説明

3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン及び抗菌有効成分としてのその使用

【課題】体臭や足の臭いを引き起こす微生物に対して特に活性な抗菌有効成分を提供する。
【解決手段】以下の式1の抗菌的に活性な3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノン、この化合物の製造方法及び抗菌有効成分としての使用。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の式1の抗菌的に活性な化合物3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノン、この化合物の製造方法及び体臭を治療するための抗菌剤としての使用に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
本化合物は、化粧品に、一般には、体臭を引き起こす微生物の皮膚科的治療に、抗菌有効成分として著しく適している。
ヒト皮膚は、非常に多くの異なる細菌によってコロニーが形成される。これらの細菌のほとんどは、非病原性で、皮膚の生理的状態や臭いに関連していない。対照的に、他のものは、皮膚の健康状態に対して主な影響をもち得る。ヒト皮膚に対して強い影響をもつ一部の微生物を表1に挙げる。
【0004】
表1:

【0005】
発汗に存在する内因性物質、例えば、不飽和脂肪酸の細菌による分解は、多かれ少なかれわずかな臭いを有する前駆物質から物理的に満足のいく状態に大きな影響を与え得る不快な臭いのする分解産物を生じる。体臭の原因である物質の形成は、汗の形成を抑える製品(“制汗剤”)を用いるか或いは臭い形成の原因であるヒト皮膚細菌の増殖を阻止する物質(“デオドラント”)を用いることにより化粧用途において阻止される。スタフィロコッカス・エピデルミディス、コリネバクテリウム・キセロシス、ブレビバクテリウム・エピデルミディスのような細菌種は、わきの下や足の臭い、或いは一般の体臭の形成の主な原因である。従って、これらの微生物及び体臭(わきの下や足の臭いを含む)を引き起こす他のものを治療するための新規な物質が化粧品業界において絶えず求められている。
本文書のための“治療”は、問題の微生物にいかなる種類の影響をも与え、これらの微生物の増殖が阻止され且つ/又は微生物が死滅することを意味するように用いられなければならない。
【0006】
このような抗菌的に活性な物質を探し出す際に、化粧品及び/又は医薬品に用いられる物質が、更に、
- 毒物学的に安全でなければならない、
- 皮膚適合性が良好でなければならない、
- 安定でなければならない(特に従来の化粧品及び/又は医薬品の処方において)、
- 好ましくは、わずかな臭いがあるか或いは(ほとんど)無臭でなければならない、
- 好ましくは、無色でなければならず、変色も起きてはならない、及び
- 製造するのに安価でなければならない(即ち、標準法を用い且つ/又は標準前駆物質から出発する)
ことを考慮しなければならない。
提示された特性の一つ以上を充分な程度まで示す適切な(活性)物質の検索は、一方では、物質の化学構造間に明らかな依存性がなく、もう一方では、特定の微生物(細菌)に対する生物活性も安定性もないという事実によって当業者にとって困難なものにしている。更に、抗菌作用、毒物学的安全性、皮膚適合性及び/又は安定性との間に予測できる関連もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、体臭や足の臭いを引き起こす、コリネバクテリウム・キセロシス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、ブレビバクテリウム・エピデルミディスのような微生物に対して特に活性であり、且つその際に好ましくは上述した第二条件の一つ以上を満たす、抗菌有効成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、驚くべきことに、式1の本発明の新規な化合物、即ち、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンが、優れた抗菌性を有し、提示された微生物に対して特に活性であることを見出した。化学的性質への研究によって、更に、本化合物が、最も変動した範囲の化粧品(化粧品処方)、医療装置及び医薬品に用いるのに理想的に適切である結果として、高安定性、特に高温安定性及び広範囲のpH値にわたる高安定性によって区別されることがわかった。更に、純粋形態での式1の本発明の化合物は、(化粧品及び/又は医薬品の)担体において無色の溶液を生じる白色固体である; 更に、式1の本発明の化合物が化粧品、医療装置、医薬品に取込まれた後も変色は見られなかった。
同様に、式1の化合物の製造方法及び化粧品、医療装置、医薬品における抗菌有効成分としての使用もここで初めて記載される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
式1の化合物は、ヒト皮膚上で臭いを生じる微生物に対して強い抗菌作用を有するので、デオドラントとして化粧品、医療装置、医薬品等における既知の抗菌有効成分(例えば、ファルネソール)に対する代替物或いは補助剤として理想的に用いることができる。
ここで、化粧用最終製品における式1の本発明の化合物の使用濃度は、いずれの場合も化粧品、医療装置又は医薬品の全質量に対して、好ましくは0.001〜10 wt.%の間の範囲、好ましくは0.005 wt.%と5 wt.%の間の範囲、特に好ましくは0.01 wt.%と1.0 wt.%の間の範囲にある。
体臭を引き起こす微生物の化粧及び/又は治療上の処置に好ましい方法において、式1の本発明の化合物の抗菌的に活性な量が、ヒト又は動物の体に局所的に適用されて、存在する可能性がある一つ又は複数の微生物の増殖が阻止され更に/又は微生物を死滅させる。
【0010】
式1の本発明の物質は、また、芳香剤組成物(香りのよい物質組成物)の成分として用いられ、例えば、抗菌作用を最終芳香剤製品に与えることができる。特に好ましい芳香剤組成物は、(a)感覚刺激的に活性な量の芳香剤、(b)抗菌的に活性な量の式1の化合物を含み、更に(c)場合により一つ以上の担体及び/又は添加剤を含んでいてもよい。最終化粧品における香料の割合がしばしば約1 wt.%程度であるので、式1の本発明の化合物を含有する香料は、好ましくは、約5-50 wt.%程度の式1の化合物からなる。式1の化合物がバニラの鞘を連想させる弱い固有の臭いを有することが特に有利であることがわかった; この特性が芳香剤組成物における脱臭する有効成分として用いるのに理想的に適切にする。
本発明は、また、(a)抗菌的に活性な量の式1の本発明の化合物に加えて、成分(a)と適合する(b)担体物質を含む抗菌性組成物に関する。
【0011】
式1の本発明の化合物は、以下の工程:
(b) 3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オンを還元、好ましくは水素添加する工程
を含む製造方法によって得ることができる。
【0012】
式1の本発明の化合物は、好ましくは、以下の工程:
(a) p-ヒドロキシアセトフェノンとバニリンと反応(アルドール縮合)させる工程、
(b) 工程(a)で得られた反応生成物を還元、好ましくは水素添加する工程
を含む製造方法によって得ることができる。
【0013】
反応工程a)の不飽和ケトン3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オンは、文献、例えば、DE 1 099 732(ポリカーボネートの製造に対して)、DE 1 447 016(感光性材料の製造に対して)、DE 2 256 961(エポキシ樹脂の製造に対して)、Chem. Pharm. Bull. 1983, 31(1), 149-155(フェニルアラニンアンモニア・リアーゼ阻害の研究)、Designed Monomers and Polymers (2003), 6(2), 187-196、High Performance Polymers (2006), 18(2), 227-240及びJ. of Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry (2005), A42(12), 1589-1602 (いずれの場合もポリマーの製造に対して)、Journal of Natural Products (2006), 69(2), 191-195(アリウム・アトロビオラセウム(Allium atroviolaceumの検出)から既知である。
本発明の好ましい製造方法は、以下のスキームによって示すことができる:
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の態様は、更に、添付の特許請求の範囲と以下の実施例によって開示される。特にことわらない限り、提示された値はすべて質量に関する。
種々の場合において、本発明の化粧品及び医薬品、好ましくは皮膚適用製剤に動物生物体上において或いは生物体内において望ましくない微生物の増殖を阻止するために主に用いられる1、2、3、4つ以上の物質を添加することも有利であり得る。従来の抗生物質の大きなグループに加えてこの点で挙げることができる有効成分は、更に、特に、わきが、足の臭い又はフケに対して用いられる、化粧品と特に関連がある製品、例えば、トリクロサン(登録商標)(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)、クリンバゾール、亜鉛ピリチオン、イヒチオール、オクトピロックス(1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリドン、2-アミノエタノール)、キトサン、ファルネソール、ヘキソキシグリセリン、オクトキシグリセリン(= エチルヘキシルグリセリン、3-(2-エチルヘキシルオキシ-1,2-プロパンジオール)、例えば、Schuelke & Mayr製のSensiva(登録商標) SC 50)、グリセロールモノラウレート、アリールアルキルアルコール、例えば、フェニルエチルアルコール、3-フェニル-1-プロパノール、ベチコール(4-メチル-4-フェニル-2-ペンタノール)又はミュゲ(muguet)アルコール(2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール)、ポリグリセリンエステル、例えば、ポリグリセリル3-カプリレート、脂肪族1,2-ジオール、例えば、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、又は1,2-デカンジオール又はアルキル分枝鎖カルボン酸、例えば、2-ブチルオクタン酸、2-ブチルデカン酸、2-ヘキシルオクタン酸又は2-ヘキシルデカン酸又は提示された物質の組み合わせである。
【0016】
本発明の化粧品及び医薬品、好ましくは皮膚適用製剤は、また更に、1、2、3、4つ以上の制汗有効成分(制汗剤)及び/又は臭気吸収剤を含有することができる。用いることができる好ましい制汗性有効成分は、アルミニウム塩、例えば、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドレート、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等である。しかしながら、更に、亜鉛化合物、マグネシウム化合物及びジルコニウム化合物の使用も有利であり得る。主にアルミニウム塩、それほどではない程度で、アルミニウム/ジルコニウム塩の組み合わせが、化粧品及び医薬品、好ましくは皮膚適用制汗剤に用いるのに有効であることがわかった。また、部分的に中和されているのでより皮膚に適合できるが、ほとんど活性でないアルミニウムヒドロキシクロライドも述べるに値する。アルミニウム塩に加えて、更に、以下のような物質、a)汗腺の表面の閉鎖を引き起こす、タンパク質沈降物質、例えば、特に、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、トリクロロ酢酸との天然或いは合成タンニン、b)末梢神経経路を遮断することによって汗腺の交感神経供給を切断する、局所麻酔剤(特に、リドカイン、プリロカイン又はこのような物質の混合物のような希釈溶液)、c)汗分泌を減少させることに加えて、悪臭の吸着剤としても機能する、X型、A型又はY型のゼオライト、及びd)多汗症、即ち、病理学的に高い汗分泌の場合にも用いられ、更にその作用が汗分泌に関連する伝達物質アセチルコリンの放出の不可逆的遮断に基づく、ボツリヌス毒素(細菌クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)の毒素)も可能である。
【0017】
臭気吸収剤は、例えば、DE 40 09 347に記載されているフィロケイ酸塩、特に、モンモリロナイト、カオリナイト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト、スメクタイト、更に、例えば、リシノール酸の亜鉛塩である。これらは、また、殺菌又は静菌脱臭物質、例えば、ヘキサクロロフェン、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(Irgasan)、1,6-ジ-(4-クロロフェニルジグアニジノ)ヘキサン(クロルヘキシジン)、3,4,4'-トリクロロカルバニリド、又は公開された特許出願DE-37 40 186、DE-39 38 140、DE-42 04 321、DE-42 29 707、DE-42 29 737、DE-42 37 081、DE-43 09 372、DE-43 24 219に記載される活性物質を含み、カチオン的に活性な物質、例えば、四級アンモニウム塩と臭気吸収剤、例えば、Grillocin(登録商標)(リシノール酸亜鉛と種々の添加剤の組み合わせ)又はクエン酸トリエチルを含有し、場合によりイオン交換樹脂と組み合わせてもよい。
【0018】
本発明の化粧品及び医薬品、好ましくは皮膚適用製剤は、また、多くの場合、有利には1、2、3、4つ以上の防腐剤を含有することができる。選ばれる好ましい防腐剤は、例えば、安息香酸又はそのエステル又は塩、4-ヒドロキシ安息香酸又はそのエステル(“パラベン”)又は塩、プロピオン酸又はそのエステル又は塩、サリチル酸又はそのエステル又は塩、2,4-ヘキサジエン酸(ソルビン酸)又はそのエステル又は塩、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド、2-ヒドロキシビフェニルエーテル又はその塩、2-亜鉛スルフィドピリジンN-オキシド、無機亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩、ヨウ素酸ナトリウム、クロロブタノール、4-エチル水銀(II) 5-アミノ-1,3-ビス(2-ヒドロキシ安息香酸)、その塩又はエステル、デヒドロ酢酸、蟻酸、1,6-ビス(4-アミジノ-2-ブロモフェノキシ)-n-ヘキサン又はその塩、エチル水銀(II)チオサリチル酸のナトリウム塩、フェニル水銀又はその塩、10-ウンデセン酸又はその塩、5-アミノ-1,3-ビス(2-エチルヘキシル)-5-メチルヘキサヒドロピリミジン、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、2,4-ジクロロベンジルアルコール、N-(4-クロロフェニル)-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、4-クロロ-m-クレゾール、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、1,1'-メチレンビス(3-(1-ヒドロキシメチル-2,4-ジオキシイミダゾリジン-5-イル)尿素)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩、2-フェノキシエタノール、ヘキサメチレンテトラミン、1-(3-クロロアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタン塩化物、1-(4-クロロフェノキシ)1(1H-イミダゾール-1-イル)-3,3-ジメチル-2-ブタノン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチル-2,4-イミダゾリジンジオン、ベンジルアルコール、オクトピロックス、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン、2,2'-メチレンビス(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、ブロモクロロフェン、5-クロロ-2-メチル-3(2H)-イソチアゾリノン又は2-メチル-3(2H)-イソチアゾリノンと塩化マグネシウム又は硝酸マグネシウムとの混合物、2-ベンジル-4-クロロフェノール、2-クロロアセトアミド、クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、1-フェノキシプロパン-2-オール、N-アルキル(C12-C22)トリメチアンモニウムブロマイド、N-アルキル(C12-C22)トリメチアンモニウムクロライド、4,4-ジメチル-1,3-オキサゾリジン、N-ヒドロキシメチル-N-(1,3-ジ(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソイミダゾリジン-4-イル)-N'-ヒドロキシメチルウレア、1,6-ビス(4-アミジノフェノキシ)-n-ヘキサン又はその塩、グルタルアルデヒド、5-エチル-1-アザ-3,7-ジオキサビシクロ(3.3.0)オクタン、3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール、ハイアミン、アルキル-(C8-C18)-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキル-(C8-C18)-ジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、アルキル-(C8-C18)-ジメチルベンジルアンモニウム サッカリネート、ベンジルヘミホルマル、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、ヒドロキシメチルアミノ酢酸ナトリウム又はヒドロキシメチルアミノ酢酸ナトリウムである。
以下の特許請求の範囲及び実施例は、本発明又はその個々の態様をより詳細に示すものである。特にことわらない限り、提示された値はすべて質量に関する。
【実施例】
【0019】
実施例1: 式1の3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンの合成
(a)p-ヒドロキシアセトフェノンとバニリンとの反応:
最初に20gの水酸化カリウムを100gのジエチレングリコールジエチルエーテルに導入し、撹拌しながら120°Cに加熱し、14gのp-ヒドロキシアセトフェノンと15gのバニリンの混合物と1時間以内に合わせる。添加が完了するとすぐに、撹拌を更に20分間続け、混合物を加水分解し、pH 6-7に調整する。相が分離されるとすぐに、溶媒を除去し、25gの3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オンを得る、収率:理論値の93%。
【0020】
(b) 工程(a)で得られた反応生成物の水素添加:
10gの3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オンを100gのテトラヒドロフランに溶解し、0.2gのPd/活性炭(Pd含量: 5 wt.%、水分約50 wt.%、いずれの場合も触媒の全質量に対する)と合わせ、標準圧と室温(約20°C)で水素添加する。触媒と溶媒を除去した後、9gの3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンを得る。収率: 理論値の89%
3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノン、(式1)の分光分析データ:
13C-NMR (CDCl3; 75.5 MHz): δ(ppm) = 197.42(s), 161.85(s), 147.24(s), 144.44(s), 132.03(s), 130.37(d), 130.37(d), 128.18(s), 120.27(d), 115.11(d), 115.07(d), 115.07(d), 112.53(d), 55.42(q), 39.30(t), 29.42(t);
MS: m/z (%) = M+ イオン 272(82), 151(24), 137(77), 121(100), 93(19), 65(22).
【0021】
実施例2. 式1の3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンの抗菌作用への研究
実施例2.1. 方法
式1の3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンが、体臭の原因である微生物を防止するのに特に適切である認識は、特に適切な微生物スタフィロコッカス・エピデルミディス、コリネバクテリウム・キセロシス及びブレビバクテリウム・エピデルミディスに関する一連の研究に基づく。
ここで、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンの抗菌作用を、濁度測定法の援助によって検出する。濁度測定は、抗菌有効成分の有無における特定の微生物に対する増殖曲線を確立するために用いられる。用いられる試験物質の可能な抑制作用は、増殖曲線のプロファイルから識別される。100%増殖のための食塩水或いはDMSOによる溶液を、負の対照として調製する。
最初に、調べるべき活性物質を反応容器においてDMSOに希釈する。希釈は、試験される濃度範囲に従って行われ、いずれの場合も試験における続いての最終濃度の100倍の濃度に対応する。通常、試験において2000 ppmの最終濃度から実験を開始する。その後、1000 ppm、500 ppm、250 ppm、125 ppm、64 ppm、32 ppm、16 ppm及び8 ppmの最終濃度における増殖曲線を求める。
次に、細菌の培養物を、抗菌有効成分の種々の最終濃度の存在下に16時間(インキュベーション温度: 37°C)インキューベートする。濁度測定の16時間にわたって得られる吸収値(波長620 nm; 測定間隔: 20分)を記録し、表計算プログラムMSエクセルに保存する。いずれの場合も3つの同時に実行されているバッチから平均を算出し、増殖曲線を確立するための基礎として用いる。個々の試験試料濃度の曲線を負の対照と比較し、MIC値(最小阻止濃度)を求める。MIC値は、比濁法によって増殖が更に目に見えない濃度である。
【0022】
実施例2.2. 3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンのMIC値
本発明の化合物、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンのMIC値を、2.1に記載される一般試験条件に従って求めた。コリネバクテリウム・キセロシス(DSM 20743)に対する増殖の完全な阻止が、ちょうど500 ppmの使用濃度で求められたので、この化合物の良好な抗菌活性が証明された。同様に、2.1に記載される試験法を用いて0.1 wt.%未満の濃度の3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンによってスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC 12228)、ブレビバクテリウム・エピデルミディス(ATCC 35514)のような体臭を引き起こすグラム陽性菌の増殖の阻止を更に確立することが可能であった。
更に試験管内法、例えば、定量的懸濁試験の援助によっても、また、ひどい体臭に悩んでいるヒト試験被検者のグループに対する生体内におい嗅ぎテストによっても、コリネバクテリウム・キセロシス(DSM 20743)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC 12228)及びブレビバクテリウム・エピデルミディス(ATCC 35514)のような体臭を引き起こす微生物に対して3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンの抗菌活性を確認することが可能であった。
【0023】
式1の抗菌的に活性な3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンは、特に体臭を引き起こす微生物に対して用いられる限り、一般的には、液剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、噴霧剤等の形で局所的に適用される。他のために、投与は、経口的に(錠剤、カプセル剤、散剤、点滴剤)、静脈内に、眼内に、腹腔内に又は筋肉内に又は含浸ドレッシングの形で都合よく続けることができる。
(局所的に)投与された製剤における式1の抗菌的に活性な化合物の濃度は、好ましくは0.001%-10 wt.%の範囲、好ましくは0.005-5 wt.%の範囲、特に好ましくは0.01-1 wt.%の範囲にある。抗菌有効成分は、ここでは、(a)予防的に又は(b)必要とされる場合に用いることができる。適用される有効成分の濃度は、例えば毎日変動し、試験被検者の生理的条件に、また、年齢又は体重のような特定の個々のパラメータに左右される。3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノンは、単独で用いられるだけでなく、更に抗菌活性物質と組み合わせて用いることができる。
【0024】
製剤実施例
すべての製剤実施例F1-F5を、別々に以下の2つの香料を用いて2回処方した(DPG=ジプロピレングリコール):
【0025】
香料タイプ"ローズ"

【0026】
香料タイプ“ホワイトブロッサム”

【0027】
実施例F1: エアゾールスプレー

【0028】
記載された成分を一緒に混合することによって得られる15質量部の混合物を、85質量部のプロパン・ブタン混合物(プロパン:ブタン= 2:7(w/w))とエアゾール容器に充填した。
【0029】
実施例F2: ロールオン(マクロエマルジョン)

【0030】
実施例F3: ロールオン(マイクロエマルジョン)

【0031】
実施例F4: デオドラントスティック

【0032】
実施例F5: 敏感肌用のわきの下のクリームデオドラント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物。
【化1】

【請求項2】
特に体臭を治療するための、特にわきがや足の臭いを治療するための、抗菌剤としての請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物の製造方法であって:
(b) 3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オンを還元する、好ましくは水素添加する工程
を特徴とする、前記方法。
【請求項4】
抗菌的に活性な化粧品、抗菌的に活性な医療装置又は抗菌的に活性な医薬品を製造するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項5】
体臭の化粧及び/又は治療上の処置方法であって、抗菌的に活性な量の請求項1に記載の化合物をヒト又は動物の体に局所投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
以下の成分を含む組成物:
(a)抗菌的に活性な量の請求項1に記載の化合物及び
(b)成分(a)と適合する担体物質。
【請求項7】
化粧品、医療装置又は医薬品であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
(a)感覚刺激的に活性な量の芳香剤、
(b)抗菌的に活性な量の請求項1に記載の化合物
を含み、更に
(c)場合により一つ以上の担体及び/又は添加剤
を含んでいてもよい芳香剤組成物。

【公表番号】特表2010−534214(P2010−534214A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517354(P2010−517354)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059179
【国際公開番号】WO2009/013166
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503236223)シムライズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンジツト・ゲゼルシヤフト (51)
【Fターム(参考)】