説明

COX阻害剤および5−LOX阻害剤の活性を助けるための可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤の使用

本発明は、1つもしくは複数のシス-エポキシエイコサトリエン酸もまた投与することの有無によらず、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)の阻害剤もまた投与することによる、COX-1、COX-2、および5-LOXの阻害剤の有益な効果を増強し、かつ有害な効果を低減させるための医用薬剤を作製するための方法、組成物、およびそれらの組成物の使用に関する。本発明は、sEHの阻害剤の鎮痛剤としての使用、ならびに疼痛または炎症または両方を低減させるためのエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のエポキシドの方法および組成物にさらに関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容が参照により本明細書に組み入れられている、2005年1月10日に出願された米国仮出願第60/643,028号からの優先権を主張する。
【0002】
連邦政府資金援助による研究および開発の下でなされた発明の権利に関する言明
本発明は、National Institutes of HealthのNational Institute of Environmental Health Scienceにより授与された助成金番号R37 ES02710およびP01 ES04699による政府援助でなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、またはコンピュータプログラムリスト付属物への言及
該当なし。
【0004】
発明の背景
アラキドン酸は酵素ホスホリパーゼA2により膜リン脂質から遊離される。この高度不飽和脂肪酸は3つの経路:シクロオキシゲナーゼ(「COX」)、リポキシゲナーゼ(「LOX」)、およびチトクロムP450経路のうちの1つを通して代謝される。COX酵素はアラキドン酸をプロスタグランジンエンドペルオキシドPGH2へ変換し、それから他のプロスタグランジンが形成される。例えば、Meade et al., J Biol Chem. 274(12):8328-34 (1999)(非特許文献1)参照。いくつかの薬物はCOX酵素かまたはLOX酵素のいずれかの作用を阻害する。
【0005】
非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)は、主としてCOX酵素を阻害し、それによりプロスタグランジンおよびトロンボキサンの生成をブロックすることにより、それらの効果を発揮すると考えられている。有益な効果は、PGE2および5つの他の主要な代謝産物を直接的に阻害することからもたらされると考えられている。しかしながら、70個を超える「バイスタンダー」エイコサノイドの力価もまた変わる。これらのエイコサノイドの一部は正常な生理機能にとって重要である;従って、アラキドン酸からCOX酵素を通しての、正常な生理機能に必要なプロスタグランジンおよびトロンボキサンへの炭素流動の約3分の1の正常な機能を妨害しないと同時に、過敏性炎症応答に関連したCOX酵素の活性を低減させることが長い間、目標であった。
【0006】
2つのCOXアイソフォームCOX-1およびCOX-2の解明は、恒常的酵素COX-1が血小板ならびに胃および腎臓のような組織においてホメオスタシス機能をもつプロスタグランジンおよびトロンボキサンの生成を担っているが、COX-2、誘導性酵素は、炎症に関与するプロスタグランジンの生成について報告されるという概念を生じた。例えば、Seibert and Masferrer, Receptor, 4:17 (1994)(非特許文献2)を参照。従って、NSAIDの治療効果はCOX-2の阻害に起因するが、COX-1の阻害がこれらの薬物に付随した有害効果の原因となることが考えられた。例えば、Lichtenstein et al., Arthritis Rheum 38:5 (1995)(非特許文献3)参照。COX-2が脳、気道上皮、前立腺、および腎臓の緻密斑に恒常的に発現されていることから、これは実際、単純化し過ぎである。
【0007】
NSAIDは高度に効果的であるが、それらの使用は、消化管潰瘍および出血、血小板凝集の阻害、ならびに腎血流における有害な変化のようないくつかの有害効果を伴う。用いられる長期に渡るNSAIDに付随した胃腸管毒性は、米国のみにおいて年あたり100,000より多い入院および16,000の死亡を生じていると推定される。例えば、Singh and Tridafilopoulos, J. Rheumatol. Supp., 56:18 (1999)(非特許文献4)を参照。そのような胃炎の副作用は、COX-1阻害を通して起こると考えられた。これは、炎症促進介在物質をブロックし、NSAIDの副作用を低減させるための選択的COX-2阻害剤の開発へと導いた。これらの薬物(「コキシブ」としても知られている)は、COX-2を特異的に阻害する、および治療域に渡ってCOX-1活性にほとんど効果を生じないように設計されている。COX-2阻害剤の例は、セレコキシブ(Celebrex(登録商標), Pharmacia, Peapack, NJ)、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標), Merck, Whitehouse Station, NJ)、バルデコキシブ(Bextra(登録商標), Pfizer, New York, NY)、ルミラコキシブ(Prexige(登録商標), Novartis International AG, Basel Switzerland)、およびエトリコキシブ(Arcoxia(登録商標), Merck, Whitehouse Station, NJ)を含む。
【0008】
最近の研究は、COX-1が炎症において役割を果たしていない、およびCOX-2が炎症促進性プロスタグランジンの合成に関与する唯一のアイソフォームであるという仮説を厳密に調べた。ラットカラゲニン誘発性胸膜炎モデルにおいて、COX-2阻害についてより選択的な薬物が、選択的COX-1阻害剤より広い時間枠に対して炎症を減弱し、それゆえに、このモデルにおけるCOX-2の役割を示唆した。COX-2の阻害が炎症の回復を遅らせるという証拠の増加もまたある。Gilroy et al., FASEB J 15:288(2001)(非特許文献5); Gilroy et al., Am J Physiol Cell Physiol 281:C188 (2001)(非特許文献6)。
【0009】
関節疾患および慢性疼痛の処置におけるそれらの効力にも関わらず、NSAIDは抗凝血剤(例えば、ワルファリン)および降圧剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素(「ACE」)阻害剤)とのそれらの有害な薬物相互作用により限定されている。NSAIDは胃の不快感および胃の保護粘膜層の浸食を増加させ、胃腸管出血の形成を支援する。その上、NSAIDは血塊形成に必要な血小板の凝集性を減少させる;それに従って、ワルファリンの追加は、喀血、歯肉の出血、ならびに尿および大便における血液へと導きうる。アンジオテンシン変換酵素(「ACE」)阻害剤およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、選択的COX-2阻害剤、で処置された少数の患者は、重症高カリウム血症および死へと導いた深刻な腎臓の問題を発生した。Hay et al., J Emerg Med 22:349 (2002)(非特許文献7)。その上、NSAID、特にアスピリンはライ症候群、および喘息をもつ患者に喘息の発作を引き起こすことに結びつけられている。この効果は、この阻害がアラキドン酸を、アラキドン酸カスケードにおいて他の経路(主にLOX経路であると考えられる)へシャトルするため、COX酵素の一方または両方を阻害するにおける問題の1つを例証している。この経路を通してのアラキドン酸の流れの増加はそれ自身、結果として、LOX酵素、特に5-LOXによる炎症促進性メディエーターの生成を含む望ましくない副作用を生じる可能性がある。
【0010】
最近、いくつかのCOX-2阻害剤は、心臓発作または卒中のより高いリスクと関連づけられている。関連は用量依存性であると考えられる。選択的COX-2阻害剤がTXA2の同時阻害無しにPGI2を抑制し、結果として、血栓性および高血圧性刺激に対する応答の増加ならびにアテローム発生の促進を生じうることが現在示されている。
【0011】
エポキシドヒドロラーゼ(「EH」)は、エポキシドへ水を付加し、結果としてそれらの対応する1,2-ジオールを生じる(Hammock, B.D. et al., Comprehensive Toxicology: Biotransformation (Elsevier, New York), pp. 283-305 (1997)(非特許文献8); Oesch, F. Xenobiotica 3:305-340 (1972)(非特許文献9))。4つの主なEHが知られている:ロイコトリエンエポキシドヒドロラーゼ、コレステロールエポキシドヒドロラーゼ、ミクロソームEH(「mEH」)、および可溶性EH(「sEH」、以前には「サイトゾルEH」と呼ばれていた)。ロイコトリエンEHはロイコトリエンA4に作用するが、コレステロールEHはコレステロールの5,6-エポキシドに関連した化合物を水和させる(Nashed, N.T., et al., Arch. Biochem. Biophysics., 241:149-162 (1985)(非特許文献10); Finley, B. and B.D. Hammock, Biochem. Pharmacol., 37:3169-3175 (1988)(非特許文献11))。ミクロソームエポキシドヒドロラーゼは、一置換の、1,1-二置換の、チシタル(cisital)-1,2-二置換エポキシド、およびサイクリック系エポキシドにおけるエポキシドをそれらの対応するジオールへ代謝する。それの幅広い基質特異性のため、この酵素は、エポキシド毒性を改善するにおいて重要な役割を果たすと考えられている。解毒の反応は、典型的には、化合物の疎水性を減少させ、結果として、より多くの極性の、およびそれにより排出可能な物質を生じる。
【0012】
可溶性EHは、mEHに非常に遠くのみ関連しており、サイクリック系上ではない幅広い範囲のエポキシドを水和させる。mEHによる可能性のある毒性エポキシドの分解において果たされている役割と対照的に、sEHは内因性ケミカルメディエーターの形成または分解において役割を果たしていると考えられている。例えば、チトクロムP450エポキシゲナーゼは、アラキドン酸の4つの光学活性シス-エポキシエイコサトリエン酸(「EET」)へのNADPH依存性エナンチオ選択性エポキシ化を触媒する(Karara, A., et al., J. Biol. Chem., 264:19822-19877 (1989)(非特許文献12))。可溶性エポキシドヒドロラーゼは、インビトロで、位置特異性およびエナンチオ面特異性をもつこれらの化合物を、対応するビシナル-ジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)へ変換することが示されている。肝臓および肺のサイトゾル画分の両方は、その優先順に、14,15-EET、8,9-EET、および11,12-EETを加水分解する。5,6EETはより遅く加水分解される。精製されたsEHは、基質としてそれらのエナンチオマーより8S,9R-および14R,15S-EETを選択する。研究により、EETおよびそれらの対応するDHETは幅広い範囲の生物活性を示すことが明らかにされている。これらの活性の一部は、黄体形成ホルモン放出ホルモンにおける関与、黄体形成ホルモン放出の刺激、Na+/K+ ATPアーゼの阻害、冠動脈の血管拡張、Ca2+の動員、および血小板凝集の阻害を含む。
【0013】
【非特許文献1】Meade et al., J Biol Chem. 274(12):8328-34 (1999)
【非特許文献2】Seibert and Masferrer, Receptor, 4:17 (1994)
【非特許文献3】Lichtenstein et al., Arthritis Rheum 38:5 (1995)
【非特許文献4】Singh and Tridafilopoulos, J. Rheumatol. Supp., 56:18 (1999)
【非特許文献5】Gilroy et al., FASEB J 15:288(2001)
【非特許文献6】Gilroy et al., Am J Physiol Cell Physiol 281:C188 (2001)
【非特許文献7】Hay et al., J Emerg Med 22:349 (2002)
【非特許文献8】Hammock, B.D. et al., Comprehensive Toxicology: Biotransformation (Elsevier, New York), pp. 283-305 (1997)
【非特許文献9】Oesch, F. Xenobiotica 3:305-340 (1972)
【非特許文献10】Nashed, N.T., et al., Arch. Biochem. Biophysics., 241:149-162 (1985)
【非特許文献11】Finley, B. and B.D. Hammock, Biochem. Pharmacol., 37:3169-3175 (1988)
【非特許文献12】Karara, A., et al., J. Biol. Chem., 264:19822-19877 (1989)
【発明の開示】
【0014】
態様の第一群において、本発明は、第一酵素阻害剤が可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)を阻害する第一酵素阻害剤、および第二酵素阻害剤がシクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、および5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)からなる群より選択される1つまたは複数の酵素を阻害する第二酵素阻害剤を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、第二酵素阻害剤はCOX-2を阻害する。いくつかの態様において、第二酵素阻害剤は、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、およびロフェコキシブからなる群より選択される。いくつかの態様において、第二酵素阻害剤は、5-LOXの直接的阻害剤、および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質を阻害することにより5-LOXを阻害する阻害剤の群より選択される。いくつかの態様において、第二阻害剤は、COX-2および5-LOXの両方を阻害する。いくつかの態様において、COX-2および5-LOXの阻害剤は、リコフェロン(licofelone)およびテポキサリン(tepoxalin)からなる群より選択される。いくつかの態様において、第二酵素阻害剤は、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される。いくつかの態様において、組成物はさらに、シス-エポキシエイコサトリエン酸を含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAおよびEPAの両方のエポキシドを含む。いくつかの態様において、第一酵素阻害剤は、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する。いくつかの態様において、第一酵素阻害剤はさらに、ポリエーテル二次ファルマコフォアを有する。
【0015】
いくつかの態様において、組成物はさらに、薬学的に許容される担体を含む。これらの態様の一部において、第二酵素阻害剤はCOX-2を阻害する。これらの態様の一部において、第二酵素阻害剤は5-LOXを阻害する。これらの態様の一部において、第二酵素阻害剤はCOX-2および5-LOXの両方を阻害する。これらの態様の一部において、組成物はさらに、シス-エポキシエイコサトリエン酸を含む。これらの態様の一部において、第一酵素阻害剤は、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する。これらの態様の一部において、第一酵素阻害剤は、ポリエーテル二次ファルマコフォアを有する。これらの態様の一部において、第二阻害剤は、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される。
【0016】
態様のさらなる群において、本発明は、身体において滞留時間をもつ第一酵素阻害剤の被験体における効果を増加させるための方法であって、被験体は、(a)シクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)、またはこれらの酵素の組み合わせ、および(b)可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)からなる群より選択される酵素の活性を阻害する第一酵素阻害剤を投与され、被験体の身体における第一酵素阻害剤の滞留時間中に、被験体は、(c)COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせ、および(d)sEHからなる群より選択される酵素の活性を阻害する、身体において滞留時間をもつ第二酵素阻害剤を投与され、該第一および第二酵素阻害剤の組み合わせは、該第一酵素阻害剤が群(a)由来である場合、該第二酵素阻害剤が群(d)由来である、および該第一酵素阻害剤が群(b)由来である場合、該第二酵素阻害剤が群(c)由来であるとの条件で、第一酵素阻害剤の効果を、第二酵素阻害剤の非存在下におけるその阻害剤の効果を超えて増加させる、方法を提供する。いくつかの態様において、被験体は、被験体が第二酵素阻害剤を投与されてから4時間以内に第一酵素阻害剤を投与される。いくつかの態様において、COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤は、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質の阻害剤からなる群より選択される。いくつかの態様において、COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤は、リコフェロンおよびテポキサリンからなる群より選択される。いくつかの態様において、COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤は、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される。いくつかの態様において、sEHの阻害剤は、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する。いくつかの態様において、sEHの阻害剤はポリエーテル二次ファルマコフォアを有する。いくつかの態様において、方法はさらに、シス-エポキシエイコサトリエン酸を該被験体へ投与する段階を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAのエポキシドおよびEPAのエポキシドを該被験体へ投与する段階を含む。
【0017】
態様のさらなる群において、本発明は、被験体において疼痛を低減させる方法であって、該被験体へ可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)の阻害剤の鎮痛用量を投与する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、sEHの阻害剤は、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する。いくつかの態様において、sEHの阻害剤はポリエーテル二次ファルマコフォアを有する。いくつかの態様において、方法はさらに、シス-エポキシエイコサトリエン酸を被験体へ投与する段階を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、シクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、および5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)からなる群より選択される酵素の阻害剤を投与する段階を含む。いくつかの態様において、COX-1、COX-2、または5-LOXの阻害剤は、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、リコフェロン、テポキサリン、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質の阻害剤からなる群より選択される。いくつかの態様において、方法はさらに、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAのエポキシドおよびEPAのエポキシドを該被験体へ投与する段階を含む。
【0018】
態様のなおさらなる群において、本発明は、エイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシドおよびドコサヘキサエン酸(「DHA」)のエポキシドからなる群より選択されるエポキシドの有効量を哺乳動物へ投与し、それにより疼痛または炎症を低減させる段階を含む、それを必要としている哺乳動物において疼痛または炎症を低減させる方法を提供する。いくつかの態様において、エポキシドはEPAのエポキシドである。いくつかの態様において、エポキシドはDHAのエポキシドである。いくつかの態様において、方法は、EPAのエポキシドおよびDHAのエポキシドの両方を投与する段階を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤を投与する段階を含む。
【0019】
態様のまだもう一つの群において、本発明は、(a)エイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシドおよびドコサヘキサエン酸(「DHA」)のエポキシドからなる群より選択されるエポキシド、ならびに(b)薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、エポキシドはEPAのエポキシドである。いくつかの態様において、エポキシドはDHAのエポキシドである。いくつかの態様において、組成物は、EPAのエポキシドおよびDHAのエポキシドの両方を含む。いくつかの態様において、組成物はさらに、可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤を含む。
【0020】
発明の詳細な説明
A. COX、LOXおよびsEH
I. 序論
「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」(「sEH」)として知られている酵素の阻害は炎症を低減させる。米国特許第6,150,415号参照。シス-エポキシエイコサトリエン酸(「EET」)はsEHが加水分解する基質である;sEH阻害剤(「sEHI」)が投与された場合に見られる抗炎症効果を結果として生じることは、一つには、sEHを阻害することによるEETのレベルにおける増加である。
【0021】
驚くべきことに、本発明者らは、COX-1およびCOX-2の阻害が結果として、EETレベルにおける上昇を生じることを発見した。この効果は以前には認識されておらず、COX-1阻害剤およびCOX-2阻害剤の使用から見られる抗炎症効果および鎮痛効果の一部または全部が、当技術分野において考えられているように、プロスタグランジンおよび他の下流の炎症促進性代謝産物の形成をブロックすることに起因するだけでなく、EETレベルにおける上昇にも起因すると結論づけるように本発明者らを導く。さらに、本発明の基礎となる研究により、COX-1またはCOX-2の阻害剤の作用からのEETのレベルにおける上昇がさらに、sEHIの存在下において劇的に増加することが明らかにされている。
【0022】
本発明の基礎となる発見はいくつかの関連した意味をもつ。第一に、COX-1阻害剤およびCOX-2阻害剤の鎮痛効果が、EETのレベルを増加させることへのそれらの効果による程度まで、身体においてEETのレベルを同様に増加させるsEHIもまた、鎮痛剤である。sEHIの鎮痛性は以前には認識されていなかった。EETを安定化させる、またはそれらを模倣する化合物は、EETとして作用することによるか、またはsEHに対するデコイとして作用し、それにより内因性EETが加水分解される速度を低減させて、身体においてそれらのレベルをより長い期間、維持することによるかのいずれかで、同様に鎮痛性をもつことが予想される。
【0023】
EETおよびそれらの模倣体の鎮痛効果は、EETが核因子κB(NF-κB)の活性化を阻害する、およびNF-κBの核移行を阻害すると考えられている事実により、補強される。これは、次に、COX-2のような様々な炎症促進性ペプチドおよびタンパク質の活性化を低減させる。本研究は、sEHIが投与された場合、COX-2レベルが炎症メディエーターへの曝露後6時間目、12時間目、および24時間目において低減することを示している。従って、EETのレベルを増加させることによる疼痛および炎症への直接的効果に加えて、sEHIもまた、転写およびタンパク質誘導のレベルにおいて間接的に疼痛および炎症を低減させる。EETが分解される速度はsEHIの存在により低減するため、鎮痛効果は、sEHIと共に、またはsEHIと組み合わせて、EETを投与することにより増加されることができる。
【0024】
第二に、COX阻害剤およびsEHIの両方が同時投与された場合に見られるEETレベルにおける劇的増加は、sEHIが、EETレベルを増加させるにおいてCOX-1の阻害剤およびCOX-2の阻害剤と相乗的に作用することを示している。述べられているように、本発明者らは、COX-1阻害剤およびCOX-2阻害剤が身体に存在するEETのレベルを増加させることを発見した。sEHIの存在は、EETのそれらの対応するジオールへの加水分解、それにより、COX阻害剤の効果を増加させることを示す。COX-1阻害剤またはCOX-2阻害剤の任意の所与用量は、それゆえに、より強い効果を生じ、より低い用量が疼痛または炎症における所与の低減を達成するために必要とされる。例えば、動物モデルにおいて、10mg/Kg(「mpk」)のCOX-2阻害剤Vioxx(登録商標)および20mg/KgのsEH阻害剤(「sEHI」)AUDA-BEの組み合わせが、単独で投与された25mg/KgのVioxx(登録商標)のそれと等価の疼痛における低減を引き起こした。実施例8および図6を参照。COX-2阻害剤の副作用は用量依存性であると考えられており、疼痛軽減の任意の所与の量を達成するために必要なCOX-2阻害剤の用量を低減させることができる能力もまた、COX-2阻害剤の使用に関連した副作用を低減させる。実施例に報告されているように、COX-2阻害剤およびsEHIを同時投与する効果の研究は、結果として、心臓発作または卒中のリスクの増加の指標であると考えられている代謝産物のレベルを低下させることを生じた。
【0025】
COX阻害剤およびsEHIの両方の共同効果は、一般的に、ジオール形成を含まないエポキシリピンの下流代謝産物へ適用できるはずである。下記でより詳細に説明されているように、理論に縛られることを望むわけではないが、sEHIおよびCOX阻害剤は2つの別個の機構により作用すると考えられる。かさねて、理論に縛られることを望むわけではないが、2つの機構の組み合わせは、2つの異なる型の阻害剤を組み合わせることにおいて見られる疼痛および炎症への相乗効果について少なくとも一部、関与すると考えられる。
【0026】
述べられているように、EETはNF-κBの活性化および核移行を阻害する。これは、次に、COX-2のような様々な炎症促進性ペプチドおよびタンパク質の活性化を低減させる。従って、sEHIは、存在するCOX-2の量を低減させ、これは、次に、炎症促進性代謝産物の形成をブロックするのに必要とされるCOX-2の阻害剤の量を低減させる。COX-1阻害剤またはCOX-2阻害剤、または両方と併用したsEHIの使用は、それゆえに、COX-1阻害剤またはCOX-2阻害剤の抗炎症効果を向上させるが、同時に、COX-1阻害剤またはCOX-2阻害剤に付随した副作用を低減させる。
【0027】
第三に、アラキドン酸代謝に関与する酵素のもう一つの群はリポキシゲナーゼ(「LOX」)である。LOX酵素、特に「5-LOX」として知られている酵素は、ロイコトリエンと呼ばれる炎症促進性物質のそれらの活性化を通して炎症に関与している。sEHIの非存在下において、COX酵素の阻害は、結果として、LOX経路を通してのアラキドン酸代謝産物の流れを増加させることを生じ、炎症促進性ロイコトリエンの生成を増加させる。同様に、LOX経路の阻害は、COX経路を含むアラキドン酸カスケードにおける他の経路へ、より多くのアラキドン酸をシャトルし、炎症性メディエーターの量の増加へと導くことが考えられる。従って、5-LOXの阻害剤と併用したsEHIの使用は、LOX阻害剤の抗炎症効果を増強することができるが、同時に、それの副作用を低減させる。5-LOXの活性化における因子の1つは、通常には「FLAP」と略記される、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質である。FLAPの阻害剤はMK886(Merck Co., Darm-stdt, Germany)、DG-031(Decode Genetics Inc., Reykjavik, Iceland)、およびBAY X 1005((R)-2-[4-(キノリン-2-イル-メトキシ)フェニル]-2-シクロペンチル酢酸, Bayer AG, Leverkusen, Germany)を含む。例えば、Harkonarson et al., JAMA, 293(18):2277-9 (2005), Mancini et al., J Biol Chem, 273(49):32842-32847 (1998); Burchhardt and Muller-Peddinghaus, Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 60(1):5-11 (1999); Hatzelmann et al., Biochem Pharmacol. 45(1):101-11 (1993); Titos et al., FASEB J. 17:1745-1747 (2003)を参照。従って、5-LOXは、5-LOX阻害剤により直接的に、または、別な様式で5-LOXを活性化するFLAPを阻害することにより間接的に、阻害されうる。
【0028】
本発明の組成物および方法はいくつかの利点をもつ。第一に、方法および組成物は、都合良い効果をもつメディエーターを、それらがCOXの形成を低減させ、炎症促進性代謝産物の生成を低減させる程度まで、上昇させる。第二に、sEHの代謝産物は、ホメオスタシスを制御するにおいて重要な役割をもつことは知られていない。従って、COX-2を直接的に阻害するにおいて見られる有害な副作用および有害な薬物相互作用は、sEHIに使用に関する因子ではない。第三に、COX-2阻害剤は炎症の回復を遅らせることが最近注目されているが、sEHIは回復促進脂質メディエーター、リポキシンA4の形成を誘導すると考えられる。それゆえに、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、または5-LOX阻害剤と組み合わせたsEHIの使用は、炎症促進性遺伝子およびタンパク質発現を低減させ、同時に治癒を促進することが予想される。さらに、最近の報告は、高レベルのCOX阻害剤が心臓発作または卒中のリスクの増加に結びつけられることを示しており、COX阻害剤の使用の低減へと導いている。本発明の発見は、COX阻害剤がより低いレベルで効果的でありうることを示し、患者へのリスクを減少させる。
【0029】
当業者は、薬物の薬物動態が変化する間、典型的には、薬物が投与された後から薬物が治療的有効レベルに達する前までの遅れがあり、その後、身体における薬物の濃度は最大値に達し、それから、薬物が代謝、排出、または除去されるにつれて減少することは認識していると思われる。身体における薬物の時間経過は、前臨床試験においておよび臨床試験中に日常的に研究される。参照の都合上、薬物の投与とそれの代謝または除去されることの間の時間は、身体におけるそれの滞留時間と呼ばれうる。
【0030】
sEHIが被験体においてCOX阻害剤またはLOX阻害剤の効果を増強するために、sEHIが被験体の身体においてCOX阻害剤またはLOX阻害剤と同時に存在しているならば好ましいことは認識されていると思われる。従って、sEHIは、個々にかまたは錠剤のような複合型をとってかのいずれかで、COX阻害剤またはLOX阻害剤と共に投与されることが好ましい。しかしながら、必要に応じて、sEHIの滞留時間およびCOX阻害剤またはLOX阻害剤のそれが重なる限り、sEHIはCOX阻害剤もしくはLOX阻害剤の前または後に投与されうる。従って、例えば、COX阻害剤またはLOX阻害剤が4時間の滞留時間をもつ場合には、sEHIは、2つの酵素阻害剤の滞留時間が重なるようにCOX阻害剤もしくはLOX阻害剤の投与前または後の4時間以内に投与されるべきである。
【0031】
驚くべきことに、COX阻害剤がEETレベルを増加させるという認識は、COX阻害剤の鎮痛効果の一部または全部がこの効果によることを示している。この所見に照らして、それゆえに、sEHI自身が鎮痛効果を生じ、かつ炎症もしくは高血圧を低減させることへの、または実際、sEHIが以前に効果を生じると予測された様々な他の状態(例えば、糖尿病性ネフロパシー、卒中、慢性閉塞性肺疾患、血管平滑筋細胞の増殖、1型および2型糖尿病、インスリン抵抗症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、アンギナ、虚血、虚血性卒中、レイノー病、および腎疾患)へのそれらの効果とは無関係に、疼痛を低減または予防することができることが予想される。sEHIが疼痛を軽減するために用いられうる緊張性頭痛および慢性背痛のようなsEHIが以前に関連づけられていた状態と関係していない疼痛の多くの原因があることもまた認識されていると思われる。
【0032】
従って、sEHIは、sEHIが効果を生じるとすでに示されているかまたは予測されている状態からの疼痛を軽減するために用いられることができると同時に、sEHIはまた、上記で列挙されたものを含むsEHIでの処置から恩恵を受けると以前に同定された炎症または他の状態に関連していない疼痛を軽減するために用いられることができる。当業者は、様々な化合物による疼痛の測定およびそれの低減または軽減の測定が何年も実施されてきたことを認識していると思われる。従って、当技術分野において公知のアッセイおよび手順は、sEHIにより疼痛低減を実証するために用いられうる。鎮痛性を測定するための例示的なアッセイは下記の実施例に示されている。動物モデルにおける2つのsEHIの研究は、sEHIが鎮痛効果を生じることを実証した。さらに、動物モデルにおける研究は、COX-2阻害剤およびsEHIで前処置された動物が、sEHI無しのCOX-2阻害剤の同じ用量で処置された動物と比較して疼痛に対する許容度の増加を示すことを示した。図6および実施例8参照。
【0033】
本明細書に報告された研究は、LPS、炎症性刺激に曝された動物へのsEHIおよびCOX-2阻害剤の投与は、動物がsEHI無しで同じCOX-2阻害剤の同量を投与された場合の代謝産物の生成と比較して、代謝産物PGD2およびPGE2の生成を著しく低減させたことを示している。例えば、図5参照。これらの予想外の結果は、本発明者らが、NFκBを経由して誘導されるCOX-2の量を低減させ、およびその後、低用量のCOX-2阻害剤を介して、すでに存在しているCOX-2を直接的に阻害することにより、COX-2酵素をターゲットしているという事実によるものであると考えられる。
【0034】
文献における最新の報告は、COX-2が心臓、肺、および胃腸管において恒常的に発現されているが、より高いレベルは他の組織および細胞型において誘導されることを示している。多数の報告が示しているように、COX-2阻害剤はその酵素の活性を阻害する。本研究からのデータは、COX-2阻害剤が炎症性刺激に対する応答においてCOX-2の誘導を低減させないことを示唆している。これは図8にグラフで示されているが、ビヒクルにおける炎症性物質リポ多糖(「LPS」)を投与された動物の肝臓におけるCOX-2レベルについてのバーは、50mg/KgのCOX-2阻害剤を投与された動物の肝臓におけるCOX-2レベルを描くバーとおおよそ等しく、100mg/Kgの同じCOX-2阻害剤を投与された動物の肝臓におけるCOX-2レベルを描くバーのエラーバーの範囲内である。対照的に、sEHIはインビトロ研究においてCOX-2活性を直接的には阻害しない。しかしながら、図8にグラフで示されているように、それらはCOX-2の誘導のレベルを、動物が同じ量での同じ炎症性物質に曝された場合に見られる誘導と比較して約30〜40%低減させ、COX-2の恒常的発現を低減させない。従って、sEHIは、COX-2阻害剤が示していた副作用無しに投与されることができる。しかも、上で述べられているように、sEHIおよびCOX-2阻害剤の組み合わせはsEHIの非存在下で必要であるものより低いレベルのCOX-2阻害剤で所与量の効果(所与量の疼痛の軽減のような)を達成することを可能にするため、組み合わせの使用は、さもなければ、同じ結果を達成するのにそうでなければ必要であるCOX-2阻害剤の量に由来する副作用を低減させる。
【0035】
COX-2阻害剤およびsEHIは異なる手段により炎症を低減する。COX-2阻害剤はCOX-2活性を阻害することが知られており、一方、sEHIはCOX-2の活性を直接的には阻害しないが、炎症性物質により別な様式で誘導されるCOX-2の量を低減させる。上で述べられているように、理論に縛られることを望むわけではないが、以前には知られていなかったこれらの異なる作用機構は、2つの型の作用物質の使用を組み合わせることにおいて見られる相乗効果について一部原因となりうる。
【0036】
上で述べられているように、sEHIは、炎症性物質、LPSによるCOX-2の誘導を低減させることが示された。COX-2阻害剤はLPSにより誘導されたCOX-2の量を低減させなかったので、COX-2阻害剤をsEHIへ加えることは、結果として、sEHI単独の使用で見られたものと同じレベルのCOX-2の誘導を生じると予想された。驚くべきことに、COX-2阻害剤および例示sEHIの組み合わせは、結果として、COX-2阻害剤無しのsEHIおよびLPSの存在下で誘導されたレベルより、LPSによるCOX-2のより低い誘導を生じた。図はCOX-2阻害剤Celebrex(登録商標)(セレコキシブ)を用いた研究の結果のみを報告しているが、研究はCOX-2阻害剤Vioxx(登録商標)およびCOX1/2阻害剤インドメタシン、加えてコンパウンド950として知られているポリエーテルsEHIを用いて繰り返されたことは留意されるべきである。各研究は図8に示されたものと類似した結果を与えた。
【0037】
ターメリックおよび市販のマスタードに存在するクルクミンはインビトロでCOX-2発現および活性を低減させることが報告されており、いくつかの癌細胞系の増殖を遅らせることが報告されていることを留意すべきである。クルクミンを含む錠剤は市販されている。従って、ターメリックもしくはマスタードを含む料理を食べる、または錠剤中のクルクミンを摂る人は、COX-2発現または活性を低減させるのに役立つクルクミンのレベルを摂取していた可能性がある。さらに、「雷公藤(Thunder God Vine)」(タイワンクロヅル(Tripterygium wilfordii))として公知の伝統的な漢方薬に用いられる植物が、COX-2発現へいくらかの効果を生じることが報告されている。好ましい態様において、COX-2阻害剤の使用を挙げる本発明の方法は、食物の使用をCOX-2阻害剤と呼ばない。そしてまた、好ましい態様において、それらは、クルクミンがsEHIとカプセル中または錠剤中に組み合わせられない限り、クルクミン錠剤またはカプセルもCOX-2阻害剤と呼ばない。
【0038】
FLAPの阻害剤およびsEHIが個体へ投与されるいくつかの態様において、個体は好ましくは、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳損傷、パーキンソン病、多発性硬化症、ALS、くも膜下出血、または脳における炎症性メディエーターの過剰生成に関連した別の障害についてFLAP阻害剤を摂取したことがない。いくつかの態様において、sEHIを受ける人はまた、自己免疫疾患により引き起こされる疾患もしくは状態、またはTリンパ球媒介性免疫機能自己免疫応答に関連した障害についてsEHIを摂取していない。いくつかの態様において、患者はまた、1型もしくは2型糖尿病、インスリン抵抗症候群、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、アンギナ、虚血、虚血性卒中、レイノー病、または腎疾患から選択される病的状態に罹っていない。いくつかの態様において、患者は、血圧が130/80以下である真性糖尿病をもつ人、血圧が130/85未満である代謝症候群をもつ人、215mg/dLを超えるトリグリセリドレベルをもつ人、もしくは200mg/dLを超えるコレステロールレベルをもつ人ではない、またはsEHの阻害剤を摂取していないこれらの状態の1つもしくは複数をもつ人である。いくつかの態様において、患者は、閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、または喘息に罹っていない。いくつかの態様において、患者は心筋ミオパチーまたは緑内障に罹っていない。
【0039】
B. EET
EETは、血圧のエフェクター、炎症のレギュレーター、および血管透過性のモジュレーターであることが知られているアラキドン酸のエポキシドである。sEHによるエポキシドの加水分解はこの活性を減少させる。sEHの阻害は、EETがDHETへ加水分解される速度が低減されるため、EETのレベルを上昇させる。
【0040】
EETは、以前には、主としてそれらが役に立つにはあまりにも急速に内因性sEHにより加水分解されると考えられていたために、一般的には治療的に投与されなかった。内因性sEHが、結果として正常に存在するものを超えるEETのレベルの増加を生じるように外因性EETの投与を可能にするのに十分に身体において阻害されることができるかどうかは知られていなかった。共有出願の米国特許出願第10/815,425号に報告された最近の研究は、タバコの煙に曝されたラットへのsEHの阻害剤と併用したEETの投与が、結果として、sEH阻害剤単独の投与が生じたより肺における白血球の動員のレベルの低減を生じたことを示した。結果は、2つの作用物質の組み合わせが、sEH阻害剤単独での投与より、タバコの煙関連の肺への炎症を低減させることにおいてより強力であったことを示している。これらの研究は、sEHの阻害剤と併用して投与されたEETがsEH阻害剤単独のそれに対して治療効果を増加させることを証明している。
【0041】
EETレベルがsEHIの使用により上昇されうるという事実は、COX阻害剤およびLOX阻害剤の活性を増強することにおけるsEHIの有益な効果が、sEHIの有効量が存在している期間中にEETを投与することによりさらに増大されうることを示している。
【0042】
本発明の方法において有用なEETは、好ましい順に、14,15-EET、8,9-EET、および11,12-EET、および5,6 EETを含む。好ましくは、EETは、より安定しているメチルエステルとして投与される。当業者は、EETが、8S,9R-EETおよび14R,15S-EETのような位置異性体であると認識していると思われる。8,9-EET、11,12-EET、および14R,15S-EETは、例えば、Sigma-Aldrich(それぞれ、カタログ番号E5516、E5641、およびE5766、Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)から市販されている。
【0043】
当業者は、sEHによる加水分解を低減させるためにEETを改変することが、それの代謝安定性を増加させ、および従って、その有益な効果を延長すると認識しているものと思われる。これらのEETの「模倣体」はそれゆえに有利である。本明細書に用いられる場合のEETという用語は、それゆえに、狭くは上記のEETを指すが、より広くは、代謝的に安定している、すなわち、天然EETよりsEHによる加水分解に対してより抵抗性であるEETの模倣体も指す。
【0044】
C. EPAおよびDHAのエポキシド
脂肪酸エイコサペンタエン酸(「EPA」)およびドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、最近、有益な効果を生じると認識されるようになってきており、これらの脂肪酸の良い供給源である魚油錠剤がサプリメントとして広く販売されている。2003年において、これらの脂肪酸が疼痛および炎症を低減させることが報告された。Sethi, S. et al., Blood 100:1340-1346 (2002)。その論文は、作用の機構も、この軽減の原因となる作用物質も同定しなかった。
【0045】
チトクロムP450(「CYP450」)代謝は、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)およびエイコサペンタエン酸(「EPA」)から、それぞれ、シス-エポキシドコサペンタエン酸(「EpDPE」)およびシス-エポキシエイコサテトラエン酸(「EpETE」)を生成する。これらのエポキシドは、公知の内皮由来過分極因子(「EDHF」)である。これらのEDHFおよびまだ同定されていない他のものは、アセチルコリンおよびブラジキニンに応答して血管内皮細胞から放出されるメディエーターであり、NOS-(一酸化窒素)由来およびCOX由来(プロスタシクリン)血管拡張剤とは異なる。多価不飽和脂肪酸の全体的なチトクロムP450(CY450)代謝は、活性メディエーターの最有力候補であるEETのようなエポキシドを生成する。例えば、14(15)-EpETEは、EPAの14,15-二重結合のエポキシ化を通して誘導され、アラキドン酸の14,15-二重結合のエポキシ化を通して誘導される14(15)-EpETrE(「14(15)EET」)のω-3相同体である。
【0046】
述べられているように、本発明者らは、脂肪酸アラキドン酸のエポキシドであるEETのレベルを上昇させることが有益であることを見出した。EETの効果の本発明者らの研究は、EPAおよびDHAの抗炎症効果が、これらの2つの脂肪酸のエポキシドのレベルを増加させることによる可能性が高いという認識に本発明者らを導いた。従って、本発明者らは、EPAの、DHAの、または両方のエポキシドのレベルを増加させることが、それを必要としている哺乳動物において疼痛および炎症を低減させるように作用することを予想している。これらの脂肪酸のエポキシドのこの有益な効果は以前には認識されていなかった。さらに、これらのエポキシドは、一つには上で述べられているようにエポキシドは一般的に投与されるには不安定すぎると考えられていたため、以前には薬剤として投与されなかった。
【0047】
EETのように、EPAおよびDHAのエポキシドはsEHの基質である。EPAおよびDHAのエポキシドは、チトクロムP450の作用により低レベルで身体において生成される。これらのエポキシドの内因性レベルはsEHIの投与により維持または増加させられうる。しかしながら、これらのエポキシドの内因性生成は低く、通常には、炎症の回復のような比較的特別な状況において生じる。本発明者らの予想は、外因性供給源由来のこれらのエポキシドを投与することが炎症の回復において、および疼痛を低減させるにおいて助けとなるだろうということである。本発明者らはさらに、これらのエポキシドの加水分解を低減させ、それによりそれらを相対的高レベルで維持するようにsEHをsEHIで阻害することが疼痛または炎症に関して有益であろうことを予想している。
【0048】
EPAは5つの不飽和結合、およびそれに従って、エポキシドが形成されうる5つの位置を有し、一方、DHAは6つ有する。EPAのエポキシドは典型的には略記され、総称的に「EpETE」と呼ばれ、一方、DHAのエポキシドは典型的には略記され、総称的に「EpDPE」と呼ばれる。各脂肪酸のエポキシドの特定の位置異性体は以下の表に示されている。
【0049】
(表A)
エイコサペンタエン酸(「EPA」)エポキシドの位置異性体:
1. 正式名:(±)5(6)-エポキシ-8Z, 11Z, 14Z, 17Z-エイコサテトラエン酸、
別名5(6)-エポキシエイコサテトラエン酸
略語5(6)-EpETE
2. 正式名:(±)8(9)-エポキシ-5Z, 11Z, 14Z, 17Z-エイコサテトラエン酸、
別名8(9)-エポキシエイコサテトラエン酸
略語8(9)-EpETE
3. 正式名:(±)11(12)-エポキシ-5Z, 8Z, 14Z, 17Z-エイコサテトラエン酸、
別名11(12)-エポキシエイコサテトラエン酸
略語11(12)-EpETE
4. 正式名:(±)14(15)-エポキシ-5Z, 8Z, 11Z, 17Z-エイコサテトラエン酸、
別名14(15)-エポキシエイコサテトラエン酸
略語14(15)-EpETE
5. 正式名:(±)17(18)-エポキシ-5Z, 8Z, 11Z, 14Z-エイコサテトラエン酸、
別名17(18)-エポキシエイコサテトラエン酸
略語17(18)-EpETE
ドコサヘキサエン酸(「DHA」)エポキシドの位置異性体:
1. 正式名:(±)4(5)-エポキシ-7Z, 10Z, 13Z, 16Z, 19Z-ドコサペンタエン酸、
別名4(5)-エポキシドコサペンタエン酸
略語4(5)-EpDPE
2. 正式名:(±)7(8)-エポキシ-4Z, 10Z, 13Z, 16Z, 19Z-ドコサペンタエン酸、
別名7(8)-エポキシドコサペンタエン酸
略語7(8)-EpDPE
3. 正式名:(±)10(11)-エポキシ-4Z, 7Z, 13Z, 16Z, 19Z-ドコサペンタエン酸、
別名10(11)-エポキシドコサペンタエン酸
略語10(11)-EpDPE
4. 正式名:(±)13(14)-エポキシ-4Z, 7Z, 10Z, 16Z, 19Z-ドコサペンタエン酸、
別名13(14)-エポキシドコサペンタエン酸
略語13(14)-EpDPE
5. 正式名:(±)16(17)-エポキシ-4Z, 7Z, 10Z, 13Z, 19Z-ドコサペンタエン酸、
別名16(17)-エポキシドコサペンタエン酸
略語16(17)-EpDPE
6. 正式名:(±)19(20)-エポキシ-4Z, 7Z, 10Z, 13Z, 16Z-ドコサペンタエン酸、
別名19(20)-エポキシドコサペンタエン酸
略語19(20)-EpDPE
【0050】
これらのエポキシドのいずれか、またはこれらのいずれかの組み合わせは、本発明の組成物および方法において投与されうる。
【0051】
II. 定義
単位、接頭辞、および記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)認定型で表される。数の範囲は、その範囲を定義する数を含む。他に規定がない限り、核酸は、左から右へ5'から3'への配向で書かれる;アミノ酸配列は、左から右へアミノからカルボキシへの配向で書かれる。本明細書に提供される見出しは、全体として本明細書を参照することにより有されうる本発明の様々な局面または態様の限定ではない。従って、すぐ下に定義される用語は、全体として本明細書を参照することによりより完全に定義される。本明細書に定義されていない用語は、当業者により理解されているようなそれらの通常の意味をもつ。
【0052】
「エポキシドヒドロラーゼ」(「EH」;IUBMB酵素命名法EC 3.3.2.3)は、「エポキシド」と呼ばれる3員環の環状エーテルへ水を付加するαβヒドロラーゼフォールドファミリーにおける酵素である。
【0053】
「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」(「sEH」)は、内皮細胞および平滑筋細胞においてジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)と呼ばれるジヒドロキシ誘導体へEETを変換する酵素である。マウスsEHのクローニングおよび配列は、Grant et al., J. Biol. Chem. 268(23):17628-17633 (1993)に示されている。ヒトsEH配列のクローニング、配列、およびアクセッション番号は、Beetham et al., Arch. Biochem. Biophys. 305(1):197-201 (1993)に示されている。ヒトsEHのアミノ酸配列もまた、米国特許第5,445,956号のSEQ ID NO:2として示されている;ヒトsEHをコードする核酸配列は、その特許のSEQ ID NO:1のヌクレオチド42位〜1703位として示されている。遺伝子の進化および命名法は、Beetham et al., DNA Cell Biol. 14(1):61-71 (1995)に考察されている。可溶性エポキシドヒドロラーゼは、齧歯類とヒトの間で90%を超える相同性をもつ単一の高度に保存された遺伝子産物を表す(Arand et al., FEBS Lett., 338:251-256 (1994))。他に特定されない限り、本明細書に用いられる場合、「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」および「sEH」という用語はヒトsEHを指す。
【0054】
他に特定されない限り、本明細書に用いられる場合、「sEH阻害剤」(時々、本明細書で「sEHI」と略記される)という用語は、ヒトsEHの阻害剤を指す。好ましくは、その阻害剤はまた、ミクロソームのエポキシドヒドロラーゼ(「mEH」)の活性を、その阻害剤がsEHを少なくとも50%阻害する濃度において25%より多く阻害しない、より好ましくは、その濃度において10%より多くmEHを阻害しない。参照の都合上、文脈により他に必要とされない限り、本明細書に用いられる場合の「sEH阻害剤」という用語は、代謝されてsEHの阻害剤を活性化するプロドラッグを含む。さらに、参照の都合上、文脈により他に必要とされている場合を除き、本明細書でのsEHの阻害剤としての化合物への言及は、sEH阻害剤としての活性を保持するその化合物の誘導体(例えば、その化合物のエステル)への言及を含む。
【0055】
「COX」は「シクロ-オキシゲナーゼ」の略語である。いくつかのCOX酵素が同定されている。2つのアイソザイム、COX-1およびCOX-2は臨床的重要性をもつと認識されており、COX-1は恒常的に発現されると考えられており、COX-2は誘導性で、炎症の部位により蔓延していると考えられている。例えば、Hawkey, Best Pract Res Clin Gastroenterol. 15(5):801-20 (2001)を参照。
【0056】
本明細書に用いられる場合、「COX-1阻害剤」は、それがCOX-2を阻害するより多くCOX-1を阻害する作用物質を意味し、「COX-2阻害剤」は、それがCOX-1を阻害するより多くCOX-2を阻害する作用物質を意味する。すべての現行の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はCOX-1およびCOX-2の両方を阻害するが、たいていは2つのアイソフォームを異なる程度で阻害する傾向にある。両方の酵素がある程度まで共に阻害される傾向にあるため、どちらの酵素の阻害剤でも「COX阻害剤」であるとみなすことができる。
【0057】
「LOX」は「リポキシゲナーゼ」の略語である。いくつかのLOX酵素が同定されている。アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」、EC 1.13.11.34)は、炎症促進性メディエーターの生成に関与している。アラキドン酸12-リポキシゲナーゼ(「12-LOX」、EC 1.13.11.31)およびアラキドン酸15-リポキシゲナーゼ(「15-LOX」、EC 1.13.11.33)は、アラキドン酸から「リポキシン(lipoxin)」(「リポキシゲナーゼ相互作用生成物(lipoxygenase interaction product)」)として公知のトリヒドロキシテトラエンを形成する。リポキシンは局所抗炎症剤として働く。
【0058】
「5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質」または「FLAP」は、5-LOXが触媒的に活性になりうる前に必要とされるタンパク質である。FLAP活性を阻害することは、5-LOX活性化を低減または阻止し、ロイコトリエンの生合成を減少させる。
【0059】
「シス-エポキシエイコサトリエン酸」(「EET」)は、チトクロムP450エポキシゲナーゼにより合成されるバイオメディエーターである。EETは、sEHにより、ジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)である対応するジオールへ加水分解される。上で述べられているように、sEHによる加水分解を低減させるためにEETを改変することは、それの代謝安定性を増加させ、それに従って、それの有益な効果を延長すると思われる。本明細書に用いられる場合のEETという用語は、それゆえに、狭くは上記のEETを指すが、より広くは、代謝的に安定している、すなわち、天然EETよりsEHによる加水分解に対してより抵抗性であるEETの模倣体も指す。
【0060】
チトクロムP450(「CYP450」)代謝は、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)およびエイコサペンタエン酸(「EPA」)から、それぞれ、シス-エポキシドコサペンタエン酸(「EpDPE」)およびシス-エポキシエイコサテトラエン酸(「EpETE」)を生成する。これらのエポキシドは、公知の内皮由来過分極因子(「EDHF」)である。これらのEDHFおよびまだ同定されていない他のものは、アセチルコリンおよびブラジキニンに応答して血管内皮細胞から放出されるメディエーターであり、NOS-(一酸化窒素)由来およびCOX由来(プロスタシクリン)血管拡張剤とは異なる。多価不飽和脂肪酸の全体的なチトクロムP450(CY450)代謝は、活性メディエーターの最有力候補であるEETのようなエポキシドを生成する。例えば、14(15)-EpETEは、EPAの14,15-二重結合のエポキシ化を通して導かれ、アラキドン酸の14,15-二重結合のエポキシ化を通して導かれた14(15)-EpETrE(「14(15)EET」)のω-3相同体である。
【0061】
「IC50」は、酵素活性を50%阻害するのに必要とされる作用物質の濃度を指す。
【0062】
「生理学的条件」とは、対象となる細胞の維持または増殖を可能にする条件(例えば、温度、pH、およびモル浸透圧濃度)を有する細胞外環境を意味する。
【0063】
「治療的有効量」という用語は、処置されることになっている疾患、状態、もしくは障害の症状の1つまたは複数の発生を予防するまたは減少させるのに十分な、投与される化合物の量を指す。
【0064】
「鎮痛用量」という用語は、処置中の被験体において疼痛を予防するまたは減少させるのに十分な、投与される化合物の量を指す。
【0065】
「調節する」という用語は、関連した活性(例えば、可溶性エポキシドヒドロラーゼ)の機能または活性を増加させる、または減少させる化合物の能力を指す。それの様々な形をとって本明細書に用いられる場合の「調節」は、sEHに関連した活性の拮抗作用および部分的拮抗作用を含むものとする。sEHの阻害剤は、酵素の活性を部分的に、または完全にブロックするように、例えば結合する、化合物である。
【0066】
本明細書に用いられる場合の「組成物」という用語は、特定された成分を特定された量で含む産物、加えて、特定された量での特定された成分の組み合わせから直接的にまたは間接的に起因する任意の産物を含むことを意図される。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合性でなければならない、かつそのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。「被験体」は、本明細書では、限定されるわけではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳動物のような動物を含むと定義される。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0067】
文脈により他に必要とされない限り、EET、EpETE、またはEpDPE、およびsEH阻害剤を、必要としている人へ「投与する」ことは、sEH阻害剤を投与すること、続いて、sEH阻害剤の量がsEHによるエポキシドの加水分解の速度を少なくとも25%低減させるのに十分まだ存在している間に、EET、EpETE、またはEpDPEを後で投与することを含む。
【0068】
III. COX-1阻害剤およびCOX-2阻害剤
すべての現行の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は両方のアイソフォームを阻害するが、たいていは2つのアイソフォームを異なる程度で阻害する傾向にある。COX-2は炎症応答に関連した酵素と考えられるため、酵素選択性は一般的にCOX-2についての特異性に関して測定される。典型的には、COX-1またはCOX-2を発現させる標的器官の細胞が、NSAIDの増加性レベルに曝される。細胞が正常にはCOX-2を産生しない場合には、COX-2は、刺激薬、通常には細菌のリポ多糖(LPS)により誘導される。
【0069】
NSAIDのCOX-1およびCOX-2への相対的活性は、各酵素についてのIC50の比率:COX-2(IC50)/COX-1(IC50)により表される。比率が小さければ小さいほど、NSAIDはCOX-2に対して特異的である。例えば、様々なNSAIDは、0.33から122までの範囲であるCOX-2(IC50)/COX-1(IC50)の比率をもつと報告されている。Englehart et al., J Inflammatory Res 44:422-33 (1995)参照。アスピリンは0.32のIC50比率をもち、それがCOX-2より多くCOX-1を阻害することを示し、一方、インドメタシンは、それのCOX-2(IC50)/COX-1(IC50)比率が33であることからCOX-2阻害剤とみなされる。選択的COX-2阻害剤でさえも、インビボで得られる治療レベルである程度のCOX-1阻害を保持する。Cryer and Feldman, Am J Med. 104(5):413-21 (1998)。
【0070】
本発明の方法および組成物に用いられうる市販されているNSAIDは、伝統的なNSAIDのジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、COX-2阻害剤のセレコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブ、アスピリンのようなアセチル化サリチル酸、ならびにサリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムのような非アセチル化サリチル酸を含む。
【0071】
IV. 5-LOX阻害剤
リポキシゲナーゼ(「LOX」)経路を通してのアラキドン酸の代謝は、いろいろな病態に結びつけられるロイコトリエン(「LT」)の形成に導く。主な炎症性酵素は5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)である。5-LOXカスケードは、結果として、LTB4、ならびにシステイニルLT、LTC4、LTD4、およびLTE4の形成を生じる。LTB4は白血球活性化の強力な刺激物質である。システイニルLTは、「粘膜微小血管傷害および胃血管収縮を引き起こす、粘膜バリアの崩壊を促進する、および胃酸の分泌、加えてインターロイキン1(「IL1」)および炎症促進性サイトカインの産生を刺激することにより胃粘膜の損傷に関与する可能性がある」。Martel-Pelletier et al., Ann. Rheumatic Dis 62:501-509 (2003)(「Martel-Pelletier 2003」)。リポキシン、またはLXとして公知の抗炎症性化合物の形成に寄与する追加のリポキシゲナーゼ、12-LOXおよび15-LOXが存在する。従って、炎症を低減させることを目的として、5-LOXを阻害し、12-LOXおよび15-LOXを同様に阻害することがないことが望ましい。
【0072】
炎症におけるそれの役割のために、5-LOXのいくつかの阻害剤が開発されている。例えば、Julemont et al., Expert Opinion on Therapeutic Patents, 13(1):1-13 (2003)(1999〜2002年の5-LOX阻害剤に向けられた特許の概説)を参照。1つの経口で有効な阻害剤はREV 5901[α-ペンチル-3-(2-キノリニルメトキシ)-ベンゼン-メタノール]である(Van Inwegen et al., Pharmacol Exp Therapeutics 241(1):117-124 (1987)参照)。5-LOXはまた、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(「FLAP」)をMK-886により阻害することにより阻害されうる。(Smirnov et al., Br J Pharmacol 124:572-578 (1998)参照)。しかしながら、この阻害剤は、いくつかの細胞型においてアポトーシスを誘導し、インビトロ研究における使用に最も適している。他の阻害剤は、例えば、米国特許出願第20040198768号に記載されている。
【0073】
V. 複合COX/LOX阻害剤
プロスタグランジンおよびロイコトリエンの炎症効果のために、ならびにCOX経路をブロックすることがアラキドン酸をLOX経路へシャトルすると考えられているために、COX-2および5-LOXの両方の二重阻害が炎症の阻害を最大にするだろうことが示唆されていた。例えば、Martel-Pelletier 2003, 前記、参照。COX-2および5-LOXの両方をブロックするためにいくつかの化合物が開発されている。一つ、テポキサリンは、COX-1、COX-2、および5-LOXをブロックし、Zubrin(登録商標)(Schering Plough Animal Health Corp., Union, NJ)の名前でイヌの獣医学用薬として市販されている。テポキサリンはまた、ヒトにおいてCOX酵素およびLOXをブロックすること、かつ耐容性が良好であることが示されている。COXおよび5-LOXの第二阻害剤、リコフェロン(Merkle GmbH, Germany)は骨関節炎の処置として第III相臨床試験中であり、ナプロキセンより優れた胃耐容性を示している。Bias et al., Am J Gastroenterol 99(4):611 (2004)を参照。Martel-Pelletier 2003, 前記; Tries et al., Inflamm Res 51:135-43 (2002)も参照。いくつかの他の二重COX/LOX阻害剤、および特にCOX-2/5-LOX阻害剤は、米国特許第6,753,344号(チオフェン置換ヒドロキサム酸誘導体)、第6,696,477号(ヘテロシクロ置換ヒドロキサム酸誘導体)、第6,677,364号(置換スルホニルフェニル複素環)、ならびに米国特許出願第20040248943号(ピラゾール置換ヒドロキサム酸誘導体)、第20040147565号(置換スルホニルフェニル複素環)、第20030180402号(アカシア(Acacia)属から単離されたフラバン)、および第20030176708号(チオフェン置換ヒドロキサム酸誘導体)により例示されているように、開発されている。
【0074】
VI. 可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤
様々な化学構造の多数のsEH阻害剤が知られている。1,3二置換尿素、カルバメート、およびアミド(それぞれはまた本明細書で「一次ファルマコフォア」と呼ばれる)は、sEHの安定かつ強力な阻害剤として報告されている。米国特許第6,150,415号(「‘415特許」)参照。いくつかの好ましい態様において、阻害剤は、参照により本明細書に組み入れられている、国際公報WO 2004/089296として公開された共有のPCT出願PCT/US04/10298に記載されたものである。二次もしくは三次ファルマコフォア、または両方の導入はsEH阻害剤の水溶性および経口利用可能性を増加させることができる。特に好ましい態様において、阻害剤は、一次ファルマコフォアとして二置換尿素、カルバメート、またはアミドを有し、二次ファルマコフォアとしてポリエーテルを有する。代謝的に安定である誘導体は、それらがインビボでより大きな活性をもつことが予想されるため、好ましい。
【0075】
一次ファルマコフォアがアダマンタンおよび12炭素鎖ドデカンの両方に共有結合している誘導体もまたsEH阻害剤として有用である。様々な尿素、カルバメート、およびアミド誘導体によるインビトロでのsEHの選択的かつ競合的阻害は、例えば、その酵素を阻害する尿素誘導体を設計することの実質的な手引きを提供するMorisseau et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96:8849-8854 (1999)により教示されている。
【0076】
尿素の誘導体はsEH阻害剤の好ましい群を形成する遷移状態模倣体である。この群内で、N,N'-ドデシル-シクロヘキシル尿素(DCU)は阻害剤として好ましく、N-シクロヘキシル-N'-ドデシル尿素(CDU)は特に好ましい。ジシクロヘキシルカルボジイミド(親油性ジイミド)のようないくつかの化合物は、DCUのような活性尿素阻害剤へ分解することができる。任意の特定の尿素誘導体または他の化合物は、本明細書に考察されたもののような標準アッセイによりsEHを阻害するそれの能力を容易に試験されることができる。sEH阻害剤としての尿素およびカルバメート誘導体の作製および試験は、例えば、Morisseau et al., Proc Natl Acad Sci (USA) 96:8849-8854 (1999)に詳細に示されている。
【0077】
N-アダマンチル-N'-ドデシル尿素(「ADU」)は両方とも代謝的に安定しており、sEHへ特に高い活性を生じる。(1-アダマンチル尿素および2-アダマンチル尿素の両方が試験されており、sEHの阻害剤としてほとんど同じ高活性をもつ。)従って、アダマンチルドデシル尿素の異性体は特に好ましい阻害剤である。尿素の他のドデカン酸エステル誘導体は本発明の方法に用いるのに適していることがさらに予想される。好ましい態様において、阻害剤は、12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)-ドデカン酸(AUDA)またはそのエステルである。特に好ましい形において、阻害剤は、AUDA-ブチルエステル(AUDA-nBEまたは「AUDA-BE」)である。
【0078】
米国特許第5,955,496号(‘496特許)は、本発明の方法に用いるいくつかの適切なエポキシドヒドロラーゼ阻害剤を示している。阻害剤の一つのカテゴリーは、酵素の基質を模倣する阻害剤を含む。脂質アルコキシド(例えば、ステアリン酸の9-メトキシド)はこの群の阻害剤の例示である。‘496特許に考察された阻害剤に加えて、オレイン酸のメチル、エチル、およびプロピルアルコキシド(ステアリン酸アルコキシドとしても知られている)、リノール酸、ならびにアラキドン酸を含む1ダースまたはそれ以上の脂質アルコキシドがsEH阻害剤として試験されており、すべて、sEHの阻害剤として作用することが見出されている。
【0079】
態様のもう一つの群において、‘496特許は、ゆっくりと代謝回転される、その酵素の代替基質を提供するsEH阻害剤を示している。このカテゴリーの阻害剤の例示は、フェニルグリシドール(例えば、S,S-4-ニトロフェニルグリシドール)およびカルコンオキシドである。‘496特許は、適したカルコンオキシドが4-フェニルカルコンオキシドおよび4-フルオロカルコンオキシドを含むと述べている。フェニルグリシドールおよびカルコンオキシドは安定なアシル酵素を形成すると考えられている。
【0080】
本発明の方法に用いるのに適したsEHの追加の阻害剤は、‘415特許に、および米国特許第6,531,506号(‘506特許)に示されている。本発明の2つの好ましいクラスの阻害剤は、‘415特許および‘506特許に記載されているように式1および式2の化合物である。そのような化合物を調製する、およびエポキシドヒドロラーゼを阻害する能力について所望の化合物をアッセイするための手段もまた記載されている。‘506特許は、特に、0.1Mもの低さの濃度でヒトsEHを阻害することが示された、式1の多数の阻害剤および式2の約20個の阻害剤を教示している。任意の特定の阻害剤は、下記の実施例に示されたもののような標準アッセイにより、本発明の方法においてそれが働くかどうかを決定するために容易に試験されうる。
【0081】
上で述べられているように、カルコンオキシドは、酵素の代替基質として働くことができる。カルコンオキシドは特定の構造に一部依存する半減期をもつが、カルコンオキシドは群として比較的短い半減期をもつ傾向にある(薬物の半減期は通常、薬物の濃度がそれの最初の値の半分まで下落する時間として定義される。例えば、Thomas, G., MEDICINAL CHEMISTRY: AN INTRODUCTION, John Wiley & Sons Ltd. (West Sussex, England, 2000参照)。本発明の使用は数日間、数週間、または数ヶ月間、測定されうる期間に対するsEHの阻害を企図するため、カルコンオキシド、および持続時間が実行者が望ましいと思うより短い半減期をもつ他の阻害剤は、好ましくは、ある期間に渡って作用物質を供給する様式で投与される。例えば、阻害剤は、阻害剤をゆっくりと放出する材料中で供給されうる。ある期間に渡って阻害剤の高い局所的濃度を可能にする投与方法は知られており、短い半減期をもつ阻害剤との使用に限定されないが、とはいえ、比較的短い半減期をもつ阻害剤について、それらは好ましい投与方法である。
【0082】
阻害剤が酵素-基質遷移状態または反応中間体を模倣することに基づいた可逆的様式で酵素と相互作用する‘506特許の式1における化合物に加えて、酵素の不可逆的阻害剤である化合物を有しうる。‘506特許の表または式1におけるもののような活性構造は、阻害剤を酵素へ方向づけることができ、酵素触媒部位における反応性官能基が阻害剤と共有結合を形成することができる。このような相互作用することができる1群の分子は、リシンまたはヒスチジンとSN2様式で攻撃されうるハロゲンまたはトシラートのような離脱基を有する。または、反応性官能基は、エポキシド、または不飽和エステル、アルデヒド、ケトン、エステル、もしくはニトリルのようなマイケル受容体でありうる。
【0083】
さらに、式1化合物に加えて、活性誘導体は本発明を実施するために設計されうる。例えば、ジシクロヘキシルチオ尿素は、酵素または酸性水溶液(生理食塩水)で活性ジシクロヘキシル尿素を形成するジシクロヘキシルカルボジイミドへ酸化されうる。または、カルバメートまたは尿素における酸性プロトンは、グルタチオンのような求核剤による酸化、加水分解、または攻撃で対応する親構造を生じる様々な置換基と置き換えられうる。これらの物質はプロドラッグまたはプロ毒素として知られている(Gilman et al., THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 第7版, MacMillan Publishing Company, New York, P. 16 (1985))。例えば、エステルは、放出されて対応するアルコールおよび酸を酵素的に与える一般的なプロドラッグである(Yoshigae et al., Chirality, 9:661-666 (1997))。薬物およびプロドラッグはより高い特異性のためにキラルであってもよい。これらの誘導体は、水溶性を増強する、製剤化学を向上させる、組織ターゲティングを変化させる、分布の容積を変化させる、および透過を変化させるような化合物の薬理学的性質を変化させるために医用薬剤化学および農芸化学において広範に用いられている。それらはまた、毒物学プロファイルを変化させるために用いられている。
【0084】
多数の可能性のあるプロドラッグがあるが、本明細書に記載された尿素における2つの活性水素の1つもしくは両方、またはカルバメートに存在する単一の活性水素の置換が特に魅力的である。そのような誘導体は、Fukutoおよび共同研究者により広範に記載されている。これらの誘導体は広範に記載されており、化合物の薬理学的性質を変化させるために農芸化学および医用薬剤化学において一般的に用いられる。(Black et al., J Agric Food Chem, 21(5):747-751 (1973); Fahmy et al, J Agric Food Chem, 26(3):550-556 (1978); Jojima et al., J Agric Food Chem, 31(3):613-620 (1983); およびFahmy et al., J Agric Food Chem, 29(3):567-572 (1981)。)
【0085】
そのような活性プロインヒビター誘導体は本発明の範囲内であり、引用したばかりの参考文献は参照により本明細書に組み入れられている。理論に縛られないが、本発明の適した阻害剤は、酵素触媒部位と安定した相互作用があるように酵素遷移状態を模倣すると考えられる。阻害剤は、触媒部位の求核性カルボン酸および極性化チロシンと水素結合を形成するように思われる。
【0086】
いくつかの態様において、sEH阻害は、sEHの量の低減を含みうる。それゆえに、本明細書に用いられる場合、sEH阻害剤は、従って、sEHをコードする遺伝子の発現を阻害する核酸を含みうる。転写の低減およびsiRNAのような遺伝子の発現を低減させる多くの方法が知られており、下でより詳細に考察されている。
【0087】
好ましくは、阻害剤は、ミクロソームエポキシドヒドロラーゼ(「mEH」)も同様に有意に阻害することなく、sEHを阻害する。好ましくは、500Mの濃度において、阻害剤はsEH活性を少なくとも50%阻害するが、mEH活性を10%より多くは阻害しない。好ましい化合物は約500M未満のIC50(阻害効力、または、定義により、酵素活性を50%低減させる阻害剤の濃度)をもつ。500M未満のIC50をもつ阻害剤が好ましいが、100M未満のIC50がより好ましく、50M、40M、30M、25M、20M、15M、10M、5M、3M、2M、1Mまたはよりいっそう低いIC50が、IC50が減少するにつれてより好ましい。EH活性を測定するためのアッセイは当技術分野において公知であり、本明細書の他の所で記載されている。
【0088】
VII. EETならびにEPAおよびDHAのエポキシド
本発明のいくつかの態様において、1つもしくは複数のEET、またはDHAもしくはEPAのエポキシド、または両方が、sEH阻害剤の投与と同時に、または後で投与される。任意で、EET、またはDHAもしくはEPAのエポキシド、または両方が、ゆっくり時間をかけてEET、またはDHAもしくはEPAのエポキシド、または両方を放出する物質に埋め込まれるか、または別な様式で配置される。EETならびにDHAおよびEPAのエポキシドのような組成物の徐放を助けるために適した物質は当技術分野において公知である。
【0089】
都合の良く、EET、またはDHAもしくはEPAのエポキシド、または両方は経口で投与されうる。これらのエポキシドは酸性条件下で分解を受けやすいため、経口投与用のエポキシドは、酸性条件下で溶解することに対して抵抗性のコーティング剤でコーティングされうるが、腸に存在するやや塩基性条件下で溶解する。「腸溶コーティング剤」として一般的に知られている、適したコーティング剤は、胃部不快感を引き起こす、または胃酸への曝露により分解を起こすアスピリンのような産物について広く用いられる。適切な溶解プロファイルをもつコーティング剤を用いることにより、コーティングされた物質は、腸管の選択された区画において放出されうる。例えば、結腸において放出されるべき物質は、pH6.5〜7で溶解する物質でコーティングされ、一方、十二指腸において放出されるべき物質は、5.5より上のpH値で溶解するコーティング剤でコーティングされうる。そのようなコーティング剤は、例えば、「Eudragit(登録商標)」という商標名でRohm Specialty Acrylics(Rohm America LLC, Piscataway, NJ)から市販されている。特定の腸溶コーティング剤の選択は本発明の実施にとって重大な意味をもたない。
【0090】
好ましいEETは、その優先順に、14,15-EET、8,9-EET、および11,12-EETを含む。精製されたsEHは8S,9R-EETおよび14R,15S-EETを選択した;従って、これらのEETは特に好ましい。8,9-EET、11,12-EET、および14R,15S-EETは、例えば、Sigma-Aldrich(それぞれ、カタログ番号E5516、E5641、およびE5766、Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)から市販されている。EPAまたはDHAのエポキシドのいずれでも用いられうる。
【0091】
VIII. エポキシドヒドロラーゼ活性のアッセイ
エポキシドヒドロラーゼ活性を測定するためのいくつかの標準アッセイのいずれかがsEHの阻害を測定するために用いられうる。例えば、適したアッセイは、Gill, et al., Anal Biochem 131, 273-282 (1983); およびBorhan et al., Analytical Biochemistry 231, 188-200 (1995)に記載されている。適したインビトロアッセイは、Zeldin et al., J Biol. Chem. 268:6402-6407 (1993)に記載されている。適したインビボアッセイは、Zeldin et al., Arch Biochem Biophys 330:87-96 (1996)に記載されている。推定上の天然基質および代理基質の両方を用いるエポキシドヒドロラーゼのアッセイが概説されている(Hammock, et al. METHODS IN ENZYMOLOGY, Volume III, Steroids and Isoprenoids, Part B, (Law, J.H. and H.C. Rilling, eds. 1985), Academic Press, Orlando, Florida, pp. 303-311およびWixtrom et al., BIOCHEMICAL PHARMACOLOGY AND TOXICOLOGY, Vol. 1: Methodological Aspects of Drug Metabolizing Enzymes, (Zakim, D. and D.A. Vessey, eds. 1985), John Wiley & Sons, Inc., New York, pp. 1-93参照)。いくつかのスペクトルに基づいたアッセイが、結果として生じたジオール生成物の水素結合への反応性または傾向に基づいて存在する(例えば、Wixtrom, 前記, Hammock. Anal. Biochem. 174:291-299 (1985)およびDietze et al. Anal. Biochem. 216:176-187 (1994)参照)。
【0092】
酵素はまた、酵素を固定化するか、またはそれをダンシル、フルオレセイン、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、または他の試薬のようなプローブで標識するかのいずれかである、触媒部位への特異的リガンドの結合に基づいて検出されうる。酵素は、Dietze et al., 1994, 前記のように着色生成物を与えうる、EETのそれの加水分解、エポキシドのそれの加水分解、または放射性代理基質のそれの加水分解(Borhan et al., 1995, 前記)によりアッセイされうる。酵素はまた、エポキシドの加水分解後の蛍光産物の生成に基づいて検出されうる。エポキシドヒドロラーゼ検出の多数の方法が記載されている(例えば、Wixtrom, 前記を参照)。
【0093】
アッセイは、通常には、アフィニティークロマトグラフィー後の組換え酵素で行われる。それらは、当技術分野において公知のように、粗組織ホモジネート、細胞培養物において、またはインビボでさえも行われうる。
【0094】
IX. sEH活性を阻害する他の手段
sEH活性または遺伝子発現を阻害する他の手段もまた本発明の組成物および方法に用いられうる。例えば、ヒトsEH遺伝子の少なくとも一部に相補的な核酸分子は、sEH遺伝子発現を阻害するために用いられうる。例えば、短い干渉RNA(siRNA)およびミクロRNA(miRNA)を用いる遺伝子発現を阻害するための手段が知られている。転写後遺伝子サイレンシング(「PTGS」)の一種である「RNA干渉」は、二本鎖RNAの細胞への導入から生じる効果を指す(Fire, A. Trends Genet 15:358-363 (1999); Sharp, P. Genes Dev 13:139-141 (1999); Hunter, C. Curr Biol 9:R440-R442 (1999); Baulcombe. D. Curr Biol 9:R599-R601 (1999); Vaucheret et al. Plant J 16:651-659 (1998)に概説されている)。一般的にRNAiと呼ばれているRNA干渉は、クローニングされた遺伝子を特異的に不活性化する方法を提供する。
【0095】
RNAiにおける活性作用物質は長い二本鎖(逆平行二重鎖)RNAであり、鎖の1つが、阻害されることになっているRNAと一致するかまたは相補的である。阻害されるRNAが標的RNAである。長い二本鎖RNAは、約20〜25ヌクレオチド対のより小さい二重鎖へ切断され、その後の、より小さなRNAが標的の発現を阻害する機構は現時点ではほとんど知られていない。RNAiは最初には、下等真核生物においてうまく働くことが示されたが、哺乳動物細胞については、RNAiは卵母細胞および着床前胚に関する研究についてのみ適しうると考えられた。しかしながら、これら以外の哺乳動物細胞において、より長いRNA二重鎖が、タンパク質合成の非特異的阻害により特徴付けられる「配列非特異的RNA干渉」として公知の応答を誘発した。
【0096】
さらなる研究は、この効果が約30塩基対より大きいdsRNAにより、おそらくインターフェロン応答のせいで、誘導されることを示した。約30塩基対より大きいdsRNAは、タンパク質PKRおよび2',5'-オリゴヌクレオチドシンセターゼ(2',5'-AS)を結合して活性化すると考えられている。活性化されたPKRは、翻訳開始因子eIF2αのリン酸化により翻訳を失速させ、活性化された2',5'-ASは2',5'-オリゴヌクレオチド活性化リボヌクレアーゼLによりmRNA分解を引き起こす。これらの応答は、本質的に、誘導dsRNAに配列非特異的である;それらはまたしばしば、結果としてアポトーシス、または細胞死を生じる。従って、たいていの体細胞性哺乳動物細胞は、下等真核細胞においてRNAiを誘導するdsRNAの濃度に曝された場合、アポトーシスを起こす。
【0097】
最近になって、RNA鎖があらかじめサイズが約19ヌクレオチド対の二重鎖として供給される場合にはRNAiがヒト細胞において働くだろうことが示され、RNAiは、各鎖の末端に小さい不対3'伸長を伴うと特にうまく働いた(Elbashir et al. Nature 411:494-498 (2001))。この報告において、「短鎖干渉RNA」(siRNA、低分子干渉RNAとも呼ばれる)は、オリゴフェクタミンミセルにおけるトランスフェクションにより培養細胞へ適用された。これらのRNA二重鎖はアポトーシスのような配列非特異的応答を誘発するには短すぎたが、それらは効率的にRNAiを惹起した。多くの研究室はその後、哺乳動物において標的遺伝子をノックアウトするためのsiRNAの使用を試験した。結果は、siRNAがたいていの場合、全くうまく働くことを実証した。
【0098】
sEHの活性を低減させることを目的として、sEHをコードする遺伝子へのsiRNAは、具体的には、コンピュータプログラムを用いて設計されうる。ヒトsEH配列のクローニング、配列、およびアクセッション番号は、Beetham et al., Arch. Biochem. Biophys. 305(1):197-201 (1993)に示されている。ヒトsEHのアミノ酸配列はまた、米国特許第5,445,956号のSEQ ID NO:2として示されている;‘956特許のSEQ ID NO:1のヌクレオチド42〜1703位はアミノ酸配列をコードする核酸配列である。
【0099】
プログラム、Dharmacon, Inc. (Lafayette, CO)からのsiDESIGNは任意の核酸配列についてsiRNAを予測することを可能にし、ワールドワイドウェブ上のdharmacon.comにおいて利用可能である。siRNAを設計するためのプログラムもまた、Genscript(ウェブ上のgenscript.com/ssl-bin/ap p/rnaiにおいて利用可能)を含む他のものから、ならびに大学研究者および非営利研究者にとっては、「http://」に続いて「jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/」を入力することによりインターネット上のWhitehead Institute for Biomedical Researchから、利用可能である。
【0100】
例えば、Whitehead Instituteから利用可能なプログラムを用いて、以下のsEH標的配列およびsiRNA配列が作成されうる:
1)標的:

センス-siRNA:

アンチセンス-siRNA:

2)標的:

センス-siRNA:

アンチセンス-siRNA:

3)標的:

センス-siRNA:

アンチセンス-siRNA:

4)標的:

センス-siRNA:

アンチセンス-siRNA:

5)標的:

センス-siRNA:

アンチセンス-siRNA:

【0101】
または、siRNAは、遺伝子からsiRNAを作製するキットを用いて作製されうる。例えば、「Dicer siRNA Generation」キット(カタログ番号T510001、Gene Therapy Systems, Inc., San Diego, CA)は、インビトロで組換えヒト酵素「ダイサー」を用いて、長い二本鎖RNAを22bp siRNAへ切断する。siRNAの混合物を有することにより、キットは、標的遺伝子の発現を低減させるsiRNAを作製することにおいて高い成功度を可能にする。同様に、Silencer(商標)siRNA Cocktail Kit(RNアーゼIII)(カタログ番号1625、Ambion, Inc., Austin, TX)はダイサーの代わりにRNアーゼIIIを用いてdsRNAからsiRNAの混合物を作製する。ダイサーのように、RNアーゼIIIはdsRNAを2〜3個のヌクレオチド3'オーバーハングならびに5'-リン酸末端および3'-ヒドロキシ末端をもつ12〜30bp dsRNA断片へ切断する。製造会社によると、dsRNAはT7 RNAポリメラーゼを用いて作製され、反応および精製構成要素はキットに含まれている。dsRNAはその後、RNアーゼIIIにより消化され、siRNAの集団を生じる。キットは、インビトロでの転写により長いdsRNAを合成するための試薬、およびそれらのdsENAをRNアーゼIIIを用いてsiRNA様分子へ消化するための試薬を含む。製造会社は、ユーザーの必要なことは、対向するT7ファージポリメラーゼプロモーターを有するDNA鋳型、または転写されるべき領域の反対末端上にプロモーターを有する2つの別々の鋳型を供給するのみであることを指示している。
【0102】
siRNAはまたベクターから発現されうる。典型的には、そのようなベクターは、対応する相補鎖をコードする第二ベクターと共に投与される。いったん発現されたならば、2つの鎖はお互いにアニールし、機能しうる二本鎖siRNAを形成する。本発明に用いるのに適した1つの例示ベクターは、OligoEngine, Inc.(Seattle, WA)から入手できるpSuperである。いくつかの態様において、ベクターは2つのプロモーターを含み、1つは第一の下流でかつ逆平行の配向で配置される。第一プロモーターは一方の方向に、第二は第一と逆平行の方向に転写され、結果として、相補鎖の発現を生じる。態様のさらにもう一つのセットにおいて、プロモーターの後に、第一鎖をコードする第一セグメント、および第二鎖をコードする第二セグメントが続く。第二鎖は第一鎖のパリンドロームに相補的である。第一鎖と第二鎖の間に、「ヘアピン」として知られた立体配置において第二鎖がぐるりと曲がって第一鎖とアニールするのを可能にするリンカー(時々、「スペーサー」と呼ばれる)としての役割を果たすRNAの区画がある。
【0103】
リンカー区画の使用を含むヘアピンRNAの形成は当技術分野において周知である。典型的には、siRNA発現カセットが、ヒトU6、マウスU6、またはヒトH1のようなポリメラーゼIIIプロモーターを用いて利用される。コード配列は典型的には、短いスペーサーにより逆相補性アンチセンスsiRNA配列に連結された19ヌクレオチドのセンスsiRNA配列である。9ヌクレオチドのスペーサーが典型的であるが、他のスペーサーが設計されうる。例えば、Ambionウェブサイトは、その科学者がスペーサーTTCAAGAGA(SEQ ID NO:18)で成功していることを示している。さらに、5〜6個のTがしばしば、ポリメラーゼIIIにとっての終結点としての役割を果たすためにオリゴヌクレオチドの3'末端に付加される。Yu et al., Mol Ther 7(2):228-36 (2003); Matsukura et al., Nucleic Acids Res 31(15):e77 (2003)も参照。
【0104】
例として、上記で同定されたsiRNA標的は以下のようなヘアピンsiRNAによりターゲットされうる。ベクターにより作製される短いヘアピンRNAにより同じ標的を攻撃したい場合には(永久RNAi効果)、間にループ形成配列をもって連続的にセンス鎖およびアンチセンス鎖を、ならびに配列の両端に適切な発現ベクターのための適した配列を置く。末端は、もちろん、ベクターの切断部位に依存する。以下は、pSuperベクターへクローニングされうるヘアピン配列の非限定的例である:
1)標的:

センス鎖:

アンチセンス鎖:

2)標的:

センス鎖:

アンチセンス鎖:

3)標的:

センス鎖:

アンチセンス鎖:

4)標的:

センス鎖:

アンチセンス鎖:

5)標的:

センス鎖:

アンチセンス鎖:

【0105】
sEHの発現を阻害するもう一つの方法はmiRNAの使用である。ミクロRNA(miRNA)は、特異的部位において標的mRNAと相互作用して、メッセージの切断を誘導するか、または翻訳を阻害し、ヒトタンパク質の10%ほどもの発現に影響しうる。例えば、ウェブ上でplosbiology.org/plosonline/?request=get-document&doi=10.1371%2Fjournal.pbio.0020363を入力することにより入手できるJohn, et al., PLOS Biol, vol. 2, issue 11(November 2004)を参照。ウェブ上でmicrorna.org/miranda.htmlにおいて入手できるオープンソースプログラムmiRanda(Enright et al., Genome Biology (2003) 5;R1)は、Computational Biology Center of Memorial Sloan-Kettering Cancer Centerにより開発されたミクロRNAのゲノム標的を見出すためのアルゴリズムである。
【0106】
siRNAおよびmiRNAに加えて、アンチセンス分子、リボザイムなどのような遺伝子発現を阻害するための他の核酸分子は当業者にとって周知である。核酸分子は、DNAプローブ、リボプローブ、ペプチド核酸プローブ、ホスホロチオネートプローブ、または2'-Oメチルプローブでありうる。
【0107】
アンチセンス分子およびリボザイムのターゲティング部分に関して、特異的ハイブリダイゼーションを保証するために、アンチセンス配列は一般的に、標的配列と相補的である。特定の態様において、アンチセンス配列は標的配列と正確に相補的である。しかしながら、アンチセンスポリヌクレオチドはまた、sEH遺伝子に対応する関連した標的配列への特異的結合がポリヌクレオチドの機能特性として保持されている限り、ヌクレオチド置換、付加、欠失、転移、転位、もしくは修飾、または他の核酸配列もしくは非核酸部分を含みうる。一つの態様において、アンチセンス分子は、トリプルヘリックス含有の、または「トリプレックス」核酸を形成する。トリプルヘリックス形成は、結果として、例えば、標的遺伝子の転写を妨げることにより遺伝子発現の阻害を生じる(例えば、Cheng et al., 1988, J. Biol. Chem. 263:15110; Ferrin and Camerini-Otero, 1991, Science 354:1494; Ramdas et al., 1989, J. Biol. Chem. 264:17395; Strobel et al., 1991, Science 254:1639; およびRigas et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:9591参照)。
【0108】
アンチセンス分子は当技術分野において公知の方法により設計されうる。例えば、Integrated DNA Technologies(Coralville, IA)は、http://に続いて、biotools.idtdna.com/antisense/AntiSense.aspxを入力することにより見出されうるインターネット上のプログラムを利用できるようにしており、それは10,000ヌクレオチド長までの核酸配列について適切なアンチセンス配列を提供する。sEH遺伝子に関してこのプログラムを用いることにより以下の例示配列が提供される:

【0109】
もう一つの態様において、リボザイムは所望の位置でmRNAを切断するように設計されうる。(例えば、Cech, 1995, Biotechnology 13:323; およびEdgington, 1992, Biotechnology 10:256 およびHu et al., PCT公報WO 94/03596参照)。
【0110】
アンチセンス核酸(DNA、RNA、改変型、類似体など)は、本明細書に開示された、および当業者に公知の化学合成ならびに組換え方法のような核酸を作製するための任意の適した方法を用いて作製されうる。一つの態様において、例えば、本発明のアンチセンスRNA分子はデノボ化学合成により、またはクローニングにより調製されうる。例えば、アンチセンスRNAは、ベクター(例えば、プラスミド)においてプロモーターに機能的に連結される逆配向でのsEH遺伝子配列を挿入(ライゲーション)することにより作製されうる。プロモーター、ならびに好ましくは終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルが正しく位置しているとの条件で、非コード鎖に対応する挿入配列の鎖が転写され、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとして働く。
【0111】
オリゴヌクレオチドは、所望の性質(例えば、増加したヌクレアーゼ抵抗性、より強固な結合、安定性、または所望のTm)を与えるために非標準塩基(例えば、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジン以外)または非標準バックボーン構造を用いて作製されうることが理解される。オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ抵抗性にするための技術は、PCT公報WO 94/12633に記載されたものを含む。ペプチド核酸(PNA)バックボーン(Nielsen et al., Science 254:1497 (1991))を有する、または2'-O-メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオネートヌクレオチド、ホスホン酸メチルヌクレオチド、ホスホトリエステルヌクレオチド、ホスホロチオネートヌクレオチド、ホスホラミデートを組み込むオリゴヌクレオチドを含む幅広い種類の有用な改変オリゴヌクレオチドが作製されうる。
【0112】
所望の核酸を細胞膜を横断して転位置させる能力をもつタンパク質が記載されている。典型的には、そのようなタンパク質は、膜輸送担体として働く能力をもつ両親媒性または疎水性部分配列を有する。例えば、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を横断して転位置させる能力をもつ。ホメオドメインタンパク質、アンテナペディアの最短の内部移行可能ペプチドは、アミノ酸43位から58位までのタンパク質の第三ヘリックスであることが見出された(例えば、Prochiantz, Current Opinion in Neurobiology 6:629-634 (1996)参照)。もう一つの配列、シグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、類似した細胞膜転位置特性をもつことが見出された(例えば、Lin et al., J. Biol. Chem. 270:14255-14258 (1995)参照)。そのような部分配列は、オリゴヌクレオチドを細胞膜を横断して転位置させるために用いられうる。オリゴヌクレオチドはそのような配列で都合良く誘導体化されうる。例えば、リンカーはオリゴヌクレオチドおよび転位置配列を連結するために用いられうる。任意の適したリンカー、例えば、ペプチドリンカーまたは任意の他の適した化学的リンカーが用いられうる。
【0113】
X. 治療的投与
本発明の組成物において、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、またはLOX阻害剤はsEHIと組み合わせられる。任意で、組成物は、1つもしくは複数のEET、またはEPAのエポキシド、DHAのエポキシド、または1つもしくは複数の両方のエポキシドをさらに含む。いくつかの態様において、組成物は、EPAのエポキシド、DHAのエポキシド、または両方のエポキシド、およびsEHIである。本発明の組成物は、幅広い種類の経口、非経口、および局所的剤形で調製されて、投与されうる。好ましい形において、本発明の方法に用いる組成物は、経口で、注射により、すなわち、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、十二指腸内に、または腹腔内に投与されうる。組成物はまた、吸入により、例えば、鼻腔内に投与されうる。さらに、組成物は経皮的に投与されうる。従って、いくつかの態様において、本発明の方法は、薬学的に許容される担体もしくは賦形剤、COX-1の阻害剤、COX-2の阻害剤、もしくは両方の阻害剤、またはLOXの阻害剤、選択されたsEHI阻害剤、または阻害剤の薬学的に許容される塩、および任意で、1つもしくは複数のEET、またはEPAのエポキシドもしくはDHAのエポキシド、または両方のエポキシドを含む組成物の投与を可能にする。いくつかの態様において、本発明の方法は、sEHI、および1つもしくは複数の、EPAのエポキシドもしくはDHAのエポキシド、または両方のエポキシドの投与を含む。
【0114】
薬学的組成物を調製するにあたり、薬学的に許容される担体は固体かまたは液体かのいずれかでありうる。固体型調製物は、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒を含む。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としての役割も果たしうる1つまたは複数の物質でありうる。
【0115】
粉剤において、担体は、微粉化した活性成分との混合物中にある微粉化固体である。錠剤において、活性成分は、適切な割合で必要な結合性性質をもつ担体と混合され、望まれる形および大きさに成形される。好ましい粉剤および錠剤は、5%または10%から70%までの活性化合物を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。「調製」という用語は、他の担体を伴うかまたは伴わない活性成分が担体に囲まれている、従って、それに結合しているカプセルを提供する、担体としてのカプセル化材料を伴う活性化合物の製剤化を含むことが意図される。同様に、カシェ剤およびロゼンジが含まれる。錠剤、粉剤、カプセル、丸薬、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与に適した固体剤形として用いられうる。
【0116】
坐剤を調製することについて、脂肪酸グリセリドまたはカカオバターのような低融点ワックスが、まず融解され、活性成分は、撹拌によるように、そこに均一に分散している。融解された均一な混合物を、その後、都合の良い大きさの型へ注ぎ、冷ましておき、それにより凝固させる。
【0117】
液体型調製物は、溶液、懸濁液、および乳濁液、例えば、水溶液または水/プロピレングリコール溶液を含む。非経口注射について、液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中で溶液に製剤化されうる。経皮投与は適切な担体を用いて行われうる。必要に応じて、経皮送達を促進するために設計された装置が用いられうる。適切な担体および装置は、米国特許第6,635,274号、第6,623,457号、第6,562,004号、および第6,274,166号により例示されているように、当技術分野において周知である。
【0118】
経口使用に適した水溶液は、活性成分を水に溶解し、必要に応じて、適切な着色剤、香味剤、安定剤、および濃化剤を添加することにより調製されうる。経口使用に適した水性懸濁液は、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁剤のような粘着性材料と水中で微粉化した活性成分を分散させることにより作製されうる。
【0119】
使用直前に経口投与のための液体型調製物へ変換されることを意図される固体型調製物も含まれる。そのような液体型は、溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味剤、分散剤、濃化剤、可溶化剤などを含みうる。
【0120】
薬学的調製物は、好ましくは、単位剤形である。そのような形において、調製物は、適切な量の活性成分を含む単位用量へ細分される。単位剤形は、バイアルまたはアンプルにおける小包化錠剤、カプセル、および粉剤のような、パッケージされた調製物、調製物の別々の量を含むパッケージでありうる。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジそれ自身でありうる、またはそれは、パッケージされた形におけるこれらのいずれかの適切な数でありうる。
【0121】
本明細書に用いられる場合の「単位剤形」という用語は、各単位が、必要とされる薬学的希釈剤、担体、またはビヒクルと共に所望の薬学的効果を生じるように計算された活性物質の所定量を含む、ヒト被験体および動物のための単位用量として適した物理的に別々の単位を指す。本発明の新規な単位剤形についての仕様は、本明細書で詳細に開示されており、これらは本発明の特徴であるが、(a)活性物質の固有の特徴および達成されるべき特定の効果、ならびに(b)ヒトおよび動物において用いるそのような活性物質を配合することの当技術分野につきものの制限により規定され、かつ直接的に依存する。
【0122】
以下の1つまたは複数の治療的有効量:sEH阻害剤、EET、EpDPE、またはEpETE、は単独で、またはCOX-1の、もしくはCOX-2の、もしくは両方の、もしくはLOX酵素の阻害剤と組み合わせて、鎮痛剤として作用するために用いられる。特定の化合物の用量は当業者に周知である多くの因子に依存する。それらは、例えば、投与の経路および特定の化合物の効力を含む。例示的な用量は、哺乳動物の体重1kgにつき約0.001μMから約100mgまでである。
【0123】
EET、EpDPE、またはEpETEは不安定であり、胃におけるような酸性条件において対応するジオールへ変換されうる。これを避けるために、EET、EpDPE、またはEpETEは静脈内に、または注射により投与されうる。経口投与用のEET、EpDPE、またはEpETEは、胃の通過中に化合物を保護するコーティング内に封入されうる。例えば、EET、EpDPE、またはEpETEは、いくつかの銘柄のアスピリンに用いられているもののようないわゆる「腸溶」コーティングで提供されうる。そのような腸溶コーティングおよび製剤は当技術分野において周知である。いくつかの製剤において、本発明の組成物は、ゆっくり時間をかけての作用物質の投与を助けるために徐放性製剤に埋め込まれる。
【0124】
sEHI、および任意で、EET、EpDPE、またはEpETEは、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、またはCOX/LOX阻害剤と組み合わされる必要はないことが理解される。その代わりに、それらは別個に投与されうる。sEHIが別個に投与される(EET、EpDPE、またはEpETE有りまたは無しで)場合には、それらは、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、もしくはCOX/LOX阻害剤の投与の直前に、または同時に、投与されるべきである。sEHIがCOX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、またはCOX/LOX阻害剤の投与後に投与される場合には、他方の阻害剤との相乗効果を最大にするためにCOX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、またはCOX/LOX阻害剤の投与後できる限り早く投与されるべきである。sEHIの投与は、それがCOX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、またはCOX/LOX阻害剤に少し後に続く場合でさえも、しかしながら、それぞれの酵素を阻害するのに十分なCOX-1阻害剤、COX-2阻害剤、LOX阻害剤、またはCOX/LOX阻害剤の量がまだ存在する限り、まだ有益である。
【0125】
すべての薬物のように、sEHIはそれらが身体により代謝される、または身体から排出される速度により規定される半減期をもつこと、およびsEHIが、それらが効果的であるのに十分な量で存在する間の投与後の期間を有することは理解されている。EET、EpDPE、またはEpETEが、EHIが投与された後に投与される場合には、それゆえに、EET、EpDPE、またはEpETEが、EET、EpDPE、またはEpETEの加水分解を遅らせるのに効果的でありうる量でsEHIが存在する間の期間中に投与されることが望ましい。典型的には、EET、EpDPE、またはEpETEは、sEH阻害剤を投与した後48時間以内に投与される。好ましくは、EET、EpDPE、またはEpETEはsEHIの24時間以内に、よりいっそう好ましくは12時間以内に、投与される。望ましさの増加する順番に、EET、EpDPE、またはEpETEは、阻害剤の投与後10時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、または半時間以内に投与される。最も好ましくは、EET、EpDPE、またはEpETEはsEHIと同時に投与される。
【0126】
実施例
実施例1
この実施例は、結果が図2aおよび2bに示されている研究に用いられた材料および方法を示す。
【0127】
動物実験
体重が22gと28gの間である雄の7〜8週齢のC57BL/6マウス(Charles River, Wilmington, MA)を炎症実験に用いた。マウスを、実験前の5日間、順化させた。それらを、American Association for Laboratory Animal Care認定施設において制御環境でケージあたり4匹の群で飼育し、マウス飼料を無制限に与えた。
【0128】
マウスに、炎症応答を誘導するためにリポ多糖(「LPS」)を投与した。生理食塩水をLPSについての担体として用いた。研究に用いられたsEH阻害剤は、12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)-ドデカン酸ブチルエステル(AUDA-BE)であった。AUDA-nBEは、身体において生理学的有効レベルに達するのにいくらか時間がかかり、AUDA-BEが投与されることになっているマウスに、LPSへの曝露の前にAUDA-BEを与えた。
【0129】
マウスを群に分け、以下のプロコトールに従った:
(a)4匹のマウスに、オレイン酸油(125μL)(ビヒクル)を皮下に(「sc」)、LPS(10mg/kg)ip曝露の24時間前に投与した。LPS曝露後すぐに、もう1用量のオレイン酸油を投与した。
(b)4匹のマウスに、scにAUDA-BE(20mg/kg)をLPS(10mg/kg)ip曝露の数時間前に投与した。LPS曝露後すぐに、マウスへscにもう1用量のAUDA-BE(20mg/kg)のを投与した。
(c)4匹のマウスに、オリーブ油を皮下にLPS(10mg/kg)ip曝露の24時間前に投与した。LPS曝露後すぐに、scに1用量のインドメタシン(100mg/kg)を投与した。
(d)4匹のマウスに、AUDA-BE(20mg/kg)を皮下にLPS(10mg/kg i.p.)曝露の24時間前に投与した。LPS曝露後すぐに、scにもう1用量のAUDA-BE(20mg/kg)、およびscにもう1用量のインドメタシン(100mg/kg)を投与した。
(e)追加の対照動物に、LPSを投与せずに、AUDA-BE、および/またはインドメタシン、またはオレイン酸油を投与した。
【0130】
LPS投与から24時間後、マウスにペントバルビタールの過剰量を腹腔内注射により与え、EDTAでリンスされた注射器での心臓穿刺により血液を収集した。血漿をすぐに分離し、トリフェニルホスフィン(TPP)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.2% w/wの組み合わせを添加した。すべての試料を分析まで-80℃で保存した。
【0131】
オキシリピン試料分析
齧歯類生体試料の固相抽出
血清アリコート(250μL)を6-ケトPGF1a-d8、10(11)-EpHep、および10,11-DiHNの26.7nMでスパイクし、固相抽出(SPE)直前に2.5mMリン酸で1:1 v/v希釈した。60mg Oasis(登録商標)-HLB SPEカートリッジ(Waters Corporation, Milford, MA)を、2mLのメタノールおよび2mLの2.5mMリン酸-10%メタノール(pH3.8)で前条件づけした。試料負荷後、カートリッジを2mLの2.5mMリン酸-10%メタノール(pH3.8)で洗浄し、分析物を2mLの酢酸エチルに溶出した。酢酸エチルを窒素ガス下で蒸発させ、残留物を、26.7nMの内部標準(PHAUおよびCUDA)を含む100μLのメタノールに再懸濁した。試料をその後、5分間、ボルテックスし、自動試料バイアルへ移動させ、分析まで-80℃で保存した。エポキシド加水分解は日常的には、この手順を用いて<3%である。
【0132】
HPLC分離
試料を分析中10℃に保ち、分析物を、350μL/minの溶媒流を用いて40℃に保たれた2.0X150mm、5μm Luna(登録商標)C18(2)カラム(Phenomenex Inc., Torrance, CA)を備えたWaters Corporation 2790分離モジュールで分離した。カラムを15%Solvent A(0.1%氷酢酸を含む水)および85%Solvent B(0.1%氷酢酸を含む88:12 アセトニトリル:メタノールv/v)と平衡化した。最初の溶媒条件を、10μL試料アリコートの注入後30秒間、保持した。Solvent Bをその後、2分間目において30%、8分間目において55%、および28分間目において75%まで増加させ、続いて、100%有機物で5分間洗浄し、系を最初の条件へ戻した。
【0133】
エレクトロスプレーおよびタンデム型質量分析
オキシリピンは、陰イオン様式で操作されるエレクトロスプレーイオン源を備えたQuattro Ultimaタンデム型四極子質量分析計(Waters CorporationのMicromass(登録商標)事業部)を用いて定量された(キャピラリー電圧:-3.2kV、コーンガス:125L/h;脱溶媒ガス:650L/h;源温度:100℃;脱溶媒温度:400°;光電子増倍管電圧:650)。最適コーンおよび衝突電圧は、衝突ガスとしてアルゴンを用いて実験的に確立された(2.3X10-3Torr)。質量分析計は、選択された断片イオンが第三の四極子において検出される、多反応モニタリング(MRM)様式で操作された。イオン滞留時間は、各MRMにおける分析物の数、および任意の所与の分析物のクロマトグラフィーピークに渡る最小8つのスキャンを保証するためのチャネル間遅延に基づいて計算された。
【0134】
実施例2
この実施例は、前の実施例において考察された材料および方法を用いて行われた研究の結果を考察する。
【0135】
図2Aおよび図2Bは、滅菌生理食塩水単独で、または滅菌生理食塩水およびリポ多糖(「LPS」)を注射されたマウスにおける、8,9EETおよび8,9DHETのレベルをそれぞれ、示す。実施例1に記載されているように、マウスの群を、COX-1およびCOX-2の阻害剤、インドメタシンで、またはAUDAブチルエステル(AUBA-BE)で、またはインドメタシンおよびAUDA-BEの両方で、処置した。
【0136】
図2Aを参照して、その図の左端で示されているように、AUDA-BEまたはインドメタシンのいずれでも処置されなかったマウスは、8,9EETの検出可能なレベルを示さなかった。その図の残りにおいて表されたマウスの3つの群についての結果は、2つのバー、1つの黒色および1つの灰色、を示す。各群における黒色バーは、処置(軸上に提示されているように、AUDA-BE、インドメタシン、または両方)を受けたが、炎症性物質LPSには曝されなかったマウスに見られる8,9EETの濃度を表す。灰色バーは、対応する黒色バーにおけるマウスと同じ処置を受けたが、LPSもまた投与されているマウスについての8,9EETの濃度を示す。グラフの検討により、8,9EETの濃度が、COX-1およびCOX-2両方の阻害剤インドメタシンで、ならびにsEHI AUDA-BEで処置されたマウスにおいていずれかの作用物質単独と比較して著しく増加していることが明らかにされている。EETは抗炎症性であると考えられているため、これは、2つの作用物質が合わせて協力作用を示すことを指摘している。
【0137】
図2Bは、sEHによる8,9EETの加水分解に起因するジオールである8,9ジヒドロキシエイコサトリエン酸(「DHET」)の濃度を示す対応する一連のグラフである。グラフについてのバーは図2Aについて提示されているとおりである。グラフは、COX-1およびCOX-2の阻害剤インドメタシンおよびsEHI AUDA-BEの組み合わせが結果として、いずれかの作用物質が単独で用いられた場合の濃度と比較して、8,9DHET濃度においてより大きな減少を生じたことを示している。
【0138】
実施例3
この実施例は、疼痛刺激への応答を示すテールフリックおよび後肢引っ込め(hind paw withdrawal)研究についての材料および方法を示す。
【0139】
簡単には、マウスは12h:12hの明:暗サイクル下に置かれ、水および食物は無制限に供給される。マウスを、毎回、30分間セッションで実験チャンバーへ3日間、訓練する。次の日、ベースライン読みを採る。ビヒクル対照(オレイン酸油)をその後、次の日にscに注射し、測定値を採る。2日間後、動物に、油ビヒクルに溶解された試験化合物をsc経路を通して注射し、それらの応答を90分間後記録する。
【0140】
テールフリックおよび後肢引っ込め潜時試験を、D'Amour and Smith, J Pharmacol Exp Ther 72:74-9 (1941)およびWoolfe and McDonald, J Pharmacol Exp Ther, 80:300-7 (1944)に従って行う。テールフリックアッセイにおいて、マウスをレストレーナーに置き、30分間そのままにしておく。その後、55Cに設定された放射熱源を有するテールフリック装置上へ尾の後端を置くことにより、読みを採る。動物あたり5つの測定値を2分間隔で採る。尾を動かす潜時を記録する。後肢引っ込めアッセイにおいて、マウスを、ガラス表面をもつ実験チャンバーに置く。この表面の温度を30℃で一定に保つ。順化の30分の期間後、放射熱を後肢の足底面へ加える。動物あたり5つの測定値を2分間隔で採る。足を動かす潜時を記録する。単一因子Anovaおよびt検定解析をデータに関して実行する。
【0141】
実施例4
この実施例は鎮痛剤としてsEHIの性質を試験する研究の結果を示す。
【0142】
t検定解析は、AUDA-ブチルエステル(P=0.032)処置およびコンパウンド950(P=0.029)処置の両方がテールフリックアッセイにおいてわずかではあるが、有意な鎮痛効果を生じることを示唆している。しかしながら、後肢引っ込めアッセイにおいて、本発明者らは、ANOVA解析(p値=0.000128)により両方の阻害剤についての群間に高い有意差を見出している。コンパウンド950は、処置から4時間後有意な鎮痛効果を生じ続けさえする。これらのアッセイが動物において疼痛の誘導無しに実行されることを留意することは重要である。それゆえに、これらのアッセイは、これらの化合物の固有の鎮痛効果を測定した。
【0143】
実施例5
この実施例は、COX阻害剤の有りまたは無しで、かつsEHIの有りまたは無しで炎症性物質を投与された動物における様々な代謝産物のレベルに関する研究の結果を報告する。様々な代謝産物に関する研究を報告するこの実施例および下の他の実施例において、阻害剤の効果は、タンデム型四極子質量分析計における液体クロマトグラフィー-質量分析により65個の代謝産物に関して測定された。これらの65個から、特定の研究に関連した代謝産物が実施例において報告されている。一部の研究において、報告された代謝産物は、心臓発作または卒中のより高いリスクに関連していると考えられる、2つ、6-ケト-PGF1aおよびTXB2、を含む特定のCOX代謝産物である。他の研究において、代謝産物は、それらがいくつかの経路由来の代謝産物への阻害剤の効果を示すという理由で、選択された。
【0144】
図3は、例示COX-2阻害剤Celebrex(登録商標)有りまたは無しで、かつ例示sEHI阻害剤、AUDA-BE有りまたは無しで、リポ多糖(「LPS」)をマウスへ投与することの4つのCOX代謝産物への効果を示す。
【0145】
データは、AUDA-BEの予防的用量(20mg/Kg、または「mpk」)をCelebrex(登録商標)の非治療的用量(25mg/Kg)と共に用いることが炎症促進性代謝産物PGE2およびPGD2を低減させるが、代謝産物6-ケト-PGF1aおよびTXB2のレベルに影響を及ぼさないことを示している。6-ケト-PGF1aおよびTXB2は、卒中および心臓発作のリスクの増加に結びつけられているPGI2およびTXA2の安定な代謝産物である。併用療法は、Celebrex(登録商標)の治療的用量(100mg/Kg)を用いる場合よりPGE2およびPGD2においてより大きな低減を示す。
【0146】
図3に報告された研究は、第二の例示sEH阻害剤、コンパウンド950として知られたポリエーテル化合物を用いて繰り返され、同様の結果であった。
【0147】
実施例6
この実施例は、例示COX-1/2阻害剤インドメタシン有りまたは無しで、例示sEHI阻害剤、AUDA-BE有りまたは無しで、リポ多糖(「LPS」)をマウスへ投与することの5つの代謝産物への効果に関する研究の結果を報告する。
【0148】
研究について選択された代謝産物は、アラキドン酸が代謝される異なる経路への効果を示す。ΣEpOMEおよびΣDHOMEは、P450経路の指標であり、5-HETEは、どれくらいのアラキドン酸が5-リポキシゲナーゼ経路を通過しているかの指標であり、6-ケト-PGF1aおよびPGE2は、シクロオキシゲナーゼ経路により代謝されるアラキドン酸の指標である。
【0149】
図4に示されたデータは、AUDA-BEの予防的用量(20mg/Kg、または「mpk」)を1用量のインドメタシン(100mg/Kg)と共に用いることが、炎症促進性5-LOX(代謝産物:5-HETE)経路における劇的な増加を引き起こすことなく、炎症促進性代謝産物PGE2を低減させることを示している。AUDA-BE(20mg/Kg)の同じ代謝産物への効果もまた測定されている。グラフの読みやすさを維持するために、これらの結果をその図に含めなかったが、ここに要約する:ΣEpOME=122±8%、ΣDHOME=141±15%、5-HETE=262±21%;6-ケト-PGF1a=128±6%、およびPGE2=241±2%。
【0150】
実施例7
この実施例は、例示COX-2阻害剤Vioxx(登録商標)有りまたは無しで、例示sEHI阻害剤、AUDA-BE有りまたは無しで、リポ多糖(「LPS」)をマウスへ投与することの4つのCOX代謝産物への効果を報告する。
【0151】
図5に示されているように、データは、AUDA-BEの予防的用量(20mg/Kg)をVioxx(登録商標)を非最適の治療的用量(10mg/Kg)と共に用いることが炎症促進性代謝産物PGE2およびPGD2を低減させるが、代謝産物6-ケト-PGF1aおよびTXB2に影響を及ぼさないことを示している。6-ケト-PGF1aおよびTXB2は、卒中および心臓発作のリスクの増加に結びつけられているPGI2およびTXA2の安定な代謝産物である。阻害剤の組み合わせは、Vioxx(登録商標)のより最適な治療的用量(25mg/Kg)の単独での使用よりCOX-2阻害剤の非最適な治療的用量でPGE2およびPGD2におけるより大きな低減を与える。
【0152】
図5に報告された研究は、第二の例示sEH阻害剤、コンパウンド950として知られたポリエーテル化合物を用いて繰り返され、同様の結果であった。
【0153】
実施例8
この実施例は、COX阻害剤または例示sEHI、または両方が投与されている動物における疼痛耐性に関する研究の結果を報告する。
【0154】
図6は、オレイン酸油(ビヒクル)におけるリポ多糖(「LPS」)、LPSおよび最適用量未満のCOX-2阻害剤Vioxx(登録商標)、LPSおよび治療的用量のVioxx(登録商標)、LPSおよび例示sEHI阻害剤AUDA-BE、またはLPSならびに最適用量未満のVioxx(登録商標)およびAUDA-BEの両方の組み合わせを投与されたマウスの疼痛耐性への効果を示す。
【0155】
図5および図6に用いられた用量は同じである。図6に示されたデータは、AUDA-BEの予防的用量(20mg/Kg)をVioxx(登録商標)の最適治療的用量(10mg/Kg)未満と共に用いることが疼痛への耐性を増加させたことを示している。2つの型の阻害剤の組み合わせがVioxx(登録商標)の治療的用量(25mpk)のと等しく疼痛への耐性を増加させた。
【0156】
図6に報告された研究はインドメタシンを用いて繰り返され、同様の結果を示したが、おそらくVioxx(登録商標)と比較したインドメタシンのより短い半減期のせいで、異なる時間経過であった。
【0157】
実施例9
この実施例は、FLAP阻害剤MK886有りまたは無しで、かつ例示sEHI阻害剤AUDA-BE有りまたは無しで、リポ多糖(「LPS」)をマウスへ投与することの5つの代謝産物への効果を報告する。結果は図7に示されている。
【0158】
データは、AUDA-BEの予防的用量(20mg/Kg)を1用量のMK886(50mg/Kg)と共に用いることが、炎症促進性プロスタグランジン代謝産物6-ケト-PGF1aおよびPGE2における劇的増加を引き起こすことなく、炎症性代謝産物5-HETEを低減させたことを示している。AUDA-BE(20mg/Kg)の同じ代謝産物への効果もまた測定されている。グラフの読みやすさを維持するために、これらの結果をその図に含めなかったが、ここに要約する:ΣEpOME=122±8%、ΣDHOME=141±15%、5-HETE=262±21%;6-ケト-PGF1a=128±6%、およびPGE2=241±2%。
【0159】
実施例10
ウェスタンイムノブロット分析を、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)を検出するために肝臓から単離されたタンパク質について行った。単離されたタンパク質を、10%SDS-PAGE上の電気泳動により分離し、その後、ポリフッ化ビニリデン膜(Immobilon P, Millipore Corp., Bedford, MA)上へ転写した。COX-2タンパク質をCayman Chemicalからのポリクローナル抗体で検出した。膜を1:10,000希釈でのウサギ抗マウスHRP連結IgG(Amersham, Arlington Heights, IL)とインキュベートし、洗浄し、その後、二次抗体と接触させ、製造会社の使用説明書に従って、SuperSignal(登録商標)West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL)、化学ルミネセンス検出系を用いて可視化した。免疫検出可能なバンドを、Kodak 1.D Image Analysis System v. 3.5.4(Kodak, Rochester, NY)を用いてデンシトメトリーにより定量した。
【0160】
図8は、ビヒクルのみに、リポ多糖(「LPS」)に、例示COX-2阻害剤に、COX-2阻害剤+LPSに、例示sEHI阻害剤AUDA-BEに、sEHI+LPSに、またはCOX-2阻害剤、sEHI、およびLPSに、曝されたマウスの肝臓におけるCOX-2タンパク質レベルへの効果を示す。ビヒクル単独の投与に関して示すバーについての、およびCOX-2阻害剤単独についてのエラーバーは小さすぎて描かれない。
【0161】
図8に示されているように、50mg/Kg(「mpk」)のCOX-2阻害剤およびLPSを投与されたマウスは、対照マウスの約6倍COX-2量、おおよそLPSおよびビヒクル単独を投与されたマウスと同じ、を有したが、sEHIおよびLPSを投与されたマウスは、対照マウスの約4倍のCOX-2量、有意な低減、を示した。さらに、LPSならびにCOX-2阻害剤およびsEHIの両方を投与されたマウスは、LPSおよび(a)COX-2阻害剤かまたは(b)sEHIかのいずれかを投与されたマウスより低いレベルのCOX-2を有した。LPSを単独での同じ量(50mg/Kg)のCOX-2阻害剤と共に投与することが、COX-2阻害剤無しで投与されたLPSにより誘導されるものより下に、誘導されるCOX-2の量を低減させなかったため、これは驚くべき結果であった。
【0162】
図8に報告された研究は、Vioxx(登録商標)を、インドメタシンを、およびコンパウンド950を用いて繰り返され、同様の結果であった。
【0163】
本明細書に記載された実施例および態様は例証のみを目的とすること、それらを照らしての様々な改変または変化は当業者に連想され、本出願の真意および範囲、ならびに添付された特許請求の範囲の範囲の内に含まれうることは理解されている。本明細書に引用されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、すべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】アラキドン酸が身体において代謝されるカスケードの図解を示す。「5-LOX」は炎症促進性酵素アラキドン酸5-リポキシゲナーゼである。「COX」はシクロオキシゲナーゼ経路である。「CYP4A」はチトクロムP4504Aである。「CYP2C」はチトクロムP450 2Cである。「sEH」は可溶性エポキシドヒドロラーゼである。
【図2】図2Aおよび2Bは滅菌生理食塩水単独(■)またはリポ多糖(「LPS」)を含む滅菌生理食塩水(□)を注射されたマウスにおける8,9EETおよび8,9DHETのレベルをそれぞれ示す。バーは平均濃度プラスまたはマイナス標準偏差に相当する。各バーについてマウスN=4。マウスを、COX-1およびCOX-2の阻害剤インドメタシンで、または12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)-ドデカン酸ブチルエステル(「AUBA-BE」)で、またはインドメタシンおよびAUDA-BEの両方で処置された。
【図3】COX2阻害剤Celebrex(登録商標)をsEH阻害剤12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)-ドデカン酸ブチルエステル(「AUBA-BE」)有りまたは無しで投与することの4つのCOX代謝産物への効果を示す。水平軸:COX代謝産物6-ケト-PGF1a、TXB2、PGD2、およびPGE2についてのデータ。垂直軸:リポ多糖(「LPS」)を含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置を受けた試験動物における代謝産物のパーセンテージを描く。データは、LPSへの曝露(10mg/Kg i.p.)後の平均±SD(n=3)マウス血漿濃度を表す。白色バー:LPS+ビヒクル、斜交平行線模様のバー:LPS+Celebrex(登録商標)(100mg/Kg)、灰色バー:LPS+Celebrex(登録商標)(25mg/Kg);縞模様のバー:AUDA-BE(20mg/Kg)、および黒色バー:LPS+Celebrex(登録商標)(25mg/Kg)+AUDA-BE(20mg/Kg)。
【図4】COX1/COX2阻害剤インドメタシンをsEH阻害剤12-(3-アダマンタン-1-イル-ウレイド)-ドデカン酸ブチルエステル(「AUBA-BE」)有りまたは無しで投与することの5つの代謝産物への効果を示す。水平軸:代謝産物EpOME、DHOME、5-HETE、6-ケト-PGF1a、およびPGE2についてのデータ。垂直軸:リポ多糖(「LPS」)を含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置を受けた試験動物における代謝産物のパーセンテージを描く。データは、LPSへの曝露(10mg/Kg i.p.)後の平均±SD(n=4)マウス血漿濃度を表す。白色バー:LPS+ビヒクル、点々のあるバー:生理食塩水+インドメタシン(100mg/Kg、皮下に(「s.c.」または「sc」)投与される)、斜交平行線模様のバー:LPS+インドメタシン(100mg/Kg s.c.);黒色バー:LPS+インドメタシン(50mg/Kg s.c.)+AUDA-BE(20mg/Kg s.c.)。
【図5】COX2阻害剤Vioxx(登録商標)をsEH阻害剤AUDA-BE有りまたは無しで投与することの4つのCOX代謝産物への効果を示す。水平軸:COX代謝産物6-ケト-PGF1a、TXB2、PGD2、およびPGE2についてのデータ。垂直軸:リポ多糖(「LPS」)を含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置を受けた試験動物における代謝産物のパーセンテージを描く。データは、LPSへの曝露(10mg/Kg i.p.)後の平均±SD(n=4)マウス血漿濃度を表す。白色バー:LPS+ビヒクル、斜交平行線模様のバー:LPS+Vioxx(登録商標)(25mg/Kg、皮下に(「s.c.」または「sc」)投与される)、灰色バー:LPS+Vioxx(登録商標)(10mg/Kg sc);縞模様のバー:AUDA-BE(20mg/Kg sc)、および黒色バー:LPS+Vioxx(登録商標)(10mg/Kg sc)+AUDA-BE(20mg/Kg sc)。
【図6】阻害剤で予防的に処置され、その後リポ多糖(「LPS」)に曝露された動物の後肢引っ込めアッセイへの様々な阻害剤または阻害剤の組み合わせの効果を示す。水平軸:疼痛耐性を変化させるための処置。垂直軸:リポ多糖(「LPS」)を含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置およびLPSを受けた試験動物における疼痛耐性のパーセンテージを描く。データは、足攣縮が見られるまでの平均±SD(n=4)時間を表す。LPSはマウスを疼痛に対してより敏感にさせるが、データは、アッセイにおいて阻害剤が疼痛刺激に対する動物の応答を減少させることを示している。白色バー:ビヒクル(オレイン酸油、皮下に(「s.c.」または「sc」)投与される)。斜交平行線模様のバー:25mg/Kg scにおけるVioxx(登録商標)で処置された動物。灰色バー:10mg/Kg scにおけるVioxx(登録商標)で処置された動物。縞模様のバー:25mg/Kg scにおけるAUDA-BEで処置された動物。黒色バー:10mg/Kg scにおけるVioxx(登録商標)および20mg/Kg scにおけるAUDA-BEで処置された動物。
【図7】FLAP阻害剤MK886をsEH阻害剤AUDA-BE有りまたは無しで投与することの5つの代謝産物への効果を示す。水平軸:代謝産物EpOME、DHOME、5-HETE、6-ケト-PGF1a、およびPGE2についてのデータ。垂直軸:リポ多糖(「LPS」)を含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置を受けた試験動物における代謝産物のパーセンテージを描く。データは、LPSへの曝露(10mg/Kg i.p.)後の平均±SD(n=4)マウス血漿濃度を表す。白色バー:LPS+ビヒクル、点々のあるバー:生理食塩水+MK886(50mg/Kg、皮下に(「s.c.」または「sc」)投与される)、斜交平行線模様のバー:LPS+MK886(50mg/Kg sc);黒色バー:LPS+MK886(50mg/Kg sc)+AUDA-BE(20mg/Kg sc)。
【図8】様々な処置を受けたマウスの肝臓におけるCOX2タンパク質の誘導を示す。水平軸:マウスに施された処置。第一カラム:ビヒクル(オレイン酸、皮下に(「s.c.」または「sc」)投与される)。第二カラム:リポ多糖(「LPS」、10mg/Kg i.p.)およびビヒクル。第三カラム:Celebrex(登録商標)(100mg/Kg sc)。第四カラム:Celebrex(登録商標)(100mg/Kg sc)+LPS(10mg/Kg i.p.)。第五カラム:AUDA-BE(20mg/Kg sc)。第六カラム:AUDA-BE(20mg/Kg sc)+LPS(10mg/Kg i.p.)。第七カラム:AUDA-BE(20mg/Kg sc)、Celebrex(登録商標)(50mg/Kg sc)+LPS(10mg/Kg i.p.)。垂直軸:LPSを含まないビヒクルを受けた対照マウスと比較した、指定された処置を受けた試験動物における誘導されたタンパク質のパーセンテージを描く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)を阻害する第一酵素阻害剤、ならびにシクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、および5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)からなる群より選択される1つまたは複数の酵素を阻害する第二酵素阻害剤を含む組成物。
【請求項2】
第二酵素阻害剤がCOX-2を阻害する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第二酵素阻害剤が、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、およびロフェコキシブからなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
第二酵素阻害剤が、5-LOXの直接的阻害剤、および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質を阻害することにより5-LOXを阻害する阻害剤の群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第二阻害剤がCOX-2および5-LOXの両方を阻害する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
COX-2および5-LOXの阻害剤がリコフェロン(licofelone)およびテポキサリン(tepoxalin)からなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
第二酵素阻害剤が、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
シス-エポキシエイコサトリエン酸をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAおよびEPAの両方のエポキシドをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
第一酵素阻害剤が、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
第一酵素阻害剤がポリエーテル二次ファルマコフォアをさらに有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
第二酵素阻害剤がCOX-2を阻害する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
第二酵素阻害剤が5-LOXを阻害する、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
第二酵素阻害剤がCOX-2および5-LOXの両方を阻害する、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
シス-エポキシエイコサトリエン酸をさらに含む、請求項12記載の組成物。
【請求項17】
第一酵素阻害剤が、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する、請求項12記載の組成物。
【請求項18】
第一酵素阻害剤がポリエーテル二次ファルマコフォアを有する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
第二阻害剤が、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項20】
以下である、身体において滞留時間をもつ第一酵素阻害剤の、被験体における効果を増加させるための方法であって:
該被験体は、(a)シクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)、またはこれらの酵素の組み合わせ、および(b)可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)からなる群より選択される酵素の活性を阻害する第一酵素阻害剤を投与され、
該被験体の身体における該第一酵素阻害剤の滞留時間中に、該被験体は、(c)COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせ、および(d)sEHからなる群より選択される酵素の活性を阻害する、身体において滞留時間をもつ第二酵素阻害剤を投与され、
該第一および第二酵素阻害剤の組み合わせは、該第一酵素阻害剤が群(a)由来である場合、該第二酵素阻害剤が群(d)由来である、および該第一酵素阻害剤が群(b)由来である場合、該第二酵素阻害剤が群(c)由来であるとの条件で、第一酵素阻害剤の効果を、第二酵素阻害剤の非存在下におけるその阻害剤の効果を超えて増加させる、方法。
【請求項21】
被験体が、被験体が第二酵素阻害剤を投与されてから4時間以内に第一酵素阻害剤を投与される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤が、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、および5-リポオキシゲナーゼ活性化タンパク質の阻害剤からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤が、リコフェロンおよびテポキサリンからなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
COX-1、COX-2、5-LOX、またはこれらの酵素の組み合わせの阻害剤が、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、およびサリチル酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
sEHの阻害剤が、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する、請求項20記載の方法。
【請求項26】
sEHの阻害剤がポリエーテル二次ファルマコフォアを有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
シス-エポキシエイコサトリエン酸を被験体に投与する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項28】
ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAのエポキシドおよびEPAのエポキシドを被験体に投与する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項29】
可溶性エポキシドヒドロラーゼ(「sEH」)の阻害剤の鎮痛用量を被験体に投与する段階を含む、被験体において疼痛を低減させる方法。
【請求項30】
sEHの阻害剤が、尿素、カルバメート、およびアミドからなる群より選択される一次ファルマコフォアを有する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
sEHの阻害剤がポリエーテル二次ファルマコフォアを有する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
シス-エポキシエイコサトリエン酸を被験体に投与する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
シクロ-オキシゲナーゼ(「COX」)-1、COX-2、および5-リポキシゲナーゼ(「5-LOX」)からなる群より選択される酵素の阻害剤を投与する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
COX-1、COX-2、または5-LOXの阻害剤が、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、リコフェロン、テポキサリン、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを伴うジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセンナトリウム、ピロキシカム、トルメチンナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、および5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質の阻害剤からなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ドコサヘキサエン酸(「DHA」)もしくはエイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシド、またはDHAのエポキシドおよびEPAのエポキシドを被験体に投与する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項36】
エイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシドおよびドコサヘキサエン酸(「DHA」)のエポキシドからなる群より選択されるエポキシドの有効量を哺乳動物に投与し、それにより疼痛または炎症を低減させる段階を含む、それを必要としている哺乳動物において疼痛または炎症を低減させる方法。
【請求項37】
エポキシドがEPAのエポキシドである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
エポキシドがDHAのエポキシドである、請求項36記載の方法。
【請求項39】
EPAのエポキシドおよびDHAのエポキシドの両方を投与する段階を含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤を投与する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
(a)エイコサペンタエン酸(「EPA」)のエポキシドおよびドコサヘキサエン酸(「DHA」)のエポキシドからなる群より選択されるエポキシド、ならびに(b)薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物。
【請求項42】
エポキシドがEPAのエポキシドである、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
エポキシドがDHAのエポキシドである、請求項41記載の組成物。
【請求項44】
EPAのエポキシドおよびDHAのエポキシドの両方を含む、請求項41記載の組成物。
【請求項45】
可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤をさらに含む、請求項41記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−526894(P2008−526894A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550577(P2007−550577)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/000914
【国際公開番号】WO2006/086108
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(308001710)レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】