説明

IP構内交換機

【課題】PINGコマンドに基づく生存確認によりIP構内交換機の障害の発見をより確実に行えるようにする。
【解決手段】保守トランク160が、ICMPエコー要求パケットを受信した場合、ICMPエコー要求パケットの受信に対応したICMP応答パケットの送信を一旦保留して、中央制御装置110に対して、障害がないかどうかの問い合わせを示す生存確認メッセージを送信する。さらに、保守トランク160は、その生存確認メッセージに対する応答として中央制御装置110から応答メッセージを受信した場合、保留してあったICMP応答パケットの送信を行う。一方、保守トランク160は、中央制御装置110から応答メッセージを受信しなかった場合には、保守トランク160がたとえ正常に動作している場合でもICMP応答パケットの送信は行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網に接続され音声信号を中継するIP構内交換機に関する。
【背景技術】
【0002】
IP網に接続されたIP構内交換機においては、所謂「生存確認」を行うように構成されたものがあり、かかる「生存確認」を行うための方法として、ICMP(Internet Control Message Protocol)に従ったPINGコマンドを用いる方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、IP構内交換機とは直接関連していないが、PINGコマンドを利用する技術が開示されており、より具体的には、選択通知情報としてのPINGコマンドを受信した機器側において、自身の表示部に対して自機が選択されていることを示す表示を実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−236772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、IP構内交換機は、各種機能ごとにパッケージ化されており、IP網を介して呼制御信号や音声信号を送受信するVoIPトランクやIP網を介してIP構内交換機を遠隔制御するための制御信号を送受信するIP遠隔保守トランクなどのインタフェースパッケージや、機器全体を制御する制御系パッケージなどから構成されている。
【0006】
このようにパッケージ化されたIP構内交換機は、上記のようなPINGコマンドに対する応答を、例えば、IP遠隔保守トランクにおいて行っている。この場合、IP遠隔保守トランク以外の他のパッケージに障害が発生していたとしても、IP遠隔保守トランクが正常に動作している場合には、正常にPINGコマンドに対する応答が行われてしまう。したがって、PINGコマンドによるIP構内交換機の生存確認は、必ずしもIP構内交換機の全体に障害が発生していないことを示す指標とはならない。
【0007】
本発明は、PINGコマンドに基づく生存確認によりIP構内交換機の障害の発見をより確実に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るIP構内交換機は、IP電話機を収容する内線トランクと、IP網を介して呼制御信号及び音声信号を送受信するVoIPトランクと、前記内線トランク相互間の接続及び前記内線トランクと前記VoIPトランクとの接続を行うスイッチと、前記内線トランク、前記VoIPトランク、及び前記スイッチを制御する中央制御装置と、前記IP網を介してICMPエコー要求パケットを受信したことに対応して、前記中央制御装置に対して生存確認要求メッセージを送信し、且つ前記中央制御装置からの前記生存確認要求メッセージに対する応答メッセージを受信した場合に、前記ICMPエコー要求パケットの応答としてICMP応答パケットを前記IP網を介して送信する保守トランクと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ICMPエコー要求パケットが受信されたことに対応して中央制御装置に対して生存確認要求メッセージが送信され、且つ中央制御装置からの生存確認要求メッセージに対する応答メッセージが受信された場合に、ICMPエコー要求パケットの応答としてICMP応答パケットがIP網を介して送信されるので、PINGコマンドに基づく生存確認によりIP構内交換機の障害の発見をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施するための形態に係るIP構内交換機システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明を実施するための形態に係るIP構内交換機の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明を実施するための形態に係るIP構内交換機が備える保守トランクの内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明を実施するための形態において、ICMPエコー要求パケットを受信した際の保守トランクの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るIP構内交換機システムの全体構成を示す図である。図1において、IP構内交換機100は、複数のIP電話機10を収容し、IP電話機10間の内線通話や、インターネット等のIP網30を介した外線通話を制御する。また、IP構内交換機100は、IP網30を介して保守端末20と接続され、保守端末20を介してIP構内交換機100の保守運用が行われる。なお、保守端末20は、CPU、ROM、RAM等を備えた汎用のコンピュータを用いることができる。
【0013】
図2は、IP構内交換機100の内部構成を示すブロック図である。図2において、IP構内交換機100は、中央制御装置110、記憶装置120、通話路スイッチ130、内線トランク140、VoIPトランク150、及び保守トランク160を備える。中央制御装置110、記憶装置120及び通話路スイッチ130は、バス170を介して接続される。
【0014】
内線トランク140は、IP電話機10にライン回線を介して接続され、通話路スイッチ130を介して外線通話或いは内線通話をIP電話機10に中継する。
【0015】
VoIPトランク150は、IP網30に接続され、SIP(Session Initiation Protocol)に従って呼制御信号や音声信号を通話路スイッチ130を介してIP電話機10に中継する。
【0016】
通話路スイッチ130は、中央制御装置110による制御により、内線トランク140とVoIPトランク150とを接続して通話路を形成し、IP網30を介して外線通話を制御する。さらに、通話路スイッチ130は、中央制御装置110による制御により、内線トランク140の相互間を接続して通話路を形成し、IP電話機10間の内線通話を制御する。
【0017】
中央制御装置110は、CPU、ROM、RAM等により構成され、記憶装置120に記憶された各種プログラムを実行することで、呼接続制御などIP構内交換機100全体の制御を行う。また、詳細は後述するが、中央制御装置110は、保守トランク160からの生存確認要求メッセージを受信したことに対応して、IP構内交換機100が備える各パッケージが正常に動作している場合には、応答メッセージを保守トランク160に送信する。
【0018】
記憶装置120は、フラッシュメモリ等のメモリで構成され、IP構内交換機100の動作に必要な所謂局データ等の各種データ、プログラムを格納し、中央制御装置110の指令により呼接続制御等に必要な各種データを中央制御装置110に提供する。
【0019】
保守トランク160は、保守端末20から送信される局データ等を受信し、受信した局データ等を中央制御装置110に転送する。また、中央制御装置110は、例えば転送された局データに基づき記憶装置120に記憶された局データを更新する。さらに、保守トランク160は、保守端末20から送信されたIP構内交換機100の生存確認を行うためのICMPエコー要求パケットを受信したことに対応して、中央制御装置110に対して生存確認要求メッセージを送信する。さらに、保守トランク160は、中央制御装置110から生存確認要求メッセージに対する応答メッセージを受信した場合に、ICMPエコー要求パケットに対するICMP応答パケットを保守端末20に向けて送信する。なお、中央制御装置110は、IP構内交換機100に搭載されたいずれかのパッケージや自身に何らかの障害が発生している場合には、保守トランク160からの生存確認要求メッセージに対して応答メッセージを送信しない。よって、保守トランク160は、生存確認要求メッセージの送信後、予め定められた期間経過しても中央制御装置110から応答メッセージを受信しなかった場合には、IP構内交換機100が備える各種パッケージ或いは中央制御装置110に何らかの障害が発生しているものと判断する。
【0020】
図3は、保守トランク160の内部構成を示すブロック図である。図3において、保守トランク160は、外部通信インタフェース161、MPU162、ICMP処理部163、及び内部通信インタフェース164が内部バス165を介して接続されて構成されている。
【0021】
外部通信インタフェース161は、OSI参照モデルで定義されたレイヤ1〜レイヤ7までの各レイヤで提供すべき各機能を有するネットワークインタフェースである。本実施形態では、外部通信インタフェース161は、ICMPエコー要求パケットを受信した場合には、受信したICMPエコー要求パケットを内蔵のレジスタに一時的に保持する。
【0022】
MPU(Micro Processing Unit)162は、保守トランク全体を制御する制御部である。本実施形態において、MPU162は、外部通信インタフェース161のレジスタにICMPエコー要求パケットが保持されたことを確認すると、そのICMPエコー要求パケットに示される送信元アドレス等のPING受信情報を取得して、ICMP処理部163に提供する。さらに、外部通信インタフェース161は、MPU162を介してICMPエコー要求パケットに対する応答としてICMP応答パケットを受信した場合、当該ICMP応答パケットをレジスタに一時保持する。さらに、外部通信インタフェース1612は、一時保持したパケットをICMP応答パケットの送信元の保守端末20に向けてIP網30を介して送信する。
【0023】
ICMP処理部163は、例えばワンチップマイコンにより構成され、MPU162から提供されたPING受信情報を内部メモリに一時保持するとともに、中央制御装置110が解読可能な生存確認要求メッセージを生成し、内部通信インタフェース164に送信する。また、ICMP処理部163は、生存確認要求メッセージに対する応答として中央制御装置110から送信された応答メッセージを内部通信インタフェース164を介して受信すると、一時保持しているPING受信情報に基づいてICMP応答パケットを生成し、MPU162に送信する。ここで、生存確認要求メッセージや応答メッセージは、内線トランク140やVoIPトランク150等のIP構内交換機100に搭載された各種パッケージと中央制御装置110が通信を行う際に用いられるIP構内交換機100の仕様に基づくメッセージ形式のデータである。
【0024】
内部通信インタフェース164は、バス170を介して中央制御装置110と通信を行うためのインタフェースであり、ICMP処理部163から受信した生存確認要求メッセージを中央制御装置110に向けて送信する。また、内部通信インタフェース164は、中央制御装置110から生存確認要求メッセージの応答として、応答メッセージを受信した場合は、その応答メッセージをICMP処理部163に転送する。
【0025】
図4は、ICMPエコー要求パケットを受信した際の保守トランク160の処理手順を示すフローチャートである。
【0026】
図4において、保守トランク160は、外部通信インタフェース161を介して保守端末20からのICMPエコー要求パケットを受信すると(S100)、当該ICMPエコー要求パケットに示される送信元アドレス等のPING受信情報を、MPU162を介してICMP処理部163に転送する。さらに、保守トランク160は、ICMP処理部163のメモリにPING受信情報を一時保持する(S102)。次いで、保守トランク160は、生存確認要求メッセージをICMP処理部163において生成し、内部通信インタフェース164を介して中央制御装置110に送信する(S104)。保守トランク160は、生存確認要求メッセージの送信後、予め定められた期間経過前に中央制御装置110から内部通信インタフェースを介して応答メッセージを受信した場合には(ステップS106の判定結果が、肯定「Y」)、ICMP処理部163において、一時保持しているPING受信情報に基づいてICMP応答パケットを生成し、MPU162に転送する。さらに、保守トランク160は、MPU162に転送されたICMP応答パケットを外部通信インタフェース161を介して保守端末20に送信する(S108)。
【0027】
一方、保守トランク160は、生存確認要求メッセージの送信後、予め定められた期間経過しても中央制御装置110から応答メッセージを受信しなかった場合には(ステップS106の判定結果が、否定「N」)、ICMPエコー要求パケットに対して応答せずに、処理を終了する。
【0028】
なお、保守端末20は、ICMPエコー要求パケットを送信してから、予め定められた期間が経過してもIP構内交換機100からICMP応答パケットを受信しなかった場合には、IP構内交換機100に何らかの障害が発生しているものと判断して、画面にエラーメッセージを表示する或いは警報音を鳴動させること等により、IP構内交換機100に障害が発生していることをユーザに通知する。
【0029】
以上、本実施形態では、保守トランク160が、ICMPエコー要求パケットを受信した場合、ICMPエコー要求パケットの受信に対応したICMP応答パケットの送信を一旦保留して、中央制御装置110に対して、障害がないかどうかの問い合わせを示す生存確認メッセージを送信する。さらに、保守トランク160は、その生存確認メッセージに対する応答として中央制御装置110から応答メッセージを受信した場合、保留してあったICMP応答パケットの送信を行う。一方、保守トランク160は、中央制御装置110から応答メッセージを受信しなかった場合には、保守トランク160がたとえ正常に動作している場合でも、ICMP応答パケットの送信は行わない。
【0030】
つまり、本実施形態では、保守トランク160が正常に動作している場合でもIP構内交換機100が備える他のパッケージ等に障害が発生している場合には中央制御装置110から応答メッセージが送信されず、保守端末20には、ICMP応答パケットの送信が行われない。
【0031】
よって、本実施形態によれば、汎用のPINGコマンドに基づく生存確認により保守トランク160以外の他のパッケージの障害の発見をより確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、PINGコマンドに基づく生存確認によりIP構内交換機の障害の発見をより確実に行うことができるので、IP網を介して音声信号を中継するIP構内交換機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 IP電話機
20 保守端末
30 IP網
100 IP構内交換機
110 中央制御装置
120 記憶装置
130 通話路スイッチ
140 内線トランク
150 VoIPトランク
160 保守トランク
161 外部通信インタフェース
163 ICMP処理部
164 内部通信インタフェース
165 内部バス
170 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP電話機を収容する内線トランクと、
IP網を介して呼制御信号及び音声信号を送受信するVoIPトランクと、
前記内線トランク相互間の接続及び前記内線トランクと前記VoIPトランクとの接続を行うスイッチと、
前記内線トランク、前記VoIPトランク、及び前記スイッチを制御する中央制御装置と、
前記IP網を介してICMPエコー要求パケットを受信したことに対応して、前記中央制御装置に対して生存確認要求メッセージを送信し、且つ前記中央制御装置からの前記生存確認要求メッセージに対する応答メッセージを受信した場合に、前記ICMPエコー要求パケットの応答としてICMP応答パケットを前記IP網を介して送信する保守トランクと、
を備えることを特徴とするIP構内交換機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−4027(P2011−4027A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143902(P2009−143902)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】