説明

DCDCコンバータ

【課題】低コストで、配線抵抗によるDCDCコンバータの出力電圧の電圧降下を適切に補償できるようにする。
【解決手段】DCDCコンバータ12は、イグニッションスイッチ16を介して低圧バッテリ13に接続され、イグニッションスイッチ16により始動する。変圧部21は、高圧バッテリ11から入力される電圧を変圧して低圧バッテリ13に供給する。制御回路24は、イグニッションスイッチ16が接続されたときにイグニッションスイッチ16を介して低圧バッテリ13から入力される電圧、並びに、変圧部21の出力電圧および出力電流に基づいて、変圧部21と低圧バッテリ13間の配線抵抗を算出し、算出した配線抵抗に基づいて変圧部21の出力電圧の指令値を補正し、変圧部21の出力電圧を制御する。本発明は、例えば、電動車両用のDCDCコンバータに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータに関し、特に、配線抵抗による電圧降下を補償することが可能なDCDCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle、電気自動車)、HEV(Hybrid Electric Vehicle、ハイブリッドカー)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、プラグインハイブリッドカー)などの電動車両には、高圧バッテリと低圧バッテリの2種類のバッテリが通常設けられる。
【0003】
高圧バッテリは、例えば、電動車両の車輪を駆動し走行させるための主動力モータ、A/C(エアコンディショナ)のコンプレッサモータなどの高電圧かつ大電力の負荷用の電源として主に使用される。一方、低圧バッテリは、例えば、各種のECU(Electronic Control Unit)、EPS(電動パワーステアリング)、電動ブレーキ、カーオーディオ機器、ワイパー、パワーウインドウ用のモータ、照明ランプなどの低電圧の負荷用の電源として主に使用される。
【0004】
また、この低圧バッテリの充電は、通常、高圧バッテリの電圧をDCDCコンバータにより変圧して供給することにより行われる。そして、DCDCコンバータと低圧バッテリとの間の配線抵抗による電圧降下が大きい場合、安定して低圧バッテリを充電できるように、電圧降下分を補償するようDCDCコンバータの出力電圧を制御する必要がある。
【0005】
そこで、従来、DCDCコンバータとその負荷である電子機器の入力端との間を電圧検出用の専用のケーブルで接続し、電子機器への入力電圧を直接測定し、測定した入力電圧が所望の値になるように制御することで、配線抵抗による電圧降下を補償することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、特許文献1では、DCDCコンバータの出力電流に応じて、出力電流と配線抵抗により発生する電圧降下を補償するように、DCDCコンバータの出力電圧を制御することが提案されている。さらに、特許文献2では、特許文献1に記載のDCDCコンバータと同様に、出力電流に応じて電圧降下を補償するように出力電圧を制御するのに加えて、配線抵抗が異なる複数の装置に対応できるように、可変抵抗を用いて、出力電流に対する電圧補正の係数を調整可能にすることが提案されている。
【0007】
しかしながら、DCDCコンバータの負荷の入力電圧を直接測定して、出力電圧を制御するようにした場合、DCDCコンバータと負荷を接続する配線が余分に必要になり、必要なコストが上昇する。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、適用する装置の配線抵抗を事前に測定し、装置毎に可変抵抗値を調整しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−274641号公報
【特許文献2】特開2006−180603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、配線抵抗によるDCDCコンバータの出力電圧の電圧降下を適切に補償できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面のDCDCコンバータは、始動スイッチを介してバッテリに接続され、前記始動スイッチにより始動するDCDCコンバータであって、入力された電圧を変圧して前記始動スイッチを介さずに前記バッテリに供給する変圧手段と、前記始動スイッチが接続されたときに前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧、並びに、前記変圧手段の出力電圧および出力電流に基づいて、前記変圧手段と前記バッテリ間の配線抵抗を算出する配線抵抗演算手段と、算出された前記配線抵抗に基づいて前記変圧手段の出力電圧の指令値を補正し、前記変圧手段の出力電圧を制御する出力電圧制御手段とを備える。
【0012】
本発明の一側面のDCDCコンバータにおいては、始動スイッチが接続されたときに前記始動スイッチを介してバッテリから入力される電圧、並びに、変圧手段の出力電圧および出力電流に基づいて、前記変圧手段と前記バッテリ間の配線抵抗が算出され、算出された前記配線抵抗に基づいて前記変圧手段の出力電圧の指令値が補正され、前記変圧手段の出力電圧が制御される。
【0013】
従って、低コストで、配線抵抗によるDCDCコンバータの出力電圧の電圧降下を適切に補償することが可能になる。
【0014】
この始動スイッチは、例えば、電動車両のイグニッションスイッチまたはコントロールリレーにより構成される。このバッテリは、例えば、電動車両の低圧系の負荷用のバッテリにより構成される。この変圧手段は、例えば、スイッチング素子を用いたハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式などの電力変換回路により構成される。この配線抵抗演算手段、出力電圧制御手段は、例えば、マイクロコンピュータ、プロセッサなどにより構成される。
【0015】
前記配線抵抗演算手段には、算出した前記配線抵抗を記録するとともに、前記始動スイッチが接続されたときに前記配線抵抗がすでに記録されている場合、前記配線抵抗の演算を行わず、前記出力電圧制御手段には、記録されている前記配線抵抗に基づいて前記変圧手段の出力電圧の指令値を補正させることができる。
【0016】
これにより、配線抵抗の演算回数を削減することができる。
【0017】
前記配線抵抗演算手段には、前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧が所定の目標電圧の範囲から外れた場合、前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧、並びに、前記変圧手段の出力電圧および出力電流に基づいて、前記配線抵抗を再演算させることができる。
【0018】
これにより、常に配線抵抗を適切な値に保ち、配線抵抗によるDCDCコンバータの出力電圧の電圧降下を、より適切に補償することができる。
【0019】
前記配線抵抗演算手段には、前記始動スイッチが接続されたときに前記バッテリの負荷が所定の閾値以上であるとき、前記配線抵抗の演算を行わずに、前記配線抵抗を予め定められた値に設定する。
【0020】
これにより、求めた配線抵抗の誤差が大きくなり、DCDCコンバータの出力電圧の電圧降下の補償が、不適切に行われることが防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、配線抵抗によるDCDCコンバータの出力電圧の電圧降下を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した車載システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用したDCDCコンバータの第1の実施の形態を示す回路図である。
【図3】DCDCコンバータの制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】マイクロコンピュータの機能の構成例を示すブロック図である。
【図5】制御回路により実行される電圧指令処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明を適用した車載システムの第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用したDCDCコンバータの第2の実施の形態を示す回路図である。
【図8】DCDCコンバータの制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図9】マイクロコンピュータの機能の構成例を示すブロック図である。
【図10】制御回路により実行される電圧指令処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.変形例
【0024】
<1.第1の実施の形態>
まず、図1乃至図5を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0025】
[車載システム1の構成例]
図1は、本発明を適用した車載システムの一実施の形態を示すブロック図である。車載システム1は、EV、HEV、PHEVなどの電動車両に設けられるシステムである。車載システム1は、高圧バッテリ11、DCDCコンバータ12、低圧バッテリ13、電源マネージメントECU14、低圧負荷15−1乃至15−n、および、イグニッションスイッチ16を含むように構成される。電源マネージメントECU14、および、低圧負荷15−1乃至15−nは、車内LAN(Local Area Network)17を介して相互に接続され、CAN(Controller Area Network)通信により各種のデータの送受信を行う。
【0026】
高圧バッテリ11は、所定の電圧の直流電力をDCDCコンバータ12、および、図示せぬ高圧負荷に供給する。また、高圧バッテリ11は、車載システム1の外部に接続される充電器2により充電される。
【0027】
DCDCコンバータ12は、高圧バッテリ11から供給される直流電力の電圧を変換して、電圧を変換した直流電力を低圧バッテリ13に供給し、低圧バッテリ13を充電する。また、DCDCコンバータ12は、電圧を変換した直流電力を電源マネージメントECU14、および、低圧負荷15−1乃至15−nに供給する。
【0028】
低圧バッテリ13は、所定の電圧の直流電力を電源マネージメントECU14、および、低圧負荷15−1乃至15−nに供給する。すなわち、電源マネージメントECU14および低圧負荷15−1乃至15−nは、DCDCコンバータ12からの電力および低圧バッテリ13からの電力により駆動される。
【0029】
また、低圧バッテリ13は、イグニッションスイッチ16を介して、所定の電圧の直流電力をDCDCコンバータ12に供給し、DCDCコンバータ12は、その低圧バッテリ13からの電力により駆動される。従って、DCDCコンバータ12は、イグニッションスイッチ16が接続されたときに始動し、イグニッションスイッチ16が切断されたときに停止する。
【0030】
なお、以下、DCDCコンバータ12の出力部と低圧バッテリ13との間の配線抵抗を、配線抵抗Rと称するとともに、配線抵抗Rの抵抗値をRで表す。
【0031】
電源マネージメントECU14は、電動車両の電源を制御するECUであり、例えば、高圧バッテリ11および低圧バッテリ13の充電および放電を制御したり、高圧バッテリ11および低圧バッテリ13の状態を監視したりする。また、電源マネージメントECU14は、車内LAN17を介して、充電器2に接続され、充電器2と各種のデータの送受信を行う。
【0032】
また、電源マネージメントECU14は、高圧バッテリ11が充電中であるか否かを示す信号をDCDCコンバータ12に供給する。また、電源マネージメントECU14は、低圧負荷15の負荷量が所定の閾値以下であるか否か、換言すれば、低圧負荷15の負荷量が低いか否かを示す信号をDCDCコンバータ12に供給する。
【0033】
低圧負荷15−1乃至15−nは、例えば、EPS(電動パワーステアリング)、電動ブレーキ、カーオーディオ機器、ワイパー、および、電動車両の少なくとも一部を制御するECU等により構成される。
【0034】
なお、以下、低圧負荷15−1乃至15−nを個々に区別する必要がない場合、単に低圧負荷15と称する。
【0035】
イグニッションスイッチ16は、車載システム1が設けられている電動車両のエンジンまたはモータの始動スイッチに加えて、電動車両の電気系統の始動スイッチの役割も果たす。すなわち、イグニッションスイッチ16が接続されたとき(オンされたとき)、電動車両の電気系統が起動し、イグニッションスイッチ16が切断されたとき(オフされたとき)、電動車両の電気系統が停止する。また、イグニッションスイッチ16は、DCDCコンバータ12と低圧バッテリ13の間に接続されており、イグニッションスイッチ16が接続されると、イグニッションスイッチ16を介して、低圧バッテリ13からDCDCコンバータ12に駆動電力が供給される。
【0036】
なお、車載システム1が設けられている電動車両がEVである場合、イグニッションスイッチ16の代わりにコントロールリレーが設けられる。
【0037】
[DCDCコンバータ12の構成例]
図2は、DCDCコンバータ12の構成例を示す回路図である。なお、図2においては、DCDCコンバータ12の出力側に接続される電源マネージメントECU14および低圧負荷15の図示を省略している。
【0038】
DCDCコンバータ12は、変圧部21、温度センサ22、電流センサ23、および、制御回路24により構成される。
【0039】
変圧部21は、いわゆるフルブリッジ方式の直流電圧変換回路であり、フィルタ31、FET32a乃至32d、共振コイル33、トランス34、ダイオード35a,35b、コイル36、および、コンデンサ37により構成される。
【0040】
高圧バッテリ11から供給される電力は、ブリッジ接続されたFET32a乃至32dにより構成されるインバータにより交流変換される。フィルタ31は、インバータのスイッチング制御により生じる高周波のノイズを、DCDCコンバータ12の入力側から外部に漏れないように除去する役割を果たす。
【0041】
インバータにより交流変換された電力は、トランス34により電圧変換されるとともに、トランス34およびダイオード35a,35bにより構成される整流回路により直流変換される。そして、コイル36およびコンデンサ37により構成されるLCフィルタにより高調波成分が除去されて、電圧が変換された直流電力が出力される。
【0042】
なお、以下、FET32a乃至32dを個々に区別する必要がない場合、単に、FET32と称する。
【0043】
温度センサ22は、例えば、サーミスタ、熱電対などにより構成され、変圧部21の温度を検出するために設けられる。より具体的には、温度センサ22は、FET32の過熱保護のために、例えば、FET32の近傍またはFET32用の放熱器に設けられる。温度センサ22は、検出した温度を示す信号を制御回路24に供給する。
【0044】
電流センサ23は、例えば、カレントトランスまたはホール効果を用いた電流センサにより構成される。電流センサ23は、変圧部21の過電流を検出するために、変圧部21の出力部に設けられており、変圧部21の出力電流を検出し、検出した電流値を示す信号を制御回路24に供給する。
【0045】
制御回路24は、変圧部21のA点における出力電圧を検出するとともに、出力電圧を目標電圧に近づけるように、各FET32に駆動信号を供給し、FET32からなるインバータのPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。
【0046】
[制御回路24の構成例]
図3は、制御回路24の構成例を示すブロック図である。制御回路24は、入力出力回路61、マイクロコンピュータ62、EEPROM63、および、駆動回路64を含むように構成される。駆動回路64は、エラーアンプ71、PWM制御回路72、および、出力回路73を含むように構成される。
【0047】
入力出力回路61は、変圧部21の温度を示す信号を温度センサ22から取得し、マイクロコンピュータ62に出力する。また、入力出力回路61は、変圧部21の出力電流Ioを示す信号を電流センサ23から取得し、マイクロコンピュータ62に出力する。さらに、入力出力回路61は、イグニッションスイッチ16を介して低圧バッテリ13から入力される電圧(以下、IG電圧Vigと称する)、および、変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを、マイクロコンピュータ62に出力する。
【0048】
また、入力出力回路61は、高圧バッテリ11が充電中であるか否かを示す信号、および、低圧負荷15の負荷量が低いか否かを示す信号を、電源マネージメントECU14から取得し、マイクロコンピュータ62に出力する。さらに、入力出力回路61は、変圧部21の出力電圧の指令値(以下、電圧指令値と称する)をマイクロコンピュータ62から取得し、エラーアンプ71に出力する。
【0049】
マイクロコンピュータ62は、出力電圧Vo、出力電流Io、および、IG電圧Vigに基づいて、配線抵抗Rを算出し、EEPROM63に記録する。また、マイクロコンピュータ62は、変圧部21に対する電圧指令値を算出し、入力出力回路61に出力する。
【0050】
エラーアンプ71は、変圧部21のA点から入力される出力電圧Voと電圧指令値との間の誤差を算出し、算出した誤差を示す信号をPWM制御回路72に出力する。
【0051】
PWM制御回路72は、電圧指令値に対する出力電圧Voの誤差を補正するように、各FET32の駆動信号のDuty比を設定し、出力回路73に出力する。
【0052】
出力回路73は、PWM制御回路72により設定されたDuty比の駆動信号を各FET32に供給し、FET32により構成されるインバータのPWM制御を行い、変圧部21の出力電圧Voを制御する。
【0053】
[マイクロコンピュータ62の機能の構成例]
図4は、マイクロコンピュータ62の機能の構成例を示すブロック図である。マイクロコンピュータ62は、配線抵抗演算部81、電圧補正量演算部82、および、電圧指令値演算部83を含むように構成される。
【0054】
配線抵抗演算部81は、入力出力回路61を介して変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを検出し、入力出力回路61を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出し、イグニッションスイッチ16および入力出力回路61を介して低圧バッテリ13から入力されるIG電圧Vigを検出する。また、配線抵抗演算部81は、入力出力回路61を介して電源マネージメントECU14から供給される信号を取得する。さらに、配線抵抗演算部81は、出力電圧Vo、出力電流Io、および、IG電圧Vigに基づいて、配線抵抗Rを算出し、EEPROM63に記録する。また、配線抵抗演算部81は、EEPROM63から配線抵抗Rを読み出し、電圧補正量演算部82に出力する。
【0055】
電圧補正量演算部82は、入力出力回路61を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出する。また、電圧補正量演算部82は、配線抵抗Rおよび出力電流Ioに基づいて、電圧補正量Vplsを算出し、電圧指令値演算部83に出力する。
【0056】
電圧指令値演算部83は、変圧部21に対する電圧指令値Vadjを算出し、入力出力回路61を介してエラーアンプ71に出力する。
【0057】
[電圧指令処理]
次に、図5のフローチャートを参照して、制御回路24により実行される電圧指令処理について説明する。なお、この処理は、例えば、イグニッションスイッチ16が接続され、電動車両の電気系統が起動したとき開始され、イグニッションスイッチ16が切断され、電動車両の電気系統が停止したとき終了する。
【0058】
ステップS1において、配線抵抗演算部81は、配線抵抗Rを検出済みであるか否かを判定する。配線抵抗Rを検出済みであると判定された場合、処理はステップS2に進む。
【0059】
ステップS2において、配線抵抗演算部81は、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲内であるか否かを判定する。具体的には、配線抵抗演算部81は、イグニッションスイッチ16および入力出力回路61を介して低圧バッテリ13から入力されるIG電圧Vigを検出し、検出したIG電圧Vigと、所定の低圧バッテリ13の電圧の目標範囲とを比較する。そして、IG電圧Vigが低圧バッテリ13の電圧の目標範囲から外れている場合、低圧バッテリ13の電圧(≒IG電圧Vig)が目標範囲から外れていると判定し、処理はステップS3に進む。例えば、低圧バッテリ13の充電電圧が14Vである場合、IG電圧Vigが14V±1Vの範囲から外れている場合、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲から外れていると判定される。
【0060】
一方、ステップS1において、まだ配線抵抗Rを検出していないと判定された場合、ステップS2の処理はスキップされ、処理はステップS3に進む。
【0061】
ステップS3において、配線抵抗演算部81は、入力出力回路61を介して電源マネージメントECU14から供給される信号に基づいて、高圧バッテリ11を充電中、または、低圧負荷15の負荷量が低いか否かを判定する。高圧バッテリ11を充電中、または、低圧負荷15の負荷量が低いと判定された場合、処理はステップS4に進む。
【0062】
なお、高圧バッテリ11の充電中は、電動車両が停止しており、低圧負荷15がほとんど稼働していない。従って、低圧負荷15の負荷量が低いと想定することができる。
【0063】
ステップS4において、配線抵抗演算部81は、出力電圧Vo、出力電流Io、IG電圧Vigを検出する。すなわち、配線抵抗演算部81は、入力出力回路61を介して変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを検出し、入力出力回路61を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出し、イグニッションスイッチ16および入力出力回路61を介して低圧バッテリ13から入力されるIG電圧Vigを検出する。
【0064】
ステップS5において、配線抵抗演算部81は、次式(1)により、配線抵抗Rを算出する。
【0065】
R=(Vo−Vig)/Io ・・・(1)
【0066】
その後、処理はステップS7に進む。
【0067】
このように、配線抵抗Rが未検出の場合、高圧バッテリ11が充電中または低圧負荷15の負荷量が低いときには、イグニッションスイッチ16が接続され、DCDCコンバータ12が始動したときのIG電圧Vigに基づいて、配線抵抗Rが算出される。一方、高圧バッテリ11が充電中でなく、かつ、低圧負荷15の負荷量が高いときには、高圧バッテリ11の充電が開始されるか、または、低圧負荷15の負荷量が低くなってから、配線抵抗Rが検出される。
【0068】
従って、低圧負荷15の負荷量が低く、DCDCコンバータ12の出力電流Ioのほとんどが低圧バッテリ13の充電電流として使用されているときに、配線抵抗Rが検出されるため、配線抵抗Rの検出精度が向上する。
【0069】
また、すでに配線抵抗Rを検出済みであっても、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲から外れている場合、配線抵抗Rの補正(再演算)が行われる。
【0070】
一方、ステップS2において、高圧バッテリ11を充電中でなく、かつ、低圧負荷15の負荷量が高いと判定された場合、処理はステップS6に進む。
【0071】
ステップS6において、配線抵抗演算部81は、配線抵抗Rを初期値に設定する。すなわち、低圧負荷15の負荷量が高く、DCDCコンバータ12の出力電流Ioに負荷電流が多く含まれる場合、配線抵抗Rの検出精度が低下するため、配線抵抗Rは、実際の検出値ではなく、初期値に設定される。なお、この初期値は予め設定されている固定値である。その後、処理はステップS7に進む。
【0072】
ステップS7において、配線抵抗演算部81は、配線抵抗RをEEPROM63に書込む。すなわち、ステップS5で算出された配線抵抗R、または、ステップS6で設定された配線抵抗Rの初期値が、EEPROM63の所定の領域に書き込まれる。その後、処理はステップS8に進む。
【0073】
一方、ステップS1において、配線抵抗Rを検出済みであると判定され、ステップS2において、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲内であると判定された場合、ステップS3乃至S7の処理はスキップされ、処理はステップS8に進む。
【0074】
ステップS8において、配線抵抗演算部81は、配線抵抗RをEEPROM63の所定の領域から読み出す。そして、配線抵抗演算部81は、読み出した配線抵抗Rを電圧補正量演算部82に出力する。なお、一度EEPROM63から配線抵抗Rが読み出された後は、配線抵抗Rの値が変更されるまで、例えば、電圧補正量演算部82が配線抵抗Rの値を保持し、EEPROM63からの読み出しを省略するようにしてもよい。
【0075】
ステップS9において、電圧補正量演算部82は、電圧補正量Vplsを算出する。具体的には、電圧補正量演算部82は、入力出力回路61を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出し、次式(2)により、電圧補正量Vplsを算出する。
【0076】
Vpls=R×Io ・・・(2)
【0077】
すなわち、電圧補正量Vplsは、配線抵抗Rと出力電流Ioにより発生する電圧降下量と等しい。電圧補正量演算部82は、算出した電圧補正量Vplsを電圧指令値演算部83に出力する。
【0078】
ステップS10において、電圧指令値演算部83は、電圧指令値を算出する。具体的には、まず、電圧指令値演算部83は、低圧バッテリ13の充電、並びに、電源マネージメントECU14および低圧負荷15の駆動に必要なDCDCコンバータ12の変圧部21の出力電圧の指令値Vadj0を算出する。次に、電圧指令値演算部83は、次式(3)により、電圧指令値を補正する。
【0079】
Vadj=Vadj0+Vpls ・・・(3)
【0080】
すなわち、電圧指令値演算部83は、電圧指令値Vadj0に電圧補正量Vplsを加算することにより、電圧指令値Vadjを補正する。
【0081】
ステップS11において、電圧指令値演算部83は、算出した電圧指令値Vadjを、入力出力回路61を介してエラーアンプ71に出力する。これにより、DCDCコンバータ12の出力電圧Voが電圧指令値Vadjになるように、駆動回路64からFET32に供給される駆動信号が制御される。
【0082】
その後、処理はステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が実行される。
【0083】
このようにして、配線抵抗Rの検出値の誤差を小さくするとともに、常に適切な値に保つことができる。従って、装置間の配線抵抗Rの違いや配線抵抗Rの経時変化などに柔軟に対応しながら、配線抵抗RによるDCDCコンバータ12の出力電圧Voの電圧降下を適切に補償することができる。その結果、低圧バッテリ13に安定した電圧を供給することができる。
【0084】
また、専用の配線や部品等を設ける必要がないため、必要なコストを抑制することができる。
【0085】
<2.第2の実施の形態>
次に、図6乃至図10を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0086】
[車載システム101の構成例]
図6は、本発明を適用した車載システムの第2の実施の形態を示すブロック図である。なお、図中、図1と対応する部分には同じ符号を付してあり、処理が同じ部分は、その説明は繰返しになるので省略する。
【0087】
車載システム101は、図1の車載システム1と比較して、DCDCコンバータ12の代わりにDCDCコンバータ111が設けられ、バッテリセンサ112が追加されている部分が異なり、それ以外の構成は同じである。なお、図6においては、図1に図示されているイグニッションスイッチ16の図示が省略されている。また、電源マネージメントECU14、低圧負荷15−1乃至15−n、DCDCコンバータ111、および、バッテリセンサ112は、車内LAN17を介して相互に接続されており、CAN通信により各種のデータの送受信を行う。
【0088】
DCDCコンバータ111は、高圧バッテリ11から供給される直流電力の電圧を変換して、電圧を変換した直流電力を低圧バッテリ13に供給し、低圧バッテリ13を充電する。また、DCDCコンバータ111は、電圧を変換した直流電力を、電源マネージメントECU14、および、低圧負荷15−1乃至15−nに供給する。さらに、DCDCコンバータ111は、車内LAN17を介して、高圧バッテリ11を充電中であるか否かを示すデータ、および、低圧負荷15の負荷量を示すデータを電源マネージメントECU14から取得する。また、DCDCコンバータ111は、車内LAN17を介して、低圧バッテリ13の電圧を示すデータをバッテリセンサ112から取得する。
【0089】
バッテリセンサ112は、低圧バッテリ13の電圧、入力電流、および、出力電流等を検出し、車内LAN17を介して、検出結果を示すデータを各部に供給する。
【0090】
[DCDCコンバータ111の構成例]
図7は、DCDCコンバータ111の構成例を示す回路図である。なお、図中、図2と対応する部分には同じ符号を付してあり、処理が同じ部分は、その説明は繰返しになるので省略する。
【0091】
DCDCコンバータ111は、図2のDCDCコンバータ12と比較して、制御回路24の代わりに、制御回路121が設けられている点が異なり、それ以外は同様の構成を有している。
【0092】
制御回路121は、変圧部21の温度を示す信号を温度センサ22から取得する。また、制御回路121は、変圧部21の出力電流を示す信号を電流センサ23から取得する。さらに、制御回路121は、車内LAN17を介して、高圧バッテリ11を充電中であるか否かを示すデータ、および、低圧負荷15の負荷量を示すデータを電源マネージメントECU14から取得する。また、制御回路121は、車内LAN17を介して、低圧バッテリ13の電圧を示すデータをバッテリセンサ112から取得する。さらに、制御回路121は、変圧部21のA点における出力電圧を検出するとともに、出力電圧を目標電圧に近づけるように、各FET32に駆動信号を供給し、FET32からなるインバータのPWM制御を行う。
【0093】
[制御回路121の構成例]
図8は、制御回路121の構成例を示すブロック図である。なお、図中、図3と対応する部分には同じ符号を付してあり、処理が同じ部分は、その説明は繰返しになるので省略する。
【0094】
制御回路121は、図3の制御回路24と比較して、入力出力回路61、マイクロコンピュータ62、EEPROM63の代わりに、入力出力回路161、マイクロコンピュータ162、EEPROM163が設けられている点が異なり、それ以外の構成は同様である。
【0095】
入力出力回路161は、変圧部21の温度を示す信号を温度センサ22から取得し、マイクロコンピュータ162に出力する。また、入力出力回路161は、変圧部21の出力電流Ioを示す信号を電流センサ23から取得し、マイクロコンピュータ162に出力する。さらに、入力出力回路161は、変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを、マイクロコンピュータ162に出力する。また、入力出力回路161は、車内LAN17を介して、高圧バッテリ11を充電中であるか否かを示すデータ、および、低圧負荷15の負荷量を示すデータを電源マネージメントECU14から取得し、マイクロコンピュータ162に出力する。さらに、入力出力回路161は、車内LAN17を介して、低圧バッテリ13の電圧を示すデータをバッテリセンサ112から取得し、マイクロコンピュータ162に出力する。また、入力出力回路161は、変圧部21の電圧指令値をマイクロコンピュータ162から取得し、エラーアンプ71に供給する。
【0096】
マイクロコンピュータ162は、出力電圧Vo、出力電流Io、および、IG電圧Vigに基づいて、配線抵抗Rを算出し、EEPROM163に記録する。あるいは、マイクロコンピュータ162は、EEPROM162に記録されている仕向け車両識別コードと配線抵抗Rとの対応表(以下、配線抵抗対応表と称する)に基づいて、車載システム101が設けられている電動車両の配線抵抗Rを求め、EEPROM163に記録する。また、マイクロコンピュータ162は、変圧部21に対する電圧指令値を算出し、入力出力回路161に出力する。
【0097】
なお、仕向け車両識別コードは、電動車両の車種を識別するためのコードであり、各車種に対してそれぞれ異なる仕向け車両識別コードが付与されている。また、車載システム101が設けられている電動車両の車種に対応する仕向け車両識別コードが、予めEEPROM163に記録されている。
【0098】
また、配線抵抗対応表とは、仕向け車両識別コードと、各コードに対応する車種の配線抵抗Rを対応付けた一覧表である。配線抵抗対応表における各車種の配線抵抗Rには、例えば、事前に実測または計算等により求められた値が設定される。
【0099】
[マイクロコンピュータ162の機能の構成例]
図9は、マイクロコンピュータ162の機能の構成例を示すブロック図である。マイクロコンピュータ162は、配線抵抗演算部181、電圧補正量演算部182、および、電圧指令値演算部183を含むように構成される。
【0100】
配線抵抗演算部181は、入力出力回路161を介して変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを検出し、入力出力回路161を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出する。また、配線抵抗演算部181は、車内LAN17および入力出力回路161を介して、高圧バッテリ11を充電中であるか否かを示すデータ、および、低圧負荷15の負荷量を示すデータを電源マネージメントECU14から取得する。さらに、配線抵抗演算部181は、車内LAN17および入力出力回路161を介して、低圧バッテリ13の電圧を示すデータをバッテリセンサ112から取得する。
【0101】
さらに、配線抵抗演算部181は、出力電圧Vo、出力電流Io、および、IG電圧Vigに基づいて、配線抵抗Rを算出し、EEPROM163に記録する。あるいは、配線抵抗演算部181は、EEPROM162に記録されている配線抵抗対応表に基づいて、車載システム101が設けられている電動車両の配線抵抗Rを求め、EEPROM163に記録する。また、配線抵抗演算部181は、EEPROM163から配線抵抗Rを読み出し、電圧補正量演算部182に出力する。
【0102】
電圧補正量演算部182は、入力出力回路161を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出する。また、電圧補正量演算部182は、配線抵抗Rおよび出力電流Ioに基づいて、電圧補正量Vplsを算出し、電圧指令値演算部183に出力する。
【0103】
電圧指令値演算部183は、変圧部21に対する電圧指令値Vadjを算出し、入力出力回路161を介してエラーアンプ71に出力する。
【0104】
[出力制御処理]
次に、図10のフローチャートを参照して、制御回路121により実行される電圧指令処理について説明する。なお、この処理は、例えば、イグニッションスイッチ(不図示)が接続され、電動車両の電気系統が起動したとき開始され、イグニッションスイッチが切断され、電動車両の電気系統が停止したとき終了する。
【0105】
ステップS51において、配線抵抗演算部181は、低圧バッテリ13の電圧を受信できたか否かを判定する。具体的には、配線抵抗演算部181は、バッテリセンサ112が、車内LAN17を介して入力出力回路161に接続されている場合、入力出力回路161および車内LAN17を介してバッテリセンサ112と通信を行い、低圧バッテリ13の電圧の受信を試みる。そして、配線抵抗演算部181が、低圧バッテリ13の電圧を受信できたと判定した場合、処理はステップS52に進む。
【0106】
ステップS52において、配線抵抗演算部181は、配線抵抗Rを検出済みであるか否かを判定する。配線抵抗Rを検出済みであると判定された場合、処理はステップS53に進む。
【0107】
ステップS53において、配線抵抗演算部181は、図5のステップS2と同様の処理により、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲内であるか否かを判定する。低圧バッテリ13の電圧が目標範囲から外れていると判定された場合、処理はステップS54に進む。
【0108】
一方、ステップS52において、配線抵抗Rを検出済みでないと判定された場合、ステップS53の処理はスキップされ、処理はステップS54に進む。
【0109】
ステップS54において、配線抵抗演算部181は、車内LAN17および入力出力回路161を介して、高圧バッテリ11を充電中であるか否かを示すデータ、および、低圧負荷15の負荷量を示すデータを電源マネージメントECU14から取得し、高圧バッテリ11を充電中、または、低圧負荷15の負荷量が低いか否かを判定する。高圧バッテリ11を充電中、または、低圧負荷15の負荷量が低いと判定された場合、処理はステップS55に進む。
【0110】
ステップS55において、配線抵抗演算部181は、入力出力回路161を介して変圧部21のA点から入力される出力電圧Voを検出し、入力出力回路161を介して電流センサ23から供給される信号に基づいて、出力電流Ioを検出する。
【0111】
ステップS56において、配線抵抗演算部181は、次式(4)により、配線抵抗Rを算出する。
【0112】
R=(Vo−Vb)/Io ・・・(4)
【0113】
なお、Vbは、バッテリセンサ112から取得した低圧バッテリ13の電圧を示す。
【0114】
その後、処理はステップS61に進む。
【0115】
一方、ステップS54において、高圧バッテリ11を充電中でなく、かつ、低圧負荷15の負荷量が高いと判定された場合、処理はステップS57に進む。
【0116】
ステップS57において、図5のステップS6の処理と同様に、配線抵抗Rが初期値に設定される。その後、処理はステップS61に進む。
【0117】
一方、ステップS51において、配線抵抗演算部181は、バッテリセンサ112からの低圧バッテリ13の電圧の受信に失敗した場合、または、バッテリセンサ112が、車内LAN17を介して入力出力回路161に接続されていない場合、低圧バッテリ13の電圧を受信できなかったと判定し、処理はステップS58に進む。
【0118】
ステップS58において、配線抵抗演算部181は、配線抵抗Rを設定済みであるか否かを判定する。配線抵抗Rをまだ設定していないと判定された場合、処理はステップS59に進む。
【0119】
ステップS59において、配線抵抗演算部181は、仕向け車両識別コードを検出する。すなわち、配線抵抗演算部181は、EEPROM163の所定の領域から、車載システム101が設けられている電動車両の仕向け車両識別コードを読み出す。
【0120】
ステップS60において、配線抵抗演算部181は、仕向け車両識別コードに対応した配線抵抗Rを読み出す。すなわち、配線抵抗演算部181は、EEPROM163に記録されている配線抵抗対応表の中から、検出した仕向け車両識別コードに対応する配線抵抗Rを読み出す。その後、処理はステップS61に進む。
【0121】
一方、ステップS58において、配線抵抗Rを設定済みであると判定された場合、ステップS59およびステップS60の処理はスキップされ、処理はステップS61に進む。
【0122】
ステップS61において、配線抵抗演算部181は、配線抵抗RをEEPROM163に書込む。すなわち、ステップS56で算出された配線抵抗R、ステップS57で設定された配線抵抗Rの初期値、または、ステップS60で配線抵抗対応表から読み出された配線抵抗Rが、EEPROM163の所定の領域に書き込まれる。その後、処理はステップS62に進む。
【0123】
一方、ステップS53において、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲内であると判定された場合、処理はステップS62に進む。
【0124】
ステップS62乃至ステップS65の処理は、図5のステップS8乃至S11の処理と同様であり、その説明は省略する。なお、ステップS62乃至S65の処理により、EEPROM163から配線抵抗Rが読み出され、読み出された配線抵抗Rに基づいて、電圧指令値が設定され、その電圧指令値に基づいて、変圧部21の出力電圧の制御が行われる。
【0125】
その後、処理はステップS51に戻り、ステップS51以降の処理が実行される。
【0126】
このようにして、DCDCコンバータ111がバッテリセンサ112と通信可能な場合、第1の実施の形態と同様に、装置間の配線抵抗Rの違いや配線抵抗Rの経時変化などに柔軟に対応しながら、配線抵抗RによるDCDCコンバータ111の出力電圧Voの電圧降下を適切に補償することができる。
【0127】
また、DCDCコンバータ111がバッテリセンサ112と通信できなくても、配線抵抗対応表に基づいて、車載システム101が設けられている電動車両の車種に応じた配線抵抗Rが設定されるため、配線抵抗RによるDCDCコンバータ111の出力電圧Voの電圧降下を適切に補償することができる。
【0128】
さらに、専用の配線や部品等を設ける必要がないため、必要なコストを抑制することができる。
【0129】
<3.変形例>
以上の説明では、低圧バッテリ13の電圧が目標範囲から外れた場合に、配線抵抗Rを再検出する例を示したが、例えば、配線抵抗Rは温度により変化するため、定期的に配線抵抗Rを検出するようにしてもよい。
【0130】
また、高圧バッテリ11を充電中であるか否かの判定を、家庭用のコンセントからの電力により充電している場合にDCDCコンバータの入力電圧に現れる50Hzまたは60Hzのリプル波形に基づいて行うようにしてもよい。
【0131】
さらに、電流センサ23を変圧部21の入力部に設け、入力電流を検出するようにしてもよい。
【0132】
また、電流センサ23の代わりに、シャント抵抗を設け、シャント抵抗の両端の電圧を測定することにより間接的に電流を求めるようにしてもよい。
【0133】
さらに、第2の実施の形態において、バッテリセンサ112の代わりに、電源マネージメントECU14が低圧バッテリ13の電圧を検出するようにしてもよい。
【0134】
また、本発明は、電動車両以外の装置に設けられ、バッテリに充電電圧を供給するDCDCコンバータに適用することが可能である。
【0135】
さらに、第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせて、IG電圧Vigを用いて検出した配線抵抗Rと、バッテリセンサ112により検出された低圧バッテリ13の電圧Vbを用いて検出した配線抵抗Rの差が所定の閾値以内である場合、検出した配線抵抗Rが正常であると判定し、配線抵抗Rを記録し、配線抵抗Rの差が閾値を超える場合、検出した配線抵抗Rが異常であると判定し、配線抵抗Rを記録しないようにしてもよい。
【0136】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0137】
図11は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0138】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0139】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210が接続されている。
【0140】
入力部206は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部208は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動する。
【0141】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0142】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0143】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0144】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0145】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0146】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 車載システム
11 高圧バッテリ
12 DCDCコンバータ
13 低圧バッテリ
14 電源マネージメントECU
15−1乃至15−n 低圧負荷
16 イグニッションスイッチ
17 車内LAN
21 変圧部
22 温度センサ
23 電流センサ
24 制御回路
32a乃至32d FET
61 入力出力回路
62 マイクロコンピュータ
63 EEPROM
64 駆動回路
71 エラーアンプ
72 PWM回路
73 出力回路
81 配線抵抗演算部
82 電圧補正量演算部
83 電圧指令値演算部
101 車載システム
111 DCDCコンバータ
112 バッテリセンサ
121 制御回路
161 入力出力回路
162 マイクロコンピュータ
163 EEPROM
181 配線抵抗演算部
182 電圧補正量演算部
183 電圧指令値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動スイッチを介してバッテリに接続され、前記始動スイッチにより始動するDCDCコンバータにおいて、
入力された電圧を変圧して前記始動スイッチを介さずに前記バッテリに供給する変圧手段と、
前記始動スイッチが接続されたときに前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧、並びに、前記変圧手段の出力電圧および出力電流に基づいて、前記変圧手段と前記バッテリ間の配線抵抗を算出する配線抵抗演算手段と、
算出された前記配線抵抗に基づいて前記変圧手段の出力電圧の指令値を補正し、前記変圧手段の出力電圧を制御する出力電圧制御手段と
を備えることを特徴とするDCDCコンバータ。
【請求項2】
前記配線抵抗演算手段は、算出した前記配線抵抗を記録するとともに、前記始動スイッチが接続されたときに前記配線抵抗がすでに記録されている場合、前記配線抵抗の演算を行わず、
前記出力電圧制御手段は、記録されている前記配線抵抗に基づいて前記変圧手段の出力電圧の指令値を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。
【請求項3】
前記配線抵抗演算手段は、前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧が所定の目標電圧の範囲から外れた場合、前記始動スイッチを介して前記バッテリから入力される電圧、並びに、前記変圧手段の出力電圧および出力電流に基づいて、前記配線抵抗を再演算する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のDCDCコンバータ。
【請求項4】
前記配線抵抗演算手段は、前記始動スイッチが接続されたときに前記バッテリの負荷が所定の閾値以上であるとき、前記配線抵抗の演算を行わずに、前記配線抵抗を予め定められた値に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−39778(P2012−39778A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178358(P2010−178358)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】