説明

DPFの再生制御装置

【課題】時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な制御を用いることなく簡単な制御によって、DPFの過昇温を防止しつつ、DPFの再生に要する時間を短くして迅速な再生を可能にしたDPFの再生制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】DPF37の入口排ガス温度をPM再生可能温度まで昇温せしめるDPF入口温度昇温手段42と、該DPF入口温度昇温手段42を制御して再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるDPF入口温度制御手段44とを備え、該DPF入口温度制御手段44は周期的変化の高温側温度と低温側温度とをそれぞれ設定するともに、1サイクルにおける高温側時間と低温側時間を設定して再生処理制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス処理装置として用いられているPM(粒子状物質)を捕集するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の再生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DPFは、一般的に、ディーゼルエンジンから排出されるPMを排気ガスから除去するために使用され、セラミック等をハニカム状モノリスに成形して構成される。運転中にこのDPFにPMが堆積していき、やがてその堆積量が許容値を上回ると、目詰まりが生じて排圧を上昇させて運転性に悪影響を及ぼすため、堆積したPMを除去して強制的な再生される必要がある。
DPFの強制再生の実施にあたっては、DPFに流入するガス温度を高温に保つ必要があり、ガス温度上昇のために排ガス後処理装置(DOC(ディーゼル酸化触媒)+DPF)への燃料供給、すなわち、燃焼室内のへのポスト噴射、排気通路内への軽油添加等が行われている。
噴射された燃料がDOCにて酸化される際に発生する酸化熱で、DPFに流入する排ガス温度が上昇する。DPFでPMが燃焼する温度は一般的に600〜650℃とされており、その温度まで昇温させる必要がある。
【0003】
DPFの強制再生時間を短くする観点からは、DPFを通過するガス温度を高温に保つことが必要であるが、一方で、DPFにPMが多量に堆積した状態でDPFを通過するガス温度を高温にすると多量のPMが一気に燃焼して過昇温する危険性がある。
このため、DPFの入口温度を目標入口温度の一定に保つ制御や、DPFの再生状態に応じて転状態に目標入口温度を変化させる制御等、種々の改良提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2007−239740号公報)には、図8(a)に示すように、エンジン01の排気通路02に酸化触媒03、DPF05が配置され、DPF05の上下流側に温度センサ07、09が設置され、さらに酸化触媒03の上流側に反応剤注入装置011が設置されている構成が示され、図8(b)のように、計測または実測されたDPF05の温度、温度変化速度、温度変化勾配、DPF05におけるPM堆積量、PM堆積量変化速度等に応じてDPF05の入口ガス温度目標値を時々刻々変更して最適な目標値を設定して、DPF05の過熱の危険をなくして迅速なDPFの再生を可能とする作動方法について示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−239740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に示されるDPFの入口温度制御についての技術では、時々刻々と変化する排ガス温度を測定して、その測定値に基づいて、DPFの温度や温度変化速度や変化勾配やPM堆積量等を算出してDPFの入口ガス温度の目標値を設定しているため、目標値の設定に時間的な遅れを生じ再生処理時間を短くした迅速な制御が得られにくく、また、PM堆積量等の推定演算には誤差が生じやすいため、正確な再生制御が行われにくい。
また、時々刻々と変化する排ガス温度の測定値によってPM堆積量、堆積量変化速度等の推定演算処理を行わなければならないため、制御ロジックが複雑化する問題もある。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な制御を用いることなく簡単な制御によって、DPFの過昇温を防止しつつ、DPFの再生に要する時間を短くして迅速な再生を可能にしたDPFの再生制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するもので、排気通路にDOC(ディーゼル酸化触媒)及びPM(粒子状物質)を捕集するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を設けたディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を備え、前記DPFに堆積されたPMを所定時期の再生処理にて燃焼除去させるDPFの再生制御装置において、燃焼室内に噴射したパイロット噴射燃料によって前記DOCを活性化して酸化熱によって前記DPFの入口に流入する排ガス温度を上昇させるとともに、前記DPFの入口温度を該DPFの再生可能温度に昇温せしめるDPF入口温度昇温手段と、該DPF入口温度昇温手段を制御して再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるDPF入口温度制御手段とを備え、該DPF入口温度制御手段は周期的変化の高温側温度と低温側温度とをそれぞれ設定するともに、1サイクルにおける高温側時間と低温側時間を設定して再生処理制御を行うことを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、DPFの再生処理中にDPFに流入する排ガス温度をPMを完全に燃焼できる温度(例えば600℃〜650℃)において周期的に上下変化させるDPF入口温度制御手段を備え、該DPF入口温度制御手段では周期変化の高温側温度と低温側温度とをそれぞれ設定するともに、周期的変化の1サイクルにおける高温側時間と低温側時間を設定して再生処理制御を行うことに特徴がある。
すなわち、高温の排ガスと低温の排ガスとが交互に再生処理の開始時点から流入するので、高温の排ガスがDPFを通過することで再生処理の開始時点の多量のPMに着火して、PMの燃焼速度を上げることができ、再生処理の後期において排ガス温度を高める場合に比較して、PMを燃焼させるのに要する時間を短くすることができる。
一方、再生処理の前期において、DPF入口温度を高く設定すると過昇温の危険性が高まるが、高温だけでなく低温の排ガスを交互に流すため、過昇温の危険性が抑えられる。
このように再生の開始から再生処理中にわたってDPF入口温度を周期的に上下変化させるこれによって、DPFの過昇温の危険性を回避しつつPMを燃焼させるのに要する時間を短くすることができる。
また、排気温度を上昇させるために排ガス中に投入する燃料量を少なくすることができるので、燃費向上にも寄与する。
【0010】
さらに、本発明によれば、DPF入口温度制御手段は周期的変化の高温側温度と低温側温度とをそれぞれ設定するともに、1サイクルにおける高温側時間と低温側時間を設定して制御するので、特に、時間管理して再生処理が制御されるので、時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な制御を用いることなく簡単な制御によって、再生処理を行うことができる。
【0011】
また、かかる発明において、好ましくは、前記DPF入口温度制御手段は前記周期的変化の1サイクル時間を一定にし、再生後期になるに従って前記高温側時間が長くなるように制御するとよい。
このように高温側に保持される時間が再生後期になるに従って長くなることで、DPFが過昇温する危険性を少なくできる。すなわち、再生後期になるに従って堆積PM量が少なくなっているため高温側に保持する時間を長くしても燃焼速度の上昇は少ない。さらにDPF内に燃え残るPMを無くしてPMを完全に燃え尽きさせる意味においても、再生後期に高温側に保持する時間を長くすることが好ましい。
【0012】
また、かかる発明において、好ましくは、前記DPF入口温度制御手段は前記高温側温度を再生後期になるに従って高くするとよい。
この場合も、前記の高温側時間を長くする設定と同様に、再生後期になるに従って堆積PM量が少なくなっているため高温側に保持する時間を長くしても燃焼速度の上昇は少なく、さらにDPF内に燃え残るPMを無くしてPMを完全に燃え尽きさせる意味においても、再生後期になるに従って高温側温度を高くすることが好ましい。
【0013】
また、かかる発明において、好ましくは、前記低温側温度はDPF再生可能温度の一定温度に設定されるとよい、低温側温度を一定(例えば600℃)に設定することで、DPFの入口温度制御がより簡単化される。
【0014】
さらに、かかる発明において、好ましくは、前記DPFの出口温度を検出するDPF出口温度センサを設け、該DPF出口温度センサによる検出値が許容値以上の場合には、DPFが過昇温であると判定して前記DPF入口温度制御手段は1サイクル中における前記低温側時間を長くするとよい。
このように、DPFが過昇温であると判定した場合には、低温側時間を過昇温であると判定するまで時間よりも長くするとことで、効果的にDPFの温度上昇を抑えて、過昇温を防止することができる。
【0015】
また、かかる発明において、好ましくは、前記DPF入口温度昇温手段は、吸気通路に設けられた吸気スロットルバルブの絞りとメイン燃料噴射時期より一定時期遅れて燃料の第1回目噴射のアーリーポスト噴射と該アーリーポスト噴射後の下死点近傍における第2回目噴射のレイトポスト噴射によって構成し、前記DPF入口温度制御手段は吸気スロットルバルブの絞り量とアーリーポスト噴射量とレイトポスト噴射量とのうちの少なくとも何れか1つを制御するとよい。
【0016】
このように吸気スロットルバルブの絞り量とアーリーポスト噴射量とレイトポスト噴射量とのうちの少なくとも何れか1つ、またはこれらを組み合わせて制御することによって、設定された高温側温度と低温側温度とに一致するようにフィードバック制御が可能になり、DPF入口温度を周期的に上下変化させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるとともに、時間管理によって再生処理が制御されるので、時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な制御を用いることなく簡単な制御によって、再生処理を短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係るDOC(ディーゼルエンジン酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を備えたディーゼルエンジンの排ガス処理の全体構成図である。
図1において、ディーゼルエンジン(以下エンジン1という)は、排気タービン3とこれに同軸駆動されるコンプレッサ5を有する排気ターボ過給機7を備えており、該排気ターボ過給機7のコンプレッサ5から吐出された空気は空気管9を通って空気冷却器(不図示)に入り、該空気冷却器で冷却された空気は、吸気スロットルバルブ11で吸気流量が制御された後、吸気マニホールド13を通り、シリンダ毎に設けられた吸気ポート15からエンジン1に吸入される。
【0020】
エンジン1においては、燃料の噴射時期及び噴射量が燃料噴射制御装置17によって制御されており、かかる噴射時期及び噴射量にてシリンダ毎に設けられた燃料噴射弁19から噴射される。噴射された高圧燃料は前記空気との混合によって燃焼される。
また、排気通路21の途中から、EGR(排ガス再循環)管23が分岐されて、排ガスの一部(EGRガス)がEGR管23を通り、EGRクーラ(不図示)で降温され、吸気スロットルバルブ11の下流部位の吸気マニホールド13にEGRバルブ25を介して投入される。
【0021】
そして、エンジン1で燃焼された燃焼ガス即ち排ガス27は、シリンダ毎に設けられた排気ポート29が集合した排気マニホールド及び排気通路21を通って、前記排気ターボ過給機7の排気タービン3を駆動して前記コンプレッサ5の動力源となった後、排気通路21を通って排ガス後処理装置33のDOC35に入る。この排ガス後処理装置33はDOC35とその下流側のDPF37とによって構成されている。
【0022】
そして、前記DPF37の再生時には、DOC35が活性化されて排ガス27中の燃料が該DOC35で酸化される際に発生する酸化熱によって排ガスが昇温され、該昇温された排ガスとともに、燃焼室39内にパイロット噴射された燃料がDPF37に送り込まれてDPF37に堆積されているPMを燃焼処理する。
【0023】
このDPFの再生処理は、再生制御装置40によって行われる。再生制御装置40は、DOC35を活性化して酸化熱によってDPF37の入口に流入する排気温度を上昇させるとともに、DPF37の入口温度をDPF37の再生可能温度に昇温せしめるDPF入口温度昇温手段42と、該DPF入口温度昇温手段42を制御して再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるDPF入口温度制御手段44とを備えて構成されている。
【0024】
DPF入口温度昇温手段42は、スロットルバルブ11を開閉制御するスロットルバルブ制御装置46と前記燃料噴射制御装置17とによって構成され、DPF入口温度制御手段44からの信号によって作動制御される。
DPF入口温度制御手段44には、スロットルバルブ11の開度信号、DPF37の入口温度センサ48と出口温度センサ50からの温度信号、およびDPF37の入口圧力センサ52と出口圧力センサ54からの圧力信号に基づいて差圧センサ56から差圧信号がそれぞれ入力されている。
【0025】
DPF入口温度制御手段44の作動について、図2に示すフローチャート及び図4に示すDPF入口温度目標値の変化図を参照して説明する。
ステップS1でDPFの再生制御を開始とすると、ステップS2でDPF37に堆積されたPMが一定値以上に達したかを、差圧センサ56からの差圧信号によって判定する。差圧が一定値以上に達した場合には、堆積量が一定値以上であり再生が必要と判定して次のステップS3に進む(図4のt0点)。
【0026】
ステップS3で、吸気スロットルバルブ11を絞り、燃焼室に流入する空気量を絞る。そして、ステップS4において、アーリーポスト噴射によって、DOC35の活性化を行い、排ガス中の未燃燃料が酸化される際に発生する酸化熱で排ガス温度を上昇させる。
このアーリーポスト噴射とは、図3に示すように主噴射の10〜20°程度後にシリンダ内の圧力がまだ高い状態で主噴射より少量の燃料を噴射する第一回目のポスト噴射のことをいい、このアーリーポスト噴射によって、エンジンの出力には影響を与えずに排ガス温度を高めることができ、この高温化された排ガスがDOC35に流入することで、DOC35を活性化させ、そしてDOC35の活性化に伴い排ガス中の未燃燃料を酸化される際に発生する酸化熱で排ガス温度を上昇させる。
【0027】
そして、ステップS5で入口温度センサ48からの信号によって、DPF入口温度がT1(200〜250℃)に達したかを判定し、超えている場合には、ステップS6でレイトポスト噴射によってDPF37の入口温度をさらに上昇させる(図4のt1点)。
このレイトポスト噴射とは、前記アーリーポスト噴射後のクランク角度が下死点近傍まで進んだ状態で噴射する第二回目のポスト噴射のことをいい、このレイトポスト噴射によって、排気弁の開状態に燃焼室39内から排気通路21へ燃料を流出させて、DPF37の入口部分で燃料が燃焼して排ガス温度をさらに上昇させてDPF37でのPM燃焼を促進する。
【0028】
そして、ステップS7で入口温度センサ48からの信号によって、DPF入口温度がT2(600℃)に達したかを判定し、超えている場合にはステップS8からDPF37の入口温度の周期的変化の制御を開始する(図4のt2点)。
この周期的な入口温度の制御は、吸気スロットルバルブ11の絞り量、アーリーポスト噴射の噴射量、レイトポスト噴射の噴射量のいずれかを、または組み合わせて制御することで高温側と低温側とを交互に移動させる。すなわち、高温側への移動時には、吸気スロットルバルブ11を絞り、またはアーリーポスト噴射もしくはレイトポスト噴射の噴射量を増加させることで行い、低温側への移動には、吸気スロットルバルブ11を開き、またはアーリーポスト噴射もしくはレイトポスト噴射の噴射量を減少させることで行う。
【0029】
ステップS9では、高温側温度の目標値をT3(650℃)として、ta秒間保持し、次にステップS10では、低温側温度の目標値をT2(600℃)として、tb秒間保持する。高温側と低温側との1サイクルの時間は、tc秒であり、一定に設定されている。
このT2(600℃)、T3(650℃)の温度は一例であり、DPFに堆積しているPMを完全に燃焼させることができる温度範囲内であればよく、その範囲内で上下に変動させればよい。
【0030】
次に、ステップS11において、DPF入口温度制御ステージの時間Δt=(t3−t1)が一定時間に達したかを判定して、達していればステップS12で制御を終了し、達していなければステップS8に戻って高温側と低温側との周期変動を繰り返す。
なお、前記のDPF入口温度制御ステージの時間Δt=(t3−t1)、または、高温側時間ta、低温側時間tbは、それぞれ予め試験に基づいて設定される。例えば、ta、tbをそれぞれ60秒程度に設定して、Δtを15〜20分程度に設定する。これらta、tb、Δtの設定値は再生開始時の堆積量(設定差圧)、再生の開始時のエンジンの運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷)等に応じて予め目標運転時間マップに設定しておき、このマップに基づいてPIDコントローラなどによって吸気スロットルバルブ11の絞り量、アーリーポスト噴射の噴射量、レイトポスト噴射の噴射量を制御するようになっている。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、DPF入口温度制御手段44によって、DPF37の再生処理中にDPF37に流入する排ガス温度を、PMを完全に燃焼できる温度(例えば600℃〜650℃)において周期的に上下変化させているため、すなわち、DPF入口温度制御手段44では周期変化の高温側温度T3と低温側温度T2とをそれぞれ設定して再生処理制御を行うため、高温の排ガスが再生処理の開始時点からDPF37を通過することで再生処理の開始時点の多量のPMに着火して、PMの燃焼速度を上げることができ、再生処理の後期において排ガス温度を高める場合に比較して、PMを燃焼させるのに要する時間を短くすることができる。
【0032】
一方、再生処理の前期において、DPF入口温度を高く設定すると過昇温の危険性が高まるが、高温だけでなく低温の排ガスを交互に流すため、過昇温の危険性が抑えられる。
このように再生の開始から再生処理中にわたってDPF入口温度を周期的に上下変化させるこれによって、DPFの過昇温の危険性を回避しつつPMを燃焼させるのに要する時間を短くすることができる。
また、排気温度を上昇させるために排ガス中に投入する燃料量を少なくすることができるので、燃費向上にも寄与する。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、DPF入口温度制御手段44は周期的変化の高温側温度T3と低温側温度T2とをそれぞれ目標値として設定するともに、1サイクルにおける高温側時間taと低温側時間tbを目標時間として設定して制御するので、特に、再生処理の終了までを時間管理で行われるので、時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な演算制御を用いることなく簡単な制御によって、かつ再生処理時間を短くすることができる。
【0034】
(実施形態2)
次に、実施形態1では、DPF入口温度制御ステージの時間Δt=(t3−t1)の間において、高温側時間taおよび低温側時間tbを、それぞれ一定値を採用していたが、実施形態2においては、図5に示すように、再生後期になるに従って高温側時間taを長くして、ta<ta'のように設定している。1サイクル時間tcは、再生終了まで一定である。なお、処理の経過時間に応じて階段状(ステップ状)に高温側時間taを長くしても、連続的に長くしてもよい。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0035】
このように高温側に保持される時間が再生後期になるに従って長くなることで、DPFが過昇温する危険性を少なくできる。すなわち、再生後期になるに従って堆積PM量が少なくなっているため高温側に保持する時間を長くしても燃焼速度の上昇は少ないため過昇温の危険性を少なくできる。
さらにDPF37内に燃え残るPMを無くしてPMを完全に燃え尽きさせる意味においても、再生後期に高温側に保持する時間を長くすることで燃え残りを無くすことができる。
【0036】
(実施形態3)
次に、実施形態1では、DPF入口温度制御ステージの時間Δt=(t3−t1)の間において、高温側温度T3は一定値を採用していたが、実施形態3においては、図6に示すように、再生後期になるに従って高温側温度T3を高くして、最終的にT4(700℃)を目標とするような設定している。
1サイクル時間tcは、再生終了まで一定である。なお処理の経過時間に応じてステップ的に高温側温度T3を高めても、連続的に高めもよい。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0037】
この実施形態3の場合も、前記の高温側時間を長くする設定と同様に、再生後期になるに従って堆積PM量が少なくなっているため高温側の温度を高めても燃焼速度の上昇は少なく、さらにDPF内に燃え残るPMを無くしてPMを完全に燃え尽きさせる意味においても、再生後期になるに従って高温側温度を高くすることが好ましい。
【0038】
また、低温側温度T2については一定温度に設定されるとよく、低温側温度T2を一定(例えば600℃)に設定することで、DPFの入口温度制御がより簡単化される。
なお、本実施形態3を前記実施形態2と合わせて、再生後期になるに従って高温側温度T3を高くするとともに、高温側時間taを長くしてもよいことは勿論よく、より効果的に再生後期の燃焼を達成できる。
【0039】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。
実施形態4は、実施形態1〜3における再生処理中、特に再生後期においてDPF37が過昇温に至るのを防止する制御を付加するものである。
すなわち、図7のように、図2のフローチャートのステップS10とステップS11との間にA部分のステップS20、ステップS21を追加したものである。
ステップS9、S10でDPF37の入口温度を高温側と低温側との周期的変化の制御を行い、低温側時間tbを経過後に、ステップS20でDPF37の出口温度を出口温度センサ50で検出し、該検出値が過昇温の許容温度(例えば、750℃)を超えたか否かを基に判定する。超えた場合には、ステップS21で低温側時間tbを長くする。すなわち、ステップS10で設定された低温側時間tbより長くする。
【0040】
このように低温側時間tbを長くすることで、実施形態2、3のように再生後期において高温の燃焼状態にする場合においても効果的にDPF37の温度上昇を抑えて、過昇温を防止することができる。
なお、本実施形態4については、実施形態1、2、3と組み合わせて実施するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるとともに、時間管理によって再生処理が制御されるので、時々刻々変化するPM堆積量等を推定演算する複雑な制御を用いることなく簡単な制御によって、再生処理を短時間で行うことができるため、ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置におけるDPFの再生制御装置に適する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態1に係るDOC(ディーゼル酸化触媒)及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を備えたディーゼルエンジンの排ガス処理の全体構成図である。
【図2】実施形態1に係るDPF入口温度制御手段におけるフローチャートである。
【図3】アーリーポスト噴射、レイトポスト噴射の説明図である。
【図4】実施形態1に係るDPF入口温度目標値の変化状態を示す説明図である。
【図5】実施形態2に係るDPF入口温度目標値の変化状態を示す説明図である。
【図6】実施形態3に係るDPF入口温度目標値の変化状態を示す説明図である。
【図7】実施形態4に係るDPF入口温度制御手段におけるフローチャートである。
【図8】従来技術を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
11 スロットルバルブ
17 燃料噴射制御装置
19 燃料噴射弁
21 排気通路
33 排ガス後処理装置
35 DOC(ディーゼル酸化触媒)
37 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)
40 再生制御装置
44 DPF入口温度制御手段
46 スロットルバルブ制御装置
48 入口温度センサ
50 出口温度センサ
52 入口圧力センサ
54 出口圧力センサ
56 差圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路にDOC(ディーゼル酸化触媒)及びPM(粒子状物質)を捕集するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)を設けたディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を備え、前記DPFに堆積されたPMを所定時期の再生処理にて燃焼除去させるDPFの再生制御装置において、
燃焼室内に噴射したパイロット噴射燃料によって前記DOCを活性化して酸化熱によって前記DPFの入口に流入する排ガス温度を上昇させるとともに、前記DPFの入口温度を該DPFの再生可能温度に昇温せしめるDPF入口温度昇温手段と、該DPF入口温度昇温手段を制御して再生処理中のDPF入口温度を周期的に上下変化させるDPF入口温度制御手段とを備え、該DPF入口温度制御手段は周期的変化の高温側温度と低温側温度とをそれぞれ設定するともに、1サイクルにおける高温側時間と低温側時間を設定して再生処理制御を行うことを特徴とするDPFの再生制御装置。
【請求項2】
前記DPF入口温度制御手段は前記周期的変化の1サイクル時間を一定にし、再生後期になるに従って前記高温側時間が長くなるように制御することを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。
【請求項3】
前記DPF入口温度制御手段は前記高温側温度を再生後期になるに従って高くすることを特徴とする請求項1または2記載のDPFの再生制御装置。
【請求項4】
前記低温側温度はDPF再生可能温度の一定温度に設定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のDPFの再生制御装置。
【請求項5】
前記DPFの出口温度を検出するDPF出口温度センサを設け、該DPF出口温度センサによる検出値が許容値以上の場合には、DPFが過昇温であると判定して前記DPF入口温度制御手段は1サイクル中における前記低温側時間を長くすることを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。
【請求項6】
前記DPF入口温度昇温手段は、吸気通路に設けられた吸気スロットルバルブの絞りとメイン燃料噴射時期より一定時期遅れて燃料の第1回目噴射のアーリーポスト噴射と該アーリーポスト噴射後の下死点近傍における第2回目噴射のレイトポスト噴射によって構成し、前記DPF入口温度制御手段は吸気スロットルバルブの絞り量とアーリーポスト噴射量とレイトポスト噴射量とのうちの少なくとも何れか1つを制御することを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71203(P2010−71203A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240049(P2008−240049)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】