説明

ATMおよびATMによる生体認証方法

【課題】キャッシュカードに記憶された生体情報が盗み出されることを防止し、またATMの生体認証用プログラムのバージョンアップ処理を簡単に行えるようにして不正な預金引出の防止ができるようにしたATMおよびATMによる生体認証方法を提供する。
【解決手段】 CPUとメモリを有するIC媒体が取り外し可能に備えられ、前記メモリには、生体認証用プログラムが記憶されているATMと、ICカードに記憶されている生体情報を暗号化させてATMで読み取らせ、ATMの利用者の身体から生体情報を読み取り、ATMに取り外し可能に備えられたIC媒体に、前記2つの生体情報を送信し、IC媒体内において、暗号化されている生体情報を復号し、IC媒体内において、復号した生体情報と、利用者の身体から読み取られた生体情報とを比較照合し、前記比較照合の結果に基づく正当性判定情報をIC媒体からATMに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッシュカードを利用して金融取引処理を行うATM(Automatic Tellers Machine)、所謂、現金自動支払機と、人間の身体の一部を利用して利用者の正当性に対する認証処理を行うATMによる生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などが設置したATMを利用して金融取引を行う利用者について、その正当性を認証する方法として、暗証番号や生体情報などを用いて比較照合する方法が既に知られている。
特に、身体の一部などが保有する生体情報を照合する方法は、利用者の生体情報として例えば、指紋、静脈、声紋、虹彩などの固有情報を利用するので、暗証番号のように第三者に盗まれる心配もなく、セキュリティー性に優れているという長所がある。
【0003】
生体情報を利用した従来技術としては、予めICカードに記憶させた利用者の指紋情報と、ATMを利用する利用者の身体から直接読み取った指紋情報とを、ATM内で照合処理して、本人認証を行うATMにおける指紋照合システムが知られている。(例えば、特許文献1参照)
この指紋照合システムにおいては、指紋照合処理をATMのCPUにおいて実行したり、または指紋スキャナあるいは指紋スキャナ処理部において指紋照合処理を実行するように構成されている。
【特許文献1】特開2001−67523号公報
【0004】
しかしながら、上記の従来技術の本人認証処理を行うシステムでは、ICカードが第三者に盗まれた場合に、ICカードに記憶されている指紋情報を読み出すことができるので、読み出した指紋情報に基づいて同様の指紋を備えた指形を作成して不正な預金引き出しが行なわれる危険性がある。
更に、生体認証用プログラムである指紋照合処理用プログラムがATMに組み込まれているので、簡単に変更することができないことから、長期間に渡って同じシステム処理が実施されることとなり、これにより、犯罪者にそれらの処理方法を研究されて処理方法が解析されて、他人の口座から不正に預金の引き出しが行われるなどの不正行為が行われてしまうというセキュリティー上の危険性がある。
このようなことから、単純にICカードに指紋情報を記憶させたり、また長期間に渡って同じシステム処理を実施することは、セキュリティー上、問題がある。
【0005】
また、犯罪者に処理方法を研究されたとしても、ATM内に搭載されている生体認証用プログラムを変更するなどすれば、犯罪行為を回避することも可能であるが、通常ATMは多数設置されており、それらのATM内に搭載されている生体認証用プログラムをバージョンアップするためには手間や時間がかかり、簡単に新しいプログラムに移行できないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、キャッシュカードであるICカードに記憶された生体情報が不正に盗み出されることを防止することができ、また生体認証処理を行うATMにおいて、従来に比べ時間や手間をかけることなく簡単に生体認証用プログラムの変更などのバージョンアップの処理を行えるようにすることで、犯罪者が、他人の口座から不正に預金の引き出しを行うことを防止できるようにしたATMおよびATMによる生体認証方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のATMは、キャッシュカードを利用して金融取引処理を行うATM(現金自動支払機)であって、前記ATMは、CPUとメモリを有するIC媒体が取り外し可能に備えられ、前記メモリには、生体認証用プログラムが記憶されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のATMは、前記生体認証用プログラムが、ATMの利用者が所持するICカードから読み取られた暗号化された生体情報を復号した後に、人物身体から直接読み取られた生体情報と比較照合して、その比較照合の結果により正当性の判定処理を行うものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のATMによる生体認証方法は、ATMの利用者の正当性を判定するATMによる生体認証方法であって、ICカードのメモリに記憶されている生体情報を暗号化させて、前記ATMで読み取らせるステップと、前記ATMの利用者の身体から生体情報を読み取るステップと、前記ATMに取り外し可能に備えられたIC媒体に、前記2つの生体情報を送信するステップと、前記IC媒体内において、暗号化されている生体情報を復号するステップと、前記IC媒体内において、復号した生体情報と、利用者の身体から読み取られた生体情報とを比較照合するステップと、前記比較照合の結果に基づく正当性判定情報を、前記IC媒体から前記ATMに送信するステップと、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のATMは、生体認証用プログラムが記憶されているメモリを有するIC媒体が、ATMに取り外し可能に備えられているので、生体認証用プログラムの変更などのバージョンアップ処理を行いたい場合でも、ATMに備えられたIC媒体を取り外し、新たな生体認証用プログラムが記憶されているIC媒体と簡単に取り替えることが可能で、短時間で手間をかけることなく効率的にバージョンアップの処理が行え、犯罪者が、他人の口座から不正に預金の引き出しを行うことを防止できるという効果がある。
【0011】
また、本発明のATMは、前記生体認証用プログラムが、ATMの利用者が所持するICカードのメモリから読み取られた暗号化された生体情報を復号し、人物身体から直接読み取られた生体情報と比較照合して、その比較照合の結果により正当性の判定を行うプログラムを有しているので、キャッシュカードであるICカードに記憶された生体情報が不正に盗み出されたとしても、その生体情報が暗号化されているので、犯罪者が、他人の口座から不正に預金の引き出しを行うことを防止することができるという効果がある。
【0012】
更に、本発明のATMによる生体認証方法は、キャッシュカードであるICカードに記憶された生体情報が不正に盗み出されたとしても、その生体情報が暗号化されているので、犯罪者が、他人の口座から不正に預金の引き出しを行うことを防止することができ、更に、ATMに備えられたIC媒体を取り外し、新たな生体認証用プログラムが記憶されているIC媒体と簡単に取り替えることが可能で、短時間で手間をかけることなく効率的にバージョンアップの処理が行え、犯罪者が、他人の口座から不正に預金の引き出しを行うことを防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るATMおよびATMによる生体認証方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るATMの構成の概要を説明する図、図2は、本発明の実施形態に係るATMによる生体認証方法の概要を説明する図、図3は、本発明の実施形態に係るATMによる生体認証方法の処理手順を説明するフローチャート図である。
【0014】
本発明の実施形態に係るATM1の外側部分には、利用者2が所持するキャッシュカードであるICカード3を挿入するカード挿入部5、表示部6、入力部7、静脈パターン読取部8、現金取扱部9などが設けられ、利用者2がカード挿入部5からキャッシュカードであるICカード3を挿入して、所定の操作を行うことで金融取引の処理を行うことができる機能を有している。
また、ATM1の内部には、CPUとメモリを有するタンパ性の高いIC媒体4が取り外し可能に備えられており、必要に応じてIC媒体4を取り外して交換できるようにしてある。
但し、このIC媒体4は、正当な権限を有さない者によって、不正に取り外されて盗まれないように、施錠された状態でATM1の内部に取り付けられ設けられている。
【0015】
キャッシュカードであるICカード3のメモリには、予め利用者の静脈パターン情報からなる生体情報が記憶され、ATM1がこの生体情報を読み取る際には、ICカード3内において生体情報を暗号化された状態で読み取られるようになっている。
また、IC媒体4のメモリには、生体認証用プログラムが記憶されている。
この生体認証用プログラムは、ATM1の利用者が所持するICカード3のメモリから読み取られた暗号化された生体情報を復号し、ATM1で利用者の身体から直接読み取られた生体情報と比較照合して、その比較照合の結果により正当性の判定認証処理が行われるようにプログラムされている。
【0016】
IC媒体4内において、生体情報に基づく利用者に関する正当性の判定認証処理が行われるが、その正当性の判定認証処理の結果である正当性判定認証情報が、IC媒体4からATM1に送信されることで、その利用者がATM1を利用できる場合と、利用できない場合とに分かれる。
【0017】
次に、本発明のATMによる生体認証方法を、図2及び図3に基づいて説明する。
ここでは、生体情報の一例として静脈パターン情報を用いた場合について説明する。
利用者が、ATM1のカード挿入部5からキャッシュカードであるICカード3を挿入する。(ステップ1)
ATM1が、キャッシュカードであるICカード3に記憶されている生体情報である静脈パターン情報を読み取る際に、ICカード3のメモリに記憶されている静脈パターン情報を暗号化させて、ATM1に送信する。(ステップ2)
【0018】
次に、利用者2は、静脈パターン読取部8に手のひらを置いて静脈パターン情報を読み取らせる。(ステップ3)
そして、ATM1は、キャッシュカードであるICカード3から読み取った暗号化された静脈パターン情報と、静脈パターン読取部8から読み取った静脈パターン情報からなる生体情報とを、ATM1に取り外し可能に備えられたIC媒体4に送信する。(ステップ4)
【0019】
次に、IC媒体4内において、暗号化されている静脈パターン情報を復号する。(ステップ5)
更に、IC媒体4内において、復号した生体情報と、利用者の身体から読み取られた生体情報とを比較照合する。(ステップ6)
そして、この比較照合の結果、照合一致した場合には、正当性判定情報として、ATM1での取引処理を許可する信号をIC媒体4からATM1に送信する。(ステップ7)
また、この比較照合の結果、照合不一致した場合には、正当性判定情報として、ATM1での取引処理を不許可とする信号をIC媒体4からATM1に送信する。(ステップ8)
【0020】
以上の処理により、ATM1の利用者が、そのキャッシュカードであるICカード3を用いて金融取引を行う正当性を有しているか否かの判定を行い、正当性を有していると判定された場合にだけATM1を利用できるようにしてある。
上記の事例では、生体情報の一例として静脈パターン情報を用いた静脈認証について説明したが、本発明は、これに限らず、指紋、声紋、虹彩など種々の生体情報を用いることができるものである。
【0021】
また、ATMに取り外し可能に備えられている、CPUとメモリを有するIC媒体は、例えば、カード形状、スティック形状など種々の形状の媒体を用いることができる。
また、IC媒体をATMに取り外し可能に備えられるためには、種々の方法があり、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るATMの構成の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るATMによる生体認証方法の概要を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係るATMによる生体認証方法の処理手順を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ATM
2 利用者
3 ICカードからなるキャッシュカード
4 IC媒体
5 カード挿入部
6 表示部
7 入力部
8 静脈パターン読取部
9 現金取扱部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャッシュカードを利用して金融取引処理を行うATM(現金自動支払機)であって、
前記ATMは、CPUとメモリを有するIC媒体が取り外し可能に備えられ、
前記メモリには、生体認証用プログラムが記憶されていることを特徴とするATM。
【請求項2】
前記生体認証用プログラムが、ATMの利用者が所持するICカードから読み取られた暗号化された生体情報を復号した後に、人物身体から直接読み取られた生体情報と比較照合して、その比較照合の結果により正当性の判定処理を行うものであることを特徴とする請求項1記載のATM。
【請求項3】
ATMの利用者の正当性を判定するATMによる生体認証方法であって、
前記利用者のICカードのメモリに記憶されている生体情報を暗号化させた後に前記ATMで読み取ると共に、前記ATMの利用者の身体から生体情報を読み取るステップと、
前記ATMに取り外し可能に備えられたIC媒体に、前記2つの生体情報を送信するステップと、
前記IC媒体内において、暗号化されている生体情報を復号するステップと、
前記IC媒体内において、復号した生体情報と、利用者の身体から読み取られた生体情報とを比較照合するステップと、
前記比較照合の結果に基づく正当性判定情報を、前記IC媒体から前記ATMに送信するステップと、
からなることを特徴とするATMによる生体認証方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−108895(P2007−108895A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297096(P2005−297096)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】