2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザのための自己較正方法
【課題】2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザの自己較正方法の提供。
【解決手段】周波数シンセサイザ1が、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部を備え、高周波アクセス部は、電圧制御発振器の第2の入力に接続されたデジタル/アナログ変換器20を備える。較正動作のために、高周波アクセス部に、第1の位相ロック・ループ内の位相比較器3に接続された第2の電荷ポンプ14および第2のループ・フィルタ15を備える。第2の電荷ポンプ14が、オンに切り替えられると、第2の位相ロック・ループを形成する。デジタル/アナログ変換器20の利得を較正するために、決められた出力周波数に予めロックされた第2の位相ロック・ループの第2の電荷ポンプ14を切り離した後に、電圧比較器21が、デジタル/アナログ変換器20の出力電圧を、第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較する。
【解決手段】周波数シンセサイザ1が、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部を備え、高周波アクセス部は、電圧制御発振器の第2の入力に接続されたデジタル/アナログ変換器20を備える。較正動作のために、高周波アクセス部に、第1の位相ロック・ループ内の位相比較器3に接続された第2の電荷ポンプ14および第2のループ・フィルタ15を備える。第2の電荷ポンプ14が、オンに切り替えられると、第2の位相ロック・ループを形成する。デジタル/アナログ変換器20の利得を較正するために、決められた出力周波数に予めロックされた第2の位相ロック・ループの第2の電荷ポンプ14を切り離した後に、電圧比較器21が、デジタル/アナログ変換器20の出力電圧を、第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを送信するために2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザ用の自己較正方法に関する。周波数シンセサイザは、特に低電力型にあっては、電圧制御発振器を含む第1の低周波位相ロック・ループと、電圧制御発振器に接続されたデジタル/アナログ変換器を備えた高周波アクセス部とを備える。また、第1の位相ロック・ループは、基準発振器、基準発振器に接続された位相比較器、第1のローパス・ループ・フィルタ、および、このシンセサイザからの高周波出力信号にもとづいて位相比較器に分周信号を供給するように変調器によって制御されるマルチモード分周器カウンタを備える。電圧制御発振器は、第1の入力では、第1のループ・フィルタからもたらされる第1の制御電圧信号によって制御され、第2の入力では、高周波データを変調するための第2の制御電圧信号によって制御される。
【0002】
また、本発明は、自己較正方法を実施するために2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザに関する。
【背景技術】
【0003】
2点周波数変調は、電圧制御発振器にて、デジタル/アナログ変換器を有する高周波パスと、低周波位相ロック・ループ内の低周波パスとの寄与を加算することによって規定される。高周波状態遷移の間には、高周波パスが最も重要になり、低周波状態遷移の間には、低周波パスが最も重要になる。しかし、両方のパスが、高変調周波数に広がる決められた帯域をカバーするようにデータ周波数を変調するのに寄与する。
【0004】
欧州特許第0961412号が、データを送信するために2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザを開示している。この周波数シンセサイザは、低周波位相ロック・ループにおいて可変分周器を制御することによってデータ変調を行うためのシグマ・デルタ型変調器と、高周波変調を行うためのDACデジタル/アナログ変換器とを使用する。このDAC変換器は、可変利得を有し、この可変利得は、デジタル制御ユニットによって調節され、データ周波数変調用のデジタル制御信号によって制御される。また、このデジタル制御信号は、低周波変調を、DAC変換器によって供給される低周波変調と組み合わせるために、シグマ・デルタ変調器にも送出される。
【0005】
このシンセサイザにおいては、相対遅延変動は、低周波ループにおける変調に相関して、DAC変換器を通過する変調信号に行われる。しかし、この文献は、低周波位相ロック・ループによっておよびDAC変換器を介して変調されたデータのスペクトル振幅レベルの適合化に関しては、一切開示していない。その結果、データ送信のための状態遷移周波数に応じて、望ましくない障害が生じることがある。
【0006】
また、米国特許公開出願第2003/0043950号が、2点周波数変調を用いる位相ロック・ループ周波数シンセサイザを開示している。この周波数シンセサイザもやはり、低周波位相ロック・ループおよびシグマ・デルタ変調器、ならびに、電圧制御発振器VCOに対して出力が直接作用するDACデジタル/アナログ変換器を備える。データが、電圧制御発振器VCOの第1の入力では変調器により制御されるマルチモード分周器によって変調される一方で、VCO発振器の第2の入力ではDAC変換器によって変調される。2点変調により、この周波数シンセサイザは、狭い帯域の位相ロック・ループによる高周波変調データの減衰を防ぐ。
【0007】
DAC変換器の利得を調節することが可能であっても、低周波ループにおいておよびデジタル/アナログ変換器において変調されたデータのスペクトル振幅レベルを等化することは可能とはならない。前述のシンセサイザと同様に、このことにより、状態遷移の間のデータ変調に関していくつかのひずみの問題がもたらされる場合がある。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0046488号においては、2点変調を用いる周波数シンセサイザのための補償方法が説明されている。この周波数シンセサイザは、とりわけ、第1のローパス位相ロック・ループPLL、および、2点データ変調を行うためにアナログ変調信号とデジタル変調信号との間の振幅を補償するための高周波パスを備える。
【0009】
この文献の第1の位相ロック・ループは、位相周波数検出器、第1の電荷ポンプ、第1のローパス・ループ・フィルタ、および電圧制御発振器VCOを備える。電圧制御発振器は、入力に、第1の入力が第1のローパス・フィルタに接続された加算器を備え、後に周波数生成ユニットが続く。フラクショナルN(分数分周)プログラマブル分周器が、電圧制御発振器と位相周波数検出器との間の第1のループを閉じ、位相周波数検出器は、基準発振器から基準信号を受ける。この分周器は、変調器により供給されるデジタル変調信号によって制御される。
【0010】
この文献の高周波補償パスは、第2の位相ロック・ループをさらに形成するために、第2の電荷ポンプと、電圧制御発振器の加算器の第2の入力にスイッチを介して接続された第2のローパス・ループ・フィルタとを備える。第2の電荷ポンプおよび第2のローパス・フィルタは、第1の電荷ポンプおよび第1のローパス・フィルタと同一の構造を有する。さらに、この高周波パスは、補償ユニットを備える。この補償ユニットは、比較器であり、その出力は、アナログ変調ユニットに接続され、このアナログ変調ユニットは、デジタル/アナログ変換器からアナログ変調信号を受ける。
【0011】
この文献の補償方法によれば、第1のデジタル変調信号が、変調器によって供給されて、第1の位相ロック・ループを第1の周波数に同調させる。この第1の周波数は、デジタル変調振幅を減じられた、送信チャネルの選択された搬送周波数に相当する。第2の段階においては、第2のデジタル変調信号が、変調器によって供給されて、第1の切断されたループの第1のフィルタにおいて第1の周波数に対応する第1の電圧を維持しつつ、第2のロック・ループを作動させる。この第2のデジタル変調信号により、デジタル変調振幅を加算された選択された搬送周波数に相当する第2の周波数が、合成される。電圧制御発振器の加算器による加算が行われることにより、第2のフィルタにおける第2の電圧は、アナログ変調振幅の2倍に対する差分信号を表す。そのため、この差分信号は、減結合アナログ変調ユニットの出力に供給される電圧に2を乗算したものと比較される。比較されるこれらの信号の振幅は、比較器によって等化され、これは、アナログ変調ユニットに作用して、アナログ変調出力信号の振幅を適合化する。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0046488号の2点変調を用いる周波数シンセサイザの1つの欠点は、第1のループと第2のループとの間の利得が同一であることである。これにより、このようなシンセサイザのために作製される集積回路上に、同一のサイズを有する各ローパス・ループ・フィルタを設けることを、重要なこととして位置づけることが必要となる。別の欠点は、電圧制御発振器が、入力に、シンセサイザの低周波パスを高周波パスの寄与に加算することが可能な加算器を備えることである。発振器にとって第1の制御電圧および第2の制御電圧は、互いに無関係ではなく、加算結果が発振器の出力周波数を決定するので、直接加算される。これにより、電圧制御発振器の2つの入力の異なる感度を適合化させることは、可能とはならない。別の欠点は、直接較正されるのは、デジタル/アナログ変換器ではなくアナログ変換ユニットであり、これにより、シンセサイザの集積回路中に電気消費量のより大きな変換器を設置することは、2つのユニットが常時作動状態にあるため、困難となることである。さらに、較正は新たに選択された搬送周波数ごとに実施されなければならず、これは欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0961412号
【特許文献2】米国特許公開出願第2003/0043950号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0046488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、先行技術の上述の欠点を解消しつつ、第1の低周波位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器によって変調されたデータのスペクトル振幅レベルを容易に等化することが可能である、周波数シンセサイザのための自己較正方法を提供することである。これは、シンセサイザを作製するため高周波アクセス部内のいくつかの電子構成要素のサイズを最小限に抑えつつ、および全体的な電力消費量を低減させることにより、送信すべきデータの高周波状態遷移、または低周波ループによる状態遷移の遅延の際に生じるひずみを防がなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、上述の周波数シンセサイザのための自己較正方法であって、
a)第1の段階において、シンセサイザの出力にて決められた搬送周波数を有する送信チャネルに第1のローパス位相ロック・ループをロックし、電圧制御発振器に対して第2の制御電圧信号を第1の基本電圧レベルにて生成するために、決められた搬送周波数に対応する第1のコマンド・ワードを高周波アクセス部の変換器に供給するステップと、
b)第2の段階において、電圧制御発振器の第1の入力に対する決められた搬送周波数に対応する第1の制御電圧信号を第1のループ・フィルタによって保ちつつ、第1の位相ロック・ループを開き、第1のループの位相比較器と電圧制御発振器の第2の入力との間に接続された高周波アクセス部に第2のローパス・ループ・フィルタを備える第2の位相ロック・ループを、最大変調周波数偏移に加算された搬送周波数に等しい第1の出力周波数でロックし、第1の出力周波数を表す第2のコマンド・ワードをデジタル/アナログ変換器に供給するステップと、
c)第3の段階において、電圧制御発振器の第2の入力に対する第1の出力周波数に対応する第2の制御電圧信号を第2のループ・フィルタによって保ちつつ、第2の位相ロック・ループを開き、変換器の出力電圧を第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、変換器の出力電圧が第2の電圧レベルの第2のフィルタ内に蓄えられた電圧と均等になるように、変換器の利得を自動的に較正し、第1の基本電圧レベルとの第2の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
d)変調段階において、第1の位相ロック・ループを閉じ、較正されたデジタル/アナログ変換器および第1の位相ロック・ループの変調器に遅延することなく供給される一連のコマンド・ワードを使用する電圧制御発振器によって2点データ変調を行うために、変換器の出力を電圧制御発振器の第2の入力に接続するステップと
を含む、自己較正方法に関する。
【0016】
自己較正方法の特定のステップが、独立請求項2から7において規定される。
【0017】
本発明による自己較正方法の1つの利点は、作動中の第2の位相ロック・ループの高周波アクセス部の第2のループ・フィルタの端子間の電圧を、デジタル/アナログ変換器の出力電圧と比較することにより、この変換器の利得を調節することによって、前記変換器を自動的に較正させることが可能である点にある。この変換器の利得は、第1の位相ロック・ループの第1のロック段階が、決められた搬送周波数の送信チャネルに対して行われ、第1のコマンド・ワードが、変換器の入力に供給されて前記搬送周波数に対応するようになった後で、調節される。
【0018】
第2のループによる第1の高出力変調周波数での第2のロック段階の後に、第2のループは、第3の段階において切断される。これにより、第2のループ・フィルタにおいていかなる変動も伴うことなく、ほぼ一定の較正電圧が維持される。したがって、高周波アクセス部における電圧比較が、通常は第2の段階において変換器に供給される、第1の高出力変調周波数に対応する第2のコマンド・ワードにもとづいて、この第3の段階において実施されると有利である。したがって、変換器の出力での電圧オフセットまたは偏移は、第1の位相ロック・ループと高周波アクセス部との間の同一変調周波数偏差について、第2のフィルタの端子間の一定の較正電圧によって較正される。
【0019】
有利には、第2の位相ロック・ループが閉じられ、第2の低出力変調周波数でロックされる、第4の段階の後に、自己較正方法の第5の段階が続き、第2のフィルタの端子間に低い較正電圧を蓄えるために、第2のループが切断される。これにより、デジタル/アナログ変換器を、第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧の比較にもとづいて較正することが可能となる。これを行うために、第3のコマンド・ワードが、前記変換器の出力電圧を第2のループ・フィルタの端子間の電圧と比較して、変換器の利得を再度調節するために、変換器に供給される。有利には、データ送信のための周波数変調は、搬送周波数付近における第1の出力周波数と第2の出力周波数との間での切替えによって、行うことが可能である。
【0020】
有利には、第2の位相ロック・ループは、第1の位相ロック・ループの第1のフィルタに比べて小さいサイズを有する第2のフィルタを備える。この第2の小サイズのフィルタにより、電圧制御発振器の第1の入力の第1の感度よりも複数桁の規模で下回る第2の感度、例えば約1/100である第2の感度を有する発振器の第2の入力に、第2の制御電圧を供給することが可能になる。そのため、デジタル/アナログ変換器の較正動作全体は、最少個数の電子構成要素により実施され、これらの電子構成要素は、第1の位相ロック・ループに連結された構成要素に比べて比較的限られた場所を占める。
【0021】
有利には、第1のおよび/または第2の位相ロック・ループは、差動構造、とりわけ電荷ポンプおよびループ・フィルタを有してよい。差動構造により、第1のおよび/または第2の電荷ポンプの漸次的な切断の間に第1のおよび/または第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧におけるいくつかの誤差が、回避される。
【0022】
さらに、本発明の1つの目的は、第1の位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器によって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための手段を備える、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザを提供することである。
【0023】
したがって、本発明は、自己較正方法を実施するための、次の周波数シンセサイザに関するものである、すなわち、
基準発振器、基準発振器に接続される位相比較器、第1の電荷ポンプを介して位相比較器に接続される第1のローパス・ループ・フィルタ、第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号を受けるために、第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器、および、電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号を分周するように変調器によって制御されて、位相比較器において基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器が内に配置される、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、電圧制御発振器の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号を供給するためのデジタル/アナログ変換器を含む高周波アクセス部であって、第2の感度は、第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、第2のバラクタは、第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
を備える周波数シンセサイザであって、
高周波アクセス部には、デジタル/アナログ変換器の較正動作を行うための第2の低周波位相ロック・ループを形成するために、第2の電荷ポンプを介して位相比較器と電圧制御発振器の第2の入力との間に接続させることが可能な第2のループ・フィルタが備えられ、且つ、高周波アクセス部には、当該第2の位相ロック・ループを決められた出力周波数にロックした後に、デジタル/アナログ変換器から直接もたらされる出力電圧を、第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、それによりデジタル/アナログ変換器の利得を自動的に調節するための電圧比較器が備えられて成る、
周波数シンセサイザに関するものである。
【0024】
この周波数シンセサイザの有利な実施形態が、請求項9〜15に規定される。
【0025】
図面により示される少なくとも1つの非限定的な実施形態にもとづく以下の説明において、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザのための自己較正方法、および前記方法を実施するための周波数シンセサイザの、目的、利点、ならびに特徴が、より明らかに提示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザの一実施形態を簡略化された態様において示す図である。
【図2a】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2b】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2c】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2d】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2e】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2f】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図3a】2点周波数シンセサイザの第1の低周波位相ロック・ループおよび高周波アクセスによって変調されたデータの伝達関数およびスペクトル関数のグラフである。
【図3b】2点周波数シンセサイザの第1の低周波位相ロック・ループおよび高周波アクセスによって変調されたデータの伝達関数およびスペクトル関数のグラフである。
【図4a】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【図4b】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【図4c】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明においては、この技術分野の当業者にはよく知られている2点(FSK)周波数変調を用いる周波数シンセサイザの全ての構成要素が、簡略化されて説明される。周波数シンセサイザによって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための自己較正方法の実施に寄与する全ての周波数シンセサイザ要素が、具体的に明記される。
【0028】
図1は、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザ1の好ましい一実施形態を示す。この周波数シンセサイザは、特に、無線周波数信号において周波数変調データを送信するのに使用され得る。この周波数シンセサイザは、2.45GHz付近の周波数帯域において作動するGFSKトランスミッタの重要な部分を形成し得る。この周波数シンセサイザは、例えば0.18μmCMOS技術において作製され得る。
【0029】
主に、周波数シンセサイザ1は、第1の低周波またはローパス位相ロック・ループと、第1の位相ロック・ループの電圧制御発振器VCO10に接続された高周波アクセス部とを備える。高周波アクセス部は、デジタル/アナログ変換器20と、以下において説明される変換器の利得を自動的に較正するための手段とを備える。正確な周波数は、第1の低周波位相ロック・ループを介して得られ、高速の切替えは、高周波アクセス部によって得られる。したがって、高周波アクセス部は、データ変調の間の高周波状態遷移に対して主に使用され、より正確な第1の位相ロック・ループは、低周波状態遷移に対して使用される。
【0030】
まず初めに、第1の低周波位相ロック・ループは、位相比較器3に、16から26MHzの間で指定された周波数を有する基準信号を供給するための、(好ましくは水晶発振器である)基準発振器2を備える。第1のローパス・ループ・フィルタ5が、接続手段の一部を形成する第1の電荷ポンプ4によって位相比較器に接続される。2つのワイヤが、位相比較器3を第1の電荷ポンプに接続して、周知のハイおよびローのデジタル信号を第1の電荷ポンプ4に供給する。この典型的な電荷ポンプの電流は、約3μAでよい。
【0031】
VCO電圧制御発振器10は、2つの並列の専用バラクタを備え、それらは相互に無関係である。第1の発振器バラクタは、第1の高感度入力を有し、第2の発振器バラクタは、第2の低感度入力を有する。発振器出力周波数f(V)は、第1のバラクタによって生成される周波数f1(V1)と、第2のバラクタによって生成される周波数f2(V2)とを加算することにより得られる。静電容量の合計は、これらの2つのバラクタによって実施され、従来の入力電圧合計ではない。
【0032】
したがって、この電圧制御発振器は、第1の位相ロック・ループにおいて例えば400MHz/Vの規模のオーダの第1のバラクタの第1の高感度入力によって接続される。電圧制御発振器の第1の入力は、第1のループ・フィルタ5を介して第1の制御電圧信号KVCOを受け得る。このループ・フィルタは、ローパス・フィルタ・ユニット5の3つのコンデンサ(例えば20pF、200pF、10pF)および2つの抵抗器(例えば100kΩ、16kΩ)の構成により示されるような二次ローパス・フィルタであってよい。第1のループ・フィルタの遮断周波数は、基準発振器2の周波数に応じて、100kHzとなるように選択されてよい。
【0033】
電圧制御発振器10は、5GHz付近の周波数を有し得る高周波信号を生成することが可能である。しかし、トランスミッタGFSKからの変調データの送信は、2.45GHz付近の送信チャネルの搬送周波数で行われる。その結果、第1の位相ロック・ループにおいては、電圧制御発振器10の後には、送信する変調データを含む高周波出力信号SOUTを供給するために、1/2分周器8が続く。
【0034】
高周波出力信号SOUTは、周知のシグマ・デルタ変調器11などの変調器により制御されるマルチモード分周器カウンタ9によって分周される。このシグマ・デルタ変調器は、基本的な三次1−1−1MASH構造にもとづいて作製されてよい。マルチモード分周器カウンタ9は、基準発振器2の基準信号と比較するために、フラクショナルNの除数で分周した(分数分数)信号を第1の位相ロック・ループの位相比較器3に供給する。
【0035】
自己較正方法を実施するために、第1の位相ロック・ループは、第1のループ・フィルタ5と並列して、単体電圧フォロワ6をさらに備え、単体電圧フォロワ6の入力は、第1の電荷ポンプ4の出力と第1のループ・フィルタ5との間に接続される。第1のマルチプレクサ7が、第1の入力で単体電圧フォロワ6から電圧信号を受け、第2の入力で第1のループ・フィルタ5から電圧信号を受ける。第1のマルチプレクサの出力は、電圧制御発振器10の第1の入力に直接接続されて、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。第1の制御電圧信号KVCOは、図示されない第1のマルチプレクサに供給される制御信号の状態に応じて、第1のループ・フィルタ5から直接、または、電圧フォロワから直接もたらされる。
【0036】
以下に説明されるように、単位電圧フォロワ6は、特に第1の電荷ポンプがオフに切り替えられる場合に、自己較正方法において使用される。この場合においては、電圧制御発振器10のバラクタが、幾分かの電流を損失し、これは、電圧フォロワによって補償され、それにより第1のループ・フィルタ5の端子間の電圧は、一定を保って、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。しかし、較正動作が終了すると、単位電圧フォロワ6は、データ変調のために切断されなければならない。
【0037】
電圧フォロワは、このフォロワの帯域幅が、100kHzのオーダである第1のループ・フィルタの遮断周波数の少なくとも10倍でなければならないため、安定性の理由により切断されなければならない。さらに、単体電圧フォロワ6によって生成されるノイズは、位相ノイズに変換され、これは、第1の制御電圧信号KVCOにリンクされた電圧制御発振器10における広利得の問題となり得る。
【0038】
第1の位相ロック・ループは、第1の電荷ポンプ4と電圧制御発振器10との間に差動構造(図示せず)を備えてよい。この構造は、第1の差動電荷ポンプ、第1の差動ループ・フィルタ5、および単位利得差動電圧フォロワ6から形成されてよい。したがって、第1のマルチプレクサ7は、差動電圧フォロワ出力または第1のループ・フィルタ出力を、電圧制御発振器の第1の差動入力に接続することが可能である。有利には、この差動構造においては、第1の差動ループ・フィルタの静電容量値は、第1の非対称ループ・フィルタの静電容量値の半分であり、これにより、集積化の際に第1の差動ループ・フィルタの表面積が縮小される。
【0039】
第1の差動電荷ポンプ4からの差動構造により、第1の低周波位相ロック・ループは、生じ得る障害から隔離される。したがって、この障害は、打ち消され得るが、これは、電圧制御発振器10の第1の入力が高感度(400MHz/V)であることにより、重要となり得る。したがって、選択された送信チャネルの搬送周波数が、第1の位相ロック・ループにより正確に生成される。
【0040】
したがって、2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザ1の高周波アクセス部は、デジタル/アナログ変換器を備える。このデジタル/アナログ変換器20は、スイッチト電流源および能動ポリマー抵抗負荷装置OTAを用いて実装され得る。この電流源は、例えば自己較正方法の第1の段階において受信したコマンド・ワードcomが0である場合などには、キャンセルされる。このワードが0と規定される場合には、これにより、変換器は、変換器の利得における変更による影響を受けないことが可能となる。これは、前記交換器に対する較正動作について有利となり得るものであり、そのことが、図2aから図2fを参照として以下において説明される。
【0041】
デジタル/アナログ変換器の出力電圧信号は、ローパス・フィルタ25においてフィルタリングされる。ローパス・フィルタ25は、変調データのスペクトルにおいて変換器のクロック周波数の約n倍の影像周波数を除去することが可能な、アンチエイリアシング・フィルタである。このクロック周波数は、例えば基準信号周波数と同一であってよい。ローパス・フィルタ25は、第1のフィルタリング動作がデジタル/アナログ変換器20において既に実施されているため、単純な一次RC構造によって形成されてよい。
【0042】
ローパス・フィルタ25によってフィルタリングされた信号は、第2の制御電圧信号KVCO_modとして、第1のバラクタとは無関係な、電圧制御発振器10の第2のバラクタの第2の入力に供給され得る。第1の入力とは無関係な、電圧制御発振器の第2の入力の電圧感度は、4MHz/Vのオーダであってよく、これは、上述の第1の入力の感度の1/100である。これにより、デジタル/アナログ変換器20は、変換器のクロック注入によるより小さなスパーを有しつつ、より大きな振幅で作動することが可能となる。
【0043】
この周波数偏差特性を有するフラット電圧を生じさせるために、電圧制御発振器10の変調バラクタは、その最大動作利得付近で分極されなければならない。4.9GHzでの+500kHzの最大偏差により、マージンが4MHz/V内の感度に対して電圧制御発振器10の周波数特性を有する電圧の十分な直線近似がもたらされる。この場合、+500kHzの周波数偏差を生成するために必要な最大正電圧偏差は、第2の制御電圧信号KVCO_modについてはマージンが125mV内となる。
【0044】
第1の位相ロック・ループの第1のバラクタの感度よりもはるかに低い感度を有する電圧制御発振器の第2のバラクタを使用することにより、必要な電圧または達成すべき周波数変位が最大化されることに、留意すべきである。また、この結果、これにより、あるmVのオーダであってよい比較器21のオフセットの影響、およびデジタル/アナログ変換器20のノイズが、最小限に抑えられる。このオフセットは、第3の段階における最大変調周波数変位(Δf)および第5の較正段階における最小変調周波数変位(−Δf)による、デジタル/アナログ変換器の二重較正によって、さらに除去され得る。
【0045】
デジタル/アナログ変換器20の利得を自動的に較正することを可能にするために、高周波アクセス部も、較正手段を備え、この較正手段は、変換器の自己較正動作の間はオンに切り替えられる。この較正手段は、位相比較器3に接続された第2の電荷ポンプ14と、第2のローパス・ループ・フィルタ15と、第2のループ・フィルタ15の端子間の電圧を変換器20の出力電圧と比較するための電圧比較器21と、変換器の利得を適合化するための比較器出力の制御ロジック22とによって形成される。第2の電荷ポンプ14の典型的な電流は、40μAの領域内がよい。
【0046】
第2のループ・フィルタ15は、抵抗器(例えば400kΩ)および第2のコンデンサ(例えば20pF)と並列する第1のコンデンサ(例えば1pF)によって形成され得る。この第2のループ・フィルタは、電圧制御発振器の第1の入力の感度よりも低い感度を有する第2の入力に制御電圧を供給するための第2の位相ロック・ループの一部であるので、第1のループ・フィルタのサイズよりも小さなサイズを有する。この第2のフィルタの遮断周波数は、77kHzのオーダであってよい。電圧比較器については、そのオフセットは、対応する周波数偏差に小さな誤差が加えられるようにするために、低く、例えば1mVを下回る。さらに、これは、デジタル/アナログ変換器のロジックの較正段階を遅延させないために十分な高さのスルー・レートを有するべきである。オフセット補償スイッチト・コンデンサ・トポロジを、用いることが可能である。
【0047】
第2の位相ロック・ループもまた、第2の電荷ポンプ14と電圧制御発振器10との間に差動構造(図示せず)を備えてよい。この構造は、第2の差動電荷ポンプおよび第2の差動ループ・フィルタ15から形成されてよい。したがって、第2のマルチプレクサ17は、第2のループがロックされる場合には、電圧制御発振器の第2の差動入力に第2のループ・フィルタの出力を接続することが可能である。この差動構造により、PMOSトランジスタの遮断がNMOSトランジスタの遮断よりも遅くまたは速くなり得るため、これは、従来の第2の電荷ポンプの漸次的切断の間の第2のループ・フィルタにおける電圧誤差を防ぐ。有利には、この差動構造においては、第2の差動ループ・フィルタの静電容量値は、第2の非対称ループ・フィルタの静電容量値の半分であり、これにより、集積化の際に第2の差動ループ・フィルタの表面積が、縮小される。
【0048】
第2の電荷ポンプおよび第2のループ・フィルタからなるこの差動構造により、ならびに非対称構造の比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器20を維持するために、第2のループ・フィルタと比較器21の入力との間に変換デバイスを設けるのが有利な場合がある。この変換デバイス(図示せず)は、第2のフィルタの端子間の差動電圧を、デジタル/アナログ変換器の出力電圧と比較される絶対電圧に変換する。この変換デバイスは、増幅器と、増幅器の入力および出力に接続される同一値の4つの抵抗器とによって、従来の態様において作製されてよい。また、2つの電圧フォロワが、第2の差動ループ・フィルタと増幅器の入力に接続される抵抗器との間に設けられてよい。
【0049】
制御ロジック22は、5ビットで規定される利得を供給することが可能である。これにより、最大偏差が250kHzから750kHzの間の、想定し得る全ての利得が可能となり、これは、第2の制御電圧信号KVCO_modが直線となることを確保しつつ、8kHzの最大偏差誤差をもたらすこととなる。この決定アルゴリズムは、ニュートン法にもとづくことが可能である。
【0050】
変換器の自己較正のために、第2のループ・フィルタ15は、第2のマルチプレクサ17を介して電圧制御発振器10の第2の入力に接続される。この場合には、電圧信号は、第2のマルチプレクサ17の別の入力に接続されたローパス・フィルタ25の端子間には送出されず、第2の制御電圧信号KVCO_modとして電圧制御発振器10の第2の入力に送出されない。この自己較正動作の間に、第2の電荷ポンプ14はオンに切り替わり、2つのワイヤにより位相比較器3に接続され、電圧制御発振器の第2の入力に接続された第2のループ・フィルタ15に接続されることにより、第2のローパス位相ロック・ループが実現される。この第2の位相ロック・ループは、第1の位相ロック・ループの別の動態を有するようになされる。
【0051】
したがって、第2の電荷ポンプ14は、第1の電荷ポンプ4と正に同様に連結手段の一部となる。図2aから図2fを参照として以下において説明されるように、電荷ポンプのいずれか一方がオフに切り替えられる場合には、他方がオンに切り替えられ、いずれか一方の位相ロック・ループを閉じるまたは開く。
【0052】
ロック検出器13が、さらに設けられ、2つの電荷ポンプ4、14の2つの入力ワイヤに接続されて、2つのオンに切り替えられた位相ロック・ループのうちの一方がプログラムされた周波数にロックする時点を検出してよい。しかし、特に前記自己較正方法においては、複数の理由により、このタイプのロック検出器を使用することはそれほど多くの場合に有効とはならない。ロック検出器が反応時間を有し、この反応時間が自己較正方法において1つの段階から別の段階に切り替わる際には望ましくない場合があるため、ロック検出器は使用されない場合がある。これは、大きな周波数偏移が認められる、送信チャネルが大きく変化する際にのみ有効である。第1の位相ロック・ループがロックオンすると、位相偏移は非常に小さく、またこれは検出が困難な場合がある。さらに、特に1つの送信チャネルから別の近いチャネルに移るための、このタイプの位相ロック・ループのロック時間は、一般的に知られている。その結果、1つの較正段階から他の較正段階への(決定論的な)切替時間を固定することが好ましい場合がある。
【0053】
例えば所望の最大変調周波数偏差もしくは偏移に加算されるまたはそれから減算される、選択された搬送周波数などに相当する周波数に、第2の位相ロック・ループをロックすることにより、後の段階においてデジタル/アナログ変換器を較正することが可能となる。これを行うために、第2の位相ロック・ループが、いずれかの変調出力周波数にロックした後に、第2のループは、漸次的に切断されて、第2のループ・フィルタ15の端子間にほぼ一定で蓄えられた電圧を維持する。次いで、第2のフィルタの端子間のこの電圧は、電圧比較器21により変換器20の出力電圧と比較される。変換器の出力電圧は、変換器入力に供給されるコマンド・ワードcomにより決定されて、例えば1つのまたは他の所望の変調出力周波数などを表す。したがって、変換器の利得を制御ロジック22によって適合化することが可能となり、制御ロジック22の後には、比較器が続いて、変換器の出力電圧が、第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧と等化される。この利得は、例えばシンセサイザ出力での所望の搬送周波数などを表すコマンド・ワードに応じた基本変換器出力電圧に対して適合化される。
【0054】
自己較正方法のために合成されることとなる周波数をプログラムする際に、シグマ・デルタ変調器11は、デジタル/アナログ変換器20と同一のコマンド・ワードを受ける。これを行うために、第3のマルチプレクサ37が、トランスミッタGFSKの受信モードにおいて、コマンド・ワードcom、または周波数偏移32を入力にて受ける。この周波数偏移により、トランスミッタにより受信された無線周波数信号の周波数に応じて合成すべき周波数を適合化することが可能となる。
【0055】
したがって、モードTx33によって制御される変調モードにおいては、この第3のマルチプレクサ37は、コマンド・ワードcomを加算器12に送出する。加算器は、周波数レジスタ34からもたらされる所望の送信チャネルの周波数に関するワードとコマンド・ワードcomとの加算を実行する。
【0056】
好ましくは、デジタル/アナログ変換器20またはシグマ・デルタ変調器11についての各2進コマンド・ワードcomは、4ビット・ワードである。各2進コマンド・ワードは、変調マルチプレクサとして定義されるマルチプレクサ27を介して供給される。普通は、コンバータの較正動作のためのこの4ビットの2進コマンド・ワードは、−8から+7の間になるように規定されるが、0を基準として対称的になるようにするために、−7から+7までだけで選択される。この場合には、送信チャネルから選択された搬送周波数を表す2進ワード0は、1000である。搬送周波数に加算すべき最大変調周波数偏差を表す2進ワードMaxは、2進ワード1111である。最後に、搬送周波数から減算すべき最大変調周波数を表す2進ワードMinは、2進ワード0001である。この設定は、N符号付きとして規定される。
【0057】
変調マルチプレクサ27が、デジタル/アナログ変換器20に2進ワード0を供給するように、2ビット信号によって制御される場合には、基本変換器出力電圧は、変換器の利得に対する変更による影響を受けない。しかし、変調マルチプレクサ27が、変換器の較正動作のために2進ワードMaxまたは2進ワードMinを供給するように命令される場合には、較正された変換器の利得は、デジタル/アナログ変換器の出力電圧レベルに対して直接的な影響を有する。これにより、電圧比較器21において電圧を比較することにより、搬送周波数を表す出力電圧と変調出力周波数の中の1つを表す出力電圧との間で変換器出力電圧偏差を調節することが可能になる。この態様においては、図2aから図2fを参照として以下において説明されるように、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部において周波数偏差を等化して、データ変調の間の状態遷移におけるひずみを回避することが可能となる。
【0058】
デジタル/アナログ変換器の利得が、自動的に較正される場合には、シンセサイザをデータ変調モードにおくことが可能である。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、基準発振器2からの基準信号により供給されたクロック信号によってクロック制御されるガウス型デジタル・フィルタ30に接続されるように制御される。ガウス型フィルタは、データ信号Tx31を成形して、例えば送信すべきデータに応じて、2MHzまでの周波数で経時的に状態を変化させることが可能な一連の2進コマンド・ワードを供給する。その結果、デジタル/アナログ変換器は、少なくとも1Mビット/秒の最大変調ビットストリーム・レートに従うのに十分な速さのものでなければならず、これは最大で2Mビット/秒までであってよい。
【0059】
電圧制御発振器10により生成された高周波信号の周波数の値は、1/2分周器8の出力で周波数変調データを含む、高周波出力信号SOUTの周波数の2倍であることに留意すべきである。その結果、高周波出力信号SOUTにおいて所望の周波数を得るためには、最大変調周波数偏差または偏移Δfと搬送周波数f0との2倍が供給されなければならない。選択された送信チャネルの搬送周波数は、出力信号SOUTにおいては、この搬送周波数付近で少なくとも1MHzの周波数の周波数変調データと共に、2.45GHz付近の値を有し得る。
【0060】
高周波アクセスによる変調周波数偏差が、較正動作前の第1の位相ロック・ループによる変調周波数偏差と同一でない場合には、これにより、周波数シンセサイザの出力信号においていくつかのひずみまたは切替遅延がもたらされる。シンセサイザの変調帯域の全周波数範囲にわたる変調の際にほぼ一定の周波数偏差を得るためには、デジタル/アナログ変換器は、較正されなければならない。
【0061】
未較正の周波数シンセサイザの第1の位相ロック・ループと高周波アクセス部との間の周波数偏差偏移を提示するために、変調データのスペクトルである図3aおよび図3bを参照とする。これらの図3aおよび図3bは、第1の位相ロック・ループの第1の伝達関数H1と、高周波アクセス部の伝達関数H2とを示す。これらの伝達関数は、例えば入力信号により分周された周波数偏差についてdBなどで表されてよい。2つの伝達関数の振幅は、高周波アクセス部および第1の位相ロック・ループを較正するために等化されなければならない。
【0062】
ハッチングを施した部分で分かるように、第1の伝達関数H1は、第1のループ・フィルタが例えば100kHzのオーダの遮断周波数を有する、低周波変調帯域(BWPLL)を範囲に含む。しかし、第2の伝達関数H2は、fm(1MHz)により規定される最大変調周波数を超え得る帯域を範囲に含む。この周波数シンセサイザは、少なくとも1MHzまでの変調帯域(BWmod)を有するように較正されなければならない。
【0063】
第1の伝達関数H1の最大振幅は、第2の伝達関数H2の最大振幅を下回ることが示されている。振幅偏移ΔHは、一定の変調帯域BWmod全体にわたって最大振幅を得るように補正されなければならない。電圧制御発振器は、2つの伝達関数を重畳し、図3bにおいて図示されるように2つの関数の加算を実行する。
【0064】
さらに、図4a〜図4cは、較正されたまたは未較正の周波数シンセサイザからの出力信号SOUTにおけるデータ変調に対応する、選択された搬送周波数に対する経時的な周波数変化のグラフを示す。データ変調は、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部により、電圧制御発振器を介して組み合わされる。
【0065】
変調状態“1”は、出力信号SOUTにおいて搬送周波数f0と最大変調周波数偏差または偏移Δfとを加算することにより規定され、これはf0+Δfをもたらす。この状態“1”は、ワードMaxに相当するコマンド・ワードにより、デジタル/アナログ変換器およびシグマ・デルタ変調器にもたらされ得る。
【0066】
変調状態“0”は、出力信号SOUTにおいて搬送周波数f0から最大変調周波数偏差または偏移Δfを減算することにより規定され、これはf0−Δfをもたらす。この状態“0”は、ワードMinに相当するコマンド・ワードにより、デジタル/アナログ変換器およびシグマ・デルタ変調器にもたらされ得る。
【0067】
第2の伝達関数の最大振幅が、図3aおよび図3bに示されるように、第1の伝達関数の最大振幅を上回る場合には、図4aに図示されるように、高周波遷移が、低周波遷移に対して強調される。したがって、デジタル/アナログ変換器における利得が過剰に高くなる。最大変調状態変化周波数は、1/Tcとして規定される。
【0068】
対照的に、第1の位相ロック・ループの最大振幅が、高周波アクセス部の最大振幅を上回る場合には、図4bに図示されるように、状態遷移は、比較的遅い。したがって、デジタル/アナログ変換器における利得が不十分になる。
【0069】
図2a〜図2fを参照して以下に説明されるように、デジタル/アナログ変換器の利得が較正されると、図4cに図示されるように、変調帯域全体にわたって出力信号においてひずみまたは切替遅延は見られない。
【0070】
当然ながら、図4a〜図4cの代わりに、第1のループと、デジタル/アナログ変換器を有する高周波アクセス部との間の未較正状態を示すために眼形グラフを示すことが可能であった。較正が実施されると、このグラフはこの眼の孔の最大化状態を呈し、図4aまたは図4bによる未較正では、グラフの一方の軸または他方の軸に沿って平坦化した眼形状を呈する。
【0071】
図2a〜図2fを参照して、第1の低周波位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器20により変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の全ての段階またはステップが、示される。これらの各図においては、停止状態またはオフに切り替えられたシンセサイザの種々のパーツが、点線によって示されることに留意すべきである。したがって、実際のデータ変調段階までのデジタル/アナログ変換器の自動的な較正のための種々の段階の理解がより容易である。周波数シンセサイザ1の全ての要素は、図1を参照として既に説明されているため、さらに詳細には説明しない。
【0072】
図2aは、周波数シンセサイザ1のための自己較正方法の第1の段階またはステップを示す。この第1の段階においては、第1の位相ロック・ループは、選択された送信チャネルの搬送周波数f0にロックされなければならない。
【0073】
変調マルチプレクサ27は、2進コマンド・ワード0を供給して搬送周波数f0を表すように、制御される。この2進ワード0は、デジタル/アナログ変換器20に、ならびにマルチプレクサ37および加算器12を介してシグマ・デルタ変調器11に供給される。さらに、シグマ・デルタ変調器は、第1の位相ロック・ループにより合成されるべき搬送周波数f0を規定することが可能となるように、周波数レジスタ34からもたらされる周波数ワードを受ける。
【0074】
第1の段階においては、第1の電荷ポンプ4が、オンに切り替えられ、第2の電荷ポンプ14が、切り離される。さらに、第1のマルチプレクサ7が、単位電圧フォロワ6の出力を電圧制御発振器のメイン・バラクタの第1の入力に接続するように、制御される。この態様において、第1のループ・フィルタ5に蓄えられた電圧が、電圧フォロワ6を介して送出されて、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。
【0075】
第2のマルチプレクサ17は、ローパス・アンチエイリアシング・フィルタ25の出力を電圧制御発振器10の第2の変調入力に接続するように、制御される。したがって、デジタル/アナログ変換器20は、ローパス・フィルタおよび第2のマルチプレクサ17を介して、レベルがコマンド・ワードcomに応じて決定される、この場合は2進ワード0である第2の制御電圧信号を供給する。この2進ワード0では、前記変換器の第1の基本出力電圧のレベルは、前記変換器の利得における変化と共には変化しない。
【0076】
第1の位相ロック・ループの遮断周波数が低い場合には、第1の低周波ループにより、例えば1または2Mビット/秒のデータ周波数変調を行うことは不可能であることに、注意されたい。さらに、これは、基準発振器の基準周波数が16から26MHzの間であり、十分な速度のループを得るためには150MHzのオーダの周波数を有することが必要となることにも起因する。しかし、150MHzの基準周波数では、周波数シンセサイザの電力消費量を低減させることは不可能であり、消費量の削減が必要となるおそれがある。
【0077】
遮断周波数が、この低周波位相ロック・ループにおいてそれほどに低く設定されるとすれば、これは、主に、シグマ・デルタ変調器により生成されるノイズに起因し、このノイズは、除去されなければならない。しかし、100kHzのオーダの遮断周波数では、周波数シンセサイザは、16MHzの基準周波数でほぼ1/10倍の速度となる。
【0078】
出力信号SOUTにて1MHzの周波数で周波数データを変調することを希望する場合には、帯域幅は、第1の電荷ポンプの後で1MHzに増大されなければならない。低周波ループのこの高速性は、このような低い周波数では、水晶発振器では期待されない。したがって、高周波遷移のために、電圧制御発振器に対して高周波アクセス部がさらに使用される。周波数変調のための周波数差が、第1の位相ロック・ループによって制御され、小さな電圧偏差により、大きな周波数差がもたらされる。したがって、デジタル/アナログ変換器は、第1のループにおいておよび高周波アクセス部によって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するために、正確な利得を与えられなければならず、このことは、特に図2bから図2eを参照として、以下において説明される。
【0079】
デジタル/アナログ変換器を介する高周波アクセスにより、前記変換器は、より正確な第1の低周波ループとの組合せにおいて、周波数変調に高い状態遷移を注入することが可能となる。変調データがある状態から別の状態に高速で移る場合に、デジタル/アナログ変換器が較正されると、デジタル/アナログ変換器により、出力信号においてひずみまたは遅延は観察されず、これは望ましい。
【0080】
ロック検出器13によるロック検出は、選択された搬送周波数に第1の位相ロック・ループがロックされる時点を判定することが可能である。検出されると、これは、図2bに図示される自己較正方法の第2の段階に進められ得る。しかし、先に示したように、このタイプの位相ロック・ループのロック時間は、一般的に知られており、自己較正方法の第1の段階から第2の段階に自動的に進むように設定され得る、またはプログラムされ得る。
【0081】
図2bは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第2の段階またはステップを示す。この第2の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、第1の位相ロック・ループを開くために切り離されなければならず、第2の電荷ポンプ14は、第2のループ・フィルタ15により第2の位相ロック・ループを形成するためにオンに切り替えられなければならない。この第2の段階においては、比較器21および制御ロジック22は、切り離されてよい。
【0082】
さらに、この方法の第2の段階においては、若干の一定電圧誤差が第1のループ・フィルタ5内に依然として蓄えられたままである場合があり、これはその後のデジタル/アナログ変換器の較正誤差をもたらし得るため、第1の電荷ポンプ4を急に切り離ししないように注意を払わなければならない。その結果、このような誤差を回避するように、第1の電荷ポンプを漸次的にオフに切り替えることが好ましい。電荷ポンプをオフに切り替えるためには、約60サイクルが必要である。そのため、第1の位相ロック・ループの帯域幅は、準定常状態プロセスにおいて0Hzとなるまで漸進的におよび継続的に低減される。
【0083】
この第2の段階においては、選択された搬送周波数を表す、第1のループ・フィルタ5内に蓄えられた電圧が、単位電圧フォロワ6および第1のマルチプレクサ7を経由して、第1の制御電圧信号KVCOとして、電圧制御発振器の第1の入力に送出される。この蓄積電圧が、第1の制御電圧信号KVCOに相当する。先に示されたように、電圧フォロワは、第1のループ・フィルタ5の端子間における一定の電圧を維持するために、電圧制御発振器における電流損失を補償することが可能である。
【0084】
第2のマルチプレクサ17は、第2の位相ロック・ループを閉じるために電圧制御発振器の第2の入力に第2のループ・フィルタ15を接続するように、制御される。第2の位相ロック・ループは、第2の段階において、第1のシンセサイザの出力周波数f0+Δfでロックされなければならず、これは、最大変調周波数偏差または偏差Δfに搬送周波数f0を加算したものに一致しなければならない。第2のループ・ロック動作の期間は、40μsのオーダであってよい。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、第2の段階においては停止状態になされるデジタル/アナログ変換器20に、特にシグマ・デルタ変調器11に、2進ワードMaxを供給するように、制御されなければならない。
【0085】
第2のループ・フィルタ15に蓄えられた電圧は、第3の制御電圧信号として、第2の電圧レベルにある電圧制御発振器10の第2の入力に供給される。第2のフィルタ15に蓄えられたこの電圧により、デジタル/アナログ変換器20は、第3の段階において自動的に較正されることが可能になる。
【0086】
図2cは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第3の段階またはステップを示す。この第3の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離されたままであり、第2の電荷ポンプ14は、較正電圧が第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた状態を保ちつつ、切り離される。第2のループ・フィルタ内のこの較正電圧は、電圧制御発振器10の第2の入力との連携において低いリーク電流が観察され得るとしても、変換器の較正ステップ全体の間、ほぼ一定に留まる。較正期間は、約4μsであってよく、これは、第2のループのロック期間の1/10の長さとなる。
【0087】
この第3の段階においては、比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器は、作動している。したがって、作動中の電圧比較器21は、受けた2進ワードMaxを有する変換器20の出力電圧を、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧と比較する。電圧比較器21は、制御ロジック22に作用する。この制御ロジックは、2進ワードの利得を供給し、これは、変換器20の出力電圧が第2の電圧レベルの第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧と同一になるまで、変換器の利得を較正する。
【0088】
デジタル/アナログ変換器の較正動作の間に、複数の電圧ジャンプが、前記変換器の利得を適合化する2進ワードの変化により、変換器出力中に観察される。例えば、変換器20に対して見越した利得が得られるまでに、5つの測定が、比較器21および制御ロジック22によって実行されてよい。このために、二分法マッチング・アルゴリズムが使用されてよい。
【0089】
デジタル/アナログ変換器20の出力での第1の電圧レベルと第2の電圧レベルとの間の電圧偏差または偏移は、第1の位相ロック・ループに対して較正されるべき最大変調周波数偏差または偏移Δfを表す。
【0090】
図2dは、周波数シンセサイザ1のための自己較正方法の第4の段階またはステップを示す。この第4の段階は、周波数シンセサイザを較正するためには必ずしも必要ではない。しかし、第4の段階により、周波数シンセサイザをより良好に直線化することが可能となる。この第4の段階においては、比較器21および制御ロジック22も切り離されてよい。
【0091】
第4の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離しされたままとなって、第1の位相ロック・ループを開状態にし、第2の電荷ポンプ14は、再度オンに切り替えられて、第2のループ・フィルタ15と共に第2の位相ロック・ループを形成する。この第2の位相ロック・ループは、この場合には、第2のシンセサイザ出力周波数f0−Δfにロックされなければならず、これは、搬送周波数f0から最大変調周波数偏差または偏移Δfを減算したものに一致しなければならない。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、この第4の段階においては停止状態になされるデジタル/アナログ変換器20に、特にシグマ・デルタ変調器11に、2進ワードMinを供給するように、制御されなければならない。したがって、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた新規の電圧が、この場合には第3の電圧レベルにある。
【0092】
図2eは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第5の段階を示す。この第5の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離しされたままであり、第2の電荷ポンプ14は、新規の較正電圧が第3の電圧レベルで第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた状態を保ちつつ、再度切り離しをされる。第2のループ・フィルタ内のこの較正電圧は、電圧制御発振器10の第2の入力との連携において低いリーク電流が観察され得るとしても、変換器の較正ステップ全体の間、ほぼ一定に留まる。
【0093】
この第5の段階においては、比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器は、作動している。したがって、電圧比較器21は、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧を、受けた2進ワードMinを有するデジタル/アナログ変換器20の出力電圧と比較する。電圧比較器21の出力は、変換器の出力電圧と第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧とを同一にするように、変換器20の利得を適合化するように、制御ロジック22に作用する。変換器の利得のこの新規のマッチングにより、周波数シンセサイザにおけるいくつかの非直線性欠陥を取り除くことが可能となる。
【0094】
最後に、図2fは、周波数シンセサイザ1が較正され次第の、前記周波数シンセサイザのための自己較正方法の最終時の変調段階を示す。
【0095】
この変調段階においては、第2の電荷ポンプ14は、切り離しされ、第1の電荷ポンプ4は、再度オンに切り替えられる。しかし、この変調段階においては、単位電圧フォロワ6は、切り離しをされなければならない。その結果、第1のマルチプレクサ7は、第1のループ・フィルタ5を電圧制御発振器10の第1の入力に直接接続するように、制御される。
【0096】
高周波アクセスに次いで、第2のマルチプレクサ17が、折り返し防止ローパス・フィルタ25を電圧制御発振器10の第2の入力に直接接続するように、制御される。第2の制御電圧信号KVCO_modは、デジタル/アナログ変換器20によって供給され得る。
【0097】
この場合、変調マルチプレクサ27は、高周波出力信号SOUTにおいて変調されることとなるデータTx31にもとづき、ガウス型デジタル・フィルタ30からもたらされる一連のコマンド・ワードを出力にて供給するように、制御される。この一連のコマンド・ワードは、変換器20へ、ならびにマルチプレクサ37および加算器12を介してシグマ・デルタ変調器11への両方に、供給される。変換器20の利得は較正されるため、第1の位相ロック・ループを高周波アクセス部と組み合わせることによって、いかなるひずみまたはデータ変調切替遅延を伴うことなく、高周波信号を得ることが可能となる。
【0098】
提示した説明から、当業者は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、シンセサイザの自己較正方法および、前記方法を実施するためのシンセサイザのいくつかの変形形態を案出することが可能であろう。接続手段においては、電荷ポンプをスイッチと置き換えることが可能であるが、電荷ポンプの構造は、スイッチの構造よりも比較的単純であり容易である。電圧制御発振器の2つの入力の感度は、変更されてよい。2つ以上のデジタル/アナログ変換器が、較正され、電圧制御発振器の第2の入力に接続されてよい。基準発振器の周波数は、変更されてよい、または適合化されてよい。最後に、電圧制御発振器は、逆位相の2つの高周波信号を出力にて生成することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 周波数シンセサイザ; 2 基準発振器; 3 位相比較器;
4 第1の電荷ポンプ; 5 第1のローパス・ループ・フィルタ;
6 単位電圧フォロワ; 7 第1のマルチプレクサ; 8 1/2分周器;
9 マルチモード分周器カウンタ; 10 電圧制御発振器;
11 シグマ・デルタ変調器; 12 加算器; 13 ロック検出器;
14 第2の電荷ポンプ; 15 第2のローパス・ループ・フィルタ;
17 第2のマルチプレクサ; 20 デジタル/アナログ変換器;
21 電圧比較器; 22 制御ロジック;
25 ローパス・アンチエイリアシング・フィルタ; 27 変調マルチプレクサ;
30 ガウス型デジタル・フィルタ; 31 データ信号Tx; 32 周波数偏移;
33 モードTx; 34 周波数レジスタ; 37 第3のマルチプレクサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを送信するために2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザ用の自己較正方法に関する。周波数シンセサイザは、特に低電力型にあっては、電圧制御発振器を含む第1の低周波位相ロック・ループと、電圧制御発振器に接続されたデジタル/アナログ変換器を備えた高周波アクセス部とを備える。また、第1の位相ロック・ループは、基準発振器、基準発振器に接続された位相比較器、第1のローパス・ループ・フィルタ、および、このシンセサイザからの高周波出力信号にもとづいて位相比較器に分周信号を供給するように変調器によって制御されるマルチモード分周器カウンタを備える。電圧制御発振器は、第1の入力では、第1のループ・フィルタからもたらされる第1の制御電圧信号によって制御され、第2の入力では、高周波データを変調するための第2の制御電圧信号によって制御される。
【0002】
また、本発明は、自己較正方法を実施するために2点FSK変調を用いる周波数シンセサイザに関する。
【背景技術】
【0003】
2点周波数変調は、電圧制御発振器にて、デジタル/アナログ変換器を有する高周波パスと、低周波位相ロック・ループ内の低周波パスとの寄与を加算することによって規定される。高周波状態遷移の間には、高周波パスが最も重要になり、低周波状態遷移の間には、低周波パスが最も重要になる。しかし、両方のパスが、高変調周波数に広がる決められた帯域をカバーするようにデータ周波数を変調するのに寄与する。
【0004】
欧州特許第0961412号が、データを送信するために2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザを開示している。この周波数シンセサイザは、低周波位相ロック・ループにおいて可変分周器を制御することによってデータ変調を行うためのシグマ・デルタ型変調器と、高周波変調を行うためのDACデジタル/アナログ変換器とを使用する。このDAC変換器は、可変利得を有し、この可変利得は、デジタル制御ユニットによって調節され、データ周波数変調用のデジタル制御信号によって制御される。また、このデジタル制御信号は、低周波変調を、DAC変換器によって供給される低周波変調と組み合わせるために、シグマ・デルタ変調器にも送出される。
【0005】
このシンセサイザにおいては、相対遅延変動は、低周波ループにおける変調に相関して、DAC変換器を通過する変調信号に行われる。しかし、この文献は、低周波位相ロック・ループによっておよびDAC変換器を介して変調されたデータのスペクトル振幅レベルの適合化に関しては、一切開示していない。その結果、データ送信のための状態遷移周波数に応じて、望ましくない障害が生じることがある。
【0006】
また、米国特許公開出願第2003/0043950号が、2点周波数変調を用いる位相ロック・ループ周波数シンセサイザを開示している。この周波数シンセサイザもやはり、低周波位相ロック・ループおよびシグマ・デルタ変調器、ならびに、電圧制御発振器VCOに対して出力が直接作用するDACデジタル/アナログ変換器を備える。データが、電圧制御発振器VCOの第1の入力では変調器により制御されるマルチモード分周器によって変調される一方で、VCO発振器の第2の入力ではDAC変換器によって変調される。2点変調により、この周波数シンセサイザは、狭い帯域の位相ロック・ループによる高周波変調データの減衰を防ぐ。
【0007】
DAC変換器の利得を調節することが可能であっても、低周波ループにおいておよびデジタル/アナログ変換器において変調されたデータのスペクトル振幅レベルを等化することは可能とはならない。前述のシンセサイザと同様に、このことにより、状態遷移の間のデータ変調に関していくつかのひずみの問題がもたらされる場合がある。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0046488号においては、2点変調を用いる周波数シンセサイザのための補償方法が説明されている。この周波数シンセサイザは、とりわけ、第1のローパス位相ロック・ループPLL、および、2点データ変調を行うためにアナログ変調信号とデジタル変調信号との間の振幅を補償するための高周波パスを備える。
【0009】
この文献の第1の位相ロック・ループは、位相周波数検出器、第1の電荷ポンプ、第1のローパス・ループ・フィルタ、および電圧制御発振器VCOを備える。電圧制御発振器は、入力に、第1の入力が第1のローパス・フィルタに接続された加算器を備え、後に周波数生成ユニットが続く。フラクショナルN(分数分周)プログラマブル分周器が、電圧制御発振器と位相周波数検出器との間の第1のループを閉じ、位相周波数検出器は、基準発振器から基準信号を受ける。この分周器は、変調器により供給されるデジタル変調信号によって制御される。
【0010】
この文献の高周波補償パスは、第2の位相ロック・ループをさらに形成するために、第2の電荷ポンプと、電圧制御発振器の加算器の第2の入力にスイッチを介して接続された第2のローパス・ループ・フィルタとを備える。第2の電荷ポンプおよび第2のローパス・フィルタは、第1の電荷ポンプおよび第1のローパス・フィルタと同一の構造を有する。さらに、この高周波パスは、補償ユニットを備える。この補償ユニットは、比較器であり、その出力は、アナログ変調ユニットに接続され、このアナログ変調ユニットは、デジタル/アナログ変換器からアナログ変調信号を受ける。
【0011】
この文献の補償方法によれば、第1のデジタル変調信号が、変調器によって供給されて、第1の位相ロック・ループを第1の周波数に同調させる。この第1の周波数は、デジタル変調振幅を減じられた、送信チャネルの選択された搬送周波数に相当する。第2の段階においては、第2のデジタル変調信号が、変調器によって供給されて、第1の切断されたループの第1のフィルタにおいて第1の周波数に対応する第1の電圧を維持しつつ、第2のロック・ループを作動させる。この第2のデジタル変調信号により、デジタル変調振幅を加算された選択された搬送周波数に相当する第2の周波数が、合成される。電圧制御発振器の加算器による加算が行われることにより、第2のフィルタにおける第2の電圧は、アナログ変調振幅の2倍に対する差分信号を表す。そのため、この差分信号は、減結合アナログ変調ユニットの出力に供給される電圧に2を乗算したものと比較される。比較されるこれらの信号の振幅は、比較器によって等化され、これは、アナログ変調ユニットに作用して、アナログ変調出力信号の振幅を適合化する。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0046488号の2点変調を用いる周波数シンセサイザの1つの欠点は、第1のループと第2のループとの間の利得が同一であることである。これにより、このようなシンセサイザのために作製される集積回路上に、同一のサイズを有する各ローパス・ループ・フィルタを設けることを、重要なこととして位置づけることが必要となる。別の欠点は、電圧制御発振器が、入力に、シンセサイザの低周波パスを高周波パスの寄与に加算することが可能な加算器を備えることである。発振器にとって第1の制御電圧および第2の制御電圧は、互いに無関係ではなく、加算結果が発振器の出力周波数を決定するので、直接加算される。これにより、電圧制御発振器の2つの入力の異なる感度を適合化させることは、可能とはならない。別の欠点は、直接較正されるのは、デジタル/アナログ変換器ではなくアナログ変換ユニットであり、これにより、シンセサイザの集積回路中に電気消費量のより大きな変換器を設置することは、2つのユニットが常時作動状態にあるため、困難となることである。さらに、較正は新たに選択された搬送周波数ごとに実施されなければならず、これは欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0961412号
【特許文献2】米国特許公開出願第2003/0043950号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0046488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、先行技術の上述の欠点を解消しつつ、第1の低周波位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器によって変調されたデータのスペクトル振幅レベルを容易に等化することが可能である、周波数シンセサイザのための自己較正方法を提供することである。これは、シンセサイザを作製するため高周波アクセス部内のいくつかの電子構成要素のサイズを最小限に抑えつつ、および全体的な電力消費量を低減させることにより、送信すべきデータの高周波状態遷移、または低周波ループによる状態遷移の遅延の際に生じるひずみを防がなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、上述の周波数シンセサイザのための自己較正方法であって、
a)第1の段階において、シンセサイザの出力にて決められた搬送周波数を有する送信チャネルに第1のローパス位相ロック・ループをロックし、電圧制御発振器に対して第2の制御電圧信号を第1の基本電圧レベルにて生成するために、決められた搬送周波数に対応する第1のコマンド・ワードを高周波アクセス部の変換器に供給するステップと、
b)第2の段階において、電圧制御発振器の第1の入力に対する決められた搬送周波数に対応する第1の制御電圧信号を第1のループ・フィルタによって保ちつつ、第1の位相ロック・ループを開き、第1のループの位相比較器と電圧制御発振器の第2の入力との間に接続された高周波アクセス部に第2のローパス・ループ・フィルタを備える第2の位相ロック・ループを、最大変調周波数偏移に加算された搬送周波数に等しい第1の出力周波数でロックし、第1の出力周波数を表す第2のコマンド・ワードをデジタル/アナログ変換器に供給するステップと、
c)第3の段階において、電圧制御発振器の第2の入力に対する第1の出力周波数に対応する第2の制御電圧信号を第2のループ・フィルタによって保ちつつ、第2の位相ロック・ループを開き、変換器の出力電圧を第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、変換器の出力電圧が第2の電圧レベルの第2のフィルタ内に蓄えられた電圧と均等になるように、変換器の利得を自動的に較正し、第1の基本電圧レベルとの第2の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
d)変調段階において、第1の位相ロック・ループを閉じ、較正されたデジタル/アナログ変換器および第1の位相ロック・ループの変調器に遅延することなく供給される一連のコマンド・ワードを使用する電圧制御発振器によって2点データ変調を行うために、変換器の出力を電圧制御発振器の第2の入力に接続するステップと
を含む、自己較正方法に関する。
【0016】
自己較正方法の特定のステップが、独立請求項2から7において規定される。
【0017】
本発明による自己較正方法の1つの利点は、作動中の第2の位相ロック・ループの高周波アクセス部の第2のループ・フィルタの端子間の電圧を、デジタル/アナログ変換器の出力電圧と比較することにより、この変換器の利得を調節することによって、前記変換器を自動的に較正させることが可能である点にある。この変換器の利得は、第1の位相ロック・ループの第1のロック段階が、決められた搬送周波数の送信チャネルに対して行われ、第1のコマンド・ワードが、変換器の入力に供給されて前記搬送周波数に対応するようになった後で、調節される。
【0018】
第2のループによる第1の高出力変調周波数での第2のロック段階の後に、第2のループは、第3の段階において切断される。これにより、第2のループ・フィルタにおいていかなる変動も伴うことなく、ほぼ一定の較正電圧が維持される。したがって、高周波アクセス部における電圧比較が、通常は第2の段階において変換器に供給される、第1の高出力変調周波数に対応する第2のコマンド・ワードにもとづいて、この第3の段階において実施されると有利である。したがって、変換器の出力での電圧オフセットまたは偏移は、第1の位相ロック・ループと高周波アクセス部との間の同一変調周波数偏差について、第2のフィルタの端子間の一定の較正電圧によって較正される。
【0019】
有利には、第2の位相ロック・ループが閉じられ、第2の低出力変調周波数でロックされる、第4の段階の後に、自己較正方法の第5の段階が続き、第2のフィルタの端子間に低い較正電圧を蓄えるために、第2のループが切断される。これにより、デジタル/アナログ変換器を、第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧の比較にもとづいて較正することが可能となる。これを行うために、第3のコマンド・ワードが、前記変換器の出力電圧を第2のループ・フィルタの端子間の電圧と比較して、変換器の利得を再度調節するために、変換器に供給される。有利には、データ送信のための周波数変調は、搬送周波数付近における第1の出力周波数と第2の出力周波数との間での切替えによって、行うことが可能である。
【0020】
有利には、第2の位相ロック・ループは、第1の位相ロック・ループの第1のフィルタに比べて小さいサイズを有する第2のフィルタを備える。この第2の小サイズのフィルタにより、電圧制御発振器の第1の入力の第1の感度よりも複数桁の規模で下回る第2の感度、例えば約1/100である第2の感度を有する発振器の第2の入力に、第2の制御電圧を供給することが可能になる。そのため、デジタル/アナログ変換器の較正動作全体は、最少個数の電子構成要素により実施され、これらの電子構成要素は、第1の位相ロック・ループに連結された構成要素に比べて比較的限られた場所を占める。
【0021】
有利には、第1のおよび/または第2の位相ロック・ループは、差動構造、とりわけ電荷ポンプおよびループ・フィルタを有してよい。差動構造により、第1のおよび/または第2の電荷ポンプの漸次的な切断の間に第1のおよび/または第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧におけるいくつかの誤差が、回避される。
【0022】
さらに、本発明の1つの目的は、第1の位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器によって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための手段を備える、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザを提供することである。
【0023】
したがって、本発明は、自己較正方法を実施するための、次の周波数シンセサイザに関するものである、すなわち、
基準発振器、基準発振器に接続される位相比較器、第1の電荷ポンプを介して位相比較器に接続される第1のローパス・ループ・フィルタ、第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号を受けるために、第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器、および、電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号を分周するように変調器によって制御されて、位相比較器において基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器が内に配置される、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、電圧制御発振器の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号を供給するためのデジタル/アナログ変換器を含む高周波アクセス部であって、第2の感度は、第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、第2のバラクタは、第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
を備える周波数シンセサイザであって、
高周波アクセス部には、デジタル/アナログ変換器の較正動作を行うための第2の低周波位相ロック・ループを形成するために、第2の電荷ポンプを介して位相比較器と電圧制御発振器の第2の入力との間に接続させることが可能な第2のループ・フィルタが備えられ、且つ、高周波アクセス部には、当該第2の位相ロック・ループを決められた出力周波数にロックした後に、デジタル/アナログ変換器から直接もたらされる出力電圧を、第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、それによりデジタル/アナログ変換器の利得を自動的に調節するための電圧比較器が備えられて成る、
周波数シンセサイザに関するものである。
【0024】
この周波数シンセサイザの有利な実施形態が、請求項9〜15に規定される。
【0025】
図面により示される少なくとも1つの非限定的な実施形態にもとづく以下の説明において、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザのための自己較正方法、および前記方法を実施するための周波数シンセサイザの、目的、利点、ならびに特徴が、より明らかに提示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザの一実施形態を簡略化された態様において示す図である。
【図2a】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2b】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2c】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2d】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2e】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図2f】本発明による方法の1つのステップについて、図1の2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザの作動中の種々の要素を明確に示す、自己較正方法の1つのステップを示す図である。
【図3a】2点周波数シンセサイザの第1の低周波位相ロック・ループおよび高周波アクセスによって変調されたデータの伝達関数およびスペクトル関数のグラフである。
【図3b】2点周波数シンセサイザの第1の低周波位相ロック・ループおよび高周波アクセスによって変調されたデータの伝達関数およびスペクトル関数のグラフである。
【図4a】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【図4b】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【図4c】デジタル/アナログ変換器の利得が較正されない場合の信号ひずみを含む経時的な周波数変調のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明においては、この技術分野の当業者にはよく知られている2点(FSK)周波数変調を用いる周波数シンセサイザの全ての構成要素が、簡略化されて説明される。周波数シンセサイザによって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための自己較正方法の実施に寄与する全ての周波数シンセサイザ要素が、具体的に明記される。
【0028】
図1は、2点周波数変調を用いる周波数シンセサイザ1の好ましい一実施形態を示す。この周波数シンセサイザは、特に、無線周波数信号において周波数変調データを送信するのに使用され得る。この周波数シンセサイザは、2.45GHz付近の周波数帯域において作動するGFSKトランスミッタの重要な部分を形成し得る。この周波数シンセサイザは、例えば0.18μmCMOS技術において作製され得る。
【0029】
主に、周波数シンセサイザ1は、第1の低周波またはローパス位相ロック・ループと、第1の位相ロック・ループの電圧制御発振器VCO10に接続された高周波アクセス部とを備える。高周波アクセス部は、デジタル/アナログ変換器20と、以下において説明される変換器の利得を自動的に較正するための手段とを備える。正確な周波数は、第1の低周波位相ロック・ループを介して得られ、高速の切替えは、高周波アクセス部によって得られる。したがって、高周波アクセス部は、データ変調の間の高周波状態遷移に対して主に使用され、より正確な第1の位相ロック・ループは、低周波状態遷移に対して使用される。
【0030】
まず初めに、第1の低周波位相ロック・ループは、位相比較器3に、16から26MHzの間で指定された周波数を有する基準信号を供給するための、(好ましくは水晶発振器である)基準発振器2を備える。第1のローパス・ループ・フィルタ5が、接続手段の一部を形成する第1の電荷ポンプ4によって位相比較器に接続される。2つのワイヤが、位相比較器3を第1の電荷ポンプに接続して、周知のハイおよびローのデジタル信号を第1の電荷ポンプ4に供給する。この典型的な電荷ポンプの電流は、約3μAでよい。
【0031】
VCO電圧制御発振器10は、2つの並列の専用バラクタを備え、それらは相互に無関係である。第1の発振器バラクタは、第1の高感度入力を有し、第2の発振器バラクタは、第2の低感度入力を有する。発振器出力周波数f(V)は、第1のバラクタによって生成される周波数f1(V1)と、第2のバラクタによって生成される周波数f2(V2)とを加算することにより得られる。静電容量の合計は、これらの2つのバラクタによって実施され、従来の入力電圧合計ではない。
【0032】
したがって、この電圧制御発振器は、第1の位相ロック・ループにおいて例えば400MHz/Vの規模のオーダの第1のバラクタの第1の高感度入力によって接続される。電圧制御発振器の第1の入力は、第1のループ・フィルタ5を介して第1の制御電圧信号KVCOを受け得る。このループ・フィルタは、ローパス・フィルタ・ユニット5の3つのコンデンサ(例えば20pF、200pF、10pF)および2つの抵抗器(例えば100kΩ、16kΩ)の構成により示されるような二次ローパス・フィルタであってよい。第1のループ・フィルタの遮断周波数は、基準発振器2の周波数に応じて、100kHzとなるように選択されてよい。
【0033】
電圧制御発振器10は、5GHz付近の周波数を有し得る高周波信号を生成することが可能である。しかし、トランスミッタGFSKからの変調データの送信は、2.45GHz付近の送信チャネルの搬送周波数で行われる。その結果、第1の位相ロック・ループにおいては、電圧制御発振器10の後には、送信する変調データを含む高周波出力信号SOUTを供給するために、1/2分周器8が続く。
【0034】
高周波出力信号SOUTは、周知のシグマ・デルタ変調器11などの変調器により制御されるマルチモード分周器カウンタ9によって分周される。このシグマ・デルタ変調器は、基本的な三次1−1−1MASH構造にもとづいて作製されてよい。マルチモード分周器カウンタ9は、基準発振器2の基準信号と比較するために、フラクショナルNの除数で分周した(分数分数)信号を第1の位相ロック・ループの位相比較器3に供給する。
【0035】
自己較正方法を実施するために、第1の位相ロック・ループは、第1のループ・フィルタ5と並列して、単体電圧フォロワ6をさらに備え、単体電圧フォロワ6の入力は、第1の電荷ポンプ4の出力と第1のループ・フィルタ5との間に接続される。第1のマルチプレクサ7が、第1の入力で単体電圧フォロワ6から電圧信号を受け、第2の入力で第1のループ・フィルタ5から電圧信号を受ける。第1のマルチプレクサの出力は、電圧制御発振器10の第1の入力に直接接続されて、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。第1の制御電圧信号KVCOは、図示されない第1のマルチプレクサに供給される制御信号の状態に応じて、第1のループ・フィルタ5から直接、または、電圧フォロワから直接もたらされる。
【0036】
以下に説明されるように、単位電圧フォロワ6は、特に第1の電荷ポンプがオフに切り替えられる場合に、自己較正方法において使用される。この場合においては、電圧制御発振器10のバラクタが、幾分かの電流を損失し、これは、電圧フォロワによって補償され、それにより第1のループ・フィルタ5の端子間の電圧は、一定を保って、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。しかし、較正動作が終了すると、単位電圧フォロワ6は、データ変調のために切断されなければならない。
【0037】
電圧フォロワは、このフォロワの帯域幅が、100kHzのオーダである第1のループ・フィルタの遮断周波数の少なくとも10倍でなければならないため、安定性の理由により切断されなければならない。さらに、単体電圧フォロワ6によって生成されるノイズは、位相ノイズに変換され、これは、第1の制御電圧信号KVCOにリンクされた電圧制御発振器10における広利得の問題となり得る。
【0038】
第1の位相ロック・ループは、第1の電荷ポンプ4と電圧制御発振器10との間に差動構造(図示せず)を備えてよい。この構造は、第1の差動電荷ポンプ、第1の差動ループ・フィルタ5、および単位利得差動電圧フォロワ6から形成されてよい。したがって、第1のマルチプレクサ7は、差動電圧フォロワ出力または第1のループ・フィルタ出力を、電圧制御発振器の第1の差動入力に接続することが可能である。有利には、この差動構造においては、第1の差動ループ・フィルタの静電容量値は、第1の非対称ループ・フィルタの静電容量値の半分であり、これにより、集積化の際に第1の差動ループ・フィルタの表面積が縮小される。
【0039】
第1の差動電荷ポンプ4からの差動構造により、第1の低周波位相ロック・ループは、生じ得る障害から隔離される。したがって、この障害は、打ち消され得るが、これは、電圧制御発振器10の第1の入力が高感度(400MHz/V)であることにより、重要となり得る。したがって、選択された送信チャネルの搬送周波数が、第1の位相ロック・ループにより正確に生成される。
【0040】
したがって、2点周波数変調を行うための周波数シンセサイザ1の高周波アクセス部は、デジタル/アナログ変換器を備える。このデジタル/アナログ変換器20は、スイッチト電流源および能動ポリマー抵抗負荷装置OTAを用いて実装され得る。この電流源は、例えば自己較正方法の第1の段階において受信したコマンド・ワードcomが0である場合などには、キャンセルされる。このワードが0と規定される場合には、これにより、変換器は、変換器の利得における変更による影響を受けないことが可能となる。これは、前記交換器に対する較正動作について有利となり得るものであり、そのことが、図2aから図2fを参照として以下において説明される。
【0041】
デジタル/アナログ変換器の出力電圧信号は、ローパス・フィルタ25においてフィルタリングされる。ローパス・フィルタ25は、変調データのスペクトルにおいて変換器のクロック周波数の約n倍の影像周波数を除去することが可能な、アンチエイリアシング・フィルタである。このクロック周波数は、例えば基準信号周波数と同一であってよい。ローパス・フィルタ25は、第1のフィルタリング動作がデジタル/アナログ変換器20において既に実施されているため、単純な一次RC構造によって形成されてよい。
【0042】
ローパス・フィルタ25によってフィルタリングされた信号は、第2の制御電圧信号KVCO_modとして、第1のバラクタとは無関係な、電圧制御発振器10の第2のバラクタの第2の入力に供給され得る。第1の入力とは無関係な、電圧制御発振器の第2の入力の電圧感度は、4MHz/Vのオーダであってよく、これは、上述の第1の入力の感度の1/100である。これにより、デジタル/アナログ変換器20は、変換器のクロック注入によるより小さなスパーを有しつつ、より大きな振幅で作動することが可能となる。
【0043】
この周波数偏差特性を有するフラット電圧を生じさせるために、電圧制御発振器10の変調バラクタは、その最大動作利得付近で分極されなければならない。4.9GHzでの+500kHzの最大偏差により、マージンが4MHz/V内の感度に対して電圧制御発振器10の周波数特性を有する電圧の十分な直線近似がもたらされる。この場合、+500kHzの周波数偏差を生成するために必要な最大正電圧偏差は、第2の制御電圧信号KVCO_modについてはマージンが125mV内となる。
【0044】
第1の位相ロック・ループの第1のバラクタの感度よりもはるかに低い感度を有する電圧制御発振器の第2のバラクタを使用することにより、必要な電圧または達成すべき周波数変位が最大化されることに、留意すべきである。また、この結果、これにより、あるmVのオーダであってよい比較器21のオフセットの影響、およびデジタル/アナログ変換器20のノイズが、最小限に抑えられる。このオフセットは、第3の段階における最大変調周波数変位(Δf)および第5の較正段階における最小変調周波数変位(−Δf)による、デジタル/アナログ変換器の二重較正によって、さらに除去され得る。
【0045】
デジタル/アナログ変換器20の利得を自動的に較正することを可能にするために、高周波アクセス部も、較正手段を備え、この較正手段は、変換器の自己較正動作の間はオンに切り替えられる。この較正手段は、位相比較器3に接続された第2の電荷ポンプ14と、第2のローパス・ループ・フィルタ15と、第2のループ・フィルタ15の端子間の電圧を変換器20の出力電圧と比較するための電圧比較器21と、変換器の利得を適合化するための比較器出力の制御ロジック22とによって形成される。第2の電荷ポンプ14の典型的な電流は、40μAの領域内がよい。
【0046】
第2のループ・フィルタ15は、抵抗器(例えば400kΩ)および第2のコンデンサ(例えば20pF)と並列する第1のコンデンサ(例えば1pF)によって形成され得る。この第2のループ・フィルタは、電圧制御発振器の第1の入力の感度よりも低い感度を有する第2の入力に制御電圧を供給するための第2の位相ロック・ループの一部であるので、第1のループ・フィルタのサイズよりも小さなサイズを有する。この第2のフィルタの遮断周波数は、77kHzのオーダであってよい。電圧比較器については、そのオフセットは、対応する周波数偏差に小さな誤差が加えられるようにするために、低く、例えば1mVを下回る。さらに、これは、デジタル/アナログ変換器のロジックの較正段階を遅延させないために十分な高さのスルー・レートを有するべきである。オフセット補償スイッチト・コンデンサ・トポロジを、用いることが可能である。
【0047】
第2の位相ロック・ループもまた、第2の電荷ポンプ14と電圧制御発振器10との間に差動構造(図示せず)を備えてよい。この構造は、第2の差動電荷ポンプおよび第2の差動ループ・フィルタ15から形成されてよい。したがって、第2のマルチプレクサ17は、第2のループがロックされる場合には、電圧制御発振器の第2の差動入力に第2のループ・フィルタの出力を接続することが可能である。この差動構造により、PMOSトランジスタの遮断がNMOSトランジスタの遮断よりも遅くまたは速くなり得るため、これは、従来の第2の電荷ポンプの漸次的切断の間の第2のループ・フィルタにおける電圧誤差を防ぐ。有利には、この差動構造においては、第2の差動ループ・フィルタの静電容量値は、第2の非対称ループ・フィルタの静電容量値の半分であり、これにより、集積化の際に第2の差動ループ・フィルタの表面積が、縮小される。
【0048】
第2の電荷ポンプおよび第2のループ・フィルタからなるこの差動構造により、ならびに非対称構造の比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器20を維持するために、第2のループ・フィルタと比較器21の入力との間に変換デバイスを設けるのが有利な場合がある。この変換デバイス(図示せず)は、第2のフィルタの端子間の差動電圧を、デジタル/アナログ変換器の出力電圧と比較される絶対電圧に変換する。この変換デバイスは、増幅器と、増幅器の入力および出力に接続される同一値の4つの抵抗器とによって、従来の態様において作製されてよい。また、2つの電圧フォロワが、第2の差動ループ・フィルタと増幅器の入力に接続される抵抗器との間に設けられてよい。
【0049】
制御ロジック22は、5ビットで規定される利得を供給することが可能である。これにより、最大偏差が250kHzから750kHzの間の、想定し得る全ての利得が可能となり、これは、第2の制御電圧信号KVCO_modが直線となることを確保しつつ、8kHzの最大偏差誤差をもたらすこととなる。この決定アルゴリズムは、ニュートン法にもとづくことが可能である。
【0050】
変換器の自己較正のために、第2のループ・フィルタ15は、第2のマルチプレクサ17を介して電圧制御発振器10の第2の入力に接続される。この場合には、電圧信号は、第2のマルチプレクサ17の別の入力に接続されたローパス・フィルタ25の端子間には送出されず、第2の制御電圧信号KVCO_modとして電圧制御発振器10の第2の入力に送出されない。この自己較正動作の間に、第2の電荷ポンプ14はオンに切り替わり、2つのワイヤにより位相比較器3に接続され、電圧制御発振器の第2の入力に接続された第2のループ・フィルタ15に接続されることにより、第2のローパス位相ロック・ループが実現される。この第2の位相ロック・ループは、第1の位相ロック・ループの別の動態を有するようになされる。
【0051】
したがって、第2の電荷ポンプ14は、第1の電荷ポンプ4と正に同様に連結手段の一部となる。図2aから図2fを参照として以下において説明されるように、電荷ポンプのいずれか一方がオフに切り替えられる場合には、他方がオンに切り替えられ、いずれか一方の位相ロック・ループを閉じるまたは開く。
【0052】
ロック検出器13が、さらに設けられ、2つの電荷ポンプ4、14の2つの入力ワイヤに接続されて、2つのオンに切り替えられた位相ロック・ループのうちの一方がプログラムされた周波数にロックする時点を検出してよい。しかし、特に前記自己較正方法においては、複数の理由により、このタイプのロック検出器を使用することはそれほど多くの場合に有効とはならない。ロック検出器が反応時間を有し、この反応時間が自己較正方法において1つの段階から別の段階に切り替わる際には望ましくない場合があるため、ロック検出器は使用されない場合がある。これは、大きな周波数偏移が認められる、送信チャネルが大きく変化する際にのみ有効である。第1の位相ロック・ループがロックオンすると、位相偏移は非常に小さく、またこれは検出が困難な場合がある。さらに、特に1つの送信チャネルから別の近いチャネルに移るための、このタイプの位相ロック・ループのロック時間は、一般的に知られている。その結果、1つの較正段階から他の較正段階への(決定論的な)切替時間を固定することが好ましい場合がある。
【0053】
例えば所望の最大変調周波数偏差もしくは偏移に加算されるまたはそれから減算される、選択された搬送周波数などに相当する周波数に、第2の位相ロック・ループをロックすることにより、後の段階においてデジタル/アナログ変換器を較正することが可能となる。これを行うために、第2の位相ロック・ループが、いずれかの変調出力周波数にロックした後に、第2のループは、漸次的に切断されて、第2のループ・フィルタ15の端子間にほぼ一定で蓄えられた電圧を維持する。次いで、第2のフィルタの端子間のこの電圧は、電圧比較器21により変換器20の出力電圧と比較される。変換器の出力電圧は、変換器入力に供給されるコマンド・ワードcomにより決定されて、例えば1つのまたは他の所望の変調出力周波数などを表す。したがって、変換器の利得を制御ロジック22によって適合化することが可能となり、制御ロジック22の後には、比較器が続いて、変換器の出力電圧が、第2のループ・フィルタの端子間に蓄えられた電圧と等化される。この利得は、例えばシンセサイザ出力での所望の搬送周波数などを表すコマンド・ワードに応じた基本変換器出力電圧に対して適合化される。
【0054】
自己較正方法のために合成されることとなる周波数をプログラムする際に、シグマ・デルタ変調器11は、デジタル/アナログ変換器20と同一のコマンド・ワードを受ける。これを行うために、第3のマルチプレクサ37が、トランスミッタGFSKの受信モードにおいて、コマンド・ワードcom、または周波数偏移32を入力にて受ける。この周波数偏移により、トランスミッタにより受信された無線周波数信号の周波数に応じて合成すべき周波数を適合化することが可能となる。
【0055】
したがって、モードTx33によって制御される変調モードにおいては、この第3のマルチプレクサ37は、コマンド・ワードcomを加算器12に送出する。加算器は、周波数レジスタ34からもたらされる所望の送信チャネルの周波数に関するワードとコマンド・ワードcomとの加算を実行する。
【0056】
好ましくは、デジタル/アナログ変換器20またはシグマ・デルタ変調器11についての各2進コマンド・ワードcomは、4ビット・ワードである。各2進コマンド・ワードは、変調マルチプレクサとして定義されるマルチプレクサ27を介して供給される。普通は、コンバータの較正動作のためのこの4ビットの2進コマンド・ワードは、−8から+7の間になるように規定されるが、0を基準として対称的になるようにするために、−7から+7までだけで選択される。この場合には、送信チャネルから選択された搬送周波数を表す2進ワード0は、1000である。搬送周波数に加算すべき最大変調周波数偏差を表す2進ワードMaxは、2進ワード1111である。最後に、搬送周波数から減算すべき最大変調周波数を表す2進ワードMinは、2進ワード0001である。この設定は、N符号付きとして規定される。
【0057】
変調マルチプレクサ27が、デジタル/アナログ変換器20に2進ワード0を供給するように、2ビット信号によって制御される場合には、基本変換器出力電圧は、変換器の利得に対する変更による影響を受けない。しかし、変調マルチプレクサ27が、変換器の較正動作のために2進ワードMaxまたは2進ワードMinを供給するように命令される場合には、較正された変換器の利得は、デジタル/アナログ変換器の出力電圧レベルに対して直接的な影響を有する。これにより、電圧比較器21において電圧を比較することにより、搬送周波数を表す出力電圧と変調出力周波数の中の1つを表す出力電圧との間で変換器出力電圧偏差を調節することが可能になる。この態様においては、図2aから図2fを参照として以下において説明されるように、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部において周波数偏差を等化して、データ変調の間の状態遷移におけるひずみを回避することが可能となる。
【0058】
デジタル/アナログ変換器の利得が、自動的に較正される場合には、シンセサイザをデータ変調モードにおくことが可能である。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、基準発振器2からの基準信号により供給されたクロック信号によってクロック制御されるガウス型デジタル・フィルタ30に接続されるように制御される。ガウス型フィルタは、データ信号Tx31を成形して、例えば送信すべきデータに応じて、2MHzまでの周波数で経時的に状態を変化させることが可能な一連の2進コマンド・ワードを供給する。その結果、デジタル/アナログ変換器は、少なくとも1Mビット/秒の最大変調ビットストリーム・レートに従うのに十分な速さのものでなければならず、これは最大で2Mビット/秒までであってよい。
【0059】
電圧制御発振器10により生成された高周波信号の周波数の値は、1/2分周器8の出力で周波数変調データを含む、高周波出力信号SOUTの周波数の2倍であることに留意すべきである。その結果、高周波出力信号SOUTにおいて所望の周波数を得るためには、最大変調周波数偏差または偏移Δfと搬送周波数f0との2倍が供給されなければならない。選択された送信チャネルの搬送周波数は、出力信号SOUTにおいては、この搬送周波数付近で少なくとも1MHzの周波数の周波数変調データと共に、2.45GHz付近の値を有し得る。
【0060】
高周波アクセスによる変調周波数偏差が、較正動作前の第1の位相ロック・ループによる変調周波数偏差と同一でない場合には、これにより、周波数シンセサイザの出力信号においていくつかのひずみまたは切替遅延がもたらされる。シンセサイザの変調帯域の全周波数範囲にわたる変調の際にほぼ一定の周波数偏差を得るためには、デジタル/アナログ変換器は、較正されなければならない。
【0061】
未較正の周波数シンセサイザの第1の位相ロック・ループと高周波アクセス部との間の周波数偏差偏移を提示するために、変調データのスペクトルである図3aおよび図3bを参照とする。これらの図3aおよび図3bは、第1の位相ロック・ループの第1の伝達関数H1と、高周波アクセス部の伝達関数H2とを示す。これらの伝達関数は、例えば入力信号により分周された周波数偏差についてdBなどで表されてよい。2つの伝達関数の振幅は、高周波アクセス部および第1の位相ロック・ループを較正するために等化されなければならない。
【0062】
ハッチングを施した部分で分かるように、第1の伝達関数H1は、第1のループ・フィルタが例えば100kHzのオーダの遮断周波数を有する、低周波変調帯域(BWPLL)を範囲に含む。しかし、第2の伝達関数H2は、fm(1MHz)により規定される最大変調周波数を超え得る帯域を範囲に含む。この周波数シンセサイザは、少なくとも1MHzまでの変調帯域(BWmod)を有するように較正されなければならない。
【0063】
第1の伝達関数H1の最大振幅は、第2の伝達関数H2の最大振幅を下回ることが示されている。振幅偏移ΔHは、一定の変調帯域BWmod全体にわたって最大振幅を得るように補正されなければならない。電圧制御発振器は、2つの伝達関数を重畳し、図3bにおいて図示されるように2つの関数の加算を実行する。
【0064】
さらに、図4a〜図4cは、較正されたまたは未較正の周波数シンセサイザからの出力信号SOUTにおけるデータ変調に対応する、選択された搬送周波数に対する経時的な周波数変化のグラフを示す。データ変調は、第1の位相ロック・ループおよび高周波アクセス部により、電圧制御発振器を介して組み合わされる。
【0065】
変調状態“1”は、出力信号SOUTにおいて搬送周波数f0と最大変調周波数偏差または偏移Δfとを加算することにより規定され、これはf0+Δfをもたらす。この状態“1”は、ワードMaxに相当するコマンド・ワードにより、デジタル/アナログ変換器およびシグマ・デルタ変調器にもたらされ得る。
【0066】
変調状態“0”は、出力信号SOUTにおいて搬送周波数f0から最大変調周波数偏差または偏移Δfを減算することにより規定され、これはf0−Δfをもたらす。この状態“0”は、ワードMinに相当するコマンド・ワードにより、デジタル/アナログ変換器およびシグマ・デルタ変調器にもたらされ得る。
【0067】
第2の伝達関数の最大振幅が、図3aおよび図3bに示されるように、第1の伝達関数の最大振幅を上回る場合には、図4aに図示されるように、高周波遷移が、低周波遷移に対して強調される。したがって、デジタル/アナログ変換器における利得が過剰に高くなる。最大変調状態変化周波数は、1/Tcとして規定される。
【0068】
対照的に、第1の位相ロック・ループの最大振幅が、高周波アクセス部の最大振幅を上回る場合には、図4bに図示されるように、状態遷移は、比較的遅い。したがって、デジタル/アナログ変換器における利得が不十分になる。
【0069】
図2a〜図2fを参照して以下に説明されるように、デジタル/アナログ変換器の利得が較正されると、図4cに図示されるように、変調帯域全体にわたって出力信号においてひずみまたは切替遅延は見られない。
【0070】
当然ながら、図4a〜図4cの代わりに、第1のループと、デジタル/アナログ変換器を有する高周波アクセス部との間の未較正状態を示すために眼形グラフを示すことが可能であった。較正が実施されると、このグラフはこの眼の孔の最大化状態を呈し、図4aまたは図4bによる未較正では、グラフの一方の軸または他方の軸に沿って平坦化した眼形状を呈する。
【0071】
図2a〜図2fを参照して、第1の低周波位相ロック・ループと組み合わされたデジタル/アナログ変換器20により変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するための、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の全ての段階またはステップが、示される。これらの各図においては、停止状態またはオフに切り替えられたシンセサイザの種々のパーツが、点線によって示されることに留意すべきである。したがって、実際のデータ変調段階までのデジタル/アナログ変換器の自動的な較正のための種々の段階の理解がより容易である。周波数シンセサイザ1の全ての要素は、図1を参照として既に説明されているため、さらに詳細には説明しない。
【0072】
図2aは、周波数シンセサイザ1のための自己較正方法の第1の段階またはステップを示す。この第1の段階においては、第1の位相ロック・ループは、選択された送信チャネルの搬送周波数f0にロックされなければならない。
【0073】
変調マルチプレクサ27は、2進コマンド・ワード0を供給して搬送周波数f0を表すように、制御される。この2進ワード0は、デジタル/アナログ変換器20に、ならびにマルチプレクサ37および加算器12を介してシグマ・デルタ変調器11に供給される。さらに、シグマ・デルタ変調器は、第1の位相ロック・ループにより合成されるべき搬送周波数f0を規定することが可能となるように、周波数レジスタ34からもたらされる周波数ワードを受ける。
【0074】
第1の段階においては、第1の電荷ポンプ4が、オンに切り替えられ、第2の電荷ポンプ14が、切り離される。さらに、第1のマルチプレクサ7が、単位電圧フォロワ6の出力を電圧制御発振器のメイン・バラクタの第1の入力に接続するように、制御される。この態様において、第1のループ・フィルタ5に蓄えられた電圧が、電圧フォロワ6を介して送出されて、第1の制御電圧信号KVCOを供給する。
【0075】
第2のマルチプレクサ17は、ローパス・アンチエイリアシング・フィルタ25の出力を電圧制御発振器10の第2の変調入力に接続するように、制御される。したがって、デジタル/アナログ変換器20は、ローパス・フィルタおよび第2のマルチプレクサ17を介して、レベルがコマンド・ワードcomに応じて決定される、この場合は2進ワード0である第2の制御電圧信号を供給する。この2進ワード0では、前記変換器の第1の基本出力電圧のレベルは、前記変換器の利得における変化と共には変化しない。
【0076】
第1の位相ロック・ループの遮断周波数が低い場合には、第1の低周波ループにより、例えば1または2Mビット/秒のデータ周波数変調を行うことは不可能であることに、注意されたい。さらに、これは、基準発振器の基準周波数が16から26MHzの間であり、十分な速度のループを得るためには150MHzのオーダの周波数を有することが必要となることにも起因する。しかし、150MHzの基準周波数では、周波数シンセサイザの電力消費量を低減させることは不可能であり、消費量の削減が必要となるおそれがある。
【0077】
遮断周波数が、この低周波位相ロック・ループにおいてそれほどに低く設定されるとすれば、これは、主に、シグマ・デルタ変調器により生成されるノイズに起因し、このノイズは、除去されなければならない。しかし、100kHzのオーダの遮断周波数では、周波数シンセサイザは、16MHzの基準周波数でほぼ1/10倍の速度となる。
【0078】
出力信号SOUTにて1MHzの周波数で周波数データを変調することを希望する場合には、帯域幅は、第1の電荷ポンプの後で1MHzに増大されなければならない。低周波ループのこの高速性は、このような低い周波数では、水晶発振器では期待されない。したがって、高周波遷移のために、電圧制御発振器に対して高周波アクセス部がさらに使用される。周波数変調のための周波数差が、第1の位相ロック・ループによって制御され、小さな電圧偏差により、大きな周波数差がもたらされる。したがって、デジタル/アナログ変換器は、第1のループにおいておよび高周波アクセス部によって変調されるデータのスペクトル振幅レベルを等化するために、正確な利得を与えられなければならず、このことは、特に図2bから図2eを参照として、以下において説明される。
【0079】
デジタル/アナログ変換器を介する高周波アクセスにより、前記変換器は、より正確な第1の低周波ループとの組合せにおいて、周波数変調に高い状態遷移を注入することが可能となる。変調データがある状態から別の状態に高速で移る場合に、デジタル/アナログ変換器が較正されると、デジタル/アナログ変換器により、出力信号においてひずみまたは遅延は観察されず、これは望ましい。
【0080】
ロック検出器13によるロック検出は、選択された搬送周波数に第1の位相ロック・ループがロックされる時点を判定することが可能である。検出されると、これは、図2bに図示される自己較正方法の第2の段階に進められ得る。しかし、先に示したように、このタイプの位相ロック・ループのロック時間は、一般的に知られており、自己較正方法の第1の段階から第2の段階に自動的に進むように設定され得る、またはプログラムされ得る。
【0081】
図2bは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第2の段階またはステップを示す。この第2の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、第1の位相ロック・ループを開くために切り離されなければならず、第2の電荷ポンプ14は、第2のループ・フィルタ15により第2の位相ロック・ループを形成するためにオンに切り替えられなければならない。この第2の段階においては、比較器21および制御ロジック22は、切り離されてよい。
【0082】
さらに、この方法の第2の段階においては、若干の一定電圧誤差が第1のループ・フィルタ5内に依然として蓄えられたままである場合があり、これはその後のデジタル/アナログ変換器の較正誤差をもたらし得るため、第1の電荷ポンプ4を急に切り離ししないように注意を払わなければならない。その結果、このような誤差を回避するように、第1の電荷ポンプを漸次的にオフに切り替えることが好ましい。電荷ポンプをオフに切り替えるためには、約60サイクルが必要である。そのため、第1の位相ロック・ループの帯域幅は、準定常状態プロセスにおいて0Hzとなるまで漸進的におよび継続的に低減される。
【0083】
この第2の段階においては、選択された搬送周波数を表す、第1のループ・フィルタ5内に蓄えられた電圧が、単位電圧フォロワ6および第1のマルチプレクサ7を経由して、第1の制御電圧信号KVCOとして、電圧制御発振器の第1の入力に送出される。この蓄積電圧が、第1の制御電圧信号KVCOに相当する。先に示されたように、電圧フォロワは、第1のループ・フィルタ5の端子間における一定の電圧を維持するために、電圧制御発振器における電流損失を補償することが可能である。
【0084】
第2のマルチプレクサ17は、第2の位相ロック・ループを閉じるために電圧制御発振器の第2の入力に第2のループ・フィルタ15を接続するように、制御される。第2の位相ロック・ループは、第2の段階において、第1のシンセサイザの出力周波数f0+Δfでロックされなければならず、これは、最大変調周波数偏差または偏差Δfに搬送周波数f0を加算したものに一致しなければならない。第2のループ・ロック動作の期間は、40μsのオーダであってよい。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、第2の段階においては停止状態になされるデジタル/アナログ変換器20に、特にシグマ・デルタ変調器11に、2進ワードMaxを供給するように、制御されなければならない。
【0085】
第2のループ・フィルタ15に蓄えられた電圧は、第3の制御電圧信号として、第2の電圧レベルにある電圧制御発振器10の第2の入力に供給される。第2のフィルタ15に蓄えられたこの電圧により、デジタル/アナログ変換器20は、第3の段階において自動的に較正されることが可能になる。
【0086】
図2cは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第3の段階またはステップを示す。この第3の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離されたままであり、第2の電荷ポンプ14は、較正電圧が第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた状態を保ちつつ、切り離される。第2のループ・フィルタ内のこの較正電圧は、電圧制御発振器10の第2の入力との連携において低いリーク電流が観察され得るとしても、変換器の較正ステップ全体の間、ほぼ一定に留まる。較正期間は、約4μsであってよく、これは、第2のループのロック期間の1/10の長さとなる。
【0087】
この第3の段階においては、比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器は、作動している。したがって、作動中の電圧比較器21は、受けた2進ワードMaxを有する変換器20の出力電圧を、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧と比較する。電圧比較器21は、制御ロジック22に作用する。この制御ロジックは、2進ワードの利得を供給し、これは、変換器20の出力電圧が第2の電圧レベルの第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧と同一になるまで、変換器の利得を較正する。
【0088】
デジタル/アナログ変換器の較正動作の間に、複数の電圧ジャンプが、前記変換器の利得を適合化する2進ワードの変化により、変換器出力中に観察される。例えば、変換器20に対して見越した利得が得られるまでに、5つの測定が、比較器21および制御ロジック22によって実行されてよい。このために、二分法マッチング・アルゴリズムが使用されてよい。
【0089】
デジタル/アナログ変換器20の出力での第1の電圧レベルと第2の電圧レベルとの間の電圧偏差または偏移は、第1の位相ロック・ループに対して較正されるべき最大変調周波数偏差または偏移Δfを表す。
【0090】
図2dは、周波数シンセサイザ1のための自己較正方法の第4の段階またはステップを示す。この第4の段階は、周波数シンセサイザを較正するためには必ずしも必要ではない。しかし、第4の段階により、周波数シンセサイザをより良好に直線化することが可能となる。この第4の段階においては、比較器21および制御ロジック22も切り離されてよい。
【0091】
第4の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離しされたままとなって、第1の位相ロック・ループを開状態にし、第2の電荷ポンプ14は、再度オンに切り替えられて、第2のループ・フィルタ15と共に第2の位相ロック・ループを形成する。この第2の位相ロック・ループは、この場合には、第2のシンセサイザ出力周波数f0−Δfにロックされなければならず、これは、搬送周波数f0から最大変調周波数偏差または偏移Δfを減算したものに一致しなければならない。これを行うために、変調マルチプレクサ27は、この第4の段階においては停止状態になされるデジタル/アナログ変換器20に、特にシグマ・デルタ変調器11に、2進ワードMinを供給するように、制御されなければならない。したがって、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた新規の電圧が、この場合には第3の電圧レベルにある。
【0092】
図2eは、周波数シンセサイザ1の自己較正方法の第5の段階を示す。この第5の段階においては、第1の電荷ポンプ4は、切り離しされたままであり、第2の電荷ポンプ14は、新規の較正電圧が第3の電圧レベルで第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた状態を保ちつつ、再度切り離しをされる。第2のループ・フィルタ内のこの較正電圧は、電圧制御発振器10の第2の入力との連携において低いリーク電流が観察され得るとしても、変換器の較正ステップ全体の間、ほぼ一定に留まる。
【0093】
この第5の段階においては、比較器21、制御ロジック22、およびデジタル/アナログ変換器は、作動している。したがって、電圧比較器21は、第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧を、受けた2進ワードMinを有するデジタル/アナログ変換器20の出力電圧と比較する。電圧比較器21の出力は、変換器の出力電圧と第2のループ・フィルタ15内に蓄えられた電圧とを同一にするように、変換器20の利得を適合化するように、制御ロジック22に作用する。変換器の利得のこの新規のマッチングにより、周波数シンセサイザにおけるいくつかの非直線性欠陥を取り除くことが可能となる。
【0094】
最後に、図2fは、周波数シンセサイザ1が較正され次第の、前記周波数シンセサイザのための自己較正方法の最終時の変調段階を示す。
【0095】
この変調段階においては、第2の電荷ポンプ14は、切り離しされ、第1の電荷ポンプ4は、再度オンに切り替えられる。しかし、この変調段階においては、単位電圧フォロワ6は、切り離しをされなければならない。その結果、第1のマルチプレクサ7は、第1のループ・フィルタ5を電圧制御発振器10の第1の入力に直接接続するように、制御される。
【0096】
高周波アクセスに次いで、第2のマルチプレクサ17が、折り返し防止ローパス・フィルタ25を電圧制御発振器10の第2の入力に直接接続するように、制御される。第2の制御電圧信号KVCO_modは、デジタル/アナログ変換器20によって供給され得る。
【0097】
この場合、変調マルチプレクサ27は、高周波出力信号SOUTにおいて変調されることとなるデータTx31にもとづき、ガウス型デジタル・フィルタ30からもたらされる一連のコマンド・ワードを出力にて供給するように、制御される。この一連のコマンド・ワードは、変換器20へ、ならびにマルチプレクサ37および加算器12を介してシグマ・デルタ変調器11への両方に、供給される。変換器20の利得は較正されるため、第1の位相ロック・ループを高周波アクセス部と組み合わせることによって、いかなるひずみまたはデータ変調切替遅延を伴うことなく、高周波信号を得ることが可能となる。
【0098】
提示した説明から、当業者は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、シンセサイザの自己較正方法および、前記方法を実施するためのシンセサイザのいくつかの変形形態を案出することが可能であろう。接続手段においては、電荷ポンプをスイッチと置き換えることが可能であるが、電荷ポンプの構造は、スイッチの構造よりも比較的単純であり容易である。電圧制御発振器の2つの入力の感度は、変更されてよい。2つ以上のデジタル/アナログ変換器が、較正され、電圧制御発振器の第2の入力に接続されてよい。基準発振器の周波数は、変更されてよい、または適合化されてよい。最後に、電圧制御発振器は、逆位相の2つの高周波信号を出力にて生成することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 周波数シンセサイザ; 2 基準発振器; 3 位相比較器;
4 第1の電荷ポンプ; 5 第1のローパス・ループ・フィルタ;
6 単位電圧フォロワ; 7 第1のマルチプレクサ; 8 1/2分周器;
9 マルチモード分周器カウンタ; 10 電圧制御発振器;
11 シグマ・デルタ変調器; 12 加算器; 13 ロック検出器;
14 第2の電荷ポンプ; 15 第2のローパス・ループ・フィルタ;
17 第2のマルチプレクサ; 20 デジタル/アナログ変換器;
21 電圧比較器; 22 制御ロジック;
25 ローパス・アンチエイリアシング・フィルタ; 27 変調マルチプレクサ;
30 ガウス型デジタル・フィルタ; 31 データ信号Tx; 32 周波数偏移;
33 モードTx; 34 周波数レジスタ; 37 第3のマルチプレクサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ送信用に2点周波数変調を行い得る周波数シンセサイザ(1)のための自己較正方法であって、前記周波数シンセサイザには、
第1の低周波位相ロック・ループであって、基準発振器(2)、前記基準発振器に接続される位相比較器(3)、第1のローパス・ループ・フィルタ(5)、前記第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号(KVCO)を受けるために、この第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器(10)、および、前記電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号(SOUT)を分周するように変調器(11)によって制御されて、前記位相比較器において前記基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器(9)が設けられている、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、前記電圧制御発振器(10)の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号(KVCO_mod)を供給するためのデジタル/アナログ変換器(20)が中に配置される高周波アクセス部であって、前記第2の感度は、前記第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、前記第2のバラクタは、前記第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
が備えられており、
自己較正方法は、
a)第1の段階において、前記シンセサイザの出力にて決められた搬送周波数(f0)を有する送信チャネルに前記第1のローパス位相ロック・ループをロックし、前記電圧制御発振器に対して第2の制御電圧信号を第1の基本電圧レベルにて生成するために、前記決められた搬送周波数に対応する第1のコマンド・ワード(0、com)を前記高周波アクセス部の前記変換器に供給するステップと、
b)第2の段階において、前記電圧制御発振器の前記第1の入力に対する前記決められた搬送周波数に対応する第1の制御電圧信号を前記第1のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第1の位相ロック・ループを開き、前記第1のループの前記位相比較器(3)と電圧制御発振器の前記第2の入力との間に接続された前記高周波アクセス部に第2のローパス・ループ・フィルタ(15)を備える第2の位相ロック・ループを、最大変調周波数偏移に加算された前記搬送周波数に等しい第1の出力周波数(f0+Δf)でロックし、前記第1の出力周波数(f0+Δf)を表す第2のコマンド・ワード(Max、com)を前記デジタル/アナログ変換器に供給するステップと、
c)第3の段階において、前記電圧制御発振器の前記第2の入力に対する前記第1の出力周波数(f0+Δf)に対応する第2の制御電圧信号を前記第2のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第2の位相ロック・ループを開き、前記変換器の出力電圧を前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、前記変換器の出力電圧が第2の電圧レベルの前記第2のフィルタ内に蓄えられた前記電圧と均等になるように、前記変換器の利得を自動的に較正し、前記第1の基本電圧レベルとの前記第2の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
d)変調段階において、前記第1の位相ロック・ループを閉じ、前記較正されたデジタル/アナログ変換器および前記第1の位相ロック・ループの前記変調器に遅延することなく供給される一連のコマンド・ワード(30、31)を使用する前記電圧制御発振器によって2点データ変調を行うために、前記変換器の出力を前記電圧制御発振器の前記第2の入力に接続するステップと
を含むことを特徴とする、自己較正方法。
【請求項2】
前記ステップc)と前記ステップd)との間に、
第4の段階において、前記第2の位相ロック・ループを閉じ、前記搬送周波数から前記最大変調周波数偏差を減算した結果である第2の出力周波数(f0−Δf)に前記第2の位相ロック・ループをロックし、前記デジタル/アナログ変換器(20)に第3のコマンド・ワード(Min、com)を供給して前記第2の出力周波数を表すようにするステップと、
第5の段階において、前記電圧制御発振器の前記第2の入力に対する前記第2の出力周波数(f0−Δf)に対応する第2の制御電圧信号を前記第2のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第2の位相ロック・ループを開き、前記変換器の出力電圧を前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、前記変換器の出力電圧が第3の電圧レベルの前記第2のフィルタ内に蓄えられた電圧と均等になるように前記変換器の利得を自動的に較正し、前記第1の基本電圧レベルとの前記第3の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の自己較正方法。
【請求項3】
前記第1の位相ロック・ループは、前記位相比較器(3)と前記第1のループ・フィルタ(5)との間に第1の電荷ポンプ(4)を備え、前記第2の位相ロック・ループは、前記位相比較器(3)と第2のループ・フィルタ(15)との間に第2の電荷ポンプ(14)を備える、請求項1または2のいずれかに記載の自己較正方法において、
前記第1の位相ロック・ループは、前記第1の電荷ポンプにより開かれまたは閉じられ、前記第2の位相ロック・ループは、前記第2の電荷ポンプにより開かれまたは閉じられ、開段階の間には、前記第1の電荷ポンプおよび/または前記第2の電荷ポンプは、漸次的に、特に60サイクルの後に切り離しをされ、前記第1のおよび/または第2の位相ロック・ループの帯域幅が、前記第1のフィルタおよび/または前記第2のフィルタにおける一定電圧を明確なレベルに維持するために、0Hzまで漸次的におよび継続的に低減されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項4】
前記第1から第5の段階において、前記第1の制御電圧信号は、前記電圧制御発振器の前記第1のバラクタにおいてリーク電流を補償するために、入力にて前記第1のループ・フィルタに接続された単位電圧フォロワ(6)によって供給されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自己較正方法。
【請求項5】
第1のマルチプレクサ(7)が、前記電圧制御発振器(10)の前記第1の入力と前記第1のループ・フィルタ(5)の出力と前記単位電圧フォロワ(6)との間に配置される、請求項4に記載の自己較正方法において、
前記第1から第5の段階において、前記第1のマルチプレクサ(7)は、前記電圧フォロワを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御される一方で、前記変調段階においては、前記第1のマルチプレクサは、前記第1のローパス・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項6】
第2のマルチプレクサ(17)が、前記電圧制御発振器の前記第2の入力と、前記第2のループ・フィルタ(15)の前記出力と、前記デジタル/アナログ変換器(20)に接続されたローパス・アンチエイリアシング・フィルタ(25)との間に配置される、請求項1〜5のいずれかに記載の自己較正方法において、
前記第1の段階および前記変調段階において、前記第2のマルチプレクサ(17)は、前記デジタル/アナログ変換器(20)の出力からもたらされる前記第2の制御電圧信号を直接供給するために、前記アンチエイリアシング・フィルタ(25)に前記電圧制御発振器の前記第2の入力を接続するように制御され、前記第2から第5の段階において、前記第2のマルチプレクサは、第3の制御電圧信号を受けるために、前記電圧制御発振器の前記第2の入力を前記第2のループ・フィルタに接続するように制御されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項7】
前記デジタル/アナログ変換器の較正ステップは、前記シンセサイザがオンに切り替えられ次第、または各プログラムされた作動期間の終了時にシンセサイザ作動モードになり次第、実施され、出力にて比較器(21)に接続された制御ロジック(22)が、5ビットのワードなどの2進ワードにより前記変換器の利得を適合化することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の自己較正方法。
【請求項8】
データ送信のために2点周波数変調を行うことが可能な、請求項1〜7のいずれかに記載の前記自己較正方法を実施するための周波数シンセサイザ(1)であって、
基準発振器(2)、前記基準発振器に接続される位相比較器(3)、第1の電荷ポンプ(4)を介して前記位相比較器に接続される第1のローパス・ループ・フィルタ(5)、前記第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号(KVCO)を受けるために、前記第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器(10)、および、前記電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号(SOUT)を分周するように変調器(11)によって制御されて、前記位相比較器において前記基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器(9)が内に配置される、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、前記電圧制御発振器(10)の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号(KVCO_mod)を供給するためのデジタル/アナログ変換器(20)を含む高周波アクセス部であって、前記第2の感度は、前記第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、前記第2のバラクタは、前記第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
を備える周波数シンセサイザ(1)において、
この周波数シンセサイザ(1)は、デジタル/アナログ変換器の較正動作を行うための第2の低周波位相ロック・ループを形成するために、第2の電荷ポンプ(14)を介して前記第1のループの前記位相比較器(3)と前記電圧制御発振器(10)の前記第2の入力との間に接続させることが可能な第2のループ・フィルタ(15)を前記高周波アクセス部に備え、前記高周波アクセス部は、前記第2の位相ロック・ループを決められた出力周波数にロックした後に、前記デジタル/アナログ変換器(20)から直接もたらされる出力電圧を、前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、それにより前記デジタル/アナログ変換器の利得を自動的に調節するために、電圧比較器(21)を備える
ことを特徴とする、周波数シンセサイザ(1)。
【請求項9】
前記電圧比較器(21)から出力信号を受け、前記デジタル/アナログ変換器(20)の利得を調節するために5ビットのワードであることが可能な2進ワードを供給するための制御ロジック(22)を前記高周波アクセス部に備えることを特徴とする、請求項8に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項10】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1の位相ロック・ループ内に単位電圧フォロワ(6)を備え、前記単位電圧フォロワ(6)の1つの入力が、前記第1のループ・フィルタの1つの出力に接続され、前記電圧制御発振器の第1の入力には、前記電圧フォロワの1つの出力を接続させることが可能であり、前記単位電圧フォロワは、前記電圧制御発振器のバラクタにおける任意のリーク電流を補償するために設けられることを特徴とする、請求項8または9に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項11】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記電圧制御発振器(10)の前記第1の入力と前記第1のループ・フィルタ(5)の前記出力と前記単位電圧フォロワ(6)との間に配置された第1のマルチプレクサ(7)を備え、前記第1のマルチプレクサは、前記電圧フォロワまたは前記第1のループ・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御されることを特徴とする、請求項10に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項12】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1の入力の前記第1の感度の約1/100、特に約4MHz/Vである第2の感度を有する、前記電圧制御発振器(10)の前記第2の入力と、前記第2のループ・フィルタ(15)の1つの出力と、前記デジタル/アナログ変換器(20)に接続されるローパス・アンチエイリアシング・フィルタ(25)との間に配置される、第2のマルチプレクサ(17)を備え、前記第2のマルチプレクサは、前記アンチエイリアシング・フィルタまたは前記第2のループ・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第2の入力に接続するように制御されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項13】
前記第1の位相ロック・ループは、第1の差動電荷ポンプ、第1の差動ループ・フィルタ、および差動電圧フォロワから形成される差動構造を備え、それにより前記差動電圧フォロワの出力または前記第1のループ・フィルタの出力のいずれかを前記電圧制御発振器の第1の差動入力に接続することを特徴とする、請求項8および10のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項14】
前記第2の位相ロック・ループは、第2の差動電荷ポンプおよび第2の差動ループ・フィルタから形成される差動構造を備え、前記第2のループ・フィルタの出力は、前記第2の位相ロック・ループが閉じられる場合に、前記電圧制御発振器の第2の差動入力に接続させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項15】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1または第2の位相ロック・ループの前記マルチモード・カウンタ/分周器を制御するために、少なくとも1つの変調周波数コマンド・ワードを前記デジタル/アナログ変換器(20)およびシグマ・デルタ変調器に供給するための変調マルチプレクサ(27)を備え、前記デジタル/アナログ変換器(20)は、スイッチト電流源および能動ポリマー抵抗負荷装置OTAから形成されることを特徴とする、請求項8〜14のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項1】
データ送信用に2点周波数変調を行い得る周波数シンセサイザ(1)のための自己較正方法であって、前記周波数シンセサイザには、
第1の低周波位相ロック・ループであって、基準発振器(2)、前記基準発振器に接続される位相比較器(3)、第1のローパス・ループ・フィルタ(5)、前記第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号(KVCO)を受けるために、この第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器(10)、および、前記電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号(SOUT)を分周するように変調器(11)によって制御されて、前記位相比較器において前記基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器(9)が設けられている、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、前記電圧制御発振器(10)の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号(KVCO_mod)を供給するためのデジタル/アナログ変換器(20)が中に配置される高周波アクセス部であって、前記第2の感度は、前記第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、前記第2のバラクタは、前記第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
が備えられており、
自己較正方法は、
a)第1の段階において、前記シンセサイザの出力にて決められた搬送周波数(f0)を有する送信チャネルに前記第1のローパス位相ロック・ループをロックし、前記電圧制御発振器に対して第2の制御電圧信号を第1の基本電圧レベルにて生成するために、前記決められた搬送周波数に対応する第1のコマンド・ワード(0、com)を前記高周波アクセス部の前記変換器に供給するステップと、
b)第2の段階において、前記電圧制御発振器の前記第1の入力に対する前記決められた搬送周波数に対応する第1の制御電圧信号を前記第1のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第1の位相ロック・ループを開き、前記第1のループの前記位相比較器(3)と電圧制御発振器の前記第2の入力との間に接続された前記高周波アクセス部に第2のローパス・ループ・フィルタ(15)を備える第2の位相ロック・ループを、最大変調周波数偏移に加算された前記搬送周波数に等しい第1の出力周波数(f0+Δf)でロックし、前記第1の出力周波数(f0+Δf)を表す第2のコマンド・ワード(Max、com)を前記デジタル/アナログ変換器に供給するステップと、
c)第3の段階において、前記電圧制御発振器の前記第2の入力に対する前記第1の出力周波数(f0+Δf)に対応する第2の制御電圧信号を前記第2のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第2の位相ロック・ループを開き、前記変換器の出力電圧を前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、前記変換器の出力電圧が第2の電圧レベルの前記第2のフィルタ内に蓄えられた前記電圧と均等になるように、前記変換器の利得を自動的に較正し、前記第1の基本電圧レベルとの前記第2の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
d)変調段階において、前記第1の位相ロック・ループを閉じ、前記較正されたデジタル/アナログ変換器および前記第1の位相ロック・ループの前記変調器に遅延することなく供給される一連のコマンド・ワード(30、31)を使用する前記電圧制御発振器によって2点データ変調を行うために、前記変換器の出力を前記電圧制御発振器の前記第2の入力に接続するステップと
を含むことを特徴とする、自己較正方法。
【請求項2】
前記ステップc)と前記ステップd)との間に、
第4の段階において、前記第2の位相ロック・ループを閉じ、前記搬送周波数から前記最大変調周波数偏差を減算した結果である第2の出力周波数(f0−Δf)に前記第2の位相ロック・ループをロックし、前記デジタル/アナログ変換器(20)に第3のコマンド・ワード(Min、com)を供給して前記第2の出力周波数を表すようにするステップと、
第5の段階において、前記電圧制御発振器の前記第2の入力に対する前記第2の出力周波数(f0−Δf)に対応する第2の制御電圧信号を前記第2のループ・フィルタによって保ちつつ、前記第2の位相ロック・ループを開き、前記変換器の出力電圧を前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、前記変換器の出力電圧が第3の電圧レベルの前記第2のフィルタ内に蓄えられた電圧と均等になるように前記変換器の利得を自動的に較正し、前記第1の基本電圧レベルとの前記第3の電圧レベルの偏移が、最大等化変調周波数偏移を規定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の自己較正方法。
【請求項3】
前記第1の位相ロック・ループは、前記位相比較器(3)と前記第1のループ・フィルタ(5)との間に第1の電荷ポンプ(4)を備え、前記第2の位相ロック・ループは、前記位相比較器(3)と第2のループ・フィルタ(15)との間に第2の電荷ポンプ(14)を備える、請求項1または2のいずれかに記載の自己較正方法において、
前記第1の位相ロック・ループは、前記第1の電荷ポンプにより開かれまたは閉じられ、前記第2の位相ロック・ループは、前記第2の電荷ポンプにより開かれまたは閉じられ、開段階の間には、前記第1の電荷ポンプおよび/または前記第2の電荷ポンプは、漸次的に、特に60サイクルの後に切り離しをされ、前記第1のおよび/または第2の位相ロック・ループの帯域幅が、前記第1のフィルタおよび/または前記第2のフィルタにおける一定電圧を明確なレベルに維持するために、0Hzまで漸次的におよび継続的に低減されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項4】
前記第1から第5の段階において、前記第1の制御電圧信号は、前記電圧制御発振器の前記第1のバラクタにおいてリーク電流を補償するために、入力にて前記第1のループ・フィルタに接続された単位電圧フォロワ(6)によって供給されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自己較正方法。
【請求項5】
第1のマルチプレクサ(7)が、前記電圧制御発振器(10)の前記第1の入力と前記第1のループ・フィルタ(5)の出力と前記単位電圧フォロワ(6)との間に配置される、請求項4に記載の自己較正方法において、
前記第1から第5の段階において、前記第1のマルチプレクサ(7)は、前記電圧フォロワを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御される一方で、前記変調段階においては、前記第1のマルチプレクサは、前記第1のローパス・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項6】
第2のマルチプレクサ(17)が、前記電圧制御発振器の前記第2の入力と、前記第2のループ・フィルタ(15)の前記出力と、前記デジタル/アナログ変換器(20)に接続されたローパス・アンチエイリアシング・フィルタ(25)との間に配置される、請求項1〜5のいずれかに記載の自己較正方法において、
前記第1の段階および前記変調段階において、前記第2のマルチプレクサ(17)は、前記デジタル/アナログ変換器(20)の出力からもたらされる前記第2の制御電圧信号を直接供給するために、前記アンチエイリアシング・フィルタ(25)に前記電圧制御発振器の前記第2の入力を接続するように制御され、前記第2から第5の段階において、前記第2のマルチプレクサは、第3の制御電圧信号を受けるために、前記電圧制御発振器の前記第2の入力を前記第2のループ・フィルタに接続するように制御されることを特徴とする、自己較正方法。
【請求項7】
前記デジタル/アナログ変換器の較正ステップは、前記シンセサイザがオンに切り替えられ次第、または各プログラムされた作動期間の終了時にシンセサイザ作動モードになり次第、実施され、出力にて比較器(21)に接続された制御ロジック(22)が、5ビットのワードなどの2進ワードにより前記変換器の利得を適合化することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の自己較正方法。
【請求項8】
データ送信のために2点周波数変調を行うことが可能な、請求項1〜7のいずれかに記載の前記自己較正方法を実施するための周波数シンセサイザ(1)であって、
基準発振器(2)、前記基準発振器に接続される位相比較器(3)、第1の電荷ポンプ(4)を介して前記位相比較器に接続される第1のローパス・ループ・フィルタ(5)、前記第1のローパス・フィルタを介して第1の制御電圧信号(KVCO)を受けるために、前記第1の低周波ループにおける第1の感度を有する第1のバラクタの第1の入力を介して接続される電圧制御発振器(10)、および、前記電圧制御発振器により生成される高周波信号にもとづいて高周波出力信号(SOUT)を分周するように変調器(11)によって制御されて、前記位相比較器において前記基準発振器の基準信号と比較するために分周信号を供給するマルチモード・カウンタ/分周器(9)が内に配置される、第1の低周波位相ロック・ループと、
高周波データ変調のために、前記電圧制御発振器(10)の第2の感度を有する第2のバラクタの第2の入力に第2の制御電圧信号(KVCO_mod)を供給するためのデジタル/アナログ変換器(20)を含む高周波アクセス部であって、前記第2の感度は、前記第1の感度よりも複数桁の規模で下回り、前記第2のバラクタは、前記第1のバラクタとは無関係である、高周波アクセス部と
を備える周波数シンセサイザ(1)において、
この周波数シンセサイザ(1)は、デジタル/アナログ変換器の較正動作を行うための第2の低周波位相ロック・ループを形成するために、第2の電荷ポンプ(14)を介して前記第1のループの前記位相比較器(3)と前記電圧制御発振器(10)の前記第2の入力との間に接続させることが可能な第2のループ・フィルタ(15)を前記高周波アクセス部に備え、前記高周波アクセス部は、前記第2の位相ロック・ループを決められた出力周波数にロックした後に、前記デジタル/アナログ変換器(20)から直接もたらされる出力電圧を、前記第2のループ・フィルタ内に蓄えられた電圧と比較して、それにより前記デジタル/アナログ変換器の利得を自動的に調節するために、電圧比較器(21)を備える
ことを特徴とする、周波数シンセサイザ(1)。
【請求項9】
前記電圧比較器(21)から出力信号を受け、前記デジタル/アナログ変換器(20)の利得を調節するために5ビットのワードであることが可能な2進ワードを供給するための制御ロジック(22)を前記高周波アクセス部に備えることを特徴とする、請求項8に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項10】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1の位相ロック・ループ内に単位電圧フォロワ(6)を備え、前記単位電圧フォロワ(6)の1つの入力が、前記第1のループ・フィルタの1つの出力に接続され、前記電圧制御発振器の第1の入力には、前記電圧フォロワの1つの出力を接続させることが可能であり、前記単位電圧フォロワは、前記電圧制御発振器のバラクタにおける任意のリーク電流を補償するために設けられることを特徴とする、請求項8または9に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項11】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記電圧制御発振器(10)の前記第1の入力と前記第1のループ・フィルタ(5)の前記出力と前記単位電圧フォロワ(6)との間に配置された第1のマルチプレクサ(7)を備え、前記第1のマルチプレクサは、前記電圧フォロワまたは前記第1のループ・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第1の入力に接続するように制御されることを特徴とする、請求項10に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項12】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1の入力の前記第1の感度の約1/100、特に約4MHz/Vである第2の感度を有する、前記電圧制御発振器(10)の前記第2の入力と、前記第2のループ・フィルタ(15)の1つの出力と、前記デジタル/アナログ変換器(20)に接続されるローパス・アンチエイリアシング・フィルタ(25)との間に配置される、第2のマルチプレクサ(17)を備え、前記第2のマルチプレクサは、前記アンチエイリアシング・フィルタまたは前記第2のループ・フィルタを前記電圧制御発振器の前記第2の入力に接続するように制御されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項13】
前記第1の位相ロック・ループは、第1の差動電荷ポンプ、第1の差動ループ・フィルタ、および差動電圧フォロワから形成される差動構造を備え、それにより前記差動電圧フォロワの出力または前記第1のループ・フィルタの出力のいずれかを前記電圧制御発振器の第1の差動入力に接続することを特徴とする、請求項8および10のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項14】
前記第2の位相ロック・ループは、第2の差動電荷ポンプおよび第2の差動ループ・フィルタから形成される差動構造を備え、前記第2のループ・フィルタの出力は、前記第2の位相ロック・ループが閉じられる場合に、前記電圧制御発振器の第2の差動入力に接続させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の周波数シンセサイザ(1)。
【請求項15】
前記周波数シンセサイザ(1)は、前記第1または第2の位相ロック・ループの前記マルチモード・カウンタ/分周器を制御するために、少なくとも1つの変調周波数コマンド・ワードを前記デジタル/アナログ変換器(20)およびシグマ・デルタ変調器に供給するための変調マルチプレクサ(27)を備え、前記デジタル/アナログ変換器(20)は、スイッチト電流源および能動ポリマー抵抗負荷装置OTAから形成されることを特徴とする、請求項8〜14のいずれかに記載の周波数シンセサイザ(1)。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【公開番号】特開2010−93808(P2010−93808A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−231370(P2009−231370)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231370(P2009−231370)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】
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