説明

X線生成システムの電源

少なくとも1つのX線源(17)を備え、特にコンピューター断層撮影法(CT)の用途のためのX線生成システムに電力を供給する高出力電圧を生成する電源を開示する。高出力電圧は、高速切り替え可能な少なくとも2つの異なる高出力電位(U;U±U)を有する。従って、従来のX線管(17)でスペクトルCT測定を実施できる。更に、当該電源及び少なくとも1つのX線管(17)を有するX線管生成システム、及び当該電源を有するコンピューター断層撮影(CT)装置を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのX線源(X線管など)を備え、特にコンピューター断層撮影法(CT)の用途のためのX線生成システムに電力を供給する高出力電圧を生成する電源に関する。高出力電圧は、少なくとも2つの異なる高出力電位を有する。更に、本発明は、当該電源及び少なくとも1つのX線管を有するX線管生成システム、及び当該電源を有するコンピューター断層撮影(CT)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター断層撮影の開発は、一方では、複数のX線管及びマルチ・スライス円錐ビーム検出器を有するシステムに向かっている。これは、特に走査された物体の3次元再構成に適した、患者の3次元投影データ・セットを得るためである。
【0003】
他方で、コンピューター断層撮影は、更に新たな用途のために開発されており、特に画像品質を向上させている。特に、X線ビーム(「スペクトルCT」)のエネルギー情報を更なる物理情報として用いることにより、画像品質及びコントラスト分解能を向上し、臨床画像からの材料識別及び定量化のような新たな診断の利益をもたらす。
【0004】
これらの用途及び開発は、何れも、2以上の、望ましくは少なくとも1つのX線管のために異なる高出力電圧を生成する電源を必要とする。更に、特にスペクトルCT撮像では、少なくとも2つの異なるX線管電圧(又は電位)の間で高速に切り替えることが望ましい。さもなければ、激しい動きアーティファクトが観察されるからである。
【0005】
このような従来の2つの独立した高電圧のための高電圧生成器に伴うある問題は、非常に広い空間を必要とする上に比較的重いので、コンピューター断層撮影装置の回転ガントリでの使用に適さないことである。
【0006】
別の問題は、電圧増幅器で生成された高電圧が、通常、十分な品質のスペクトラルX線画像を得るために必要な十分に短時間のうちに変化又は変更できないことである。これは、特許文献1に開示されるように、多相高電圧増幅器にも当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2003/049270A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の観点から、少なくとも2つの異なる高出力電位を有する高出力電圧を生成する電源を実現すること、及び当該電源が比較的小型且つ軽量であり、特にコンピューター断層撮像装置のガントリ内で使用可能なことは有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1では、電源が提供される。当該電源は、第1の電位Uを供給する少なくとも1つの第1の電圧源、第2の電位Uを供給する第2の電圧源を有する。前記第1及び第2の電圧源は、前記高出力電圧を生成するためにカスケード接続され、前記高出力電圧は、前記第1の電位Uと少なくとも実質的に等しい少なくとも1つの第1の高出力電位、及び前記カスケード接続された第1及び第2の電位U±Uと少なくとも実質的に等しい第2の高出力電位を有する。
【0010】
用語「少なくとも実質的に等しい」は、例えば線又は他の構成要素内で起こり得る損失が、第1の電位U及び/又はカスケード接続された第1及び第2の電位U±Uと厳密に等しくない高出力電位を生じ得ると考えられることを意味する。
【0011】
当該少なくとも2つの電圧源のカスケード接続により、一方では、少なくとも2つの異なる高出力電位が分岐され、他方では、周波数インバーター、高電圧変圧器、及び/又は高電圧増倍器のような重く巨大な部分が、それぞれ1つの例で用いられるだけなので、重量及び容積が軽減される。
【0012】
当該電源により、例えば第1のX線管は、第1の高出力電位を供給され、第2のX線管は、第2の高出力電位を供給される。従って、両方のX線管は、異なるX線スペクトルを生成する。
【0013】
当該電源の別の利点は、最も典型的なX線管が、例えばスペクトルCT撮像又はKエッジ撮像の異なるエネルギー・レベルの測定を実行するために供給されることである。
【0014】
従属項は、本発明の有利な実施例を開示する。
【0015】
請求項2の実施例は、第2の低電位により、2つの高出力電位及び2つのX線スペクトル(接続されたX線管により生成される)が異なり、特に、大抵の検査で通常望ましいような互いに対応する小さい差分を有するという利点を有する。更に、選択された回路配置に依存して、低電位は、通常、高速に、つまり高電位より短い上昇時間及び下降時間で切り替え可能である。
【0016】
請求項3の実施例は、異なるエネルギー・レベルの測定を実行するために2つのX線管が用いられるという利点を有する。これは、スイッチを用いることにより、高出力電圧が、大抵の場合に、少なくとも2つの異なる高出力電位の間を十分高速に変更されるからである。更に、2つのX線管を動作する場合には(特に同一の高出力電圧に切り替えるときに)、取得速度は2倍になり、X線管の電力制限は緩和される。
【0017】
請求項4の実施例は、特に軽量且つ小型であるという利点を有する。これは、1つの周波数インバーター、1つの共振回路、及び1つの高電圧変圧器のみが用いられるからである。
【0018】
請求項5の実施例は、高出力電圧が比較的簡単な方法で2より多い異なる高出力電位の間で変化可能であるという利点を有する。特に、第2の高電位が高すぎない場合、上述の用途の殆どで、当該第2の高電位も、十分に高速に切り替え可能である。
【0019】
請求項6の実施例は、(ユーザーが)選択した高出力電位が正確且つ信頼できる方法で得られるという利点を有する。
【0020】
請求項7の実施例は、接続されたX線管の最適な切り替えタイミングが提供されるという利点を有する。
【0021】
請求項8乃至11の実施例は、好適な第1の高電圧源及び幾つかの好適な第2の(低)電圧源がそれぞれ、有利なことに提案された電源の用途に応じて選択されることを開示する。
【0022】
本発明の詳細、特徴及び利点は、図と関連付けられた例及び好適な実施例に関する以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンピューター断層撮影装置の概略図を示す。
【図2】本発明の電源の第1の実施例を示す。
【図3】本発明の電源の第2の実施例を示す。
【図4】本発明の電源の第3乃至第5の実施例の第1の基本的概略を示す。
【図5】本発明の電源の第3乃至第5の実施例の第2の基本的概略を示す。
【図6】本発明の電源の第3の実施例を示す。
【図7】本発明の電源の第4の実施例を示す。
【図8】本発明の電源の第5の実施例を示す。
【図9】異なる高出力電位のための第1及び第2の切り替え方法を示す。
【図10】撮像装置の高電圧切り替え方法に関連するデータ取得方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、コンピューター断層撮影装置の概略図を示す。コンピューター断層撮影装置は、開口又は穴2を備えたガントリ1を有する。穴2を通じて、台3に横たわっている患者が移動させられる。少なくとも1つのX線源、特にX線管及び少なくとも1つの対応するX線検出器を有するX線生成システムは、ガントリ1に、対抗する位置に取り付けられる。患者台3がガントリ1の穴2を通って並進する間、ガントリ1が回転することにより、X線源の焦点が患者の周囲で螺旋を描き、回転の度に患者の軸に沿って進行するようにする(螺旋走査)。これにより、患者は知られている方法で走査される。受信した画像データは、コンピューター支援処理手段により、知られている方法で、モニターに表示される段像画像に処理される。
【0025】
ガントリ1は、通常、患者の周りを毎秒複数回回転するので、ガントリ及びその構成要素が軽量であることが重要である。
【0026】
特に、X線生成システムに電力を供給するために少なくとも1つの高出力電圧を生成する電源の変圧器は、電源の全体の重さのかなりの部分を占めている。電源は、通常、X線生成システムと共にCT装置のガントリ1に取り付けられる。
【0027】
以下では、本発明の第1及び第2の実施例を説明する。当該実施例は、2つの異なる高出力電位を生成する電源の形式をとる。当該電源は、特に2つのX線源のために、及び特に高速円錐ビームの二重X線管CTシステムのために用いられる。当該電源は、軽量且つ省スペースであり、特に2つのX線源を異なる(又は任意的に同一の)X線管電圧で動作させるために用いられる。
【0028】
図2は、2つの高出力電圧を有する電源の第1の実施例を示す。図2の電源は、高周波数インバーター11、高周波数インバーター11の出力と接続された共振回路12、及び共振回路12と1次側で接続された高電圧変圧器13、を有する。高電圧変圧器13の2次側は、4段電圧増倍器14の入力端子と接続される。4段電圧増倍器14は、3段の後に第1の出力端子161を有する。第1の高電圧源106は、第1の高電位を生成する。
【0029】
第2の電圧源107は、第2の低電位を供給するために、電圧増倍器14の4段後及び第2の出力端子16により供給される。変圧器13の巻線比に依存して、電圧源106、107の両方に他の段数の電圧増倍器が用いられてもよい。更に、第2の電圧源107の段数は、1ではなく、特に用途に依存する。
【0030】
第1及び第2の(負)出力端子161、16は、それぞれ第1のX線管17及び第2のX線管19である第1及び第2のX線源の陰極と接続される。電源の第3の(正)出力端子15は、高電圧変圧器13の中央タップに接続され、X線管17、19の両方の陽極に結合される。第1及び第2の電圧源をカスケード接続することにより、第1のX線管17の第1の高出力電位は、第2のX線管19の第2の高出力電位より低くなる。従って生成されるX線スペクトルは互いに異なる。望ましくは、一般に知られているように、第1のX線管17は第1のグリッド・スイッチ部18により制御され、第2のX線管19は第2のグリッド・スイッチ部20により制御される。
【0031】
X線管17、19は、望ましくは、インターリーブ・モードで切り替えられる。管17、19の両方を並列動作させると、散乱した画像アーティファクトが生じるからである。任意的に、1つのX線管から他のX線管に変更するときに、管17、19の間の漏れの影響を回避するために、特定の不感時間が適用される。
【0032】
図3は、2つのX線源17、19のための2高出力電圧電源の第2の実施例を示す。同一又は対応する部分又は構成要素は、図2と同一の参照符号で示される。従って、以下では、第1の実施例との差分のみを説明する。
【0033】
基本的な差分は、第2の実施例が、切り替え可能な出力端子162を有する点である。スイッチ22は、第1の電圧源106の出力端子161と第2の電圧源107の出力端子16との間で切り替える。第2の実施例は、スイッチ22を動作することにより2つの及び2つ以外のエネルギーの用途に用いられる。第1のX線源17の陰極端子は、第1又は第2の出力端子16、161の何れかと接続される。第2の実施例は、X線源17、19の両方を同一の第2の高出力電位で動作させる。従って、被検体の走査は、同一のX線スペクトルで、又は第1の実施例に従い異なるX線スペクトルで行われる。X線源17、19の両方の間で切り替えるために、スイッチ22は、望ましくは、電気機械的に制御されるリレーである。当該リレーは、所定の若しくは選択された走査手順に従いユーザーにより及び/又は制御システムにより自動的に動作する。
【0034】
第2の実施例により、例えばCT装置は、同一又は異なるX線スペクトルの何れかで簡易な方法で2つの走査動作を実行する。X線源17、19の両方が同一の高出力電圧で動作する場合、例えば同一のX線スペクトルで全体を走査された物体の3次元画像の再構成のために、患者の3次元投影データ・セットが得られる。この場合、2つのX線管17、19は、望ましくは例えば90度だけ円周方向にずらしてガントリに配置される(2つの独立したX線検出器は、それぞれ各X線管と対抗する位置にある)。従って、患者の検体の2つの別個の走査は、ガントリの回転速度の4分の1の範囲内で遅延され、2つの走査は十分に短時間で実行される。
【0035】
3次元投影データ・セットを取得する手順は、上述の、2つのX線源と2つのX線検出器を用いた所謂、螺旋走査である。
【0036】
このような二重X線管CTシステムの別の利点は、画像を生成するための取得速度が2倍になることである。更に、各X線管の電力制限は、このようなシステムでは緩和される。又は、X線管17、19の両方から、被走査体で総ピークの高いX線出力密度が得られる。画像取得速度を上げることにより、被走査体に関してより多くの物理的情報が得られ、及び特に画像品質が改善する。これらの実施例では、例えばコントラストが良好になり、(心臓のような動く対象から画像を得るために)時間分解能が高くなり、又は(例えば血管の詳細を撮像するために)空間分解能が高くなる。更に、スイッチ22を切り替えることにより、画像品質が向上する。つまり、図2に示したように、特に互いに独立な2つの異なるエネルギー・レベルの測定を実行するために、異なる高出力電位がX線管17、19に印加される。従って、2つの異なるX線スペクトルが生成され、図2を参照して上述したように、走査した検体から異なるエネルギー情報が得られる。省スペース且つ軽量なので、第1及び第2の実施例による電源は、特に、高時間分解能及び/又は高空間分解能の二重X線管及び二重高電圧スペクトルCT装置又はシステムに適する。
【0037】
本発明の第3乃至第5の実施例は、被走査体からの複数のエネルギー情報を取得し評価するために、エネルギー・レベルの測定を実行する、高速複数高電圧設定(スイッチング)、特にスペクトルCT装置又はシステムの1つのX線管の電源の形式で説明される(しかしながら、高速二重高電圧設定はこれらの実施例により実現されてもよく、例えば図2及び図3に示されるように1つ以上のX線管が動作してもよい)。
【0038】
本願明細書では、スペクトルCT装置は異なる放射スペクトルを有するX線源又はエネルギー分解X線検出器の何れかに基づく。
【0039】
X線検出器に関し、エネルギー分解能のための関連するCTの概念は、少なくとも2又は多層のシンチレータ装置と検出器を統合することによりである。別の可能性として、専用検出器により同時に異なるエネルギー閾値で計数と積分を結合して用いることである。第3の選択肢は、エネルギー・ウインドウ(ビン)又はエネルギー重み付け技術を用いることにより、画素毎のエネルギー分解能を備えた計数検出器を用いることである。
【0040】
X線源に関し、エネルギー分解能のための関連するスペクトルCTの概念は、例えばシンクロトロン放射のような2以上の単一エネルギーX線源、又は単色光分光器又は患者の前段のフィルターの異なるセットを用いることである。しかしながら、本発明の第3乃至第5の実施例では、1つの従来のX線管は、以下の説明によると、少なくとも2つの異なるX線エネルギー・スペクトルを生成する超高速切り替え可能な少なくとも2つの異なる高出力電位を交互に供給する電源により動作する。
【0041】
従って、本発明の第3乃至第5の実施例の基本的考えは、1つの従来のX線源と1つの新規なX線生成器を用いることである。新規なX線生成器は、1画像フレーム内で異なる(しかし良く知られた)多色放出スペクトルを生成する少なくとも2つの異なる超高速切り替え可能な高出力電圧で動作する。
【0042】
データは、従来のCT検出器で、サブフレームのデータ取得方法により、X線管(X線生成器)の電源の高出力電圧と同調して取得される。これらのスペクトルCTモデルに従うデータの処理は、定量的な造影剤(例えば、ヨウ素又はガドリニウム)だけの画像を含む異なる臨床画像を生成することを可能にする。スペクトルCTモデルは、例えばAlvarez、Macovski、Energy-selective reconstructions in X-ray Computerized Tomography、Phys.Med.Biol、197又はRiederer、Mistretta、Selective iodine imaging using K-edge energies in computerized X-ray tomography、Med.Phys.、Vol.4、No.6,1977に記載されている。これは、上述の利点を有するCT撮像の新たな分野を切り開く。複数の高出力電位(数kV)で切り替わるスペクトルCTは、本願明細書の終わりに更に詳細に説明される。
【0043】
図4は、1つのX線管17のための第3乃至第5の実施例による電源の第1の基本的概略を示す。電源は、高電圧生成器101及び制御回路301を有する。電源は、高電圧生成器101及び制御回路301を有する。高電圧生成器101は、第1の(正又は負の)電位Uを生成する第1の電圧源106、及び第2の(正又は負の)電位Uを生成する第2の電圧源107を有する。両方の電位は、連結部161を介して高出力電位U±Uにカスケード接続され、高電圧生成器101の出力端子15、16と接続される。これらの出力端子15、16は、X線管17の陽極及び陰極とそれぞれ接続される。
【0044】
望ましくは、第1、第2の電圧源106,107の少なくとも1つは、ガルバニック絶縁を設ける。
【0045】
高出力電位U±Uは測定され、制御回路301により基準電位Urefと比較される。制御回路301は、所望のカスケード接続された高出力電位U±Uを設定するために、それぞれ第1及び第2の電圧源106、107の少なくとも1つを制御する第1及び第2の制御信号の少なくとも1つを供給する。図4に従い2つの調整電圧源106、107をカスケード接続することにより、2以上の高出力電位の間で高速に切り替え可能な高出力電圧が供給される。
【0046】
より詳細には、電圧源106(107)の一方は、高電位を生成する高電圧源である。高電位は、例えば最低又は最高の出力電位、例えば撮像される物体内の造影剤のKエッジ・エネルギーの最低電位にほぼ等しい。この高電圧源106(107)は、例えば高電圧増倍器により実現できる。
【0047】
他方の電圧源107(106)は、高電位と比較して低電位を生成する。低電位は、正又は負であり、高電圧生成器101の所望の高出力電位U±Uと、高電圧源106(107)の高電位との間の差分に等しい。
【0048】
更に、低電圧源107(106)は、第1及び第2の電位の間の切り替えにより、急勾配を有する(つまり、短時間に上昇及び下降する)新たな電位を生成する。低電圧源は、ゼロと例えば30kVとの間の電位を生成するだけなので、低電圧源では少量のエネルギー蓄積しか必要としない。従って、より高速な電圧上昇が実現する。電圧降下は、本発明のX線管電流に依存する。本例では、単一方向の電圧源を用いる。X線管17が長い高電圧ケーブルを介して電圧生成器101に接続される場合、ケーブルは追加のエネルギー蓄積を与える。本装置で高速電圧降下を保証するため、低電圧源は双方向電圧源であるべきである。電圧の降下中に、ケーブルに蓄積されたエネルギーは、本例では高電圧生成器101のインバーター入力端子の中間段に転送され戻される。
【0049】
任意的に、X線管17は、格子スイッチ部18により制御されるゲート管格子と共に動作する。本例では、望ましくは、制御回路301は、格子スイッチ部18を制御する第3の制御信号を供給する。第3の制御信号により、格子スイッチ部18は、同期モードで動作し、X線管17に最適な切り替えタイミングを提供する。
【0050】
図5は、2つのX線管のための第3乃至第5の実施例による電源の第2の基本的概略を示す。図5では、図4と同一又は対応する構成要素は、同一の参照符号で示す。電源は、再び、高電圧生成器101及び制御回路301を有する。また、電源は、特にX線管17、19が2焦点で動作するために設けられる。X線管17、19は、並列に、高電圧生成器101の出力端子15、16と接続される。高電圧生成器101は、再び、第1及び第2の電圧源106、107を有する。第1及び第2の電圧源106、107は、それぞれ図4を参照して上述した高電位及び高速切り替え可能な低電位を生成する。第1及び/又は第2の電圧源106、107は、再び、それぞれ第1及び/又は第2の制御信号を供給することにより制御回路301により制御される。
【0051】
更に、X線管17、19は、任意的にそれぞれ格子スイッチ部18、20のそれぞれにより制御されるゲート管格子でゲート制御される。望ましくは、これらの格子スイッチ部18、20の少なくとも1つは、制御回路301により供給される第3及び/又は第4の制御信号によりそれぞれ制御される。第3及び/又は第4の制御信号により、X線管17、19は、同期モードで動作し、X線管17、19に最適な切り替えタイミングを提供する。X線管17、19は、望ましくは交番モードで動作する。
【0052】
図6は、本発明の第3の実施例の電源の例を示す。電源は、第1の望ましくは一定の高電位Uを生成する第1の電圧源106、及び第2の低いが高速切り替え可能な電位Uを生成する第2の制御可能な低電圧源107を有する。両方の電位は、連結部161を介して高出力電位U±Uに、図4を参照して説明したように端子15、16でカスケード接続され、高電圧生成器4の出力端子15、16と接続される。
【0053】
更に詳細には、第1の高電圧源106は、高周波数インバーター11を有する。高周波数インバーター11の出力端子は、第1の共振回路12と接続される。更に、第1の高電圧変圧器13の1次側は、第1の共振回路12と接続される。第1の高電圧変圧器13の2次側は、高電圧増倍器14と接続される。電圧増倍器14の出力は、第1の高電位Uを連結部161で供給する。
【0054】
第2の低電位Uは、第2の低電圧源107により生成される。第2の低電圧源107は、第2の高周波数インバーター111を有する。第2の高周波数インバーター111の出力端子は、第2の共振回路112に接続される。第2の高電圧変圧器113の1次側は、第2の共振回路112と接続される。第2の高電圧変圧器113の2次側は、高電圧整流器114と接続される。高電圧整流器114の出力は、第2の低電位Uを供給する。第2の低電位Uは、連結部161を介し、第1の高電位U1とカスケード接続され、出力端子15、16を介しX線管17へ供給される。
【0055】
この回路構成では、第1の高電圧電源106は、第1の望ましくは一定の高電位Uを供給する。他方、第2の低電圧源107は、第2の低電位Uを供給する。第2の低電位Uは、上述のようにX線管17の端子15、16の所望の高出力電位と第1の一定の高電位Uとの間の差分に実質的に等しい。
【0056】
X線管17は、専用の格子スイッチ部18により制御される格子によりゲート制御される。高出力電圧は測定され、制御回路301により基準電位Urefと比較される。制御回路301は、所望の高出力電圧を端子15、16に設定するために、特に第2の高周波数インバーター111(及び任意的に、第1の高周波数インバーター11も)を制御する。
【0057】
図7は、本発明の電源の第4の実施例を示す。図7では、図6と同一又は対応する構成要素は、同一の参照符号で示す。
【0058】
電源は、再び、第1の望ましくは一定の高電位Uを生成する第1の電圧源106、及び第2の低いが高速切り替え可能な電位Uを生成する第2の制御可能な低電圧源107を有する。両方の電位は、図4及び図6に従い接続部161を介して高出力電位U±Uとカスケード接続される。
【0059】
第1の電圧源106は、第1の高周波数インバーター11、共振回路12、及び第1の高電圧変圧器13を有する。第1の高電圧変圧器13は、図6に示した第3の実施例に従い高電圧増倍器14に電力を供給し、再び実質的に一定の第1の高電位Uを連結部161に生成する。第3の低電圧源107は、第2の高周波数インバーター111を有する。第2の高周波数インバーター111は、第2の高電圧変圧器113の1次側と接続される。2次側では、第2の低電位U2は、再び上述のように制御可能である。
【0060】
両方の電圧源106、107はカスケード接続されるので、X線管17は、出力端子15、16を介して高出力電圧を供給される。高出力電圧は、第1及び第2の電位U±Uの和である。高出力電位は再び測定され、制御回路301により基準電位Urefと比較される。制御回路301は、所望の高出力電圧を設定するために、第2の高周波数インバーター111(及び任意的に、第1の高周波数インバーター11も)を制御する。
【0061】
これらの実施例では、第1の高電圧源106は、第1の高電位を生成する。第1の高電位は、例えば、被走査体内の造影剤のKエッジ電圧と同一である。第2の変圧器13の2次側巻線の第2の低電位は、第2の高周波数インバーター111により生成されるゼロ、又は負若しくは正の何れかである。しかしながら、第2の変圧器113の電圧秒積に関し、変圧器の出力の第2の低電位は、所与の時間の間、ゼロでなければならない。従って、変圧器の2次側巻線電圧の正及び負の電圧秒積は、等しくなければならない。
【0062】
図8は、本発明の電源の第5の実施例を示す。図8では、図6及び図7と同一又は対応する構成要素は、同一の参照符号で示す。
【0063】
電源は、再び、第1の望ましくは一定の高電位を生成する第1の電圧源106、及び第2の低いが高速切り替え可能な電位を生成する第2の制御可能な低電圧源107を有する。両方の電位は、連結部161を介してカスケード接続される。
【0064】
第1の高電圧源106は、第1の高周波数インバーター11、第1の高周波数インバーター11と接続された第1の共振回路12、及び第1の高電圧変圧器13、を有する。第1の高電圧変圧器13の1次側は、第1の共振回路12と接続される。第1の高電圧変圧器13の2次側は、図6及び図7に示されるように、高電圧増倍器14に電力を供給し、実質的に一定の第1の高電位Uを連結部161で生成する。
【0065】
第2の低電圧源107は、第2の高周波数インバーター111、第2の高周波数インバーター111と接続された第2の共振回路112、及び第2の高電圧変圧器113、を有する。第2の高電圧変圧器113の1次側は、第2の共振回路112と接続される。第2の高電圧変圧器113の2次側は、高電圧生成器115の入力にAC電圧を供給する。AC電圧は、第2の変圧器113により絶縁される(絶縁されたAC電圧を高電圧生成器115に供給するために他の構成が用いられてもよい)。高電圧生成器115の出力で、第2の低電位Uが供給される。
【0066】
第1及び第2の電位U、Uは、再びカスケード接続される。従って、X線管17は、出力端子15、16を介して、第1及び第2の電位の和である高出力電圧を供給される。また、高電圧生成器115は、第2の電位を生成する。第2の電位は、電源の端子15、16の所望の高出力電圧と、第1の高電圧源106の連結部161の第1の高電位との間の差分にほぼ等しい。高出力電位は測定され、制御回路301により基準電位Urefと比較される。制御回路301は、所望の高出力電位をX線管17と接続された出力端子15、16に設定するために、第2の高周波数インバーター111及び高電圧生成器115(及び任意的に、第1の高周波数インバーター11も)を制御する。
【0067】
第3乃至第5の実施例により、出力端子15、16の高出力電位は、約20μ秒又はそれより短い時間内に切り替えられる。一方で、この時間の下限は、第2の電位Uが約ゼロの場合には、第1の電位Uに実質的に等しいか、又はマイナス(負)の値を有する場合には第1の電位Uから第2の電位Uを減算したものに実質的に等しい。他方で、この時間の上限は、第2の電圧Uが正の最大値を有する(又はゼロに等しい)場合には、第1及び第2の電位の和U+Uと実質的に等しい。また、第2の電位U2を、ゼロ(又は負の最大値)と最大値(又はゼロ)の間の少なくとも1つの中間値に切り替えることにより、2つのkVだけでなく、複数のkVの切り替え方法が実現される。これは、本発明の1つの重要な特徴である。
【0068】
2つのkV切り替え方法を複数のkVの切り替え方法に拡張することにより、コントラスト及び画像品質の改善された臨床画像が得られる。これは、スペクトルCT方法に特に有利である。更に、定量化、造影剤の定量化も可能になる。コントラスト対雑音比が向上するので、以下の利点が得られる。
−標準的なCT手順の検出能が向上する。
−必要な造影剤の量が減少する。
−従来のCT手順の検出能を維持しながら、X線量が減少する。
−例えば軟組織の良好なコントラストを要求する新たな用途が可能になる。
【0069】
更に、本発明の電源を用いてエネルギー情報を有するCT画像を提供することにより、CTシステムの機能的及び分子的撮像(例えば、Kエッジ撮像で撮像される大きなガドリニウム・クラスタを有する線維素を対象とする造影剤の使用)が可能になる。
【0070】
上述の電源とは別に、本発明は、少なくとも1つのX線検出器を用いた高速データ取得方法に関する他の特徴を有する。データ取得は、X線管に印加される高出力電位の切り替えにより同期して実行される。基本的に、特定の高出力電位の設定により、各高出力電位とは別に特定のスペクトルを有するX線放射が得られる。これは、n個の異なる高出力電位を設定するためのn個のサブフレーム画像データ値が得られることを意味する。
【0071】
検出したX線画像データを処理するために、検出したX線画像データ・セット毎に、X線管の実際の高出力電位に関する情報(つまり、X線のスペクトル情報)が必要である。このような情報を取得するために、関連する電源は、例えばアナログ電圧又はデジタル値、及びタイムスタンプを有するX線検出器の値と統合されるタイムスタンプ情報を生成する。
【0072】
計数読み出し電子機器を用いる場合、較正及び検索テーブル法により関連するX線放射スペクトルを設定する各高出力電位を相関させるために、電源の高出力電位の勾配からの情報も用いられる。
【0073】
一連の高出力電位は、ユーザーの選択した生成又は切り替え方式に従い変化する。このような可能な切り替え方式の1つは、高出力電位V(=U+U)が対称的及び段階的に増加及び減少し、図9Aに従い修正時間を最小化する方法である。最小の修正時間を達成するために、X線管17(19)は、格子スイッチ技術、例えば格子スイッチ部18(20)により更にオフに切り替えられ、新たな高出力電位が確定する。これは、異なるX線放射スペクトル画像同士の不鮮明な影響を低減する。
【0074】
別の可能な切り替え方式は、図9Bによる一連の非対称波形の高出力電位V、又はフレーム時間毎に複数の(対称及び非対称)波形を用いる。
【0075】
図9A及び図9BのV_mは、平均又は中間の高出力電位、例えば第1の一定の高電位Uである。V_offは、オフセット電圧、例えば制御可能な第2の低電位Uである。第2の低電位Uは、(少なくとも1つの)正と(少なくとも1つの)負電位(通常、V_offは正及び負の段の高さが同じである)との間で切り替えられる。
【0076】
必要に応じ、第1の高電位も調整される。両方の高出力電位の勾配は、最小限に(約20μ秒より低く)抑えられ、理想的には図9A、9Bに示されるような方形波を達成するようにするべきである。結果として生じる変位は較正できるので、各高出力電圧設定の高出力電圧に起こり得るリップルは、重要ではない。
【0077】
図10は、高電圧切り替え方式Hsと、時間同期した撮像装置のデータ取得方式Dsの関連の例を示す。データ取得システムDsは、各フレームF1、F2、F3内の測定したデータd1、d2、d3を、X線管17、19の高電圧V1、V2、V3に確実に割り当てるために、高電圧生成器101及び/又はX線セグメントの格子スイッチ部18、20と同期しなければならない。
【0078】
これは、図5に示された制御回路301と格子スイッチ部18、20との間の同期リンクにより実現される。これらのリンクを用い、格子スイッチ部18、20のトリガーは、データ取得部との同期を確保する制御回路301と同期される。
【0079】
図10の切り替え方式は、高電圧生成器101からのX線管電圧V1を、フレームF1内の測定したデータd1と、及び以降の電圧Vx(V2、V3)を同一フレーム内のデータdx(d2、d3)と相関させる。データ・ブロックd1、d2、d3は、1つの画像フレーム(例えば、フレームF1)内のサブフレーム測定値である。これらのサブフレームのデータは、所定の画像フレーム内で相関した電圧を有する、X線管17、19の異なるX線スペクトルによるエネルギー情報の計算に用いられる。サブフレーム情報は、これらの測定値は高時間分解能のためにさらに画像の相関を向上するために用いられる。
【0080】
図5では、格子スイッチは、望ましくは格子スイッチ部18、20を介して、制御回路301により互いに独立に制御される。
【0081】
本発明の手法は、検出器全体の構想を大きく変更することなくエネルギー検出が可能なので、従って実質的に標準的な構成要素を用いるので有利である。更に、二重X線管の概念も、本発明の方法で実現できる。
【0082】
本発明は、特に、従来の1画像フレーム内で異なるが良く知られた多色放射スペクトルを有する少なくとも2つの異なる高速切り替え可能な高出力電位で動作する従来のX線源を用いる。画像データは、従来のフレームをn個のサブフレームで置き換え、従来のCT検出器により取得される。サブフレームのタイミング及びX線管の電圧切り替えは、同期している。スペクトルCTモデルに従い取得したデータを処理することにより、コントラスト特性の向上した異なる臨床画像を生成できる。更に、当該方法は、Kエッジを有する造影剤を直接に測定可能である。その結果、血管内の硬化した血小板を識別するようなあらゆる新たな臨床的特徴を備えた画像のみを特徴とする定量化及び造影剤を可能にする。
【0083】
他の有意な利点は、従来のX線源を有する本発明の電源が、高価な単色シンクロトロン源の代わりに特定の用途の分野で用いられることである。このような用途の分野の1つは、Kエッジ撮像、特にKエッジ・デジタル・サブストラクション血管造影である。Kエッジ・デジタル・サブストラクション血管造影では、シンクロトロン源からの一般的に単色X線を用いる。詳細は、Rubenstein E.、Hofstadter Zeman HD、Thompson AC他、"Transvenous coronary angiography in humans using synchrotron radiation"、Proc.Natl. Acad. Sci.、米国、1986、83:9724-9728を参照のこと。
【0084】
このような用途では、造影剤を静脈注射した後、造影剤のKエッジ(ヨウ素又はガドリニウム)の上及び下の単色X線ビームで、2つの画像が生成される。2つの測定結果の対数を減算すると、正確に定量化できるヨウ素又はガドリニウム増強画像を得る。この技術は、Esteve他による「Coronary angiography with synchrotron X-ray sources on pigs after iodine or gadolinium intravenous injection」(Acad. Radiology 2002、Vol.9、Suppl.1、92-97)で分析され、冠動脈インターベンション後の患者に施される従来の撮像手順より侵撃性の低い技術として議論されている。
【0085】
従って、例えば血管腔に関する正確な定量化情報を有し、冠状動脈の非侵撃性に再生する手段が提供される。当該手段は、標準的なX線コンピューター断層撮像スキャナーに適用でき、特に、造影剤(ヨウ素又はガドリニウム)を用いる場合に適し、シンクロトロンX線源より遙かに安価である。
【0086】
更に、例えば冠状動脈の軸方向の寸法、及び冠状動脈が含有するヨウ素の量を計算することが可能になる。従って、狭窄を検出及び定量化できる。このような技術の一番の関心事は、選択的冠動脈血管造影に基づく最初の通常の冠状動脈血管造影の後に観察される狭窄に引き続き対処するのに適することである。 最後に、多くの異なるX線管スペクトル及び高出力電位が何故、どのように本発明のX線源と関連するスペクトルCT撮像の概念で必要なのかを短く纏める。
【0087】
スペクトルCTの特徴は、造影剤のみの画像を再構成できることである。この特徴を実施するため、少なくとも3つの異なる多色管スペクトルが必要である。この理由は、被走査体が、光電効果、つまりコンプトン効果とKエッジを有する造影剤(CM)の一次結合によりモデル化され得るからである。これを以下に説明する。
【0088】
線形減衰係数:
【0089】
【数1】

はエネルギー依存(及び位置独立)部分とエネルギー独立(及び位置依存)部分に分解される。この分解は、CTエネルギー領域で関連する2つの物理的処理を考慮して行う。つまり、光効果とコンプトン散乱である。光効果とコンプトン散乱は、それぞれ共通のエネルギー依存性E−3及びfKN(E)を有する。従って次式を得る。
【0090】
【数2】

ここで、fKN(E)はKlein-nishinaの公式である。しかしながら、造影剤(CM)を用いる冠状動脈撮像では、更に分解を導入することが有用である。
【0091】
【数3】

質量減衰係数をμ*(E)[cm/g]、
【0092】
【数4】

を面密度とすると、次式を得る。
【0093】
【数5】

光効果及びコンプトンの項は、造影剤の項の部分を含まないので、簡単な造影剤だけの画像再構成が可能になる。
【0094】
冠状動脈の硬化を扱うために、画像の硬化の部分を考慮した第4の加数が必要十分条件である。第4の加数は、血小板の厚さを定量化することを可能にする。つまり、線形減衰係数は、次式に従い分解される。
【0095】
【数6】

一般に、コンピューター断層撮像では、被走査体は、
【0096】
【数7】

により表されるm個の成分の混合した物質を有すると想定される。従って、測定される量Mは次式により表現できる。
【0097】
【数8】

ここで、
【0098】
【数9】

はm個の成分を表す。
【0099】
望ましくはn個の異なる平均エネルギーを有する異なる管スペクトル
【0100】
【数10】

に対し、1より多い測定値を考慮することにより、m個の未知数
【0101】
【数11】

を有するn個の非線形方程式を得る。
【0102】
【数12】

非線形方程式を(n≧mの場合に)これらの未知数について解くと、CT再構成は、実線積分から
【0103】
【数13】

を決定する。留意すべき点は、再構成された量は、密度、つまり被走査体内の物質の濃度に直接関連する量である。従って、このアプローチでも、位置の関数としての造影剤の密度が正確に得られる、血管腔が造影剤で満たされる場合には、血管腔に関する定量化情報が得られる。このような定量化情報は、冠動脈造影で重要な特徴である。
【0104】
特に、被走査体が組織、骨、及び場合によっては造影剤を有すると仮定すると、3つの異なる管電圧で3つの測定を行えば十分である。このアプローチは、異なる軟組織(t)物質が同様の質量減衰係数μt*(E)及び密度
【0105】
【数14】

を有するという(適正な)前提の下で機能する。ここで、骨(硬化)及び造影剤(ヨウ素又ガドリニウム)の質量減衰係数及び密度は、骨、ヨウ素及びガドリニウムの間で異なり、軟組織の質量減衰係数及び密度と十分に異なる。
【0106】
造影剤のKエッジ撮像では、検査中の造影剤のKエッジより下及び上の平均エネルギーを有するスペクトル、及び当該Kエッジに非常に近い平均エネルギーを有するスペクトルを提供する少なくとも3つの異なる管電圧を用いることが望ましい。
【0107】
別の技術的特徴は次の通りである。一式の非線形方程式は、数学的に、望ましくは最大尤度法により解かれる。システムが決定を終了すると、解は、より繊細且つ強靱になることが知られている。これは、3つの異なる物質のみの密度を再構成するために、3つより多くの異なる管スペクトル、及び測定値が望ましいことを意味する。留意すべき点は、提案された方法は、最終的な造影増強画像をうるために、従来の(巨大なシンクロトロンからの)単色X線を用いるKエッジ・デジタル減算血管造影の場合のように再構成画像を減算しないことである。この特徴は、完全な測定データのセットから再構成される画像内の雑音の点で、非常に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのX線源を有するX線生成システムへ供給する高出力電圧を生成する電源であって、
第1の電位を供給する少なくとも1つの第1の電圧源、第2の電位を供給する第2の電圧源を有し、
前記第1及び第2の電圧源は、前記高出力電圧を生成するためにカスケード接続され、
前記高出力電圧は、前記第1の電位と少なくとも実質的に等しい少なくとも1つの第1の高出力電位、及び前記カスケード接続された第1及び第2の電位と少なくとも実質的に等しい第2の高出力電位を有する、電源。
【請求項2】
前記第1の電圧源は、第1の高電位を供給する高電圧源であり、前記第2の電圧源は、前記第1の高電位より低い第2の電位を供給する低電圧源である、請求項1記載の電源。
【請求項3】
前記第1の高出力電位と前記第2の高出力電位との間で、前記電源の切り替え可能な出力端子を切り替えるスイッチ、を有する請求項1記載の電源。
【請求項4】
第1段から第z段を有する第1の高電圧増倍器を有し、
前記第1の電位は、段b及び段fの間から分岐され、
前記第2の電位は、段k及び段mの間から分岐され、
b<f≦k<m≦zである、請求項1記載の電源。
【請求項5】
前記第2の高電圧源は、約ゼロの第1の電位と少なくとも1つの所定の正又は負の第2の電位との間で高速切り替え可能である、請求項1記載の電源。
【請求項6】
制御回路を有し、
前記制御回路は、実際の高出力電位を検出し、及びそれぞれ前記第1及び第2の高電圧源のうちの少なくとも1つを制御する第1及び第2の制御信号の少なくとも1つを供給し、選択された高出力電位が生成されるようにする、請求項1記載の電源。
【請求項7】
前記制御回路は、同一のものを制御する少なくとも1つのX線管の少なくとも1つの格子スイッチ又は格子スイッチ部を制御する少なくとも1つの第3の制御信号を供給する、請求項6記載の電源。
【請求項8】
前記第1の高電圧源は、第1の高周波数インバーター、第1の共振回路、及び高電圧増倍器を動作させる第1の高電圧変圧器を有する、請求項1記載の電源。
【請求項9】
前記第2の電圧源は、制御可能な第2の高周波数インバーター、及び第2の高電圧変圧器に供給するための第2の共振回路、を有し、前記第2の高電圧変圧器は、AC電位の形式で前記第2の電位を生成する、請求項8記載の電源。
【請求項10】
前記第2の電圧源は、前記第2の高電圧のACレベルを調整し、前記第2の電位をDC電位の形式で生成する高電圧調整器、を有する請求項8記載の電源。
【請求項11】
前記第2の電圧源は、第2の高周波数インバーター、第2の共振回路、及び前記第2の高電位を生成する高電圧生成器に供給する第2の高電圧変圧器を有する、請求項8記載の電源。
【請求項12】
X線管生成システムであって、請求項1乃至11の少なくとも何れか一項記載の電源、及び少なくとも1つのX線管を有するX線管生成システム。
【請求項13】
コンピューター断層撮像(CT)装置であって、請求項12に記載のX線管生成システム、又は請求項1乃至11の少なくとも何れか一項記載の電源を有するコンピューター断層撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A−9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−503145(P2010−503145A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526220(P2009−526220)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053331
【国際公開番号】WO2008/026127
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】