説明

(メタ)アクリル酸エステル、その製造方法、およびその重合体

【課題】 塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、該(メタ)アクリル酸エステルの重合体及び該重合体を用いたレジスト組成物を提供する。
【解決手段】 式(1)の(メタ)アクリル酸エステル及びこれを単量体とする重合体及び該重合体をレジスト樹脂とすることにより上記課題は達成される。
【化1】


(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、R1〜R4は、R1、R2の少なくとも一つとR3、R4の少なくとも一つとが一緒になって、それぞれが結合している炭素原子と共に環式炭化水素基を形成し、環を形成しない残りのR1〜R4は水素原子またはアルキル基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、およびその製造方法に関する。また、本発明は、この(メタ)アクリル酸エステルを重合した重合体、およびその製造方法に関する。また、本発明は、この重合体を使用したレジスト組成物、および、パターン製造方法に関し、特に、エキシマレーザー、電子線およびX線を使用する微細加工に好適な化学増幅型レジスト用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶素子の製造における微細加工の分野においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。その微細化の手法としては、一般に、照射光の短波長化が試みられている。具体的には、従来のg線(波長:438nm)、i線(波長:365nm)に代表される紫外線から深紫外線(Deep Ultra Violet:DUV)へと照射光が変化してきている。
【0003】
現在では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が実用化され、さらなる短波長のArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術も導入されようとしている。さらに、次世代の技術として、F2エキシマレーザー(波長:157nm)リソグラフィー技術が研究されている。また、これらとは若干異なるタイプのリソグラフィー技術として、電子線リソグラフィー技術、EUVリソグラフィー技術についても精力的に研究されている。
【0004】
このような短波長の照射光あるいは電子線に対する高解像度のレジストとして、光酸発生剤を含有する「化学増幅型レジスト」が提唱され、現在、この化学増幅型レジストの改良および開発も精力的に進められている。
【0005】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーには、種々のレジストが提案されている(例えば、特許文献1)ものの、レジストパターンのラインエッジラフネスやすそ引きが発生し、微細加工の精度が下がってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2003−122007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として有用な(メタ)アクリル酸エステル、および製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、この(メタ)アクリル酸エステルを重合した重合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、この重合体を使用したレジスト組成物、および、パターン製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、環構造の特定の位置にシアノ基を含有する新規な(メタ)アクリル酸エステルが、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として有用であること、この(メタ)アクリル酸エステルを重合した重合体は、レジスト組成物の原料樹脂として特に有用であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルである。
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、R1〜R4は、R1、R2の少なくとも一つとR3、R4の少なくとも一つとが一緒になって、それぞれが結合している炭素原子と共に環式炭化水素基を形成し、環を形成しない残りのR1〜R4は水素原子またはアルキル基を表わす。ここで、環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコールでエステル化されたカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい。)
【0013】
また、本発明は、下記式(2)で表されるエポキシドをシアノ化し、得られる下記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物をエステル化する上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

(式(2)、(3)中、R1〜R4は、式(1)と同義である。)
【0016】
さらに、本発明は、下記式(4)で表される構成単位を含有する重合体である。
【0017】
【化4】

(式(4)中、R及びR1〜R4は、式(1)と同義である。)
【0018】
また、本発明は、上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物を重合する上記式(4)で表される構成単位を含有する重合体の製造方法である。
【0019】
さらにまた、本発明は、上記式(4)で表される構成単位を含有する重合体を含むレジスト組成物である。
【0020】
また、本発明は、上記レジスト組成物を被加工基盤上に塗布する工程と、250nm以下の波長の光、電子線またはX線で露光する工程と、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程とを含むパターン製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明よると、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として有用な(メタ)アクリル酸エステルを提供することができる。また、本発明により、レジスト用組成物として使用したときに、十分な感度および解像度を備えた上に、ラインエッジラフネスの点でも優れ、更にすそ引きの発生が少ないレジスト用重合体を提供することができる。また、本発明により、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、前記式(1)で表される。
【0023】
なお、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸およびアクリル酸の総称を表す。また、本発明において、環式炭化水素基とは、橋かけ環式炭化水素基を含む。
【0024】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、シアノ基を含有することが特徴である。シアノ基を含有することで、密着性、耐熱性、透明性、溶解性に優れ、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として好適に用いることができる。そして、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの重合体はレジストの構成成分樹脂として用いた際に、ラインエッジラフネスが低減される。また、本発明の(メタ)アクリル酸エステルは前記式(1)で表わされるように、特定の位置にシアノ基を有する。この位置にシアノ基を存在することで、この(メタ)アクリル酸エステルを単量体成分として重合して得た重合体をレジストの構成成分樹脂として用いた際に、パターンのすそ引きが低減される。
【0025】
式(1)において、R1(および/またはR2)とR3(および/またはR4)とが、それぞれの結合している炭素原子と共に形成する炭化水素基としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ボルナン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ピナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、テトラシクロドデカン環、トリシクロデカン環、デカヒドロナフタレン環等が挙げられ、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、ピナン環、トリシクロデカン環が好ましい。環式炭化水素基としては、環構造が2以上であることが、その重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際にドライエッチング耐性が高くなるため好ましい。また前記環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素巣1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコールでエステル化されたカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい。置換基としては、その重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際に、パターン形状が良好であることから、ヒドロキシ基およびアルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基が好ましい。前記アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、シクロヘキソシキエチル基、シクロヘキソシキメチル基が挙げられる。
【0026】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては下記式(1−1)〜(1−27)が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
中でも、他の単量体との共重合性に優れ、耐熱性、安定性に特に優れる点から、式(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−6)、(1−9)で表される単量体が好ましく、重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際にパターン形状が良好であることから、式(1−12)、(1−21)で表される(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0029】
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、位置異性体、光学異性体を含む場合があるが、異性体1種を単独で用いてもよく、2種以上の異性体の混合物を用いてもよい。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(2)で表されるエポキシドをシアノ化し、得られた下記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物をエステル化することによって製造できる。
【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

(式(2)、(3)中、R1〜R4は、式(1)と同義である。)
【0033】
原料である上記式(2)で表されるエポキシドとしては、下記式(5)で表わされるオレフィンを酸化して得られるものや、市販品を使用できる。
【0034】
【化8】

(式(5)中、R1〜R4は、式(1)と同義である。)
【0035】
上記式(2)で表わされるエポキシドの具体例としては、下記式(2−1)〜(2−27)で表わされるエポキシドが挙げられる。
【0036】
【化9】

【0037】
中でも、他の単量体との共重合性に優れ、耐熱性、安定性に特に優れる(メタ)アクリル酸エステルが得られる点から、式(2−1)、(2−2)、(2−4)、(2−6)、(2−9)で表されるエポキシドが好ましく、重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際にパターン形状が良好である(メタ)アクリル酸エステルが得られることから、式(2−12)、(2−21)で表されるエポキシドが好ましい。
【0038】
上記式(2)で表わされるエポキシドをシアノ化することにより、前記式(3)で表わされるシアノヒドリン化合物が得られる。このシアノ化反応において使用されるシアノ化剤としては、シアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリメチルシリルシアン、アセトンシアノヒドリンなどが挙げられる。シアノ化剤としては、中でも、安全性の点から、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリメチルシリルシアンが好ましく、また、安価である点から、シアン化水素、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムが好ましい。また、このシアノ化反応は、酸性条件下でも、アルカリ性条件下でも進行する。反応速度の点から、シアノ化剤としてシアン化カリウムを使用し、アルカリ性条件下でシアノ化反応を行うことが好ましい。
【0039】
反応溶媒は、特に限定されないが、反応速度の点から、水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)などの極性溶媒が好ましく、水、DMSOが特に好ましい。
【0040】
反応温度は、反応速度の点から、0℃以上が好ましく、30℃以上が更に好ましい。また、生成物の分解を抑制する点から、150℃以下が好ましく、100℃以下が更に好ましい。
【0041】
得られたシアノヒドリン化合物は、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法によって精製してもよいし、精製せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
【0042】
上記式(3)で表わされるシアノヒドリン化合物の具体例としては、下記式(3−1)〜(3−27)で表わされる化合物が挙げられる。
【0043】
【化10】

【0044】
中でも、他の単量体との共重合性に優れ、耐熱性、安定性に特に優れる(メタ)アクリル酸エステルが得られる点から、式(3−1)、(3−2)、(3−4)、(3−6)、(3−9)で表されるシアノヒドリン化合物が好ましく、重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際にパターン形状が良好である(メタ)アクリル酸エステルが得られることから、式(3−12)、(3−21)で表されるシアノヒドリン化合物が好ましい。
【0045】
次に、得られた上記式(3)で表わされるシアノヒドリン化合物を(メタ)アクリル酸エステルとすることで、本発明の(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
【0046】
このとき用いられる反応には、上記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物と、
(イ)(メタ)アクリル酸メチルを始めとする低級(メタ)アクリル酸エステルと反応させるエステル交換反応、
(ロ)(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸と反応させるエステル化反応、
(ハ)(メタ)アクリル酸と反応させる縮合反応、
などがある。
【0047】
また、上記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物を酢酸エステル、ギ酸エステルなど他のカルボン酸のエステルへと変換した後、(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換反応を行い、本発明の(メタ)アクリル酸エステルとすることも含む。
【0048】
上記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物を、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミドなどの(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸などの酸無水物と反応させる際には、通常塩基触媒が使用される。塩基触媒は生成する酸を中和するものであれば特に限定されないが、例えばトリエチルアミン、ピリジン、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。このときの反応温度は通常−80℃〜100℃である。
【0049】
上記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物を、(メタ)アクリル酸と反応させる際には通常縮合剤が使用される。縮合剤は一般的な脱水縮合剤であればどれでも使用可能であり、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、プロパンホスホン酸無水物等が挙げられ、この際には4−ジメチルアミノピリジンやトリエチルアミン等のアミン系塩基を併用してもよい。なお、このときの反応温度は通常−30℃〜100℃である。
【0050】
上記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物を、(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換する際には通常のエステル交換触媒が使用される。触媒は一般的なエステル交換反応用触媒であればどれでも使用可能であり、例えば、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどのジアルキル錫オキシド類などが挙げられる。なお、このときの反応温度は通常−30℃〜150℃である。
【0051】
また、(メタ)アクリル酸エステル化反応を行う際には、重合が起きる場合があるため、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、重合を抑制するものであれば特に限定されないが、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、フェノチアジン、ブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。また、空気あるいは酸素を吹き込みながら反応を行うことも重合抑制に有効である。
【0052】
また、得られた(メタ)アクリル酸エステルは、抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶など常法によって精製することが望ましい。
【0053】
本発明の重合体は、下記式(4)で表される構成単位を含有し、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂原料として有用である。
【0054】
【化11】

(式(4)中、R及びR1〜R4は、式(1)と同義である。)
【0055】
中でも、本発明の重合体は、金属エッチング用、フォトファブリケーション用、製版用、ホログラム用、カラーフィルター用、位相差フィルム用等のレジスト組成物の原料樹脂として特に有用である。本発明の重合体は、波長250nm以下の光に対する透明性に優れるので、KrFレジスト用重合体、ArFレジスト用重合体、F2レジスト用重合体、電子線レジスト用重合体およびX線レジスト用重合体として使用することができ、中でも、ArFレジスト用重合体として好適に使用できる。特に、光酸発生剤を用いた化学増幅型ポジ型レジストに好適に用いられる。
【0056】
本発明の重合体は、シアノ基を含有する。シアノ基を含有することで、密着性、耐熱性、透明性、溶解性に優れ、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂の原料として好適に用いることができる。また、本発明の重合体の構成単位は、式(4)で表わされるように、特定の位置にシアノ基を有する。この位置にシアノ基を有することで、レジストの構成成分樹脂として用いた際に、パターンのすそ引きが低減されることから特に好適に用いられる。
【0057】
本発明の重合体は、式(4)で表される構成単位の中でも、安定性、耐熱性、光学特性、低吸水性に優れる点で、R1(および/またはR2)とR3(および/またはR4)とが、それぞれの結合している炭素原子と共に形成する、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ボルナン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ピナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、テトラシクロドデカン環、トリシクロデカン環、デカヒドロナフタレン環等の環式炭化水素基を有していることが好ましい。環式炭化水素基としては、環構造が2以上であることが、その重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際にドライエッチング耐性が高くなるため好ましい。また前記環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素巣1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコールでエステル化されたカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい。置換基としては、重合体をレジスト用樹脂原料として利用した際に、パターン形状が良好であることから、ヒドロキシ基およびアルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基、が好ましい。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、シクロヘキソシキエチル基、シクロヘキソシキメチル基が挙げられる。
【0058】
式(4)で表される構成単位の具体例としては下記式(4−1)〜(4−27)が挙げられる。
【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
本発明の重合体は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体を必要により他の単量体とともに重合することで製造することができる。中でも、耐熱性、安定性に特に優れることから、式(4−1)、(4−2)、(4−4)、(4−6)、(4−9)で表される構成単位を含む重合体が好ましく、レジスト用樹脂原料として利用した際にパターン形状が良好であることから、式(4−12)、(4−21)で表される構成単位を含む重合体が好ましい。
【0062】
本発明の重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。共重合体成分としては、目的に応じて任意の単量体が使用でき、共重合比も、目的に応じて適宜決めればよい。また、本発明の重合体と、他の重合体と混合して用いてもよい。
【0063】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸i−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸i−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル、α−トリフルオロメチルアクリル酸メチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸エチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−トリフルオロメチルアクリル酸n−プロピル、α−トリフルオロメチルアクリル酸i−プロピル、α−トリフルオロメチルアクリル酸n−ブチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸i−ブチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸t−ブチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸メトキシメチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸1−エトキシエチル等の直鎖または分岐構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−t−ペルフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−i−プロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびカルボン酸無水物;エチレン、プロピレン、ノルボルネン、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の重合体をレジスト材料として用いる場合には、レジスト材料構成成分単量体として好適に用いられる任意の単量体と共重合することが好ましい。具体的には、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルと、下記式(6−1)〜(6−67)等で表される化合物とを共重合することが、感度、解像度、ドライエッチング耐性などレジスト性能が優れる重合体を得られる点から好ましい。
【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
また、以上に例示された単量体は、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
本発明の重合体をレジスト組成物として用いる場合、上記式(4)で表される構成単位の比率は、パターン形状が良好である点から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上が更に好ましい。すそ引きが少ないことから、50モル%以下が好ましく、40モル%以下が更に好ましい。
【0070】
また、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの共重合成分は、感度、解像度に優れる点から、式(6−1)、(6−2)、(6−16)、(6−5)、(6−57)、(6−58)、(6−64)、(6−65)および(6−66)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、また、基板密着性に優れる点から、式(6−23)、(6−24)、(6−28)、(6−29)、(6−32)、(6−36)、(6−40)、(6−47)、(6−48)、(6−59)、(6−60)および(6−63)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、パターン形状が良好であることから、式(6−19)および(6−56)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましく、エッチング耐性が優れる点から、式(6−22)および(6−67)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましい。中でも、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを10〜30モル%、式(6−1)、(6−2)、(6−16)、(6−57)、(6−58)、(6−64)、(6−65)、(6−66)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を30〜60モル%、式(6−23)、(6−24)、(6−28)、(6−29)、(6−39)、(6−40)、(6−47)、(6−59)、(6−60)、(6−63)で表される単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を30〜60モル%の割合で共重合した共重合体が感度、解像度、ラインエッジラフネスに優れ、パターンのすそ引きが少ない点からから、特に好ましい。
【0071】
また、本発明の重合体において、各構成単位は任意のシーケンスを取り得る。したがって、本発明の重合体は、共重合体の場合、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0072】
また、本発明の重合体の質量平均分子量は特に限定されないが、1,000以上であることが好ましく、また、1,000,000以下であることが好ましい。本発明の重合体をレジスト材料として用いる場合には、重合体の質量平均分子量は、ドライエッチング耐性およびレジスト形状の点から、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが特に好ましい。また、本発明のレジスト用重合体の質量平均分子量は、レジスト溶液に対する溶解性および解像度の点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、20,000以下であることが特に好ましい。
【0073】
また、本発明の重合体を製造するための重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が挙げられる。また、分子量、分子量分布や立体規則性を制御する必要がある場合には、リビング重合に代表される、精密重合と呼ばれる重合方法を用いてもよい。
【0074】
一般に、重合体を得るための製造プロセスとしては、塊状重合プロセス、懸濁重合プロセス、乳化重合プロセス、気相重合プロセス、溶液重合プロセス等がある。これらの製造プロセスは、製造しようとする重合体に応じて適宜決めればよい。例として、レジスト用共重合体を製造する場合は、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する必要があること、共重合体の分子量を比較的低くする必要があること等から、多くの場合、溶液重合プロセスが採用されている。さらに、溶液重合プロセスの中でも、製造バッチの違いによる平均分子量や分子量分布等の振れが小さく、再現性のある共重合体が簡便に得られることから、あらかじめ単量体、重合開始剤を有機溶剤に溶解させた単量体溶液を一定温度に保持した有機溶剤中に滴下する、いわゆる滴下重合法が採用される。
【0075】
また、本発明の重合体は、通常、重合開始剤の存在下で、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物を重合して製造される。このような重合開始剤を使用する重合プロセスでは、まず重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点として単量体の連鎖重合が進行する。
【0076】
本発明の重合体の製造に用いられる重合開始剤として、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0077】
本発明の重合体を製造する際には、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用することにより、低分子量の重合体を製造する場合に重合開始剤の使用量を少なくすることができ、また、得られる重合体の分子量分布を小さくすることができる。
【0078】
好適な連鎖移動剤としては、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、1−チオグリセロール等が挙げられる。
【0079】
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、使用する単量体全量に対して1〜25モル%が好ましい。また、連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、通常、使用する単量体全量に対して1〜20モル%が好ましい。
【0080】
重合温度は特に限定されないが、通常、50℃以上であることが好ましく、150℃以下であることが好ましい。
【0081】
滴下重合法において用いる有機溶剤として、用いる単量体、重合開始剤および得られる重合体、連鎖移動剤を併用する場合はその連鎖移動剤のいずれをも溶解できる溶剤が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、1,4−ジオキサン、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA。)、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0082】
溶液重合等の方法によって製造された重合体溶液は、必要に応じて、1,4−ジオキサン、アセトン、THF、MIBK、γ−ブチロラクトン、PGMEA、乳酸エチル等の良溶媒で適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水、ヘキサン、酢酸エチル等の多量の貧溶媒中に滴下して重合体を析出させることで精製してもよい。この工程は一般に再沈殿と呼ばれ、重合溶液中に残存する未反応の単量体や重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。その析出物を濾別し、十分に乾燥して本発明の重合体を得る。また、濾別した後、乾燥せずに湿粉のまま使用することもできる。
【0083】
本発明のレジスト組成物は、式(4)で表される構成単位を含む本発明の重合体を溶剤に溶解したものである。レジスト組成物が化学増幅型レジスト組成物であるときは、さらに光酸発生剤を溶解したものである。本発明の重合体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。なお、溶液重合等によって得られた重合体溶液から重合体を分離することなく、そのままレジスト組成物に使用すること、あるいは、適当な溶剤で希釈してレジスト組成物に使用することもできる。また、本発明のレジスト組成物には、本発明の重合体以外の重合体を含んでいてもよい。
【0084】
本発明のレジスト組成物において、本発明のレジスト用重合体を溶解させる溶剤は使用条件等に応じて任意に選択される。
【0085】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン等の直鎖もしくは分岐鎖ケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類;PGMEA等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;1,4−ジオキサン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
溶剤の含有量は、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して200質量部以上であり、300質量部以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して5000質量部以下であり、2000質量部以下であることがより好ましい。
【0087】
本発明のレジスト用重合体を化学増幅型レジストに使用する場合は、光酸発生剤を用いる。
【0088】
本発明の化学増幅型レジスト組成物に含有される光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択することができる。光酸発生剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0089】
このような光酸発生剤として、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。光酸発生剤としては、中でも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好ましく、具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリ(tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0090】
光酸発生剤の含有量は、選択された光酸発生剤の種類により適宜決められるが、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であることがより好ましい。光酸発生剤の含有量をこの範囲にすることにより、露光により発生した酸の触媒作用による化学反応を十分に生起させることができる。また、光酸発生剤の含有量は、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して20質量部以下であり、10質量部以下であることがより好ましい。光酸発生剤の含有量をこの範囲にすることにより、レジスト組成物の安定性が向上し、組成物を塗布する際の塗布むらや現像時のスカム等の発生が十分に少なくなる。
【0091】
さらに、本発明の化学増幅型レジスト組成物には、含窒素化合物を配合することもできる。含窒素化合物を含有させることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などがさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜を露光し、露光後ベーク(PEB)して、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0092】
含窒素化合物は、公知のものいずれも使用可能であるが、アミンが好ましく、中でも、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
【0093】
ここで「低級脂肪族アミン」とは、炭素数5以下のアルキルまたはヒドロキシアルキルのアミンのことをいう。
【0094】
第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。含窒素化合物としては、中でも、トリエタノールアミンなどの第3級アルカノールアミンがより好ましい。
【0095】
含窒素化合物は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。含窒素化合物の含有量は、選択された含窒素化合物の種類などにより適宜決められるが、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。含窒素化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、含窒素化合物の含有量は、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して2質量部以下であることが好ましい。含窒素化合物の含有量をこの範囲にすることにより、感度の劣化を小さくすることができる。
【0096】
また、本発明の化学増幅型レジスト組成物には、有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体を配合することもできる。これらの化合物を含有させることにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を防止することができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などがさらに向上する。
【0097】
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好ましい。
【0098】
リンのオキソ酸、または、その誘導体としては、例えば、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体などが挙げられ、中でも、ホスホン酸が好ましい。
【0099】
これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の含有量は、選択された化合物の種類などにより適宜決められるが、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。これらの化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の含有量は、通常、レジスト用重合体(本発明の重合体)100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。これらの化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターンの膜減りを小さくすることができる。
【0100】
なお、含窒素化合物と有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体との両方を本発明の化学増幅型レジスト組成物に含有させることもできるし、いずれか片方のみを含有させることもできる。
【0101】
さらに、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これらの添加剤の配合量は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0102】
本発明のレジスト用重合体は、金属エッチング用、フォトファブリケーション用、製版用、ホログラム用、カラーフィルター用、位相差フィルム用等のレジスト組成物として使用してもよい。
【0103】
次に、本発明のパターン製造方法の一例について説明する。
【0104】
最初に、パターンを形成するシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、このレジスト組成物が塗布された被加工基板は、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥し、基板上にレジスト膜を形成する。
【0105】
次いで、このようにして得られたレジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射する(露光)。露光に用いる光は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーまたはF2エキシマレーザーであることが好ましく、特にArFエキシマレーザーであることが好ましい。また、電子線やX線で露光することも好ましい。
【0106】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、基板をアルカリ現像液に浸漬し、露光部分を現像液に溶解除去する(現像)。アルカリ現像液は公知のものいずれを用いてもよい。そして、現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0107】
通常、レジストパターンが形成された被加工基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。エッチングを行った後、レジストは、通常、剥離剤を用いて除去される。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
実施例、比較例において、(メタ)アクリル酸エステル、重合体の物性測定およびレジストの評価は以下の方法で行った。
【0110】
<重合体の重量平均分子量>
約20mgの重合体を5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー社製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件:
分離カラム;昭和電工社製のShodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にして使用、
溶剤;THF(流量1.0mL/min)、
検出器;示差屈折計、
測定温度;40℃、
注入量;0.1mL、および
標準ポリマー;ポリスチレン。
【0111】
<重合体の平均共重合組成比(モル%)>
1H−NMRの測定により求めた。この測定には、日本電子(株)製、GSX−400型FT−NMR(商品名)を用いて、重合体試料を重水素化クロロホルム、重水素化アセトンあるいは重水素化ジメチルスルホキシドに約5質量%になるよう溶解し、直径5mmφの試験管に入れ、測定温度40℃、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算で行った。
【0112】
<レジスト組成物の調製>
レジスト用重合体100質量部と、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフレート2質量部を、PGMEA700部に入れ、よく混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、レジスト組成物溶液を調製した。
【0113】
<レジストパターンの形成>
調製したレジスト組成物溶液をシリコンウエハー上にスピンコートし、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベークを行い、膜厚0.4μmのレジスト膜を形成した。次いで、ArFエキシマレーザー露光機(波長:193nm)を使用して露光した後、ホットプレート上で120℃、60秒間露光後ベークを行った。次いで、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液にて室温で現像し、純水で洗浄し、乾燥してレジストパターンを形成した。
【0114】
<感度>
0.16μmのライン・アンド・スペースパターンのマスクが0.16μmの線幅に転写される露光量(mJ/cm2)を感度として測定した。
【0115】
<解像度>
前記露光量で露光したときに解像されるレジストパターンの最小寸法(μm)を解像度とした。
【0116】
<ラインエッジラフネス>
マスクにおける0.20μmのレジストパターンを再現する最小露光量により得られた0.20μmのレジストパターンの長手方向の側端5μmの範囲について、日本電子製、JSM−6340F型電界放射形走査型電子顕微鏡(商品名)により、パターン側端があるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求めて3σを算出した。この値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0117】
実施例1
下記式(A−1)で表されるメタクリル酸エステル(CNCMA)の合成。
【0118】
【化17】

【0119】
温度計、攪拌機、滴下ロートを備えたフラスコに、ジメチルスルホキシド100mlを入れ、水素化リチウム8.0gを加えた後、攪拌して懸濁させた。氷浴で冷却しながら、滴下ロートを用いて、アセトンシアノヒドリン100mlを滴下して1時間攪拌した。ここにシクロヘキセンオキシド19.6gを滴下ロートから滴下した後、内温を75℃に昇温した。2時間反応させた後、氷浴で冷却した。攪拌しながら水1リットルを加え、酢酸エチル1リットルで抽出し、分液ロートを用いて、有機層を分離した。有機層を濃縮し、濃縮物を減圧蒸留で精製したところ、下記式(3−1)で表される化合物10.8gを得た。
【0120】
【化18】

【0121】
冷却管、温度計、攪拌機、空気導入管を備えたフラスコに、上記式(3−1)で表される化合物10.0g、メタクリル酸メチル80.0g、p−メトキシフェノール0.0125gおよびテトライソプロポキシチタン2.218gを加えた。エアーバブリングを行いながら、攪拌し、内温95℃に昇温した。3時間反応させた後、氷浴で冷却した。反応液を酢酸エチル80mlで希釈し、冷却したまま4.9gを加えたところ、沈殿が生成した。ここに純水40mlを加えたところ、沈殿は溶解した。分液ロートを用いて有機層を分離した。有機層を濃縮し、減圧蒸留にて精製したところ、上記式(A−1)で表されるメタクリル酸エステル(CNCMA)12.0gを得た。
【0122】
得られたCNCMAの1H−NMR及び質量分析は下記の通りであった。また、その測定チャートをそれぞれ図1、図2として示す。
1H−NMR(ppm(CDCl3)):δ1.2〜2.2(11H)、2.75(1H,m)、4.95(1H,m)、5.6(1H,m)、6.1(1H,m)。
・質量分析(m/e):41、69、107、193(M+)。
【0123】
実施例2
下記式(B−1)で表される構成単位を有する重合体の合成
【0124】
【化19】

【0125】
実施例1で製造したCNCMA2.0gおよび2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2gをTHF8.0gに溶解し、窒素雰囲気下、攪拌しながら70℃で6時間加熱した。この溶液を200mlのメタノール中に滴下し、無色の沈殿を得た。これを濾過し、得られた粉末を、50℃の減圧乾燥機で24時間乾燥した。上記式(B−1)で表される構成単位を有する重合体1.70gを得た。なお、得られた重合体を重水素化クロロホルムに溶解して測定した1H−NMR(図3)から上記構成単位を有していることが確認できた。また、重合体の質量平均分子量は、10,500であった。
【0126】
実施例3
共重合体C−1の合成
窒素導入口、攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA168.8質量部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。実施例1で得たCNCMA38.6質量部、下記式(D−1)で表される2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(MAdMA)93.6質量部、下記式(D−2)で表されるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(GBLMA)68.0質量部、PGMEA300.3質量部、AIBN6.56質量部およびn−オクチルメルカプタン(nOM)1.75質量部を混合した単量体溶液を、滴下装置を用い、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下し、その後、80℃で1時間保持した。
【0127】
【化20】

【0128】
【化21】

【0129】
次いで、得られた反応溶液を約30倍量のメタノール中に攪拌しながら滴下し、無色の析出物の沈殿(共重合体C−1)を得た。沈殿物に残存する単量体を取り除くために、得られた沈殿を濾別し、重合に使用した単量体に対して約30倍量のメタノール中で沈殿を洗浄した。そして、得られた沈殿を、減圧下50℃で約40時間乾燥した。
【0130】
得られた共重合体C−1の各物性を測定した結果を表1に示す。
【0131】
比較例1
共重合体C−2の合成
実施例3において、CNCMAに替えて下記式(D−3)で表される5−または6−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イルメタクリレート(CNNMA)を等モル(41.0質量部)用い、溶解するPGMEAを300.3質量部から303.9質量部に増やす他は実施例3と同様にして、共重合体C−2を得た。
【0132】
【化22】

【0133】
得られた共重合体C−2の各物性を測定した結果を表1に示す。
【0134】
比較例2
共重合体C−3の合成
実施例3において、最初のPGMEAを174.0質量部とし、CNCMAに替えて下記式(D−4)で表される3−ヒドロキシアダマンチル−1−メタクリレート(HAdMA)を等モル(47.2質量部)用い、溶解するPGMEAを300.3質量部から303.9質量部に増やす他は実施例3と同様にして、共重合体C−3を得た。
【0135】
【化23】

【0136】
得られた共重合体C−3の各物性を測定した結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
本発明の重合体を用いたレジスト組成物(実施例3)は、十分な感度および解像度を備えた上に、ラインエッジラフネス、すそ引きの点でも優れていた。一方、比較例1の重合体を用いたレジスト組成物は、すそ引きの点において劣っており、比較例2の重合体を用いたレジスト組成物は、ラインエッジラフネスの点において劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の重合体は、塗料、接着剤、粘着剤、インキ用レジン、レジスト、成型材料、光学材料等の構成成分樹脂として有用である。特に、本発明の重合体を、DUVエキシマレーザーリソグラフィー、電子線リソグラフィー、あるいはEUVリソグラフィー等においてレジスト樹脂として用いた場合に、高感度、高解像度であり、ラインエッジラフネスに優れ、すそ引きが少ないため、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成することができる。そのため、本発明の重合体を用いたレジスト組成物は、DUVエキシマレーザーリソグラフィー、電子線リソグラフィー、あるいはEUVリソグラフィー、特にArFエキシマレーザー(波長:193nm)を使用するリソグラフィーに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例1で製造したCNCMAの1H−NMRのチャートである。
【図2】実施例1で製造したCNCMAの質量分析のチャートである。
【図3】実施例2で製造した重合体B−1の1H−NMRのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、R1〜R4は、R1、R2の少なくとも一つとR3、R4の少なくとも一つとが一緒になって、それぞれが結合している炭素原子と共に環式炭化水素基を形成し、環を形成しない残りのR1〜R4は水素原子またはアルキル基を表わす。ここで、環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシアルキル基もしくはテトラヒドロピラニル基もしくはテトラヒドロフラニル基で保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコールでエステル化されたカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
下記式(2)で表されるエポキシドをシアノ化し、得られる下記式(3)で表されるシアノヒドリン化合物をエステル化する上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化2】

【化3】

(式(2)、(3)中、R1〜R4は、式(1)と同義である。)
【請求項3】
下記式(4)で表される構成単位を含有する重合体。
【化4】

(式(4)中、R及びR1〜R4は、式(1)と同義である。)
【請求項4】
上記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物を重合する上記式(4)で表される構成単位を含有する重合体の製造方法。
【請求項5】
上記式(4)で表される構成単位を含有する重合体を含むレジスト組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物を被加工基盤上に塗布する工程と、250nm以下の波長の光、電子線またはX線で露光する工程と、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程とを含むパターン製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−8600(P2006−8600A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188400(P2004−188400)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】