RFIDタグ距離測定システムおよびリーダ
【課題】 マルチパス環境下において、RFIDタグとの距離を精度よく測定できる、RFIDタグ距離測定システムを提供する。
【解決手段】 RFIDタグ距離測定システムは、タグに対して所定の搬送信号を出力し、タグから搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含む。リーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をタグに送信する送信部と、タグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、タグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得る2対の送受信アンテナを含む。
【解決手段】 RFIDタグ距離測定システムは、タグに対して所定の搬送信号を出力し、タグから搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含む。リーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をタグに送信する送信部と、タグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、タグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得る2対の送受信アンテナを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リーダとRFID(Radio Frequency IDentification)タグとの距離を測定可能なRFIDタグ距離測定システムおよびリーダに関し、特に、リーダとRFIDタグとの距離を確実に測定可能なRFIDタグ距離測定システムおよびリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、RFIDタグからの距離を測定可能なリーダが、たとえば、EP1239634号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1によれば、リーダからの搬送信号に対するRFIDタグからの反射波の位相が、両者間の距離によって変化することを利用し、反射波を搬送信号と同位相および直交する位相を有するI信号とQ信号に分離して、RFIDタグからの反射波の大きさと位相を求め、その位相からRFIDタグからの距離を求めるという点を開示している。
【特許文献1】EP1239634号公報(第7欄および図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のRFIDタグからの距離を測定可能なリーダは、上記のように構成されていた。リーダがRFIDタグからの直接反射波のみを受ける場合は、特許文献1に記載の方法で、リーダとRFIDタグとの間の距離を測定可能である。しかしながら、実際には、RFIDタグからの反射波としては、直接波だけに限らず、壁や、天井等によって反射された経路を通って到達する波もある。すなわち、RFIDタグからの反射波は、多くの経路を取る場合がある(この環境をマルチパス環境という)。このようなマルチパス環境においては、RFIDタグとの距離を求めるためにRFIDタグに、複数の異なる周波数の信号を送信しても、RFIDタグからの反射信号を受けられない場合が多い。しかしながら、従来は、このような点についての考慮はなされていなかった。
【0004】
この発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、マルチパス環境下において、RFIDタグとの距離を精度よく測定できる、RFIDタグ距離測定システムおよびリーダリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るRFIDタグ距離測定システムは、RFIDタグと、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグから搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含み、RFIDタグとリーダとの距離を推定する。リーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、RFIDタグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、RFIDタグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む。
【0006】
RFIDタグとリーダとの距離を推定するときに、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を用いて、強い反射信号を選択的に取得できる。
【0007】
その結果、マルチパス環境下において、フィールドホールを減らすことができるため、RFIDタグとの距離を確実に測定できる、RFIDタグ距離測定システムを提供できる。
【0008】
好ましくは、搬送信号の相互に異なる複数の周波数は相互に等間隔である。
【0009】
さらに好ましくは、送信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の送信アンテナと、受信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の受信アンテナとを含み、ダイバーシティ手段は、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナの中から、送信および受信を行う1組の送信アンテナおよび受信アンテナを選択する、アンテナ選択手段を含む。
【0010】
アンテナ選択手段は、選択された1組の送信アンテナおよび受信アンテナによって複数の周波数の信号の一部について受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他の組のアンテナに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよいし、アンテナ選択手段は、1つのアンテナによって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のアンテナに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよい。
【0011】
この発明の一つの実施の形態においては、ダイバーシティ手段は、スキャンアンテナである。
【0012】
好ましくは、スキャンアンテナを用いて送信された相互に異なる複数の周波数の信号について、受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御するスキャンアンテナ制御手段を含む。
【0013】
スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよいし、スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の信号の一部について受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよい。
【0014】
この発明の他の実施の形態においては、ダイバーシティ手段は複数の異なる偏波を出力する偏波出力手段を含む。
【0015】
好ましくは、偏波出力手段は、送信部から送信された相互に異なる複数の周波数の信号について、受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御する偏波出力制御手段を含む。
【0016】
さらに好ましくは、偏波出力制御手段は、送信部によって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のパターンの偏波に切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信する。
【0017】
この発明の他の局面においては、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグから所定の搬送信号の反射信号を受信するリーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、RFIDタグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、RFIDタグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む。
【0018】
好ましくは、相互に異なる複数の信号の周波数は等間隔である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)第1実施の形態
(i)システムの構成
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明に係る、RFIDタグ距離測定システムに用いられるリーダライタの第1実施の形態の構成を示す図である。このリーダライタは、マルチパス環境下において、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグとの距離を推定する。
【0020】
マルチパス環境下において、RFIDタグからの反射信号を確実に受けるため、この実施の形態においては、リーダライタは、RFIDタグからの反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の信号を受けるためのダイバーシティ手段を有している。この実施の形態ではダイバーシティ手段として、複数のアンテナを有している。なお、ここでは、リーダライタを例にあげているが、書込み機能を有しない、リーダであってもよい。
【0021】
図1を参照して、リーダライタ10は、リーダライタ10全体を制御するとともに、送信データを作成し、通信を制御するコントロール部11と、コントロール部11に接続された送信処理部12と、送信処理部12に接続された送信部となる第1および第2送信アンテナ17,18と、RFIDタグからの反射信号を受信するための受信部となる第1および第2受信アンテナ21,22と、第1および第2受信アンテナ21,22で受信した信号に対して所定の処理を行う受信処理部19と、受信処理部19に接続された位相算出比較距離推定部(推定手段)25とを含む。送信処理部12は、コントロール部11の指示によって、搬送信号を発信するPLL(Phase Lock Loop)部13と、PLL部13に
接続され、コントロール部11で生成された送信データを変調する変調部14と、変調部14に接続され、変調信号を増幅する電力増幅部15とを含む。なお、電力増幅部15で増幅された送信データをRFIDタグに送信するためのアンテナを第1および第2送信アンテナ17,18のいずれで送信するかを切替える、送信アンテナ切替えスイッチ16が設けられている。同様に、第1および第2受信アンテナ21,22を切替える受信アンテナ切替えスイッチ20が設けられている。
【0022】
受信処理部19は、受信アンテナ21,22のいずれかからの受信信号を2つに分けて、それぞれ増幅する増幅部23a,23bと、増幅部23a,23bのそれぞれに接続され、増幅部23a,23bにおいて増幅された受信信号の周波数を変換して、より低周波の信号に変換する処理を行う周波数変換部24(後に説明する、ミキサ24a,24bと、90°位相シフト部24cとを含む)とを含む。
【0023】
位相算出距離推定部25は、周波数変換部24からの信号を受信する位相情報取得部26と、位相情報取得部26の取得した位相情報に基づいて、RFIDタグからの距離を算出する距離算出部27を含む。
【0024】
なお、第1送信アンテナ17で搬送波を搬送するときは、反射信号は第1受信アンテナ21で受信するようになっており、同様に、第2送信アンテナ18で送信するときは、第2受信アンテナ22で受信するようになっている。また、第1および第2の送信および受信アンテナの先端部の位置は、ダイバーシティ効果を得るためにそれぞれ異なっている。
【0025】
また、コントロール部11は、PLL部13と変調部14とともに、搬送信号として相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段を構成している。また、コントロール部11は、送信アンテナ17,18および受信アンテナ21,22を相互に切替えるためのアンテナ指定信号28をそれぞれのアンテナ切替えスイッチ16,20に送信するアンテナ選択手段として機能する。
【0026】
(ii)距離の測定方法
次に、リーダライタ10において、RFIDタグと当該リーダライタ10との距離を測定するための構成について図1を参照しながら説明する。
【0027】
送信処理部12において、PLL部13は、送信アンテナ17または18から送信される送信信号の搬送周波数を設定するものであり、PLL回路によって構成される。変調部14は、PLL部13および発振器によって生成された搬送信号に変調を加えて送信信号にデータを重畳させる処理を行う。本実施形態においては、変調部14は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調によって送信信号を生成する。なお、送信信号の変調方式としては、上記のASK変調に限定されるものではなく、FSK(Frequency Shift Keying)
変調、PSK(Phase Shift Keying)変調など、その他のデジタル変調方式を採用してもよい。電力増幅部15は、送信信号の増幅を行う。
【0028】
位相算出比較距離推定部25において、位相情報取得部26は、周波数変換部24によって周波数変換された受信信号の位相の変化量を検出し、これを位相情報として取得する。なお、受信信号の位相の変化量とは、該受信信号が所定の距離を伝播することによって生じる位相の変化量を示している。
【0029】
より詳しくは、PLL部13から出力される搬送信号をsin2πf1tとすると、周波数変
換部24はこの搬送信号sin2πf1tと増幅部23a,23bから入力された受信信号D(t)Asin(2πf1 t+φ)とを掛け合わせて求めた値(D(t)Acosφ)を位相情報取得部26に送出
する。位相情報取得部26は、周波数変換部24から送出された値に基づいて位相の変化量φを算出する。ここで、tは時間、D(t)は変調部14においてASK変調が行われた場合のベースバンド信号、Aは搬送信号自体の振幅、φは往復2rの距離を伝搬することによる位相の変化量をそれぞれ示している。
【0030】
距離算出部27は、位相情報取得部26によって取得された位相の変化量情報に基づいて、該当RFIDタグとリーダライタ10との距離を算出する。この距離の算出方法の詳細については後述する。
【0031】
コントロール部11は、PLL部13によって設定される搬送信号の周波数を制御するとともに、変調部14に対して、送信信号を変調すべきデータを入力する。
【0032】
次に距離測定方法の詳細について説明する。本実施形態においては、リーダライタ10が後に説明するように、RFIDタグに対してR/W要求信号(要求信号)を送信し、RFIDタグがこれに応じて応答信号(反射信号)を返信するようになっている。
【0033】
リーダライタ10は、常に特定の信号(RFIDタグへの電力供給を行うための信号)を送信している一方、RFIDタグに対して応答信号(以下、タグ応答信号とする)を送信することを要求する時に、タグ応答信号の返信を要求するR/W要求信号を送信する。すなわち、リーダライタ10における送信処理部12は、定常状態では定常状態を示すデータを送信するように変調部14を制御し、タグ応答信号を要求する際には、R/W要求信号を構成するデータを送信するように変調部14を制御する。RFIDタグは、常にリーダライタ10から送られてくる信号を監視し、R/W要求信号を受信したことを検知すると、それに応答する形でタグ応答信号を送信する。
【0034】
より詳しくは、リーダライタ10は、後に説明する、R/W要求信号およびCW(Continuous Wave、連続搬送波)からなる1フレームの信号を送信する。RFIDタグは、ーダライタ10からR/W要求信号およびCWを受け取ると、CWの周波数に応じた搬送周波数f1 からなるタグ応答信号をリーダライタ10へ送信する。たとえば、R/W要
求信号およびCW(連続搬送波)は搬送周波数f1によって送信され、また、これに応じてタグ応答信号は搬送周波数f1によって送信されている。
【0035】
タグ応答信号は、プリアンブル部とデータ部とを有するフレームによって構成されている。プリアンブル部は、タグ応答信号の始まりを示すデータを示しており、同一規格(例えばEPC)内であれば、全てのRFIDタグに共通の所定のデータとなっている。データ部は、プリアンブル部に引き続いて送信されるものであり、RFIDタグから送信される実質的な情報を示すデータを示している。このデータ部に含まれる情報としては、例えば各RFIDタグに固有のID情報などが挙げられるが、RFIDタグから送信すべき情報、例えばRFIDタグ内の記憶部に格納されている各種情報などを含んでいてもよい。
【0036】
そして、リーダライタ10は、R/W要求信号を2回送信するとともに、各R/W要求信号(より詳しくは、R/W要求信号に続くCW)の送信における搬送周波数を互いに異ならせている。すなわち、リーダライタ10におけるコントロール部11は、1回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数f1で搬送信号を出力するようにPLL部13を制御し、2回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数f1とは異なる第2の周波数f2で搬送信号を出力するようにPLL部13を制御する。
【0037】
すなわち、第1の周波数f1で送信されたR/W要求信号をRFIDタグが受信すると、同じく第1の周波数f1でタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ10では、位相情報取得部26が受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφ1を検出する。同様に、第2の周波数f2で送信されたR/W要求信号をRFIDタグ10が受信すると、同じく第2の周波数f2でタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ10では、位相情報取得部26が受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφ2を検出する。ここで述べる解析とは、タグ応答信号の位相の変化量を検出する処理のことである。
【0038】
なお、上記の例では、タグ応答信号の位相の変化量は、プリアンブル部を解析することによって検出するようになっているが、これに限定されるものではなく、データ部をも含めて位相の変化量を検出してもよいし、データ部において位相の変化量を検出してもよい。ただし、変調方式がPSKである場合には、内容が変化しうるデータ部に基づいて、距離に伴う位相の変化量を検出することは困難となるので、内容が固定であるプリアンブル部において位相の変化量を検出することが好ましい。
【0039】
以上のようにして、位相情報取得部26が位相の変化量φ1およびφ2を検出すると、この位相の変化量の情報が距離算出部27に伝送される。距離算出部27は、φ1およびφ2に基づいて、RFIDタグとリーダライタ10との距離を以下のように算出する。
【0040】
まず、送信アンテナ17,18のいずれかからRFIDタグまでの距離、および、受信アンテナ21,22のいずれかからRFIDタグまでの距離を等しいものと仮定し、これを距離rとする。第1の周波数f1および第2の周波数f2によって搬送される信号が往復2rの距離を伝搬することによって生じる位相の変化量φ1およびφ2は、次の式(1)で表される。
【0041】
【数1】
【0042】
上式において、cは光速を表している。上記の2つの式に基づいて、距離rは、次の式(2)で求められる。
【0043】
【数2】
【0044】
以上のようにして、位相の変化量φ1およびφ2に基づいて、送信アンテナ17または18からRFIDタグまでの距離rを求めることができる。なお、RFIDタグにおいて、R/W要求信号を受信してからタグ応答信号を送信する間に、位相のずれが生じることが予想されるが、この位相のずれは、第1の周波数f1および第2の周波数f2によって搬送される信号のどちらにおいても同じ量となる。よって、RFIDタグにおける信号の送受信時に生じる位相のずれは、上記の距離の算出に影響を与えることばない。
【0045】
なお、式(2)において、φ2が2π以上となっている場合には、距離rを的確に算出することができない。すなわち、測定可能な距離rの最大値rmaxは、Δφ=2πの時であり、次の式(3)で表される。
【0046】
【数3】
【0047】
ここで、例えば第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を5MHzとした場合、数3より最大距離rmaxは30mとなる。また、同様に、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を2MHzとした場合、式(3)より最大距離rmaxは75mとなる。UHF帯を利用したRFID通信システムにおいて、想定される最大通信距離は10m程度であるので、上記のような測定は実用上問題がないことがわかる。
【0048】
なお、上記の最大距離rmax以上の測定が必要となる場合であっても、例えば受信信号の受信強度の測定を併用することによって、距離rの測定を行うことが可能である。具体的には、Δφが2π以上となる可能性がある場合、距離rの候補r'は、r'=r+n・rmax(nは0以上の整数)となる。よって、受信信号の受信強度は、距離rが長くなる程小さくなることを利用することによって、上記のnの値を特定することが可能となる。
【0049】
なお、アクティブタイプのRFIDタグを用いる場合には、リーダライタ10側からR/W要求信号を送信せずに、RFIDタグ側から能動的に送られるタグ応答信号に基づいて、距離の測定を行うようになっていてもよい。
【0050】
次に受信処理部19の具体例について説明する。以上の距離測定においては、受信信号の位相の変化量を検出する処理が行われているが、この位相の変化量の検出を行うことを可能とする受信処理部19の詳細な構成について、図1を参照して説明する。この具体例では、受信処理部19は、受信信号をI信号とQ信号とに分離して位相算出比較距離推定部25に入力することによって、位相算出比較距離推定部25における位相の変化量の検出処理を可能とさせるものとなっている。同図に示すように、受信処理部19は、上記したように、増幅部としての2つの増幅部23a、23b、周波数変換部24としてのミキサ24a,24bおよび90°移相シフト部24cを備えている。
【0051】
受信アンテナ21,22のいずれかで受信された受信信号は、2つの経路に分岐され、一方は増幅部23aに入力され、他方は増幅部23bに入力される。増幅部23aは、入力された受信信号を増幅してミキサ24aに入力する。増幅部23bは、入力された受信信号を増幅してミキサ24bに入力する。
【0052】
ミキサ24aは、増幅部23aから入力された受信信号と、PLL部13から出力された搬送信号とを掛け合わせることによってI信号を出力し、このI信号を位相情報取得部26に入力する。ミキサ24bは、増幅部23bから入力された受信信号と、PLL部13から出力され、90°移相シフト部24cを介して位相が90°変化させられた搬送信号とを掛け合わせることによってQ信号を出力し、このQ信号を位相情報取得部26に入力する。
【0053】
以上の構成において行われる受信処理および距離rの算出処理の詳細について以下に説明する。往復2rの距離を伝搬してリーダライタ10において受信される信号は、搬送信号の周波数をf1とすると、次の式(4)で表される。
【0054】
【数4】
【0055】
上式において、tは時間、s1(t)は周波数f1の搬送信号によって伝送される信号の状態、D(t)は変調部14においてASK変調が行われた場合のベースバンド信号、Aは搬送信号自体の振幅、φ1は往復2rの距離を伝搬することによる位相の変化量をそれぞれ示している。この場合、ミキサ24aによって出力されるI信号の状態を示すI1(t)、および、ミキサ24bによって出力されるQ信号の状態を示すQ1(t)は、次の式(5)および(6)で表される。
【0056】
【数5】
【0057】
以上より、I信号およびQ信号に基づいて、周波数f1の搬送信号による信号の位相の変化量φ1は、次の式(7)で求められる。
【0058】
【数6】
【0059】
同様に、周波数f2の搬送信号による信号の位相の変化量φ2は、次の式(8)で求められる。
【0060】
【数7】
【0061】
以上のようにして、位相情報取得部26は、入力されたI信号およびQ信号に基づいて、位相の変化量φ1およびφ2を取得する。そして、距離算出部27は、距離rを次の式(9)によって算出する。
【0062】
【数8】
【0063】
なお、上記したRFIDタグとリーダライタ10との間の距離の推定方法は、以下の全ての実施の形態において共通である。
(iii)具体的なシステムの動作
次に、この実施の形態における、具体的な、リーダライタ10および図示のないRFIDタグの動作について説明する。上記では、f1およびf2の2つの周波数を用いて距離の算出を行ったが、ここでは、f1、f2だけでなく、f3を加えた3つの周波数を用いて両者間の測距を行う場合について説明する。なお、周波数f1〜f3は相互に異なる任意の周波数である。また、以下の図では、リーダライタ10をR/Wと、RFIDタグは、ICタグとして表している。
【0064】
図2は、リーダライタ10および図示のないRFIDタグの動作を模式的に示す図である。図2において、R/W→ICタグは、リーダライタ10からRFIDタグへの送信データを示し、矢印方向は時間の経過を示す。また、矢印の上段は、信号の内容を示し、下段のf1,f2等は、その送信周波数を示す。一方、ICタグ→R/Wは、RFIDタグからリーダライタ10への送信データを示す。
【0065】
図1および図2の(A)を参照して、リーダライタ10は、まず、第1送信アンテナ17を用いてRFIDタグに対して、周波数f1にて上記した読出し書込み要求信号(R/W要求信号)を出力し、無変調波CWを送信する。それに対して、RFIDタグから、周波数f1で無変調波が返送され、リーダライタ10はそれを受信する。次にリーダライタ10は、周波数f2で同様の送信を行う。しかしながら、今回は、RFIDタグからの応答はない。
【0066】
そこで、リーダライタ10は送信アンテナ切替えスイッチ16で送信アンテナを第2送信アンテナ18に切替えて、図2(B)に示すように、今度は第2送信アンテナ18を用いてRFIDタグに対して同様の送信を行う。今回は、3周波数全てについて応答が得られたものとする。したがって、リーダライタ10は、図2(C)に示すように、周波数変換部24でIQ復調信号を作成し、各周波数にて切り出し、位相算出比較距離推定部25へ送り、上記した式(9)を基に距離を求める。
【0067】
次に、この場合のコントロール部11の制御内容について説明する。図3(A)および(B)は、コントロール部11の制御内容を示すフローチャートである。図3(A)を参照して、リーダライタ10は、まず、第1送信アンテナ17を用いて、RFIDタグに対して、周波数f1にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信する(ステップS11、以下,ステップを省略する)。次に周波数f1の応答信号を受信できたか否かを判断し(S12)、受信できれば、位相算出距離推定部25で、周波数f1の基準信号(搬送信号)にてIQの直交信号を復調し、データを取り込む(S13)。そして、一定時間後、周波数f2に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f2にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f2の応答信号を受信できたか否かを判断する(S14およびS15)。S15で、周波数f2の応答信号を受信できれば、周波数f2の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S16)。そして、一定時間後、周波数f3に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f3にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f3の応答信号を受信できたか否かを判断する(S17およびS18)。S18で、周波数f3の応答信号を受信できれば、周波数f3の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S19)。このように図2(B)に示すように3周波数全ての信号に対して反射信号が得られたときは、位相算出距離推定部25は、図2(C)に示すように、各周波数f1〜f3のIQの直交信号から位相差を算出して、上記の式(9)を用いてRFIDタグとの距離を計算する(S20、S21)。
【0068】
図2(A)に示すように、S12,S15およびS18のいずれかで周波数f1、f2またはf3でのRFIDタグからの応答信号を受信できなかったときは、第2送信アンテナ18に切替えてS11に戻り、第2送信アンテナ18を用いて同様の処理を行う。
【0069】
以上のように、この実施の形態によれば、複数の送受信アンテナを用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0070】
次に、この場合のシミュレーション結果について説明する。図4および図5は、第1および第2の複数の送信および受信アンテナを用いた場合のマルチパス環境下におけるシミュレーション状況およびその結果を示す図である。図4に示すように、2つの送受信アンテナ(図中では、送信アンテナ17,受信アンテナ21のみを示す)とRFIDタグ50との間で送受信が行われる場合に、両者の間で、直接波(a1,b1で示す)による場合と、側面に存在する反射体(壁面)31によって反射された波(a2,b2で示す)による場合と、下面に存在する反射体(床面)32によって反射された波(a3,b3で示す)による場合の3波を用いてシミュレーションを行った。その結果を図5に示す。
【0071】
図5(A)は第1送受信アンテナ17、21を用いた場合のリーダライタ10とRFIDタグとの間の距離と推定誤差との関係を示す図であり、図5(B)は第2送受信アンテナ18,22を用いた場合のリーダライタ10とRFIDタグとの間の距離の真値および目標値と、推定誤差との関係を示す図である。図5(A)および図5(B)に示すように、同じ周波数を用いた場合でも特性の異なるデータが得られるが、いずれの場合においても真値に近い同様の推定値が得られていることがわかる。また、一部の反射信号が受信できなかったときに、他のアンテナに切替えても同様の結果が得られることがわかる。
【0072】
(2)第2実施の形態
次に、この発明の第2実施の形態について説明する。この実施の形態においては、リーダライタはダイバーシティ手段として、複数のアンテナではなく、スキャンアンテナを有している。
【0073】
図6はスキャンアンテナを説明するための図である。図6(A)はスキャンアンテナの概要を示す図である。図6(A)に示すように、スキャンアンテナは複数のアンテナ素子41a〜41cを有し、各アンテナ素子41a〜41cへ給電する信号の位相差をスキャン制御部42で移相器43制御することにより、アンテナの指向性を変えることができる。
【0074】
次にスキャンアンテナの特性について説明する。図6(B)は通常のパッチアンテナの電界強度分布を示す図であり、図6(C)はスキャンアンテナの電界強度分布を示す図である。図において、フィールドホール(Field Hole、通信できないエリア)44を、斜線を引いて示す。パッチアンテナにおいては、マルチパスの影響により、RFIDタグと通信できないフィールドホール44が多数発生するが、スキャンアンテナにおいては、そのようなことは生じない。
【0075】
この実施の形態におけるリーダライタを図7に示す。図7を参照して、リーダライタ50は、リーダライタ本体51とダイバーシティ手段として作動するアンテナ部52とからなる。リーダライタ本体51は、一つのアンテナ部52を送信および受信に兼用するためにサーキュラ53を有する点、およびコントロール部11が、アンテナの指向性を変えるために、スキャン制御部にスキャン制御信号を送る点を除いて、その構成は基本的に図1に示した第1実施の形態と同様であるので、同じ部分に同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
アンテナ部52は、スキャン制御部42と、複数のアンテナ素子41a〜41cと、複数のアンテナ素子41a〜41cへの給電する信号の位相差をスキャン制御部42からの制御によって変更する移相器43と、サーキュラ53と移相器43との間に設けられ、送信時の電波を各アンテナ素子41に分配するとともに、各アンテナ素子41で受信した電波を合成する分配合成器45とを含む。
【0077】
ここでは、コントロール部11、スキャン制御部42および移相器43がスキャンアンテナ制御手段として機能する。
【0078】
次に、この場合の、リーダライタ50および図示のないRFIDタグの動作について説明する。ここでは、先の実施の形態と同様に、3周波数を用いて測距を行う場合について説明する。図8は、この実施の形態における、第1実施の形態における図2に対応する図である。
【0079】
図8を参照して、この実施の形態においても、基本的な動作は第1実施の形態の場合と同様であり、第1実施の形態の場合は、RFIDタグからの応答が得られなかった場合に、複数のアンテナを切替えていたのを、この実施の形態においては、スキャンアンテナの指向性を変化させている点が異なる。すなわち、図8(A)に示すように、たとえば、周波数f2でRFIDタグからの反射信号が得られなかったときは、アンテナ部52の指向性を変化させる。この状態で、図8(B)に示すように、全ての周波数に対して反射信号を受信できたときは、図8(C)に示すように、IQ復調信号を求め、位相差を算出して距離を求める。
【0080】
次に、この実施の形態におけるコントロール部11の制御内容について説明する。図9(A)および(B)は、第2実施の形態におけるコントロール部11の制御内容を示すフローチャートである。この実施の形態においても、基本的な動作は第1実施の形態の場合と同様であり、第1実施の形態の場合は、RFIDタグからの応答が得られなかった場合に、複数のアンテナを切替えていたのを、この実施の形態においては、スキャンアンテナの指向性を変化させて、フィールドホールを減らしている点が異なる。したがって、図9(A)のS31〜S41で示す内容は図3(A)と同じであり、図9(A)において、周波数f1,f2またはf3でのRFIDタグからの応答信号を受信できなかった場合に、図9(B)のS42に示すように、スキャンアンテナの指向性を変化させている点が異なる。したがって、その内容の詳細については、説明を省略する。
【0081】
以上のように、この実施の形態によれば、スキャンアンテナを用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0082】
次に、この場合のシミュレーション結果について説明する。図10および図11は、スキャンアンテナを用いた場合のマルチパス環境下におけるシミュレーション状況およびその結果を示す図であり、第1実施の形態における、図4および図5に対応する。
【0083】
図10を参照して、ここでは、スキャンアンテナであるから、アンテナ部52は一つしか表示されていない。ここでも、アンテナ部52とRFIDタグ間の直接波、床面32からの反射波および壁面31からの反射波の3波のモデルでシミュレーションする。
【0084】
図11(A)はアンテナ部52の指向性を変える前の状態を示し、図11(B)は、アンテナ部52の指向性を変更した後の状態を示す図である。図11(A)および(B)を参照して、図11(A)における推定距離の振幅よりも(B)における推定距離の振幅の方が、小さくなっており、精度の低下が改善されていることがわかる。
【0085】
(3)第3実施の形態
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、スキャンアンテナを用いて、アンテナがある指向性を有するときに、すべての周波数でのRFIDタグからの応答が得られるように制御した。これに対して、この実施の形態においては、一部の周波数において応答が得られなかったときに、アンテナの指向性を変化させる。ここでも3つの周波数を用いた場合について説明する。
【0086】
なお、この実施の形態におけるリーダライタの構成は、図7に示したものと同じである。
【0087】
図12は、この実施の形態における図8に対応する図である。図12(A)を参照して、この実施の形態においては、周波数f1とf3においてRFIDタグから反射信号を受信しているが、周波数f2については、RFIDタグからの応答が得られていない。
【0088】
そこで、この実施の形態では、(B)に示すように、この得られなかった周波数f2についてのみ、再度RFIDタグも再送信している。(C)に示すように、このようにして全ての周波数についての反射信号を得た後、これを復調してIQ復調信号を生成し位相差を算出する。
【0089】
図13および図14は、この場合のリーダライタの動作を示すフローチャートである。図13および図14を参照して、リーダライタ50は、まず、ある指向性を設定してアンテナ部52から、RFIDタグに対して、周波数f1にて読出し書込み要求信号を送信する(S51)。この実施の形態においては、最初に送信される周波数はf1に固定されている。次に、無変調波を送信する(S52)。その後、周波数f1の応答信号を受信できたか否かを判断し(S53)、受信できれば、位相算出比較距離推定部25で周波数f1の基準信号にてIQの直交信号を復調し、データを取り込む(S54)。そして、一定時間後、周波数f2に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f2にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f2の応答信号を受信できたか否かを判断する(S55およびS56)。なお、S53で周波数f1の応答信号を受信できなかったときも、S55へ進む。S56で、周波数f2の応答信号を受信できれば、周波数f2の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S57)。そして、一定時間後、周波数をf3に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f3にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f3の応答信号を受信できたか否かを判断する(S58およびS56)。なお、S59で周波数f2の応答信号を受信できなかったときも、S58へ進む。
【0090】
S59で、周波数f3の応答信号を受信できれば、周波数f3の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S60)。この段階で全ての周波数f1〜f3のIQの直交信号が得られたときは(S61でYES)、位相算出比較距離推定部25は、これらのデータから位相差を算出して距離を計算する(S62、S63)。なお、S59で周波数f3の信号を受信できなかったときもS61へ進む。
【0091】
S61で全周波数のIQデータが取得できていなかったときは、図14のS71へ進み、アンテナ部の指向性を変更する。そして、周波数f1〜f3のいずれでIQデータが取得できていないかを判断し(S72、S76、S80)、取得できていない周波数において(S72、S76、S80でNO)、その周波数でRFIDタグへ送信し(S73、77、S81)、その応答信号が受信できたか否かを判断し(S74,S78,S82)、受信できれば(S74,S78,S82でYES)、その周波数の基準信号でIQ直交復調し、データを取込む(S75,S79,S83)。その周波数で応答信号が受信できなかったときは(S74,S78,S82でNO)、他の周波数でのIQデータの取得に進む。
【0092】
そして、全ての周波数でIQ取得データを取得すると(S84でYES)、S62へ進み、各周波数のIQデータにより位相差を算出して上記と同様に距離を計算する(S63)。S84で、全ての周波数でIQデータを取得できたわけではないときは(S84でNO)、S71へ戻る。
【0093】
ここで、「アンテナの指向性」とは、電波の放射方向と放射強度との関係をいい、放射角と放射強度の関係をレーダチャートにした図で示されるものである。「アンテナの指向性を変化させる」とは、アンテナのメインローブ(放射が最大となる方向)を変化させることをいう。なお、このアンテナの指向性の変化の時間パターンを、「スキャンパターン」といい、アンテナ指向性の変化の時間パターンを切替えることを、「他のスキャンパターンに切替える」という。
【0094】
したがって、上記実施の形態における、スキャンアンテナの指向性を変化させるスキャンパターンは、任意に変更してもよい。
【0095】
すなわち、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信するようにしてもよいし、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信するようにしてもよい。
【0096】
(4)第4実施の形態
次にこの発明のさらに他の実施の形態について説明する。図15は、この発明のさらに他の実施の形態に係るリーダライタの構成を示すブロック図である。この実施の形態においては、リーダライタは、ダイバーシティ手段として、複数の異なる偏波を出力する偏波器を含む。すなわち、リーダライタは、1つのアンテナを有し、そのアンテナから、偏波器で生成された、異なる偏波パターンを有する信号をRFIDタグに出力する。
【0097】
偏波方法を変えることにより、RFIDタグによっては、反射波の影響が変化する。すなわち、複数の偏波を用いることにより、ある偏波方法でRFIDタグからの応答がない場合でも、その偏波方法を変えることによりRFIDタグの応答を取得することが可能となる。そして、それぞれの偏波方法で取得した周波数の応答を組み合わせることによりRFIDタグまでの距離を測定可能になる。
【0098】
図15は、この実施の形態におけるリーダライタ60を示すブロック図である。図15を参照して、この実施の形態におけるリーダライタ60は、基本的に図1に示したものと同様である。図1においては、複数のアンテナを用いたが、ここでは、アンテナ63のみで、送受信するために、サーキュラ62が設けられている点と、電力増幅部15とサーキュラ62との間に、コントロール部11からの偏波制御信号64に応じて、搬送波を偏波するための偏波器61が設けられている点が図1の場合と異なる。この偏波器61による偏波方法の変更は、コントロール部11からの指示によって行われる。したがって、コントロール部11と偏波器61は、偏波出力手段および偏波出力制御手段として機能する。
【0099】
次に、この実施の形態におけるリーダライタの動作について説明する。図16は、この実施の形態におけるリーダライタの動作を示す図2や図8に対応する図である。図16を参照して、この実施の形態においては、複数の周波数のうち、受信できなかったものがあったときに、偏波方法を変更する。具体的な処理内容は、図3に示したフローチャートにおいて、図3(B)のS22がアンテナの切替えではなく、偏波方法の変更となるだけであるので、図面およびその説明は省略する。
【0100】
以上のように、この実施の形態によれば、偏波器を用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0101】
なお、上記実施の形態においては、複数の周波数の具体的な周波数について特に限定しなかったが、マルチパス環境において距離測定時の精度を高めるには、相互に等しい間隔を有する複数の周波数の位相情報を用いるMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法のような高分解能アルゴリズムを用いるのが好ましい。
【0102】
したがって、上記した複数の周波数については、相互に等しい間隔を有する3つの周波数を用いるのが好ましい。
【0103】
また、複数の周波数としては、3つに限らず4つ以上の周波数を用いてもよい。また、相互に等しい間隔を有する5つ以上の周波数f1〜f5を用いれば、たとえば、f2、f4の周波数の信号の反射信号が得られなかったとしても、f1,f3,f5の等間隔の3つの応答信号を得ることができる。
【0104】
また、上記実施の形態においては、ダイバーシティ手段の一例として、スキャンアンテナを用いた場合に、RFIDタグからの反射信号を受けられなかった一部の周波数の信号についてのみ、再度指向性を変えて再送信する場合について説明したが、これに限らず、複数のアンテナを有する場合や、複数の偏波を用いる場合において、同様の処理を行ってもよい。
【0105】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明に係るRFIDタグ距離測定システムは、マルチパス環境下において、ダイバーシティ手段を用いてフィールドホールを減らしているため、RFIDタグとの距離を確実に測定できる。したがって、RFIDタグ距離測定システムとして、有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図3】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のシミュレーション環境を示す図である。
【図5】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のRFIDタグとの距離の推定結果を示す図である。
【図6】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの要部およびその場合の電界強度分布を示す図である。
【図7】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図8】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図9】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のシミュレーション環境を示す図である。
【図11】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のRFIDタグとの距離の推定結果を示す図である。
【図12】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図13】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の第4実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図16】この発明の第4実施の形態におけるリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
10,50,60 リーダライタ、11 コントロール部、12 PLL部、13 変調部、14 電力増幅部、15 送信アンテナ切替えスイッチ、16 第1送信アンテナ、17 第2送信アンテナ、18 受信アンテナ切替えスイッチ、19 第1受信アンテナ、20 第2受信アンテナ、21 BPF、22 90°位相シフト部、23,24 ミキサー、25 位相算出距離推定部、42 スキャン制御部、43 移相器、45 分配合成部、51 リーダライタ本体、52 アンテナ部、53,62 サーキュラ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、リーダとRFID(Radio Frequency IDentification)タグとの距離を測定可能なRFIDタグ距離測定システムおよびリーダに関し、特に、リーダとRFIDタグとの距離を確実に測定可能なRFIDタグ距離測定システムおよびリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、RFIDタグからの距離を測定可能なリーダが、たとえば、EP1239634号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1によれば、リーダからの搬送信号に対するRFIDタグからの反射波の位相が、両者間の距離によって変化することを利用し、反射波を搬送信号と同位相および直交する位相を有するI信号とQ信号に分離して、RFIDタグからの反射波の大きさと位相を求め、その位相からRFIDタグからの距離を求めるという点を開示している。
【特許文献1】EP1239634号公報(第7欄および図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のRFIDタグからの距離を測定可能なリーダは、上記のように構成されていた。リーダがRFIDタグからの直接反射波のみを受ける場合は、特許文献1に記載の方法で、リーダとRFIDタグとの間の距離を測定可能である。しかしながら、実際には、RFIDタグからの反射波としては、直接波だけに限らず、壁や、天井等によって反射された経路を通って到達する波もある。すなわち、RFIDタグからの反射波は、多くの経路を取る場合がある(この環境をマルチパス環境という)。このようなマルチパス環境においては、RFIDタグとの距離を求めるためにRFIDタグに、複数の異なる周波数の信号を送信しても、RFIDタグからの反射信号を受けられない場合が多い。しかしながら、従来は、このような点についての考慮はなされていなかった。
【0004】
この発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、マルチパス環境下において、RFIDタグとの距離を精度よく測定できる、RFIDタグ距離測定システムおよびリーダリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るRFIDタグ距離測定システムは、RFIDタグと、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグから搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含み、RFIDタグとリーダとの距離を推定する。リーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、RFIDタグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、RFIDタグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む。
【0006】
RFIDタグとリーダとの距離を推定するときに、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を用いて、強い反射信号を選択的に取得できる。
【0007】
その結果、マルチパス環境下において、フィールドホールを減らすことができるため、RFIDタグとの距離を確実に測定できる、RFIDタグ距離測定システムを提供できる。
【0008】
好ましくは、搬送信号の相互に異なる複数の周波数は相互に等間隔である。
【0009】
さらに好ましくは、送信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の送信アンテナと、受信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の受信アンテナとを含み、ダイバーシティ手段は、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナの中から、送信および受信を行う1組の送信アンテナおよび受信アンテナを選択する、アンテナ選択手段を含む。
【0010】
アンテナ選択手段は、選択された1組の送信アンテナおよび受信アンテナによって複数の周波数の信号の一部について受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他の組のアンテナに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよいし、アンテナ選択手段は、1つのアンテナによって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のアンテナに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよい。
【0011】
この発明の一つの実施の形態においては、ダイバーシティ手段は、スキャンアンテナである。
【0012】
好ましくは、スキャンアンテナを用いて送信された相互に異なる複数の周波数の信号について、受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御するスキャンアンテナ制御手段を含む。
【0013】
スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよいし、スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の信号の一部について受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信してもよい。
【0014】
この発明の他の実施の形態においては、ダイバーシティ手段は複数の異なる偏波を出力する偏波出力手段を含む。
【0015】
好ましくは、偏波出力手段は、送信部から送信された相互に異なる複数の周波数の信号について、受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御する偏波出力制御手段を含む。
【0016】
さらに好ましくは、偏波出力制御手段は、送信部によって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のパターンの偏波に切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信する。
【0017】
この発明の他の局面においては、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグから所定の搬送信号の反射信号を受信するリーダは、搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、RFIDタグからの相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、受信部が受信した反射信号と搬送信号との間の位相の変化量と搬送信号の周波数とに基づいて、RFIDタグとリーダとの距離を推定する推定手段とを含み、送信部および受信部は、受信部が反射信号を受信するとき、反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む。
【0018】
好ましくは、相互に異なる複数の信号の周波数は等間隔である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)第1実施の形態
(i)システムの構成
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明に係る、RFIDタグ距離測定システムに用いられるリーダライタの第1実施の形態の構成を示す図である。このリーダライタは、マルチパス環境下において、RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、RFIDタグとの距離を推定する。
【0020】
マルチパス環境下において、RFIDタグからの反射信号を確実に受けるため、この実施の形態においては、リーダライタは、RFIDタグからの反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の信号を受けるためのダイバーシティ手段を有している。この実施の形態ではダイバーシティ手段として、複数のアンテナを有している。なお、ここでは、リーダライタを例にあげているが、書込み機能を有しない、リーダであってもよい。
【0021】
図1を参照して、リーダライタ10は、リーダライタ10全体を制御するとともに、送信データを作成し、通信を制御するコントロール部11と、コントロール部11に接続された送信処理部12と、送信処理部12に接続された送信部となる第1および第2送信アンテナ17,18と、RFIDタグからの反射信号を受信するための受信部となる第1および第2受信アンテナ21,22と、第1および第2受信アンテナ21,22で受信した信号に対して所定の処理を行う受信処理部19と、受信処理部19に接続された位相算出比較距離推定部(推定手段)25とを含む。送信処理部12は、コントロール部11の指示によって、搬送信号を発信するPLL(Phase Lock Loop)部13と、PLL部13に
接続され、コントロール部11で生成された送信データを変調する変調部14と、変調部14に接続され、変調信号を増幅する電力増幅部15とを含む。なお、電力増幅部15で増幅された送信データをRFIDタグに送信するためのアンテナを第1および第2送信アンテナ17,18のいずれで送信するかを切替える、送信アンテナ切替えスイッチ16が設けられている。同様に、第1および第2受信アンテナ21,22を切替える受信アンテナ切替えスイッチ20が設けられている。
【0022】
受信処理部19は、受信アンテナ21,22のいずれかからの受信信号を2つに分けて、それぞれ増幅する増幅部23a,23bと、増幅部23a,23bのそれぞれに接続され、増幅部23a,23bにおいて増幅された受信信号の周波数を変換して、より低周波の信号に変換する処理を行う周波数変換部24(後に説明する、ミキサ24a,24bと、90°位相シフト部24cとを含む)とを含む。
【0023】
位相算出距離推定部25は、周波数変換部24からの信号を受信する位相情報取得部26と、位相情報取得部26の取得した位相情報に基づいて、RFIDタグからの距離を算出する距離算出部27を含む。
【0024】
なお、第1送信アンテナ17で搬送波を搬送するときは、反射信号は第1受信アンテナ21で受信するようになっており、同様に、第2送信アンテナ18で送信するときは、第2受信アンテナ22で受信するようになっている。また、第1および第2の送信および受信アンテナの先端部の位置は、ダイバーシティ効果を得るためにそれぞれ異なっている。
【0025】
また、コントロール部11は、PLL部13と変調部14とともに、搬送信号として相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段を構成している。また、コントロール部11は、送信アンテナ17,18および受信アンテナ21,22を相互に切替えるためのアンテナ指定信号28をそれぞれのアンテナ切替えスイッチ16,20に送信するアンテナ選択手段として機能する。
【0026】
(ii)距離の測定方法
次に、リーダライタ10において、RFIDタグと当該リーダライタ10との距離を測定するための構成について図1を参照しながら説明する。
【0027】
送信処理部12において、PLL部13は、送信アンテナ17または18から送信される送信信号の搬送周波数を設定するものであり、PLL回路によって構成される。変調部14は、PLL部13および発振器によって生成された搬送信号に変調を加えて送信信号にデータを重畳させる処理を行う。本実施形態においては、変調部14は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調によって送信信号を生成する。なお、送信信号の変調方式としては、上記のASK変調に限定されるものではなく、FSK(Frequency Shift Keying)
変調、PSK(Phase Shift Keying)変調など、その他のデジタル変調方式を採用してもよい。電力増幅部15は、送信信号の増幅を行う。
【0028】
位相算出比較距離推定部25において、位相情報取得部26は、周波数変換部24によって周波数変換された受信信号の位相の変化量を検出し、これを位相情報として取得する。なお、受信信号の位相の変化量とは、該受信信号が所定の距離を伝播することによって生じる位相の変化量を示している。
【0029】
より詳しくは、PLL部13から出力される搬送信号をsin2πf1tとすると、周波数変
換部24はこの搬送信号sin2πf1tと増幅部23a,23bから入力された受信信号D(t)Asin(2πf1 t+φ)とを掛け合わせて求めた値(D(t)Acosφ)を位相情報取得部26に送出
する。位相情報取得部26は、周波数変換部24から送出された値に基づいて位相の変化量φを算出する。ここで、tは時間、D(t)は変調部14においてASK変調が行われた場合のベースバンド信号、Aは搬送信号自体の振幅、φは往復2rの距離を伝搬することによる位相の変化量をそれぞれ示している。
【0030】
距離算出部27は、位相情報取得部26によって取得された位相の変化量情報に基づいて、該当RFIDタグとリーダライタ10との距離を算出する。この距離の算出方法の詳細については後述する。
【0031】
コントロール部11は、PLL部13によって設定される搬送信号の周波数を制御するとともに、変調部14に対して、送信信号を変調すべきデータを入力する。
【0032】
次に距離測定方法の詳細について説明する。本実施形態においては、リーダライタ10が後に説明するように、RFIDタグに対してR/W要求信号(要求信号)を送信し、RFIDタグがこれに応じて応答信号(反射信号)を返信するようになっている。
【0033】
リーダライタ10は、常に特定の信号(RFIDタグへの電力供給を行うための信号)を送信している一方、RFIDタグに対して応答信号(以下、タグ応答信号とする)を送信することを要求する時に、タグ応答信号の返信を要求するR/W要求信号を送信する。すなわち、リーダライタ10における送信処理部12は、定常状態では定常状態を示すデータを送信するように変調部14を制御し、タグ応答信号を要求する際には、R/W要求信号を構成するデータを送信するように変調部14を制御する。RFIDタグは、常にリーダライタ10から送られてくる信号を監視し、R/W要求信号を受信したことを検知すると、それに応答する形でタグ応答信号を送信する。
【0034】
より詳しくは、リーダライタ10は、後に説明する、R/W要求信号およびCW(Continuous Wave、連続搬送波)からなる1フレームの信号を送信する。RFIDタグは、ーダライタ10からR/W要求信号およびCWを受け取ると、CWの周波数に応じた搬送周波数f1 からなるタグ応答信号をリーダライタ10へ送信する。たとえば、R/W要
求信号およびCW(連続搬送波)は搬送周波数f1によって送信され、また、これに応じてタグ応答信号は搬送周波数f1によって送信されている。
【0035】
タグ応答信号は、プリアンブル部とデータ部とを有するフレームによって構成されている。プリアンブル部は、タグ応答信号の始まりを示すデータを示しており、同一規格(例えばEPC)内であれば、全てのRFIDタグに共通の所定のデータとなっている。データ部は、プリアンブル部に引き続いて送信されるものであり、RFIDタグから送信される実質的な情報を示すデータを示している。このデータ部に含まれる情報としては、例えば各RFIDタグに固有のID情報などが挙げられるが、RFIDタグから送信すべき情報、例えばRFIDタグ内の記憶部に格納されている各種情報などを含んでいてもよい。
【0036】
そして、リーダライタ10は、R/W要求信号を2回送信するとともに、各R/W要求信号(より詳しくは、R/W要求信号に続くCW)の送信における搬送周波数を互いに異ならせている。すなわち、リーダライタ10におけるコントロール部11は、1回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数f1で搬送信号を出力するようにPLL部13を制御し、2回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数f1とは異なる第2の周波数f2で搬送信号を出力するようにPLL部13を制御する。
【0037】
すなわち、第1の周波数f1で送信されたR/W要求信号をRFIDタグが受信すると、同じく第1の周波数f1でタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ10では、位相情報取得部26が受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφ1を検出する。同様に、第2の周波数f2で送信されたR/W要求信号をRFIDタグ10が受信すると、同じく第2の周波数f2でタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ10では、位相情報取得部26が受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφ2を検出する。ここで述べる解析とは、タグ応答信号の位相の変化量を検出する処理のことである。
【0038】
なお、上記の例では、タグ応答信号の位相の変化量は、プリアンブル部を解析することによって検出するようになっているが、これに限定されるものではなく、データ部をも含めて位相の変化量を検出してもよいし、データ部において位相の変化量を検出してもよい。ただし、変調方式がPSKである場合には、内容が変化しうるデータ部に基づいて、距離に伴う位相の変化量を検出することは困難となるので、内容が固定であるプリアンブル部において位相の変化量を検出することが好ましい。
【0039】
以上のようにして、位相情報取得部26が位相の変化量φ1およびφ2を検出すると、この位相の変化量の情報が距離算出部27に伝送される。距離算出部27は、φ1およびφ2に基づいて、RFIDタグとリーダライタ10との距離を以下のように算出する。
【0040】
まず、送信アンテナ17,18のいずれかからRFIDタグまでの距離、および、受信アンテナ21,22のいずれかからRFIDタグまでの距離を等しいものと仮定し、これを距離rとする。第1の周波数f1および第2の周波数f2によって搬送される信号が往復2rの距離を伝搬することによって生じる位相の変化量φ1およびφ2は、次の式(1)で表される。
【0041】
【数1】
【0042】
上式において、cは光速を表している。上記の2つの式に基づいて、距離rは、次の式(2)で求められる。
【0043】
【数2】
【0044】
以上のようにして、位相の変化量φ1およびφ2に基づいて、送信アンテナ17または18からRFIDタグまでの距離rを求めることができる。なお、RFIDタグにおいて、R/W要求信号を受信してからタグ応答信号を送信する間に、位相のずれが生じることが予想されるが、この位相のずれは、第1の周波数f1および第2の周波数f2によって搬送される信号のどちらにおいても同じ量となる。よって、RFIDタグにおける信号の送受信時に生じる位相のずれは、上記の距離の算出に影響を与えることばない。
【0045】
なお、式(2)において、φ2が2π以上となっている場合には、距離rを的確に算出することができない。すなわち、測定可能な距離rの最大値rmaxは、Δφ=2πの時であり、次の式(3)で表される。
【0046】
【数3】
【0047】
ここで、例えば第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を5MHzとした場合、数3より最大距離rmaxは30mとなる。また、同様に、第1の周波数f1と第2の周波数f2との差を2MHzとした場合、式(3)より最大距離rmaxは75mとなる。UHF帯を利用したRFID通信システムにおいて、想定される最大通信距離は10m程度であるので、上記のような測定は実用上問題がないことがわかる。
【0048】
なお、上記の最大距離rmax以上の測定が必要となる場合であっても、例えば受信信号の受信強度の測定を併用することによって、距離rの測定を行うことが可能である。具体的には、Δφが2π以上となる可能性がある場合、距離rの候補r'は、r'=r+n・rmax(nは0以上の整数)となる。よって、受信信号の受信強度は、距離rが長くなる程小さくなることを利用することによって、上記のnの値を特定することが可能となる。
【0049】
なお、アクティブタイプのRFIDタグを用いる場合には、リーダライタ10側からR/W要求信号を送信せずに、RFIDタグ側から能動的に送られるタグ応答信号に基づいて、距離の測定を行うようになっていてもよい。
【0050】
次に受信処理部19の具体例について説明する。以上の距離測定においては、受信信号の位相の変化量を検出する処理が行われているが、この位相の変化量の検出を行うことを可能とする受信処理部19の詳細な構成について、図1を参照して説明する。この具体例では、受信処理部19は、受信信号をI信号とQ信号とに分離して位相算出比較距離推定部25に入力することによって、位相算出比較距離推定部25における位相の変化量の検出処理を可能とさせるものとなっている。同図に示すように、受信処理部19は、上記したように、増幅部としての2つの増幅部23a、23b、周波数変換部24としてのミキサ24a,24bおよび90°移相シフト部24cを備えている。
【0051】
受信アンテナ21,22のいずれかで受信された受信信号は、2つの経路に分岐され、一方は増幅部23aに入力され、他方は増幅部23bに入力される。増幅部23aは、入力された受信信号を増幅してミキサ24aに入力する。増幅部23bは、入力された受信信号を増幅してミキサ24bに入力する。
【0052】
ミキサ24aは、増幅部23aから入力された受信信号と、PLL部13から出力された搬送信号とを掛け合わせることによってI信号を出力し、このI信号を位相情報取得部26に入力する。ミキサ24bは、増幅部23bから入力された受信信号と、PLL部13から出力され、90°移相シフト部24cを介して位相が90°変化させられた搬送信号とを掛け合わせることによってQ信号を出力し、このQ信号を位相情報取得部26に入力する。
【0053】
以上の構成において行われる受信処理および距離rの算出処理の詳細について以下に説明する。往復2rの距離を伝搬してリーダライタ10において受信される信号は、搬送信号の周波数をf1とすると、次の式(4)で表される。
【0054】
【数4】
【0055】
上式において、tは時間、s1(t)は周波数f1の搬送信号によって伝送される信号の状態、D(t)は変調部14においてASK変調が行われた場合のベースバンド信号、Aは搬送信号自体の振幅、φ1は往復2rの距離を伝搬することによる位相の変化量をそれぞれ示している。この場合、ミキサ24aによって出力されるI信号の状態を示すI1(t)、および、ミキサ24bによって出力されるQ信号の状態を示すQ1(t)は、次の式(5)および(6)で表される。
【0056】
【数5】
【0057】
以上より、I信号およびQ信号に基づいて、周波数f1の搬送信号による信号の位相の変化量φ1は、次の式(7)で求められる。
【0058】
【数6】
【0059】
同様に、周波数f2の搬送信号による信号の位相の変化量φ2は、次の式(8)で求められる。
【0060】
【数7】
【0061】
以上のようにして、位相情報取得部26は、入力されたI信号およびQ信号に基づいて、位相の変化量φ1およびφ2を取得する。そして、距離算出部27は、距離rを次の式(9)によって算出する。
【0062】
【数8】
【0063】
なお、上記したRFIDタグとリーダライタ10との間の距離の推定方法は、以下の全ての実施の形態において共通である。
(iii)具体的なシステムの動作
次に、この実施の形態における、具体的な、リーダライタ10および図示のないRFIDタグの動作について説明する。上記では、f1およびf2の2つの周波数を用いて距離の算出を行ったが、ここでは、f1、f2だけでなく、f3を加えた3つの周波数を用いて両者間の測距を行う場合について説明する。なお、周波数f1〜f3は相互に異なる任意の周波数である。また、以下の図では、リーダライタ10をR/Wと、RFIDタグは、ICタグとして表している。
【0064】
図2は、リーダライタ10および図示のないRFIDタグの動作を模式的に示す図である。図2において、R/W→ICタグは、リーダライタ10からRFIDタグへの送信データを示し、矢印方向は時間の経過を示す。また、矢印の上段は、信号の内容を示し、下段のf1,f2等は、その送信周波数を示す。一方、ICタグ→R/Wは、RFIDタグからリーダライタ10への送信データを示す。
【0065】
図1および図2の(A)を参照して、リーダライタ10は、まず、第1送信アンテナ17を用いてRFIDタグに対して、周波数f1にて上記した読出し書込み要求信号(R/W要求信号)を出力し、無変調波CWを送信する。それに対して、RFIDタグから、周波数f1で無変調波が返送され、リーダライタ10はそれを受信する。次にリーダライタ10は、周波数f2で同様の送信を行う。しかしながら、今回は、RFIDタグからの応答はない。
【0066】
そこで、リーダライタ10は送信アンテナ切替えスイッチ16で送信アンテナを第2送信アンテナ18に切替えて、図2(B)に示すように、今度は第2送信アンテナ18を用いてRFIDタグに対して同様の送信を行う。今回は、3周波数全てについて応答が得られたものとする。したがって、リーダライタ10は、図2(C)に示すように、周波数変換部24でIQ復調信号を作成し、各周波数にて切り出し、位相算出比較距離推定部25へ送り、上記した式(9)を基に距離を求める。
【0067】
次に、この場合のコントロール部11の制御内容について説明する。図3(A)および(B)は、コントロール部11の制御内容を示すフローチャートである。図3(A)を参照して、リーダライタ10は、まず、第1送信アンテナ17を用いて、RFIDタグに対して、周波数f1にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信する(ステップS11、以下,ステップを省略する)。次に周波数f1の応答信号を受信できたか否かを判断し(S12)、受信できれば、位相算出距離推定部25で、周波数f1の基準信号(搬送信号)にてIQの直交信号を復調し、データを取り込む(S13)。そして、一定時間後、周波数f2に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f2にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f2の応答信号を受信できたか否かを判断する(S14およびS15)。S15で、周波数f2の応答信号を受信できれば、周波数f2の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S16)。そして、一定時間後、周波数f3に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f3にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f3の応答信号を受信できたか否かを判断する(S17およびS18)。S18で、周波数f3の応答信号を受信できれば、周波数f3の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S19)。このように図2(B)に示すように3周波数全ての信号に対して反射信号が得られたときは、位相算出距離推定部25は、図2(C)に示すように、各周波数f1〜f3のIQの直交信号から位相差を算出して、上記の式(9)を用いてRFIDタグとの距離を計算する(S20、S21)。
【0068】
図2(A)に示すように、S12,S15およびS18のいずれかで周波数f1、f2またはf3でのRFIDタグからの応答信号を受信できなかったときは、第2送信アンテナ18に切替えてS11に戻り、第2送信アンテナ18を用いて同様の処理を行う。
【0069】
以上のように、この実施の形態によれば、複数の送受信アンテナを用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0070】
次に、この場合のシミュレーション結果について説明する。図4および図5は、第1および第2の複数の送信および受信アンテナを用いた場合のマルチパス環境下におけるシミュレーション状況およびその結果を示す図である。図4に示すように、2つの送受信アンテナ(図中では、送信アンテナ17,受信アンテナ21のみを示す)とRFIDタグ50との間で送受信が行われる場合に、両者の間で、直接波(a1,b1で示す)による場合と、側面に存在する反射体(壁面)31によって反射された波(a2,b2で示す)による場合と、下面に存在する反射体(床面)32によって反射された波(a3,b3で示す)による場合の3波を用いてシミュレーションを行った。その結果を図5に示す。
【0071】
図5(A)は第1送受信アンテナ17、21を用いた場合のリーダライタ10とRFIDタグとの間の距離と推定誤差との関係を示す図であり、図5(B)は第2送受信アンテナ18,22を用いた場合のリーダライタ10とRFIDタグとの間の距離の真値および目標値と、推定誤差との関係を示す図である。図5(A)および図5(B)に示すように、同じ周波数を用いた場合でも特性の異なるデータが得られるが、いずれの場合においても真値に近い同様の推定値が得られていることがわかる。また、一部の反射信号が受信できなかったときに、他のアンテナに切替えても同様の結果が得られることがわかる。
【0072】
(2)第2実施の形態
次に、この発明の第2実施の形態について説明する。この実施の形態においては、リーダライタはダイバーシティ手段として、複数のアンテナではなく、スキャンアンテナを有している。
【0073】
図6はスキャンアンテナを説明するための図である。図6(A)はスキャンアンテナの概要を示す図である。図6(A)に示すように、スキャンアンテナは複数のアンテナ素子41a〜41cを有し、各アンテナ素子41a〜41cへ給電する信号の位相差をスキャン制御部42で移相器43制御することにより、アンテナの指向性を変えることができる。
【0074】
次にスキャンアンテナの特性について説明する。図6(B)は通常のパッチアンテナの電界強度分布を示す図であり、図6(C)はスキャンアンテナの電界強度分布を示す図である。図において、フィールドホール(Field Hole、通信できないエリア)44を、斜線を引いて示す。パッチアンテナにおいては、マルチパスの影響により、RFIDタグと通信できないフィールドホール44が多数発生するが、スキャンアンテナにおいては、そのようなことは生じない。
【0075】
この実施の形態におけるリーダライタを図7に示す。図7を参照して、リーダライタ50は、リーダライタ本体51とダイバーシティ手段として作動するアンテナ部52とからなる。リーダライタ本体51は、一つのアンテナ部52を送信および受信に兼用するためにサーキュラ53を有する点、およびコントロール部11が、アンテナの指向性を変えるために、スキャン制御部にスキャン制御信号を送る点を除いて、その構成は基本的に図1に示した第1実施の形態と同様であるので、同じ部分に同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
アンテナ部52は、スキャン制御部42と、複数のアンテナ素子41a〜41cと、複数のアンテナ素子41a〜41cへの給電する信号の位相差をスキャン制御部42からの制御によって変更する移相器43と、サーキュラ53と移相器43との間に設けられ、送信時の電波を各アンテナ素子41に分配するとともに、各アンテナ素子41で受信した電波を合成する分配合成器45とを含む。
【0077】
ここでは、コントロール部11、スキャン制御部42および移相器43がスキャンアンテナ制御手段として機能する。
【0078】
次に、この場合の、リーダライタ50および図示のないRFIDタグの動作について説明する。ここでは、先の実施の形態と同様に、3周波数を用いて測距を行う場合について説明する。図8は、この実施の形態における、第1実施の形態における図2に対応する図である。
【0079】
図8を参照して、この実施の形態においても、基本的な動作は第1実施の形態の場合と同様であり、第1実施の形態の場合は、RFIDタグからの応答が得られなかった場合に、複数のアンテナを切替えていたのを、この実施の形態においては、スキャンアンテナの指向性を変化させている点が異なる。すなわち、図8(A)に示すように、たとえば、周波数f2でRFIDタグからの反射信号が得られなかったときは、アンテナ部52の指向性を変化させる。この状態で、図8(B)に示すように、全ての周波数に対して反射信号を受信できたときは、図8(C)に示すように、IQ復調信号を求め、位相差を算出して距離を求める。
【0080】
次に、この実施の形態におけるコントロール部11の制御内容について説明する。図9(A)および(B)は、第2実施の形態におけるコントロール部11の制御内容を示すフローチャートである。この実施の形態においても、基本的な動作は第1実施の形態の場合と同様であり、第1実施の形態の場合は、RFIDタグからの応答が得られなかった場合に、複数のアンテナを切替えていたのを、この実施の形態においては、スキャンアンテナの指向性を変化させて、フィールドホールを減らしている点が異なる。したがって、図9(A)のS31〜S41で示す内容は図3(A)と同じであり、図9(A)において、周波数f1,f2またはf3でのRFIDタグからの応答信号を受信できなかった場合に、図9(B)のS42に示すように、スキャンアンテナの指向性を変化させている点が異なる。したがって、その内容の詳細については、説明を省略する。
【0081】
以上のように、この実施の形態によれば、スキャンアンテナを用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0082】
次に、この場合のシミュレーション結果について説明する。図10および図11は、スキャンアンテナを用いた場合のマルチパス環境下におけるシミュレーション状況およびその結果を示す図であり、第1実施の形態における、図4および図5に対応する。
【0083】
図10を参照して、ここでは、スキャンアンテナであるから、アンテナ部52は一つしか表示されていない。ここでも、アンテナ部52とRFIDタグ間の直接波、床面32からの反射波および壁面31からの反射波の3波のモデルでシミュレーションする。
【0084】
図11(A)はアンテナ部52の指向性を変える前の状態を示し、図11(B)は、アンテナ部52の指向性を変更した後の状態を示す図である。図11(A)および(B)を参照して、図11(A)における推定距離の振幅よりも(B)における推定距離の振幅の方が、小さくなっており、精度の低下が改善されていることがわかる。
【0085】
(3)第3実施の形態
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。上記実施の形態においては、スキャンアンテナを用いて、アンテナがある指向性を有するときに、すべての周波数でのRFIDタグからの応答が得られるように制御した。これに対して、この実施の形態においては、一部の周波数において応答が得られなかったときに、アンテナの指向性を変化させる。ここでも3つの周波数を用いた場合について説明する。
【0086】
なお、この実施の形態におけるリーダライタの構成は、図7に示したものと同じである。
【0087】
図12は、この実施の形態における図8に対応する図である。図12(A)を参照して、この実施の形態においては、周波数f1とf3においてRFIDタグから反射信号を受信しているが、周波数f2については、RFIDタグからの応答が得られていない。
【0088】
そこで、この実施の形態では、(B)に示すように、この得られなかった周波数f2についてのみ、再度RFIDタグも再送信している。(C)に示すように、このようにして全ての周波数についての反射信号を得た後、これを復調してIQ復調信号を生成し位相差を算出する。
【0089】
図13および図14は、この場合のリーダライタの動作を示すフローチャートである。図13および図14を参照して、リーダライタ50は、まず、ある指向性を設定してアンテナ部52から、RFIDタグに対して、周波数f1にて読出し書込み要求信号を送信する(S51)。この実施の形態においては、最初に送信される周波数はf1に固定されている。次に、無変調波を送信する(S52)。その後、周波数f1の応答信号を受信できたか否かを判断し(S53)、受信できれば、位相算出比較距離推定部25で周波数f1の基準信号にてIQの直交信号を復調し、データを取り込む(S54)。そして、一定時間後、周波数f2に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f2にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f2の応答信号を受信できたか否かを判断する(S55およびS56)。なお、S53で周波数f1の応答信号を受信できなかったときも、S55へ進む。S56で、周波数f2の応答信号を受信できれば、周波数f2の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S57)。そして、一定時間後、周波数をf3に切替えて、同様に、RFIDタグに対して、周波数f3にて読出し書込み要求信号と無変調波とを送信し、周波数f3の応答信号を受信できたか否かを判断する(S58およびS56)。なお、S59で周波数f2の応答信号を受信できなかったときも、S58へ進む。
【0090】
S59で、周波数f3の応答信号を受信できれば、周波数f3の基準信号にて直交復調し、データを取り込む(S60)。この段階で全ての周波数f1〜f3のIQの直交信号が得られたときは(S61でYES)、位相算出比較距離推定部25は、これらのデータから位相差を算出して距離を計算する(S62、S63)。なお、S59で周波数f3の信号を受信できなかったときもS61へ進む。
【0091】
S61で全周波数のIQデータが取得できていなかったときは、図14のS71へ進み、アンテナ部の指向性を変更する。そして、周波数f1〜f3のいずれでIQデータが取得できていないかを判断し(S72、S76、S80)、取得できていない周波数において(S72、S76、S80でNO)、その周波数でRFIDタグへ送信し(S73、77、S81)、その応答信号が受信できたか否かを判断し(S74,S78,S82)、受信できれば(S74,S78,S82でYES)、その周波数の基準信号でIQ直交復調し、データを取込む(S75,S79,S83)。その周波数で応答信号が受信できなかったときは(S74,S78,S82でNO)、他の周波数でのIQデータの取得に進む。
【0092】
そして、全ての周波数でIQ取得データを取得すると(S84でYES)、S62へ進み、各周波数のIQデータにより位相差を算出して上記と同様に距離を計算する(S63)。S84で、全ての周波数でIQデータを取得できたわけではないときは(S84でNO)、S71へ戻る。
【0093】
ここで、「アンテナの指向性」とは、電波の放射方向と放射強度との関係をいい、放射角と放射強度の関係をレーダチャートにした図で示されるものである。「アンテナの指向性を変化させる」とは、アンテナのメインローブ(放射が最大となる方向)を変化させることをいう。なお、このアンテナの指向性の変化の時間パターンを、「スキャンパターン」といい、アンテナ指向性の変化の時間パターンを切替えることを、「他のスキャンパターンに切替える」という。
【0094】
したがって、上記実施の形態における、スキャンアンテナの指向性を変化させるスキャンパターンは、任意に変更してもよい。
【0095】
すなわち、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、複数の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信するようにしてもよいし、1つのスキャンパターンによって複数の周波数の信号の一部について受信部がRFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、受信できなかった一部の周波数の信号をRFIDタグへ再度送信するようにしてもよい。
【0096】
(4)第4実施の形態
次にこの発明のさらに他の実施の形態について説明する。図15は、この発明のさらに他の実施の形態に係るリーダライタの構成を示すブロック図である。この実施の形態においては、リーダライタは、ダイバーシティ手段として、複数の異なる偏波を出力する偏波器を含む。すなわち、リーダライタは、1つのアンテナを有し、そのアンテナから、偏波器で生成された、異なる偏波パターンを有する信号をRFIDタグに出力する。
【0097】
偏波方法を変えることにより、RFIDタグによっては、反射波の影響が変化する。すなわち、複数の偏波を用いることにより、ある偏波方法でRFIDタグからの応答がない場合でも、その偏波方法を変えることによりRFIDタグの応答を取得することが可能となる。そして、それぞれの偏波方法で取得した周波数の応答を組み合わせることによりRFIDタグまでの距離を測定可能になる。
【0098】
図15は、この実施の形態におけるリーダライタ60を示すブロック図である。図15を参照して、この実施の形態におけるリーダライタ60は、基本的に図1に示したものと同様である。図1においては、複数のアンテナを用いたが、ここでは、アンテナ63のみで、送受信するために、サーキュラ62が設けられている点と、電力増幅部15とサーキュラ62との間に、コントロール部11からの偏波制御信号64に応じて、搬送波を偏波するための偏波器61が設けられている点が図1の場合と異なる。この偏波器61による偏波方法の変更は、コントロール部11からの指示によって行われる。したがって、コントロール部11と偏波器61は、偏波出力手段および偏波出力制御手段として機能する。
【0099】
次に、この実施の形態におけるリーダライタの動作について説明する。図16は、この実施の形態におけるリーダライタの動作を示す図2や図8に対応する図である。図16を参照して、この実施の形態においては、複数の周波数のうち、受信できなかったものがあったときに、偏波方法を変更する。具体的な処理内容は、図3に示したフローチャートにおいて、図3(B)のS22がアンテナの切替えではなく、偏波方法の変更となるだけであるので、図面およびその説明は省略する。
【0100】
以上のように、この実施の形態によれば、偏波器を用いて、RFIDタグから反射信号を受信するとき、その強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るようにしたため、確実にRFIDタグからの距離を知ることができる。また、3つの周波数間の位相差を得て距離を推定するため、測定の精度をあげることができる。
【0101】
なお、上記実施の形態においては、複数の周波数の具体的な周波数について特に限定しなかったが、マルチパス環境において距離測定時の精度を高めるには、相互に等しい間隔を有する複数の周波数の位相情報を用いるMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法のような高分解能アルゴリズムを用いるのが好ましい。
【0102】
したがって、上記した複数の周波数については、相互に等しい間隔を有する3つの周波数を用いるのが好ましい。
【0103】
また、複数の周波数としては、3つに限らず4つ以上の周波数を用いてもよい。また、相互に等しい間隔を有する5つ以上の周波数f1〜f5を用いれば、たとえば、f2、f4の周波数の信号の反射信号が得られなかったとしても、f1,f3,f5の等間隔の3つの応答信号を得ることができる。
【0104】
また、上記実施の形態においては、ダイバーシティ手段の一例として、スキャンアンテナを用いた場合に、RFIDタグからの反射信号を受けられなかった一部の周波数の信号についてのみ、再度指向性を変えて再送信する場合について説明したが、これに限らず、複数のアンテナを有する場合や、複数の偏波を用いる場合において、同様の処理を行ってもよい。
【0105】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
この発明に係るRFIDタグ距離測定システムは、マルチパス環境下において、ダイバーシティ手段を用いてフィールドホールを減らしているため、RFIDタグとの距離を確実に測定できる。したがって、RFIDタグ距離測定システムとして、有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図3】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のシミュレーション環境を示す図である。
【図5】この発明の第1実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のRFIDタグとの距離の推定結果を示す図である。
【図6】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの要部およびその場合の電界強度分布を示す図である。
【図7】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図8】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図9】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のシミュレーション環境を示す図である。
【図11】この発明の第2実施の形態に係るリーダライタを用いた場合のRFIDタグとの距離の推定結果を示す図である。
【図12】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【図13】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の第3実施の形態におけるリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の第4実施の形態に係るリーダライタの要部を示すブロック図である。
【図16】この発明の第4実施の形態におけるリーダライタとRFIDタグとの交信状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
10,50,60 リーダライタ、11 コントロール部、12 PLL部、13 変調部、14 電力増幅部、15 送信アンテナ切替えスイッチ、16 第1送信アンテナ、17 第2送信アンテナ、18 受信アンテナ切替えスイッチ、19 第1受信アンテナ、20 第2受信アンテナ、21 BPF、22 90°位相シフト部、23,24 ミキサー、25 位相算出距離推定部、42 スキャン制御部、43 移相器、45 分配合成部、51 リーダライタ本体、52 アンテナ部、53,62 サーキュラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグと、前記RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、前記RFIDタグから前記搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含み、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定するRFIDタグ距離測定システムであって、
前記リーダは、前記搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、
前記RFIDタグからの前記相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した反射信号と前記搬送信号との間の位相の変化量と前記搬送信号の周波数とに基づいて、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定する推定手段とを含み、
前記送信部および前記受信部は、前記受信部が前記反射信号を受信するとき、前記反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む、RFIDタグ距離測定システム。
【請求項2】
前記搬送信号の相互に異なる複数の周波数は相互に等間隔である、請求項1に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項3】
前記送信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の送信アンテナと、前記受信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の受信アンテナとを含み、
前記ダイバーシティ手段は、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナの中から、送信および受信を行う1組の送信アンテナおよび受信アンテナを選択する、アンテナ選択手段を含む、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項4】
前記アンテナ選択手段は、前記選択された1組の送信アンテナおよび受信アンテナによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他の組のアンテナに切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項3に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項5】
前記アンテナ選択手段は、1つのアンテナによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のアンテナに切替えて、前記受信できなかった一部の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項3に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項6】
前記ダイバーシティ手段は、スキャンアンテナである、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項7】
前記スキャンアンテナを用いて送信された前記相互に異なる複数の周波数の信号について、前記受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御するスキャンアンテナ制御手段を含む、請求項6に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項8】
前記スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって前記複数の周波数の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項7に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項9】
前記スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、前記受信できなかった一部の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項7に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項10】
前記ダイバーシティ手段は複数の異なる偏波を出力する偏波出力手段を含む、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項11】
前記偏波出力手段は、前記送信部から送信された前記相互に異なる複数の周波数の信号について、前記受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御する偏波出力制御手段を含む、請求項10に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項12】
前記偏波出力制御手段は、前記送信部によって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のパターンの偏波に切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項11に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項13】
RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、前記RFIDタグから前記所定の搬送信号の反射信号を受信するリーダであって、
前記搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、
前記RFIDタグからの前記相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した反射信号と前記搬送信号との間の位相の変化量と前記搬送信号の周波数とに基づいて、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定する推定手段とを含み、
前記送信部および前記受信部は、前記受信部が前記反射信号を受信するとき、前記反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む、リーダ。
【請求項14】
前記相互に異なる複数の信号の周波数は等間隔である、請求項13に記載のリーダ。
【請求項1】
RFIDタグと、前記RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、前記RFIDタグから前記搬送信号の反射信号を受信するリーダとを含み、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定するRFIDタグ距離測定システムであって、
前記リーダは、前記搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、
前記RFIDタグからの前記相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した反射信号と前記搬送信号との間の位相の変化量と前記搬送信号の周波数とに基づいて、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定する推定手段とを含み、
前記送信部および前記受信部は、前記受信部が前記反射信号を受信するとき、前記反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む、RFIDタグ距離測定システム。
【請求項2】
前記搬送信号の相互に異なる複数の周波数は相互に等間隔である、請求項1に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項3】
前記送信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の送信アンテナと、前記受信部に接続された相互に取付け位置の異なる複数の受信アンテナとを含み、
前記ダイバーシティ手段は、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナの中から、送信および受信を行う1組の送信アンテナおよび受信アンテナを選択する、アンテナ選択手段を含む、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項4】
前記アンテナ選択手段は、前記選択された1組の送信アンテナおよび受信アンテナによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他の組のアンテナに切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項3に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項5】
前記アンテナ選択手段は、1つのアンテナによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のアンテナに切替えて、前記受信できなかった一部の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項3に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項6】
前記ダイバーシティ手段は、スキャンアンテナである、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項7】
前記スキャンアンテナを用いて送信された前記相互に異なる複数の周波数の信号について、前記受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御するスキャンアンテナ制御手段を含む、請求項6に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項8】
前記スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって前記複数の周波数の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項7に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項9】
前記スキャンアンテナ制御手段は、1つのスキャンパターンによって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のスキャンパターンに切替えて、前記受信できなかった一部の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項7に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項10】
前記ダイバーシティ手段は複数の異なる偏波を出力する偏波出力手段を含む、請求項1または2に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項11】
前記偏波出力手段は、前記送信部から送信された前記相互に異なる複数の周波数の信号について、前記受信部が前記RFIDタグからの反射波を受信するよう制御する偏波出力制御手段を含む、請求項10に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項12】
前記偏波出力制御手段は、前記送信部によって前記複数の周波数の信号の一部について前記受信部が前記RFIDタグからの信号を受信できなかったときは、他のパターンの偏波に切替えて、前記複数の周波数の信号を前記RFIDタグへ再度送信する、請求項11に記載のRFIDタグ距離測定システム。
【請求項13】
RFIDタグに対して所定の搬送信号を出力し、前記RFIDタグから前記所定の搬送信号の反射信号を受信するリーダであって、
前記搬送信号として、相互に異なる複数の周波数の信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段の出力した信号をRFIDタグに送信する送信部と、
前記RFIDタグからの前記相互に異なる複数の周波数に対する反射信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した反射信号と前記搬送信号との間の位相の変化量と前記搬送信号の周波数とに基づいて、前記RFIDタグと前記リーダとの距離を推定する推定手段とを含み、
前記送信部および前記受信部は、前記受信部が前記反射信号を受信するとき、前記反射信号の強さの変動の仕方が異なる複数の受信信号を得るダイバーシティ手段を含む、リーダ。
【請求項14】
前記相互に異なる複数の信号の周波数は等間隔である、請求項13に記載のリーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図6】
【公開番号】特開2007−292744(P2007−292744A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85505(P2007−85505)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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