説明

PLL発振回路

【課題】分数分周型のPLL発振回路における抵抗やキャパシタの定数を小さくすると共に、雑音を低減する。
【解決手段】入力信号INと帰還信号FBaの周波数の差に応じた電流を共通のノードNcに出力する周波数比較器10aと、入力信号INと帰還信号FBbの周波数の差に応じた電流を共通のノードNcに出力する周波数比較器10bと、このノードNcに出力される信号の高周波成分を除去して制御電圧VCを生成するループフィルタ20と、制御電圧VCに応じた周波数foの出力信号OUTを生成するVCO30と、出力信号OUTの周波数をそれぞれ1/Mと1/Nに分周して帰還信号FBa,FBbを出力する分周器40a,40bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力周波数の分数倍の周波数の信号を発振する分数分周型のPLL(Phase Locked Loop)発振回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のPLL発振回路の構成図である。
このPLL発振回路は、分周器(DIV)1,5、位相比較器2、ループフィルタ3、及び電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator、以下、「VCO」という)4で構成されている。分周器1は、入力信号INの周波数fiを1/Nに分周するもので、分周器5は、出力信号OUTの周波数foを1/Mに分周するものである。位相比較器2は、分周器1,5の出力信号の位相を比較するもので、この位相比較器2による比較結果がループフィルタ3に与えられている。ループフィルタ3は、位相比較器2の出力信号に含まれる高周波成分を除去するローパスフィルタで、このループフィルタ3からVCO4に対する制御電圧が出力されている。VCO4は、制御電圧に応じた周波数の信号を発振するもので、このVCO4から周波数foの出力信号OUTが出力されるようになっている。
【0003】
このPLL発振回路では、位相比較器2に与えられる2つの信号の位相差がなくなるように帰還動作が行われ、これらの2つの信号の周波数が一致したときに定常状態となる。従って、定常状態における出力信号OUTの周波数foは、次のようになる。
fo=(M/N)×fi
【0004】
【特許文献1】特開2003−258634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記PLL発振回路は、分周器1の分周数Nの設定値によっては、位相比較器2の入力信号の周波数が低くなり、これに対応するためにフィルタの時定数を大きくする必要があるので、回路の抵抗やキャパシタの定数が大きくなる。また、PLLのループ帯域が狭くなり、負帰還によるノイズ低減効果が小さくなって雑音が増加するという課題があった。
【0006】
本発明は、分数分周型のPLL発振回路における抵抗やキャパシタの定数を小さくすると共に、雑音を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPLL発振回路は、入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を共通ノードに出力する複数の周波数比較器と、前記共通ノードに出力される信号の高周波成分を除去して制御電圧を生成するループフィルタと、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成するVCOと、前記出力信号の周波数を分周して前記帰還信号を出力する分周器とを、備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、周波数比較器によって、入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を出力するようにしている。これにより、入力信号は分周器を介さずに周波数比較器に直接入力されるので、ループフィルタには入力信号に対応した周波数の信号が与えられる。これにより、分数分周型のPLL発振回路において、分周器を使用した場合と異なり、ループフィルタの時定数を大きく設計する必要がなくなり、抵抗やキャパシタの定数を小さくすることができると共に、雑音を低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、次の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。但し、図面は、もっぱら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1を示すPLL発振回路の構成図である。
このPLL発振回路は、周波数比較器10a,10b、ループフィルタ20、VCO30、及び分周器40a,40bで構成されている。
【0011】
周波数比較器10a,10bは、何れも、与えられる2つの信号(入力信号と帰還信号)の周波数の差に比例した電流を出力するもので、周波数比較器10aには、周波数fiの入力信号INと分周器40aからの帰還信号FBaが与えられ、周波数比較器10bには、周波数fiの入力信号INと分周器40からの帰還信号FBbが与えられている。
【0012】
これらの周波数比較器10a,10bは、何れもスイッチド・キャパシタ(以下、「SC」という)を用いたもので、周波数比較器10aは、電源電位VDDとノードNaの間に接続されたSC11aと、このノードNaと接地電位GNDの間に接続されたSC12aで構成されている。SC11aには、スイッチ制御用のクロックCLKとして入力信号INが与えられ、SC12aには、スイッチ制御用のクロックCLKとして帰還信号FBbが与えられている。
【0013】
また、周波数比較器10bは、電源電位VDDとノードNbの間に接続されたSC11bと、このノードNbと接地電位GNDの間に接続されたSC12bで構成されている。SC11bには、スイッチ制御用のクロックCLKとして入力信号INが与えられ、SC12bには、スイッチ制御用のクロックCLKとして帰還信号FBbが与えられている。
【0014】
周波数比較器10a,10bのノードNa,NbはノードNcに共通接続され、このノードNcに、ループフィルタ20を構成する差動増幅器21の反転入力端子が接続されている。なお、差動増幅器21の非反転入力端子には、電源電位VDDの1/2が与えられている。差動増幅器21は、出力端子と非反転入力端子の間に接続された帰還回路22によって高周波成分を除去するローパスフィルタを構成するもので、この出力端子からVCO30に制御電圧VCが出力されるようになっている。
【0015】
VCO30は、制御電圧VCに応じた周波数の信号を発振するもので、このVCO30から周波数foの出力信号OUTが出力されるようになっている。出力信号OUTは、図示しない外部回路に出力されると共に、分周器40a,40bに与えられている。
【0016】
分周器40a,40bは、出力信号OUTの周波数foを、それぞれ1/M,1/Nに分周して帰還信号FBa,FBbを出力するものである。帰還信号FBa,FBbは、それぞれ周波数比較器10a,10bに与えられている。
【0017】
なお、SCは、この図1中に概念図を記載したように、クロックCLKによって相補的にオン・オフされる直列接続された2つのスイッチSW1,SW2と、これらのスイッチSW1,SW2の接続点と接地電位GNDの間に接続されたキャパシタCを有している。スイッチSW1の一端は電源電位VDD(例えば、SC11aの場合)または接地電位GND(例えば、SC12aの場合)に接続され、スイッチSW2の一端がノードN(NaまたはNb)に接続されている。
【0018】
このSCにおいて、クロックCLKの周波数がf、ノードNの電位がVDD/2、またスイッチSW1の一端が電源電位VDDに接続されているとする。スイッチSW1がオン(スイッチSW2はオフ)のとき、キャパシタCの電圧は電源によってVDDに充電される。次にスイッチSW2がオン(スイッチSW1はオフ)になると、キャパシタCとノードNの電位差VDD/2により、このキャパシタCからノードNに電流が流れる。クロックCLKの1サイクルを通してみると、電源電位VDDからノードNにキャパシタCの容量値に応じた電流が流れることになる。従って、この電流の大きさは、クロックCLKの周波数fに比例する。
【0019】
一方、スイッチSW1の一端が接地電位GNDに接続されている場合は、スイッチSW1がオンのとき、キャパシタCは接地されて放電される。次にスイッチSW2がオンになると、キャパシタCとノードNの電位差VDD/2により、このノードNからキャパシタCに電流が流れる。これにより、ノードNから接地電位GNDに、クロックCLKの周波数fに比例した電流が流れる。
【0020】
次に、図1の動作を説明する。
周波数比較器10a,10bのノードNa,Nbは、ループフィルタ20の差動増幅器21の反転入力端子に接続され、この差動増幅器21の非反転入力端子には電位VDD/2が与えられている。ループフィルタ20では、帰還作用によって差動増幅器21の反転入力端子と非反転入力端子の電位が等しくなるように動作するので、これらのノードNa,Nbの電位もVDD/2となる。
【0021】
周波数比較器10aのSC11aと周波数比較器10bのSC11bには、周波数fiの入力信号INがクロックとして与えられる。また、周波数比較器10aのSC12aには、分周器40aから出力信号OUTを1/Mに分周した周波数fo/Mの帰還信号FBaがクロックとして与えられ、周波数比較器10bのSC12bには、分周器40bから出力信号OUTを1/Nに分周した周波数fo/Nの帰還信号FBbがクロックとして与えられる。
【0022】
ここで、各SCのキャパシタCの値を同一とし、周波数比較器10a,10bの入力信号の周波数差に対する係数をそれぞれKa,Kbとすると、各SC11a,12a,11b,12bに流れる電流I11a,I12a,I11b,I12bは次のようになる。
I11a=Ka×fi
I12a=Ka×fo/M
I11b=Kb×fi
I12b=Kb×fo/N
【0023】
また、周波数比較器10aのノードNaから流れ出す電流はI11a−I12a、周波数比較器10bのノードNbから流れ出す電流はI11b−I12bであるので、定常状態では、次式が成り立つ。
Ka×fi−Ka×fo/M+Kb×fi−Kb×fo/N=0
【0024】
従って、出力信号OUTの周波数foは、次のようになる。
fo={(Ka+Kb)/(Ka/M+Kb/N)}×fi
【0025】
これにより、入力信号INの周波数fiの分数倍の周波数foが得られることが分かる。なお、周波数比較器10a,10bを構成する各素子の定数を同一に設定すれば、Ka=Kbであるので、上の式は次のようになる。
fo={2MN/(M+N)}fi
【0026】
以上のように、この実施例1のPLL発振回路は、出力信号OUTを分周した信号と入力信号INの周波数の差に応じた電流を出力する周波数比較器10a,10bと、これら周波数比較器10a,10bから出力される電流の和が0となるような制御電圧VCを生成してVCO30に与えるループフィルタ20を有している。これにより、入力信号INを分周して周波数を下げる必要がないので、ループフィルタ20の時定数を大きく設定する必要がなくなり、抵抗やキャパシタの定数を小さくすることができると共に、雑音を低減することができるという利点がある。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の実施例2を示すPLL発振回路の構成図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0028】
このPLL発振回路は、図1中の周波数比較器10a,10bに代えて構成の異なる周波数比較器50a,50bを設けると共に、ループフィルタ20に代えて若干構成の異なるループフィルタ20Aを設けたものである。
【0029】
周波数比較器50a,50bは、周波数比較器10a,10bと同様に、与えられる2つの信号の周波数の差に比例した電流を出力するものである。これらの周波数比較器50(50a,50b)は同一構成となっており、周波数比較器50aに一例を示すように、入力信号INで動作する2段のフリップフロップ(以下、「FF」という)51,52からなるシフトレジスタと、分周器40aから与えられる帰還信号FBaで動作する2段のFF53,54からなるシフトレジスタを有している。なお、これらのFF51〜54は、例えば入力信号INを1/3に分周して生成したリセット信号RSTによって、周期的にリセットされるようになっている。
【0030】
更に、周波数比較器50は、FF51〜54の出力信号に従ってスイッチ制御用の信号UP,DNを生成するための論理ゲート55〜60と、スイッチ61,62と、電流源63,64を有している。
【0031】
初段のFF51,53の入力端子Dは電源電位VDDに接続されている。FF51の出力端子QとFF53の出力端子/Q(但し、「/」は反転を意味する)は、2入力の論理積ゲート(以下、「AND」という)55の入力側に接続され、FF52の出力端子/QとFF54の出力端子Qは、AND56の入力側に接続されている。また、FF53の出力端子QとFF51の出力端子/Qは、AND57の入力側に接続され、FF52の出力端子QとFF54の出力端子/Qは、AND58の入力側に接続されている。
【0032】
更に、AND55,56の出力側は論理和ゲート(以下、「OR」という)59の入力側に接続され、このOR59から信号DNが出力されるようになっている。また、AND57,58の出力側はOR60の入力側に接続され、このOR60から信号UPが出力されるようになっている。信号DN,UPは、それぞれスイッチ61,62の制御信号として与えられている。スイッチ61の一端はノードNaに接続され、他端が電流源63を介して電源VDDに接続されている。また、スイッチ62の一端はノードNaに接続され、他端が電流源64を介して接地されている。そして、ノードNaがノードNcに接続され、このノードNcにループフィルタ20Aが接続されている。
【0033】
ループフィルタ20Aは、周波数比較器50a,50bから出力される信号の高周波成分を除去して平均値を出力する積分回路である。その他の構成は、図1と同様である。
【0034】
図4は、図3中の周波数比較器の動作の一例を示す信号波形図である。以下、この図4を参照しつつ、図3の動作を説明する。
【0035】
周波数比較器50において、2つの入力信号(入力信号INと帰還信号FB)の周波数をそれぞれfx,fy、リセット信号RSTによって周期的にリセットされる間の期間を1サイクルとし、各サイクルにおいて入力信号INと帰還信号FBの1番目の立ち上がりエッジの時刻をそれぞれTfx1,Tfy1とする。これにより、各サイクルにおける入力信号INと帰還信号FBの2番目の立ち上がりエッジの時刻Tfx2,Tfy2は、それぞれ次のようになる。
Tfx2=Tfx1+(1/fx)
Tfy2=Tfy1+(1/fy)
上の2式より、次式が得られる。
(Tfx2−Tfy2)−(Tfx1−Tfy1)=1/fx−1/fy
【0036】
上式の右辺は入力信号の周期の差であり、一定の値となる。従って、上式の左辺で示される値、即ち、1番目のエッジの時間差と2番目のエッジの時間差の差分が、一定の値となることが分かる。
【0037】
図4に示すように、サイクル1において2つの入力信号IN,FBの1回目の立ち上がりエッジの時間差が信号DNとして出力され、2回目の立ち上がりエッジの時間差が信号UPとして出力される。2つの信号DN,UPが出力された後でリセットが行われ、次のサイクルに移行する。サイクル2,3,…においても、同様に、2つの信号DN,UPが出力される。
【0038】
信号DN,UPは、それぞれスイッチ61,62に制御信号として与えられ、電流源64,65からノードNaにこれらの信号DN,UPのパルス幅に応じた電流が流れる。この電流は、ループフィルタ20Aによって平均値が取られ、このループフィルタ20Aから出力される制御電圧VCは、入力信号INと帰還信号FBの周波数の差に対応する値となる。
【0039】
なお、図3のPLL発振回路では、周波数比較器50aから入力信号INと帰還信号FBaの周波数の差に応じた電流が出力され、周波数比較器50bから入力信号INと帰還信号FBbの周波数の差に応じた電流が出力される。各周波数比較器50a,50bから出力される電流は、ループフィルタ20Aによって平均値が取られ、VCO30に対する制御電圧VCが生成される。これにより、定常状態における出力信号OUTの周波数foは、実施例1と同様の値となり、同様の利点を得ることができる。
【実施例3】
【0040】
図5は、本発明の実施例3を示すPLL発振回路の構成図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0041】
このPLL発振回路は、図1中の周波数比較器10bと分周器40bに代えて電流源70を設けたものである。電流源70は、一定電流CをノードNcに出力するものである。その他の構成は、図1と同様である。
【0042】
このPLL発振回路において、周波数比較器10からノードNcに流れる電流は、実施例1で説明したとおり、Ka×fi−Ka×fo/Mである。また、電流源70からノードNcに流れる電流はCであるので、定常状態では、次式が成り立つ。
Ka×fi−Ka×fo/M+C=0
【0043】
従って、出力信号OUTの周波数foは、次のようになる。
fo=M×fi−M×C/Ka
【0044】
これにより、入力信号INの周波数fiに対して一定の周波数差を有する出力信号OUTを得ることができる。
【0045】
以上のように、この実施例3のPLL発振回路は、入力信号INの周波数fiに対して一定の周波数差を有する出力信号OUTを生成する場合に、実施例1と同様の利点が得られる。
【実施例4】
【0046】
図6は、本発明の実施例4を示すPLL発振回路の構成図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0047】
このPLL発振回路は、図1中の周波数比較器10a,10bにそれぞれ異なる入力信号IN1,IN2を与えると共に、これらの周波数比較器10a,10bに分周器40の帰還信号FBを共通に与えるようにしたものである。
【0048】
入力信号IN1,IN2の周波数をそれぞれfi1,fi2、出力信号OUTの周波数をfo、分周器40の分周数をMとすれば、次式が成り立つ。
Ka×fi1−Ka×fo/M+Kb×fi2−Kb×fo/M=0
【0049】
従って、出力信号OUTの周波数foは、次のようになる。
fo=M×(Ka×fi1+Kb×fi2)/(Ka+Kb)
【0050】
なお、周波数比較器10a,10bを構成する各素子の定数を同一に設定すれば、Ka=Kbであるので、上の式は次のようになる。
fo=M(fi1+fi2)/2
【0051】
以上のように、この実施例4のPLL発振回路は、2つの入力信号IN1,IN2の周波数fi1,fi2に基づいた周波数の出力信号OUTを生成する場合に、実施例1と同様の利点が得られる。
【実施例5】
【0052】
図7は、本発明の実施例5を示すPLL発振回路の構成図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0053】
このPLL発振回路は、それぞれ異なる周波数fi1,fi2,…,finの入力信号IN1,IN2,…,INnと、それに対応する分周数M1,M2,…,Mnに基づいた周波数の出力信号OUTを生成するものである。
【0054】
このPLL発振回路は、それぞれ入力信号IN1,IN2,…,INnが与えられる周波数比較器10,10,…,10、ループフィルタ20、VCO30、及びこのVCO30の出力信号OUTをそれぞれ1/M1,1/M2,…,1/Mnに分周した帰還信号FB1,FB2,…,FBnを出力する分周器40,40,…,40を有している。
【0055】
周波数比較器10〜10の出力側はノードNcに共通接続され、このノードNcにループフィルタ20が接続されている。ループフィルタ20から出力される制御電圧VCはVCO30に与えられ、このVCO30から出力信号OUTが出力されるようになっている。出力信号OUTは、更に分周器40〜40に与えられ、これらの分周器40〜40から出力される帰還信号FB1〜FBnが、それぞれ周波数比較器10〜10にフィードバックされるようになっている。
【0056】
このPLL発振回路では、周波数比較器10〜10の入力信号の周波数差に対する係数をそれぞれK1〜Knとすると、次式が成り立つ。
Σ(fij−fo/Mj)×Kj=0
但し、Σは、括弧内の式を1からnまでのjについて加算したものである。
【0057】
これにより、出力信号OUTの周波数foは、次式のようになる。
fo=Σ(fij×Kj)/Σ(Kj/Mj)
【0058】
以上のように、この実施例5のPLL発振回路は、異なる周波数fi1,fi2,…,finを有する入力信号IN1,IN2,…,INnと、それに対応する分周数M1,M2,…,Mnに基づいた周波数の出力信号OUTを生成する場合に、実施例1と同様の利点が得られる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例としては、例えば、次のようなものがある。
(1) 実施例3〜5における周波数比較器10は、実施例1と同様のSCを使用したものであるが、実施例2と同様のエッジを検出する方式の周波数比較器50を用いることもできる。
(2) ループフィルタ20,20Aの構成は、例示したものに限定されない。
(3) 周波数比較器50の構成は、実施例2に限定するものではない。例えば、FF51〜54によって入力信号INや帰還信号FBの立ち下がりの変化タイミングに基づいて信号UP,DNを生成するようにしても良い。また、論理ゲート55〜60による論理回路の構成も、例示したものに限定されない。
(4) 実施例2の周波数比較器50に対するリセット信号RSTは、入力信号INを分周して生成しているが、リセット信号の生成方法はこれに限定するものではない。また、リセット周期は、帰還信号FBの周波数に応じて設定する必要がある。即ち、確実に動作させるためには、2つの帰還信号FBa,FBbの内の低い方の周波数の周期の1.5倍以上の周期となるようなリセット信号とする必要がある。一方、リセット周期が長すぎると、出力信号OUTの安定度が悪くなるおそれが有る。従って、リセット信号RSTの周期は、入力信号、出力信号、帰還信号の周波数に応じて適切に設定する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1を示すPLL発振回路の構成図である。
【図2】従来のPLL発振回路の構成図である。
【図3】本発明の実施例2を示すPLL発振回路の構成図である。
【図4】図3中の周波数比較器の動作の一例を示す信号波形図である。
【図5】本発明の実施例3を示すPLL発振回路の構成図である。
【図6】本発明の実施例4を示すPLL発振回路の構成図である。
【図7】本発明の実施例5を示すPLL発振回路の構成図である。
【符号の説明】
【0061】
10,50 周波数比較器
11,12 SC(スイッチド・キャパシタ)
20 ループフィルタ
30 VCO(電圧制御発振器)
40 分周器
51〜54 FF(フリップフロップ)
55〜58 AND(論理積ゲート)
59,60 OR(論理和ゲート)
61,62 スイッチ
63,64,70 電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を共通ノードに出力する複数の周波数比較器と、
前記共通ノードに出力される信号の高周波成分を除去して制御電圧を生成するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、
前記出力信号の周波数を分周して前記帰還信号を出力する分周器とを、
備えたことを特徴とするPLL発振回路。
【請求項2】
前記分周器は、前記出力信号の周波数を分周して異なるN(但し、Nは2以上の整数)種類の帰還信号を出力するように構成し、
前記複数の周波数比較器は、前記N種類の帰還信号に対応して設けられ、それぞれ対応する帰還信号と共通の前記入力信号の周波数の差に応じた電流を前記共通ノードに出力するように構成したことを特徴とする請求項1記載のPLL発振回路。
【請求項3】
前記複数の周波数比較器は、N(但し、Nは2以上の整数)種類の入力信号に対応して設けられ、それぞれ対応する入力信号と共通の前記帰還信号の周波数の差に応じた電流を前記共通ノードに出力するように構成したことを特徴とする請求項1記載のPLL発振回路。
【請求項4】
前記分周器は、前記出力信号の周波数を分周して異なるN(但し、Nは2以上の整数)種類の帰還信号を出力するように構成し、
前記複数の周波数比較器は、N種類の入力信号に対応して設けられ、それぞれ対応する帰還信号と入力信号の周波数の差に応じた電流を前記共通ノードに出力するように構成したことを特徴とする請求項1記載のPLL発振回路。
【請求項5】
入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を共通ノードに出力する周波数比較器と、
前記共通ノードに一定の電流を出力する電流源と、
前記共通ノードに出力される信号の高周波成分を除去して制御電圧を生成するループフィルタと、
前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、
前記出力信号の周波数を分周して前記帰還信号を出力する分周器とを、
備えたことを特徴とするPLL発振回路。
【請求項6】
前記周波数比較器は、
第1電位と第1ノードの間に接続されて前記入力信号によってオン・オフされる第1のスイッチ、第2ノードと前記第1ノードの間に接続されて前記入力信号によって前記第1のスイッチとは相補的にオン・オフされる第2のスイッチ、及び前記第1ノードと第2電位の間に接続された第1のキャパシタからなる第1のスイッチド・キャパシタと、
第2電位と第3ノードの間に接続されて前記帰還信号によってオン・オフされる第3のスイッチ、前記第3ノードと前記第2ノードの間に接続されて前記帰還信号によって前記第3のスイッチとは相補的にオン・オフされる第4のスイッチ、及び前記第3ノードと第2電位の間に接続された第2のキャパシタからなる第2のスイッチド・キャパシタとを有し、
前記第2ノードから前記共通ノードに前記入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を出力するように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のPLL発振回路。
【請求項7】
前記周波数比較器は、
前記入力信号の立ち上がりまたは立ち下がりの変化タイミングで動作する第1及び第2のフリップフロップからなる第1のシフトレジスタと、
前記帰還信号の立ち上がりまたは立ち下がりの変化タイミングで動作する第3及び第4のフリップフロップからなる第2のシフトレジスタと、
前記第1〜第4のフリップフロップの出力信号に従い、一定周期毎に前記入力信号の1回目の変化タイミングから前記帰還信号の1回目の変化タイミングまでの間、第1の制御信号を出力し、該入力信号の2回目の変化タイミングから該帰還信号の2回目の変化タイミングまでの間、第2の制御信号を出力する論理回路と、
第1の電流源と内部ノードの間の接続を前記第1の制御信号に従ってオン・オフする第1のスイッチと、
第2の電流源と前記内部ノードの間の接続を前記第2の制御信号に従ってオン・オフする第2のスイッチとを有し、
前記内部ノードから前記共通ノードに前記入力信号と帰還信号の周波数の差に応じた電流を出力するように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のPLL発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−49735(P2009−49735A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214307(P2007−214307)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591049893)株式会社 沖マイクロデザイン (127)
【Fターム(参考)】