説明

PLL回路

【課題】複数の位相誤差出力をもつ特殊なVCOを備えること無しに、間欠的に記録され、データの先頭部に同期引き込みパターン領域を有するデータに対し、高速での引き込みを可能とするPLL回路を提供する。
【解決手段】PLL回路において、ADコンバータ4と、ADコンバータ4の出力信号から位相誤差を算出する位相比較器5と、周波数系フィルタ6と、位相系フィルタ7と、所定のタイミングで位相比較器5で算出された位相誤差の読み取りを行い、その読み取り値に応じた出力を発生する位相誤差読み取り手段8および位相誤差変換手段9と、周波数系フィルタ6の出力、位相系フィルタ7の出力、および位相誤差変換手段9の出力を加算する加算器10と、DAコンバータ11と、DAコンバータ11の出力電圧に基づいてADコンバータ4のサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力するVCO12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠的に記録され、データの先頭部に同期引き込みパターン領域を有する光ディスク、特にDVD−RAMから信号を再生する装置のPLL(Phase-Locked Loop)回路に関し、特にPLL等の位相同期ループを用いて、同期引き込みパターン領域で高速に同期引き込みを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DVD−RAMはセクタ単位でユーザーデータは間欠的に記録されており、セクタ単位に同期クロックを再生するPLLは引き込みをしなおさなければならない。これを容易とするためにユーザーデータ先頭部には、固定周期の同期引き込みパターンが記録されるようになっている。
【0003】
しかしながら、セクタ毎に同期引き込みを行いなおすには、付加されている同期引き込みパターンの長さでは不十分な場合がある。引き込み時間が十分でなく高速に引き込む必要がある場合、PLLを構成するVCOの出力を複数の位相を有するようにし、PLLを構成する位相比較器で検出された位相誤差にあわせてVCO出力の位相を選択するようにし高速引き込みを可能にしていた[例えば、特開2003−179488号公報(特許文献1)参照]。
【特許文献1】特開2003−179488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される方法では、同期引き込みパターンを有する間欠記録されたデータに対するPLLの高速引き込みが可能となるが、複数の位相誤差出力をもつVCOなど、特殊なアナログ部品が必要になり実現が難しかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、複数の位相誤差出力をもつ特殊なVCOを備えること無しに、間欠的に記録され、データの先頭部に同期引き込みパターン領域を有するデータに対し、高速での引き込みを可能とするPLL回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0007】
本発明によるPLL回路は、同期引き込みパターン領域とデータ領域とを有する光ディスクからの再生信号に同期した再生クロックを生成するPLL回路であって、光ディスクからの再生信号をサンプリングするADコンバータと、ADコンバータの出力信号から位相誤差を算出する位相誤差検出手段と、位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で積分処理する周波数系フィルタと、位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で増幅する位相系フィルタと、所定のタイミングで位相誤差検出手段で算出された位相誤差の読み取りを行い、その読み取り値に応じた出力を発生する変換手段と、周波数系フィルタの出力、位相系フィルタの出力、および変換手段の出力を加算する加算手段と、加算手段の出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータと、DAコンバータの出力電圧に基づいてADコンバータのサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力する電圧制御発信器とを備えたものである。
【0008】
また、本発明によるPLL回路は、同期引き込みパターン領域とデータ領域とを有し、両領域の記録トラックは固定周波数で変調された光ディスクからの再生信号に同期した再生クロックを生成するPLL回路であって、光ディスクからの再生信号をサンプリングするADコンバータと、ADコンバータの出力信号から位相誤差を算出する位相誤差検出手段と、位相誤差検出手段の出力に付加された第1のフィルタと、記録トラックの変調信号により周波数誤差を算出する周波数誤差検出手段と、周波数誤差検出手段の出力に付加された第2のフィルタと、位相誤差検出手段の出力と周波数誤差検出手段の出力のどちらかを選択するタイミング信号を出力するタイミング生成手段と、タイミング生成手段からのタイミング信号により、周波数誤差検出手段の出力選択から位相誤差検出手段の出力選択に切り換えられたタイミングで位相誤差の読み取りを行い、読み取り値に応じた出力を発生する変換手段と、第1のフィルタの出力、第2のフィルタの出力、および変換手段の出力を加算する加算手段と、加算手段の出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータと、DAコンバータの出力電圧に基づいてADコンバータのサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力する電圧制御発信器とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0010】
本発明によれば、複数の位相誤差出力をもつ特殊なVCOを備えること無しに、位相誤差検出手段で検出された位相誤差にあわせてVCOの位相を瞬時に調整することができ、間欠的に記録され、データの先頭部に同期引き込みパターン領域を有するデータに対し、高速での引き込みを可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
(実施の形態1)
<PLL回路の構成>
図1により、本発明の実施の形態1に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【0013】
図1において、光ディスク装置は、光ディスク媒体1、光ピックアップ2、プリアンプ3、ADコンバータ(ADC)4、位相誤差検出手段である位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、位相誤差変換手段9、加算手段である加算器10、DAコンバータ(DAC)11、電圧制御発信器であるVCO(Voltage Controlled Oscillator)12から構成され、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、位相誤差変換手段9、加算器10、DAコンバータ11、VCO12でPLL回路を構成している。
【0014】
また、位相誤差読み取り手段8および位相誤差変換手段9で変換手段を構成している。
【0015】
<PLL回路の動作>
次に、図1により、本発明の実施の形態1に係るPLL回路の動作について説明する。
【0016】
まず、光ディスク媒体1に対し、光ピックアップ2を所望の位置に移動させ、目的の信号を電気信号に変換する。電気信号に変えられた入力信号はプリアンプ3で等価が行われる。
【0017】
そして、ADコンバータ4では、再生されたチャネルクロックでサンプリングを行い、ADコンバータ4でサンプリングされた信号は位相比較器5に入力されゼロクロス点の前後のサンプル値の誤差によって位相比較を行う。
【0018】
周波数系フィルタ6は位相比較器5の出力を所定の倍率で積分処理する。位相系フィルタ7は位相比較器5の出力を所定の倍率で増幅する。
【0019】
周波数系フィルタ6の出力と位相系フィルタ7の出力は加算器10で加算され、DAコンバータ11でアナログ電圧に変換され、VCO12に入力される。
【0020】
VCO12の発振出力はADコンバータ4のサンプリングクロックとして用いられるだけでなく、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、位相誤差変換手段9の動作クロックとして用いられる。
【0021】
また、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、加算器10の一部、DAコンバータ11、VCO12は従来からのディジタルPLLを構成している。
【0022】
本実施の形態では、このディジタルPLLにおいて、位相誤差読み取り手段8は所定のタイミングで位相比較器5の位相誤差を読み取る。位相比較器5はADコンバータ4のゼロクロス点直前直後のサンプル値を比較するため、位相誤差読み取り手段8はこのタイミングのうちの1つで読み取りを行うことになる。
【0023】
位相誤差変換手段9は読み込まれた位相誤差に相当する位相分VCO12の出力をシフトさせるに相当するコードを発生する。このコードの発生は位相誤差読み取り手段8の位相誤差読み取りタイミングに略一致する。
【0024】
従って、位相誤差読み取り手段8で読み取られたタイミングで、位相誤差分はVCO制御電圧で補正される。そのため、位相誤差変換手段9から出力が出たタイミングで、位相誤差は略0に合わせられるため、その後の位相引き込みが早くなる。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、位相誤差変換手段9の出力がなされる時に位相誤差が略0となるため、その後の位相引き込みを早くすることが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態では、位相誤差読み取り手段8は、ADコンバータ4の出力のゼロクロス点の1つで位相誤差を読み取り、このタイミングで位相誤差変換手段9が位相を補正するが、入力信号がDC成分を持った場合は、ゼロクロス点前後の位相誤差はDC分ずれることになる。
【0027】
連続する2つのゼロクロス点をA点、B点とすると、A点の位相誤差がプラスされれば、B点は位相誤差がA点がプラスされた分マイナスされる。また、A点のゼロクロス点の位相誤差がマイナスされれば、B点は位相誤差がA点がマイナスされた分プラスされる。
【0028】
このように、1つのゼロクロス点の位相誤差だけを見ると、DC成分の影響を受けるため、ずれた位相誤差を読み取って、これに合わせて補正してしまうため、誤った補正をしてしまうことになる。これに対し、連続する2つのゼロクロス点の位相誤差を加算して2で割った値を読み取り、その値分の位相をシフトするコードを後側のゼロクロス点で加算して補正することで、DC成分の影響を受けずに、位相引き込みを早くすることができる。
【0029】
(実施の形態2)
<PLL回路の構成>
図2により、本発明の実施の形態2に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成について説明する。図2は本発明の実施の形態2に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【0030】
図2において、光ディスク装置は、光ディスク媒体1、光ピックアップ2、プリアンプ3、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、加算器10、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)回路201、同期検出回路202、タイミング生成回路203、DAコンバータ11、VCO12、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209から構成され、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、位相誤差変換手段9、加算器10、DAコンバータ11、VCO12、PRML回路201、同期検出回路202、タイミング生成回路203、DAコンバータ11、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209でPLL回路を構成している。
【0031】
本実施の形態は、実施の形態1において、ディジタルPLLの基本構成は変わらず、位相誤差読み取り手段208と位相誤差変換手段209に所定のタイミングを供給する構成を具体的に示したものである。
【0032】
<PLL回路の動作>
次に、図2および図3により、本発明の実施の形態2に係るPLL回路の動作について説明する。図3は本発明の実施の形態2に係るPLL回路の動作を説明するためのDVD−RAMの記録フォーマットの一例を示す図であり、DVD−RAMの記録フォーマットを一部簡略化して、2セクタ分を描いたものである。
【0033】
まず、光ディスク媒体1に対し、光ピックアップ2を所望の位置に移動させ、目的の信号を電気信号に変換する。電気信号に変えられた入力信号はプリアンプ3で等価が行われる。 そして、ADコンバータ4では、再生されたチャネルクロックでサンプリングを行い、ADコンバータ4でサンプリングされた信号は位相比較器5に入力されゼロクロス点の前後のサンプル値の誤差によって位相比較を行う。
【0034】
周波数系フィルタ6は位相比較器5の出力を所定の倍率で積分処理する。位相系フィルタ7は位相比較器5の出力を所定の倍率で増幅する。
【0035】
周波数系フィルタ6の出力と位相系フィルタ7の出力は加算器10で加算され、DAコンバータ11でアナログ電圧に変換され、VCO12に入力される。
【0036】
VCO12の発振出力はADコンバータ4のサンプリングクロックとして用いられるだけでなく、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、PRML回路201、同期検出回路202、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209の動作クロックとして用いられる。
【0037】
また、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、加算器10の一部、DAコンバータ11、VCO12は通常のディジタルPLLを構成している。
【0038】
DVD−RAMは、図3に示すように、間欠的な記録フォーマットをとっており、1セクタにはID領域と、ユーザーデータ領域を持っており、それぞれのエリアの先頭部には同期引き込みパターン領域を持っている。
【0039】
PRML回路201はADコンバータ4でサンプリングされたデータを2値化する。同期検出回路202はPRML回路201で2値化されたデータのうち、ID領域に記録されている同期信号を検出しタイミングの基準とする。
【0040】
タイミング生成回路203はID領域の同期信号を基準としてカウンタを動作させ、PLLの再引き込みを行うタイミングにタイミング信号を発生する。タイミング信号の発生は、図3では各同期引き込みパターン領域の略先頭の一点となる。
【0041】
位相誤差読み取り手段208は、ADコンバータ4の出力のゼロクロス点のうちタイミング生成回路203で生成されたタイミングで、位相誤差の読み取りを行い、略同一のタイミングで位相誤差変換手段209は読み込まれた位相誤差に相当する位相分VCO12の出力をシフトさせるに相当するコードを発生する。
【0042】
従って、位相誤差読み取り手段208で読み取られたタイミングで、位相誤差分はVCO制御電圧で補正される。そのため、位相誤差変換手段9から出力が出たタイミングで、位相誤差は略0に合わせられるため、その後の位相引き込みが早くなる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、検出された同期信号を基準としてタイミング信号が生成され同期引き込みパターン領域の略先頭で位相誤差が略0に補正されるため、その後の位相引き込みが早くなり同期引き込みパターン領域内でPLLを引き込ませることが可能となる。
【0044】
(実施の形態3)
<PLL回路の構成>
図4により、本発明の実施の形態3に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成について説明する。図4は本発明の実施の形態3に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【0045】
図4において、光ディスク装置は、光ディスク媒体1、光ピックアップ2、プリアンプ3、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、加算器10、DAコンバータ11、VCO12、閾値判断手段309、出力設定手段310から構成され、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、加算器10、DAコンバータ11、VCO12、閾値判断手段309、出力設定手段310でPLL回路を構成している。
【0046】
また、位相誤差読み取り手段8、閾値判断手段309、および出力設定手段310で変換手段を構成している。
【0047】
<PLL回路の動作>
まず、光ディスク媒体1に対し、光ピックアップ2を所望の位置に移動させ、目的の信号を電気信号に変換する。電気信号に変えられた入力信号はプリアンプ3で等価が行われる。
【0048】
そして、ADコンバータ4では、再生されたチャネルクロックでサンプリングを行い、ADコンバータ4でサンプリングされた信号は位相比較器5に入力されゼロクロス点の前後のサンプル値の誤差によって位相比較を行う。
【0049】
周波数系フィルタ6は位相比較器5の出力を所定の倍率で積分処理する。位相系フィルタ7は位相比較器5の出力を所定の倍率で増幅する。
【0050】
周波数系フィルタ6の出力と位相系フィルタ7の出力は加算器10で加算され、DAコンバータ11でアナログ電圧に変換され、VCO12に入力される。
【0051】
VCO12の発振出力はADコンバータ4のサンプリングクロックとして用いられるだけでなく、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8の動作クロックとして用いられる。
【0052】
また、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、加算器10の一部、DAコンバータ11、VCO12は従来からのディジタルPLLを構成している。
【0053】
本実施の形態では、このディジタルPLLにおいて、位相誤差読み取り手段8は所定のタイミングで位相比較器5の位相誤差を所定のタイミングで読み取る。位相比較器5はADコンバータ4のゼロクロス点直前直後のサンプル値を比較するため、位相誤差読み取り手段8はこのタイミングのうちの1つで読み取りを行うことになる。
【0054】
閾値判断手段309は予め決めておいた位相誤差値より大きい位相誤差が検出されたかを判定する。出力設定手段310は閾値判断手段309で位相誤差が閾値より大と判定された時に、予め定められていたコードを出力する。
【0055】
この、予め定めるコードとしては、閾値に等しい位相誤差に相当する位相分VCO12の出力をシフトさせるに相当するコードが適当である。コードの発生は位相誤差読み取り手段8の位相誤差読み取りタイミングに略一致する。
【0056】
従って、読み取りタイミングで閾値より位相誤差が小さい場合は、位相を補正しなくても十分早く引き込みが行えると判断し、出力設定手段310からは0を発生させる。
【0057】
一方、閾値より位相誤差が大きい場合は、引き込みに時間がかかると判断して、出力設定手段からは、閾値分の位相誤差をシフトさせるコードを出力させ、位相誤差を閾値以下にする方向に作用し、十分に早く引き込みができるようにする。
【0058】
以上のように、本実施の形態によれば、大小判定の演算と加算を行うことで、位相誤差の補正を行うことができるので、高周波数で動作するディジタルPLLにおいて、PLLの引き込みを高速化することが可能となる。
【0059】
(実施の形態4)
<PLL回路の構成>
図5により、本発明の実施の形態4に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成について説明する。図5は本発明の実施の形態4に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【0060】
図5において、光ディスク装置は、光ディスク媒体1、光ピックアップ2、プリアンプ3、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、加算器410、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)回路201、同期検出回路202、DAコンバータ11、VCO12、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209、エッジ検出回路401、ウォブル検出回路402、逓倍器403、周波数比較器404、積分器405、タイミング生成手段であるタイミング生成回路406から構成され、ADコンバータ4、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段8、位相誤差変換手段9、加算器410、DAコンバータ11、VCO12、PRML回路201、同期検出回路202、DAコンバータ11、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209、エッジ検出回路401、ウォブル検出回路402、逓倍器403、周波数誤差検出手段である周波数比較器404、第2のフィルタである積分器405、タイミング生成回路406でPLL回路を構成している。
【0061】
また、周波数系フィルタ6および位相系フィルタ7で第1のフィルタを構成している。
【0062】
<PLL回路の動作>
まず、光ディスク媒体1に対し、光ピックアップ2を所望の位置に移動させ、目的の信号を電気信号に変換する。電気信号に変えられた入力信号はプリアンプ3で等価が行われる。
【0063】
そして、ADコンバータ4では、再生されたチャネルクロックでサンプリングを行い、ADコンバータ4でサンプリングされた信号は位相比較器5に入力されゼロクロス点の前後のサンプル値の誤差によって位相比較を行う。
【0064】
周波数系フィルタ6は位相比較器5の出力を所定の倍率で積分処理する。位相系フィルタ7は位相比較器5の出力を所定の倍率で増幅する。一方、光ディスク媒体1に記録された信号のトラックは、一定の周期でウォブリングされている。
【0065】
プリアンプ3では、バンドパスフィルタを用いてウォブル信号を検出する。DVD−RAMの場合このウォブル信号の周期は、記録データのビットレートの186倍とされている。
【0066】
逓倍器403はウォブル検出回路402で検出されたウォブル信号の欠損などを保護しつつ、逓倍を行い、ディスクより読み出されるデータのビットレートに等しいクロックを得る。DVD−RAMの場合は186逓倍となる。
【0067】
周波数比較器404は、ウォブルから逓倍されたクロックとVCO12の周波数を比較する。周波数比較器404で検出された誤差信号は、積分器405で所定の倍率で積分処理される。
【0068】
周波数系フィルタ6と、位相系フィルタ7と、積分器405の出力は加算器410で加算される。加算器410の出力はDAC11でアナログ電圧に変換され、VCO12に入力される。
【0069】
VCO12の発振出力はADコンバータ4のサンプリングクロックとして用いられるだけでなく、位相比較器5、周波数系フィルタ6、位相系フィルタ7、位相誤差読み取り手段208、位相誤差変換手段209、PRML回路201、同期検出回路202、周波数比較器404、積分器405の動作クロックとして用いられる。
【0070】
PRML回路201はADコンバータ4でサンプリングされたデータを2値化する。202同期検出手段はPRML回路201で2値化された図3に示されるデータのうち、ID領域に記録されている同期信号を検出しタイミングの基準とする。
【0071】
タイミング生成回路406はID領域の同期信号を基準としてカウンタを動作させ、データが存在しないGAP領域では位相比較器5の出力を0とし周波数比較器404の出力をアクティブとするタイミング信号を、データのある領域、すなわちID領域とユーザーデータ領域では、位相比較器5の出力をアクティブとし周波数比較器404の出力を0とするタイミング信号を生成する。
【0072】
従って、データが存在しない期間では、周波数比較器404が働き、入力データのビットレートに等しいウォブルクロックに周波数ロックさせ、データが存在する期間は、入力データに位相ロックさせるように動作する。
【0073】
エッジ検出回路401はタイミング生成回路406の出力が周波数比較器404選択から位相比較器5選択に切り換えるエッジを検出してタイミングパルスを生成する。エッジ検出回路401で生成されたタイミングパルスが発生したタイミングで位相比較器5の位相誤差を読み取る。
【0074】
位相誤差変換手段209は読み込まれた位相誤差に相当する位相分VCO12の出力をシフトさせるに相当するコードを発生する。コードの発生は位相誤差読み取り手段208の位相誤差読み取りタイミングに略一致する。
【0075】
従って、位相誤差読み取り手段8で読み取られたタイミングで、位相誤差分はVCO制御電圧で補正される。そのため、位相誤差変換手段209から出力が出たタイミングで、位相誤差は略0に合わせられるため、その後の位相引き込みが早くなる。
【0076】
以上のように、本実施の形態によれば、データの無い領域ではPLLが大きく外れないように、逓倍させたウォブルクロックに周波数ロックさせ、データのある領域に突入すると位相比較器5の出力をアクティブにさせデータにロックさせようとし、同時に位相誤差を略0に補正するため、切り換え後短時間で、位相ロックさせることが可能となる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、間欠的に記録され、データの先頭部に同期引き込みパターン領域を有する光ディスクPLL回路に関し、特にPLL等の位相同期ループを用いて、同期引き込みパターン領域で高速に同期引き込みを行うPLL回路の適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態1に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るPLL回路の動作を説明するためのDVD−RAMの記録フォーマットの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係るPLL回路を用いた光ディスク装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1…光ディスク媒体、2…光ピックアップ、3…プリアンプ、4…ADコンバータ、5…位相比較器、6…周波数系フィルタ、7…位相系フィルタ、8…位相誤差読み取り手段、9…位相誤差変換手段、10…加算器、11…DAコンバータ、12…VCO、201…PRML回路、202…同期検出回路、203…タイミング生成回路、208…位相誤差読み取り手段、209…位相誤差変換手段、309…閾値判断手段、310…出力設定手段、401…エッジ検出回路、402…ウォブル検出回路、403…逓倍器、404…周波数比較器、405…積分器、406…タイミング生成回路、410…加算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期引き込みパターン領域とデータ領域とを有する光ディスクからの再生信号に同期した再生クロックを生成するPLL回路であって、
前記光ディスクからの再生信号をサンプリングするADコンバータと、
前記ADコンバータの出力信号から位相誤差を算出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で積分処理する周波数系フィルタと、
前記位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で増幅する位相系フィルタと、
所定のタイミングで前記位相誤差検出手段で算出された位相誤差の読み取りを行い、その読み取り値に応じた出力を発生する変換手段と、
前記周波数系フィルタの出力、前記位相系フィルタの出力、および前記変換手段の出力を加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータと、
前記DAコンバータの出力電圧に基づいて前記ADコンバータのサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力する電圧制御発信器とを備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
同期引き込みパターン領域とデータ領域とを有する光ディスクからの再生信号に同期した再生クロックを生成するPLL回路であって、
前記光ディスクからの再生信号をサンプリングするADコンバータと、
前記ADコンバータの出力信号から位相誤差を算出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で積分処理する周波数系フィルタと、
前記位相誤差検出手段の出力を所定の倍率で増幅する位相系フィルタと、
所定のタイミングで前記位相誤差検出手段で算出された位相誤差の読み取りを行い、その読み取った位相誤差が予め設定した閾値を超えた時に所定の出力を発生する変換手段と、
前記周波数系フィルタの出力、前記位相系フィルタの出力、および前記変換手段の出力を加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータと、
前記DAコンバータの出力電圧に基づいて前記ADコンバータのサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力する電圧制御発信器とを備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項1または2記載のPLL回路において、
前記所定のタイミングは、前記同期引き込みパターン領域の略先頭であることを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項3記載のPLL回路において、
前記所定のタイミングは、前記ADコンバータの出力がゼロクロスする点のうち連続する2点であることを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
請求項1記載のPLL回路において、
前記変換手段は、読み取った位相誤差に比例する位相シフト量が前記電圧制御発信器で発生するコードを出力することを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項1または2記載のPLL回路において、
前記加算手段による前記変換手段の出力の加算は、瞬時に行われることを特徴とするPLL回路。
【請求項7】
同期引き込みパターン領域とデータ領域とを有し、両領域の記録トラックは固定周波数で変調された光ディスクからの再生信号に同期した再生クロックを生成するPLL回路であって、
前記光ディスクからの再生信号をサンプリングするADコンバータと、
前記ADコンバータの出力信号から位相誤差を算出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差検出手段の出力に付加された第1のフィルタと、
記録トラックの変調信号により周波数誤差を算出する周波数誤差検出手段と、
前記周波数誤差検出手段の出力に付加された第2のフィルタと、
前記位相誤差検出手段の出力と前記周波数誤差検出手段の出力のどちらかを選択するタイミング信号を出力するタイミング生成手段と、
前記タイミング生成手段からのタイミング信号により、前記周波数誤差検出手段の出力選択から前記位相誤差検出手段の出力選択に切り換えられたタイミングで位相誤差の読み取りを行い、読み取り値に応じた出力を発生する変換手段と、
前記第1のフィルタの出力、前記第2のフィルタの出力、および前記変換手段の出力を加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号をアナログ電圧に変換するDAコンバータと、
前記DAコンバータの出力電圧に基づいて前記ADコンバータのサンプリングクロックとして使用される発振出力を出力する電圧制御発信器とを備えたことを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−201678(P2007−201678A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16101(P2006−16101)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】