説明

PLL回路

【課題】 位相ノイズを低減し、設計が容易なPLL回路を提供する。
【解決手段】 PLL3が、基準周波数とVC−TCXO4からの出力を入力し、ロック動作を行い、ロック状態となると、セレクタ6は基準周波数を分周する第1の分周器2の出力を選択し、PLL3が、基準周波数入力断又はロック外れを検出すると、アラーム信号をセレクタ6に出力し、セレクタ6が、PLL3からのアラーム信号が入力されると、第1の分周器2の出力から、VC−TCXO4の出力を分周する第2の分周器5の出力に切り替えて出力し、PLL7が、セレクタ6の出力とVCXO8の出力とを入力し、ロック動作を行うPLL回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop:位相ロックド・ループ)回路に係り、特に、位相ノイズを低減し、設計が容易なPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
[従来のPLL回路:図6]
従来のPLL回路について図6を参照しながら説明する。図6は、従来のPLL回路の構成図である。
従来のPLL回路は、図6に示すように、基準周波数入力端子31と、PLL32と、電圧制御機能付発振器33と、従属周波数出力端子34と、アラーム出力端子35とを備えている。
【0003】
PLL32は、基準周波数入力端子31からの基準周波数と電圧制御機能付発振器33からの出力を入力して位相を比較し、位相差に応じた制御信号を電圧制御機能付発振器33に出力する。
また、PLL32は、位相比較の結果、アンロックとなるとアラーム出力端子35にアラーム信号を出力する。
【0004】
電圧制御機能付発振器33には、VC−TCXO(Voltage Controlled - Temperature Compensated Crystal Oscillator:電圧制御機能付温度補償水晶発振器)を用いて、PLL32からの制御信号に応じた発振周波数(従属周波数)を出力する。
【0005】
従来のPLL回路では、基準周波数入力端子31からの基準周波数が断となった場合のフリーラン時の安定度を維持するため、PLL32から出力される制御電圧が一定値になるようにしている。
【0006】
[従来の別のPLL回路:図7]
次に、従来の別のPLL回路について図7を参照しながら説明する。図7は、従来の別のPLL回路の構成図である。
従来の別のPLL回路は、図7に示すように、基準周波数入力端子41と、第1のPLL42と、第1の電圧制御機能付発振器(VC−TCXO)43と、第2のPLL44と、第2の電圧制御機能付発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator:電圧制御機能付水晶発振器)45と、従属周波数出力端子46と、アラーム出力端子47とを備えている。
図7では、第2の電圧制御機能付発振器45として、電圧制御機能付水晶発振器(VCXO)を用いている。
【0007】
図6のPLL回路と相違する点は、第2のPLL44が、第1の電圧制御機能付発振器(VC−TCXO)43からの出力と第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)45からの出力を入力して位相比較を行い、位相差に応じた制御信号を第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)45に出力し、第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)45の出力を従属周波数出力端子46から出力している。
【0008】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開昭63−128816号公報「PLL回路」(出願人:株式会社東芝)[特許文献1]、特開平07−162302号公報「2重ループ形PLL回路」(出願人:日本電気株式会社)[特許文献2]、特開平07−283730号公報「位相同期発振器」(出願人:日立通信システム株式会社)[特許文献3]、特開平07−283731号公報「同期信号回路」(出願人:松下電器産業株式会社)[特許文献4]、実開昭62−186533号公報「発振回路」(出願人:日本電気株式会社)[特許文献5]がある。
【0009】
特許文献1には、PLL回路において、第1の位相比較器21と第1のVCO24とを含む第1のPLL回路20と、第2の位相比較器11とフリーラン時の周波数安定度が高い第2のVCO14とを含む第2のPLL回路とを備え、第2のPLL回路を信号入力側に設け、第2のVCO14の出力を第1の位相比較器21に入力し、第1のVCO24の出力を第2の位相比較器11に入力する構成が示されている。
【0010】
特許文献2には、2重ループ形PLL回路において、基準信号の入力断時に、選択回路3によりM/m分周回路9の出力信号を選択させ、m分周回路10の出力を位相比較器4,5に入力して、位相比較器4,5からの出力をduty50%のパルスとし、VCXO8を中心周波数近傍でフリーランさせる構成が示されている。
【0011】
特許文献3には、位相同期発振器において、分周器4と周波数安定度が高い電圧制御発振器3を含む第1の位相同期発振器からは、入力信号100が断状態にある間でも周波数安定度が高い分周出力200が得られ、分周器24を含む第2の位相同期発振器からは、入力信号100の周波数に比例して安定化した高周波出力が得られることが示されている。
【0012】
特許文献4には、同期信号回路において、同期信号が入力される第1のPLL回路と、位相比較回路を用いて構成され、第1のPLL回路の出力信号が入力される第2のPLL回路と、第1のPLL回路で自動周波数制御を行い、第2のPLL回路で周波数逓倍を行わせることが示されている。
【0013】
特許文献5には、発振回路において、電圧制御発振器1を有する第1の発振回路と、電圧制御発振器6を有する第2の発振回路とを備え、第1の発振回路の発振出力(電圧制御発振器1の出力)を基準として第2の発振回路に与え、電圧制御発振器6から高安定な発振出力を取り出すことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭63−128816号公報
【特許文献2】特開平07−162302号公報
【特許文献3】特開平07−283730号公報
【特許文献4】特開平07−283731号公報
【特許文献5】実開昭62−186533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のように、図6に示した従来のPLL回路では、構成が単純であるものの、電圧制御機能付TCXO33を要求周波数毎に新設計する必要があり、安定度によって設計が難しくなるという問題点があった。
【0016】
また、図7に示した従来のPLL回路では、既存の電圧制御機能付発振器(VC−TCXO)を使用でき、第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)45の安定度もそれ程よくなくても構わないが、第1のPLL42でロックした第1の電圧制御機能付発振器(VC−TCXO)43の出力を、更に第2のPLL44で第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)45にロックさせるため、位相ノイズが悪化する問題点があった。
【0017】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、位相ノイズを低減し、設計が容易なPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、PLL回路において、基準周波数を分周する第1の分周器と、温度補償を行う水晶発振器であって、入力される制御電圧に応じて発振周波数を可変とする電圧制御機能付温度補償水晶発振器と、基準周波数と電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を入力し、ロック動作を行い、ロックされた状態では第1の値(論理L)を、基準周波数入力断又はロック外れでは第2の値(論理H)をとるアラーム信号を出力すると共に、電圧制御機能付温度補償水晶発振器への制御電圧を出力する第1の制御信号生成部と、電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を分周する第2の分周器と、アラーム信号が第1の値であれば、第1の分周器の出力を、アラーム信号が第2の値であれば、第2の分周器の出力を選択するセレクタと、入力される制御電圧に応じて発振周波数を可変とする電圧制御水晶発振器と、セレクタの出力と電圧制御水晶発振器の出力とが入力され、ロック動作を行い、電圧制御水晶発振器への制御電圧を出力する第2の制御信号生成部とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記PLL回路において、電圧制御機能付温度補償水晶発振器が、電圧制御水晶発振器に比べて、周波数安定度が高く、かつ周波数可変範囲が狭いものを用いることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記PLL回路において、第1の制御信号生成部が、基準周波数入力断を検出して、一定の制御電圧を電圧制御機能付温度補償水晶発振器へ出力する状態を維持することを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記PLL回路において、第1の分周器から出力される周波数と第2の分周器から出力される周波数とが同じになるよう、第1の分周器における分周比と第2の分周器における分周比を調整して設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1の分周器が、基準周波数を分周し、電圧制御機能付温度補償水晶発振器が、温度補償を行う水晶発振器であって、入力される制御電圧に応じた発振周波数を出力し、第1の制御信号生成部が、基準周波数と電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を入力し、ロック動作を行い、基準周波数入力断又はロック外れを検出すると、基準周波数入力断又はロック外れのアラーム信号を出力し、第2の分周器が、電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を分周し、セレクタが、第1のPLL回路からの基準周波数入力断又はロック外れのアラーム信号を入力すると、第1の分周器の出力から第2の分周器の出力に切り替えて出力し、電圧制御水晶発振器が、入力される制御電圧に応じた発振周波数を出力し、第2の制御信号生成部が、セレクタの出力と電圧制御水晶発振器の出力とを入力し、ロック動作を行うPLL回路としているので、基準周波数入力断で第1の制御信号生成部がフリーラン時に電圧制御機能付温度補償水晶発振器の安定した発振周波数を利用でき、基準周波数に対して、第1,2の分周器、第2の制御信号生成部と電圧制御水晶発振器で対応可能として設計容易とし、位相ノイズを改善できる効果がある。また、電圧制御水晶発振器の安定度は、電圧制御機能付温度補償水晶発振器の安定度と同等となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るPLL回路の構成ブロック図である。
【図2】本回路における第1の制御信号生成部3の構成を示す図である。
【図3】第1の制御信号生成部3にけるアラーム検出部22の構成を示す図である。
【図4】基準周波数断時のタイミングチャートである。
【図5】ロック外れ時のタイミングチャートである。
【図6】従来のPLL回路の構成図である。
【図7】従来の別のPLL回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るPLL回路は、第1の制御信号生成部が、基準周波数と電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を入力し、ロック動作を行い、ロック状態で基準周波数入力断又はロック外れを検出すると、基準周波数入力断のアラーム信号を出力し、ロック外れを検出すると、セレクタが、第1のPLL回路からの基準周波数入力断又はロック外れのアラーム信号が入力されると、第1の分周器の出力から第2の分周器の出力に切り替えて出力し、第2の制御信号生成部が、セレクタの出力と電圧制御水晶発振器の出力とを入力し、ロック動作を行うものであり、基準周波数入力断で第1の制御信号生成部がフリーラン時には一定の制御電圧を出力し、電圧制御機能付温度補償水晶発振器の安定した発振周波数を利用でき、基準周波数に対して、第1,2の分周器、第2の制御信号生成部と電圧制御水晶発振器で対応可能として設計容易とし、位相ノイズを改善できるものである。
【0025】
[PLL回路の構成:図1]
本発明の実施の形態に係るPLL回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るPLL回路の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係るPLL回路(本回路)は、図1に示すように、基準周波数入力端子1と、第1の分周器(DIV)2と、第1の制御信号生成部(PLL)3と、電圧制御機能付温度補償水晶発振器(VC−TCXO)4と、第2の分周器(DIV)5と、セレクタ(SEL)6と、第2の制御信号生成部(PLL)7と、電圧制御水晶発振器(VCXO)8と、従属周波数出力端子9と、アラーム出力端子10とを基本的に有している。
【0026】
[PLL回路の各部]
本回路の各部について具体的に説明する。
基準周波数入力端子1は、外部から基準周波数を入力する端子である。
第1の分周器(DIV)2は、基準周波数を入力し、分周を行ってSEL6に出力する。
【0027】
第1の制御信号生成部(PLL)3は、基準周波数を入力すると共に、VC−TCXO4からの出力(帰還出力)を入力し、基準周波数に帰還出力を同期させるようにするために、両入力信号の位相差を検出して、位相差に基づく制御電圧をVC−TCXO4に出力する。
そして、第1の制御信号生成部3は、同期が確立するとロック状態として検出し、SEL6はDIV2を選択する。基準周波数入力端子1から基準周波数が入力されていない状態(基準周波数断)のフリーラン時には一定の制御電圧をVC−TCXO4に出力する。
【0028】
また、第1の制御信号生成部3は、位相差が特定範囲を超えたか否かを判定し、位相差が特定範囲を超えた場合にロック外れとして検出し、アラーム信号をSEL6とアラーム出力端子10に出力する。
また、第1の制御信号生成部3は、基準周波数が入力されない状態も検出し、基準周波数断のアラーム信号をSEL6とアラーム出力端子10に出力する。
【0029】
具体的には、第1の制御信号生成部3からアラーム信号が出力されていない状態とは、第1の制御信号生成部3から論理ローレベル(論理L/第1の値)の信号が出力されている状態であり、第1の制御信号生成部3からアラーム信号が出力されている状態とは、第1の制御信号生成部3から論理ハイレベル(論理H/第2の値)の信号が出力されている状態である。
【0030】
電圧制御機能付温度補償水晶発振器(VC−TCXO)4は、温度補償水晶発振器であって、PLL3からの制御電圧に応じた発振周波数を第2の分周器5とPLL3に出力する。
第2の分周器(DIV)5は、VC−TCXO4からの発振周波数を分周し、SEL6に出力する。尚、第2の分周器5から出力される周波数と第1の分周器2から出力される周波数が同じになるよう、各分周器での分周比が調整され、設定される。
【0031】
セレクタ(SEL)6は、PLL3からの基準周波数断又はロック外れのアラーム信号が入力されると、DIV5からの出力を選択する動作を行う。
【0032】
第2の制御信号生成部(PLL)7は、SEL6からの出力とVCXO8からの出力を入力し、両入力信号の位相差に応じた制御電圧をVCXO8に出力する。
電圧制御水晶発振器(VCXO)8は、PLL7からの制御電圧に応じて周波数を発振し、発振周波数(従属周波数)を従属周波数出力端子9とPLL7に出力する。
尚、VC−TCXO4の方がVCXO8に比べて安定度が高く、また、VC−TCXO4の方がVCXO8に比べてロック範囲が狭いものとなっている。
【0033】
従属周波数出力端子9は、VCXO8からの従属周波数を出力する端子である。
アラーム出力端子10は、PLL3からの基準周波数断又はロック外れのアラーム信号を出力する端子である。
【0034】
[PLL回路の動作]
次ぎに、本回路の動作について説明する。
基準周波数入力端子1からの基準周波数をPLL3にてVC−TCXO4にロックさせる動作が為される。
VC−TCXO4からの出力は、第2の分周器5で分周され、SEL6には、第1の分周器2で分周された信号と第2の分周器5で分周された信号が入力される。
【0035】
PLL3は、基準周波数断又はロック外れを検出するようになっており、基準周波数断又はロック外れではなければ(正常時)、SEL6に第1の分周器2からの分周信号を選択させる指示信号を出力する。尚、本実施の形態では、SEL6に基準周波数断又はロック外れのアラーム信号が入力されていない状態が第1の分周器2を選択するものである。
【0036】
また、PLL3は、基準周波数断又はロック外れであれば(基準周波数断時)、SEL6に第2の分周器5からの分周信号を選択させる指示信号を出力する。本実施の形態では、基準周波数断又はロック外れのアラーム信号が入力された場合に、第2の分周器5を選択するものである。
尚、PLL3の具体的構成及び動作については後述する。
【0037】
SEL6は、PLL3からの指示信号により、第1の分周器2又は第2の分周器5からの分周信号を選択し、PLL7に出力する。
PLL7は、SEL6からの信号とVCXO8からの信号を入力してロック動作を行い、制御電圧をVCXO8に出力する。
VCXO8は、発振動作を行い、従属周波数を従属周波数出力端子9から出力する。
【0038】
つまり、基準周波数断又はロック外れでない正常時であれば、第1の分周器2からの分周信号をSEL6が選択し、PLL7とVCXO8にロック動作を行わせる。
基準周波数断又はロック外れであれば、第2の分周器5からの分周信号をSEL6が選択し、PLL7とVCXO8にロック動作を行わせる。
【0039】
[第1の制御信号生成部3:図2]
次に、第1の制御信号生成部3の構成について図2を参照しながら説明する。図2は、本回路における第1の制御信号生成部3の構成を示す図である。
第1の制御信号生成部3は、図2に示すように、基準周波数入力端子11と、従属TCXO出力信号入力端子12と、分周器(1/N)13と、分周器(1/M)14と、分周器(1/2)15と、フリップフロップ(F/F)16と、インバータゲート17と、セレクタ(SEL)18と、位相比較器(PC)19と、ローパスフィルタ(LPF)20と、平滑信号出力端子21と、アラーム検出部(ALMDET)22と、アラーム出力端子23とを有している。
【0040】
基準周波数入力端子11は、図1における基準周波数入力端子1と同じである。
従属TCXO出力信号入力端子12は、図1のVC−TCXO4からの出力が入力される端子である。
【0041】
分周器(1/N)13は、基準周波数入力端子11からの基準周波数を1/Nに分周して、セレクタ18とアラーム検出部22に出力する。
分周器(1/M)14は、VC−TCXO4からの出力を1/Mに分周して、分周器(1/2)15とフリップフロップ16のクロック(CK)に出力する。
分周器(1/2)15は、分周器(1/M)からの分周された出力を更に1/2に分周し、フリップフロップ16の入力端子(D)とアラーム検出部22と位相比較器19に出力する。
【0042】
フリップフロップ16は、入力端子(D)には分周器15からの出力を入力端子(D)で入力し、クロック端子(CK)には分周器14からの出力を入力し、クロックに同期させて入力データをシフトさせ、出力端子(Q)から出力をインバータゲート17に出力する。
つまり、フリップフロップ16では、分周器14からの周波数をクロックとして、分周器15からの周波数(分周器14からの周波数の1/2の周波数)をシフトさせて出力するものであり、分周器15からの周波数の位相をπ/2ずらして出力するものである。
インバータゲート17は、フリップフロップ16からの出力を反転してセレクタ18に出力する。
【0043】
セレクタ(SEL)18は、分周器13からの出力とインバータゲート17からの出力を入力し、アラーム検出部22からの基準周波数断のアラーム検出信号が入力されていない場合、分周器13からの出力を選択し、基準周波数断のアラーム検出信号が入力された場合、インバータゲート17からの出力を選択し、選択した信号を位相比較器19に出力する。
また、セレクタ18は、インバータゲート17からの出力を選択している状態で、アラーム検出部22からのロック外れのアラーム検出信号が入力された場合には、分周器13からの出力を選択し、選択した信号を位相比較器19に出力する。
【0044】
位相比較器(PC)19は、セレクタ18からの出力と分周器(1/2)15からの出力を入力し、両信号の位相を比較し、位相差に基づく信号をローパスフィルタ20に出力する。
ローパスフィルタ(LPF)20は、PC19からの出力を平滑化して平滑信号出力端子21に出力する。
平滑信号出力端子21は、LPF20からの平滑信号を出力する端子である。
【0045】
アラーム検出部22は、分周器(1/N)13からの出力と分周器(1/2)15からの出力と従属TCXO出力信号入力端子12からの出力を入力し、基準周波数断を検出してセレクタ18に出力する。また、基準周波数断又はロック外れを検出してアラーム検出信号としてアラーム出力端子23に出力する。アラーム検出部22の具体的構成及び動作については、後述する。
アラーム出力端子23は、アラーム検出部22からのアラーム検出信号を出力する端子である。
【0046】
[第1の制御信号生成部3の動作]
次に、第1の制御信号生成部3の動作について説明する。
アラーム検出部22は、分周器(1/N)13からの基準周波数を1/Nに分周した信号を入力し、当該信号の入力断(基準周波数断)を検出している。
そして、アラーム検出部22は、基準周波数断を検出した時は、分周器(1/N)13からの基準周波数の代わりにインバータゲート17からの出力(VC−TCXO4の出力を1/M分周し、1/2して反転させた信号)をセレクタ18に選択させる選択信号を出力する。
【0047】
具体的には、アラーム検出部22の選択信号には、分周器13からの基準周波数が入力されている状態で論理ロー(Low)レベル(以下は単に「論理L」と記す)を出力し、分周器13からの基準周波数が入力されていない状態で論理ハイ(High)レベル(以下は単に「論理H」と記す)を出力する。
そして、セレクタ18は、選択信号の出力が論理L時に分周器13からの出力を選択し、選択信号の出力が論理H時にインバータゲート17の出力を選択する。
【0048】
位相比較器19は、エクスクルシブオア(排他的論理和)式としており、平滑信号出力端子21には電圧のほぼ中心値を出力するために、分周器14の立ち上がりで、分周器15の出力をフリップフロップ16によって位相をπ/2ずらしている。
位相比較器19へは、同じ周波数で位相がπ/2ずれた信号を入力することになるので、ローパスフィルタ20からの出力の平滑信号出力端子21における電圧は一定値となる。
【0049】
分周器13、分周器15は位相比較器19用の周波数を出力するものであり、一般的には両者から出力される周波数は同じ周波数である。
また、アラーム検出部22は、基準周波数断とロック外れを検出して、アラーム出力端子23へ論理Hを出力する。また、ロック時には、アラーム出力端子23へ論理Lを出力する。
【0050】
アラーム検出部22は、ロック外れを検出すると、セレクタ18に論理Hの選択信号を出力し、インバータゲート17の出力を選択させ、ローパスフィルタ20の出力電圧が一定値となるように動作させる。
【0051】
[アラーム検出部22:図3]
次に、アラーム検出部22の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、第1の制御信号生成部3におけるアラーム検出部22の構成を示す図である。
アラーム検出部22は、図3に示すように、第2基準分周入力端子101と、第2従属分周入力端子102と、サンプリングクロック入力端子103と、カウンタ(CNT)104と、フリップフロップ(F/F)105〜107と、インバータゲート108と、アンドゲート109と、フリップフロップ(F/F)110と、インバータゲート111と、アンドゲート112と、インバータゲート113と、カウンタ(CNT)114と、フリップフロップ(F/F)115と、インバータゲート116と、アンドゲート117と、インバータゲート118と、アンドゲート119〜120と、インバータゲート121と、カウンタ(CNT)122と、インバータゲート123と、オアゲート124と、アラーム出力端子125と、選択信号出力端子126とを備えている。
【0052】
第2基準分周入力端子101は、図2の分周器(1/N)13からの出力が入力される端子であり、CNT104のクロック端子(CK)と、インバータゲート118と、アンドゲート120に接続する。
第2従属分周入力端子102は、図2の分周器(1/2)15からの出力が入力される端子であり、CNT114のCKと、F/F115の入力端子(D)と、アンドゲート117に接続する。
サンプリングクロック入力端子103は、図2の従属TCXO出力信号入力端子12からの出力が入力される端子であり、F/F105〜107のCKと、F/F110のCKと、F/F115のCKに接続する。
【0053】
CNT104では、第2基準分周入力端子101からの信号をクロックとして特定クロック数カウントすると出力端子(CY)からF/F105の入力端子(D)に出力され、F/F105は入力された信号をシフトして出力端子(Q)からF/F106のDに出力し、/F106でもシフトしてQからF/F107のDとアンドゲート109に出力する。
F/F107のQは、インバータゲート108を介してアンドゲート109に入力される。つまり、CNT104からの出力が順次シフトされて出力される。
アンドゲート109は、F/F106とインバータゲート108の出力の論理積をCNT114のクリア端子(CLR)に出力する。
【0054】
F/F110のDにはCNT114のCYからの出力が入力され、サンプリングクロック入力端子103からの出力をクロックとして入力信号をシフトしてQからインバータゲート111に出力する。
アンドゲート112は、インバータゲート111からの出力とCNT114のCYからの出力を入力し、論理積をCNT104のクリア端子(CLR)に出力する。
CNT114は、CYからの出力をインバータゲート113により反転させ、CIに入力し、第2従属分周入力端子102からの信号をクロックとしてCIの入力信号の立ち上がりから特定クロック数カウントしてカウント出力をF/F110のDと、アンドゲート112と、オアゲート124に出力する。
【0055】
F/F115は、サンプリングクロック入力端子103からの出力をクロックとして第2従属分周入力端子102からの信号をシフトしてQからの出力をインバータゲート116に出力する。
アンドゲート117は、インバータゲート116からの反転出力と第2従属分周入力端子102からの出力を入力し、論理積した信号をアンドゲート119とアンドゲート120に出力する。
【0056】
アンドゲート119は、一方の入力端子にはアンドゲート117からの信号が入力され、他方の入力端子には第2基準分周入力端子101からの出力をインバータゲート118で反転されたものが入力され、論理積した信号をCNT122のCLRに出力する。
アンドゲート120は、一方の入力端子にはアンドゲート117からの信号が入力され、他方の入力端子には第2基準分周入力端子101からの出力が入力され、論理積した信号をCNT122のCKに出力する。
【0057】
CNT122は、CYからのカウント出力をインバータゲート121で反転させてCIに入力し、CYからの出力はインバータゲート123で反転出力されてオアゲート124に出力される。
具体的には、CNT122は、アンドゲート120からの出力をクロックとし、CYから論理ローが出力されると、インバータゲート121からの論理ハイで特定カウント数カウントし、カウント終了で論理ハイを出力する。但し、アンドゲート119からの信号により当該カウントはリセット(クリア)される。
オアゲート124は、CNT114のCYからの出力とインバータゲート123からの出力を入力し、論理和をアラーム出力端子125に出力する。
【0058】
[アラーム検出部22の動作]
図3のアラーム検出部における信号の状態について図4,5を参照しながら説明する。図4は、基準周波数断時のタイミングチャートであり、図5は、ロック外れ時のタイミングチャートである。
尚、図4,5における信号状態S1は、CNT104のCYからの出力であり、S2は、F/F106のQからの出力であり、S3は、アンドゲート109からの出力であり、S4は、CNT114のCYからの出力であり、S5は、アンドゲート112からの出力であり、S6は、アンドゲート117からの出力であり、S7は、アンドゲート120からの出力であり、S8は、アンドゲート119からの出力であり、S9は、インバータゲート123からの出力である。
【0059】
[基準周波数断時のタイミングチャート:図4]
第2基準分周入力端子101の立ち上がり数をカウンタ104でカウントするが、カウンタ104に事前に定められている所定数、例えば、0〜5回までをカウントすると、出力S1が論理ロー(Low)レベル(以下、論理Lとする)から論理ハイ(High)レベル(以下、論理Hとする)に変化し、6回目は再度0回目となり、S1は論理Lに戻る。以下、同様に0〜5回の動作を繰り返す。
【0060】
サンプリングクロック入力端子103のクロックの立ち上がり毎にフリップフロップ105,106,107で順次に出力S1はシフトされ、出力S2が出力される。結果として、アンドゲート109に出力S2の立ち上がり変化時のみ論理Hが1クロック幅分生成された出力S3が出力される。
【0061】
第2従属分周入力端子102の立ち上がり数をカウンタ114でカウントするが、事前に定められた所定数(カウンタ104のカウント数<カウンタ114のカウント数)を設定する。
例えば、カウンタ114は、0〜10回までカウントすると、出力S4は論理Hとなって、インバータゲート113の出力は論理Lとなって、カウンタ114はカウントを停止して、第2従属分周入力端子102の入力を受け付けなくなる。
【0062】
尚、アンドゲート109からの出力S3の論理Hをカウンタ114のCLRが受けて、カウンタ114がカウント0に戻ると、再度、第2従属分周入力端子102の立ち上がりにてカウントを再開する。
すなわち、第2基準分周入力端子101の立ち上がりが継続している限り、周期的な出力S3の論理Hによってカウンタ114が所定回数をカウントする以前にカウンタ114はカウント0に戻されるので、出力S4及び選択信号出力端子126は論理Lを維持することになる。
従って、第2基準分周入力端子101が断になると、カウンタ114は、第2従属分周入力端子102を所定回数カウントすることになり、出力S4及び選択信号出力端子126は論理Hとなるので、第2基準分周入力端子101の有無を検出していることになる。
【0063】
[ロック外れ時のタイミングチャート:図5]
また、第2従属分周入力端子102をサンプリングクロック入力端子103のクロックによりフリップフロップ115で遅らせた後、アンドゲート117からの出力S6に論理H区間を得る。
更に、ロック状態時は、出力S6の論理Hと第2基準分周入力端子101の論理H時にアンドゲート120からの出力S7に論理Hが継続して得られる。
【0064】
一方、ロック外れ時は、位相回りが生じるので、第2基準分周入力端子101の論理L時にアンドゲート119からの出力S8に論理Hが生じる機会があることになる。
従って、ロック時は、CNT122は、出力S7が論理H時をクロックとして、事前に定めた所定数、例えば、カウントする0〜7回までをカウントすると、論理Hをインバータゲート123に出力し、インバータゲート123は反転して出力S9に論理Lを出力する。
【0065】
すなわち、インバータゲート123からの出力S9は、ロック状態時は論理Lを、ロック外れ時は論理Hを維持することになる。従って、出力S4と出力S9からオアゲート124を経て、第2基準分周入力端子101からの入力断時又はロック外れ時にアラーム出力端子125に論理Hを、ロック状態時は論理Lを得ることができる。
【0066】
[実施の形態の効果]
本回路によれば、基準周波数が入力されている時はPLL3とVC−TCXO4でロック動作を行い、PLL3がロック状態であれば、SEL6がDIV2からの信号を選択し、PLL3が基準周波数入力断又はロック外れを検出すると、DIV5からの信号を選択して、PLL7に出力し、更にPLL7とVCXO8で発振周波数を制御し、VCXO8に対してVC−TCXO4は周波数安定度が高く周波数可変範囲(ロック範囲)が狭いものを用いているので、フリーラン時にはVC−TCXO4の安定した発振周波数を利用でき、基準周波数に対して、DIV2,5、PLL7及びVCXO8で対応できて設計を容易とし、位相ノイズを改善できる効果がある。
また、本回路によれば、従属周波数出力端子9の出力の安定度は、VC−TCXO4と同等となる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、位相ノイズを低減し、VC−TCXOの逓倍設計が容易なPLL回路に好適である。
【符号の説明】
【0068】
1…基準周波数入力端子、 2…第1の分周器(DIV)、 3…第1の制御信号生成部(PLL)、 4…電圧制御機能付温度補償水晶発振器(VC−TCXO)、 5…第2の分周器(DIV)、 6…セレクタ(SEL)、 7…第2の制御信号生成部(PLL)、 8…電圧制御水晶発振器(VCXO)、 9…従属周波数出力端子、 10…アラーム出力端子、 11…基準周波数入力端子、 12…従属VC−TCXO出力信号入力端子、 13…分周器(1/N)、 14…分周器(1/M)、 15…分周器(1/2)、 16…フリップフロップ(F/F)、 17…インバータゲート、 18…セレクタ(SEL)、 19…位相比較器(PC)、 20…ローパスフィルタ(LPF)、 21…平滑信号出力端子、 22…アラーム検出部(ALMDET)、 23…アラーム出力端子、 31…基準周波数入力端子、 32…PLL、 33…電圧制御機能付発振器、 34…従属周波数出力端子、 35…アラーム出力端子、 41…基準周波数入力端子、 42…第1のPLL、 43…第1の電圧制御機能付発振器(VC−TCXO)、 44…第2のPLL、 45…第2の電圧制御機能付発振器(VCXO)、 46…従属周波数出力端子、 47…アラーム出力端子、 101…第2基準分周入力端子、 102…第2従属分周入力端子、 103…サンプリングクロック入力端子、 104…カウンタ(CNT)、 105〜107…フリップフロップ(F/F)、 108…インバータゲート、 109…アンドゲート、 110…フリップフロップ(F/F)、 111…インバータゲート、 112…アンドゲート、 113…インバータゲート、 114…カウンタ(CNT)、 115…フリップフロップ(F/F)、 116…インバータゲート、 117…アンドゲート、 118…インバータゲート、 119〜120…アンドゲート、 121…インバータゲート、 122…カウンタ(CNT)、 124…オアゲート、 123…インバータゲート、 125…アラーム出力端子、 126…選択信号出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準周波数を分周する第1の分周器と、
温度補償を行う水晶発振器であって、入力される制御電圧に応じて発振周波数を可変とする電圧制御機能付温度補償水晶発振器と、
前記基準周波数と前記電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を入力し、ロック動作を行い、ロックされた状態では第1の値を、基準周波数入力断又はロック外れでは第2の値をとるアラーム信号を出力すると共に、前記電圧制御機能付温度補償水晶発振器への制御電圧を出力する第1の制御信号生成部と、
前記電圧制御機能付温度補償水晶発振器からの出力を分周する第2の分周器と、
前記アラーム信号が前記第1の値であれば、前記第1の分周器の出力を、前記アラーム信号が前記第2の値であれば、前記第2の分周器の出力を選択するセレクタと、
入力される制御電圧に応じて発振周波数を可変とする電圧制御水晶発振器と、
前記セレクタの出力と前記電圧制御水晶発振器の出力とが入力され、ロック動作を行い、前記電圧制御水晶発振器への制御電圧を出力する第2の制御信号生成部とを有することを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
電圧制御機能付温度補償水晶発振器は、電圧制御水晶発振器に比べて、周波数安定度が高く、かつ周波数可変範囲が狭いものを用いることを特徴とする請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
第1の制御信号生成部は、基準周波数入力断を検出して、一定の制御電圧を電圧制御機能付温度補償水晶発振器へ出力する状態を維持することを特徴とする請求項1又は2記載のPLL回路。
【請求項4】
第1の分周器から出力される周波数と第2の分周器から出力される周波数とが同じになるよう、前記第1の分周器における分周比と前記第2の分周器における分周比を調整して設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171784(P2011−171784A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30815(P2010−30815)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】