説明

III族窒化物半導体の製造方法

【課題】Naフラックス法によるGaNの製造において、Geを効率的に添加する方法を提供する。
【解決手段】種結晶基板19を、その一端が保持用台座18上となるように配置する。これにより、坩堝11底面に対して種結晶基板19が傾斜した状態で保持されるようにし、種結晶基板19と坩堝11底面との隙間に固体ガリウム16、固体ゲルマニウム17を配置し、種結晶基板19上に固体ナトリウム20を配置する。以上のように材料を配置してNaフラックス法により種結晶基板19にGaN結晶を育成すると、ナトリウムとゲルマニウムの合金が生じる前に、ガリウム融液にゲルマニウムが融解するので、GaN結晶にGeを効率的にドープすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス法によるIII 族窒化物半導体の製造方法に関し、特にドーパントを効率的に混合させる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNなどのIII 族窒化物半導体の製造方法として、Naフラックス法と呼ばれる技術が知られている。これは、ナトリウム(Na)とガリウム(Ga)を融解して800℃程度に保ち、数十気圧の圧力下で窒素と反応させて、GaNを結晶成長させる技術である。
【0003】
このNaフラックス法においては、ケイ素(Si)を添加するとGaNの結晶成長を抑制してしまうことが知られており、n型ドーパントとしてゲルマニウム(Ge)を用いることが検討されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290929
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ゲルマニウムを添加すると、ゲルマニウムとナトリウムとの間でGeNa3 などの合金が生じてしまう場合があった。GeNa3 は常圧で融点が820℃と高く、ナトリウムとガリウムの混合融液中にうまく混ざらずにGaN結晶中のGe濃度にむらが生じたり、雑晶が多く発生するなどして歩留まりが低下していた。
【0006】
そこで本発明の目的は、フラックス法によるIII 族窒化物半導体の製造方法において、ドーパントを効率的に混合させることが可能なIII 族窒化物半導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、III 族金属とアルカリ金属およびドーパントを少なくとも含む混合融液と、少なくとも窒素を含む気体とを反応させ、種結晶にIII 族窒化物半導体を結晶成長させるIII 族窒化物半導体の製造方法において、アルカリ金属がアルカリ金属液体となる前に、III 族金属がIII 族金属液体となり、そのIII 族金属液体をアルカリ金属と接触させることなく、そのIII 族金属液体を、ドーパントと混合して混合融液とし、その後に、アルカリ金属をアルカリ金属液体とし、アルカリ金属液体と、III 族金属とドーパントとの混合融液を接触させる、ことを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0008】
アルカリ金属は通常ナトリウム(Na)を用いるが、カリウム(K)を用いることもできる。また、窒素を含む気体とは、窒素分子や窒素化合物の気体を含む単一または混合気体をいい、希ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0009】
フラックス法において添加されるドーパントは、結晶成長させるIII 族窒化物半導体の伝導型や磁性などの物性の制御や、結晶成長の促進、雑晶発生の抑制、成長方向の制御、などの目的で添加されるものである。ドーパントは複数の種類添加されていてもよい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、III 族金属とドーパントとの混合融液を、III 族金属とドーパントとの合金とすることを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、ドーパントは、III 族金属との合金の融点が、アルカリ金属とドーパントとの合金の融点よりも低くなる材料であることを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0012】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、坩堝に、アルカリ金属、III 族金属、およびドーパントを配置するに際して、III 族金属とアルカリ金属とは離間し、III 族金属とドーパントとを接近させて配置させたことを特徴するIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、坩堝の底面に対して、種結晶を傾斜して設け、その種結晶上にアルカリ金属を設け、坩堝の底面又は坩堝の底面と種結晶の裏面との間の空間に、III 族金属とドーパントとを設けたことを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0014】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明において、ドーパントは、アルカリ金属液体とドーパント液体との混合溶液が相分離する材料であることを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0015】
第7の発明は、第1の発明から第5の発明において、アルカリ金属はナトリウム、ドーパントはゲルマニウムであることを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【0016】
第8の発明は、第6の発明において、アルカリ金属はナトリウム、ドーパントは亜鉛であることを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によると、ドーパントを効率的に融液中に溶かすことができ、高品質かつ均質なIII 族窒化物半導体を製造することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0018】
また、第2の発明のように、ドーパントとIII 族金属との間で合金を形成する場合であっても、ドーパントを効率的に融液中に溶かすことができ、特に第3の発明のように、ドーパントとIII 族金属との合金の融点が、アルカリ金属とドーパントとの合金の融点よりも低いドーパントを用いる場合に、本発明による効果が大きく、非常に効率的にドーパントを溶かすことができる。
【0019】
また、第4、5の発明のように坩堝内に材料を配置すると、容易に第1の発明を実現することができる。
【0020】
また、第6の発明のように、アルカリ金属液体とドーパント液体との混合溶液が相分離するドーパント材料である場合に、本発明による効果が大きい。アルカリ金属としてナトリウムを用いる場合、第3の発明のようなドーパントは、たとえば第7の発明のようにゲルマニウムであり、第6の発明のようなドーパントは、たとえば第8の発明のように亜鉛である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】III 族窒化物半導体製造装置の構成を示す図。
【図2】実施例1の製造方法における坩堝11内の材料の配置について示す図。
【図3】実施例1の製造方法により育成したn−GaN結晶を撮影した写真。
【図4】実施例1の製造方法により育成したn−GaN結晶の蛍光顕微鏡写真。
【図5】比較例の製造方法における坩堝11内の材料の配置について示す図。
【図6】実施例2の製造方法における坩堝11内の材料の配置について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1のn−GaNの製造方法に用いるIII 族窒化物半導体製造装置の構成を示す図である。III 族窒化物半導体製造装置は、内部に坩堝11を配置する反応容器10と、反応容器10を加熱する加熱装置12と、反応容器10内に窒素を供給する供給管14と、反応容器10内部の雰囲気を外部へ排気する排気管15と、により構成されている。
【0024】
反応容器10は、円筒形状のステンレス製で、耐熱性、耐圧性を有している。反応容器10の内部には、Al2 3 (アルミナ)からなる坩堝11が配置される。坩堝11の内径は66mmである。
【0025】
III 族窒化物半導体製造装置に圧力容器を設け、圧力容器内部に、反応容器10および加熱装置12を配置するようにしてもよい。圧力容器内に反応容器10を配置することで、反応容器10は高い耐圧性を必要としないので、反応容器10として安価で大型のものを用いることができる。
【0026】
供給管14には、バルブ14vが設けられていて、このバルブ14vにより窒素の供給量を制御する。また、排気管15には、バルブ15vが設けられていて、反応容器10からの排気量を制御する。
【0027】
次に、n型ドーパントとしてゲルマニウムがドープされたn−GaNの製造方法について説明する。
【0028】
図2に示すように、まず、内径66mmのアルミナ製の坩堝11内に、55gの固体ガリウム16、0.1gの固体ゲルマニウム17、0.1gの炭素(図示しない)、および保持用台座18を配置する。続いて種結晶基板19を、その一端が保持用台座18上となるように配置する。これにより、坩堝11底面に対して種結晶基板19が傾斜した状態で保持されるようにし、種結晶基板19と坩堝11底面との隙間に固体ガリウム16、固体ゲルマニウム17が配置されるようにする。次に、種結晶基板19上に49gの固体ナトリウム20を配置する。以上の配置により、固体ゲルマニウム17が固体ナトリウム20よりも固体ガリウム16に近い配置となり、種結晶基板19で分離されて固体ナトリウム20と固体ゲルマニウム17とが直接接触しないような配置となる。固体ゲルマニウム17の添加量は、固体ガリウム16、固体ゲルマニウム17、固体ナトリウム20を合わせた物質量に対して約0.5mol%である。そして、坩堝11を反応容器10内に配置し、反応容器10を密閉する。なお、炭素を混合する理由は、炭素が触媒として作用することで、GaN結晶中にゲルマニウムがドナーとして取り込まれやすくなるからである。
【0029】
種結晶基板19は、GaN基板でもよいし、サファイアなどの異種基板にMOCVD法などによってGaNを成長させたテンプレート基板であってもよい。また、c面、a面、m面など各種面方位の基板を用いることができる。
【0030】
なお、上記の坩堝11内に材料を配置する作業、および坩堝11を反応容器10内に配置する作業は、Arなどの不活性ガスで満たされたグローブボックス内で行う。Naは空気中で容易に酸化されてしまうためである。
【0031】
次に、供給管14のバルブ14v、排気管15のバルブ15vを開いて反応容器10内に窒素を供給し、バルブ14v、バルブ15vを調整して反応容器10内部を4.2MPaまで加圧するとともに、加熱装置12によって870℃まで昇温させる。
【0032】
この昇温過程において、まず常圧での融点が約30℃の固体ガリウム16が融解して液体となり、このガリウム融液に接触した固体ゲルマニウム17がそのガリウム融液に溶解する。このとき、固体ゲルマニウム17が固体ナトリウム20よりも固体ガリウム16に近い位置に置かれ、種結晶基板19により分離されて固体ナトリウム20と固体ゲルマニウム17とが直接接触していない。そのため、ナトリウムとゲルマニウムとの融点の高い合金が形成される前に、ガリウムとゲルマニウムとの混合融液が形成される。
【0033】
次に、昇温するにつれて常圧で融点が約98℃の固体ナトリウム20が溶解して液体となり、種結晶基板19の下方へと流れ込み、ガリウムとゲルマニウムとの混合融液と混合する。ここでナトリウムとゲルマニウムの合金は形成されないため、従来のようにナトリウムとゲルマニウムの合金がガリウムとナトリウムの混合融液中に溶け切らずに固体の状態で残存することはない。以上により、結晶成長温度においては、ガリウムとナトリウムの混合融液中にゲルマニウムがすべて溶け込んだ状態となる。
【0034】
ゲルマニウムが溶解したガリウムとナトリウムの混合融液が得られた後、この圧力4.2MPa、温度870℃の状態を120時間維持し、種結晶基板19にGaN結晶を結晶成長させる。なお、III 族窒化物半導体製造装置に坩堝11を支持して回転させる回転装置、または坩堝を揺動させる揺動装置を設け、結晶育成中に坩堝11を回転、揺動させるようにすると望ましい。坩堝11の回転、揺動によって混合融液が攪拌されるため、GaNを均一に結晶成長させることができる。
【0035】
次に、加熱装置12による加熱を停止し、温度を常温まで下げ、圧力を常圧まで下げた後、反応容器10を開封し、坩堝11を取り出す。そして、坩堝11内に残留した混合融液を除去して種結晶基板19に育成された、Geドープのn−GaN結晶を取り出す。このn−GaN結晶は、図3のように種結晶基板19上の全面に均一に育成していた。また、図4は育成したn−GaN結晶の蛍光顕微鏡写真であるが、全面から発光しており、n−GaN結晶中にGeが均一にドープされていることが確認された。得られたn−GaN結晶を研磨し、SIMS分析およびホール測定を行ったところ、Ge濃度は1×1019/cm3 、抵抗率0.03Ωcmで面内に均一にGeがドープされていた。
【0036】
以上のようにして製造したn−GaN結晶を、比較例の製造方法により製造したn−GaN結晶と比較した。比較例のn−GaN結晶は、図5のように種結晶基板19と坩堝11底面との隙間に固体ガリウム16を配置し、種結晶基板19上に固体ゲルマニウム17と固体ナトリウム20を配置して、それ以外の工程は実施例1と同様の工程でn−GaN結晶を製造したものである。比較例のn−GaN結晶は、部分的に育成しない部分が発生し、種結晶基板19上の全面に均一に育成することができなかった。また、蛍光顕微鏡像にもむらがあり、Geが均一にドープされていなかった。
【0037】
以上のように、実施例1のGaNの製造方法では、固体ガリウム16と固体ゲルマニウム17が直接接触し、固体ナトリウム20と固体ゲルマニウム17とが直接接触しないように配置しており、昇温過程において、ガリウムがナトリウムよりも先に液体となり、ナトリウム液体よりも先にガリウム液体が固体ゲルマニウム17に接触するので、加熱時に融点の高いナトリウムとゲルマニウムとの合金は生成されず、融点の低いガリウム中にゲルマニウムが融解する。次いでナトリウムが液体となり、ガリウムとゲルマニウムとの混合融液に接触するため、効率的にガリウムとナトリウムの混合融液中にゲルマニウムを溶かすことができる。その結果、ゲルマニウム濃度の均一な良質のn−GaN結晶を得ることができる。
【0038】
なお、坩堝11内に次のように材料を配置してもよい。まず、事前に固体ガリウム16を融解し、そのガリウム融液に固体ゲルマニウム17を融解して冷却し、ガリウムとゲルマニウムとの合金を形成しておく。そして、坩堝11内に、ガリウムとゲルマニウムとの合金、固体ナトリウム20、種結晶基板19を配置する。このように配置した場合も、昇温過程において先にガリウムとゲルマニウムとの合金が融解し、その後に固体ナトリウム20が融解し、ガリウムとゲルマニウムとの混合融液にナトリウム融液が接触するので、効率的にガリウムとナトリウムの混合融液中にゲルマニウムを溶かすことができる。
【実施例2】
【0039】
ドーパントとして実施例1で用いた固体ゲルマニウム17に替えて固体亜鉛27を用い、図6のように、種結晶基板19を、その一端が保持用台座17上となるように配置して坩堝11底面に対して種結晶基板19が傾斜した状態で保持されるようにし、種結晶基板19と坩堝11底面との隙間に固体ガリウム16、固体亜鉛27を配置し、種結晶基板19上に固体ナトリウム20を配置する。この坩堝11内の材料の配置位置以外は実施例1のGaNの製造方法と同様とし、種結晶基板19にZnドープのGaNを結晶成長させる。ZnはGaNのp型化、または絶縁化のためにドープするものである。
【0040】
上記のように、固体ガリウム16、固体亜鉛27を、種結晶基板19によって固体ナトリウム20から分離して配置すると、昇温過程において、まず固体ガリウム16が融解して液体となり、このガリウム融液に接触した固体亜鉛27がそのガリウム融液に溶解する。次に、昇温するにつれて固体ナトリウム20が溶解して液体となり、種結晶基板19の下方へと流れ込み、ガリウムと亜鉛の混合融液と混合する。ここで、液体亜鉛と液体ナトリウムは、互いに混ざらず、水と油のように相分離するが、上記の配置によれば、昇温工程において液体亜鉛と液体ナトリウムが同時に存在する状態をとることがなく、したがって相分離することもないため、ガリウムとナトリウムの混合融液中に亜鉛を効率的に溶かすことができる。
【0041】
したがって、ドーパントとしてZnを添加する場合にも、Zn濃度の均一な良質のZnドープのGaN結晶を得ることができる。
【0042】
なお、各実施例ではナトリウムを用いているが、カリウムなどのアルカリ金属を用いてもよい。また、各実施例ではGaNの製造方法について説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、AlGaN、InGaN、AlGaInNなど、III 族窒化物半導体結晶の製造方法に適用することができる。また、実施例ではドーパントは1種類のみ用いているが、複数種類添加してもよい。
【0043】
また、各実施例では、昇温過程において自然に、ガリウムとゲルマニウムもしくは亜鉛がナトリウムと接触せずに混合され、その後にナトリウムと混合されるようにしているが、必ずしもこのようにする必要はない。アルカリ金属融液とする前にIII 族金属融液とし、III 族金属融液にドーパントを融解し、その後にアルカリ金属を融解させてIII 族金属とドーパントとの混合融液に接触させるのであれば、昇温過程の前後は問わない。
【0044】
本願に含まれる他の発明を以下に列挙する。
【0045】
(1)坩堝内に固体のアルカリ金属、固体のIII 族金属、固体のドーパントとを保持し、少なくとも窒素を含む気体を供給して加圧、昇温過程において、前記固体のアルカリ金属、前記固体のIII 族金属、前記固体のドーパントの溶液を生成して、結晶成長温度において、この溶液からIII 族窒化物半導体を種結晶に結晶成長させるフラックス法によるIII 族窒化物半導体の製造方法において、前記昇温過程において、固体の前記アルカリ金属がアルカリ金属液体となる前に、固体の前記III 族金属をIII 族金属液体とし、そのIII 族金属液体を固体の前記アルカリ金属と接触させることなく、そのIII 族金属液体中に前記固体のドーパントを溶解し、その後に、固体の前記アルカリ金属をアルカリ金属液体とし、前記アルカリ金属液体と前記III 族金属と前記ドーパントとの混合融液とを接触させ、最終的に、前記III 族窒化物半導体を結晶成長させる温度に至る前に、前記アルカリ金属と前記III 族金属と前記ドーパントとの混合融液とする、ことを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法。
【0046】
(2)前記坩堝に、固体の前記アルカリ金属、固体の前記III 族金属、および固体の前記ドーパントを配置するに際して、固体の前記III 族金属と固体の前記アルカリ金属とは離間し、固体の前記III 族金属と固体の前記ドーパントとを接近させて配置させたことを特徴とする上記(1)に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【0047】
(3)前記坩堝の底面に対して、前記種結晶を傾斜して設け、その種結晶上に固体の前記アルカリ金属を設け、前記坩堝の底面または前記坩堝の底面と前記種結晶の裏面との間の空間に、固体の前記III 族金属と固体の前記ドーパントを設けたことを特徴とする上記(2)に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によって得られるIII 族窒化物半導体は、半導体素子を作製するための成長基板などに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10:反応容器
11:坩堝
12:加熱装置
14:供給管
15:排気管
16:固体ガリウム
17:固体ゲルマニウム
18:保持用台座
19:種結晶基板
20:固体ナトリウム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III 族金属とアルカリ金属およびドーパントを少なくとも含む混合融液と、少なくとも窒素を含む気体とを反応させ、種結晶にIII 族窒化物半導体を結晶成長させるIII 族窒化物半導体の製造方法において、
前記アルカリ金属がアルカリ金属液体となる前に、前記III 族金属がIII 族金属液体となり、
そのIII 族金属液体を前記アルカリ金属と接触させることなく、そのIII 族金属液体を、前記ドーパントと混合して混合融液とし、
その後に、前記アルカリ金属をアルカリ金属液体とし、
前記アルカリ金属液体と、前記III 族金属とドーパントとの混合融液を接触させる、
ことを特徴とするIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項2】
前記III 族金属と前記ドーパントとの混合融液を、前記III 族金属と前記ドーパントとの合金とすることを特徴とする請求項1に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項3】
前記ドーパントは、前記III 族金属との合金の融点が、前記アルカリ金属と前記ドーパントとの合金の融点よりも低くなる材料であることを特徴とする請求項2に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項4】
前記坩堝に、前記アルカリ金属、前記III 族金属、および前記ドーパントを配置するに際して、前記III 族金属と前記アルカリ金属とは離間し、前記III 族金属と前記ドーパントとを接近させて配置させたことを特徴する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項5】
前記坩堝の底面に対して、前記種結晶を傾斜して設け、その種結晶上に前記アルカリ金属を設け、前記坩堝の底面又は前記坩堝の底面と前記種結晶の裏面との間の空間に、前記III 族金属と前記ドーパントとを設けたことを特徴とする請求項4に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項6】
前記ドーパントは、前記アルカリ金属液体と前記ドーパント液体との混合溶液が相分離する材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属はナトリウム、前記ドーパントはゲルマニウムであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属はナトリウム、前記ドーパントは亜鉛であることを特徴とする請求項6に記載のIII 族窒化物半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−235330(P2010−235330A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82280(P2009−82280)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造技術開発−窒化物系化合物半導体基板・エピタキシャル成長技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】