説明

Al粉を用いた高温Pbフリーはんだペースト

【課題】 優れた応力緩和性により高い接合信頼性を確保できる高温Pbフリーはんだペーストを提供する。
【解決手段】 平均粒径1μm以上100μm以下のAl粉に対して被覆処理を施さないか、あるいはその少なくとも一部に対してAu等を用いて厚み1μm以下の皮膜を形成する被覆処理を施すことによって得た金属粉と、Znを主成分とし、所定量のAl等を含む2元乃至4元合金からなるZn合金はんだ粉と、フラックスとを有する高温Pbフリーはんだペーストであって、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子のダイボンディング等に用いられる高温Pbフリーはんだペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ等のパワー半導体素子のダイボンディングや各種電子部品の組立て等において、Pb−5質量%Snに代表される高温はんだが用いられている。これらの用途のはんだには、被接合材に対する濡れ性等の通常のはんだ材に要求される特性に加えて、1)380℃程度以下の温度ではんだ付けが可能なこと、2)はんだ付けした部品をプリント基板へ実装する際にはんだが再溶融しないこと、即ち240℃程度の温度で再溶融しないこと、3)はんだ接合部の信頼性が確保できること、即ち比較的高温の使用環境下において接合部の劣化が発生しないこと等の性能が要求される。
【0003】
ところで、近年は環境汚染防止への配慮から、はんだ材料へのPbの使用を規制する動きが益々活発化している。例えば、プリント基板への実装に用いられるSn−40質量%Pbはんだに対しては、Sn−Ag−Cuはんだに代表されるいわゆるPbフリーはんだが開発され、既に代替が進みつつある。一方、先に述べた高温はんだの領域においては、全ての条件を満足するような好適な材料が見出せておらず、Pb系はんだからPbフリーはんだへの代替がほとんど進んでいないのが現状である。
【0004】
高温Pbフリーはんだの候補としては、特許文献1などにおいて、Zn合金を用いることが提案されている。しかしながら、Zn合金はんだを用いた場合、はんだで接合されたチップがはんだ付け後に割れたり剥れたりしてしまうことがある。例えば非特許文献1には、Zn−Al系Pbフリーはんだのダイアタッチ時のチップ割れ現象について報告されている。
【0005】
このチップ割れの原因は、基板材料であるCuとチップ材料であるSiとの熱膨張係数の差が5倍以上あることによる。即ち、ダイアタッチ後の冷却において、この熱膨張係数の差で応力が発生し、Pb−5質量%Snの場合は塑性変形して応力緩和されるが、Zn−Al系はんだは硬いため応力緩和されないことに起因する。
【0006】
かかるチップ割れや剥れの対策としては、チップ厚さを薄くすることが示されている。しかし、実際にはチップを薄くするには限界があり、この対策で全てのケースが解決できるとは考えにくい。特許文献1や特許文献2にも同じようにZn−Al系はんだの各種組成について記載されているが、基本的には上記と同じようにチップ割れの問題が起き得ることが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3850135号
【特許文献2】特許第3945915号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】6th on “Microjoining and Assembly Technology in Electronics” February 3−4, 2000, Yokohama p.339−p.344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、Zn−Al系合金において生じる上記チップ割れ等の問題は、CuとSiの熱膨張係数の差に加え、凝固時の収縮率(+は収縮、−は膨張を示す)が、Znの場合は+4.9%〜+6.9%、Alの場合は+6.4%〜+6.8%であることにも起因していると考えている。更に、Zn−Al状態図における280℃付近の相の変態も原因の一つと考えている。
【0010】
即ち、ダイアタッチ後の冷却時に、はんだが固化するときの収縮に加えて280℃付近で相の変態が起こるため、これらにより体積変化が生起し、これが高い残留応力を発生すると考えられる。以上述べたように、Zn−Al系合金において、特にZnが70質量%を越えるような領域では、このチップ割れや剥れの問題はチップ厚みの調整だけでは解決困難な場合も多いと考えられる。
【0011】
本発明の目的はかかる問題点に鑑み、パワー半導体素子のダイボンディング用として特に好適な、優れた応力緩和性により高い接合信頼性を確保できる高温Pbフリーはんだペーストを提供することにある。なお、本発明のはんだペーストを用いた場合のチップと基板の接合温度は450℃以下である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の高温Pbフリーはんだペーストは、平均粒径1μm以上100μm以下のAl粉に対して被覆処理を施さないか、あるいはその少なくとも一部に対してAu、Ag、Ni、及びCuからなる群の1種以上を用いて厚み1μm以下の皮膜を形成する被覆処理を施すことによって得た金属粉と、Znを主成分としAlを第2元素とする2元合金からなるZn合金はんだ粉と、フラックスとを有し、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の第2の高温Pbフリーはんだペーストは、平均粒径1μm以上100μm以下のAl粉に対して被覆処理を施さないか、あるいはその少なくとも一部に対してAu、Ag、Ni、及びCuからなる群の1種以上を用いて厚み1μm以下の皮膜を形成する被覆処理を施すことによって得た金属粉と、Alを0.5質量%以上9質量%以下含有し、Geを0.01質量%以上9質量%以下及び/又はMgを0.01質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる3元又は4元合金のZn合金はんだ粉と、フラックスとを有し、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた応力緩和性により高い接合信頼性を確保できる高温Pbフリーはんだペーストを提供することができる。かかるはんだペーストは、パワー半導体素子のダイボンディング用として特に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例のはんだペーストを用いて接合されたCu製リードフレーム上のダミーチップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の高温Pbフリーはんだペーストは、チップ類と基板を接合後、はんだの凝固収縮やチップ類と基板の熱膨張差に起因する応力等によって起こるチップ割れやチップ剥れ等の問題を解決するため、Znを主成分とするZn合金はんだ粉と、軟質な金属であるAl粉とを均一に混ぜてはんだペーストとするものである。Al粉が均一に分散されることにより、はんだの凝固収縮による応力発生を抑制できる。即ち、Alは非常に柔らかく塑性変形し易い金属であるため、例えばSi製のチップとCu製の基板との熱膨張差による応力を吸収できる。
【0017】
更に、Zn合金はんだ粉にはAlが第2元素として予め含まれており、Al粉と混ぜられる際にすでにZn−Alの2元合金はんだとなっている。よって、このZn合金はんだが溶融した時、固体のままで存在するAl粉に対して良好な濡れ性が得られる。尚、Al粉とZn合金はんだ粉の均一な分散は、はんだペーストという形態をとることによって工業的に実現することができる。
【0018】
Al粉は、被覆処理を施さずにそのまま用いてもよいが、少なくとも一部に対してAg、Au、Cu、及びNiからなる群の1元素以上を用いて皮膜を形成する被覆処理を施してもよい。このようにAg等の皮膜を形成することで、Al粉の酸化が防止されると共に、Zn合金との良好な濡れ性が得られ、溶融したZn合金中にAl粉を均一に分散させる効果が得られる。尚、本発明においては、被覆処理されているAl粉、及び/又は被覆処理されていないAl粉を金属粉とも称する。
【0019】
Ag等の皮膜の厚さは1μm以下とする。その理由は、1μmを越えると上記効果が飽和すると共に、材料コストが高くなるからである。Ag等の皮膜を形成する被覆処理の具体的な方法は特に限定するものではないが、例えばAl粉を作製した後に、その表面に電解メッキや無電解メッキを施すことで形成することができる。その他の方法としては、例えば湿式法を用いたAl粉の製造工程の最終段階でNi塩を含む溶液を添加して還元することで、Ni皮膜を形成することも可能である。
【0020】
はんだペースト中の金属粉の含有量は、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下である。この量が3質量%未満では、はんだペースト中のAlの含有量が少なすぎて十分な応力緩和等の効果が期待できない。一方、40質量%より多く含有すると、Zn合金はんだ成分が不足して十分な接合が困難となる。
【0021】
用いるAl粉の純度や形状については特に限定されない。純度については、Alの柔軟な特性を活かすため、金属間化合物よりも純金属に近いものが好ましい。又は、Alと共晶合金となるAl系共晶合金も、加工性に優れるため用いることができる。一方、形状については、アトマイズ粉の様な真球状、電解粉の様な不規則状、フレーク粉の様な平板状のいずれでもよい。
【0022】
Al粉の平均粒径は、1μm以上100μm以下とする。その理由は、1μm未満ではAl粉の凝集が解けにくくなり、Zn合金中でAl粉の均一な分散が難しくなり、逆に100μmを超えると、Al粉がZn合金はんだからなる接合層の破壊起点として働き、接合部の信頼性が低くなるからである。尚、本発明においては、Al粉の平均粒径とは、Al粉の長径を直径として、それらの平均値を意味する。
【0023】
Zn合金はんだは、固体のまま存在する複数の金属粉(Al粉)の間にはんだとして介在し、金属粉同士を接合する働きを有する。ここでZnを合金はんだの主成分として選定した理由は、Znは高い熱伝導性を有しているからである。つまり、ZnはPbに比較して約3倍の熱伝導率を持つため、大電流が流れて高温になるパワー半導体素子のはんだ材として好適である。
【0024】
また、Zn合金はんだに第2元素としてAlを含有する理由は、Alははんだの融点を下げると共に、加工性や溶湯の対酸化性を向上させるからである。Znを含む合金は、Zn=95.0%にZn−Alの共晶点を有し、この付近ではとくに効果が顕著となり、融点が下がるとともに結晶が微細化し、加工性が格段に向上する。
【0025】
尚、この第1の高温PbフリーはんだペーストにおけるZn合金はんだには、Alが0.5質量%以上9.0質量%以下含まれているのが好ましい。この量が0.5質量%未満では少なすぎて加工性向上等の効果は期待できず、9.0質量%を超えると融点が高くなり過ぎて良好な接合ができなくなってしまう。Zn合金はんだ粉の粒径については特に限定されないが、製造のしやすさから10〜50μm程度の粉末を用いる場合が多い。
【0026】
上記した金属粉とZn合金はんだ粉とからなる粉末に液状フラックスを加えて混練することによって、はんだペーストを得ることができる。フラックスの種類については特に限定されず、Sn系やPb系のはんだペーストで使用されているものをそのまま用いてもよいが、高温用のものであればより好ましい。例えば、ロジン化合物、有機酸、有機アミン化合物などを、アルコール類、エチレングリコール類、グリセリン類などの溶剤に溶かしたものを使用することができる。
【0027】
次に、本発明の第2の高温Pbフリーはんだペーストについて説明する。この第2の高温Pbフリーはんだペーストは、Zn合金はんだ粉が、Alを0.5質量%以上9質量%以下含有し、Geを0.01質量%以上9質量%以下及び/又はMgを0.01質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる3元又は4元合金であることを特徴としており、それ以外は上記第1の高温Pbフリーはんだペーストと同様である。
【0028】
Ge及びMgは、いずれも融点調整を目的とした元素であり、はんだ分野においては比較的高い419℃という融点をもつZnの融点を下げることを主目的として添加される。更に、GeはZnよりも酸化しにくいため、はんだの濡れ性を向上させる効果を有しており、一方、Mgは接合強度を上げて、信頼性を向上させる効果を有している。このように、本発明の第2の高温Pbフリーはんだペーストは、上記した第1の高温Pbフリーはんだペーストに比べて優れた点を有しており、より広い用途に使用することが可能となる。
【0029】
Geの含有量を0.01質量%以上9.0質量%以下、Mgの含有量を0.01質量%以上0.5質量%以下にする理由は、どちらも含有量が上記下限値未満では少なすぎて上記した効果が得られないからである。一方、Geの含有量が9.0質量%を超えると、Znとの共晶点から大きくはずれてしまい、粗粒を生成して加工性等を低下させる。また、Mgの含有量が0.5質量%を超えると、Mgの強い還元性により、場合によっては、はんだ表面に強固な酸化膜を生成してしまい、ボイドの原因などになる。
【0030】
以上説明したように、本発明の第1及び第2の高温Pbフリーはんだペーストは、いずれも優れた応力緩和性により高い接合信頼性を確保できるので、パワー半導体素子のダイボンディング用として特に好適に使用することができる。また、各種電子部品の組立て等において用いられているPb系はんだに代替するPbフリーはんだとしても好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の第1及び第2の高温Pbフリーはんだペーストの実施例に関して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されることはない。
【0032】
[実施例1]
<製造条件>
以下の方法で試料1〜10のはんだペーストを作製した。先ず、金属原料として99.9%以上の純度を有するZn及びAlを準備し、これらを所定量秤量して高周波溶解炉で溶解した。溶解の際は、酸化を防ぐため原料1kgあたり700ml/分以上の割合で窒素を流した。溶解により混合された溶融金属を高周波溶解炉から取り出し、冷却した。これにより、試料1〜10のはんだペーストにそれぞれ使用する10種類のZn系合金鋳塊を得た。これら10種類のZn系合金鋳塊の組成をそれぞれICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて測定した結果を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1に示す10種類のZn系合金鋳塊からそれぞれ2kgを秤量し、これをスタンプミルを用いて粉砕した後、篩い分けてZn合金はんだ粉とした。得られたZn合金はんだ粉の平均粒径を、レーザー回折式粒度分布計(日本レーザー株式会社製)を用いて測定したところ、全て約28μmであった。尚、Zn合金はんだ粉の平均粒径とは、Al粉の平均粒径と同様に、Zn合金はんだ粉の長径を直径とみなして、それらを相加平均したものである。
【0035】
次に、試料1〜10のはんだペーストにそれぞれ使用する10種類のAl粉を一般的なアトマイズ法により作製した。尚、本実施例1ではAl粉に被膜処理を施さなかった。このようにして得たAl粉と上記Zn合金はんだ粉とを下記表2に示す割合で混合し、更に市販のアルコールと還元性有機材料からなるフラックス(青木メタル社製)を所定の割合で加えてはんだペーストを作製した。その際、混合機(株式会社シンキー製SR−500)を用いた。尚、下記表2にはレーザー回折式粒度分布計(日本レーザー株式会社製)を用いて測定したAl粉の平均粒径も併せて示されている。
【0036】
【表2】

【0037】
<評価方法>
上記の方法で作製したはんだペーストを、下記に示すダイボンディング性、高温はんだの使用適性、及び接合信頼性の観点から評価した。尚、この接合信頼性では、直接評価を行うことが困難な応力緩和性を評価することができる。
【0038】
(ダイボンディング性)
ダイボンディング性については、はんだダイボンダー(dage社製EDB−200)を用いて評価した。具体的には、図1に示すように、Agメッキ層1aが形成されたCu製リードフレーム1と、Ni蒸着層2aとAg蒸着層2bとが形成されたダミーチップ2とを準備し、これらを各試料のはんだペースト3を介して420±3℃の温度範囲内で接合し、良好な接合が得られるかどうかを確認した。
【0039】
はんだペーストの供給は、リードフレームのAgメッキ上に予め適量のはんだペーストを滴下することで行った。接合性つまりダイボンディング性の良否については、X線透過装置(東研X線検査株式会社製TUX−3000W)を用いて接合部のボイドを観察し、ボイド率が5%未満を「○」、5%以上8%未満を「△」、8%以上を「×」と評価した。尚、ボイド率は、X線透過装置によりはんだ接合部を接合面に対し垂直方向から観察し、ボイド面積と接合部面積を求め、下式により算出した。
【0040】
[数1]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+接合部面積)×100
【0041】
(高温はんだの使用適性)
高温はんだとしての使用適性を、JIS Z3198−7:2003に準じる高温シェア試験により評価した。即ち、上記ダイボンディング後の試料をボンドテスタ(テクノアルファ株式会社製)にセットし、窒素を流しながら240℃に再加熱し、その状態でダミーチップとはんだ接合部にせん断力を加えた。具体的には、シェア試験用冶具をダミーチップに引っかけ、はんだとダミーチップ接合面に対して水平方向に90(N)のせん断力を加えた。チップ部において割れが発生して、接合部やはんだ部に割れや変形がなかった場合を「○」、チップが動いてずれたり、接合部やはんだ部で割れや変形があった場合を「×」と評価した。
【0042】
(接合信頼性)
接合部の信頼性については以下のように2つの観点から評価した。即ち、信頼性評価1として、各試料のはんだペーストを用いて上記したダイボンディング性の評価に使用したものと同様のダミーチップが接合されたCu製リードフレームを作製し、これらをトランスファーモールド型モールド機によりエポキシ樹脂(住友ベークライト社製EME−6300)でモールドした。これらを、80℃で80%の恒温恒湿条件下に1000時間保持した後、樹脂を開封して接合部の観察を行った。この観察の結果、ダミーチップや接合界面に割れの発生が無い場合を「○」、割れや剥離があった場合を「×」と評価した。
【0043】
更に、信頼性評価2として、上記信頼性評価1に用いたものと同様のダミーチップが接合されたCu製リードフレームを各試料のはんだペーストを用いて作製した。そして、これらに対して−50℃までの冷却と125℃までの加熱とからなる冷却加熱処理を1サイクルとして400サイクル繰り返した後、樹脂を開封して接合部の観察を行った。この観察の結果、ダミーチップや接合界面に割れの発生が無い場合を「○」、割れや剥離があった場合を「×」と評価した。上記ダイボンディング性、高温はんだの使用適性、及び接合信頼性の評価結果を下記の表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
上記表3の結果から明らかなように、本発明による試料1〜6のはんだペーストは、高温はんだとして良好なダイボンディング性、使用適性、及び接合信頼性を有している。一方、比較例である試料7〜10のはんだペーストは、各評価全てにおいて不十分な結果となっている。
【0046】
[実施例2]
表面にAg、Au、Cu、又はNiの皮膜を形成したAl粉を用いた以外は実施例1と同様にして試料11〜18のはんだペーストを作製した。皮膜形成のための被膜処理法には、無電解メッキ法を用いた。これら試料11〜18のはんだペーストに使用したZn合金鋳塊の組成を下記表4に、Al粉の平均粒径、Al粉とZn合金はんだ粉との混合割合、皮膜の材料及び厚みを下記表5に示す。尚、皮膜の厚みは、Al粉を樹脂に埋め込み、研磨機を用い粗い研磨紙から順に細かいものを用いて研磨し、最後にバフ研磨を行い、その後、EPMA(装置名:SHIMADZU EPMA−1600)を用いてライン分析を行い測定した。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
これら試料11〜18のはんだペーストを、実施例1と同様の評価方法により評価した。その評価結果を下記の表6に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
この表6の結果から明らかなように、本発明による試料11〜18のはんだペーストは、全て高温はんだとして良好なダイボンディング性、使用適性そして接合信頼性を有している。
【0052】
[実施例3]
表面にAg皮膜が形成されたAl粉を用い、Zn合金はんだ粉にAlに加えてGe及び/又はMgを含有させた3元又は4元合金を用いた以外は実施例1と同様にして試料19〜29のはんだペーストを作製した。尚、金属原料として使用したMgは99.9%以上、Geは99.95%以上の純度のものを使用した。これら試料19〜29のはんだペーストに使用したZn合金鋳塊の組成を下記表7に、Al粉の平均粒径、Al粉とZn合金はんだ粉との混合割合、皮膜の種類及び厚みを下記表8に示す。
【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
これら試料19〜29のはんだペーストを、実施例1と同様の評価方法により評価した。その評価結果を下記の表9に示す。
【0056】
【表9】

【0057】
この表9の結果から明らかなように、本発明による試料19〜25のはんだペーストは、高温はんだとして良好なダイボンディング性、使用適性そして接合信頼性を有している。一方、比較例である試料26〜29のはんだペーストは、各評価全てにおいて不十分な結果となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1μm以上100μm以下のAl粉に対して被覆処理を施さないか、あるいはその少なくとも一部に対してAu、Ag、Ni、及びCuからなる群の1種以上を用いて厚み1μm以下の皮膜を形成する被覆処理を施すことによって得た金属粉と、Znを主成分としAlを第2元素とする2元合金からなるZn合金はんだ粉と、フラックスとを有する高温Pbフリーはんだペーストであって、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下であることを特徴とする高温Pbフリーはんだペースト。
【請求項2】
前記Zn合金はんだ粉は、Alを0.5質量%以上9質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載の高温Pbフリーはんだペースト。
【請求項3】
平均粒径1μm以上100μm以下のAl粉に対して被覆処理を施さないか、あるいはその少なくとも一部に対してAu、Ag、Ni、及びCuからなる群の1種以上を用いて厚み1μm以下の皮膜を形成する被覆処理を施すことによって得た金属粉と、Alを0.5質量%以上9質量%以下含有し、Geを0.01質量%以上9質量%以下及び/又はMgを0.01質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる3元又は4元合金のZn合金はんだ粉と、フラックスとを有する高温Pbフリーはんだペーストであって、金属粉とZn合金はんだ粉との合計を100質量%としたとき、金属粉が3質量%以上40質量%以下であることを特徴とする高温Pbフリーはんだペースト。

【図1】
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【公開番号】特開2011−251332(P2011−251332A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128528(P2010−128528)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】