4輪車両のマッドガード装置
【目的】マッドガードにより、飛石等を有効に阻止する。
【構成】前輪2の後方となるフロントフェンダ17に前輪マッドガード25を取付け、前方へ向かって外開き状に配置する。車体フレームの第2クロスメンバ42に沿って、左右方向へ車体下マッドガード51を配置する。車体下マッドガード51は外方端部が若干後方へ下がるように後傾し、外側端部51aは前輪マッドガード25の内側端部25aの前方に位置し、車体下マッドガード51の外側端部51a近傍部及び前輪マッドガード25の内側端部25a近傍部は対外に前後方向で重なるオーバーラップ部57・58をなし、かつこれらのオーバーラップ部57・58の間に間隙59を設ける。
【構成】前輪2の後方となるフロントフェンダ17に前輪マッドガード25を取付け、前方へ向かって外開き状に配置する。車体フレームの第2クロスメンバ42に沿って、左右方向へ車体下マッドガード51を配置する。車体下マッドガード51は外方端部が若干後方へ下がるように後傾し、外側端部51aは前輪マッドガード25の内側端部25aの前方に位置し、車体下マッドガード51の外側端部51a近傍部及び前輪マッドガード25の内側端部25a近傍部は対外に前後方向で重なるオーバーラップ部57・58をなし、かつこれらのオーバーラップ部57・58の間に間隙59を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、前輪マッドガードと車体下マッドガードを備えた4輪車両のマッドガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体下部の前輪後方位置に燃料タンクがを設けた4輪車両が開示されている(特許文献1参照)。このような車両では走行中に前輪が跳ね上げた飛石が燃料タンクや電装部品に当たることを防ぐため、マッドガードとして、前輪の直後に前輪マッドガードを設けるとともに、その車体内側部分を車体内側かつ前方へ斜めに延ばして車体フレーム下方に設けものも公知である(特許文献2参照)。なおこのような車体フレーム下方に設けられたマッドガードを車体下マッドガードということにする。
【特許文献1】特開2006−8104号公報
【特許文献2】特開平8−207831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、前輪マッドガードと車体下マッドガードとが一体になった構造では、車両の車高が低い場合、前輪に跳ね上げられた小石等の飛石は、落下する前に次の飛石に突き上げられ、走行中マッドガード内側に残ることがある。特に前輪マッドガードから車体下マッドガードへ曲がるコーナー部に溜まりやすい。このコーナー部は特許文献2において、前輪後方に車幅方向へ長く配設され、前輪よりも車体内方へ延びる部分が車体フレームの一部であって前後方向へ延びるサイドフレームに沿った後、さらに車体内側まで延びるように構成されたマッドガードのうち、前輪の直後方部分とサイドフレームに沿う部分との間に形成されるコーナー部が相当する。
このような飛石等の溜まりやすい部分を有するマッドガードを備えた車両では、前輪後方に配置される燃料タンクや電装系部品への飛石を防ぎつつ、かつ飛石を確実にマッドガードから落とす構造が求められていた。本願は係る要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため4輪車両のマッドガード装置に係る請求項1の発明は、車体フレームの前後左右に車輪を備え、左右一対の各前輪後方に垂下して設けられた前輪マッドガードと、左右の前輪マッドガード間より車体の内側位置にて車体フレームの下方へ垂下して設けられた車体下マッドガードとを備えた4輪車両のマッドガード装置において、
前記車体下マッドガードは、前記前輪マッドガード近傍から車体内方へ向かって車幅方向へ配置され、
車体前方から見て、前記車体下マッドガードの車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部と、前記前輪マッドガード車幅方向端部のうち最も車体内方に位置する内側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合うとともに、
前方側に位置する前記前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する前記車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が設けられていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記間隙は斜め前後方向に向かって開放され車体前方からは見えないことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項1において、平面視にて、前記前輪マッドガードは前方へ向かって外開き状に傾斜配置され、前記車体下マッドガードは前すぼまり状に傾斜配置され、
前記前輪マッドガードの内側端部が前記車体下マッドガードの外側端部よりも後方に配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項3において、前記車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前記前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項1において、前記前輪マッドガードと前記車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、前輪マッドガードの内側端部と車体下マッドガードの外側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合い、前方側に位置する前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が形成されるので、
この間隙の大きさを適宜設定することで、飛石を可及的に防ぎつつ、かつ飛石が溜まる前に間隙から落とすことが可能となる。
また、前方から見て車体下マッドガードの外側端部と前輪マッドガードの内側端部とが重なり合っているため、後方へ向かう飛石をマッドガードにより車幅方向の広い範囲で飛石を防ぐことが可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、間隙が斜め前後方向に向かって開放されているから、後方へ向かう飛石を間隙へ入りにくくすることができる。
また、車体下マッドガードに当たった飛石の一部ですぐに落下せず側方へ移動したものも、前輪マッドガードへ移り、その後スピードを十分に落としてから間隙より車体内側に向かって落ちるようになるので、飛石をマッドガードで確実に落とすことが可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、車体下マッドガードが前すぼまりに傾斜しているから、車体下マッドガードに当たった飛石の一部で勢いのあるものを傾斜に沿って外方へ導き前輪マッドガードへ移し易くする。前輪マッドガードへ移った飛石は、前輪マッドガードが前方へ向かって外開き状に傾斜しているから、前輪マッドガードの傾斜面に沿って間隙へ導きやすくなる。
【0012】
請求項4の発明によれば、車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したので、これらに対して飛石が当たることを防ぐことができる。
【0013】
請求項5の発明によれば、前輪マッドガードと車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したので、電装部品へ飛石が当たることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。なお、以下において、上下及び前後は図1の図示状態、左右は図2の図示状態をそれぞれ基準とする。
【0015】
図1は本願に係る小型自動4輪車の側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2及び後輪3を備え、車体中央に設けられた運転者D用のフロントシート4前方に前輪操舵機構5を備える。フロントシート4は座部からなり、物入れ4a上に支持され、前端をヒンジ4bにて回動自在に取付けられており、フロントシート4を開くと、物入れ4aの開口が開かれて物品を出入可能である。物入れ4aはヘルメット等の大型物品を収容できる程度に大容量である。
【0016】
フロントシート4の後方には別体で構成されたバックレスト6がフロアパネルから隆起する台座部7上に支持され前後方向へスライド自在になっている。
バックレスト6から後方にセンターグリップ8が延出し、同乗者Pが着座時及び乗降時に握れるようになっている。
バックレスト6の後方には、サイドグリップ9及びリヤシート10が設けられている。
【0017】
リヤシート10の座部下方にはパワーユニット11が設けられ、このパワーユニット11により後輪3を駆動する。
パワーユニット11は図示省略のリンクにより車体フレーム1へ揺動自在に支持され、燃料噴射(FI)式である。13は燃料タンクであり、物入れ7の後方に配置される。14は燃料ポンプ、15はエアクリーナである。
【0018】
車体の前部はフロントカバー16で覆われ、その一部はフロントフェンダ17をなし、前輪2の前側及び上側から後側までを覆う。車室内前部はインナーパネル18で覆われる。19はミラー、20はバーハンドルである。バーハンドル20は前輪操舵機構5の一部を構成するとともにインナーパネル18の上方へにて後方の運転者Dにより操舵される。車室内空間Sの前部はウインドスクリーン21、上部はルーフ22で覆われる。ルーフ22の前部は後傾したフロントピラー23で支持され、このフロントピラー23にはウインドスクリーン21も支持される。ルーフ22の後部はほぼ直立したリヤピラー24で支持される。フロントピラー23及びリヤピラー24の各下端部は車体フレーム1側へ支持されている。
【0019】
図中の符号25は前輪マッドガード、26はチェンジペダル、27はチェンジケーブル、28はアームレスト、29はリヤカバーである。リヤカバー29の一部はリヤフェンダ29aをなして、後輪3の前側及び上側から後側を覆う。
【0020】
図2は車両の平面図(ウインドスクリーン21及びルーフ22を省略)である。前輪2及び後輪3はそれぞれ左右一対で設けられる。リヤシート10は左右へ2人並んで着座できる大きさであり、リヤシート10の乗員はそれぞれ足をフロントシート4の側方におけるフロアパネル30の上へ出すことができる。前輪操舵機構5及びフロントシート4は車体中心線Cの上に配置され、バーハンドル20は左右方向へ延びて運転者Dの両手で操作される。フロントシート4はフロアパネル30の略中央に位置する。
【0021】
サイドグリップ9はセンターグリップ8の左右に設けられ、同乗者Pの前方を左右方向へ横切り、着座時に同乗者Pが握れるようになっている。このサイドグリップ9は、一端をアームレスト28へ回動自在に支持され、乗降時にはアームレスト28との連結軸を中心に車体内側の他端を上方へ跳ね上げるように回動させることができる(図1参照)。
【0022】
図3は車体フレーム1の側面図、図4は平面図である。この車体フレーム1は前後方向へ略直線状に延びるサイドビーム31と、その前部及び後部に設けられた斜めビーム32,33と、斜めビーム32・33とサイドビーム31を連結する補強メンバ34,35、さらに前端に設けられるフロントバンパ部36、後部に設けられるシートレール部37等で構成される。
【0023】
図4は車体フレーム1の平面図である。サイドビーム31、斜めビーム32,33及び補強メンバ34,35(図3)はそれぞれ左右一対で設けられ、左右間は、第1〜第4クロスメンバ41〜44で連結される。左右のシートレール37間も前後のクロスパイプ45a及び45bで連結されている。フロントバンパ部36の下部と第2クロスメンバ42の間にはセンタービーム46が設けられている。
【0024】
第3クロスメンバ43と第4クロスメンバ44間は左右一対のパイプ部材47,47で連結され、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44及び左右のパイプ部材47,47で囲まれた略矩形の空間48を形成し、この中に燃料タンク13が収容して支持され、さらに燃料タンク13の上に燃料ポンプ14が配置される。この空間48内の燃料タンク13前方には、電装品であるバッテリ49が収容され、第3クロスメンバ43の中央部に支持されている。バッテリ49に接続する電線はワイヤーハーネス12をなし、このワイヤーハーネス12は車体下マッドガード51の後方をパイプ部材47に沿って燃料タンク13の右側方を通り、燃料タンク13の後部から一部が車体後方へ向かい、他の部分は右側のサイドビーム31へ向かい、さらに前輪マッドガード25の後方をサイドビーム31に沿って前後方向に配設される。ワイヤーハーネス12はバッテリ49等の電装品とともに電装系部品を構成する。
【0025】
以下、マッドガードの取付につき説明する。図4において、左右の各前輪2の後方となるフロントフェンダ17の後端部に前輪マッドガード25が垂下して設けられている。前輪マッドガード25は内側部分がサイドビーム31と重なり、外側は前方に向かって外開き状をなして斜めに配置され、左右の前輪マッドガード25は後方へ向かって略ハの字状をなしている。また、第2クロスメンバ42に沿ってセンタービーム46から左右のサイドビーム31に向かって車体下マッドガード51が垂下して取付けられている。左右の車体下マッドガード51は外側端部が後方となるように傾斜し、前方へ向かって前すぼまり状に配置され、略ハの字状をなしている。
【0026】
車体下マッドガード51の車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部51aはサイドビーム31の下方を外側側面の位置まで延び、かつ前輪マッドガード25のうちサイドビーム31の下を通って車体内方へ入り込んでいる内側端部25aの前方に位置する。内側端部25aは車幅方向端部のうち最も車体内側となる部分である。
【0027】
図5は車体左側のフロントフェンダ17を斜め上方かつ後方から示す図である。右側のフロントフェンダは省略してある。前輪マッドガード25は左右のフロントフェンダ17の後端部へボルト50により着脱自在に取付けられている。前輪マッドガード25はサイドビーム31の外側方に位置する。前輪マッドガード25の近傍には、第2クロスメンバ42の外方端部が位置し、この第2クロスメンバ42の後面に車体下マッドガード51の上端部が所定間隔でボルト51c(符号は一部のみを代表的に指す)により着脱自在に取付けられている。車体下マッドガード51の内側端部51bは上部側がセンタビーム46の側面に接している。
【0028】
図6はフロントフェンダ17の側面図であり、前輪マッドガード25は前縁52がフロントフェンダ17の後部壁17aの前縁17bに連続し、前縁52の上端部は凸部53をなし、フロントフェンダ17の前縁17bに重なっている。前輪マッドガード25の上部はフロントフェンダ17の後部壁17aの下部側面に重なり、上縁54は略直線状をなして前後方向へ延びている。上縁54の後端部は段部55をなし、段部55の下部は後部壁17aの下端部17cより下方へ出ているサイドビーム31の下端と重なり、段部55より下方の縁56はサイドビーム31より下方へ延びて垂れ下がっている。
【0029】
図7は前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51部分を前方より示す図である。この図も右側のフロントフェンダは省略してある。前輪マッドガード25は前輪2の後方を幅方向へほぼ重なって覆い、そのうち内側端部25aはサイドビーム31の下方を車体内側へ延びて、サイドビーム31の内側側面の近傍に位置している。一方、車体下マッドガード51は略長方形の板状をなし、内側端部51bはセンタービーム46の側面と同じ位置となり、外側端部51aはサイドビーム31の外面と略一致する。
【0030】
その結果、外側端部51aは内側端部25aよりも外方に張り出して、サイドビーム31の下方位置まで張り出す。このため前輪マッドガード25の前方に車体下マッドガード51の外側端部51a近傍分が重なるオーバーラップ部57をなす。前輪マッドガード25の内側端部25a近傍部分もオーバーラップ部57の後方へ重なるオーバーラップ部58(図8)をなす。車体下マッドガード51の各下端はほぼ同じ高さになっている。
【0031】
図8は図4における車体左側の前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51部分を拡大した図である。車体下マッドガード51の外側端部51aは及び前輪マッドガード25の内側端部25aの近傍かつ前方に離れて位置し、車体下マッドガード51及び前輪マッドガード25の各オーバーラップ部57及び58の間には、間隙59が形成され、前輪マッドガード25の前方空間と、車体下マッドガード51の後方空間とを連通し、かつ車体の内外を連通する。間隙59は斜め前後方向に向かって開放され、車体前方からは見えない。
車体下マッドガード51の後方空間はバッテリ等の電装品が配設される空間48(図4参照)にも通じている。
【0032】
図9は前輪マッドガード25を斜め後方から示す図、図10は前輪マッドガード25の上面視図である。これらの図に示すように、内側端部25aは段部55から車体内側へ張り出し、突部53と上縁部54にボルト50(図5、6)による取付部53a及び54aが設けられている。図10に明らかなように、段部55の低くなった部分は略水平に折り曲げられた取付座55aをなし、ここでサイドメンバ31の下面へボルト止めされる。
前輪マッドガード25の上面視形状は、図8に示す形状と同じであり、細長く外開き状に内外方向へ張り出している。
【0033】
図11はチェンジペダル26及びチェンジケーブル27各要部拡大側面図である。チェンジペダル26はセンタービーム46へ支持された軸60により回動自在であり、チェンジペダル26にはレバー61が一体に突出し、この先端にチェンジケーブル27の前端が連結されている。チェンジケーブル27の前端部にはブーツ62が設けられ、レバー61の回動に伴うチェンジケーブル27の上下動を吸収する。このブーツ62はセンタービーム46側へ支持される。
チェンジペダル26は二股状のアーム63、64を備え、各アーム部の先端にペダル65・66が設けられる。前側のペダル65はシフトアップ用であり、前側のペダル65を踏むとチェンジケーブル27を前方へ引く。後側のペダル66はシフトダウン用であり、後側のペダル66を踏むとチェンジケーブル27を後方へ押し出す。
【0034】
チェンジケーブル27は図4に示すように、車体中心に略沿って車体フレーム1の上を後方へ延び、燃料タンク13の周囲を迂回してその後方でブーツ67に接続する。
再び図11において、ブーツ67は補強メンバ35の下部側面へ取付けられている。ブーツ67からはコントロールロッド68が後方へ突出し、その後端部がオーバーロード機構70を介してスピンドルアーム71の一端に連結している。スピンドルアーム71の他端はスピンドル軸72に連結している。スピンドル軸72はパワーユニット11内に設けられているギヤミッションのシフターに連結し、チェンジペダル26を踏むことにより、スピンドル軸72を回動してチェンジを行うようになっている。
【0035】
図12はチェンジケーブル27の全体を示す図であり、オーバーロード機構70は、コントロールロッド68が貫通する第1カラー73と第2カラー74及び両カラー間に配設される調整スプリング75を備え、各カラーを接近方向へ移動可能にナット76、77でコントロールロッド68上のネジ部へ締結して位置決めする。第2カラー74には側方へ突出するピン78が設けられ、このピン78をスピンドルアーム71の穴へ嵌合している(図11参照)。
【0036】
シフトダウン側ペダル66(図11)を踏むと、チェンジケーブル27が後方へ押され、ブーツ67にてコントロールロッド68をE矢示方向へ押し出す。このコントロールロッド68へ加えられる力が調整スプリング75のセット荷重より小さいうちは、コントロールロッド68と一緒にオーバーロード機構70が後方(E方向)へ移動し、一体のピン78を介してスピンドルアーム71を回動させてシフトする。
【0037】
シフトダウン側ペダル66へ過大な踏力が加えられると、第2カラー74がスピンドルアーム71にピン78を介して支持されているので、第1カラー73が調整スプリング75を圧縮し、第2カラー74をそのままにしてコントロールロッド68だけを後方へ突出させる。このため過大な力によりコントロールロッド68のストローク量が大きくなっても、この過剰分のストロークを逃がして、スピンドルアーム41に対して過大な回動力を及ぼさないようにすることができる。
【0038】
コントロールロッド68はスピンドルアーム71の回動に伴って、ブーツ側の端部を中心に揺動するため、ブーツ67の後端部にはシールキャップ80が設けられている。またブーツ67内にはコントロールロッド68を潤滑するグリースが充填されている。シールキャップ80は、揺動するコントロールロッド68のブーツ67から延出する部分をシールしている。
【0039】
図13はブーツ67の端部に設けられるシールキャップ80の拡大断面図である。シールキャップ80はゴム等の適宜材料の弾性体からなり、ブーツ67の本体部端部外周に嵌合する太径部81と、薄肉部82を介して連続一体に設けられた細径部83を備え、細径部83にはコントロールロッド68の通る貫通穴84が設けられ、コントロールロッド68の揺動に伴って細径部83も薄肉部82を変形させながら一体に首振り動作を行う。
【0040】
貫通穴84の内周面には貫通穴84の軸線方向に3つのシールリップ85〜87が一体に形成され、それぞれ軸心方向へ突出し、このうち中央のシールリップ86が他よりも最も高く突出している。他のシールリップ85,87はほぼ同程度の高さであり、中央のシールリップ86の他のシールリップに対する突出量はhである。この突出量hは任意に設定できる。
また、中央のシールリップ86は薄肉部82の細径部83に対する接続部82aを通り非揺動時のコントロールロッド68と直交する直線L1上に位置し、このシールリップ86の左右両端側に位置する端部のシールリップ85及び87はそれぞれ、コントロールロッド68の軸方向へ接続部82aから外れて位置し、その結果、シールリップの剛性は中央のシールリップ86よりも端部のシールリップ85及び87の方が低くなっている。
各シールリップの断面は台形断面をなし、コントロールロッド68に対する摺接部である先端側が幅狭になっている。隣り合うシールリップ間にはグリース溝88が設けられ、ここにシール用のグリースが充填される。
【0041】
このように、中央のシールリップ86のみを高くすると、コントロールロッド68に対して両側のシールリップ85及び87よりも中央のシールリップ86が強く接触する。
図14はコントロールロッド68が揺動した状態を模式的に示す図であり、中央のシールリップ86よりも端部のシールリップ85及び87はそれぞれ剛性が低く変形し易いため、コントロールロッド68の揺動に応じて比較的大きく変形し、コントロールロッド68に対する接触程度が変化する。一方、中央のシールリップ86は接続部82aにより外周側を環状壁に支持された状態をなして剛性が高く変形しにくいため、常時コントロールロッド68に対してほぼ一定の力で接触状態を維持できる。このためコントロールロッド68は各シールリップとの関係では、直線L1とコントロールロッド68の軸線L2との交点であるPを中心にした揺動となり、左右両端部のシールリップ84及び87がコントロールロッド68の揺動に対して均等に接触できることになり、端部のシールリップ85及び87の片当たりを阻止できる。このため、シールリップ85及び87の摩耗が減少し、各シールリップ85〜87の摩耗を均一化してシール性を良好に維持できるようになる。
【0042】
次に、本実施例の作用を説明する。図8において、前輪の跳ね上げる小石等からなる飛石はA又はB矢示のように後方へ向かい、前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51の前面へ衝突する。また車体下マッドガード51の前面へ衝突した一部は、後方傾斜する斜面に案内されてC矢示のように外側方へ向かい、前輪マッドガード25へ移り、ここでさらに多くが落下する。
【0043】
A又はC矢示方向から前輪マッドガード25へ衝突したものは、ここで多くが落下するが、一部はスピードを弱めながらD矢示のように後傾する斜面に沿って後方へ向かい、間隙59から車体下マッドガード51の後方空間である車体フレーム1の内側へ侵入する。しかし間隙59へ至るまでに十分スピードが弱められているため、間隙59を通過した時点でほとんどが落下し、空間48までは到達しない。
【0044】
しかも、前方から見て、車体下マッドガード51と前輪マッドガード25はオーバーラップ部57、58で重なっているため、後方へ向かう小石等はオーバーラップ部57、58で止められ、車体下マッドガード51及び前輪マッドガード25により、後方の車体内側空間内へ侵入することを阻止できるから、車幅方向の広い範囲で飛石を防ぐことができる。
【0045】
また、間隙59により飛石を溜まる前に間隙から落とすことができる。そのうえ間隙59の大きさを適宜設定することで、飛石を可及的に防ぎつつ溜まらないように調節することが容易になる。
さらに、間隙59は斜め前後方向に向かって開放されているから、前方から後方へ向かう飛石をマッドガードへ接触せずに直接間隙59へ入らないようにすることができる。
【0046】
さらに、前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51の後方となる車体下部の空間48にバッテリ49等の電装品や燃料タンク13さらにはワイヤーハーネス12を配設しても、これらに対する飛石を可及的に防ぐことができ、車体下部におけるこれら部品の配置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例に係る自動4輪車の側面図
【図2】車室内部を示す平面図
【図3】車体フレームの側面図
【図4】同平面図
【図5】マッドガードの取付状態を車体後方から示す斜視図
【図6】フロントフェンダの側面図
【図7】マッドガードを車体前方より示す図
【図8】マッドガードの平面配置を示す図
【図9】前輪マッドガードを斜め後方から示す図
【図10】前輪マッドガードの上面視図
【図11】チェンジペダル及びチェンジケーブル部分の側面図
【図12】チェンジケーブル全体を示す図
【図13】シールキャップの拡大断面図
【図14】コントロールロッドに対するシール状態を模式的に示す図
【符号の説明】
【0048】
2:前輪、17:フロントフェンダ、25:前輪マッドガード、26:チェンジペダル、27:チェンジケーブル、51:車体下マッドガード、57:オーバーラップ部、58:オーバーラップ部、59:間隙、80:シールキャップ
【技術分野】
【0001】
本願は、前輪マッドガードと車体下マッドガードを備えた4輪車両のマッドガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体下部の前輪後方位置に燃料タンクがを設けた4輪車両が開示されている(特許文献1参照)。このような車両では走行中に前輪が跳ね上げた飛石が燃料タンクや電装部品に当たることを防ぐため、マッドガードとして、前輪の直後に前輪マッドガードを設けるとともに、その車体内側部分を車体内側かつ前方へ斜めに延ばして車体フレーム下方に設けものも公知である(特許文献2参照)。なおこのような車体フレーム下方に設けられたマッドガードを車体下マッドガードということにする。
【特許文献1】特開2006−8104号公報
【特許文献2】特開平8−207831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、前輪マッドガードと車体下マッドガードとが一体になった構造では、車両の車高が低い場合、前輪に跳ね上げられた小石等の飛石は、落下する前に次の飛石に突き上げられ、走行中マッドガード内側に残ることがある。特に前輪マッドガードから車体下マッドガードへ曲がるコーナー部に溜まりやすい。このコーナー部は特許文献2において、前輪後方に車幅方向へ長く配設され、前輪よりも車体内方へ延びる部分が車体フレームの一部であって前後方向へ延びるサイドフレームに沿った後、さらに車体内側まで延びるように構成されたマッドガードのうち、前輪の直後方部分とサイドフレームに沿う部分との間に形成されるコーナー部が相当する。
このような飛石等の溜まりやすい部分を有するマッドガードを備えた車両では、前輪後方に配置される燃料タンクや電装系部品への飛石を防ぎつつ、かつ飛石を確実にマッドガードから落とす構造が求められていた。本願は係る要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため4輪車両のマッドガード装置に係る請求項1の発明は、車体フレームの前後左右に車輪を備え、左右一対の各前輪後方に垂下して設けられた前輪マッドガードと、左右の前輪マッドガード間より車体の内側位置にて車体フレームの下方へ垂下して設けられた車体下マッドガードとを備えた4輪車両のマッドガード装置において、
前記車体下マッドガードは、前記前輪マッドガード近傍から車体内方へ向かって車幅方向へ配置され、
車体前方から見て、前記車体下マッドガードの車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部と、前記前輪マッドガード車幅方向端部のうち最も車体内方に位置する内側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合うとともに、
前方側に位置する前記前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する前記車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が設けられていることを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記間隙は斜め前後方向に向かって開放され車体前方からは見えないことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項1において、平面視にて、前記前輪マッドガードは前方へ向かって外開き状に傾斜配置され、前記車体下マッドガードは前すぼまり状に傾斜配置され、
前記前輪マッドガードの内側端部が前記車体下マッドガードの外側端部よりも後方に配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項3において、前記車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前記前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項1において、前記前輪マッドガードと前記車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、前輪マッドガードの内側端部と車体下マッドガードの外側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合い、前方側に位置する前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が形成されるので、
この間隙の大きさを適宜設定することで、飛石を可及的に防ぎつつ、かつ飛石が溜まる前に間隙から落とすことが可能となる。
また、前方から見て車体下マッドガードの外側端部と前輪マッドガードの内側端部とが重なり合っているため、後方へ向かう飛石をマッドガードにより車幅方向の広い範囲で飛石を防ぐことが可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、間隙が斜め前後方向に向かって開放されているから、後方へ向かう飛石を間隙へ入りにくくすることができる。
また、車体下マッドガードに当たった飛石の一部ですぐに落下せず側方へ移動したものも、前輪マッドガードへ移り、その後スピードを十分に落としてから間隙より車体内側に向かって落ちるようになるので、飛石をマッドガードで確実に落とすことが可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、車体下マッドガードが前すぼまりに傾斜しているから、車体下マッドガードに当たった飛石の一部で勢いのあるものを傾斜に沿って外方へ導き前輪マッドガードへ移し易くする。前輪マッドガードへ移った飛石は、前輪マッドガードが前方へ向かって外開き状に傾斜しているから、前輪マッドガードの傾斜面に沿って間隙へ導きやすくなる。
【0012】
請求項4の発明によれば、車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したので、これらに対して飛石が当たることを防ぐことができる。
【0013】
請求項5の発明によれば、前輪マッドガードと車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したので、電装部品へ飛石が当たることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。なお、以下において、上下及び前後は図1の図示状態、左右は図2の図示状態をそれぞれ基準とする。
【0015】
図1は本願に係る小型自動4輪車の側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2及び後輪3を備え、車体中央に設けられた運転者D用のフロントシート4前方に前輪操舵機構5を備える。フロントシート4は座部からなり、物入れ4a上に支持され、前端をヒンジ4bにて回動自在に取付けられており、フロントシート4を開くと、物入れ4aの開口が開かれて物品を出入可能である。物入れ4aはヘルメット等の大型物品を収容できる程度に大容量である。
【0016】
フロントシート4の後方には別体で構成されたバックレスト6がフロアパネルから隆起する台座部7上に支持され前後方向へスライド自在になっている。
バックレスト6から後方にセンターグリップ8が延出し、同乗者Pが着座時及び乗降時に握れるようになっている。
バックレスト6の後方には、サイドグリップ9及びリヤシート10が設けられている。
【0017】
リヤシート10の座部下方にはパワーユニット11が設けられ、このパワーユニット11により後輪3を駆動する。
パワーユニット11は図示省略のリンクにより車体フレーム1へ揺動自在に支持され、燃料噴射(FI)式である。13は燃料タンクであり、物入れ7の後方に配置される。14は燃料ポンプ、15はエアクリーナである。
【0018】
車体の前部はフロントカバー16で覆われ、その一部はフロントフェンダ17をなし、前輪2の前側及び上側から後側までを覆う。車室内前部はインナーパネル18で覆われる。19はミラー、20はバーハンドルである。バーハンドル20は前輪操舵機構5の一部を構成するとともにインナーパネル18の上方へにて後方の運転者Dにより操舵される。車室内空間Sの前部はウインドスクリーン21、上部はルーフ22で覆われる。ルーフ22の前部は後傾したフロントピラー23で支持され、このフロントピラー23にはウインドスクリーン21も支持される。ルーフ22の後部はほぼ直立したリヤピラー24で支持される。フロントピラー23及びリヤピラー24の各下端部は車体フレーム1側へ支持されている。
【0019】
図中の符号25は前輪マッドガード、26はチェンジペダル、27はチェンジケーブル、28はアームレスト、29はリヤカバーである。リヤカバー29の一部はリヤフェンダ29aをなして、後輪3の前側及び上側から後側を覆う。
【0020】
図2は車両の平面図(ウインドスクリーン21及びルーフ22を省略)である。前輪2及び後輪3はそれぞれ左右一対で設けられる。リヤシート10は左右へ2人並んで着座できる大きさであり、リヤシート10の乗員はそれぞれ足をフロントシート4の側方におけるフロアパネル30の上へ出すことができる。前輪操舵機構5及びフロントシート4は車体中心線Cの上に配置され、バーハンドル20は左右方向へ延びて運転者Dの両手で操作される。フロントシート4はフロアパネル30の略中央に位置する。
【0021】
サイドグリップ9はセンターグリップ8の左右に設けられ、同乗者Pの前方を左右方向へ横切り、着座時に同乗者Pが握れるようになっている。このサイドグリップ9は、一端をアームレスト28へ回動自在に支持され、乗降時にはアームレスト28との連結軸を中心に車体内側の他端を上方へ跳ね上げるように回動させることができる(図1参照)。
【0022】
図3は車体フレーム1の側面図、図4は平面図である。この車体フレーム1は前後方向へ略直線状に延びるサイドビーム31と、その前部及び後部に設けられた斜めビーム32,33と、斜めビーム32・33とサイドビーム31を連結する補強メンバ34,35、さらに前端に設けられるフロントバンパ部36、後部に設けられるシートレール部37等で構成される。
【0023】
図4は車体フレーム1の平面図である。サイドビーム31、斜めビーム32,33及び補強メンバ34,35(図3)はそれぞれ左右一対で設けられ、左右間は、第1〜第4クロスメンバ41〜44で連結される。左右のシートレール37間も前後のクロスパイプ45a及び45bで連結されている。フロントバンパ部36の下部と第2クロスメンバ42の間にはセンタービーム46が設けられている。
【0024】
第3クロスメンバ43と第4クロスメンバ44間は左右一対のパイプ部材47,47で連結され、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44及び左右のパイプ部材47,47で囲まれた略矩形の空間48を形成し、この中に燃料タンク13が収容して支持され、さらに燃料タンク13の上に燃料ポンプ14が配置される。この空間48内の燃料タンク13前方には、電装品であるバッテリ49が収容され、第3クロスメンバ43の中央部に支持されている。バッテリ49に接続する電線はワイヤーハーネス12をなし、このワイヤーハーネス12は車体下マッドガード51の後方をパイプ部材47に沿って燃料タンク13の右側方を通り、燃料タンク13の後部から一部が車体後方へ向かい、他の部分は右側のサイドビーム31へ向かい、さらに前輪マッドガード25の後方をサイドビーム31に沿って前後方向に配設される。ワイヤーハーネス12はバッテリ49等の電装品とともに電装系部品を構成する。
【0025】
以下、マッドガードの取付につき説明する。図4において、左右の各前輪2の後方となるフロントフェンダ17の後端部に前輪マッドガード25が垂下して設けられている。前輪マッドガード25は内側部分がサイドビーム31と重なり、外側は前方に向かって外開き状をなして斜めに配置され、左右の前輪マッドガード25は後方へ向かって略ハの字状をなしている。また、第2クロスメンバ42に沿ってセンタービーム46から左右のサイドビーム31に向かって車体下マッドガード51が垂下して取付けられている。左右の車体下マッドガード51は外側端部が後方となるように傾斜し、前方へ向かって前すぼまり状に配置され、略ハの字状をなしている。
【0026】
車体下マッドガード51の車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部51aはサイドビーム31の下方を外側側面の位置まで延び、かつ前輪マッドガード25のうちサイドビーム31の下を通って車体内方へ入り込んでいる内側端部25aの前方に位置する。内側端部25aは車幅方向端部のうち最も車体内側となる部分である。
【0027】
図5は車体左側のフロントフェンダ17を斜め上方かつ後方から示す図である。右側のフロントフェンダは省略してある。前輪マッドガード25は左右のフロントフェンダ17の後端部へボルト50により着脱自在に取付けられている。前輪マッドガード25はサイドビーム31の外側方に位置する。前輪マッドガード25の近傍には、第2クロスメンバ42の外方端部が位置し、この第2クロスメンバ42の後面に車体下マッドガード51の上端部が所定間隔でボルト51c(符号は一部のみを代表的に指す)により着脱自在に取付けられている。車体下マッドガード51の内側端部51bは上部側がセンタビーム46の側面に接している。
【0028】
図6はフロントフェンダ17の側面図であり、前輪マッドガード25は前縁52がフロントフェンダ17の後部壁17aの前縁17bに連続し、前縁52の上端部は凸部53をなし、フロントフェンダ17の前縁17bに重なっている。前輪マッドガード25の上部はフロントフェンダ17の後部壁17aの下部側面に重なり、上縁54は略直線状をなして前後方向へ延びている。上縁54の後端部は段部55をなし、段部55の下部は後部壁17aの下端部17cより下方へ出ているサイドビーム31の下端と重なり、段部55より下方の縁56はサイドビーム31より下方へ延びて垂れ下がっている。
【0029】
図7は前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51部分を前方より示す図である。この図も右側のフロントフェンダは省略してある。前輪マッドガード25は前輪2の後方を幅方向へほぼ重なって覆い、そのうち内側端部25aはサイドビーム31の下方を車体内側へ延びて、サイドビーム31の内側側面の近傍に位置している。一方、車体下マッドガード51は略長方形の板状をなし、内側端部51bはセンタービーム46の側面と同じ位置となり、外側端部51aはサイドビーム31の外面と略一致する。
【0030】
その結果、外側端部51aは内側端部25aよりも外方に張り出して、サイドビーム31の下方位置まで張り出す。このため前輪マッドガード25の前方に車体下マッドガード51の外側端部51a近傍分が重なるオーバーラップ部57をなす。前輪マッドガード25の内側端部25a近傍部分もオーバーラップ部57の後方へ重なるオーバーラップ部58(図8)をなす。車体下マッドガード51の各下端はほぼ同じ高さになっている。
【0031】
図8は図4における車体左側の前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51部分を拡大した図である。車体下マッドガード51の外側端部51aは及び前輪マッドガード25の内側端部25aの近傍かつ前方に離れて位置し、車体下マッドガード51及び前輪マッドガード25の各オーバーラップ部57及び58の間には、間隙59が形成され、前輪マッドガード25の前方空間と、車体下マッドガード51の後方空間とを連通し、かつ車体の内外を連通する。間隙59は斜め前後方向に向かって開放され、車体前方からは見えない。
車体下マッドガード51の後方空間はバッテリ等の電装品が配設される空間48(図4参照)にも通じている。
【0032】
図9は前輪マッドガード25を斜め後方から示す図、図10は前輪マッドガード25の上面視図である。これらの図に示すように、内側端部25aは段部55から車体内側へ張り出し、突部53と上縁部54にボルト50(図5、6)による取付部53a及び54aが設けられている。図10に明らかなように、段部55の低くなった部分は略水平に折り曲げられた取付座55aをなし、ここでサイドメンバ31の下面へボルト止めされる。
前輪マッドガード25の上面視形状は、図8に示す形状と同じであり、細長く外開き状に内外方向へ張り出している。
【0033】
図11はチェンジペダル26及びチェンジケーブル27各要部拡大側面図である。チェンジペダル26はセンタービーム46へ支持された軸60により回動自在であり、チェンジペダル26にはレバー61が一体に突出し、この先端にチェンジケーブル27の前端が連結されている。チェンジケーブル27の前端部にはブーツ62が設けられ、レバー61の回動に伴うチェンジケーブル27の上下動を吸収する。このブーツ62はセンタービーム46側へ支持される。
チェンジペダル26は二股状のアーム63、64を備え、各アーム部の先端にペダル65・66が設けられる。前側のペダル65はシフトアップ用であり、前側のペダル65を踏むとチェンジケーブル27を前方へ引く。後側のペダル66はシフトダウン用であり、後側のペダル66を踏むとチェンジケーブル27を後方へ押し出す。
【0034】
チェンジケーブル27は図4に示すように、車体中心に略沿って車体フレーム1の上を後方へ延び、燃料タンク13の周囲を迂回してその後方でブーツ67に接続する。
再び図11において、ブーツ67は補強メンバ35の下部側面へ取付けられている。ブーツ67からはコントロールロッド68が後方へ突出し、その後端部がオーバーロード機構70を介してスピンドルアーム71の一端に連結している。スピンドルアーム71の他端はスピンドル軸72に連結している。スピンドル軸72はパワーユニット11内に設けられているギヤミッションのシフターに連結し、チェンジペダル26を踏むことにより、スピンドル軸72を回動してチェンジを行うようになっている。
【0035】
図12はチェンジケーブル27の全体を示す図であり、オーバーロード機構70は、コントロールロッド68が貫通する第1カラー73と第2カラー74及び両カラー間に配設される調整スプリング75を備え、各カラーを接近方向へ移動可能にナット76、77でコントロールロッド68上のネジ部へ締結して位置決めする。第2カラー74には側方へ突出するピン78が設けられ、このピン78をスピンドルアーム71の穴へ嵌合している(図11参照)。
【0036】
シフトダウン側ペダル66(図11)を踏むと、チェンジケーブル27が後方へ押され、ブーツ67にてコントロールロッド68をE矢示方向へ押し出す。このコントロールロッド68へ加えられる力が調整スプリング75のセット荷重より小さいうちは、コントロールロッド68と一緒にオーバーロード機構70が後方(E方向)へ移動し、一体のピン78を介してスピンドルアーム71を回動させてシフトする。
【0037】
シフトダウン側ペダル66へ過大な踏力が加えられると、第2カラー74がスピンドルアーム71にピン78を介して支持されているので、第1カラー73が調整スプリング75を圧縮し、第2カラー74をそのままにしてコントロールロッド68だけを後方へ突出させる。このため過大な力によりコントロールロッド68のストローク量が大きくなっても、この過剰分のストロークを逃がして、スピンドルアーム41に対して過大な回動力を及ぼさないようにすることができる。
【0038】
コントロールロッド68はスピンドルアーム71の回動に伴って、ブーツ側の端部を中心に揺動するため、ブーツ67の後端部にはシールキャップ80が設けられている。またブーツ67内にはコントロールロッド68を潤滑するグリースが充填されている。シールキャップ80は、揺動するコントロールロッド68のブーツ67から延出する部分をシールしている。
【0039】
図13はブーツ67の端部に設けられるシールキャップ80の拡大断面図である。シールキャップ80はゴム等の適宜材料の弾性体からなり、ブーツ67の本体部端部外周に嵌合する太径部81と、薄肉部82を介して連続一体に設けられた細径部83を備え、細径部83にはコントロールロッド68の通る貫通穴84が設けられ、コントロールロッド68の揺動に伴って細径部83も薄肉部82を変形させながら一体に首振り動作を行う。
【0040】
貫通穴84の内周面には貫通穴84の軸線方向に3つのシールリップ85〜87が一体に形成され、それぞれ軸心方向へ突出し、このうち中央のシールリップ86が他よりも最も高く突出している。他のシールリップ85,87はほぼ同程度の高さであり、中央のシールリップ86の他のシールリップに対する突出量はhである。この突出量hは任意に設定できる。
また、中央のシールリップ86は薄肉部82の細径部83に対する接続部82aを通り非揺動時のコントロールロッド68と直交する直線L1上に位置し、このシールリップ86の左右両端側に位置する端部のシールリップ85及び87はそれぞれ、コントロールロッド68の軸方向へ接続部82aから外れて位置し、その結果、シールリップの剛性は中央のシールリップ86よりも端部のシールリップ85及び87の方が低くなっている。
各シールリップの断面は台形断面をなし、コントロールロッド68に対する摺接部である先端側が幅狭になっている。隣り合うシールリップ間にはグリース溝88が設けられ、ここにシール用のグリースが充填される。
【0041】
このように、中央のシールリップ86のみを高くすると、コントロールロッド68に対して両側のシールリップ85及び87よりも中央のシールリップ86が強く接触する。
図14はコントロールロッド68が揺動した状態を模式的に示す図であり、中央のシールリップ86よりも端部のシールリップ85及び87はそれぞれ剛性が低く変形し易いため、コントロールロッド68の揺動に応じて比較的大きく変形し、コントロールロッド68に対する接触程度が変化する。一方、中央のシールリップ86は接続部82aにより外周側を環状壁に支持された状態をなして剛性が高く変形しにくいため、常時コントロールロッド68に対してほぼ一定の力で接触状態を維持できる。このためコントロールロッド68は各シールリップとの関係では、直線L1とコントロールロッド68の軸線L2との交点であるPを中心にした揺動となり、左右両端部のシールリップ84及び87がコントロールロッド68の揺動に対して均等に接触できることになり、端部のシールリップ85及び87の片当たりを阻止できる。このため、シールリップ85及び87の摩耗が減少し、各シールリップ85〜87の摩耗を均一化してシール性を良好に維持できるようになる。
【0042】
次に、本実施例の作用を説明する。図8において、前輪の跳ね上げる小石等からなる飛石はA又はB矢示のように後方へ向かい、前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51の前面へ衝突する。また車体下マッドガード51の前面へ衝突した一部は、後方傾斜する斜面に案内されてC矢示のように外側方へ向かい、前輪マッドガード25へ移り、ここでさらに多くが落下する。
【0043】
A又はC矢示方向から前輪マッドガード25へ衝突したものは、ここで多くが落下するが、一部はスピードを弱めながらD矢示のように後傾する斜面に沿って後方へ向かい、間隙59から車体下マッドガード51の後方空間である車体フレーム1の内側へ侵入する。しかし間隙59へ至るまでに十分スピードが弱められているため、間隙59を通過した時点でほとんどが落下し、空間48までは到達しない。
【0044】
しかも、前方から見て、車体下マッドガード51と前輪マッドガード25はオーバーラップ部57、58で重なっているため、後方へ向かう小石等はオーバーラップ部57、58で止められ、車体下マッドガード51及び前輪マッドガード25により、後方の車体内側空間内へ侵入することを阻止できるから、車幅方向の広い範囲で飛石を防ぐことができる。
【0045】
また、間隙59により飛石を溜まる前に間隙から落とすことができる。そのうえ間隙59の大きさを適宜設定することで、飛石を可及的に防ぎつつ溜まらないように調節することが容易になる。
さらに、間隙59は斜め前後方向に向かって開放されているから、前方から後方へ向かう飛石をマッドガードへ接触せずに直接間隙59へ入らないようにすることができる。
【0046】
さらに、前輪マッドガード25及び車体下マッドガード51の後方となる車体下部の空間48にバッテリ49等の電装品や燃料タンク13さらにはワイヤーハーネス12を配設しても、これらに対する飛石を可及的に防ぐことができ、車体下部におけるこれら部品の配置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例に係る自動4輪車の側面図
【図2】車室内部を示す平面図
【図3】車体フレームの側面図
【図4】同平面図
【図5】マッドガードの取付状態を車体後方から示す斜視図
【図6】フロントフェンダの側面図
【図7】マッドガードを車体前方より示す図
【図8】マッドガードの平面配置を示す図
【図9】前輪マッドガードを斜め後方から示す図
【図10】前輪マッドガードの上面視図
【図11】チェンジペダル及びチェンジケーブル部分の側面図
【図12】チェンジケーブル全体を示す図
【図13】シールキャップの拡大断面図
【図14】コントロールロッドに対するシール状態を模式的に示す図
【符号の説明】
【0048】
2:前輪、17:フロントフェンダ、25:前輪マッドガード、26:チェンジペダル、27:チェンジケーブル、51:車体下マッドガード、57:オーバーラップ部、58:オーバーラップ部、59:間隙、80:シールキャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前後左右に車輪を備え、左右一対の各前輪後方に垂下して設けられた前輪マッドガードと、左右の前輪マッドガード間より車体の内側位置にて車体フレームの下方へ垂下して設けられた車体下マッドガードとを備えた4輪車両のマッドガード装置において、
車体前方から見て、前記車体下マッドガードの車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部と、前記前輪マッドガード車幅方向端部のうち最も車体内方に位置する内側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合うとともに、
前方側に位置する前記前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する前記車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が設けられていることを特徴とする4輪車両のマッドガード装置。
【請求項2】
前記間隙は斜め前後方向に向かって開放され、車体前方からは見えないことを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項3】
平面視にて、前記前輪マッドガードは前方へ向かって外開き状に傾斜配置され、前記車体下マッドガードは前すぼまり状に傾斜配置され、
前記前輪マッドガードの内側端部が前記車体下マッドガードの外側端部よりも後方に配置されることを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項4】
前記車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前記前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したことを特徴とする請求項3に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項5】
前記前輪マッドガードと前記車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したことを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項1】
車体フレームの前後左右に車輪を備え、左右一対の各前輪後方に垂下して設けられた前輪マッドガードと、左右の前輪マッドガード間より車体の内側位置にて車体フレームの下方へ垂下して設けられた車体下マッドガードとを備えた4輪車両のマッドガード装置において、
車体前方から見て、前記車体下マッドガードの車幅方向端部のうち最も車体外側となる外側端部と、前記前輪マッドガード車幅方向端部のうち最も車体内方に位置する内側端部とが前後方向に間隔をもって重なり合うとともに、
前方側に位置する前記前輪マッドガードの内側端部と後方側に位置する前記車体下マッドガードの外側端部との間に車体の内外を連通する間隙が設けられていることを特徴とする4輪車両のマッドガード装置。
【請求項2】
前記間隙は斜め前後方向に向かって開放され、車体前方からは見えないことを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項3】
平面視にて、前記前輪マッドガードは前方へ向かって外開き状に傾斜配置され、前記車体下マッドガードは前すぼまり状に傾斜配置され、
前記前輪マッドガードの内側端部が前記車体下マッドガードの外側端部よりも後方に配置されることを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項4】
前記車体下マッドガードの後方に燃料タンクを配置し、前記前輪マッドガードの後方にハーネスを配置したことを特徴とする請求項3に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【請求項5】
前記前輪マッドガードと前記車体下マッドガードの後方に電装部品を配置したことを特徴とする請求項1に記載した4輪車両のマッドガード装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−179286(P2008−179286A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15278(P2007−15278)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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