説明

X線センサおよびその製造方法

【課題】X線センサにおけるX線光電変換層において、堆積に長時間を要すること、電極等の腐食による歩留まり低下、形成工程での高温の使用、単結晶基板または張り合わせ工程の必要性、などの理由によるコストの上昇が必至であった。また、駆動に高電圧を必要とした。また、X線の波長情報を得ることができるセンサが容易に得られなかった。
【解決手段】照射されたX線強度に応じて電荷を生成するX線光電変換層2と、X線光電変換層2で生成された電荷を収集する収集電極1dと、X線光電変換層2の収集電極1dが設けられている面とは反対の面に設けられた共通電極1cと、収集電極1dで収集された電荷を蓄積する蓄積容量20と、蓄積容量20に蓄積された電荷を外部へ読み出す読み出し部30とを具備し、収集電極1dと共通電極1cとの間に電圧を印加するように構成されているX線センサであって、X線光電変換層2が酸化物多結晶体であることを特徴とするX線センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線照射を検知するセンサに関する。特にX線照射量を1次元あるいは2次元で計測するセンサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
医療検査や工業検査において、X線を人体または物体に照射し、透過するX線の吸収コントラストにより人体または物体の内部情報を得る技術が広く用いられている。透過X線像を得るためには、過去においては写真乾板やイメージングプレートを用いる方法が主流であったが、最近は透過X線強度を電子情報に変換して処理を行う、2次元のX線センサが用いられている。X線センサには、X線を可視光に変換してから電子情報に変換する間接変換型と、X線を直接電子情報に変換する直接変換型の2種類がある。現在は間接変換型X線センサが主流であるが、より良質の画像を得ることができる直接変換型X線センサの開発が望まれている。
【0003】
直接変換型を高性能化するためには、X線を電子に変換するX線光電変換層の高感度化が必要である。直接変換型X線センサに用いるX線光電変換層としては、アモルファスセレン膜や多結晶CdTeなどが用いられるが、性能を向上させるために、よりX線感度の高いX線光電変換層の開発が進められている。具体的には、ビスマス酸化物膜、CdTe単結晶、特許文献1に開示されているヨウ化鉛やヨウ化タリウムなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−49773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第一の課題はX線光電変換層の形成工程に長時間を要していたことである。X線の吸収効率を向上させるために、X線光電変換層は数100ミクロンから1mmほどの厚さで形成しなければならない。蒸着等の堆積手法を用いてこのような厚い膜を形成するには時間がかかり、コストの上昇が見込まれる。また、成膜方法としてゾルゲル法を用いた場合には、膜の形成に高温が必要となり、他の構成部材の変質や劣化を招き、歩留まりの低下が起こっていた。
【0006】
第二の課題は従来用いられたセレンやヨウ化物を光電変換層に用いた場合には、素子を構成する他の構成要素、たとえば電極など、と容易に反応し、腐食や変質を起こしていたことである。それにより歩留まりの低下が起こっていた。
第三の課題はCdTe等の単結晶体をX線光電変換層に用いる場合、単結晶体は非常に高価であるので、コストの上昇が必至であることである。
【0007】
第四の課題は、第三の課題への解としてCdTe等の多結晶体を用いる場合、多結晶体の表面はアモルファス膜や単結晶表面のように平滑ではないため、その上に直接、薄膜トランジスタなどの他の構成部材を歩留まりよく形成することができないことである。以下、薄膜トランジスタは「TFT」とも表記する。歩留まりを向上させるために、従来、TFTを形成した基板とX線光電変換層を形成した基板をそれぞれ別々に形成し、張り合わせる方法を用いていた。しかしこの張り合わせ工程もコストを上昇させる一因となり得る。
【0008】
第五の課題は、これらのX線光電変換層は、上述のように数100ミクロンから1mmほどの厚さで形成しなければならないため、X線光電変換層に数1000ボルト程度もの大きな電圧を印加しなければならないことである。
第六の課題は、従来の直接変換型X線センサでは、異なる波長のX線に関する情報を得ることができなかったことである。つまり、単一の波長のX線に関する情報しか得ることができなかったことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一から第三の課題を解決するために、本発明は、多結晶体粉末からあらかじめ形成した板状の酸化物多結晶体をX線光電変換層として用い、その上にTFTや蓄積容量など、他の構成部材を形成する。
第四の課題を解決するために、本発明は、酸化物多結晶体表面に有機物等で形成された表面平坦化層を形成し、その上にTFTなどの他の構成部材を形成する。
【0010】
第五の課題を解決するために、本発明は、酸化物多結晶板を複数積層し、酸化物多結晶板と酸化物多結晶板との間に形成する電極を交互に積層体の側面の一端およびその対向の一端に接続し、該側面の一端と、その対向の一端に電圧を印加する。
例えば、第1の酸化物多結晶板と第2の酸化物多結晶板との間に第1の電極を設け、第2の酸化物多結晶板と第3の酸化物多結晶板との間に第2の電極を設ける。さらに、第3の酸化物多結晶板と第4の酸化物多結晶板との間に第3の電極を設、第4の酸化物多結晶板と第5の酸化物多結晶板との間に第4の電極を設ける。そして、第1の電極と第3の電極とを左端で接続し、第2の電極と第4の電極とを右端で接続する。第1の電極及び第3の電極と、第2の電極及び第4の電極との間に電圧を印加する。
【0011】
第六の課題を解決するために、本発明は、酸化物多結晶板を複数積層し、酸化物多結晶板と酸化物多結晶板との間に、該酸化物多結晶板より高密度な物質からなる層(以下、「高密度物質層」とも表記する。)を1層あるいは複数層形成する。そして、該高密度物質層の上方の酸化物多結晶板の上下に設けられた一対の電極と、下方の酸化物多結晶板の上下に設けられた他の一対の電極とをそれぞれ別の蓄積容量に接続する。
例えば、第1の電極と第2の電極との間に第1の酸化物多結晶板を設け、第2の電極と第3の電極との間に高密度物質を設け、第3の電極と第4の電極との間に第2の酸化物多結晶板極を設ける。そして、第1の電極を第1の蓄積容量に接続し、第4の電極を第2の蓄積容量に接続する。
【発明の効果】
【0012】
酸化物多結晶体は安定であり、X線センサのX線光電変換層として使用した場合であっても、電極等の他の構成部材を変質、腐食させることはない。また、粉末の多結晶体から板状の酸化物多結晶体をあらかじめ形成することにより、十分な厚さのX線光電変換層が容易に得られる。また、粉末の酸化物多結晶体を形成する工程およびそれを板状に成形する工程においては高温を必要とする。しかし、その酸化物多結晶体板を基板として使用し、他の構成部材をその酸化物多結晶体板の上に形成する工程においては、高温工程はもはや必要としない。
【0013】
酸化物多結晶体の表面に有機物等で形成された表面平坦化層を形成し、その上に蓄積容量やTFTなどの他の構成部材を形成することにより、表面平滑な単結晶基板を使用する必要はなくなり、X線センサを安価に提供することができる。
層間に形成する電極を交互に積層体の側面の一端およびその対向の一端に接続し、該側面の一端と、その対向の一端に電圧を印加する構造にする。このような構造とすることで、酸化物多結晶体を2枚の電極で挟んだ構造体の実効厚さ、すなわち電極間距離を短く、且つ実効電極面積を大きくすることができる。これにより、電極間に印加する電圧を低減でき、且つ実効電極面積の増大に起因してX線検出能力を上昇させることができる。
【0014】
酸化物多結晶板を複数積層した層間に、高密度物質層を1層あるいは複数層挿入し、該高密度物質層の上方の酸化物多結晶板に関して設けられた電極と、高密度物質層の下方の酸化物多結晶板に関して設けられた電極とをそれぞれ別の蓄積容量等に接続する。このような構造とすることにより、該高密度物質層の上方、下方の酸化物多結晶板から構成される素子がそれぞれ独立したX線センサ素子として働く。このとき、X線源から遠いX線センサ素子は、X線源に近いX線センサ素子に比べて短波長(高エネルギー)のX線のみ検知する。両者の強度を比較することにより、X線の波長成分に応じた情報(長波長に関する情報と短波長に関する情報)を得ることができ、X線検査の被検体の元素成分や密度の情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】酸化物多結晶体を用いたX線センサアレイの一例の模式図
【図2】酸化物多結晶体板よりなる積層体を用いたX線センサのX線照射時および非照射時のX線検出電流を示す図
【図3】酸化物多結晶体板よりなる積層体を用いたX線センサのX線照射時および非照射時のX線検出電流を示す図
【図4】酸化物多結晶体板よりなる積層体を用いたX線センサの一例の模式図
【図5】酸化物多結晶体板よりなる積層体を用いたX線センサアレイの一例の模式図
【図6】酸化物多結晶体板よりなる積層体を用いたX線センサの一例の模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、酸化物多結晶体をX線光電変換層として使用することについて述べる。本発明者らは酸化亜鉛を主成分とするセラミック多結晶粉末を板状に成形して得た酸化物多結晶板をX線光電変換層とした。そして、このX線光電変換層を挟むように電極を形成したものを用いて、X線照射時の電流を測定した。その結果、図2に示すとおり、検出に十分なX線感度を得た(印加電圧+2V)。
このとき、図3に示すように印加電圧を大きくすると(印加電圧+20V)、X線照射時と非照射時の検出電流の差が小さくなることから、この検出電流は多結晶粒界に存在するショットキーバリア等の粒界障壁によるものであることがわかった。このように、多結晶体を用いたX線光電変換層においては、単結晶体やアモルファスでのX線照射時の電子・正孔対生成という検出機構とは別の機構で、X線検出を行うことができる。本発明の実施例では、電子・正孔対の生成によるX線検出能が小さいと予想される、低抵抗な酸化物を用いたため、粒界障壁からの検出電流のみが現れた。しかし、酸化物多結晶粒自身に電子・正孔対の生成によるX線検出能が高い物質を用いることで、さらにX線検出能を向上させることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0018】
<実施例1>
図1に示すX線センサアレイは、以下のものを具備する。照射されたX線強度に応じて電荷を生成するX線光電変換層2。X線光電変換層2で生成された電荷を収集する収集電極1d。X線光電変換層2の収集電極1dが設けられている面とは反対の面に設けられた共通電極1c。収集電極1dで収集された電荷を蓄積する蓄積容量20。蓄積容量20に蓄積された電荷を外部へ読み出す読み出し部30。
収集電極1dと共通電極1cとの間に電圧を印加するように構成されていて、X線光電変換層2は酸化物多結晶体である。
【0019】
酸化物多結晶体が亜鉛酸化物あるいはカドミウム酸化物の少なくともいずれかを主成分の一つとすることが好ましい。
読み出し部が薄膜トランジスタ(TFT)30であり、薄膜トランジスタを構成するチャネル半導体が、アモルファスIn−Ga−Zn−Oであることが好ましい。
酸化物多結晶板2の上に蓄積容量20およびTFT30を形成するにあたり、酸化物多結晶板2と収集電極1dの上にあらかじめ平坦化層3を形成することが望ましい。この平坦化層3としてはアクリルやポリイミドなどの有機物からなる層を用いることが望ましい。
収集電極1dごとに蓄積容量20(図1ではMo電極6a、6cとSiO膜4とからなる)およびTFT30(図5ではアモルファスIGZOをチャネル5としたTFT)をアレイ状に形成することにより、X線センサアレイを得ることができる。
平坦化層3の上に画素電極6aとゲート6bが形成される。画素電極6aは収集電極1dに電気的に接続されている。画素電極6aとゲート6bの上にSiO膜4が形成される。SiO膜4の上にソース6c、ドレイン6d及びチャネル5が形成される。
【0020】
図1に示すX線センサの製造方法を説明する。
まず、酸化物多結晶体の粉末を板状に成形して、照射されたX線強度に応じて電荷を生成するX線光電変換層2を形成する。次に、X線光電変換層2の一方の面に共通電極1cを形成し、他方の面にX線強度に応じて生成された電荷を収集する収集電極1dを形成する。次に、X線光電変換層2と収集電極1dとの上に有機物からなる平坦化層3を形成する。次に、平坦化層3の上に、収集電極1dごとに、収集電極で収集された電荷を蓄積する蓄積容量20と、蓄積容量20に蓄積された電荷を外部へ読み出す読み出し部(TFT)30とを形成する。
【0021】
TFT30は平坦化層3の上に形成する場合は、平坦化層3がTFT形成時の熱によって変質することを防止するため、高温プロセスを用いない。そのため、低温で形成できるTFTを用いる。そのTFT形成プロセスにおける最高温度は300℃以下が望ましい。
上記のプロセス条件を満たすTFTの一つとして、アモルファスIn−Ga−Zn−O−TFT(アモルファスIGZOをチャネルとするTFT)を用いる。なぜなら、アモルファスIGZOは、X線光電変換層である酸化物多結晶体と同じ酸化物であり、雰囲気などのプロセス条件において、酸化物にダメージを与えるものが少ないため、TFT形成プロセス中でのX線光電変換層へのダメージが少ないためである。
このようにして、安価かつ容易にX線センサアレイを得ることができる。
【0022】
<実施例2>
酸化物多結晶体として、酸化亜鉛を主成分とするセラミック多結晶体を用いた。他にIn−Ga−Zn−O(以下「IGZO」とも表記する。)、Zn−Sn−O、Cd−Sn−O、Cd−Ge−Oなどを用いることができる。これを板状に成形し、成形した板の上に電極を印刷し、それを積層し焼結したものを用いた。
電極の接続は、層間に存在する電極を交互に積層体の側面の一端およびその対向の一端に接続し、その側面の一端と、その対向の一端に電圧を印加して行う。例えば、ある一層の板の上方にある電極は板の右側に、下方にある電極は板の左側にある電極に接続する。積層体ではそれを交互に積み重ねる。
【0023】
図4に示す例では、酸化物多結晶体2の上に収集電極40が設けられ、酸化物多結晶体2の中に第1の内部電極41及び第2の内部電極42が設けられる。収集電極40と第2の内部電極42とが電気的に接続され、収集電極40と第2の内部電極42との間に第1の内部電極41が配置され、第1の内部電極41と共通電極48とが電気的に接続されている。
図4に示す例ではさらに、第4の内部電極44と第6の内部電極46の左端が収集電極40と第2の内部電極42とに電気的に接続され、第3の内部電極43と第5の内部電極45の右端が第1の内部電極41と共通電極48とに電気的に接続されている。
このような積層体を形成することにより、酸化物X線光電変換層の実効的な厚さは薄くなる。すなわち、対向した電極間の距離は短くなる。これにより、X線センサ動作させる際の印加電圧を下げることができる。
【0024】
上記積層体に2ボルトの電圧を印加し、X線照射時および非照射時における電流を測定した。X線源にはモリブデン回転対陰極を用い、印加電圧は40kV、印加電流は20nAであった。発生したX線は単色化せずに積層体に照射した。その時のX線照射時および非照射時の電流を図2に示す。X線照射時には非照射時の約10倍の電流値が得られ、良好なX線検出能を示した。
この積層体の上に蓄積容量およびTFTを形成することにより、X線センサが得られる。
【0025】
<実施例3>
複数の酸化物多結晶板と複数の電極が交互に積層された積層体を用いてX線センサアレイを製造した。
図5に示すように、酸化物多結晶体2の最表面の一面に共通電極1cを、反対の一面に収集電極1dをそれぞれ形成する。酸化物多結晶体2の内部に共通電極1cに接続された内部電極1bと、収集電極1dに接続された内部電極1aを形成する。
図5に示すように、内部電極1aは3枚の電極からなり、内部電極1bも3枚の電極からなり、内部電極1aを構成する3枚の電極と内部電極1bを構成する3枚の電極は交互に配置される。内部電極1aを形成する3枚の電極は、酸化物多結晶体2に形成したビアホールを介して左端が接続され、かつ収集電極1dに接続される。内部電極1bを形成する3枚の電極は、酸化物多結晶体2に形成するビアホールを介して右端が接続され、かつ共通電極1cに接続される。
その上に実施例1と同様に平坦化層3、蓄積容量20およびTFT30を形成し、蓄積容量20を構成するMo電極(画素電極)6aを収集電極1dと接続することで、安価かつ容易で、かつ低印加電圧で駆動可能なX線センサアレイを得ることができる。
【0026】
<実施例4>
酸化物多結晶体より高密度の物質を、酸化物多結晶体の間に挿入することで、X線波長(エネルギー)の情報も検知することができるX線センサあるいはX線センサアレイを得ることができる。
図6は、酸化物多結晶体の内部に1層の高密度物質層7を挿入した例である。複数の高密度物質層を挿入するとしても良い。
酸化物多結晶体2の中に第1の内部電極61、第2の内部電極62及び第3の内部電極63が設けられ、第1の内部電極61と第2の内部電極62とが共通電極1cに電気的に接続されている。
収集電極1dと第1の内部電極61との間で生成された電荷は収集電極1dに収集され、第2の内部電極62と第3の内部電極63との間で生成された電荷は第3の内部電極63に収集される。
収集電極1dは第1の蓄積容量20に電気的に接続され、第3の内部電極63は第2の蓄積容量40に電気的に接続されている。
【0027】
第1の内部電極61と第2の内部電極62との間に、酸化物多結晶体2より高密度な物質の層(高密度物質層)7が挿入されていることが好ましい。高密度物質層7を複数層挿入するとしても良い。
高密度物質層7はX線光電変換層として用いる酸化物多結晶体より高原子番号の元素を主成分とした絶縁体であり、酸化物が望ましい。例えば、HfOやTaなどである。
【0028】
図6の下方よりX線を照射した場合、下方のX線光電変換層2aにおいては照射されたX線のうち、光電変換層に用いた酸化物多結晶体2の吸収波長以下のX線に関する検知を行う。
一方、図6の上方に位置するX線光電変換層2bにおいては、高密度物質層7の吸収波長以下のX線に関する検知を行う。光電変換層2a、2bに用いた酸化物の吸収波長に比べて、高密度物質層7の吸収波長のほうが短いため、X線光電変換層2bより成るX線センサは、X線光電変換層2aより成るX線センサより短波長のX線照射量を検知することになる。
よって、X線光電変換層2bより成るX線センサのX線検知量と、X線光電変換層2aより成るX線センサのX線検知量を比較することにより、照射X線の全照射強度に係る量の検知のみならず、照射X線の波長に係る量の検知も行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1:電極(内部電極、共通電極、収集電極)
2:酸化物多結晶体
3:平坦化層
4:SiO
5:アモルファスIGZO(チャネル)
6:Mo電極(画素電極、ゲート、ソース、ドレイン)
7:高密度物質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射されたX線強度に応じて電荷を生成するX線光電変換層と、
前記X線光電変換層で生成された電荷を収集する収集電極と、
前記X線光電変換層の前記収集電極が設けられている面とは反対の面に設けられた共通電極と、
前記収集電極で収集された電荷を蓄積する蓄積容量と、
前記蓄積容量に蓄積された電荷を外部へ読み出す読み出し部とを具備し、前記収集電極と前記共通電極との間に電圧を印加するように構成されているX線センサであって、
前記X線光電変換層が酸化物多結晶体であることを特徴とするX線センサ。
【請求項2】
前記酸化物多結晶体が亜鉛酸化物あるいはカドミウム酸化物の少なくともいずれかを主成分の一つとすることを特徴とする請求項1に記載のX線センサ。
【請求項3】
前記読み出し部が薄膜トランジスタであり、前記薄膜トランジスタを構成するチャネル半導体が、アモルファスIn−Ga−Zn−Oであることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線センサ。
【請求項4】
前記酸化物多結晶体の上に有機物からなる平坦化層が設けられ、前記平坦化層の上に前記蓄積容量及び前記読み出し部が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のX線センサ。
【請求項5】
前記酸化物多結晶体の中に第1の内部電極及び第2の内部電極が設けられ、
前記収集電極と前記第2の内部電極とが電気的に接続され、
前記収集電極と前記第2の内部電極との間に前記第1の内部電極が配置され、
前記第1の内部電極と前記共通電極とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のX線センサ。
【請求項6】
前記酸化物多結晶体の中に第1の内部電極、第2の内部電極及び第3の内部電極が設けられ、
前記第1の内部電極と前記第2の内部電極とが前記共通電極に電気的に接続され、
前記収集電極と前記第1の内部電極との間で生成された電荷は前記収集電極に収集され、
前記第2の内部電極と前記第3の内部電極との間で生成された電荷は前記第3の内部電極に収集され、
前記収集電極は第1の蓄積容量に電気的に接続され、前記第3の内部電極は第2の蓄積容量に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のX線センサ。
【請求項7】
前記第1の内部電極と前記第2の内部電極との間に、前記酸化物多結晶体より高密度な物質の層が1層又は複数層挿入されていることを特徴とする、請求項6に記載のX線センサ。
【請求項8】
酸化物多結晶体の粉末を板状に成形して、照射されたX線強度に応じて電荷を生成するX線光電変換層を形成し、
前記X線光電変換層の一方の面に共通電極を形成し、
他方の面に前記X線強度に応じて生成された電荷を収集する収集電極を形成し、
前記X線光電変換層と前記収集電極との上に有機物からなる平坦化層を形成し、
前記平坦化層の上に、前記収集電極ごとに、前記収集電極で収集された電荷を蓄積する蓄積容量と、前記蓄積容量に蓄積された電荷を外部へ読み出す読み出し部とを形成することを特徴とするX線センサの製造方法。
【請求項9】
前記読み出し部が薄膜トランジスタであり、前記薄膜トランジスタを形成する際の温度が300℃以下であることを特徴とする請求項8に記載のX線センサの製造方法。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタのチャネル半導体形成工程が、スパッタ法によるアモルファスIn−Ga−Zn−O膜の成膜工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のX線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146541(P2011−146541A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6233(P2010−6233)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】