説明

PDE2Aの阻害

本発明は、冠動脈心疾患、特に安定または不安定狭心症、急性心筋梗塞、心筋梗塞、心不全、高血圧およびアテローム性動脈硬化症に起因する症状、血管および腎臓の障害、特に腎不全、炎症性障害、勃起障害の処置および/または予防、および、心臓性突然死の防止のための医薬を製造するための、PDE2A阻害剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心障害、特に心不全およびその根底にある心筋症、例えば、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および特に肥大型心筋症(HCM)の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A阻害剤の使用に関する。本発明は、さらに、PDE2A阻害剤を使用する、勃起機能障害、高血圧の処置および動脈硬化の予防に関する。
【背景技術】
【0002】
本態性高血圧は、脳、腎臓および血管のみならず、特に心臓に損傷を与える。降圧治療の導入以前には、本態性高血圧は心不全および心筋梗塞の主原因であった。現在でも、心不全発症および心筋梗塞罹患のリスクは、たとえ降圧治療を受けていても、正常圧の人より高血圧の人で高い。左室肥大は、本態性高血圧において心筋を慢性的な圧力の負荷に適応させるための原理的な構造的メカニズムである。心筋の肥大の程度は、血圧のレベルに伴って高まる。
【0003】
本態性高血圧の初期段階では、収縮期の壁張力(左心室の後負荷)は、心室壁にかかる収縮期圧負荷の結果として高まる。発症する左室肥大は、心筋壁の厚さの増大の結果として、壁張力が再度正常化されることをもたらす。この求心性左室肥大の初期段階では、左心室は、高血圧性収縮期血圧にも拘わらず、心筋の単位重量当たり正常な心臓のエネルギー消費で、正常な心拍出量を送達することができる。この段階でさえ、左心室の拡張機能の障害がある。
【0004】
左心室に対する慢性的な圧力負荷は、胎児期の増殖因子の異常な活性化を導き、それは、タンパク質の生合成および胎児期の筋肉の遺伝子産物を変化させる。アンジオテンシンII、ノルアドレナリンおよび他の増殖ホルモンは、心筋に対して増殖促進効果を有する。この効果は、収縮期圧の負荷とは関係なく、さらなる心筋肥大の進行の刺激をもたらす。増殖ホルモンの程度に応じて、ある状況では、血圧の上昇に対して不相応に大きい、肥大型心筋症と似た心筋肥大の発生が起こり得る。成人の心筋組織は細胞周期の遮断のために細胞分裂の能力が殆どまたは全くないという事実の結果として、分子レベルの結果は、病的な心筋の肥大反応である。心肥大は、慢性的な連続的負荷に適合するための生理的メカニズムではない。それは、心筋梗塞、心不全および心臓性突然死などの心臓の事象の独立したリスク因子である[1]。
【0005】
従って、心肥大を防止する治療方法および有効成分は、上述の障害の症状の処置に適する。
【0006】
ヒトPDE2AをコードするDNA配列を、配列表の配列番号1に示す。ヒトPDE2Aのアミノ酸配列を、配列表の配列番号2に示す。
【0007】
図1に示す通り、驚くべきことに、細胞の肥大モデルにおいて、肥大の誘導の際に、PDE2A−mRNAの発現が高まることが観察された。この目的で、ラットの心筋細胞株H9c2(ATCC番号:CRL−1446)をアルギニン−バソプレッシンによる肥大性刺激に曝した。それは、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)およびMYHCB(ミオシン重鎖ベータ−サブユニット)などの心肥大のマーカー遺伝子の発現増加のなかでも、とりわけ発現された[2]。cGMPを加水分解するPDE2Aの発現の増加は、心筋細胞の細胞内cGMPレベルを下げ、従って、cGMPの抗肥大効果を抑制し得る[3、4]。この観察から、肥大性H9c2細胞におけるPDE2Aの発現の増加も、インビボで心肥大の病理に寄与し、低分子量薬によるPDE2A活性の阻害が、心肥大に対して正の効果を有することが推測できる。なぜなら、心筋細胞におけるcGMPレベルは高いままであり、従ってcGMPの抗肥大効果が維持されるからである[5]。この仮説を検証するために、H9c2細胞をアルギニン−バソプレッシンで刺激し、PDE2阻害剤BAY60−7550とインキュベートした[6]。BAY60−7550は、構造式:
【化1】

を有する物質、2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−[1−(1−ヒドロキシエチル)−4−フェニルブチル]−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オンである。
【0008】
図2に示す通り、PDE2A阻害剤BAY60−7550は、肥大マーカー遺伝子MYHCBの増加の用量依存的抑制の能力がある。H9c2細胞をPDE2A阻害剤BAY60−7550と共にインキュベートすることも細胞内cGMPレベルの上昇を導き、かくして抗肥大効果を有することを確認するために、ANPによるcGMP合成の刺激後、PDE2A阻害剤BAY60−7550の存在下で、EIAにより細胞内cGMP量を測定した。図3から明らかな通り、BAY60−7550は、H9c2細胞において細胞内cGMP量を用量依存的に高める。このインビトロの知見を確認するために、PDE2阻害剤BAY60−7550の抗肥大効果を、インビボで、マウス肥大モデルで調べた。この目的で、C57BL6系統のマウスは、イソプレナリン2mg/kgの1日1回の皮下投与、および、正の対照として、イソプレナリンに加えて、飲料水を介して投与されるエナラプリル10mg/kgを受容する。BAY60−7550は、イソプレナリン注射と並行して、1日2回、10mg/kgi.p.の用量で投与された。図4から明らかな通り、イソプレナリン注入は、動物の心臓の重量を体重と比較して高める。正の対照のエナラプリルと全く同様に、PDE2A阻害剤BAY60−7550の投与は、両方の用量群で、心臓重量の体重に対する比の顕著な減少を導いた。
これらのデータから、PDE2A阻害はヒトの心肥大も防止できることが明らかである。
【0009】
従って、本発明は、以下の疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A阻害剤の使用に関する:冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心筋梗塞予防、心臓性突然死、心不全および高血圧、および、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎障害および勃起不全。
【0010】
本発明の意味におけるアンタゴニストは、PDE2Aの生物学的活性の阻害をもたらす全ての物質である。特に好ましいアンタゴニストは、ロックト核酸(locked nucleic acid)、ペプチド核酸および「スピーゲルマー(spiegelmer)」を含む核酸、抗体を含むタンパク質および低分子量の物質である;ことさら特に好ましいアンタゴニストは、低分子量の物質である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、以下に関する:
1. 心不全およびその根底にある心筋症の処置および/または予防に適するPDE2A阻害剤を見出すためのアッセイ系における、PDE2AポリペプチドまたはPDE2Aポリペプチドをコードする核酸の使用。
【0012】
PDE2Aポリペプチドをコードする核酸は、
a)配列番号2により開示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子、および、その機能的断片;
b)配列番号1に示す配列を含む核酸分子、およびその機能的断片;
c)その相補鎖が核酸分子a)またはb)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、PDE2Aの生物学的機能を有する核酸分子、核酸分子のストリンジェントなハイブリダイゼーションは、0.2xSSC(1x標準的生理食塩水−クエン酸塩=150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)を含む水性溶液中、68℃で実施する(Sambrook et al., 1989);および、
d)c)で言及されるものと、遺伝子暗号の縮重の理由で異なる核酸分子
からなる群から選択される核酸である。
【0013】
本発明の意味におけるPDE2Aポリペプチドは、a)−d)で言及される核酸の一つによりコードされるポリペプチドである。ポリペプチドは、特に、配列番号1で示される配列を含むか、または、PDE2A活性を有するそれらの断片を含むもの、PDE2Aポリペプチドである。
【0014】
2. アッセイ系が無細胞である、第1項に記載の使用。
3. PDE2Aをコードする核酸を含む全細胞がアッセイ系で使用される、第1項に記載の使用。これに関して、核酸は内在的に存在すること、または、組換え的に導入されることが可能である。
4. PDE2A活性を測定する、第1項ないし第3項に記載の使用。
5. cGMPまたはGMPレベルを測定する、第4項に記載の使用。
6. PDE2Aの発現を測定する、第1項ないし第3項に記載の使用。
【0015】
7. 心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、第1項ないし第6項に記載の使用。
8. 心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、第1項ないし第7項に記載の方法のいずれかを利用して同定されたPDE2A阻害剤の使用。
9. 拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、第1項ないし第7項に記載の方法のいずれかを利用して同定されたPDE2A阻害剤の使用。
【0016】
10. 心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A−特異的抗体、PDE2A−特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはPDE2A−特異的siRNAの使用。
11. 拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A−特異的抗体、PDE2A−特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはPDE2A−特異的siRNAの使用。siRNAは、低分子干渉RNAである。PDE2A−特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体またはsiRNAを提供するための方法は、当業者に知られている。適するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたは抗体は、最終的に、PDE2A活性の阻害を導く。これは、PDE2Aタンパク質に直接関与するか、または、PDE2Aの転写または翻訳のレベルで作用するメカニズムにより起こり得る。
【0017】
12. 心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A阻害剤の使用。
13. 心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、第12項に記載の使用。
14. PDE2A阻害剤が1μMより低いIC50を有する、第12項または第13項に記載の使用。
15. PDE2A阻害剤が、100nMより低いIC50を有する、第12項または第13項に記載の使用。
【0018】
PDE2A阻害は、例えば、下記のPDE2A阻害アッセイで測定できる。
これに関して好ましいPDE2Aアンタゴニストは、下記のPDE2A阻害アッセイにおいて、1μMのIC50、好ましくは0.1μMより低いIC50で阻害を示す。
本発明のPDE2A阻害剤は、好ましくは、血液脳関門を通過できず、全身的効果を有し、中枢への効果を有さない。
【0019】
本発明はまた、一般式(I)
【化2】

[式中、
は、フェニル、ナフチル、キノリニルまたはイソキノリニルであり、これらの各々は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、−NHCOR、−NHSO、−SONR1011、−SO12および−NR1314からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されていてもよく
{ここで、R、R10、R11、R13およびR14は、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルであり、そして、
およびR12は、相互に独立して(C−C)−アルキルであるか、
または、
10およびR11は、隣接する窒素原子と一体となって、アゼチジン−1−イル、ピロール−1−イル、ピペリド−1−イル、アゼピン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イルまたはモルホリン−1−イルラジカルを形成するか、
または、
13およびR14は、隣接する窒素原子と一体となって、アゼチジン−1−イル、ピロール−1−イル、ピペリド−1−イル、アゼピン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イルまたはモルホリン−1−イルラジカルを形成する}、
およびRは、相互に独立して水素またはフッ素であり、
は、(C−C)−アルキルであり、
は、(C−C)−アルキルであり、
は、水素またはメチルであり、
は、フェニル、チオフェニル、フラニル(これらの各々は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲンおよびシアノからなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されていてもよい)であるか、または、(C−C)−シクロアルキルであり、
Lは、カルボニルまたはヒドロキシメタンジイルであり、そして、
Mは、(C−C)−アルカンジイル、(C−C)−アルケンジイルまたは(C−C)−アルキンジイルである]
の化合物および生理的に耐容される塩の、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用に関する。
【0020】
(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明に関して、各々1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。言及し得る例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、i−、s−、t−ブチルである。メチルおよびエチルが好ましい。
【0021】
(C−C)−アルカンジイルは、本発明に関して、2個ないし5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルカンジイルラジカルである。言及し得る例は、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,4−ジイル、ペンタン−2,4−ジイルである。直鎖の(C−C)−アルカン−1,ω−ジイルラジカルが好ましい。言及し得る例は、エチレン、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルである。プロパン−1,3−ジイルおよびブタン−1,4−ジイルが特に好ましい。
【0022】
(C−C)−アルケンジイルは、本発明に関して、2個ないし5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケンジイルラジカルである。言及し得る例は、エテン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、プロペン−1,1−ジイル、プロペン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,3−ジイル、プロペン−3,3−ジイル、プロペン−2,3−ジイル、ブト−2−エン−1,4−ジイル、ペント−2−エン−1,4−ジイルである。直鎖の(C−C)−アルケン−1,ω−ジイルラジカルが好ましい。言及し得る例は、エテン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,3−ジイル、ブト−2−エン−1,4−ジイル、ブト−3−エン−1,4−ジイル、ペント−2−エン−1,5−ジイル、ペント−4−エン−1,5−ジイルである。プロプ−2−エン−1,3−ジイル、ブト−2−エン−1,4−ジイルおよびブト−3−エン−1,4−ジイルが特に好ましい。
【0023】
(C−C)アルキンジイルは、本発明に関して、2個ないし5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキンジイルラジカルである。言及し得る例は、エチン−1,2−ジイル、エチン−1,1−ジイル、プロプ−2−イン−1,3−ジイル、プロプ−2−イン−1,1−ジイル、ブト−2−イン−1,4−ジイル、ペント−2−イン−1,4−ジイルである。直鎖(C−C)−アルケン−1,ω−ジイルラジカルが好ましい。言及し得る例は、エチン−1,2−ジイル、プロプ−2−イン−1,3−ジイル、ブト−2−イン−1,4−ジイル、ブト−3−イン−1,4−ジイル、ペント−2−イン−1,5−ジイル、ペント−4−イン−1,5−ジイルである。プロプ−2−イン−1,3−ジイル、ブト−2−イン−1,4−ジイルおよびブト−3−イン−1,4−ジイルが特に好ましい。
【0024】
(C−C)−アルコキシは、本発明に関して、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。言及し得る例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシおよびn−ヘキソキシである。メトキシおよびエトキシが特に好ましい。
【0025】
(C−C)−シクロアルキルは、本発明に関して、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルである。好ましく言及し得るものは、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0026】
ハロゲンは、本発明に関して、一般的に、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。フッ素、塩素および臭素が好ましい。フッ素および塩素が特に好ましい。
【0027】
本発明に関して好ましいは、本発明の化合物の生理的に許容し得る塩である。
本発明の化合物の生理的に許容し得る塩は、本発明の物質の鉱酸、カルボン酸またはスルホン酸との酸付加塩であり得る。特に好ましい例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸または安息香酸の塩である。
【0028】
しかしながら、また言及し得る塩は、常套の塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウムまたはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムまたはマグネシウム塩)、または、アンモニアまたは有機アミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジヒドロアビエチルアミン、1−エフェンアミン(ephenamine)またはメチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩である。
【0029】
本発明の化合物は、像および鏡像をとる(エナンチオマー)か、または、像および鏡像をとらない(ジアステレオマー)、立体異性体で存在し得る。本発明は、エナンチオマーもしくはジアステレオマー、または、これらの各々の場合の混合物の両方に関する。ラセミ体は、ちょうどジアステレオマーのように、既知方法で立体異性的に純粋な構成分に分離できる。
【0030】
が、そのメタおよび/またはパラ位が(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび−SONR1011からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されているフェニルであり、R、R、R、R、R、R10、R11、LおよびMが上記の意味を有する一般式(I)の化合物の、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用が好ましい。
【0031】
フェニル環のメタおよびパラ位は、CR基に対して各々メタおよびパラである位置を意味する。これらの位置は、以下の構造式(Ic)により例示説明できる:
【化3】

【0032】
フェニルラジカルのパラ位および1つのメタ位が置換されており、第2のメタ位が非置換である一般式(Ic)の化合物の、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用が特に好ましい。
【0033】
がフェニルであり、R、R、R、R、R、R、LおよびMが上記の意味を有する一般式(I)の化合物の、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用が同様に好ましい。
【0034】
ことさら特に好ましいのは、式中、
が、そのメタおよび/またはパラ位が(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび−SONR1011からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されているフェニルであるか、または、ナフチルまたはキノリニルであり
{式中、R10およびR11は、相互に独立して水素または(C−C)−アルキルである}、
およびRが水素であり、
がメチルまたはエチルであり、
がメチルであり、
が水素またはメチルであり、
Lがカルボニルまたはヒドロキシメタンジイルであり、そして、
Mが、直鎖(C−C)−アルカン−1,ω−ジイル、直鎖(C−C)−アルケン−1,ω−ジイルまたは直鎖(C−C)−アルキン−1,ω−ジイルである、
一般式(I)の化合物の、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用である。
【0035】
構造式:
【化4】

を有する物質2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−[1−(1−ヒドロキシエチル)−4−フェニルブチル]−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オンの、心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用が同様に好ましい。
【0036】
心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、上記の構造式の上記の使用も好ましい。
【0037】
上記の化合物、そのPDE2阻害剤としての効果およびそれらの製造方法は、WO02/050078A1に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1:アルギニン−バソプレッシン1マイクロモルとの72時間のインキュベーション後のH9c2細胞におけるPDE2A−RNAの相対的発現の比較。H9c2ラット心筋細胞におけるL32リボソームタンパク質(rE)に対するPDE2Aの発現を示す。結果を表に示す(トリプリケート測定からの平均の相対的発現rE。PDE2AおよびL32の平均Ct値)。
【表1】

【図2】図2:バソプレッシン±PDE2A阻害剤BAY60−7550による刺激後のH9C2ラット細胞における肥大マーカーMYHCBの相対的発現。 バソプレッシン(0.1マイクロモル、1マイクロモル、10マイクロモル)との72時間のインキュベーション後のH9C2細胞におけるL32リボソームタンパク質に対するANPおよびMYHCBの発現を示す。PDE2A阻害剤BAY60−7550の同時存在は、バソプレッシンによる肥大マーカーMYHCBの誘導を、用量依存的に抑制することが明らかになる。結果を下表に列挙する。(デュプリケート測定からの平均の相対的発現rE)。
【表2】

【図3】図3:様々な濃度のPDE2A阻害剤BAY60−7550の存在下でのANPによる刺激後のH9c2ラット心筋細胞における細胞内cGMP濃度の変化。ANPおよび記載された用量のPDE2A阻害剤BAY60−7550との15分間のインキュベーション後の細胞におけるcGMP含有量を示す。PDE2A阻害剤BAY60−7550は、用量依存的かつ相乗的に、H9c2細胞における細胞内cGMPレベルを高めることが明らかになる。
【図4】図4:イソプレナリン(2mg/kg/d)の皮下投与による、体重と比較した心臓重量(HW:BW)の変化、および、正の対照としてのエナラプリル(810mg/kg/d、飲料水中)およびPDE2A阻害剤BAY60−7550の影響。心臓重量:体重の比を処置に応じて示す。2つの独立した動物群において、10mg/kg/d(i.p.)で5日間与えられるPDE2A阻害剤BAY60−7550は、イソプレナリンに誘導される心臓重量の増加を正の対照のエナラプリルとほぼ同等に抑制できることが明らかになる。
【図5】図5:図5は、ヒトPDE2AのcDNA配列を示す(受託番号NM_002599、配列番号1)。
【図6】図6:図6は、ヒトPDE2Aのアミノ酸配列を示す(受託番号NP_002590、配列番号2)。
【0039】
H9c2ラット細胞におけるPDE2A発現およびMYHCB発現の調査
H9c2ラット細胞におけるPDE2Aの相対的発現を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を使用してmRNAを定量することにより測定する[7]。常套のPCRと比較して、リアルタイムPCRは、付加的な蛍光標識オリゴヌクレオチドの導入による、より正確な定量という利点を有する。このいわゆるプローブは、5'末端に蛍光染料FAM(6−カルボニル−フルオレセイン)を、3'末端に蛍光クエンチャーTAMRA(6−カルボキシ−テトラメチルローダミン)を含有する。ポリメラーゼ連鎖反応の間、蛍光染料FAMは、TaqMan PCR のTaqポリメラーゼの5'−エキソヌクレアーゼ活性によりプローブから切り離され、かくして、それまではクエンチされていた蛍光シグナルが得られる。蛍光強度がバックグラウンドの蛍光より約10標準偏差高くなるサイクル数を、いわゆる閾値として記録する[閾値サイクル(Ct値)]。
【0040】
6ウェル(細胞約4x10個)のH9c2ラット心筋細胞から、RNeasy Kit (Qiagen Hilden)を使用して全RNAを単離する。組織当たり1μg分の全RNAを、1ユニットのDNaseI(Invitrogen より)と、室温で15分間反応させ、ゲノムDNAの混入を取り除く。EDTA(25mM)1μlの添加および続く65℃(10分間)の加熱によりDnaseIを非活性化する。
【0041】
続いて、「SUPERSCRIPT-II RT cDNA synthesis kit」(Invitrogen より)の指示書に従って、同じ反応混合物中でcDNA合成を実施し、反応体積を蒸留水で200μlとする。PCRのために、プライマーおよびプローブ混合物7.5μlおよびTaqMan反応溶液(qPCR Mastermix, Eurogentecより)12.5μlを、希釈したcDNA溶液5μl分に添加する。プライマーの最終濃度は各場合で300nMであり、プローブの最終濃度は150nMである。ラットPDE2A用のフォワードおよびリバースプライマーの配列は、5'−CCAAATCAGGGACCTCATATTCC−3'(配列番号3)および5'−GGTGTCCCACAAGTTCACCAT−3'(配列番号4)であり、蛍光プローブの配列は、5'−6FAM−AACAACTCGCTGGATTTCCTGGA−TAMRA−3'(配列番号5)である。r−MYHCB用のフォワードおよびリバースプライマーの配列は、5'−TGGAGAACGACAAGCAGCAG−3'(配列番号6)および5'−CCTGGCGTTGAGTGCATTTA−3'(配列番号7)であり、蛍光プローブの配列は、5'−6FAM−TGGATGAGCGACTCAAAAAGAAGGACTTTG−TAMRA−3'(配列番号8)である。
【0042】
PCRを、ABI Prism SDS-7700 装置 (Applied Biosystems より)で、製造業者の指示に従い行う。この場合、40サイクルを実施する。関連するcDNAの各遺伝子について得られるCt(上記参照)は、遊離したプローブの蛍光強度がバックグラウンドのシグナルより約10標準偏差高くなるサイクルに相当する。従って、より低いCt値は、より早い増幅の開始を、即ち、元のサンプルがより多くのmRNAを含有することを意味する。cDNA合成のいかなる変動も補うために、細胞の処置と関係なく常に同程度に発現されるべき、いわゆる「ハウスキーピング遺伝子」の発現も、調査するサンプルの全てで分析する。H9c2細胞におけるPDE2A発現を標準化するために、L32リボソームタンパク質を使用する。ラットL32のフォワードおよびリバースプライマーの配列は、5'−GAAAGAGCAGCACAGCTGGC−3'(配列番号9)、および、5'−TCATTCTCTTCGCTGCGTAGC−3'(配列番号10)であり、プローブの配列は、5'−6FAM−TCAGAGTCACCAATCCCAACGCCA−TAMRA−3'(配列番号11)である。以下の方法でデータを分析する:各RNAについて、dCt値を算出する。dCt値は、候補遺伝子(即ち:MYHCBまたはPDE2A)のCt値と、各組織のハウスキーピング遺伝子のCt値との差である。この値から、下式により相対的発現rEを算出する:
rE=2(18−dCt)
【0043】
PDE2A阻害剤BAY60−7550とのプレインキュベーション後のH9c2細胞におけるcGMP含有量の測定
H9c2細胞における細胞内cGMP含有量を、Amersham の Biotrak (EIA) Immunoassay(カタログ番号RPN226)により、製造業者のプロトコールに従い測定した。この目的で、H9c2細胞105個/ウェルを、12ウェルプレートに終夜播き、1xPBS(1ml)で洗浄した後、FCSを含まない培地800μl並びに上述の濃度のPDE2A阻害剤BAY60−7550およびANPと、室温で15分間インキュベートする。上清を廃棄し、細胞を氷冷70%強度エタノール500mlと混合した。室温(150rpm)で2分間撹拌した後、プレートを−20℃で終夜凍結し、融解後、溶解した細胞を Eppendorf 容器に移す。スピード−バック(speed-vac)中でエタノールを蒸発させた後(3時間、35℃)、サンプルをアッセイバッファー200μl中で再構成し、キットの説明書で指示される通りに後処理する。Tecan Spectrafluor 光度計で、450/570nmで蛍光を測定する。得られるOD値を、キットの指示書に従い、標準的較正プロットに基づき、fmol/ウェルに変換する。
【0044】
PDE2A阻害アッセイ
PDE2A阻害剤を同定するためのPDE2Aアッセイ様式は、当業者に知られている。可能なPDE2A活性アッセイ系の様式の一例を、以下に記載する。
ヒトPDE2A(GenBank/EMBL受託番号:NM_002599、Rosman et al. Gene 1997 191, 89-95) を、Bac-to-BacTM バキュロウイルス発現系を利用して、Sf9昆虫細胞で発現させる。感染の48時間後、細胞を回収し、溶解バッファー(20mL/培養液1L、50mM Tris−HCl、pH7.4、50mM NaCl、1mM MgCl2、1.5mM EDTA、10%グリセロール、Protease Inhibitor Cocktail Set III [CalBiochem, La Jolla, CA USA] 20μL)に懸濁する。4℃で超音波を利用して細胞を破壊し、次いで、15,000xg、4℃で30分間、遠心分離する。上清(PDE2A調製物)を回収し、−80℃で保存する。
【0045】
試験物質を溶解し、100%DMSO中で連続希釈し、それらのPDE2Aに対するインビトロ効果を測定する。典型的には、200μMないし1.6μMの連続希釈物を調製する(生じるアッセイ中の最終濃度:4μMないし0.032μM)。希釈した物質溶液2μL分を、マイクロタイタープレートのウェル中に入れる(Isoplate; Wallac Inc., Atlanta, GA)。次いで、上記のPDE2A調製物の希釈物50μLを添加する。PDE2A調製物の希釈物は、物質の70%未満が後のインキュベーション中に変換されるように選択する(典型的な希釈:1:200000;希釈バッファー:50mM Tris/HCl pH7.5;8.3mM MgCl2;1.7mM EDTA、0.2%BSA)。基質の[5',8−3H]アデノシン3',5'−環状リン酸塩(1μCi/μL;Amersham Pharmacia Biotech., Piscataway, NJ)を、アッセイバッファー(50mM Tris/HCl pH7.5;8.3mM MgCl2;1.7mM EDTA)で1:2000に、0.0005μCi/μLの濃度に希釈し、PDE2の刺激に作用するcGMP(アッセイにおける最終濃度1μM)を添加する。この基質溶液50μL(0.025μCi)を添加することにより、最終的に酵素反応を開始する。このアッセイ混合物を室温で60分間インキュベートし、18mg/mlの Yttrium Scintillation Proximity Beads (Amersham Pharmacia Biotech., Piscataway, NJ.)懸濁液25μLの添加により、反応を停止する。マイクロタイタープレートをフィルムで密閉し、室温で60分間静置する。次いで、Microbeta シンチレーションカウンター (Wallac Inc., Atlanta, GA)で、ウェル当たり30秒間、プレートを測定する。物質濃度を阻害割合に対してプロットしたグラフを使用して、IC50値を決定する。
【0046】
PDE1、3、4、5、7、8、9、10および11の阻害
組換えヒトPDE3B(GenBank/EMBL受託番号:NM_000922、Miki et al. Genomics 1996 36, 476-485)、PDE4B(GenBank/EMBL受託番号:NM_002600、Obernolte et al. Gene. 1993 129, 239-247)、PDE7B(GenBank/EMBL受託番号:NM_018945、Hetman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2000 97, 472-476)、PDE8A(GenBank/EMBL受託番号:AF_056490、Fisher et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1998 246, 570-577)、PDE9A(GenBank/EMBL受託番号:NM_002606、Fisher et al. J. Biol. Chem. 1998 273, 15559-15564)、PDE10A(GenBank/EMBL受託番号:NM_06661、Fujishige et al. J. Biol. Chem. 1999 274, 18438-45)、PDE11A(GenBank/EMBL受託番号:NM_016953、Fawcett et al. Proc. Natl. Acad. Sci 2000 97, 3702-3707)を、pFASTBACバキュロウイルス発現系(GibcoBRL)を利用して、Sf9細胞で発現させた。ウシPDE1を、Sigma-Aldrich (P 9529)から購入した。PDE5を、ヒト血小板から、超音波処理および続く遠心分離および上清の Mono Q 10/10 でのカラムクロマトグラフィー(直線状NaClグラジエント、20mM Hepes pH7.2、2mM MgCl2中、0.2−0.3M NaClによる溶出)により取り出した。
【0047】
組換えPDE3B、PDE4B、PDE7B、PDE8A、PDE10AおよびPDE11Aに対する試験物質のインビトロ効果を、PDE2Aについて上記したアッセイプロトコール(ここでは、PDE2Aの刺激に使用されるcGMPのアッセイへの添加はない)により測定する。PDE1、PDE5およびPDE9Aに対する対応する効果を測定するために、プロトコールをさらに次の通りに改変する:PDE1には、さらにカルモジュリン10−7MおよびCaCl2 3mMを反応混合物に添加する。PDE5およびPDE9Aには、使用する基質は、上記の希釈物中の[8−3H]cGMP(1μCi/μL;Amersham Pharmacia Biotech., Piscataway, NJ)である。PDE9A反応を停止するために、アッセイバッファーに溶解したPDE9A阻害剤C、例えばBAY73−6691(最終濃度5μM)25μlを、Yttrium Scintillation Proximity Bead 懸濁液の添加直後に添加する。
【0048】
PDE2A阻害剤は、PDE2Aの転写または翻訳のレベルでも作用し得る。対応する阻害剤を見出すためのアッセイ系は、当業者に周知である。
【0049】
インビボの抗肥大効果についてのPDE2A阻害剤のアッセイ:
PDE2A阻害剤BAY60−7550の抗肥大効果を、いわゆるマウスイソプレナリンモデル[]を使用してアッセイする。これには、用量群当たり8匹のマウス(C57bl/6系統)が含まれ、これらは、イソプレナリンの皮下投与を2mg/kg/dの用量で5日間受け、一方、対照群は、媒体の対照として生理食塩水を受容する。正の対照として、イソプレナリンに加えて、ACE阻害剤エナラプリルを10mg/kg/dの用量で飲料水を介して1つの群に投与し、一方、2つのさらなる群は、イソプレナリンに加えて、10mg/kg/dの用量で腹腔内投与されるPDE2A阻害剤BAY60−7550を受容する。心肥大の程度の尺度として、心臓重量/体重(HW:BW)の比を、5日後に測定し、イソプレナリンの効果に対する物質の効果の関係を見出す。
【0050】
PDE2A阻害剤の製剤
PDE2A阻害剤は、既知方法で、不活性、非毒性の医薬的に適する担体または溶媒の使用により、錠剤、被覆錠剤、丸剤、顆粒剤、エアゾル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤および液剤などの通常の製剤に変換できる。この場合、治療的に有効な化合物は、各場合で完全な混合物の0.5ないし90重量%の濃度で、即ち、上述の投与量範囲に達するのに十分な量で、存在すべきである。
【0051】
製剤は、例えば、有効成分を溶媒および/または担体で薄めることにより、必要に応じて乳化剤および/または分散剤を使用して製造し、例えば水を希釈剤として使用する場合、必要に応じて有機溶媒を補助溶媒として使用することが可能である。
【0052】
投与は、通常の方法で、好ましくは、経口で、経皮で、静脈内または非経腸で、特に経口で、または、静脈内で行う。しかしながら、例えばスプレーを利用して、口または鼻を介する吸入により、または、皮膚を介して局所的に行うこともできる。
【0053】
0.001ないし10mg/体重kgほどの、経口使用で好ましくは約0.005ないし3mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を得るために有利であると一般的に明らかになった。
【0054】
それにも拘わらず、必要に応じて、特に、体重または投与経路の性質、医薬に対する個々の応答、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。かくして、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方、上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日にわたる複数の単回用量に分配するのが望ましいことがある。
【0055】
参考文献
1. Scherer, CR, Dissertation Univ. Frankfurt, 2002.
2. Brostrom MA, Reilly BA, Wilson FJ, Brostrom CO. Vasopressin-induced hypertrophy in H9c2 heart-derived myocytes. Int J Biochem Cell Biol. 2000 Sep;32(9):993-1006.
3. Calderone A, Thaik CM, Takahashi N, Chang DL, Colucci M., Nitric oxide, atrial natriuretic peptide, and cyclic GMP inhibit the growth-promoting effects of norepinephrine in cardiac myocytes and fibroblasts. J. Clin Invest. 1998 Feb 15;101(4):812-8.
4. Booz GW, Putting the brakes on cardiac hypertrophy: exploiting the NO-cGMP counter-regulatory system. Hypertension. 2005 Mar;45(3):341-6.
5. Mendelsohn ME, Nat. Med. 11, 2005, 115-116
6. Boess FG, Hendrix M, van der Staay FJ, Erb C, Schreiber R, van Staveren W, de Vente J, Prickaerts J, Blokland A, Koenig G. Inhibition of phosphodiesterase 2 increases neuronal cGMP, synaptic plasticity and memory performance, Neuropharmacology. 2004 Dec;47(7):1081-92
7. Heid CA, Stevens J, Livak KJ, Williams PM., Real time quantitative PCR. Genome Res 6 (1996), 986-994.
8. Hassan MA, Ketat AF., Sildenafil citrate increases myocardial cGMP content in rat heart, decreases its hypertrophic response to isoproterenol and decreases myocardial leak of creatine kinase and troponin T, BMC Pharmacol. 2005 Apr 6;5(1):10.
【0056】
参考
ANP 心房性ナトリウム利尿ペプチド
AVP:アルギニン−バソプレッシン
BW:体重
Ct:閾値サイクル
HW:心臓重量
MYHCB:ミオシン重鎖ベータサブユニット
PBS リン酸緩衝塩水
rE:相対的発現
SD:標準偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全およびその根底にある心筋症、および、冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防に適するPDE2A阻害剤を見出すためのアッセイ系における、PDE2AポリペプチドまたはPDE2Aポリペプチドをコードする核酸の使用。
【請求項2】
アッセイ系が無細胞である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
PDE2Aをコードする核酸を含む全細胞がアッセイ系で使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
PDE2A活性を測定する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
cGMPまたはGMPレベルを測定する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
PDE2Aの発現を測定する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項7に記載の方法のいずれかにより同定されたPDE2A阻害剤の使用。
【請求項9】
拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項7に記載の方法のいずれかを利用して同定されたPDE2A阻害剤の使用。
【請求項10】
心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A−特異的抗体、PDE2A−特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはPDE2A−特異的siRNAの使用。
【請求項11】
拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A−特異的抗体、PDE2A−特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはPDE2A−特異的siRNAの使用。
【請求項12】
心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、PDE2A阻害剤の使用。
【請求項13】
心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための、一般式(I)
【化1】

[式中、
は、フェニル、ナフチル、キノリニルまたはイソキノリニルであり、これらの各々は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲン、シアノ、−NHCOR、−NHSO、−SONR1011、−SO12および−NR1314からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されていてもよく
{ここで、R、R10、R11、R13およびR14は、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルであり、そして、
およびR12は、相互に独立して(C−C)−アルキルであるか、
または、
10およびR11は、隣接する窒素原子と一体となって、アゼチジン−1−イル、ピロール−1−イル、ピペリド−1−イル、アゼピン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イルまたはモルホリン−1−イルラジカルを形成するか、
または、
13およびR14は、隣接する窒素原子と一体となって、アゼチジン−1−イル、ピロール−1−イル、ピペリド−1−イル、アゼピン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イルまたはモルホリン−1−イルラジカルを形成する}、
およびRは、相互に独立して水素またはフッ素であり、
は、(C−C)−アルキルであり、
は、(C−C)−アルキルであり、
は、水素またはメチルであり、
は、フェニル、チオフェニル、フラニル(これらの各々は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、ハロゲンおよびシアノからなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されていてもよい)であるか、または、(C−C)−シクロアルキルであり、
Lは、カルボニルまたはヒドロキシメタンジイルであり、そして、
Mは、(C−C)−アルカンジイル、(C−C)−アルケンジイルまたは(C−C)−アルキンジイルである]
の化合物およびその生理的に耐容される塩の使用。
【請求項15】
が、そのメタおよび/またはパラ位が(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび−SONR1011からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されているフェニルであり、R10およびR11が請求項14に記載の意味を有する請求項14に記載の化合物の、心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用。
【請求項16】
がフェニルである請求項14または請求項15に記載の化合物の、心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用。
【請求項17】
式中、
が、そのメタおよび/またはパラ位が(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシおよび−SONR1011からなる群から選択される3個までの同一かまたは異なるラジカルにより置換されているフェニルであるか、または、ナフチルまたはキノリニルであり
{式中、R10およびR11は、相互に独立して水素または(C−C)−アルキルである}、
およびRが水素であり、
がメチルまたはエチルであり、
がメチルであり、
が水素またはメチルであり、
Lがカルボニルまたはヒドロキシメタンジイルであり、そして、
Mが、直鎖(C−C)−アルカン−1,ω−ジイル、直鎖(C−C)−アルケン−1,ω−ジイルまたは直鎖(C−C)−アルキン−1,ω−ジイルである、
請求項14に記載の化合物の、心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用。
【請求項18】
一般式(II)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、LおよびMは、請求項14に記載の意味を有する)
の化合物の、心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用。
【請求項19】
構造式:
【化3】

を有する物質2−(3,4−ジメトキシベンジル)−7−[1−(1−ヒドロキシエチル)−4−フェニルブチル]−5−メチルイミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4(3H)−オンの、心不全および冠動脈心疾患、特に安定および不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓性突然死、高血圧、アテローム性動脈硬化症の後遺症、および、血管の障害、腎臓の障害および/または勃起不全の処置および/または予防用の医薬を製造するための使用。
【請求項20】
心不全が、拡張型心筋症(DCM)、拘束型心筋症(RCM)、不整脈原性右室心筋症(ARVCM)、心筋炎および/または肥大型心筋症(HCM)からなる心筋症の群から選択される心筋症により誘導される心不全である、請求項14ないし請求項19のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−506561(P2010−506561A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531740(P2009−531740)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008561
【国際公開番号】WO2008/043461
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】