問題を防止することができ、より長寿妙な高負荷伝動ベルトとすることができる。
【0027】
本発明で用いることができる補強布6としてはアラミド織布、ポリアミド織布、ポリエステル織布などを挙げることができ、ブロックを成形する際に樹脂をその布目に流れ込ませてブロック2とセンターベルト3をアンカー固定するために、補強布表面の凹凸深さが、補強布厚みの1/5〜4/5の範囲の織布を用いることが好ましい。補強布表面の凹凸深さが補強布厚みの1/5未満であると樹脂が十分に流れ込むことができず固定力が小さくなってしまう、逆に補強布厚みの4/5を超えるような織布の場合は織布自身の強度が低くなってしまうので好ましくない。
【0028】
また、従来はこのような高負荷伝動ベルトの製造においてはセンターベルト3を製造し、別途ブロック2を製造した上でセンターベルト3にブロック2を一つ一つ嵌め込んでいく作業を行っており、特にブロック2をセンターベルト3に嵌め込んでいく作業に多くに時間をとられていたが、上記のような製造方法を採ることによって、ブロック2をセンターベルト3の所定位置に成形しているので、ブロック2を成形し終わった時点でブロック2はセンターベルト3に嵌め込まれた状態となるので、改めてブロック2をセンターベルト3に嵌め込むといった作業が不要になるので、製造に要する時間を大幅に短縮することができるものである。
【0029】
また、図5に示すように、金型30と金型31とはブロックの上ビーム部11及び下ビーム部12の中央にパーティングラインができるように分割面36を位置させている。このようにすることによってベルトが走行する際にプーリと接触するブロックの側面2a、2bを平滑な面に仕上げることができるので、ベルト走行初期の騒音や摩耗の問題を解消することができる。
【0030】
分割面36の位置は図5ではセンターベルト3の中央付近に位置させているが、ブロックの側面2a、2bを平滑に仕上げるということからすれば、図6に示すようにセンターベルト3の端に位置させることも可能である。そうすることによって金型31にセンターベルト3を挿入した状態でセンターベルト3が金型31から突出することがないので、金型30をあわせる際に突出したセンターベルト3が折れ曲がったり金型に引っかかって損傷したりするといったことがないので好ましい形態であるということができる。
【0031】
図4に示す例では、金型30、31に設けられたキャビティ33は5箇所であり、一度に成形できるブロックの数は5個である。よって5個のブロックを成形した後に金型から一度ベルトを取り外してブロック5個分を図4中の矢印方向に回転させて次の位置にブロック2を成形できるようにして再度金型30、31に装着し、次の位置に5個のブロック2を成形する。このような操作を繰り返してベルト全周のブロック2全部を成形してベルトが完成する。
【0032】
ブロック2を成形するキャビティ33以外のところではセンターベルトは固定する必要がなく、金型を閉じる時のベルトの逃げ場所としてベルトの概略形状よりやや広い通路34が形成されている。
【0033】
ブロックの成形が完了したら金型30、31を開いてブロック2を金型から脱型する。脱型には金型から突出するイジェクトピンを用いて行うのが便利であり、例えば図7に示すブロックのようにブロック2の傾斜した側面2a、2bの上下位置に垂直面部2cを形成してイジェクトピンを当接させる箇所としてもよい。
【0034】
このようなセンターベルト3にブロック2を取り付けた高負荷伝動ベルト1においてブロック2のピッチ(センターベルト3に取り付けるブロック2同士の間隔)は騒音の問題などに関与するものであり、ピッチが大きすぎると騒音が増すことになる。しかし、一方でブロック2の成形をする際のブロック間に存在する金型の厚みが薄くなりすぎると射出圧力によって金型が変形しブロック2の変形にもつながるので好ましくない。そこで、ブロック2とブロック2間の金型の厚みはブロック2の厚みの1/6〜3/2とする。ただし図2に示すように高負荷伝動ベルト1の全ブロックの内、一度に成形する数が数個であるなど一部の場合はより好ましくは1/2〜3/2とする。
【0035】
ブロック2とブロック2間の金型の厚みがブロック厚みの3/2をこえると、ブロックのピッチが大きくなりすぎてベルトの強度や騒音の問題が発生し、1/2未満では射出圧力によって金型の変形が発生してしまう。
【0036】
以上の説明ではブロック2は一度に5個を成形し、順送り的に全数を成形して高負荷伝動ベルト1を完成させているが、ブロック2の全数と同じ数のキャビティを有する金型を用いて一度に全部を成形しても構わない。
【0037】
金型に全ブロック数と同じだけのキャビティ33を設け、ブロック2の全数を一度に成形する場合には、各キャビティ33が全部隣り合って位置しており、各キャビティ33内の圧力が略一定になるのでブロック2間の金型の厚みは小さくても金型の変形は起こりにくくなる。そのためブロック厚みの1/6〜1/2の範囲で十分にブロックを成形することが可能になる。
【0038】
本発明に適用できる高負荷伝動ベルトは図1で示した例に限られることはなく、様々な形態を採ることができる。図8に示すベルトは図1に示すベルトとほぼ同じ形状を有しているが、センターベルト3の幅方向の中央にブロックを取り付けるのと同じピッチで貫通孔18を有しており、ブロック2が成形される際にその貫通孔18を通して樹脂が連結19されている。
【0039】
このようにセンターベルト3に設けた貫通孔18を通して上下でブロックを形成する樹脂が連結19されていることによって、ブロック2とセンターベルト3との固定力がより強固なものになる。ベルト1が長期にわたって走行を続けるとブロック2とセンターベルト3とのがたつきが発生し、それが原因でベルト1の騒音が大きくなったり、ブロック2の破損やセンターベルト3の切断したりといった故障につながることがあるが、ブロック2とセンターベルト3の固定力を高めることによってベルト1の寿命を長期化することができるものである。
【0040】
図8の例では一つのブロック2につきセンターベルト3に設けている貫通孔18の数は一つであるが、一つであることに限定されるものでなく、二つや三つといった複数の孔を設けることも可能である。
【0041】
このブロック2は合成樹脂素材のみからなっているものに限られず、センターベルト3にアルミニウム合金などの金属などからなるインサート材を装着してブロックを成形することも可能である。
【0042】
ブロックの樹脂として用いることができるのは、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の合成樹脂が用いられるが、中でも低摩擦係数で耐摩耗性に優れ、剛性があるとともに曲げに対しても弾力性を有しており、簡単に破損してしまうことのない樹脂がよく、ポリアミド樹脂、なかでもナイロン46が好ましいといえる。
【0043】
本発明では前述のようにブロックを形成する合成樹脂中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐磨耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0044】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例であるナイロン46と炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維がナイロン46の吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つナイロン46の有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。炭素繊維の中でも、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。また、炭素繊維と組み合わせてアラミド繊維を配合することによってブロックの靭性が向上し、耐摩耗性や、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0045】
ここで、使用されるPAN系炭素繊維は、熱可塑性樹脂と相性が良く、用いる炭素繊維の長さは1〜5mmのものが好ましい。1mm未満であると、ブロックの補強が十分になされず、また、5mmを越えると、樹脂との混練が困難になること、また、混練時に折れて短くなってしまうので好ましくない。
【0046】
また、前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。これらのウィスカを配合することによって成形時のそりや成形収縮の異方性が改良される。さらに、ブロック2の靭性、曲げ剛性等の強度についての異方性も低減することができ、かつ、摩擦係数が安定するため、耐摩耗性が向上する。
【0047】
また、酸化亜鉛ウィスカは、高比重、高剛性であるため、プーリとの接触時の振動を低減でき、ノイズの発生を小さくすることができる。なお、この酸化亜鉛ウィスカの配合量が少ない場合は、添加した効果が発現せず、多すぎると、混練できず、成形することが困難となる。
【0048】
このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性等の強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ、更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3に引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
【0049】
なお、これらの他に、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0050】
センターベルト3のエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心線5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。補強布6は前記のようにアラミド織布、ポリアミド織布、ポリエステル織布などを挙げることができる。
【0051】
なお、本発明にかかる高負荷伝動ベルトに用いられるブロックには、本実施形態に示した形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例としては、図1に示すよう高負荷伝動ベルトであり、ブロックに用いた樹脂材料としてはカーボン繊維を30質量%含有した46ナイロンであり、ブロックのピッチは4mmと5mmの混在ピッチである。そしてセンターベルトの上下面にはアラミド繊維からなり表面の凹凸深さが、布厚さの1/2の帆布を積層一体化しており、ブロック射出成形時に樹脂が布目に流れ込んでアンカー固定されているベルトとした。このベルトにおいてブロックの曲げ破壊荷重を測定するとともに走行試験を行った。走行試験の試験条件を表1に示し、夫々の試験結果を表2に示す。
【0053】
比較例としてはセンターベルトの上下面に積層する帆布として表面にゴムを被覆しており、ブロック射出成形時に樹脂が布目に流れ込まないようにして成形したベルトとした以外は実施例1と全く同様にしてベルトを作成した。このベルトにおいてブロックの曲げ破壊荷重を測定するとともに走行試験を行った。走行試験の試験条件を表1に示し、夫々の試験結果を表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果からわかるようにブロックを構成する樹脂をセンターベルト表面の帆布の布目に食い込ませたベルトとすることによってブロックの強度を向上し、更にベルト走行中の微小振動といった挙動を抑えることができ、ベルトの寿命も延ばすことができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトの製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】高負荷伝動ベルトの斜視図である。
【図2】高負荷伝動ベルトの側断面図である。
【図3】本発明の製造方法で用いられる製造装置の概要斜視図である。
【図4】金型を開いたところから見た正面図である。
【図5】金型を閉じた状態で見た側断面図である。
【図6】図7における別の例を示す側断面図である。
【図7】ブロックの別の例を示す正面図である。
【図8】高負荷伝動ベルトの別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3 センターベルト
4 エラストマー
5 心線
6 補強布
7 凹条部
8 凹条部
9 凹部
10 凹部
11 上ビーム部
12 下ビーム部
30 金型
31 金型
32 センターベルト保持部
33 キャビティ
34 通路
35 ゲート
36 分割面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルトはエラストマー中に心線をスパイラル状に埋設すると共に上下面の少なくとも片面に補強布を有し、一方ブロックは樹脂からなっており、ブロックを構成する樹脂が前記補強布の布目に食い込むことによってブロックとセンターベルトをアンカー固定してなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
【請求項2】
補強布表面の凹凸深さが、補強布厚みの1/5〜4/5の範囲である請求項1記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項3】
センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って複数のブロックを設けた高負荷伝動ベルトの製造方法であって、金型はセンターベルト保持部と、該センターベルト保持部に保持されたセンターベルトの所定位置に成形されたブロックが嵌合されるように配置したブロックを成形するためのキャビティを有しており、センターベルトを前記センターベルト保持部にセットした状態で金型内のキャビティに樹脂を射出することによって、上下ビーム部と左右の摺動部を有するブロックを成形すると同時にセンターベルトにブロックを取り付ける高負荷伝動ベルトの製造方法において、センターベルトの上下面の少なくとも片面には補強布を被覆しており、ブロックの成形する樹脂を金型内に射出する際に補強布の布目に流れ込ませてブロックとセンターベルトをアンカー固定してなることを特徴とする高負荷伝動ベルトの製造方法。
【請求項4】
補強布表面の凹凸深さが、補強布厚みの1/5〜4/5範囲である請求項3記載の高負荷伝動ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10067(P2006−10067A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146041(P2005−146041)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】