説明

p38キナーゼ阻害剤としてのビフェニルカルボン酸アミド誘導体

式(I):
【化1】


の化合物またはその製薬上許容される誘導体、およびそれらの医薬品、特にp38キナーゼ阻害剤としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、ならびにある種の疾患および症状を治療するためのそれらの医薬品、特にp38キナーゼ阻害剤としての使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明者らは、p38キナーゼの阻害剤である一群の新規化合物を見出すに至った。
【0003】
本発明によれば、式(I):
【化1】

【0004】
〔式中、
R1は、オキソ、シアノおよび-S(O)pR4から独立して選択される1〜3個の基により置換されたC1-6アルキル、ならびにオキソ、シアノ、-S(O)pR4、OH、ハロゲン、C1-6アルコキシ、-NR5R6、-CONR5R6、-NCOR5、-COOR5、-SO2NR5R6、-NHSO2R5および-NHCONHR5から独立して選択される最大3個の基により置換されていてもよいC3-7シクロアルキルから選択され、
R2は、水素、C1-6アルキルおよび-(CH2)q-C3-7シクロアルキルから選択されるか、または
(CH2)mR1およびR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から独立して選択される1もしくは2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい4〜6員の複素環を形成し、ここで該環は、オキソ、C1-6アルキル、ハロゲンおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1もしくは2個の基により置換されていてもよく、
R3は、-CO-NH-(CH2)r-R8基または-NH-CO-R9基であり、
R4は、水素、C1-6アルキル、C1-4アルキルにより置換されていてもよいヘテロシクリル、およびフェニルから選択され、ここで該フェニルは、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルおよびハロゲンから独立して選択される最大2個の基により置換されていてもよく、
R5は、水素、C1-6アルキルおよびフェニルから選択され、ここで該フェニル基は、C1-6アルキルおよびハロゲンから選択される最大2個の置換基により置換されていてもよく、
R6は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄および窒素から選択される最大1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい5〜6員の複素環もしくはヘテロアリール環を形成し、ここで該環は最大2個のC1-6アルキル基により置換されていてもよく、
R7は、水素およびメチルから選択され、
rが0〜2である場合、R8は、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、CONHR5、R10および/またはR11により置換されていてもよいフェニル、R10および/またはR11により置換されていてもよいヘテロアリール、ならびにR10および/またはR11により置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、また
rが2である場合、R8はさらに、C1-6アルコキシ、NHCOR5、NHCONHR5、 NR5R6およびOHから選択され、
R9は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-(CH2)s-C3-7シクロアルキル、トリフルオロメチル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tフェニル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロアリール、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロシクリル、ならびにR12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)t縮合ビシクリルから選択され、
R10は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-CONR6R14、-NHCOR14、-SO2NHR14、-NHSO2R14、ハロゲン、トリフルオロメチル、1個以上のハロゲン原子もしくはC1-6アルキル基により置換されていてもよい-X-(CH2)j-フェニル、-X-(CH2)j-ヘテロシクリルまたは-X-(CH2)j-ヘテロアリールから選択され、ここで該ヘテロシクリル基または該ヘテロアリール基は、C1-6アルキルから選択される1個以上の置換基により置換されていてもよく、
R11は、C1-6アルキルおよびハロゲンから選択されるか、または
R10およびR11がオルト置換基である場合、それらが結合している炭素原子と一緒になって、R10およびR11は5〜6員で飽和もしくは不飽和の環を形成することにより縮合二環式の環系を与えてもよく、ここでR10とR11により形成される該環は、酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含有していてもよく、
R12は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-(CH2)s-C3-7シクロアルキル、-CONR15R16、-NHCOR16、-SO2NHR15、-NHSO2R16、ハロゲン、-(CH2)kNR17R18、オキシ、トリフルオロメチル、1個以上のR13基により置換されていてもよいフェニル、およびヘテロアリールから選択され、ここで該ヘテロアリールは1個以上のR13基により置換されていてもよく、
R13は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチルおよび-NR17R18から選択されるか、または
R12およびR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜6員で飽和もしくは不飽和の環を形成することにより縮合二環式の環系を与え、ここでR12とR13により形成される該環は、酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含有していてもよく、
R14は、水素およびC1-6アルキルから選択され、
R15は、水素、C1-6アルキルおよびフェニルから選択され、ここで該フェニル基は1個以上のR13基により置換されていてもよく、
R16は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R15およびR16は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい5〜6員の複素環を形成し、ここで該環は、最大2個のC1-6アルキル基により置換されていてもよく、
R17は、水素、C1-6アルキル、およびC1-6アルキルにより置換されていてもよい-(CH2)s-C3-7シクロアルキルから選択され、
R18は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R17およびR18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい3〜7員の複素環を形成し、ここで該環は最大1個の二重結合を含有していてもよく、かつ該環は1個以上のR19基により置換されていてもよく、
R19は、C1-6アルキル、オキシ、-CH2OC1-6アルキル、トリクロロメチルおよび-N(C1-6アルキル)2から選択され、
Xは、-O-および1個の結合から選択され、
Uは、メチルおよびハロゲンから選択され、
Wは、メチルおよび塩素から選択され、
VおよびYは、水素、メチルおよびハロゲンから各々独立して選択され、
mは、0、1、2、3および4から選択され、ここで得られる炭素鎖の各炭素原子はC1-6アルキルから独立して選択される1または2個の基で置換されていてもよく、さらにここで該C1-6アルキル基は最大3個のOH基で置換されていてもよく、
n、p、rおよびjは、0、1および2から独立して選択され、
qおよびkは、0、1、2および3から独立して選択され、そして
sおよびtは、0および1から独立して選択されるが、
R1が無置換C3-7シクロアルキルである場合、mは0、1、2、3および4から選択されず、ここで得られる炭素鎖の各炭素原子はC1-6アルキルから独立して選択される1または2個の基で置換されていてもよい〕
の化合物、またはその製薬上許容される誘導体が提供される。
【0005】
好適な実施形態では、式(I)の化合物の分子量は1000を超えず、より好ましくは800を超えず、さらにより好ましくは600を超えない。
【0006】
ある実施形態では、R1は、オキソ、シアノおよび-S(O)pR4から独立して選択される1または2個の基、好ましくは1個の基により置換されたC2-6アルキル(例えば、エチル、2-ブチル、イソブチルまたは2-メチルペンタ-2-イル)、ならびにOHおよびシアノから独立して選択される1または2個の基、好ましくは1個の基により置換されていてもよいC3-6シクロアルキルから選択される。R1の代表例としては、オキソにより置換されたC4-6アルキル(特に、-C(O)CH(CH3)2および-C(CH3)2CH2C(O)CH3)、シアノにより置換されたC2-4アルキル(特に、-CH2CH2CNおよび-C(CH3)(CH2CH3)CN)、-S(O)pR4により置換されたC2-4アルキル(特に、-CH2CH2SCH3および-CH2CH2SO2CH3)、ならびにOHまたはシアノにより置換されていてもよいC3-6シクロアルキル(特に、シクロプロピル、1-ヒドロキシシクロヘキシルおよび1-シアノシクロヘキシル)が挙げられる。
【0007】
ある実施形態では、R2は、水素、C1-4アルキルおよび-CH2-シクロプロピルから選択される。R2の代表例は水素である。
【0008】
あるいは、別の実施形態では、(CH2)mR1およびR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から独立して選択される1または2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい4〜6員の複素環を形成する。代表例としては、アゼチジニル環またはピロリジニル環が挙げられる。
【0009】
R3の代表例は-CO-NH-(CH2)r-R8である。
【0010】
ある実施形態では、R4は、水素、C1-4アルキルおよびフェニルから選択される。R4の代表例は、C1-4アルキル、特にメチルである。
【0011】
ある実施形態では、R5は、水素、C1-4アルキル、ならびにメチルおよびハロゲンから選択される最大2個の置換基により置換されていてもよいフェニルから選択される。
【0012】
ある実施形態では、R6は、水素およびC1-4アルキルから選択される。
【0013】
ある実施形態では、R8は、C1-4アルキル(特に、メチル、エチルまたはn-プロピル)、C3-6シクロアルキル(特に、シクロプロピルまたはシクロブチル)、CONHR5、R10および/またはR11により置換されていてもよいフェニル、ならびにR10および/またはR11により置換されていてもよいヘテロアリール(特に、チアゾリル、ピラゾリル、チアジアゾリルまたはピリジル)から選択される。R8の代表例は、C3-6シクロアルキル、特にシクロプロピルである。
【0014】
ある実施形態では、R9は、C1-4アルキル(特に、メチル、エチル、n-プロピルまたはイソブチル)、-(CH2)s-C3-6シクロアルキル(特に、シクロプロピル、-CH2-シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロペンチル)、トリフルオロメチル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tフェニル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロアリール(特に、R12および/またはR13により置換されていてもよい、フリル、-CH2-フリル、チエニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニルまたはピラジニル)、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロシクリル(特に、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニル)、ならびにR12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)t縮合ビシクリル(特に、キノリル)から選択される。
【0015】
ある実施形態では、R10は、C1-4アルキル(特に、t-ブチル)、-CONR6R14(特に、-CONH2)、-NHCOR14(特に、-NHCOCH3)、塩素またはメチルにより置換されていてもよい-X-(CH2)j-フェニル、ならびに-X-(CH2)j-ヘテロシクリルまたは-X-(CH2)j-ヘテロアリール(特に、ピロリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピリジニル、ピリミジニルまたはオキサジアゾリル)から選択され、ここで該ヘテロシクリル基または該ヘテロアリール基は、C1-6アルキルから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0016】
ある実施形態では、R11はハロゲンである。
【0017】
ある実施形態では、R12は、C1-4アルキル(特に、メチルまたはエチル)、C1-4アルコキシ(特に、メトキシ)、-(CH2)s-C3-6シクロアルキル(特に、シクロプロピルまたはシクロヘキシル)、ハロゲン(特に、塩素)、-(CH2)k-NR17R18、1個以上のR13基により置換されていてもよいフェニル、ならびにヘテロアリール(特に、フリル、チエニル、ピロリルまたはピリジル)から選択され、ここで該ヘテロアリールは1個以上のR13基により置換されていてもよい。
【0018】
ある実施形態では、R13は、C1-2アルキル(特に、メチル)、ハロゲン(特に、フッ素または塩素)、トリフルオロメチルおよび-NR17R18から選択される。
【0019】
ある実施形態では、R14はC1-4アルキルである。
【0020】
ある実施形態では、R15は、水素およびC1-4アルキルから選択される。
【0021】
ある実施形態では、R16は、水素およびC1-4アルキルから選択される。
【0022】
ある実施形態では、R17は、水素、C1-4アルキル(特に、メチル、エチルまたはイソブチル)、および-(CH2)s-C3-6シクロアルキル(特に、シクロプロピル、-CH2-シクロプロピル、シクロブチルまたはシクロヘキシル)から選択される。
【0023】
ある実施形態では、R18は、水素およびC1-4アルキルから選択される。
【0024】
別の実施形態では、R17およびR18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい5〜6員の複素環を形成し、また該環は1個以上のR19基により置換されていてもよい。
ある実施形態では、R19は、C1-4アルキル(特に、メチル)、オキシ、-CH2OC1-4アルキル(特に、-CH2OCH3)、および-N(C1-6アルキル)2(特に、-N(CH3)2)から選択される。
【0025】
ある実施形態では、Xは1個の結合である。
【0026】
ある実施形態では、Uは、メチルまたはフッ素である。
【0027】
Wの代表例はメチルである。
【0028】
ある実施形態では、VおよびYは、水素、塩素およびフッ素から各々独立して選択される。Vの代表例はフッ素である。Yの代表例は水素である。
【0029】
ある実施形態では、R1が無置換C3-7シクロアルキルである場合、mは1、2、3および4から選択され、ここで得られる炭素鎖の少なくとも1個の炭素原子はC1-6アルキルから独立して選択される1または2個の基で置換されており、さらにここで該C1-6アルキルは1〜3個のOH基により置換されている。別の実施形態では、mは0、1および2から選択され、またmの炭素鎖が置換されている場合、これらの置換基は、好ましくは1または2個のOH基により置換されていてもよい1または2個のメチル基である。mの代表例としては0および1が挙げられ、その炭素鎖は、OHにより置換されていてもよい1または2個のメチル基により置換されていてもよい。
【0030】
ある実施形態では、nは、0および1から選択される。nの代表例は0である。
【0031】
pの代表例は0および2である。
【0032】
ある実施形態では、rは、0および1から選択される。rの代表例は0である。
【0033】
ある実施形態では、sは0である。
【0034】
ある実施形態では、tは0である。
【0035】
ある実施形態では、jは、0および1から選択される。
【0036】
ある実施形態では、kは、0、1および2から選択される。
【0037】
本発明は上記の特定の基および好適な基の全ての組み合わせを対象とすることを理解されたい。
【0038】
本発明の特定の化合物としては、後述の実施例において言及したもの、およびそれらの製薬上許容される誘導体が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用する場合、「製薬上許容される」という用語は、製薬学的用途に適した化合物を意味する。医薬品に使用するのに適した本発明の化合物の塩および溶媒和物とは、その対イオンまたは会合溶媒が製薬上許容されるものである塩および溶媒和物である。しかし、例えば、本発明の他の化合物ならびにその製薬上許容される塩および溶媒和物の調製における中間体として使用するための、製薬上許容されない対イオンまたは会合溶媒を有する塩および溶媒和物も、本発明の範囲内にある。
【0040】
本明細書中で使用する場合、「製薬上許容される誘導体」という用語は、受容者に投与された場合に本発明の化合物またはその活性代謝物もしくは活性残基を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物の製薬上許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグ(例えば、エステル)を意味する。かかる誘導体は、当業者であれば過度の実験を行わずに認識することができる。とは言え、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 第5版、第1巻: Principles and Practiceの教示内容を参照する(この文献は、かかる誘導体について教示する程度まで、参照により本明細書に含まれるものとする)。好適な製薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物、エステル、カルバミメートおよびリン酸エステルである。特に好適な製薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物およびエステルである。最も好適な製薬上許容される誘導体は、塩およびエステルである。
【0041】
本発明の化合物は、製薬上許容される塩の形態であってもよく、および/または製薬上許容される塩として投与してもよい。適切な塩に関する概説については、Bergeら、J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19を参照されたい。
【0042】
典型的には、製薬上許容される塩は、必要に応じて所望の酸または塩基を使用することにより、容易に調製することができる。該塩は、溶液から析出させてからこれを濾過により集めることができ、溶媒の蒸発により回収することもできる。
【0043】
本発明の化合物の塩は、例えば、酸と式(I)の化合物中に存在する窒素原子との反応で生じた酸付加塩を含みうる。「製薬上許容される塩」という用語に包含される塩は、本発明の化合物の非毒性塩を指す。適切な付加塩は非毒性塩を形成する酸から形成され、その具体例は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルリゾルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、リン酸水素塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエート(hydroxy naphthoate)、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル塩、硝酸メチル塩、硫酸メチル塩、マレイン酸一カリウム(monopotassium maleate)塩、ムケート(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸、パモ酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サッカレート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、トリフルオロ酢酸塩および吉草酸塩である。
製薬上許容される塩基性塩としては、トリメチルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムの塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムの塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにイソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびN-メチル-D-グルカミンなどの第1、第2および第3アミンの塩を含む有機塩基との塩が挙げられる。
【0044】
有機化学分野の当業者であれば、多くの有機化合物が、それらがその中で反応する溶媒、またはそれらがそこから析出もしくは結晶化する溶媒と複合体を形成しうることが理解されよう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。本明細書中で使用する場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明では、式(I)の化合物またはその塩)と溶媒で構成される様々な化学量論の複合体を指す。本発明の目的ためのかかる溶媒は、溶質の生物活性に干渉してはならない。適切な溶媒の例としては、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。好ましくは、使用する溶媒は、製薬上許容される溶媒である。適切な製薬上許容される溶媒の例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。最も好ましくは、使用する溶媒は水である。水との複合体は「水和物」として知られている。本発明の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内にある。
【0045】
本明細書中で使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、体内で、例えば血中における加水分解により、医療効果を有するその活性形態へと転換される化合物を意味する。製薬上許容されるプロドラッグは、A.C.S. Symposium SeriesのT. HiguchiおよびV. Stella, Prodrug as Novel Delivery Systems, 第14巻、Edward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987、およびD.Fleisher、S.RamonおよびH. Barbra “Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs”, Advanced Drug Delivery Reviews (1996) 19(2) 115-130に記載されており、これらの文献は各々が参照により本明細書に含まれるものとする。
【0046】
プロドラッグは、かかるプロドラッグを患者に投与した場合にin vivoで式(I)の化合物を放出する、共有結合したキャリアである。プロドラッグは一般に、通常の操作により、またはin vivoで、その修飾が切断されて親化合物を生じるように官能基を修飾することにより調製する。プロドラッグとしては、例えば、ヒドロキシ基、アミン基またはスルフヒドリル基が、患者に投与された場合に切断されて該ヒドロキシ基、該アミン基または該スルフヒドリル基を生じる基に結合している本発明の化合物が挙げられる。従って、プロドラッグの代表例としては(限定するものではないが)、式(I)の化合物のアルコール、スルフヒドリルおよびアミン官能基の酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体が挙げられる。さらに、カルボン酸(-COOH)の場合には、メチルエステル、エチルエステルなどのエステルを使用してもよい。エステルは、それ自体が独立して活性であるか、および/または人体内のin vivo条件下で加水分解されるものでありうる。適切な、製薬上許容されるin vivo加水分解型のエステル基としては、人体内で容易に崩壊して親酸またはその塩を残すものが挙げられる。
【0047】
本明細書中で使用する場合、「アルキル」という用語は、指定数の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖を指す。例えば、C1-6アルキルとは、少なくとも1個、および最大6個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルを意味する。本明細書中で使用する「アルキル」の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、イソプロピル、t-ブチルおよびヘキシルが挙げられる。C1-4アルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピルまたはt-ブチルが好ましい。該アルキル基は、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよく、例えばトリフルオロメチルが挙げられる。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、指定数の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基を指す。例えば、C1-6アルコキシとは、少なくとも1個、および最大6個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖状のアルコキシを意味する。本明細書中で使用する「アルコキシ」の例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロパ-2-オキシ、ブトキシ、ブタ-2-オキシ、2-メチルプロパ-1-オキシ、2-メチルプロパ-2-オキシ、ペントキシおよびヘキシルオキシが挙げられる。C1-4アルコキシ基、例えば、メトキシまたはエトキシが好ましい。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、指定数の炭素原子を含有し、最大1個の二重結合を含んでいてもよい非芳香族炭化水素環を指す。例えば、C3-7シクロアルキルとは、少なくとも3個、および最大7個の環炭素原子を含有する非芳香族環を意味する。本明細書中で使用する「シクロアルキル」の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが挙げられる。C3-6シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルが好ましい。R1がC3-7シクロアルキル基である場合、該シクロアルキル基はC1-6アルキルおよびフェニルから選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0050】
本明細書中で使用する場合、「ヘテロアリール環」および「ヘテロアリール」という用語は、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、単環式で 5〜7員の不飽和炭化水素環を指す。好ましくは、ヘテロアリール環は、5または6個の環原子を有する。ヘテロアリール環の例としては、限定するものではないが、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびトリアジニルが挙げられる。該環は、C1-6アルキルおよびオキシから独立して選択される1個以上の置換基により置換されていてもよい。
【0051】
本明細書中で使用する場合、「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、単環式で3〜7員の、飽和または非芳香族で不飽和の炭化水素環を指す。好ましくは、ヘテロシクリル環は、5または6個の環原子を有する。ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルおよびチオモルホリノが挙げられる。該環は、C1-6アルキルおよびオキシから独立して選択される1個以上の置換基により置換されていてもよい。
【0052】
本明細書中で使用する場合、「縮合二環式の環系(fused bicyclic ring system)」という用語は、2個の5〜7員で飽和または不飽和の環を含む環系を指し、該環系は、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい。好ましくは、各環は5または6個の環原子を有する。適切な縮合二環式の環の例としては、限定するものではないが、ナフチル、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、インドリニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、テトラヒドロキノリル、ベンゾジオキサニル、インダニルおよびテトラヒドロナフチルが挙げられる。各環は、ハロゲン、C1-6アルキル、オキシ、-(CH2)kNR17R18、-CO(CH2)kNR17R18、およびイミダゾリルから独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。特に好適な置換基は、塩素、イミダゾリルおよび-CH2-N(CH3)2である。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、元素であるフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。好適なハロゲンは、フッ素、塩素および臭素である。特に好適なハロゲンはフッ素または塩素である。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「〜されて(して)いてもよい(optionally)」という用語は、その後に記載された事象が起こっても起こらなくてもよいこと、および該事象が起こる事象と起こらない事象の両方を含むこと、を意味する。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「置換(substituted)」という用語は、指定された単数または複数の置換基による置換を指し、特に明記しない限り、多段階の置換が含まれる。
【0056】
立体異性体に関して言えば、構造(I)の化合物は、1個以上の不斉炭素原子を有する場合があり、またラセミ化合物、ラセミ混合物および個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在する場合がある。全てのかかる異性体は、その混合物を含め、本発明に包含される。
【0057】
シス(E)およびトランス(Z)異性が生じる場合もある。本発明は、本発明の化合物の個々の立体異性体、および必要に応じて、その個々の互変異性型を、その混合物と共に包含する。
【0058】
ジアステレオ異性体またはシスおよびトランス異性体の分離は、従来技術により、例えば、分別結晶法、クロマトグラフィーまたはH.P.L.C.により達成することができる。また、物質の立体異性混合物は、必要に応じて、対応する光学的に純粋な中間体から、または適切なキラル支持体を使用する対応ラセミ混合物のH.P.L.C.などの分割により、または対応するラセミ混合物と適切な光学活性酸もしくは塩基との反応により形成されたジアステレオ異性体の塩の分別結晶により、調製することもできる。
【0059】
さらに、構造(I)の化合物の結晶形の一部は多形として存在する場合があるが、該多形は本発明に含まれる。
【0060】
本発明の化合物は、標準化学を含む様々な方法により作製することができる。先に定義した変数はいずれも、特に明記しない限り、引き続き先に定義した意味を有するものとする。例示的な一般合成法を以下に記載した後、本発明の具体的な化合物を実施例において調製する。
【0061】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(A)は、下記スキーム1に示す反応を含む。
スキーム1
【化2】

【0062】
(i) R1(CH2)mNR2H、Et3N、THF
(ii) ビス(ピナコラート)ジボロン、PdCl2dppf、KOAc、DMF
(iii) (Ph3P)4Pd、Na2CO3、DME
(iv) (COCl)2、DMF
(v) R8NH2、ピリジン
(vi) R8NH2、PyBOP、HOBT、DIPEA、DMF。
【0063】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(B)は、下記スキーム2に示す反応を含む。
スキーム2
【化3】

【0064】
(i) R8NH2、HATU、HOBT、DIPEA、DMF
(ii) (4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸、(Ph3P)4Pd、Na2CO3、DME
(iii) NaOH、MeOH、H2O
(iv) R1(CH2)mNR2H、HATU、HOBT、DIPEA、THF。
【0065】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(C)は、下記スキーム3に示す反応を含む。
スキーム3
【化4】

【0066】
(i) CsCO3、(Ph3P)4Pd、DME
(ii) (COCl)2、CHCl3
(iii) R8NH2
(iv) NaOH、MeOH、H2O
(v) 1-メチルスルホニルベンゾトリアゾール、Et3N、THF、DMF
(vi) R1(CH2)mNR2H、THF。
【0067】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(D)は、下記スキーム4に示す反応を含む。
スキーム4
【化5】

【0068】
(i) ジ-t-ブチルジカーボネート、Et3N、DCM
(ii) (4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸、(Ph3P)4Pd、CsCO3、DME
(iii) LiOH、THF、H2O
(iv) R1(CH2)mNR2H、HATU、DIPEA、THF
(v) TFA、DCM
(vi) R9COOH、HATU、DIPEA、DMF。
【0069】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(E)は、下記スキーム5に示す反応を含む。
スキーム5
【化6】

【0070】
(i) (4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸、(Ph3P)4Pd、CsCO3、DME
(ii) R9COOH、HATU、DIPEA、DMF
(iii) LiOH、THF、H2O
(iv) R1(CH2)mNR2H、HATU、DIPEA、THF。
【0071】
例えば、R9が以下:
【化7】

【0072】
である式(I)の化合物を調製するための一般法(F)は、下記スキーム6に示す反応を含む。
スキーム6
【化8】

【0073】
(i) Et3N、DCM
(ii) LiOH、THF、H2O
(iii) R’R’’NH
(iv) R1(CH2)mNR2H、HATU、DIPEA、THF。
【0074】
例えば、式(I)の化合物を調製するための一般法(G)は、下記スキーム7に示す反応を含む。
スキーム7
【化9】

【0075】
(i) (4-メトキシカルボニルフェニル)ボロン酸、(Ph3P)4Pd、CsCO3、DME
(ii) LiOH、THF、H2O
(iii) R1(CH2)mNR2H、HATU、DIPEA、THF
(iv) R9COCl、Et3N、DCM。
【0076】
従って、本発明によれば、式(I)の化合物を調製するための方法であって、以下:
(a) 式(XXII):
【化10】

【0077】
〔式中のR1、R2、U、W、V、Y、mおよびnは、先に定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXIII):
R8-(CH2)r-NH2 (XXIII)
〔式中のR8およびrは、先に定義した通りである〕
の化合物と反応させること(必要に応じて、酸化合物(XXII)を、例えば塩化オキサリルで処理することにより、該酸の活性型、例えば酸塩化物に転換し、その結果形成された活性酸をアミン化合物(XXIII)と反応させることができる)、
(b) 式(XXIV):
【化11】

【0078】
〔式中のR3、U、W、V、Yおよびnは、先に定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXV):
R1(CH2)mNR2H (XXV)
〔式中のR1、R2、mおよびnは、先に定義した通りである〕
の化合物と反応させること、
(c) 式(XXVI):
【化12】

【0079】
〔式中のR3、U、W、V、Yおよびnは、先に定義した通りである〕
の化合物を、先に定義した式(XXV)の化合物と反応させること、
(d) 式(XXVII):
【化13】

【0080】
〔式中のW、V、YおよびR3は、先に定義した通りである〕
の化合物を、触媒、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの存在下で、式(XXVIII):
【化14】

【0081】
〔式中のR1、R2、U、mおよびnは先に定義した通りであり、かつhalはハロゲン、特に、臭素もしくはヨウ素である〕
の化合物と反応させること、または
(e) 式(XXIX):
【化15】

【0082】
〔式中のR1、R2、U、W、V、Y、mおよびnは、先に定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXX):
R9CO2H (XXX)
〔式中のR9は先に定義した通りである〕
の化合物と反応させること(必要に応じて、酸化合物(XXX)を、該酸の活性型、例えば酸塩化物に転換し、その結果形成された活性酸を、アミン化合物(XXIX)と反応させることができる)
を含む前記方法が提供される。
【0083】
適切なアミド形成条件は当分野で周知であり、該条件としては、例えばTHF中の酸の溶液を、例えば、HOBT、HATUおよびDIPEAの存在下で、アミンを用いて処理することが挙げられる。
【0084】
当業者であれば、本発明の化合物またはその溶媒和物の調製時に、分子内の1個以上の感受性基を保護することにより望ましくない副反応を防ぐことが必要であるか、または望ましい場合があることは理解されよう。本発明に従って使用するための適切な保護基は当業者に周知であり、またそれらの保護基は従来のやり方で使用することができる。例えば、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる“Protective groups in organic synthesis”(John Wiley & sons 1991)またはP.J. Kocienskiによる“Protecting Groups”(Georg Thieme Verlag 1994)を参照されたい。適切なアミノ保護基の例としては、アシル型の保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチル、アセチル)、芳香族ウレタン型の保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および置換されたCbz)、脂肪族ウレタン保護基(例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニル (Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル)ならびにアルキル型の保護基(例えば、ベンジル、トリチル、クロロトリチル)が挙げられる。適切な酸素保護基の例としては、例えば、トリメチルシリルもしくはtert-ブチルジメチルシリルなどのアルキルシリル基、テトラヒドロピラニルもしくはtert-ブチルなどのアルキルエーテル、または酢酸塩などのエステルを挙げることができる。
【0085】
本発明の化合物は原化学物質として投与することができるが、式(I)の化合物およびその製薬上許容される誘導体は、例えば、この物質が目的とする投与経路および標準的な薬務に関して選択された適切な製薬学的賦形剤、希釈剤および/または担体との混合物である場合、医薬組成物の形で投与すると都合が良い。
【0086】
従って、本発明の別の態様では、本発明者らは、少なくとも1種の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を、1種以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤および/または担体と共に含む医薬組成物を提供する。賦形剤、希釈剤または担体は、製剤中の他の成分に適合し、かつその受容者にとって有害ではないという意味で「許容される」ものでなくてはならない。
【0087】
さらなる態様によれば、本発明は、療法、特にp38キナーゼの阻害剤により改善されうる症状に苦しむヒトまたは動物被験体の治療に使用するための、有効成分として少なくとも1種の本発明の化合物またはその製薬上許容される誘導体を、1種以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤および/または担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0088】
また本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物と、製薬上許容される賦形剤、希釈剤および/または単体(それらの組み合わせを含む)とを含む医薬組成物を提供する。
【0089】
本発明により、医薬組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の本発明の化合物またはその製薬上許容される誘導体を製薬上許容される賦形剤、希釈剤および/または担体と一緒に混合することを含む前記方法がさらに提供される。
【0090】
前記医薬組成物は、医学または獣医学においてヒトまたは動物に使用するためのものであってよく、典型的には1種以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む。治療に使用するための許容される担体または希釈剤は製薬分野で周知であり、これらは例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。製薬学的賦形剤、希釈剤または担体の選択は、目的とする投与経路および標準的な薬務を考慮して行うことができる。前記医薬組成物は、賦形剤、希釈剤もしくは担体として、またはこれらに加えて、適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、被覆剤および可溶化剤を含んでいてもよい。
【0091】
保存剤、安定剤、染料、さらには香味剤を、前記医薬組成物にに提供することができる。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤および懸濁化剤を使用することもできる。
【0092】
幾つかの実施形態では、本発明の薬剤を、シクロデキストリンと組み合わせて使用することもできる。シクロデキストリンは薬物分子との包接または非包接複合体を形成することが知られている。薬物-シクロデキストリン複合体の形成により、薬物分子の溶解度、溶出速度、バイオアベイラビリティーおよび/または安定性が変更される場合がある。薬物-シクロデキストリン複合体は、一般に、大抵の剤形および投与経路にとって有用である。薬物との直接的な複合体形成の代わりに、シクロデキストリンを補助添加物、例えば、担体、希釈剤または可溶化剤として使用してもよい。α-、β-およびγ-シクロデキストリンが最も一般的に使用されており、それらの適切な例は、国際公開第91/11172号、国際公開第94/02518号および国際公開第98/55148号に記載されている。
【0093】
本発明の化合物を湿式粉砕などの公知の粉砕方法を利用して粉砕することにより、錠剤形成および他の製剤型に適した粒径とすることができる。本発明の化合物の微粉化(ナノ粒子状)調製物は、当分野で公知の方法(例えば、国際公開第02/00196号(SmithKline Beecham)を参照されたい)により調製することができる。
【0094】
種々の送達系に応じて、組成物/製剤要件が異なりうる。1例としては、本発明の医薬組成物を、例えば鼻腔用スプレーもしくは吸入用エアロゾルもしくは摂取可能な溶液としてミニポンプを利用して、または粘膜経路により、あるいは非経口的に(この場合、該組成物は、例えば、静脈内、筋内または皮下経路により送達するための注射剤形により処方される)送達されるように製剤化することができる。あるいは、該製剤を、両方の経路で送達されるように設計することができる。
【0095】
前記の薬剤が胃腸粘膜を介して粘膜的に送達される場合、該薬剤は、胃腸管通過中は安定であり続けることが可能であるべきである。例えば、該薬剤は、タンパク質分解に対して抵抗性であり、酸性pHで安定であり、また胆汁の界面活性作用に対して抵抗性であるべきである。
【0096】
適当な場合には、前記医薬組成物を、吸入により、坐薬もしくはペッサリーの形で、ローション、溶液、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形で局所的に、皮膚用パッチを使用して、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形で経口的に、またはカプセル剤もしくは胚珠(ovules)として単独で、もしくは賦形剤との混合物として、または香味剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤、溶液もしくは懸濁液の形で投与することができ、あるいはそれらを非経口的に、例えば、静脈内に、筋内に、または皮下に注射することができる。非経口投与の場合、前記組成物を、他の薬剤、例えば、血液と等張の溶液を作製するのに十分な塩または単糖類を含有しうる滅菌水溶液の形で使用すると最も良い。口腔内または舌下投与の場合、前記組成物を、従来のやり方で製剤化しうる錠剤またはトローチ剤の形で投与することができる。
【0097】
投与(送達)経路としては、限定するものではないが、経口(例えば、錠剤、カプセル剤として、もしくは摂取可能な溶液として)、局所、粘膜(例えば、鼻腔用スプレーまたは吸入用エアロゾルとして)、鼻腔内、非経口(例えば、注射剤形により)、消化管、髄腔内、腹腔内、筋内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、大脳内、皮下、眼内(硝子体内もしくは眼房内を含む)、経皮、直腸内、口腔内、硬膜外および舌下、のうちの1つ以上が挙げられる。前記化合物の全てが同一経路によって投与される必要は無いことは理解されよう。同様に、前記組成物が1つ以上の活性成分を含む場合、それらの成分を異なる経路で投与することができる。
【0098】
式(I)の化合物ならびにそれらの製薬上許容される塩および溶媒和物は、適切なやり方で投与するために製剤化することができる。それらは、例えば、局所投与もしくは吸入による投与のために、またはより好ましくは、経口、経皮もしくは非経口投与のために、製剤化することができる。この医薬組成物は、式(I)の化合物およびそれらの製薬上許容される誘導体の制御放出を達成しうるような形態とすることができる。好適な実施形態では、本発明の薬剤を、経口投与、口腔内投与または舌下投与などの全身投与により送達する。特に好適な投与方法、およびこれに対応する製剤は、経口投与である。
【0099】
経口投与の場合、前記医薬組成物は、例えば、即時-、遅延-、調節-、持続-、パルス-または制御-放出用途のための許容される賦形剤を用いて従来の手段により調製される、錠剤(舌下錠を含む)およびカプセル剤(それぞれ、徐放製剤および持続放出製剤を含む)、胚珠、丸剤、粉末、粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、エマルジョン、溶液、シロップまたは懸濁液の形をとることができ、またかかる形で投与することができる。
【0100】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形で経口投与する場合、有効な薬物成分を、エタノール、グリセロール、水などの経口用で非毒性の製薬上許容される不活性担体と組み合わせることができる。また錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカのデンプン)、グリコールデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの顆粒結合剤を含有していてもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの滑沢剤が含まれていてもよい。
【0101】
同じタイプの固体組成物は、ゼラチン製カプセル剤の充填剤として使用することもできる。この点で好適な賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤の場合、前記の薬剤を、様々な甘味剤または香味剤、着色剤または染料、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにそれらの組み合わせ、と組み合わせることができる。
【0102】
粉末は、前記化合物を細分して適切な微細サイズとし、これを同様に細分した食用糖質、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの製薬学的担体と混合することにより、調製する。また、香味剤、保存剤、分散剤および着色剤も存在しうる。
【0103】
カプセル剤は、上記の粉末混合物を調製し、これを成形済みのゼラチン鞘に充填することにより作製することができる。コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールなどの流動促進剤および滑沢剤を、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。また、アガー-アガー、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を加えることにより、カプセル剤が摂取された際のこの薬剤の有効性を改善することもできる。
【0104】
さらに、所望であるかまたは必要である場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を前記混合物中に組み入れることもできる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ-ラクトース、トウモロコシ甘味剤)、天然および合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0105】
錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、造粒するかまたは強打し、滑沢剤および崩壊剤を加えてから加圧して錠剤とすることにより、調製する。粉末混合物は、適切に細分した前記化合物を上記の希釈剤または基剤、および状況に応じて、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、パラフィンなどの溶解遅延剤、第4級塩などの吸収促進剤および/またはベントナイト、カオリンもしくは第二リン酸カルシウムなどの吸収剤と混合することにより、調製する。粉末混合物は、シロップ、デンプン糊、アラビアゴム粘液またはセルロース系材料もしくは高分子材料の溶液で湿らせてからこれを強引に篩に通すことにより、造粒することができる。造粒の別法として、粉末混合物を錠剤機に通すことができる。その結果得られるのは不完全に形成された小塊であり、これが壊れて顆粒となる。ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えて該顆粒を滑らかにすることにより、錠剤成形鋳型にくっつくのを防ぐことができる。その後、この滑らかにした混合物を圧縮して錠剤とする。また、本発明の化合物を流動性の不活性担体と組み合わせて、これを造粒または強打段階を経ずに直接圧縮して錠剤とすることができる。セラックの密閉被膜からなる透明または不透明な保護被膜、糖または高分子材料の被膜、およびワックスの磨き被膜を施すことができる。染料をこれらの被膜に加えることにより、種々の単位投与量を識別することができる。
【0106】
溶液、シロップおよびエリキシル剤などの経口用の流体は、単位投与形態として調製することにより、一定量中に所定の量の前記化合物が含まれるようにすることができる。シロップは前記化合物を適切に味付けした水溶液中に溶かすことにより調製できるが、エリキシル剤は非毒性アルコール媒体を使用して調製する。懸濁液は、前記化合物を非毒性媒体中に分散させることにより製剤化できる。また、可溶化剤および乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、香味用添加物(例えば、ペパーミント油またはサッカリン)などを加えることもできる。
【0107】
適当な場合には、経口投与用の投与単位製剤をマイクロカプセル化することができる。また該製剤は、例えば粒子材料をポリマー、ワックスなどで被覆するかまたはそれらに埋め込むことにより、放出を延長するかまたは持続させるように調製することもできる。
【0108】
また本発明の化合物は、小型単層小胞体、大型単層小胞体および多層小胞体などのリポソーム送達系の形で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0109】
また本発明の化合物は、小型単層小胞体、大型単層小胞体および多層小胞体などのリポソームエマルジョン送達系の形で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0110】
また本発明の化合物は、モノクローナル抗体を、該化合物分子を結合させる個々の担体として利用して、送達することもできる。また本発明の化合物は、標的としうる薬物担体としての可溶性高分子と結合させることもできる。かかる高分子としては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成する際に有用な一群の生分解性高分子、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体に結合させることができる。
【0111】
本発明は、0.1〜99.5%、より詳しくは0.5〜90%の式(I)の化合物を製薬上許容される担体と共に含有する医薬組成物を含む。
【0112】
同様に、前記組成物は、鼻腔内、眼内、耳内、直腸内、局所、静脈内(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内、関節内、皮下または筋内、吸入または吹送の形態で投与することもできるが、これら全ての使用形態は医薬分野における通常の技術を有する者にとって周知である。
【0113】
経皮投与の場合、前記医薬組成物は、経皮イオン泳動パッチなどの経皮パッチの形で投与することができる。
【0114】
本発明の化合物を非経口的に投与する場合、かかる投与の例としては、この薬剤を、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋内または皮下に投与すること、および/または注入技術を利用して投与すること、のうちの1つ以上が挙げられる。非経口投与の場合、前記医薬組成物を、注射または持続注入(例えば、静脈内、血管内もしくは皮下)で投与することができる。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形をとることができ、また懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用薬剤を含有していてもよい。注射による投与の場合、これらは、好ましくは添加保存剤と共に、単位投与形態または複数回投与形態の形をとることができる。非経口投与の代わりに、有効成分を、適切なビヒクルで再構成するための粉末形態とすることができる。非経口投与の場合、前記化合物を、他の薬剤、例えば、血液と等張の溶液を作製するのに十分な塩またはグルコースを含有しうる滅菌水溶液の形で使用するのが最も良い。該水溶液は、必要ならば、適切に(好ましくは、pH3〜9に)緩衝化する。無菌状態での適切な非経口用製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術により容易に達成される。
【0115】
本発明の化合物は、直接注射により投与することができる。
【0116】
また本発明の化合物は、デポー調製物として製剤化することもできる。かかる長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下もしくは筋内への移植)または筋内注射により投与することができる。従って、例えば、本発明の化合物を、適切な高分子材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂を用いて、またはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として、製剤化することができる。
【0117】
あるいは、前記組成物は、局所適用のために、例えば軟膏、クリーム、ローション、眼軟膏、点眼液、点耳液、うがい薬、含浸包帯および縫合剤(sutures)およびエアロゾルの形で製剤化することができ、また例えば、保存剤、薬物透過を支援するための溶媒、ならびに軟膏およびクリーム中の皮膚軟化剤を含む適当な従来の添加物を含有していてもよい。また、かかる局所用製剤は、適合性の従来の担体、例えば、クリームまたは軟膏基剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールを含有していてもよい。かかる担体は、該製剤の約1重量%〜約98重量%を占める場合があるが、通常は最大で該製剤の約80重量%を占める。
【0118】
皮膚に局所的に適用する場合、本発明の薬剤は、例えば、以下:鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウおよび水、のうちの1種以上との混合物中に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適切な軟膏として製剤化することができる。
【0119】
あるいは、本発明の薬剤は、例えば、以下:鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水、のうちの1種以上の混合物中に懸濁または溶解した適切なローションまたはクリームとして製剤化することができる。
【0120】
吸入による投与の場合、本発明の化合物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン(例えば、テトラフルオロエタンもしくはヘプタフルオロプロパン)、二酸化炭素または他の適切な気体を利用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー形態の形で送達されると都合が良い。加圧エアロゾルの場合、その投与単位は、一定量を送達するためのバルブを提供することにより決定できる。カプセル剤、および吸入器または吹送器に使用するための、例えばゼラチン製のカートリッジは、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0121】
あるいは、本発明の化合物は、坐薬またはペッサリーの形で投与することができ、またはゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形で局所的に適用することができる。
【0122】
また本発明の化合物は、経肺または経直腸経路により投与することもできる。それらはまた、経眼経路により投与することもできる。目に使用する場合、該化合物は、等張でpH調整された、滅菌生理食塩水中の微粉末化懸濁物として、または好ましくは、等張でpH調整された、滅菌生理食塩水中の溶液として、状況に応じて塩化ベンジルアルコニウムなどの保存剤と共に、製剤化することができる。あるいは、それらをワセリンなどの軟膏として製剤化することができる。
【0123】
前記医薬組成物は、一般に、特定のある症状または複数の症状を治療または予防するのに有効な量で投与される。ヒトにおける初期投与は、選択された症状についての兆候などの兆候の臨床モニタリングと同時に行う。一般には、該組成物を、少なくとも約100μg/体重kgの活性物質量で投与する。殆どの場合、それらを、1日あたり約20 mg/体重kgを超えない量で1回以上に分けて投与する。好ましくは、殆どの場合、投与量は1日あたり約100μg/体重kg〜約5 mg/体重kgである。特に哺乳動物、特にヒトへの投与の場合、活性物質の1日投与量は、0.1 mg/kg〜10 mg/kg、典型的には1 mg/kg前後であると予想される。最適な投与量は、各治療モダリティおよび適応に合う標準法により、該適応、その重症度、投与経路、合併症状などについて考慮しながら決定されることが理解されよう。いずれにしても、医師は、個人にとって最適であり、かつ用いる特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、全般的健康、性別、食生活、投与の様式および時間、排出速度、薬の組み合わせ、特定症状の重症度および特定個人の応答により変化しうる実投与量を決定する。選択した実投与量の有効性は、例えば、選択した投与量を投与した後で臨床症状または標準的な抗炎症尺度を評価することにより、容易に判断することができる。上記投与量は、平均的な事例の具体例である。もちろん、より多いかまたは少ない投与量の方がメリットを有するような個々の事例が存在しうるが、かかる事例は本発明の範囲内にある。症状または病状を本発明により治療する場合、例えば、維持療法において、被験体において一貫した1日量を長期間維持することは、特に有益でありうる。ヒトへの経口および非経口投与の場合、薬剤の1日投与量を、単回または分割投与することができる。
【0124】
別の態様では、本発明は、療法に使用するための、式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を提供する。
【0125】
本発明の化合物は、一般にはセリン/トレオニンキナーゼp38の阻害剤であり、それ故にp38キナーゼにより媒介されるサイトカイン産生の阻害剤でもある。「セリン/トレオニンキナーゼp38の阻害剤」という用語の意味には、後述のアッセイに従ってp38がリン酸基をATPからタンパク質基質へと転移させるその能力を阻害する化合物が含まれる。
【0126】
本発明の化合物がp38の1種以上のイソ型、例えば、p38α、p38β、p38γおよび/またはp38δに対して選択性でありうることは理解されよう。ある実施形態では、本発明の化合物は、p38αイソ型を選択的に阻害する。別の実施形態では、本発明の化合物は、p38βイソ型を選択的に阻害する。さらなる実施形態では、本発明の化合物は、p38αおよびp38βイソ型を選択的に阻害する。p38イソ型に対する化合物の選択性を決定するためのアッセイは、例えば、国際公開第99/61426号、国際公開第00/71535号および国際公開第02/46158号に記載されている。
【0127】
p38キナーゼ活性が(局所的に、もしくは全身で)上昇する場合があること、p38キナーゼが誤って一時的に活性となるかもしくは発現される場合があること、p38キナーゼが不適当な場所で発現されるかもしくは活性となる場合があること、p38キナーゼが構成的に発現される場合があること、またはp38キナーゼの発現が不規則な場合があること、また同様に、p38キナーゼ活性により媒介されるサイトカイン産生が、不適当な時期、不適当な場所で生じる場合があるか、または有害となる程高いレベルで起こる場合があること、が知られている。
【0128】
従って、本発明は、被験体において、p38キナーゼ活性により媒介されるかまたはp38キナーゼの活性により産生されたサイトカインにより媒介される症状または病状を治療するための方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。該化合物は、単結晶または多結晶形、無定形、単一のエナンチオマー、ラセミ混合物、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、単一のジアステレオ異性体またはジアステレオ異性体の混合物として、投与することができる。
【0129】
また本発明は、被験体(例えば、ヒト)においてp38キナーゼ活性により媒介されるサイトカイン産生を阻害する方法であって、サイトカイン産生を阻害する必要のある被験体に、治療量またはサイトカイン阻害量の本発明の化合物を投与することを含む前記方法を提供する。該化合物は、単結晶または多結晶形、無定形、単一のエナンチオマー、ラセミ混合物、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、単一のジアステレオ異性体またはジアステレオ異性体の混合物として、投与することができる。
【0130】
本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物を提供することにより、これらの症状を治療する。「治療上有効な量」とは、ある化合物の、兆候を緩和するかもしくは兆候を軽減する量、サイトカインを低減する量、サイトカインを阻害する量、キナーゼを調節する量、および/またはキナーゼを阻害する量を意味する。かかる量は、標準法により、例えば、サイトカイン濃度を測定するかまたは臨床症状の緩和を観察することにより、容易に決定することができる。例えば、臨床医は、抗炎症治療の際に、一般に容認された測定値を監視することができる。治療について言及する場合、これには急性期治療または予防、ならびに確立された兆候の緩和が含まれることは理解されよう。
【0131】
本発明の化合物は、p38キナーゼの阻害もしくは調節を必要とするかまたはp38媒介性サイトカイン産生の阻害もしくは調節を必要とする被験体に投与することができる。特に、該化合物は、哺乳動物に投与することができる。かかる哺乳動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ、霊長類(例えば、チンパンジー、ゴリラ、アカゲザル、および最も好ましくはヒト)を挙げることができる。
【0132】
従って、本発明は、例えば、関節リウマチ、変形関節症、喘息、乾癬、湿疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、成人呼吸窮迫症候群、慢性肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、慢性心不全、珪肺症、内毒素血症、毒素性ショック症候群、炎症性大腸炎、結核、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、多発性硬化症、動脈瘤、卒中、過敏性腸症候群、筋肉変性、骨吸収病、骨粗鬆症、糖尿病、再灌流障害、対宿主性移植片反応、同種移植拒絶反応、敗血症、全身性悪液質、感染症または悪性腫瘍に伴う悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴う悪液質、マラリア、ハンセン病、感染性関節炎、リーシュマニア症、ライム病、糸球体腎炎、痛風、乾癬性関節炎、ライター症候群、外傷性関節炎、風疹性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性髄膜炎、痛風性関節炎、脊椎炎、ならびに非関節性炎症状態(例えば、脱出した/破裂した/逸脱した椎間板症候群、滑液包炎、腱炎、腱滑膜炎、線維筋痛症候群および靱帯の捻挫と局所的な筋骨格の損傷に伴う他の炎症状態)、疼痛、例えば炎症および/または外傷に伴うもの、大理石骨病、再狭窄、血栓症、血管形成、癌(例えば、乳癌、結腸癌、肺癌または前立腺癌)に苦しむヒトまたは動物被験体において兆候を治療または軽減する方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。
【0133】
本発明のさらなる態様は、関節リウマチ、喘息、乾癬、慢性肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、慢性心不全、全身性悪液質、糸球体腎炎、クローン病、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんならびに癌(例えば、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌)に苦しむヒトまたは動物被験体を治療する方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。
【0134】
本発明のさらなる態様は、関節リウマチ、喘息、乾癬、慢性肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、慢性心不全、全身性悪液質、糸球体腎炎、クローン病ならびに癌(例えば、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌)に苦しむヒトまたは動物被験体を治療する方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。
【0135】
本発明のさらなる態様は、関節リウマチ、喘息、慢性肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病およびてんかんに苦しむヒトまたは動物被験体を治療する方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。
【0136】
本発明のさらなる態様は、慢性疼痛、痛覚欠如(analgesis)の急速な発症、神経筋性疼痛、頭痛、癌性疼痛、変形関節症および関節リウマチに伴う急性および慢性の炎症性疼痛、術後の炎症性疼痛、神経因性疼痛、糖尿病性神経障害、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛(post-hepatic neuralgia)、炎症性神経障害および偏頭痛の痛みを含むあらゆるタイプの疼痛に苦しむヒトまたは動物被験体を治療する方法であって、該被験体に、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法を提供する。
【0137】
本発明のさらなる態様は、p38キナーゼ活性により媒介されるかまたはp38キナーゼ活性により産生されたサイトカインにより媒介される症状または病状の治療に使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその製薬上許容される誘導体の使用を提供する。
【0138】
式(I)の化合物およびそれらの誘導体は、単独で、または上記症状を治療するための他の治療薬と組み合わせて使用することができる。従って本発明は、さらなる態様において、本発明の化合物またはその製薬上許容される誘導体をさらなる治療薬と一緒に含む組み合わせを提供する。
【0139】
特に、関節リウマチ療法では、他の化学療法薬または抗体薬と組み合わせることが想定される。従って、本発明の併用療法は、少なくとも1種の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の他の製薬上活性な薬剤の投与を含む。式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および他の製薬上活性な薬剤は、一緒に、または別々に投与することが可能であり、また別々に投与する場合には、任意の順序で別々に、または連続的に投与することができる。式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および他の製薬上活性な薬剤の量、ならびに相対的な投与時期は、所望の複合治療効果が達成されるように選択する。適当な投与量は、当業者であれば容易に分かる。治療に要する本発明の化合物の量は、治療しようとする症状の種類ならびに患者の年齢および状態により変化すること、および最終的には担当医または獣医の裁量に委ねられることは理解されよう。関節リウマチ療法の際に式(I)の化合物ならびにそれらの塩および溶媒和物と併用しうる他の製薬上活性な薬剤の例としては、免疫抑制剤(例えば、アムトルメチングアシル、ミゾルビンおよびリメキソロン)、抗-TNFα剤(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、ジアセレイン)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、レフルノミド)、カリクレインアンタゴニスト(例えば、サブレウム(subreum))、インターロイキン11アゴニスト(例えば、オプレルベキン)、インターフェロンβ1アゴニスト、ヒアルロン酸アゴニスト(例えば、NRD-101 (Aventis))、インターロイキン1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)、CD8アンタゴニスト(例えば、塩酸アミプリローズ(amiprilose hydrochloride))、βアミロイド前駆タンパク質アンタゴニスト(例えば、リューマコン(reumacon))、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、チペマスタット(cipemastat))、ならびに他の予防維持抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、メトトレキサート、スルファサラジン、シクロスポリンA、ヒドロキシクロロキン、オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウムおよびペニシラミン)が挙げられる。
【0140】
上記の組み合わせは、医薬製剤の形で使用する際に都合良く提供することができるので、上記組み合わせを製薬上許容される担体または賦形剤と一緒に含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を成す。
【0141】
かかる組み合わせの個々の成分は、任意の都合の良い経路により、別々のまたは組み合わせた医薬製剤として、連続的にまたは同時に投与することができる。
【0142】
連続して投与する場合、本発明の化合物または第2の治療薬のいずれかを最初に投与することができる。同時に投与する場合、前記の組み合わせを同一または異なる医薬組成物として投与することができる。
【0143】
同一製剤中で組み合わせる場合、前記の2つの化合物は安定で、かつ互いおよび該製剤の他の成分と適合性でなければならないことは理解されよう。別々に製剤化する場合、それらを任意の都合の良い製剤中に、かかる化合物について当分野で知られているやり方で、都合良く提供することができる。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は本発明の例示的な実施形態であって、決して本発明の範囲を限定するものではない。試薬は、市販のものであるか、または文献中の手順に従って調製されるものとする。
【0145】
LCMSは、カラム(3.3cm×4.6mm ID、3μm ABZ+PLUS)上で、流速を3mL/分、注入量を5μLとし、室温でUV検出範囲を215〜330nmとして実施した。
【0146】
中間体1:2-アミノベンジル-2-シクロプロピルエタノール
トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(51g)を、温度を25〜30℃に維持しながら、THF(300mL)中の1-シクロプロピル-2-ヒドロキシエタノン(16.0g)、ベンジルアミン(17.5mL)および酢酸(9.15mL)の溶液に加えた。24時間攪拌した後、この混合物を蒸発させて、飽和重炭酸ナトリウム(250mL)で処理してから、これを酢酸エチル(10×200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(硫酸ナトリウム)させてから、これを蒸発させた。得られた残油を、フラッシュクロマトグラフィー(Silica、Merck 9385)で、DCM:エタノール:アンモニア(967:30:3〜945:50:5)を用いて溶出させることにより精製して、2-アミノベンジル-2-シクロプロピルエタノール(10.63g)を得た。
【0147】
NMR:δH[2H3]-クロロホルム7.32 (5H, m), 3.92 (1H, d), 3.82 (1H, d), 3.73 (1H, dd), 3.49 (1H, dd), 1.90 (1H, m), 0.83 (1H, m), 0.60 (1H, m), 0.47 (1H, m), 0.22 (1H, m), 0.13 (1H, m)。
【0148】
中間体2:2-アミノ-2-シクロプロピルエタノール
エタノール(100mL)中の2-アミノベンジル-2-シクロプロピルエタノール(中間体1)(10.6g)の溶液を、水素雰囲気中23℃で4日間、Pd/C(5%負荷、3g)と共に攪拌した。触媒を濾過により除去し、濾液を蒸発させることにより、2-アミノ-2-シクロプロピルエタノールを得た。
【0149】
一般法
DMF(1mL)中の酸(50mg)の溶液を、室温で、HATU(65mg)を用いて処理した。DIPEA(87μL)を加えた。5分後、これをDMF(1mL)中のアミン(0.17mmol)の溶液に加えた。この反応混合物を室温で16時間放置した後、真空内で濃縮した。残渣をクロロホルム(1.5mL)中に溶解し、それぞれを、クロロホルムで予備平衡化したアミノプロピルSPEカートリッジ(1g)に負荷した。次に、該カートッリジから、クロロホルム(2.5mL)、酢酸エチル/メタノール(9:1、2.5mL)を用いて溶出させた。生成物を含有する画分を、蒸発により単離した。
【表1】

【0150】

【0151】

【0152】
略語
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
SPE 固相抽出
生物学的実施例
式(I)の化合物のp38阻害剤としての活性は、次のin vitroアッセイにより測定することができる。
【0153】
蛍光異方性キナーゼ結合アッセイ
キナーゼ酵素、蛍光リガンドおよび様々な濃度の試験化合物を一緒にインキュベートすることにより、該試験化合物の非存在下では該蛍光リガンドが有意に(>50%)酵素に結合し、また十分な濃度(>10×Ki)の強力阻害剤の存在下では非結合蛍光リガンドの異方性が結合したものの値と測定しうる程度に異なるような条件下で、熱力学的平衡に到達させる。
【0154】
キナーゼ酵素の濃度は、好ましくは1×Kfとすべきである。必要とされる蛍光リガンドの濃度は、使用する器具類、およびその蛍光特性と物理化学的性質によって決まる。使用する濃度は、キナーゼ酵素の濃度より低くなければならず、好ましくはキナーゼ酵素濃度の半分以下とする。典型的なプロトコールは、以下のとおりである:
全ての成分は、最終組成が62.5 mM HEPES、pH 7.5、1.25 mM CHAPS、1.25 mM DTT、12.5 mM MgCl2、3.3%DMSOである緩衝液中に溶解する
p38酵素濃度 :12 nM
蛍光リガンド濃度:5 nM
試験化合物濃度 :0.1 nM〜100μM
成分は、平衡に達するまで(5〜30分)、NUNC384ウェル黒色マイクロタイタープレート中で最終容量を30μLとしてインキュベートする
蛍光異方性はLJL Acquestで読み取る。
【0155】
定義:Ki = 阻害剤結合の解離定数
Kf = 蛍光リガンド結合の解離定数
蛍光リガンドは、5-[2-(4-アミノメチルフェニル)-5-ピリジン-4-イル-1H-イミダゾール-4-イル]-2-クロロフェノールおよびローダミングリーンから誘導した以下:
【化16】

【0156】
の化合物である。
【0157】
結果
上記実施例に記載した化合物を上記の通りに試験したところ、そのIC50値は10μM未満であった。
【0158】
本明細書および特許請求の範囲からなる本出願は、後願に関する優先権の基礎として使用することができる。かかる後願の特許請求の範囲は、本明細書中に記載したいずれかの特徴または複数の特徴の組み合わせを対象としうる。それらは製品、組成物、方法または使用クレームという形をとることができ、また一例であって限定するものではないが、添付の特許請求の範囲のうちの1項以上を含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、
R1は、オキソ、シアノおよび-S(O)pR4から独立して選択される1〜3個の基により置換されたC1-6アルキル、ならびにオキソ、シアノ、-S(O)pR4、OH、ハロゲン、C1-6アルコキシ、-NR5R6、-CONR5R6、-NCOR5、-COOR5、-SO2NR5R6、-NHSO2R5および-NHCONHR5から独立して選択される最大3個の基により置換されていてもよいC3-7シクロアルキルから選択され、
R2は、水素、C1-6アルキルおよび-(CH2)q-C3-7シクロアルキルから選択されるか、または
(CH2)mR1およびR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から独立して選択される1もしくは2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい4〜6員の複素環を形成し、ここで該環は、オキソ、C1-6アルキル、ハロゲンおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1もしくは2個の基により置換されていてもよく、
R3は、-CO-NH-(CH2)r-R8基または-NH-CO-R9基であり、
R4は、水素、C1-6アルキル、C1-4アルキルにより置換されていてもよいヘテロシクリル、およびフェニルから選択され、ここで該フェニルは、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルおよびハロゲンから独立して選択される最大2個の基により置換されていてもよく、
R5は、水素、C1-6アルキルおよびフェニルから選択され、ここで該フェニル基は、C1-6アルキルおよびハロゲンから選択される最大2個の置換基により置換されていてもよく、
R6は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R5およびR6は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄および窒素から選択される最大1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい5〜6員の複素環もしくはヘテロアリール環を形成し、ここで該環は最大2個のC1-6アルキル基により置換されていてもよく、
R7は、水素およびメチルから選択され、
rが0〜2である場合、R8は、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、CONHR5、R10および/またはR11により置換されていてもよいフェニル、R10および/またはR11により置換されていてもよいヘテロアリール、ならびにR10および/またはR11により置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、また
rが2である場合、R8はさらに、C1-6アルコキシ、NHCOR5、NHCONHR5、 NR5R6およびOHから選択され、
R9は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-(CH2)s-C3-7シクロアルキル、トリフルオロメチル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tフェニル、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロアリール、R12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)tヘテロシクリル、ならびにR12および/またはR13により置換されていてもよい-(CH2)t縮合ビシクリルから選択され、
R10は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-CONR6R14、-NHCOR14、-SO2NHR14、-NHSO2R14、ハロゲン、トリフルオロメチル、1個以上のハロゲン原子もしくはC1-6アルキル基により置換されていてもよい-X-(CH2)j-フェニル、-X-(CH2)j-ヘテロシクリルまたは-X-(CH2)j-ヘテロアリールから選択され、ここで該ヘテロシクリル基または該ヘテロアリール基は、C1-6アルキルから選択される1個以上の置換基により置換されていてもよく、
R11は、C1-6アルキルおよびハロゲンから選択されるか、または
R10およびR11がオルト置換基である場合、それらが結合している炭素原子と一緒になって、R10およびR11は5〜6員で飽和もしくは不飽和の環を形成することにより縮合二環式の環系を与えることがあり、ここでR10とR11により形成される該環は、酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含有していてもよく、
R12は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-(CH2)s-C3-7シクロアルキル、-CONR15R16、-NHCOR16、-SO2NHR15、-NHSO2R16、ハロゲン、-(CH2)kNR17R18、オキシ、トリフルオロメチル、1個以上のR13基により置換されていてもよいフェニル、およびヘテロアリールから選択され、ここで該ヘテロアリールは1個以上のR13基により置換されていてもよく、
R13は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメチルおよび-NR17R18から選択されるか、または
R12およびR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜6員で飽和もしくは不飽和の環を形成することにより縮合二環式の環系を与え、ここでR12とR13により形成される該環は、酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含有していてもよく、
R14は、水素およびC1-6アルキルから選択され、
R15は、水素、C1-6アルキルおよびフェニルから選択され、ここで該フェニル基は1個以上のR13基により置換されていてもよく、
R16は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R15およびR16は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい5〜6員の複素環を形成し、ここで該環は、最大2個のC1-6アルキル基により置換されていてもよく、
R17は、水素、C1-6アルキル、およびC1-6アルキルにより置換されていてもよい-(CH2)s-C3-7シクロアルキルから選択され、
R18は、水素およびC1-6アルキルから選択されるか、または
R17およびR18は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、酸素、硫黄およびN-R7から選択される1個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい3〜7員の複素環を形成し、ここで該環は最大1個の二重結合を含有していてもよく、かつ該環は1個以上のR19基により置換されていてもよく、
R19は、C1-6アルキル、オキシ、-CH2OC1-6アルキル、トリクロロメチルおよび-N(C1-6アルキル)2から選択され、
Xは、-O-および1個の結合から選択され、
Uは、メチルおよびハロゲンから選択され、
Wは、メチルおよび塩素から選択され、
VおよびYは、水素、メチルおよびハロゲンから各々独立して選択され、
mは、0、1、2、3および4から選択され、ここで得られる炭素鎖の各炭素原子はC1-6アルキルから独立して選択される1または2個の基で置換されていてもよく、さらにここで該C1-6アルキル基は最大3個のOH基で置換されていてもよく、
n、p、rおよびjは、0、1および2から独立して選択され、
qおよびkは、0、1、2および3から独立して選択され、そして
sおよびtは、0および1から独立して選択されるが、
R1が無置換C3-7シクロアルキルである場合、mは0、1、2、3および4から選択されず、ここで得られる炭素鎖の各炭素原子はC1-6アルキルから独立して選択される1または2個の基で置換されていてもよい〕
の化合物、またはその製薬上許容される誘導体。
【請求項2】
R1が、オキソ、シアノおよび-S(O)tR4から独立して選択される1または2個の基により置換されたC2-6アルキル、ならびにOHおよびシアノから独立して選択される1または2個の基により置換されていてもよいC3-6シクロアルキルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2が水素である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R8がC3-6シクロアルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
mが0および1から選択され、かつその炭素鎖が、OHにより置換されていてもよい1または2個のメチル基により置換されていてもよい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
実施例1〜11のいずれか1つで定義される請求項1記載の化合物、またはその製薬上許容される誘導体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を調製するための方法であって、以下:
(a) 式(XXII)
【化2】

〔式中のR1、R2、U、W、V、Y、mおよびnは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXIII):
R8-(CH2)r-NH2 (XXIII)
〔式中のR8およびrは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物と反応させること(場合により、該酸化合物(XXII)を該アミン化合物(XXIII)との反応前に該酸の活性型に転換する)、
(b) 式(XXIV):
【化3】

〔式中のR3、U、W、V、Yおよびnは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXV):
R1(CH2)mNR2H (XXV)
〔式中のR1、R2、mおよびnは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物と反応させること、
(c) 式(XXVI):
【化4】

〔式中のR3、U、W、V、Yおよびnは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物を、先に定義した式(XXV)の化合物と反応させること、
(d) 式(XXVII):
【化5】

〔式中のW、V、YおよびR3は、請求項1で定義した通りである〕
の化合物を、触媒の存在下で、式(XXVIII):
【化6】

〔式中のR1、R2、U、mおよびnは先に定義した通りであり、かつhalはハロゲンである〕
の化合物と反応させること、または
(e) 式(XXIX):
【化7】

〔式中のR1、R2、U、W、V、Y、mおよびnは、請求項1で定義した通りである〕
の化合物を、アミド形成条件下で、式(XXX):
R9CO2H (XXX)
〔式中のR9は、請求項1で定義した通りである〕
の化合物と反応させること(場合により、該酸化合物(XXX)を該アミン化合物(XXIX)との反応前に該酸の活性型に転換する)、
を含む前記方法。
【請求項8】
少なくとも1種の請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される誘導体を、1種以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤および/または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項9】
p38キナーゼ活性により媒介されるかまたはp38キナーゼの活性により産生されたサイトカインにより媒介される症状または病状を治療するための方法であって、その必要のある患者に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される誘導体を投与することを含む前記方法。
【請求項10】
療法に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される誘導体。
【請求項11】
p38キナーゼ活性により媒介されるかまたはp38キナーゼの活性により産生されたサイトカインにより媒介される症状または病状の治療に使用するための医薬の製造における、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される誘導体の使用。

【公表番号】特表2006−523193(P2006−523193A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505070(P2006−505070)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003773
【国際公開番号】WO2004/089876
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】