β−アドレナリンインバースアゴニストを用いて気道疾患を治療する方法
β−アドレナリンインバースアゴニストの使用は、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患を含む一群の肺気道疾患を治療するための新規で高度に有効な方法をもたらす。通常、このような方法は、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。特に好ましいインバースアゴニストには、ナドロール及びカルベジロールが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「β−アドレナリンインバースアゴニストを用いて気道疾患を治療する方法(Method for Treating Airway Diseases with Beta−Adrenergic Inverse Agonists)」との名称を有し、Richard A.Bondにより2003年10月9日に提出された米国特許仮出願第60/510,250号明細書に基づく優先権を主張し、この明細書は、参照によりそのまま本出願に援用される。
【0002】
本出願に詳述されている発明をもたらした研究のうちの一部は、国立衛生研究所から助成金を提供された。したがって、米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、β−アドレナリン受容体により仲介される疾患及び状態、特に肺気道疾患を予防するか、治療するか、その重度を低減する新規の方法に関する。特に、β−アドレナリンインバースアゴニスト薬を単独で、又はβ2−アゴニスト、ステロイド、ロイコトリエン調節剤、抗コリン作動薬、メチルキサンチン、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤又は抗IgE抗体などの他の薬物と組み合わせて長期投与することによる、肺気道疾患を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0004】
多くの疾患及び状態が、β−アドレナリン受容体により仲介される。特に、これらの受容体は、多くの肺気道疾患に関与している。肺気道疾患は、低い肺機能及び気道の流れを特徴とする。これらの症状は往々にして、粘液の分泌又は組織損傷による。これらの疾患には、アレルギー性鼻炎(「枯草熱」)、喘息、嚢胞性線維症、慢性肺閉塞性疾患(COPD)、チャーグ−ストラウス症候群、気管支炎、気管支拡張症及び肺気腫が含まれる。これらの疾患は、深刻であり、重大な死亡率及び罹患率の原因である。
【0005】
COPD患者では、肺内の気道が閉塞している。患者がCOPDを発症する道筋は、いくつか存在する。しかしながら、障害の際だった特徴は、呼吸困難又は息切れである。COPDは往々にして、長期にわたる喫煙が関連しており、未治療のアレルギー状態の結果として発症しうる。加齢プロセスによっても、気管支及び細気管支はその弾性を失う。
【0006】
チャーグ−ストラウス症候群は、炎症性疾患であり、この際、患者は、気道反応亢進などの喘息症状を示す。肺気道の炎症が生じ、肺機能が損なわれる。
【0007】
気管支炎では、当初は刺激物による粘液の分泌過多により、気道機能が損なわれる。気管支炎は、感染又はアレルギー反応の結果でありうる。慢性気管支炎では、咳が持続するが、気道を清浄にするにはもはや十分ではなく、気道の閉塞をもたらす。慢性気管支炎は、気管支に悪影響を及ぼす。
【0008】
気管支拡張症は、肺の感染から生じ、不可逆的な気道損傷をもたらす。患者は往々にして、持続的な咳を訴え、悪臭のする痰を出す。気管支及び細気管支は非常に拡張しうるという事実にも関わらず、感染と分泌との結果、気道が閉塞する。
【0009】
肺気腫の患者は、肺胞の壁の破壊的損傷により低い肺機能を有する。往々にして、患者は長期喫煙者であり、肺に好中球及びマクロファージなどの炎症性細胞を高レベルで有し、他の病態生理的プロセスが、十分に作用する。喫煙は、肺の好中球を活性化させて、有害なタンパク質分解酵素であるエラスターゼを放出させると考えられる。他の環境刺激物も、肺気腫に関与しうる。
【0010】
喘息だけでも、2000万人のアメリカ人患者における長期的な問題である。喘息の発生率は、米国において、特に都市部において、特に子供の間で急速に高まっている。この増加の原因は、知られていないが、環境汚染物質に曝されることが疑われている。米国における喘息での年齢調整死亡率は、1979年から1998年の間に55.6%増加した(America Lung Association’s Epidemiology and Statistics Unit,Best Practices and Program Services.Trends in Asthma Morbidity and Mortality,2002)。喘息に罹患しているヒトは往々にして、ハウスダスト、動物のふけ及び花粉などのアレルゲンに対して敏感である(アレルギー性喘息)。しかしながら、内因性喘息は、患者の感情的困難又はパニックにより、さらに冷気又は運動などにさらされるなどの因子により、又はアスピリンなどの一定の薬物投与により引き起こされうる。喘息では、患者は、これらの誘発に対して気道の応答亢進を示す。これらが引き金になって、免疫系細胞系はヒスタミン、IgE分子、サイトカイン又はケモカインを放出する。気道平滑筋は、これらの誘発に迅速に応答して、気管支収縮をもたらす。加えて、気道は、損傷を受け、炎症を起こし、粘液が分泌されて、さらに気道の流れを制限する。喘息発作は、小気管支及び細気管支の収縮による息切れ、胸部緊張、咳及び喘鳴を特徴とする。発作は、穏やかであるか、中くらいであるか、深刻でありうる。
【0011】
これらの気道障害の患者は、気道痙攣を伴って、さらに、肺樹枝(pulmonary tree)を介しての気流を狭めることもある。発作の間、患者の気道は収縮して、呼吸を困難にする。気道平滑筋が、気管支収縮の原因である。気道平滑筋細胞は、β2アドレナリン受容体を発現する。エピネフリン又は他のβ2−アゴニスト薬物などの、これらの受容体に結合するアゴニストは、平滑筋の弛緩をもたらす。
【0012】
その結果、急性気管支痙攣では、多くの患者は、短時間作用性β2−アドレナリンアゴニストを吸引して、喘息発作を予防するか、その重度を低減することができる。
【0013】
しかしながら、β2−アドレナリンアゴニストの長期投与は、その継続投与で、薬物耐性及び低い治療作用をもたらすことが証明されている。タキフィラキシー又は耐薬性としても知られている低い応答性は、受容体の脱感作、隔絶及びダウンレギュレーションを含む事象の頂点から生じる。さらに、アレルゲンなどの誘発に応答して、肺気道の高い応答亢進も存在する。
【0014】
疫学的研究により、短時間作用性β2−アドレナリンアゴニストの長期使用と喘息死亡率との正相関が証明されている。長期作用性β2−アドレナリンアゴニストであるサルメテロールを用いた大規模な試験は、死亡率の上昇により中止された。このことは、β2−アドレナリンアゴニストの短期投与は、喘息の患者並びにβ2−アドレナリン受容体に調節される他の疾患及び状態の患者の助けとなりうるが、これらのアゴニストの長期投与は、有害であり得ることを強調している。
【0015】
喘息並びに気道応答亢進及び気管支収縮が生じる他の疾患及び状態を管理する際の慣用の知恵は、心臓血管状態の治療で頻繁に使用されているものなどのβブロッカーの投与は、喘息患者には絶対に禁忌であることである。T.Clark & J.Rees著「喘息の実践的管理(Practical Management of Asthma)」(第2版,Martin Dunitz,1996)には、「これら(β−ブロッカー)は往々にして、喘息患者に投与すると、副作用をもたらし、βブロッカーでの治療は、以前には診断されていなかった軽度の喘息をもたらしうる。βブロッカーの1回用量によって、致命的な気管支収縮が生じている。喘息患者においては、全てのβブロッカーを回避することが、最善である。」と述べられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、喘息で生じる気管支収縮に対する注目を高める必要がある。これは、喘息状態まで進行しうる。気管支収縮を逆転させて、気道の拡張をもたらしうる、より効果的で、長期持続性の治療様式が必要である。
【0017】
したがって、喘息患者で、並びにβ2−アドレナリン受容体により調節される他の疾患及び状態、特に、喘息などの呼吸器系に悪影響を及ぼす疾患に罹患している患者でのβ2−アドレナリンアゴニストの使用に代わる新規の治療選択肢が、非常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1実施形態は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であり、これは、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0019】
特に好ましいインバースアゴニストは、ナドロール、カルベジロール、メトプロロール、チモロール及びICI 118,551である。
【0020】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択することができる。
【0021】
この方法では、β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で開始し、最大用量まで高める一連の段階用量で時間をかけて投与することができる。
【0022】
本発明の他の態様は:
(1)1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、30mg、50mg及び70mgからなる群から選択される量のナドロール;及び
(2)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物である。
【0023】
本発明のさらに他の態様は:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小用量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有するブリスターパックである。
【0024】
本発明のさらに他の態様は:
(1)下部支持体:
(2)複数のキャビティが生じるように形成されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形(前記の剤形は、少なくとも2種の用量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト:(i)一連の段階用量での最大用量である維持用量;及び(ii)規定の条件下で摂取される少なくとも1種のバックアップ復旧用量又は低用量を含有する)
を含有するブリスターパックである。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のβ2−選択的アドレナリンアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のステロイドを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗コリン作動薬を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のキサンチン化合物を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0029】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗IgE抗体を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0030】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のロイコトリエン調節剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のホスホジエステラーゼIV阻害剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0032】
本発明のさらに他の態様は:
(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;
(2)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療薬(前記の第2の治療薬は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び
(3)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物である。
【0033】
本発明のさらに他の態様は、
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストと肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤との両方を含む薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパックである。
【0034】
本発明のさらに他の態様は、
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(a)(i)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(ii)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(b)(i)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(ii)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(4)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパックである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
明細書、添付の請求項及び添付の図面を参照すると、次の発明をより良好に理解することができるであろう。
【0036】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の一般に受け入れられている2状態モデルでは、「アゴニスト」という用語は、受容体の活性部位に親和性を有し、それにより、受容体の活性部位を優先的に安定化させる物質若しくはこれらに限られないが、受容体の活性をもたらし、これらの受容体によるシグナリングを増強する薬物、ホルモン又は神経伝達物質を含む物質と定義される。作用の1種又は複数のメカニズムに関わりなく、アゴニストは、受容体の活性化をもたらし、これらの受容体によるシグナリングを増強する。
【0037】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の2状態モデルでは、「アンタゴニスト」という用語は、活性又は不活性な受容体の形態を優先的に安定化しない物質若しくは、これらに限られないが、アゴニスト及び/又はインバースアゴニストの作用を阻止又は妨害する薬物、ホルモン及び神経伝達物質を含む物質と定義される。作用の1種又は複数のメカニズムに関わりなく、アンタゴニストは、アゴニスト及び/又はインバースアゴニストの作用を阻止又は妨害する。
【0038】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の2状態モデルでは、「インバースアゴニスト」という用語は、受容体の不活性状態に親和性を有し、したがって、受容体の不活性状態を優先的に安定化させる物質若しくは、これらに限られないが、受容体の不活性化をもたらすか、アゴニストによる活性化を阻止又は妨害して、これらの受容体からのシグナリングを低減する薬物、ホルモン又は神経伝達物質を含む物質と定義される。
【0039】
本願明細書で使用する場合、「同時投与」という用語は、各薬剤の単独投与により達成されるであろう効果よりも高い併用治療効果を達成するために十分に近い時間内で、2種又はそれ以上の活性薬剤を投与することに関する。このような同時投与は例えば、活性剤を共通の薬学的に許容できる担体中で一緒に、1回又は複数回用量で投与することにより同時に実施することができる。
【0040】
本願明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ヒト又は動物種に関する。通常、本発明による方法及び組成物を使用して、ヒトだけでなく、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ及びネコなどの社会的又は経済的に重要な動物種を治療することができる。特に記載のない限り、本発明による方法及び組成物は、ヒトの治療に限られない。
【0041】
本願明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の疾患又は状態を治療、緩和又は予防するか、検出可能な治療的又は予防的効果を示す治療剤又は組成物の量に関する。例えば、化学的マーカー、抗原レベル又は気道抵抗などの生理学的インジケータの変化により、効果を検出することができる。治療効果にはさらに、気管支収縮の低下又は気道抵抗の低下などの物理的症状も含まれ、対象又は介護者により認められる健康状態の主観的改善も含まれうる。対象のための正確な治療有効量は、対象の体格、体重及び健康、対象が罹患している状態の性質及び規模並びに投与のために選択された治療薬又は治療薬の組み合わせ、さらに、投与される治療薬の薬物動態に影響を及ぼす肝臓及び腎臓機能などの変動因子に左右される。したがって、予め正確な有効量を明記しても、役立たない。しかしながら、所定の状況での有効量は、一般的な実験により決定することができ、これは、臨床医の判断の範囲内である。
【0042】
本発明の1実施形態は、その変調が疾患又は状態に関与している受容体に対するインバースアゴニストを有効量で投与することにより、β受容体の変調に影響を受けている疾患又は状態を治療する方法である。通常、疾患又は状態は、これらに限られないが、喘息、慢性肺閉塞性疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症の肺後遺症、チャーグ−ストラウス症候群及び肺炎を含む呼吸疾患又は状態である。
【0043】
古典的な受容体理論では、Gタンパク質共役受容体(GPCR)リガンドの2つの群が考えられている:アゴニスト及びアンタゴニスト。受容体は、単一の静止状態にのみ存在し、アゴニストが結合して始めて、活性化受容体状態をもたらす細胞シグナリングを誘発しうると考えられている。このモデルでは、アンタゴニストによる結合は、細胞シグナリングをもたらさず、受容体がアゴニストと結合し、活性化されることを妨げるだけであった。次いで、Costa及びHerzが、受容体を操作して、アゴニスト占拠がなくても細胞シグナリングをもたらす構成的又は自発活性な状態にすることができることを証明した。さらに彼らは、一定の化合物がこれらの自発活性な受容体を失活化するという証拠を示した(T.Costa & A.Herz、「GTP結合タンパク質に結合しているδオピオイド受容体において負の固有活性を有するアンタゴニスト(Antagonists with Negative Intrinsic Activity at δ Opioid receptors Coupled to GTP−Binding Proteins)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7321−7325(1989))。さらに、GPCRは、インバースアゴニストにより多少失活化される構成的又は自発的活性状態に存在するという証拠がある(R.A.de Ligtら,「Gタンパク質共役受容体でのインバースアゴニズム:薬物発見のための(病態)生理学的関係及び関連(Inverse Agonism at G Protein−Coupled Receptors:(Patho)Physiological Relevance and Implications for Drug Discovery)」Br.J.Pharmacol.130:1−12(2000);G.Milliganら,「インバースアゴニズム:薬学的興味又は有望な治療ストラテジー?(Inverse Agonism:Pharmacological Curiosity or Potential Therapeutic Strategy?)」Trends Pharmacol.Sci.16:10−13(2000))。
【0044】
本発明によるこの実施形態のストラテジーのベースは、インバースアゴニストの存在を認識し、インバースアゴニストでの長期治療が受容体機能に対して有する作用を理解することである。何がインバースアゴニストであり、それはどのように機能するのか?アドレナリン(エピネフリン)に応答するβ−アドレナリン受容体などの受容体は通常、2つの状態、活性状態及び不活性状態の間の平衡に存在する。受容体が、β−アドレナリン受容体のためのアドレナリンなどのアゴニストに結合すると、これらは、不活性状態へと回帰することを妨げて、質量作用の法則による活性及び不活性状態の間の平衡をシフトさせる。アゴニストに結合したこれらの受容体が、平衡から離れるので、このことは生じる。通常、アンタゴニストは、受容体に結合するが、アゴニストの結合は妨げる。しかしながら、「インバースアゴニスト」として知られている分子は、不活性状態の受容体に結合して、活性及び不活性状態の間の平衡を不活性状態へとシフトさせる。このことは、アゴニストの結合を単にブロックすることとは異なる。
【0045】
さらに、自発活性な受容体の集団がin vivoには存在する。これらの受容体は、活性のベースライン構成レベルをもたらす;活性は、完全に「オフ」には絶対にならない。
【0046】
前記したように、β−アドレナリンアゴニストの長期投与は、アゴニスト依存性脱感作をもたらすことは十分に証明されている。β−アゴニストを短期投与すると、アドレナリン受容体はインターナリゼーションされて、それによってそれらが、肺弛緩のためにさらに再刺激されることを防ぐ。β−アゴニストの長期投与では、実際に、β−アドレナリン受容体の全数でダウンレギュレーションが存在する。結果は、長期作用性β−アゴニストでの喘息患者で観察される応答性の喪失であり、これは、前記のように耐薬性又はタキフィラキシーのことである。
【0047】
本発明の治療方法は、インバースアゴニストの長期投与は、活性β−アドレナリン受容体集団をアップレギュレーションする作用を有するという発見に基づく。観察される活性は、受容体の構成的ベースライン活性又は内在アゴニストに応答する高レベルの受容体の組み合わせ効果による。このことは、喘息での気道応答亢進をもたらすことなどにより一見すると生理学的機能を低下させるような薬物の投与は、長期的に投与すると、その生理学的機能と関連している自発活性なβ−アドレナリン受容体の集団をアップレギュレーションすることにより生理学的機能を増強しうるという、表面的には矛盾している結果をもたらす。これは、「矛盾性薬理学」の原理の具体的な適用である。
【0048】
これらの線に沿って、心臓選択的βインバースアゴニスト(β1−アドレナリン受容体サブタイプに優先性を有するもの)の使用は、慢性気道閉塞性肺疾患(COPD)を伴う高血圧及びうっ血性心不全(CHF)患者において安全であることが証明されている。
【0049】
多様な研究により、心臓選択的βインバースアゴニストの長期投与は、COPD又は喘息を伴うCHF患者の肺機能を変化させないことが証明されている。肺機能の標準的な測定である努力呼気肺活量(FEV)は、心臓選択的βインバースアゴニストで治療された患者では基本的に変化しなかった。これらのデータは、心臓選択的βインバースアゴニストの長期投与は、肺気道疾患を伴うCHF患者において安全であることを示している。しかしながら、これらの薬物は、肺気道疾患の症状を低減又は変化させるためには好ましくない。
【0050】
参照により本願明細書に援用されるKleinらに付与された米国特許第5,116,867号明細書には、D−プロプラノロール又は85%以上がD形であるラセミ混合物が、喘息の治療のために提案されている。プロプラノロールのD形は、β−アドレナリン受容体の阻害においてL形よりも1/100強力である。対照的に、この特許は、活性形又は活性β−アドレナリンアンタゴニストを50%以上含有するラセミ混合物の使用を明記している。
【0051】
参照により本願明細書に援用されるBroderらに付与された米国特許第6,284,800号明細書には、プロプラノロール、メトプロロール、カルベジロール又はビソプロロールのD形が、喘息の治療のために提案されている。プロプラノロールのD形とL系とを比較して、抗原誘発される気管支収縮を阻害し、気道応答性亢進を低減するのに、D−プロプラノロールの短期投与は、有益であることを証明するために、実験が行われた。対照的に、L形の急性投与は、活性β−アドレナリンアゴニストで予測された特異的肺抵抗を高めた。プロプラノロールのD形は、β−アドレナリン受容体に関して不活性であった。したがって、米国特許第6,284,800号明細書は、インバースアゴニズムに関していない。
【0052】
BondによるPCT国際公開WO02/29534号は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患を含むアレルギー性及び炎症性障害を治療するために、β−アドレナリン受容体を阻害するβ1及び/又はβ2アンタゴニスト活性を有する化合物を提案している。喘息性マウスを、アルプレノロール、カルベジロール及びICI−118,551を含むβ−アンタゴニストと特徴づけられる化合物で長期治療する実験が行われた。次いで、マウスから気管を切除し、メタコリンに応答しての気管の収縮を、喘息発作のための代用として監視した。最も有効な化合物はアルプレノロールであり、次いでカルベジロール、次いでICI−118551であった。
【0053】
本出願の発明者により行われた喘息性マウスでのさらに生理学的に関連のある実験により、有益であると当初は考えられていたアルプレノロールは長期的には、未処置の喘息性マウスに比較して気道応答性亢進を低減しないことが証明された。アルプレノロールは、β−アドレナリンアンタゴニストではあるが、これは、部分的なアゴニスト活性を有する。カルベジロールは、α1−アドレナリンアンタゴニスト活性を有するβ1/β2非選択的アドレナリンアンタゴニストである。本出願で報告している新規の実験では、カルベジロールの長期投与こそが、気道応答性亢進を低減し、これは、喘息患者に有益だろうが、これはさらに、メタコリンに対する応答性の感度をより低い濃度にシフトさせ、このことは喘息患者に有害になりうる。
【0054】
さらに、PCT国際公開02/29534号に報告されている実験では、肺気道の大部分を残して、気管をマウスから切開した。マウスにおいて、気管支は、ほぼ専らβ1アドレナリン受容体のみを含むが、気道の残りは、β1及びβ2アドレナリン受容体の混合物である。対照的に、ヒトの気道は、気管支も、より小さな気道も、ほぼ専らβ2受容体を含む。したがって、PCT国際公開WO02/29534号に報告されている実験は、ヒト喘息に対して僅かな予測値しか有さない。本出願で報告されている実験は、より厳密に、ヒトの生理を反映している。
【0055】
β−アドレナリンアンタゴニスト薬又は「βブロッカー」は、従来の薬理学では同じ活性を有すると見なされている。βブロッカーはさらに、β1(「心臓選択的」)又はβ1/β2(「非選択的」)又はβ2選択的のみに関するその選択性において、又はその欠如に基づき、さらに分類されている。加えて、βブロッカーは、それらが部分的アゴニスト活性を有するか、実際にはインバースアゴニストであるか、そうでないかに分類することができる。後者の定義は、β−アドレナリン受容体を含む多くのG結合タンパク質受容体は、受容体とインバースアゴニストとの結合によりさらに防ぐことができる低レベルの自発活性を示すとの、本出願に記載の新規の認識に基づく。この区別は、PCT国際公開WO02/29534号には成されてなく、これは単に、「アンタゴニスト」に関している。
【0056】
当分野でのβブロッカーのサブクラスに関するこの知識にも関わらず、多くの科学者は、異なるサブクラスからの化合物を1つのクラスとして取り扱い続けている。この例は、1998〜1999年におけるうっ血性心不全でのβブロッカーのブシンドロールの臨床試験である。以前に、2種の他のβブロッカー、メトプロロール及びカルベジロールが臨床試験されて、CHFの患者において著しい死亡率の低減が証明されている。ブシンドロールは、プラシーボを上回る利点を何ら証明することができなかったので、臨床試験は中止された。本出願の発明者は、メトプロロール及びカルベジロールは両方とも、β−インバースアゴニストであるが、ブシンドロールは、部分的なアゴニスト活性を有する中立アンタゴニストであると言及している。したがって、本出願の発明者は、β−アドレナリンインバースアゴニストのみが、CHFの治療に有効であるだろうと予測した。同様に、本出願の発明者は、β−アドレナリンインバースアゴニストのみが、喘息の気道応答性亢進の長期治療に有効であろうと予測している。この区別は、PCT国際公開WO02/29534号明細書においては成されていないし、示唆もされていない。
【0057】
代わりに、本発明は、β−アドレナリンインバースアゴニストの活性β−アドレナリン受容体結合形態を喘息、COPD並びにこれらに限られないが肺気腫、チャーグ−ストラウス症候群、気管支炎及び気管支拡張症を含む気道応答性亢進を特徴とする他の疾患の治療において使用することを提供する。インバースアゴニストは、純粋、実質的に純粋な鏡像異性体又はジアステレオ異性体の形態であってよいか、ラセミ混合物であってよい。多くの場合、キラル中心が1個のみである場合には、このような化合物の活性形態は、L形である。3個のキラル中心を有し、潜在的には12種の異性体を有するが、通常は、2種のみが合成の間に生じるナドロールの場合、最も活性な形態は、ナドロールのRSR形態である。
【0058】
β−アドレナリンインバースアゴニスト:ナドロール、例えば塩酸塩として;ブプラノロール、例えば、塩酸塩として;ブトキサミン、例えば、塩酸塩として;カラゾロール、例えば、塩酸塩として;カルベジロール、例えば塩酸塩として;ICI−118,551、即ち、塩酸塩として;レボブノロール、例えば塩酸塩として;メトプロロール、酒石酸塩又はコハク酸塩として;プロプラノロール、例えば塩酸塩として;ソタロール、例えば塩酸塩として;チモロール、例えば塩酸塩として;並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体(bioisosteres)、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが、本発明による使用に特に好ましい。特に好ましいインバースアゴニストは、カルベジロール及びナドロールである。さらに特に最も好ましいインバースアゴニストは、ナドロールである。本願明細書で使用する場合、インバースアゴニスト化合物又は適切な場合には、アゴニスト化合物の列挙には、除外されない限り、インバースアゴニスト化合物又はアゴニスト化合物の全ての薬学的に許容できる塩が含まれる。したがって、塩酸塩としてのナドロールの列挙は、調製されているか、調製することができる他の薬学的に許容できる塩を除外するものではない。
【0059】
本発明による方法及び組成物で有用なインバースアゴニストは通常、β1及びβ2−アドレナリン受容体の両方にインバースアゴニズムを示す非選択的インバースアゴニストとしても、選択的β2−インバースアゴニストとしても、β2−アドレナリン受容体に対してインバースアゴニズムを示す。
【0060】
好ましくは、本発明による方法及び組成物で有用なインバースアゴニストは、気道応答性亢進を低減する上、喘息性マウスモデルで試験した場合、メタコリン応答を左側に(即ち、より低いメタコリン濃度に)シフトさせることもない。
【0061】
特に、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであり、m及びnが1から3であるが、但しR1及びR2の両方が水素であり、mが1である場合、nは1以外である式(I)のナドロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。本願明細書で使用する場合、「低級アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ヒドロカルビル残基と定義される。
【化1】
【0062】
さらに、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであり、R3が水素又低級アルキルであるが、但し、全てのR1、R2及びR3が、全て水素ということはない式(II)のカルベジロールの類似体が、本発明の範囲内であると予測される。
【化2】
【0063】
さらに、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない式(III)のチモロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。
【化3】
【0064】
式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない式(IV)のメトプロロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。
【化4】
【0065】
塩の場合、本発明による方法に適した活性を有する化合物を含む有機化合物は、それらが存在している溶液のpHに応じてプロトンを受容及び供与しうる複数の基を有することは、よく知られている。これらの基には、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基及び酸塩基反応に関与していることが知られている他の基が含まれる。化合物又は類似体の列挙には、特に除外されない限り、生理学的pHで、又は薬剤組成物のpHで生じるこのような塩形態が含まれる。
【0066】
同様に、本発明による方法に適している化合物又は類似体上のカルボキシル又はヒドロキシル基と酸又はアルコールとが反応して、エステルを生じることにより、プロドラッグエステルを生じさせることができる。通常、酸又はアルコールは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルなどの低級アルキル基を含む。これらの基は、ヒドロキシなどの置換基又は他の置換基で置換されていてもよい。このようなプロドラッグは、当技術分野でよく知られており、ここでさらに記載する必要はない。エステル結合の加水分解により、通常は細胞内酵素により、プロドラッグは、活性化合物に変換される。プロドラッグエステルを生じさせるために使用することができる他の適切な基は、当技術分野でよく知られている。例えば、プロドラッグは、親の酸化合物と適切なアミンとの反応により調製されたアミドを包含しうる。場合によっては、(アシルオキシ)アルキルエステル又は((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステルタイプのプロドラッグを調製することが望ましい。プロドラッグとして適切なエステルは、これらに必ずしも限られないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、モルホリノエチル及びN,N−ジエチルグリコールアミドを含む。メタノールなどの媒体中で、適切なカルボン酸基を有する化合物の酸形態を酸又は塩基エステル化触媒(例えばNaOH、H2SO4)と反応させることにより、メチルエステルプロドラッグを調製することができる。同様の方法で、メタノールの代わりにエタノールを使用して、エチルエステルプロドラッグを調製する。適切な化合物のナトリウム塩を(ジメチルホルムアミドなどの媒体中で)塩酸4−(2−クロロエチル)モルフィン(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.USAから入手可能)と反応させることにより、モルホリニルエチルエステルプロドラッグを調製することができる。
【0067】
薬学的に許容できる塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、スルファミド酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミド酸塩、キナ酸塩、ギ酸塩、ケイ皮酸塩、ピクリン酸塩及び他の適切な塩などの酸塩が含まれる。塩酸、硫酸、リン酸、スルファミド酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミド酸及びキナ酸などの酸を使用すると、このような塩を誘導することができる。
【0068】
さらに、薬学的に許容できる塩には、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属塩、さらにピリジン塩、アンモニウム塩、ピペラジン塩、ジエチルアミン塩、ニコチンアミド塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、メチルアミノ塩、トリエチルアミノ塩、ジメチルアミノ塩及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などの塩基との塩が含まれる。
【0069】
治療を受ける対象は、ヒト対象又はこれらに限られないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタを含む社会的又経済的に重要な動物であってよい。本発明による方法は、ヒトの治療に限られない。
【0070】
通常、β2−アドレナリンインバースアゴニストを投与する方法は、対象の血流中に連続的なレベルのβ2−アドレナリンインバースアゴニストをもたらす。通常、方法は、肺β2−アドレナリン受容体のアップレギュレーションである治療効果をもたらす。通常、この方法は、β2−アドレナリンアゴニスト薬に対する肺気道弛緩応答性の上昇である治療効果をもたらす。これは、下記で詳細に検討する併用治療を規定している。
【0071】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、1種又は複数の薬剤付形剤と組み合わせて投与することができる。薬剤付形剤には、必ずしもこれらに限られないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖又はタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール及び生理学的に相容性の溶剤が含まれる。他の薬剤付形剤も、当技術分野ではよく知られている。β−アドレナリンインバースアゴニストを、1種又は複数の薬学的に許容できる担体と組み合わせて投与することができる。薬学的に許容できる担体の例には、これらに限られないが、水性及び非水性溶剤を含む溶剤、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び/又は抗カビ剤、等張性及び/又は吸収遅延剤などのいずれか又は全てが含まれる。薬剤活性な物質のためにこのような媒体及び/又は薬剤を使用することは、当技術分野ではよく知られている。慣用の培地、担体又は薬剤が1種又は複数の活性成分と非相容性である場合を除けば、本発明による組成物中でのその使用が考慮される。補足的な活性成分を、特に併用治療に関する下記のように、組成物中に加えることもできる。本発明で使用される化合物を投与するために、調製物は、FDA生物製剤審査部基準又は薬物を規制する他の規制組織により求められる無菌性、発熱原性、全体安全性及び純度基準を満たすべきである。
【0072】
したがって、β−アドレナリンインバースアゴニストを、経口、持続放出経口、口内、舌下、吸入、通気又は非経口投与のために処方することができる。
【0073】
β−アドレナリンインバースアゴニストが慣用の製剤又は持続放出製剤の形態で経口投与される場合、通常は、錠剤、カプセル、丸薬、トローチ、ウェハ、粉末若しくは溶液、懸濁液、チンキ剤又はシロップなどの液体などの慣用の単位剤形で、これを投与する。経口処方物は通常、通常使用される付形剤、例えば、薬剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム及び他の慣用の薬剤付形剤を含有する。一定の規定の実施形態では、経口薬剤組成物は、不活性な希釈剤及び/又は吸収可能な食用担体を含有するか、及び/又はこれらは、硬質又は軟質シェルゼラチンカプセル中に封入されていてよい。若しくは、これらは、錠剤に圧縮することもできる。他の選択肢としては、特に獣医学的実施では、これらを食事に直接加えることもできる。経口治療用途では、これらを付形剤と共に加えるか、摂取可能な錠剤、口内用錠剤、糖衣丸、丸薬、トローチ、カプセル、ウェハ又は他の慣用の剤形の形態で使用することができる。
【0074】
錠剤、丸薬、トローチ、カプセル、ウェハ又は他の慣用の剤形はさらに、次のもの:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ソルビトール、デンプンの粘質物、ポリビニルピロリドン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウム、ラクトース、微結晶性セルロース又は糖などの付形剤又は充填剤;馬鈴薯デンプン、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム又はグリコール酸ナトリウムデンプン又はアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカなどの滑剤;スクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤;硫酸ラウリルナトリウムなどの湿潤剤;若しくはペパーミント、冬緑油、オレンジ香料又はチェリー香料などの香料を含有してもよい。単位剤形がカプセルである場合、これは、前記のタイプの物質に加えて、液体担体を含有してもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、又はその単位剤形の物理的形態及び特性を別に変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬又はカプセルを、シェラック、糖又はこれら両方でコーティングすることができる。それ自体知られている方法で、例えば慣用の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、浮揚、乳化、カプセル封入、エントラッピング(entrapping)又は凍結乾燥プロセスにより、本発明の薬剤組成物を製造することができる。
【0075】
活性化合物と固体付形剤とを組み合わせ、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な補助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、望ましい場合には錠剤又は糖衣丸核を得ることにより、経口使用のための薬剤調製物を得ることができる。適切な付形剤は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなどを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤である。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0076】
糖衣丸核に、適切なコーティングを与えることができる。このために、場合によってアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適切な有機溶剤又は溶剤混合物を含有してもよい濃糖溶液を使用することができる。染料又は顔料を錠剤又は糖衣丸コーティングに加えて、活性化合物用量の様々な組み合わせを識別又は特徴づけることができる。
【0077】
経口で使用することができる薬剤調製物は、ゼラチンで製造された押込嵌めカプセル、ゼラチン並びにグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で製造された密閉軟質カプセルを包含する。押込嵌めカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤並びに場合により安定剤と混合された形態で活性成分を含有してよい。軟質カプセルでは、活性化合物を、脂肪族油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることもできる。
【0078】
選択肢の1つでは、持続放出処方物を使用する。持続放出処方物は、当技術分野ではよく知られている。例えば、これらは、参照により本願明細書に援用されるBaichwalに付与された米国特許第6,039,980号明細書に記載されているように、ザンサンガム及びローカストビーンガムなどの多糖類をジメチルシロキサン、ケイ酸、マンナン及びガラクタンの混合物、ザンサン並びに微粉化海藻などの担体と一緒に使用することを包含してもよい。他の持続放出処方物は、参照により本願明細書に援用されるSaikawaらに付与された米国特許第6,740,634号明細書に挙げられている乳酸−グリコール酸ポリマーなどの生分解性ポリマーを含んでもよい。さらに他の持続放出処方物は、参照により本願明細書に援用されるKeithに付与された米国特許第4,428,926号明細書に挙げられているポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールをベースとするポリマーを含む膨張性格子を含む。さらに他の持続放出処方物は、官能基として4級アンモニウム基を有するアクリレートとメタクリレートとのコポリマー、さらに中性エステル基を有するエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマーを含有する、Rohm & HaasのEudragit(商標)ポリマーをベースとする。本発明による方法で使用するために適した特に好ましい持続放出組成物は、活性成分としてナドロールを含有する持続放出組成物である。
【0079】
経口用液体製剤は、例えば、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップ、チンキ剤又はエリキシル剤の形態であってよいか、使用前に水又は他の適切なビヒクルで再構成される乾燥製品として提供することができる。このような液体製剤は、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は硬化食用脂;レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴムなどの乳化剤;非水性ビヒクル(食用油を含んでもよい)、例えば、扁桃油、椰子油、油性エステル、プロピレングリコール又はエチルアルコール;若しくは防腐剤、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン又はソルビン酸などの慣用の添加剤を含有してもよい。製剤はさらに、緩衝塩、着香剤、着色剤又は甘味剤(例えばマンニトール)を適宜含有してもよい。
【0080】
当業者であれば、投与経路は、吸収効率の速度の重要な決定因子であることを認めるであろう。例えば、消化性経路、例えば、経口、直腸、舌下又は口内は通常、投与の最も安全な経路と考えられる。循環への薬物の輸送は遅く、したがって、急な有害反応を示しうる薬物の迅速で高い血液レベルはない。これは、投与の最も安全な経路と考えられるが、いくつかの欠点もある。重大な欠点の1つは、吸収速度が変動することであり、このことは、血液レベルの僅かな差が、薬物の所望の治療効果とその毒性効果とを分けている場合、即ち、薬物が比較的低い治療指数を有する場合には、重大な問題である。さらに、特に、直腸投与経路が選択されるか、経口投与を患者が不快であると知覚された場合には、患者の服薬遵守が、常には保証されない。さらに、経口投与では、薬物がそのターゲット部位に達する前に、広範囲な肝臓代謝が生じる。他の投与経路は、消化管をバイパスする非経口である。非経口投与の重要な利点の1つは、薬物がそのターゲット部位に達する時間が短くなり、緊急の際には必須である迅速な応答が生じることである。さらに、経口投与により、より正確な投与が可能である。さらに、非経口投与により、薬物のより迅速な吸収が可能になり、このことにより、高い有害反応も生じうる。消化性投与とは異なり、非経口投与は、薬物の無菌処方を必要として、無菌技術が必須である。非経口投与の最も重大な欠点は、これが、不溶性物質には適していないことである。消化性及び非経口投与経路に加えて、局所及び吸入投与も有用である。薬物の局所投与は、局所状態の治療に有用であるが、しかしながら、通常は、ほとんど全身吸収はない。薬物の吸入は、循環への迅速なアクセスをもたらし、ガス状及び揮発性薬物若しくは蒸発させるか又は噴霧することができる薬物での一般的な投与経路である。これは、薬物でのターゲットが肺系に存在する場合には、望ましい投与経路である。
【0081】
化合物を非経口投与のために処方する場合、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病変内又は腹腔内を介する注射のために処方する場合には、多くのオプションが可能である。有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを活性成分として含有する水性組成物の調製は、当業者に知られている。通常、このような組成物を、注射可能なものとして、液体溶液及び/又は懸濁液として調製することができる。注射の前に液体を加えて、溶液及び/又は懸濁液を調製するための使用に適している固体形態を調製することもできる。製剤は、乳化されていてもよい。
【0082】
注射可能な使用に適した薬剤形態には、無菌の水性溶液及び/又は分散液;ゴマ油、落花生油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリド及び/又は水性プロピレングリコールを含む処方物;及び/又は無菌の注射可能な溶液及び/又は分散液をその場で調製するための無菌粉末が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。場合によって、懸濁液はさらに、化合物の可溶性を高めて、高濃度の溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。いずれの場合でも、形態は、無菌でなければならないか、かつ/又は投与に適した直径を有するシリンジ及び針を容易に通過する溶液である程度に流動性でなければならない。これは、製造及び貯蔵条件下に安定でなければならず、細菌又はカビなどの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。
【0083】
遊離塩基又は薬学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されている水中で調製することができる。さらに分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び/又はこれらの混合物中で、及び/又はオイル中で調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有する。適切な非感作性及び非アレルギー性防腐剤が、当技術分野ではよく知られている。
【0084】
担体はさらに、溶剤及び/又は分散媒体であってもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール及び/又は液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物及び/又は植物油が含まれる。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合には適切な粒度を維持することにより、及び/又は界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌剤及び/又は抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸又はチメロサールを含有することにより、微生物の作用を予防することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが、好ましい。多くの場合、ハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液などの生理学的に相容性な緩衝液中で溶液を調製することが好ましい。吸収を遅くする薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンを組成物中で使用することにより、注射可能な組成物の長期吸収を実施することができる。
【0085】
必要な量の活性化合物を適切な溶剤中に、必要に応じて前記で挙げた様々な他の成分と共に加え、続いて滅菌することにより、無菌の注射可能な溶液を調製する。滅菌は典型的には、濾過により行う。通常、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体及び/又は他の必要な成分を含有する無菌ビヒクルに加えることにより、分散液を調製する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、活性成分及び追加の望ましい成分の粉末を、元のその無菌濾過溶液からもたらす真空乾燥及び/又は凍結乾燥技術である。直接注射するための比較的濃縮されている溶液又は高濃縮溶液の調製も考えられ、この場合、溶剤として、極めて迅速な浸透をもたらすジメチルスルホキシド(DMSO)を使用して、望ましい場合には、小さい部分に高濃度の活性薬剤を輸送することも考えられる。
【0086】
水溶液中での非経口投与では、例えば、溶液は、必要な場合には適切に緩衝されているか、及び/又は液体希釈剤は始めに、十分な生理食塩水、グルコース又は他の張性剤で等張性にされていなければならない。これらの特殊な水溶液は特に、静脈内、筋肉内、皮下又は腹腔内投与に適している。これに関連して、使用することができる無菌水性媒体は、本開示を考慮すれば、当業者には分かるであろう。例えば、1回用量を、等張性NaCl溶液1mLに溶解させ、皮下注入液1000mLに加えるか、注入の所定の位置に注射することができる(例えば、「レミントンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(第15版),pp.1035−1038、1570−1580参照)。治療される対象の状態に応じて、投薬にいくつかのバリエーションが必要となることもある。投与に責任を有する人物が、いかなる状況でも、個々の対象に適切な用量を決定する。本発明による化合物及び組成物を、ボーラス注射又は連続注入により、非経口投与のために処方することもできるし、単位剤形、例えば、アンプル、バイアル、小容量注入又は予備充填(prefilled)シリンジ中で、又は防腐剤の添加を伴う多人数用容器中で提供することもできる。
【0087】
本発明による組成物の他の経路は、経鼻溶液、経鼻スプレー、エアロゾル又は吸入薬などの剤形を使用する経鼻である。経鼻溶液は通常、液滴又はスプレーで鼻通路に投与するように設計されている水溶液である。鼻分泌と多くの点で類似しているように経鼻溶液を通常は調製して、正常な繊毛作用が維持されるようにする。したがって、水性経鼻溶液は通常、等張性であるか、及び/又は約5.5から約6.5のpHを維持するためにやや緩衝されている。加えて、眼製剤で使用されるものと同様に、抗菌防腐剤及び/又は適切な薬物安定剤が、必要な場合には、処方物中に含まれていてもよい。様々な市販の経鼻製剤が知られており、例えば、抗生物質又は抗ヒスタミン薬を含んでもよい。スプレー組成物を、例えば水溶液又は懸濁液として、若しくは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を使用して、加圧パックから輸送されるエアロゾルとして処方することができる。
【0088】
他の投与方法に適している追加の処方物には、膣座薬及び/又はペッサリーが含まれる。直腸ペッサリー又は座薬を使用することもできる。座薬は、直腸、膣又は尿道に挿入して通常は投薬される様々な重量又は形状の固体剤形である。挿入の後に、座薬は腔液体中で軟化、溶融及び/又は溶解する。通常、座薬のための慣用の結合剤又は担体には、ポリアルキレングリコール、カカオバター又はトリグリセリドが含まれる。
【0089】
若しくは、これらに限られないが、リポソーム処方物、軟膏、クリーム、ローション、パウダー又はクリームを含む他の剤形を使用することもできる。軟膏及びクリームは例えば、適切なゲル化剤及び/又は溶剤を加えた水性又は油性基剤を用いて処方することができる。例えばこのような基剤には、水及び/又は流動パラフィンなどのオイル又は落花生油又はひまし油などの植物油若しくはポリエチレングリコールなどの溶剤が含まれうる。使用することができる増粘剤には、軟質パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、微結晶ろう及び蜜ろうが含まれる。ローションは、水性又は油性基剤を用いて処方することもでき、通常は、1種又は乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤又は増粘剤をさらに含有する。
【0090】
外用粉末を、適切な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトース又はデンプンを用いて処方することができる。
【0091】
インバースアゴニストと、それらが相互作用するβ−アドレナリン受容体との相互作用の性質によって、インバースアゴニストの投与に応答して、影響を受けている組織での受容体密度が高まると、時間をかけて治療応答が徐々に現れる。したがって、特に好ましい選択肢の1つでは、投与の開始時から用量を徐々に高めながら滴定する。言い換えると、β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で開始し、最大用量まで高める一連の段階用量で、時間をかけて投与する。最大用量に達したら、β−アドレナリンインバースアゴニストを、その用量(維持用量)で投与し続ける。例えば、ナドロールを経口投与する場合には、治療される特定の状態、重度及び治療に対する状態の応答に応じて、治療を1mg用量で開始し、次いで、3mg、5mg、10mg、15mgを経て、25mg、30mg、50mg、70mg、100mg又は必要と考えられるならばそれ以上などのより高い維持用量まで進める。他のインバースアゴニストでも、同様の投薬レジームを使用することができるが、正確な出発用量は通常、β−アドレナリン受容体の結合部位に対するインバースアゴニストの親和性に左右される。
【0092】
したがって、本発明の他の態様は、ナドロールなどのβ−アドレナリンインバースアゴニストの最小当初用量から最大維持用量の一連の用量を含むブリスターパックである。通常、このようなブリスターパックは:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小容量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有する。
【0093】
適切なブリスターパック10を図1に示したが、これは、通常はフォイルである下部支持体12;下部支持体の上に設置されている、ピル、カプセル又は他の剤形を保持するための複数のキャビティ16、18、20及び22が生じるように成形されている中間用量ホルダー14;並びに開口部26、28、30及び32を有し、各開口部は、キャビティ16、18、20及び22に一致するように配置されている、中間用量ホルダー14の上に位置する上部支持体24を包含する。ここには、4つのキャビティ及び開口部のみが示されているが、本発明によるブリスターパック10は、10、20又は30個などのもっと多い数の剤形を保持することもできる。典型的には、下部支持体12、上部支持体24又はそれら両方は、各丸薬、カプセル又は他の剤形の用量を識別し、その丸薬、カプセル又は他の剤形を摂取する際に従うべき順序に関するガイダンスを患者に提供するために、その上に印刷された指示書を有する。中間用量ホルダー14は典型的には、透明なプラスチック又は他の透明な材料から製造されていて、剤形を見ることができるようになっている。前記のように、剤形は、最小用量から始まって、通常は維持用量である最大容量まで進む段階的用量であってよい。若しくは、剤形は、少なくとも2つの用量を含んでもよい:(1)一連の段階用量において最も高い維持用量;及び(2)少なくとも1個のバックアップ復旧用量(例えば、用量が摂取されなかった場合に使用される)又は規定の条件で摂取される比較的小さい用量。規定の条件は例えば、低用量が必要とされるエリスロマイシン又はネオマイシンなどの抗生物質の投与であるか、腎機能不全が薬物の半減期を高める場合には、腎機能が正常であった場合と同じ血清濃度を達成するためには低用量が必要とされる場合である。
【0094】
β−アドレナリンインバースアゴニストに適した用量を設定する際には、様々な因子を考慮しなければならない。これらの因子には、患者が、β−アドレナリンインバースアゴニストの薬物動態を変化させて、より迅速か、より緩慢なそれらの崩壊をもたらす他の医薬品を摂取しているかどうかが含まれる。特に、患者が、抗生物質のエリスロマイシン又はネオマイシンを摂取している場合には、通常、維持用量を減らすことが必要である。したがって、本発明の他の態様は、バックアップ復旧用量及び患者がこれらの抗生物質を摂取する場合に使用するための低用量を有するブリスターパックである。
【0095】
例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養又は実験動物での標準的な薬剤手順により、β−アドレナリンインバースアゴニストの毒性及び治療効力を決定することができる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するための一連の用量範囲を処方する際に使用することができる。このような化合物の用量は好ましくは、毒性をほとんど有さないか、有さないED50を含む一連の循環濃度の範囲内である。用量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。
【0096】
本発明の方法で使用されるいずれの化合物でも、治療的有効用量は、細胞培養アッセイから当初は推定することができる。例えば、細胞培養で決定されたIC50(即ち、長期効果を考慮した場合に、受容体シグナリングにおいて半−最大改善を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで用量を処方することができる。このような情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。血漿でのレベルは、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0097】
患者の状態を考慮して、個々の医師が、正確な処方、投与経路及び用量を選択することができる(例えば、Finglら、「治療に関する薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics,1975,第1章,p.1)」参照)。主治医は、毒性によって、又は臓器機能障害により、いつ、どのように投与を終了、中断又は調節するかが分かるであろうことを特記する。逆に、主治医は臨床応答が十分でない場合には(毒性を予め除外して)、より高いレベルまで治療を調節することが分かるであろう。該当する障害を管理する際に投与される用量の規模は、治療される状態の重度及び投与経路に伴って変動しうる。状態の重度は例えば、一部では、標準的な予後評価法により評価することができる。さらに、用量、場合によっては、用量頻度も、個々の患者の年齢、体重及び応答に応じて変動しうる。前記で検討されたプログラムに匹敵するプログラムを、獣医学でも使用することができる。
【0098】
治療される特異的な状態に応じて、このような薬剤を、全身的又は局所的に処方及び投与することができる。通常、投与は全身的である。処方及び投与に関する技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)に見ることができる。適切な経路には、いくつか挙げるだけでも、経口、直腸、経皮、経膣、経粘膜又は腸管投与;筋肉内、皮下、骨髄内注射、さらにくも膜下、直接心室内、静脈内、腹腔内、微腔内又は眼内注射を含む非経口輸送が含まれうる。通常、経口投与が好ましい。
【0099】
注射では、本発明の薬剤を水溶液の形態で処方することができる。このような経粘膜投与では、浸透すべきバリアに適した浸透剤を処方物中で使用する。このような浸透剤は通常、当技術分野で知られている。
【0100】
本発明の実施のために本願明細書に開示した化合物を処方して、全身投与に適した用量にするために、薬学的に許容できる担体を使用することは、本発明の範囲内である。担体を適切に選択し、適切に製造実施すれば、本発明の組成物、特に、溶液として処方されたものを、静脈内注射などにより、非経口投与することができる。当技術分野でよく知られている薬学的に許容できる担体を使用して、化合物を処方して、容易に経口投与に適した剤形にすることができる。このような担体によって、本発明の化合物を、治療される患者が経口摂取するための錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することができる。
【0101】
当技術分野の通常の技術を有する専門家によく知られている技術を使用して、細胞内投与されることを意図されている薬剤を投与することができる。
【0102】
本発明で使用するために適している薬剤組成物には、その所定の目的を達するために有効な量で活性成分が含まれている組成物が含まれる。特に、本願明細書に示されている詳細な開示を考慮すれば、有効量の決定は十分に、当業者の能力の範囲内である。活性成分に加えて、これらの薬剤組成物は、活性化合物を加工して薬剤として使用することができる製剤にすることを容易にする付形剤及び補助剤を含む薬学的に許容できる適切な担体を含有してもよい。経口投与のために処方される製剤は、錠剤、糖衣丸、カプセル又は溶液の形態であってもよい。本発明の薬剤組成物は、それ自体公知である方法で、例えば、慣用の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、浮揚、乳化、カプセル封入、エントラッピング(entrapping)又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。
【0103】
非経口投与のための薬剤組成物には、水溶性形態である活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製することもできる。適切な親油性溶剤又はビヒクルには、ゴマ油又はオレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル又はトリグリセリドなどの脂肪族油が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。場合によっては、懸濁液はさらに、化合物の可溶性を高めて、高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0104】
活性化合物と固体付形剤とを組み合わせ、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な補助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、望ましい場合には錠剤又は糖衣丸核を得ることにより、経口のための薬剤調製物を得ることができる。適切な付形剤は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなどを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤である。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0105】
糖衣丸核に、適切なコーティングを与えることができる。このために、場合によってアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適切な有機溶剤又は溶剤混合物を含有してもよい濃糖溶液を使用することができる。染料又は顔料を錠剤又は糖衣丸コーティングに加えて、活性化合物用量の様々な組み合わせを識別又は特徴づけることができる。
【0106】
経口で使用することができる薬剤調製物は、ゼラチンで製造された押込嵌めカプセル、ゼラチン並びにグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で製造された密閉軟質カプセルを包含する。押込嵌めカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤並びに場合により安定剤と混合された形態で活性成分を含有する。軟質カプセルでは、活性化合物を、脂肪族油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることもできる。
【0107】
典型的には、本発明による方法では、インバースアゴニストの半減期に応じて、インバースアゴニストを1日用量で、又は1日当たり複数回で投与する。若しくは、インバースアゴニストを、1日おき、2日おき、3日おき、週1回などのより少ない頻度で投与することもできる。薬物動態の分野の専門家であれば、特定の薬物の投与に関連して、薬物の生物学的利用率及び半減期を理解することの重要性を認めるであろう。各投与の間の時間間隔がその半減期の4倍未満であると、薬物が体に蓄積し、この場合、薬物の全体内貯蔵は、プラトー又は定常状態濃度まで急激に高まることはよく知られている。プラトーでの薬物の平均全体内貯蔵は、用量、各投与間の間隔、薬物の生物学的利用率及び薬物の排出速度の関数である。したがって、当業者であれば、所望の効果が達成されるように、所定の薬物での用量及び投与間隔を決定することができる。
【0108】
本発明の他の実施形態は、肺気道疾患を治療するための方法及び複数の薬物を含む組成物又は併用療法である。肺気道疾患の患者は往々にして、その症状を管理するために組み合わさって作用する複数の薬物を処方される。
【0109】
出願人は、この理論に縛られることは意図していないが、多くの状況において、インバースアゴニストとアゴニストとの同時治療は、アゴニスト単独での治療よりも優れていると考えられる。これらの結果は、インバースアゴニストとの同時治療は、アゴニストの治療効果を高め、関連GPCRの脱感作を予防することを示唆している。併用療法のこの形態に関する理論的解釈の1つは、急性喘息発作などの急性の症状発現の治療にありうる。インバースアゴニストでの治療が、喘息発作の頻度を低下させる場合でも、急性発作を治療する必要は未だ必要である。このことは、インバースアゴニストとアゴニストとの同時投与により行うことができる。
【0110】
特に望ましい組み合わせの1つでは、肺気道疾患を治療するために、β−アドレナリンインバースアゴニストを、β2−選択的アドレナリンアゴニストと組み合わせて投与する。β2−選択的アドレナリンアゴニストは通常、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、ドブタミン、フェノテロール、ホルモテロール、イソエタリン、イソプレナリン、レバブテロール(levabuterol)、マブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、サルブタモール、サルメテロール及びテルブタリン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択する。このような併用療法で使用するために本発明で特に好ましいβ−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである。β−アドレナリンインバースアゴニストと組み合わせて使用するために特に好ましいβ2−選択的アドレナリンアゴニストには、イソプロテレノール、サルブタモール及びサルメテロールが含まれる。併用療法の原理は、インバースアゴニストでの治療が受容体数のアップレギュレーションをもたらすことを示すデータにより支持されている。この場合、アゴニストでの同時治療は、病的応答がシグナリングの欠如を特徴とするような状況で、細胞シグナリングを増大させ、正常な機能を復活させると期待される。これらの線に沿って、気道抵抗でのインバースアゴニストの阻害応答は、アゴニストの同時投与によりかなり高まるであろう。これらのアゴニストの効力は、インバースアゴニストの存在により低下しうるが、応答の全体規模は、高まるであろう。このことにより、長期アゴニスト治療に往々にして伴う脱感作が予防されるであろう。
【0111】
併用療法を使用する場合、組み合わせの各メンバーの用量は、前記の原理に従い決定することができる。しかしながら、多くの場合に、固定用量の組み合わせが望ましく、それを使用することができる。固定用量の組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストの用量は前記と同様である一方で、β2−選択的アドレナリンアゴニストの望ましい用量は、前記のように決定することができる。
【0112】
他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストをステロイドと一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましいステロイドには、必ずしもこれらに限られないが、ベクロメタゾン、ブデノシド(budenoside)、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0113】
他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを抗コリン作動薬と一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましい抗コリン作動薬には、必ずしもこれらに限られないが、ムスカリン様受容体アンタゴニスト、特に、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム及び臭化オキシトロピウムなどの4級アンモニウムムスカリン様受容体アンタゴニスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0114】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストをキサンチン化合物と一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましいキサンチン化合物には、必ずしもこれらに限られないが、テオフィリン、長期放出テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、エンプロフィリン、ジプロフィリン、イスブフィリン(isbufylline)、コリンテオフィリネート、アルビフィリン(albifylline)、アロフィリン、バミフィリン及びカフェイン、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0115】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを抗IgE抗体と共に投与する。典型的には、抗IgE抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体に由来する遺伝子操作された抗体である。好ましくは、抗IgE抗体は、ヒト化されている。特に好ましいヒト化抗IgE抗体は、特異的にヒトIgEに結合し、オマリツマブ(omalizmab)の名称で販売されているIgG1κモノクローナル抗体である。
【0116】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを、ロイコトリエン調節剤と共に投与する。本発明で使用するために特に好ましいロイコトリエン調節剤には、必ずしもこれらに限られないが、イブジラスト、モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0117】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを、ホスホジエステラーゼIV阻害剤と共に投与する。本発明で使用するために特に好ましいホスホジエステラーゼIV阻害剤には、必ずしもこれらに限られないが、ロフルミラスト及びシロミラスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。ホスホジエステラーゼIVは、肺での主なアイソホームであり、この酵素の阻害剤は、喘息及びCOPDの治療のために検討されている。
【0118】
β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤の投与経路は、当業者が、前記のように治療効率を最適化するように選択することができる。しかしながら、好ましい選択肢の1つでは、β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤の両方を、吸入により投与する。他の好ましい選択肢では、β−アドレナリンインバースアゴニストを経口で投与するが、追加の治療剤は吸入により投与する。これらの追加の治療剤のうちの数種には、毒性があり得るので、吸入による追加の治療剤の投与が、通常は好ましい。しかしながら、他の経路も可能である。
【0119】
エアロゾル治療により、達成されるべきほぼ理想的な損益率が可能になる。それというのも、非常に小用量の吸入医薬品が、最小の副作用で最適な治療をもたらすためである。本発明による方法で使用するために適した様々な追加の治療剤を、エアロゾル処方物の形態で利用することができ、これには、β2−アドレナリンアゴニスト、ステロイド及び抗コリン作動薬が含まれる。しかしながら、エアロゾル適用により投与される薬物の治療効率は、薬物自体の薬物動態特性だけでなく、輸送装置の特性にも左右される。輸送装置の特性は、肺に沈着する薬物の量及び気道での薬物分布パターンに影響を与える。
【0120】
エアロゾルは、微粒子の空中浮揚懸濁物である。粒子は、固体又は液体であってよい。エアロゾル粒子は、様々な大きさであり(即ち、粒子は、サイズに幅がある)、エアロゾル粒子サイズ分布は、対数正規分布により十分に記載される。粒子は、沈降し(沈降物)、相互に付着し(凝塊物)、管及び粘膜などの構造に付着する(堆積物)する傾向を有する。エアロゾルにより輸送される粒子は簡便には、その空気力学的動態をベースに特徴づけることができる。パラメーターの1つは、質量中央空気力学的直径(MMAD)である。定義によると、1μMのMMADを有する粒子分布は、単位密度及び1μM直径の液滴と同じ沈降平均速度を有する。
【0121】
エアロゾル粒子のサイズ、さらに呼吸系に作用を及ぼす変数は、吸入されたエアロゾルの気道への堆積に影響を及ぼす。一方では、直径10μMを上回る粒子は、肺には堆積しないようである。しかしながら、0.5μM未満の粒子は、肺胞に達しうるか、呼気されうる。したがって、1μMから5μMの直径を有する粒子が、より下部の気道に最も効率的に堆積する。これらのサイズの粒子は、喘息のための治療薬を輸送するために最も効率的である。
【0122】
呼吸に適した液滴(即ち、5μM未満の直径を有する液滴)内に含まれるエアロゾル物質のパーセンテージは、使用される吸収装置に左右される。ゆっくりとした一様な吸入により、肺の末梢部に侵入する粒子の数が増える。吸入される容量が増えるにつれて、エアロゾルは、より末梢的に気管支樹に侵入しうる。吸入を完了した後の呼吸停止時間により、肺末梢に侵入したこれらの粒子を、重力を介して気道に沈降させることができる。急性喘息の患者で典型的に観察される速い吸気流速度は、吸入された薬物の損失を高める。このことは、エアロゾル粒子が上部気道と、最初のいくつかの気管支部に衝撃を与えるために起こる。さらに肺気道疾患に関連する他の因子も、エアロゾル堆積を変化させうる。気道閉塞及び肺実質の変化は往々にして、喘息の患者の末梢気道での肺堆積と関連している。
【0123】
エアロゾル投与では、粒子が肺に堆積する前に、鼻が粒子を効率的に捕捉する:したがって、エアロゾル化された粒子を口呼吸することが好ましい。エアロゾル化された粒子は、多くの部位から失われる。通常、気道に達する噴霧用量の量は、≦15%である。多くの場合、吸入された容量の約90%は、飲み込まれて、胃腸間から吸収される。気道に達する少ないフラクションの用量も、血流に吸収される。したがって、用量のうちの飲み込まれたフラクションは、経口処方物と同様に吸収及び代謝される一方で、気道に達した用量フラクションは、静脈内用量と同様に血流に吸収され、代謝される。
【0124】
薬物を局所投与する場合(肺へのエアロゾル輸送を介して)、所望の治療効果は、血漿薬物濃度に直接的には関連しえない局所組織濃度に左右される。十分に大量の薬物用量が投与されると、吸入されたβ2−アゴニスト又はコルチコステロイドでは、全身活性が容易に証明されうる。これは、いくつかの示唆を有する。第1には、吸入薬の選択に関しては、局所薬物は、ターゲット臓器内での高い固有活性と全身的に吸収された薬物の迅速な不活性化とを併せ持たなければならない。第2に、低い経口生物学的利用率を有する(低い胃腸吸収又は高い初回通過肝代謝により)薬物では、より僅かな全身的副作用が予測されなければならない。吸入薬の多くは、低用量で投与され、低い経口生物学的利用率を有するので、これらの薬物の血漿濃度は、経口投与の後よりもかなり低い。
【0125】
さらに、肺吸収に影響を及ぼす因子が考えられるはずである。最近になって、テルブタリンは、健康な非喫煙者の場合よりも、健康な喫煙者の場合にはより迅速に、肺を介して吸収されることが証明された。このことは、薬物の作用開始に影響を与えうる。嚢胞性線維症を伴う10人の患者での吸入サルブタモールの生物学的利用率は、健康な成人の場合よりも高いことも判明している。生物学的利用率のこの差異に関して提示されているメカニズムの1つは、嚢胞性線維症の患者の慢性的に冒されている気管気管支樹は、組織へのサルブタモールのより高い透過性をもたらすことである。しかしながら、この分野でのデータは限られており、これらの主張を実証するには、さらに研究が必要である。
【0126】
最後に、血液濃度が低く、肺生物学的利用率を可能な限り正確に決定するためには、肺及び経口吸収を区別しなければならないので、吸入薬の絶対肺生物学的利用率は、評価が困難である。薬物の肺吸収を区別するために、炭を使用して、吸入されたテルブタリンの飲み込まれたフラクションを吸着することができる。最近になって、サルブタモールの吸入後30分間の尿収集は、肺に輸送された薬物の量を示すことが判明した。他の吸入薬の生物学的利用率を決定するために、この技術を適用することができる。吸入薬の生物学的利用率を決定するための他の技術も、当技術分野では知られている。これらには、FEV1測定を使用する薬物動態方法、放射性標識された処方物を使用する肺堆積研究又は主に尿排泄測定を使用する薬物動態研究が含まれる。
【0127】
治療用エアロゾルは、ジェットネブライザー内で液体を噴霧するか、液体の固定浴(standing pool)を振動させること(超音波噴霧化)により生じさせることができる。予め生じさせたエアロゾルを投与することもできる。後者の例には、MDI及び乾燥粉末装置が含まれる。どのような輸送装置を使用しても、患者は、これを正確に使用するように教示されなければならない。
【0128】
ジェットネブライザーは全て、よく知られている香水噴霧器により示されると同様の操作原理を介して作動する。液体を密閉容器の底部に入れ、圧縮機又は装置を通る圧縮ガスシリンダーからの空気のジェットにより、エアロゾルを生じさせる。超音波噴霧器は、約1mHzの周波数でトランスデューサー上に位置する液体を振動させることによりエアロゾルを生じさせる。これは、空気の流れにより装置から患者へと運ばれる粒子の雲状物を生じさせる。ネブライザーの設計及びそれをどのように操作するかによって、粒子(panicles)の質、サイズ及び分布において異なるエアロゾルをネブライザーにより生じさせることができる。全てのネブライザーが、最適な効力をもたらす必要な規格(MMAD、流れ、押出量)を有するわけではないことを特記する。最近の研究は、健康なボランティアにおいて4種のネブライザーからの肺堆積を比較し、ネブライザーに当初負荷された用量に対するパーセンテージとして表される中央肺エアロゾル堆積は、2から19%の範囲であったことを示している。5才以下の子供のために、さらに呼吸機能不全がMDI又は乾燥粉末吸入器からの吸入を損なう重篤な喘息を治療する際に、噴霧されたエアロゾルは特に役立つ。副作用を最小化するために、噴霧化溶液のpH及び容量オスモル濃度を調整すべきである。
【0129】
計量式(metered)用量吸入器(MDI)は、その簡便さ及び有効性により、外来患者に吸入薬を輸送するために使用される最も広く使用されている治療エアロゾルであろう。現在使用されている大抵のMDIは、噴射剤中の薬物懸濁液を含有する。MDIには、2つの主な構成材料がある:(i)噴射剤、活性薬剤及び計量室を含むプラスチック製又は金属製の密閉シリンダーであるキャニスター;並びに(ii)キャニスターを保持し、放出されたエアロゾルを患者の気道に向ける成形プラスチック製容器であるアクチュエーター。
【0130】
最適な薬物輸送に望ましい蒸気圧及び噴霧特性を達成するように、噴射剤混合物を選択する。クロロフルオロカーボンが以前には使用されたが、環境的な関心により、非塩素化噴射剤が今は使用されている。通常は1μM未満である薬物の微細な粒子を、加圧(液化)噴射剤に懸濁させる。薬物が凝集することを防ぐために、オレイン酸ソルビタン、レシチン又はオレイン酸などの界面活性剤を通常は加える。他の界面活性剤も、当技術分野では知られている。計量室は通常、25から100μLを包含する。キャニスターがアクチュエーターへと押し込まれると、計量室の内容物は、放出される。ほぼ即座に、噴射剤は蒸発して、排出された液体を粒子へと分解し、これは、大きな推進力で、前方へ噴射される。最適な肺薬物堆積のために、薬物を、約5秒続くゆっくりとした吸気の開始時に放出し、10秒間の息止めを続けるべきである。MDIの効力を改善するために、いくつかの吸入補助具が設計されている。これらは、手−息の協調が上手ではない患者に役立つ。短い管(例えば錐体又は球)により、エアロゾルを口中へとまっすぐに向けることができるか、折りたたみ可能なバッグが、患者が薬物を吸入しうる3から5秒間にわたって、懸濁液中に粒子を保持するエアロゾルレザバーとして役立ちうる。しかしながら、これらの装置のいずれかを使用する場合、中咽頭に入るとエアロゾルの速度は遅くなり、肺に対する薬物利用性及び中咽頭での堆積は低下する。
【0131】
乾燥粉末吸入器は、MDIを使用することが困難な患者(例えば、子供及び高齢患者)に薬物を輸送するために考案された。通常、適切な用量を、大きなラクトース又はグルコース粒子(panicle)などの流れ助剤(flow aid)又は充填剤と共にカプセルに装入する。装置の内部で、カプセルは始め、針により孔を空けられるか(例えば、Spihaler(登録商標)、半分に割られる(例えば、Rotohaler(登録商標))。吸入の間、カプセルが回転するか、プロペラが回転して、カプセルの内容物を吸入空気に入れ、気道に輸送するために適している小さい粒子へと壊す条件が生じる。粉末を分散させるために必要なエネルギーは、患者の吸入努力に由来する。最近、より簡便な複数回(multidose)乾燥粉末吸入器が導入されている(例えば、Diskhaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標))。乾燥粉末吸入器に伴い起こりうる問題には、食道刺激及び気道への粉末の直接的な作用による咳が含まれる。さらに、カプセルの壁は、カプセルの薬物放出の失敗又は凝集粉末の分解の失敗の結果として薬物でコーティングされうる。このことによって、実質的に全ての薬物が口中に堆積しうる。これらの粉末デバイスは、クロロフルオロカーボンを含有せず、MDIの代替物を提供しうる。
【0132】
喘息を治療するためのエアロゾルの臨床使用は、追加の治療剤として本願明細書で提示されている、β2−アゴニスト及びコルチコステロイドを含む数種の化合物で提案されている。
【0133】
β2アゴニストでは、限られた薬物動態データをヒトで利用することができる。それというのも大抵は、治療活性に必要な低用量の吸入薬は、体液中にアッセイ未満の薬物濃度をもたらすためである。これらの薬物の肺生物学的利用率については、ほとんど知られていない。MDIにより投与された場合、吸入用量の平均10%は、肺に達すると、通常は論じられている。MDIからのテルブタリンの平均肺生物学的利用率は、9.1%であると報告されている。経口成分(用量のうちの嚥下されたフラクション)が加わると、値は、16.5%まで上昇する。即ち6.7%の増大である。薬物のサルメテロール及びホルモテロールは、その長い気管支拡張効果期間(12から18時間)のベースである異なる作用機序を有する。β2−アゴニスト分子をその受容体につなぐ長い側鎖を有するので、サルメテロールは、独特と思われる。ホルモテロールは、極めて有望な古典的β2−アゴニストであると思われる。吸入後のホルモテロールの排泄半減期は、尿排泄データを元に、1.7から2.3時間であると算出された。グルクロン酸結合体が同定された。しかしながら、ホルモテロールが、ヒトではまだ検出されていない長期排泄半減期を有することも考えられる。サルメテロールは、キシナホエ(xinafoate)(ヒドロキシナフトエ酸)塩として処方される。この薬物の薬物動態特性については、ほとんど知られていない。サルメテロールは、水酸化により広く代謝され、用量の大部分は、主に排泄物中に72時間以内に排泄される。分子のヒドロキシナフトエ酸部分は、その長い排泄半減期(12から15日)の結果として、投与を繰り返す間に血漿中に蓄積される。
【0134】
抗コリン作動薬では、この群の親化合物は、アトロピンである。アセチルコリンのムスカリン様受容体の合成アゴニストは、4級アンモニウム化合物であるので、膜障壁の通過は困難である。薬物を吸入した後でのアトロピンの全身吸収はほぼ完全であるので、この投与経路は、重大な全身毒性をもたらしうる(Harrisonら1986)。臭化イプラトロピウムが、この群の唯一十分に研究されている代表物質である。ピーク血漿濃度は、薬物の経口摂取後3時間と報告されているので、胃腸管を介しての吸収は遅い。経口摂取後の絶対生物学的利用率は、30%にすぎない。代謝された薬物の排出は、尿及び胆汁で生じる。どのような投与経路であっても、平均排泄半減期は、約3.5時間である。吸入されたイプラトロピウムで観察される血漿濃度は、経口投与された等力気管支拡張用量で観察された濃度の1000分の1である。このことにより、臭化イプラトロピウムの治療用量の吸入後には、全身抗コリン作動性作用がなぜ生じないかが説明される。これらの特性はおそらく、臭化オキシトロピウム、前記の選択肢などの他の4級アンモニウム抗コリン作動薬にも共有される。
【0135】
コルチコステロイドは最も頻繁に、吸入により投与されるが、これは、全身コルチコステロイド治療に通常は伴う副作用のいくつかを予防しうる。顕著な局所活性を有する化合物を生じさせるために、ヒドロコルチゾン分子中のヒドロキシル基のいくつかを、アセトニド又はエステル基で置換した。喘息の患者を治療するために使用される局所活性コルチコステロイド薬には、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸塩、ブデソニド、トリアムシノロン、フルチカゾン及びフルニソリドが含まれる。これらのうち、ベクロメタゾン及びブデソニドが、最も広汎に使用されている。多数の臨床研究の結果から、ベクラメタゾンとブデソニドの効力にはほとんど差異がないことが判明している。スペーシング装置を使用することにより、中咽頭堆積が低減し、口をゆすぐことにより、カンジダ症の発症を防ぐことができる。ブデノシドの血漿クリアランスは、84±27l/hと算出されたが、これは、プレドニゾロンの平均クリアランスよりも約10倍高い。この高いクリアランスの結果として、ブデソニドの排泄半減期は、短い(2.8±1.1時間)。嚥下されたフラクションの全身利用率は、10.7±4.3%であり、広範な初回通過代謝が存在していることを示している。立体選択的代謝が証明されており、体重1kg当たりをベースとして算出して、2種の鏡像異性体の血漿クリアランスは、11人の健康な成人の場合よりも、喘息を伴う6人の子供では、約50%高かった。したがって、吸入によるブデソニドの投与は、経口による薬物投与と比較して全身副作用のリスクを低下させるはずである。肺エステラーゼは、ベクロメタゾンを加水分解することが知られている。吸収されたベクロメタゾン及びエステラーゼ加水分解生成物(17−プロピオン酸ベクロメタゾン及びベクロメタゾン)は、肝臓を通過する間に、活性のより低い代謝産物に迅速に変換される。全身吸収されたフルチカゾンの初回肝代謝はほぼ完全であるので、吸入薬物は、好ましい薬物動態プロファイルを有する。フルニソリド、トリアムシノロン及び吉草酸ベタメタゾンの薬物動態に関しては、ほとんどデータが刊行されていない。
【0136】
吸入された薬物から最大の効果を保証するために、薬物の薬物動態特性と薬物をエアロゾル化するために使用される装置との両方を考慮すべきである。β2−アゴニストに関して、MDI投与、乾燥粉末吸入器での投与又は噴霧化のための溶液など、様々な肺堆積技術を用いる様々な処方物を利用することができる。乾燥粉末吸入器からの単位用量は、MDIからの放出の2倍であるが、これらは、同等の気管支拡張作用を有する。装置の特性は、変動する。計量式用量吸入器では通常、用量の12〜40%が、肺に堆積するが、80%までは、中咽頭に堆積する。MDIをスペーサーと共に使用すると、通常は用量の約20%が肺に堆積するが、僅か5%までが中咽頭に堆積する;したがって、スペーサーを使用すると、中咽頭に堆積する薬物の割合を減らすことができる。乾燥粉末吸入器では、通常、用量の11〜16%が肺に堆積し、中咽頭には31〜72%が堆積する。ネブライザーでは、通常は用量の7〜32%が肺に堆積し、1〜9%が中咽頭に堆積する。当業者であれば、適切な吸入治療装置を使用して、適切な指示を与えることを保証することができるであろう。吸入治療の使用に関する考察が、参照により本願明細書に援用されるA.−M.Tabaret & B.Schmit、「喘息治療の薬物動態的最適化(Pharmacokinetic Optimisation of Asthma Treatment)」Clin.Pharmacokinet.26:396−418(1994)に記載されている。
【0137】
これらの組み合わせ全てで、本発明はさらに、ブリスターパックを包含し、これは、β−アドレナリンインバースアゴニストと、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗−IgE抗体、ロイコトリエン調節剤又はホスホジエステラーゼIV阻害剤などの追加の治療剤との固定用量の組み合わせか、又は別々の丸薬、カプセル又は他の剤形の形態でβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を含有する。インバースアゴニスト及び追加の治療剤の経口投与が望ましい場合には、これらのブリスターパックの使用が適している。ブリスターパックは、前記及び図1に示されている一般的なデザインに従い、患者に対する適切な指示を包含する。
【0138】
一般に、固定用量の組み合わせを使用する場合、ブリスターパックは:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を含有する前記の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有する。
【0139】
β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を別々の剤形で投与すべき場合には、ブリスターパックは通常:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(a)(i)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(ii)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(b)(i)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(ii)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有する中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(4)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有する。
【0140】
第1及び第2の薬剤組成物の剤形は、前記と同様に記載される。通常は、このアレンジでは、第1の薬剤組成物の剤形は、低用量で開始し、維持最大用量までの一連の用量を含む用量を含む。他の剤形アレンジも可能である。
【0141】
ブリスターパックのために、他のアレンジも可能である。
【0142】
本発明を次の実施例により詳述する。これらの実施例は、詳述のためだけに含まれており、本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0143】
(実施例1)
β−アドレナリンインバースアゴニストの長期投与による気道抵抗の低減
方法
6週齢のBalb/cJマウス(Jackson Animal Laboratory,Bar Harbor,Maine)を、特殊な病原体不含条件下に飼育し、トリオボアルブミン不含の食事を与えた。ヒューストン大学及びベイラー医科大学の両方の動物実験倫理委員会が、ここに報告している実験の全てを承認した。非選択的β−アドレナリンインバースアゴニストのカルベジロール(GlaxoSmithKline,King of Prussia,PA)及びナドロール(Sigma Chemical,St.Louis,MO)及びβ2−アドレナリン部分アゴニストのサルブタモール(Sigma Chemical,St.Louis,MO)の投与効果を、肺好酸球性炎症、気道応答性亢進及び不均質気道狭窄などのヒト喘息の主要な形態を示しているマウスモデルで実験した。薬物治療された動物で得られた結果を、時間的に近い関係で行われた実験でビヒクル治療された対応(対照)で得られた結果と比較した。実験1の研究の結果測度は、基線気道抵抗、コリン作動性刺激に対する気道応答性の程度及び気管支肺胞洗浄(BALF)細胞充実度に関して、薬物治療マウスと非治療動物との間に統計的に重大な差異を含んだ。水酸化アルミニウムに吸着されているオボアルブミン25μgをプロトコルの2、9及び16日目に皮下注射して、マウスを感作した。続いて、プロトコルの23日目から27日目に毎日、オボアルブミン25μgを含有する生理食塩水50μLをマウスに鼻腔内投与した。オボアルブミン感作されている生理食塩水攻撃されたマウスの群は、全身感作及びオボアルブミンでの呼吸攻撃に関する対照として役立つ。鼻腔内投与する前に、マウスをハロタン蒸気で鎮静させた。実施例1の研究では、オボアルブミン感作され、オボアルブミン攻撃されたマウス及びオボアルブミン感作され、生理食塩水攻撃されたマウスをそれぞれ、喘息マウス及び対照マウスとする。使用される薬物は、サルブタモール(β1/β2−アドレナリンアゴニスト)、アルプレノロール(部分的なアゴニスト活性を有するβ1/β2−アドレナリンアンタゴニスト)及びナドロール及びカルベジロール(両方とも非選択的β1/β2−アドレナリンインバースアゴニスト)であった。
【0144】
喘息のマウスモデルの表現型に対するβ−アドレナリンリガンド治療の時間効果を実験するために、実験薬物を、急性又は長期に喘息マウスの様々な群に投与した。
【0145】
急性治療での喘息マウスには、β−アドレナリン薬物又は通常生理食塩水の単一静脈内ボーラス注入をプロトコルの28日目に投与し、15分前に、メタコリンに対する気道応答性を測定した。マウスに投与されるカルベジロール、ナドロール、アルプレノロール及びサルブタモールの用量はそれぞれ、24mg/kg、72mg/kg、72mg/kg及び0.15mg/kgであった。長期治療での喘息マウスは、プロトコルの1日目から28日目の間、β−アドレナリン薬物で治療した。β−アンタゴニストでのマウスは、それぞれ2400ppm、250ppm又は7200ppmの濃度でカルベジロール、ナドロール又はアルプレノロールで処置された食物を自由に摂取することができた。これらの濃度は、以前に刊行された研究で、マウスに治療効果をもたらした濃度をベースに選択した。非喘息マウスには、通常の食物を与えた。サルブタモールを、浸透ミニポンプ(Alzet(登録商標)、♯2004、Durect Corporation,Cupertino,CA)を使用して、0.5mg/kg/日の用量で28日間輸送した。
【0146】
プロトコルの28日目に、マウスに麻酔をかけ、気管切開を行い、コンピュータ制御されている小動物用ベンチレータ(Flexivent,Scientific Respiratory Equipment,Inc.,Montreal,Canada)に接続した。強制振動技術を使用して、気道抵抗(Raw)を測定した。気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞組成も決定した。非治療喘息性マウスでは、気道応答性の程度及びBALF中で回収された好酸球の数が、オボアルブミン感作され生理食塩水攻撃された(対照)マウスに比較して著しく高かった。しかしながら、気道応答性の程度及びBALF中で回収された好酸球の数は、急性β−アドレナリンアンタゴニスト治療を受けたマウスと時間的に近い関係で研究された非治療喘息性マウスでは、長期β−アドレナリンアンタゴニスト治療でのマウスに付随して研究された非治療喘息性マウスで得られたものよりも低いことが観察された。
【0147】
気道収縮を誘発するために、塩化アセチル−α−メチルコリン(メタコリン)150μg/mL(Sigma Chemical,St.Louis,MO)を含有する溶液を一定の測度で、シリンジ注入ポンプ(Raze Scientific Instruments,Stanford,CN)を使用して静脈内注入した。メタコリン注入を0.008mL/分で開始し、その測度を段階的に、最大0.136mL/分まで倍増させた。各メタコリン用量を、3から5分間投与し、その間に、データを1分間隔でサンプリングし、次いで、平均化した。
【0148】
データ分析
呼吸系の複合入力インピーダンスを計算し、19.75Hzでの呼吸系インピーダンスの実数部の値を、気道抵抗(Raw)の規模を反映させるために利用した。各動物の気道応答性の規模を実験するために、メタコリン用量の関数としてのRaw値をプロットした。メタコリン刺激に応答して達成された最も高いRaw値を、Rawpeakと称した。メタコリン用量Raw応答曲線でプラトーを達成したマウスで、GraphPad Prism4(GraphPad Software,Inc.)を使用する直線補間により、ED50を算出した。β−アドレナリン薬物治療されたマウスと、未治療のマウスとで得られた結果を、2種の群を比較するために、スチューデントt検定の多群のための分散分析を使用して行った。Bonferroni試験を使用して、実験群での統計的差異を調査した。基線呼吸系力学に対する急性薬物治療の効果を、両側対t検定を使用して評価した。P<0.05の値を、有意であると見なした。
【0149】
図2
図2A及び2Bから、メタコリン誘発は、喘息性マウスの生理食塩水誘発での最小応答に比較して、喘息マウスにおいて気道抵抗(Raw)を著しく高めることが分かる。このことにより、この研究でのマウスモデルは、気道応答亢進、ヒト喘息における気道機能障害の鍵となる形態を示すことが証明される。
【0150】
図2Cでは、喘息性マウスへのサルブタモールの単一静脈内ボーラス投与は、メタコリン誘発に対する気道応答性のレベル及び予測された気道抵抗のレベルを低下させ、したがって、この薬剤の急性効果を証明している。しかしながら、図2Dでは、サルブタモールを28日間このマウスに輸送すると、保護は観察されなかった。β−アドレナリンアゴニストの長期投与では、気道応答性亢進の低下がないことは、これらの薬物に対する耐性が生じた場合のヒトで観察されている。
【0151】
図2Eでは、喘息マウスにアルプレノロール、部分アゴニスト活性を伴うβ−アドレナリンアンタゴニストの単一静脈内ボーラスを投与すると、非治療対応で得られた値と比較して、メタコリン用量≧408μg/kg/分でのRawの値での著しい低下により示されているように(P<0.05)、その気道応答性は低下する。アルプレノロールを急性投与した場合の気道応答性の低下は、サルブタモールで観察された低下と同様であり、アルプレノロールが有する部分アゴニスト活性と一致する。図2Fでは、喘息性マウスを、アルプレノロールに28日間曝すと、その平均メタコリン用量−応答関係は、非治療マウスで観察された関係と同様であり、これは、この薬物がサルブタモールを用いる場合と同様に、長期投与では利点を示さないことを証明している。このことは、この場合にも、このような薬物の長期投与後のヒト患者で観察される耐性と直接的に類似している。
【0152】
図2Gでは、カルベジロールの単一静脈内ボーラスが、喘息性マウスの気道応答性を高めた。このことは、喘息患者へのβ−アドレナリンアンタゴニストの急性輸送は、深刻な気道収縮をもたらしうるというヒトでの先行する観察と一致する。これに対して、図2Hでは、カルベジロールの長期投与が、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性を低減した。
【0153】
図2Iでは、ナドロールの単一静脈内ボーラスも、カルベジロールで観察された気道応答性と同様に、喘息性マウスの気道応答性を高めた。図2Jに示されているように、ナドロールの長期輸送も、気道応答性の低下をもたらしたが、これは、カルベジロール治療により生じた低下よりも顕著であった。確かに、長期ナドロール治療で喘息性マウスで得られた平均メタコリン用量−Raw応答関係は、急性サルブタモール治療でのマウスで得られた関係と同様であった。
【0154】
図3
図3は、喘息性マウスをコリン作動刺激した場合のピーク気道応答性に対する、β−アドレナリン受容体リガンドの投与効果を示している。個々のメタコリン用量−応答曲線を調査し、メタコリン用量のいずれか(多くの場合、最後の用量の次、408μg・kg−1・分−1)により生じた最高Raw値を選択することにより、ピークRawを各マウスで決定した。β−アドレナリン受容体アゴニストサルブタモールで治療した後(A)、様々な薬剤で急性治療した後(B)(ALP=アルプレノロール;CAR=カルベジロール;NAD;ナドロール)及び(B)で使用したと同じもので長期治療した後の平均ピークRaw±SEMを示しているが、全て、非治療喘息性マウス(NTX)(黒棒、n=7〜25)及び対照マウス(Ctrl、白棒、n=6〜21)と比較。値は、n=8〜19マウスのメタコリンに対するピークRaw値に関する平均±SEMである。(B)に関するy軸の規模の変化に注意。*、NTXに比較してP<0.05;#、Ctrlに比較してP<0.05(ANOVA)。
【0155】
(実施例2)
放射性リガンド結合により測定したところ、長期インバースアゴニスト治療により、β−アドレナリン受容体数は増加する
次のように、喘息性マウスで、β2−アドレナリン受容体数を測定する。喘息性マウス(オボアルブミン攻撃)を、次のように治療した:Ctrl、薬物治療なしに、メタコリン攻撃;サルブタモール、短時間作用性β2アゴニスト;カルベジロール、α1−アドレナリンアンタゴニスト活性を有するβ1,β2非選択的インバースアゴニスト;ナドロール、高特異的な親水性β1,β2非選択的インバースアゴニスト;及びアルプレノロール、β−アドレナリンアンタゴニスト。薬物治療を、メタコリン攻撃の15分前に1回治療するか、28日間継続する(サルブタモールは、皮下浸透ポンプを介して継続的に輸送し、アルプレノロール、カルベジロール及びナドロールは、動物の食事に入れた)。マウスを犠牲にし、次のように、肺膜を単離した。ポリトロン(polytron)(Pro200,Pro Scientific,Inc.)を使用して、凍結肺組織を、0.32Mのスクロール及び25mMのトリス(pH7.4)を含有する氷冷緩衝液中で均質化した。このホモジェネートを、1000×gで4℃で10分間遠心分離した。生じた上澄みを、40000×gで4℃で20分間遠心分離した。ペレットを氷冷25mMトリス−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、40000×gで4℃で20分間遠心分離した。最終ペレットを、25mMトリス−HCl(pH7.4)200μLに懸濁させた;膜タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキットにより決定した。放射性リガンド受容体結合インキュベーション混合物は、膜(タンパク質〜10μg)、(−)3−[125I]−シアノピンドロール(ICYP)(25mMのトリスHCl(pH7.4)中で濃度を高めていく(5〜7500pM))及び結合緩衝液を、250μLの最終容量で含有する。プロプラノロールを使用して、非特異的結合を決定した。インキュベーションを、37℃で2時間行い、ガラスファイバーフィルターを介して迅速に真空濾過することにより、終了させた。フィルターを、冷洗浄緩衝液(25mMのトリス−HCl、pH7.4)250μLで3回洗浄し、放射能をカウンターで決定した。全ての実験を3重に行い、値は、各群で動物3〜5匹の平均±SEMである。受容体密度を、タンパク質1ミリグラム当たりのサイトのフェムトモルとして表す。飽和結合曲線の非線形回帰により、Bmaxを決定する。見かけのKD値(括弧内)を、pMとして表す。15分及び28日の節目(tome point)は、薬物利用の期間に関することを特記する。全てのマウスを同年齢で殺し、ビヒクル治療群(Ctrl及びNTX)では、群は同一であり、結果を貯留した。#Ctrlと比較してのP<0.05;*NTXと比較してのP<0.05(スチューデントt検定)。
【0156】
表1に示されているように、放射性リガンド結合により、β2−アドレナリン受容体レベルは、メタコリン攻撃されたが、非治療の喘息性マウスでは、非治療の非攻撃マウスと比較して、多少低下するようである。長期アルプレノロール治療により、β2−アドレナリン受容体のレベルの僅かな低下が生じた。同じことが、長期サルブタモール治療でも当てはまった。さらに重要なことには、カルベジロール治療されたマウスは、非治療マウスに対して10倍を超えるβ2−アドレナリン受容体レベルの増加を証明し、このことは、長期投与した場合の、受容体レベルの上昇におけるβ−アドレナリンインバースアゴニストの効果を証明している。同様に、ナドロール治療されたマウスは、非治療のメタコリン攻撃された喘息性マウスの受容体レベルのほぼ8倍の増加を証明した。
表1
放射性リガンド結合によるβ−アドレナリン受容体密度の決定
【表1】
【0157】
(実施例3)
免疫組織化学により監視したところ、長期インバースアゴニスト治療により、β−アドレナリン受容体数が増加する。
β2−アドレナリン受容体レベルの免疫組織化学分析のために、非薬物治療対照マウス及びβ2−アドレナリンインバースアゴニストのナドロールで長期治療されたマウスを使用した。マウスを犠牲にし、肺を切除した。次いで、肺を、4%パラホルムアルデヒドに固定した(45分、0℃)。固定の後に、肺をPBSで洗浄し(60分)、濃度が上昇していくスクロース中に入れた(PBS中10%スクロース/5%グリシン、30分間;PBS中20%スクロース/10%グリシン、30分間;PBS中30%スクロース/15%グリシン、12時間、4℃)。肺をOCTに包埋させ、Tissue−Tek IIクリオスタットを用いて、12μm断片を切除した。断片を空気乾燥させ、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。PBS中で3回洗浄した後に、スライドをPBS中5%の牛乳で1時間ブロックし、次いで、ブロック溶液中、抗β2−アドレナリン受容体抗体(1:200、Santa Cruz Biotechnology)と共に一晩インキュベーションした。スライドをPBS中で洗浄し、二次抗体(1:200、Cy3ヤギ抗ウサギ、4℃で16時間)と共にインキュベーションした。対照スライドを、抗体特異的ブロッキングペプチドと共にインキュベーションして、一次抗体の結合の特異性を証明した。PBSで洗浄した後に、カバーガラスを載せ、エピ蛍光(epifluorescent)顕微鏡法により観察した。
【0158】
図4に示されているように、抗β2−アドレナリン受容体抗体での標識は、ナドロールで治療された動物からの肺では、未治療の動物からの肺においてよりも、かなり強かった(A、対照+抗体;B、対照+抗体+ブロッキングペプチド;C、ナドロール+抗体;D、ナドロール+抗体+ブロッキングペプチド)。β2−アドレナリン受容体ペプチドの存在下にインキュベーションすると、このシグナリングが無くなることは、この抗体が、特異的にβ2−アドレナリン受容体に結合していることを証明している。この観察は、実施例2の放射性リガンドデータと一致し、β2−アドレナリン受容体は、β2−アドレナリンインバースアゴニスト薬の長期投与により有効にアップレギュレーションされることを示唆している。
【0159】
実施例3
気道応答性亢進に対するカルベジロールとサルブタモールとの組み合わせの効果
喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するカルベジロールとサルブタモールとの併用治療の効果を、カルベジロールのみでの単独治療と比較した。
【0160】
6週齢のマウス(Balb/cj)を、特殊な病原体不含条件下に飼育し、トリオボアルブミン不含食を与えた。マウスを全身的に、水酸化アルミニウムに吸着されているオボアルブミンで感作させた。マウスを次のように治療した:CAR/SAL 28D=28日間、マウス(n=6〜12)にカルベジロール(動物の食事中に2400ppm)及びサルブタモール(Alzet#2400浸透ミニポンプ中、0.5mg/kg/日の皮下輸送)を投与した;NTX S/C=マウス(n=6〜12)は、28日間薬物治療なし;CTRL=マウス(n=6〜12)は、28日間薬物治療なし、続く攻撃なし;CARHD28D=28日間、マウス(n=6〜12)にカルベジロールのみ(動物の食事中に2400ppm)を投与した;CARHD 28D SAL AC=28日間、マウス(n=6〜12)に、カルベジロール(動物の食事中に2400ppm)を投与し、気道応答性亢進を測定する15分前に、サルブタモールを1.2mg/kgの用量で投与した。
【0161】
28日後の気道応答性亢進を測定するために、CTRL(対照)マウスを除く全てのマウスをオボアルブミンで攻撃し、次いで、全てのマウスに麻酔をかけ、気管切開し、Flexivent小動物用ベンチレータに接続して、強制振動技術により気道抵抗(Raw)を測定した。気道収縮を誘発するために、メタコリン150μg/mLを含有する溶液を、シリンジ注入ポンプを使用して注入した。メタコリン注入を、0.008ml/分で開始し、その測度を段階的に、最大0.136mL/分まで倍増させた。プラトーに達するまで、各メタコリン用量を投与し、その間、データを、1分間隔で3〜5分間サンプリングし、次いで、平均化した。
【0162】
図5Aでは、メタコリンの最大用量では、組み合わせ薬物治療の両方が、気管支収縮の予防において等しく有効であり、生理食塩水のみで攻撃された対照マウスとは統計的に有意には異ならなかった。カルベジロール単独治療により、これらの治療よりは高いが、非薬物治療の感作及び攻撃(NTX S/C)マウスよりも低い気管支収縮が生じた。したがって、アゴニストを長期的又は急性に投与するβ2−アドレナリンインバースアゴニストとアゴニストとの併用治療は、アレルゲン及びメタコリン攻撃に対する気道応答性亢進を緩和する際に有効であり、β2−アドレナリンインバースアゴニストのみの単独治療を上回る改善である。
【0163】
このデータを図5Bにまとめたが、これは、図5Aにその結果が示されている治療の気道応答性亢進の低減において、カルベジロールとサルブタモールとの組み合わせが最も有効であることを示している。このことは、β2−アドレナリンインバースアゴニストとアゴニストとの併用治療の使用の有効性を示している。
【0164】
(実施例4)
ナドロールの急性気道効果に対するアミノフィリンとの併用治療の効果
実施例1に記載されているように、マウスをアレルゲンのオボアルブミンに対して感作させた。次いで、アレルゲンで攻撃し、次いで、メタコリン誘発気管支収縮攻撃にかけ、非薬物治療するか(NTX S/C)、メタコリン攻撃の15分前に、0.72mg/kgのナドロールで腹腔内前処理した。
【0165】
1時点目(時間=−10分)に、マウスのベースライン気道抵抗を決定した。2時点目に(時間=−5分)に、メタコリンをマウスに注入して、そのEC70を達成した。3時点目(時間=0分)に、アミノフィリンを100mg/kgの用量で腹腔内投与した。
【0166】
図6では、ナドロールでのマウスの前処理は、非薬物治療の感作及びアレルゲン攻撃マウスと同じベースライン気道抵抗をもたらした。しかしながら、メタコリン攻撃すると、ナドロール治療されたマウスは、2.5単位に対して〜4.5のかなり高い気道抵抗を示した。アミノフィリンを投与すると、非治療マウスとナドロール治療マウスの両方で、気道抵抗の著しく、持続性の低下が存在した。
【0167】
Z.Callaerts−Veghら著「マウス喘息モデルでの、気道機能に対するβ−アドレナリン受容体リガンドの急性及び長期投与の効果(Effects of Acute and Chronic Administration of β−Adrenoceptor Ligands on Airway Function in a Murine Model of Asthma)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:4948−4953(2004)は、長期投与されたナドロールは、同じマウス喘息モデルで、気道応答性亢進を防ぐが、急性投与されたナドロールは、気道応答性亢進を悪化させることを示している。これらのデータは、メチルキサンチンアミノフィリンの添加が、ナドロール投与の気道応答性亢進の急性効果を緩和することを証明している。ナドロールを長期摂取すると、気管支収縮が予防される可能性が喘息患者にあることは、有利である。これらの対象は、アミノフィリンなどのメチルキサンチンを同時投与して、ナドロールの急性有害作用を予防することができる。
【0168】
(実施例5)
培養された気管平滑筋細胞でのホスホリパーゼCとアクチンとの比に対する、サルブタモール又はナドロールでの治療効果
次の治療を受けたマウスから、培養気管平滑筋細胞を得た:NS/NC=非喘息性、非攻撃マウス;S/C=喘息性マウス;Sal.Ac=喘息性マウス、急性サルブタモール治療;Sal.Ch=喘息性マウス、長期サルブタモール治療;Nad.Ac=喘息性マウス、急性ナドロール高用量治療;及びNad.Ch=喘息性マウス、長期ナドロール高用量治療。
【0169】
気道機能実験の後に、薬物又はビヒクルで治療されていて、麻酔をかけられたマウスから、気管を外科的に除去した。この気管を切り刻み、細胞を培養に置き、成長させた。平滑筋細胞は比較的速く成長し、培養皿に取った。細胞を、治療又はビヒクル対照で使用される薬物を含有する培地中で成長させた。酵素に特異的な抗体での免疫ブロットにより、ホスホリパーゼC(PLC−β1)を決定した。負荷対照としてアクチンを使用し、PLC−β1の量を、アクチンに対する比として表した。
【0170】
ホスホリパーゼCタンパク質レベルを、これらの培養細胞で測定し、ベースラインとしての構造タンパク質アクチンのレベルと比較した。酵素ホスホリパーゼCは、膜リン脂質内のホスホジエステル結合を開き、1,2−ジグリセリドの形成をもたらすので、喘息症状をもたらす経路で鍵となる役割を果たす。次いで、ジグリセリドリパーゼ及びモノグリセリドリパーゼの連続的な作用により、ジグリセリドから、アラキドン酸が放出される。いったん放出されると、一部のアラキドン酸は迅速に代謝されて、プロスタグランジンなどのエイコサノイドを含む酸素化生成物をもたらす。したがって、ホスホリパーゼC活性を阻害しうる治療は、喘息の治療に適している。
【0171】
結果を図7に示す。図7に示されている結果は、ナドロールの長期投与は、ホスホリパーゼCの活性を著しく低下させることを示している。このことは、ナドロールのこのような長期投与は、喘息に対して有効であり、喘息の症状をもたらすメカニズムの内のいくつかの活性を阻止することを示している。
【0172】
(実施例6)
気道抵抗に対する、低用量及び高用量のβ−アドレナリン受容体薬の効果
これらの実験のために、長期投与では、サルブタモールを、ミニポンプを用いて0.5mg/kg/日で投与し、急性投与では、攻撃の15分前に静脈内ボーラスにより0.15mg/kgで投与した。アルプレノロールを、食事中で7200ppmの高用量で、又食事中で720ppmの低用量で使用した。カルベジロールを、食事中2400ppmの高用量で、又は食事中で720ppmの低用量で使用した。ナドロールを、食事中で250ppmの高用量で、又は食事中で25ppmの低用量で使用した。ナドロールを食事中で1ppmで試験したが、これらの結果は、未治療のマウスと同一であった。
【0173】
結果を、図8A(サルブタモール);図8B(高用量アルプレノロール);図8C(低用量アルプレノロール);図8D(高用量カルベジロール);図8E(低用量カルベジロール);図8F(高用量ナドロール);及び図8G(低用量ナドロール)に示す。これらの図表中、Ctrl=対照マウス、非喘息性、非薬物治療;NTX=喘息性マウス、非薬物治療;AC=急性投与;2d=2日間の長期投与;28d=28日間の長期投与。気道抵抗(Raw)をcmH2Oml−1秒としてプロットする。このデータは特に、長期投与で、気道応答性亢進からの保護をもたらすβ−アドレナリンインバースアゴニストのカルベジロール及びナドロールの効果を示している。
【0174】
(実施例7)
気道抵抗の低下とβ−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関
サルブタモール、アルプレノロール、カルベジロール及びナドロールの3種の異なる投与期間での、気道抵抗の低下とβ−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関を表2に示す。薬剤の投与期間は、15分、2日及び28日である。インバースアゴニストのカルベジロール及びナドロールのみが、15分よりも長い期間で、β−アドレナリン受容体密度の上昇を示した;カルベジロールは、28日で受容体密度の上昇を示し、ナドロールは、2日及び28日の両方で受容体密度の上昇を示した。気道抵抗(Raw)の低下と受容体密度の上昇とには、正確な相関が存在した。このことは、インバースアゴニストとアゴニストなどの併用治療の概念を強力に支持する。
表2
気道抵抗の低下とβ2−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関
【表2】
【0175】
(実施例8)
喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、メトプロロール及びチモロールでの長期治療の効果
実施例1に記載の喘息性マウス及びメタコリン攻撃を使用して、2種の追加のインバースアゴニスト、メトプロロール(皮下注射により1日3回、20mg/kg用量を7日間投与)及びチモロール(食事中で、20mg/kg用量を7日間)のために、実施例1のプロトコルに従った。気道抵抗(Raw)を実施例1と同様に測定した。メトプロロール及びチモロールでの結果を、図9Aに示す。結果を、図9Bに示されているように、歴史対照と比較した:Ctrl、薬物治療なし、メタコリンでの攻撃なし;NTX、薬物治療なし、メタコリンで攻撃。結果は、メトプロロール及びチモール両方での長期治療は、喘息性マウスでの気道応答性亢進の低減に有効であることを示している。
【0176】
発明の効果
本発明は、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患などの慢性肺気道疾患を治療するための改善方法を提供し、往々にしてβ−アドレナリンアゴニストでの慣用の治療の結果である耐薬性又はタキフィラキシーを回避する。インバースアゴニストの使用によって実際に、体自体のシグナリングメカニズムが改善され、体が、肺気道疾患に対抗するようになる。したがって、インバースアゴニストを使用する組成物及び方法は、耐薬性を誘発することなく、このような疾患及び状態を治療するための幅広い可能性を有する。このことは、このような状態の治療において、短期急性治療を妨げることなく、優れた長期結果を約束する。
【0177】
本願明細書に詳述されている本発明は、本願明細書に具体的に開示されていなければ、いかなる要素、制限なしに実行することができる。したがって例えば、「含む」、「包含する」、「含有する」などの用語は、広く、制限なしに解釈されるべきである。加えて、本願明細書で使用されている用語及び表現は、記載の用語として使用されているのであって、制限の用語としては使用されてなく、このような用語及び表現を使用する際には、示されているか、記載されている形態又はそのいずれかの部分の同義語を除外する意図はなく、請求されている本発明の範囲内で、様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明を好ましい実施形態及び場合による形態により具体的に開示したが、当業者であれば、本願明細書に開示の発明の変更及び変化を行うことができ、このような変更及び変化は、本願明細書に開示の発明の範囲内であると考えられる。本発明は、本願明細書で、幅広く、かつ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内に該当するより狭い種及び部分分類もそれぞれ、これらの発明の一部を形成している。これは、削除される材料が具体的に本願明細書に挙げられているかどうかに関わらず、その種類からある用件を除外する条件又はネガティブ制限を伴う各発明の一般的記載を包含する。
【0178】
加えて、本発明の形態又は態様を、マーカッシュ群の用語で記載する場合、当技術分野で教育を受けた人であれば、本発明はさらに、マーカッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブグループの用語で記載されることを認めるであろう。さらに、前記の記載は、詳述を意図しており、制限を意図するものではないことを理解されたい。多くの実施形態は、前記を概観すれば、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、前記の記載を参照して決定すべきではなく、代わりに、添付の請求項を、このような請求項にふさわしい同等物の全範囲と共に参照して決定すべきである。親刊行物を含む全ての論文及び参照文献の開示は、参照により本願明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明によるインバースアゴニストの剤形を保持しているブリスターパックを示す図である。
【図2】図2Aは喘息性マウスにおいて、メタコリン誘発が気道抵抗(Raw)を著しく高めることを示すグラフである。 図2Bは喘息性マウスにおいて、対照としての生理食塩水誘発が気道抵抗を著しく高ることはないことを示すグラフである。 図2Cは喘息性マウスにサルブタモールの単一静脈内ボーラスを投与することにより、メタコリン誘発に対する気道応答性のレベル及び気道抵抗のレベルが低減することを示す同様のグラフである。 図2Dはメタコリン誘発の前の28日間にわたってマウスにサルブタモールを輸送しても、保護が観察されなかったことを示す同様のグラフである。 図2Eは喘息性マウスに、部分的なアゴニスト活性を有するβ−アドレナリンアンタゴニストであるアルプレノロールの単一静脈内ボーラスを投与すると、その気道応答性が低下したことを示す同様のグラフである。 図2Fは喘息性マウスを、28日間にわたってアルプレノロールに暴露すると、平均メタコリン用量応答関係は、非治療のマウスで観察された関係と同様であるので、この薬物は、長期投与に対して利点を示さないことを証明している同様のグラフである。 図2Gはカルベジロールの単一静脈内ボーラスは、喘息性マウスにおいて気道応答性を高めたことを示す同様のグラフである。 図2Hはカルベジロールの長期投与により、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性が低下したことを示す同様のグラフである。 図2Iはナドロールの単一静脈内ボーラスも、カルベジロールで観察されたことと同様に、喘息性マウスの気道応答性を高めたことを示す同様のグラフ。 図2Jはナドロールの長期投与は、この場合にもカルベジロールで観察されたことと同様に、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性を低下させたことを示す同様のグラフ。
【図3】コリン作動性刺激に対するピーク気道応答性に対するβ−アドレナリン受容体リガンド投与の効果を示すグラフである((A)β−アドレナリンアゴニストサルブタモールでの処理後;(B)β−アドレナリン受容体インバースアゴニストでの急性治療の後;及び(C)β−アドレナリン受容体インバースアゴニストでの長期治療の後。
【図4】ナドロールで処置した場合のβ−アドレナリン受容体密度の上昇を示す一連のエピ蛍光顕微鏡写真である。
【図5A】メタコリンで攻撃された喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、カルベジロールとサルブタモールとの併用治療の効果を示すグラフである。
【図5B】図5Aに示されている結果をまとめた図である。
【図6】メタコリンで攻撃された喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、ナドロールとアミノフィリンとの急性併用治療の効果を示すグラフである。
【図7】長期ナドロール投与がホスホリパーゼCの活性を低減することを示すために、長期ナドロール投与を含む様々な治療で処置されたマウスでのホスホリパーゼCとアクチンとの比を示すグラフである。
【図8】図8A気道応答性亢進に対するサルブタモールの効果を示すグラフである。 図8Bは気道応答性亢進に対する高用量アルプレノロールの効果を示すグラフである。 図8Cは気道応答性亢進に対する低用量アルプレノロールの効果を示すグラフである。 図8Dは気道応答性亢進に対する高用量カルベジロールの効果を示すグラフである。 図8Eは気道応答性亢進に対する低用量カルベジロールの効果を示すグラフである。 図8Fは気道応答性亢進に対する高用量ナドロールの効果を示すグラフである。 図8Gは気道応答性亢進に対する低用量ナドロールの効果を示すグラフである。
【図9A】喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するメトプロロール及びチモロールの長期投与の効果を示すグラフのセットである:メトプロロール及びチモロールでの実験結果。
【図9B】喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するメトプロロール及びチモロールの長期投与の効果を示すグラフのセットである:攻撃されていないマウス(Ctrl)及び治療を受けず攻撃されたマウス(NTX)での経歴的対照。
【技術分野】
【0001】
本出願は、「β−アドレナリンインバースアゴニストを用いて気道疾患を治療する方法(Method for Treating Airway Diseases with Beta−Adrenergic Inverse Agonists)」との名称を有し、Richard A.Bondにより2003年10月9日に提出された米国特許仮出願第60/510,250号明細書に基づく優先権を主張し、この明細書は、参照によりそのまま本出願に援用される。
【0002】
本出願に詳述されている発明をもたらした研究のうちの一部は、国立衛生研究所から助成金を提供された。したがって、米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、β−アドレナリン受容体により仲介される疾患及び状態、特に肺気道疾患を予防するか、治療するか、その重度を低減する新規の方法に関する。特に、β−アドレナリンインバースアゴニスト薬を単独で、又はβ2−アゴニスト、ステロイド、ロイコトリエン調節剤、抗コリン作動薬、メチルキサンチン、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤又は抗IgE抗体などの他の薬物と組み合わせて長期投与することによる、肺気道疾患を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0004】
多くの疾患及び状態が、β−アドレナリン受容体により仲介される。特に、これらの受容体は、多くの肺気道疾患に関与している。肺気道疾患は、低い肺機能及び気道の流れを特徴とする。これらの症状は往々にして、粘液の分泌又は組織損傷による。これらの疾患には、アレルギー性鼻炎(「枯草熱」)、喘息、嚢胞性線維症、慢性肺閉塞性疾患(COPD)、チャーグ−ストラウス症候群、気管支炎、気管支拡張症及び肺気腫が含まれる。これらの疾患は、深刻であり、重大な死亡率及び罹患率の原因である。
【0005】
COPD患者では、肺内の気道が閉塞している。患者がCOPDを発症する道筋は、いくつか存在する。しかしながら、障害の際だった特徴は、呼吸困難又は息切れである。COPDは往々にして、長期にわたる喫煙が関連しており、未治療のアレルギー状態の結果として発症しうる。加齢プロセスによっても、気管支及び細気管支はその弾性を失う。
【0006】
チャーグ−ストラウス症候群は、炎症性疾患であり、この際、患者は、気道反応亢進などの喘息症状を示す。肺気道の炎症が生じ、肺機能が損なわれる。
【0007】
気管支炎では、当初は刺激物による粘液の分泌過多により、気道機能が損なわれる。気管支炎は、感染又はアレルギー反応の結果でありうる。慢性気管支炎では、咳が持続するが、気道を清浄にするにはもはや十分ではなく、気道の閉塞をもたらす。慢性気管支炎は、気管支に悪影響を及ぼす。
【0008】
気管支拡張症は、肺の感染から生じ、不可逆的な気道損傷をもたらす。患者は往々にして、持続的な咳を訴え、悪臭のする痰を出す。気管支及び細気管支は非常に拡張しうるという事実にも関わらず、感染と分泌との結果、気道が閉塞する。
【0009】
肺気腫の患者は、肺胞の壁の破壊的損傷により低い肺機能を有する。往々にして、患者は長期喫煙者であり、肺に好中球及びマクロファージなどの炎症性細胞を高レベルで有し、他の病態生理的プロセスが、十分に作用する。喫煙は、肺の好中球を活性化させて、有害なタンパク質分解酵素であるエラスターゼを放出させると考えられる。他の環境刺激物も、肺気腫に関与しうる。
【0010】
喘息だけでも、2000万人のアメリカ人患者における長期的な問題である。喘息の発生率は、米国において、特に都市部において、特に子供の間で急速に高まっている。この増加の原因は、知られていないが、環境汚染物質に曝されることが疑われている。米国における喘息での年齢調整死亡率は、1979年から1998年の間に55.6%増加した(America Lung Association’s Epidemiology and Statistics Unit,Best Practices and Program Services.Trends in Asthma Morbidity and Mortality,2002)。喘息に罹患しているヒトは往々にして、ハウスダスト、動物のふけ及び花粉などのアレルゲンに対して敏感である(アレルギー性喘息)。しかしながら、内因性喘息は、患者の感情的困難又はパニックにより、さらに冷気又は運動などにさらされるなどの因子により、又はアスピリンなどの一定の薬物投与により引き起こされうる。喘息では、患者は、これらの誘発に対して気道の応答亢進を示す。これらが引き金になって、免疫系細胞系はヒスタミン、IgE分子、サイトカイン又はケモカインを放出する。気道平滑筋は、これらの誘発に迅速に応答して、気管支収縮をもたらす。加えて、気道は、損傷を受け、炎症を起こし、粘液が分泌されて、さらに気道の流れを制限する。喘息発作は、小気管支及び細気管支の収縮による息切れ、胸部緊張、咳及び喘鳴を特徴とする。発作は、穏やかであるか、中くらいであるか、深刻でありうる。
【0011】
これらの気道障害の患者は、気道痙攣を伴って、さらに、肺樹枝(pulmonary tree)を介しての気流を狭めることもある。発作の間、患者の気道は収縮して、呼吸を困難にする。気道平滑筋が、気管支収縮の原因である。気道平滑筋細胞は、β2アドレナリン受容体を発現する。エピネフリン又は他のβ2−アゴニスト薬物などの、これらの受容体に結合するアゴニストは、平滑筋の弛緩をもたらす。
【0012】
その結果、急性気管支痙攣では、多くの患者は、短時間作用性β2−アドレナリンアゴニストを吸引して、喘息発作を予防するか、その重度を低減することができる。
【0013】
しかしながら、β2−アドレナリンアゴニストの長期投与は、その継続投与で、薬物耐性及び低い治療作用をもたらすことが証明されている。タキフィラキシー又は耐薬性としても知られている低い応答性は、受容体の脱感作、隔絶及びダウンレギュレーションを含む事象の頂点から生じる。さらに、アレルゲンなどの誘発に応答して、肺気道の高い応答亢進も存在する。
【0014】
疫学的研究により、短時間作用性β2−アドレナリンアゴニストの長期使用と喘息死亡率との正相関が証明されている。長期作用性β2−アドレナリンアゴニストであるサルメテロールを用いた大規模な試験は、死亡率の上昇により中止された。このことは、β2−アドレナリンアゴニストの短期投与は、喘息の患者並びにβ2−アドレナリン受容体に調節される他の疾患及び状態の患者の助けとなりうるが、これらのアゴニストの長期投与は、有害であり得ることを強調している。
【0015】
喘息並びに気道応答亢進及び気管支収縮が生じる他の疾患及び状態を管理する際の慣用の知恵は、心臓血管状態の治療で頻繁に使用されているものなどのβブロッカーの投与は、喘息患者には絶対に禁忌であることである。T.Clark & J.Rees著「喘息の実践的管理(Practical Management of Asthma)」(第2版,Martin Dunitz,1996)には、「これら(β−ブロッカー)は往々にして、喘息患者に投与すると、副作用をもたらし、βブロッカーでの治療は、以前には診断されていなかった軽度の喘息をもたらしうる。βブロッカーの1回用量によって、致命的な気管支収縮が生じている。喘息患者においては、全てのβブロッカーを回避することが、最善である。」と述べられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、喘息で生じる気管支収縮に対する注目を高める必要がある。これは、喘息状態まで進行しうる。気管支収縮を逆転させて、気道の拡張をもたらしうる、より効果的で、長期持続性の治療様式が必要である。
【0017】
したがって、喘息患者で、並びにβ2−アドレナリン受容体により調節される他の疾患及び状態、特に、喘息などの呼吸器系に悪影響を及ぼす疾患に罹患している患者でのβ2−アドレナリンアゴニストの使用に代わる新規の治療選択肢が、非常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1実施形態は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であり、これは、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0019】
特に好ましいインバースアゴニストは、ナドロール、カルベジロール、メトプロロール、チモロール及びICI 118,551である。
【0020】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択することができる。
【0021】
この方法では、β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で開始し、最大用量まで高める一連の段階用量で時間をかけて投与することができる。
【0022】
本発明の他の態様は:
(1)1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、30mg、50mg及び70mgからなる群から選択される量のナドロール;及び
(2)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物である。
【0023】
本発明のさらに他の態様は:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小用量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有するブリスターパックである。
【0024】
本発明のさらに他の態様は:
(1)下部支持体:
(2)複数のキャビティが生じるように形成されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形(前記の剤形は、少なくとも2種の用量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト:(i)一連の段階用量での最大用量である維持用量;及び(ii)規定の条件下で摂取される少なくとも1種のバックアップ復旧用量又は低用量を含有する)
を含有するブリスターパックである。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のβ2−選択的アドレナリンアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のステロイドを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗コリン作動薬を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のキサンチン化合物を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0029】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗IgE抗体を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0030】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のロイコトリエン調節剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、この際、この方法は、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のホスホジエステラーゼIV阻害剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む。
【0032】
本発明のさらに他の態様は:
(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;
(2)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療薬(前記の第2の治療薬は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び
(3)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物である。
【0033】
本発明のさらに他の態様は、
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストと肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤との両方を含む薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパックである。
【0034】
本発明のさらに他の態様は、
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(a)(i)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(ii)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(b)(i)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(ii)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(4)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパックである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
明細書、添付の請求項及び添付の図面を参照すると、次の発明をより良好に理解することができるであろう。
【0036】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の一般に受け入れられている2状態モデルでは、「アゴニスト」という用語は、受容体の活性部位に親和性を有し、それにより、受容体の活性部位を優先的に安定化させる物質若しくはこれらに限られないが、受容体の活性をもたらし、これらの受容体によるシグナリングを増強する薬物、ホルモン又は神経伝達物質を含む物質と定義される。作用の1種又は複数のメカニズムに関わりなく、アゴニストは、受容体の活性化をもたらし、これらの受容体によるシグナリングを増強する。
【0037】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の2状態モデルでは、「アンタゴニスト」という用語は、活性又は不活性な受容体の形態を優先的に安定化しない物質若しくは、これらに限られないが、アゴニスト及び/又はインバースアゴニストの作用を阻止又は妨害する薬物、ホルモン及び神経伝達物質を含む物質と定義される。作用の1種又は複数のメカニズムに関わりなく、アンタゴニストは、アゴニスト及び/又はインバースアゴニストの作用を阻止又は妨害する。
【0038】
本願明細書で使用する場合、受容体理論の2状態モデルでは、「インバースアゴニスト」という用語は、受容体の不活性状態に親和性を有し、したがって、受容体の不活性状態を優先的に安定化させる物質若しくは、これらに限られないが、受容体の不活性化をもたらすか、アゴニストによる活性化を阻止又は妨害して、これらの受容体からのシグナリングを低減する薬物、ホルモン又は神経伝達物質を含む物質と定義される。
【0039】
本願明細書で使用する場合、「同時投与」という用語は、各薬剤の単独投与により達成されるであろう効果よりも高い併用治療効果を達成するために十分に近い時間内で、2種又はそれ以上の活性薬剤を投与することに関する。このような同時投与は例えば、活性剤を共通の薬学的に許容できる担体中で一緒に、1回又は複数回用量で投与することにより同時に実施することができる。
【0040】
本願明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ヒト又は動物種に関する。通常、本発明による方法及び組成物を使用して、ヒトだけでなく、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ及びネコなどの社会的又は経済的に重要な動物種を治療することができる。特に記載のない限り、本発明による方法及び組成物は、ヒトの治療に限られない。
【0041】
本願明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の疾患又は状態を治療、緩和又は予防するか、検出可能な治療的又は予防的効果を示す治療剤又は組成物の量に関する。例えば、化学的マーカー、抗原レベル又は気道抵抗などの生理学的インジケータの変化により、効果を検出することができる。治療効果にはさらに、気管支収縮の低下又は気道抵抗の低下などの物理的症状も含まれ、対象又は介護者により認められる健康状態の主観的改善も含まれうる。対象のための正確な治療有効量は、対象の体格、体重及び健康、対象が罹患している状態の性質及び規模並びに投与のために選択された治療薬又は治療薬の組み合わせ、さらに、投与される治療薬の薬物動態に影響を及ぼす肝臓及び腎臓機能などの変動因子に左右される。したがって、予め正確な有効量を明記しても、役立たない。しかしながら、所定の状況での有効量は、一般的な実験により決定することができ、これは、臨床医の判断の範囲内である。
【0042】
本発明の1実施形態は、その変調が疾患又は状態に関与している受容体に対するインバースアゴニストを有効量で投与することにより、β受容体の変調に影響を受けている疾患又は状態を治療する方法である。通常、疾患又は状態は、これらに限られないが、喘息、慢性肺閉塞性疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症の肺後遺症、チャーグ−ストラウス症候群及び肺炎を含む呼吸疾患又は状態である。
【0043】
古典的な受容体理論では、Gタンパク質共役受容体(GPCR)リガンドの2つの群が考えられている:アゴニスト及びアンタゴニスト。受容体は、単一の静止状態にのみ存在し、アゴニストが結合して始めて、活性化受容体状態をもたらす細胞シグナリングを誘発しうると考えられている。このモデルでは、アンタゴニストによる結合は、細胞シグナリングをもたらさず、受容体がアゴニストと結合し、活性化されることを妨げるだけであった。次いで、Costa及びHerzが、受容体を操作して、アゴニスト占拠がなくても細胞シグナリングをもたらす構成的又は自発活性な状態にすることができることを証明した。さらに彼らは、一定の化合物がこれらの自発活性な受容体を失活化するという証拠を示した(T.Costa & A.Herz、「GTP結合タンパク質に結合しているδオピオイド受容体において負の固有活性を有するアンタゴニスト(Antagonists with Negative Intrinsic Activity at δ Opioid receptors Coupled to GTP−Binding Proteins)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7321−7325(1989))。さらに、GPCRは、インバースアゴニストにより多少失活化される構成的又は自発的活性状態に存在するという証拠がある(R.A.de Ligtら,「Gタンパク質共役受容体でのインバースアゴニズム:薬物発見のための(病態)生理学的関係及び関連(Inverse Agonism at G Protein−Coupled Receptors:(Patho)Physiological Relevance and Implications for Drug Discovery)」Br.J.Pharmacol.130:1−12(2000);G.Milliganら,「インバースアゴニズム:薬学的興味又は有望な治療ストラテジー?(Inverse Agonism:Pharmacological Curiosity or Potential Therapeutic Strategy?)」Trends Pharmacol.Sci.16:10−13(2000))。
【0044】
本発明によるこの実施形態のストラテジーのベースは、インバースアゴニストの存在を認識し、インバースアゴニストでの長期治療が受容体機能に対して有する作用を理解することである。何がインバースアゴニストであり、それはどのように機能するのか?アドレナリン(エピネフリン)に応答するβ−アドレナリン受容体などの受容体は通常、2つの状態、活性状態及び不活性状態の間の平衡に存在する。受容体が、β−アドレナリン受容体のためのアドレナリンなどのアゴニストに結合すると、これらは、不活性状態へと回帰することを妨げて、質量作用の法則による活性及び不活性状態の間の平衡をシフトさせる。アゴニストに結合したこれらの受容体が、平衡から離れるので、このことは生じる。通常、アンタゴニストは、受容体に結合するが、アゴニストの結合は妨げる。しかしながら、「インバースアゴニスト」として知られている分子は、不活性状態の受容体に結合して、活性及び不活性状態の間の平衡を不活性状態へとシフトさせる。このことは、アゴニストの結合を単にブロックすることとは異なる。
【0045】
さらに、自発活性な受容体の集団がin vivoには存在する。これらの受容体は、活性のベースライン構成レベルをもたらす;活性は、完全に「オフ」には絶対にならない。
【0046】
前記したように、β−アドレナリンアゴニストの長期投与は、アゴニスト依存性脱感作をもたらすことは十分に証明されている。β−アゴニストを短期投与すると、アドレナリン受容体はインターナリゼーションされて、それによってそれらが、肺弛緩のためにさらに再刺激されることを防ぐ。β−アゴニストの長期投与では、実際に、β−アドレナリン受容体の全数でダウンレギュレーションが存在する。結果は、長期作用性β−アゴニストでの喘息患者で観察される応答性の喪失であり、これは、前記のように耐薬性又はタキフィラキシーのことである。
【0047】
本発明の治療方法は、インバースアゴニストの長期投与は、活性β−アドレナリン受容体集団をアップレギュレーションする作用を有するという発見に基づく。観察される活性は、受容体の構成的ベースライン活性又は内在アゴニストに応答する高レベルの受容体の組み合わせ効果による。このことは、喘息での気道応答亢進をもたらすことなどにより一見すると生理学的機能を低下させるような薬物の投与は、長期的に投与すると、その生理学的機能と関連している自発活性なβ−アドレナリン受容体の集団をアップレギュレーションすることにより生理学的機能を増強しうるという、表面的には矛盾している結果をもたらす。これは、「矛盾性薬理学」の原理の具体的な適用である。
【0048】
これらの線に沿って、心臓選択的βインバースアゴニスト(β1−アドレナリン受容体サブタイプに優先性を有するもの)の使用は、慢性気道閉塞性肺疾患(COPD)を伴う高血圧及びうっ血性心不全(CHF)患者において安全であることが証明されている。
【0049】
多様な研究により、心臓選択的βインバースアゴニストの長期投与は、COPD又は喘息を伴うCHF患者の肺機能を変化させないことが証明されている。肺機能の標準的な測定である努力呼気肺活量(FEV)は、心臓選択的βインバースアゴニストで治療された患者では基本的に変化しなかった。これらのデータは、心臓選択的βインバースアゴニストの長期投与は、肺気道疾患を伴うCHF患者において安全であることを示している。しかしながら、これらの薬物は、肺気道疾患の症状を低減又は変化させるためには好ましくない。
【0050】
参照により本願明細書に援用されるKleinらに付与された米国特許第5,116,867号明細書には、D−プロプラノロール又は85%以上がD形であるラセミ混合物が、喘息の治療のために提案されている。プロプラノロールのD形は、β−アドレナリン受容体の阻害においてL形よりも1/100強力である。対照的に、この特許は、活性形又は活性β−アドレナリンアンタゴニストを50%以上含有するラセミ混合物の使用を明記している。
【0051】
参照により本願明細書に援用されるBroderらに付与された米国特許第6,284,800号明細書には、プロプラノロール、メトプロロール、カルベジロール又はビソプロロールのD形が、喘息の治療のために提案されている。プロプラノロールのD形とL系とを比較して、抗原誘発される気管支収縮を阻害し、気道応答性亢進を低減するのに、D−プロプラノロールの短期投与は、有益であることを証明するために、実験が行われた。対照的に、L形の急性投与は、活性β−アドレナリンアゴニストで予測された特異的肺抵抗を高めた。プロプラノロールのD形は、β−アドレナリン受容体に関して不活性であった。したがって、米国特許第6,284,800号明細書は、インバースアゴニズムに関していない。
【0052】
BondによるPCT国際公開WO02/29534号は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患を含むアレルギー性及び炎症性障害を治療するために、β−アドレナリン受容体を阻害するβ1及び/又はβ2アンタゴニスト活性を有する化合物を提案している。喘息性マウスを、アルプレノロール、カルベジロール及びICI−118,551を含むβ−アンタゴニストと特徴づけられる化合物で長期治療する実験が行われた。次いで、マウスから気管を切除し、メタコリンに応答しての気管の収縮を、喘息発作のための代用として監視した。最も有効な化合物はアルプレノロールであり、次いでカルベジロール、次いでICI−118551であった。
【0053】
本出願の発明者により行われた喘息性マウスでのさらに生理学的に関連のある実験により、有益であると当初は考えられていたアルプレノロールは長期的には、未処置の喘息性マウスに比較して気道応答性亢進を低減しないことが証明された。アルプレノロールは、β−アドレナリンアンタゴニストではあるが、これは、部分的なアゴニスト活性を有する。カルベジロールは、α1−アドレナリンアンタゴニスト活性を有するβ1/β2非選択的アドレナリンアンタゴニストである。本出願で報告している新規の実験では、カルベジロールの長期投与こそが、気道応答性亢進を低減し、これは、喘息患者に有益だろうが、これはさらに、メタコリンに対する応答性の感度をより低い濃度にシフトさせ、このことは喘息患者に有害になりうる。
【0054】
さらに、PCT国際公開02/29534号に報告されている実験では、肺気道の大部分を残して、気管をマウスから切開した。マウスにおいて、気管支は、ほぼ専らβ1アドレナリン受容体のみを含むが、気道の残りは、β1及びβ2アドレナリン受容体の混合物である。対照的に、ヒトの気道は、気管支も、より小さな気道も、ほぼ専らβ2受容体を含む。したがって、PCT国際公開WO02/29534号に報告されている実験は、ヒト喘息に対して僅かな予測値しか有さない。本出願で報告されている実験は、より厳密に、ヒトの生理を反映している。
【0055】
β−アドレナリンアンタゴニスト薬又は「βブロッカー」は、従来の薬理学では同じ活性を有すると見なされている。βブロッカーはさらに、β1(「心臓選択的」)又はβ1/β2(「非選択的」)又はβ2選択的のみに関するその選択性において、又はその欠如に基づき、さらに分類されている。加えて、βブロッカーは、それらが部分的アゴニスト活性を有するか、実際にはインバースアゴニストであるか、そうでないかに分類することができる。後者の定義は、β−アドレナリン受容体を含む多くのG結合タンパク質受容体は、受容体とインバースアゴニストとの結合によりさらに防ぐことができる低レベルの自発活性を示すとの、本出願に記載の新規の認識に基づく。この区別は、PCT国際公開WO02/29534号には成されてなく、これは単に、「アンタゴニスト」に関している。
【0056】
当分野でのβブロッカーのサブクラスに関するこの知識にも関わらず、多くの科学者は、異なるサブクラスからの化合物を1つのクラスとして取り扱い続けている。この例は、1998〜1999年におけるうっ血性心不全でのβブロッカーのブシンドロールの臨床試験である。以前に、2種の他のβブロッカー、メトプロロール及びカルベジロールが臨床試験されて、CHFの患者において著しい死亡率の低減が証明されている。ブシンドロールは、プラシーボを上回る利点を何ら証明することができなかったので、臨床試験は中止された。本出願の発明者は、メトプロロール及びカルベジロールは両方とも、β−インバースアゴニストであるが、ブシンドロールは、部分的なアゴニスト活性を有する中立アンタゴニストであると言及している。したがって、本出願の発明者は、β−アドレナリンインバースアゴニストのみが、CHFの治療に有効であるだろうと予測した。同様に、本出願の発明者は、β−アドレナリンインバースアゴニストのみが、喘息の気道応答性亢進の長期治療に有効であろうと予測している。この区別は、PCT国際公開WO02/29534号明細書においては成されていないし、示唆もされていない。
【0057】
代わりに、本発明は、β−アドレナリンインバースアゴニストの活性β−アドレナリン受容体結合形態を喘息、COPD並びにこれらに限られないが肺気腫、チャーグ−ストラウス症候群、気管支炎及び気管支拡張症を含む気道応答性亢進を特徴とする他の疾患の治療において使用することを提供する。インバースアゴニストは、純粋、実質的に純粋な鏡像異性体又はジアステレオ異性体の形態であってよいか、ラセミ混合物であってよい。多くの場合、キラル中心が1個のみである場合には、このような化合物の活性形態は、L形である。3個のキラル中心を有し、潜在的には12種の異性体を有するが、通常は、2種のみが合成の間に生じるナドロールの場合、最も活性な形態は、ナドロールのRSR形態である。
【0058】
β−アドレナリンインバースアゴニスト:ナドロール、例えば塩酸塩として;ブプラノロール、例えば、塩酸塩として;ブトキサミン、例えば、塩酸塩として;カラゾロール、例えば、塩酸塩として;カルベジロール、例えば塩酸塩として;ICI−118,551、即ち、塩酸塩として;レボブノロール、例えば塩酸塩として;メトプロロール、酒石酸塩又はコハク酸塩として;プロプラノロール、例えば塩酸塩として;ソタロール、例えば塩酸塩として;チモロール、例えば塩酸塩として;並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体(bioisosteres)、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが、本発明による使用に特に好ましい。特に好ましいインバースアゴニストは、カルベジロール及びナドロールである。さらに特に最も好ましいインバースアゴニストは、ナドロールである。本願明細書で使用する場合、インバースアゴニスト化合物又は適切な場合には、アゴニスト化合物の列挙には、除外されない限り、インバースアゴニスト化合物又はアゴニスト化合物の全ての薬学的に許容できる塩が含まれる。したがって、塩酸塩としてのナドロールの列挙は、調製されているか、調製することができる他の薬学的に許容できる塩を除外するものではない。
【0059】
本発明による方法及び組成物で有用なインバースアゴニストは通常、β1及びβ2−アドレナリン受容体の両方にインバースアゴニズムを示す非選択的インバースアゴニストとしても、選択的β2−インバースアゴニストとしても、β2−アドレナリン受容体に対してインバースアゴニズムを示す。
【0060】
好ましくは、本発明による方法及び組成物で有用なインバースアゴニストは、気道応答性亢進を低減する上、喘息性マウスモデルで試験した場合、メタコリン応答を左側に(即ち、より低いメタコリン濃度に)シフトさせることもない。
【0061】
特に、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであり、m及びnが1から3であるが、但しR1及びR2の両方が水素であり、mが1である場合、nは1以外である式(I)のナドロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。本願明細書で使用する場合、「低級アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ヒドロカルビル残基と定義される。
【化1】
【0062】
さらに、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであり、R3が水素又低級アルキルであるが、但し、全てのR1、R2及びR3が、全て水素ということはない式(II)のカルベジロールの類似体が、本発明の範囲内であると予測される。
【化2】
【0063】
さらに、式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない式(III)のチモロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。
【化3】
【0064】
式中のR1が水素又は低級アルキルであり、R2が水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない式(IV)のメトプロロールの類似体は、本発明の範囲内であると予測される。
【化4】
【0065】
塩の場合、本発明による方法に適した活性を有する化合物を含む有機化合物は、それらが存在している溶液のpHに応じてプロトンを受容及び供与しうる複数の基を有することは、よく知られている。これらの基には、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基及び酸塩基反応に関与していることが知られている他の基が含まれる。化合物又は類似体の列挙には、特に除外されない限り、生理学的pHで、又は薬剤組成物のpHで生じるこのような塩形態が含まれる。
【0066】
同様に、本発明による方法に適している化合物又は類似体上のカルボキシル又はヒドロキシル基と酸又はアルコールとが反応して、エステルを生じることにより、プロドラッグエステルを生じさせることができる。通常、酸又はアルコールは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルなどの低級アルキル基を含む。これらの基は、ヒドロキシなどの置換基又は他の置換基で置換されていてもよい。このようなプロドラッグは、当技術分野でよく知られており、ここでさらに記載する必要はない。エステル結合の加水分解により、通常は細胞内酵素により、プロドラッグは、活性化合物に変換される。プロドラッグエステルを生じさせるために使用することができる他の適切な基は、当技術分野でよく知られている。例えば、プロドラッグは、親の酸化合物と適切なアミンとの反応により調製されたアミドを包含しうる。場合によっては、(アシルオキシ)アルキルエステル又は((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステルタイプのプロドラッグを調製することが望ましい。プロドラッグとして適切なエステルは、これらに必ずしも限られないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、モルホリノエチル及びN,N−ジエチルグリコールアミドを含む。メタノールなどの媒体中で、適切なカルボン酸基を有する化合物の酸形態を酸又は塩基エステル化触媒(例えばNaOH、H2SO4)と反応させることにより、メチルエステルプロドラッグを調製することができる。同様の方法で、メタノールの代わりにエタノールを使用して、エチルエステルプロドラッグを調製する。適切な化合物のナトリウム塩を(ジメチルホルムアミドなどの媒体中で)塩酸4−(2−クロロエチル)モルフィン(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.USAから入手可能)と反応させることにより、モルホリニルエチルエステルプロドラッグを調製することができる。
【0067】
薬学的に許容できる塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、スルファミド酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミド酸塩、キナ酸塩、ギ酸塩、ケイ皮酸塩、ピクリン酸塩及び他の適切な塩などの酸塩が含まれる。塩酸、硫酸、リン酸、スルファミド酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミド酸及びキナ酸などの酸を使用すると、このような塩を誘導することができる。
【0068】
さらに、薬学的に許容できる塩には、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属塩、さらにピリジン塩、アンモニウム塩、ピペラジン塩、ジエチルアミン塩、ニコチンアミド塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、メチルアミノ塩、トリエチルアミノ塩、ジメチルアミノ塩及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩などの塩基との塩が含まれる。
【0069】
治療を受ける対象は、ヒト対象又はこれらに限られないが、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタを含む社会的又経済的に重要な動物であってよい。本発明による方法は、ヒトの治療に限られない。
【0070】
通常、β2−アドレナリンインバースアゴニストを投与する方法は、対象の血流中に連続的なレベルのβ2−アドレナリンインバースアゴニストをもたらす。通常、方法は、肺β2−アドレナリン受容体のアップレギュレーションである治療効果をもたらす。通常、この方法は、β2−アドレナリンアゴニスト薬に対する肺気道弛緩応答性の上昇である治療効果をもたらす。これは、下記で詳細に検討する併用治療を規定している。
【0071】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、1種又は複数の薬剤付形剤と組み合わせて投与することができる。薬剤付形剤には、必ずしもこれらに限られないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖又はタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール及び生理学的に相容性の溶剤が含まれる。他の薬剤付形剤も、当技術分野ではよく知られている。β−アドレナリンインバースアゴニストを、1種又は複数の薬学的に許容できる担体と組み合わせて投与することができる。薬学的に許容できる担体の例には、これらに限られないが、水性及び非水性溶剤を含む溶剤、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び/又は抗カビ剤、等張性及び/又は吸収遅延剤などのいずれか又は全てが含まれる。薬剤活性な物質のためにこのような媒体及び/又は薬剤を使用することは、当技術分野ではよく知られている。慣用の培地、担体又は薬剤が1種又は複数の活性成分と非相容性である場合を除けば、本発明による組成物中でのその使用が考慮される。補足的な活性成分を、特に併用治療に関する下記のように、組成物中に加えることもできる。本発明で使用される化合物を投与するために、調製物は、FDA生物製剤審査部基準又は薬物を規制する他の規制組織により求められる無菌性、発熱原性、全体安全性及び純度基準を満たすべきである。
【0072】
したがって、β−アドレナリンインバースアゴニストを、経口、持続放出経口、口内、舌下、吸入、通気又は非経口投与のために処方することができる。
【0073】
β−アドレナリンインバースアゴニストが慣用の製剤又は持続放出製剤の形態で経口投与される場合、通常は、錠剤、カプセル、丸薬、トローチ、ウェハ、粉末若しくは溶液、懸濁液、チンキ剤又はシロップなどの液体などの慣用の単位剤形で、これを投与する。経口処方物は通常、通常使用される付形剤、例えば、薬剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム及び他の慣用の薬剤付形剤を含有する。一定の規定の実施形態では、経口薬剤組成物は、不活性な希釈剤及び/又は吸収可能な食用担体を含有するか、及び/又はこれらは、硬質又は軟質シェルゼラチンカプセル中に封入されていてよい。若しくは、これらは、錠剤に圧縮することもできる。他の選択肢としては、特に獣医学的実施では、これらを食事に直接加えることもできる。経口治療用途では、これらを付形剤と共に加えるか、摂取可能な錠剤、口内用錠剤、糖衣丸、丸薬、トローチ、カプセル、ウェハ又は他の慣用の剤形の形態で使用することができる。
【0074】
錠剤、丸薬、トローチ、カプセル、ウェハ又は他の慣用の剤形はさらに、次のもの:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ソルビトール、デンプンの粘質物、ポリビニルピロリドン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウム、ラクトース、微結晶性セルロース又は糖などの付形剤又は充填剤;馬鈴薯デンプン、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム又はグリコール酸ナトリウムデンプン又はアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカなどの滑剤;スクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤;硫酸ラウリルナトリウムなどの湿潤剤;若しくはペパーミント、冬緑油、オレンジ香料又はチェリー香料などの香料を含有してもよい。単位剤形がカプセルである場合、これは、前記のタイプの物質に加えて、液体担体を含有してもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、又はその単位剤形の物理的形態及び特性を別に変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬又はカプセルを、シェラック、糖又はこれら両方でコーティングすることができる。それ自体知られている方法で、例えば慣用の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、浮揚、乳化、カプセル封入、エントラッピング(entrapping)又は凍結乾燥プロセスにより、本発明の薬剤組成物を製造することができる。
【0075】
活性化合物と固体付形剤とを組み合わせ、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な補助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、望ましい場合には錠剤又は糖衣丸核を得ることにより、経口使用のための薬剤調製物を得ることができる。適切な付形剤は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなどを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤である。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0076】
糖衣丸核に、適切なコーティングを与えることができる。このために、場合によってアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適切な有機溶剤又は溶剤混合物を含有してもよい濃糖溶液を使用することができる。染料又は顔料を錠剤又は糖衣丸コーティングに加えて、活性化合物用量の様々な組み合わせを識別又は特徴づけることができる。
【0077】
経口で使用することができる薬剤調製物は、ゼラチンで製造された押込嵌めカプセル、ゼラチン並びにグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で製造された密閉軟質カプセルを包含する。押込嵌めカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤並びに場合により安定剤と混合された形態で活性成分を含有してよい。軟質カプセルでは、活性化合物を、脂肪族油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることもできる。
【0078】
選択肢の1つでは、持続放出処方物を使用する。持続放出処方物は、当技術分野ではよく知られている。例えば、これらは、参照により本願明細書に援用されるBaichwalに付与された米国特許第6,039,980号明細書に記載されているように、ザンサンガム及びローカストビーンガムなどの多糖類をジメチルシロキサン、ケイ酸、マンナン及びガラクタンの混合物、ザンサン並びに微粉化海藻などの担体と一緒に使用することを包含してもよい。他の持続放出処方物は、参照により本願明細書に援用されるSaikawaらに付与された米国特許第6,740,634号明細書に挙げられている乳酸−グリコール酸ポリマーなどの生分解性ポリマーを含んでもよい。さらに他の持続放出処方物は、参照により本願明細書に援用されるKeithに付与された米国特許第4,428,926号明細書に挙げられているポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールをベースとするポリマーを含む膨張性格子を含む。さらに他の持続放出処方物は、官能基として4級アンモニウム基を有するアクリレートとメタクリレートとのコポリマー、さらに中性エステル基を有するエチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマーを含有する、Rohm & HaasのEudragit(商標)ポリマーをベースとする。本発明による方法で使用するために適した特に好ましい持続放出組成物は、活性成分としてナドロールを含有する持続放出組成物である。
【0079】
経口用液体製剤は、例えば、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップ、チンキ剤又はエリキシル剤の形態であってよいか、使用前に水又は他の適切なビヒクルで再構成される乾燥製品として提供することができる。このような液体製剤は、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は硬化食用脂;レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴムなどの乳化剤;非水性ビヒクル(食用油を含んでもよい)、例えば、扁桃油、椰子油、油性エステル、プロピレングリコール又はエチルアルコール;若しくは防腐剤、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン又はソルビン酸などの慣用の添加剤を含有してもよい。製剤はさらに、緩衝塩、着香剤、着色剤又は甘味剤(例えばマンニトール)を適宜含有してもよい。
【0080】
当業者であれば、投与経路は、吸収効率の速度の重要な決定因子であることを認めるであろう。例えば、消化性経路、例えば、経口、直腸、舌下又は口内は通常、投与の最も安全な経路と考えられる。循環への薬物の輸送は遅く、したがって、急な有害反応を示しうる薬物の迅速で高い血液レベルはない。これは、投与の最も安全な経路と考えられるが、いくつかの欠点もある。重大な欠点の1つは、吸収速度が変動することであり、このことは、血液レベルの僅かな差が、薬物の所望の治療効果とその毒性効果とを分けている場合、即ち、薬物が比較的低い治療指数を有する場合には、重大な問題である。さらに、特に、直腸投与経路が選択されるか、経口投与を患者が不快であると知覚された場合には、患者の服薬遵守が、常には保証されない。さらに、経口投与では、薬物がそのターゲット部位に達する前に、広範囲な肝臓代謝が生じる。他の投与経路は、消化管をバイパスする非経口である。非経口投与の重要な利点の1つは、薬物がそのターゲット部位に達する時間が短くなり、緊急の際には必須である迅速な応答が生じることである。さらに、経口投与により、より正確な投与が可能である。さらに、非経口投与により、薬物のより迅速な吸収が可能になり、このことにより、高い有害反応も生じうる。消化性投与とは異なり、非経口投与は、薬物の無菌処方を必要として、無菌技術が必須である。非経口投与の最も重大な欠点は、これが、不溶性物質には適していないことである。消化性及び非経口投与経路に加えて、局所及び吸入投与も有用である。薬物の局所投与は、局所状態の治療に有用であるが、しかしながら、通常は、ほとんど全身吸収はない。薬物の吸入は、循環への迅速なアクセスをもたらし、ガス状及び揮発性薬物若しくは蒸発させるか又は噴霧することができる薬物での一般的な投与経路である。これは、薬物でのターゲットが肺系に存在する場合には、望ましい投与経路である。
【0081】
化合物を非経口投与のために処方する場合、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病変内又は腹腔内を介する注射のために処方する場合には、多くのオプションが可能である。有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを活性成分として含有する水性組成物の調製は、当業者に知られている。通常、このような組成物を、注射可能なものとして、液体溶液及び/又は懸濁液として調製することができる。注射の前に液体を加えて、溶液及び/又は懸濁液を調製するための使用に適している固体形態を調製することもできる。製剤は、乳化されていてもよい。
【0082】
注射可能な使用に適した薬剤形態には、無菌の水性溶液及び/又は分散液;ゴマ油、落花生油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリド及び/又は水性プロピレングリコールを含む処方物;及び/又は無菌の注射可能な溶液及び/又は分散液をその場で調製するための無菌粉末が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。場合によって、懸濁液はさらに、化合物の可溶性を高めて、高濃度の溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。いずれの場合でも、形態は、無菌でなければならないか、かつ/又は投与に適した直径を有するシリンジ及び針を容易に通過する溶液である程度に流動性でなければならない。これは、製造及び貯蔵条件下に安定でなければならず、細菌又はカビなどの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。
【0083】
遊離塩基又は薬学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されている水中で調製することができる。さらに分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び/又はこれらの混合物中で、及び/又はオイル中で調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有する。適切な非感作性及び非アレルギー性防腐剤が、当技術分野ではよく知られている。
【0084】
担体はさらに、溶剤及び/又は分散媒体であってもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール及び/又は液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物及び/又は植物油が含まれる。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合には適切な粒度を維持することにより、及び/又は界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。様々な抗菌剤及び/又は抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸又はチメロサールを含有することにより、微生物の作用を予防することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが、好ましい。多くの場合、ハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液などの生理学的に相容性な緩衝液中で溶液を調製することが好ましい。吸収を遅くする薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンを組成物中で使用することにより、注射可能な組成物の長期吸収を実施することができる。
【0085】
必要な量の活性化合物を適切な溶剤中に、必要に応じて前記で挙げた様々な他の成分と共に加え、続いて滅菌することにより、無菌の注射可能な溶液を調製する。滅菌は典型的には、濾過により行う。通常、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体及び/又は他の必要な成分を含有する無菌ビヒクルに加えることにより、分散液を調製する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、活性成分及び追加の望ましい成分の粉末を、元のその無菌濾過溶液からもたらす真空乾燥及び/又は凍結乾燥技術である。直接注射するための比較的濃縮されている溶液又は高濃縮溶液の調製も考えられ、この場合、溶剤として、極めて迅速な浸透をもたらすジメチルスルホキシド(DMSO)を使用して、望ましい場合には、小さい部分に高濃度の活性薬剤を輸送することも考えられる。
【0086】
水溶液中での非経口投与では、例えば、溶液は、必要な場合には適切に緩衝されているか、及び/又は液体希釈剤は始めに、十分な生理食塩水、グルコース又は他の張性剤で等張性にされていなければならない。これらの特殊な水溶液は特に、静脈内、筋肉内、皮下又は腹腔内投与に適している。これに関連して、使用することができる無菌水性媒体は、本開示を考慮すれば、当業者には分かるであろう。例えば、1回用量を、等張性NaCl溶液1mLに溶解させ、皮下注入液1000mLに加えるか、注入の所定の位置に注射することができる(例えば、「レミントンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(第15版),pp.1035−1038、1570−1580参照)。治療される対象の状態に応じて、投薬にいくつかのバリエーションが必要となることもある。投与に責任を有する人物が、いかなる状況でも、個々の対象に適切な用量を決定する。本発明による化合物及び組成物を、ボーラス注射又は連続注入により、非経口投与のために処方することもできるし、単位剤形、例えば、アンプル、バイアル、小容量注入又は予備充填(prefilled)シリンジ中で、又は防腐剤の添加を伴う多人数用容器中で提供することもできる。
【0087】
本発明による組成物の他の経路は、経鼻溶液、経鼻スプレー、エアロゾル又は吸入薬などの剤形を使用する経鼻である。経鼻溶液は通常、液滴又はスプレーで鼻通路に投与するように設計されている水溶液である。鼻分泌と多くの点で類似しているように経鼻溶液を通常は調製して、正常な繊毛作用が維持されるようにする。したがって、水性経鼻溶液は通常、等張性であるか、及び/又は約5.5から約6.5のpHを維持するためにやや緩衝されている。加えて、眼製剤で使用されるものと同様に、抗菌防腐剤及び/又は適切な薬物安定剤が、必要な場合には、処方物中に含まれていてもよい。様々な市販の経鼻製剤が知られており、例えば、抗生物質又は抗ヒスタミン薬を含んでもよい。スプレー組成物を、例えば水溶液又は懸濁液として、若しくは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を使用して、加圧パックから輸送されるエアロゾルとして処方することができる。
【0088】
他の投与方法に適している追加の処方物には、膣座薬及び/又はペッサリーが含まれる。直腸ペッサリー又は座薬を使用することもできる。座薬は、直腸、膣又は尿道に挿入して通常は投薬される様々な重量又は形状の固体剤形である。挿入の後に、座薬は腔液体中で軟化、溶融及び/又は溶解する。通常、座薬のための慣用の結合剤又は担体には、ポリアルキレングリコール、カカオバター又はトリグリセリドが含まれる。
【0089】
若しくは、これらに限られないが、リポソーム処方物、軟膏、クリーム、ローション、パウダー又はクリームを含む他の剤形を使用することもできる。軟膏及びクリームは例えば、適切なゲル化剤及び/又は溶剤を加えた水性又は油性基剤を用いて処方することができる。例えばこのような基剤には、水及び/又は流動パラフィンなどのオイル又は落花生油又はひまし油などの植物油若しくはポリエチレングリコールなどの溶剤が含まれうる。使用することができる増粘剤には、軟質パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、微結晶ろう及び蜜ろうが含まれる。ローションは、水性又は油性基剤を用いて処方することもでき、通常は、1種又は乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤又は増粘剤をさらに含有する。
【0090】
外用粉末を、適切な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトース又はデンプンを用いて処方することができる。
【0091】
インバースアゴニストと、それらが相互作用するβ−アドレナリン受容体との相互作用の性質によって、インバースアゴニストの投与に応答して、影響を受けている組織での受容体密度が高まると、時間をかけて治療応答が徐々に現れる。したがって、特に好ましい選択肢の1つでは、投与の開始時から用量を徐々に高めながら滴定する。言い換えると、β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で開始し、最大用量まで高める一連の段階用量で、時間をかけて投与する。最大用量に達したら、β−アドレナリンインバースアゴニストを、その用量(維持用量)で投与し続ける。例えば、ナドロールを経口投与する場合には、治療される特定の状態、重度及び治療に対する状態の応答に応じて、治療を1mg用量で開始し、次いで、3mg、5mg、10mg、15mgを経て、25mg、30mg、50mg、70mg、100mg又は必要と考えられるならばそれ以上などのより高い維持用量まで進める。他のインバースアゴニストでも、同様の投薬レジームを使用することができるが、正確な出発用量は通常、β−アドレナリン受容体の結合部位に対するインバースアゴニストの親和性に左右される。
【0092】
したがって、本発明の他の態様は、ナドロールなどのβ−アドレナリンインバースアゴニストの最小当初用量から最大維持用量の一連の用量を含むブリスターパックである。通常、このようなブリスターパックは:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小容量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(4)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有する。
【0093】
適切なブリスターパック10を図1に示したが、これは、通常はフォイルである下部支持体12;下部支持体の上に設置されている、ピル、カプセル又は他の剤形を保持するための複数のキャビティ16、18、20及び22が生じるように成形されている中間用量ホルダー14;並びに開口部26、28、30及び32を有し、各開口部は、キャビティ16、18、20及び22に一致するように配置されている、中間用量ホルダー14の上に位置する上部支持体24を包含する。ここには、4つのキャビティ及び開口部のみが示されているが、本発明によるブリスターパック10は、10、20又は30個などのもっと多い数の剤形を保持することもできる。典型的には、下部支持体12、上部支持体24又はそれら両方は、各丸薬、カプセル又は他の剤形の用量を識別し、その丸薬、カプセル又は他の剤形を摂取する際に従うべき順序に関するガイダンスを患者に提供するために、その上に印刷された指示書を有する。中間用量ホルダー14は典型的には、透明なプラスチック又は他の透明な材料から製造されていて、剤形を見ることができるようになっている。前記のように、剤形は、最小用量から始まって、通常は維持用量である最大容量まで進む段階的用量であってよい。若しくは、剤形は、少なくとも2つの用量を含んでもよい:(1)一連の段階用量において最も高い維持用量;及び(2)少なくとも1個のバックアップ復旧用量(例えば、用量が摂取されなかった場合に使用される)又は規定の条件で摂取される比較的小さい用量。規定の条件は例えば、低用量が必要とされるエリスロマイシン又はネオマイシンなどの抗生物質の投与であるか、腎機能不全が薬物の半減期を高める場合には、腎機能が正常であった場合と同じ血清濃度を達成するためには低用量が必要とされる場合である。
【0094】
β−アドレナリンインバースアゴニストに適した用量を設定する際には、様々な因子を考慮しなければならない。これらの因子には、患者が、β−アドレナリンインバースアゴニストの薬物動態を変化させて、より迅速か、より緩慢なそれらの崩壊をもたらす他の医薬品を摂取しているかどうかが含まれる。特に、患者が、抗生物質のエリスロマイシン又はネオマイシンを摂取している場合には、通常、維持用量を減らすことが必要である。したがって、本発明の他の態様は、バックアップ復旧用量及び患者がこれらの抗生物質を摂取する場合に使用するための低用量を有するブリスターパックである。
【0095】
例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養又は実験動物での標準的な薬剤手順により、β−アドレナリンインバースアゴニストの毒性及び治療効力を決定することができる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するための一連の用量範囲を処方する際に使用することができる。このような化合物の用量は好ましくは、毒性をほとんど有さないか、有さないED50を含む一連の循環濃度の範囲内である。用量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。
【0096】
本発明の方法で使用されるいずれの化合物でも、治療的有効用量は、細胞培養アッセイから当初は推定することができる。例えば、細胞培養で決定されたIC50(即ち、長期効果を考慮した場合に、受容体シグナリングにおいて半−最大改善を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで用量を処方することができる。このような情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。血漿でのレベルは、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0097】
患者の状態を考慮して、個々の医師が、正確な処方、投与経路及び用量を選択することができる(例えば、Finglら、「治療に関する薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics,1975,第1章,p.1)」参照)。主治医は、毒性によって、又は臓器機能障害により、いつ、どのように投与を終了、中断又は調節するかが分かるであろうことを特記する。逆に、主治医は臨床応答が十分でない場合には(毒性を予め除外して)、より高いレベルまで治療を調節することが分かるであろう。該当する障害を管理する際に投与される用量の規模は、治療される状態の重度及び投与経路に伴って変動しうる。状態の重度は例えば、一部では、標準的な予後評価法により評価することができる。さらに、用量、場合によっては、用量頻度も、個々の患者の年齢、体重及び応答に応じて変動しうる。前記で検討されたプログラムに匹敵するプログラムを、獣医学でも使用することができる。
【0098】
治療される特異的な状態に応じて、このような薬剤を、全身的又は局所的に処方及び投与することができる。通常、投与は全身的である。処方及び投与に関する技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)に見ることができる。適切な経路には、いくつか挙げるだけでも、経口、直腸、経皮、経膣、経粘膜又は腸管投与;筋肉内、皮下、骨髄内注射、さらにくも膜下、直接心室内、静脈内、腹腔内、微腔内又は眼内注射を含む非経口輸送が含まれうる。通常、経口投与が好ましい。
【0099】
注射では、本発明の薬剤を水溶液の形態で処方することができる。このような経粘膜投与では、浸透すべきバリアに適した浸透剤を処方物中で使用する。このような浸透剤は通常、当技術分野で知られている。
【0100】
本発明の実施のために本願明細書に開示した化合物を処方して、全身投与に適した用量にするために、薬学的に許容できる担体を使用することは、本発明の範囲内である。担体を適切に選択し、適切に製造実施すれば、本発明の組成物、特に、溶液として処方されたものを、静脈内注射などにより、非経口投与することができる。当技術分野でよく知られている薬学的に許容できる担体を使用して、化合物を処方して、容易に経口投与に適した剤形にすることができる。このような担体によって、本発明の化合物を、治療される患者が経口摂取するための錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することができる。
【0101】
当技術分野の通常の技術を有する専門家によく知られている技術を使用して、細胞内投与されることを意図されている薬剤を投与することができる。
【0102】
本発明で使用するために適している薬剤組成物には、その所定の目的を達するために有効な量で活性成分が含まれている組成物が含まれる。特に、本願明細書に示されている詳細な開示を考慮すれば、有効量の決定は十分に、当業者の能力の範囲内である。活性成分に加えて、これらの薬剤組成物は、活性化合物を加工して薬剤として使用することができる製剤にすることを容易にする付形剤及び補助剤を含む薬学的に許容できる適切な担体を含有してもよい。経口投与のために処方される製剤は、錠剤、糖衣丸、カプセル又は溶液の形態であってもよい。本発明の薬剤組成物は、それ自体公知である方法で、例えば、慣用の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、浮揚、乳化、カプセル封入、エントラッピング(entrapping)又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。
【0103】
非経口投与のための薬剤組成物には、水溶性形態である活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液を、適切な油性注射懸濁液として調製することもできる。適切な親油性溶剤又はビヒクルには、ゴマ油又はオレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル又はトリグリセリドなどの脂肪族油が含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。場合によっては、懸濁液はさらに、化合物の可溶性を高めて、高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0104】
活性化合物と固体付形剤とを組み合わせ、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な補助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、望ましい場合には錠剤又は糖衣丸核を得ることにより、経口のための薬剤調製物を得ることができる。適切な付形剤は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールなどを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤である。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0105】
糖衣丸核に、適切なコーティングを与えることができる。このために、場合によってアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液並びに適切な有機溶剤又は溶剤混合物を含有してもよい濃糖溶液を使用することができる。染料又は顔料を錠剤又は糖衣丸コーティングに加えて、活性化合物用量の様々な組み合わせを識別又は特徴づけることができる。
【0106】
経口で使用することができる薬剤調製物は、ゼラチンで製造された押込嵌めカプセル、ゼラチン並びにグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で製造された密閉軟質カプセルを包含する。押込嵌めカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤並びに場合により安定剤と混合された形態で活性成分を含有する。軟質カプセルでは、活性化合物を、脂肪族油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。加えて、安定剤を加えることもできる。
【0107】
典型的には、本発明による方法では、インバースアゴニストの半減期に応じて、インバースアゴニストを1日用量で、又は1日当たり複数回で投与する。若しくは、インバースアゴニストを、1日おき、2日おき、3日おき、週1回などのより少ない頻度で投与することもできる。薬物動態の分野の専門家であれば、特定の薬物の投与に関連して、薬物の生物学的利用率及び半減期を理解することの重要性を認めるであろう。各投与の間の時間間隔がその半減期の4倍未満であると、薬物が体に蓄積し、この場合、薬物の全体内貯蔵は、プラトー又は定常状態濃度まで急激に高まることはよく知られている。プラトーでの薬物の平均全体内貯蔵は、用量、各投与間の間隔、薬物の生物学的利用率及び薬物の排出速度の関数である。したがって、当業者であれば、所望の効果が達成されるように、所定の薬物での用量及び投与間隔を決定することができる。
【0108】
本発明の他の実施形態は、肺気道疾患を治療するための方法及び複数の薬物を含む組成物又は併用療法である。肺気道疾患の患者は往々にして、その症状を管理するために組み合わさって作用する複数の薬物を処方される。
【0109】
出願人は、この理論に縛られることは意図していないが、多くの状況において、インバースアゴニストとアゴニストとの同時治療は、アゴニスト単独での治療よりも優れていると考えられる。これらの結果は、インバースアゴニストとの同時治療は、アゴニストの治療効果を高め、関連GPCRの脱感作を予防することを示唆している。併用療法のこの形態に関する理論的解釈の1つは、急性喘息発作などの急性の症状発現の治療にありうる。インバースアゴニストでの治療が、喘息発作の頻度を低下させる場合でも、急性発作を治療する必要は未だ必要である。このことは、インバースアゴニストとアゴニストとの同時投与により行うことができる。
【0110】
特に望ましい組み合わせの1つでは、肺気道疾患を治療するために、β−アドレナリンインバースアゴニストを、β2−選択的アドレナリンアゴニストと組み合わせて投与する。β2−選択的アドレナリンアゴニストは通常、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、ドブタミン、フェノテロール、ホルモテロール、イソエタリン、イソプレナリン、レバブテロール(levabuterol)、マブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、サルブタモール、サルメテロール及びテルブタリン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択する。このような併用療法で使用するために本発明で特に好ましいβ−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである。β−アドレナリンインバースアゴニストと組み合わせて使用するために特に好ましいβ2−選択的アドレナリンアゴニストには、イソプロテレノール、サルブタモール及びサルメテロールが含まれる。併用療法の原理は、インバースアゴニストでの治療が受容体数のアップレギュレーションをもたらすことを示すデータにより支持されている。この場合、アゴニストでの同時治療は、病的応答がシグナリングの欠如を特徴とするような状況で、細胞シグナリングを増大させ、正常な機能を復活させると期待される。これらの線に沿って、気道抵抗でのインバースアゴニストの阻害応答は、アゴニストの同時投与によりかなり高まるであろう。これらのアゴニストの効力は、インバースアゴニストの存在により低下しうるが、応答の全体規模は、高まるであろう。このことにより、長期アゴニスト治療に往々にして伴う脱感作が予防されるであろう。
【0111】
併用療法を使用する場合、組み合わせの各メンバーの用量は、前記の原理に従い決定することができる。しかしながら、多くの場合に、固定用量の組み合わせが望ましく、それを使用することができる。固定用量の組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストの用量は前記と同様である一方で、β2−選択的アドレナリンアゴニストの望ましい用量は、前記のように決定することができる。
【0112】
他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストをステロイドと一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましいステロイドには、必ずしもこれらに限られないが、ベクロメタゾン、ブデノシド(budenoside)、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0113】
他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを抗コリン作動薬と一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましい抗コリン作動薬には、必ずしもこれらに限られないが、ムスカリン様受容体アンタゴニスト、特に、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム及び臭化オキシトロピウムなどの4級アンモニウムムスカリン様受容体アンタゴニスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0114】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストをキサンチン化合物と一緒に投与することができる。本発明で使用するために特に好ましいキサンチン化合物には、必ずしもこれらに限られないが、テオフィリン、長期放出テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、エンプロフィリン、ジプロフィリン、イスブフィリン(isbufylline)、コリンテオフィリネート、アルビフィリン(albifylline)、アロフィリン、バミフィリン及びカフェイン、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0115】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを抗IgE抗体と共に投与する。典型的には、抗IgE抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体に由来する遺伝子操作された抗体である。好ましくは、抗IgE抗体は、ヒト化されている。特に好ましいヒト化抗IgE抗体は、特異的にヒトIgEに結合し、オマリツマブ(omalizmab)の名称で販売されているIgG1κモノクローナル抗体である。
【0116】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを、ロイコトリエン調節剤と共に投与する。本発明で使用するために特に好ましいロイコトリエン調節剤には、必ずしもこれらに限られないが、イブジラスト、モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。
【0117】
さらに他の望ましい組み合わせでは、β−アドレナリンインバースアゴニストを、ホスホジエステラーゼIV阻害剤と共に投与する。本発明で使用するために特に好ましいホスホジエステラーゼIV阻害剤には、必ずしもこれらに限られないが、ロフルミラスト及びシロミラスト、さらに、これらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが含まれる。ホスホジエステラーゼIVは、肺での主なアイソホームであり、この酵素の阻害剤は、喘息及びCOPDの治療のために検討されている。
【0118】
β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤の投与経路は、当業者が、前記のように治療効率を最適化するように選択することができる。しかしながら、好ましい選択肢の1つでは、β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤の両方を、吸入により投与する。他の好ましい選択肢では、β−アドレナリンインバースアゴニストを経口で投与するが、追加の治療剤は吸入により投与する。これらの追加の治療剤のうちの数種には、毒性があり得るので、吸入による追加の治療剤の投与が、通常は好ましい。しかしながら、他の経路も可能である。
【0119】
エアロゾル治療により、達成されるべきほぼ理想的な損益率が可能になる。それというのも、非常に小用量の吸入医薬品が、最小の副作用で最適な治療をもたらすためである。本発明による方法で使用するために適した様々な追加の治療剤を、エアロゾル処方物の形態で利用することができ、これには、β2−アドレナリンアゴニスト、ステロイド及び抗コリン作動薬が含まれる。しかしながら、エアロゾル適用により投与される薬物の治療効率は、薬物自体の薬物動態特性だけでなく、輸送装置の特性にも左右される。輸送装置の特性は、肺に沈着する薬物の量及び気道での薬物分布パターンに影響を与える。
【0120】
エアロゾルは、微粒子の空中浮揚懸濁物である。粒子は、固体又は液体であってよい。エアロゾル粒子は、様々な大きさであり(即ち、粒子は、サイズに幅がある)、エアロゾル粒子サイズ分布は、対数正規分布により十分に記載される。粒子は、沈降し(沈降物)、相互に付着し(凝塊物)、管及び粘膜などの構造に付着する(堆積物)する傾向を有する。エアロゾルにより輸送される粒子は簡便には、その空気力学的動態をベースに特徴づけることができる。パラメーターの1つは、質量中央空気力学的直径(MMAD)である。定義によると、1μMのMMADを有する粒子分布は、単位密度及び1μM直径の液滴と同じ沈降平均速度を有する。
【0121】
エアロゾル粒子のサイズ、さらに呼吸系に作用を及ぼす変数は、吸入されたエアロゾルの気道への堆積に影響を及ぼす。一方では、直径10μMを上回る粒子は、肺には堆積しないようである。しかしながら、0.5μM未満の粒子は、肺胞に達しうるか、呼気されうる。したがって、1μMから5μMの直径を有する粒子が、より下部の気道に最も効率的に堆積する。これらのサイズの粒子は、喘息のための治療薬を輸送するために最も効率的である。
【0122】
呼吸に適した液滴(即ち、5μM未満の直径を有する液滴)内に含まれるエアロゾル物質のパーセンテージは、使用される吸収装置に左右される。ゆっくりとした一様な吸入により、肺の末梢部に侵入する粒子の数が増える。吸入される容量が増えるにつれて、エアロゾルは、より末梢的に気管支樹に侵入しうる。吸入を完了した後の呼吸停止時間により、肺末梢に侵入したこれらの粒子を、重力を介して気道に沈降させることができる。急性喘息の患者で典型的に観察される速い吸気流速度は、吸入された薬物の損失を高める。このことは、エアロゾル粒子が上部気道と、最初のいくつかの気管支部に衝撃を与えるために起こる。さらに肺気道疾患に関連する他の因子も、エアロゾル堆積を変化させうる。気道閉塞及び肺実質の変化は往々にして、喘息の患者の末梢気道での肺堆積と関連している。
【0123】
エアロゾル投与では、粒子が肺に堆積する前に、鼻が粒子を効率的に捕捉する:したがって、エアロゾル化された粒子を口呼吸することが好ましい。エアロゾル化された粒子は、多くの部位から失われる。通常、気道に達する噴霧用量の量は、≦15%である。多くの場合、吸入された容量の約90%は、飲み込まれて、胃腸間から吸収される。気道に達する少ないフラクションの用量も、血流に吸収される。したがって、用量のうちの飲み込まれたフラクションは、経口処方物と同様に吸収及び代謝される一方で、気道に達した用量フラクションは、静脈内用量と同様に血流に吸収され、代謝される。
【0124】
薬物を局所投与する場合(肺へのエアロゾル輸送を介して)、所望の治療効果は、血漿薬物濃度に直接的には関連しえない局所組織濃度に左右される。十分に大量の薬物用量が投与されると、吸入されたβ2−アゴニスト又はコルチコステロイドでは、全身活性が容易に証明されうる。これは、いくつかの示唆を有する。第1には、吸入薬の選択に関しては、局所薬物は、ターゲット臓器内での高い固有活性と全身的に吸収された薬物の迅速な不活性化とを併せ持たなければならない。第2に、低い経口生物学的利用率を有する(低い胃腸吸収又は高い初回通過肝代謝により)薬物では、より僅かな全身的副作用が予測されなければならない。吸入薬の多くは、低用量で投与され、低い経口生物学的利用率を有するので、これらの薬物の血漿濃度は、経口投与の後よりもかなり低い。
【0125】
さらに、肺吸収に影響を及ぼす因子が考えられるはずである。最近になって、テルブタリンは、健康な非喫煙者の場合よりも、健康な喫煙者の場合にはより迅速に、肺を介して吸収されることが証明された。このことは、薬物の作用開始に影響を与えうる。嚢胞性線維症を伴う10人の患者での吸入サルブタモールの生物学的利用率は、健康な成人の場合よりも高いことも判明している。生物学的利用率のこの差異に関して提示されているメカニズムの1つは、嚢胞性線維症の患者の慢性的に冒されている気管気管支樹は、組織へのサルブタモールのより高い透過性をもたらすことである。しかしながら、この分野でのデータは限られており、これらの主張を実証するには、さらに研究が必要である。
【0126】
最後に、血液濃度が低く、肺生物学的利用率を可能な限り正確に決定するためには、肺及び経口吸収を区別しなければならないので、吸入薬の絶対肺生物学的利用率は、評価が困難である。薬物の肺吸収を区別するために、炭を使用して、吸入されたテルブタリンの飲み込まれたフラクションを吸着することができる。最近になって、サルブタモールの吸入後30分間の尿収集は、肺に輸送された薬物の量を示すことが判明した。他の吸入薬の生物学的利用率を決定するために、この技術を適用することができる。吸入薬の生物学的利用率を決定するための他の技術も、当技術分野では知られている。これらには、FEV1測定を使用する薬物動態方法、放射性標識された処方物を使用する肺堆積研究又は主に尿排泄測定を使用する薬物動態研究が含まれる。
【0127】
治療用エアロゾルは、ジェットネブライザー内で液体を噴霧するか、液体の固定浴(standing pool)を振動させること(超音波噴霧化)により生じさせることができる。予め生じさせたエアロゾルを投与することもできる。後者の例には、MDI及び乾燥粉末装置が含まれる。どのような輸送装置を使用しても、患者は、これを正確に使用するように教示されなければならない。
【0128】
ジェットネブライザーは全て、よく知られている香水噴霧器により示されると同様の操作原理を介して作動する。液体を密閉容器の底部に入れ、圧縮機又は装置を通る圧縮ガスシリンダーからの空気のジェットにより、エアロゾルを生じさせる。超音波噴霧器は、約1mHzの周波数でトランスデューサー上に位置する液体を振動させることによりエアロゾルを生じさせる。これは、空気の流れにより装置から患者へと運ばれる粒子の雲状物を生じさせる。ネブライザーの設計及びそれをどのように操作するかによって、粒子(panicles)の質、サイズ及び分布において異なるエアロゾルをネブライザーにより生じさせることができる。全てのネブライザーが、最適な効力をもたらす必要な規格(MMAD、流れ、押出量)を有するわけではないことを特記する。最近の研究は、健康なボランティアにおいて4種のネブライザーからの肺堆積を比較し、ネブライザーに当初負荷された用量に対するパーセンテージとして表される中央肺エアロゾル堆積は、2から19%の範囲であったことを示している。5才以下の子供のために、さらに呼吸機能不全がMDI又は乾燥粉末吸入器からの吸入を損なう重篤な喘息を治療する際に、噴霧されたエアロゾルは特に役立つ。副作用を最小化するために、噴霧化溶液のpH及び容量オスモル濃度を調整すべきである。
【0129】
計量式(metered)用量吸入器(MDI)は、その簡便さ及び有効性により、外来患者に吸入薬を輸送するために使用される最も広く使用されている治療エアロゾルであろう。現在使用されている大抵のMDIは、噴射剤中の薬物懸濁液を含有する。MDIには、2つの主な構成材料がある:(i)噴射剤、活性薬剤及び計量室を含むプラスチック製又は金属製の密閉シリンダーであるキャニスター;並びに(ii)キャニスターを保持し、放出されたエアロゾルを患者の気道に向ける成形プラスチック製容器であるアクチュエーター。
【0130】
最適な薬物輸送に望ましい蒸気圧及び噴霧特性を達成するように、噴射剤混合物を選択する。クロロフルオロカーボンが以前には使用されたが、環境的な関心により、非塩素化噴射剤が今は使用されている。通常は1μM未満である薬物の微細な粒子を、加圧(液化)噴射剤に懸濁させる。薬物が凝集することを防ぐために、オレイン酸ソルビタン、レシチン又はオレイン酸などの界面活性剤を通常は加える。他の界面活性剤も、当技術分野では知られている。計量室は通常、25から100μLを包含する。キャニスターがアクチュエーターへと押し込まれると、計量室の内容物は、放出される。ほぼ即座に、噴射剤は蒸発して、排出された液体を粒子へと分解し、これは、大きな推進力で、前方へ噴射される。最適な肺薬物堆積のために、薬物を、約5秒続くゆっくりとした吸気の開始時に放出し、10秒間の息止めを続けるべきである。MDIの効力を改善するために、いくつかの吸入補助具が設計されている。これらは、手−息の協調が上手ではない患者に役立つ。短い管(例えば錐体又は球)により、エアロゾルを口中へとまっすぐに向けることができるか、折りたたみ可能なバッグが、患者が薬物を吸入しうる3から5秒間にわたって、懸濁液中に粒子を保持するエアロゾルレザバーとして役立ちうる。しかしながら、これらの装置のいずれかを使用する場合、中咽頭に入るとエアロゾルの速度は遅くなり、肺に対する薬物利用性及び中咽頭での堆積は低下する。
【0131】
乾燥粉末吸入器は、MDIを使用することが困難な患者(例えば、子供及び高齢患者)に薬物を輸送するために考案された。通常、適切な用量を、大きなラクトース又はグルコース粒子(panicle)などの流れ助剤(flow aid)又は充填剤と共にカプセルに装入する。装置の内部で、カプセルは始め、針により孔を空けられるか(例えば、Spihaler(登録商標)、半分に割られる(例えば、Rotohaler(登録商標))。吸入の間、カプセルが回転するか、プロペラが回転して、カプセルの内容物を吸入空気に入れ、気道に輸送するために適している小さい粒子へと壊す条件が生じる。粉末を分散させるために必要なエネルギーは、患者の吸入努力に由来する。最近、より簡便な複数回(multidose)乾燥粉末吸入器が導入されている(例えば、Diskhaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標))。乾燥粉末吸入器に伴い起こりうる問題には、食道刺激及び気道への粉末の直接的な作用による咳が含まれる。さらに、カプセルの壁は、カプセルの薬物放出の失敗又は凝集粉末の分解の失敗の結果として薬物でコーティングされうる。このことによって、実質的に全ての薬物が口中に堆積しうる。これらの粉末デバイスは、クロロフルオロカーボンを含有せず、MDIの代替物を提供しうる。
【0132】
喘息を治療するためのエアロゾルの臨床使用は、追加の治療剤として本願明細書で提示されている、β2−アゴニスト及びコルチコステロイドを含む数種の化合物で提案されている。
【0133】
β2アゴニストでは、限られた薬物動態データをヒトで利用することができる。それというのも大抵は、治療活性に必要な低用量の吸入薬は、体液中にアッセイ未満の薬物濃度をもたらすためである。これらの薬物の肺生物学的利用率については、ほとんど知られていない。MDIにより投与された場合、吸入用量の平均10%は、肺に達すると、通常は論じられている。MDIからのテルブタリンの平均肺生物学的利用率は、9.1%であると報告されている。経口成分(用量のうちの嚥下されたフラクション)が加わると、値は、16.5%まで上昇する。即ち6.7%の増大である。薬物のサルメテロール及びホルモテロールは、その長い気管支拡張効果期間(12から18時間)のベースである異なる作用機序を有する。β2−アゴニスト分子をその受容体につなぐ長い側鎖を有するので、サルメテロールは、独特と思われる。ホルモテロールは、極めて有望な古典的β2−アゴニストであると思われる。吸入後のホルモテロールの排泄半減期は、尿排泄データを元に、1.7から2.3時間であると算出された。グルクロン酸結合体が同定された。しかしながら、ホルモテロールが、ヒトではまだ検出されていない長期排泄半減期を有することも考えられる。サルメテロールは、キシナホエ(xinafoate)(ヒドロキシナフトエ酸)塩として処方される。この薬物の薬物動態特性については、ほとんど知られていない。サルメテロールは、水酸化により広く代謝され、用量の大部分は、主に排泄物中に72時間以内に排泄される。分子のヒドロキシナフトエ酸部分は、その長い排泄半減期(12から15日)の結果として、投与を繰り返す間に血漿中に蓄積される。
【0134】
抗コリン作動薬では、この群の親化合物は、アトロピンである。アセチルコリンのムスカリン様受容体の合成アゴニストは、4級アンモニウム化合物であるので、膜障壁の通過は困難である。薬物を吸入した後でのアトロピンの全身吸収はほぼ完全であるので、この投与経路は、重大な全身毒性をもたらしうる(Harrisonら1986)。臭化イプラトロピウムが、この群の唯一十分に研究されている代表物質である。ピーク血漿濃度は、薬物の経口摂取後3時間と報告されているので、胃腸管を介しての吸収は遅い。経口摂取後の絶対生物学的利用率は、30%にすぎない。代謝された薬物の排出は、尿及び胆汁で生じる。どのような投与経路であっても、平均排泄半減期は、約3.5時間である。吸入されたイプラトロピウムで観察される血漿濃度は、経口投与された等力気管支拡張用量で観察された濃度の1000分の1である。このことにより、臭化イプラトロピウムの治療用量の吸入後には、全身抗コリン作動性作用がなぜ生じないかが説明される。これらの特性はおそらく、臭化オキシトロピウム、前記の選択肢などの他の4級アンモニウム抗コリン作動薬にも共有される。
【0135】
コルチコステロイドは最も頻繁に、吸入により投与されるが、これは、全身コルチコステロイド治療に通常は伴う副作用のいくつかを予防しうる。顕著な局所活性を有する化合物を生じさせるために、ヒドロコルチゾン分子中のヒドロキシル基のいくつかを、アセトニド又はエステル基で置換した。喘息の患者を治療するために使用される局所活性コルチコステロイド薬には、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸塩、ブデソニド、トリアムシノロン、フルチカゾン及びフルニソリドが含まれる。これらのうち、ベクロメタゾン及びブデソニドが、最も広汎に使用されている。多数の臨床研究の結果から、ベクラメタゾンとブデソニドの効力にはほとんど差異がないことが判明している。スペーシング装置を使用することにより、中咽頭堆積が低減し、口をゆすぐことにより、カンジダ症の発症を防ぐことができる。ブデノシドの血漿クリアランスは、84±27l/hと算出されたが、これは、プレドニゾロンの平均クリアランスよりも約10倍高い。この高いクリアランスの結果として、ブデソニドの排泄半減期は、短い(2.8±1.1時間)。嚥下されたフラクションの全身利用率は、10.7±4.3%であり、広範な初回通過代謝が存在していることを示している。立体選択的代謝が証明されており、体重1kg当たりをベースとして算出して、2種の鏡像異性体の血漿クリアランスは、11人の健康な成人の場合よりも、喘息を伴う6人の子供では、約50%高かった。したがって、吸入によるブデソニドの投与は、経口による薬物投与と比較して全身副作用のリスクを低下させるはずである。肺エステラーゼは、ベクロメタゾンを加水分解することが知られている。吸収されたベクロメタゾン及びエステラーゼ加水分解生成物(17−プロピオン酸ベクロメタゾン及びベクロメタゾン)は、肝臓を通過する間に、活性のより低い代謝産物に迅速に変換される。全身吸収されたフルチカゾンの初回肝代謝はほぼ完全であるので、吸入薬物は、好ましい薬物動態プロファイルを有する。フルニソリド、トリアムシノロン及び吉草酸ベタメタゾンの薬物動態に関しては、ほとんどデータが刊行されていない。
【0136】
吸入された薬物から最大の効果を保証するために、薬物の薬物動態特性と薬物をエアロゾル化するために使用される装置との両方を考慮すべきである。β2−アゴニストに関して、MDI投与、乾燥粉末吸入器での投与又は噴霧化のための溶液など、様々な肺堆積技術を用いる様々な処方物を利用することができる。乾燥粉末吸入器からの単位用量は、MDIからの放出の2倍であるが、これらは、同等の気管支拡張作用を有する。装置の特性は、変動する。計量式用量吸入器では通常、用量の12〜40%が、肺に堆積するが、80%までは、中咽頭に堆積する。MDIをスペーサーと共に使用すると、通常は用量の約20%が肺に堆積するが、僅か5%までが中咽頭に堆積する;したがって、スペーサーを使用すると、中咽頭に堆積する薬物の割合を減らすことができる。乾燥粉末吸入器では、通常、用量の11〜16%が肺に堆積し、中咽頭には31〜72%が堆積する。ネブライザーでは、通常は用量の7〜32%が肺に堆積し、1〜9%が中咽頭に堆積する。当業者であれば、適切な吸入治療装置を使用して、適切な指示を与えることを保証することができるであろう。吸入治療の使用に関する考察が、参照により本願明細書に援用されるA.−M.Tabaret & B.Schmit、「喘息治療の薬物動態的最適化(Pharmacokinetic Optimisation of Asthma Treatment)」Clin.Pharmacokinet.26:396−418(1994)に記載されている。
【0137】
これらの組み合わせ全てで、本発明はさらに、ブリスターパックを包含し、これは、β−アドレナリンインバースアゴニストと、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗−IgE抗体、ロイコトリエン調節剤又はホスホジエステラーゼIV阻害剤などの追加の治療剤との固定用量の組み合わせか、又は別々の丸薬、カプセル又は他の剤形の形態でβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を含有する。インバースアゴニスト及び追加の治療剤の経口投与が望ましい場合には、これらのブリスターパックの使用が適している。ブリスターパックは、前記及び図1に示されている一般的なデザインに従い、患者に対する適切な指示を包含する。
【0138】
一般に、固定用量の組み合わせを使用する場合、ブリスターパックは:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を含有する前記の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(4)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有する。
【0139】
β−アドレナリンインバースアゴニスト及び追加の治療剤を別々の剤形で投与すべき場合には、ブリスターパックは通常:
(1)下部支持体;
(2)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(a)(i)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(ii)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(b)(i)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(ii)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(3)複数の開口部を有する中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(4)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有する。
【0140】
第1及び第2の薬剤組成物の剤形は、前記と同様に記載される。通常は、このアレンジでは、第1の薬剤組成物の剤形は、低用量で開始し、維持最大用量までの一連の用量を含む用量を含む。他の剤形アレンジも可能である。
【0141】
ブリスターパックのために、他のアレンジも可能である。
【0142】
本発明を次の実施例により詳述する。これらの実施例は、詳述のためだけに含まれており、本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0143】
(実施例1)
β−アドレナリンインバースアゴニストの長期投与による気道抵抗の低減
方法
6週齢のBalb/cJマウス(Jackson Animal Laboratory,Bar Harbor,Maine)を、特殊な病原体不含条件下に飼育し、トリオボアルブミン不含の食事を与えた。ヒューストン大学及びベイラー医科大学の両方の動物実験倫理委員会が、ここに報告している実験の全てを承認した。非選択的β−アドレナリンインバースアゴニストのカルベジロール(GlaxoSmithKline,King of Prussia,PA)及びナドロール(Sigma Chemical,St.Louis,MO)及びβ2−アドレナリン部分アゴニストのサルブタモール(Sigma Chemical,St.Louis,MO)の投与効果を、肺好酸球性炎症、気道応答性亢進及び不均質気道狭窄などのヒト喘息の主要な形態を示しているマウスモデルで実験した。薬物治療された動物で得られた結果を、時間的に近い関係で行われた実験でビヒクル治療された対応(対照)で得られた結果と比較した。実験1の研究の結果測度は、基線気道抵抗、コリン作動性刺激に対する気道応答性の程度及び気管支肺胞洗浄(BALF)細胞充実度に関して、薬物治療マウスと非治療動物との間に統計的に重大な差異を含んだ。水酸化アルミニウムに吸着されているオボアルブミン25μgをプロトコルの2、9及び16日目に皮下注射して、マウスを感作した。続いて、プロトコルの23日目から27日目に毎日、オボアルブミン25μgを含有する生理食塩水50μLをマウスに鼻腔内投与した。オボアルブミン感作されている生理食塩水攻撃されたマウスの群は、全身感作及びオボアルブミンでの呼吸攻撃に関する対照として役立つ。鼻腔内投与する前に、マウスをハロタン蒸気で鎮静させた。実施例1の研究では、オボアルブミン感作され、オボアルブミン攻撃されたマウス及びオボアルブミン感作され、生理食塩水攻撃されたマウスをそれぞれ、喘息マウス及び対照マウスとする。使用される薬物は、サルブタモール(β1/β2−アドレナリンアゴニスト)、アルプレノロール(部分的なアゴニスト活性を有するβ1/β2−アドレナリンアンタゴニスト)及びナドロール及びカルベジロール(両方とも非選択的β1/β2−アドレナリンインバースアゴニスト)であった。
【0144】
喘息のマウスモデルの表現型に対するβ−アドレナリンリガンド治療の時間効果を実験するために、実験薬物を、急性又は長期に喘息マウスの様々な群に投与した。
【0145】
急性治療での喘息マウスには、β−アドレナリン薬物又は通常生理食塩水の単一静脈内ボーラス注入をプロトコルの28日目に投与し、15分前に、メタコリンに対する気道応答性を測定した。マウスに投与されるカルベジロール、ナドロール、アルプレノロール及びサルブタモールの用量はそれぞれ、24mg/kg、72mg/kg、72mg/kg及び0.15mg/kgであった。長期治療での喘息マウスは、プロトコルの1日目から28日目の間、β−アドレナリン薬物で治療した。β−アンタゴニストでのマウスは、それぞれ2400ppm、250ppm又は7200ppmの濃度でカルベジロール、ナドロール又はアルプレノロールで処置された食物を自由に摂取することができた。これらの濃度は、以前に刊行された研究で、マウスに治療効果をもたらした濃度をベースに選択した。非喘息マウスには、通常の食物を与えた。サルブタモールを、浸透ミニポンプ(Alzet(登録商標)、♯2004、Durect Corporation,Cupertino,CA)を使用して、0.5mg/kg/日の用量で28日間輸送した。
【0146】
プロトコルの28日目に、マウスに麻酔をかけ、気管切開を行い、コンピュータ制御されている小動物用ベンチレータ(Flexivent,Scientific Respiratory Equipment,Inc.,Montreal,Canada)に接続した。強制振動技術を使用して、気道抵抗(Raw)を測定した。気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞組成も決定した。非治療喘息性マウスでは、気道応答性の程度及びBALF中で回収された好酸球の数が、オボアルブミン感作され生理食塩水攻撃された(対照)マウスに比較して著しく高かった。しかしながら、気道応答性の程度及びBALF中で回収された好酸球の数は、急性β−アドレナリンアンタゴニスト治療を受けたマウスと時間的に近い関係で研究された非治療喘息性マウスでは、長期β−アドレナリンアンタゴニスト治療でのマウスに付随して研究された非治療喘息性マウスで得られたものよりも低いことが観察された。
【0147】
気道収縮を誘発するために、塩化アセチル−α−メチルコリン(メタコリン)150μg/mL(Sigma Chemical,St.Louis,MO)を含有する溶液を一定の測度で、シリンジ注入ポンプ(Raze Scientific Instruments,Stanford,CN)を使用して静脈内注入した。メタコリン注入を0.008mL/分で開始し、その測度を段階的に、最大0.136mL/分まで倍増させた。各メタコリン用量を、3から5分間投与し、その間に、データを1分間隔でサンプリングし、次いで、平均化した。
【0148】
データ分析
呼吸系の複合入力インピーダンスを計算し、19.75Hzでの呼吸系インピーダンスの実数部の値を、気道抵抗(Raw)の規模を反映させるために利用した。各動物の気道応答性の規模を実験するために、メタコリン用量の関数としてのRaw値をプロットした。メタコリン刺激に応答して達成された最も高いRaw値を、Rawpeakと称した。メタコリン用量Raw応答曲線でプラトーを達成したマウスで、GraphPad Prism4(GraphPad Software,Inc.)を使用する直線補間により、ED50を算出した。β−アドレナリン薬物治療されたマウスと、未治療のマウスとで得られた結果を、2種の群を比較するために、スチューデントt検定の多群のための分散分析を使用して行った。Bonferroni試験を使用して、実験群での統計的差異を調査した。基線呼吸系力学に対する急性薬物治療の効果を、両側対t検定を使用して評価した。P<0.05の値を、有意であると見なした。
【0149】
図2
図2A及び2Bから、メタコリン誘発は、喘息性マウスの生理食塩水誘発での最小応答に比較して、喘息マウスにおいて気道抵抗(Raw)を著しく高めることが分かる。このことにより、この研究でのマウスモデルは、気道応答亢進、ヒト喘息における気道機能障害の鍵となる形態を示すことが証明される。
【0150】
図2Cでは、喘息性マウスへのサルブタモールの単一静脈内ボーラス投与は、メタコリン誘発に対する気道応答性のレベル及び予測された気道抵抗のレベルを低下させ、したがって、この薬剤の急性効果を証明している。しかしながら、図2Dでは、サルブタモールを28日間このマウスに輸送すると、保護は観察されなかった。β−アドレナリンアゴニストの長期投与では、気道応答性亢進の低下がないことは、これらの薬物に対する耐性が生じた場合のヒトで観察されている。
【0151】
図2Eでは、喘息マウスにアルプレノロール、部分アゴニスト活性を伴うβ−アドレナリンアンタゴニストの単一静脈内ボーラスを投与すると、非治療対応で得られた値と比較して、メタコリン用量≧408μg/kg/分でのRawの値での著しい低下により示されているように(P<0.05)、その気道応答性は低下する。アルプレノロールを急性投与した場合の気道応答性の低下は、サルブタモールで観察された低下と同様であり、アルプレノロールが有する部分アゴニスト活性と一致する。図2Fでは、喘息性マウスを、アルプレノロールに28日間曝すと、その平均メタコリン用量−応答関係は、非治療マウスで観察された関係と同様であり、これは、この薬物がサルブタモールを用いる場合と同様に、長期投与では利点を示さないことを証明している。このことは、この場合にも、このような薬物の長期投与後のヒト患者で観察される耐性と直接的に類似している。
【0152】
図2Gでは、カルベジロールの単一静脈内ボーラスが、喘息性マウスの気道応答性を高めた。このことは、喘息患者へのβ−アドレナリンアンタゴニストの急性輸送は、深刻な気道収縮をもたらしうるというヒトでの先行する観察と一致する。これに対して、図2Hでは、カルベジロールの長期投与が、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性を低減した。
【0153】
図2Iでは、ナドロールの単一静脈内ボーラスも、カルベジロールで観察された気道応答性と同様に、喘息性マウスの気道応答性を高めた。図2Jに示されているように、ナドロールの長期輸送も、気道応答性の低下をもたらしたが、これは、カルベジロール治療により生じた低下よりも顕著であった。確かに、長期ナドロール治療で喘息性マウスで得られた平均メタコリン用量−Raw応答関係は、急性サルブタモール治療でのマウスで得られた関係と同様であった。
【0154】
図3
図3は、喘息性マウスをコリン作動刺激した場合のピーク気道応答性に対する、β−アドレナリン受容体リガンドの投与効果を示している。個々のメタコリン用量−応答曲線を調査し、メタコリン用量のいずれか(多くの場合、最後の用量の次、408μg・kg−1・分−1)により生じた最高Raw値を選択することにより、ピークRawを各マウスで決定した。β−アドレナリン受容体アゴニストサルブタモールで治療した後(A)、様々な薬剤で急性治療した後(B)(ALP=アルプレノロール;CAR=カルベジロール;NAD;ナドロール)及び(B)で使用したと同じもので長期治療した後の平均ピークRaw±SEMを示しているが、全て、非治療喘息性マウス(NTX)(黒棒、n=7〜25)及び対照マウス(Ctrl、白棒、n=6〜21)と比較。値は、n=8〜19マウスのメタコリンに対するピークRaw値に関する平均±SEMである。(B)に関するy軸の規模の変化に注意。*、NTXに比較してP<0.05;#、Ctrlに比較してP<0.05(ANOVA)。
【0155】
(実施例2)
放射性リガンド結合により測定したところ、長期インバースアゴニスト治療により、β−アドレナリン受容体数は増加する
次のように、喘息性マウスで、β2−アドレナリン受容体数を測定する。喘息性マウス(オボアルブミン攻撃)を、次のように治療した:Ctrl、薬物治療なしに、メタコリン攻撃;サルブタモール、短時間作用性β2アゴニスト;カルベジロール、α1−アドレナリンアンタゴニスト活性を有するβ1,β2非選択的インバースアゴニスト;ナドロール、高特異的な親水性β1,β2非選択的インバースアゴニスト;及びアルプレノロール、β−アドレナリンアンタゴニスト。薬物治療を、メタコリン攻撃の15分前に1回治療するか、28日間継続する(サルブタモールは、皮下浸透ポンプを介して継続的に輸送し、アルプレノロール、カルベジロール及びナドロールは、動物の食事に入れた)。マウスを犠牲にし、次のように、肺膜を単離した。ポリトロン(polytron)(Pro200,Pro Scientific,Inc.)を使用して、凍結肺組織を、0.32Mのスクロール及び25mMのトリス(pH7.4)を含有する氷冷緩衝液中で均質化した。このホモジェネートを、1000×gで4℃で10分間遠心分離した。生じた上澄みを、40000×gで4℃で20分間遠心分離した。ペレットを氷冷25mMトリス−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、40000×gで4℃で20分間遠心分離した。最終ペレットを、25mMトリス−HCl(pH7.4)200μLに懸濁させた;膜タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキットにより決定した。放射性リガンド受容体結合インキュベーション混合物は、膜(タンパク質〜10μg)、(−)3−[125I]−シアノピンドロール(ICYP)(25mMのトリスHCl(pH7.4)中で濃度を高めていく(5〜7500pM))及び結合緩衝液を、250μLの最終容量で含有する。プロプラノロールを使用して、非特異的結合を決定した。インキュベーションを、37℃で2時間行い、ガラスファイバーフィルターを介して迅速に真空濾過することにより、終了させた。フィルターを、冷洗浄緩衝液(25mMのトリス−HCl、pH7.4)250μLで3回洗浄し、放射能をカウンターで決定した。全ての実験を3重に行い、値は、各群で動物3〜5匹の平均±SEMである。受容体密度を、タンパク質1ミリグラム当たりのサイトのフェムトモルとして表す。飽和結合曲線の非線形回帰により、Bmaxを決定する。見かけのKD値(括弧内)を、pMとして表す。15分及び28日の節目(tome point)は、薬物利用の期間に関することを特記する。全てのマウスを同年齢で殺し、ビヒクル治療群(Ctrl及びNTX)では、群は同一であり、結果を貯留した。#Ctrlと比較してのP<0.05;*NTXと比較してのP<0.05(スチューデントt検定)。
【0156】
表1に示されているように、放射性リガンド結合により、β2−アドレナリン受容体レベルは、メタコリン攻撃されたが、非治療の喘息性マウスでは、非治療の非攻撃マウスと比較して、多少低下するようである。長期アルプレノロール治療により、β2−アドレナリン受容体のレベルの僅かな低下が生じた。同じことが、長期サルブタモール治療でも当てはまった。さらに重要なことには、カルベジロール治療されたマウスは、非治療マウスに対して10倍を超えるβ2−アドレナリン受容体レベルの増加を証明し、このことは、長期投与した場合の、受容体レベルの上昇におけるβ−アドレナリンインバースアゴニストの効果を証明している。同様に、ナドロール治療されたマウスは、非治療のメタコリン攻撃された喘息性マウスの受容体レベルのほぼ8倍の増加を証明した。
表1
放射性リガンド結合によるβ−アドレナリン受容体密度の決定
【表1】
【0157】
(実施例3)
免疫組織化学により監視したところ、長期インバースアゴニスト治療により、β−アドレナリン受容体数が増加する。
β2−アドレナリン受容体レベルの免疫組織化学分析のために、非薬物治療対照マウス及びβ2−アドレナリンインバースアゴニストのナドロールで長期治療されたマウスを使用した。マウスを犠牲にし、肺を切除した。次いで、肺を、4%パラホルムアルデヒドに固定した(45分、0℃)。固定の後に、肺をPBSで洗浄し(60分)、濃度が上昇していくスクロース中に入れた(PBS中10%スクロース/5%グリシン、30分間;PBS中20%スクロース/10%グリシン、30分間;PBS中30%スクロース/15%グリシン、12時間、4℃)。肺をOCTに包埋させ、Tissue−Tek IIクリオスタットを用いて、12μm断片を切除した。断片を空気乾燥させ、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。PBS中で3回洗浄した後に、スライドをPBS中5%の牛乳で1時間ブロックし、次いで、ブロック溶液中、抗β2−アドレナリン受容体抗体(1:200、Santa Cruz Biotechnology)と共に一晩インキュベーションした。スライドをPBS中で洗浄し、二次抗体(1:200、Cy3ヤギ抗ウサギ、4℃で16時間)と共にインキュベーションした。対照スライドを、抗体特異的ブロッキングペプチドと共にインキュベーションして、一次抗体の結合の特異性を証明した。PBSで洗浄した後に、カバーガラスを載せ、エピ蛍光(epifluorescent)顕微鏡法により観察した。
【0158】
図4に示されているように、抗β2−アドレナリン受容体抗体での標識は、ナドロールで治療された動物からの肺では、未治療の動物からの肺においてよりも、かなり強かった(A、対照+抗体;B、対照+抗体+ブロッキングペプチド;C、ナドロール+抗体;D、ナドロール+抗体+ブロッキングペプチド)。β2−アドレナリン受容体ペプチドの存在下にインキュベーションすると、このシグナリングが無くなることは、この抗体が、特異的にβ2−アドレナリン受容体に結合していることを証明している。この観察は、実施例2の放射性リガンドデータと一致し、β2−アドレナリン受容体は、β2−アドレナリンインバースアゴニスト薬の長期投与により有効にアップレギュレーションされることを示唆している。
【0159】
実施例3
気道応答性亢進に対するカルベジロールとサルブタモールとの組み合わせの効果
喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するカルベジロールとサルブタモールとの併用治療の効果を、カルベジロールのみでの単独治療と比較した。
【0160】
6週齢のマウス(Balb/cj)を、特殊な病原体不含条件下に飼育し、トリオボアルブミン不含食を与えた。マウスを全身的に、水酸化アルミニウムに吸着されているオボアルブミンで感作させた。マウスを次のように治療した:CAR/SAL 28D=28日間、マウス(n=6〜12)にカルベジロール(動物の食事中に2400ppm)及びサルブタモール(Alzet#2400浸透ミニポンプ中、0.5mg/kg/日の皮下輸送)を投与した;NTX S/C=マウス(n=6〜12)は、28日間薬物治療なし;CTRL=マウス(n=6〜12)は、28日間薬物治療なし、続く攻撃なし;CARHD28D=28日間、マウス(n=6〜12)にカルベジロールのみ(動物の食事中に2400ppm)を投与した;CARHD 28D SAL AC=28日間、マウス(n=6〜12)に、カルベジロール(動物の食事中に2400ppm)を投与し、気道応答性亢進を測定する15分前に、サルブタモールを1.2mg/kgの用量で投与した。
【0161】
28日後の気道応答性亢進を測定するために、CTRL(対照)マウスを除く全てのマウスをオボアルブミンで攻撃し、次いで、全てのマウスに麻酔をかけ、気管切開し、Flexivent小動物用ベンチレータに接続して、強制振動技術により気道抵抗(Raw)を測定した。気道収縮を誘発するために、メタコリン150μg/mLを含有する溶液を、シリンジ注入ポンプを使用して注入した。メタコリン注入を、0.008ml/分で開始し、その測度を段階的に、最大0.136mL/分まで倍増させた。プラトーに達するまで、各メタコリン用量を投与し、その間、データを、1分間隔で3〜5分間サンプリングし、次いで、平均化した。
【0162】
図5Aでは、メタコリンの最大用量では、組み合わせ薬物治療の両方が、気管支収縮の予防において等しく有効であり、生理食塩水のみで攻撃された対照マウスとは統計的に有意には異ならなかった。カルベジロール単独治療により、これらの治療よりは高いが、非薬物治療の感作及び攻撃(NTX S/C)マウスよりも低い気管支収縮が生じた。したがって、アゴニストを長期的又は急性に投与するβ2−アドレナリンインバースアゴニストとアゴニストとの併用治療は、アレルゲン及びメタコリン攻撃に対する気道応答性亢進を緩和する際に有効であり、β2−アドレナリンインバースアゴニストのみの単独治療を上回る改善である。
【0163】
このデータを図5Bにまとめたが、これは、図5Aにその結果が示されている治療の気道応答性亢進の低減において、カルベジロールとサルブタモールとの組み合わせが最も有効であることを示している。このことは、β2−アドレナリンインバースアゴニストとアゴニストとの併用治療の使用の有効性を示している。
【0164】
(実施例4)
ナドロールの急性気道効果に対するアミノフィリンとの併用治療の効果
実施例1に記載されているように、マウスをアレルゲンのオボアルブミンに対して感作させた。次いで、アレルゲンで攻撃し、次いで、メタコリン誘発気管支収縮攻撃にかけ、非薬物治療するか(NTX S/C)、メタコリン攻撃の15分前に、0.72mg/kgのナドロールで腹腔内前処理した。
【0165】
1時点目(時間=−10分)に、マウスのベースライン気道抵抗を決定した。2時点目に(時間=−5分)に、メタコリンをマウスに注入して、そのEC70を達成した。3時点目(時間=0分)に、アミノフィリンを100mg/kgの用量で腹腔内投与した。
【0166】
図6では、ナドロールでのマウスの前処理は、非薬物治療の感作及びアレルゲン攻撃マウスと同じベースライン気道抵抗をもたらした。しかしながら、メタコリン攻撃すると、ナドロール治療されたマウスは、2.5単位に対して〜4.5のかなり高い気道抵抗を示した。アミノフィリンを投与すると、非治療マウスとナドロール治療マウスの両方で、気道抵抗の著しく、持続性の低下が存在した。
【0167】
Z.Callaerts−Veghら著「マウス喘息モデルでの、気道機能に対するβ−アドレナリン受容体リガンドの急性及び長期投与の効果(Effects of Acute and Chronic Administration of β−Adrenoceptor Ligands on Airway Function in a Murine Model of Asthma)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:4948−4953(2004)は、長期投与されたナドロールは、同じマウス喘息モデルで、気道応答性亢進を防ぐが、急性投与されたナドロールは、気道応答性亢進を悪化させることを示している。これらのデータは、メチルキサンチンアミノフィリンの添加が、ナドロール投与の気道応答性亢進の急性効果を緩和することを証明している。ナドロールを長期摂取すると、気管支収縮が予防される可能性が喘息患者にあることは、有利である。これらの対象は、アミノフィリンなどのメチルキサンチンを同時投与して、ナドロールの急性有害作用を予防することができる。
【0168】
(実施例5)
培養された気管平滑筋細胞でのホスホリパーゼCとアクチンとの比に対する、サルブタモール又はナドロールでの治療効果
次の治療を受けたマウスから、培養気管平滑筋細胞を得た:NS/NC=非喘息性、非攻撃マウス;S/C=喘息性マウス;Sal.Ac=喘息性マウス、急性サルブタモール治療;Sal.Ch=喘息性マウス、長期サルブタモール治療;Nad.Ac=喘息性マウス、急性ナドロール高用量治療;及びNad.Ch=喘息性マウス、長期ナドロール高用量治療。
【0169】
気道機能実験の後に、薬物又はビヒクルで治療されていて、麻酔をかけられたマウスから、気管を外科的に除去した。この気管を切り刻み、細胞を培養に置き、成長させた。平滑筋細胞は比較的速く成長し、培養皿に取った。細胞を、治療又はビヒクル対照で使用される薬物を含有する培地中で成長させた。酵素に特異的な抗体での免疫ブロットにより、ホスホリパーゼC(PLC−β1)を決定した。負荷対照としてアクチンを使用し、PLC−β1の量を、アクチンに対する比として表した。
【0170】
ホスホリパーゼCタンパク質レベルを、これらの培養細胞で測定し、ベースラインとしての構造タンパク質アクチンのレベルと比較した。酵素ホスホリパーゼCは、膜リン脂質内のホスホジエステル結合を開き、1,2−ジグリセリドの形成をもたらすので、喘息症状をもたらす経路で鍵となる役割を果たす。次いで、ジグリセリドリパーゼ及びモノグリセリドリパーゼの連続的な作用により、ジグリセリドから、アラキドン酸が放出される。いったん放出されると、一部のアラキドン酸は迅速に代謝されて、プロスタグランジンなどのエイコサノイドを含む酸素化生成物をもたらす。したがって、ホスホリパーゼC活性を阻害しうる治療は、喘息の治療に適している。
【0171】
結果を図7に示す。図7に示されている結果は、ナドロールの長期投与は、ホスホリパーゼCの活性を著しく低下させることを示している。このことは、ナドロールのこのような長期投与は、喘息に対して有効であり、喘息の症状をもたらすメカニズムの内のいくつかの活性を阻止することを示している。
【0172】
(実施例6)
気道抵抗に対する、低用量及び高用量のβ−アドレナリン受容体薬の効果
これらの実験のために、長期投与では、サルブタモールを、ミニポンプを用いて0.5mg/kg/日で投与し、急性投与では、攻撃の15分前に静脈内ボーラスにより0.15mg/kgで投与した。アルプレノロールを、食事中で7200ppmの高用量で、又食事中で720ppmの低用量で使用した。カルベジロールを、食事中2400ppmの高用量で、又は食事中で720ppmの低用量で使用した。ナドロールを、食事中で250ppmの高用量で、又は食事中で25ppmの低用量で使用した。ナドロールを食事中で1ppmで試験したが、これらの結果は、未治療のマウスと同一であった。
【0173】
結果を、図8A(サルブタモール);図8B(高用量アルプレノロール);図8C(低用量アルプレノロール);図8D(高用量カルベジロール);図8E(低用量カルベジロール);図8F(高用量ナドロール);及び図8G(低用量ナドロール)に示す。これらの図表中、Ctrl=対照マウス、非喘息性、非薬物治療;NTX=喘息性マウス、非薬物治療;AC=急性投与;2d=2日間の長期投与;28d=28日間の長期投与。気道抵抗(Raw)をcmH2Oml−1秒としてプロットする。このデータは特に、長期投与で、気道応答性亢進からの保護をもたらすβ−アドレナリンインバースアゴニストのカルベジロール及びナドロールの効果を示している。
【0174】
(実施例7)
気道抵抗の低下とβ−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関
サルブタモール、アルプレノロール、カルベジロール及びナドロールの3種の異なる投与期間での、気道抵抗の低下とβ−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関を表2に示す。薬剤の投与期間は、15分、2日及び28日である。インバースアゴニストのカルベジロール及びナドロールのみが、15分よりも長い期間で、β−アドレナリン受容体密度の上昇を示した;カルベジロールは、28日で受容体密度の上昇を示し、ナドロールは、2日及び28日の両方で受容体密度の上昇を示した。気道抵抗(Raw)の低下と受容体密度の上昇とには、正確な相関が存在した。このことは、インバースアゴニストとアゴニストなどの併用治療の概念を強力に支持する。
表2
気道抵抗の低下とβ2−アドレナリン受容体密度のアップレギュレーションとの相関
【表2】
【0175】
(実施例8)
喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、メトプロロール及びチモロールでの長期治療の効果
実施例1に記載の喘息性マウス及びメタコリン攻撃を使用して、2種の追加のインバースアゴニスト、メトプロロール(皮下注射により1日3回、20mg/kg用量を7日間投与)及びチモロール(食事中で、20mg/kg用量を7日間)のために、実施例1のプロトコルに従った。気道抵抗(Raw)を実施例1と同様に測定した。メトプロロール及びチモロールでの結果を、図9Aに示す。結果を、図9Bに示されているように、歴史対照と比較した:Ctrl、薬物治療なし、メタコリンでの攻撃なし;NTX、薬物治療なし、メタコリンで攻撃。結果は、メトプロロール及びチモール両方での長期治療は、喘息性マウスでの気道応答性亢進の低減に有効であることを示している。
【0176】
発明の効果
本発明は、喘息、肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患などの慢性肺気道疾患を治療するための改善方法を提供し、往々にしてβ−アドレナリンアゴニストでの慣用の治療の結果である耐薬性又はタキフィラキシーを回避する。インバースアゴニストの使用によって実際に、体自体のシグナリングメカニズムが改善され、体が、肺気道疾患に対抗するようになる。したがって、インバースアゴニストを使用する組成物及び方法は、耐薬性を誘発することなく、このような疾患及び状態を治療するための幅広い可能性を有する。このことは、このような状態の治療において、短期急性治療を妨げることなく、優れた長期結果を約束する。
【0177】
本願明細書に詳述されている本発明は、本願明細書に具体的に開示されていなければ、いかなる要素、制限なしに実行することができる。したがって例えば、「含む」、「包含する」、「含有する」などの用語は、広く、制限なしに解釈されるべきである。加えて、本願明細書で使用されている用語及び表現は、記載の用語として使用されているのであって、制限の用語としては使用されてなく、このような用語及び表現を使用する際には、示されているか、記載されている形態又はそのいずれかの部分の同義語を除外する意図はなく、請求されている本発明の範囲内で、様々な変更が可能であることを理解されたい。したがって、本発明を好ましい実施形態及び場合による形態により具体的に開示したが、当業者であれば、本願明細書に開示の発明の変更及び変化を行うことができ、このような変更及び変化は、本願明細書に開示の発明の範囲内であると考えられる。本発明は、本願明細書で、幅広く、かつ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内に該当するより狭い種及び部分分類もそれぞれ、これらの発明の一部を形成している。これは、削除される材料が具体的に本願明細書に挙げられているかどうかに関わらず、その種類からある用件を除外する条件又はネガティブ制限を伴う各発明の一般的記載を包含する。
【0178】
加えて、本発明の形態又は態様を、マーカッシュ群の用語で記載する場合、当技術分野で教育を受けた人であれば、本発明はさらに、マーカッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブグループの用語で記載されることを認めるであろう。さらに、前記の記載は、詳述を意図しており、制限を意図するものではないことを理解されたい。多くの実施形態は、前記を概観すれば、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、前記の記載を参照して決定すべきではなく、代わりに、添付の請求項を、このような請求項にふさわしい同等物の全範囲と共に参照して決定すべきである。親刊行物を含む全ての論文及び参照文献の開示は、参照により本願明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明によるインバースアゴニストの剤形を保持しているブリスターパックを示す図である。
【図2】図2Aは喘息性マウスにおいて、メタコリン誘発が気道抵抗(Raw)を著しく高めることを示すグラフである。 図2Bは喘息性マウスにおいて、対照としての生理食塩水誘発が気道抵抗を著しく高ることはないことを示すグラフである。 図2Cは喘息性マウスにサルブタモールの単一静脈内ボーラスを投与することにより、メタコリン誘発に対する気道応答性のレベル及び気道抵抗のレベルが低減することを示す同様のグラフである。 図2Dはメタコリン誘発の前の28日間にわたってマウスにサルブタモールを輸送しても、保護が観察されなかったことを示す同様のグラフである。 図2Eは喘息性マウスに、部分的なアゴニスト活性を有するβ−アドレナリンアンタゴニストであるアルプレノロールの単一静脈内ボーラスを投与すると、その気道応答性が低下したことを示す同様のグラフである。 図2Fは喘息性マウスを、28日間にわたってアルプレノロールに暴露すると、平均メタコリン用量応答関係は、非治療のマウスで観察された関係と同様であるので、この薬物は、長期投与に対して利点を示さないことを証明している同様のグラフである。 図2Gはカルベジロールの単一静脈内ボーラスは、喘息性マウスにおいて気道応答性を高めたことを示す同様のグラフである。 図2Hはカルベジロールの長期投与により、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性が低下したことを示す同様のグラフである。 図2Iはナドロールの単一静脈内ボーラスも、カルベジロールで観察されたことと同様に、喘息性マウスの気道応答性を高めたことを示す同様のグラフ。 図2Jはナドロールの長期投与は、この場合にもカルベジロールで観察されたことと同様に、メタコリン誘発に対する喘息性マウスの応答性を低下させたことを示す同様のグラフ。
【図3】コリン作動性刺激に対するピーク気道応答性に対するβ−アドレナリン受容体リガンド投与の効果を示すグラフである((A)β−アドレナリンアゴニストサルブタモールでの処理後;(B)β−アドレナリン受容体インバースアゴニストでの急性治療の後;及び(C)β−アドレナリン受容体インバースアゴニストでの長期治療の後。
【図4】ナドロールで処置した場合のβ−アドレナリン受容体密度の上昇を示す一連のエピ蛍光顕微鏡写真である。
【図5A】メタコリンで攻撃された喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、カルベジロールとサルブタモールとの併用治療の効果を示すグラフである。
【図5B】図5Aに示されている結果をまとめた図である。
【図6】メタコリンで攻撃された喘息性マウスでの気道応答性亢進に対する、ナドロールとアミノフィリンとの急性併用治療の効果を示すグラフである。
【図7】長期ナドロール投与がホスホリパーゼCの活性を低減することを示すために、長期ナドロール投与を含む様々な治療で処置されたマウスでのホスホリパーゼCとアクチンとの比を示すグラフである。
【図8】図8A気道応答性亢進に対するサルブタモールの効果を示すグラフである。 図8Bは気道応答性亢進に対する高用量アルプレノロールの効果を示すグラフである。 図8Cは気道応答性亢進に対する低用量アルプレノロールの効果を示すグラフである。 図8Dは気道応答性亢進に対する高用量カルベジロールの効果を示すグラフである。 図8Eは気道応答性亢進に対する低用量カルベジロールの効果を示すグラフである。 図8Fは気道応答性亢進に対する高用量ナドロールの効果を示すグラフである。 図8Gは気道応答性亢進に対する低用量ナドロールの効果を示すグラフである。
【図9A】喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するメトプロロール及びチモロールの長期投与の効果を示すグラフのセットである:メトプロロール及びチモロールでの実験結果。
【図9B】喘息性マウスでの気道応答性亢進に対するメトプロロール及びチモロールの長期投与の効果を示すグラフのセットである:攻撃されていないマウス(Ctrl)及び治療を受けず攻撃されたマウス(NTX)での経歴的対照。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺気道疾患に罹患している対象の肺気道疾患を治療する方法であって、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項2】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、β2−選択的インバースアゴニスト並びにβ1−及びβ2−アドレナリン受容体の両方に対してインバースアゴニスト活性を有する非選択的インバースアゴニストからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、β2−選択的インバースアゴニストである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール及び式(I)の化合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法:
【化1】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであり、m及びnは、1から3であるが、但し、R1及びR2が両方とも水素であり、mが1である場合、nは、1以外である]。
【請求項6】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロール及び式(II)の化合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法:
【化2】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであり、R3は、水素又は低級アルキルであるが、但し、全てのR1、R2及びR3が、全て水素ということはない]。
【請求項8】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
β−アドレナリンアゴニストは、チモロール及び式(III)のチモロールの類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法:
【化3】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない]。
【請求項10】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、チモロールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
β−アドレナリンアゴニストは、メトプロロール及び式(IV)のメトプロロールの類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法:
【化4】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない]。
【請求項12】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、メトプロロールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
肺気道収縮応答性亢進の低減である治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
肺β2−アドレナリン受容体のアップレギュレーションである治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
β2−アドレナリンアゴニスト薬に対する高い肺気道弛緩応答性である治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
β−アドレナリンインバースアゴニストを、経口、持続放出経口、非経口、舌下、口内、通気及び吸入からなる群から選択される経路で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
β−アドレナリンインバースアゴニストを持続放出経口経路で投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
肺気道疾患は、喘息である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
肺気道疾患は、肺気腫である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
対象は、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
対象は、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタからなる群から選択される社会的又は経済的に重要な動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
β−アドレナリンインバースアゴニストを投与する方法により、対象の血流中に連続的なレベルのβ2−アドレナリンインバースアゴニストを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で始めて最大用量まで高める一連の段階用量で時間をかけて投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
最大用量に達したら、β−アドレナリンインバースアゴニストをその用量で投与し続ける、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、30mg、50mg及び70mgからなる群から選択される量のナドロール;及び
(b)薬学的に許容できる担体
を含有する、薬剤組成物。
【請求項28】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小用量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(d)キャビティ内に設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有する、ブリスターパック。
【請求項29】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項30】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項31】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項32】
(a)下部支持体:
(b)複数のキャビティが生じるように形成されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(d)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形(前記の剤形は、少なくとも2種の用量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト:(i)一連の段階用量での最大用量である維持用量;及び(ii)少なくとも1種のバックアップ復旧用量又は規定の条件下で摂取される低用量を含有する)
を含有する、ブリスターパック。
【請求項33】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項34】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項35】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項36】
少なくとも1種のバックアップ復旧用量を含有する、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項37】
規定の条件下で摂取される少なくとも1種の低容量を含有する、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項38】
規定の条件は、β−アドレナリンインバースアゴニストの異化に影響を及ぼす抗生物質の投与である、請求項37に記載のブリスターパック。
【請求項39】
抗生物質は、エリスロマイシン及びネオマイシンからなる群から選択される、請求項38に記載のブリスターパック。
【請求項40】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のβ2−選択的アドレナリンアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項41】
β2−選択的アドレナリンアゴニストは、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、ドブタミン、フェノテロール、ホルモテロール、イソエタリン、イソプレナリン、レバブテロール、マブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
肺気道疾患は、喘息である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のステロイドを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項49】
ステロイドは、ベクロメタゾン、ブデノシド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
肺気道疾患は、喘息である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗コリン作動薬を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項57】
抗コリン作動薬は、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム及び臭化オキシトロピウム並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
肺気道疾患は、喘息である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のキサンチン化合物を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項65】
キサンチン化合物は、テオフィリン、長期放出テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、エンプロフィリン、ジプロフィリン、イスブフィリン、コリンテオフィリネート、アルビフィリン、アロフィリン、バミフィリン及びカフェインからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
肺気道疾患は、喘息である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗IgE抗体を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項73】
抗IgE抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体に由来する遺伝子操作された抗体である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
抗IgE抗体は、ヒト化されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ヒト化抗体は、IgG1κモノクローナル抗体である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
IgG1κモノクローナル抗体は、オマリツマブである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
肺気道疾患は、喘息である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のロイコトリエン調節剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項84】
ロイコトリエン調節剤は、イブジラスト、モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカスト並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
肺気道疾患は、喘息である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のホスホジエステラーゼIV阻害剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項92】
ホスホジエステラーゼIV阻害剤は、ロフルミラスト及びシロミラスト並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
肺気道疾患は、喘息である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
(a)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;
(b)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療薬、(前記の第2の治療薬は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び
(c)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物。
【請求項100】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項101】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項102】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項103】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、請求項99に記載の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(d)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有する、ブリスターパック。
【請求項104】
薬剤組成物の剤形は、最小用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストで始まり、β−アドレナリンインバースアゴニストの最大用量に至る段階的用量で、薬剤組成物のβ−アドレナリンインバースアゴニストを含有する、請求項99に記載のブリスターパック。
【請求項105】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(i)(A)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(B)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(ii)(A)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(B)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有する中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(d)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパック。
【請求項106】
第1の薬剤組成物の前記の剤形は、最小用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストで始まり、最大用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストに至る段階的な用量で、第1の薬剤組成物のβ−アドレナリンインバースアゴニストを含有する、請求項105に記載のブリスターパック。
【請求項1】
肺気道疾患に罹患している対象の肺気道疾患を治療する方法であって、治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項2】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、β2−選択的インバースアゴニスト並びにβ1−及びβ2−アドレナリン受容体の両方に対してインバースアゴニスト活性を有する非選択的インバースアゴニストからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、β2−選択的インバースアゴニストである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール及び式(I)の化合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法:
【化1】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであり、m及びnは、1から3であるが、但し、R1及びR2が両方とも水素であり、mが1である場合、nは、1以外である]。
【請求項6】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロール及び式(II)の化合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法:
【化2】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであり、R3は、水素又は低級アルキルであるが、但し、全てのR1、R2及びR3が、全て水素ということはない]。
【請求項8】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
β−アドレナリンアゴニストは、チモロール及び式(III)のチモロールの類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法:
【化3】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない]。
【請求項10】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、チモロールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
β−アドレナリンアゴニストは、メトプロロール及び式(IV)のメトプロロールの類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法:
【化4】
[式中、
R1は、水素又は低級アルキルであり、R2は、水素又は低級アルキルであるが、但し、R1及びR2の両方が、水素ということはない]。
【請求項12】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、メトプロロールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
肺気道収縮応答性亢進の低減である治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
肺β2−アドレナリン受容体のアップレギュレーションである治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
β2−アドレナリンアゴニスト薬に対する高い肺気道弛緩応答性である治療作用をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
β−アドレナリンインバースアゴニストを、経口、持続放出経口、非経口、舌下、口内、通気及び吸入からなる群から選択される経路で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
β−アドレナリンインバースアゴニストを持続放出経口経路で投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
肺気道疾患は、喘息である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
肺気道疾患は、肺気腫である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
対象は、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
対象は、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタからなる群から選択される社会的又は経済的に重要な動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
β−アドレナリンインバースアゴニストを投与する方法により、対象の血流中に連続的なレベルのβ2−アドレナリンインバースアゴニストを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
β−アドレナリンインバースアゴニストを、最小用量で始めて最大用量まで高める一連の段階用量で時間をかけて投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
最大用量に達したら、β−アドレナリンインバースアゴニストをその用量で投与し続ける、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、30mg、50mg及び70mgからなる群から選択される量のナドロール;及び
(b)薬学的に許容できる担体
を含有する、薬剤組成物。
【請求項28】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されており、前記の剤形は、最小用量で開始して最大用量に至る段階用量の形態である);及び
(d)キャビティ内に設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形
を含有する、ブリスターパック。
【請求項29】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項30】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項31】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項32】
(a)下部支持体:
(b)複数のキャビティが生じるように形成されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、β−アドレナリンインバースアゴニストの剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(d)キャビティに設置されているβ−アドレナリンインバースアゴニストの剤形(前記の剤形は、少なくとも2種の用量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト:(i)一連の段階用量での最大用量である維持用量;及び(ii)少なくとも1種のバックアップ復旧用量又は規定の条件下で摂取される低用量を含有する)
を含有する、ブリスターパック。
【請求項33】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項28に記載のブリスターパック。
【請求項34】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項35】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項36】
少なくとも1種のバックアップ復旧用量を含有する、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項37】
規定の条件下で摂取される少なくとも1種の低容量を含有する、請求項33に記載のブリスターパック。
【請求項38】
規定の条件は、β−アドレナリンインバースアゴニストの異化に影響を及ぼす抗生物質の投与である、請求項37に記載のブリスターパック。
【請求項39】
抗生物質は、エリスロマイシン及びネオマイシンからなる群から選択される、請求項38に記載のブリスターパック。
【請求項40】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のβ2−選択的アドレナリンアゴニストを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項41】
β2−選択的アドレナリンアゴニストは、アルブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、ドブタミン、フェノテロール、ホルモテロール、イソエタリン、イソプレナリン、レバブテロール、マブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、リトドリン、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
肺気道疾患は、喘息である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のステロイドを対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項49】
ステロイドは、ベクロメタゾン、ブデノシド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
肺気道疾患は、喘息である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗コリン作動薬を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項57】
抗コリン作動薬は、臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム及び臭化オキシトロピウム並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
肺気道疾患は、喘息である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のキサンチン化合物を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項65】
キサンチン化合物は、テオフィリン、長期放出テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、エンプロフィリン、ジプロフィリン、イスブフィリン、コリンテオフィリネート、アルビフィリン、アロフィリン、バミフィリン及びカフェインからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
肺気道疾患は、喘息である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量の抗IgE抗体を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項73】
抗IgE抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体に由来する遺伝子操作された抗体である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
抗IgE抗体は、ヒト化されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ヒト化抗体は、IgG1κモノクローナル抗体である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
IgG1κモノクローナル抗体は、オマリツマブである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
肺気道疾患は、喘息である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のロイコトリエン調節剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項84】
ロイコトリエン調節剤は、イブジラスト、モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカスト並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
肺気道疾患は、喘息である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
肺気道疾患に罹患している対象において肺気道疾患を治療する方法であって、(1)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト及び(2)治療有効量のホスホジエステラーゼIV阻害剤を対象に投与して、肺気道疾患を治療することを含む方法。
【請求項92】
ホスホジエステラーゼIV阻害剤は、ロフルミラスト及びシロミラスト並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
肺気道疾患は、喘息、気管支拡張症、気管支炎、慢性肺閉塞性疾患、チャーグ−ストラウス症候群、嚢胞性線維症の肺後遺症、肺気腫、アレルギー性鼻炎及び肺炎からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
肺気道疾患は、喘息である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
肺気道疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
(a)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;
(b)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療薬、(前記の第2の治療薬は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び
(c)薬学的に許容できる担体
を含有する薬剤組成物。
【請求項100】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロール、ブプラノロール、ブトキサミン、カラゾロール、カルベジロール、ICI−118,551、レボブノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール並びにこれらの塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオ同配体、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグからなる群から選択される、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項101】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、ナドロールである、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項102】
β−アドレナリンインバースアゴニストは、カルベジロールである、請求項99に記載の薬剤組成物。
【請求項103】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、請求項99に記載の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有し、中間用量ホルダーの上部に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように配置されている);及び
(d)キャビティに設置されている薬剤組成物の剤形
を含有する、ブリスターパック。
【請求項104】
薬剤組成物の剤形は、最小用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストで始まり、β−アドレナリンインバースアゴニストの最大用量に至る段階的用量で、薬剤組成物のβ−アドレナリンインバースアゴニストを含有する、請求項99に記載のブリスターパック。
【請求項105】
(a)下部支持体;
(b)複数のキャビティが生じるように形成され、下部支持体の上に設置されている中間用量ホルダー(前記のキャビティは、(i)(A)治療有効量のβ−アドレナリンインバースアゴニスト;及び(B)第1の薬学的に許容できる担体を含有する第1の薬剤組成物;並びに(ii)(A)肺気道疾患を治療するために有効な治療有効量の第2の治療剤(前記の第2の治療剤は、β2−選択的アドレナリンアゴニスト、ステロイド、抗コリン作動薬、キサンチン化合物、抗IgE抗体、ロイコトリエン調節剤及びホスホジエステラーゼIV阻害剤からなる群から選択される);及び(B)第2の薬学的に許容できる担体を含有する第2の薬剤組成物の剤形を保持するように形成されている);
(c)複数の開口部を有する中間用量ホルダーの上に設置されている上部支持体(各開口部は、対応するキャビティに一致するように設置されている);及び
(d)キャビティに設置されている第1及び第2の薬剤組成物の剤形
を含有するブリスターパック。
【請求項106】
第1の薬剤組成物の前記の剤形は、最小用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストで始まり、最大用量のβ−アドレナリンインバースアゴニストに至る段階的な用量で、第1の薬剤組成物のβ−アドレナリンインバースアゴニストを含有する、請求項105に記載のブリスターパック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2007−527409(P2007−527409A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534354(P2006−534354)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033157
【国際公開番号】WO2005/034871
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506118847)インバーセオン、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033157
【国際公開番号】WO2005/034871
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506118847)インバーセオン、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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