説明

POMC産生抑制剤

【課題】

本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)、食品等に好適な、POMC産生異常による疾患の予防又は改善用の組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、マメ科カンゾウ属カンゾウ、イネ科ササ属クマザサ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)より得られる植物抽出物よりなるPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤、並びに、当該成分を含有する組成物、その製造方法を提供することにより本課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POMC産生異常による疾患の予防又は改善用に好適な組成物に関し、詳しくは、POMC産生抑制作用を有する成分、又は、POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分、並びに、前記成分を含有する組成物、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の器官において合成、分泌されるホルモンは、体液を通じ体内を循環し、生体内における特定の器官の働きを調節する情報伝達物質である。ホルモンによる特定の器官における機能調節は、体液循環を介することから液性循環と呼ばれ、時空間的に厳密な機能調節を行うことは出来ないが、遠く離れた器官に大きな影響を与えることが出来るなどの利点が存する。ホルモンには、成長ホルモンに代表されるペプチドホルモン、副腎皮質ホルモン等のステロイドホルモン、副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン等)等のアミン又はアミノ酸等の存在が知られている。ペプチドホルモンは、生体機能性蛋白質と同様に、細胞核内のDNA鋳型より作られるmRNAを基に合成される。一般に、ペプチドホルモンは、アミノ酸を組み合わせた前駆体のプロホルモンが作られた後、糖鎖付加、スプライシング等の過程を経ることにより成熟したホルモン分子が生成され、各標的組織に存在するホルモンレセプタ−等を介し生物活性を発揮する。
【0003】
プロオピオメラノコルチン(POMC:Pro-opiomelanocortin)は、脳、消化管、精巣、卵巣、皮膚などの様々な組織における発現が確認され、産生されたPOMC分子は、さらにプロセッシング等の過程を経ることによりメラノサイト刺激ホルモン(α、β及びγ−MSH、MSH:melanocyte stimulating hormone)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH:adrenocorticotropic hormone)、又は、脂肪動員ホルモン(β及びγ−LPH: lipotropic hormone)より誘導されるβ−エンドルフィン等を産生されることが知られている。また、POMCを前駆体とするMSH、ACTH等のホルモンには、色素凝集の制御、体温調節、肥満調節、学習や記憶、免疫機能の制御等の様々な生物活性が存することが報告されている。特に、ACTH及びα−MSHに関しては、皮膚における色素沈着異常、脳下垂体における中枢性の摂食障害、さらに、β−エンドルフィンには、かゆみ等の症状発現との関係が解明されている。皮膚におけるPOMCの作用としては、紫外線色素沈着や老人性色素斑部位のPOMC産生量が増加すること、即ち、POMC mRNA発現量が正常部位に比較し上昇していることが確認されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。この様な知見を基に、POMC産生抑制作用を有する成分の前記疾患予防又は治療への応用が研究されており、取り分け、POMC産生抑制作用を有する成分としては、POMC mRNA発現上昇抑制作用を有するバイカリン(例えば、特許文献1を参照)、ユッカ抽出物(例えば、特許文献2を参照)等が見いだされている。前記のPOMC産生抑制剤には、色素沈着に対する予防又は改善効果が期待されているが、かかる成分による色素沈着予防又は改善効果は十分に満足のいくもととは言い難い。これは、前記のPOMC産生抑制作用を有する成分が、正常細胞を用いた評価方法を利用し創出されているため、必ずしも対象となる皮膚症状を反映した評価により見出されていないことによるとも考えられる。このため、実際の皮膚に生じている症状を反映したモデル評価系を利用することにより、さらに効果の高いPOMC産生抑制剤の登場が望まれている。
【0004】
一方、皮膚の表面に存在する表皮層は、加齢等の遺伝的な要因に加え、長年に渡り紫外線、湿度変化、温度変化等の種々のストレスを常に受け続けることにより細胞機能低下が進行している。表皮層は、角質層、顆粒層、有棘層、基底層より形成され、角質層が、皮膚バリア機能と深く関係するのに対し、基底層、取り分け、角化細胞(ケラチノサイト)は、色素沈着、肌荒れ、皮膚老化現象等に深く関係することが明らかにされている。基底層には、ケラチノサイト、並びに、色素細胞(メラノサイト)等が存在する。メラノサイトは、遺伝的な要因に加え、長年に渡る物理的な刺激等により恒常的にメラニン産生が亢進した状態になる場合が存し、この様なメラニン産生亢進は、ケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送、蓄積及び排出遅延等の現象を引き起こす。しかしながら、ケラチノサイトへのメラニン過剰輸送、蓄積及び排出遅延等の現象により、ケラチノサイトのPOMC産生亢進、取り分け、POMC mRNA発現亢進作用、更には、細胞分化増殖抑制などの細胞不活性化が起こることは全く知られていなかった。このことは、ケラチノサイトにおけるメラニン蓄積が進行すればするほどPOMC産生が亢進され、さらに、メラニンが産生・蓄積され、メラニンの排出、タ−ンオ−バ−の遅延等を引き起こし、皮膚老化現象や肌荒れ、色素沈着や肌のくすみ等の状態が悪化に繋がり、治り難い肌症状を生み出すこととなる。このため、メラニン過剰蓄積により生じるケラチノサイトのPOMC mRNA産生亢進作用を抑制する成分には、通常の色素沈着に対する予防又は改善作用のみならず、肌荒れなどを伴う色素沈着異常、従来の処置では治り難かったしみ、くすみなどの色素沈着異常の予防又は改善に対する効果が期待出来る。
【0005】
細胞の機能低下を回復又は向上させる成分としては、細胞賦活剤がよく知られている。しかしながら、一般的に使用される細胞賦活作用という言葉には、細胞を活性化させる作用であることは共通するが、実際にその内容を精査してみると様々な薬理作用が包含され、その作用の意味するところが大きくことなることも少なくない。この様な細胞賦活作用を評価する方法としては、例えば、細胞内におけるATP産生促進作用(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)、血管内皮細胞増殖因子産生亢進作用(例えば、特許文献5を参照)等の局所的な生物活性を評価することにより細胞賦活作用を評価する方法が存する。これに対し、細胞分化増殖作用等の細胞全体の機能を総合的に評価する評価方法も存する。この様に、「細胞賦活作用」に包含される内容には、様々な薬効評価系が存在し、対象とする作用機序も異なる場合が多く存する。
【0006】
細胞賦活作用を有する成分の内、ケラチノサイトにおける細胞賦活作用を有する成分としては、モモ、センキョウ、サンザシ、カミツレ、マチルスオドラチシマ、トウキ、ワイルドタイム、サンショウ、クスノハガシワ、シャクヤク、オニイチゴ、ケイヒ、ショウブ、タイソウより得られる植物抽出物等にATP産生促進作用(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)が存することが知られている。また、ケラチノサイトにおける分化増殖作用を有する成分としては、アルニカ、ウコン、オトギリソウ、ガンビ−ルノキ、ゲンノショウコ、コウボクシャクヤク、センキュウ、トウキ、トウチュウカソウ、ナツメ、ニンジン、ビロウドアオイ、フキタンポポ、ブクリョウタケ、モモ、ユキノシタより得られる植物抽出物等(例えば、特許文献6を参照)が知られている。しかしながら、かかる細胞賦活作用は、何れも正常ケラチノサイトを用いた評価系におけるATP産生促進作用、分化増殖作用を評価したものである。一般的に、正常細胞又は動物等を用いた評価系は、細胞の入手及び評価系の構築が容易である利点を有するが、疾患等の症状を反映しているとは言い難い。このため、有効成分の薬理作用を適切に評価するためには、症状を反映したモデル細胞又は動物等を用いた評価系が望まれる。しかしながら、細胞賦活作用に関するモデル評価系は、ほとんど知られていない。さらには、紫外線暴露等の刺激に起因するメラノサイトのメラニン産生亢進によるケラチノサイトへのメラニン過剰移送及び蓄積によりケラチノサイトが不活性化、取り分け、細胞増殖が抑制されたことにより、皮膚のタ−ンオ−バ−速度が遅くなり、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常、ケラチノサイトが角層表面より剥がれ落ち難くするなどの肌荒れ状態を反映した細胞を用いた評価系等は全く知られていない。言い換えれば、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の肌症状に対する予防又は改善にする評価系、更には、これらに対し有用な組成物の登場が望まれていたと言える。
【0007】
本発明者等は、POMC産生抑制作用、更には、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制作用を有する成分に、優れた色素沈着予防又は改善作用が存することを見出した。本発明においては、特に、メラノサイトのメラニン産生亢進によるケラチノサイトへのメラニン過剰移送、蓄積及び排出遅延の結果生じるPOMC産生亢進及び細胞機能低下作用を介する肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、治り難いしみ、くすみ等の肌症状を反映した評価系を利用することにより、従来では評価が困難であった、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、ケラチノサイトへのメラニンの過剰移送と蓄積による消え難いしみ、くすみ等の色素沈着異常に対し予防又は改善作用を有する成分を簡便に見出すことが出来る。かかる成分は、実際に皮膚に生じているメラノサイトのメラニン過剰産生、ケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送及び蓄積、排出遅延により生じるケラチノサイトのPOMC産生亢進、並びに、細胞不活性化現象を反映した評価系であると考えられるため従来の美白剤では処置が難しかった色素沈着に対する予防又は改善効果が大いに期待出来る。加えて、前記POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用、特に、細胞機能が低下したケラチノサイトを利用したPOMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分は、従来の美白剤とは異なる作用機序を介することにより色素沈着の予防又は改善作用を発揮するため、チロシナ−ゼ阻害作用を機序とするアスコルビン酸類や、メラニン産生そのものをブロックするフェノ−ル骨格を有する化合物の作用機序の異なる美白剤との相加又は相乗効果が期待出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−227620号公報
【特許文献2】特開2009−227619号公報
【特許文献3】特開2009−256272号
【特許文献4】特開2009−084216号
【特許文献5】特開平11−286432号
【特許文献6】特開2003−292432号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Suzuki I. et al., J. Invest. Dermatology,118, 73〜78(2002)
【非特許文献2】Motokawa T. et al., J. Dermatological Science, 37, 120−123(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この様な状況下において為されたものであり、POMC産生異常による疾患の予防又は改善用、さらに詳しくは、通常の美白手段では対処し難い肌荒れを伴い色素沈着異常、消え難いしみ、くすみ等の肌症状の予防又は改善用に好適なPOMC産生抑制作用を有する成分、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制作用を有する成分、並びに、当該成分を含有する組成物、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この様な状況を鑑みて、本発明者等は、POMC産生異常による疾患の予防又は改善用、具体的には、常の美白手段では対処し難い、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の肌症状に対する予防又は改善する技術を求め鋭意努力を重ねた結果、POMC産生抑制作用を有する成分、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制作用を有する成分、更には、当該成分を含有する組成物に、優れた予防又は改善効果が存することを見出し、前記の組成物製造方法を確立した。さらに、当該成分及び組成物は、作用機序の異なる美白剤であるアスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生抑制作用をフェノ−ル骨格を有する化合物を共に配合することにより、その効果が増強されることを見出した。本発明は以下に示す通りである。
<1> マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする、プロオピオメラノコルチン(Proopiomelanocortin: POMC)産生抑制剤。
<2> 前記マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物が、マメ科カンゾウ属カンゾウ、イネ科ササ属クマザサ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)であることを特徴とする、<1>に記載のPOMC産生抑制剤。
<3> 前記のPOMC産生抑制作用が、POMC遺伝子発現抑制作用であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のPOMC産生抑制剤。
<4> 前記のPOMC遺伝子発現抑制作用が、POMC mRNA発現抑制作用であることを特徴とする、<1>〜<3>の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
<5> 前記のPOMC産生抑制作用が、POMC産生が亢進した角化細胞(ケラチノサイト)のPOMC産生抑制作用であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
<6> 前記のPOMC産生抑制作用に加え、細胞賦活作用を有することを特徴とする、<1>〜<5>の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
<7> 前記のPOMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分が、前記マメ科カンゾウ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属する植物より得られる植物抽出物であることを特徴とする、<6>に記載のPOMC産生抑制剤。
<8> 前記のマメ科カンゾウ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物が、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネであることを特徴とする、<6>又は<7>に記載のPOMC産生抑制剤。
<9> 前記細胞賦活作用が、表皮細胞の分化増殖促進作用によるものであることを特徴とする、<6>〜<8>の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
<10> 前記表皮細胞の分化増殖促進作用が、細胞分化増殖能が低下したケラチノサイトの細胞分化増殖促進作用によるものであることを特徴とする、<6>〜<9>の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
<11> <1>〜<10>に記載のPOMC産生抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
<12> <1>〜<10>に記載のPOMC産生抑制剤を、組成物全量に対し0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、<11>に記載の組成物。
<13> POMC産生異常による疾患症状の予防又は改善用であることを特徴とする、<11>又は<12>に記載の組成物。
<14> 前記POMC産生異常による疾患症状が、色素沈着亢進、摂食障害、かゆみであることを特徴とする、<11>〜<13>に記載の組成物。
<15> 皮膚外用剤であることを特徴とする、<11>〜<14>の何れか一項に記載の組成物。
<16> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<11>〜<15>に記載の組成物。
<17> 更に、アスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする、<11>〜<16>の何れか一項に記載の組成物。
<18> アスコルビン酸乃至はその誘導体、及び、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする、<17>に記載の組成物。
<19> 採取された角層細胞において、メラニン染色をした場合、平均に比較しメラニン量が多く、角層細胞観察において、平均に比較し有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人に使用されるべきであるものであることを特徴とする、<11>〜<18>の何れか一項に記載の組成物。
<20> 更に、好ましい製剤上の任意成分を含有することを特徴とする、<11>〜<19>の何れか一項に記載の組成物。
<21> マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属より得られる植物抽出物を含有する色素沈着予防又は改善用の化粧料の製造方法であって、マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属に属する植物より得られる植物の植物体を極性溶媒で抽出し、所望により、溶媒除去、分画精製を行い、植物抽出物を得た後、メラニン添加によりPOMC mRNA遺伝子発現亢進及び細胞機能低下させたケラチノサイトを用い、これのPOMC mRNA遺伝子発現に対する影響を調べ、POMC mRNA遺伝子発現抑制作用が存在することを確認し、しかる後に、前記のケラチノサイトを用い、細胞賦活作用を計測し、細胞賦活作用が存在することを確認した上で、当該植物精油を化粧料に配合することを特徴とする、色素沈着予防又は改善用の化粧料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の組成物の必須成分であるPOMC産生抑制剤>
本発明の組成物は、マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなるPOMC産生抑制剤を含有することを特徴とする。POMCは、脳、消化管、精巣、卵巣、皮膚などの様々な組織において発現が確認されている。また、産生されたPOMC分子は、スプライシング等の過程を経ることにより、メラノサイト刺激ホルモン(α、β及びγ−MSH、MSH: melanocyte stimulating hormone)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH: adrenocorticotropic hormone)、β−エンドルフィン等のペプチドホルモンを産生する。脳下垂体におけるMSH及びACTHは、摂食行動に深く関係するほか、β−リポトロピンを経由し生成するβ−エンドルフィンは、かゆみに関与すことが明らかにされている。また、皮膚に関しては、α−MSHが、メラノサイトにおけるメラニン産生促進作用を有することが知られている。このため、MSH、ACTH、β−エンドルフィンの前駆体となるPOMCの産生抑制作用を有する成分は、POMC産生異常、取り分け、POMC過剰産生が関与する疾患又は症状、具体的には、色素沈着、摂食障害、かゆみ等の疾患又は症状を予防又は改善することが出来る。
【0013】
本発明のPOMC産生抑制作用を有する成分としては、マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなる植物抽出物が好適に例示出来る。前記の植物抽出物の内、より好ましいものとしては、マメ科カンゾウ属、ユキノシタアジサイ属、イネ科ササ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上を有効成分とするPOMC産生抑制剤が好適に例示出来、さらに好ましくは、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、イネ科ササ属クマザサ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなる植物抽出物を有効成分とするPOMC産生抑制剤が好適に例示出来る。前記のPOMC産生抑制作用を有する成分としては、POMC産生量を減少させる作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来、具体例を挙げれば、POMC合成阻害作用を有する成分、POMC分解促進作用を有する成分、POMC発現遺伝子抑制作用を有する成分等が好適に例示出来、より好ましいものとしては、POMC遺伝子発現抑制作用を有する成分が好適に例示出来、さらに好ましくは、POMC mRNA発現抑制作用を有する成分が好適に例示出来る。前記のPOMC産生抑制作用を有する成分に関し、好ましいものの具体例を挙げれば、後記の実施例に記載の「POMC mRNA発現抑制作用評価」においてPOMC mRNA発現抑制作用を有する成分が好適に例示出来る。本発明の「POMC mRNA発現抑制作用評価」において、POMC mRNA発現抑制作用を有する成分とは、コントロ−ルに比較しPOMC mRNA発現量を抑制する作用を有する成分、より好ましくは、コントロ−ル群に比較しPOMC mRNA発現量を80%以下に抑制する成分、更に好ましくは、コントロ−ル群に比較しPOMC mRNA発現量を50%以下に抑制する成分が好適に例示出来る。
【0014】
本発明のPOMC産生抑制作用を有する成分に関する評価に付いては、POMC産生抑制作用を評価することが出来る評価方法であれば特段の限定なく適応することが出来るが、より好ましくは、POMC遺伝子発現抑制作用を評価することが出来る評価方法が、さらに好ましくは、POMC mRNA発現抑制作用を評価することが出来る評価方法が好適に例示出来る。また、前記のPOMC mRNA発現抑制作用評価においては、POMC mRNA発現量を測定することが出来る細胞であれば特段の限定はないが、より好ましくは、POMC mRNA発現が亢進した細胞を利用することが好ましく、POMC mRNA発現を促進する作用を有する成分を添加することによりPOMC mRNA発現が亢進したケラチノサイトを利用することが、さらに好ましい。これは、通常の美白手段では対処し難い、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、さらには、治り難いしみ、くすみ等の色素沈着異常が、遺伝的要因に加え、紫外線暴露等による長年に渡る物理的な刺激によりメラノサイトにおけるメラニンの恒常的な産生亢進、ケラチノサイトへの過剰輸送、蓄積及び排出遅延等により生じるケラチノサイトのPOMC産生亢進作用及び細胞機能低下に起因しているためである。前記のPOMC mRNA発現を促進する作用を有する成分を添加することによりPOMC mRNA発現が亢進したケラチノサイトを利用しPOMC産生抑制作用を評価する評価系は、上記の肌症状を伴う色素沈着異常のモデル評価系であると言える。このため、当該評価系において効果を発揮する成分は、POMC産生異常が関連する疾患、特に、前記の肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、さらには、治り難いしみ、くすみ等の色素沈着症状に有用である。この様な肌症状を呈する人としては、くすみやしみの多い人は、例えば、採取されたその人のケラチノサイトにおいて、平均に比較しメラニン量が多く、且つ、有核細胞の出現率が平均よりも高い、乃至は、重層剥離の度合いが平均よりも多い人を以て定義づけることができる。本発明のPOMC産生抑制作用を有する成分は、前記の示性値を持った人を対象として、本発明のPOMC産生抑制剤を投与することにより、前述のしみ、くすみ等の肌症状を解消することが出来る。
【0015】
本発明のPOMC産生抑制作用評価方法、取り分け、POMC mRNA発現抑制作用評価に関しては、具体例を挙げれば、後述する実施例に記載の方法が好適に例示出来る。本発明のPOMC mRNA発現抑制作用を評価する方法としては、ポリメラ−ゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)を利用したPCR法が好適に例示出来、さらに好ましくは、QuantiFast SYBR Green PCR Kit(QIAGEN社、配列非公開)を用いたリアルタイム(RT-PCR)による測定方法が好適に例示出来る。また、かかる測定方法に使用するケラチノサイトの培地としては、通常のケラチノサイトの培養に用いられる培地であれば特段の限定なく適応出来るが、より好ましくは、Humedia−KG2(倉敷紡績株式会社)が好ましい。また、細胞分化増殖能測定における測定感度を向上させるため、Humedia−KG2培地に含まれるハイドロコルチゾン(HC)等の成長因子を除くことも場合によっては好ましい。
【0016】
本発明のPOMC産生抑制剤は、前記の植物より得られる植物抽出物を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、植物由来の抽出物とは、植物抽出物自体、植物抽出物を分画、精製した分画、植物抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。マメ科カンゾウ属カンゾウは、ヨ−ロッパ南部を原産地とする多年草であり、日本においては300年以上前から山梨県をはじめとする日本各地で栽培されている。カンゾウには、グリチルリチン等の抗炎症成分が含有されることが広く知られている。また、根又は根茎を乾燥させたものを生薬として使用するほか、抽出物や粉末を甘味料として利用している。イネ科ササ属クマザサは、日本を原産地とし北日本の日本海側を中心に分布する。防腐作用があり、葉の青汁を胃のもたれや胃炎の治療の他、高血圧、糖尿病に効果があるとされている。ユキノシタ科アジサイ属アマチャは、日本、中国などを原産の落葉小低木であり、本州、四国、九州等の日本全国で生育し、甘味飲料や加工食品の甘味原料として使用されている。カタバミ科ゴレンシ属スターフル−ツ(和名:五歛子)は、熱帯アジアを原産地とする常緑の木本であり、日本においては、沖縄県、宮崎県などで栽培されている。実は、食用として使用される。バラ科モモ属モモは、中国を原産地とする落葉小高木であり、その果実をモモと呼ぶ。日本国内においては、福島県、山梨県、長野県、岡山県など全国で栽培されている。また、その果実は、食用として利用され、血行改善、利尿作用などがあるとされている。イネ科イネ属イネは、熱帯アジアを原産地とする穀物であり、日本全国で栽培されている。実は、食料、飼料、醸造用等に使用されるほか、わらは、農具、飾り等に利用されている。また、食用とされる米には、消化不良、腹痛等に効果があるとされている。サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウは、サルノコシカケ科マツホド菌核を乾燥させたものをブクリョウ(茯苓)と呼ぶ。ブクリョウの主要な成分としては、β-pachymose、pachymic acid、蛋白質、脂肪、lectine、histidine等が知られている。また、ブクリョウには、利尿作用、抗腫瘍作用等が知られている。
【0017】
本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物は、日本において、自生又は生育された植物、漢方生薬原料等として販売される日本産のものを用い植物抽出物を作製することも出来るし、丸善製薬株式会社等より植物抽出物として販売されている市販の植物抽出物を購入し使用することも出来る。前記植物より得られる植物抽出物の作製に用いる植物部には、特段の限定はなく、全草を用いることが出来るが、勿論、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾、果実等の部位のみを使用することも出来る。特に、バラ科モモ属モモより得られる植物抽出物の作製に用いる部位としては、葉部が、カタバミ科ゴレンシ属スターフル−ツより得られる植物抽出物の作製に用いる部位としては、葉又は果実が、イネ科イネ属イネより得られる植物抽出物の作製に用いる部位としては、花穂(米)部が好適に例示出来る。抽出に際し、植物体などの抽出に用いる部位は、予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物製造においては、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することが出来る。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ−などで分画精製し、所望の抽出物を得ることが出来る。ここで、本発明の植物より得られる抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する
【0018】
前記抽出溶媒としては、極性溶媒が好適に例示出来、より好ましくは、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、1,3−ブチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどの多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類、ヘキサン、ペンタン等の炭化水素類等のから選択される1種乃至は2種以上が好適に例示出来、さらに好ましくは、エタノ−ル、含水エタノ−ル、ブチレングリコ−ル、含水ブチレングリコ−ルが好適に例示出来、抽出効率の点からは、50〜95%(溶量)含水エタノ−ル、より好ましくは、70〜95%(溶量)含水エタノ−ル1,3−ブチレングリコ−ルが好ましく例示出来る。
【0019】
本発明のPOMC産生抑制剤の組成物における好ましい含有量は、0.00001〜10質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.001質量%〜3質量%である。これは、あまり濃すぎると効果が頭打ちになる場合があり、少なすぎると有効濃度とならない場合があるからである。また、かかる成分は、POMC産生抑制作用、取り分け、POMC mRNA発現抑制作用に優れ、高い安全性及び安定性を有するため、化粧料、医薬部外品、医薬品等への使用が好ましい。
【0020】
また、本発明のPOMC産生抑制剤の内、さらに好ましいものとしては、後述する細胞賦活作用を併せ持つ成分が好適に例示出来る。かかる成分は、POMC産生抑制作用に加え、細胞賦活作用、取り分け、細胞増殖促進作用を有することを特徴とする。本発明の細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤は、前記のPOMC産生抑制作用に加え、メラノサイトのメラニン産生亢進、これに続くケラチノサイトへのメラニン過剰輸送、蓄積及び排出遅延によるケラチノサイトの細胞分化増殖の抑制を回復又は向上させる作用、即ち、細胞賦活作用を有するため、通常の美白手段では対処し難い、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の色素沈着症状に対する予防又は改善に有効である。さらに、かかる成分は、後述する作用機序の異なる美白剤、具体的には、チロシナ−ゼ阻害作用を有するアスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生を直接抑制するフェノ−ル骨格を有する化合物と共に配合することにより、皮膚の色素沈着、シミの予防又は改善効果を増強することが出来る。本願発明の組成物は、特に、肌荒れ症状を伴う色素異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の肌症状に対する予防又は改善作用に優れるので、この様な特性の人を選択して投与することが、特に好ましい。
【0021】
<本発明の細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤>
本発明の組成物は、マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなるPOMC産生抑制剤を含有することを特徴とする。また、前記のPOMC産生抑制剤の内、好ましいものとしては、細胞賦活作用を併せ持つ成分が好適に例示出来る。本発明の細胞賦活作用を有する成分とは、皮膚細胞における細胞分化増殖促進作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、細胞分化増殖作用を低下させる物質の添加により皮膚細胞の細胞分化増殖能が低下した皮膚細胞において細胞分化増殖促進作用を有する成分が好ましい。前記皮膚細胞における細胞分化増殖作用の内、より好ましいものとしては、ケラチノサイトにおける細胞分化増殖作用であることが好ましい。また、皮膚細胞、取り分け、ケラチノサイトにおける分化増殖作用を低下させる物質としては、メラニンが好適に例示出来る。かかる細胞賦活作用を有する成分の具体例を挙げれば、後述する実施例に記載の「細胞賦活作用評価」において、コントロ−ル群に比較し、細胞分化増殖能が向上している成分、より好ましくは、コントロ−ル群に比較し細胞分化増殖能が5%以上増加している成分、さらに好ましくは、コントロ−ル群に比較し細胞分化増殖能が10%以上増加している成分が好適に例示出来る。また、本発明のPOMC産生抑制作用を有する成分の内、細胞賦活作用を併せ持つ成分としては、本発明者等の検討結果によれば、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネより得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、マメ科カンゾウ属カンゾウより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、カラバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツより得られる植物抽出物、バラ科モモ属モモより得られる植物抽出物、イネ科イネ属イネより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。ケラチノサイトは、皮膚表皮層の基底層に存在し、色素沈着、シミなどの皮膚現象に深く関与する。また、生体内においては、遺伝的な要因に加え、紫外線暴露、湿度変化、温度変化等の種々のストレスを常に受け続けるため細胞の機能低下が促進され易い。特に、メラノサイトにおけるメラニン産生の恒常的な亢進は、ケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送、蓄積及び排出遅延によりケラチノサイトの細胞分化増殖抑制を引き起こし、これにより生じる肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、治り難いしみ、くすみ等の肌症状の原因となる。このため、メラニンを添加された培地を使用し培養されるケラチノサイトを利用した評価系は、前述したメラニン過剰輸送、蓄積及び排出遅延により生じるケラチノサイトの細胞分化増殖機能の抑制により生じる細胞状態を反映していると考えられる。このことは、メラニンを添加することにより細胞分化増殖促進作用を低下させた皮膚細胞において細胞分化増殖促進作用を有する成分には、単純に色素沈着の予防又は改善に効果を奏するのみならず、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の肌症状に対する予防又は改善効果を示すことが期待出来る。
【0022】
消え難いしみ、くすみの多い人、又は、重層剥離の度合いが高い人においては、皮膚のタ−ンオ−バ−速度が遅くなり、ケラチノサイトにメラニン顆粒が過剰に蓄積したことにより細胞が不活性化され、角層細胞がはがれにくい肌荒れ状態、治り難いしみ、くすみを形成している場合が多く、この様なケラチノサイトに本発明のPOMC産生抑制剤、取り分け、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤を使用することにより、皮膚のタ−ンオ−バ−速度を向上させ、消え難いしみ、くすみなどの色素沈着異常、肌荒れを伴う色素沈着症状を解消することが出来る。また、くすみの多い人、肌荒れ症状を伴う色素沈着を有する人は、紫外線暴露等の外部刺激によるメラノサイトのメラニン産生亢進によるケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送により細胞分化増殖機能の低下が生じたケラチノサイトにおけるメラニン量の増加、有核細胞数の増加が認められ、皮膚症状としては、重層剥離が多く観察される。このため、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤が投与されるべき対象としては、採取されたケラチノサイトにおいて、メラニン染色をした場合、平均に比してメラニンの量が多く、ケラチノサイトの観察において、平均に比して有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人が特に好ましく例示できる。この様な人においては、くすみが著しく目立つ場合が存し、そのくすみがこの様な構成の組成物を投与することにより著しく改善する。従って、本願発明の組成物を使用しようとする人から採取された角層標本を観察し、前記特徴を備えていることを確認し、しかる後に、本発明の組成物の投与を開始することが、その効果を高める上で好ましい。
【0023】
本発明の組成物における細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤の好ましい含有量は、組成物全量に対し0.00001〜10質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.001質量%〜3質量%である。これは、あまり濃すぎると効果が頭打ちになる場合があり、少なすぎると有効濃度とならない場合があるからである。また、かかる成分は、POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用、取り分け、POMC mRNA発現抑制作用及びメラニン添加により細胞機能が低下したケラチノサイトにおける細胞分化増殖作用(細胞賦活作用)に優れ、高い安全性及び安定性を有するため、化粧料、医薬部外品、医薬品等への使用が好ましい。
【0024】
本発明の細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤は、POMC産生抑制作用に加え、メラノサイトのメラニン産生亢進及び過剰輸送によるケラチノサイトの機能低下を回復又は向上させる作用を有するため、皮膚の色素沈着、シミの予防又は改善に有効である。さらに、かかる成分は、後述する作用機序の異なる美白剤、具体的には、チロシナ−ゼ阻害作用を有するアスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生を直接抑制するフェノ−ル骨格を有する化合物と共に配合することにより、皮膚の色素沈着、シミの予防又は改善効果を増強することが出来る。
【0025】
<本発明のアスコルビン酸乃至はその誘導体、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物>
本発明の組成物は、POMC抑制作用を有する成分、より好ましくは、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤を必須成分として含有することを特徴とする。また、本発明の組成物は、前記必須成分のほかに、アスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする。前記アスコルビン酸乃至はその誘導体としては、例えば、アスコルビン及び/又はその薬理学的に許容される塩、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその薬理学的に許容される塩、アスコルビン酸−2−グルコシド等のアスコルビン酸配糖体及び/又はその薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物としては、例えば、ハイドロキノン、アルブチン、4−ブチルレゾルシノ−ル、4−シクロペンチルレゾルシノ−ル、4−シクロヘキシルレゾルシノ−ル等の4−アルキルレゾルシノ−ル類、グラブリジン、ソファラフラバノンG、オフィオメチルボゴナノンB及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来る。かかる化合物の好ましい含有量は、アスコルビン酸乃至はその誘導体であれば、組成物全量に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。また、メラニン産生抑制作用を有するフェニ−ル骨格を有する化合物の含有量としては、組成物全量に対し0.1〜3質量%、より好ましくは、0.2〜1質量%が好適に例示出来る。
【0026】
本発明の細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤は、前記のPOMC産生抑制作用に加え、メラノサイトのメラニン産生亢進、これに続くケラチノサイトへのメラニン過剰輸送、蓄積及び排出遅延によるケラチノサイトの細胞分化増殖の抑制を回復又は向上させる作用、即ち、細胞賦活作用を有するため、通常の美白手段では対処し難い、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、更には、消え難いしみ、くすみ等の色素沈着症状に対する予防又は改善に有効である。これは、かかる成分が有する作用機序、具体的には、アスコルビン酸乃至はその誘導体が有するチロシナ−ゼ阻害作用、フェノ−ル骨格を有する化合物が有するメラニン産生抑制作用が、前記のPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤とは作用機序が異なるため、相加又は相乗効果を発揮することによると考えられる。さらに、かかる成分を配合した組成物の効果が発揮されるべき対象としては、通常のしみ、くすみなどの皮膚の色素沈着に対する予防又は改善効果に加え、治り難いしみ、くすみ等の色素沈着異常、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常が好適に例示出来るが、より好ましくは、採取されたケラチノサイトにおいて、メラニン染色をした場合、平均に比してメラニンの量が多く、角層細胞の観察において、平均に比して有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人が特に好ましく例示できる。この様な人においては、メラニンの産生亢進、ケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送、蓄積及び排出遅延により、くすみ、しみ等の色素沈着が通常に比べ治り難く、ケラチノサイトがはがれにくい等の肌症状が著しく目立つ場合が存し、その様な肌症状がこの様な構成の組成物を投与することにより著しく改善する。これは、POMC産生抑制作用、又は、POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分が示す作用機序とは異なる作用機序を有するアスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、フェノ−ル骨格を有する化合物を併用することにより多面的な作用機序により効果を発揮するためである。
【0027】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、前記のPOMC産生抑制作剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤を含有することを特徴とする。本発明の組成物におけるPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤は、当該成分をそのまま配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合することも出来る。尚、本発明の組成物の必須成分であるPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤は、前記の植物抽出物であり、本発明の植物抽出物は、抽出物自体、抽出物を分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかる植物抽出物を本発明の組成物に含有させることは、処方の自由度が大きくなるという点でより好ましい。
【0028】
本発明の組成物にPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤を含有させる際には、予め、前記の植物抽出物のPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤のPOMC産生抑制作用及び/又は細胞賦活作用の有無を調べ、これらの作用が存することを確認した上で含有させることが好ましい。また、本発明の細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤のPOMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を調べる順番としては、特段の限定はないが、より好ましくは、POMC産生抑制作用を調べ、POMC産生抑制作用が存することを確認した後に、当該成分に付いて細胞賦活作用が存することを確認することが好ましい。
【0029】
また、本発明のPOMC産生抑制剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制剤の組成物の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロ−ス、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロ−スなどの結合剤、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、カルボキシメチルセルロ−スカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチト−ルやソルビト−ルなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示出来る。
【0030】
また、かかる成分が連続投与される場合、さらには安全性を考慮した場合、経皮的に投与されることが好ましく、経皮的に投与されるものであれば特段の限定なく応用出来、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これは本発明の皮膚外用剤が、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。又、その剤形としては、ロ−ション剤形、乳液剤形、クリ−ム剤形、エッセンス剤形等が好適に例示できる。乳化系については、水中油乳化系でも、油中水乳化系でも、水中油中水乳化系や油中水中油乳化系などの多相乳化系でも良い。特に好ましいものは、本発明の効果が著しい、ロ−ション剤形乃至は油中水乳化剤形である。
【0031】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分に加えて、油中水乳化剤形を形成するための乳化剤を含有することが好ましく、該乳化剤としては、有機変性粘土鉱物やジグリセリンモノオレ−トやトリグリセリンジイソステアレ−ト等が好適に例示できる。ジグリセリンモノオレ−トを乳化剤として用いる場合に於いては、必須成分としての量に、乳化のための量を積算し、安定化作用のための役割と、乳化のための役割を兼ねさせることもできる。
【0032】
前記有機変性粘土鉱物に於いて、有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミン基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
【0033】
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物が例示される。クオタニウムとは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等は、粘土鉱物とともに安定な油中水乳化構造を形成することができるので好ましい。
【0034】
一方、4級アミノ基を有する化合物で変性される粘土鉱物(未変性粘土鉱物)としては、従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物であれば特段の限定無く使用することができる。従来の皮膚外用剤に含有される粘土鉱物としては、スメクタイト系のヘクトライト、ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリ−ン粘土鉱物(海泥);デザ−トロ−ズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。これらのうち、油中水乳化構造を安定化させることができるベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト又はカオリナイトが好ましく例示される。
【0035】
本発明の皮膚外用剤に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。前記未変性粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、乳化系において、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
【0036】
本発明における変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている変性粘土鉱物には、化粧料などの皮膚外用剤などとして用いられているものもある。市販されている変性粘土鉱物としては、例えば、エレメンティス社より「ベントン38V」の名称で販売されている、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどが好ましく例示される。
【0037】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分は0.5〜10質量%好ましく含有され、より好ましくは1〜5質量%含有される。かかる成分は、前記の含有量の範囲において、乳化剤として、高内相の油中水乳化剤形を形成すべく働く。
【0038】
ジグリセリンモノオレ−ト及び/又はトリグリセリンジイソステアレ−トを乳化剤として含有する場合には、かかる乳化剤の質量の0.5〜2倍のマルチト−ルやソルビト−ルの様な多価アルコ−ルをともに含有させることが好ましい。前記ジグリセリンモノオレ−トの化粧料用の原料としては、「ニッコ−ルDGMO−C」(日本サ−ファクタント株式会社製)が好ましく例示できるし、トリグリセリンジイソステアレ−トの化粧料用の原料としては、「エメレスト2452」(エメリ−社製)などが好ましく例示できる。かかる成分の好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対して、1〜10質量%であり、より好ましくは2〜7質量%である。これはこの量範囲を逸脱すると乳化できない場合や安定性が損なわれる場合が存するためである。
【0039】
本発明の皮膚外用剤は、油中水乳化剤形に形態を取るため、油中水乳化剤形の使用感、仕上がり感の欠点を補うために、シリコ−ン、特に好ましくは、シクロメチコン及び/又は粘度1mPa・s以下のジメチコンを含有することが好ましく、該シリコ−ンの含有量としては、化粧料全量に対しては、10〜50質量%含有することが好ましく、より好ましくは、20〜40質量%であり、シクロメチコン及び粘度1mPa・s以下のジメチコンの含有量の和が油相全量に対して、50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であることが好ましい。
【0040】
又、本発明の皮膚外用剤では、乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、前記有機変性粘土鉱物の乳化作用を補助する意味で、POE変性メチルポリシロキサン、POP変性メチルポリシロキサン、POP・POE変性メチルポリシロキサン等のポリエ−テル変性メチルポリシロキサンを含有することが好適に例示できる。かかるポリエ−テル変性メチルポリシロキサンの好ましい含有量は、0.5〜5質量%、1〜3質量%がより好ましい。
【0041】
乳化剤として前記有機変性粘土鉱物を用いる場合、更に、上記の成分以外の好ましい任意成分としては、乳化状態を安定化できる、多価アルコ−ルが例示できる。特に、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコ−ルが好適に例示できる。かかる成分は唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。更に加えて、1,2−ペンタンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル及び1,2−オクタンジオ−ルから選択される1種乃至は2種以上を1〜7質量%含有させることも、防腐力を向上させる見地から好ましい。
【0042】
これらに加え、特に好ましい成分としては、前記有機変性粘土鉱物の乳化性を補助する意味で、ポリエ−テル変性シリコ−ンが例示できる。ポリエ−テル変性シリコ−ンとしては、ポリエチレングリコ−ル変性メチルシロキサンやポリプロピレングリコ−ル変性メチルシロキサン、ポリエチレングリコ−ル・ポリプロピレングリコ−ル変性メチルシロキサンなどが好ましく例示できる。特に好ましいものは、ポリエチレングリコ−ル(10)変性メチルシロキサンであり、これには、例えば、信越化学株式会社製の「シリコ−ンKF6017」等が市販品として存する。この様なポリエ−テル変性シリコ−ンの好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、0.5〜30質量%であり、より好ましくは1〜25質量%である。
【0043】
上記以外にも、本発明の皮膚外用剤に於いては、本発明の効果を損ねない限度に於いて、通常使用される任意成分を含有することもできる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコ−ル等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤は、前述の成分を常法に従って処理することにより本発明の皮膚外用剤を製造することができる。
【0045】
以下に、実施例を挙げて本発明に付いて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定を受けないことは、言うまでもない。
【実施例1】
【0046】
<製造例1: 本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物の製造方法>
本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物を以下の手順に従い製造した。各植物の抽出原料としては、マメ科カンゾウ属カンゾウ、イネ科ササ属クマザサ、ユキノシタ科アジサイ属アマチャ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)、カラバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネの植物体の粗砕物100(g)を含水エタノ−ル又は1,3−ブチレングリコ−ル溶媒1000(L)に投入し、穏やかに攪拌しながら3時間、70℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下にて濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥し、固形分の植物抽出物を得た。また、植物抽出物の作製にあたっては、前記植物の粗砕物のほか、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツの葉又は果実、バラ科モモ属モモの葉、イネ科イネ属イネの花穂(米)部の粗砕物が好ましい。
【0047】
<バラ科モモ属モモより得られる植物抽出物の製造方法>
モモの葉1(kg)の粗砕物に10(L)の1,3−ブチレングリコ−ルを加え2時間リフラックスさせ、濾過し濾液を取り、これを水3(L)に一気に加え析出した沈殿を濾取し、40℃で減圧下にて濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥し、植物抽出物を得た。
【0048】
<イネ科ササ属クマザサより得られる植物抽出物の製造方法>
クマザサの葉の乾燥物を細切りしたもの50(g)に対し50質量%エタノ−ル500(mL)を加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣について更に同様の抽出処理を行った。得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、乾燥してクマザサの抽出物2(g)を得た。
【0049】
<カラバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツより得られる植物抽出物の製造方法>
スタ−フル−ツの果実の粗粉砕物50(g)を80%エタノ−ル溶媒500(mL)に投入し、80℃で3時間、穏やかに攪拌しながら抽出を行った。その後濾過し、濾液を40℃で減圧下にて濃縮し、さらに減圧乾燥機で乾燥し、これに1,3−ブチレングリコ−ルを添加しスタ−フル−ツの果実抽出物を得た。
【0050】
本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物は、前記方法に従い製造することも出来るし、市販の植物抽出物として丸善製薬株式会社等より購入し使用することも出来る。本発明の実施例に記載の試験には、前記方法に従い製造された植物抽出物を用いた。
【実施例2】
【0051】
<試験例1: POMC mRNA発現抑制作用評価>
以下の手順に従い、本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物のPOMC mRNA発現抑制作用を評価した。尚、本発明のPOMC mRNA発現抑制作用評価に用いた植物抽出物は、実施例1に記載の方法により製造された植物抽出物を用いた。
1) 正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を48well plateに3×10(cells/well)播種し、播種と同時にジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業株式会社)に懸濁した合成メラニン(SIGMA社)を終濃度1.5×10-3 (%)となるよう添加した。
2) 被験物質(植物抽出液の固形分)をDMSO(和光純薬工業株式会社)により溶解し、10(w/v%)エキス液を作製した。それらを1/1000量ずつ添加した培地(Humedia-KG2、倉敷紡績株式会社)を作製し、播種6時間後にその培地と交換し、さらに培養を継続した(各被験物質の最終固形分濃度は1×10−2(w/v%))。
3) 播種翌日、Rneasy Mini Kit(QIAGEN社、配列非公開)を用い、mRNAを安定化したライセ−トを調製した。
4) 3)により調製したライセ−トをテンプレ−トとし、QuantiFast SYBR Green PCR Kit(QIAGEN社、配列非公開)を用いたリアルタイム(RT-PCR)により、各被験物質添加時のPOMCmRNA発現量、および内在性コントロ−ルとしてTBP(TATA Binding Protein (TATA box結合因子であり、ハウスキ−ピング遺伝子の一種、配列非公開))の mRNA発現量を測定し、POMC遺伝子発現量は、TBPとの比率で算出した。
5) コントロ−ルとして評価物質を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロ−ルに対する評価物質を含むサンプルのPOMC発現量の百分率を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果より、マメ科カンゾウ属カンゾウ、イネ科ササ属クマザサ、ユキノシタ科アジサイ属アマチャ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)、カラバミ科ゴレンシ属スターフル−ツ、バラ科モモ属モモ、又は、イネ科イネ属イネより得られる得られる植物抽出物は、顕著なPOMC mRNA発現産生抑制作用を示した。また、本評価系は、皮膚のメラノサイトにおけるメラニン産生亢進、過剰移輸及び排出遅延により細胞機能が低下したケラチノサイトのモデル評価系であると考えられるため、本評価系において効果を示した前記植物抽出物は、特に、採取されたケラチノサイトにおいて、メラニン染色をした場合、平均に比してメラニンの量が多く、角層細胞の観察において、平均に比して有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人を対象とした場合に優れた効果が期待出来る。
【実施例3】
【0054】
<試験例2: 細胞賦活作用評価>
以下の手順に従い、本発明のPOMC産生抑制作用を有する植物抽出物に関し、細胞賦活作用を評価した。尚、本発明のPOMC mRNA発現抑制作用評価に用いた植物抽出物は、実施例1に記載の方法により製造された植物抽出物を用いた。
1) 正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社)を48well plateに3×10(cells/well)播種し、播種と同時にジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業株式会社)に懸濁した合成メラニン(SIGMA社)を終濃度1.5×10-3 (%)となるよう添加した。
2) 被験物質(植物抽出液の固形分)をDMSO(和光純薬工業株式会社)により溶解し、10(w/v%)エキス液を作製した。それらを1/1000量ずつ添加した培地(Humedia-KG2、倉敷紡績株式会社)を作製し、播種6時間後にその培地と交換し、さらに培養を継続した(各被験物質の最終固形分濃度は1×10−2(w/v%))。
3) 播種翌日、培地を除去しPBSで1回プレ−トを洗浄した後、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社)溶液を添加した培地に交換し、37℃、1時間呈色反応を行った。
4) 反応後、450(nm)の吸光度をマイクロプレ−トリ−ダ−Benchmark Plus(Bio-Rad Laboratories)を用いて測定した。コントロ−ルとして被験物質を含まないサンプルを前記同様に調製し、コントロ−ルに対する被験物質を含むサンプルの吸光度の百分率を求め細胞賦活作用を評価した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果より、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタ科アジサイ属アマチャ、カラバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、又は、イネ科イネ属イネより得られる植物抽出物には、顕著な細胞数の増加(細胞分化増殖作用)が認められた。また、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)より得られる植物抽出物には、細胞数の変化は認められず、細胞賦活作用が存しないことが確認された。一方、イネ科ササ属クマザサより得られる植物抽出物には、細胞数の減少が認められた。表2の結果より、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタ科アジサイ属アマチャ、カラバミ科ゴレンシ属スターフル−ツ、バラ科モモ属モモ、又は、イネ科イネ属イネより得られる植物抽出物は、POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を併せ持ち、POMC産生異常が関与する疾患、取り分け、皮膚における色素沈着、シミの予防又は改善に有用である。また、本評価系は、皮膚のメラノサイトイにおけるメラニン産生亢進、過剰移輸及び排出遅延により細胞機能が低下したケラチノサイトのモデル評価系であると考えられるため、本評価系において効果を示した前記植物抽出物は、特に、採取されたケラチノサイトにおいて、メラニン染色をした場合、平均に比してメラニンの量が多く、角層細胞の観察において、平均に比して有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人を対象とした場合に優れた効果が期待出来る。
【実施例4】
【0057】
<製造例2: 本発明の皮膚外用剤の製造例1>
表3及び表4に記載の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料(ロ−ション)を作製した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌可溶化し、攪拌冷却して本発明の皮膚外用剤(化粧料1〜7)を作製した。また、表3中、「本発明のPOMC産生抑制剤」を「アルブチン」に置換した比較例1、「本発明のPOMC産生抑制剤」を「水」に置換した比較例2を作製した。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【実施例5】
【0060】
<試験例3: 本発明のPOMC産生抑制剤を含有する皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価1>
前記実施例4に従い製造された化粧料1〜7、比較例1及び2の化粧料を用いて、色素沈着抑制効果を調べた。メラニン量が平均より多いパネラ−の選択にあたっては、皮膚から粘着テ−プストリッピングにより採取した角層細胞の標本を、硝酸銀水溶液を用いたメラニン染色を行うことにより可視化し、これを顕微鏡下観察することにより判定した。また、判定にあたっては、平均的な存在状況を中心にスコア化して判別した。さらに、前記パネラ−の内、角層標本を用い有核細胞の出現率が平均よりも高い、乃至は、重層剥離の度合いが平均よりも多い人を観察により選択した。前記の特性を有する自由意思で参加したパネラ−の両上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を上下2段に分け、合計9ヶ所設け、最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を1日1回、3日連続して3回照射した。照射終了後1日より、1日1回28日連続してサンプル50μLを塗布した。1部位は無処置部位とした。塗布終了24時間後に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、無処置部位のL値に対するΔL*値を算出した。L*値は、色素沈着の程度が強いほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。結果を表5に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜7は、優れた色素沈着抑制効果を示すことが分かる。また、化粧料1〜7の内、POMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分を含有する皮膚外用剤は、POMC産生抑制作用のみを有する成分に比較し、その効果は高かった。本発明の化粧料1〜7の前記効果は、化粧料に配合されたPOMC産生抑制作剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制作剤が有する作用によるものである。
【0061】
【表5】

【実施例6】
【0062】
<製造例3: 本発明の皮膚外用剤の製造2>
実施例4に記載の化粧料5及び化粧料6の処方成分中、「本発明のPOMC産生抑制剤」の濃度を表6に記載の濃度に変更した化粧料8〜11を作製した。また、処方成分中の「本発明のPOMC産生抑制剤」の濃度増減による質量%変化は、処方成分中の「水」の質量%により調整した。
【0063】
【表6】

【実施例7】
【0064】
<試験例4: 本発明のPOMC産生抑制剤を含有する皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価2>
前記の実施例5に記載の方法に従い化粧料8〜11に関し色素沈着抑制効果を評価した。結果を表7に示す。化粧料8〜11は、何れも色素沈着抑制効果を示した。本発明の化粧料8〜11の前記効果は、化粧料に配合されたPOMC産生抑制作剤、又は、細胞賦活作用を有するPOMC産生抑制作剤が有する作用によるものである。
【0065】
【表7】

【実施例8】
【0066】
<製造例4: 本発明の皮膚外用剤の製造3>
表8及び表9に記載の処方に従い、本発明の油中水乳化製剤(クリ−ム)を作製した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加温し、イの中にニを加えて溶解させ、混練してゲルを形成させ、これにロを加え希釈し、これに攪拌下徐々にハを加えて乳化し、攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤である、油中水乳化剤形の化粧料12〜18を作製した。さらに、「本発明のPOMC産生抑制剤」を水に置換した比較例3、「本発明のアスコルビン酸誘導体又はメラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物」を水に置換した比較例4、「本発明のPOMC産生抑制剤」及び「本発明のアスコルビン酸誘導体又はメラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物」を共に「水」に置換した比較例5を作製した。
【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【実施例9】
【0069】
<試験例5: 本発明のPOMC産生抑制剤を含有する皮膚外用剤の色素沈着抑制効果評価3>
前記実施例8に記載の方法に従い製造した化粧料12〜18、比較例3〜5に関し、前記実施例5に記載の方法に従い色素沈着抑制作用評価した。結果を表10に示す。
【0070】
【表10】

【実施例10】
【0071】
表8及び表9に記載した化粧料17の処方成分中、「ベントン38V」を「シリコ−ンKF6017」に置換した化粧料19、「1,2−ペンタンジオ−ル」を「ポリエチレングリコ−ル400」に置換した化粧料20を作製し、実施例5に記載の方法に従い、紫外線照射による色素沈着予防効果を検討したところ、化粧料19は、△L*値は、0.35を示し、化粧料20は、△L*値は、0.38を示し、何れも化粧料においても紫外線照射後の色素沈着に対する予防効果がほとんど認められなかった。
【実施例11】
【0072】
表11及び表12に示す処方に従って、健康食品1〜7を作製した。即ち、処方成分を10重量部の水と共に転動相造粒(不二パウダル株式会社製「ニュ−マルメライザ−」)し、打錠して錠剤状の健康食品を得た。尚、表中の数値の単位は、重量部を表す。
【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、色素沈着の予防又は改善に好適な化粧料等に応用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物より得られる植物抽出物から選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする、プロオピオメラノコルチン(Proopiomelanocortin: POMC)産生抑制剤。
【請求項2】
前記マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物が、マメ科カンゾウ属カンゾウ、イネ科ササ属クマザサ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネ、サルノコシカケ科マツホド菌核(ブクリョウ)であることを特徴とする、請求項1に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項3】
前記のPOMC産生抑制作用が、POMC遺伝子発現抑制作用であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項4】
前記のPOMC遺伝子発現抑制作用が、POMC mRNA発現抑制作用であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項5】
前記のPOMC産生抑制作用が、POMC産生が亢進した角化細胞(ケラチノサイト)のPOMC産生抑制作用であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項6】
前記のPOMC産生抑制作用に加え、細胞賦活作用を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項7】
前記のPOMC産生抑制作用及び細胞賦活作用を有する成分が、前記マメ科カンゾウ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属する植物より得られる植物抽出物であることを特徴とする、請求項6に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項8】
前記のマメ科カンゾウ属、ユキノシタアジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属、サルノコシカケ科マツホド菌核に属する植物が、マメ科カンゾウ属カンゾウ、ユキノシタアジサイ属アマチャ、カタバミ科ゴレンシ属スタ−フル−ツ、バラ科モモ属モモ、イネ科イネ属イネであることを特徴とする、請求項6又は7に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項9】
前記細胞賦活作用が、表皮細胞の分化増殖促進作用によるものであることを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項10】
前記表皮細胞の分化増殖促進作用が、細胞分化増殖能が低下したケラチノサイトの細胞分化増殖促進作用によるものであることを特徴とする、請求項6〜9の何れか一項に記載のPOMC産生抑制剤。
【請求項11】
請求項1〜10に記載のPOMC産生抑制剤を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項12】
請求項1〜10に記載のPOMC産生抑制剤を、組成物全量に対し0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
POMC産生異常による疾患症状の予防又は改善用であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記POMC産生異常による疾患症状が、色素沈着亢進、摂食障害、かゆみであることを特徴とする、請求項11〜13に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項11〜14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項11〜15に記載の組成物。
【請求項17】
更に、アスコルビン酸乃至はその誘導体、及び/又は、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする、請求項11〜16の何れか一項に記載の組成物。
【請求項18】
アスコルビン酸乃至はその誘導体、及び、メラニン産生抑制作用を有するフェノ−ル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
採取された角層細胞において、メラニン染色をした場合、平均に比較しメラニン量が多く、角層細胞観察において、平均に比較し有核細胞数及び/又は重層剥離が多い人に使用されるべきであるものであることを特徴とする、請求項11〜18の何れか一項に記載の組成物。
【請求項20】
更に、好ましい製剤上の任意成分を含有することを特徴とする、請求項11〜19の何れか一項に記載の組成物。
【請求項21】
マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属より得られる植物抽出物を含有する色素沈着予防又は改善用の化粧料の製造方法であって、マメ科カンゾウ属、イネ科ササ属、ユキノシタ科アジサイ属、カタバミ科ゴレンシ属、バラ科モモ属、イネ科イネ属に属する植物より得られる植物の植物体を極性溶媒で抽出し、所望により、溶媒除去、分画精製を行い、植物抽出物を得た後、メラニン添加によりPOMC mRNA遺伝子発現亢進及び細胞機能低下させたケラチノサイトを用い、これのPOMC mRNA遺伝子発現に対する影響を調べ、POMC mRNA遺伝子発現抑制作用が存在することを確認し、しかる後に、前記のケラチノサイトを用い、細胞賦活作用を計測し、細胞賦活作用が存在することを確認した上で、当該植物精油を化粧料に配合することを特徴とする、色素沈着予防又は改善用の化粧料の製造方法。

【公開番号】特開2011−219402(P2011−219402A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89108(P2010−89108)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】