説明

NOxセンサおよび排気浄化システム

【課題】 1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さく、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができるNOxセンサを提供する。
【解決手段】 1つの絶縁性基板1と、1つの基板に設けられた温度制御手段15,25と、第1の領域に位置し、酸化物半導体13を含む第1のNOx検知部10と、第1の領域と異なる第2の領域に位置し、同じ酸化物半導体を含む第2のNOx検知部20とを備え、上記の温度制御手段15,25は第1のNOx検知部10と第2のNOx検知部20とを、並行して異なる温度に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxセンサおよび排気浄化システムに関し、より具体的には、自動車等の排気経路に取り付けられて、1つで精度よくNO濃度とNO2濃度とを測定できるNOxセンサおよびそれを用いた排気浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の高騰などによりディーゼルエンジン搭載の自動車が増加する傾向にあるが、廃ガス規制をクリアする必要があり、ディーゼルエンジンの排出ガスを低減する各種の触媒装置が開発されている。それらの触媒装置のなかで、尿素選択還元システムはNOおよびNO2のNOxを、エンジンスピードが低い低温領域で効率よく窒素および水へと還元浄化するものとして推奨されている(非特許文献1)。これらの排気ガス浄化装置は、自動車エンジンの排気経路に取り付けられ、排気ガスを浄化するが、その排気経路の温度やNOx濃度を精度よく測定して、尿素の排気経路への噴射量の制御が必須となる。しかし、NOxは、NOとNO2とを合わせたものであり、浄化効率を最適化するためには、NO濃度とNO2濃度とを個別に知る必要がある。
【0003】
上記のように、NO濃度とNO2濃度を求める方法として、次のものが提案されている。たとえば、排気ガス浄化システムに尿素選択還元システムを用い、その後段にNOxセンサを設けることによって得たNOx(NOとNO2)濃度と、温度センサから得た温度とから、NOとNO2とを化学量論的に個別に割り出し、最適な尿素の噴射量を制御する装置が提案されている(特許文献1)。また、排気経路に、酸化触媒と、その後段に尿素選択還元装置とを配置して、尿素選択還元装置の前段で、酸化触媒の前後に配置した2つのNOxセンサによって、NO濃度とNO2濃度とを個別に割り出す方法の提案もある(特許文献2)。
【非特許文献1】平田公信ら,「大型車ディーゼルの尿素選択還元システム」,自動車技術,Vol.60,No.9,2006,pp28-33
【特許文献1】特開2004−100699号公報
【特許文献2】特開2007−100508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の浄化装置のうち、温度とNOxセンサとを用いて化学量論的にNO濃度およびNOx濃度を求める方法では、NO濃度およびNO2濃度を精度よく求めることができない。また酸化触媒の前後にNOxセンサを配置し、2つのNOxセンサでNO濃度とNO2濃度を求める方法では、NOxセンサが2つ必要であり、取り付け場所、配線等が嵩み、またコスト増をもたらす。
本発明は、1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さく、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができるNOxセンサおよびそれを用いた排気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のNOxセンサは、排気経路に取り付けられ、排気中のNOx濃度を測定するために用いられる。このNOxセンサは、1つの基板と、1つの基板に設けられた温度制御手段と、基板の第1の領域位置し、酸化物半導体を含む第1のNOx検知部と、基板の前記第1の領域と異なる第2の領域位置し、前記酸化物半導体と同じ酸化物半導体を含む第2のNOx検知部とを備え、上記の温度制御手段は第1のNOx検知部と第2のNOx検知部とを、並行して異なる温度に制御することができる。
【0006】
上記の第1のNOx検知部および第2のNOx検知部によって、NO濃度およびNO2濃度を個別に得ることができる。ここで、NOxとは、NOとNO2という2種類の気体をさす用語である。NOとNO2とは、化学反応などで相互に変換したり、比較的、同様の特性を示すことが多いので、一緒に取り扱ったほうが便利であるため、両方のガス種をまとめてNOxという用い方が普及している。NOxセンサは、NOおよび/またはNO2がセンサの反応部に吸着するなどして変化する電気的指標により、センシングし、その結果が現れるものである。したがって、NOおよびNO2の両方に反応して、その結果、電気的指標を変化させることにより、NOおよびNO2の両方の、上記反応部での反応の結果を検知することになる。なお、第1もしくは第2の領域に位置するとは、平面的に見て、基板の第1領域または第2領域に重なる範囲に位置することをいい、その該当する領域の基板内に位置する場合、基板上に接して位置する場合、その基板上に他のものを介在させて位置する場合などを包含する。
【0007】
上記本発明のNOxセンサでは、同じ酸化物半導体から形成される2つのNOx検知部を共通の1つの基板上に配設するので、1つのNOxセンサを用いて、空間占有を抑制し、配線なども簡単に設けながら、精度よくかつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができる。このとき、第1のNOx検知部と第2のNOx検知部とは、並行して異なる温度に保持されるので、一般に、NOおよびNO2に対する感度が異なる。感度が異なるとは、それぞれの温度で、第1のNOx検知部は、NOに対して感度Am、NO2に対して感度Adを持ち、第2のNOx検知部は、NOに対して感度Bm、NO2に対して感度Bdを持ち、kを定数として、(Bm/Am)≠k・(Bd/Ad)が成り立つことをいい、すなわちAm・Bd−Bm・Ad≠0が成り立つことをいう。この両方濃度検知条件Am・Bd−Bm・Ad≠0を満たすことによって、精度よく安価にNO濃度とNO2濃度を求められる。精度についていえば、同じ位置で同じタイミングでサンプリングするので、その位置のNO濃度およびNO2濃度を個別に測定することができる。このため、サンプリングの場所が異なること、およびサンプリングの少しの時間的ずれに起因する測定誤差を気にする必要がなくなり、測定精度を質的に一段向上させることができる。
【0008】
排気中のNO濃度とNO2濃度とを一定比率にすることは、たとえば低速走行などの低温域でNOxを抑制する制御を効かす上で、必須であり、このために、NO濃度とNO2濃度を両方とも知ることは、排気浄化上、不可欠となっている。自動車の排気経路のような狭隘で複雑な空間には、上記の構成の小型化され、簡単に配線可能なNOxセンサは大きな貢献をすることができる。
【0009】
各温度において、NOまたはNO2に対する感度は、たとえば所定濃度のNOまたはNO2中に半導体材料を露出させたときの電気抵抗の変化率であり、純粋の大気(NOxをまったく含まない)中で上記NOxセンサに定電圧を印加し、定電流を流した状態において、所定濃度のNOまたはNO2中に暴露したときの電流変化率などが対応する。なお、上記の基板は、NOx検知部、温度制御手段たとえば制御装置付きヒータ、電流計、定電圧電源等とマイコン制御部とを接続する配線を設けた配線基板としてもよいし、単なる絶縁基板でもよい。2つのNOx検知部、温度制御手段のヒータには、当然ながら温度センサが配置される。
【0010】
上記の温度制御手段を、第1のNOx検知部の酸化物半導体の下に位置する第1のヒータと、第2のNOx検知部の酸化物半導体の下に位置する第2のヒータと、第1および第2のヒータを制御する制御部とで構成することができる。これによって、簡単に、第1のNOx検知部と第2のNOx検知部を、並行して異なる温度にすることができる。なお、第1または第2のNOx検知部の酸化物半導体の下に位置するとは、該当する酸化物半導体よりも基板に近い側に位置することをいい、基板内に位置してもよい。制御部はマイコンなどをさし、第1および第2のNOx検知部から離れた位置において、配線によって排気を生成する装置全体の制御部とまとめて制御基板等に搭載されていてもよい。
【0011】
前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間に、両方のヒータ間の熱伝達を阻害する熱伝達阻害部を設けることができる。これによって、両方のヒータに加熱される両方のNOx検知部の温度を並行して異なるようにすることが容易になる。熱伝達阻害手段としては、基板に設けた溝や、溝に熱絶縁性接着剤を充填したもの、両ヒータ間に設けたすき間(空気層)等をあげることができる。
【0012】
上記の酸化物半導体を、Er23ドープZnOとすることができる。これによって、異なる温度で異なる感度を確実に実現することができる。
【0013】
本発明の排気浄化システムは、排気経路内の排気に作用してその排気を浄化するための装置である。この排気浄化システムは、上記のいずれか1つのNOxセンサを排気経路に備えることを特徴とする。これによって、上記の各NOxセンサの特徴を備えるため、小型化した空間占有や簡単な配線構造で、精度よく安価に、NO濃度およびNO2濃度を得ることができる。
【0014】
排気を浄化するためにアンモニアを還元剤としたSCR(Selective Catalytic Reduction)を用い、NOxセンサを、該SCRの前に位置させることができる。これによって、ディーゼルエンジン等の排気中のNOxを効率よく浄化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つのNOxセンサを用いて、ハンドリング性よく、空間占有部を小さく、精度よく、かつ安価にNO濃度とNO2濃度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるNOxセンサ30を示す図である。また、図2は、図1のNOxセンサ30のII−II線に沿う断面図である。図1および図2を参照して、このNOxセンサ30は、第1のNOx検知部10と、第2のNOx検知部20とが、1つの基板1に搭載されていて、1つのNOxセンサ30としてハンドリングすることができる。第1のNOx検知部10と、第2のNOx検知部20とは、電気的に分離されている。NOxには、上述のように、NOおよびNO2の両方が含まれている。このため、1つのNOx検知部だけでは、NO濃度およびNO2濃度の両方を求めることはできない。しかし、本実施の形態のNOxセンサ30は、2つの検知部10,20を、1つの基板1上に搭載することによって、小型化、部品ハンドリングの容易性または配線の簡単化などが実現できるので、自動車の排気経路のような狭隘で複雑な空間に配置するのに、非常に便利である。小型化の利点としては、さらに、車両のポンピングロスを少なくすることができ、エンジンの出力損失を小さくすることができる。
【0017】
一般に、NOxセンサは、排気経路内が常温を大きく超える高温になるため、温度を一定にする目的で、またはセンサの感度を高めるため、温度制御手段のヒータを配置するが、本発明の実施の形態では、図2に示すように、第1のNOx検知部10が位置する第1の領域の基板内に配置された第1ヒータ15と、第2のNOxセンサ20が位置する第2の領域の基板内に配置された第2ヒータ25とを備える。各NOx検知部につき1つのヒータを設けることにより、各NOx検知部の温度を、相互に大きな影響を受けることなく、設定し、保持することが容易になる。温度制御手段には、各NOxセンサ10,20に配置される温度センサ(図示省略)が含まれ、この温度センサから、各NOxセンサ10,20の感応部13,23の温度情報が読み出される。
【0018】
図1において、第1のNOx検知部10および第2のNOx検知部20は、温度が相違する点を除けば、構造等は同じである。NOxが吸着されて、電気抵抗などの電気指標が変化する酸化物半導体13,23を、感応層または感応部と呼ぶ。第1のNOx検知部10および第2のNOx検知部20は、つぎの電気的な接続構造を持つ。
第1のNOx検知部10:
(負側のPt電極11(11a)/Er23ドープZnO半導体層(感応層)13/正側のPt電極12(12a))この第1のNOx検知部10は、第1ヒータ15によって、たとえば150℃に加熱される。
第2のNOx検知部20:
(負側のPt電極21(21a)/Er23ドープZnO半導体層(感応層)23/正側のPt電極22(22a))この第2のNOx検知部20は、第2ヒータ25によって、たとえば300℃に加熱される。
【0019】
第1および第2の検知部10,20では、NOおよびNO2は、酸化物半導体ZnOに吸着され、ZnOの正極および負極間の電気抵抗を変化させる。電気抵抗の変化は、正負極間に一定電圧を印加して微弱な一定電流を流しておき、NOおよびNO2の吸着による電気抵抗に起因する電流変化を測定することによって検知することができる。予め既知のNO濃度またはNO2濃度を含む試験用空気を用いて、(電気抵抗変化/NO濃度またはNO2濃度)を測定しておけば、図1に示すNOxセンサ30によって、第1のNOx検知部10および第2のNOx検知部20の電気抵抗変化を測定することで、NO濃度およびNO2濃度を個別に求めることができる。Er23をZnOにドープするのは、NOやNO2の吸着による電気抵抗変動の感度を大きくするためである。
【0020】
第1の温度、たとえば150℃で第1のNOx検知部10は次の感度を持ち、第2の温度、たとえば300℃で第2のNOx検知部20は次の感度を持つ。厳密なことをいえば、電流変化率または電気抵抗変化率から求める感度は、NO濃度、NO2濃度に依存して、線形でないかもしれないが、線形からのずれはわずかであり、線形としても、それほど大きな誤差にはならいない。したがって、下記の感度は、NO濃度等によらず定数とする。
(150℃における第1のNOx検知部10):NOに対して感度Am
NO2に対して感度Ad
(300℃における第2のNOx検知部20):NOに対して感度Bm
NO2に対して感度Bd
今、第1のNOx検知部10における電気抵抗変化率の値がX1であり、第2のNOx検知部20における電気抵抗変化率の値がX2であったとする。この場合、両方の検知部において、NOの吸着およびNO2の吸着は、相互に影響を及ぼさず、互いに独立に吸着するものとする。NO濃度およびNO2濃度が低い場合には、この吸着独立条件は満たされている。この吸着独立条件の下に、測定対象の排気の中のNO濃度をMとし、NO2濃度をDとすると、以下の連立方程式が成り立つ。
X1=AmM+AdD・・・・・(1)式
X2=BmM+BdD・・・・・(2)式
上記の連立方程式において、X1およびX2は、実測値である。また、Am、Ad、Bm、Bdは、予めNO濃度およびNO2濃度が知れた気体を用いて得ておくことができ、既知である。したがって、上記の二元連立方程式は簡単に解くことができる。
【0021】
同種材料によるNOx検知部であっても、両NOx検知部の温度を変えることで両方濃度検知条件Am・Bd−Bm・Ad≠0が成り立ち、NO濃度MおよびNO2濃度Dを個別に求めることが可能になる。図3は、Er23ドープZnOの、NOに対する感度およびNO2に対する感度の温度依存性を示す図である。150℃と300℃とで、上記の感度は、確実に相違しており、両方濃度検知条件を満足する。ただし、これらの感度は、NOおよびNO2について、ともに5ppmの濃度での感度である。したがって、図3の電気抵抗変化率の値を用いて、上記の連立方程式を解いてMおよびDを求めた場合、NOおよびNO2について、ともに5倍することで、NOおよびNO2のppm濃度とすることができる。
【0022】
図1および図2に示すNOxセンサは、絶縁性基板1の上に電極配線11a
12a,21a,22aおよび正負電極11,12,21,22をスパッタリングなどで形成する。次いで、電極配線11a,12a,21a,22aの所定部分に、感応層となるZnO13,23をEr23をドープしながら成膜する。成膜方法は、蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレージョン法など、常用される成膜法を用いることができる。電気抵抗の変化率を求める際の定電圧装置、電流計、NO濃度およびNO2濃度演算部などは、高温への暴露を避けるために、自動車エンジンなどのより広い範囲を制御する制御ボード等にまとめて搭載するのがよい。温度制御に関連する温度センサの信号読み出し部、ヒータ制御部なども、上記制御ボードのマイコンに組み込むのがよい。
【0023】
本実施の形態におけるNOxセンサ30は、一つで、誤差要因となる異なる箇所ではなく、同じ位置で同時にサンプリングして、NO濃度およびNO2濃度を精度よく測定しながら、小型化し、ハンドリング性を大きく向上することができる。このため、とくに自動車、なかでもディーゼルエンジン搭載車の排気経路に配置することによって、排気浄化装置の制御部に正確なNO濃度およびNO2濃度を入力でき、適正な排気浄化の促進に資することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるNOxセンサ30を示す図である。このNOxセンサ30では、共通の1つの絶縁性基板1を用いならが、熱伝達阻害部である溝35を設けた点に特徴を有する。熱伝達阻害部は、絶縁性基板1の単位時間あたりの熱伝達量を低減することができれば何でもよい。そして、図4に示すように、溝35を設けた場合、応力集中が溝の角部に生じて破壊しやすいなどの問題が派生するので、断熱性接着剤などを用いたり、強度補強構造を設けてもよい。その他の、NO濃度およびNO2濃度の測定原理等は、実施の形態1における説明と同じである。
【0025】
また、図5は、本発明の実施の形態2のNOxセンサ30の変形例である。図5のNOxセンサ30では、第1のヒータ15は第1ヒータ収納部17に収納され、第2のヒータ27は第2ヒータ収納部27に収納されている。2つのヒータ収納部17,27の間にはすき間37または空気層ができ、これが熱伝達阻害部を形成している。この場合、ヒータ収納部17,27において、ヒータより上部、すなわち感応層13,23側の部分17u,27uを、熱伝導率の良い電気絶縁体で形成することができる。その他のヒータ収納部17,27の部分は、断熱性材料で形成するのがよい。このように、ヒータ15,25と、感応層13,23との間の熱伝導率を高くして、その他の熱伝導をブロックすることによって、NOx検知部の温度の制御を一層容易にすることができる。
【0026】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における排気浄化装置50を説明するための図である。この排気浄化装置は、尿素を用いて排気中のNOxを窒素ガス等に還元する尿素選択還元触媒装置(尿素SCR装置)である。図6において、エンジン71は、たとえばディーゼルエンジンである。このディーゼルエンジン71は、排気ガス再循環装置(EGR)73が設けられ、また燃料噴射の制御のために制御装置(ECU)72が配置されている。制御装置(ECU)72は、尿素供給制御装置(ECU)75と共通化してもよい。ディーゼルエンジン71からの排気経路において、ディーゼルエンジン71に近い上流に酸化触媒(DOC)74を配置する。この酸化触媒74は、NOをNO2に酸化する上で有効である。酸化触媒74の下流に尿素選択還元触媒(SCR)78を設け、さらにその後段に、尿素から反応生成したアンモニアのスリップを防止するための酸化触媒79が配置される。
【0027】
尿素選択還元触媒78の入口には、NOxセンサ30と温度センサ41とを配置し、NOxセンサ30の2つのNOx検知部からの電流変化率は制御装置75に読み出され、温度センサ41からの温度データを下に、予め入力されている感度に基づいて、NO濃度とNO2濃度とが算出される。このNO濃度およびNO2濃度に基づいて、尿素添加装置76が作動して、尿素選択還元触媒の入口に位置する尿素噴射口からの尿素噴射量を制御する。尿素は、尿素タンク77に貯留されている。
【0028】
本実施の形態における排気浄化装置の尿素選択還元装置50では、狭隘な箇所に2つの異なる材料のNOx検知部をもつので、その狭隘な場所におけるNO濃度およびNO2濃度を同時に、個別に得ることができる。このため、正確なNO濃度およびNO2濃度に基づき、適切な尿素噴射制御や燃料噴射制御を行うことができ、排気浄化および燃費向上を改善することができる。
【0029】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、一つのNOxセンサで、誤差をもたらす異なる箇所でのサンプリングをすることなく、同じ位置で、同じ時刻にサンプリングして、NO濃度およびNO2濃度を精度よく測定しながら、小型化し、ハンドリング性を大きく向上することができる。このため、とくに自動車、なかでもディーゼルエンジン搭載車の排気経路に配置することによって、排気浄化装置の制御部に正確なNO濃度およびNO2濃度を入力でき、適正な排気浄化の制御に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1におけるNOxセンサを説明するための図である。
【図2】図1に示すNOxセンサのII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すNOxセンサに用いられるEr23ドープZnOのNOおよびNO2に対する感度と温度との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるNOxセンサを説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるNOxセンサの変形例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態3における排気浄化装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
1 絶縁性基板、10 第1のNOx検知部、20 第2のNOx検知部、11,21 負極、11a,21a 負極配線、12,22 正極、12a,22a 正極配線、13,23 Er23ドープZnO(感応部)、15,25 ヒータ、17,27 ヒータ収納部、17u,27u ヒータ収納部の感応層側、30 NOxセンサ、35 溝(熱伝達阻害部)、37 すき間(空気層:熱伝達阻害部)、50 排気浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気経路に取り付けられ、排気中のNOx濃度を測定するために用いられるNOxセンサであって、
1つの基板と、
前記1つの基板に設けられた温度制御手段と、
前記基板の第1の領域に位置し、酸化物半導体を含む第1のNOx検知部と、
前記基板の前記第1の領域と異なる第2の領域に位置し、前記酸化物半導体と同じ酸化物半導体を含む第2のNOx検知部とを備え、
前記温度制御手段は前記第1のNOx検知部と第2のNOx検知部とを、並行して異なる温度に制御することを特徴とする、NOxセンサ。
【請求項2】
前記温度制御手段が、第1のNOx検知部の酸化物半導体の下に位置する第1のヒータと、前記第2のNOx検知部の酸化物半導体の下に位置する第2のヒータと、前記第1および第2のヒータを制御する制御部とをもつことを特徴とする、請求項1に記載のNOxセンサ。
【請求項3】
前記第1のヒータと前記第2のヒータとの間に、両方のヒータ間の熱伝達を阻害する熱伝達阻害部が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のNOxセンサ。
【請求項4】
前記酸化物半導体が、Er23ドープZnOであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のNOxセンサ。
【請求項5】
排気経路内の排気に作用してその排気を浄化するための排気浄化装置であって、請求項1〜4のいずれか一つに記載のNOxセンサを前記排気経路に備えることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項6】
前記排気を浄化するためにアンモニアを還元剤としたSCR(Selective Catalytic Reduction)を用い、前記NOxセンサが、該SCRの前に位置することを特徴とする、請求項5に記載の排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−210298(P2009−210298A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51183(P2008−51183)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】