説明

LC複合電子部品

【課題】大型化を招来することなくノイズ抑制効果の大きなLC複合電子部品を得る。
【解決手段】コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40と、ノイズ循環容量電極65a,66aをそれぞれ有する絶縁層65,66を積層した積層体からなるLC複合電子部品であって、4組のLC共振回路を内蔵している。コイル電極31a,32a,33aと外部電極2pin inとを接続する引出し電極31bとノイズ循環容量電極65aとの間にノイズ循環容量C31が形成されている。また、コイル電極41a,42a,43aと外部電極1pin inとを接続する引出し電極43bとノイズ循環容量電極66aとの間にノイズ循環容量C32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC複合電子部品、特に、複数のインダクタ素子やキャパシタ素子を備えたLC複合電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回路基板上に配置された信号配線を流れるノイズを有効に除去するために、例えば、携帯電話における受信感度劣化を防止するために、各信号配線にノイズフィルタを配置している。携帯電話は通信方式によって使用される周波数帯域が異なる。どのような通信方式の携帯電話に対してもノイズを有効に除去するためには、800MHz〜2GHz程度の広い帯域にわたってノイズを除去することが必要となる。
【0003】
従来、ノイズフィルタとして用いられる、インダクタ素子を有する複数のコイル部と複数のコンデンサ部とを積層したLC複合電子部品としては、特許文献1に記載のものが知られている。この種のLC複合電子部品でノイズ除去効果を向上させるには、フィルタ定数、即ち、L値やC値を大きく設定する必要がある。しかし、L値やC値を大きくするには、積層枚数を増加させるか、電極パターンの面積を大きくする必要があり、小型化を維持することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−10914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、大型化を招来することなくノイズ抑制効果の大きなLC複合電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるLC複合電子部品は、
絶縁層上に形成されたグランド電極を有するグランド電極層と、絶縁層上に形成された信号電極を有する信号電極層とが積層されたコンデンサ部と、
絶縁層上に形成されたコイル電極を有するコイル電極層が積層されたコイル部と、
絶縁層上に形成されたノイズ循環容量電極を有するノイズ循環容量電極層と、
を備え、
前記コンデンサ部、前記コイル部及び前記ノイズ循環容量電極層を積層して積層体を形成し、
さらに、
前記積層体に形成された、前記コイル電極の一端と接続する第1外部電極と、
前記積層体に形成された、前記コイル電極の他端と接続する第2外部電極と、
を備え、
前記コイル部は、前記コイル電極と前記第1外部電極とを接続する第1引出し電極と、前記コイル電極と前記第2外部電極とを接続する第2引出し電極と、を備え、
前記ノイズ循環容量電極と該ノイズ循環容量電極に絶縁層を介して対向する前記コイル電極又は前記第1引出し電極との間にノイズ循環容量が形成されていること、
を特徴とする。
【0007】
前記LC複合電子部品は、コンデンサ部とコイル部によって複数のLC共振回路を積層体内に構成し、信号配線を流れるノイズを除去する。このとき、積層体内に形成されたコイル電極間にノイズ循環容量電極を介してノイズ循環容量が発生することにより、ノイズの反射を抑制し、ノイズが除去される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイル部とコンデンサ部とからなる複数のLC共振回路に流れ込んだノイズがコイル電極を循環することでノイズ循環容量が発生することにより、ノイズの反射を抑制し、ノイズを効果的に除去することができる。積層枚数を大きく増加させたり、電極パターンの面積を大きくする必要はなく、LC複合電子部品の小型化を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るLC複合電子部品の第1実施例を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施例の等価回路図である。
【図3】第1実施例の反射特性及び減衰特性を示すグラフである。
【図4】本発明に係るLC複合電子部品の第2実施例を示す分解斜視図である。
【図5】第2実施例の等価回路図である。
【図6】第2実施例の反射特性及び減衰特性を示すグラフである。
【図7】本発明に係るLC複合電子部品の第3実施例を示す分解斜視図である。
【図8】第3実施例の等価回路図である。
【図9】本発明に係るLC複合電子部品の第4実施例を示す分解斜視図である。
【図10】第4実施例の等価回路図である。
【図11】本発明に係るLC複合電子部品の第5実施例を示す分解斜視図である。
【図12】第5実施例の等価回路図である。
【図13】本発明に係るLC複合電子部品の第6実施例を示す分解斜視図である。
【図14】第6実施例の等価回路図である。
【図15】本発明に係るLC複合電子部品の第7実施例を示す分解斜視図である。
【図16】第7実施例の等価回路図である。
【図17】本発明に係るLC複合電子部品の第8実施例を示す分解斜視図である。
【図18】第8実施例の等価回路図である。
【図19】本発明に係るLC複合電子部品の第9実施例を示す分解斜視図である。
【図20】第9実施例の等価回路図である。
【図21】本発明に係るLC複合電子部品の第10実施例を示す分解斜視図である。
【図22】第10実施例の等価回路図である。
【図23】従来例及び本発明例におけるノイズ除去作用を示すための説明図である。
【図24】循環容量値ごとの反射特性を示すグラフである。
【図25】循環容量値ごとの減衰特性を示すグラフである。
【図26】ノイズ抑制効果を示すグラフである。
【図27】ポート間の信号干渉度合を示すグラフである。
【図28】循環容量の挿入位置に応じたノイズ除去作用を示すための説明図である。
【図29】循環容量の挿入位置に応じた反射特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るLC複合電子部品の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施例において共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(第1実施例、図1〜図3参照)
第1実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図1に、等価回路図を図2に示す。このLC複合電子部品は、概略、第1及び第2コンデンサ部10,20と第1及び第2コイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。なお、積層体の上下表面部には図示しない絶縁層が外層体として積層されており、他の実施例でも同様である。
【0012】
第1コンデンサ部10は、それぞれ、絶縁層(具体的にはセラミックシートを意味する、以下同じ)上に形成されたグランド電極11aを有するグランド電極層11と、グランド電極12aを有するグランド電極層12と、信号電極13a,13bを有する信号電極層13と、信号電極14a,14bを有する信号電極層14とを積層したものである。第2コンデンサ部20は、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極21aを有するグランド電極層21と、グランド電極22aを有するグランド電極層22と、信号電極23a,23bを有する信号電極層23と、信号電極24a,24bを有する信号電極層24とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、コンデンサC1,C2,C3,C4(図2参照)を形成している。
【0013】
第1コイル部30は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極31a,31cを有するコイル電極層31と、コイル電極32a,32cを有するコイル電極層32とを積層したものである。第2コイル部40は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極41a,41cを有するコイル電極層41と、コイル電極42a,42cを有するコイル電極層42とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、各コイル電極は絶縁層に形成したビアホールを介して螺旋状に接続され、コイルL1,L2,L3,L4(図2参照)を形成している。
【0014】
第1コンデンサ部10と第1コイル部30との間には、絶縁層51上に形成された共振調整電極51a,51bを有する電極層及び無地の絶縁層52が積層されている。また、第2コンデンサ部20と第2コイル部40との間には、絶縁層53上に形成された共振調整電極53a,53bを有する電極層及び無地の絶縁層54が積層されている。第1コイル部30と第2コイル部40との間には無地の絶縁層55が積層されている。
【0015】
以上の積層体の表面には、図1では形成箇所のみを示しているが、外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている(図2参照)。コイル電極31aの端部に位置する引出し電極31bは外部電極1pin outに接続され、コイル電極31cの端部に位置する引出し電極31dは外部電極4pin outに接続されている。コイル電極32aの端部に位置する引出し電極32bは外部電極1pin inに接続され、コイル電極32cの端部に位置する引出し電極32dは外部電極4pin inに接続されている。
【0016】
コイル電極41aの端部に位置する引出し電極41bは外部電極2pin inに接続され、コイル電極41cの端部に位置する引出し電極41dは外部電極3pin inに接続されている。コイル電極42aの端部に位置する引出し電極42bは外部電極2pin outに接続され、コイル電極42cの端部に位置する引出し電極42dは外部電極3pin outに接続されている。
【0017】
また、信号電極13a,14aは外部電極2pin outに接続され、信号電極13b,14bは外部電極3pin outに接続されている。信号電極23a,24aは外部電極1pin outに接続され、信号電極23b,24bは外部電極4pin outに接続されている。
【0018】
以上の各コンデンサ部10,20及び各コイル部30,40は図2に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0019】
また、共振調整電極51aは、外部電極2pin inに接続され、信号電極14aとで共振調整のための容量C11を形成している。共振調整電極51bは、外部電極3pin inに接続され、信号電極14bとで共振調整のための容量C12を形成している。共振調整電極53aは、外部電極1pin inに接続され、信号電極23aとで共振調整のための容量C13を形成している。共振調整電極53bは、外部電極4pin inに接続され、信号電極23bとで共振調整のための容量C14を形成している。
【0020】
さらに、コイル電極31aと共振調整電極51aとの間にはノイズ循環容量C21が形成される。コイル電極31cと共振調整電極51bとの間にはノイズ循環容量C22が形成される。コイル電極42aと共振調整電極53aとの間にはノイズ循環容量C23が形成される。コイル電極42cと共振調整電極53bとの間にはノイズ循環容量C24が形成される。引出し電極32bと引出し電極41bとの間にはノイズ循環容量C25が形成される。引出し電極32dと引出し電極41dとの間にはノイズ循環容量C26が形成される。
【0021】
以上のごとく、積層体内でノイズ循環容量C21〜C26が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。本第1実施例での反射特性を図3(A)の曲線Aに示し、減衰特性を図3(B)の曲線Aに示す。なお、曲線Bは前記特許文献1に記載のノイズフィルタにおける反射特性及び減衰特性である。
【0022】
(第2実施例、図4〜図6参照)
第2実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図4に、等価回路図を図5に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。
【0023】
コンデンサ部60は、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61と、信号電極62a,62bを有する信号電極層62と、信号電極63a,63bを有する信号電極層63とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、コンデンサC1,C2,C3,C4(図5参照)を形成している。
【0024】
第1コイル部30は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極31a,31cを有するコイル電極層31と、コイル電極32a,32cを有するコイル電極層32と、コイル電極33a,33cを有するコイル電極層33とを積層したものである。第2コイル部40は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極41a,41cを有するコイル電極層41と、コイル電極42a,42cを有するコイル電極層42と、コイル電極43a,43cを有するコイル電極層43とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、各コイル電極は絶縁層に形成したビアホールを介して螺旋状に接続され、コイルL1,L2,L3,L4(図5参照)を形成している。
【0025】
コンデンサ部60とコイル部30,40との間には、無地の絶縁層64,64が積層されている。第1コイル部30の上面には、絶縁層65上に形成されたノイズ循環容量電極65aを有する電極層が積層されている。さらに、第2コイル部40の下面には、絶縁層66上に形成されたノイズ循環容量電極66aを有する電極層が積層されている。
【0026】
以上の積層体の表面には、図4では形成箇所のみを示しているが、外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている(図5参照)。コイル電極31aの端部に位置する引出し電極31bは外部電極2pin inに接続され、コイル電極31cの端部に位置する引出し電極31dは外部電極3pin inに接続されている。コイル電極33aの端部に位置する引出し電極33bは外部電極2pin outに接続され、コイル電極33cの端部に位置する引出し電極33dは外部電極3pin outに接続されている。
【0027】
コイル電極41aの端部に位置する引出し電極41bは外部電極1pin outに接続され、コイル電極41cの端部に位置する引出し電極41dは外部電極4pin outに接続されている。コイル電極43aの端部に位置する引出し電極43bは外部電極1pin inに接続され、コイル電極43cの端部に位置する引出し電極43dは外部電極4pin inに接続されている。
【0028】
また、信号電極62aは外部電極2pin outに接続され、信号電極62bは外部電極3pin outに接続されている。信号電極63aは外部電極1pin outに接続され、信号電極63bは外部電極4pin outに接続されている。
【0029】
以上のコンデンサ部60及びコイル部30,40は図5に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0030】
また、引出し電極31b,31dとノイズ循環容量電極65aとの間にはノイズ循環容量C31が形成され、引出し電極43b,43dとノイズ循環容量電極66aとの間にはノイズ循環容量C32が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C31,C32が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。本第2実施例での反射特性を図6(A)の曲線Aに示し、減衰特性を図6(B)の曲線Aに示す。なお、曲線Bは前記特許文献1に記載のノイズフィルタにおける反射特性及び減衰特性である。
【0031】
(第3実施例、図7及び図8参照)
第3実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図7に、等価回路図を図8に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。
【0032】
コンデンサ部60は、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61と、信号電極62a,62b,62c,62dを有する信号電極層62と、信号電極63a,63b,63c,63dを有する信号電極層63とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、コンデンサC1,C2,C3,C4(図8参照)を形成している。
【0033】
第1コイル部30は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極31a,31cを有するコイル電極層31と、コイル電極32a,32cを有するコイル電極層32と、コイル電極33a,33cを有するコイル電極層33とを積層したものである。第2コイル部40は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極41a,41cを有するコイル電極層41と、コイル電極42a,42cを有するコイル電極層42と、コイル電極43a,43cを有するコイル電極層43とを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、各コイル電極は絶縁層に形成したビアホールを介して螺旋状に接続され、コイルL1,L2,L3,L4(図8参照)を形成している。
【0034】
コンデンサ部60とコイル部30,40との間には、無地の絶縁層64,64が積層されている。
【0035】
以上の積層体の表面には、図7では形成箇所のみを示しているが、外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている(図8参照)。コイル電極31aの端部に位置する引出し電極31bは外部電極2pin inに接続され、コイル電極31cの端部に位置する引出し電極31dは外部電極3pin inに接続されている。コイル電極33aの端部に位置する引出し電極33bは外部電極2pin outに接続され、コイル電極33cの端部に位置する引出し電極33dは外部電極3pin outに接続されている。
【0036】
コイル電極41aの端部に位置する引出し電極41bは外部電極1pin outに接続され、コイル電極41cの端部に位置する引出し電極41dは外部電極4pin outに接続されている。コイル電極43aの端部に位置する引出し電極43bは外部電極1pin inに接続され、コイル電極43cの端部に位置する引出し電極43dは外部電極4pin inに接続されている。
【0037】
また、信号電極62a,63aは外部電極1pin outに接続され、信号電極62b,63bは外部電極4pin outに接続されている。信号電極62c,63cは外部電極2pin outに接続され、信号電極62d,63dは外部電極3pin outに接続されている。
【0038】
以上のコンデンサ部60及びコイル部30,40は図8に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0039】
また、引出し電極31b,31d間にはノイズ循環容量C33が形成され、引出し電極43b,43d間にはノイズ循環容量C34が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C33,C34が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。本第3実施例での反射特性や減衰特性は前記第2実施例とほぼ同様である。特に、第3実施例においては、引出し電極間で容量結合させるため、コイルの磁束を大きく妨げることがなく、コイルのL値を大きく設定することができる。
【0040】
(第4実施例、図9及び図10参照)
第4実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図9に、等価回路図を図10に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。
【0041】
コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40の構成は、それぞれ、前記第2実施例(図4参照)と同様であり、詳細な説明は省略する。第1コイル部30の上面には、絶縁層67上に形成されたノイズ循環容量電極67aを有する電極層が積層されている。さらに、第2コイル部40の下面には、絶縁層68上に形成されたノイズ循環容量電極68aを有する電極層が積層されている。
【0042】
積層体の表面に外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている点も前記第2実施例と同様であり、それらとコイル電極や信号電極との接続関係も同様である。そして、図10の等価回路で示すように、それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0043】
本第4実施例において、ノイズ循環容量電極67a,68aはコイルL1,L2,L3,L4とほぼ同じ平面形状をなし、コイル電極31a,31cとノイズ循環容量電極67aとの間にはノイズ循環容量C35が形成され、コイル電極43a,43cとノイズ循環容量電極68aとの間にはノイズ循環容量C36が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C35,C36が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0044】
(第5実施例、図11及び図12参照)
第5実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図11に、等価回路図を図12に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。
【0045】
コンデンサ部60と第1及び第2コイル部30,40の構成は、それぞれ、前記第2実施例(図4参照)と同様であり、詳細な説明は省略する。第1コイル部30の上面には、絶縁層71上に形成されたノイズ循環容量電極71aを有する電極層が積層されている。さらに、第2コイル部40の下面には、絶縁層72上に形成されたノイズ循環容量電極72aを有する電極層が積層されている。
【0046】
積層体の表面に外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている点も前記第2実施例と同様であり、それらとコイル電極や信号電極との接続関係も同様である。そして、図12の等価回路で示すように、それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0047】
本第5実施例において、ノイズ循環容量電極71aはコイル電極31a,31cの端部に位置する引出し電極31b,31dと対向しており、ノイズ循環容量電極72aはコイル電極43a,43cの端部に位置する引出し電極43b,43dと対向している。従って、引出し電極31b,31dとノイズ循環容量電極71aとの間にはノイズ循環容量C37が形成され、引出し電極43b,43dとノイズ循環容量電極72aとの間にはノイズ循環容量C38が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C37,C38が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0048】
(第6実施例、図13及び図14参照)
第6実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図13に、等価回路図を図14に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60A,60Bと第1コイル部30A,30B及び第2コイル部40A,40Bとを積層した積層体にて構成されている。
【0049】
コンデンサ部60Aは、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61Aと、信号電極62a,62bを有する信号電極層62Aと、信号電極63a,63bを有する信号電極層63Aとを積層したものである。コンデンサ部60Bは、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61Bと、信号電極62a,62bを有する信号電極層62Bと、信号電極63a,63bを有する信号電極層63Bとを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、コンデンサC1,C2,C3,C4(図14参照)を形成している。
【0050】
コイル部30Aは、絶縁層上に形成されたコイル電極31a,31cを有するコイル電極層31からなる。コイル部30Bは、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極34a,34bを有するコイル電極層34と、コイル電極35a,35cを有するコイル電極層35とを積層したものである。コイル部40Aは、絶縁層上に形成されたコイル電極41a,41cを有するコイル電極層41からなる。コイル部40Bは、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極44a,44cを有するコイル電極層44と、コイル電極45a,45bを有するコイル電極層45とを積層したものである。
【0051】
これらの電極層が積層されることにより、各コイル電極は絶縁層に形成したビアホールを介して螺旋状に接続され、コイルL1A,L1B,L2A,L2B,L3A,L3B,L4A,L4B(図14参照)を形成している。特に、コイル電極31a,34a及びコイル電極31c,34bは電極層61A,62A,63Aを貫通して接続されている。コイル電極45a,41a及びコイル電極45b,41cは電極層61B,62B,63Bを貫通して接続されている。また、コイル部30Bとコイル部40Bとの間には、無地の絶縁層55が積層されている。
【0052】
以上の積層体の表面には、図13では形成箇所のみを示しているが、外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている(図14参照)。コイル電極31aの端部に位置する引出し電極31bは外部電極2pin outに接続され、コイル電極31cの端部に位置する引出し電極31dは外部電極3pin outに接続されている。コイル電極35aの端部に位置する引出し電極35bは外部電極2pin inに接続され、コイル電極35cの端部に位置する引出し電極35dは外部電極3pin inに接続されている。
【0053】
コイル電極44aの端部に位置する引出し電極44bは外部電極1pin inに接続され、コイル電極44cの端部に位置する引出し電極44dは外部電極4pin inに接続されている。コイル電極41aの端部に位置する引出し電極41bは外部電極1pin outに接続され、コイル電極41cの端部に位置する引出し電極41dは外部電極4pin outに接続されている。
【0054】
また、電極層62A,63Aの信号電極62a,63aはコイル電極31a,34aに接続され、信号電極62b,63bはコイル電極31c,34bに接続されている。電極層62B,63Bの信号電極62a,63aはコイル電極45a,41aに接続され、信号電極62b,63bはコイル電極45b,41cに接続されている。
【0055】
以上のコンデンサ部60A,60B及びコイル部30A,30B,40A,40Bは図14に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1A,L1B,C1、L2A,L2B,C2、L3A,L3B,C3、L4A,L4B,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0056】
また、引出し電極35d,44d間にはノイズ循環容量C41が形成され、引出し電極35b,44b間にはノイズ循環容量C42が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C41,C42が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0057】
(第7実施例、図15及び図16参照)
第7実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図15に、等価回路図を図16に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60A,60Bと第1コイル部30A,30B及び第2コイル部40A,40Bとを積層した積層体にて構成されている。
【0058】
コンデンサ部60A,60Bとコイル部30A,30B,40A,40Bの構成は、それぞれ、前記第6実施例(図13参照)と同様であり、詳細な説明は省略する。積層体の表面に外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている点も前記第6実施例と同様であり、それらとコイル電極との接続関係も同様である。但し、コイル電極31a,31cの端部に位置する引出し電極31b,31dは近接して配置され、コイル電極35a,35cの端部に位置する引出し電極35b,35dは近接して配置されている。また、コイル電極44a,44cの端部に位置する引出し電極44b,44dは近接して配置され、コイル電極41a,41cの端部に位置する引出し電極41b,41dは近接して配置されている。
【0059】
そして、電極層62A,63Aの信号電極62a,63aはコイル電極31a,34aに接続され、信号電極62b,63bはコイル電極31c,34bに接続されている。電極層62B,63Bの信号電極62a,63aはコイル電極45a,41aに接続され、信号電極62b,63bはコイル電極45b,41cに接続されている。
【0060】
以上のコンデンサ部60A,60B及びコイル部30A,30B,40A,40Bは図16に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1A,L1B,C1、L2A,L2B,C2、L3A,L3B,C3、L4A,L4B,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0061】
また、引出し電極41b,41d間にはノイズ循環容量C43が形成され、引出し電極44b,44d間にはノイズ循環容量C44が形成される。引出し電極31b,31d間にはノイズ循環容量C45が形成され、引出し電極35b,35d間にはノイズ循環容量C46が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C43〜C46が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0062】
(第8実施例、図17及び図18参照)
第8実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図17に、等価回路図を図18に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60A,60Bと第1コイル部30A,30B及び第2コイル部40A,40Bとを積層した積層体にて構成されている。
【0063】
また、コイル部L2B,L1Bの間には、絶縁層75上に形成されたノイズ循環容量電極75aを有する電極層及び無地の絶縁層76,76が積層されている。ノイズ循環容量電極75aはコイル電極35a,35c,44a,44cにほぼ対応した形状に形成されている。
【0064】
コンデンサ部60A,60Bとコイル部30A,30B,40A,40Bの構成は、それぞれ、前記第6実施例(図13参照)と同様であり、詳細な説明は省略する。積層体の表面に外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている点も前記第6実施例と同様であり、それらとコイル電極及び信号電極との接続関係も同様である。
【0065】
以上のコンデンサ部60A,60B及びコイル部30A,30B,40A,40Bは図18に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1A,L1B,C1、L2A,L2B,C2、L3A,L3B,C3、L4A,L4B,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0066】
また、引出し電極35b,44b間にはノイズ循環容量C51が形成され、コイル電極35a,35cを含めたノイズ循環容量電極75aの周囲にノイズ循環容量C52が形成される。引出し電極35d,44d間にはノイズ循環容量C53が形成され、コイル電極44a,44cを含めたノイズ循環容量電極75aの周囲にノイズ循環容量C54が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C51〜54が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0067】
(第9実施例、図19及び図20参照)
第9実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図19に、等価回路図を図20に示す。このLC複合電子部品は、概略、コンデンサ部60A,60Bと第1コイル部30A,30B及び第2コイル部40A,40Bとを積層した積層体にて構成されている。
【0068】
また、コイル部L2B,L1Bの間には、絶縁層75上に形成されたノイズ循環容量電極75bを有する電極層及び無地の絶縁層76,76が積層されている。ノイズ循環容量電極75bは引出し電極35b,35d,44b,44dにほぼ対応した線状に形成されている。
【0069】
コンデンサ部60A,60Bとコイル部30A,30B,40A,40Bの構成は、それぞれ、前記第6実施例(図13参照)と同様であり、詳細な説明は省略する。積層体の表面に外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている点も前記第6実施例と同様であり、それらとコイル電極及び信号電極との接続関係も同様である。
【0070】
以上のコンデンサ部60A,60B及びコイル部30A,30B,40A,40Bは図20に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1A,L1B,C1、L2A,L2B,C2、L3A,L3B,C3、L4A,L4B,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0071】
また、引出し電極35b,44b間にはノイズ循環容量C51が形成され、引出し電極35b,35dを含めたノイズ循環容量電極75bの周囲にノイズ循環容量C52が形成される。引出し電極35d,44d間にはノイズ循環容量C53が形成され、引出し電極44b,44dを含めたノイズ循環容量電極75bの周囲にノイズ循環容量C54が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C51〜54が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0072】
(第10実施例、図21及び図22参照)
第10実施例であるLC複合電子部品(ノイズフィルタアレイ)の分解斜視図を図21に、等価回路図を図22に示す。このLC複合電子部品は、前記第6実施例(図13及び図14参照)のコイル部30A,40A(コイルL1A,L2A,L3A,L4a)を省略したものであり、概略、コンデンサ部60A,60Bとコイル部30,40とを積層した積層体にて構成されている。
【0073】
コンデンサ部60Aは、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61Aと、信号電極62a,62bを有する信号電極層62Aと、信号電極63a,63bを有する信号電極層63Aとを積層したものである。コンデンサ部60Bは、それぞれ、絶縁層上に形成されたグランド電極61aを有するグランド電極層61Bと、信号電極62a,62bを有する信号電極層62Bと、信号電極63a,63bを有する信号電極層63Bとを積層したものである。これらの電極層が積層されることにより、コンデンサC1,C2,C3,C4(図22参照)を形成している。
【0074】
コイル部30は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極31a,31cを有するコイル電極層31と、コイル電極32a,32cを有するコイル電極層32とを積層したものである。コイル部40は、それぞれ、絶縁層上に形成されたコイル電極41a,41cを有するコイル電極層41と、コイル電極42a,42cを有するコイル電極層42とを積層したものである。
【0075】
これらの電極層が積層されることにより、各コイル電極は絶縁層に形成したビアホールを介して螺旋状に接続され、コイルL1,L2,L3,L4(図22参照)を形成している。そして、コイル部30,40の間には、幅広の引出し電極81a,81bを形成した絶縁層81及び幅広の引出し電極82a,82bを形成した絶縁層82が積層されている。コイル電極32aの一端はビアホールを介して引出し電極81aに接続され、コイル電極32cの一端はビアホールを介して引出し電極81bに接続されている。また、コイル電極41aの一端はビアホールを介して引出し電極82aに接続され、コイル電極41cの一端はビアホールを介して引出し電極82bに接続されている。コイル部30とコンデンサ部60Aの間には無地の絶縁層83が積層され、コイル部40とコンデンサ部60Bの間には無地の絶縁層84が積層されている。
【0076】
以上の積層体の表面には、図21では形成箇所のみを示しているが、外部電極1pin in、1pin out、2pin in、2pin out、3pin in、3pin out、4pin in、4pin outが形成されている(図22参照)。コイル電極31aの端部及び信号電極層62A,63A上の信号電極62a,63aは外部電極3pin outに接続され、コイル電極31cの端部及び信号電極層62A,63A上の信号電極62b,63bは外部電極2pin outに接続されている。コイル電極42aの端部及び信号電極層62B,63B上の信号電極62a,63aは外部電極4pin outに接続され、コイル電極42cの端部及び信号電極層62B,63B上の信号電極62b,63bは外部電極1pin outに接続されている。
【0077】
コイル電極32aの端部に接続されている引出し電極81aは外部電極3pin inに接続され、コイル電極32cの端部に接続されている引出し電極81bは外部電極2pin inに接続されている。コイル電極41aの端部に接続されている引出し電極82aは外部電極4pin inに接続され、コイル電極41cの端部に接続されている引出し電極82bは外部電極1pin inに接続されている。
【0078】
以上のコンデンサ部60A,60B及びコイル部30,40は図22に示す等価回路を形成している。それぞれの入出力用の外部電極間にはL1,C1、L2,C2、L3,C3、L4,C4からなるLC共振回路が形成され、ノイズフィルタとして機能する。
【0079】
また、引出し電極81a,82a間にはノイズ循環容量C61が形成され、引出し電極81b,82b間にはノイズ循環容量C62が形成される。このように、積層体内でノイズ循環容量C61,C62が発生することによりノイズの反射が抑制され、ノイズが除去されることになる。
【0080】
(実施例のまとめ、図23〜図29参照)
図23(A)に従来の4連LC複合電子部品におけるノイズの発生状況を示す。4本の信号線101〜104の入力側から流れてきたノイズNを反射して出力側への流出を防止する。なお、ノイズNの一部はグランド線105から流出する。通常の4連LC複合電子部品ではノイズを反射させることによりノイズを除去しているが、実際の実装状態においては必ずしも有効に機能していない。例えば、入力側の信号線路が出力側の信号線路よりも圧倒的に長い場合、反射されたノイズによって入力側のノイズレベルが増加するおそれがある。
【0081】
このような問題点に対して、前記各実施例では、低反射特性とすることにより入力側のノイズレベルの増加を抑え、優れたノイズ対策効果を得ている。また、各実施例に説明した積層体の内部構造を採用することによりL値、C値を増加させずにノイズ対策効果を向上させ、部品の小型化に寄与する。
【0082】
図23(B)に本発明例における低反射特性のメカニズムを示す。ここでは、各入力側の外部電極間に(図23(B)では信号線101,102間のみを示す)循環容量Cが形成されているため、信号線101から流入するノイズNは全反射されずに信号線102の入力側又は出力側へと循環され、一部はグランド線105にも漏れ、低反射特性を得ることができる。
【0083】
入力側ポート間に循環容量を形成することにより図24に示す低反射特性が得られる。図24は前記第1実施例での反射特性であり、循環容量のC値(0.1pF,1pF,2pF,3pF,5pF,7pF,10pF)ごとに示している。一方、入出力ポート間の減衰特性(アイソレーション)は図25に示すように低下する。実際上、信号線間のアイソレーションの大きな低下は誤動作や動作不安定につながるため、循環容量は適性値に設定する必要がある。そこで、反射特性の目標値を−3dB以下、アイソレーションの目標値を−14dB以下とする。反射量−3dBは電力比で1/2であり、実装時での評価においてノイズ周波数範囲で反射量が−3dB以下であれば、従来のLC複合電子部品に対して優位なノイズ対策効果が得られる(図26参照)。
【0084】
アイソレーションについては、4連のパラレル伝送回路において、アイソレーションの低下によってポート間に生じる誘導波形が、図27に示すように、正規の信号波形の振幅に対してローレベル時は20%を超えない、ハイレベル時は80%を下回らないように設定する必要がある。前記目標値−14dBという値はこの閾値(20%、80%)に相当する。また、パラレル伝送回路で使用される信号周波数は150MHz以下がほとんどであるため、アイソレーションは150MHzにおいて決定する。このような条件を満たす循環容量値は図24及び図25に示した特性から2〜7pFであることが好ましい。
【0085】
次に、循環容量の挿入位置について説明する。循環容量はその値が同じであれば、コイル層間ではなく、引出し電極間に挿入されることが望ましい。図28(A)に引出し電極間に循環容量Cが挿入されている場合を示し、図28(B)にコイル層間に循環容量C1,C2が挿入されている場合を示す。コイル層間に循環容量C1,C2を挿入すると分布定数型となり、引出し部の循環容量の低下を来し、ノイズNの反射N'が低下する。しかも、コイル内部に挿入された循環容量C2のノイズ除去効果は、入力側に挿入された循環容量C1によって阻害されるため、反射特性が悪化する。
【0086】
図29において、特性曲線Cは循環容量Cを引出し電極間に挿入した場合の反射量を示し、特性曲線Dは循環容量C1,C2をコイル層間に挿入した場合の反射量を示している。図29からも明らかなように、循環容量はその値が同じであれば、コイル層間ではなく、引出し電極間に挿入することにより好ましい反射特性を得ることができる。
【0087】
(他の実施例)
なお、本発明に係るLC複合電子部品は前記各実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0088】
例えば、各実施例におけるコイル電極や信号電極の詳細な形状や積層態様などは任意である。また、一つの積層体に内蔵されるコンデンサ部やコイル部の個数も任意である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明は、LC複合電子部品に有用であり、特に、大型化を招来することなくノイズ抑制効果が大きい点で優れている。
【符号の説明】
【0090】
10,20,60…コンデンサ部
30,40…コイル部
11、12,21,22,61…グランド電極層
13,14,23,24,62,63…信号電極層
31〜33,41〜43…コイル電極層
31b,31d,32b,32d,33b,33d,41b,41d,42b,42d,43b,43d,81a,81b,82a,82b…引出し電極
1pin in,1pin out,2pin in,2pin out,3pin in,3pin out,4pin in,4pin
out…外部電極
51a,51b,53a,53b…共振調整電極
65a,66a,67a,68a,71a,72a,75a,75b…ノイズ循環容量電極
L1,L2,L3,L4…コイル
C1,C2,C3,C4…コンデンサ
C21〜C26,C31〜C38,C41〜C46,C51〜C54,C61,C62…ノイズ循環容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に形成されたグランド電極を有するグランド電極層と、絶縁層上に形成された信号電極を有する信号電極層とが積層されたコンデンサ部と、
絶縁層上に形成されたコイル電極を有するコイル電極層が積層されたコイル部と、
絶縁層上に形成されたノイズ循環容量電極を有するノイズ循環容量電極層と、
を備え、
前記コンデンサ部、前記コイル部及び前記ノイズ循環容量電極層を積層して積層体を形成し、
さらに、
前記積層体に形成された、前記コイル電極の一端と接続する第1外部電極と、
前記積層体に形成された、前記コイル電極の他端と接続する第2外部電極と、
を備え、
前記コイル部は、前記コイル電極と前記第1外部電極とを接続する第1引出し電極と、前記コイル電極と前記第2外部電極とを接続する第2引出し電極と、を備え、
前記ノイズ循環容量電極と該ノイズ循環容量電極に絶縁層を介して対向する前記コイル電極又は前記第1引出し電極との間にノイズ循環容量が形成されていること、
を特徴とするLC複合電子部品。
【請求項2】
前記ノイズ循環容量は2〜7pFであることを特徴とする請求項1に記載のLC複合電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2009−171606(P2009−171606A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106222(P2009−106222)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【分割の表示】特願2008−290830(P2008−290830)の分割
【原出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】