説明

CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させる方法及び前記方法を実施するためのチャンバ

【課題】CVDを用いて半導体ウェハに堆積させる層の厚さの均一性を改善するために簡単に実現することができる方法を提供する。
【解決手段】平面Eと窓5との間の距離Dは前記窓5の中央領域7において及び前記窓5の周辺領域8において外側が内側よりも大きく、かつ前記距離Dの半径方向のプロフィールの前記中央領域7と前記周辺領域8との境界部における接線は前記平面と共に15度以上でかつ25度以下の角度を形成するように選択することにより、堆積ガスが前記半導体ウェハ4に案内される速度を変更し、その際、前記窓5の中央領域7は前記半導体ウェハ4をカバーする前記窓5の内部領域であり、かつ前記窓5の周辺領域8は前記半導体ウェハ4をカバーしない前記窓の外部領域8であることを特徴とする、半導体ウェハ4に層を堆積させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバのガス入口開口部から半導体ウェハを介してチャンバのガス出口開口部まで堆積ガスを案内するチャンバ中で、CVD(chemical vapor deposition)を用いて半導体ウェハに層を堆積させる方法に関し、その際、前記堆積ガスは、上側が熱放射線に対して透過性の窓により区切られている通路を通して案内される。
【背景技術】
【0002】
CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させるためのチャンバの典型的構造は、例えばUS 6,325,858 B1に記載されている。前記チャンバは、上半分と下半分とに分けられている。この上半分はカバーにより閉鎖されていて、前記カバーは上側ドームとも言われる。前記カバーは、前記カバーの側壁を形成するベースと、熱放射線に対して透過性である石英からなる窓からなる。前記ベースは、前記チャンバの側壁上に裁置され、前記側壁はガス入口開口部及び前記ガス入口開口部とは反対側に配置されたガス出口開口部を備えている。前記チャンバの上半分と下半分との間には、被覆すべき半導体ウェハを収容するサセプタが存在する。前記サセプタは、スパイダーアームを備えた台により保持され、前記台を用いて上昇、下降及び回転させることができる。前記チャンバの下半分は、前記カバーと同様のベースプレートで閉鎖されていて、前記ベースプレートは同様に熱放射線に対して透明である。チャンバ中に置かれた半導体ウェハに層を堆積させるために、前記カバーの上方及び前記ベースプレートの下方に配置されたランプが点灯される。前記堆積ガスは、ガス入口開口部を通してガス出口開口部まで、前記半導体ウェハの上方の前記経路を通る。この場合、前記堆積ガスは上方が窓で区切られた通路を通して流れる。
【0003】
CVDを用いて前記半導体ウェハに層を堆積させる際の目標の一つは、前記の堆積された層ができる限り均一な層厚を有する必要があることである。前記層厚の変化の評価のための尺度は、前記層の最大厚さtmaxと最小厚さtmaxとの差として定義される範囲である。これにより導き出されるパラメータRは、前記差の半分と、平均厚さtmとの比をパーセントで記載し、式R=100%×(tmax−tmin)/2×tmにより計算される。従って、前記層厚は均一となればそれだけ、Rの値は小さくなる。
【0004】
US 2002/0020358 A1はCVDを用いて堆積される層の厚さの均一性の改善に専念している。そこに記載された方法は、特別な反応区域("prewafer reaction layer")の作製を有し、それにより、「エッジ効果」として公知である半導体ウェハの周辺領域での層の過度な成長に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 6,325,858 B1
【特許文献2】US 2002/0020358 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この方法は比較的手間がかかるため、本発明の課題は、CVDを用いて半導体ウェハに堆積させる層の厚さの均一性を改善するために簡単に実現することができる方法を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チャンバのガス入口開口部から半導体ウェハを介して前記チャンバのガス出口開口部まで堆積ガスが案内され、前記堆積ガスは、熱放射線に対して透過性の窓により上方が区切られかつ被覆されるべき半導体ウェハの表面がある平面Eにより下方が区切られた通路を通して供給されるチャンバ中で、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させる方法において前記平面と前記窓との間の距離Dは前記窓の中央領域において及び前記窓の周辺領域において外側が内側よりも大きく、かつ前記距離の半径方向のプロフィールの前記中央領域と前記周辺領域との境界部における接線は前記平面と共に15℃以上でかつ25℃以下の角度を形成するように選択することにより、前記堆積ガスが前記半導体ウェハに案内される速度を変更し、その際、前記窓の中央領域は前記半導体ウェハをカバーする前記窓の内部領域であり、かつ前記窓の周辺領域は前記半導体ウェハをカバーしない前記窓の外部領域であることを特徴とする、半導体ウェハに層を堆積させる方法に関する。
【0008】
発明者は、堆積速度、つまり半導体ウェハに層が堆積する速度に局所的に影響を及ぼすために、被覆されるべき半導体ウェハの表面である平面と、前記半導体ウェハの上方に配置されている窓との間の距離の半径方向のプロフィールを使用できることを見出した。前記窓と前記平面との間の前記距離は、半導体ウェハ上を流れる堆積ガスの速度にも影響を及ぼす。前記速度が大きくなればそれだけ、前記距離は小さくなる。発明者は、更に、前記平面からの距離がより大きい場合に、前記堆積速度はより低くなることを見出した。反対に、前記平面からの距離がより小さい場合には、前記堆積速度はより高くなる。前記知見に基づいて、発明者は、CVDを用いて半導体ウェハを堆積された層の厚さの変化が特にわずかであるように被覆するために、最終的に前記平面からの距離の半径方向のプロフィールをどのように構成さけなければならないかを見出した。この場合、発明者は、一定の距離の場合に、前記半導体ウェハの中央の堆積速度が、前記半導体ウェハの周辺の堆積速度よりも低いことが観察されることも考慮した。
【0009】
本発明は、堆積ガスを前記チャンバに供給するガス入口開口部、堆積ガスを前記チャンバから搬出するガス出口開口部、被覆すべき半導体ウェハを収容するサセプタ、及び熱放射線に対して透過性でありかつ前記サセプタの反対側に配置されている窓を有する、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させるためのチャンバにおいて、被覆すべき半導体ウェハの表面である平面と前記窓との間の距離は、前記窓部の中央領域において及び前記窓の周辺領域において、外側が内側よりも大きく、かつ前記距離の半径方向のプロフィールの前記中央領域と前記周辺領域との境界における接線は前記平面と共に15゜以上でかつ25℃以下の角度を形成し、その際、前記窓の中央領域は前記半導体ウェハをカバーする窓の内部領域であり、かつ前記窓の周辺領域は前記半導体ウェハをカバーしない窓の外部領域であることを特徴とする、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させるためのチャンバに関する。
【0010】
本発明を次に図面を用いてさらに詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明により構成されたチャンバの特徴の断面図を示す。
【図2】本発明により構成された窓の実施例に関する窓と平面Eとの間の間隔Dの半径方向のプロフィールを示す。
【図3】3mmの周辺部除外領域の考慮下での、本発明を使用して又は使用せずに被覆した半導体ウェハの層厚の半径方向のプロフィールを示す。
【図4】3mmの周辺部除外領域の考慮下での、本発明を使用して又は使用せずに被覆した半導体ウェハの層厚の半径方向のプロフィールを示す。
【図5】3mmの周辺部除外領域の考慮下での、本発明を使用して又は使用せずに被覆した半導体ウェハの層厚の半径方向のプロフィールを示す。
【0012】
図1によるチャンバは、前記チャンバ中へ堆積ガスを供給するためのガス入口開口部1及び前記チャンバから前記堆積ガスを搬出するためのガス出口開口部2を備えた側壁、被覆すべき半導体ウェハ4を収容するためのサセプタ3及び前記サセプタの反対側に配置されている窓5を有する。前記窓5はベース6と結合されていて、前記ベースは前記壁の側壁上に裁置されている。前記窓は熱放射線に対して透過性であり、有利に石英からなる。被覆すべき半導体ウェハの表面は、窓5からの所定の距離Dを有する平面Eを規定する。前記距離Dは、有利に25〜35mmの範囲内にある。前記ベースの下方領域は、平面Eに対して平行である。被覆すべき半導体ウェハをカバーする前記窓の部分領域は、以後、前記窓の中央領域7という。その半径は、半導体ウェハの半径に一致する。前記中央領域に接する前記窓の外側領域は、以後、前記窓の周辺領域8という。前記中央領域の幅と、前記窓の周辺領域の幅との比は、一般に1.5〜2.5の範囲内である。
【0013】
堆積ガスを前記半導体ウェハ上に導入する速度は一定ではない、それというのも前記窓と、被覆すべき半導体ウェハの表面がある平面との間の距離は変化するためである。前記距離の半径方向のプロフィールは、前記距離が前記窓の周辺領域から前記窓の中心領域へ向かって低下するように構成されている。前記速度の大きさは、図1において矢印の長さにより表されている。
【0014】
図2は、前記窓と平面Eとの間の距離Dを、本発明により構成された窓の例に関して、前記窓の中心からの距離Lの関数として、ひいては前記距離Dの半径方向のプロフィールの関数として示す。前記プロフィールは、前記窓の中心領域が前記窓の周辺領域に接する箇所での、前記距離Dの半径方向のプロフィールの接線が平面Eと共に15゜以上で25℃以下の角度を形成することを特徴とする。
【0015】
前記窓の特に有利な実施態様は、前記距離が外側から内側への方向で見て次のように低下するような実施態様である:前記窓の中心領域において、前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminは0.5mm以上でかつ2mm以下であり、かつ前記窓の周辺領域において、前記窓の中央領域での前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminは0.5mm以上でかつ2mm以下である。
【0016】
前記窓の中央領域の幅と比べて前記窓の周辺領域のわずかな幅のために、前記窓の周辺領域における距離の変化は、前記窓の中央領域における距離の変化よりも大きい。前記距離は、外側から内側への方向で見て、連続的に減少する必要はない。この距離は、特に、図2により半径方向のプロフィールが示すように、中心領域の内側の部分において、一定のままであってもよい。
【実施例】
【0017】
実施例/比較例:
直径300mmのシリコンからなる半導体ウェハに、それぞれシリコンからなるエピタキシャル層を堆積させた。前記窓の構成が、前記半導体ウェハに堆積される層の厚さの半径方向のプロフィールにどのように作用するかを試験した。本発明の場合に、距離Dの平面Eからの半径方向の推移が図2の図面に対応する窓だけを構成した。前記窓を備えたチャンバ中で被覆された半導体ウェハの得られた層の厚さのプロフィールは図3で示した(実施例)。
【0018】
図4に層厚のプロフィールが示されている半導体ウェハの被覆のために使用される窓(比較例1)は、次の特性を有していた:平面Eからの前記窓の距離Dの半径方向のプロフィールは中央領域と周辺領域との境界での接線が、平面Eと共に9.2゜の角度を形成するように構成された。中央領域において、前記窓は、平面Eからの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、値2.3mmであるように構成された。周辺領域において、前記窓は、平面Eからの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、値2.9mmであるように構成された。
【0019】
図5に層厚のプロフィールが示されている半導体ウェハの被覆のために使用される窓(比較例2)は、次の特性を有していた:平面Eからの前記窓の距離Dの半径方向のプロフィールは中央領域と周辺領域との境界での接線が、平面Eと共に32.5゜の角度を形成するように構成された。中央領域において、前記窓は、平面Eからの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、値0.3mmであるように構成された。周辺領域において、前記窓は、平面Eからの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、値2.2mmであるように構成された。
【0020】
前記層厚のプロフィールの比較が示すように、直径dのプロフィールにおいて堆積された層の厚さtは、本発明により被覆された半導体ウェハの場合に、比較例の場合よりも著しく変動が小さい。比較例に関して、外側が明らかに減少する層厚(比較例1)及び外側が明らかに増加する層厚(比較例2)が、特に目立っている。堆積された層の厚さの変化を定量化するために、冒頭に記載されたパラメータRを測定し、その際、3mmの周辺部除外領域の考慮下で96箇所に分配された位置で測定した平均層厚tmとして前記層厚の算術平均が使用された。この結果を次の表にまとめた:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバのガス入口開口部から半導体ウェハを介して前記チャンバのガス出口開口部まで堆積ガスが案内され、前記堆積ガスは、熱放射線に対して透過性の窓により上方が区切られかつ被覆されるべき半導体ウェハの表面がある平面Eにより下方が区切られた通路を通して供給されるチャンバ中で、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させる方法において、前記平面と前記窓との間の距離Dは前記窓の中央領域において及び前記窓の周辺領域において外側が内側よりも大きく、かつ前記距離の半径方向のプロフィールの前記中央領域と前記周辺領域との境界部における接線は前記平面と共に15℃以上でかつ25℃以下の角度を形成するように選択することにより、前記堆積ガスが前記半導体ウェハに案内される速度を変更し、その際、前記窓の中央領域は前記半導体ウェハをカバーする前記窓の内部領域であり、かつ前記窓の周辺領域は前記半導体ウェハをカバーしない前記窓の外部領域である、半導体ウェハに層を堆積させる方法。
【請求項2】
前記窓の中央領域において、前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、0.5mm以上でありかつ2mm以下である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記窓の周辺領域において、前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、0.5mm以上でありかつ2mm以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
堆積ガスを前記チャンバに供給するガス入口開口部、堆積ガスを前記チャンバから搬出するガス出口開口部、被覆すべき半導体ウェハを収容するサセプタ、及び熱放射線に対して透過性でありかつ前記サセプタの反対側に配置されている窓を有する、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させるためのチャンバにおいて、被覆すべき半導体ウェハの表面がある平面と前記窓との間の距離は、前記窓部の中央領域において及び前記窓の周辺領域において、外側が内側よりも大きく、かつ前記距離の半径方向のプロフィールの前記中央領域と前記周辺領域との境界における接線は前記平面と共に15゜以上でかつ25℃以下の角度を形成し、その際、前記窓の中央領域は前記半導体ウェハをカバーする窓の内部領域であり、かつ前記窓の周辺領域は前記半導体ウェハをカバーしない窓の外部領域である、CVDを用いて半導体ウェハに層を堆積させるためのチャンバ。
【請求項5】
前記窓の中央領域において、前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、0.5mm以上でありかつ2mm以下である、請求項4記載のチャンバ。
【請求項6】
前記窓の周辺領域において、前記平面からの前記窓の最も大きな距離と最も小さな距離との差Dmax−Dminが、0.5mm以上でありかつ2mm以下である、請求項4又は請求項5記載のチャンバ。
【請求項7】
前記距離Dが25〜35mmである、請求項4から6までのいずれか1項記載のチャンバ。
【請求項8】
層の厚さの変数を表しかつ式R=100%×(tmax−tmin)/2×tmにより計算されるパラメータRは0.5%より小さく、前記式中でtmaxは前記層の最も大きな厚さを表し、tminは前記層の最も小さな厚さを表し、かつtmは前記層の平均厚さを表す、層の厚さが不均一であるエピタキシャル層を備えた半導体ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−62535(P2010−62535A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−164437(P2009−164437)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】