説明

黒色導電性組成物、黒色電極、およびその形成方法

【課題】黒色導電性組成物と、そのような組成物から作製された黒色電極と、そのような電極を形成する方法を提供すること。
【解決手段】詳細には、本発明は、交流ディスプレイパネルの適用例も含めたフラットパネルディスプレイの適用例を対象とする。さらに本発明は、Ba、Ru、Ca、Cu、Sr、Bi、Pb、および希土類金属から選択された、2種以上の元素の酸化物から選択された導電性金属酸化物と、光架橋性ポリマーとを利用する組成物を対象とする。これらの組成物は、フラットパネルディスプレイの適用例に用いられる光画像形成可能な黒色電極を作製する際に、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色導電性組成物と、そのような組成物から作製した黒色電極と、そのような電極を形成する方法とを対象とする。詳細には本発明は、交流ディスプレイパネルでの用途も含めた、フラットパネルディスプレイでの用途を対象とする。さらに本発明は、Ba、Ru、Ca、Cu、Sr、Bi、Pb、および希土類金属から選択された、2種以上の元素の酸化物から選択された導電性金属酸化物と、光架橋性ポリマーとを利用する組成物を対象とする。これらの組成物は、フラットパネルディスプレイの適用例に向けて光画像形成可能な黒色電極を作製するのに、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
より小さくより安価な電子デバイスを作製し、性能に対してより高い解像度を提供することは、この産業における傾向となっているので、そのようなデバイスを製造するために、光画像形成可能な新しい材料を開発することが必要になってきた。光パターニング技術は、伝統的なスクリーン印刷法と比較した場合、均一でより微細な線および空間解像度を提供する。DuPont社製FODEL(登録商標)印刷システムなどの光パターニング法は、特許文献1、2、および3に見られるように、光画像形成可能な有機媒体を利用するが、この場合まず基板を、光画像形成可能な厚膜組成物で完全に覆い(印刷し、噴霧し、被覆し、または積層し)、乾燥する。パターンの画像は、パターンを有するフォトマスクを通して、光画像形成可能な厚膜組成物を化学線で露光することにより生成される。次いで露光した基板を現像する。パターンの未露光部分を洗い流し、光画像形成された厚膜組成物を基板上に残し、次いでこれを焼成して、有機材料を除去しかつ無機材料を焼結する。そのような光パターニング法は、基板の平滑さ、無機粒径分布、露光および現像の変数に応じて、約30ミクロンの線解像度を示す。そのような技法は、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイ適用例を製造する際に、有用であることが証明された。
【0003】
ACプラズマディスプレイパネル(PDP)デバイスの画像の解像度および輝度は、電極の幅、相互接続導体ピッチ、および誘電体層の透明度に依存する。これらの材料を、スクリーン印刷、スパッタリング、または化学エッチング法などの従来のパターニング技法によって付着させる場合、電極および相互接続導体パターンを形成するために微細な線および空間解像度を得ることは難しい。さらに、ディスプレイのコントラストを改善するには、前面ガラス基板上に配列された電極および導体からの、外光の反射を低減させることが必要不可欠である。この反射の低減は、ディスプレイの前面プレートを通して見たときに、電極および導体を黒色とすることによって、最も容易に実現することができる。
【0004】
Kakinumaの特許文献4に記載されているような組成物は、「(a)カルボキシル基含有感光性ポリマー...(b)希釈剤、(c)光重合開始剤;(d)無機粉末、および(e)安定剤...を併せて含む感光性組成物」を開示している。黒色マトリックスに使用される感光性組成物は、黒色顔料をさらに含有する。ペーストが、黒色の色調を有する必要がある場合、その主成分としてFe、Co、Cu、Cr、Mn、およびAlの中から選択された1種または複数のメンバーを含有する金属酸化物で形成された黒色顔料を、さらに組み込むことができる。Kakinumaが開示するこのような黒色顔料は、その純粋な状態で導電性を有することができるが、黒色導電性の低軟化点ガラス中では一部がしばしば分解し、その焼成済みの形態では本質的に非導電性となる被膜が得られる。2層構造では(例えば黒色導電層が、前面パネル上にパターニングされた導電性酸化スズSnOまたはインジウムスズ酸化物ITOの層に隣接しており、より導電性の高い層、典型的な場合には微細に粉砕されたAg粒子で作製された層を、黒色導電層の最上部に形成する場合)、黒色導電層の高い導電率によって、バス電極からパターニングされた導電性SnOまたはITO層に向かう電子の流れが改善される。
【0005】
Kakinumaにより開示されたその他の黒色顔料、とりわけ黒鉛および/またはカーボンブラックは、空気中で焼成する間に分解し、導電率と、黒色導電層にコントラストを与える能力との両方に、損失が生ずる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4912019号明細書
【特許文献2】米国特許第4925771号明細書
【特許文献3】米国特許第5049480号明細書
【特許文献4】米国特許第6342322号明細書
【特許文献5】米国特許第5851732号明細書
【特許文献6】米国特許第6075319号明細書
【特許文献7】米国特許第3583931号明細書
【特許文献8】米国特許第3380831号明細書
【特許文献9】米国特許第2927022号明細書
【特許文献10】米国特許第2760863号明細書
【特許文献11】米国特許第2850445号明細書
【特許文献12】米国特許第2875047号明細書
【特許文献13】米国特許第3097096号明細書
【特許文献14】米国特許第3074974号明細書
【特許文献15】米国特許第3097097号明細書
【特許文献16】米国特許第3145104号明細書
【特許文献17】米国特許第3427161号明細書
【特許文献18】米国特許第3479185号明細書
【特許文献19】米国特許第3549367号明細書
【特許文献20】米国特許第4162162号明細書
【非特許文献1】Introduction to Solid State Physics, Third Edition, Charles Kittel. Ed. P. 253
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光パターニング法で使用される、光架橋性ポリマーを含有する光画像形成可能な厚膜組成物を対象とする。本発明の組成物は、光パターニング法で使用される光画像形成可能な厚膜組成物を使用することによって製作された、PDPデバイスなどのフラットパネルディスプレイの適用例で特に有用であり、これは特許文献5および6に記載されるように、黒色電極が基板と導体電極配列との間に存在するものである。詳細には、本発明の光画像形成可能な組成物は、2種以上の希土類金属の金属酸化物を利用し、そのような金属酸化物は、金属的なまたは半金属的な導電率を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(I)無機物質の微細粒子であって、(a)Ba、Ru、Ca、Cu、Sr、Bi、Pb、および希土類金属から選択された2種以上の元素の酸化物から選択された、金属的なまたは半金属的な導電率を有しかつ表面と重量との比が2から20m/gである導電性金属酸化物と、(b)ガラス転移温度が300から600℃の範囲であり、表面積と重量との比が10m/g以下であり、かつこの粒子の少なくとも85重量%が0.1〜10μmの範囲のサイズを有する無機結合剤とを含む無機物質の微細粒子が、(II)(a)コポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物である、水性の現像可能な光架橋性ポリマーであって、コポリマーまたはインターポリマーのそれぞれが、(1)C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはこれらの組合せを含む非酸性コモノマーと、(2)エチレン系不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーであって、このカルボン酸含有部分の2〜20%が、第1および第2の官能単位を有する反応性分子と反応し、ただし第1の官能単位はビニル基であり、第2の官能単位はカルボン酸部分と反応することによって化学結合を形成することが可能なコモノマーとを含み、全ポリマー重量の少なくとも10重量%の酸含量を有し、ガラス転移温度が50から150℃の範囲であり、重量平均分子量が2000〜250000の範囲であるコポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物を形成するコモノマーを含むポリマーと、(b)任意選択の光開始系と、(c)有機溶媒とを含む有機媒体に分散されている組成物を対象とする。非特許文献1の冒頭の、金属/半金属の定義を参照されたい。
【0009】
本発明はさらに、有機物が実質的に除去されておりかつ無機物質が焼結されている、上記組成物の層を含む物品を対象とする。他の実施形態は、上記組成物から形成された電極を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は、光架橋性ポリマーを、有機媒体に分散させた導電性粒子などの無機物質およびガラスフリットと併せて使用する。光画像形成可能な組成物の主成分について、以下に論じる。
【0011】
I.無機物質
A.導電性金属酸化物粒子(金属的なまたは半金属的な導電率を有する酸化物)
本発明の導電性黒色組成物は、Ba、Ru、Ca、Cu、Sr、Bi、Pb、および希土類金属から選択された2種以上の元素の酸化物を含む、無機物質の微細粒子を含有する。詳細には、これらの酸化物は、金属的なまたは半金属的な導電率を有する金属酸化物である。希土類金属には、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)(原子番号21および39)と、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLu(原子番号57から71まで)を含むランタニド元素とが含まれる。好ましい酸化物は、Ba、Ru、Ca、Cu、La、Sr、Y、Nd、Bi、およびPbから選択された2種以上の元素の酸化物である。
【0012】
本発明の金属酸化物の、表面積と重量との比は、2から20m/gの範囲内である。一実施形態では、この範囲が5から15m/gである。他の実施形態では、表面積と重量との比の範囲が6から10m/gである。
【0013】
B.任意選択の導電性粒子
本発明の導電性黒色組成物は、導電性金属酸化物成分として、RuOおよび/またはルテニウムをベースにした多元酸化物をさらに含有することができる。
【0014】
ルテニウムをベースにした多元酸化物は、下記の一般式によって表される、Ru+4、Ir+4、またはこれらの混合物(M”)の多成分化合物である、パイロクロア酸化物の1つのタイプである。
【0015】
(MBi2−x)(M’M”2−y)O7−z
(式中、Mは、イットリウム、タリウム、インジウム、カドミウム、鉛、銅、および希土類物質からなる群から選択され、
M’は、白金、チタン、クロム、ロジウム、およびアンチモンからなる群から選択され、
M”は、ルテニウム、イリジウム、またはこれらの混合物であり、
xは0〜2であるが、1価の銅の場合はx≦1であり、
yは0〜0.5であるが、M’がロジウムであり、あるいは白金、チタン、クロム、ロジウム、またはアンチモンの複数である場合、yは0〜1であり、
zは0〜1であるが、Mが2価の鉛またはカドミウムである場合、これは少なくとも約x/2に等しい。)
ルテニウムパイロクロア酸化物は、参照により本明細書に援用する特許文献7に、詳細に見出される。
【0016】
好ましいルテニウム多元酸化物は、ルテニウム酸ビスマスBiRu、ルテニウム酸鉛PbRu、Pb1.5Bi0.5Ru6.5、PbBiRu6.75、およびGdBiRuである。これらの物質は、純粋な形で容易に得ることができる。これらは、ガラス結合剤による悪影響を受けず、空気中で約1000℃に加熱された場合であっても安定である。
【0017】
ルテニウム酸化物および/またはルテニウムパイロクロア酸化物は、有機媒体を含む組成物全体の重量に対して、4〜50重量%、好ましくは6〜30%、より好ましくは5〜15%、最も好ましくは9〜12%の割合で使用する。
【0018】
任意選択で、本発明の組成物は、金、銀、白金、パラジウム、銅、およびこれらの混合物を含めた貴金属をさらに含むことができる。これらの導電性金属は、任意選択で、黒色組成物に添加することができる。事実上、球状粒子および薄片(ロッド、コーン、およびプレート)を含めた任意の形の金属粉末を、本発明の実施の際に使用することができる。好ましい金属粉末は、金、銀、パラジウム、白金、銅、またはこれらの組合せである。粒子は球状であることが好ましい。本発明の分散体は、粒径が0.1μm未満である有意な量の固形分を含有してはならないことがわかった。小さいサイズの粒子が存在する場合、その被膜または層を焼成して有機媒体を除去し、さらに無機結合剤および金属固形分の焼結を行うときに、有機媒体の完全燃焼を適切に得ることが難しい。通常はスクリーン印刷によって付着される厚膜ペーストを作製するために、この分散体を使用する場合、その最大粒径は、スクリーンの厚さを超えてはならない。導電性固形分の少なくとも80重量%は、0.5〜10μmの範囲内に包含されることが好ましい。
【0019】
本発明の黒色導電性組成物は、バス電極の2層構造の黒色電極層に使用することができる。典型的な場合、バス電極は、高導電性金属層と、その下層としての黒色電極とを含む(バス電極と透明基板との間)。本発明の組成物は、そのような用途に適している。本発明の黒色電極層は、必要な成分として、上記(A)で述べた導電性金属酸化物を含む。上記(A)の導電性金属酸化物の他に、黒色電極層は、(B)に記載する任意選択の導電性金属粒子を、任意選択で含んでもよい。黒色電極層が、(B)の導電性金属粒子、特に金、銀、白金、パラジウム、銅、およびこれらの混合物を含めた任意選択の貴金属を含む場合、単層構造を使用することができる(すなわち高導電性金属層と黒色電極層とを1つの層に組み合わせる)。
【0020】
さらに、任意選択の導電性金属粒子の表面積と重量との比は20m/gを超ないことが好ましく、10m/gを超えないことが好ましく、5m/gを超えないことがより好ましい。表面積と重量との比が20m/gよりも大きい金属粒子を使用する場合、付随する無機結合剤の焼結特性が、悪影響を受ける。適切な燃焼を得ることは難しく、ブリスターが現れる可能性がある。
【0021】
必要ではないがしばしば、接着性を改善するために酸化銅を添加する。酸化銅は、微細粒子の形で、好ましくは約0.1から5ミクロンのサイズの範囲で存在すべきである。CuOとして存在する場合、酸化銅は、全組成物の約0.1から約3重量%を構成し、好ましくは約0.1から1.0%を構成する。CuOの一部またはすべては、モル当量のCuOに代えることができる。
【0022】
C.無機結合剤
本明細書で既に述べた導電性粉末は、有機媒体中に微細に分散され、無機結合剤を伴い、任意選択でその他の粉末または固形分などの金属酸化物、セラミックス、および充填剤を伴う。
【0023】
本発明で使用される無機結合剤、一般にはガラスフリットの機能は、粒子を互いに結合すること、および焼成後に基板に結合することである。無機結合剤の例には、ガラス結合剤(フリット)、金属酸化物、およびセラミックスが含まれる。組成物に有用なガラス結合剤の多くは、当技術分野では従来通りのものである。いくつかの例には、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノケイ酸ガラスが含まれる。いくつかの例には、さらに、B、SiO、Al、CdO、CaO、BaO、ZnO、SiO、NaO、LiO、PbO、およびZrOなどの、独立にまたは組み合わせて使用してガラス結合剤を形成することができる、酸化物の組合せが含まれる。厚膜組成物に有用な、典型的な金属酸化物は、当技術分野で従来通りのものであり、例えばZnO、MgO、CoO、NiO、FeO、MnO、およびこれらの混合物にすることができる。
【0024】
最も好ましく使用されるガラスフリットは、ホウケイ酸鉛フリット、ビスマス、カドミウム、バリウム、カルシウム、またはその他のアルカリ土類ホウケイ酸塩フリットなどの、ホウケイ酸フリットである。そのようなガラスフリットの調製は、周知であり、例えば、構成成分の酸化物の形をとるガラスの構成成分を一緒に融解し、そのような融解組成物を水中に注いでフリットを形成することにある。1ロット分の成分は、当然ながら、フリット生産の通常の条件下で所望の酸化物をもたらす任意の化合物でよい。例えば、酸化ホウ素はホウ酸から得られ、二酸化ケイ素はフリントから生成され、酸化バリウムは炭酸バリウムなどから生成されることになる。ガラスは、フリットの粒径が縮小されるように、かつ実質的に均一なサイズのフリットが得られるように、水と共にボールミル内でミリング処理されることが好ましい。次いで微細粒子を水中に沈降させて分離し、微細粒子を含有する上澄み液を除去する。その他の分類方法も同様に使用することができる。
【0025】
一実施形態では、ガラス結合剤が、PbフリーのBiをベースにした非晶質ガラスフリットである。その他の可能な鉛フリーの低融点ガラスは、Pをベースにした、またはZn−Bをベースにした組成物である。しかし、Pをベースにしたガラスは良好な耐水性を持たず、Zn−Bをベースにしたガラスは、非晶質状態で得ることが難しく、したがってBiをベースにしたガラスが好ましい。Biガラスは、アルカリ金属を添加することなく、比較的低い融点を有するように作製することができ、また粉末の作製にほとんど問題がない。本発明では、以下の特徴を有するBiガラスが、鉛フリー組成物に最も好ましい。
【0026】
(I)鉛フリーガラスの組成
55〜85重量% Bi
0〜20重量% SiO
0〜5重量% Al
2〜20重量% B
0〜20重量% ZnO
0〜15重量% BaO、CaO、およびSrOから選択された酸化物の、1種または複数(酸化物の混合物の場合、最大合計が15重量%まで)
0〜3重量% NaO、KO、CsO、およびLiOから選択された酸化物の、1種または複数(酸化物の混合物の場合、最大合計が3重量%まで)
(II)軟化点:400〜600℃
この明細書では、「軟化点」は、示差熱分析法(DTA)によって決定された軟化点を意味する。
【0027】
本発明で使用されるガラス結合剤は、Microtracによって測定したときのD50(すなわち、粒子の1/2が規定サイズよりも小さく、1/2が規定サイズよりも大きい点)が、0.1〜10μmであることが好ましい。ガラス結合剤のD50は、0.5から1μmであることがより好ましい。通常、工業的に好ましいプロセスでは、ガラス結合剤は、酸化物、水酸化物、炭酸塩などの原材料を混合し、融解し、急冷して機械的に微粉化することによりカレットにし(湿式、乾式)、次いで湿式微粉化の場合には乾燥することによって、調製する。その後、必要な場合は、分類を行って所望のサイズにする。本発明で使用されるガラス結合剤は、形成される黒色導電層の厚さよりも小さい平均粒径を有することが望ましい。
【0028】
II.有機媒体
有機媒体の主な目的は、セラミックまたはその他の基板に容易に付着させることができるような形で、組成物の微粉砕した固形分を分散させるための、ビヒクルとしての役割を果たすことである。したがって有機媒体は、第1に、適切な安定度で固形分が分散可能なものでなければならない。第2に、有機媒体の流動学的性質は、良好な付着特性を分散体に与えるようなものでなければならない。媒体の主成分は下記の通りである。
【0029】
A.光架橋性有機ポリマー
ポリマー結合剤は、本発明の組成物に重要である。この結合剤は湿式現像が可能であり、高解像度を与える。
【0030】
この結合剤は、光架橋性ポリマー結合剤である。この結合剤は、コポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物で作製され、コポリマーまたはインターポリマーのそれぞれは、(1)C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはこれらの組合せを含む非酸性コモノマーと、(2)エチレン系不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーであって、このカルボン酸含有部分の2〜20%が、第1および第2の官能単位を有する反応性分子と反応し、ただし第1の官能単位はビニル基であり、第2の官能単位はカルボン酸部分と反応することによって化学結合を形成することが可能であるコモノマーとを含む。ビニル基の例には、メタクリレート基およびアクリレート基が含まれるが、これらに限定されない。第2の官能単位の例には、エポキシド、アルコール、およびアミンが含まれるが、これらに限定されない。得られるコポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物は、全ポリマー重量の少なくとも10重量%の酸含量と、50〜150℃のガラス転移温度と、2000〜250000の範囲の重量平均分子量とを有し、すべての範囲がこの中に含まれる。
【0031】
組成物中に酸性コモノマー成分が存在することは、この技法では重要である。酸性官能基は、0.4〜2.0%の炭酸ナトリウム水溶液などの塩基水溶液で、現像される能力を与える。酸性コモノマーが10%未満の濃度で存在する場合、組成物は、塩基水溶液で完全に洗い流せない。酸性コモノマーが30%よりも高い濃度で存在する場合、組成物は、現像条件下でそれほど耐久性がなく、部分的な現像が画像部分に生ずる。適切な酸性コモノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン系不飽和モノカルボン酸と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルコハク酸、マレイン酸などのエチレン系不飽和ジカルボン酸、ならびにこれらのヘミエステル、場合によってはこれらの無水物およびこれらの混合物が含まれる。低酸素雰囲気中でより清浄に燃焼することから、アクリルポリマーよりもメタクリルポリマーが好ましい。
【0032】
非酸性コモノマーが、上述のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである場合、これらの非酸性コモノマーは、ポリマー結合剤の少なくとも50重量%、好ましくは70〜75重量%を構成することが好ましい。非酸性コモノマーがスチレンまたは置換スチレンである場合、これらの非酸性コモノマーがポリマー結合剤の50重量%を構成し、残りの50重量%は、無水マレイン酸のヘミエステルなどの酸無水物であることが好ましい。好ましい置換スチレンは、α−メチルスチレンである。
【0033】
好ましくはないが、ポリマー結合剤の非酸性部分は、ポリマーのアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、スチレン、または置換スチレン部分の代わりとして、その他の非酸性コモノマーを約50重量%まで含有することができる。その例には、アクリロニトリル、酢酸ビニル、およびアクリルアミドが含まれる。しかし、これらを完全燃焼させることはより困難であるので、全ポリマー結合剤中にそのようなモノマーを約25重量%未満使用することが好ましい。結合剤として、単一のコポリマーまたはコポリマーの組合せを使用することは、これらの各々が上記様々な基準を満たす限り、認められている。上記コポリマーの他、その他のポリマー結合剤を少量添加することが可能である。これらの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレンおよびエチレン−プロピレンコポリマーなどのポリオレフィン、ポリビニルアルコールポリマー(PVA)、ポリビニルピロリドンポリマー(PVP)、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンのコポリマー、ならびにポリエチレンオキシドなどの低級アルキレンオキシドポリマーであるポリエーテルを挙げることができる。
【0034】
酸性コモノマーは、光架橋性官能単位などの反応性分子を導入するための反応性部位を、ポリマーに提供する。これは、以下の図に示すように、ビニル単位を含有する反応性分子と反応するカルボン酸含有部分を、2〜20%利用することによって実現される。最終的なポリマーは、図示するように反復単位を有する。これらのポリマーは、当業者に周知である。
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、R、R、およびRは、メチル基または水素、またはこれらの混合物であり;
は、芳香族基またはその他の原子、例えば酸素を含有することができる、直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基であり;
は、アルキル(C〜C10)である。)
【0037】
本明細書で述べるポリマーは、一般に使用される溶液重合技法によるアクリレート重合の分野の当業者によって、生成することができる。典型的な場合、そのような酸性アクリレートポリマーは、□−または□−エチレン系不飽和酸(酸性コモノマー)と1種または複数の共重合性ビニルモノマー(非酸性コモノマー)とを、比較的低い沸点(75〜150℃)の有機溶媒中で混合して10〜60%のモノマー混合物溶液を得、次いで重合触媒を添加し、その混合物を、標準圧下で溶液の還流温度に加熱してモノマーを重合することによって、生成される。重合反応が完全に終了した後、生成された酸性ポリマー溶液を室温まで冷却する。
【0038】
反応性分子、フリーラジカル重合抑制剤、および触媒を、上述の冷却したポリマー溶液に添加する。この溶液を、反応が終了するまで攪拌する。任意選択で、反応の速度を上げるために、溶液を加熱することができる。反応が終了し、反応性分子がポリマー主鎖に化学的に結合した後、ポリマー溶液を室温まで冷却し、サンプルを収集し、ポリマー粘度、分子量、および酸当量を測定する。
【0039】
さらに、ポリマー結合剤の重量平均分子量は2000〜250000の範囲内にあり、任意の範囲がそこに含まれる。ポリマー結合剤の分子量は、用途に依存することとなる。10000未満の重量は、一般にペースト組成物に有用であり、10000よりも高い場合は、一般にテープまたはシートに有用である。分子量が10000未満であるポリマーは、一般に、被膜形成能力が低くなる。これらはテープ形成に使用することができるが、一般に、フィルムまたはテープを形成するために、その他の適合性ある高分子量ポリマーと混合する必要がある。
【0040】
組成物中の全ポリマーは、全組成物に対して5〜70重量%の範囲内にあり、任意の範囲がそこに含まれる。
【0041】
B.光硬化性モノマー
従来の光硬化性メタクリレートモノマーを、本発明で使用することができる。用途に応じて、本発明の組成物中にモノマーを含むことが常に必要であるとは限らない。モノマー成分は、乾燥した光重合可能な層の全重量に対し、1〜20重量%の量で存在する。そのような好ましいモノマーには、t−ブチルアクリレートおよびメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、デカメチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、グリセロールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメタクリレート、および特許文献8に開示されているものと同様の化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシ−フェニル)−プロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびテトラメタクリレート、2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノールAのジ−(2−アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレートおよびジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレートおよびトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレートおよびジメタクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ジアリルフマレート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、および1,3,5−トリイソプロペニルベンゼンが含まれる。少なくとも300の重量平均分子量を有するエチレン系不飽和化合物、例えばアルキレン、または炭素が2から15個のアルキレングリコールから調製されたポリアルキレングリコールジアクリレート、または1から10個のエーテル結合を持つポリアルキレンエーテルグリコール、および特許文献9に開示されているもの、例えば、特に末端結合として存在する場合には複数のフリーラジカル重合性エチレン結合を有するものも有用である。特に好ましいモノマーは、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エチル化ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、および1,10−デカンジオールジメタクリレートである。
【0042】
C.光開始系
適切な光開始系は、周囲温度で化学線で露光することによって、フリーラジカルを発生させるものである。これらには、共役炭素環系内に2個の環内炭素原子を有する化合物である、置換または非置換多核キノンが含まれ、例えば、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンズ(a)アントラセン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチル−アントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフトラセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンズ(a)アントラセン−7,12−ジオンがある。その他の光開始剤、すなわちそのいくつかは、85℃程度に低い温度で熱的に活性になる可能性があるものの、やはり有用であるその他の光開始剤は、特許文献10に記載されており、ベンゾイン、ピバロイン、アシロインエーテル、例えばベンゾインメチルおよびエチルエーテルなどのビシナルケタルドニルアルコール;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、およびα−フェニルベンゾインを含めたα炭化水素置換芳香族アシロイン、チオキサントンおよび/またはチオキサントン誘導体、およびその適切な水素供与体が含まれる。特許文献11、12、13、14、15、および16に開示されている光還元性色素および還元剤、ならびに特許文献17、18、および19に記載されるような、フェナジン、オキサジン、およびキノンに分類される色素、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、水素供与体を持つ2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーであって、ロイコ色素を含めたもの、およびこれらの混合物を、開始剤として使用することができる。光開始剤および光抑制剤と共に、特許文献20に開示されている増感剤も有用である。光開始剤または光抑制剤系は、乾燥した光重合性の層の全重量に対し、0.05〜10重量%で存在する。
【0043】
D.溶媒
有機媒体の溶媒成分は、溶媒の混合物でよく、ポリマーおよびその他の有機成分が入っている完全な溶液が得られるように選択する。溶媒は、組成物のその他の構成成分に対して不活性(非反応性)であるべきである。スクリーン印刷可能であり光画像形成可能であるペーストでは、大気圧下、比較的低いレベルの熱を加えることによって、分散体から溶媒を蒸発させることができるよう、溶媒が十分に高い揮発性を有するべきであるが、この溶媒は、ペーストが、印刷プロセス中に通常の室温でスクリーン上で素早く乾燥するほど揮発性が高いものであるべきではない。ペースト組成物で使用される好ましい溶媒は、大気圧下で300℃未満の沸点、好ましくは250℃未満の沸点を有するべきである。そのような溶媒には、脂肪族アルコール、そのようなアルコールのエステル、例えば酢酸エステルおよびプロピオン酸エステル;松根油およびα−またはβ−テルピネオールなどのテルペン、またはこれらの混合物;エチレングリコールモノブチルエーテルおよびブチルセロソルブアセテートなどの、エチレングリコールおよびそのエステル;ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートおよびカルビトールアセテートなどのカルビトールエステル、およびTexanol(登録商標)(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)などのその他の適切な溶媒が含まれる。流延テープの場合、溶媒は、スクリーン印刷可能なペーストに使用される溶媒よりも低い沸点を有する。そのような溶媒には、酢酸エチル、メタノール、イソプロパノール、アセトン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトン、およびトルエンが含まれる。
【0044】
E.その他の添加剤
しばしば有機媒体は、1種または複数の可塑剤も含有することになる。そのような可塑剤は、基板への良好な積層を確実にし、かつ組成物の未露光領域の現像可能性を高めるのに役立つ。可塑剤の選択は、変性しなければならないポリマーによって主に決定される。様々な結合剤系に使用されてきた可塑剤の中には、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、アルキルホスフェート、ポリアルキレングリコール、グリセロール、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシエチル化アルキルフェノール、トリクレシルホスフェートトリエチレングリコールジアセテート、およびポリエステル可塑剤がある。当技術分野で知られている追加の成分は、懸濁剤、安定剤、離型剤、分散剤、剥離剤、消泡剤、および湿潤剤も含めて、組成物中に存在してよい。適切な材料の概略的開示が、特許文献3に示されている。
【0045】
概略的なペースト調製
典型的な場合、厚膜組成物は、ペースト様のコンシステンシーを有するように配合され、これを「ペースト」と呼ぶ。一般にペーストは、黄色灯の下、有機ビヒクル、モノマー、およびその他の有機成分を混合容器内で混合することによって調製する。次いで無機物質を、この有機成分混合物に添加する。次いで無機粉末が有機物質によって濡れるまで、この組成物全体を混合する。次いで混合物を、3本ロールミルを使用してロールミリング処理する。この時点でのペーストの粘度は、処理に最適な粘度が実現されるように、適切なビヒクルまたは溶媒で調節することができる。
【0046】
夾雑な汚染があると欠陥の原因になるので、ペースト組成物の調製プロセスおよび部分品の調製プロセスでは、そのような夾雑な汚染が回避されるよう注意を払う。
【0047】
概略的な焼成プロフィル
本発明の組成物は、焼成プロフィルを使用することによって処理することができる。焼成プロフィルは、厚膜技術の当業者の知識に十分含まれる範囲である。有機媒体の除去、および無機物質の焼結は、焼成プロフィルに依存する。プロフィルは、完成品から媒体が実質的に除去されたかどうか、さらに無機物質が完成品中で実質的に焼結されたかどうかを判断することになる。本明細書で使用する「実質的に」という用語は、意図される用法または用途に対して少なくとも適切な抵抗率または導電率がもたらされるような程度まで、少なくとも95%の媒体の除去および無機物質の焼結が行われたことを意味する。
【0048】
概略的なテープ調製
本発明の組成物は、テープの形で使用することができる。組成物をテープの形で使用する場合、スリップを調製し、これをテープ流延で使用する。スリップは、テープ作製の際に組成物に使用される一般用語であり、有機媒体中に分散された無機粉末の、適正に分散された混合物である。有機媒体中の無機粉末の、良好な分散を実現する一般的な方法は、従来のボールミリング法を使用することによる。ボールミリングは、セラミックミリングジャーと、ミリング媒体(典型的な場合、球形または円筒形のアルミナまたはジルコニアペレット)とからなる。混合物全体をミリングジャーに入れ、ミリング媒体を添加する。ジャーを漏れ防止蓋で閉めた後、ジャーを転動させて、混合効率が最適になる回転速度でジャー内部にミリング媒体のミリング動作を生み出す。回転の長さは、性能仕様を満たすよう、十分に分散された無機粒子を得るのに必要とされる時間である。スリップは、ブレードまたはバーコーティング法によって基板に付着させることができ、その後、周囲または加熱乾燥することができる。乾燥後のコーティングの厚さは、用途に応じて2〜3ミクロンから数十ミクロンに及んでよい。
【0049】
テープは、カバーシートで積層することができ、その後に、ワイドストックロールとして巻き上げられる。シリコーンで被覆されたテレフタレートPETフィルム、ポリプロピレン、またはポリエチレンを、カバーシートとして使用することができる。カバーシートは、最終基板に積層する前に除去される。
【0050】
フラットパネルディスプレイの適用例
本発明は、上記黒色導電性組成物から形成された黒色電極を含む。本発明の黒色電極は、好ましくはフラットパネルディスプレイの適用例で使用することができ、特に交流プラズマディスプレイパネルデバイスで使用することができる。黒色電極は、デバイス基板と導体電極アレイとの間に形成することができる。
【0051】
一実施形態では、本発明の電極を、以下に述べるようにAC PDPの適用例で使用する。本発明の組成物および電極は、その他のフラットパネルディスプレイの適用例で使用することができ、そのAC PDPデバイスにおける記述は、限定を意図するものではないことが理解される。交流プラズマディスプレイパネルで使用される本発明の黒色電極の例について、以下に説明する。この記述には、基板と導体電極(バス電極)との間に黒色電極を含んだ2層電極が含まれる。黒色組成物が、追加の任意選択の1種または複数の貴金属、典型的な場合には銀を含む場合、単層電極を形成できることがさらに理解される。また、交流プラズマディスプレイパネルデバイスを作製するための方法についても概説する。
【0052】
交流プラズマディスプレイパネルデバイスは、間隙を有する前面および背面誘電体基板と、平行な第1および第2の電極複合体群を、イオン化ガスが充填された放電空間内に含有する電極アレイとからなる。第1および第2の電極複合体群は、中心に放電空間を備えた状態で、互いに交差するように対向している。ある特定の電極パターンが、誘電体基板の表面に形成され、誘電体材料が、誘電体基板の少なくとも片面の電極アレイに被覆されている。このデバイスでは、前面誘電体基板上の少なくとも電極複合体に、同じ基板上のバス導体に接続された導体電極アレイ群を取り付け、上記基板と上記導体電極アレイとの間に本発明の黒色電極を形成する。
【0053】
図1は、AC PDP内の、本発明の黒色電極を例示する。図1は、本発明の黒色電極を使用したAC PDPを示す。図1に示すように、AC PDPデバイスは、以下の構成要素、すなわちガラス基板(5)上に形成された下層透明電極(1)と、透明電極(1)上に形成された黒色電極(10)(本発明の黒色導電性組成物を、黒色電極(10)に使用する)と、黒色電極(10)上に形成されたバス電極(7)(バス電極(7)は、Au、Ag、Pd、Pt、およびCuまたはこれらの組合せから選択された金属からの導電性金属粒子を含有する感光性導体組成物である(これについては以下に詳細に説明する))とを有する。黒色電極(10)およびバス導体電極(7)を、化学線で画像通りに露光してパターンを形成し、塩基性水溶液中で現像し、高温で焼成して、有機成分を除去し、かつ無機物質を焼結する。黒色電極(10)およびバス導体電極(7)は、同一のまたは非常に類似した画像を使用してパターニングする。最終的に、焼成された高導電性の電極複合体が得られるが、これは透明電極(1)の表面では黒色に見え、前面ガラス基板上に置くと、外光の反射が抑制される。
【0054】
本明細書で使用する「黒色」という用語は、白色バックグラウンドに対してかなりの視覚コントラストを有する暗色を意味する。したがってこの用語は、色が存在しない状態を意味する黒色に必ずしも限定するものではない。「黒度」の程度は、L値を決定するために比色計で測定することができる。L値は輝度を表し、100が純白であり、0が純粋の黒である。図1には示されているが、以下に述べる透明電極は、本発明のプラズマディスプレイデバイスを形成する際に必ずしも必要ではない。
【0055】
透明電極を使用する場合、イオンスパッタリングまたはイオンめっきなどの化学気相成長または電着によってこの透明電極(1)を形成するために、SnOまたはITOを使用する。本発明における、透明電極の成分およびその形成方法は、当業者に周知の従来のAC PDP生産技術によるものである。
【0056】
図1に示すように、本発明のAC PDPデバイスは、パターニングされ焼成されたメタライゼーション上に誘電体被覆層(8)およびMgO被覆層(11)を有するガラス基板をベースにする。
【0057】
導体線は、その線幅が均一であり、凹みまたは破断もなく、線同士の間で高い導電率、光学的明瞭度、および良好な透明度を有する。
【0058】
次に、PDPデバイスの前面プレートのガラス基板上の、任意選択の透明電極上に、バス電極と黒色電極との両方を作製する方法について例示する。
【0059】
図2に示すように、本発明の一実施形態の形成方法は、一連のプロセス((A)〜(E))を含む。
【0060】
(A)ガラス基板(5)上で、当業者に知られている従来方法に従ってSnOまたはITOを使用して形成された透明電極(1)上に、黒色電極を形成する感光性厚膜組成物層(10)を付着させ、次いでその厚膜組成物層(10)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥させるプロセス。黒色電極組成物は、本発明の鉛フリーの黒色導電性組成物である(図2(A))。
【0061】
(B)第1の付着された黒色電極組成物層(10)に、バス電極を形成するための感光性厚膜導体組成物(7)を付着させ、次いでその厚膜組成物層(7)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥する。感光性厚膜導電性組成物について、以下に示す(図2(B))。
【0062】
(C)第1の付着された黒色電極組成物層(10)および第2のバス電極組成物層(7)を、これらの現像後に正確な電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)と相関するよう配列させた黒色電極およびバス電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光する(図2(C))。
【0063】
(D)0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第1の黒色導電性組成物層(10)および第2のバス電極組成物層(7)の露光済み部分(10a、7a)を現像するプロセス。このプロセスは、層(10、7)の未露光部分(10b、7b)を除去する。露光した部分(10a、7a)は残存する(図2(D))。次いで現像後の生成物を乾燥する。
【0064】
(E)次いでプロセス(D)の後、この部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結する(図2(E))。
【0065】
本発明の第2の実施形態の形成方法について、図3と共に以下に説明する。便宜上、図3の各部分に割り当てられた番号は、図2の場合と同じである。第2の実施形態の方法は、一連のプロセス(A’〜H’)を含む。
【0066】
A’.ガラス基板(5)上で、当業者に知られている従来方法に従いSnOまたはITOを使用して形成された透明電極(1)上に、黒色電極を形成する感光性厚膜組成物層(10)を付着させ、次いでこの厚膜組成物層(10)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥させるプロセス。黒色電極組成物は、本発明の鉛フリーの黒色導電性組成物である(図3(A))。
【0067】
B’.第1の付着された黒色電極組成物層(10)を、その現像後に正確な黒色電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)に相関するよう配列させた黒色電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光する(図3(B))。
【0068】
C’.層(10)の未露光部分(10b)を除去するため、0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第1の黒色導電性組成物層(10)の露光済み部分(10a)を現像するプロセス(図3(C))。次いで現像後の生成物を乾燥する。
【0069】
D’.次いでプロセス(C’)の後、これらの部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結する(図3(D))。
【0070】
E’.第1の感光性厚膜組成物層(10)の、焼成されパターニングされた部分(10a)による黒色電極(10a)に、バス電極を形成する感光性厚膜組成物層(7)を付着させ、次いで窒素または空気雰囲気中で乾燥するプロセス(図3(E))。感光性厚膜導体組成物については以下に述べる。
【0071】
F’.第2の付着されたバス電極組成物層(7)を、その現像後に正確な電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)および黒色電極(10a)に相関するよう配列させたバス電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光する(図3(F))。
【0072】
G’.層(7)の未露光部分(7b)を除去するため、0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第2のバス導電性組成物層(7)の露光された部分(7a)を現像するプロセス(図3(G))。次いで現像後の生成物を乾燥する。
【0073】
H’.次いでプロセス(G’)の後、これらの部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結する(図3(H))。
【0074】
第3の実施形態(図示せず)は、以下に示す一連のプロセス((i)〜(v))を含む。この実施形態は、単層電極の適用例に特に有用である。
【0075】
(i)基板上に黒色電極組成物を載せるプロセス。この黒色電極組成物は、上述の、本発明の黒色導電性組成物である。
【0076】
(ii)基板上に感光性導電性組成物を載せるプロセス。この感光性導電性組成物については以下に述べる。
【0077】
(iii)化学線によって、黒色組成物および導電性組成物を画像通りに露光することにより、電極パターンを固定するプロセス。
【0078】
(iv)化学線で露光されていない領域を除去するため、塩基性水溶液によって、露光された黒色組成物および導電性組成物を現像するプロセス。
【0079】
(v)現像された導電性組成物を焼成するプロセス。
【0080】
上述のように形成された前面ガラス基板アセンブリは、AC PDPに使用することができる。例えば、再び図1を参照すると、前面ガラス基板(5)上に、黒色電極(10)およびバス電極(7)と関連付けて透明電極(1)を形成した後、前面ガラス基板アセンブリを誘電体層(8)で覆い、次いでMgO層(11)で被覆する。次に、前面ガラス基板(5)を背面ガラス基板(6)と組み合わせる。セル障壁(4)の形成と共に、蛍光体でスクリーン印刷したいくつかのディスプレイセルを、背面ガラス(6)上に固定する。前面基板アセンブリ上に形成された電極は、背面ガラス基板上に形成されたアドレス電極と交差する。前面ガラス基板(5)と背面ガラス基板(6)との間に形成された放電空間を、ガラス封止剤で密閉し、それと同時に、混合放電ガスをその空間内に封入する。AC PDPデバイスはこのように組み立てられる。
【0081】
次に、バス電極用のバス導電性組成物について、以下に説明する。
本発明で使用されるバス導電性組成物は、市販されている感光性の厚膜導電性組成物でよい。上述のように、バス導電性組成物は、(a)Au、Ag、Pd、Pt、およびCu、ならびにこれらの組合せから選択された少なくとも1種の金属の導電性金属粒子と、(b)少なくとも1種の無機結合剤と、(c)光開始剤と、(d)光硬化性モノマーとを含む。本発明の一実施形態では、バス導電性組成物がAgを含む。
【0082】
導電相は、典型的な場合には粒径が0.05〜20μm(ミクロン)の範囲内である銀粒子をランダムな形状または薄片形状で含む、上記組成物の主成分である。バス導電性組成物は、銀粒子を含む一実施形態に関連して本明細書に記述されているが、これは限定を意図するものではない。紫外線重合性媒体をこの組成物と一緒に使用する場合、銀粒子は、その粒径が0.3〜10μの範囲内にあるべきである。好ましい組成物は、厚膜ペースト全体に対して銀粒子を65〜75重量%含有すべきである。
【0083】
また、バス電極を形成するための銀導電性組成物は、Agの他に必要に応じて、ガラス結合剤を0〜10重量%、および/または、ガラスまたは前駆体を形成しない耐熱物質を0〜10重量%含有してもよい。ガラス結合剤の例には、上述の、鉛フリーのガラス結合剤が含まれる。ガラスおよび前駆体を形成しない耐熱物質は、例えば、アルミナ、酸化銅、酸化ガドリニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、コバルト鉄クロム酸化物、アルミニウム、銅、様々な市販の無機顔料などである。
【0084】
そのような主成分の他に、第2、第3、およびより多くの無機添加剤を添加する目的は、パターン形状の制御、焼成中の焼結の抑制または促進、接着性の保持、主な金属成分の拡散の制御、バス電極付近での変色の防止、抵抗の制御、熱膨張係数の制御、機械的強度の保持などを行うことである。タイプおよび量は、基本的な性能に著しい悪影響を及ぼさない範囲内で、必要に応じて選択する。
【0085】
さらに、銀導電性組成物は、上記粒状物質が分散している感光性媒体を、10〜30重量%含有してもよい。そのような感光性媒体は、ポリメチルメタクリレート、および多官能性モノマーの溶液でよい。このモノマーは、銀導電性組成物ペーストの調製中、および紫外線硬化前の印刷/乾燥プロセス中に、蒸発を最小限に抑えるために、揮発性が低いものから選択される。感光性媒体は、溶媒および紫外線開始剤を含有してもよい。好ましい紫外線重合性媒体には、95/5の比(重量ベース)であるメチルメタクリレート/エチルアクリレートをベースにしたポリマーが含まれる。上述の銀導電性組成物は、易流動性ペーストの場合に10〜200Pa・sの粘度を有する。
【0086】
そのような媒体に適した溶媒は、ブチルカルビトールアセテート、Texanol(登録商標)、およびβ−テルピネオールであるが、これらに限定されない。役立てることができる追加の溶媒には、上記セクション(G)の有機媒体で列挙したものが含まれる。そのような媒体は、分散剤、安定剤などで処理することができる。
【0087】
実施例で使用した試験手順
乾燥後の黒色厚さ
黒色電極の乾燥膜厚を、Tencor Alpha Step 2000などの接触側面計を使用して、4つの異なる点で測定した。
【0088】
乾燥後のAg/黒色厚さ
Ag電極を、乾燥させた黒色電極上に印刷し、次いで乾燥した。黒色/Ag複合体層の厚さを、黒色電極と同じ方法で測定した。
【0089】
線解像度
画像形成したサンプルを、最小倍率が20×であり接眼レンズの倍率が10×であるズーム式顕微鏡を使用して検査する。短絡(線同士の接続)または開路(線内の完全な破断)がまったくなく完全に無傷である最も微細な線の群が、そのサンプルに関して定められた線解像度である。
【0090】
4ミル線の厚さ
焼成後の膜厚を、抵抗率の測定に使用される4ミルの線幅に関して測定する。測定は、接触側面計を使用して行う。
【0091】
4ミル線のエッジカール
4ミル線の膜厚を測定する場合、エッジに悪魔の角の形をした突起が観察されることがあり、この悪魔の角の長さをエッジカールと呼ぶ。エッジカールが大きいと、透明誘電体物質を印刷、積層、またはコーティングによって形成し、次いで焼成した後に、気泡が混入し易く、誘電体の破断に至る可能性があり、したがってエッジカールは望ましくない。エッジカールがないこと、すなわちエッジカールが0μmであることが、最も望ましい。現行の鉛含有導電性組成物の場合でさえ、エッジカールは約1〜3μmであることがわかっている。
【0092】
剥離
焼成後のパターンの隅に生ずる浮上がりの程度を、顕微鏡下で観察し、無、低、中、中高(または中間−高)、および高のレベルに分類する。現在入手可能な鉛含有導電性組成物では、隅の浮上がりが低レベルであることが観察される。隅の浮上がりがないことが、最も望ましい。
【0093】
ブリスター形成
焼成後のブリスター形成の程度を、顕微鏡下で観察し、低、低中、中、中高、および高のレベルに分類する。現在入手可能な鉛含有導電性組成物では、低中レベルのブリスター形成が観察される。ブリスター形成がないことが、最も望ましい。
【0094】
Ag/黒色2層のL値
焼成後、ガラス基板の背面から見た黒度を測定する。黒度については、標準白色板を使用した較正による比色計(Minolta CR−300)を使用して、色(L)を測定する。Lは明度を表し、0が純粋な黒であり、100が純白である。
【0095】
単(黒色のみ)層のL値
ITO被膜フリーのガラス基板を、上記(1)のように黒色電極で被覆し、乾燥する。プロセス(2)、(3)、および(4)のそれぞれを省略し、このように得られた乾燥黒色電極を、プロセス(5)と同じ条件下で焼成して、単一の固体焼成黒色電極層を形成する。焼成後、ガラス基板の背面から見た黒度を、上記Ag/黒色2層のL値の場合に使用した条件下、比色計(Minolta CR−300)を使用して測定するが、このとき、0は純粋な黒であり100は純白である。
【0096】
黒色抵抗(Ω)
この評価では、黒色電極の抵抗を測定する。この方法は、焼成後の黒色層の導電性を確認するのに使用する。上述(単層のL値)の試験部分品を用い、プローブ距離が約4cmである抵抗計を使用して、黒色電極焼成被膜の抵抗を測定する。この装置を使用すると、測定することができる最大抵抗は1GΩである。
【0097】
黒色/Ag抵抗率(mΩ/5μm
これは、焼成後の膜厚(5μm)の単位当たりのシート抵抗値(mΩ/5μm)である。この値は、いわゆる比抵抗(μΩ・cm)の2倍に等しい。現行の鉛含有黒色導電性組成物(DuPont社のDC243ペースト)およびAg電極(DC209)を使用する場合、この値は、約11〜13mΩ/5μmであることがわかっている。この値は、低いほど良好である。
【0098】
実施例で使用される材料の用語解説
有機成分
モノマーA:モノマーTMPEOTA(トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート)
溶媒A:溶媒、Texanol
有機添加剤A:添加剤、マロン酸
有機添加剤B:添加剤BHT
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
BiガラスフリットA
SiO 7.1重量% SA:2.5〜3.3m/g
Al 2.1
CaO 0.5 PSD D50:0.7〜0.83μm
ZnO 12.0
8.4
Bi 69.9
【0102】
【表3】

【0103】
実施例で使用した組成物の調製
感光性の、湿式現像可能なペーストの調製。
【0104】
(A)有機物質の調製
溶媒およびアクリルポリマーを混合し、攪拌し、100℃に加熱して、結合剤ポリマーの完全な溶解を実現する。得られた溶液を80℃に冷却し、残りの有機成分を添加し、その混合物を攪拌して、すべての固形分の完全な溶解を実現する。次いでこの物質を、325−メッシュスクリーンに通して濾過し、冷却する。
【0105】
(B)ペーストの調製
有機ビヒクル、1種または複数のモノマー、およびその他の有機成分を、黄色灯の下、混合容器内で混合することにより、ペーストを調製する。次いでこの有機成分の混合物に、無機物質を添加する。次いで無機粉末が有機物質によって濡れるまで、組成物全体を混合する。この混合物に対し、3本ロールミルを使用して、ロールミリングを行う。最適な処理を行うための粘度が得られるよう、適切なビヒクルまたは溶媒を用いることによって、この時点でペーストの粘度を調節することができる。
【0106】
ペースト組成物の調製過程および部分品の調製中、夾雑な汚染があると欠陥につながる可能性があるので、そのような夾雑な汚染が回避されるように注意を払う。
【0107】
(C)調製条件
(1)黒色電極の形成
組成および乾燥後の所望の厚さに応じて、200〜400メッシュスクリーンを使用して、スクリーン印刷によりガラス基板にペーストを付着させる。実施例の黒色ペーストは、350メッシュのポリエステルスクリーンを使用して、スクリーン印刷によりガラス基板に付着させた。透明電極(薄膜ITO)が形成されているガラス基板上に、2層構造として試験がなされる部分品を調製した(単層(黒色のみ)構造として試験がなされる部分品は、ITO被膜のないガラス基板上に調製した)。次いで部分品を、温風循環炉内で20分間、80℃で乾燥して、乾燥膜厚が2〜6μmの黒色電極を形成した。
【0108】
次いで単層(黒色のみ)構造として試験がなされる部分品を、焼成した(プロセス5参照)。
【0109】
次いで2層構造として試験がなされる部分品を、以下に示すように処理した(プロセス2〜5参照)。
【0110】
(2)バス導電性電極の形成
次に、2層の部分品に、325ステンレス鋼メッシュスクリーンを使用してスクリーン印刷することにより、光画像形成可能なAg導電性ペーストを重ね刷りした。以下の実施例では、この光画像形成可能なAg導電性ペーストは、ビスマスガラスフリットAを0.5重量%、およびAg粉末(平均粒径:1.3μm)を70重量%含有する感光性Agペーストである。この部分品を、80℃の温度で20分間、再び乾燥する。乾燥膜厚は6〜10μmである。2層構造に関する乾燥膜厚は、10〜16μmである。
【0111】
(3)紫外線パターン露光
2層の部分品を、平行紫外線源を使用して、フォトツールを通して露光した(照度:5〜20mW/cm、露光エネルギー:400mj/cm、コンタクト露光で)。
【0112】
(4)現像
0.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液を現像剤溶液として含む、コンベヤ設置型の噴霧処理機を使用して、露光した部分品を現像した。現像剤溶液の温度を30℃に維持し、現像剤溶液を10〜20psiで噴霧した。部分品を、20秒の現像時間にかけた(TTCの3〜4倍に対応する)。現像した部分品を、強制空気流によって過剰な水を吹き飛ばすことにより乾燥させた。
【0113】
(5)焼成
次いで乾燥した部分品を、10分間の550℃または500℃のピーク温度に達する2.5時間のプロフィルを使用して、空気雰囲気中、ベルト炉内で焼成した。
【0114】
以下に示す実施例で、電極の調製条件は、上記(1)〜(5)に示した通りである。
【実施例】
【0115】
適用実施例1〜10
これらの実施例で使用したAg導電性ペーストは、AgペーストAであった。黒色導電性組成物は、ある範囲の黒色導電性酸化物粉末で調製した。
【0116】
【表4】

【0117】
実施例2〜10では、比表面積と重量との比が低い(<1m/g)導電性酸化物粉末を使用した。実施例1では、実施例2と同じ導電性酸化物粉末を使用したが、比表面積と重量との比は、著しく大きかった(13m/g)。使用したすべての組成物は、同じガラス結合剤(BiガラスフリットA)を含有していた。試験をした黒色ペースト組成物の詳細を、表1に示す。上記プロセス(1)〜(5)を使用して、バス電極−黒色電極2層構造の試験部分品と、単層黒色電極の試験部分品を調製し、様々な特性について調査した。すべての部分品は、他に特に示さない限り、550℃のピーク温度に焼成した。
【0118】
【表5】

【0119】
上層Ag電極に使用される感光性Agペーストは、Ag粉末(平均粒径:約1.3μm)を70%、およびBiガラスフリットAを0.5%含有していた。
【0120】
結果を表2に示す。
【0121】
【表6】

【0122】
すべての実施例(1〜10)の光特性(線解像度によって決定されるようなもの)は、対照例(DC243/DC209)と同様である。
【0123】
すべての特性において、実施例1は対照例(DC243/DC209)と同様に機能する。
【0124】
実施例1と2を比較すると、ルテニウム酸Ba導電性SAが高い場合、黒色および導電率が改善される。
【0125】
いくつかの実施例(5〜10)は、550℃で焼成したときに、高レベルのブリスター形成を示した。500℃で焼成した場合、ブリスター形成のレベルは著しく低下した。
【0126】
適用実施例11〜19
別の実施例は、下記の黒色導電性粉末をベースにして調製した。
【0127】
【表7】

【0128】
実施例11〜15は、導電性酸化物を14重量%含有していた。実施例16〜19では、導電性レベルを2倍にして28重量%にした。
【0129】
実施例11〜19の詳細な組成を、表3に示す。
【0130】
【表8】

【0131】
実施例2〜10のすべては、SAの低い導電性を使用し、それらのL値は高く、黒色のみの導電率は>1GΩであった。実施例11〜19は、より高いSAを持つ黒色導電性、および/またはペースト中に高レベルの黒色導電性を使用すること、および/またはより厚みのある黒色電極を使用することのいずれかによって、L値および黒色導電率を改善することができることを示すように設計される。
【0132】
したがって実施例11〜19は、単層(黒色のみ)構成にして試験をした。
【0133】
【表9】

【0134】
すべての実施例は、L値が既に低い値(<10)である場合を除き、黒色電極の厚さが増大するとL値が低下することを示している。すべての実施例は、L値が既に低い値(<10)である場合を除き、黒色電極内の導電性レベルが上昇したときにL値が低下することを示している。
【0135】
実施例1〜2と13〜14では、黒色導電性のSAが増大すると、L値が低下する。
【0136】
実施例17〜18は、黒色電極厚さが増大すると、黒色抵抗が低下することを示す。
【0137】
実施例13〜17、14〜18は、黒色電極内の導電性レベルが上昇すると、黒色抵抗が低下することを示す。
【0138】
実施例1〜2は、黒色導電性のSAが増大すると、黒色抵抗が低下することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の一実施形態による、AC PDPデバイスの概略を示す、拡大斜視図である。
【図2a】ガラス基板(5)上で、当業者に知られている従来方法に従ってSnOまたはITOを使用して形成された透明電極(1)上に、黒色電極を形成する感光性厚膜組成物層(10)を付着させ、次いでその厚膜組成物層(10)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥させるステップを示す図である。
【図2b】第1の付着された黒色電極組成物層(10)に、バス電極を形成するための感光性厚膜導体組成物(7)を付着させ、次いでその厚膜組成物層(7)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥するステップを示す図である。
【図2c】第1の付着された黒色電極組成物層(10)および第2のバス電極組成物層(7)を、これらの現像後に正確な電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)と相関するよう配列させた黒色電極およびバス電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光するステップを示す図である。
【図2d】0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第1の黒色導電性組成物層(10)および第2のバス電極組成物層(7)の露光済み部分(10a、7a)を現像するステップを示す図である。
【図2e】部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結するステップを示す図である。
【図3a】ガラス基板(5)上で、当業者に知られている従来方法に従いSnOまたはITOを使用して形成された透明電極(1)上に、黒色電極を形成する感光性厚膜組成物層(10)を付着させ、次いでこの厚膜組成物層(10)を、窒素または空気雰囲気中で乾燥させるステップを示す図である。
【図3b】第1の付着された黒色電極組成物層(10)を、その現像後に正確な黒色電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)に相関するよう配列させた黒色電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光するステップを示す図である。
【図3c】層(10)の未露光部分(10b)を除去するため、0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第1の黒色導電性組成物層(10)の露光済み部分(10a)を現像するステップを示す図である。
【図3d】部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結するステップを示す図である。
【図3e】第1の感光性厚膜組成物層(10)の、焼成されパターニングされた部分(10a)による黒色電極(10a)に、バス電極を形成する感光性厚膜組成物層(7)を付着させ、次いで窒素または空気雰囲気中で乾燥するステップを示す図である。
【図3f】第2の付着されたバス電極組成物層(7)を、その現像後に正確な電極パターンをもたらす露光条件を使用して、透明電極(1)および黒色電極(10a)に相関するよう配列させたバス電極のパターンに対応した形状を有するフォトツールまたはターゲット(13)を通して、化学線(典型的な場合、紫外線源)で画像通りに露光するステップを示す図である。
【図3g】層(7)の未露光部分(7b)を除去するため、0.4重量%の炭酸ナトリウム水溶液またはその他のアルカリ水溶液などの塩基性水溶液中で、第2のバス導電性組成物層(7)の露光された部分(7a)を現像するステップを示す図である。
【図3h】部分品を、基板材料に応じて450〜650℃の温度で焼成して、無機結合剤および導電性成分を焼結するステップを示す図である。
【符号の説明】
【0140】
1 透明電極
5 ガラス基板
7 バス導体電極
7a 露光済み部分
7b 未露光部分
8 誘電体層
10 黒色電極(感光性厚膜電極層)
10a 露光済み部分
10b 未露光部分
11 MgO層
13 フォトツール(ターゲット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)無機物質の微細粒子であって、
(a)Ba、Ru、Ca、Cu、Sr、Bi、Pb、および希土類金属から選択された2種以上の元素の酸化物から選択された、金属的なまたは半金属的な導電率を有しかつ表面と重量との比が2から20m/gである金属酸化物と、
(b)ガラス転移温度が300から600℃の範囲であり、表面積と重量との比が10m/g以下であり、かつ該粒子の少なくとも85重量%が0.1〜10μmの範囲のサイズを有する無機結合剤と
を含む無機物質の微細粒子が、
(II)(a)コポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物である水性の現像可能な光架橋性ポリマーであって、コポリマーまたはインターポリマーのそれぞれが、(1)C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、またはこれらの組合せを含む非酸性コモノマーと、(2)エチレン系不飽和カルボン酸含有部分を含む酸性コモノマーであって、該カルボン酸含有部分の2〜20%が、第1および第2の官能単位を有する反応性分子と反応し、ただし第1の官能単位はビニル基であり、第2の官能単位は該カルボン酸部分と反応することによって化学結合を形成することが可能なコモノマーとを含み、全ポリマー重量の少なくとも10重量%の酸含量を有し、ガラス転移温度が50から150℃の範囲であり、重量平均分子量が2000〜250000の範囲であるコポリマー、インターポリマー、またはこれらの混合物を形成するものであるポリマーと、
(b)有機溶媒と
を含む有機媒体に、分散されていることを特徴とする組成物。
【請求項2】
金属的なまたは半金属的な導電率を有する前記金属酸化物は、Ba、Ru、Ca、Cu、La、Sr、Y、Nd、Bi、およびPbから選択された2種以上の元素の酸化物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビニル基は、メタクリレート基、アクリレート基、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の官能単位は、エポキシド、アルコール、アミン、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記無機物質は、RuO、ルテニウムをベースにした多元酸化物、またはこれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記無機物質は、Au、Ag、Pd、Pt、Cu、またはこれらの混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機媒体は、光開始系をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機媒体は、光硬化性モノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機結合剤は、ガラス結合剤組成物全体の重量%に対して、Biを55〜85%、SiOを0〜20%、Alを0〜5%、Bを2〜20%、ZnOを0〜20%、BaO、CaO、およびSrOから選択された酸化物の1種または複数を0〜15%、NaO、KO、CsO、LiO、およびこれらの混合物から選択された酸化物の1種または複数を0〜3%含み、前記ガラス結合剤組成物が、鉛フリーでありまたは実質的に鉛フリーであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
スクリーン印刷に適したペーストの形をとることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、前記有機溶媒が除去されるよう乾燥されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物の層を含むシート。
【請求項12】
前記組成物は、前記有機媒体が実質的に除去されるように、かつ前記無機物質が実質的に焼結されるように加熱されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物の層を含む物品。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物から形成されることを特徴とする黒色電極。
【請求項14】
請求項6に記載の組成物から形成されることを特徴とする単層黒色電極。
【請求項15】
請求項13および14のいずれか一項に記載の電極を含むことを特徴とするフラットパネルディスプレイデバイス。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【図3h】
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【公開番号】特開2006−321976(P2006−321976A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−64796(P2006−64796)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】