説明

DPLL回路

【課題】入力データに混入したノイズの幅がクロック周期程度にまで大きくなり、ノイズ位置が入力データの中間位置に発生した場合にも、入力データからノイズを除去できる。
【解決手段】1ビットを4クロック幅で構成する入力データからノイズフィルタで雑音を除去し、この雑音を除去した入力データと同期したクロックを生成するDPLL回路において、ノイズフィルタは、入力データに対して、4段縦続接続のシフトレジスタを設け、このシフトレジスタのレジスタ11,12,13のクロック同期した出力の一致・不一致状態に応じて最終段のレジスタ16の入力を切り替える入力ロジック17を設ける。
さらに、ノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを歪み除去回路で除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置で入力したデータと同期したクロックを生成するDPLL回路に係り、特にノイズが混入した受信データ(入力データ)から歪みを除去するノイズフィルタ(雑音除去回路)に関する。
【背景技術】
【0002】
DPLL(Digital Phase Locked Loop)回路は、通信システムにおける端末装置の入力回路などで多く使用されており、端末装置が入力したディジタルデータと同期したクロックを生成(再生)することで、入力データの復調や中継等を可能にする。
【0003】
図6は従来のDPLL回路のブロック図を示す。デジタル位相比較器1は、入力された入力データRXDと再生クロックRXCとの位相差を、高周波発振器2の出力になるクロックCLKのカウント値として求める。デジタルループフィルタ3はデジタル位相比較器1で検出した位相差をもとに生成した誤差信号を平均化する。D/A変換器4はフィルタ3のデジタル出力をアナログ値に変換する。電圧制御発振器(VCO)5は、D/A変換器4のアナログ出力を制御電圧としてそれに比例した周波数の発振出力を得、これを再生クロックRXCとしてデジタル位相比較器1にフィードバックする。このブロック構成により、DPLL回路は、電圧制御発振器5の発振出力にはその位相が入力データRXDに同期したものを得ることができ、入力データRXDのジッタにも追従して再生クロックRXCの位相を変化させることができる。
【0004】
なお、DPLL回路は、入力周波数のN倍の周波数を生成するために、電圧制御発振器(VCO)5の発振出力を分周器で1/Nに分周してデジタル位相比較器1にフィードバックする構成とする場合もある。
【0005】
このような構成となるDPLL回路において、デジタル位相比較器1にカウント動作を得るための高周波発振器2のクロック(ベースクロック)CLKには、入力データRXDの通信速度(ビット毎秒)より十分に高い周波数(通常32倍又は16倍)のものを必要とする。すなわち、DPLL回路は入力データをベースクロックによってサンプリングし、32回(又は16回)カウントする間に入力データに変化点が発生したかどうかを監視し、この変化点の発生がどの領域にあったかを判断することで再生クロックRXCの位相補正(同期化)を行う。
【0006】
ベースクロックが通信速度(ビット毎秒)の16倍で,再生クロックRXCの立ち上がりで入力データを取り込む場合について図7〜図9を参照して説明する(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図7に示すように、再生クロックRXCの立ち上がりタイミングaが入力データRXDの1ビット幅の中心(入力データRXDの変化点検出からベースクロックCLKを8カウントした位置)に有る場合は、フェーズロックされ、再生クロックRXCの“L”レベル幅(クロック8カウント分)は変化しない(ベースクロックのフルカウンタ値は8+8=16となる)。
【0008】
再生クロックRXCの立ち上がりが入力データRXDの中心からずれている場合には、再生クロックRXCの立ち上がりが入力データの1ビット幅の中心になるように再生クロックRXCの“L”レベルの幅を変化させて調整する。
【0009】
すなわち、図8に示すように、再生クロックRXCの立ち上がりタイミングaが入力データRXDの1ビット幅の中心より後方に有る場合は、再生クロックRXCの“L”レベル幅を「クロック数−1」に調整して7クロックとして次の再生クロックRXCの立ち上がりを1クロック分進める(ベースクロックのフルカウンタ値は8+7=15となる)。これを繰り返し行うことで、再生クロックRXCの立ち上がりは入力データRXDの1ビットの中心にきてフェーズロックされる。
【0010】
また、図9に示すように、再生クロックRXCの立ち上がりタイミングaが入力データRXDの1ビット幅の中心より前方にある場合は、再生クロックRXCの“L”レベル幅を「クロック数+1」に調整して9クロックとして次の再生クロックRXCの立ち上がりを1クロック分遅らす(ベースクロックのフルカウンタ値は8+9=17となる)。これを繰り返し行うことで、再生クロックRXCの立ち上がりは入力データRXDの1ビットの中心に来てフェーズロックされる。
【0011】
以上のように、通常、DPLL回路の位相調整用のベースクロックCLKを出力する高周波発振器2は、発振周波数が通信速度(ビット毎秒)の16倍以上のものが要求される。この16倍以上の発振周波数の確保は、通信速度が低速の場合は問題ないが、高速になるとその16倍以上のベースクロックCLKを安定して出力できる高周波発振器2の実現が難しくなる。また、高周波発振器2の高周波化はその消費電力(スイッチングロス)の増大にもなる。
【0012】
逆に、高周波発振器2の発振周波数に通信速度の16倍よりも低いものを採用すると、入力データに混入したノイズ(雑音)の大きさ、タイミングによっては入力データにビット誤りを発生させるおそれがある。この対策として、入力データからノイズを除去するノイズフィルタを通してDPLLへの入力データとして取り込む構成が考えられる。
【0013】
上記のノイズフィルタとしては、図10に示す雑音除去回路がある(例えば、特許文献2参照)。図10は入力信号RXDの1ビット幅に対して4周期のクロック信号CLKとする場合(入力信号RXDの1ビットが4クロック幅構成の場合)を示し、DPLL回路の入力データになる入力信号RXDは、3段に縦続接続されたD型フリップフロップ11,12,13で構成するシフトレジスタによって、クロック信号CLKの立ち上がりに同期して順次サンプルホールドされる。それぞれのフリップフロップ11,12,13によってサンプルホールドされ信号RXD_PR(1),RXD_PR(2),RXD_PR(3)を判定回路14に取り込む。判定回路14は、マルチプレクサ15と共に入力ロジックを構成し、与えられる信号RXD_PR(1),RXD_PR(2),RXD_PR(3)がすべて同じレベル(ONまたはOFF)である場合に、出力である判定信号を“0”とし、信号RXD_PR(1),RXD_PR(2),RXD_PR(3)の少なくとも1つが異なる場合には、判定信号を“1”としてマルチプレクサ15に与える。マルチプレクサ15は、“0”レベルの判定信号が与えられると、フリップフロップ11の出力である信号RXD_PR(1)を選択してフリップフロップ16の入力に与え、マルチプレクサ15は“1”レベルの判定信号が与えられると、フリップフロップ16によりホールドされた出力信号RXD_PR(4)を選択してフリップフロップ16の入力に与える。
【0014】
このように、図10に示す雑音除去回路にあっては、フリップフロップ11によってサンプルホールドされた信号RXD_PR(1)が、クロック信号CLKの周期(サンプリング周期)でサンプルされる直前の2周期分の期間にサンプルされた信号RXD_PR(2),RXD_PR(3)と一致しない場合は、それまでの出力信号を保持し、一致した場合には信号RXD_PR(1)を出力するようにしている。
【0015】
これにより、入力信号をサンプリング周期の期間でサンプリングして量子化した信号RXD_PR(1)のパルス幅が、サンプリング周期の2倍以下の場合に、入力信号に発生したパルスを雑音として除去して、雑音が除去された入力信号をフリップフロップ16の出力信号として得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3518130号
【特許文献2】特許第2818192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献2で提案する雑音除去回路によれば、複数段のシフトレジスタと少しの論理回路の組み合わせで入力データからノイズを除去できるが、入力データに混入したノイズの幅がクロック周期程度にまで大きくなり、ノイズ位置が入力データの中間位置になるビット割れが発生すると、当該ノイズを入力データの次のビットとして判定してしまうおそれがある。
【0018】
本発明の目的は、入力データに混入したノイズの幅がクロック周期程度にまで大きくなり、ノイズ位置が入力データの中間位置に発生した場合にも、入力データからノイズを除去し、この入力データから同期したクロックを生成できるようにしたDPLL回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前記の課題を解決するため、入力データからノイズを除去するノイズフィルタとして、入力データに対して、N段縦続接続のシフトレジスタを設け、このシフトレジスタの各段レジスタのクロック同期した出力の一致・不一致状態に応じて最終段のレジスタの入力を切り替えるようにしたものである。
【0020】
また、本発明は、上記のノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを除去する歪み除去回路として、上記のノイズフィルタの出力を入力データとするN段縦続接続のシフトレジスタの各段レジスタの出力から入力データの変化点を信号EVENT_DETとして検出し、このデータ変化点の違いから入力データの歪みクロック位置を抽出し、この歪みクロック位置を回避して入力データのサンプリング波形を得るようにしたものである。
【0021】
以上のことから、本発明は、以下の構成を特徴とする。
【0022】
(1)1ビットを4クロック幅以上で構成する入力データからノイズフィルタで雑音を除去し、この雑音を除去した入力データと同期したクロックを生成するDPLL回路において、
前記ノイズフィルタは、前記入力データに対して、N段(4段以上の整数)縦続接続のシフトレジスタを設け、このシフトレジスタの各段レジスタのクロック同期した出力の一致・不一致状態に応じて最終段のレジスタの入力を切り替える入力ロジックを設けたことを特徴とする。
【0023】
(2)1ビットを4クロック幅以上で構成する入力データからノイズフィルタで雑音を除去し、このノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを歪み除去回路で除去し、この歪みを除去した入力データと同期したクロックを生成するDPLL回路において、
前記歪み除去回路は、前記ノイズフィルタの出力を入力データとするN段(4段以上の整数)縦続接続のシフトレジスタの各段レジスタの出力から入力データの変化点を信号EVENT_DETとして検出し、このデータ変化点の違いから入力データの歪みクロック位置を抽出し、この歪みクロック位置を回避して前記入力データのサンプリング波形を得るロジック回路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、入力データに対して、N段縦続接続のシフトレジスタを設け、このシフトレジスタの各段レジスタのクロック同期した出力の一致・不一致状態に応じて最終段のレジスタの入力を切り替えるノイズフィルタ構成とするため、入力データに混入したノイズの幅がクロック周期程度にまで大きくなり、ノイズ位置が入力データの中間位置に発生した場合にも、入力データからノイズを除去できる。
【0025】
また、本発明は、上記のノイズフィルタの出力を入力データとするN段縦続接続のシフトレジスタの各段レジスタの出力から入力データの変化点を信号EVENT_DETとして検出し、このデータ変化点の違いから入力データの歪みクロック位置を抽出し、この歪みクロック位置を回避して入力データのサンプリング波形を得る歪み除去回路を設けたため、ノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを除去できる。
【0026】
具体的には、ノイズや電源変動などで、通信端末の入力データ(受信データ)に1ビット分のノイズパルスが混入しても、ノイズフィルタによってビット割れを無くすことができる。また、ノイズフィルタでは除去しきれない最大50%のパルス幅変動には、歪み除去回路で歪みを除去することができる。これらノイズ、歪み除去によって、受信回路でビット誤りを除去し、通信エラーを防ぎ、デジタル通信の伝送路のノイズ耐性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態1を示すノイズフィルタの回路構成図。
【図2】実施形態1におけるノイズ除去動作のタイムチャート。
【図3】実施形態1におけるノイズ除去動作のタイムチャート。
【図4】本発明の実施形態2を示す歪み除去回路の回路構成図。
【図5】実施形態2における歪み除去動作のタイムチャート。
【図6】従来のDPLL回路のブロック図。
【図7】DPLL回路のフェーズロック状態の波形図。
【図8】DPLL回路における「調整値−1」の制御状態の波形図。
【図9】DPLL回路における「調整値+1」の制御状態の波形図。
【図10】従来のノイズフィルタの回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
図1は、本実施形態におけるノイズフィルタ部の回路構成図である。同図のノイズフィルタは、概略的には、1クロック幅までのノイズパルスを許容すること、および入力データのビット割れの補正を目的とし、入力信号RXDの1ビットの内、2番目と3番目のクロックにノイズパルスが入った場合に補正できる機能構成である。
【0029】
図1は、DPLL回路の入力データになる入力信号RXDの1ビットが4クロック幅構成の場合である。D型フリップフロップ11,12,13を縦続接続で構成するシフトレジスタによって、入力データRXDはクロック信号CLKの立ち上がりに同期して1クロックずつ遅らせて順次サンプルホールドされる。このシフトレジスタの各段レジスタになるフリップフロップ11,12,13によってサンプルホールドされた信号RXD_PR(1),RXD_PR(2),RXD_PR(3)を入力ロジック17に取り込む。入力ロジック17は、図10の判定回路14と異なり、図示の論理回路構成で最終段のD型フリップフロップ16の入力をマルチプレクサで切り替えることでノイズパルスを除去した出力信号RXD_PR(4)を得る。
【0030】
入力ロジック17の論理は、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致のときにおいて、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(2)が一致、または信号RXD_PR(3)とRXD_PR(1)が一致のとき、信号RXD_PR(4)を反転した信号をフリップフロップ16のD端子入力とし、その他の場合はフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)を反転することなくフリップフロップ16のD端子入力とする。
【0031】
この論理回路構成とする入力ロジック17の詳細を説明する。排他的論理和回路17Aは信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致か否かを判定する。排他的論理和回路17Bは信号RXD_PR(3)と信号RXD_PR(2)が一致したか否かを判定する。排他的論理和回路17Cは信号RXD_PR(3)と信号RXD_PR(1)が一致したか否かを判定する。論理和回路17Dは、排他的論理和回路17Bに一致判定が得られたこと、または排他的論理和回路17Cに一致判定が得られたことを検出する。論理積回路17Eは論理和回路17Aが不一致判定となり、かつ論理和回路17Dに一致判定が得られたときにマルチプレクサ17Fの入力を信号RXD_PR(4)からそれを論理インバータ17Gで反転した信号に切替える。マルチプレクサ17Fの出力Yはフリップフロップ16のD端子入力とし、フリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)は図6に示すDPLL回路のデジタル位相比較器1の入力データRXDとして入力する。
【0032】
図2および図3は、図1に示すノイズフィルタによるノイズ除去動作のタイムチャートの例である。図2は入力信号RXDがノイズパルスで歪んだ波形(欠けた波形)の場合のタイムチャートを示す。図2では、入力信号RXDがクロック信号の第2パルス期間でノイズパルスが重畳した場合を示し、この場合にはフリップフロップ16には入力信号RXDからノイズパルスを除去した出力信号RXD_PR(4)を得ることができる。
【0033】
同図の期間T0では、クロックCLKのタイミングで信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致となり、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(1)が一致するため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転した論理“1”(ハイレベル)となってフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T1ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)される。
【0034】
この期間T1では、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致になるが、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(2)が不一致、かつ、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(1)が不一致のため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転することなく、そのままフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T2ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)に保持される。
【0035】
この期間T2では、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が一致するため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転することなく、そのままフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T3ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)に保持される。同様に、期間T3では信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が一致するため、次の期間T4ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)に保持される。
【0036】
以上の論理動作により、入力信号RXDがクロック信号の第2パルス期間でノイズパルスが重畳した場合にも、フリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)には4クロック期間(T1〜T4)だけノイズを除去し、入力データを完全に復元することができる。さらに、この復元した入力データをDPLL回路の入力とすることで、入力データと同期したクロックを生成することができる。
【0037】
なお、回路構成としては、入力データがもつパルス幅の4倍のクロックを使う場合では、シフトレジスタの4段縦続回路と少しの論理回路で構成する入力ロジックで実現でき、しかも1つのクロック信号のみで済む。
【0038】
図3では、入力信号RXDがクロック信号の第3パルス期間でノイズパルスが重畳した場合を示す。同図の期間T0では、クロックCLKのタイミングで信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致となり、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(2)が一致するため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転した論理“1”(ハイレベル)となってフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T1ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)される。
【0039】
この期間T1では、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が一致するため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転することなく、そのままフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T2ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はセット(論理“1”)に保持される。
【0040】
この期間T2では、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致になり、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(1)が一致するため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転した論理“0”(ローレベル)となってフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T3ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はリセット(論理“0”)される。
【0041】
この期間T3では、信号RXD_PR(4)とRXD_PR(3)が不一致になるが、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(2)が不一致、かつ、信号RXD_PR(3)とRXD_PR(1)が不一致のため、マルチプレクサ17Fの出力Yは信号RXD_PR(4)を反転することなく、そのままフリップフロップ16のD端子入力となり、次の期間T4ではフリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)はリセット(論理“0”)に保持される。
【0042】
以上の論理動作により、入力信号RXDがクロック信号の第3パルス期間でノイズパルスが重畳した場合にも、フリップフロップ16の出力信号RXD_PR(4)にはノイズを除去した入力データを得ることができる。なお、図3の場合は、2クロック期間(T1〜T2)だけを復元した50%歪みの波形になる。また、入力信号RXDがクロック信号の第1パルス期間または第4パルス期間にノイズパルスが重畳した場合は、それら期間を歪みとして除いた復元波形を得ることができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、入力データに混入したノイズの幅がクロック周期程度にまで大きくなり、ノイズ位置が入力データの中間位置に発生した場合にも、入力データからノイズを除去し、この入力データから同期したクロックを生成でき、DPLL回路による入力データと同期したクロック生成にも、ノイズフィルタでビット誤りを除去することができる。これに伴い、DPLL回路による入力データと同期したクロック生成に際して、通信エラーを防ぎ、デジタル通信の伝送路のノイズ耐性が向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、入力データの1ビットが4クロック幅の場合のノイズフィルタを示すが、入力データの1ビット幅が5クロック幅や6クロック幅など、4クロック幅以上の入力データに対するノイズ除去機能をもつ回路構成に適宜設計変更できる。
【0045】
(実施形態2)
図3に示す入力データの場合は、2クロック期間(T1〜T2)だけを復元した50%歪みの波形になる。本実施形態では、上記のノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを除去する歪み除去回路を提供するものである。
【0046】
この歪み除去回路は、上記のノイズフィルタの出力を入力データとするN段縦続接続のシフトレジスタの各段レジスタの出力から入力データの変化点を表す信号EVENT_DETとして検出し、このデータ変化点の違いから入力データの歪みクロック位置を抽出し、この歪みクロック位置を回避して入力データのサンプリング波形を得るものである。
【0047】
図4は、本実施形態における歪み除去回路の回路構成図を示し、図1のフィルタ出力RXD_PR(4)を入力とし、この50%歪みまで補正した出力から歪みを除去してDPLL回路のデジタル位相比較回路1の入力データRXDを得る。図5はその動作タイミングを示す。
【0048】
図4の構成を図5を参照して説明する。5段に縦続接続されたD型フリップフロップ21,22,23,24,25は、ノイズ除去後の入力データRXD_PR(4)を順次1クロックCLK分シフトした信号RXD_S(1)〜RXD_S(5)を得るシフトレジスタを構成する。排他的論理和26は、上記のシフト信号RXD_S(1)〜RXD_S(5)のうち、信号RXD_S(2)と信号RXD_S(3)の排他的論理和演算で入力データの変化点を表す信号EVENT_DETを得る。2段縦続接続されたD型フリップフロップ27,28は、それぞれ1つ上の信号をCLKの1クロック分遅延させるシフトレジスタを構成し、信号EVENT_DETに対してクロック周期分をシフトしたタイミング調整用信号EVENT_S1,EVENT_S2を得る。
【0049】
4進カウンタ29は、入力信号RXD_PR(4)の1ビット幅に対してクロックCLKで「0」から「3」まで4クロック分増加カウントし、CLKの立ち上がりで+1し、このカウント値「3」のタイミング信号DPLCNTを得る。このカウンタ29は、通常自身がカウント値「3」まで増加したときにクリアされて0に戻る動作のほか、2つの例外を設ける。まず1つは図5のC点の例で、後述の信号SRXC_FWDが“H”のとき、CLKの立ち上がりで0に戻す。もう1つは図5のD点の例で、EVENT_S2が“H”で且つSRXCが“L”のとき、CLKの立ち上がりで0に戻す。これら制御はゲートG1,G2からなる論理回路で実行される。
【0050】
D型フリップフロップ30は、4進カウンタ29のカウント値「3」でかつ変化点検出信号EVENT_DETが“H”または信号EVENT_S1が“H”の状態を検出し、1クロックCLK遅れた信号SRXC_FWDを得る。これら制御はゲートG3,G4からなる論理回路で実行される。
【0051】
D型フリップフロップ31は3つの条件のいずれかが成立した状態を検出し、CLKの立ち上がりで“H”になる信号SRXCを得る。これら3つの条件は、図5のA点の場合は信号EVENT_S2が“H”で且つ自身SRXCが“L”のとき、CLKの立ち上がりで“H”になる。図5のB点の場合は信号SRXC_FWDが“H”のとき、CLKの立ち上がりで“H”になる。このようにRXD_PR(4)の変化点で各信号が“H”になる場所が変化する。これら制御はゲートG5,G6,G7で実行される。
【0052】
なお、3番目の条件は、4進カウンタ29のカウント値「3」で、変化点検出信号EVENT_DETが“H”でなく、且つ信号EVENT_S1が“H”でないときにCLKの立ち上がりで“H”になる。この3番目の条件は、入力データが変化しない状態のとき必要なものである。この制御はゲートG8,G9,G10で実行される。
【0053】
D型フリップフロップ32は、信号SRXCを単純にCLKの1クロック分遅延させたタイミング調整用信号RXCKを得る。この信号RXCKが“H”のときのCLKの立ち上がりでRXD_S(5)を取り込んだものを、歪みを除去した入力データとして出力する。
【0054】
以上の構成において、入力データに歪みがある場合のノイズフィルタ動作は図5に示すように、50%歪みがある場合にもそれを除去した波形を得ることができる。図5では、入力データは、ビット0=“1”、ビット1=“0”、ビット2=“1”、ビット3=“0”、ビット4=“1”、ビット5=“0”、ビット6=“1”、ビット7=“0”の構成になる場合で、ビット0は4クロック幅(歪みなし)、ビット1は6クロック幅(歪み波形)、ビット2は5クロック幅(歪み波形)、ビット3は5クロック幅(歪み波形)、ビット4は2クロック幅(歪み波形)、ビット5は2クロック幅(歪み波形)、ビット6は2クロック幅(歪み波形)、ビット7は6クロック幅(歪み波形)の場合を示し、これら歪み波形の入力データから歪みを除去した入力データのビット(信号RXCKのタイミングでの信号RXD_S(5)の論理値)を得ることができる。
【0055】
このようなノイズフィルタにより、入力データが2クロック幅になる50%歪み波形の場合の歪み除去のほか、入力データが6クロック幅や5クロック幅になる歪み波形の場合も歪み除去ができる。
【0056】
なお、本実施形態では、入力データの1ビットが4クロック幅の場合のノイズフィルタを示すが、入力データの1ビット幅が6クロック幅など、他のデータ形式の入力データに対する歪み除去機能をもつ回路構成に適宜設計変更できる。
【符号の説明】
【0057】
1 デジタル位相比較器
2 高周波発振器
3 デジタルループフィルタ
4 D/A変換器
5 電圧制御発振器(VCO)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ビットを4クロック幅以上で構成する入力データからノイズフィルタで雑音を除去し、この雑音を除去した入力データと同期したクロックを生成するDPLL回路において、
前記ノイズフィルタは、前記入力データに対して、N段(4段以上の整数)縦続接続のシフトレジスタを設け、このシフトレジスタの各段レジスタのクロック同期した出力の一致・不一致状態に応じて最終段のレジスタの入力を切り替える入力ロジックを設けたことを特徴とするDPLL回路。
【請求項2】
1ビットを4クロック幅以上で構成する入力データからノイズフィルタで雑音を除去し、このノイズフィルタでは除去しきれない入力データの歪みを歪み除去回路で除去し、この歪みを除去した入力データと同期したクロックを生成するDPLL回路において、
前記歪み除去回路は、前記ノイズフィルタの出力を入力データとするN段(4段以上の整数)縦続接続のシフトレジスタの各段レジスタの出力から入力データの変化点を信号EVENT_DETとして検出し、このデータ変化点の違いから入力データの歪みクロック位置を抽出し、この歪みクロック位置を回避して前記入力データのサンプリング波形を得るロジック回路を設けたことを特徴とするDPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−199792(P2011−199792A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67150(P2010−67150)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】