説明

OSNR測定方法及び装置

【課題】
光信号対雑音比(OSNR)を測定する。
【解決手段】
光バンドパスフィルタ(OBPF)20が、測定対象の波長又はチャネルの信号光成分を抽出する。光スプリッタ22は、OBPF20の出力光を7つに等分割する。偏光子24,28,32,36及びフォトダイオード26,30,34,38により、水平方向、垂直方向、+45度方向及び−45度方向の各直線偏光成分の光強度P,P,P,Pを得る。1/4波長板40,46、偏光子42,48及びフォトダイオード44,50により、右回り及び左回りの各円偏光成分の光強度P,Pを得る。フォトダイオード52により測定対象の信号光の光強度Sを得る。減算器54、58,62が、S(=P−P)、S(=P−P)及びS(=P−P)をそれぞれ算出する。演算装置68はS,S,S,Sから偏光度(DOP)を算出し、換算装置70はDOPをOSNRに換算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号対雑音比(OSNR)を測定するOSNR測定方法及び装置に関し、より具体的には、オールプティカルネットワークにおける光信号対雑音比(OSNR)を測定するOSNR測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワーク、特に光パスを選択可能な光ネットワークでは、OSNRの管理が非常に重要である。波長分割多重(WDM)光伝送システムでは、波長毎に光パスを設定可能であるので、波長毎のOSNRの管理もまた、重要になる。光ノードの波長パス処理として、波長分離、クロスコネクト(アドドロップ)、光再生、及び波長合波があり、これらにより、OSNRが大きく変動することがある。
【0003】
WDM光伝送システムにおいて波長毎のOSNRを測定する従来の方法では、光スペクトラムアナライザにより、各信号波長のピークパワーと両側のフロアの強度を測定し、その比をOSNRとしていた。
【0004】
WDM信号光から分離した1チャネルの光信号には、図3に示すように、信号帯域内にもノイズ光が混入する。このノイズ光は、光増幅器等で発生するASE光からなる。
【0005】
信号帯域内のノイズ光成分を分離できる別の方法として、WDM信号光から目的波長又はチャネル成分を分離した後、偏波コントローラ及び偏波ビームスプリッタ(PBS)により信号の偏波成分とこれに直交する偏波成分とに分離して、OSNRを測定する方法が知られている。この方法では、光ノイズ光成分がPBSにより2分割されるので、信号の偏波成分は信号成分以外にノイズ成分の半分を含み、直交する偏波成分がノイズ成分の残る半分を含む。信号帯域内のノイズ成分を定量的に測定できるので、OSNRを精度良く測定できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の方法では、WDM光伝送システムでは、隣接チャネルからの漏れ込みにより、フロア強度が増大する。また、信号帯域内に存在する光ノイズ成分を見積もることが難しい。これらの理由で、従来の方法では、OSNRを正確に評価することが困難であった。
【0007】
後者の方法では、偏波ビームスプリッタの出力光に従い、波長分離後の信号光の偏波方向を所定方向に制御する偏波コントローラが必要になる。信号光の偏波変動に追従して、偏波コントローラを無限に帰還制御する必要があり、装置構成が複雑で大規模なものになってしまう。
【0008】
本発明は、簡易な構成でより高精度にOSNRを測定可能なOSNR測定方法及び装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るOSNR測定方法は、請求項1に記載されるように、入力信号光の偏光度を計測する偏光度計測ステップと、当該偏光度計測ステップで計測された偏光度を、当該入力信号光の光信号対雑音比(OSNR)を代表する値に換算するOSNR換算ステップとからなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るOSNR測定装置は、請求項5に記載されるように、入力信号光の偏光度を計測する偏光度計測装置と、当該偏光度計測装置で計測された偏光度を、当該入力信号光の光信号対雑音比(OSNR)を代表する値に換算するOSNR換算装置とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から容易に理解できるように、本発明によれば、非常に簡単な構成でOSNRを測定できる。信号帯域内の光ノイズ成分も考慮されているので、正確なOSNRを測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。実線は光信号を示し、破線は電気信号を示す。本出願の発明者は、偏光度(DOP)がOSNRと相関を有することを発見した。本実施例では、ストークスパラメータにより測定対象の信号光の偏光度(DOP)を測定し、得られたDOPから対象の信号光のOSNRを決定する。
【0014】
光送信端局10は、波長λ1〜λnの直線偏波の信号光からなるWDM信号光を出力する。そのWDM信号光は、光ファイバ伝送路12を伝搬して、OSNR測定装置14に入射する。OSNR測定装置14は、例えば、光受信端局内に設置される。
【0015】
測定装置14では、光バンドパスフィルタ(OBPF)20が、光ファイバ伝送路12から入力するWDM信号光から測定対象の波長又はチャネルの信号光成分を抽出する。光バンドパスフィルタ20の通過波長をλ1乃至λnの所望の波長に変更可能とすることで、各波長λ1〜λnのOSNRを測定できる。
【0016】
光スプリッタ22は、光バンドパスフィルタ20の出力光を7つに等分に分割する。
【0017】
光スプリッタ22から出力される第1の光成分は、水平方向の偏光子24を介してフォトダイオード26に入力する。これにより、水平方向の直線偏光成分の光強度Pを計測する。
【0018】
光スプリッタ22から出力される第2の光成分は、垂直方向の偏光子28を介してフォトダイオード30に入力する。これにより、垂直方向の直線偏光成分の光強度Pを計測する。
【0019】
光スプリッタ22から出力される第3の光成分は、+45度の偏光子32を介してフォトダイオード34に入力する。これにより、+45度の直線偏光成分の光強度Pを計測する。
【0020】
光スプリッタ22から出力される第4の光成分は、−45度の偏光子36を介してフォトダイオード38に入力する。これにより、−45度の直線偏光成分の光強度Pを計測する。
【0021】
光スプリッタ22から出力される第5の光成分は、1/4波長板40及び+45度の偏光子42を介してフォトダイオード44に入力する。1/4波長板40及び+45度の偏光子42により、右回り円偏光成分を抽出できる。これにより、右回り円偏光成分の光強度Pを計測する。
【0022】
光スプリッタ22から出力される第6の光成分は、1/4波長板46及び−45度の偏光子48を介してフォトダイオード50に入力する。1/4波長板46及び−45度の偏光子48により、左回り円偏光成分を抽出できる。これにより、左回り円偏光成分の光強度Pを計測する。
【0023】
光スプリッタ22から出力される第7の光成分は、フォトダイオード52に入力する。これにより、測定対象の信号光の光強度Sを測定する。
【0024】
減算器54は、フォトダイオード26の出力Pからフォトダイオード30の出力Pを減算し、その結果S(=P−P)をA/D変換器56に出力する。A/D変換器56は減算器54の出力Sをデジタル信号に変換する。
【0025】
減算器58は、フォトダイオード34の出力Pからフォトダイオード38の出力Pを減算し、その結果S(=P−P)をA/D変換器60に出力する。A/D変換器60は減算器58の出力Sをデジタル信号に変換する。
【0026】
減算器62は、フォトダイオード44の出力Pからフォトダイオード50の出力Pを減算し、その結果S(=P−P)をA/D変換器64に出力する。A/D変換器64は減算器62の出力Sをデジタル信号に変換する。
【0027】
,S,Sは、いわゆるストークスパラメータである。
【0028】
A/D変換器66はフォトダイオード52の出力Sをデジタル信号に変換する。
【0029】
A/D変換器56,60,64,66の出力は演算装置68に入力する。演算装置68は、A/D変換器56,60,64,66の出力を使って下記式、
(S+S+S1/2/S
を計算する。この計算結果は、光バンドパスフィルタ20により抽出された信号光の偏光度(DOP)を示す。S,S,Sは、入射光強度に依存するので、上式では、入射光強度Sで規格化している。したがって、上式で得られたDOP値は、入射光強度に依存しない。
【0030】
図2は、光信号対雑音比OSNRと偏光度DOPとの相関関係を実測した結果を示す。横軸は、OSNR(dB)を示し、縦軸はDOP(%)を示す。
【0031】
換算装置70は、演算装置68から出力されるDOP値を図2に示す対応関係に照合して、OSNR値に換算する。換算装置70は、例えば、図2に示す対応関係データを有するルックアップテーブルから成る。
【0032】
信号成分は偏光度がほぼ100%であるのに対し、ASEノイズ成分の偏光度はほぼ0%である。受信端局での入射信号光は、偏光度100%の信号光に偏光度0%のASEノイズ光が重畳したものになっている。従って、入射光の偏光度を測定することで、ASEノイズ成分を定量的に把握できる。ここで把握されるASEノイズ成分は、勿論、信号波長帯域内のノイズ成分を含むこと。従って、本実施例では、信号帯域内のノイズ成分を考慮したOSNRを測定できる。
【0033】
上記実施例では、ストークスパラメータの測定によるDOP測定法を採用したが、その他の方法でDOPを測定した場合にも、同様に、OSNRを測定できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】OSNRとDOPの関係の測定結果を示す図である。
【図3】信号帯域内に混入するノイズ光成分を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
10:光送信端局
12:光ファイバ伝送路
14:OSNR測定装置
20:光バンドパスフィルタ(OBPF)
22:光スプリッタ
24:偏光子
26:フォトダイオード
28:偏光子
30:フォトダイオード
32:偏光子
34:フォトダイオード
36:偏光子
38:フォトダイオード
40:1/4波長板
42:偏光子
44:フォトダイオード
46:1/4波長板
48:偏光子
50:フォトダイオード
52:フォトダイオード
54:減算器
56:A/D変換器
58:減算器
60:A/D変換器
62:減算器
64:A/D変換器
66:A/D変換器
68:演算装置
70:換算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号光の偏光度を計測する偏光度計測ステップと、
当該偏光度計測ステップで計測された偏光度を、当該入力信号光の光信号対雑音比(OSNR)を代表する値に換算するOSNR換算ステップ
とからなることを特徴とするOSNR測定方法。
【請求項2】
当該偏光度計測ステップが、
当該入力信号光を7つの成分に分割する分割ステップと、
当該分割ステップで分割された7つの成分から、水平直線偏波成分、垂直直線偏波成分、+45直線偏波成分、−45度直線偏波成分、右回り回転偏波成分及び左周り回転偏波成分の各光強度、並びに当該入力信号光の光強度を計測する強度計測ステップと、
水平直線偏波成分の光強度と垂直直線偏波成分の光強度の差分、+45直線偏波成分の光強度と−45度直線偏波成分の光強度の差分、右回り回転偏波成分の光強度と左周り回転偏波成分の光強度の差分を算出する差分算出ステップと、
当該差分算出ステップで算出される各差分の二乗の和の平方根を、当該入力信号光の光強度で規格化する規格化ステップ
とを具備することを特徴とする請求項1に記載のOSNR測定方法。
【請求項3】
当該OSNR換算ステップが、当該偏光度計測ステップで計測された偏光度を、偏光度とOSNRの対応関係に照合するOSNR決定ステップからなる請求項1又は2に記載のOSNR測定方法。
【請求項4】
更に、光伝送路から入力する波長分割多重光信号から測定対象の波長の信号光を抽出する抽出ステップを具備する請求項一乃至3の何れか1項に記載のOSNR測定方法。
【請求項5】
入力信号光の偏光度を計測する偏光度計測装置(22〜68)と、
当該偏光度計測装置で計測された偏光度を、当該入力信号光の光信号対雑音比(OSNR)を代表する値に換算するOSNR換算装置(70)
とを具備することを特徴とするOSNR測定装置。
【請求項6】
当該偏光度計測装置が、
当該入力信号光を7つの成分に分割する光スプリッタ(22)と、
当該光スプリッタで分割された7つの成分から、水平直線偏波成分、垂直直線偏波成分、+45直線偏波成分、−45度直線偏波成分、右回り回転偏波成分及び左周り回転偏波成分の各光強度、並びに当該入力信号光の光強度を計測する強度計測装置(24,26,28,30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52)と、
水平直線偏波成分の光強度と垂直直線偏波成分の光強度の差分(S)、+45直線偏波成分の光強度と−45度直線偏波成分の光強度の差分(S)、右回り回転偏波成分の光強度と左周り回転偏波成分の光強度の差分(S)を算出する差分算出装置(54,58,62)と、
当該差分算出装置(54,58,62)で算出される各差分(S,S,S)の二乗の和の平方根を、当該入力信号光の光強度(S)で規格化する演算装置(56,60,64,66,68)
とを具備することを特徴とする請求項5に記載のOSNR測定装置。
【請求項7】
当該OSNR換算装置(70)が、偏光度とOSNRの対応関係を示すテーブルを具備し、当該偏光度計測装置で計測された偏光度を当該テーブルに調合して、当該入力信号光の光信号対雑音比(OSNR)を決定する請求項5又は6に記載のOSNR測定装置。
【請求項8】
更に、光伝送路から入力する波長分割多重光信号から測定対象の波長の信号光を抽出し、抽出した成分を当該入力信号光として当該偏光度測定装置に供給する波長抽出装置(20)を具備する請求項5乃至7の何れか1項に記載のOSNR測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−42234(P2006−42234A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222922(P2004−222922)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】