説明

MEMS構造体及びその製造方法

【課題】振動体と検出電極との位置ずれを抑えることで静電容量変化の検出精度をより高くすることのできるMEMS構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持構造部11と前記支持構造部11に対して変位可能に支持された振動体12bとからなる振動体部1Aと、基板21と前記基板21上に形成された検出電極22aとからなる検出電極部2Aとを備えるとともに、振動体12bと検出電極22aとが間隔を空けて対向するようにして前記振動体部1Aと前記検出電極部2Aとが接合され、振動体12bと検出電極22aとの間の静電容量の変化を検出するように構成されたMEMS構造体において、振動体部1Aにおける検出電極部2Aとの対向面に、検出電極部2Aの外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部15が形成されていることにより、振動体部1Aと検出電極部2Aとの接合時に生じる振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑えることができるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体と、この振動体に対向する検出電極とを備え、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するMEMS構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術は、マイクロマシン技術の一つで、携帯電話などの小型電子機器に用いられる部品の製造技術として注目されている。
MEMS技術により形成されたMEMS構造体の一つとして、片持ち梁状や両持ち梁状の振動体と、この振動子に対向する検出電極とを備え、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するMEMS構造体が、角速度センサ、加速度センサなどの力学量センサのためのセンサ素子として用いられており、その構成は例えば特許文献1に示されている。
[従来の構成例]
図11により、従来のMEMS構造体及びその製造方法の構成例を示す。図11(a)は、振動体部1と検出電極部2とを接合する前の状態を示す側方断面図であり、図11(b)および図11(c)は、振動体部1と検出電極部2とを接合した後の状態を示す側方断面図(図11(c)のA−A断面図)および平面図である。
【0003】
(イ)従来の構成例における振動体部の構成:
図11(a)に示されるように、振動体部1は、支持構造部11(例えば3200μm□)と可動部12(例えば梁長800μm、梁幅200μm、重錘サイズ800μm□)とを備えた構成となっている。そして、振動体部1は、支持構造部11より水平方向(図11(a)の紙面における右方向)に突出した梁12aの先端に、梁12aよりも幅の広い重錘部である振動体12bが形成されているとともに、梁12aと振動体12bとからなる可動部12と支持構造部11との間に空隙13(例えば深さ350μm)が形成され、振動体12bが支持構造部11に対して変位可能に支持されてなる片持ち梁状の構造をなしている。振動体12bは、可動電極として機能するものであり、梁12aおよび支持構造部11とともに、Si(シリコン)などの材料で形成されている。
【0004】
(ロ)従来の構成例における検出電極部の構成:
図11(a)に示されるように、検出電極部2は、例えば電気絶縁材料からなる基板21(例えば2600μm□)に、検出電極22a(例えばサイズ600μm×550μm)、後段の電子回路と接続するための検出電極用接続パッド22c、検出電極22aと検出電極用接続パッド22cとの間を導通接続する検出電極用配線22b(例えば幅100μm)、および、可動電極用パッド23aを形成した構成となっている。
(ハ)従来の構成例における振動体部と検出電極部との接合:
振動体部1と検出電極部2とを、例えば陽極接合などにより接合して、図11(b)〜(c)に示されるMEMS構造体100を構成する。なお、上記の接合の後、例えばメタライズ処理などにより、可動電極用パッド23aと支持構造部11とが電気的に導通する構造とする。なお、陽極接合は、シリコンとガラスとを重ね合わせ、加熱して数百Vの直流電圧を印加し、Si-Oの共有結合をさせることで接合する技術であり、シリコンとガラスとが接合層を介さずに直接接合されるため、接合強度が強いという特長をもっている。
[MEMS構造体のセンサ素子への適用]
図11に示されるようにして作製されたMEMS構造体100は、振動体12b(可動電極)と検出電極22aとが間隔を空けて対向する構造であって、振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの間の静電容量C1の変化を検出するセンサ素子として機能するものであり、この静電容量変化に基づいて検出される振動体の変位を通じて、加速度、角速度などの力学量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−46995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動体(可動電極)と検出電極との間の静電容量C1の変化を検出するMEMS構造体において、振動体部と検出電極部とを接合した状態で振動体と検出電極との位置ずれが生じている場合、例えば下記(a)〜(b)のように、電極対向面積の減少などにより、静電容量変化に基づいて振動体の変位を正確に検出することができなくなり、このMEMS構造体を用いた加速度センサ、角速度センサなど力学量センサの測定精度が低いものとなる。
(a)振動体(可動電極)の検出電極面に対する垂直方向(図11(c)の紙面における奥行き方向)の変位に伴う電極間距離の変化による静電容量C1の変化を検出するMEMS構造体では、検出電極面に対する平行方向(図11(c)の紙面における上下方向または左右方向)に沿って振動体と検出電極との位置ずれが生じている場合、位置ずれの無い場合に比べて電極対向面積が小さい分だけ静電容量C1の大きさが小さくなっているので、例えば静電容量検出回路周辺の浮遊容量の影響をより大きく受けることなどにより、静電容量C1を正確に検出することができなくなり、これにより、振動体の変位を正確に検出することができなくなる。
【0007】
(b)振動体(可動電極)の検出電極面に対する平行方向(図11(c)の紙面における上下方向)の変位に伴う電極対向面積の変化による静電容量C1の変化を検出するMEMS構造体では、検出電極面に対して平行であって上記変位の方向に直交する方向(図11(c)の紙面における左右方向)に沿って振動体と検出電極との位置ずれが生じている場合、位置ずれの無い場合に比べて電極対向面積が小さい分だけ静電容量C1の大きさが小さくなっているので、例えば静電容量検出回路周辺の浮遊容量の影響をより大きく受けることなどにより、静電容量C1を正確に検出することができなくなり、これにより、振動体の変位を正確に検出することができなくなる。また、上記変位の方向(図11(c)の紙面における上下方向)に沿って振動体と検出電極との位置ずれが生じている場合、振動体が基準位置にある状態での静電容量C1の大きさが位置ずれの無い場合の静電容量値からずれているので、振動体の変位を正確に検出することができなくなる。
【0008】
そして、振動体部と検出電極部とを接合した状態での振動体(可動電極)と検出電極との位置ずれの要因としては、検出電極部の作製工程において基板上に検出電極を形成する際の位置誤差、および、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差が考えられる。
図12は、図11のMEMS構造体における位置ずれを示す説明図であって、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差が生じた場合における接合後のMEMS構造体100を示すものである。図12の(a)および(b)は、振動体部1と検出電極部2とを接合した後の状態を示す側方断面図(図12(b)のA−A断面図)および平面図であって、それぞれ、図11の(b)および(c)に対応している。図12(b)において、支持構造部11に対する基板21の相対位置、すなわち振動体部1に対する検出電極部2の相対位置が、2点鎖線で示される基準位置に対して紙面の左方向および下方向にそれぞれL1aおよびL1bだけずれている。検出電極部2の作製工程において基板21上に検出電極22aを形成する際の位置誤差がない場合には、振動体12b(可動電極)に対する検出電極22aの相対位置も、上記と同じずれ量L1aおよびL1bだけずれている。
【0009】
そして、図12では、振動体12b(可動電極)に対する検出電極22aの相対位置ずれ(L1a、L1b)により、上記(a)〜(b)項で述べたように、静電容量変化に基づいて振動体12bの変位を正確に検出することができなくなっている。
このため、本発明は、上記の問題点を解決し、振動体と検出電極との位置ずれを抑えることで静電容量変化に基づく振動体の変位の検出精度をより高くすることのできるMEMS構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、MEMS構造体を、支持構造部と前記支持構造部に対して変位可能に支持された振動体とからなる振動体部と、基板と前記基板上に形成された検出電極とからなる検出電極部とを備えるとともに、振動体と検出電極とが間隔を空けて対向するようにして前記振動体部と前記検出電極部とが接合され、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するように構成されたMEMS構造体において、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部を設けた構成とする(請求項1の発明)。
上記請求項1の発明によれば、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、振動体部と検出電極部との接合時に、上記嵌合部が嵌合するようにして位置合わせすることにより、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを小さく抑えることができるので、静電容量変化に基づく振動体の変位の検出精度をより高くすることができるようになる。
【0011】
そして、上記請求項1に記載のMEMS構造体においては、前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部を形成した構成とするとよい(請求項2の発明)。
また、上記請求項1に記載のMEMS構造体においては、前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凸部(または凹部)を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凸部(または凹部)と嵌合する検出電極部側の凹部(または凸部)を形成した構成としてもよい(請求項3の発明)。
さらに、本発明によれば、MEMS構造体の製造方法を、支持構造部と前記支持構造部に対して変位可能に支持された振動体とからなる振動体部と、基板と前記基板上に形成された検出電極とからなる検出電極部とを備えるとともに、振動体と検出電極とが間隔を空けて対向するようにして前記振動体部と前記検出電極部とが接合され、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するように構成されたMEMS構造体の製造方法において、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部を設けておき、振動体部と検出電極部との接合時に、前記嵌合部が嵌合するようにして位置合わせする構成とする(請求項4の発明)。
【0012】
上記請求項4の発明によれば、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、振動体部と検出電極部との接合時に、上記嵌合部が嵌合するようにして位置合わせすることにより、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを小さく抑えることができるので、静電容量変化に基づく振動体の変位の検出精度をより高くすることができるようになる。
そして、上記請求項4に記載のMEMS構造体の製造方法においては、前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部を形成しておき、振動体部と検出電極部との接合時に、検出電極部と、振動体部側の凹部とが嵌合するようにして位置合わせする構成とするとよい(請求項5の発明)。
【0013】
また、上記請求項4に記載のMEMS構造体の製造方法においては、前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凸部(または凹部)を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凸部(または凹部)と嵌合する検出電極部側の凹部(または凸部)を形成しておき、振動体部と検出電極部との接合時に、振動体部側の凸部(または凹部)と、検出電極部側の凹部(または凸部)とが嵌合するようにして位置合わせする構成としてもよい(請求項6の発明)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述のように、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを小さく抑えることができるので、静電容量変化に基づく振動体の変位の検出精度をより高くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図
【図2】図1のMEMS構造体における振動体部の構造図
【図3】図1のMEMS構造体における検出電極部の構造図
【図4】本発明の実施例2によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図
【図5】図4のMEMS構造体における振動体部の構造図
【図6】図4のMEMS構造体における検出電極部の構造図
【図7】本発明の実施例3によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図
【図8】図7のMEMS構造体における振動体部の構造図
【図9】図7のMEMS構造体における検出電極部の構造図
【図10】本発明の実施例4によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図
【図11】従来のMEMS構造体の製造方法の概略工程図
【図12】図11のMEMS構造体における位置ずれを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1〜図10に示す実施例に基づいて説明する。同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
[本発明の実施形態]
本発明は、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部を設けておき、振動体部と検出電極部との接合時に、上記嵌合部が嵌合するようにして位置合わせするものである。これにより、本発明では、接合工程における位置合わせ(アライメント)の際に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えることができる。
【0017】
上記嵌合部を形成する具体的構成例を以下の実施例1〜4で説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1は、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策であって、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部を形成しておき、振動体部と検出電極部とを接合する前に、検出電極部が振動体部の凹部内に嵌合するようにして位置合わせするものである。これにより、実施例1では、接合工程における位置合わせ(アライメント)の際に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えることができる。
図1〜図3により、本発明の実施例1によるMEMS構造体及びその製造方法の構成を示す。図1は、本発明の実施例1によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図であり、図1(b)〜(c)には振動体部1Aと検出電極部2Aとが接合されてなるMEMS構造体100Aの構造が示されている。また、図2は振動体部1Aの構造図であり、図3は検出電極部2Aの構造図である。図1〜図3において、図11に示す従来の構成例と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示し、従来の構成例(図11)と異なっている部分のみを説明する。
【0019】
(イ)実施例1における振動体部の構成:
図2(a)および図2(b)は、それぞれ、振動体部1Aの側方断面図(図2(b)のA−A断面図)および平面図である。図2に示されるように、振動体部1Aは、図11で述べた振動体部1と同様に、支持構造部11(例えば3200μm□)と可動部12(例えば梁長800μm、梁幅200μm、重錘サイズ800μm□)とを備えた構成となっている。
そして、振動体部1Aは、支持構造部11より水平方向(図2(a)の紙面における右方向)に突出した梁12aの先端に、梁12aよりも幅の広い重錘部である振動体12bが形成されているとともに、梁12aと振動体12bとからなる可動部12と支持構造部11との間に空隙13(例えば深さ350μm)が形成され、振動体12bが支持構造部11に対して変位可能に支持されてなる片持ち梁状の構造をなしている。振動体12bは、可動電極として機能するものであり、梁12aおよび支持構造部11とともに、Si(シリコン)などの材料で形成されている。
【0020】
また、振動体部1Aと検出電極部2Aとが接合された状態で振動体部1AのSi(シリコン)などからなる支持構造部11と検出電極部2Aの検出電極22aおよび検出電極用配線22bとが接触しないようにするために、振動体部1Aの上面側(図2(a)における上側)には、上面からの深さd1の凹部14が形成されている。
なお、振動体部1Aの作製には、例えば、上部Si層と下部Si層とをSiO2からなる絶縁層で挟み込んだSOI(Silicon on Insulator)ウェハを用いることができる。SOIウェハとしては、下部Si層の厚さが200〜525μm、絶縁層の厚さが0.2〜1.0μm、上部Si層の厚さが2〜30μmのものが一例として挙げられる。このSOIウェハを用いて、フォトリソグラフィなどにより、振動体12と支持構造部11との間の空隙13、および凹部14などを形成して、振動体部1Aを作製する。
【0021】
そして、実施例1では、振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑制するため、振動体部1Aと検出電極部2Aとの接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、振動体部1Aに深さd2(例えば1μm)の凹部15をエッチングにより形成しておく。ここで、この凹部15の内周形状は、検出電極部2Aの外周形状(例えば2600μm□)に合わせておき、振動体部1Aの凹部15と検出電極部2Aとが嵌合できるようにしておく。
(ロ)実施例1における検出電極部の構成:
図3(a)および図3(b)は、それぞれ、検出電極部2Aの側方断面図(図3(b)のA−A断面図)および平面図である。図3に示されるように、検出電極部2Aは、図11で述べた検出電極部2と同様に、例えば電気絶縁材料からなる基板21(例えば2600μm□)に、検出電極22a(例えばサイズ600μm×550μm)、後段の電子回路と接続するための検出電極用接続パッド22c、検出電極22aと検出電極用接続パッド22cとの間を導通接続する検出電極用配線22b(例えば幅100μm)、および、可動電極用パッド23aを形成した構成となっている。
【0022】
そして、基板21における検出電極用接続パッド22cの部分には貫通孔22dを形成するとともに貫通孔22dの内周面に金属層22eを形成しており、この金属層22eを介して検出電極用接続パッド22cと検出電極用配線22bとを電気的に接続するようにしている。また、基板21における可動電極用パッド23aの部分には貫通孔23bを形成するとともに貫通孔23bの内周面に可動電極用パッド23aと電気的に接続された金属層23cを形成している。
なお、検出電極部2Aにおける検出電極22a、検出電極用配線22b、検出電極用接続パッド22cおよび可動電極用パッド23aは、例えばガラス板からなる基板21上に銅などの金属膜を蒸着,スパッタなどの方法で薄膜状に成膜し、この金属膜表面に、所望の検出電極、検出電極用配線、検出電極用接続パッドおよび可動電極用パッドの形状となるようにレジストパターニングを行った後、ドライエッチングやウェットエッチングにより金属膜のうちの不要な部分を除去して、検出電極22a、検出極用配線22b、検出電極用接続パッド22cおよび可動電極用パッド23aの金属膜部分だけを残すことにより形成することができる。
【0023】
また、上記の貫通孔22d,貫通孔23bは、例えばガラス板からなる基板21に対してサンドブラストなどの方法で加工することができ、貫通孔22d,貫通孔23bの内周面の金属層22e,23cは無電解メッキなどの方法で形成することができる。
また、検出電極部2Aにおける基板21として、ガラス板の代わりにSi基板を用いてもよい。基板21としてSi基板を用いる場合には、基板21上に例えばSiO2などの絶縁層を形成した上で、この絶縁層上に検出電極22a、検出電極用配線22bおよび検出電極用接続パッド22cを形成することにより検出電極部2Aを作製することができる。
(ハ)実施例1における振動体部と検出電極部との接合:
図1(a)は、振動体部1Aと検出電極部2Aとを接合する前の状態を示す側方断面図であり、図1(b)および図1(c)は、振動体部1Aと検出電極部2Aとを接合した後の状態を示す側方断面図(図1(c)のA−A断面図)および平面図である。図1に示されるように、振動体部1Aと検出電極部2Aとを、例えば陽極接合などにより接合して、図1(b)〜(c)に示されるMEMS構造体100Aを構成する。
【0024】
なお、上記の接合の後、検出電極部2Aにおける貫通孔23bの内周面および支持構造部11の上面部領域23dをメタライズ処理して、可動電極用パッド23aと支持構造部11とが電気的に導通する構造とする。なお、図1(a)には、上述のように、接合前の検出電極部2Aにおける貫通孔23bの内周面に、可動電極用パッド23aに接続された金属層23cが既に形成されている構成を示しているが、貫通孔23bの内周面の金属層23cは、接合の後におけるメタライズ処理によって初めて形成される構成としてもよい。
そして、実施例1では、振動体部1Aと検出電極部2Aとの接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、ボンダーにて振動体部1Aと検出電極部2Aとを陽極接合などにより接合する前に、図1に示されるように、検出電極部2Aが振動体部1Aの凹部15内に嵌合するようにして位置合わせすることにより、接合工程における位置あわせ(アライメント)の際に生じる振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑えることができる。
【0025】
(ニ)別の構成例1:
実施例1では、図2に示したように、振動体部1Aに、深さがd2であって,連続的な土手部で全外周を囲まれた凹部15をエッチングにより形成しておく構成としているが、振動体部1Aの構成としては、凹部15の外周を囲む土手部の一部が切り欠かれた構成を適用してもよく、検出電極部2Aが振動体部1Aの凹部15内に嵌合するようにして位置合わせすることができればよい。
(ホ)別の構成例2:
実施例1では、上述のように、振動体部1Aにおける検出電極部2Aとの対向面に、検出電極部2Aの外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部1A側の凹部15を形成しておき、振動体部1Aと検出電極部2Aとの接合時に検出電極部2Aと振動体部側の凹部15とが嵌合するようにして位置合わせする構成としているが、これに代えて、検出電極部における振動体部との対向面に、振動体部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ検出電極部側の凹部を形成しておき、振動体部と検出電極部との接合時に振動体部と検出電極部側の凹部とが嵌合するようにして位置合わせする構成としてもよい。ただし、後者の構成では、検出電極部側に、振動体部の外周形状に合わせた内周形状の凹部をエッチング等により形成しておく構成となるので、検出電極部の外周形状は振動体部の外周形状(例えば3200μm□)よりもさらに大きな形状とすることが必要となる。このため、図1〜3で説明した前者の構成、すなわち、嵌合用の凹部を振動体部側に設ける構成の方が、MEMS構造体の全体構造をコンパクトなものとする上でより好適である。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施例2は、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策であって、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凹部を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凹部と嵌合する検出電極部側の凸部を形成しておき、振動体部と検出電極部とを接合する前に、振動体部側の凹部と検出電極部側の凸部とが嵌合するようにして位置合わせするものである。これにより、実施例2では、接合工程における位置合わせ(アライメント)の際に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えることができる。
図4〜図6により、本発明の実施例2によるMEMS構造体及びその製造方法の構成を示す。図4は、本発明の実施例2によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図であり、図4(b)〜(c)には振動体部1Bと検出電極部2Bとが接合されてなるMEMS構造体100Bの構造が示されている。また、図5は振動体部1Bの構造図であり、図6は検出電極部2Bの構造図である。図4〜図6において、図11に示す従来の構成例、あるいは、図1〜3で説明した実施例1と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示し、異なっている部分のみを説明する。
【0027】
(イ)実施例2における振動体部の構成:
図5(a)および図5(b)は、それぞれ、振動体部1Bの側方断面図(図5(b)のA−A断面図)および平面図である。
実施例2における振動体部1B(図5)は、実施例1における振動体部1A(図2)に対して、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ凹部を形成する代わりに、検出電極部2Bの凸部26と対応する位置に、凸部26の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部16をエッチング等により形成しておく点に特徴があり、それ以外の点では、振動体部1A(図2)と同様である。
(ロ)実施例2における検出電極部の構成:
図6(a)および図6(b)は、それぞれ、検出電極部2Bの側方断面図(図6(b)のA−A断面図)および平面図である。
【0028】
実施例2における検出電極部2B(図6)は、実施例1における検出電極部2A(図3)に対して、振動体部1Bの凹部16と対応する位置に、凹部16の内周形状に嵌合する外周形状を持つ凸部26を成膜等により形成しておく点に特徴があり、それ以外の点では、検出電極部2A(図3)と同様である。
(ハ)実施例2における振動体部と検出電極部との接合
図4(a)は、振動体部1Bと検出電極部2Bとを接合する前の状態を示す側方断面図であり、図4(b)および図4(c)は、振動体部1Bと検出電極部2Bとを接合した後の状態を示す側方断面図(図4(c)のA−A断面図)および平面図である。図4に示されるように、振動体部1Bと検出電極部2Bとを、例えば陽極接合などにより接合して、図4(b)〜(c)に示されるMEMS構造体を構成する。
【0029】
そして、実施例2では、振動体部1Bと検出電極部2Bとの接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、ボンダーにて振動体部1Bと検出電極部2Bとを陽極接合などにより接合する前に、図4に示されるように、振動体部1B側の凹部16と検出電極部2B側の凸部26とが嵌合するようにして位置合わせすることにより、接合工程における位置あわせ(アライメント)の際に生じる振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑えることができる。
(ニ)実施例2における位置合わせ用の凸部および凹部:
実施例2における位置合わせ用の凸部26及び凹部16のそれぞれの平面形状は、図4〜図6に示されるように矩形であってもよく、その他の形状であってもよい。
凸部26及び凹部16のそれぞれの個数は、図4〜図6に示される2個に限定されるものではなく、それ以上の個数であってもよく、凸部26と凹部16とが嵌合した状態で振動体部1Bと検出電極部2Bとの接合面上での相対的位置関係が確実に規定されるものであればよい。そして、凸部26及び凹部16のそれぞれの平面形状が、円形以外の形状、例えば図4〜図6に示される矩形である場合には、凸部26及び凹部16のそれぞれの個数が1個であっても、凸部26と凹部16とが嵌合した状態で振動体部1Bと検出電極部2Bとの接合面上での相対的位置関係が規定されるので、適用可能である。
【実施例3】
【0030】
本発明の実施例3は、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策であって、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凸部を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凸部と嵌合する検出電極部側の凹部を形成しておき、振動体部と検出電極部とを接合する前に、振動体部側の凸部と検出電極部側の凹部とが嵌合するようにして位置合わせするものである。これにより、実施例3では、接合工程における位置合わせ(アライメント)の際に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えることができる。
図7〜図9により、本発明の実施例3によるMEMS構造体及びその製造方法の構成を示す。図7は、本発明の実施例3によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図であり、図7(b)〜(c)には振動体部1Cと検出電極部2Cとが接合されてなるMEMS構造体100Cの構造が示されている。また、図8は振動体部1Cの構造図であり、図9は検出電極部2Cの構造図である。図7〜図9において、図11に示す従来の構成例、あるいは、図1〜3で説明した実施例1と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示し、異なっている部分のみを説明する。
【0031】
(イ)実施例3における振動体部の構成:
図8(a)および図8(b)は、それぞれ、振動体部1Cの側方断面図(図8(b)のA−A断面図)および平面図である。
実施例3における振動体部1C(図8)は、実施例1における振動体部1A(図2)に対して、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ凹部を形成する代わりに、検出電極部2Cの凹部27と対応する位置に、凹部27の内周形状に嵌合する外周形状を持つ振動体部側の凸部17を成膜等により形成しておく点に特徴があり、それ以外の点では、振動体部1A(図2)と同様である。
(ロ)実施例3における検出電極部の構成:
図9(a)および図9(b)は、それぞれ、検出電極部2Cの側方断面図(図9(b)のA−A断面図)および平面図である。
【0032】
実施例3における検出電極部2C(図9)は、実施例1における検出電極部2A(図3)に対して、振動体部1Cの凸部17と対応する位置に、凸部17の外周形状に嵌合する内周形状を持つ凹部27をエッチング等により形成しておく点に特徴があり、それ以外の点では、検出電極部2A(図3)と同様である。
(ハ)実施例3における振動体部と検出電極部との接合
図7(a)は、振動体部1Cと検出電極部2Cとを接合する前の状態を示す側方断面図であり、図7(b)および図7(c)は、振動体部1Cと検出電極部2Cとを接合した後の状態を示す側方断面図(図7(c)のA−A断面図)および平面図である。図7に示されるように、振動体部1Cと検出電極部2Cとを、例えば陽極接合などにより接合して、図7(b)〜(c)に示されるMEMS構造体を構成する。
【0033】
そして、実施例3では、振動体部1Cと検出電極部2Cとの接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、ボンダーにて振動体部1Cと検出電極部2Cとを陽極接合などにより接合する前に、図7に示されるように、振動体部1C側の凸部17と検出電極部2B側の凹部27とが嵌合するようにして位置合わせすることにより、接合工程における位置あわせ(アライメント)の際に生じる振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑えることができる。
(ニ)実施例3における位置合わせ用の凸部および凹部:
実施例3における位置合わせ用の凸部17及び凹部27のそれぞれの平面形状は、図7〜図9に示されるように矩形であってもよく、その他の形状であってもよい。
凸部17および凹部27のそれぞれの個数は、図7〜図9に示される2個に限定されるものではなく、それ以上の個数であってもよく、凸部17と凹部27とが嵌合した状態で振動体部1Cと検出電極部2Cとの接合面上での相対的位置関係が確実に規定されるものであればよい。そして、凸部17および凹部27のそれぞれの平面形状が、円形以外の形状、例えば図7〜図9に示される矩形である場合には、凸部17および凹部27のそれぞれの個数が1個であっても、凸部17と凹部27とが嵌合した状態で振動体部1Cと検出電極部2Cとの接合面上での相対的位置関係が規定されるので、適用可能である。
【実施例4】
【0034】
本発明の実施例4は、振動体部と検出電極部との接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策であって、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部として、検出電極部の側面に振動体部側に向けて突出した形状を有するガイドピン構造部を設けるとともに、振動体部における検出電極部との対向面に前記検出電極部側のガイドピン構造部と嵌合する振動体部側の凹部を形成しておき、振動体部と検出電極部とを接合する前に、振動体部側の凹部と検出電極部側のガイドピン構造部とが嵌合するようにして位置合わせするものである。これにより、実施例4では、接合工程における位置合わせ(アライメント)の際に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えることができる。
図10により、本発明の実施例4によるMEMS構造体及びその製造方法の構成を示す。図10は、本発明の実施例4によるMEMS構造体の製造方法の概略工程図であり、図10(a)には接合される前の状態にある振動体部1Dと検出電極部2Dとが示されているとともに、図10(b)〜(c)には振動体部1Dと検出電極部2Dとが接合されてなるMEMS構造体100Dの構造が示されている。図10において、図11に示す従来の構成例、あるいは、図4〜6で説明した実施例2と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示し、異なっている部分のみを説明する。
【0035】
(イ)実施例4における振動体部の構成:
図10(a)には、振動体部1Dの側方断面図が示されている。
実施例4における振動体部1D(図10)は、実施例2における振動体部1B(図5)と同様に、凹部18を形成する構成であって、凹部18の形成位置は振動体部1Bの凹部16と異なるが、それ以外の点では、振動体部1B(図5)と同様である。そして、凹部18の形成位置は、後述の検出電極部2Dにおけるガイドピン構造部28に対応する位置とする。
(ロ)実施例4における検出電極部の構成:
図10(a)には、検出電極部2Dの側方断面図が示されている。
実施例4における検出電極部2D(図10)は、実施例2における検出電極部2B(図6)における凸部26の代わりに、検出電極部2Dの側面に振動体部1D側に向けて突出した形状を有するガイドピン構造部28を設けた構成であるが、それ以外の点では、検出電極部2B(図6)と同様である。
【0036】
(ハ)実施例4における振動体部と検出電極部との接合
図10(a)は、振動体部1Dと検出電極部2Dとを接合する前の状態を示す側方断面図であり、図10(b)および図10(c)は、振動体部1Dと検出電極部2Dとを接合した後の状態を示す側方断面図(図10(c)のA−A断面図)および平面図である。図10に示されるように、振動体部1Dと検出電極部2Dとを、例えば陽極接合などにより接合して、図10(b)〜(c)に示されるMEMS構造体100Dを構成する。
そして、実施例4では、振動体部1Dと検出電極部2Dとの接合工程において両者を位置合わせ(アライメント)する際の位置誤差への対策として、ボンダーにて振動体部1Dと検出電極部2Dとを陽極接合などにより接合する前に、図10に示されるように、振動体部1D側の凹部18と検出電極部2D側のガイドピン構造部28とが嵌合するようにして位置合わせすることにより、接合工程における位置あわせ(アライメント)の際に生じる振動体12bと検出電極22aとの位置ずれを抑えることができる。
【0037】
(ニ)実施例4における位置合わせ用のピンガイド構造部:
実施例4における位置合わせ用のピンガイド構造部28の平面形状は、図10に示されるように矩形であってもよく、その他の形状であってもよい。
ピンガイド構造部28を設ける個数および配置位置の構成は、図10に示されるような、4個配置の構成、すなわち、方形の検出電極部2Dの各側面にそれぞれ1個ずつピンガイド構造部28を設ける構成に限定されるものではなく、振動体部1D側の凹部18と検出電極部2D側のガイドピン構造部28とが嵌合した状態で振動体部1Dと検出電極部2Dとの接合面上での相対的位置関係が確実に規定されるものであればよい。
[MEMS構造体の適用例]
本発明によるMEMS構造体は、振動体(可動電極)と検出電極とが間隔を空けて対向する構造であって、振動体(可動電極)と検出電極との間の静電容量C1の変化を検出するセンサ素子として機能するものであり、この静電容量変化に基づいて検出される振動体の変位を通じて、加速度、角速度などの力学量を測定することができる。
【0038】
(イ)加速度センサへの適用
例えば図1(b)〜(c)に示される構成のMEMS構造体100Aをセンサ素子として用いるとともに、振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの間の静電容量C1を検出する容量検出回路を後段の電子回路として設けることにより、MEMSデバイスである加速度センサを構成することができる。
この加速度センサでは、垂直方向(図1(b)の紙面における上下方向)の加速度を受けて、振動体12b(可動電極)が垂直方向(図1(b)の紙面における上下方向)に変位し、この変位に伴う振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの電極間距離の変化による静電容量C1の変化を容量検出回路で検出して、この静電容量変化に基づいて検出される振動体12bの変位を通じて、垂直方向の加速度を測定するようにすることができる。
【0039】
また、この加速度センサでは、水平方向(図1(c)の紙面における上下方向)の加速度を受けて、振動体12b(可動電極)が水平方向(図1(c)の紙面における上下方向)に変位し、この変位に伴う振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの電極対向面積の変化による静電容量C1の変化を容量検出回路で検出して、この静電容量変化に基づいて検出される振動体の変位を通じて、水平方向の加速度を測定するようにすることもできる。
ただし、後者の水平方向の加速度測定において加速度の方向も検出する場合には、検出電極部2Aに1対の検出電極を設け、振動体12b(可動電極)の変位方向(図1(c)の紙面における上下方向)に沿って振動体12b(可動電極)の基準位置の両側に振り分けるようにして前記1対の検出電極を配置し、各検出電極と振動体12b(可動電極)との間の静電容量の変化をそれぞれ検出する構成とする。
【0040】
(ロ)角速度センサへの適用
また、例えば図1(b)〜(c)に示される構成のMEMS構造体100Aをセンサ素子として用い、振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの間の静電容量C1を検出する容量検出回路を後段の電子回路として設けるとともに、振動体12bあるいは梁12aの側面と間隔を空けて対向する電極面を備えた、図示されない一対の駆動電極を振動体12bあるいは梁12aの両側(図1(c)の紙面における上側及び下側)に配置することにより、MEMSデバイスである角速度センサを構成することができる。
この角速度センサでは、上記駆動電極に交流電圧の駆動信号を印加すると、振動体12b(可動電極)が固定周波数で水平方向(図1(c)の紙面における上下方向)に強制振動する。このとき、振動体12b(可動電極)および梁12aを軸とした角速度が加わると、振動体12b(可動電極)が強制振動方向に対して直行する方向(図1(c)の紙面における奥行き方向、すなわち、図1(b)の紙面における上下方向)に角速度に比例したコリオリ振動を始め、振動体12b(可動電極)と検出電極22aとの電極間距離の変化により静電容量C1が変化する。静電容量C1の変化を容量検出回路で検出して、この静電容量変化に基づいて検出される振動体の変位を通じて、角速度を測定するようにすることができる。
【0041】
(ハ)そして、本発明のMEMS構造体は、上述のように、振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを小さく抑えることができ、これにより、静電容量変化に基づく振動体の変位の検出精度をより高くすることができるので、このような本発明のMEMS構造体を例えば加速度センサ、角速度センサなどの力学量センサのセンサ素子として用いることにより、力学量センサの測定精度をより向上させることができるようになる。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B,1C・・・振動体部
11・・・支持構造部、12・・・可動部、12a・・・梁、12b・・・振動体、13・・・空隙、14・・・凹部、15・・・凹部、16、18・・・凹部、17・・・凸部
2,2A,2B,2C・・・検出電極部
21・・・基板、22a・・・検出電極、22b・・・検出電極用配線、22c・・・検出電極用接続パッド、23a・・・可動電極用接続パッド、26・・・凸部、27・・・凹部、28・・・ガイドピン構造部
100,100A,100B,100C・・・MEMS構造体
L1a,L1b・・・位置ずれ量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造部と前記支持構造部に対して変位可能に支持された振動体とからなる振動体部と、
基板と前記基板上に形成された検出電極とからなる検出電極部とを備えるとともに、
振動体と検出電極とが間隔を空けて対向するようにして前記振動体部と前記検出電極部とが接合され、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するように構成されたMEMS構造体において、
振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部を設けた
ことを特徴とするMEMS構造体。
【請求項2】
前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載のMEMS構造体。
【請求項3】
前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凸部(または凹部)を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凸部(または凹部)と嵌合する検出電極部側の凹部(または凸部)を形成した
ことを特徴とする請求項1に記載のMEMS構造体。
【請求項4】
支持構造部と前記支持構造部に対して変位可能に支持された振動体とからなる振動体部と、
基板と前記基板上に形成された検出電極とからなる検出電極部とを備えるとともに、
振動体と検出電極とが間隔を空けて対向するようにして前記振動体部と前記検出電極部とが接合され、振動体と検出電極との間の静電容量の変化を検出するように構成されたMEMS構造体の製造方法において、
振動体部と検出電極部との接合時に生じる振動体と検出電極との位置ずれを抑えるための嵌合部を設けておき、
振動体部と検出電極部との接合時に、前記嵌合部が嵌合するようにして位置合わせする
ことを特徴とするMEMS構造体の製造方法。
【請求項5】
前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に、検出電極部の外周形状に嵌合する内周形状を持つ振動体部側の凹部を形成しておき、
振動体部と検出電極部との接合時に、検出電極部と、振動体部側の凹部とが嵌合するようにして位置合わせする
ことを特徴とする請求項4に記載のMEMS構造体の製造方法。
【請求項6】
前記嵌合部として、振動体部における検出電極部との対向面に振動体部側の凸部(または凹部)を形成するとともに、検出電極部における振動体部との対向面に前記振動体部側の凸部(または凹部)と嵌合する検出電極部側の凹部(または凸部)を形成しておき、
振動体部と検出電極部との接合時に、振動体部側の凸部(または凹部)と、検出電極部側の凹部(または凸部)とが嵌合するようにして位置合わせする
ことを特徴とする請求項4に記載のMEMS構造体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−236957(P2010−236957A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83905(P2009−83905)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】